キノロン含有凍結乾燥製剤の製造方法
【課題】キノロン系合成抗菌化合物とpH調節剤のみを含有し、かつ、再溶解性に優れる凍結乾燥製剤の提供。
【解決手段】キノロン系合成抗菌化合物およびpH調節剤を含有する水溶液を冷却して凍結体を得、次いで温度を一旦昇温させた後、再度冷却して凍結乾燥することを特徴とする、キノロン系合成抗菌化合物を有効成分とする非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【解決手段】キノロン系合成抗菌化合物およびpH調節剤を含有する水溶液を冷却して凍結体を得、次いで温度を一旦昇温させた後、再度冷却して凍結乾燥することを特徴とする、キノロン系合成抗菌化合物を有効成分とする非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キノロン系合成抗菌化合物を含有する非晶質凍結乾燥製剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キノロン系合成抗菌化合物は、広い抗菌スペクトルと強い抗菌活性を有することから、種々の細菌感染症治療薬として広く用いられている(非特許文献1参照)。例えば、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、トロバフロキサシン等の化合物は、広い抗菌スペクトルで高い抗菌活性の優れた抗菌活性を有しており特に広く用いられている。また、シタフロキサシンや下記の式(I)の化合物、そして実施例に記載の式(II)の化合物も同様に優れた抗菌活性を有し、かつ薬剤耐性菌に対しても優れた抗菌活性を有することから、優れた抗菌薬として期待される。
式(I)
【0003】
【化1】
【0004】
で表される構造を有するキノロン化合物(7−[3−(R)−(1−アミノシクロプロピル)ピロリジン−1−イル]−1−[2−(S)−フルオロ−1−(R)−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸;以下、化合物(I)と略す。)は、特にメチシリン耐性ブドウ球菌、ペニシリン耐性肺炎球菌、バンコマイシン耐性腸球菌等の薬剤耐性グラム陽性菌に対しても高い抗菌活性を発揮する等優れた抗菌活性を有している。さらに本化合物は安全性も高く優れた治療効果が期待される(特許文献1参照)。また、下記に示す化合物(II)も同様に耐性菌を含め優れた抗菌活性を示す他、安全性も高く優れたキノロン化合物である(特許文献2参照)。
【0005】
キノロン化合物、特に耐性菌に対して優れた抗菌活性を示すものは、その抗菌効果の特性から重症感染症に対しても優れた治療効果が期待できる。重症患者の場合溶液の形態で血管内投与を行なわざるを得ない場合が多い。したがって、キノロン化合物を含有する薬物溶液が必要であり、キノロン化合物の薬物溶液を用時調製するための、原薬とpH調節剤のみを含有する凍結乾燥製剤が提供される。
【0006】
凍結乾燥製剤の調製法として、アニーリング(Annealing)工程を設ける方法が知られている。アニーリング工程とは、初期工程の冷却工程で得られる原料水溶液の凍結体の温度を一旦上昇させて一定時間保持する工程のことである。賦形剤を含有するまたは賦形剤のみからなる凍結乾燥製剤の調製において、アニーリング工程を設けて調製された凍結乾燥製剤がアニーリング工程なく調製された凍結乾燥製剤とは異なる再溶解性を示す場合のあることが知られている。しかし、これらの場合、再溶解性について一定の傾向はなく改善または悪化のいずれもが認められ、アニーリング工程が凍結乾燥製剤の再溶解性に与える影響は物質によって異なっている(非特許文献2、3参照)。
凍結乾燥製剤において、賦形剤は元来再溶解性の改善のための成分でもあり、アニーリング工程の影響が知られていた。しかしながら、賦形剤を含有しない凍結乾燥製剤の製造工程にアニーリング工程を設けることで、得られる凍結乾燥製剤の再溶解性にいかなる影響があるかについては明らかではなかった。
【特許文献1】国際公開第02/40478号パンフレット
【特許文献2】国際出願PCT/JP2006/310069号明細書
【非特許文献1】Hooper D.C.and Rubinstein E.(eds)3rd Edition Quinolone Antimicrobial Agents.2003.ASM Press Books
【非特許文献2】ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンシズ,第90巻,第7号,872−887頁,2001年
【非特許文献3】ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンシズ,第92巻,第4号,715−729頁,2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
化合物(I)等のキノロン系合成抗菌化合物を含有する凍結乾燥製剤は、原薬とpH調節剤のみを含有する製剤として提供されるのが望ましい。この様な凍結乾燥製剤を調製する際に通常実施される凍結乾燥方法を適用した場合、再溶解に長時間を要する難溶解性の凍結乾燥ケーキが形成されることのあることが判明した。すなわち、薬物溶液を得るために再溶解液を注入した際に凍結乾燥ケーキが直ぐには溶解せず、難溶性の塊状物質に変化するのである。このような難溶性の塊状物質であっても最終的には完全に溶解して薬物溶液が得られるのであるが、再溶解時間が過度に長くなる場合は使用利便性が著しく損なわれる。
したがって本願発明の目的は、キノロン系合成抗菌化合物とpH調節剤のみを含有し、かつ、再溶解性に優れる凍結乾燥製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が鋭意研究した結果、キノロン系合成抗菌化合物およびpH調節剤のみからなる凍結乾燥製剤を調製するにあたって、一連の凍結工程にアニーリング工程を設ける方法で調製された非晶質の凍結乾燥製剤であれば再溶解時間が大幅に短縮されることを見出した。
すなわち、キノロン系合成抗菌化合物およびpH調節剤を含有する凍結乾燥製剤調製用の水溶液を冷却して非晶質の凍結体を得た後に、温度を一旦昇温させて一定時間保持する緩和工程を設けた後、再度冷却した後に凍結乾燥して非晶質凍結乾燥製剤を得る製造方法である。このように凍結体を一旦昇温させるアニーリング工程を加えることで再溶解性に優れる非晶質凍結乾燥製剤が得られることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、次の式(1)
【0010】
【化2】
【0011】
[式中、R1は、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基が置換していてもよいアリール基、ハロゲン原子もしくは炭素数1から6のアルキル基が置換していてもよいヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキルアミノ基を表わし;
R2は、水素原子または炭素数1から6のアルキルチオ基を表わし;このR1とR2とは、母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよく、この環は硫黄原子を環の構成原子として含んでもよく、さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。
R3は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、チオール基、ハロゲノメチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わし;
A1は、窒素原子または式(2)
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、X2は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノメチル基、ハロゲノメトキシ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わし;このX2と上記のR1とは母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよく、このようにして形成された環は、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を環の構成原子として含んでもよく、さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。)
で表わされる部分構造を表わし;
A2およびA3は、各々異なって窒素原子または炭素原子を表わすが、A1、A2およびA3とこれらが結合している炭素原子とは、部分構造
【0014】
【化4】
【0015】
または、部分構造
【0016】
【化5】
【0017】
を形成する。
X1は、ハロゲン原子または水素原子を表わし;
Yは、水素原子、フェニル基、アセトキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、エトキシカルボニル基、コリン基、ジメチルアミノエチル基、5−インダニル基、フタリジル基、5−アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イルメチル基、3−アセトキシ−2−オキソブチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から7のアルコキシメチル基、または炭素数1から6のアルキレン基とフェニル基とから構成されるフェニルアルキル基を表わし;
Zは、単環式、二環式、または三環式の複素環式置換基を表わすが、この複素環式置換基は飽和または部分飽和であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1以上の異原子を含んでいてもよく、さらにビシクロ構造もしくはスピロ環状構造であってもよく、そしてハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群より選ばれる1または2以上の原子または基が置換していてもよい。]
で表わされる化合物およびpH調節剤を含有する水溶液を冷却して凍結体を得、次いで温度を一旦昇温させた後、再度冷却して凍結乾燥することを特徴とする、式(1)の化合物を有効成分とする非晶質凍結乾燥製剤の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0018】
アニーリング工程を設けてキノロン系合成抗菌化合物を含有する非晶質凍結乾燥製剤の調製を実施することによって、再溶解性に優れた凍結乾燥ケーキからなる非晶質の凍結乾燥製剤を取得でき、凍結乾燥製剤の使用利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
式(1)中、R1は、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基が置換していてもよいアリール基、ハロゲン原子もしくは炭素数1から6のアルキル基が置換していてもよいヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキルアミノ基を表わす。
【0020】
炭素数1から6のアルキル基としては、エチル基が特に好ましい。炭素数2から6のアルケニル基としては、ビニル基、または1−イソプロペニル基が特に好ましい。炭素数1から6のハロゲノアルキル基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を有する炭素数1から6のアルキル基を挙げることができるが、2−フルオロエチル基が特に好ましい。炭素数3から6の環状アルキル基としては、シクロプロピル基が特に好ましい。環状アルキル基が置換基を有するときには置換基としてハロゲン原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。このフルオロシクロプロピル基としては2−(S)−フルオロ−1−(R)−シクロプロピル基が特に好ましい。
【0021】
アリール基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1から3の原子または基を置換基として有していてもよいフェニル基を挙げることができ、フェニル基、2−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4,6−ジフルオロフェニル基および4,6−ジフルオロ−3−メチルアミノフェニル基が好ましい。
【0022】
ヘテロアリール基としては、ハロゲン原子または炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい、5員環または6員環の芳香族複素環化合物から導かれる芳香族複素環置換基を挙げることができる。ヘテロアリール基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる1以上の異原子を含み、例えば、ピリジル基、ピリミジル基等を挙げることができ、6−アミノ−3,5−ジフルオロ−2−ピリジル基が特に好ましい。
【0023】
炭素数1から6のアルコキシ基としては、メトキシ基が特に好ましい。炭素数1から6のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基が特に好ましい。
【0024】
置換基R1としては、環状アルキル基またはハロゲノシクロアルキル基が好ましい。環状アルキル基としてはシクロプロピル基が特に好ましく、ハロゲノシクロプロピル基としては2−ハロゲノシクロプロピル基が好ましく、2−フルオロシクロプロピル基が特に好ましい。
【0025】
式(1)中、R2は、水素原子または炭素数1から6のアルキルチオ基を表わす。炭素数1から6のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基が特に好ましい。
置換基R2としては、水素原子が好ましい。
【0026】
式(1)において、R1とR2とは母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよい。この環は硫黄原子を環の構成原子として含んでもよく、さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。このアルキル基としてはメチル基が好ましい。
【0027】
式(1)中、R3は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、チオール基、ハロゲノメチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わす。
【0028】
ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基または炭素数2から5のアシル基が置換していてもよいアミノ基としては、例えばホルミルアミノ基、アセチルアミノ基等を挙げることができ、アセチルアミノ基が特に好ましい。炭素数1から6のアルキル基としては、メチル基、エチル基を挙げることができるが、メチル基が特に好ましい。炭素数2から6のアルケニル基としては、ビニル基が特に好ましい。炭素数2から6のアルキニル基としては、エチニル基が特に好ましい。また、炭素数1から6のアルコキシ基としては、メトキシ基が特に好ましい。
置換基R3としては、水素原子が好ましい。
【0029】
式(1)中、A1は、窒素原子または式(2)
【0030】
【化6】
【0031】
で表わされる部分構造を表わす。
式(2)中、X2は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノメチル基、ハロゲノメトキシ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わす。
【0032】
ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基または炭素数2から5のアシル基が置換していてもよいアミノ基としては、アセチルアミノ基が特に好ましい。炭素数1から6のアルキル基としては、メチル基が特に好ましい。炭素数2から6のアルケニル基としては、ビニル基が特に好ましい。炭素数2から6のアルキニル基としては、エチニル基が特に好ましい。また、炭素数1から6のアルコキシ基としては、メトキシ基が特に好ましい。
【0033】
このX2と上記のR1とは母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよく、このようにして形成された環は、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を環の構成原子として含んでもよい。さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。
このようにして形成された環構造として好ましくはオフロキサシン等の骨格であるピリドベンゾオキサジン骨格を挙げることができる。さらにこの骨格のアルキル置換基としてはメチル基が好ましく、特に(3S)−メチル基が好ましい。
【0034】
置換基A1しては、式(2)で表される部分構造であることが好ましく、また置換基 X2としては、メチル基、メトキシ基、ジフルオロメトキシ基が好ましい。
【0035】
式(1)中、A2およびA3は、各々異なって窒素原子または炭素原子を表わす。ここで、A1、A2およびA3とこれらが結合している炭素原子とは、次の部分構造
【0036】
【化7】
【0037】
または、部分構造
【0038】
【化8】
【0039】
を形成する。
すなわち、次の構造
【化9】
を有するものである。
これらの部分構造のうちでは
【0040】
【化10】
【0041】
で示される部分構造が好ましく、したがって次の構造
【化11】
のものが好ましい。
さらに、A1としては前述の式(2)で示される構造が好ましく、したがって次の構造
【化12】
のものが好ましい。
【0042】
式(1)中、X1は、ハロゲン原子または水素原子を表わすが、ハロゲン原子の場合はフッ素原子が好ましい。
置換基X1としては、フッ素原子または水素原子が好ましい。
【0043】
式(1)中、Yは、水素原子、フェニル基、アセトキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、エトキシカルボニル基、コリン基、ジメチルアミノエチル基、5−インダニル基、フタリジル基、5−アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イルメチル基、3−アセトキシ−2−オキソブチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から7のアルコキシメチル基、または炭素数1から6のアルキレン基とフェニル基とから構成されるフェニルアルキル基を表わす。
置換基Y1としては、水素原子が好ましい。
【0044】
また、式(1)中、Zは、単環式、二環式、または三環式の複素環式置換基を表わす。この複素環式置換基は、飽和または部分飽和であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1以上の異原子を含んでいてもよい。さらにビシクロ構造もしくはスピロ環状構造であってもよい。この複素環式置換基は置換基を有していてもよく、例えばハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のアルキルチオ基または炭素数1から6のアミノアルキル基が置換していてもよい。複素環式置換基に置換し得る原子または基は1個であっても2個以上であってもよい。
【0045】
上記複素環式置換基に置換し得る炭素数1から6のアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよく、複素環式置換基に置換し得るアルキル基、該アルキル基に置換し得るハロゲノアルキル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基およびアミノアルキル基のアルキル基部分は、環状構造を有していてもよく、さらに、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
【0046】
また、上記のアミノ基、アルキルアミノ基およびアミノアルキル基のアミノ基部分は、炭素数1から6のアルキル基(このアルキル基は、環状構造を有していてもよく、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。)の1個または2個を置換基として有していてもよく、2個のときは同一でも異なっていてもよい。さらに、このアミノ基部分は、通常用いられる保護基によって保護されていてもよい。
【0047】
上記複素環式置換基に置換し得る炭素数1から6のハロゲノアルキル基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアミノアルキル基のアルキル基部分は、環状構造を有していてもよく、さらにハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、アリール基およびヘテロアリール基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
【0048】
上記複素環式置換基に置換し得るアミノ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基および炭素数1から6のアミノアルキル基のアミノ基部分は、さらに炭素数1から6のアルキル基の1個または2個を置換基として有していてもよく、あるいは保護基によって保護されていてもよい。アミノ基上のアルキル基が2個の場合、同一でも異なっていてもよい。
ここで、炭素数1から6のアルキル基としては、環状構造を有していてもよく、またハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
アミノ基の保護基としてはこの分野で汎用されるものであれば特に限定されないが、例えば、第三級ブトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基類;ベンジルオキシカルボニル基、パラメトキシベンジルオキシカルボニル基、パラニトロベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基類;アセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、ベンゾイル基等のアシル基類;第三級ブチル基、ベンジル基、パラニトロベンジル基、パラメトキシベンジル基、トリフェニルメチル基等のアルキル基類、またはアラルキル基類;メトキシメチル基、第三級ブトキシメチル基、テトヒドロピラニル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基等のエーテル類;トリメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、第三級ブチルジメチルシリル基、トリベンジルシリル基、第三級ブチルジフェニルシリル基等の(アルキルおよび/またはアラルキル)置換シリル基を挙げることができる。
【0049】
上記複素環式置換基に置換し得るアリール基は、炭素数が6から10であり、また、ヘテロアリール基は、5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を1〜4個含んでいてもよい。
【0050】
上記複素環式置換基に置換し得るアリール基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、フェニル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、炭素数2から5のアシル基およびヘテロアリール基(5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を1〜4個含む。)からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
ここで、アリール基およびヘテロアリール基に置換し得るフェニル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、炭素数2から5のアシル基およびヘテロアリール基は、さらにハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。また、アリール基およびヘテロアリール基に置換し得るアミノ基は、さらにホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群より選ばれる1または2の基を置換基として有していてもよい。
【0051】
置換基Zは、環を構成するいずれの原子を介してキノロン母格と結合してもよいが、窒素原子で結合することがより好ましい。このような窒素原子で結合する複素環式置換基として次の式(3)〜(7)で表わされる構造の置換基を挙げることができる。
式(3)
【0052】
【化13】
【0053】
(式中、R4、R5、R5’、R6、R6’、R7およびR8は、前記Zで表される複素環式置換基の置換基を表わす。より具体的には、
R4、R5およびR6は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わすが、
このアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群の基から選ばれる1以上の基を置換基として有していてもよく、
上記のアルキル基、該アルキルに置換し得るアルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲノアルキル基およびアミノアルキル基のアルキル基部分は、環状構造を有していてもよく、さらにハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、アルコキシ基からなる群のより選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよい。
また、アルキルに置換し得るアミノ基、アミノアルキル基およびアルキルアミノ基のアミノ基部分は、炭素数1から6のアルキル基(このアルキル基は、環状構造を有していてもよく、また、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよい。)の1個または2個を置換基として有していてもよく(2個のときは同一でも異なっていてもよい。)、さらにこのアミノ基部分は通常用いられる保護基によって保護されていてもよい。
R5’およびR6’は、各々独立して、水素原子、アリール基、またはヘテロアリール基を表わすが、
このアリール基は炭素数が6から10であり、また、ヘテロアリール基は、5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含んでいてよく、
上記のアリール基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、フェニル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、炭素数2から5のアシル基およびヘテロアリール基(5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含む。)からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、
このうちのアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、フェニル基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。
R7およびR8は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わす。
上記のR5、R5’、R6およびR6’から選ばれる任意の2個は、環状構造を形成するように一体化してもよく、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子から任意に選ばれる1以上のヘテロ原子をその環の構成原子として含んでもよい。
この様にして形成される環は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにこのアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。)
または、下記の式(4)
【0054】
【化14】
【0055】
(式中、R7、R7’、R8、R8’、R9、R10、R10’、R11およびR11’は、前記Zで表される複素環式置換基上の置換基を表わす。より具体的には、
R11およびR11’は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わすが、
このアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
R9、R10およびR10’は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、水酸基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、または炭素数1から6のアミノアルキル基を表わすが、
このアルキル基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アミノアルキル基およびアルキルアミノ基のアルキル基部分は、環状構造を有していてもよく、
さらにハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
また、上記のアミノ基、アルキルアミノ基およびアミノアルキル基のアミノ基部分は、炭素数1から6のアルキル基(このアルキル基は、環状構造を有していてもよく、また、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよい。)の1個または2個を置換基として有していてもよく(2個のときは同一でも異なっていてもよい。)、さらにこのアミノ基部分は通常用いられる保護基によって保護されていてもよい。
さらに上記のアリール基は炭素数が6から10であり、また、ヘテロアリール基は、5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含んでいてよく、
上記のアリール基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、フェニル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、炭素数2から5のアシル基およびヘテロアリール基(5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含む。)からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、
このうちのアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、フェニル基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。
R7、R7’、R8およびR8’は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わす。
上記の、R7、R7’、R8、R8’、R9、R10およびR10’から選ばれる任意の2個は、環状構造を形成するように一体化してもよく、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子から任意に選ばれる1以上のヘテロ原子をその環の構成原子として含んでもよい。
この様にして形成される環は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにこのアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。)
または、下記の式(5)
【0056】
【化15】
【0057】
(式中、R7、R7’、R8、R8’、R9、R10、R10’、R11、R11’、R12およびR12’は、前記Zで表される複素環式置換基上の置換基を表わす。より具体的には、
R11およびR11’は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わすが、
このアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
R9、R10およびR10’は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、または炭素数1から6のアミノアルキル基を表わすが、
上記のアルキル基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アミノアルキル基および炭素数アルキルアミノ基のアルキル基部分は、環状構造を有していてもよく、さらにハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
また、上記のアミノ基、アルキルアミノ基およびアミノアルキル基のアミノ基部分は、炭素数1から6のアルキル基(このアルキル基は、環状構造を有していてもよく、また、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよい。)の1個または2個を置換基として有していてもよく(2個のときは同一でも異なっていてもよい。)、さらにこのアミノ基部分は通常用いられる保護基によって保護されていてもよい。
R12およびR12’は、各々独立して、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表わすが、
このアリール基は炭素数が6から10であり、また、ヘテロアリール基は、5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含んでいてよく、
上記のアリール基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、フェニル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、炭素数2から5のアシル基およびヘテロアリール基(5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含む。)からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、
このうちのアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、フェニル基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。
R7、R7’、R8およびR8’は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わす。
上記の、R7、R7’、R8、R8’、R9、R10、R10’、R12およびR12’から選ばれる任意の2個は、環状構造を形成するように一体化してもよく、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子から任意に選ばれる1以上のヘテロ原子をその環の構成原子として含んでもよい。
この様にして形成される環は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにこのアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。)
または、下記の式(6)
【0058】
【化16】
【0059】
(式中、R13、R13’、R14、R14’、R15、R16およびR16’は、前記Zで表される複素環式置換基上の置換基を表わす。より具体的には、
R13およびR13’は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わすが、
このアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
R14、R14’、R15、R16およびR16’は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、または炭素数1から6のアミノアルキル基を表わすが、
上記のアルキル基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アミノアルキル基およびアルキルアミノ基のアルキル基部分は、環状構造を有していてもよく、さらにハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
また、上記のアミノ基、アミノアルキル基およびアルキルアミノ基のアミノ基部分は、炭素数1から6のアルキル基(このアルキル基は、環状構造を有していてもよく、また、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよい。)の1個または2個を置換基として有していてもよく(2個のときは同一でも異なっていてもよい。)、さらにこのアミノ基部分は通常用いられる保護基によって保護されていてもよい。
上記のアリール基は炭素数が6から10であり、また、ヘテロアリール基は、5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含んでいてよく、
上記のアリール基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、フェニル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、炭素数2から5のアシル基およびヘテロアリール基(5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含む。)からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、
このうちのアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、フェニル基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。
上記のR14、R14’、R15、R16およびR16’から選ばれる任意の2個は、環状構造を形成するように一体化してもよく、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子から任意に選ばれる1以上のヘテロ原子をその環の構成原子として含んでもよい。
この様にして形成される環は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにこのアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。)
または、下記の式(7)
【0060】
【化17】
【0061】
(式中、R13、R13’、R14、R14’、R15、R16、R16’、R17およびR17’は、前記Zで表される複素環式置換基上の置換基を表わす。より具体的には、
R13およびR13’は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わすが、
このアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群の基から選ばれる1以上の基を置換基として有していてもよい。
式中、R14、R14’、R15、R16およびR16’は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、水酸基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、または炭素数1から6のアミノアルキル基を表わすが、
上記のアルキル基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アミノアルキル基およびアルキルアミノ基のアルキル基部分は、環状構造を有していてもよく、さらにハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
また、上記のアミノ基、アミノアルキル基およびアルキルアミノ基のアミノ基部分は、炭素数1から6のアルキル基(このアルキル基は、環状構造を有していてもよく、また、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよい。)の1個または2個を置換基として有していてもよく(2個のときは同一でも異なっていてもよい。)、さらにこのアミノ基部分は通常用いられる保護基によって保護されていてもよい。
R17およびR17’は、各々独立して、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表わすが、このアリール基は炭素数が6から10であり、ヘテロアリール基は、5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含んでいてよく、
上記のアリール基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、フェニル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、炭素数2から5のアシル基およびヘテロアリール基(5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含む。)からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、
このうちのアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、フェニル基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。
上記の、R14、R14’、R15、R16、R16’、R17およびR17’から選ばれる任意の2個は、環状構造を形成するように一体化してもよく、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子から任意に選ばれる1以上のヘテロ原子をその環の構成原子として含んでもよい。
この様にして形成される環は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにこのアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。)
【0062】
これらの置換基において好ましいものは、式(3)、(4)、および(5)で示されるものである。特に、式(4)および(5)の構造の置換基が好ましい。また、キノロン母核がピリドベンゾオキサジン骨格であるときには式(3)の置換基が好ましい。
【0063】
置換基Zをより具体的に構造式で示すと、以下の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの置換基において不斉炭素を有していて光学活性となる場合、光学活性置換基が当然にZに含まれる。
【0064】
【化18】
【0065】
式(1)で示されるキノロン系合成抗菌化合物の具体例としては、レボフロキサシン、オフロキサシン、シタフロキサシン、(7−[3−(R)−(1−アミノシクロプロピル)ピロリジン−1−イル]−1−[2−(S)−フルオロ−1−(R)−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸(化合物(I))、(+)−7−[(7S)−7−アミノ−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−5−イル]−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロ−1−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソ−3−キノリンカルボン酸1/2水和物(化合物(II))、シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、トロバフロキサシン等を挙げることができる。これらのうち、好ましくはシタフロキサシン、(7−[3−(R)−(1−アミノシクロプロピル)ピロリジン−1−イル]−1−[2−(S)−フルオロ−1−(R)−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸(化合物(I))、(+)−7−[(7S)−7−アミノ−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−5−イル]−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロ−1−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソ−3−キノリンカルボン酸1/2水和物(化合物(II))である。
なお、キノロン化合物から本発明の凍結乾燥製剤を調製する場合、キノロン化合物は遊離体であっても、水和物や塩等の付加物であってもいずれの形態も使用することができる。
【0066】
本発明に係るキノロン系合成抗菌化合物(1)がジアステレオマーの存在する構造である場合、本発明化合物をヒトや動物に投与する際は単一のジアステレオマーからなるものを投与することが好ましい。この、『単一のジアステレオマーからなる』とは、他のジアステレオマーを全く含有しない場合だけでなく、化学的に純粋程度の場合を含むと解される。つまり、物理定数や、生理活性に対して影響がない程度であれば他のジアステレオマーが含まれてもよいと解釈されるのである。また対掌体の存在する場合も同様に考えればよい。
【0067】
本発明の凍結乾燥製剤の製造方法について以下に延べる。
本発明において凍結乾燥製剤は、上記式(1)で表される構造を有するキノロン系合成抗菌化合物およびpH調節剤のみを含有する凍結乾燥製剤調製用水溶液(原液)から調製される。なお、本発明において実施されるアニーリング工程以外の凍結乾燥工程自体は、通常この分野で実施される凍結乾燥方法に従って実施すればよい。
【0068】
本発明で使用されるpH調節剤としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸類;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の無機酸塩類;酢酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、サリチル酸、安息香酸、メタンスルホン酸、チオグリコール酸等の有機酸類;乳酸エチル等の有機酸エステル化合物;クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、チオグリコール酸ナトリウム等の有機酸塩類;水酸化ナトリウム等の無機塩類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、トロメタモール等の有機アミン化合物類等を挙げることができる。水溶液のpHは、化合物(1)の溶解性の点から、7以下であればよく、好ましくは6.5以下であり、特に2.5〜6.0の範囲に設定するのが好ましい。
【0069】
凍結乾燥製剤を調製するための水溶液中の化合物(1)の濃度は、凍結乾燥ケーキ形成性の点から10mg/mL以上、更に15mg/mL以上、特に20mg/mL以上が好ましい。
凍結乾燥製剤調製用水溶液は、例えば化合物(I)の場合、表1に示される処方のものを好適に使用することができる。
【0070】
【表1】
【0071】
凍結乾燥製剤を調製するためには先ず凍結工程によってこの原液を冷却して非晶質の凍結体を得ることが第一段階である。この凍結工程の到達温度は、化合物(1)含有水溶液の凍結体におけるいわゆるガラス転移温度以下に設定すればよく、例えば表1の組成を有する薬物水溶液の場合はその凍結体のガラス転移温度がおよそ−15℃付近にあるので、通常この分野で実施されるように−40℃までに設定すればよい。
本発明の場合、−20℃から−40℃の範囲で設定すればよく、−30℃の設定で得た凍結体に対して一連の工程を実施することで目的の非晶質凍結乾燥製剤を取得することができる。
【0072】
次いでこの凍結工程の冷却温度を緩和・昇温させて、一定時間保持する工程(アニーリング工程)を設けることが本発明における非晶質凍結乾燥製剤の調製方法の特徴である(図1の温度プロファイル参照。なお、この温度プロファイルは、凍結乾燥に使用する機器の設定温度であり、機器内に収められた個々の容器(バイアル等)の温度を必ずしも示すものではない。例えば、凍結工程および二次乾燥工程においては、機器内の容器はこの温度に到達していると考えられる。しかしながら一次乾燥工程では機器内の容器の温度は水分の昇華に伴い温度低下を来たし、設定温度以下となっていると考えられる。)。
アニーリング工程の温度設定は、凍結工程で得られた化合物(1)含有水溶液の非晶質凍結体のガラス転移温度を目安とすればよい。すなわち、凍結体をそのガラス転移温度以上に昇温させて一定時間保持すればよい。凍結体のガラス転移温度は、例えば凍結体のDSC測定によって求めることができ、このDSC測定は通常実施される方法にしたがって実施すればよい。凍結体のガラス転移温度はその原液の成分組成等によって変化するので各々の場合においてDSC測定を実施してガラス転移温度を決定すればよい。
【0073】
例えば、上記表1に示した組成の化合物(I)とpH調節剤を含有する凍結体のDSCの測定結果によれば、ガラス転移点のピークはおよそ−14.0℃から立ち上がることが判明した(図5)。したがって、この温度以上の温度で、かつ、非晶質凍結体が解凍しない範囲の温度に保持することで非晶質凍結乾燥製剤における凍結乾燥ケーキの再溶解性改善効果が付与できるのである。なお、DSCの測定結果によればそのピーク自体の立ち上がりはおよそ−17℃であり、この温度以上であればアニーリングの効果が期待できる。
【0074】
アニーリング工程の温度の上限値は、アニーリング工程においては非晶質凍結体が解凍しないことが必須であるので、凍結体が凍結を維持できる上限温度である。通常の場合、薬物水溶液はほぼ0℃まで凍結状態を維持すると考えてよい。アニーリングの効果はアニーリングの工程での温度がより高く設定されるほど効率的に達成されるが、設定温度が高すぎる場合には凍結体が解凍するので注意が必要である。
本発明方法においてアニーリング工程の温度としては−20℃から−2℃の範囲であればよく、より好ましくは、−15℃から−5℃の範囲である。
【0075】
アニーリング工程の保持時間、つまり非晶質凍結体を昇温状態に保持しておく時間は、凍結体全体が設定温度となるに足る時間またはそれ以上であればよい。本工程に要する時間は、アニーリングを実施する温度によって異なる(この他に製造しようとする凍結乾燥体の数量によっても変化することは言うまでもない。)。アニーリング温度がガラス転位温度に近いほど(より低温であるほど)長時間を要し、ガラス転位温度よりもより高温であるほどアニーリング工程に要する時間は短縮される。
本発明の方法においては凍結体をアニーリング工程の昇温温度に保持させる時間は約15分〜48時間程度であれば通常は十分であり、より好ましくは30分〜12時間程度である。
【0076】
本発明の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法において、冷却や昇温に際しての温度を下降させるまたは上昇させる速度は特に制限はなく、使用する機器の能力や製造工程の管理時間等の要因に基づいて設定しても凍結乾燥製剤に特段の影響はないことが明らかとなっている。
【0077】
アニーリング工程の後、非晶質凍結体を再度冷却して減圧処理を行なって非晶質凍結乾燥製剤の調製工程(一次乾燥工程)に進むが、これは通常実施される凍結乾燥の方法に従って実施すればよい。すなわち、再冷却の設定温度に到達した時点で減圧処理を開始して凍結乾燥を実施する。この再冷却での到達温度がガラス転移温度以下であればよいのはアニーリング工程前の冷却工程と同様であるが、通常の凍結乾燥製剤の調製時に設定される−40℃を目安とすればよい。また、この工程での減圧処理の到達減圧度は、6〜27Paの範囲であればよく、好ましくは13〜20Paの範囲である。
【0078】
一次乾燥工程は、減圧下にガラス転移点以下の温度条件で実施する。この温度は、凍結乾燥用の機器内に収められた小分け容器(バイアル等)の到達温度であるが、凍結体からの水分の昇華に伴って温度低下が起きるため、機器の実際の設定温度はガラス転位温度以上でよい。本発明の場合、機器の設定温度としてはおよそ25℃〜−15℃の範囲であればよい。
【0079】
一次乾燥工程に要する時間は、昇華させる水分の量によっても異なるが、およそ16時間〜80時間の範囲であればよく、より好ましくは16時間〜50時間である。なお、昇華する水分が減少するに伴って温度低下が緩和になり、この結果として品温が上昇し始めるがそのときが一次乾燥工程の終末点といってよい。
【0080】
一次乾燥工程の後二次乾燥工程を実施する。すなわち、一次乾燥工程で設定した機器の温度から昇温して二次乾燥工程としての設定温度に到達させた後一定時間保持する工程である。二次乾燥工程の温度は室温以上であればよく、およそ25℃〜45℃の範囲に設定すればよいが、好ましくは25℃〜30℃の範囲である。二次乾燥工程に要する時間は、およそ2時間〜20時間の範囲であればよく、より好ましくは3時間〜15時間の範囲である。二次乾燥工程でも継続して減圧状態を保持するが、二次乾燥工程では水分の脱離を促進させるために減圧度を高めるのがよい。減圧度は、0.5Pa〜10Paの範囲であればよいが、より好ましくは1Pa〜5Paの範囲である。
なお、本発明の非晶質凍結乾燥製剤の製造にあたって滅菌処理等は通常行なわれる手順に従って実施すればよい。
【実施例】
【0081】
以下に実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらは如何なる場合においても限定的に解釈してはならない。
【0082】
実施例1
[原薬およびpH調節剤処方凍結乾燥製剤]
注射用水(25L)に1mol/L塩酸(1400mL)を加えた。この水溶液に化合物(I)(600g)を溶解し、更に1mol/L塩酸を加えてpHを3.4に調整した。この溶液に注射用水を加え、化合物(I)の含量を20mg/mLに調整して凍結乾燥製剤調製用原液とした。この溶液を小分け容器に10mLずつ充填し、下記の工程にしたがって凍結乾燥した後、密栓した。
【0083】
[凍結乾燥工程]
1)化合物(I)溶液を充填した容器を、5℃に設定した凍結乾燥機の棚に積載し、
2)棚温度を、0.15℃/分の冷却速度で−30℃に冷却し、6時間保持した。
3)棚温度を、0.5℃/分の昇温速度で−10℃に昇温し、6時間保持した。
4)棚温度を、1.0℃/分の冷却速度で−40℃に冷却した。
5)棚温度−40℃で3時間以上保持した後、
6)減圧処理を開始し、棚温度を−5℃に設定して30時間以上保持した。この間,減圧度は20Paに保持した。
7)品温が−5℃以上になった後、棚温度を25℃に設定して6時間以上保持した。この間、減圧度は1Paに保持した。
【0084】
化合物(I)(結晶)とその凍結乾燥製剤(アニーリング工程あり)、及びアニーリング工程を設けずに得た凍結乾燥製剤の粉末X線回析測定の結果を図9に示す。図9から明らかなように、凍結乾燥製剤は明白な回析ピ−クを示さず、非晶質であることが確認された。
【0085】
また、上記と同様の条件にて薬液を調製後、容器に充填して表2に示す条件で凍結し、同様の手順で凍結乾燥した後、再溶解時間を測定した。その結果は図4に示した。また、再溶解液を注入しておよそ30秒後の状態を図2(アニーリング工程なし)および図3(アニーリング工程あり)に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
アニーリング工程の温度、保持時間等を表3の内容で変化させて凍結乾燥を実施した。得られた凍結乾燥製剤の再溶解に要する時間を図7に示す。なお、再溶解時間測定手順としては、凍結乾燥後の1バイアルに充填液量と同量の注射用水を加えて穏やかに振り混ぜ、内容物が完全に溶解するまでの時間を測定した。
【0088】
【表3】
【0089】
実施例2
レボフロキサシン、オフロキサシン、シタフロキサシンおよび化合物(II)の4種類のキノロン系合成抗菌化合物について凍結乾燥製剤を調製し、アニーリング工程による再溶解性改善の効果を確認した。
その結果、いずれのキノロン系合成抗菌化合物の凍結乾燥製剤についてもアニーリング工程を加えて調製した凍結乾燥製剤において再溶解時間が短縮することを確認した(図8)。
【0090】
また、化合物(II)とその凍結乾燥製剤、シタフロキサシンとその凍結乾燥製剤の粉末X線回析測定の結果を図10及び図11に示す。図10及び11から明らかなように、何れの凍結乾燥製剤も明白な回析ピ−クを示さず、本発明の凍結乾燥製剤は非晶質であることが確認された。
【0091】
各キノロン系合成抗菌化合物の構造は以下の通りである。
1)レボフロキサシン[(−)−(S)−9−fluoro−2,3−dihydro−3−methyl−10−(4−methyl−1−piperazinyl)−7−oxo−7H−pyrido[1,2,3−de][1,4]benzoxazine−6−carboxylic acid hemihydrate]
【0092】
【化19】
【0093】
2)オフロキサシン[(±)−9−fluoro−2,3−dihydro−3−methyl−10−(4−methyl−1−piperazinyl)−7−oxo−7H−pyrido[1,2,3−de][1,4]benzoxazine−6−carboxylic acid]
【0094】
【化20】
【0095】
3)シタフロキサシン[(−)−7−[(7S)−7−Amino−5−azaspiro[2.4]heptan−5−yl]−8−chloro−6−fluoro−1−[(1R,2S)−2−fluoro−1−cyclopropyl]−1, 4−dihydro−4−oxo−3−quinolinecarboxylic acid sesquihydrate]
【0096】
【化21】
【0097】
4)化合物(II)[(+)−7−[(7S)−7−Amino−7−methyl−5−azaspiro[2.4]heptan−5−yl]−6−fluoro−1−[(1R,2S)−2−fluoro−1−cyclopropyl]−1,4−dihydro−8−methoxy−4−oxo−3−quinolinecarboxylic acid hemihydrate]
【0098】
【化22】
【0099】
なお、上記化合物(II)は、以下の方法により製造することができる。
(1)アセト酢酸 tert−ブチルエステル(497mL,3.00mol)、1,2−ジブロモエタン(310mL,3.60mmol)、炭酸カリウム(1.106kg,8.00mmol)、およびジメチルホルムアミド(2.0L)の混合物を30℃の水浴で1.5時間、60℃の水浴で3.5時間、続いて30℃の水浴で4日間加熱攪拌した。反応液をセライト濾過し、濾取物をジエチルエーテル(3.5L)で洗浄した。濾液とジエチルエーテル洗浄液をあわせて水(2L)に加え、有機層を分離した。水層からジエチルエーテル(2L)で抽出し、得られた水層に水(1L)を加えた後に、さらにジエチルエーテル(2L)で抽出した。有機層をすべて合わせた後に、10%クエン酸水溶液(2L)、水(2L×3)、および飽和食塩水(2L×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。乾燥剤を濾去後、溶媒を減圧溜去し、得られた残留物を減圧蒸留して1−アセチル−1−シクロプロパンカルボン酸tert−ブチルエステル371.8g(10mmHg,72−78℃の溜分,2.02mol,67%)を無色透明オイルとして得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:1.37−1.40(4H,m),1.49(9H,s),2.44(3H,s).
【0100】
(2)1−アセチル−1−シクロプロパンカルボン酸tert−ブチルエステル(9.21g,50.0mmol)を7規定アンモニア/メタノール溶液(300mL)へ溶解し、氷冷下、濃アンモニア水(90mL)、塩化アンモニウム(53.5g,1.00mol)、およびシアン化ナトリウム(4.90g,100.0mmol)を加え、その後室温で18時間攪拌した。溶媒を減圧濃縮し、残留液へ水(100mL)を加えた後、ジクロロメタン(300mL+2×100mL)で抽出した。合わせた有機層へ無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、乾燥剤を濾去後、溶媒を減圧溜去することによって1−(1−アミノ−1−シアノエチル)−1−シクロプロパンカルボン酸tert−ブチルエステル粗生成物10.15g(48.3mmol,97%)を薄褐色オイルとして得た。得られた粗生成物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:1.02−1.12(2H,m),1.19−1.17(2H,m),1.48(9H,s),1.50(3H,s),2.13(2H,brs).
MS(ESI)m/z:155(M−tBu)+.
【0101】
(3)1−(1−アミノ−1−シアノエチル)−1−シクロプロパンカルボン酸tert−ブチルエステル(1.12g,5.30mmol)のエタノール溶液(50mL)にラネーニッケル触媒(日興理化,R−100,10mL)のエタノール懸濁液(30mL)を加え、水素ガス雰囲気下において室温で6時間激しく攪拌した。触媒をセライト濾過によって濾去し、溶媒を減圧溜去することによって、1−(1,2−ジアミノ−1−メチルエチル)−1−シクロプロパンカルボン酸tert−ブチルエステル粗生成物0.84g(3.92mmol,74%)を無色透明オイルとして得た。得られた粗生成物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。
MS(ESI)m/z:215(M+H)+.
【0102】
(4)1−(1,2−ジアミノ−1−メチルエチル)−1−シクロプロパンカルボン酸tert−ブチルエステル粗生成物0.82g(3.83mmol)を室温で濃塩酸(5mL)に溶解し、同温度で30分間攪拌した。反応液へ水を加えた後に溶媒を減圧溜去し、続いてエタノールで共沸した(2回)。1−(1,2−ジアミノ−1−メチルエチル)−1−シクロプロパンカルボン酸二塩酸塩粗生成物0.82g(3.55mmol,93%)を薄黄色泡状固体として得た。得られた粗生成物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。
1H−NMR(400MHz,CD3OD)δppm:1.20−1.26(1H,m),1.28(3H,s),1.32−1.43(2H,m),1.58−1.62(1H,m),3.46(1H,d,J=13.4Hz),3.80(1H,d,J=13.4Hz).
MS(ESI)m/z:159(M+H)+.
【0103】
(5)1−(1,2−ジアミノ−1−メチルエチル)−1−シクロプロパンカルボン酸二塩酸塩粗生成物(800mg,3.46mmol)のアセトニトリル溶液(70mL)に、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(7.38mL,34.6mmol)を加え、窒素置換下、100℃のオイルバスで4時間加熱還流した。室温まで冷却し、メタノール(70mL)を加えた後に溶媒を減圧溜去することによって、7−アミノ−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン粗生成物を薄褐色ガム状固体として得た。
MS(ESI)m/z:141(M+H)+.
【0104】
上記で得られた7−アミノ−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン粗生成物へ室温で1,4−ジオキサン(20mL)、およびジ−tert−ブチルジカーボネート(1.528g,7.00mmol)を加え、混合物を同温度で5時間攪拌した。反応液へ水(50mL)を加え、クロロホルム(100mL+50mL)で抽出した後、合わせた有機層へ無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、乾燥剤をショートシリカゲルカラムを用いて濾去後、溶媒を減圧溜去した。得られた残留物にジエチルエーテルを加えて懸濁させ濾取することによって、7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン502mg(2.09mmol,2ステップ,60%)を白色粉末として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.77−0.82(1H,m),0.94−1.04(2H,m),1.16−1.23(1H,m),1.28(3H,s),1.43(9H,s),3.29(1H,d,J=10.3Hz),4.12(1H,m),4.60(1H,brs),5.82(1H,brs).
MS(ESI)m/z:185(M−tBu)+.
【0105】
(6)7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン(3.12g,12.97mmol)のジメチルホルムアミド溶液(65mL)に、氷冷下、水素化ナトリウム(55%、ミネラルオイルディスパージョン、538mg,12.33mmol)を5分かけて加えた。同温度で40分間攪拌した後、臭化ベンジル(1.851mL,15.56mmol)を加え、室温で1.5時間攪拌した。反応液へ酢酸エチル(300mL)を加えて希釈し、水(100mL×2)、および飽和食塩水(100mL)で洗浄した。無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、乾燥剤を濾去後、溶媒を減圧溜去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(へキサン−酢酸エチル=9:1→4:1→2:1)で精製することによって、5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン4.20g(12.71mmol,98%)を無色透明ガム状固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.76−0.81(1H,m),0.93−1.06(2H,m),1.21−1.29(4H,m),1.37(9H,m),3.14(1H,d,J=10.3Hz),3.92−3.98(1H,m),4.44(1H,d,J=15.1Hz),4.56(1H,d,J=14.6Hz),4.56(1H,brs),7.22−7.33(5H,m).
MS(ESI)m/z:331(M+H)+.
【0106】
(7)上記(6)で得られたラセミ体の5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン(2.254g,6.82mmol)を光学活性カラム(CHIRALPAK AD,20mmφ×250mm,へキサン−イソプロピルアルコール=90:10,流速=20mL/分,1回あたり50mgを分割)で光学分割し、(−)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン(997mg,3.02mmol,保持時間=7.0分,[α]D25.1=−113.9゜(c=0.180,クロロホルム))、および(+)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン(957mg,2.90mmol,保持時間=11.3分,[α]D25.1=+108.8゜(c=0.249,クロロホルム))を得た。
【0107】
(8)(−)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン(950mg,2.88mmol)のジクロロメタン溶液(15mL)に、室温で、トリフルオロ酢酸(7.5mL)を加え、同温度で40分間攪拌した。溶媒を減圧溜去し、トルエンで共沸した(2回)後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)を加え、クロロホルム(100mL+2×50mL)で抽出した。合わせた有機層へ無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、乾燥剤を濾去後、溶媒を減圧溜去した。得られた残留物をテトラヒドロフラン(30mL)に溶解し、氷冷攪拌下、水素化リチウムアルミニウム(218mg,5.74mmol)を加え、同温度で1時間攪拌した。さらに水素化リチウムアルミニウム(109mg,2.87mmol)を加え、室温で2.5時間攪拌した後、再び氷冷し、水(0.31mL)、15%水酸化ナトリウム水溶液(0.31mL)、および水(0.93mL)を順に注意深く加えた。得られた混合物を室温で1晩攪拌した後、硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、セライト濾過した。濾液を減圧濃縮することによって、7−アミノ−5−ベンジル−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物を無色透明オイルとして得た。得られた粗生成物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.37−0.45(2H,m),0.56−0.66(2H,m),0.96(3H,s),2.48(1H,d,J=9.0Hz),2.55(1H,d,J=8.8Hz),2.74(2H,d,J=9.0Hz),3.59(2H,s),7.21−7.37(5H,m).
MS(ESI)m/z:217(M+H)+.
【0108】
上記で得られた7−アミノ−5−ベンジル−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物をジクロロメタン(15mL)に溶解し、ジ−tert−ブチルジカーボネート(1.255g,5.75mmol)を加え、室温で22時間攪拌した。溶媒を減圧溜去した後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール−トリエチルアミン=98:2:1 → 95:5:1)で精製することによって、(−)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン586mg(1.852mmol,3ステップ,64%)を無色透明ガム状固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.40−0.45(1H,m),0.50−0.55(1H,m),0.63−0.69(1H,m),0.80−0.85(1H,m),1.20(3H,s),1.43(9H,s),2.44(1H,d,J=8.8Hz),2.59(1H,d,J=9.5Hz),2.83(1H,d,J=8.8Hz),3.33(1H,m),3.57(1H,d,J=13.2Hz),3.68(1H,d,J=13.2Hz),4.75(1H,brs),7.20−7.37(5H,m).
MS(ESI)m/z:317(M+H)+.
[α]D25.1=−63.6゜(c=0.129,クロロホルム)
【0109】
(9)(+)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン(950mg,2.88mmol)を用い、上記(8)と同様の方法によって、7−アミノ−5−ベンジル−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物を無色透明オイルとして得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.37−0.45(2H,m),0.56−0.66(2H,m),0.96(3H,s),2.48(1H,d,J=9.0Hz),2.55(1H,d,J=8.8Hz),2.74(2H,d,J=9.0Hz),3.59(2H,s),7.21−7.37(5H,m).
MS(ESI)m/z:217(M+H)+.
【0110】
さらに、上記で得られた7−アミノ−5−ベンジル−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物から、上記(8)と同様の方法によって、(+)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン629mg(1.985mmol,3ステップ,69%)を無色透明ガム状固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.40−0.45(1H,m),0.50−0.55(1H,m),0.63−0.69(1H,m),0.80−0.85(1H,m),1.20(3H,s),1.43(9H,s),2.44(1H,d,J=8.8Hz),2.59(1H,d,J=9.5Hz),2.83(1H,d,J=8.8Hz),3.33(1H,m),3.57(1H,d,J=13.2Hz),3.68(1H,d,J=13.2Hz),4.75(1H,brs),7.20−7.37(5H,m).
MS(ESI)m/z:317(M+H)+.
[α]D25.1=+76.2゜(c=0.290,クロロホルム)
【0111】
(10)(−)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン(581mg,1.836mmol)のメタノール(40mL)溶液へ10%パラジウム炭素触媒(M,約50%含水,349mg)を加え、水素ガス雰囲気下、室温で2.5時間攪拌した。触媒をろ去後、溶媒を減圧溜去し、(−)−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物434mg(定量的)を無色透明ガム状固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.38−0.43(1H,m),0.55−0.60(2H,m),0.74−0.80(1H,m),1.08(3H,s),1.44(9H,s),2.75(1H,d,J=12.0Hz),2.77(1H,d,J=11.5Hz),3.13(1H,d,J=11.5Hz),3.75(1H,brd,J=12.0Hz),4.44(1H,brs).
MS(ESI)m/z:227(M+H)+.
[α]D25.1=−63.5゜(c=0.277,クロロホルム)
【0112】
(11)(+)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン(627mg,1.981mmol)のメタノール(40mL)溶液へ10%パラジウム炭素触媒(M,約50%含水,376mg)を加え、水素ガス雰囲気下、室温で5時間攪拌した。触媒をろ去後、溶媒を減圧溜去し、(+)−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物452mg(定量的)を無色透明ガム状固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.38−0.43(1H,m),0.55−0.60(2H,m),0.74−0.80(1H,m),1.08(3H,s),1.44(9H,s),2.75(1H,d,J=12.0Hz),2.77(1H,d,J=11.5Hz),3.13(1H,d,J=11.5Hz),3.75(1H,brd,J=12.0Hz),4.44(1H,brs).
MS(ESI)m/z:227(M+H)+.
[α]D25.1=+59.5゜(c=0.185,クロロホルム)
【0113】
(12)上記(10)で得られた(−)−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物(434mg,1.836mmol)と、6,7−ジフルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル]−8−メトキシ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸・ジフルオロボロン錯体(663mg,1.836mmol)、並びにトリエチルアミン(0.768mL,5.510mmol)をジメチルスルホキシド(5mL)に溶解し、40℃のオイルバスで14時間加熱攪拌した。反応液にエタノール:水=4:1混合溶液(50mL)およびトリエチルアミン(5mL)を加えて100℃のオイルバスで2時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮し、残留物を酢酸エチル(200mL)に溶解し、10%クエン酸水溶液(50mL)および水(50mL×2)および飽和食塩水(50mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去することによって、7−[7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−5−イル]−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル]−8−メトキシ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸粗生成物870mg(1.676mmol,91%)を黄色泡状固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.55−0.60(1H,m),0.68−0.73(1H,m),0.74−0.80(1H,m),0.92−0.97(1H,m),1.22(3H,s),1.40(9H,s),1.43−1.59(2H,m),3.13(1H,d,J=9.8Hz),3.60(3H,s),3.75(1H,dd,J=11.0,3.7Hz),3.85(1H,dt,J=10.2,4.5Hz),4.18(1H,d,J=10.0Hz),4.47(1H,m),4.62(1H,s),4.79−4.99(1H,dm),7.83(1H,d,J=13.7Hz),8.68(1H,d,J=2.7Hz),14.88(0.7H,brs).
MS(ESI)m/z:520(M+H)+.
[α]D25.1=−128.5゜(c=1.240,クロロホルム)
【0114】
(13)上記(11)で得られた(+)−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物(452mg,1.981mmol)、および6,7−ジフルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル]−8−メトキシ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸・ジフルオロボロン錯体(715mg,1.981mmol)を用いて、上記(12)と同様の方法によって7−[7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−5−イル]−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル]−8−メトキシ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸粗生成物1.00g(1.925mmol,97%)を黄色泡状固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.55−0.60(1H,m),0.68−0.80(2H,m),0.91−0.97(1H,m),1.21(3H,s),1.40(9H,s),1.53−1.68(2H,m),3.04(1H,d,J=10.0Hz),3.61(3H,s),3.81(1H,dd,J=10.7,4.4Hz),3.87−3.93(1H,m),4.24(1H,d,J=9.8Hz),4.46(1H,m),4.65−4.85(2H,m),7.83(1H,d,J=13.4Hz),8.76(1H,s).
MS(ESI)m/z:520(M+H)+.
[α]D25.1=+133.2゜(c=2.230,クロロホルム)
【0115】
(14)上記(12)で得られた7−[7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−5−イル]−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル]−8−メトキシ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸(870mg,1.676mmol)を氷冷下濃塩酸(10mL)に溶解後、室温で20分間撹拌し、反応液をクロロホルム(20mL×5)で洗浄した。水層に氷冷下飽和水酸化ナトリウム水溶液を加えpH12.0とし、次いで塩酸でpH7.4に調整後、クロロホルム:メタノール=10:1混合溶液(200mL×2)、およびクロロホルム:メタノール:水=7:3:1下層溶液(200mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残留物をエタノールから再結晶精製し、減圧乾燥して化合物(II)644mg(1.535mmol,92%)を淡桃色粉末として得た。
mp:195−200℃.
[α]D25.1=+40.8゜(c=0.147,0.1N−NaOH).
1H−NMR(400MHz,0.1N−NaOD)δppm:0.49−0.56(2H,m),0.67−0.76(2H,m),1.12(3H,s),1.43−1.64(2H,m),3.56(3H,s),3.59−3.71(4H,m),3.99−4.04(1H,m),4.80−5.03(1H,m),7.65(1H,d,J=13.9Hz),8.45(1H,s).
元素分析:C21H23F2N3O4・0.75EtOH・0.5H2Oとして;
計算値:C,58.37;H,6.20;F,8.21;N,9.08.
実測値:C,58.23;H,5.99;F,8.09;N,9.02.
MS(EI)m/z:419(M+).
IR(ATR):2964,2843,1726,1612,1572,1537,1452,1439,1387,1360,1346,1311,1294,1265,1207cm-1.
【0116】
[凍結乾燥製剤の調製]
注射用水(350mL)にレボフロキサシン(無水物として8000mg)を溶解し、pH調節剤を加えてpHを7に調整した。この溶液に注射用水を加え、レボフロキサシン溶液の含量を20mg/mLに調整した。この溶液を容器に10mLずつ充填し、凍結乾燥した後、密栓した。
【0117】
[凍結乾燥方法(アニーリング工程あり)]
1)レボフロキサシンを含む溶液を充填した容器を、5℃に設定した凍結乾燥機の棚に積載し、
2)棚温度を、0.15℃/分の冷却速度で−30℃に冷却し、3時間保持した。
3)棚温度を、0.5℃/分の昇温速度で−5℃に昇温し、2時間保持した。
4)棚温度を、1.0℃/分の冷却速度で−40℃に冷却した。
5)棚温度−40℃で2時間以上保持した後、
6)減圧処理を開始し、棚温度を15℃に設定して30時間以上保持した。この間、減圧度は20Paに保持した。
7)品温が15℃以上になった後、棚温度を25℃に設定して6時間以上保持した。この間、減圧度は1Paに保持した。
【0118】
[アニーリング工程なしの凍結乾燥方法]
1)レボフロキサシンを含む溶液を充填した容器を、5℃に設定した凍結乾燥機の棚に積載し、
2)棚温度を、1.0℃/分の冷却速度で−40℃に冷却した。
3)棚温度−40℃で2時間以上保持した後、
4)減圧処理を開始し、棚温度を15℃に設定して30時間以上保持した。この間、減圧度は20Paに保持した。
5)品温が15℃以上になった後、棚温度を25℃に設定して6時間以上保持した。この間、減圧度は1Paに保持した。
【0119】
その他の3化合物については表4に示す条件に従い溶液を調製した後、レボフロキサシンと同様の手順で凍結乾燥した後、密栓した。
【0120】
[再溶解時間]
1バイアルに10mLの注射用水を加えて穏やかに振り混ぜ、内容物が完全に溶解するまでの時間を測定した。
【0121】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】アニーリング工程を設けた凍結乾燥方法とアニーリング工程のない凍結乾燥方法についての温度プロファイルを示す。
【図2】アニーリング工程のない凍結乾燥方法によって調製した化合物(I)の凍結乾燥製剤に再溶解液を加えたおよそ30秒後の状態を示す。
【図3】アニーリング工程を設けた凍結乾燥方法によって調製した化合物(I)の凍結乾燥製剤に再溶解液を加えたおよそ30秒後状態を示す。
【図4】凍結乾燥製剤に対するアニーリング工程の有無による再溶解時間の変化を示す。
【図5】化合物(I)含有水溶液(20mg/mL)を約−40℃に冷却して凍結させ測定したDSC測定結果を示す。
【図6】塩化ナトリウムの添加量によるDSC測定結果の違いを示す。
【図7】アニーリング工程の条件の変化による再溶解時間の変化を示す。
【図8】凍結乾燥製剤に対するアニーリング工程の有無による再溶解時間の変化を示す。
【図9】化合物(I)及びその凍結乾燥製剤の粉末X線回析測定結果を示す。
【図10】化合物(II)及びその凍結乾燥製剤の粉末X線回析測定結果を示す。
【図11】シタフロキサシン及びその凍結乾燥製剤の粉末X線回析測定結果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、キノロン系合成抗菌化合物を含有する非晶質凍結乾燥製剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キノロン系合成抗菌化合物は、広い抗菌スペクトルと強い抗菌活性を有することから、種々の細菌感染症治療薬として広く用いられている(非特許文献1参照)。例えば、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、トロバフロキサシン等の化合物は、広い抗菌スペクトルで高い抗菌活性の優れた抗菌活性を有しており特に広く用いられている。また、シタフロキサシンや下記の式(I)の化合物、そして実施例に記載の式(II)の化合物も同様に優れた抗菌活性を有し、かつ薬剤耐性菌に対しても優れた抗菌活性を有することから、優れた抗菌薬として期待される。
式(I)
【0003】
【化1】
【0004】
で表される構造を有するキノロン化合物(7−[3−(R)−(1−アミノシクロプロピル)ピロリジン−1−イル]−1−[2−(S)−フルオロ−1−(R)−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸;以下、化合物(I)と略す。)は、特にメチシリン耐性ブドウ球菌、ペニシリン耐性肺炎球菌、バンコマイシン耐性腸球菌等の薬剤耐性グラム陽性菌に対しても高い抗菌活性を発揮する等優れた抗菌活性を有している。さらに本化合物は安全性も高く優れた治療効果が期待される(特許文献1参照)。また、下記に示す化合物(II)も同様に耐性菌を含め優れた抗菌活性を示す他、安全性も高く優れたキノロン化合物である(特許文献2参照)。
【0005】
キノロン化合物、特に耐性菌に対して優れた抗菌活性を示すものは、その抗菌効果の特性から重症感染症に対しても優れた治療効果が期待できる。重症患者の場合溶液の形態で血管内投与を行なわざるを得ない場合が多い。したがって、キノロン化合物を含有する薬物溶液が必要であり、キノロン化合物の薬物溶液を用時調製するための、原薬とpH調節剤のみを含有する凍結乾燥製剤が提供される。
【0006】
凍結乾燥製剤の調製法として、アニーリング(Annealing)工程を設ける方法が知られている。アニーリング工程とは、初期工程の冷却工程で得られる原料水溶液の凍結体の温度を一旦上昇させて一定時間保持する工程のことである。賦形剤を含有するまたは賦形剤のみからなる凍結乾燥製剤の調製において、アニーリング工程を設けて調製された凍結乾燥製剤がアニーリング工程なく調製された凍結乾燥製剤とは異なる再溶解性を示す場合のあることが知られている。しかし、これらの場合、再溶解性について一定の傾向はなく改善または悪化のいずれもが認められ、アニーリング工程が凍結乾燥製剤の再溶解性に与える影響は物質によって異なっている(非特許文献2、3参照)。
凍結乾燥製剤において、賦形剤は元来再溶解性の改善のための成分でもあり、アニーリング工程の影響が知られていた。しかしながら、賦形剤を含有しない凍結乾燥製剤の製造工程にアニーリング工程を設けることで、得られる凍結乾燥製剤の再溶解性にいかなる影響があるかについては明らかではなかった。
【特許文献1】国際公開第02/40478号パンフレット
【特許文献2】国際出願PCT/JP2006/310069号明細書
【非特許文献1】Hooper D.C.and Rubinstein E.(eds)3rd Edition Quinolone Antimicrobial Agents.2003.ASM Press Books
【非特許文献2】ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンシズ,第90巻,第7号,872−887頁,2001年
【非特許文献3】ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンシズ,第92巻,第4号,715−729頁,2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
化合物(I)等のキノロン系合成抗菌化合物を含有する凍結乾燥製剤は、原薬とpH調節剤のみを含有する製剤として提供されるのが望ましい。この様な凍結乾燥製剤を調製する際に通常実施される凍結乾燥方法を適用した場合、再溶解に長時間を要する難溶解性の凍結乾燥ケーキが形成されることのあることが判明した。すなわち、薬物溶液を得るために再溶解液を注入した際に凍結乾燥ケーキが直ぐには溶解せず、難溶性の塊状物質に変化するのである。このような難溶性の塊状物質であっても最終的には完全に溶解して薬物溶液が得られるのであるが、再溶解時間が過度に長くなる場合は使用利便性が著しく損なわれる。
したがって本願発明の目的は、キノロン系合成抗菌化合物とpH調節剤のみを含有し、かつ、再溶解性に優れる凍結乾燥製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が鋭意研究した結果、キノロン系合成抗菌化合物およびpH調節剤のみからなる凍結乾燥製剤を調製するにあたって、一連の凍結工程にアニーリング工程を設ける方法で調製された非晶質の凍結乾燥製剤であれば再溶解時間が大幅に短縮されることを見出した。
すなわち、キノロン系合成抗菌化合物およびpH調節剤を含有する凍結乾燥製剤調製用の水溶液を冷却して非晶質の凍結体を得た後に、温度を一旦昇温させて一定時間保持する緩和工程を設けた後、再度冷却した後に凍結乾燥して非晶質凍結乾燥製剤を得る製造方法である。このように凍結体を一旦昇温させるアニーリング工程を加えることで再溶解性に優れる非晶質凍結乾燥製剤が得られることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、次の式(1)
【0010】
【化2】
【0011】
[式中、R1は、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基が置換していてもよいアリール基、ハロゲン原子もしくは炭素数1から6のアルキル基が置換していてもよいヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキルアミノ基を表わし;
R2は、水素原子または炭素数1から6のアルキルチオ基を表わし;このR1とR2とは、母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよく、この環は硫黄原子を環の構成原子として含んでもよく、さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。
R3は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、チオール基、ハロゲノメチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わし;
A1は、窒素原子または式(2)
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、X2は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノメチル基、ハロゲノメトキシ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わし;このX2と上記のR1とは母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよく、このようにして形成された環は、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を環の構成原子として含んでもよく、さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。)
で表わされる部分構造を表わし;
A2およびA3は、各々異なって窒素原子または炭素原子を表わすが、A1、A2およびA3とこれらが結合している炭素原子とは、部分構造
【0014】
【化4】
【0015】
または、部分構造
【0016】
【化5】
【0017】
を形成する。
X1は、ハロゲン原子または水素原子を表わし;
Yは、水素原子、フェニル基、アセトキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、エトキシカルボニル基、コリン基、ジメチルアミノエチル基、5−インダニル基、フタリジル基、5−アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イルメチル基、3−アセトキシ−2−オキソブチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から7のアルコキシメチル基、または炭素数1から6のアルキレン基とフェニル基とから構成されるフェニルアルキル基を表わし;
Zは、単環式、二環式、または三環式の複素環式置換基を表わすが、この複素環式置換基は飽和または部分飽和であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1以上の異原子を含んでいてもよく、さらにビシクロ構造もしくはスピロ環状構造であってもよく、そしてハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群より選ばれる1または2以上の原子または基が置換していてもよい。]
で表わされる化合物およびpH調節剤を含有する水溶液を冷却して凍結体を得、次いで温度を一旦昇温させた後、再度冷却して凍結乾燥することを特徴とする、式(1)の化合物を有効成分とする非晶質凍結乾燥製剤の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0018】
アニーリング工程を設けてキノロン系合成抗菌化合物を含有する非晶質凍結乾燥製剤の調製を実施することによって、再溶解性に優れた凍結乾燥ケーキからなる非晶質の凍結乾燥製剤を取得でき、凍結乾燥製剤の使用利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
式(1)中、R1は、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基が置換していてもよいアリール基、ハロゲン原子もしくは炭素数1から6のアルキル基が置換していてもよいヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキルアミノ基を表わす。
【0020】
炭素数1から6のアルキル基としては、エチル基が特に好ましい。炭素数2から6のアルケニル基としては、ビニル基、または1−イソプロペニル基が特に好ましい。炭素数1から6のハロゲノアルキル基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を有する炭素数1から6のアルキル基を挙げることができるが、2−フルオロエチル基が特に好ましい。炭素数3から6の環状アルキル基としては、シクロプロピル基が特に好ましい。環状アルキル基が置換基を有するときには置換基としてハロゲン原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。このフルオロシクロプロピル基としては2−(S)−フルオロ−1−(R)−シクロプロピル基が特に好ましい。
【0021】
アリール基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1から3の原子または基を置換基として有していてもよいフェニル基を挙げることができ、フェニル基、2−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4,6−ジフルオロフェニル基および4,6−ジフルオロ−3−メチルアミノフェニル基が好ましい。
【0022】
ヘテロアリール基としては、ハロゲン原子または炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい、5員環または6員環の芳香族複素環化合物から導かれる芳香族複素環置換基を挙げることができる。ヘテロアリール基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる1以上の異原子を含み、例えば、ピリジル基、ピリミジル基等を挙げることができ、6−アミノ−3,5−ジフルオロ−2−ピリジル基が特に好ましい。
【0023】
炭素数1から6のアルコキシ基としては、メトキシ基が特に好ましい。炭素数1から6のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基が特に好ましい。
【0024】
置換基R1としては、環状アルキル基またはハロゲノシクロアルキル基が好ましい。環状アルキル基としてはシクロプロピル基が特に好ましく、ハロゲノシクロプロピル基としては2−ハロゲノシクロプロピル基が好ましく、2−フルオロシクロプロピル基が特に好ましい。
【0025】
式(1)中、R2は、水素原子または炭素数1から6のアルキルチオ基を表わす。炭素数1から6のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基が特に好ましい。
置換基R2としては、水素原子が好ましい。
【0026】
式(1)において、R1とR2とは母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよい。この環は硫黄原子を環の構成原子として含んでもよく、さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。このアルキル基としてはメチル基が好ましい。
【0027】
式(1)中、R3は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、チオール基、ハロゲノメチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わす。
【0028】
ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基または炭素数2から5のアシル基が置換していてもよいアミノ基としては、例えばホルミルアミノ基、アセチルアミノ基等を挙げることができ、アセチルアミノ基が特に好ましい。炭素数1から6のアルキル基としては、メチル基、エチル基を挙げることができるが、メチル基が特に好ましい。炭素数2から6のアルケニル基としては、ビニル基が特に好ましい。炭素数2から6のアルキニル基としては、エチニル基が特に好ましい。また、炭素数1から6のアルコキシ基としては、メトキシ基が特に好ましい。
置換基R3としては、水素原子が好ましい。
【0029】
式(1)中、A1は、窒素原子または式(2)
【0030】
【化6】
【0031】
で表わされる部分構造を表わす。
式(2)中、X2は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノメチル基、ハロゲノメトキシ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わす。
【0032】
ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基または炭素数2から5のアシル基が置換していてもよいアミノ基としては、アセチルアミノ基が特に好ましい。炭素数1から6のアルキル基としては、メチル基が特に好ましい。炭素数2から6のアルケニル基としては、ビニル基が特に好ましい。炭素数2から6のアルキニル基としては、エチニル基が特に好ましい。また、炭素数1から6のアルコキシ基としては、メトキシ基が特に好ましい。
【0033】
このX2と上記のR1とは母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよく、このようにして形成された環は、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を環の構成原子として含んでもよい。さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。
このようにして形成された環構造として好ましくはオフロキサシン等の骨格であるピリドベンゾオキサジン骨格を挙げることができる。さらにこの骨格のアルキル置換基としてはメチル基が好ましく、特に(3S)−メチル基が好ましい。
【0034】
置換基A1しては、式(2)で表される部分構造であることが好ましく、また置換基 X2としては、メチル基、メトキシ基、ジフルオロメトキシ基が好ましい。
【0035】
式(1)中、A2およびA3は、各々異なって窒素原子または炭素原子を表わす。ここで、A1、A2およびA3とこれらが結合している炭素原子とは、次の部分構造
【0036】
【化7】
【0037】
または、部分構造
【0038】
【化8】
【0039】
を形成する。
すなわち、次の構造
【化9】
を有するものである。
これらの部分構造のうちでは
【0040】
【化10】
【0041】
で示される部分構造が好ましく、したがって次の構造
【化11】
のものが好ましい。
さらに、A1としては前述の式(2)で示される構造が好ましく、したがって次の構造
【化12】
のものが好ましい。
【0042】
式(1)中、X1は、ハロゲン原子または水素原子を表わすが、ハロゲン原子の場合はフッ素原子が好ましい。
置換基X1としては、フッ素原子または水素原子が好ましい。
【0043】
式(1)中、Yは、水素原子、フェニル基、アセトキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、エトキシカルボニル基、コリン基、ジメチルアミノエチル基、5−インダニル基、フタリジル基、5−アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イルメチル基、3−アセトキシ−2−オキソブチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から7のアルコキシメチル基、または炭素数1から6のアルキレン基とフェニル基とから構成されるフェニルアルキル基を表わす。
置換基Y1としては、水素原子が好ましい。
【0044】
また、式(1)中、Zは、単環式、二環式、または三環式の複素環式置換基を表わす。この複素環式置換基は、飽和または部分飽和であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1以上の異原子を含んでいてもよい。さらにビシクロ構造もしくはスピロ環状構造であってもよい。この複素環式置換基は置換基を有していてもよく、例えばハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のアルキルチオ基または炭素数1から6のアミノアルキル基が置換していてもよい。複素環式置換基に置換し得る原子または基は1個であっても2個以上であってもよい。
【0045】
上記複素環式置換基に置換し得る炭素数1から6のアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよく、複素環式置換基に置換し得るアルキル基、該アルキル基に置換し得るハロゲノアルキル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基およびアミノアルキル基のアルキル基部分は、環状構造を有していてもよく、さらに、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
【0046】
また、上記のアミノ基、アルキルアミノ基およびアミノアルキル基のアミノ基部分は、炭素数1から6のアルキル基(このアルキル基は、環状構造を有していてもよく、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。)の1個または2個を置換基として有していてもよく、2個のときは同一でも異なっていてもよい。さらに、このアミノ基部分は、通常用いられる保護基によって保護されていてもよい。
【0047】
上記複素環式置換基に置換し得る炭素数1から6のハロゲノアルキル基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアミノアルキル基のアルキル基部分は、環状構造を有していてもよく、さらにハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、アリール基およびヘテロアリール基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
【0048】
上記複素環式置換基に置換し得るアミノ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基および炭素数1から6のアミノアルキル基のアミノ基部分は、さらに炭素数1から6のアルキル基の1個または2個を置換基として有していてもよく、あるいは保護基によって保護されていてもよい。アミノ基上のアルキル基が2個の場合、同一でも異なっていてもよい。
ここで、炭素数1から6のアルキル基としては、環状構造を有していてもよく、またハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
アミノ基の保護基としてはこの分野で汎用されるものであれば特に限定されないが、例えば、第三級ブトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基類;ベンジルオキシカルボニル基、パラメトキシベンジルオキシカルボニル基、パラニトロベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基類;アセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、ベンゾイル基等のアシル基類;第三級ブチル基、ベンジル基、パラニトロベンジル基、パラメトキシベンジル基、トリフェニルメチル基等のアルキル基類、またはアラルキル基類;メトキシメチル基、第三級ブトキシメチル基、テトヒドロピラニル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基等のエーテル類;トリメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、第三級ブチルジメチルシリル基、トリベンジルシリル基、第三級ブチルジフェニルシリル基等の(アルキルおよび/またはアラルキル)置換シリル基を挙げることができる。
【0049】
上記複素環式置換基に置換し得るアリール基は、炭素数が6から10であり、また、ヘテロアリール基は、5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を1〜4個含んでいてもよい。
【0050】
上記複素環式置換基に置換し得るアリール基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、フェニル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、炭素数2から5のアシル基およびヘテロアリール基(5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を1〜4個含む。)からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
ここで、アリール基およびヘテロアリール基に置換し得るフェニル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、炭素数2から5のアシル基およびヘテロアリール基は、さらにハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。また、アリール基およびヘテロアリール基に置換し得るアミノ基は、さらにホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群より選ばれる1または2の基を置換基として有していてもよい。
【0051】
置換基Zは、環を構成するいずれの原子を介してキノロン母格と結合してもよいが、窒素原子で結合することがより好ましい。このような窒素原子で結合する複素環式置換基として次の式(3)〜(7)で表わされる構造の置換基を挙げることができる。
式(3)
【0052】
【化13】
【0053】
(式中、R4、R5、R5’、R6、R6’、R7およびR8は、前記Zで表される複素環式置換基の置換基を表わす。より具体的には、
R4、R5およびR6は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わすが、
このアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群の基から選ばれる1以上の基を置換基として有していてもよく、
上記のアルキル基、該アルキルに置換し得るアルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲノアルキル基およびアミノアルキル基のアルキル基部分は、環状構造を有していてもよく、さらにハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、アルコキシ基からなる群のより選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよい。
また、アルキルに置換し得るアミノ基、アミノアルキル基およびアルキルアミノ基のアミノ基部分は、炭素数1から6のアルキル基(このアルキル基は、環状構造を有していてもよく、また、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよい。)の1個または2個を置換基として有していてもよく(2個のときは同一でも異なっていてもよい。)、さらにこのアミノ基部分は通常用いられる保護基によって保護されていてもよい。
R5’およびR6’は、各々独立して、水素原子、アリール基、またはヘテロアリール基を表わすが、
このアリール基は炭素数が6から10であり、また、ヘテロアリール基は、5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含んでいてよく、
上記のアリール基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、フェニル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、炭素数2から5のアシル基およびヘテロアリール基(5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含む。)からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、
このうちのアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、フェニル基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。
R7およびR8は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わす。
上記のR5、R5’、R6およびR6’から選ばれる任意の2個は、環状構造を形成するように一体化してもよく、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子から任意に選ばれる1以上のヘテロ原子をその環の構成原子として含んでもよい。
この様にして形成される環は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにこのアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。)
または、下記の式(4)
【0054】
【化14】
【0055】
(式中、R7、R7’、R8、R8’、R9、R10、R10’、R11およびR11’は、前記Zで表される複素環式置換基上の置換基を表わす。より具体的には、
R11およびR11’は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わすが、
このアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
R9、R10およびR10’は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、水酸基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、または炭素数1から6のアミノアルキル基を表わすが、
このアルキル基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アミノアルキル基およびアルキルアミノ基のアルキル基部分は、環状構造を有していてもよく、
さらにハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
また、上記のアミノ基、アルキルアミノ基およびアミノアルキル基のアミノ基部分は、炭素数1から6のアルキル基(このアルキル基は、環状構造を有していてもよく、また、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよい。)の1個または2個を置換基として有していてもよく(2個のときは同一でも異なっていてもよい。)、さらにこのアミノ基部分は通常用いられる保護基によって保護されていてもよい。
さらに上記のアリール基は炭素数が6から10であり、また、ヘテロアリール基は、5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含んでいてよく、
上記のアリール基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、フェニル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、炭素数2から5のアシル基およびヘテロアリール基(5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含む。)からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、
このうちのアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、フェニル基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。
R7、R7’、R8およびR8’は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わす。
上記の、R7、R7’、R8、R8’、R9、R10およびR10’から選ばれる任意の2個は、環状構造を形成するように一体化してもよく、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子から任意に選ばれる1以上のヘテロ原子をその環の構成原子として含んでもよい。
この様にして形成される環は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにこのアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。)
または、下記の式(5)
【0056】
【化15】
【0057】
(式中、R7、R7’、R8、R8’、R9、R10、R10’、R11、R11’、R12およびR12’は、前記Zで表される複素環式置換基上の置換基を表わす。より具体的には、
R11およびR11’は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わすが、
このアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
R9、R10およびR10’は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、または炭素数1から6のアミノアルキル基を表わすが、
上記のアルキル基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アミノアルキル基および炭素数アルキルアミノ基のアルキル基部分は、環状構造を有していてもよく、さらにハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
また、上記のアミノ基、アルキルアミノ基およびアミノアルキル基のアミノ基部分は、炭素数1から6のアルキル基(このアルキル基は、環状構造を有していてもよく、また、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよい。)の1個または2個を置換基として有していてもよく(2個のときは同一でも異なっていてもよい。)、さらにこのアミノ基部分は通常用いられる保護基によって保護されていてもよい。
R12およびR12’は、各々独立して、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表わすが、
このアリール基は炭素数が6から10であり、また、ヘテロアリール基は、5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含んでいてよく、
上記のアリール基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、フェニル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、炭素数2から5のアシル基およびヘテロアリール基(5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含む。)からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、
このうちのアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、フェニル基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。
R7、R7’、R8およびR8’は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わす。
上記の、R7、R7’、R8、R8’、R9、R10、R10’、R12およびR12’から選ばれる任意の2個は、環状構造を形成するように一体化してもよく、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子から任意に選ばれる1以上のヘテロ原子をその環の構成原子として含んでもよい。
この様にして形成される環は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにこのアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。)
または、下記の式(6)
【0058】
【化16】
【0059】
(式中、R13、R13’、R14、R14’、R15、R16およびR16’は、前記Zで表される複素環式置換基上の置換基を表わす。より具体的には、
R13およびR13’は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わすが、
このアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
R14、R14’、R15、R16およびR16’は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、または炭素数1から6のアミノアルキル基を表わすが、
上記のアルキル基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アミノアルキル基およびアルキルアミノ基のアルキル基部分は、環状構造を有していてもよく、さらにハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
また、上記のアミノ基、アミノアルキル基およびアルキルアミノ基のアミノ基部分は、炭素数1から6のアルキル基(このアルキル基は、環状構造を有していてもよく、また、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよい。)の1個または2個を置換基として有していてもよく(2個のときは同一でも異なっていてもよい。)、さらにこのアミノ基部分は通常用いられる保護基によって保護されていてもよい。
上記のアリール基は炭素数が6から10であり、また、ヘテロアリール基は、5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含んでいてよく、
上記のアリール基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、フェニル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、炭素数2から5のアシル基およびヘテロアリール基(5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含む。)からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、
このうちのアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、フェニル基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。
上記のR14、R14’、R15、R16およびR16’から選ばれる任意の2個は、環状構造を形成するように一体化してもよく、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子から任意に選ばれる1以上のヘテロ原子をその環の構成原子として含んでもよい。
この様にして形成される環は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにこのアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。)
または、下記の式(7)
【0060】
【化17】
【0061】
(式中、R13、R13’、R14、R14’、R15、R16、R16’、R17およびR17’は、前記Zで表される複素環式置換基上の置換基を表わす。より具体的には、
R13およびR13’は、各々独立して、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を表わすが、
このアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群の基から選ばれる1以上の基を置換基として有していてもよい。
式中、R14、R14’、R15、R16およびR16’は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、水酸基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、または炭素数1から6のアミノアルキル基を表わすが、
上記のアルキル基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アミノアルキル基およびアルキルアミノ基のアルキル基部分は、環状構造を有していてもよく、さらにハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有していてもよい。
また、上記のアミノ基、アミノアルキル基およびアルキルアミノ基のアミノ基部分は、炭素数1から6のアルキル基(このアルキル基は、環状構造を有していてもよく、また、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルキルチオ基および炭素数1から6のアルコキシ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよい。)の1個または2個を置換基として有していてもよく(2個のときは同一でも異なっていてもよい。)、さらにこのアミノ基部分は通常用いられる保護基によって保護されていてもよい。
R17およびR17’は、各々独立して、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表わすが、このアリール基は炭素数が6から10であり、ヘテロアリール基は、5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含んでいてよく、
上記のアリール基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、フェニル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、炭素数2から5のアシル基およびヘテロアリール基(5員環または6員環であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から任意に選ばれるヘテロ原子を1個から4個含む。)からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、
このうちのアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、フェニル基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。
上記の、R14、R14’、R15、R16、R16’、R17およびR17’から選ばれる任意の2個は、環状構造を形成するように一体化してもよく、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子から任意に選ばれる1以上のヘテロ原子をその環の構成原子として含んでもよい。
この様にして形成される環は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基および炭素数1から6のアルキルチオ基からなる群より選ばれる1以上の原子または基を置換基として有してもよく、さらにこのアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から5のアシル基および炭素数2から5のアルコキシカルボニル基からなる群の基から選ばれる1または2の基を置換基として有してもよい。)
【0062】
これらの置換基において好ましいものは、式(3)、(4)、および(5)で示されるものである。特に、式(4)および(5)の構造の置換基が好ましい。また、キノロン母核がピリドベンゾオキサジン骨格であるときには式(3)の置換基が好ましい。
【0063】
置換基Zをより具体的に構造式で示すと、以下の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの置換基において不斉炭素を有していて光学活性となる場合、光学活性置換基が当然にZに含まれる。
【0064】
【化18】
【0065】
式(1)で示されるキノロン系合成抗菌化合物の具体例としては、レボフロキサシン、オフロキサシン、シタフロキサシン、(7−[3−(R)−(1−アミノシクロプロピル)ピロリジン−1−イル]−1−[2−(S)−フルオロ−1−(R)−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸(化合物(I))、(+)−7−[(7S)−7−アミノ−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−5−イル]−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロ−1−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソ−3−キノリンカルボン酸1/2水和物(化合物(II))、シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、トロバフロキサシン等を挙げることができる。これらのうち、好ましくはシタフロキサシン、(7−[3−(R)−(1−アミノシクロプロピル)ピロリジン−1−イル]−1−[2−(S)−フルオロ−1−(R)−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸(化合物(I))、(+)−7−[(7S)−7−アミノ−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−5−イル]−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロ−1−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソ−3−キノリンカルボン酸1/2水和物(化合物(II))である。
なお、キノロン化合物から本発明の凍結乾燥製剤を調製する場合、キノロン化合物は遊離体であっても、水和物や塩等の付加物であってもいずれの形態も使用することができる。
【0066】
本発明に係るキノロン系合成抗菌化合物(1)がジアステレオマーの存在する構造である場合、本発明化合物をヒトや動物に投与する際は単一のジアステレオマーからなるものを投与することが好ましい。この、『単一のジアステレオマーからなる』とは、他のジアステレオマーを全く含有しない場合だけでなく、化学的に純粋程度の場合を含むと解される。つまり、物理定数や、生理活性に対して影響がない程度であれば他のジアステレオマーが含まれてもよいと解釈されるのである。また対掌体の存在する場合も同様に考えればよい。
【0067】
本発明の凍結乾燥製剤の製造方法について以下に延べる。
本発明において凍結乾燥製剤は、上記式(1)で表される構造を有するキノロン系合成抗菌化合物およびpH調節剤のみを含有する凍結乾燥製剤調製用水溶液(原液)から調製される。なお、本発明において実施されるアニーリング工程以外の凍結乾燥工程自体は、通常この分野で実施される凍結乾燥方法に従って実施すればよい。
【0068】
本発明で使用されるpH調節剤としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸類;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の無機酸塩類;酢酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、サリチル酸、安息香酸、メタンスルホン酸、チオグリコール酸等の有機酸類;乳酸エチル等の有機酸エステル化合物;クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、チオグリコール酸ナトリウム等の有機酸塩類;水酸化ナトリウム等の無機塩類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、トロメタモール等の有機アミン化合物類等を挙げることができる。水溶液のpHは、化合物(1)の溶解性の点から、7以下であればよく、好ましくは6.5以下であり、特に2.5〜6.0の範囲に設定するのが好ましい。
【0069】
凍結乾燥製剤を調製するための水溶液中の化合物(1)の濃度は、凍結乾燥ケーキ形成性の点から10mg/mL以上、更に15mg/mL以上、特に20mg/mL以上が好ましい。
凍結乾燥製剤調製用水溶液は、例えば化合物(I)の場合、表1に示される処方のものを好適に使用することができる。
【0070】
【表1】
【0071】
凍結乾燥製剤を調製するためには先ず凍結工程によってこの原液を冷却して非晶質の凍結体を得ることが第一段階である。この凍結工程の到達温度は、化合物(1)含有水溶液の凍結体におけるいわゆるガラス転移温度以下に設定すればよく、例えば表1の組成を有する薬物水溶液の場合はその凍結体のガラス転移温度がおよそ−15℃付近にあるので、通常この分野で実施されるように−40℃までに設定すればよい。
本発明の場合、−20℃から−40℃の範囲で設定すればよく、−30℃の設定で得た凍結体に対して一連の工程を実施することで目的の非晶質凍結乾燥製剤を取得することができる。
【0072】
次いでこの凍結工程の冷却温度を緩和・昇温させて、一定時間保持する工程(アニーリング工程)を設けることが本発明における非晶質凍結乾燥製剤の調製方法の特徴である(図1の温度プロファイル参照。なお、この温度プロファイルは、凍結乾燥に使用する機器の設定温度であり、機器内に収められた個々の容器(バイアル等)の温度を必ずしも示すものではない。例えば、凍結工程および二次乾燥工程においては、機器内の容器はこの温度に到達していると考えられる。しかしながら一次乾燥工程では機器内の容器の温度は水分の昇華に伴い温度低下を来たし、設定温度以下となっていると考えられる。)。
アニーリング工程の温度設定は、凍結工程で得られた化合物(1)含有水溶液の非晶質凍結体のガラス転移温度を目安とすればよい。すなわち、凍結体をそのガラス転移温度以上に昇温させて一定時間保持すればよい。凍結体のガラス転移温度は、例えば凍結体のDSC測定によって求めることができ、このDSC測定は通常実施される方法にしたがって実施すればよい。凍結体のガラス転移温度はその原液の成分組成等によって変化するので各々の場合においてDSC測定を実施してガラス転移温度を決定すればよい。
【0073】
例えば、上記表1に示した組成の化合物(I)とpH調節剤を含有する凍結体のDSCの測定結果によれば、ガラス転移点のピークはおよそ−14.0℃から立ち上がることが判明した(図5)。したがって、この温度以上の温度で、かつ、非晶質凍結体が解凍しない範囲の温度に保持することで非晶質凍結乾燥製剤における凍結乾燥ケーキの再溶解性改善効果が付与できるのである。なお、DSCの測定結果によればそのピーク自体の立ち上がりはおよそ−17℃であり、この温度以上であればアニーリングの効果が期待できる。
【0074】
アニーリング工程の温度の上限値は、アニーリング工程においては非晶質凍結体が解凍しないことが必須であるので、凍結体が凍結を維持できる上限温度である。通常の場合、薬物水溶液はほぼ0℃まで凍結状態を維持すると考えてよい。アニーリングの効果はアニーリングの工程での温度がより高く設定されるほど効率的に達成されるが、設定温度が高すぎる場合には凍結体が解凍するので注意が必要である。
本発明方法においてアニーリング工程の温度としては−20℃から−2℃の範囲であればよく、より好ましくは、−15℃から−5℃の範囲である。
【0075】
アニーリング工程の保持時間、つまり非晶質凍結体を昇温状態に保持しておく時間は、凍結体全体が設定温度となるに足る時間またはそれ以上であればよい。本工程に要する時間は、アニーリングを実施する温度によって異なる(この他に製造しようとする凍結乾燥体の数量によっても変化することは言うまでもない。)。アニーリング温度がガラス転位温度に近いほど(より低温であるほど)長時間を要し、ガラス転位温度よりもより高温であるほどアニーリング工程に要する時間は短縮される。
本発明の方法においては凍結体をアニーリング工程の昇温温度に保持させる時間は約15分〜48時間程度であれば通常は十分であり、より好ましくは30分〜12時間程度である。
【0076】
本発明の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法において、冷却や昇温に際しての温度を下降させるまたは上昇させる速度は特に制限はなく、使用する機器の能力や製造工程の管理時間等の要因に基づいて設定しても凍結乾燥製剤に特段の影響はないことが明らかとなっている。
【0077】
アニーリング工程の後、非晶質凍結体を再度冷却して減圧処理を行なって非晶質凍結乾燥製剤の調製工程(一次乾燥工程)に進むが、これは通常実施される凍結乾燥の方法に従って実施すればよい。すなわち、再冷却の設定温度に到達した時点で減圧処理を開始して凍結乾燥を実施する。この再冷却での到達温度がガラス転移温度以下であればよいのはアニーリング工程前の冷却工程と同様であるが、通常の凍結乾燥製剤の調製時に設定される−40℃を目安とすればよい。また、この工程での減圧処理の到達減圧度は、6〜27Paの範囲であればよく、好ましくは13〜20Paの範囲である。
【0078】
一次乾燥工程は、減圧下にガラス転移点以下の温度条件で実施する。この温度は、凍結乾燥用の機器内に収められた小分け容器(バイアル等)の到達温度であるが、凍結体からの水分の昇華に伴って温度低下が起きるため、機器の実際の設定温度はガラス転位温度以上でよい。本発明の場合、機器の設定温度としてはおよそ25℃〜−15℃の範囲であればよい。
【0079】
一次乾燥工程に要する時間は、昇華させる水分の量によっても異なるが、およそ16時間〜80時間の範囲であればよく、より好ましくは16時間〜50時間である。なお、昇華する水分が減少するに伴って温度低下が緩和になり、この結果として品温が上昇し始めるがそのときが一次乾燥工程の終末点といってよい。
【0080】
一次乾燥工程の後二次乾燥工程を実施する。すなわち、一次乾燥工程で設定した機器の温度から昇温して二次乾燥工程としての設定温度に到達させた後一定時間保持する工程である。二次乾燥工程の温度は室温以上であればよく、およそ25℃〜45℃の範囲に設定すればよいが、好ましくは25℃〜30℃の範囲である。二次乾燥工程に要する時間は、およそ2時間〜20時間の範囲であればよく、より好ましくは3時間〜15時間の範囲である。二次乾燥工程でも継続して減圧状態を保持するが、二次乾燥工程では水分の脱離を促進させるために減圧度を高めるのがよい。減圧度は、0.5Pa〜10Paの範囲であればよいが、より好ましくは1Pa〜5Paの範囲である。
なお、本発明の非晶質凍結乾燥製剤の製造にあたって滅菌処理等は通常行なわれる手順に従って実施すればよい。
【実施例】
【0081】
以下に実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらは如何なる場合においても限定的に解釈してはならない。
【0082】
実施例1
[原薬およびpH調節剤処方凍結乾燥製剤]
注射用水(25L)に1mol/L塩酸(1400mL)を加えた。この水溶液に化合物(I)(600g)を溶解し、更に1mol/L塩酸を加えてpHを3.4に調整した。この溶液に注射用水を加え、化合物(I)の含量を20mg/mLに調整して凍結乾燥製剤調製用原液とした。この溶液を小分け容器に10mLずつ充填し、下記の工程にしたがって凍結乾燥した後、密栓した。
【0083】
[凍結乾燥工程]
1)化合物(I)溶液を充填した容器を、5℃に設定した凍結乾燥機の棚に積載し、
2)棚温度を、0.15℃/分の冷却速度で−30℃に冷却し、6時間保持した。
3)棚温度を、0.5℃/分の昇温速度で−10℃に昇温し、6時間保持した。
4)棚温度を、1.0℃/分の冷却速度で−40℃に冷却した。
5)棚温度−40℃で3時間以上保持した後、
6)減圧処理を開始し、棚温度を−5℃に設定して30時間以上保持した。この間,減圧度は20Paに保持した。
7)品温が−5℃以上になった後、棚温度を25℃に設定して6時間以上保持した。この間、減圧度は1Paに保持した。
【0084】
化合物(I)(結晶)とその凍結乾燥製剤(アニーリング工程あり)、及びアニーリング工程を設けずに得た凍結乾燥製剤の粉末X線回析測定の結果を図9に示す。図9から明らかなように、凍結乾燥製剤は明白な回析ピ−クを示さず、非晶質であることが確認された。
【0085】
また、上記と同様の条件にて薬液を調製後、容器に充填して表2に示す条件で凍結し、同様の手順で凍結乾燥した後、再溶解時間を測定した。その結果は図4に示した。また、再溶解液を注入しておよそ30秒後の状態を図2(アニーリング工程なし)および図3(アニーリング工程あり)に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
アニーリング工程の温度、保持時間等を表3の内容で変化させて凍結乾燥を実施した。得られた凍結乾燥製剤の再溶解に要する時間を図7に示す。なお、再溶解時間測定手順としては、凍結乾燥後の1バイアルに充填液量と同量の注射用水を加えて穏やかに振り混ぜ、内容物が完全に溶解するまでの時間を測定した。
【0088】
【表3】
【0089】
実施例2
レボフロキサシン、オフロキサシン、シタフロキサシンおよび化合物(II)の4種類のキノロン系合成抗菌化合物について凍結乾燥製剤を調製し、アニーリング工程による再溶解性改善の効果を確認した。
その結果、いずれのキノロン系合成抗菌化合物の凍結乾燥製剤についてもアニーリング工程を加えて調製した凍結乾燥製剤において再溶解時間が短縮することを確認した(図8)。
【0090】
また、化合物(II)とその凍結乾燥製剤、シタフロキサシンとその凍結乾燥製剤の粉末X線回析測定の結果を図10及び図11に示す。図10及び11から明らかなように、何れの凍結乾燥製剤も明白な回析ピ−クを示さず、本発明の凍結乾燥製剤は非晶質であることが確認された。
【0091】
各キノロン系合成抗菌化合物の構造は以下の通りである。
1)レボフロキサシン[(−)−(S)−9−fluoro−2,3−dihydro−3−methyl−10−(4−methyl−1−piperazinyl)−7−oxo−7H−pyrido[1,2,3−de][1,4]benzoxazine−6−carboxylic acid hemihydrate]
【0092】
【化19】
【0093】
2)オフロキサシン[(±)−9−fluoro−2,3−dihydro−3−methyl−10−(4−methyl−1−piperazinyl)−7−oxo−7H−pyrido[1,2,3−de][1,4]benzoxazine−6−carboxylic acid]
【0094】
【化20】
【0095】
3)シタフロキサシン[(−)−7−[(7S)−7−Amino−5−azaspiro[2.4]heptan−5−yl]−8−chloro−6−fluoro−1−[(1R,2S)−2−fluoro−1−cyclopropyl]−1, 4−dihydro−4−oxo−3−quinolinecarboxylic acid sesquihydrate]
【0096】
【化21】
【0097】
4)化合物(II)[(+)−7−[(7S)−7−Amino−7−methyl−5−azaspiro[2.4]heptan−5−yl]−6−fluoro−1−[(1R,2S)−2−fluoro−1−cyclopropyl]−1,4−dihydro−8−methoxy−4−oxo−3−quinolinecarboxylic acid hemihydrate]
【0098】
【化22】
【0099】
なお、上記化合物(II)は、以下の方法により製造することができる。
(1)アセト酢酸 tert−ブチルエステル(497mL,3.00mol)、1,2−ジブロモエタン(310mL,3.60mmol)、炭酸カリウム(1.106kg,8.00mmol)、およびジメチルホルムアミド(2.0L)の混合物を30℃の水浴で1.5時間、60℃の水浴で3.5時間、続いて30℃の水浴で4日間加熱攪拌した。反応液をセライト濾過し、濾取物をジエチルエーテル(3.5L)で洗浄した。濾液とジエチルエーテル洗浄液をあわせて水(2L)に加え、有機層を分離した。水層からジエチルエーテル(2L)で抽出し、得られた水層に水(1L)を加えた後に、さらにジエチルエーテル(2L)で抽出した。有機層をすべて合わせた後に、10%クエン酸水溶液(2L)、水(2L×3)、および飽和食塩水(2L×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。乾燥剤を濾去後、溶媒を減圧溜去し、得られた残留物を減圧蒸留して1−アセチル−1−シクロプロパンカルボン酸tert−ブチルエステル371.8g(10mmHg,72−78℃の溜分,2.02mol,67%)を無色透明オイルとして得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:1.37−1.40(4H,m),1.49(9H,s),2.44(3H,s).
【0100】
(2)1−アセチル−1−シクロプロパンカルボン酸tert−ブチルエステル(9.21g,50.0mmol)を7規定アンモニア/メタノール溶液(300mL)へ溶解し、氷冷下、濃アンモニア水(90mL)、塩化アンモニウム(53.5g,1.00mol)、およびシアン化ナトリウム(4.90g,100.0mmol)を加え、その後室温で18時間攪拌した。溶媒を減圧濃縮し、残留液へ水(100mL)を加えた後、ジクロロメタン(300mL+2×100mL)で抽出した。合わせた有機層へ無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、乾燥剤を濾去後、溶媒を減圧溜去することによって1−(1−アミノ−1−シアノエチル)−1−シクロプロパンカルボン酸tert−ブチルエステル粗生成物10.15g(48.3mmol,97%)を薄褐色オイルとして得た。得られた粗生成物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:1.02−1.12(2H,m),1.19−1.17(2H,m),1.48(9H,s),1.50(3H,s),2.13(2H,brs).
MS(ESI)m/z:155(M−tBu)+.
【0101】
(3)1−(1−アミノ−1−シアノエチル)−1−シクロプロパンカルボン酸tert−ブチルエステル(1.12g,5.30mmol)のエタノール溶液(50mL)にラネーニッケル触媒(日興理化,R−100,10mL)のエタノール懸濁液(30mL)を加え、水素ガス雰囲気下において室温で6時間激しく攪拌した。触媒をセライト濾過によって濾去し、溶媒を減圧溜去することによって、1−(1,2−ジアミノ−1−メチルエチル)−1−シクロプロパンカルボン酸tert−ブチルエステル粗生成物0.84g(3.92mmol,74%)を無色透明オイルとして得た。得られた粗生成物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。
MS(ESI)m/z:215(M+H)+.
【0102】
(4)1−(1,2−ジアミノ−1−メチルエチル)−1−シクロプロパンカルボン酸tert−ブチルエステル粗生成物0.82g(3.83mmol)を室温で濃塩酸(5mL)に溶解し、同温度で30分間攪拌した。反応液へ水を加えた後に溶媒を減圧溜去し、続いてエタノールで共沸した(2回)。1−(1,2−ジアミノ−1−メチルエチル)−1−シクロプロパンカルボン酸二塩酸塩粗生成物0.82g(3.55mmol,93%)を薄黄色泡状固体として得た。得られた粗生成物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。
1H−NMR(400MHz,CD3OD)δppm:1.20−1.26(1H,m),1.28(3H,s),1.32−1.43(2H,m),1.58−1.62(1H,m),3.46(1H,d,J=13.4Hz),3.80(1H,d,J=13.4Hz).
MS(ESI)m/z:159(M+H)+.
【0103】
(5)1−(1,2−ジアミノ−1−メチルエチル)−1−シクロプロパンカルボン酸二塩酸塩粗生成物(800mg,3.46mmol)のアセトニトリル溶液(70mL)に、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(7.38mL,34.6mmol)を加え、窒素置換下、100℃のオイルバスで4時間加熱還流した。室温まで冷却し、メタノール(70mL)を加えた後に溶媒を減圧溜去することによって、7−アミノ−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン粗生成物を薄褐色ガム状固体として得た。
MS(ESI)m/z:141(M+H)+.
【0104】
上記で得られた7−アミノ−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン粗生成物へ室温で1,4−ジオキサン(20mL)、およびジ−tert−ブチルジカーボネート(1.528g,7.00mmol)を加え、混合物を同温度で5時間攪拌した。反応液へ水(50mL)を加え、クロロホルム(100mL+50mL)で抽出した後、合わせた有機層へ無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、乾燥剤をショートシリカゲルカラムを用いて濾去後、溶媒を減圧溜去した。得られた残留物にジエチルエーテルを加えて懸濁させ濾取することによって、7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン502mg(2.09mmol,2ステップ,60%)を白色粉末として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.77−0.82(1H,m),0.94−1.04(2H,m),1.16−1.23(1H,m),1.28(3H,s),1.43(9H,s),3.29(1H,d,J=10.3Hz),4.12(1H,m),4.60(1H,brs),5.82(1H,brs).
MS(ESI)m/z:185(M−tBu)+.
【0105】
(6)7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン(3.12g,12.97mmol)のジメチルホルムアミド溶液(65mL)に、氷冷下、水素化ナトリウム(55%、ミネラルオイルディスパージョン、538mg,12.33mmol)を5分かけて加えた。同温度で40分間攪拌した後、臭化ベンジル(1.851mL,15.56mmol)を加え、室温で1.5時間攪拌した。反応液へ酢酸エチル(300mL)を加えて希釈し、水(100mL×2)、および飽和食塩水(100mL)で洗浄した。無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、乾燥剤を濾去後、溶媒を減圧溜去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(へキサン−酢酸エチル=9:1→4:1→2:1)で精製することによって、5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン4.20g(12.71mmol,98%)を無色透明ガム状固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.76−0.81(1H,m),0.93−1.06(2H,m),1.21−1.29(4H,m),1.37(9H,m),3.14(1H,d,J=10.3Hz),3.92−3.98(1H,m),4.44(1H,d,J=15.1Hz),4.56(1H,d,J=14.6Hz),4.56(1H,brs),7.22−7.33(5H,m).
MS(ESI)m/z:331(M+H)+.
【0106】
(7)上記(6)で得られたラセミ体の5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン(2.254g,6.82mmol)を光学活性カラム(CHIRALPAK AD,20mmφ×250mm,へキサン−イソプロピルアルコール=90:10,流速=20mL/分,1回あたり50mgを分割)で光学分割し、(−)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン(997mg,3.02mmol,保持時間=7.0分,[α]D25.1=−113.9゜(c=0.180,クロロホルム))、および(+)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン(957mg,2.90mmol,保持時間=11.3分,[α]D25.1=+108.8゜(c=0.249,クロロホルム))を得た。
【0107】
(8)(−)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン(950mg,2.88mmol)のジクロロメタン溶液(15mL)に、室温で、トリフルオロ酢酸(7.5mL)を加え、同温度で40分間攪拌した。溶媒を減圧溜去し、トルエンで共沸した(2回)後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)を加え、クロロホルム(100mL+2×50mL)で抽出した。合わせた有機層へ無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、乾燥剤を濾去後、溶媒を減圧溜去した。得られた残留物をテトラヒドロフラン(30mL)に溶解し、氷冷攪拌下、水素化リチウムアルミニウム(218mg,5.74mmol)を加え、同温度で1時間攪拌した。さらに水素化リチウムアルミニウム(109mg,2.87mmol)を加え、室温で2.5時間攪拌した後、再び氷冷し、水(0.31mL)、15%水酸化ナトリウム水溶液(0.31mL)、および水(0.93mL)を順に注意深く加えた。得られた混合物を室温で1晩攪拌した後、硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、セライト濾過した。濾液を減圧濃縮することによって、7−アミノ−5−ベンジル−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物を無色透明オイルとして得た。得られた粗生成物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.37−0.45(2H,m),0.56−0.66(2H,m),0.96(3H,s),2.48(1H,d,J=9.0Hz),2.55(1H,d,J=8.8Hz),2.74(2H,d,J=9.0Hz),3.59(2H,s),7.21−7.37(5H,m).
MS(ESI)m/z:217(M+H)+.
【0108】
上記で得られた7−アミノ−5−ベンジル−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物をジクロロメタン(15mL)に溶解し、ジ−tert−ブチルジカーボネート(1.255g,5.75mmol)を加え、室温で22時間攪拌した。溶媒を減圧溜去した後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール−トリエチルアミン=98:2:1 → 95:5:1)で精製することによって、(−)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン586mg(1.852mmol,3ステップ,64%)を無色透明ガム状固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.40−0.45(1H,m),0.50−0.55(1H,m),0.63−0.69(1H,m),0.80−0.85(1H,m),1.20(3H,s),1.43(9H,s),2.44(1H,d,J=8.8Hz),2.59(1H,d,J=9.5Hz),2.83(1H,d,J=8.8Hz),3.33(1H,m),3.57(1H,d,J=13.2Hz),3.68(1H,d,J=13.2Hz),4.75(1H,brs),7.20−7.37(5H,m).
MS(ESI)m/z:317(M+H)+.
[α]D25.1=−63.6゜(c=0.129,クロロホルム)
【0109】
(9)(+)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−4−オン(950mg,2.88mmol)を用い、上記(8)と同様の方法によって、7−アミノ−5−ベンジル−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物を無色透明オイルとして得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.37−0.45(2H,m),0.56−0.66(2H,m),0.96(3H,s),2.48(1H,d,J=9.0Hz),2.55(1H,d,J=8.8Hz),2.74(2H,d,J=9.0Hz),3.59(2H,s),7.21−7.37(5H,m).
MS(ESI)m/z:217(M+H)+.
【0110】
さらに、上記で得られた7−アミノ−5−ベンジル−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物から、上記(8)と同様の方法によって、(+)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン629mg(1.985mmol,3ステップ,69%)を無色透明ガム状固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.40−0.45(1H,m),0.50−0.55(1H,m),0.63−0.69(1H,m),0.80−0.85(1H,m),1.20(3H,s),1.43(9H,s),2.44(1H,d,J=8.8Hz),2.59(1H,d,J=9.5Hz),2.83(1H,d,J=8.8Hz),3.33(1H,m),3.57(1H,d,J=13.2Hz),3.68(1H,d,J=13.2Hz),4.75(1H,brs),7.20−7.37(5H,m).
MS(ESI)m/z:317(M+H)+.
[α]D25.1=+76.2゜(c=0.290,クロロホルム)
【0111】
(10)(−)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン(581mg,1.836mmol)のメタノール(40mL)溶液へ10%パラジウム炭素触媒(M,約50%含水,349mg)を加え、水素ガス雰囲気下、室温で2.5時間攪拌した。触媒をろ去後、溶媒を減圧溜去し、(−)−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物434mg(定量的)を無色透明ガム状固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.38−0.43(1H,m),0.55−0.60(2H,m),0.74−0.80(1H,m),1.08(3H,s),1.44(9H,s),2.75(1H,d,J=12.0Hz),2.77(1H,d,J=11.5Hz),3.13(1H,d,J=11.5Hz),3.75(1H,brd,J=12.0Hz),4.44(1H,brs).
MS(ESI)m/z:227(M+H)+.
[α]D25.1=−63.5゜(c=0.277,クロロホルム)
【0112】
(11)(+)−5−ベンジル−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン(627mg,1.981mmol)のメタノール(40mL)溶液へ10%パラジウム炭素触媒(M,約50%含水,376mg)を加え、水素ガス雰囲気下、室温で5時間攪拌した。触媒をろ去後、溶媒を減圧溜去し、(+)−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物452mg(定量的)を無色透明ガム状固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.38−0.43(1H,m),0.55−0.60(2H,m),0.74−0.80(1H,m),1.08(3H,s),1.44(9H,s),2.75(1H,d,J=12.0Hz),2.77(1H,d,J=11.5Hz),3.13(1H,d,J=11.5Hz),3.75(1H,brd,J=12.0Hz),4.44(1H,brs).
MS(ESI)m/z:227(M+H)+.
[α]D25.1=+59.5゜(c=0.185,クロロホルム)
【0113】
(12)上記(10)で得られた(−)−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物(434mg,1.836mmol)と、6,7−ジフルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル]−8−メトキシ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸・ジフルオロボロン錯体(663mg,1.836mmol)、並びにトリエチルアミン(0.768mL,5.510mmol)をジメチルスルホキシド(5mL)に溶解し、40℃のオイルバスで14時間加熱攪拌した。反応液にエタノール:水=4:1混合溶液(50mL)およびトリエチルアミン(5mL)を加えて100℃のオイルバスで2時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮し、残留物を酢酸エチル(200mL)に溶解し、10%クエン酸水溶液(50mL)および水(50mL×2)および飽和食塩水(50mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去することによって、7−[7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−5−イル]−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル]−8−メトキシ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸粗生成物870mg(1.676mmol,91%)を黄色泡状固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.55−0.60(1H,m),0.68−0.73(1H,m),0.74−0.80(1H,m),0.92−0.97(1H,m),1.22(3H,s),1.40(9H,s),1.43−1.59(2H,m),3.13(1H,d,J=9.8Hz),3.60(3H,s),3.75(1H,dd,J=11.0,3.7Hz),3.85(1H,dt,J=10.2,4.5Hz),4.18(1H,d,J=10.0Hz),4.47(1H,m),4.62(1H,s),4.79−4.99(1H,dm),7.83(1H,d,J=13.7Hz),8.68(1H,d,J=2.7Hz),14.88(0.7H,brs).
MS(ESI)m/z:520(M+H)+.
[α]D25.1=−128.5゜(c=1.240,クロロホルム)
【0114】
(13)上記(11)で得られた(+)−7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン粗生成物(452mg,1.981mmol)、および6,7−ジフルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル]−8−メトキシ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸・ジフルオロボロン錯体(715mg,1.981mmol)を用いて、上記(12)と同様の方法によって7−[7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−5−イル]−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル]−8−メトキシ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸粗生成物1.00g(1.925mmol,97%)を黄色泡状固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:0.55−0.60(1H,m),0.68−0.80(2H,m),0.91−0.97(1H,m),1.21(3H,s),1.40(9H,s),1.53−1.68(2H,m),3.04(1H,d,J=10.0Hz),3.61(3H,s),3.81(1H,dd,J=10.7,4.4Hz),3.87−3.93(1H,m),4.24(1H,d,J=9.8Hz),4.46(1H,m),4.65−4.85(2H,m),7.83(1H,d,J=13.4Hz),8.76(1H,s).
MS(ESI)m/z:520(M+H)+.
[α]D25.1=+133.2゜(c=2.230,クロロホルム)
【0115】
(14)上記(12)で得られた7−[7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−5−イル]−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル]−8−メトキシ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸(870mg,1.676mmol)を氷冷下濃塩酸(10mL)に溶解後、室温で20分間撹拌し、反応液をクロロホルム(20mL×5)で洗浄した。水層に氷冷下飽和水酸化ナトリウム水溶液を加えpH12.0とし、次いで塩酸でpH7.4に調整後、クロロホルム:メタノール=10:1混合溶液(200mL×2)、およびクロロホルム:メタノール:水=7:3:1下層溶液(200mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残留物をエタノールから再結晶精製し、減圧乾燥して化合物(II)644mg(1.535mmol,92%)を淡桃色粉末として得た。
mp:195−200℃.
[α]D25.1=+40.8゜(c=0.147,0.1N−NaOH).
1H−NMR(400MHz,0.1N−NaOD)δppm:0.49−0.56(2H,m),0.67−0.76(2H,m),1.12(3H,s),1.43−1.64(2H,m),3.56(3H,s),3.59−3.71(4H,m),3.99−4.04(1H,m),4.80−5.03(1H,m),7.65(1H,d,J=13.9Hz),8.45(1H,s).
元素分析:C21H23F2N3O4・0.75EtOH・0.5H2Oとして;
計算値:C,58.37;H,6.20;F,8.21;N,9.08.
実測値:C,58.23;H,5.99;F,8.09;N,9.02.
MS(EI)m/z:419(M+).
IR(ATR):2964,2843,1726,1612,1572,1537,1452,1439,1387,1360,1346,1311,1294,1265,1207cm-1.
【0116】
[凍結乾燥製剤の調製]
注射用水(350mL)にレボフロキサシン(無水物として8000mg)を溶解し、pH調節剤を加えてpHを7に調整した。この溶液に注射用水を加え、レボフロキサシン溶液の含量を20mg/mLに調整した。この溶液を容器に10mLずつ充填し、凍結乾燥した後、密栓した。
【0117】
[凍結乾燥方法(アニーリング工程あり)]
1)レボフロキサシンを含む溶液を充填した容器を、5℃に設定した凍結乾燥機の棚に積載し、
2)棚温度を、0.15℃/分の冷却速度で−30℃に冷却し、3時間保持した。
3)棚温度を、0.5℃/分の昇温速度で−5℃に昇温し、2時間保持した。
4)棚温度を、1.0℃/分の冷却速度で−40℃に冷却した。
5)棚温度−40℃で2時間以上保持した後、
6)減圧処理を開始し、棚温度を15℃に設定して30時間以上保持した。この間、減圧度は20Paに保持した。
7)品温が15℃以上になった後、棚温度を25℃に設定して6時間以上保持した。この間、減圧度は1Paに保持した。
【0118】
[アニーリング工程なしの凍結乾燥方法]
1)レボフロキサシンを含む溶液を充填した容器を、5℃に設定した凍結乾燥機の棚に積載し、
2)棚温度を、1.0℃/分の冷却速度で−40℃に冷却した。
3)棚温度−40℃で2時間以上保持した後、
4)減圧処理を開始し、棚温度を15℃に設定して30時間以上保持した。この間、減圧度は20Paに保持した。
5)品温が15℃以上になった後、棚温度を25℃に設定して6時間以上保持した。この間、減圧度は1Paに保持した。
【0119】
その他の3化合物については表4に示す条件に従い溶液を調製した後、レボフロキサシンと同様の手順で凍結乾燥した後、密栓した。
【0120】
[再溶解時間]
1バイアルに10mLの注射用水を加えて穏やかに振り混ぜ、内容物が完全に溶解するまでの時間を測定した。
【0121】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】アニーリング工程を設けた凍結乾燥方法とアニーリング工程のない凍結乾燥方法についての温度プロファイルを示す。
【図2】アニーリング工程のない凍結乾燥方法によって調製した化合物(I)の凍結乾燥製剤に再溶解液を加えたおよそ30秒後の状態を示す。
【図3】アニーリング工程を設けた凍結乾燥方法によって調製した化合物(I)の凍結乾燥製剤に再溶解液を加えたおよそ30秒後状態を示す。
【図4】凍結乾燥製剤に対するアニーリング工程の有無による再溶解時間の変化を示す。
【図5】化合物(I)含有水溶液(20mg/mL)を約−40℃に冷却して凍結させ測定したDSC測定結果を示す。
【図6】塩化ナトリウムの添加量によるDSC測定結果の違いを示す。
【図7】アニーリング工程の条件の変化による再溶解時間の変化を示す。
【図8】凍結乾燥製剤に対するアニーリング工程の有無による再溶解時間の変化を示す。
【図9】化合物(I)及びその凍結乾燥製剤の粉末X線回析測定結果を示す。
【図10】化合物(II)及びその凍結乾燥製剤の粉末X線回析測定結果を示す。
【図11】シタフロキサシン及びその凍結乾燥製剤の粉末X線回析測定結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(1)
【化1】
[式中、R1は、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基が置換していてもよいアリール基、ハロゲン原子もしくは炭素数1から6のアルキル基が置換していてもよいヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキルアミノ基を表わし;
R2は、水素原子または炭素数1から6のアルキルチオ基を表わし;このR1とR2とは、母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよく、この環は硫黄原子を環の構成原子として含んでもよく、さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。
R3は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、チオール基、ハロゲノメチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わし;
A1は、窒素原子または式(2)
【化2】
(式中、X2は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノメチル基、ハロゲノメトキシ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わし;このX2と上記のR1とは母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよく、このようにして形成された環は、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を環の構成原子として含んでもよく、さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。)
で表わされる部分構造を表わし;
A2およびA3は、各々異なって窒素原子または炭素原子を表わすが、A1、A2およびA3とこれらが結合している炭素原子とは、部分構造
【化3】
または、部分構造
【化4】
を形成する。
X1は、ハロゲン原子または水素原子を表わし;
Yは、水素原子、フェニル基、アセトキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、エトキシカルボニル基、コリン基、ジメチルアミノエチル基、5−インダニル基、フタリジル基、5−アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イルメチル基、3−アセトキシ−2−オキソブチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から7のアルコキシメチル基、または炭素数1から6のアルキレン基とフェニル基とから構成されるフェニルアルキル基を表わし;
Zは、単環式、二環式、または三環式の複素環式置換基を表わすが、この複素環式置換基は飽和または部分飽和であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1以上の異原子を含んでいてもよく、さらにビシクロ構造もしくはスピロ環状構造であってもよく、そしてハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群より選ばれる1または2以上の原子または基が置換していてもよい。]
で表わされる化合物およびpH調節剤を含有する水溶液を冷却して凍結体を得、次いで温度を一旦昇温させた後、再度冷却して凍結乾燥することを特徴とする、式(1)の化合物を有効成分とする非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項2】
R1が、環状アルキル基またはハロゲノシクロアルキル基である請求項1に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項3】
R2およびR3が、水素原子である請求項1または2に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項4】
A1が、式(2)で表される部分構造であり、X2が、炭素数1から6のアルコキシ基またはX2と上記R1と母核の一部を含んで酸素原子、窒素原子または硫黄原子を環の構成原子として含む環状構造を形成したものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項5】
X1が、水素原子またはフッ素原子である請求項1〜4のいずれか1項に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項6】
式(1)で表される化合物が、レボフロキサシン、オフロキサシン、シタフロキサシン、(7−[3−(R)−(1−アミノシクロプロピル)ピロリジン−1−イル]−1−[2−(S)−フルオロ−1−(R)−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸、(+)−7−[(7S)−7−アミノ−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−5−イル]−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロ−1−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソ−3−キノリンカルボン酸1/2水和物、シプロフロキサシン、モキシフロキサシンまたはトロバフロキサシンである請求項1に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項7】
昇温時における凍結体の到達温度が、凍結体のガラス転移温度から水溶液の凍結温度の範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項8】
昇温時における凍結体の到達温度が、−20℃から−2℃の範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項9】
昇温時における凍結体の到達温度が、−15℃から−5℃の範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項10】
式(1)
【化5】
[式中、R1は、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基が置換していてもよいアリール基、ハロゲン原子もしくは炭素数1から6のアルキル基が置換していてもよいヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキルアミノ基を表わし;
R2は、水素原子または炭素数1から6のアルキルチオ基を表わし;このR1とR2とは、母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよく、この環は硫黄原子を環の構成原子として含んでもよく、さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。
R3は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、チオール基、ハロゲノメチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わし;
A1は、窒素原子または式(2)
【化6】
(式中、X2は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノメチル基、ハロゲノメトキシ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わし;このX2と上記のR1とは母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよく、このようにして形成された環は、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を環の構成原子として含んでもよく、さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。)
で表わされる部分構造を表わし;
A2およびA3は、各々異なって窒素原子または炭素原子を表わすが、A1、A2およびA3とこれらが結合している炭素原子とは、部分構造
【化7】
または、部分構造
【化8】
を形成する。
X1は、ハロゲン原子または水素原子を表わし;
Yは、水素原子、フェニル基、アセトキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、エトキシカルボニル基、コリン基、ジメチルアミノエチル基、5−インダニル基、フタリジル基、5−アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イルメチル基、3−アセトキシ−2−オキソブチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から7のアルコキシメチル基、または炭素数1から6のアルキレン基とフェニル基とから構成されるフェニルアルキル基を表わし;
Zは、単環式、二環式、または三環式の複素環式置換基を表わすが、この複素環式置換基は飽和または部分飽和であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1以上の異原子を含んでいてもよく、さらにビシクロ構造もしくはスピロ環状構造であってもよく、そしてハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群より選ばれる1または2以上の原子または基が置換していてもよい。]
で表わされる化合物およびpH調節剤を含有する水溶液を、次の一連の工程に附すことを特徴とする、式(1)の化合物を有効成分とする非晶質凍結乾燥製剤の製造方法;
1)該水溶液を冷却して凍結体を得る工程
2)凍結体の温度を昇温させるアニーリング工程
3)再度冷却して凍結乾燥する工程
【請求項11】
アニーリング工程の温度が、凍結体のガラス転移温度から水溶液の凍結温度の範囲である請求項10に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項12】
アニーリング工程の温度が、−20℃から−2℃の範囲である請求項10に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項13】
アニーリング工程の温度が、−15℃から−5℃の範囲である請求項10に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項1】
次の式(1)
【化1】
[式中、R1は、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基が置換していてもよいアリール基、ハロゲン原子もしくは炭素数1から6のアルキル基が置換していてもよいヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキルアミノ基を表わし;
R2は、水素原子または炭素数1から6のアルキルチオ基を表わし;このR1とR2とは、母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよく、この環は硫黄原子を環の構成原子として含んでもよく、さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。
R3は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、チオール基、ハロゲノメチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わし;
A1は、窒素原子または式(2)
【化2】
(式中、X2は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノメチル基、ハロゲノメトキシ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わし;このX2と上記のR1とは母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよく、このようにして形成された環は、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を環の構成原子として含んでもよく、さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。)
で表わされる部分構造を表わし;
A2およびA3は、各々異なって窒素原子または炭素原子を表わすが、A1、A2およびA3とこれらが結合している炭素原子とは、部分構造
【化3】
または、部分構造
【化4】
を形成する。
X1は、ハロゲン原子または水素原子を表わし;
Yは、水素原子、フェニル基、アセトキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、エトキシカルボニル基、コリン基、ジメチルアミノエチル基、5−インダニル基、フタリジル基、5−アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イルメチル基、3−アセトキシ−2−オキソブチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から7のアルコキシメチル基、または炭素数1から6のアルキレン基とフェニル基とから構成されるフェニルアルキル基を表わし;
Zは、単環式、二環式、または三環式の複素環式置換基を表わすが、この複素環式置換基は飽和または部分飽和であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1以上の異原子を含んでいてもよく、さらにビシクロ構造もしくはスピロ環状構造であってもよく、そしてハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群より選ばれる1または2以上の原子または基が置換していてもよい。]
で表わされる化合物およびpH調節剤を含有する水溶液を冷却して凍結体を得、次いで温度を一旦昇温させた後、再度冷却して凍結乾燥することを特徴とする、式(1)の化合物を有効成分とする非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項2】
R1が、環状アルキル基またはハロゲノシクロアルキル基である請求項1に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項3】
R2およびR3が、水素原子である請求項1または2に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項4】
A1が、式(2)で表される部分構造であり、X2が、炭素数1から6のアルコキシ基またはX2と上記R1と母核の一部を含んで酸素原子、窒素原子または硫黄原子を環の構成原子として含む環状構造を形成したものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項5】
X1が、水素原子またはフッ素原子である請求項1〜4のいずれか1項に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項6】
式(1)で表される化合物が、レボフロキサシン、オフロキサシン、シタフロキサシン、(7−[3−(R)−(1−アミノシクロプロピル)ピロリジン−1−イル]−1−[2−(S)−フルオロ−1−(R)−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸、(+)−7−[(7S)−7−アミノ−7−メチル−5−アザスピロ[2.4]ヘプタン−5−イル]−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロ−1−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソ−3−キノリンカルボン酸1/2水和物、シプロフロキサシン、モキシフロキサシンまたはトロバフロキサシンである請求項1に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項7】
昇温時における凍結体の到達温度が、凍結体のガラス転移温度から水溶液の凍結温度の範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項8】
昇温時における凍結体の到達温度が、−20℃から−2℃の範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項9】
昇温時における凍結体の到達温度が、−15℃から−5℃の範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項10】
式(1)
【化5】
[式中、R1は、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基が置換していてもよいアリール基、ハロゲン原子もしくは炭素数1から6のアルキル基が置換していてもよいヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキルアミノ基を表わし;
R2は、水素原子または炭素数1から6のアルキルチオ基を表わし;このR1とR2とは、母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよく、この環は硫黄原子を環の構成原子として含んでもよく、さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。
R3は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、チオール基、ハロゲノメチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わし;
A1は、窒素原子または式(2)
【化6】
(式中、X2は、水素原子、アミノ基(このアミノ基は、ホルミル基、炭素数1から6のアルキル基もしくは炭素数2から5のアシル基が置換していてもよい。)、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲノメチル基、ハロゲノメトキシ基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から6のアルケニル基、炭素数2から6のアルキニル基、または炭素数1から6のアルコキシ基を表わし;このX2と上記のR1とは母核の一部を含んで環状構造を形成するように一体化してもよく、このようにして形成された環は、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を環の構成原子として含んでもよく、さらにこの環は炭素数1から6のアルキル基を置換基として有していてもよい。)
で表わされる部分構造を表わし;
A2およびA3は、各々異なって窒素原子または炭素原子を表わすが、A1、A2およびA3とこれらが結合している炭素原子とは、部分構造
【化7】
または、部分構造
【化8】
を形成する。
X1は、ハロゲン原子または水素原子を表わし;
Yは、水素原子、フェニル基、アセトキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、エトキシカルボニル基、コリン基、ジメチルアミノエチル基、5−インダニル基、フタリジル基、5−アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イルメチル基、3−アセトキシ−2−オキソブチル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数2から7のアルコキシメチル基、または炭素数1から6のアルキレン基とフェニル基とから構成されるフェニルアルキル基を表わし;
Zは、単環式、二環式、または三環式の複素環式置換基を表わすが、この複素環式置換基は飽和または部分飽和であって、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1以上の異原子を含んでいてもよく、さらにビシクロ構造もしくはスピロ環状構造であってもよく、そしてハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルアミノ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、および炭素数1から6のアミノアルキル基からなる群より選ばれる1または2以上の原子または基が置換していてもよい。]
で表わされる化合物およびpH調節剤を含有する水溶液を、次の一連の工程に附すことを特徴とする、式(1)の化合物を有効成分とする非晶質凍結乾燥製剤の製造方法;
1)該水溶液を冷却して凍結体を得る工程
2)凍結体の温度を昇温させるアニーリング工程
3)再度冷却して凍結乾燥する工程
【請求項11】
アニーリング工程の温度が、凍結体のガラス転移温度から水溶液の凍結温度の範囲である請求項10に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項12】
アニーリング工程の温度が、−20℃から−2℃の範囲である請求項10に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項13】
アニーリング工程の温度が、−15℃から−5℃の範囲である請求項10に記載の非晶質凍結乾燥製剤の製造方法。
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2008−231067(P2008−231067A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75875(P2007−75875)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】
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