説明

キメラのコイルドコイル(二重コイル)分子を使用する方法

【課題】COMP-Ang1のようなキメラのコイルドコイル(二重コイル)分子の新しい適用の提供。
【解決手段】リガンドの受容体結合領域にリンクされたコイルドコイル領域を含むコイルドコイル・キメラ分子の有効な量を、必要のある人に投与することを含む治療血管形成によって治療できる疾患を処置する方法の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COMP-Ang1のようなキメラのコイルドコイル(二重コイル)分子の新しい適用を提供し、治療的血管形成を進展し、創傷治癒を増強し、粥状硬化性勃起障害を回復し、敗血症と糖尿病性網膜症に含まれる血管の漏出を防ぐことに関わる。本発明は、さらに衝撃、副腎皮質機能低下症、高血圧症、関節炎、卒中、虚血の脳疾患、喘息などの疾病に関わっている血管にとってのCOMP-Ang1のようなキメラのコイルドコイル分子の適用を提供するものある。
【背景技術】
【0002】
アンジオポイエチン家族タンパク質は4つの異なるアンジオポイエチン(angiopoietins)、すなわちアンジオポイエチン-1(Ang1)、アンギオポイエチン-2(Ang2)、アンジオポイエチン-3(Ang3)、およびアンジオポイエチン-4(Ang4)を含んでいる(非特許文献1、2)(図1)。Ang1とAng4は血管の内皮細胞特異的受容体チロシンキナーゼTie2のアゴニストとして働き、一方、Ang2とAng3がTie2のアンタゴニストとして働くことが知られている(非特許文献1、2)(図1)。しかしながら、最近の報告書によると、Ang2とAng3もまた環境依存形式でアゴニストとして働くことができることが示された(非特許文献3,4)(図1)。すぐ最近の報告書によると、全てのアンジオポイエチンが、さらに別の血管の内皮細胞特異的受容体チロシン・キナーゼTie1と結合し活性化することをが示された(非特許文献5)(図1)。Tie2およびTie1の活性化は、脈管形成、血管形成、リンパ管形成および内皮細胞健全性保持に関係する(図1)。
【0003】
多くの報告書(非特許文献6、7、8、9、10)によると、虚血心、手足および脳における、血管形成の治療にはAng1を用いることができ、なぜならAng1の適用は、健康となり、非漏出で、安定した血管形成を起こすのであるからで、一方、現在用いられているVEGFが非健康となり、漏出し、不安定な血管形成を起こす。
【0004】
Ang1の生化学的機構は複雑である。Ang1のタンパク質構造の概念図は、アミノ酸1−19が分泌シグナル配列(S)であることを示し、アミノ酸20−155はスーパークラスタリング領域(SCD)であり、アミノ酸156−255はコイルドコイルのオリゴマーの領域(CCOD)であり、アミノ酸256−283はリンカー(L)であり、そして、アミノ酸284−498はフィブリノーゲン様領域(FLD)である(図2)。システイン(C)が、アミノ酸の41、54、265、286、315、435、437、439および452番目にある(図2)。一旦Ang1が組換え型タンパク質として生成されれば、それはしばしば不溶性であり、簡単に凝集し、貼り付きそして活性が不安定である。Ang1の生体内使用のため、可溶で、安定で、強力なAng1変異体、COMP-Ang1が開発された(非特許文献11、12、特許文献1、2:その参照文献は参照のため、もっぱらここに組入れられる)。COMP-Ang1は、生体内および外の肺内皮細胞におけるTie2受容体のリン酸化で、生来のAng1より有力である(非特許文献11、12、特許文献1、2)。
【非特許文献1】Yancopoulos et al.2000年、Nature 407;242-248
【非特許文献2】Koh et al.2002年、Exp MoI Med.34;1-11
【非特許文献3】Kim et al., Oncogene, 2000 14;4549-4552
【非特許文献4】Lee et al., FASEB J.18;1200-1208
【非特許文献5】Saharinen et al., 2005, J Cell Biol. 169;239-243
【非特許文献6】Suri et al., 1998, Science. 282;468-471
【非特許文献7】Thurston et al., 1999, Science. 286:251 1-2514
【非特許文献8】Shyu et al., 1998, Circulation. 98:2081-2087
【非特許文献9】Chae et al., 2000, Arterioscler Thromb Vase Biol. 20:2573-2578
【非特許文献10】Zhou et al., 2004, J Am Coll Cardiol. 44:897-903
【非特許文献11】Cho et al., PNAS 101:5547-5552, 2004
【非特許文献12】Cho et al., PNAS 101:5553-5558,2004
【特許文献1】米国特許出願No.10/273,180
【特許文献2】PCT/IB03/03814
【発明の開示】
【0005】
多くの血管成長因子が血管形成の治療ために考えられたが、いかなる分子も副作用のない健康で安全な血管形成を作り出すことができない。本発明のCOMP-Ang1の適用は、糖尿病マウスモデルにおける皮膚創傷治癒の間、健康で、非漏出性で、安定な血管形成、リンパ管形成、および血流を増強し、虚血の後足回復、および大人の動物の陰茎の勃起障害を回復する。COMP-Ang1は、(1)血管数の特異的増加、(2)血管の特異的拡張、(3)大人の動物の明白な病理学的変化(生理的範囲内の)が無いリンパ管の特異的増加、を引き起こす。
【0006】
血管の拡張は、大人の血管における、アンギオポイエチン-1(Ang1)誘導変化の特性である。しかしながら、Ang1が媒介する血管が拡張した組織がより多く血流量を増すか、および本拡張が可逆的か、は知られていない。本発明者は、可溶で、安定で、強力なAng1変異体、COMP-Ang1を創出した。本出願では、成熟マウスの気管の微小血管系における、血管の拡大および血流量に対するCOMP-Ang1の様々な服用量および持続の効果を研究し、持続的な血管の拡大の可能なメカニズムを探索した。本発明者の実験により、アデノウイルスのベクターによって投与されたCOMP-Ang1により、持続的な血管拡大が引き起こされ、気管血管の血流を増加させることが明らかとなった。対照的に、COMP-Ang1組換え型タンパク質の短期の投与は、一時的な血管拡張を引き起こしたが、一か月以内に自然に元に戻った。両方の場合で、血管拡張は血管内膜増殖に起因していた。本COMP-Ang1誘導血管リモデリング(remodeling)は、主としてTie2活性化を通じて媒介される。Tie2の保持された過剰発現は、血管変化の維持に寄与している可能性があった。同時に、われわれが見出したことにより、COMP-Ang1を用いた治療が、持続的な血管の拡大および増加した血流を生み出すことが示された。
【0007】
微小血管の機能障害は、糖尿病患者で見られ、低下した創傷治癒の主な原因である。したがって、構造的および機能的な微小血管系の再建は、これらの患者においては、創傷治癒を促進するのに有益となる可能性がある。Angiopoietin-1(Ang1)は、Tie2とTie1の受容体によって安定して機能的な血管を生成するために機能する独自の特異的な成長因子である。本発明において、我々は、糖尿病のマウスの皮膚の傷が治る過程の促進において、COMP-Ang1(可溶で、安定した、強力なAng1変異体)の有効性を見出した。除去十分な(excisional)厚さの傷が、糖尿病患者(db/db)マウスの後背部横に作られ、そして、マウスは、COMP-Ang1がエンコードされたアデノウイルス(Ade-COMP-Ang1)、あるいはコントロール[ベータ]ギャルを持つウイルス(Ade-[beta]-gal)、と全身的に処理され、または組換えCOMP-Ang1タンパク質あるいはウシ血清アルブミン(BSA)で局所的に処理された。時間的経過観察は次のことを明らかにした、つまり、Ade-COMP-Ang1あるいはCOMP-Ang1タンパク質で処理されたマウスは、コントロール・ウィルスあるいはBSAで処理されたマウスと比較して、傷部分において加速された傷閉鎖、増強された血管形成とリンパ管形成、およびより高い血流を示した。COMP-Ang1による傷閉鎖および血管形成促進は、eNOSおよびiNOSに依存しなかった。総合すれば、COMP-Ang1は、増強された血管形成、リンパ管形成および血流によって糖尿病の創傷治癒を促進することができた。
【0008】
本発明は、血管形成が治療手段となる、様々な疾病を治療する方法に直接関係する。1つの様相では、本発明は、コイルドコイル領域を含む有効な量のコイルドコイルキメラ分子を、これはリガンドの受容体結合領域にリンクしている、必要とするヒトへの投与を含む虚血の疾病の治療に直接関係がある。この方法では、コイルドコイル領域は、マトリックス・タンパク質ファミリー、転写調節因子ファミリー、成長因子ファミリーあるいは分泌蛋白質ファミリーに属しているタンパク質に属する領域を含んでいてもよい。コイルドコイル領域は、軟骨基質タンパク質あるいは軟骨オリゴマー基質タンパク質に由来することができる、そしてさらに、受容体結合領域は、Tie1またはTie2に結合することができる。したがって、リガンドは、サイトカイニン、ホルモンあるいはアンジオポイエチン-関連タンパク質のような成長因子であることができ、ここでアンジオポイエチン-関連たんぱく質-1(ARP1)、アンジオポイエチン-関連タンパク質-2(ARP2)、肝臓のフィブリノーゲン/アンジオポイエチン-関連タンパク質(HFARP)が挙げられる。リガンドは、アンジオポイエチン-1、アンジオポイエチン-2、アンジオポイエチン-3またはアンジオポイエチン-4あることができ、そして、特に、アンジオポイエチン-1である。最も好ましくは、キメラ的なコイルドコイル分子はCOMP-Ang1である。
【0009】
対象は、虚血疾病であり、しかし制限されるものでなく、心臓、手足、脳、陰茎、胃あるいは腎臓の疾病が挙げられる。
【0010】
さらに、キメラのコイルドコイル分子の長期に渡る送達のため一般的には遺伝子治療と名付けられるように、キメラのコイルドコイル分子の投与は、遺伝子の構築形式によるタンパク質形態の投与によって行えると理解されている。遺伝子送達(運搬)ビークル(媒介手段)は、リポソーム類、レトロウイルスまたはアデノウイルスのようなウイルス類、またはアデノ随伴ウイルスのようなウイルス様粒子を含む任意の方法が使用できる。
【0011】
さらに別の実施例では、本発明は、リガンドの受容体結合領域に結びつくコイルドコイル領域を含むコイルドコイル・キメラ分子の有効な量を、必要とされるヒトに投与し治療する方法に直接関連する。傷は体の皮膚あるいは内部であることができるし、または、厳しいやけどであることができる。さらに、傷は糖尿病疾患のヒトに引き起こされたものであることができる。キメラのコイルドコイル分子を用いた治療法、およびタンパク質や遺伝子の送達手段は上述した。タンパク質は、溶液にて内部に送達されるし、あるいは皮膚の傷が治療されている場合、局所的に選択的可能な送達とできる。
【0012】
また別の実施例では、本発明は、リガンドの受容体結合領域に結びつくコイルドコイル領域を含むコイルドコイルキメラ分子の有効な量を、必要とされるヒトに投与し血管の漏出を治療することに直接関係する。血管の漏出は、敗血症、糖尿病性網膜症、脳浮腫、過度の出血、月経過多あるいは鼻血によるものであることができる。キメラのコイルドコイル分子を用いた治療法、およびタンパク質や遺伝子の送達手段は上述した。
【0013】
別の様相では、本発明は、リガンドの受容体結合領域に結びつくコイルドコイル領域を含むコイルドコイルキメラ分子の有効な量を、必要とされるヒトに投与し、陰茎の勃起障害を治療する方法に直接関係する。勃起障害は、粥状動脈硬化の(atherosclerotic)または血管の疾患型のものであることができる。キメラのコイルドコイル分子を用いた治療法、およびタンパク質や遺伝子の送達手段は上述した。
【0014】
また別の態様では、本発明は、リガンドの受容体結合領域に結びつくコイルドコイル領域を含むコイルドコイルキメラ分子の有効な量を、必要とされるヒトに投与し、心筋梗塞の治療する方法に直接関係する。キメラのコイルドコイル分子を用いた治療法、およびタンパク質や遺伝子の送達手段は上述した。
【0015】
本発明は、さらに上述のキメラ的なコイルドコイル分子を用いた細胞、毛包、組織および器官の移植治療の方法に関連する。
【0016】
本発明の、これらおよび他の目的は、本発明の引き続いての記載、ここに付けられた、参照される図面、およびここに加えられている請求項により、より完全に理解されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本出願において、「a」および「an」は、物の単一および複数の両方を言うために用いられる。
【0018】
より詳細に以下に記述されるように、出願人は、「多量体化する(multimerizing)」リガンドのためにコイルドコイル領域を使用する方法を発見し、それは該リガンドの生物学的活性を増強し、該多量体化の欠如は、より低いレベルの生物学的活性を呈する。本発明のこの方法は、該リガンドの非多量体化型と比較して、多量体化された時、良好なアフィニティおよび/または増強された活性(すなわち、シグナリング能力)を有するいかなるリガンド由来の受容体結合領域を多量体化するために用いられてもよい。
【0019】
本発明は、可溶性受容体を「多量体化する」ための、コイルドコイル領域の使用方法を提供し、該多量体化が欠如することが、低いレベルの生物学的および結合活性となってしまうような受容体の、どの機能が不活発な可溶性受容体を生物学的に活性化するか、あるいは、どれが受容体の生物学的および結合活性を増強するか、ということを明らかにする。本方法は、どんな受容体を使用し、多量体化リガンド結合領域を用いてもよく、可溶性受容体の自然の形と比較して、多様体化された時、多量体化された時、良好なアフィニティおよび/または増強された活性(すなわち、結合能力)を有する。
【0020】
ここに使用される、「約」あるいは「実質的に」の文言は、一般に、正確な数に制限されたことに余地を提供する。例えば、ポリペプチド・シーケンスの長さのコンテキストにおいて使用された場合、「約」あるいは「実質的に」は、ポリペプチドがアミノ酸の宣言された数に制限されないことを意味する。いくつかのアミノ酸が、N-末端またはC-末端に付加、欠失は、その結合活性のような機能的な活動が存在する限り許容される。ここに使用され、投与における「と一緒に」は、さらに1以上の治療剤を、任意の順に、同時に(同時的)連続する投与の意味を含んでいる。
【0021】
ここに使用される、「アゴニスト」は、受容体に結合するリガンドを指し、それは受容体を活性化し、および生理学的活性を促進する。例えば、Ang1はTie2受容体のアゴニストであると考えられる。
【0022】
ここに使用される、「アミノ酸」および「アミノ酸類」は、すべての自然に発生するL-αアミノ酸を指す。この定義は、ノルロイシン、オルニチンおよびホモシステインを含む。
【0023】
ここに使用される、一般に、用語「アミノ酸配列変異体」は、参照(例えば、自然のシーケンス)ポリペプチドと比べ、それらのアミノ酸配列のいくつかが異なる分子を指す。アミノ酸変異は、置換、挿入、欠失あるいは自然のアミノ酸配列におけるこのような変更の任意の所望の組合せでよい。
【0024】
置換変異体は、天然の配列において少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、同位置のその場所に異なるアミノ酸が挿入されたようなものである。この置換は1つでもよく、この場合、分子中の1つのアミノ酸だけが置換されており、または、複数でもよく、この場合、2つまたはそれ上のアミノ酸が同分子の中で置換されている。
【0025】
シーケンス内のアミノ酸の置換は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選ばれてもよい。例えば、無極性(疎水性の)アミノ酸はアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンを包含する。極性中性のアミノ酸はグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを包含する。正に荷電した(塩基性)アミノ酸はアルギニン、リジンおよびヒスチジンを包含する。負に荷電した(酸性)アミノ酸はアスパラギン酸とグルタミン酸を包含する。さらに本発明の範囲内として含まれているものは、次のようなタンパク質または断片、または誘導体で、同じまたは同じような生物学的活性を有し、そして例えば、グリコシル化、タンパク分解的切断、抗体分子または細胞リガンドとの繋がりやその他のような、翻訳後または翻訳中に異なった修飾を受けた誘導体類である。
【0026】
挿入変異体は、自然のアミノ酸配列の特別な位置で、あるアミノ酸の直前に挿入された1つまたはそれ以上のアミノ酸を持つものである。直前のアミノ酸とは、アミノ酸のα-カルボキシかα-アミノ官能基と連結することを意味する。
【0027】
欠失変異体は、自然のアミノ酸配列で1つまたはそれ以上のアミノ酸が欠失したものである。通常、欠失変異体は、分子の特別な領域の1つあるいは2つのアミノ酸欠失を有するだろう。
【0028】
ここに使用される、「アンタゴニスト」とは、別のリガンドの作用を無効にするようなリガンドを意味し、生物学的反応を顕在化せずに、細胞受容体に結合するリガンドのようなものを意味する。
【0029】
ここに使用される、本発明のリガンドに関して「生物学的に活性」とは、自然の受容体と特異的に結合し、およびシグナルを発生しシグナル伝達に関与する分子の能力を意味し、例えば、自然のTie2受容体、あるいは自然の結合受容体(例えばTie2)能力の阻止が挙げられる。したがって、本発明の(自然の、または変異体)リガンドは、アンタゴニストおよび自然の受容体のアンタゴニスト、例えば、Tie2受容体を包含している。本発明のリガンドの好ましい生物活性は、脈管化(vascularization)の誘導または阻害する能力を含む。脈管化誘導能力は、脈管化が望ましい生物学的条件および疾病の処置に役立つだろう。他方、脈管化を阻害または阻止する能力は、例えば、細胞増殖と腫瘍成長を防止すること、または減少することに使用してもよい。
【0030】
本発明のリガンドの好ましい生物活性は、血管透過性を阻害する能力を含む。血管透過性を阻害する能力は、病状、および糖尿病性網膜症、浮腫および腹水のような疾病の治療に役立つ。本発明のリガンドの好ましい生物活性は、内皮細胞の性質(アポトーシスの防止を含む)を維持する能力を含んでいる。内皮細胞の性質を維持する能力は、病状、およびマンニトール処置、放射線および敗血症のような疾病の治療に役立つ。
【0031】
キメラの受容体の生物活性は、それは可溶型であってもよく、そのリガンドに結合して、リガンド活性を阻害するか競争的に阻害する能力を含んでいる。したがって、このように、リガンドが細胞増殖のアゴニストである場合、細胞増殖は阻害されてもよい。あるいは、リガンドが細胞増殖のアンタゴニストである場合、キメラの受容体の投与は、細胞増殖のエンハンサーとして作用してもよい。
【0032】
さらに、そのキメラのリガンドおよびキメラの受容体を検出可能な標識でラベルし、リガンド−受容体結合相互作用を決定することが意図される。これは、アイソトープ、蛍光性タグ、酵素タグあるいは化学発光タグのようなものが挙げられる。このようなものとして、キメラ分子を使用する定量法が、さらに意図される。
【0033】
ここに使用される、「キャリアー」は、薬学的に許容できるキャリアー、賦形剤、または使用された用量と濃度でさらされる細胞または哺乳動物にとって無毒な安定剤を含む。多くの場合、薬学的に許容できるキャリアーは、pHバッファー水溶液である。薬学的に許容できるキャリアーの例は、制限されるものではないが、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸のようなバッファー類;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンあるいは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンあるいはリジンのようなアミノ酸;単糖、二糖類、およびグルコース、マンノースあるいはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩を形成する対イオン;および/またはTWEEN(R)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(R)のようなノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0034】
ここに使用される、「キメラのコイルドコイル分子」および「コイルドコイルキメラ分子」は、互換的に使用される。
【0035】
ここに使用される、「キメラのリガンド」、「キメラの受容体」、「キメラのポリペプチド」または「キメラ分子」は、コイルドコイル領域、受容体結合領域またはリガンド結合領域の結合を指す。得られたキメラのポリペプチドは、生物学的に活性な多量体を形成することができ、それは可溶性である。コイルドコイル領域は、いかなる動物または哺乳類のタンパク質も含む任意の起源に由来してよく、中でも、特にヒトタンパク質、さらに合成的に作られるものまで含んでいる。さらに、コイルドコイル領域およびリガンドまたは受容体の構成物は同じか異なる起源でよい。キメラの構成物がコイルドコイル領域、リガンドの受容体結合領域あるいは受容体のリガンド結合領域を含み、さらに他の要素(成分)を含んでもよく、この包含は、可溶性を改善するような生物学的活性多量体形成に干渉しない限りにおいてでよく、キメラのポリペプチドを組換え産物として得るのは容易で、そして自然のリガンドや自然の可溶性受容体と実質的に同じかより強い能力を持ってもよい、ことが理解される。例えば、もしその包含がキメラ分子の機能に干渉しなければ、FLAGシーケンスは精製の容易さで、含まれてもよい。ヒト化された構成物が望まれる場合、FLAGシーケンスは削除されてもよい。
【0036】
ここに使用される、「有効な量」は有益な効力に十分な量か、あるいは望まれた臨床または生化学の結果から効果に十分な量をいう。有効な量は、1回またはそれ以上の回数、投与することができる。本発明の目的のため、有効な量の阻害化合物は、疾病状態の進行を軽減するか、改善するか、安定させるか、逆にするか、遅くするか、遅らせるのに十分な量をいう。
【0037】
ここに使用される、「断片」あるいは「機能的な誘導体」は、生物学的に活性なアミノ酸配列誘導体、および本発明の自然のリガンドまたは受容体の断片、同様に共有結合修飾、これには有機的誘導体化剤による反応により得られた誘導体を含み、翻訳後修飾、非蛋白質のポリマーの誘導体、および免疫付着因子を指す。
【0038】
ここに使用される、「宿主細胞」は、本発明のベクターの受取者でありうる、或いは、あった個々の細胞または細胞培養を含んでいる。宿主細胞は、単一の宿主細胞の子孫を含み、および、子孫は、自然か、偶然か、手の込んだ変異および/または変化によりオリジナルの親細胞と必ずしも、完全には同一(形態において、または総DNAの補完性において)である必要は無い。
【0039】
ここに使用される、「リガンド」は、いかなる分子または作用物質、または化合物で、ポリペプチドのような分子に、特異的に共有結合、あるいは一時的に結合するものを指す。あるコンテキストで使用された時、リガンドは抗体を含んでいてもよい。他のコンテキストでは、「リガンド」は分子を指してもよく、リガンド捕集におけるように、高いアフィニティで別の分子により結合されることが求められる化合物である。
【0040】
ここに使用される、「リガンド結合領域」は、リガンドに結合する受容体の部分、およびそのリガンドを結合するのに必要な受容体の最小の部分を含んでいるものを指す。
【0041】
ここに使用される、「リンクされた(linked)」は、多量体化領域とリガンドまたは受容体の間での直接的または間接的接続を指す。キメラ的な融合活性が存在する限り、これらの2つの領域間の直接的融合、またはリンカー結合物あるいは介在する領域あるいは要素によって分離されている領域での間接的融合の両方が考えられる。
【0042】
ここに使用される、治療の目的のための「哺乳動物」は、人間、家庭と農場動物、および動物園の、娯楽の、または犬、猫、牛、馬、羊、ブタなどのようなペットの動物を含む、哺乳動物として分類される動物を指す。好ましくは、哺乳動物は人間である。
【0043】
ここに使用される、「多量体」あるいは「多量体化」は、コイルドコイル領域のような多量体化剤がお互いに結合し次に挙げるような多量体を形成することを指し、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体などが挙げられ、これらは並列、反並列の形式であってもよく、分子内または分子外の結合を通して形成される。
【0044】
ここに使用される、「薬学的に許容できるキャリアーおよび/または希釈剤」は、全ての溶剤、分散メディア、抗菌性コーティングおよび抗真菌薬、等張および吸収遅速剤、およびその他同種のものを包含する。薬学的に活性な物質としてのそのようなメディアおよび剤の使用は、技術的に良く知られている。どんな従来のメディアあるいは剤も有効成分と互換性がない限りでは、異議を唱えることとなり、それの治療組成物の使用が熟考される。補足の有効成分も組成物に組み入れることができる。
【0045】
投与のし易さおよび用量の均一性のため、用量ユニット形式で非経口の組成物を処方することは特に有利である。ここに使用されるような用量ユニット形式は、哺乳動物が処理される対象となる単一の投薬に適した物理的に個別のユニットを指す;必要とされる薬学的キャリアー関連した望まれる治療効果を生むと意図された活性物質の前もっての決定された量を含んでいる各ユニットをいう。本発明の投薬ユニット形式についての処方箋によると、次のように指示され、かつ直接依存している、(a)活性物質および達成される特別の治療効果の独自の特性、および(b)配合技術における本来的制限があり、これは生体の疾病治療の活性物質が、体の健康を害すような病状を有する場合、を意味する。
【0046】
主要な有効成分は、用量ユニット形式の適切な薬学的に許容できるキャリアーを含む有効な量の便利で有効な投与のために配合される。ユニット用量形式は、例えば、0.5μgから約2000mgに及ぶ範囲の量として主要な活性化合物を含むことができる。比で表現されると、活性化合物は、キャリアーの約0.5μg/mlから一般的に存在しうる。補足的有効成分を含んでいる組成物の場合には、用量は、前記成分の通常量および投与法を指示され決定される。
【0047】
ここに使用される、「受容体結合領域」は受容体に結合し、その受容体を結合するのに必要なリガンドの最小の部分を含んでいるリガンドの部分を指す。本発明は、コイルドコイル領域のような多量体化剤は、以前には、それらを含んでいる分離する組換え型タンパク質のための妨害の源ととらえられていたが、容易な組換え型タンパク質発現および精製、天然タンパク質に対し、より高い可溶性およびより強いか実質的に等しい効力、という有利な特徴を提供することを明らかした。
【0048】
ここに使用される、「試料」あるいは「生物学的試料」は、その最も広い意味で引用され、そして行なわれることになっている分析のタイプに依存して、キメラのAng1結合因子を含んでいてもよい、個人、体液、細胞系、組織培養あるいは他の起源から得られたどんな生物学的試料も含んでいる。例示されるように、生物学的試料は精液、リンパ液、血清、血漿、尿、滑液、脊髄分泌液などのような体液を含んでいる。
【0049】
哺乳動物から組織生検および体液を得る方法は、技術的によく知られている。
【0050】
ここに使用される、用語「特異的に結合する」とは、2分子間の非−任意の結合を指し、例えば、抗原と免疫反応する抗体分子間、またはTie2とのキメラAng1の特異的結合のような、別のポリペプチドと反応する非抗体リガンド間が挙げられる。
【0051】
ここに使用される、「対象」とは、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくは、人間が挙げられる。
【0052】
ここに使用される、「治療(処置)」とは、有益な臨床の結果あるいは望まれた結果を得るためのアプローチ(働きかけ)である。本発明の目的のために、有益なまたは望まれた臨床の結果は以下を含んでいる、しかし制限されるものでなく、徴候の緩和、疾病の程度の減少、疾患の安定化(つまり、悪化せずに)状態、、遅延、疾病進行の遅れまたは鈍化、疾病状態の改善あるいは緩和、および回復(部分的でも、あるいは全体でも)等を指す。「治療(処置)」は、さらに治療を受けないにしても予期された延命と比較して、延命を延長することを意味することができる。「治療(処置)」は、治療処置および予防または再発防止の両方を指す。治療を必要とするものは、既に病気となっているもの、同様に防がれるべき病気になっているものを包含する。疾病を「軽減する」ことは、疾病状態の範囲および/または不適当な臨床症状が減少することを意味し、および/または、治療のない状況と比較して、進行の時間的経過は遅くなるか延長されることを意味する。
【0053】
ここに使用される、「ベクター」「ポリヌクレオチド・ベクター」「構築する」そして「ポリヌクレオチドの構築」とは、交換可能に使用される。本発明のポリヌクレオチド・ベクターは、いくつかの形式のうちのどれであってもよく、以下のものを含むが、制限されるものではない、RNA、DNA、レトロウイルスのコート中のカプセル化されたものに入れられたRNA、アデノウイルス・コート中のカプセル化されたDNA、別のウイルス、またはウイルス様形態(単純疱疹およびアデノ随伴ウイルス(AAV)のような)でパッケージされたDNA、リポソームでカプセル化されたDNA、ポリリシンで複合体化されたDNA、合成ポリカチオン性分子の複合体、ポリエチレングリコール(PEG)のような化合物の複合体で、免疫学的な「マスク」分子、または半減期を増加させる、あるいは非ウイルスタンパク質へとコンジュゲートされたものが挙げられる。好ましくは、ポリヌクレオチドはDNAである。ここに使用される、「DNA」は、塩基A、T、CおよびGだけでなく、これらの塩基の類似体または修飾形、例えば、メチル化されたヌクレオチド、荷電していないリンケージおよびチオール基導入のようなヌクレオチド間の修飾、糖類似体の使用、およびポリアミドのような修飾および/または代替骨格を包含する。
【0054】
本発明は多量体形成領域を含んでいる。特に、コイルドコイル領域が例示できる。コイルドコイル領域は、コイルドコイル構造を形成するあらゆるアミノ酸配列でよい。この例示されたコイルドコイル領域が様々なタンパク質からクローンされたものである一方、結果として得られたコイルドコイル領域が当業者によってコイルド・コイル構造と認められ、キメラを含むコイルドコイル領域が多量体を形成することができ、容易に可溶で、自然のリガンドまたは受容体に比べ、同様かより強い効力を提供することができる限り、様々な変異体および誘導体は本発明によって包含される。
【0055】
ここに使用される、「傷」とは、生体の損傷状態を指し、例えば生体の内部・外部表面を構成する組織の切断あるいは分裂した病理学的条件を包含し、例えば、皮膚、筋肉、神経組織、骨、軟組織、内部の器官および血管組織が挙げられる。典型的な傷は、次のものを含んでいる、しかしこれに制限されるものではない、挫傷あるいは打撲傷、無治療の精神的外傷の傷、放射線による組織崩壊、摩滅、えそ、裂傷(剥離)の傷、銃注射傷、切断、やけど、凍傷、皮膚の潰瘍、乾皮症、皮膚角化症、破損、破裂、皮膚炎、皮膚糸状菌症、外科の傷、血管障害によって引き起こされた傷、角膜の傷、床擦れのような傷および褥瘡、糖尿病および血行不良に関連する条件、糖尿病の皮膚浸食、慢性潰瘍、形成外科に続く縫合部位、脊柱の精神的外傷の傷、婦人科医学の傷、化学的な傷およびにきび、が挙げられる。生体のどんな被害を受けた、または害された部分も、傷の定義内にある。この点で、本発明によってキメラのコイルドコイル分子を含む組成物は、修復に役立つことができ、置換、緩和、任意の被害を受けた、または損傷した組織が直りおよび/または直ることの加速、促進が挙げられる。
【0056】
ある状況では、さらに次のように理解される。多量体化領域が、リガンドの受容体結合領域か、または受容体のリガンド結合領域の一方と、共にリンキングする際に、多量体化領域と結合領域は、同じタンパク質由来であってもよく、または異なったタンパク質でもよい。例えば、Ang1コイルドコイル領域は、より効率的なやり方で、それ自身のフィブリノーゲン様の領域にリンクされてもよい。あるいは、軟骨のオリゴマー化したマトリックス・タンパク質(COMP)が、Ang1フィブリノーゲン様領域へリンクすることができる。
【0057】
キメラのAng1
キメラの構成GCN-Ang1、MAT-Ang1またはCOMP-Ang1が作られたことにふれる時、Ang1部分は、Ang1のフィブリノーゲン領域であることを示す。さらに、MAT-Ang1も、また時として、図におけるCMP-Ang1、CMP-Ang1/FD、またはCMP/CC-Ang1/FDを指す。出願人は、Ang1、COMP-Ang1のキメラの形態を発見し、天然タンパク質以上の可能性のある長所を持つことを見出した。天然のAng1生成は困難であり、および精製されたタンパク質の活性は、恐らく多量体形成するその傾向により様々である。ロータリーシャドウイングTEMにより、自然のAnglの我々の構造分析によると、自然のAng1は変わりやすい大きさの多量体として存在することが示された。マトリックス・タンパク質の短いコイルドコイル領域を使用して、我々は、最初に三量体および五量体Ang1を生成するつもりだったが、興味深いことに、MAT-Ang1およびCOMP-Ang1は、追加のオリゴマーを産出した。しかしながらMAT-Ang1およびCOMP-Ang1は精製するのが簡単で、天然のAng1に比べより可溶である。顕著に、COMP-Ang1は天然のAng1より、およそ3-5倍強力である。理論によって制限されることなく、なぜCOMP-Ang1が、Tie2およびAkt燐酸化に対する最も強力な効果を生んだかには、2つの可能な理由がある。先ず最初に、COMP-Ang1は、その迅速な会合および解離割合のため、変異体の中で、最も生物学的に活性となりえる。二番目に、COMP-Ang1は、内皮の小窩のTie2クラスタリングを他の組換えAng1タンパク質に比べ、より効率的に誘導する。我々のデータは、Tie2分子が内皮の小窩に局地化されることを示す。したがって、小窩(caveolae)のクラスタリング(clustering)Tie2に一層よく適したオリゴマーの構造を持つ工学的に作られたAng1タンパク質は、よりよくTie2多量体化および燐酸化を促進する。
【0058】
マウスの角膜のマイコロポケットアセイ(micropocket assay)において、単独で処理された時、Ang1は血管由来の反応を刺激しなかった。しかしながら、VEGFで共処理された時、Ang1は出生後の血管形成を増大した。我々は、天然のAng1が血管由来の反応を刺激しなかったことを示した。しかしながら、COMP-Ang1単独で、血管形成を刺激する。さらに、COMP-Ang1は、基底基膜輪部の内腔の直径の増加をもたらした。この役割は、Ang1-過剰発現する遺伝子組換えのマウスの拡張した血管径の増加した頻度と一致している。(Suri, C. et al.,1998, Science 282 : 468-471 ; Thurston, G. et al.,1999, Science 286 : 251 1-2514)。ウサギの虚血の後肢モデルにおいて、我々は、Ang1遺伝子送達が、VEGF遺伝子送達と比較して、結果としてより大きな血管になったことを以前に示した。(Chae, J.K. 2000, Arterioscler. Thromb. Vase. Biol. 20:2573-2578)。したがって、COMP-Ang1は、動脈内腔の直径を増加させることにより、より有効な血流引き起こせる。さらに、血管形成の上に相加効果を持っている間、Ang1は浮腫と炎症のようなVEGF誘導の副作用を打ち消すことができる。(Kwak, H. J. 2000, Circulation 101 : 2317-2324 ; Thurston, G. et al.,1999, Science 286 : 251 1-2514 ; Kim, I. et al., 2001, Circ. Res. 89 : 477-479)。したがって、COMP-Ang1タンパク質送達は、正確で安全な治療の血管形成として有用である。
【0059】
物理的、生化学で、免疫が媒介する損傷に応じた血管内皮の保全は、内皮の機能を維持し血管疾患を防ぐことにとって重要である。(Cines, D.B. 1998, Blood 91 : 3527-3561)。最近の報告書によれば、薄膜特性(lamina propria)の微小血管内皮細胞の広範囲なアポトーシスは、腸の放射線障害が起こす一次病巣である。(Paris, F. et al., 2001, Science 293 : 293-297)。 したがって、腹部の放射線療法中のG1管損害は、癌治療中に使用する服用量を制限する。血管内皮細胞への放射線障害はVEGFによって防ぐことができ(Okunieff, P. et al. 1998, Radiat. Res. 150 : 204-21 1)、あるいは塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)により防ぐことができる(Paris, F. 2001, Science 293 : 293-297)。重要なことには、VEGF受容体は、腫瘍進行のような、脈管形成および血管形成に活動的に関係する内皮細胞で発現される。しかし、bFGF受容体は、癌細胞を含む、内皮・非内皮細胞の両方で発現される(Paris, F. et al., 2001, Science 293 : 293-29 ; Veikkola, T. & Alitalo, K. 1999, Seminars in Cancer Biol. 9 : 211-220) 。したがって、内皮の損傷の保護のためにVEGFおよびbFGFの処置は腫瘍進行を助ける。興味深いことには、Tie2は、正常な成人の血管の内皮細胞における活性型として選択的に発現される(Wong, A. L. et al., 1997, Circ. Res. 81 :567-574)。我々は、正常な成人の血管のアンギオポイエチン(angiopoietin)/Tie2システムが、増殖しない内皮細胞の完全な維持において重要であろうと最近報告した(Kim, I. et al., 2001, Cardiovas. Res. 49 : 872-881)。免疫組織化学的染色により、正常な成人の血管および毛細管のほとんどの内皮細胞において、Tie2が選択的に発現されることを示す。さらに、Tie2は、COMP-Ang1の急性投与によって有効に活性化される。1つの気遣いは、Ang1連続投与が、放射線治療の間に腫瘍血管形成を増加させるかもしれない、ということである。しかしながら、腫瘍血管形成におけるAng1の役割はまだ論争の的になっている。腫瘍血管の「安定化」を介してAng1が腫瘍進行を抑えることが示唆された(Tian, S. et al. 2002, Br. J. Cancer 286 : 645-65 1; Hawighorst, T. et al., 2002, Am. J. Pathol. 160 : 1381-1392)。したがって、Ang1を放射線誘発性の内皮細胞損害からの保護に使用することは望ましい。確かに、COMP-Ang1治療は、柔突起の広範囲な放射線誘発性の広範囲な内皮のアポトーシスに対して強力に保護するが、非内皮細胞には、効果が観察されない(Cho et al., PNAS 101 : 5553-5558)。さらに、COMP-Ang1治療は、恐らくG1管への損害を減少させる結果、生存期間を延長する(Cho et al., PNAS 101 : 5553-5558)。COMP-Ang1の投薬および投与ルートの最適化は、放射線誘発性の内皮細胞損傷で起こされる、内皮細胞生存存続をさらに改善する可能性がある。
COMP-Ang1は、生成の効率、性能、生体内でのTie2活性化、血管形成、および生体内の内皮損傷に対する保護を含むいくつかの様式で、天然のAng1より優れている(Cho et al., PNAS 101 : 5547-5552, 2004 ; Cho et al., PNAS 101 : 5553-5558, 2004 ; 米国特許出願No.10/273,180およびPCT/IB03/03814)。血管漏出の予防、敗血症誘導の内皮細胞傷に対する保護、血管形成術後の再内皮化の増強、およびTie2陽性の内皮の前駆幹細胞の生体外の増幅への応用は可能性があるように思える。結論として、我々は可溶で、凝集せず、強力で、安定しているキメラのAngl変異体、COMP-Ang1を設計し創製した (Cho et al., PNAS 101 : 5547-5552, 2004 ; Cho et al., PNAS 101 : 5553-5558, 2004 ; 米国特許出願No.10/273,180およびPCT/IB03/03814、WO03/106501) 。それは、治療的な血管形成および内皮細胞保護を含む臨床治療に役立てることができる。
【0060】
コイルドコイル
αらせんのコイルドコイルは、恐らくタンパク質で見つかった最も広範囲のサブユニット・オリゴマー化モチーフである。従って、コイルドコイルは様々な異なる機能を果たす。転写活性化因子のいくつかのファミリーでは、例えば、短いロイシンジッパーは、DNAのDNA結合領域の位置取りにおいて重要な役割を果たす(Ellenberger et al., 1992, Cell 71 : 1223-1237)。 コイルドコイルは、また、中間的フィラメントタンパク質のオリゴマーを形成するために使用される。コイルドコイル・タンパク質は、更に、小胞およびウイルスの膜融合の両方に重要な役割を果たすように見える(Skehel and Wiley, 1998, Cell 95 : 871-874) 。両方の場合は、融合される薄膜に埋め込まれていた疎水性のシーケンスは、長いαらせんの束からできている棒形の複合体の同様な端に位置している。この分子配列は、複合体が膜融合のために会合されるとともに、接近している薄膜の同格関係を引き起こすと考えられる。
【0061】
コイルドコイルは、オリゴマー化を調節するためにしばしば使用される。それは多くのタイプのタンパク質で見つかり、次に挙げるような転写調節因子を含んでいる。GCN4、ウイルスの融合ペプチド、SNAPvE複合体、および、ある転移リボ核酸合成酵素、その他が挙げられるが、制限されるものではない。非常に長いコイルドコイルは、トロポミオシン、中間フィラメントおよび紡錘体極体の構成要素のようなタンパク質で見出される。
【0062】
コイルドコイルは、いくらかのαらせんを含み、高度に組織化されたやり方で、互いのまわりでスーパーコイル化されており、それは平行あるいは逆平行方向という関係にある。二量体と三量体は最も一般的なものである。らせんは、同じ、あるいは異なるタンパク質から由来するのものであることができる。
【0063】
コイルドコイルは、それらの疎水性の継ぎ目を埋めるために、ともに来る構成要素のらせんによって形成される。疎水性の継ぎ目が、各らせんに巻き付くように、らせんも疎水性の継ぎ目を埋めて、スーパーコイルを形成して、互いに巻きつくためにねじれる。穴の中への取手パッキング(knobs-into-holes packing)(この構造をコイルドコイルとして定義する)として知られている、近いらせん間の側鎖の特有の交互嵌合である。並列の構成はより一般的であるが、らせんは、この種の生じる相互作用ために、同じ方角に走る必要はない。逆平行構成は三量体において非常にまれで、そして五量体では未知であるが、これにおいて2つのらせんは短いループによってしばしば接続される。
【0064】
細胞外の空間では、ヘテロ三量体的なコイルドコイル・タンパク質ラミニンは基底膜の構成に重要な役割を果たす。他の例は、3つ(スロンボスオンジン1および2)あるいは5つ(スロンボスポンジン3、4およびCOMP)の鎖がつながった、スロンボスポンジンおよび軟骨オリゴマー化マトリックス・タンパク質(COMP)である。分子は花の花束状の外観を持っていて、また、それらのオリゴマーの構造の理由は、たぶん細胞の受容体のC-端領域の多価の相互作用である。
【0065】
GCN4
酵母の転写活性化因子GCN4は、酸性領域ロイシンジッパー(bZIP)DNA結合モチーフを含んでいる、30以上の識別された真核生物タンパク質のうちの1つである(Ellenberger et al., 1992, Cell 71 : 1223-1237)。bZIP二量体は、それらのカルボキシ端34残基以上の並列のコイルドコイルを形成し、DNA結合部位の主要な溝を通り抜けるためにそれらのアミノ末端の方へ徐々に分岐する、1対の連続的なα・ヘリックスである。そのコイルドコイル二量体化接触面は、DNA軸芯に垂直であり、該コンプレックスに、文字Tの外観を与える。bZIPは、並列のアルファヘリックスのコイルドコイルの中でともにパックする、疎水性で無極性の残基の4-3 7個一組の繰り返し(4-3 heptad repeat)を含んでいる。(エレンバーガーら、1992年、細胞71: 1223-1237)
【0066】
二量体の安定性は、GCN4ロイシンジッパー・ペプチド(エレンバーガーら、1992年、細胞71: 1223-1237)の結晶構造の中で示されるイントラ-及びインターヘリカル塩ブリッジの限られた数と同様に、7個単位の繰り返しの、位置a及びdにおける、ロイシンと無極性の残基の並んでのパッキングから生じる。
【0067】
軟骨基質タンパク質(CMPまたはMAT)
CMP(matrilin-1)は、Mr 52,000(PaulssonおよびHeinegard、1981年、Biochem J.197:367-375)のサブユニットのhomotrimerとして牛の気管(tracheal)の軟骨から分離された。そこでは、サブユニットはそれぞれ、5つの7個単位にまたがる、vWFAlモジュール、一つのEGF領域、vWFA2モジュールおよびコイルドコイル領域から成る(Kissら、1989年、J.B.C.264:8126-8134;ハウザーおよびPaulsson、1994年、J.B.C. 269:25747-25753)。 浄化されたCMPの電子顕微鏡検査は、サブユニットがそれぞれコイルドコイルに対応する共通点から出現する楕円体を形成する花束状の三量体構造を示した(ハウザーおよびPaulsson、1994年、J.B.C.269:25747-25753)。 matrilin-1の中のコイルドコイル領域は広範囲に研究された。trimericな構造は、本性を奪わない条件下のインターチェーンのジスルフィド結合の完全な縮小の後に保持される(ハウザーおよびPaulsson、1994年、J.B.C.269:25747-25753)。
【0068】
軟骨のオリゴマーマトリックス・タンパク質(COMP)
非コラーゲン糖タンパク質、COMPは、軟骨で最初に同定された(Hedbom et al., 1992, J. Biol. Chem. 267 : 6132-6136)。本タンパク質は、N-末端7個繰り返し領域(cc)から成る、5つのサブユニットの524kDaのホモ五量体で、4つの上皮成長因子(EGF)様領域(EF)、7つのカルシウム結合領域(T3)、およびC-末端球状領域(TC)が続いている。この領域構成によれば、COMPはスロンボスポンジンのファミリーに属している。7個の繰り返し(abcdefg)nのaおよびdの位置に優先的に疎水性残基を備えたものは、らせんのコイルドコイル領域を形成する(Cohen and Parry, 1994, Science 263 : 488-489)。 最近、COMP(COMPcc)の組換え5らせん構造のコイルドコイル領域が結晶化されて、また、その構造は0.2nm解像度で解析された(Malashkevich et al., 1996, Science 274 : 761-765)。
【0069】
核酸構築物(Nucleic acid constructs)
本発明は、融合ポリペプチドがリガンド(多量体化する要素のC端末に融合される最初のサブユニット)の受容体結合領域の少なくとも1つのコピーを含む、最初のサブユニットからなることを特徴とする融合ポリペプチドをコード化する核酸をさらに供給する。
あるいは、本発明は、融合ポリペプチドがリガンド(多量体化する要素のN端末に融合される最初のサブユニット)の受容体結合領域の少なくとも1つのコピーを含む、最初のサブユニットからなることを特徴とする融合ポリペプチドをコード化する核酸を、さらに供給する。特に、多量体化する要素は、コイルドコイル領域でよい。
【0070】
ここに記述されるように、本発明の核酸分子を含む発現ベクターが提供され、そこでは核酸分子は発現調節シーケンスに動作可能なように接続される。さらに、宿主・ベクター系が融合ポリペプチドの生産のために提供され、ここでは、融合ポリペプチドの発現に適した宿主細胞へ導入された本発明の発現ベクターが含まれる。適切な宿主細胞は、大腸菌のような細菌細胞、Pichia pastorisのような酵母菌、Spodopterafrugiperdaのような昆虫細胞、あるいはCOSまたはCHOの細胞のような哺乳類の細胞が挙げられる。
【0071】
融合ポリペプチドの生産を許し生産された融合ポリペプチドを回収するという条件の下で、ここに記述した、宿主・ベクター系の細胞を育てることにより本発明の融合ポリペプチドを生産する方法をさらに供給する。本発明を実行するのに役立つ融合ポリペプチドは原核生物または真核生物の発現系によって調製されてもよい。
組換え遺伝子が発現され、さらに、ポリペプチドは幾通りかの方法を使用し、精製される。遺伝子は、細菌の発現ベクターへサブクローンされてもよく、例としては pZErO が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0072】
融合ポリペプチドは、安定して、生物学的の活性なタンパク質のその後の形成を考慮に入れられるあらゆる技術によって精製されてもよい。例えば、方法に制限されないが、当該要素は、可溶のタンパク質、あるいは8Mグアニジン塩酸塩および透析によって定量的に抽出される封入体として細胞から回収されてよい。さらに該要素を精製するために、幾つかの精製方法が使用され、挙げられるものに制限されないが、従来のイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティー・クロマトグラフィー、異なる糖クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーまたはゲル濾過が挙げられる。
【0073】
ここに使用される、融合ポリペプチドとは、サイレントなまたは進化で保存された変化の結果として、シーケンス内の残基の置換されたアミノ酸残基でも、機能的に等価な分子を含んでいる。例えば、シーケンス内の1つ以上のアミノ酸残基は、サイレントな進化で保存された変更に帰着する機能的な等価物として働く同様の極性の別のアミノ酸によって置換することができる。シーケンス内のアミノ酸の置換は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選ばれてもよい。例えば、無極性の(疎水性の)アミノ酸はアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンを含んでいる。極性が中性アミノ酸はグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを含んでいる。陽性荷電の(塩基性)アミノ酸はアルギニン、リジンおよびヒスチジンを含んでいる。陰性荷電の(酸性)アミノ酸はアスパラギン酸とグルタミン酸を含んでいる。さらに本発明の範囲内として含まれるものは、翻訳中に、あるいはその翻訳の後に(例えば糖鎖形成、蛋白質分解的切断、抗体分子あるいは他の細胞のリガンドへのリンケージなどによって)差別的に修飾された派生物および同じまたは同様である生物活性を示す、それらのタンパク質あるいは断片か、派生物を含む。
【0074】
本発明の融合ポリペプチドを発現する細胞は、例えばトランスフェクション、形質導入、エレクトロポレーションあるいはマイクロインジェクション技術によってそれらを生産するために遺伝子的に操作される。
【0075】
さらに、本発明は、タグ付加形態で、ここに記述された融合ポリペプチドの使用を意図する。
【0076】
ベクターの中へのDNA断片を挿入する、当業者に知られている方法のどれでも、本発明の融合ポリペプチドをエンコードする発現ベクターを構築するために使用されてもよく、適切な転写/翻訳調節シグナルおよびタンパク質コード配列が使える。これらの方法は生体外の組換えDNAおよび合成技術、および生体内の組換え(遺伝的組換え)を含んでいてもよい。融合ポリペプチドが組換えDNA分子でトランスフォームされた宿主の中で発現されるように、発明の融合ポリペプチドをエンコードした核酸シーケンスの発現は、2番目の核酸シーケンスによって制御されてもよい。例えば、ここに記述された融合ポリペプチドの発現技術の中で既知の任意のプロモーター/エンハンサー要素によって調節されてもよい。融合ポリペプチドの発現を調節するために使用されてもよいプロモーターを挙げるが、しかしSquintoら(1991, Cell 65 : 1-20)に記述されるようなロングターミナルリピートに制限されない;SV40の初期のプロモータ領域(Bernoist and Chambon, 1981, Nature 290 : 304-310)、CMVプロモーター、M-MuLV'5、ターミナルリピート、ラウス肉腫ウイルスの3′ロングターミナルリピートを含むプロモーター (山本ら、1980, Cell 22 : 787-797)、疱疹チミジンキナーゼ・プロモーター(Wagner et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78 : 144-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al., 1982, Nature 296 : 39-42); 原核生物の発現ベクター、例えば β-ラクタマーゼ プロモーター (Villa-Kamaroff, et al., 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75 : 3727-3731)、またはタックプロモーター(DeBoer, et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80 : 21-25)、サイエンティフィックアメリカン、1980年、242:74-94にある「組換え細菌からの有用なタンパク質」も参考にできる; 酵母あるいは他の糸状菌のプロモーター要素で、例えば、ギャル4プロモーター、ADH(アルコール脱水素酵素)プロモーター、PGK(phosphoglycerol キナーゼ)プロモーター、アルカリフォスファターゼ・プロモーターおよび次の動物転写調節領域(それらは組織特異性を示し、遺伝子組換え動物の中で利用された); 膵臓の腺房細胞において活発なエラスターゼ1遺伝子制御領域(Swift et al., 1984, Cell 38 :639-646 ; Ornitz et al., 1986, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50 :399-409 ; MacDonald, 1987, Hepatology 7 : 425-515) ; 膵臓のβ細胞において活発なインシュリン遺伝子制御領域(Hanahan, 1985, Nature 315 : 1 15-122)、およびリンパ球様細胞において活発な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl et al., 1984, Cell 38 : 647-658; Adames et al., 1985, Nature 318 :533-538 ; Alexander et al., 1987, MoI. Cell. Biol. 7 : 1436-1444)、睾丸で、胸、リンパおよびマスト細胞において活発なマウス乳癌ウイルス制御領域 (Leder et al., 1986, Cell 45 : 485-495)、肝臓において活発なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert et al., 1987, Gene and Devel. 1 : 268-276)、肝臓において活発なアルファ-フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlauf et al., 1985, MoI. Cell. Biol. 5 : 1639-1648 ; Hammer et al., 1987, Science 235 : 53-58); 肝臓において活発なアルファ1 ―アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelsey et al., 1987, Gene and Devel. 1 : 161-171)、骨髄性細胞において活発なベータ・グロビン遺伝子制御領域(Mogramet al., 1985, Nature 315 : 338-340 ; Kollias et al., 1986, Cell 46 : 89-94); 脳の中の乏枝神経膠細胞において活発なミエリン塩基性蛋白質遺伝子制御領域 (Readhead et al., 1987, Cell 48 : 703-712) ; 骨格筋において活発なミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Shani et al., 1985, Nature 314 : 283-286)、および視床下部において活発な生殖腺刺激性の放出ホルモン遺伝子制御領域(Mason et al., 1986, Science 234 : 1372-1378)。
【0077】
したがって、本発明によって、細菌または真核生物の宿主で複製することができる発現ベクターが、これは、ここに記述された融合ポリペプチドのコード化された核酸を含み、また特に修飾されたアンジオポエチンであるが、宿主にトランスフェクトするために使用され、そして、その後に生物学上活性な形で回復されることができるようになる融合ポリペプチドを生産するこのような核酸の発現を志向するに使われる。ここに使用される、生物学的活性な形は適切な受容体を結合することができ、区別された機能を引き起こし、および/または、受容体を発現している細胞の表現型に影響を及ぼす。そのような生物学的活性な形態は、例えば、Tie2受容体のチロシン・キナーゼ領域の燐酸化、あるいは細胞内DNAの合成促進を引き起こすだろう。
【0078】
核酸挿入物を含んでいる発現ベクターは、少なくとも次の3つの一般的研究方法で同定できるが、これに限られるわけではない、(a) DNA−DNAハイブリダイゼーション、(b) 「マーカー」遺伝子機能の存在、あるいは欠如、ならびに(c)挿入されたシーケンスの発現。最初のアプローチでは、発現ベクターに挿入された外来の核酸の存在は、挿入された核酸配列と相同な配列を含むプローブを用いて、DNA‐DNAハイブリダイゼーションにより検出ができる。第2の研究方法では、組換えのベクター/宿主系は、ベクターの外来の核酸シーケンスの挿入によって引き起こされた、ある「マーカー」遺伝子機能(例えばチミジンキナーゼ活動、抗生物質耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスの閉塞体(occlusion body)などの存在か欠如に基づいて、同定しそして選別することができる。例えば、efl核酸シーケンスがベクターのマーカー遺伝子シーケンス内に挿入される場合、挿入物を含んでいる組換え体は、マーカー遺伝子機能の欠如によって同定することができる。3番目の研究方法では、組換え発現ベクターは、組換え構築物によって発現された外来の核酸産物の分析により同定することができる。そのような分析は次のような例に基づくことができ、例えば、関連する核酸産物の物理的または機能的特性によって、例えば、受容体または部分へのリガンドの結合によって、この場合タグが付されていてもよい、例えば、検出可能な抗体か部分で、または関連するタンパク質かその部分に対する産生された抗体の結合による。
【0079】
融合ポリペプチド、特に本発明の修飾されたアンジオポイエチン(angiopoietin)は、宿主細胞中で一時的に、構成的にあるいは永久的に発現されてもよい。他の態様では、可溶のTie1あるいはTie2を発現する構築物が作られてもよい。可溶のTie2は、本発明ではAde-sTie2-Fcとして例示され、これはキャリアーウイルスとしてアデノウイルスを使用するが、この構築物はアデノウイルスに制限されていないことは理解され、そして、どんなベクターも発明の実施において使用されてもよい。Ade-sTie2-Fc構築物は、本出願のコントロール構築物を例証するために使用される。
【0080】
この発明は、さらにTie2受容体を発現する細胞、組織あるいは器官に関する病気に苦しむ患者の治療用の治療剤として融合ポリペプチドの開発が提供される。該分子は、人間か動物の体の治療方法、あるいは診断方法として使用されてもよい。
【0081】
Tie2受容体が内皮細胞と関連されて同定されたので、そして、Ang-1のような受容体のアゴニストのブロッキングは脈管化を防ぐことが示され、出願人は、そのような脈管化が示される場合、本発明のTie2アゴニスト融合ポリペプチドが疾病または障害中の脈管化の誘導に役立ってもよいと期待する。そのような疾病あるいは障害は創傷治癒、乏血および糖尿病を含む。リガンドは動物モデルで試験され治療上使用されてもよく、又、別の内皮細胞に特有の血管由来の要因である血管内皮成長因子(VEGF)のような、他の剤のために記述されるように、治療的に使用できる。
【0082】
米国特許5,332,671号も、他の研究と同様に、創傷治癒を増強して、虚血心筋への血流増加、および血管新生が望まれることを特徴とする他の治療の設定において、血管由来の要因の影響を実証するために使用されてもよいことを、生体外・生体内の研究について記述する。さらに次のものを参照、ヨーロッパ特許出願0 550 296 A2 ; Banai, et al., Circulation 89 : 2183-2189(1994) ; Unger, et al., Am. J. Physiol. 266 : H1588 - H1595(1994) ; そしてLazarous, et al., Circulation 91 : 145-153(1995)。本発明によれば、アゴニスト融合ポリペプチドは単独で、あるいは、例えばVEGFあるいは塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)のような1つまたはそれ以上の加えられる薬学的活性な化合物との組み合わせで使用されてもよい。
【0083】
反対に、WO 96/31598の例9に記述されている、Tie2受容器のアンタゴニスト、Tie2受容体の本体あるいはAng-2のように、ある状況、およびある量では脈管化を防ぐか減ずることが示された。同様に、本発明のTie2アンタゴニスト融合ポリペプチドは、さらにこれらの目的に役立つだろう。これらのアンタゴニストは、単独であるいは抗VEGF抗体(それは治療の意図が血管形成を阻止することであるような状態に役立つことが示された)のような1つまたはそれ以上の加えられる薬学的活性な化合物との組み合わせで使用されてもよい。
【0084】
他の実施例では、ここに記述された発明のTie2アゴニスト融合ポリペプチドは血液生成因子として使用されてもよい。様々な血液生成因子およびそれらの受容体は、血液内に含まれていた様々な細胞タイプの増殖および/または分化および/または移動に関係する。Tie2受容体が初期の造血性細胞中で発現されるので、増殖または分化、あるいはこれらの細胞の移動にTie2リガンドが比較可能な役割を演ずると予想される。したがって、例えば、下記のうちのどれにも記述されるように、Tie2アゴニスト融合ポリペプチド組成物は生体外・生体内の生物系で調製され、分析され、検討され、治療上使用されてよい: 米国特許4,810,643号 ; Lee, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82 : 4360-4364(1985) ; Wong, et al., Science 228 : 810-814(1985) ; 横田ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81 : 1070(1984) ; WO 9105795 ; またWO 95/19985。
【0085】
従って、融合ポリペプチドは、正常な造血の抑制状態の、診断または治療するために使用されてよく、この状態には、貧血、血小板減少症、白血球減少症および顆粒球減少を含むが、これらに限られるものではない。好ましい実施例として、融合ポリペプチドは、患者が次に述べるような疾患で、赤血球前駆体の分化を促進するのに用いられてよい。疾患例としては、後天性免疫不全症候群(AIDS)のように、これは正常な血球レベルの減少に関わり、あるいは骨髄移植と連動して、または放射線、化学処理あるいは化学療法によって引き起こされた形成不全または骨髄抑制の治療において、のように、血液生成ポピュレーションの増加が望まれる臨床状況が挙げられる。
【0086】
本発明の融合ポリペプチドは、単独で、あるいは他の薬学的に活性な薬剤と組み合わせて、例えばサイトカイニン、ニューロトロフィン、インターロイキンなどが挙げられるが、使用されてもよい。好ましい実施例では、融合ポリペプチドは、幹細胞あるいは他の血液生成の前駆体増殖を引き起こすことが知られている多くの因子のうちのどれとでも、あるいは血液生成経路の後の方の細胞に作用する因子、例えば、血液生成の成熟因子、トロンボポイエチン、幹細胞刺激因子、エリトロポイエチン、G-CSF、GM-CSFなどが挙げられるが、これに限られるものではないが、これらと共にも使用されてもよい。
【0087】
他の実施例では、Tie2受容体アンタゴニスト融合ポリペプチドは、望まれた結果が、血小板血症、赤血球増加症および白血病のような血液造成器官の増殖障害や、脊髄増殖性の病気の治療のように血液生成の経路の抑制である患者を診断するか治療するために使用される。そのような実施例では、治療は、ここに記述されるような治療上有効な量の融合ポリペプチドの使用を含んでもよい。
【0088】
これらの治療、あるいは他の疾病や障害の治療に有用な効果的な用量は、当業者に知られている方法を用いて決めてもよい(例えば、Fingl, et al., The Pharmacological Basis of Therapeutics, Goodman and Gilman, eds. Macmillan Publishing Co., New York, pp.1-46(1975)参照)。本発明による使用のための医薬組成物は、上に記述された融合ペプチドに、薬理学的に許容可能な液体、固体あるいは半固体のキャリアー、キャリアーか標的分子にリンクされたか(例えば抗体、ホルモン、成長因子など)、および/またはリポソーム、マイクロカプセルおよび生体の投与に先立ち制御放出調製されたそれらに入れられたものが含まれる。例えば、医薬組成物は、滅菌水、食塩水、リン酸緩衝液あるいはブドウ糖溶液のような水溶液中に融合ポリペプチドを含んでもよい。あるいは、活性物質は、該治療が必要な患者へ埋め込むことができる、固体(例えば、ろう)または半固体(例えば、ゼラチン状)の剤形に含まれてもよい。投与経路は、一般に知られている投与方法でよく、これらに限られものでなく、静脈内に、髄腔内に、皮下に、子宮内に、組織、鼻腔内、動脈内への注射により、経口で、または埋め込まれた装置により行われる。
【0089】
投与により、結果として、身体の全体にわたり本発明の活性物質が分布し、あるいは局所的な区域に分布する。例えば、神経系の離れた区域に関わるいくつかの状態で、薬剤の静脈内または髄腔内投与は望ましい。ある状況で、活性物質を含む埋め込み物(implant;インプラント)は、傷害のある区域に、あるいはその区域の近くに置かれてもよい。適切な埋め込み物は、gelfoam(ゲルフォーム)、ろう、スプレーあるいは微粒子ベースの埋め込み物が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0090】
本発明は医薬組成物をさらに供給し、薬理学的に許容可能なビークルに、ここに記述した融合タンパク質を含むものである。本組成物は、全身的にまたは局所的に投与することができる。一般的に知られているどんな適切な投与方法でも使用されてよい、静脈内、髄腔内、動脈内、鼻腔内、経口、皮下、腹腔内、あるいは局所注射か外科的埋め込みによるものが含まれ、これに限られるものではない。持続された徐放性製剤も、また提供される。
【0091】
遺伝子治療
具体的な実施例の中で、キメラのAng1ポリペプチドをコードするシーケンスを含む核酸は、血管の漏出を防ぐために投与され、治療的脈管形成のためで、そして遺伝子治療により行われる。遺伝子治療は、発現されたか発現できる核酸の被験者への投与により遂行される治療を指す。本発明のこの実施例では、核酸は、治療効果を媒介するコード化されたタンパク質を生産する。
【0092】
技術において利用可能な遺伝子治療のための方法のうちのどれでも、本発明によって使用することができる。典型的な方法が下記に述べられる。
【0093】
遺伝子治療の方法の一般的概説は、Goldspiel et al., Clinical Pharmacy 12 : 488-505 (1993) ; Wu and Wu, Biotherapy 3 : 87-95 (1991) ; Tolstoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32 : 573-596 (1993) ; Mulligan, Science 260 : 926-932 (1993) ; およびMorgan and Anderson, Ann. Rev. Biochem. 62 : 191-217(1993 ) ; May, TIBTECH 11 (5) : 155 -215(1993) を参照。使用することができる組換えDNA技術で一般に知られている方法は、次の文献に記載されている。Ausubel et al.(eds.), Current Protocols in Molecular Biology, Jhon Wiley & Sons, NY(1993) ; またKriegler, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press,NY(1990).
【0094】
好ましい態様では、核酸シーケンスは、キメラのAng1かTie2ポリペプチドをコードしてもよく、ここで、核酸シーケンスは適切な宿主の中のポリペプチドを発現する発現ベクターの一部である。特に、そのような核酸シーケンスは、ポリペプチドのコーディング領域に実施可能に結合されたプロモーターを有し、このプロモーターは、誘導可能で、または構成的で、そして選択的には組織特異性を有する。別の特定の実施例では、核酸分子は、核酸をコードする抗体の染色体内の発現に備えて、ゲノム中の望みの部位に相同組換えを促進する領域によって、ポリペプチド・コード配列および他の望まれるシーケンスも、このように側面に位置する状態において、使用される。(Koller and Smithies, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86 : 8932-893 5(1989) ; Zijlstra et al., Nature 342 : 435-438 (1989)。
【0095】
患者の中への核酸の送達は、直接に、その場合は、患者は、核酸か核酸を運んでいるベクターに直接さらされ、あるいは間接に、その場合は、細胞は生体で、核酸によってまず形質転換され、次に、患者へ移植されることになるが、これらのいずれでもよい。これらの2つのアプローチ(取り組み)は、生体内または生体外の遺伝子治療として、それぞれ知られている。
【0096】
特定の実施例では、核酸シーケンスは直接生体内に投与され、これはコードされた産物を生産するため発現される場合である。これは、よく知られた技術の多数の方法のうちのどれによっても遂行することができ、例えば、適切な核酸発現ベクターの一部としてそれらを構築することによって、またそれを投与すること、その結果、それらは細胞内へ送られるが、例えば、伝染によって、不完全なレトロウイルスあるいは減弱させられたレトロウイルス、他のウイルスベクターの使用、あるいは裸のDNAの直接注射によって、あるいは脂質または細胞の表面にある受容体を備えたコーティング、あるいはトランスフェクト試薬、リポソーム中のカプセル化、微粒子、あるいはマイクロカプセル、あるいは核への挿入法として知られているペプチドへ連関させたものの投与、 受容体を媒介としたエンドシトーシスなどにより達成できる(参照、例えば、Wu and Wu, J. Biol. Chem. 262 : 4429-4432 (1987) )(それは特に受容体を発現する細胞型を標的とすることができる)。別の実施例では、核酸がリソソームの低下を回避することを可能にして、エンドソームを分裂させるために、リガンドが融合可能なウイルスのペプチドを含む、核酸‐リガンド複合体を形成することができる。まだ別の実施例では、核酸は、細胞特異的摂取および発現を、特定の受容体を標的とすることにより、生体内で標的とすることができる。あるいは、核酸は細胞内に導入し、相同組換えによって発現のために宿主細胞DNA内に組込むことができる(Koller and Smithies, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86 : 8932-893 5(1989) ; Zijlstra et al., Nature 342 : 435-438 (1989)。
【0097】
特定の実施例では、ポリペプチドをコードする核酸シーケンスを含有するウイルスベクターが使用される。遺伝子治療で使用されるポリペプチドをコードする核酸シーケンスは、1つまたはそれ以上のベクターへクローンされ、それは患者の中への遺伝子の送達を促進する。レトロウイルス・ベクター、アデノウイルスのベクターおよびアデノ随伴ウイルスは使用されてもよいウイルスベクターの例である。レトロウイルス・ベクターは、宿主細胞DNAへの融合とウイルス・ゲノムの正確なパッケージングに必要な構成要素を含んでいる。
【0098】
穏やかな疾病を引き起こし、自然に呼吸器官の上皮を感染させるので、アデノウイルスは、呼吸器官の上皮に遺伝子を送達するための、魅力的な手段である。アデノウイルスベースの送達システムの他の目標は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞および筋肉である。アデノウイルスは、無分裂の細胞を感染させることができることという長所を持つ。さらに、アデノ随伴ウイルス(AAV)も遺伝子治療での使用を提案されている。
【0099】
遺伝子治療への別の取り組みとして、電気穿孔、リポフェクション、リン酸カルシウムを媒介としたトランスフェクション、あるいはウイルス感染のような方法によって組織培養細胞へ遺伝子を移送することを含む。通常、移送方法は、細胞への選択可能なマーカーの移送を含んでいる。その後、移送された遺伝子を発現させている細胞を分離するために、細胞は選択の下に置かれる。その後、それらの細胞は患者に送達される。
【0100】
この実施例では、核酸は、結果として生じる組換えの細胞の生体内の投与に先立って細胞へ導入される。そのような導入は、技術的によく知られているどの方法でも行うことができ、次のものが挙げられるが、これに限られるものではない、トランスフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション(顕微鏡下注射)、核酸シーケンスを含有するウイルスまたはバクテリオファージベクターを用いた感染、細胞融合、染色体を媒介とした遺伝子導入、マイクロセルを媒介とした遺伝子導入、スフェロプラスト融合などが挙げられる。もし受取り手の細胞の発生的な、および生理的機能が崩壊しなければ、多数の技術が、細胞への外来遺伝子の導入用として知られており、本発明に従って使用されてもよい。技術は、細胞への核酸の安定した移送を提供し、その結果、核酸は細胞によって発現できて、好ましくは、その細胞子孫によって相続(継続)可能な発現できるようになる。
【0101】
核酸が遺伝子治療の目的のために導入することができる細胞は、望みの利用可能な細胞型を含み、以下のものがあげられるが、これに限られるわけではない;上皮細胞、内皮細胞、角化細胞、繊維芽細胞、筋細胞、肝細胞;T細胞のような血液細胞、リンパ細胞、Bリンパ細胞、単球、マクロファージ、好中球、エオシン好性細胞、巨大核細胞、顆粒細胞;種々の幹細胞または前駆細胞、特に造血幹肝細胞または前駆細胞、例えば、骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓など。
【0102】
好ましい実施例では、遺伝子治療に使用された細胞は、患者に自己由来である。
【0103】
組換え細胞が遺伝子治療で使用される実施例では、ポリペプチドをコードする核酸シーケンスは、それらが細胞またはそれらの子孫によって発現できる細胞へ導入され、そして、組換え細胞は治療効果のために次に生体内に投与される。特定の実施例では、幹細胞または前駆細胞が使用される。生体外で分離され維持することができる、どんな幹細胞および/または前駆細胞も、潜在的に本発明のこの実施例に従って使用することができる。
【0104】
特定の実施例では、遺伝子治療の目的のために導入される核酸は、コーディング領域に実施可能に結合された誘導可能なプロモーターを含み、それは、核酸の発現が転写の適切な誘導者の存在か欠如の調節により、制御可能なものである。
【0105】
治療組成物
1つの実施例において、本発明は、治療的血管形成によって治療可能なことにより特徴づけられる様々な疾病の治療に関し、例えば、血管の漏出または血管形成の欠損のような疾病を対象とするが、これに限定されるものではない。この方向において、本発明の治療的化合物は、Tie2を活性化する化合物の提供による疾病に苦しみがちな患者、または苦しんでいる患者に投与されてもよい。
【0106】
治療的化合物の製剤は、技術的に一般に知られており、都合よく行うには、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17 th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., USAを参考にできる。例えば、体重1キログラム当たり約0.05μg〜約20mg/1日で投与されてよい。投薬摂取法は最適の治療効果を提供するために調節されてもよい。例えば、いくつかの分割用量は、毎日投与されてもよく、あるいは、治療の状況に必要不可欠なものによって示されるように、用量は比例して減少されてもよい。
【0107】
活性化合物は、経口、静脈内(水溶性のもの)、筋肉内、皮下、鼻の中、皮内あるいは坐薬ルート、または埋め込み〔例えば、腹腔内経路によって、あるいは細胞の使用によって、除放性分子を使用する。この細胞は、例えば、単球あるいは樹状突起細胞は、生体外で感作され(sensitised)、そして、養子導入的(adoptively)に受け手に移送された〕により投与されてもよい。投与の経路に依存して、ペプチドは前記成分を不活性化してもよい酵素、酸および他の自然な条件の活動からそれを保護する材料に覆われることを求めてもよい。
【0108】
例えば、ペプチドの低い親油性は、酸性の加水分解によってペプチド結合を開列できる酵素による胃腸管での破壊を許し、および胃中で酸加水分解により破壊されることを可能にする。 非経口的投与以外の方法によってペプチドを投与するために、それらは覆われるか、あるいはその不活性化を防ぐ物資と共に投与される。 例えば、ペプチドはアジュバンドと共に投与されてもよい、酵素の阻害剤との共投与、あるいはリポソームに包埋しての投与でもよい。ここに意図されたアジュバンドはレゾルシノール、ポリオキシエチレン・オレイル・エーテルおよびn-ヘキサデシル・ポリエチレン・エーテルのような非イオン界面活性剤を含んでいる。酵素阻害剤は膵臓のトリプシンインヒビター、ジイソプロピルフルオロホスファート(DEP)およびトラジロールを含んでいる。 リポソームは、従来のリポソームと同様に水中油中水型(water-in-oil-in-water)のCGF乳剤も含んでいる。
【0109】
活性化合物は、又、非経口的にあるいは腹腔内に投与されてもよい。分散剤は、又、グリセリン液体ポリエチレングリコール中に、およびその混合物中に、および油中に調製ができる。貯蔵と使用の通常の条件の下、これらの調製物は、微生物の成長を防ぐために防腐剤を含んでいる。
【0110】
治療的化合物の製剤は、技術的に一般に知られており、都合よく行うには、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17 th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., USAを参考にできる。例えば、体重1キログラム当たり約0.05μg〜約20mg/1日で投与されてよい。投薬摂取法は最適の治療効果を提供するために調節されてもよい。例えば、いくつかの分割用量は、毎日投与されてもよく、あるいは、治療の状況に必要不可欠なものによって示されるように、用量は比例して減少されてもよい。
【0111】
注射可能な使用に適した製薬剤形は、無菌の水溶液(ここでは水に可溶)もしくは分散剤、および無菌注射用溶液もしくは分散剤の一時的な調製のための無菌の粉末が含まれて使用できる。すべての場合に、剤形は無菌であらねばならないし、容易な注射可能性な程度にまで流動性であらねばならない。それは製造と貯蔵の条件の下で安定であらねばならないし、細菌と菌類のような微生物の汚染する活動対して安定に保存されねばならない。キャリアーは、溶液か分散媒であることが可能であり、次のものを含む、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセリン、プロピレングリコールおよび液体のポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合および植物油が挙げられる。適切な流動性は、レシチンのような、コーティングの使用によって、分散の場合の要求された粒子サイズの保持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の活動の予防は、様々の抗菌性・抗真菌薬(例えばクロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、theomersal、など)によってもたらされうる。多くの場合、等張剤(例えば、砂糖、塩化ナトリウム)を含むことは望ましいだろう。注射可能な組成物の延長された吸収(Prolonged absorption)は、吸収遅延剤(例えばモノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン)組成物中での使用によって引き起こされうる。
【0112】
無菌注射剤溶液は、上に列挙された様々な他の成分を備えた適切な溶剤中の求められた量に活性化合物を組み入れることにより調製され、所望により、除菌ろ過される。一般に、分散は、基礎的な分散媒および上に列挙されたものからの必要な他の成分を含む無菌のビークル中に、様々な無菌の有効成分を導入することにより調製さる。無菌注射剤溶液の調製のための無菌のパウダーの場合には、好ましい調整法が、既に除菌ろ過された溶液から、任意の付加的な所望の成分と有効成分のパウダーを産出する真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0113】
上に記述されるように、ペプチドが適切に保護される場合、活性化合物は、不活性な希釈剤、あるいは同化可能な食用のキャリアーと共に、例えば経口で投与されてもよい。あるいは、それは固いか、または柔らかいシェル・ゼラチン・カプセルで囲まれてもよい、あるいは、それは圧縮されてタブレットに詰め込まれてもよい。あるいは、それは、食事の食品に直接組み入れられてもよい。経口の治療的投与は、活性化合物は賦型剤に組み入れられ、摂取できるタブレット、バッカル錠、トローチ、カプセル、エレキシル、サスペンジョン、シロップ、ウエハーなどの形で使用されてもよい。そのような組成物および製剤は、活性化合物の重量によって少なくとも1%を含んでいるべきである。組成物と製剤のパーセンテージは変えられてもよく、もちろん、また、便利なようにユニットの重量の約5から約80%までの間にあってもよい。そのような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、適切な投薬が得られるように調整される。本発明による、好ましい組成物あるいは製剤は、経口の投薬ユニットフォームが、約0.1μgおよび2000mgの間の活性化合物を含んでいるように調製される。
【0114】
タブレット、錠剤、カプセルなどはさらに下記を含んでいてもよい:トラガントゴム、アカシア、コーンスターチあるいはゼラチンのようなバインダー;リン酸カルシウムのような賦型剤; コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸などのような崩壊剤;マグネシウム・ステアリン酸塩のような潤滑剤; また、蔗糖、ラクトースあるいはサッカリンのような甘味剤は加えられてもよい、あるいはペパーミント、サリチル酸メチルあるいは桜色の調味料のような香料添加剤が挙げられる。投薬ユニット剤形がカプセルである場合、それは、上記のタイプの材料に加えて、液体のキャリアーを含んでいてもよい。様々な他の材料はコーティングとして存在してもよく、あるいは投薬ユニットの物理的な形を修飾するために 例えば、タブレット、錠剤あるいはカプセルは、セラック、砂糖あるいは両方で覆われていてもよい。シロップかエレキシルは活性化合物、甘味剤としての蔗糖、防腐剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、染料、およびさくらんぼ、あるいはオレンジフレーバーのような香味料を含んでいてもよい。もちろん、どんな投薬ユニット剤形も調製するのに使用されるどんな材料も、使用された量において薬学的に純粋で、本質的に無毒であるべきである。さらに、活性化合物は持効性製剤及び剤形に組み入れられてもよい。
【0115】
送達システム(Delivery Systems)
様々な送達システムは知られており、本発明の化合物の投与に用いることができ、例えば、リポソーム中のカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、化合物を発現することができる組換え細胞、受容体を媒介としたエンドシトーシス、レトロウイルス他のベクターなどの一部としての核酸の構築などが挙げられる。導入方法は、次の皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、また経口経路などが挙げられるが、これに限るものではない。化合物または組成物は、上皮の裏あるいは皮膚と粘膜の裏、例えば口腔粘膜、直腸および腸粘膜など、による吸収によって、注入か大型丸薬注入によって任意の便利なルートによって、そして、他の生物学的に活性な薬剤とともに投与されてもよい。投与は、全身性または局所性が可能である。さらに、脳室内・髄腔内の注入を含む任意の適切なルートによって中枢神経系へ本発明の薬学的化合物あるいは組成物を導入することは望ましい; 脳室内注射は、例えば、Ommaya reservoirのようなreservoirへ繋げられた、脳室内のカテーテルによって促進されてもよい。経肺投与も使用することができる、例えば、吸入器かネビュライザーの使用およびアエロゾル化する製剤の剤形で行える。
【0116】
特定の実施例では、治療を必要とする部位へ発明の薬学的な化合物あるいは組成物を局所的に投与することは望ましいかもしれない。 例えば、この方法で制限されないが、これは次のような手段で達成できる;手術中の局所の注入、局所適用、例えば、手術の後の傷包帯とともに、注射による、カテーテルによる、座薬による、あるいは移植による。この移植は、多孔性の、非多孔性の、又はゼラチン状の材料であり、sialasticな膜のような膜あるいはファイバーを含む。 好ましくは、抗体あるいは本発明のペプチドを含むタンパク質を投与する場合、タンパク質が吸収しない材料を使用することに注意しなければならない。
【0117】
別の実施例では、化合物か組成物は小胞、特にリポソームにて運搬することができる。別の実施例では、化合物か組成物は、制御放出システムで運搬することができる。1つの実施例では、ポンプが使用されてもよい。別の実施例では、高分子材料を使用することができる。別の実施例では、制御放出システムは、治療標的の近辺に置き、それにより、全身性の服用量のごく少量を必要とすることができる。
【0118】
傷への局所適用
本発明に従って、液体またはパウダーの形をしているキメラのコイルドコイル分子は、傷の上に直接適用することができ、つまり、傷部位にふりかけられた。シートに塗布されたキメラのコイルドコイル分子は、傷部位上に適用されてもよい。その後、それは、傷を保護し、かつ有効成分の治癒効果が減少するのを防ぐために適切に修飾される。どんような市販の既知の傷包帯も本発明の中で使用されてもよい。市販の傷包帯の例は以下があるがこれに限られない;COMPEEL(R)、DUODERM(TM)、TAGADERM(TM)およびOPSITE(R)が挙げられる。
【0119】
薬学的に許容可能なキャリアーと結合して薬学的に有効な量のキメラのコイルドコイル分子を含んでいる組成物は、製薬の技術の中で既知の手段によって様々な剤形へ製剤化することができる。投与剤形は次のものを含んでいる、しかしこれに限られるものではない、外用剤の従来の投薬形式、例えば、液体を塗る、スプレー、ローション、クリーム、ゲル、ペースト、塗り薬、軟膏、エアゾール、パウダーおよび経皮的な吸収器が挙げられる。
【0120】
投与組成物の調製方法は当業者に知られており明らかであって、そして、次のような出版物に詳しい、Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th Editio, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 18042 (Chapter 87 : Blaug, Seymour)。それらの内容は参照によってここに組込まれる。
【0121】
本発明の外用剤中の、適切なキャリアーは投薬形式に依存して、選び含むことができるが、制限されるものではなく、ワセリン、流動パラフィンのような炭化水素、また可塑化した炭化水素ゲル(プラスティベース;plastibase); 動物、および中鎖の脂肪酸トリグリセリドのような野菜油、ラード、硬化脂肪およびカカオ脂のような植物油; それのステアリン酸、セタノール、ステアリルアルコールおよびパルミチン酸イソプロピルのような、高級脂肪酸およびアルコールおよびエステル; マクロゴール(ポリエチレングリコール)、1、3のブチレン・グリコール、グリセリン、ゼラチン、グラニュー糖および糖アルコールのような水溶性の塩基; グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、およびポリオキシエチレン/または硬化ヒマシ油; アクリル酸エステルのようなシックナーおよびアルギン酸ナトリウム; 液化石油ガスのような推進薬および二酸化炭素; またパラオオキシベンゼンの酸性エステルのような防腐剤が挙げられる。本発明の外用剤は当業者に良く知られた方法によって前述のキャリアーで調製することができる。前記キャリアーに加えて、必要ならば、スタビライザー、色素、着色剤、pH調節剤、希釈剤、界面活性剤および酸化防止剤のような添加物が使用された。本発明の外用剤は従来方式によって局所の傷部位に適用することができる。
【0122】
本発明による外用剤も、傷被覆遊離層のような固定担体上における接着剤において使用されてもよい。接着は、キメラのコイルドコイル分子を含んでいる組成物を備えた固定担体からの浸透によって達成される。本発明の1つの実施例では、固定担体へのキメラのコイルドコイル分子の接着を改善するために、固定担体は、接着層で最初に覆われる。 典型的な接着材料はポリアクリレートとシアノアクリレートを含んでいる。 そういう剤形として、スミス・アンド・ネフュー株式会社によって穿孔されたプラスチックフィルムに非粘着性の傷をカバーする離型層を持っている包帯を含む多くの市販の製品が提供される、BAND-AID(R)ジョンソン・アンド・ジョンソンによる、薄い一片、パッチ、スポットおよび熱可塑性の一片形式の中で、CURITY(R)そしてCURAD(R)(「ouchless」タイプの包帯)ケンダル社(コルゲート・パルモリーブ会社の1部門)によって、そしてSTIK-TITE(R)(エラスティック ストリップ)アメリカン・ホワイトクロス・ラブズ社によって、が挙げられる。
【0123】
1つの実施例では、本発明による薬学的組成物は、量の固定比率でキメラのコイルドコイル分子を生理的食塩水と混合しpH3.5から6.5までの範囲にpH値を適合させることにより、液体の塗布製剤の剤形とすることができる。別の実施例では、本発明による薬学的組成物は、キメラのコイルドコイル分子を水溶性の軟膏基剤と混合し、生じる混合物に生理的食塩水を加えることにより、軟膏調製の剤形とすることができる。好ましくは、軟膏のpH値は3.5から6.5までの範囲に調節される。
【0124】
本発明によるゲルのような薬学的キャリアーあるいはミクロスフェアは、創傷治癒を促進するために使用されてもよい。キャリアーとして、1つまたはそれ以上の薬学的あるいは化粧的活性物質としてのポリマーの様々なミクロスフェアは、米国特許5,264,207号、WO 2000/24378、WO96/13164およびWO 94/13333に記述される。それらの全内容は、参照によってここに組込まれる。
【0125】
本発明の薬学的組成物は、哺乳類動物の様々な傷を扱うために使用することができる。特に、本発明の組成物は、治癒できない潰瘍の治療に有効であり、感染、悪性、大管動脈不全、小管動脈不全、深静脈塞栓及び不全、表面静脈不全(拡張蛇行静脈)、リンパ管障害、イントリンシック(固有の:intrinsic)循環不全、血液異常、コラーゲン血管障害、放射線皮膚炎、栄養の原因などが挙げられる。
【0126】
薬学的に有効な量とは、キメラのコイルドコイル分子が傷部位のまわりの様々な細胞を活性化する物質および異常細胞に作用し、創傷治癒を促進する量を指す。当業者には周知のように、その量は、処置される傷タイプ、処置される傷の部位、頻度、投与の時間、投与ルートおよび剤型、処置される傷の厳しさの程度、運搬体の種類および他の要因に依存して変わってもよい。
【0127】
一般に、体重の2〜5%のキメラのコイルドコイル分子が1服用量当たり投与される。投与の頻度は日に2度、そして1週当たり1度でよい。特定の実施例では、十分な厚さを欠く傷は、本発明の薬学的組成物を、1日当たり0.01〜0.1g/cm2で処置され、好ましくは0.02〜0.09g/cm2、より好ましくは0.02〜0.07g/cm2である。
【0128】
ラベル
適切な酵素ラベルは、例えば、酸化酵素グループからのものを含んでいる。それは、基質と反応することにより過酸化水素の生産を触媒する。それがよい安定を持っており、その基質(グルコース)が容易に利用可能であるので、ブドウ糖酸化酵素は特に好まれる。酸化酵素ラベルの活性は、酵素標識抗体/基質反応によって形成された過酸化水素の濃度の測定により分析される。酵素に加えて、他の適切なラベルは、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(112In)およびテクネチウム(99mTc)のようなアイソトープ、およびフルオレスセインとローダミンのような蛍光性のラベルを含んでいる、さらにビオチンを含む。
【0129】
本発明のキメラのAng1、Tie2あるいはキメラのAng1/Tie2複合体特異抗体にさらにふさわしいラベルは、以下に提供される。適切な酵素ラベルの例は以下を含む;リンゴ酸脱水素酵素、δ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコール脱水素酵素、α-グリセリンリン酸塩脱水素酵素、トリオースリン酸イソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、アスパラギナーゼ、ブドウ糖酸化酵素、β-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、グルコアミラーゼ、またアセチルコリン・エステラーゼが挙げられる。
【0130】
適切な放射性同位体のラベルの例は3H、111In、125I、131I、32P、35S、14C、51Cr、57To、58Co、59Fe、75Se、152Eu、90Y、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pdなどが挙げられる。肝臓での125Iあるいは13lIラベル化ポリペプチドの脱ハロゲン化の問題を避けるので、111Inは、生体内のイメージングで使用される場合、好ましいアイソトープである。さらに、このラジオヌクレチドはイメージングのためにより好ましいガンマ放射エネルギーを持っている。例えばl-(P-イソチオシアナトベンジル)-DPTA修飾単クローン抗体につながれた111Inは、非腫瘍組織中への取り込み(特に肝臓)をほとんどおこさず、したがって、腫瘍局在性の特異性を増強する。
【0131】
適切な非放射性のアイソトープのラベルの例は、157Gd、55Mn、162Dy、52Trおよび56Feを含んでいる。
【0132】
適切な蛍光性のラベルの例は、152Euラベル、フルオレスセインラベル、イソチオシアン酸塩ラベル、ローダミンラベル、フィコエリトリンラベル、フィコシアニンラベル、アロフィコシアニンラベル、O-フタアルデヒド(o-phthaldehyde)ラベルおよびフルオレスカミン(fluorescamine)ラベルを含んでいる。
【0133】
適切な毒素ラベルの例は、シュードモナス毒素、ジフテリア毒素、リシンおよびコレラ毒素を含んでいる。
【0134】
化学発光のラベルの例は、ルミナールラベル、ルミナール(isoluminal)ラベル、芳香性のアクリジニウムエステルラベル、イミダゾールラベル、アクリジニウム塩ラベル、蓚酸塩エステルラベル、ルシフェリンラベル、ルシフェラーゼラベルおよびエクオリンラベルを含んでいる。
【0135】
造影剤の核磁気共鳴の例は、Gd、Mnおよび鉄のような重金属核を含んでいる。重水素も使用されてもよい。他の造影剤は、さらにEPR、PETあるいは他のイメージングメカニズムのために存在し、それは当業者に知られている。
【0136】
上記ラベルをポリペプチドに結び付けるための典型的な技術は、kennedy et al., (1976) Clin. Chim. Acta. 70 : 1-31、そしてSchurs et al., (1977) Clin. Chim. Acta. 81 : 1-40により明らかとなった。カップリング技術は、グルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸塩方法、ジマレイミド(dimaleimide)方法、m-maleimidobenzyl-N-hydroxy-succinimide ester(m-マレイミドベンジル-N-ヒドロキシ-スクシンエステル)方法を含み、その全て方法が参照によって引用される。
【0137】
それの破片を含む本発明のポリペプチドおよび抗体は、バイオチップおよびバイオセンサー技術を使用して、キメラのAng1、Tie2あるいはキメラのAng1/Tie2複合体を検知するために使用されてもよい。本発明のバイオチップおよびバイオセンサーは、キメラのAng1/Tie2複合体を特異的に認識する、抗体を検知するために本発明のポリペプチドを含んでもよい。本発明のバイオチップおよびバイオセンサーは、さらにキメラのAng1/Tie2複合体を検知するために本発明のポリペプチドを特異的に認識する抗体を含んでもよい。
【0138】
COMP-Ang1の全身的影響
COMP-Ang1の全身的の影響を検討するために、COMP-Ang1(CA 1-2; 生産速度、〜30 mg/L)を生産する安定したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系が作られた。また、アデノウイルスのベクターエンコーディングCOMP-Ang1は標準方法によって作られた。
【0139】
COMP-Ang1の全身性の影響を決定するために、我々は、成熟マウス(8-12週令)中の尾部静脈にアデノウイルスのCOMP-Ang1(1x109pfu)を単回投与し、または、 2-3週間COMP-Ang1/mouse/日の200μgを投与した。コントロールとして、我々は、年齢と性別が一致した成熟マウス(8-12週令)の尾部静脈にウシ血清アルブミン(BSA)/mouse/日の200μgを2-3週間投与し、あるいはアデノウイルスのLacZ(1x109pfu)を単回投与した。
【0140】
治療的血管形成
COMP-Angl組換え型タンパク質の治療の2-3週間後に、皮膚は100%の頻度で髪の毛がない、マウスが顔、手、底部、腺陰茎および尾で赤色を示した。一方、コントロールのマウスは正常な皮膚色を示した。Ade-COMP-Anglの投与を受けたマウスは、我々が検査した12か月まで、維持的な皮膚赤色を示した (図25A、25B、25Cおよび25D)。
【0141】
アデノウイルスのマウスVEGF(1x108pfu)の投与を受けた若いマウスが、パンチされた傷エリアで出血を伴って(図B)で著しい管の漏出を示した。一方、アデノウイルスのLacZ(1x1O9pfu)かアデノウイルスのCOMP-Angl(1x1O9pfu)の投与を受けたヤング・マウスは、管の漏出の兆候を示さなかった(図3A、3C)。顕著に、適度な血管形成はパンチされた傷エリアの近くで確認された。アデノウイルスのマウスVEGF(1x108pfu)の投与を受けた成体マウス(12週令)は、パンチされた傷エリアで、出血を伴う適度な管の漏出を示した(図E)。一方、アデノウイルスのLacZ(1x109pfu)かアデノウイルスのCOMP-Angl(1x109pfii) の投与を受けた成体マウスは、管の漏出の兆候を示さなかった(図3D、3F)。 顕著に、適度な血管形成はパンチされた傷エリアの近くで確認された。
【0142】
アデノウイルスのマウスVEGF(1x107pfu〜1x109)の高単位及び適度な単位の投与を受けた成体マウス(12週令)は、病気になり、肝臓と肺を含むほとんどの器官中の厳しい管の漏出から、服用量依存的に数日の内に死んだ。一方、アデノウイルスのCOMP-Angl(1x109pfu)の高単位の投与を受けた成体マウスは、彼等の生存中は正常で健康だった(図4)。
【0143】
ヘマトキシリン-エオシン染色された耳切片は、コントロール処理されたマウスに比べ、COMP-Ang1で処理されたマウスは、血管が数多くそして拡張していたことが示された(図5A、5B)。血管が抗-PECAM抗体および第2のローダミンラベル化抗ハムスターIgG抗体により視覚化されている、耳皮膚の全層切片は、コントロール処理されたマウスに比べ、COMP-Ang1で処理されたマウスにおいて、皮膚の小静脈および毛細管が拡張し、多数であったことを示した (図5C、5D)。
【0144】
これらの現象が、さらに皮膚において生じた。より多くの拡張し多数の血管が、コントロール処理されたマウスに比べ、COMP-Ang1で処理されたマウスでは、腹部の皮膚の表面的な上皮層で顕著だった(図6)。
【0145】
これらの現象は、我々がCOMP-Ang1でヌードマウスを処理した時、より明白である。COMP-Ang1処理されたマウスの顔面、首および胸の皮膚は、コントロールに処置されたマウスでのものより赤かった(図7)。COMPで治療されたマウスは、コントロールで処置されたマウスと比較して、耳において血管の数、サイズおよび分岐パターンの著しい増加を示した(図8)。
【0146】
興味をそそる結果に基づいて、COMP-Ang1は、心臓、四肢、脳および胃を含む虚血の器官疾病で患者を治療するのに役立つ。したがって、我々は大腿動脈の部分的な結紮によって虚血の後肢マウス・モデルを作成し、続いてレーザーミクロドップラー法によって虚血の領域の血流を計った。その後アデノウイルスのCOMP-Ang1(5xl07pfu)あるいはアデノウイルスのLacZ(5xl07pfu)は、虚血の筋肉に直接注入された。アデノウイルスのLacZ治療と比較して、アデノウイルスのCOMP-Ang1治療されたマウスの虚血の後肢にほとんど血流の全快があった。(図9) したがって、COMP-Ang1は、虚血疾患の患者を治療するのに役立つ。
【0147】
勃起障害の回復
COMP-Ang1処理した全身性の治療は、時間依存的にマウス陰茎において、フォン・ヴィルブランド因子誘導を伴い海綿静脈洞(corpora cavernosa sinus)のスペースを拡張させた。一方、コントロールは、マウス陰茎の変化を示さなかった。(図10) この現象は高倍の拡大分析(図11)に、より明らかである。さらに、PECAM-1発現は、COMP-1治療されたマウスの海綿体(corpora cavernosum)(コルポラ カベルノサム)の内皮細胞の周辺で増加した。(図12)
【0148】
これらの結果に基き、COMP-Ang1はアテローム性動脈硬化の勃起障害で患者を治療するのに役立ってもよい。したがって、我々は、3か月の間1%コール酸食事と4%コレステロールを供給することにより、高コレステロール血症の勃起性の機能障害のネズミ・モデルを作成した(図13)。 その後、アデノウイルスのCOMP-Ang1(5xl07pfu)あるいはアデノウイルスのLacZ(5xl07pfu)が、高コレステロール血症の勃起性の機能障害のネズミ(図13)の海綿体(corpora cavernosum)(コルポラ カベルノサム)に直接注入された。 あるいは、COMP-Ang1組換え型タンパク質(一日おきに4回)の10-50μgあるいはウシ血清アルブミン(一日おきに4回)の50μgは、高コレステロール血症勃起性の機能障害のネズミ(図13)の海綿体(corpora cavernosum)(コルポラ カベルノサム)に直接注入された。正常な物を食べるネズミと比較して、アデノウイルスのLacZ(5x107pfu)投与の2週後に高コレステロール血症のネズミに神経刺激の後に体内(intra-corporal)圧の著しい減少があった(図14)。対照的に、アデノウイルスのCOMP-Ang1(5x107pfu)投与(図14)の2週後に高コレステロール血症ネズミに神経刺激の後にほとんど体内(intra-corporal)圧の全快があった。COMP-Ang1組換え型タンパク質の直接注射は、用量依存的に高コレステロール血症のネズミの神経刺激の後に体内(intra-corporal)圧の回復を呈した。一方、BSAの直接注射は、体内(intra-corporal)圧の回復を示さなかった(図14)。組織学的分析は、海綿体内(intra-cavernosal)への COMP-Ang1投与が、用量依存的に、高コレステロール血症の勃起機能障害のネズミヘのフォン・ヴィルブランド因子の誘導を伴う海綿静脈洞(corpora cavernosa sinus)のスペースを拡張させることを明らかにした。一方、海綿体内(intra-cavernosal)へのBSA治療が海綿静脈洞(corpora cavernosa sinus)の変化を呈しなかった (図15)。内皮の内皮NOシンターゼ(eNOS)の活性化による一酸化窒素(NO)生産は、陰茎勃起の主な調節手段である。我々は、eNOS発現が、高コレステロール血症の勃起性機能障害のネズミの勃起性機能のCOMP-Ang1で引き起こされた回復に関係するかどうか検討した。eNOSの免疫蛍光染色により、内皮だけでなくCOMP-Ang1処理陰茎中の海綿静脈組織(corpora cavernosal tissues)でもeNOSのアップレギュレーションが注目されることを示した(図16)。したがって、高コレステロール血症のネズミの勃起性機能のCOMP-Ang1がした回復は、陰茎中のeNOSのアップレギュレーションによって媒介することができた。したがって、我々は、COMP-Ang1が、バイアグラ(R)あるいはシアリス(R)への反応性が無い、アテローム性動脈硬化の勃起障害の患者を治療するのに役立つと結論を下した。
【0149】
敗血症
Ang1受容体、Tie2、が、成人の肺の内皮細胞で十分に発現されているので、我々は、肺でCOMP-Ang1の影響を検討した。組織学的分析は、COMP-Ang1が、FITCレクチンでの潅流染色 (図18A、18D)およびHE染色(図17)によって証拠づけられるような、肺の健康および漏出しない毛細血管網を増加させるようであることを示唆する。さらに、PECAM-1は、コントロールに比べ、COMP-Ang1投与されたマウスの肺内皮細胞の中で著しく増加された (図18B、18E)。
【0150】
COMP-Angl(400ng/ml)は、phospho-PECAM-1、PECAM-I、phospho r-occludinおよびoccludin(それらは細胞間結合を維持するための重要な分子である)のレベルを、時間依存的に、一次培養ヒト臍静脈内皮細胞(HUVECs)で、適度に増加させる(図19)。COMP-Ang1(400ng/ml)は、培養された内皮細胞の細胞境界への、PECAM-1の周辺再構築を増強し、一方VEGF(20ng/ml)は、PECAM-1の周辺再構築を破壊した (図20)。
【0151】
結腸結紮により引き起こされた敗血症マウス・モデルでは、エヴァンス青の漏出によって評価されるような肺に激しい血管の漏れがある (図21)。 COMP-Ang1処理マウスは、肺で減小された血管漏出を示した (図21)。したがって、COMP-Ang1は敗血症により引き起こされた血管漏出の患者を治療するのに役立つ。
【0152】
長期的および持続的さCOMP-Ang1は、永続的な血管の拡大および増強された血流を誘導する(血管リモデリングにおけるCOMP-Angl)
Ang1は、内皮細胞上で発現されたTie2チロシン・キナーゼ受容体のリガンドであることが知られている(Davis et al.,1996, Cell 87 : 1, 161-1169)。Ang1/Tie2シグナリングは、発生の間に原始的な血管のネットワークを分岐し改装すること、および壁細胞のリクルートメント(漸増:recruitment)に関係すると、考えられる(Dumont et al., 1994,Genes Dev. 8 : 1897-1909 ; Suri et al., 1996, Cell 87 : 1171-1180)。皮膚に特有のケラチン- 14プロモーターを用いたAng1の遺伝子組換えの過剰発現は、皮膚の内皮細胞の数の増加を伴って、耐漏出性で拡張した血管をもたらす(Suri et al., 1998, Science 282 : 468-471 ; Thurston et al., 、1999, Science 286 : 2511-2514)。 虚血の組織の中へのAng1の遺伝子導入は顕著に拡張した血管を生産する(Shyu et al., 1998, Circulation 98 : 2081-2087 ; Chae et al., 2000, Arterioscler Thromb Vase Biol. 20 : 2573-2578)。 Baffertらは、最近、Ang1で引き起こされた血管の拡張が気管粘膜中の内皮の増殖の結果かもしれないと同定した(Baffert et al.,2004, Circ Res. 94 : 984-992)。したがってAng1誘導血管リモデリングの基本的な特徴は、成熟した動物の内皮細胞増殖に起因する血管の拡張である(Suri et al., 1998, Science 282 : 468-471 ; Thurston et al., 、1999, Science 286 : 2511-2514 ; Shyu et al., 1998, Circulation 98 : 2081-2087 ; Chae et al., 2000, Arterioscler Thromb Vase Biol. 20 : 2573-2578 ; Baffert et al.,2004, Circ Res. 94 : 984-992)。
【0153】
とすれば、虚血の組織中の血管の拡大と関連する、Ang1誘導治療の利点が与えられるならば、Ang1治療によって拡大した血管による増強された血流は、虚血の末梢組織に大きな治療の利点を提供することができる(Shyu et al., 1998, Circulation 98 : 2081-2087 ; Chae et al., 2000, Arterioscler Thromb Vase Biol. 20 : 2573-2578 ; Zhou et al., 2004, J Am Coll Cardiol. 44:897-903)。しかしながら、Ang1媒介の拡大した血管がある組織は、より多くの血流があるかどうかは知られていない。さらに、有効な血管の拡大を引き起こすためのAng1の効果的な用量および治療期間は知られていない。さらに、Ang1刺激が後退した場合、Ang1媒介の血管の拡大が逆行するかどうかは知られていない。
【0154】
我々は、可溶で、安定して、有力なAng1変異体、COMP-Ang1を最近開発した。(Cho et al., 2004, Proc Natl Acad Sci U S A.,101 : 5547-52;それらの内容は特にCOMP-Ang1を作成する方法に関して、参照によってその全体は、本願に組み入れられる。)このタンパク質を作成するために、我々は、Ang1のアミノ末端部分を軟骨のオリゴマーのマトリックス・タンパク質(COMP)の短いコイルドコイル領域に取り替えた。COMP-Ang1は、Tie2受容体の燐酸化において、また、一次培養内皮細胞のAktによるシグナリングは、天然のAng1より有力である(Cho et al., 2004, Proc Natl Acad Sci U S A.,101 : 5547-52)。
【0155】
本出願では、我々は、成体マウスにおける血管の拡大および組織血流に関し、COMP-Ang1の服用量及び投与期間の影響を検討した。また長期的で持続的なCOMP-Anglによって引き起こされた長期持続的な血管の拡大の可能なメカニズムを検討した。成体マウスにおける、COMP-Ang1刺激された血管リモデリングの根本的なメカニズムを決定するために、我々は、その単純性および1分子の厚さの構造によって識別される、気管の微小血管系に注目した。我々の結果は、COMP-Ang1のアデノウイルス運搬によってもたらされた長期間の持続的COMP-Ang1が、成体マウスで、増強された周皮細胞のリクルートメントのなく、長い持続的血管の拡大、および増強された血流をもたらすことを示した。長期持続的なTie2発現は、長期持続的な血管の拡大および増強された血流に関係する。
【0156】
気管の血管の拡大、およびCOMP-Ang1への長期的で持続された接触によって引き起こされた血管の組織血流の増強は、COMP-Ang1への接触が、成体マウスにおいて6-7週で既に中止されていたという事実にもかかわらず16週まで逆行しなかった。比較において、短い間のCOMP-Ang1の断続的な接触で引き起こされた血管の血管の拡大は、組換えのCOMP-Ang1治療の停止で逆行した。したがって、長期持続的な血管の拡大および血流の増強は、COMP-Ang1への長期的で持続された接触によって達成することができる。
【0157】
他の治療のタンパク質のように、COMP-Ang1を循環させることは、恐らく肺内皮細胞のTie2受容体によって食われることにより、血漿の中で急速に消えた。しかしながら、我々は、1x109pfu Ade-COMPの単一の静脈注射によってマウスにおいて、長期的な(>4週間)および持続的な(>1,000ng/ml)、COMP-Ang1循環を、達成することができた。これらの実験の全体にわたって、我々は、COMP-Ang1への長期的で(〜6週間)持続された接触が、血管(vessels)の粘膜中の後毛細血管細静脈およびターミナルの小動脈の永続的な拡大をもたらし、その一方で、COMP-Ang1への短期(〜2週間)・断続的な接触が、これらの血管の可逆的な拡大をもたらしたことを知った。我々の結果に似ているのだが、別の研究は、肝臓にVEGFへの長期的な(4週)持続された接触が、永続的に獲得した血管リモデリングを起こすと分かった。その一方でVEGFへの短期の(2週)保持された接触は、可逆的な血管リモデリングを起こした(Dor et al., 2002, EMBO J. 21 : 1939-1947)。
【0158】
永続的・可逆的な血管リモデリングを生産する主なメカニズムおよび要因は何であろうか。永久の拡大をもたらすために、COMP-Ang1によるTie2の閾値刺激があるか? 我々の結果は、ある服用量および接触期間以上のCOMP-Ang1処置によるTie2発現の自動増幅がメカニズムのうちの1つかもしれないことを示す。一旦Tie2発現がCOMP-Ang1への長期と超過接触によって活性化されれば、COMP-Ang1の停止の後、Tie2の後の活性化は、増加した血流により、内因的に循環Ang1あるいは増加した剪断力(shear stress)によって、達成されうる(Lee et al., 2003, Biochem Biophys Res Commun. 304 : 399-404) 。しかしながら、COMP-Ang1組換え型タンパク質の静脈内投与の実験によって証拠づけられるように、Tie2発現の自動増幅は、COMP-Ang1のある服用量および接触期間以下では達成することができない。したがって、永久の血管の拡大が虚血の組織の機能障害を緩和するために必要な場合、服用量、およびCOMP-Ang1あるいはVEGFの接触期間は、任意の治療の組み立てにおいて考慮されるべきである。
【0159】
Tie1(内皮の特定の受容体チロシン・キナーゼ)は、Tie2と高度の相同を共有する。 Tie1は10年以上前に(Partanen et at., 1992, Mol Cell Biol. 12 : 1698-707)分離されたが、リガンドがそれを活性化するのをわかっていなかった。最近、Saharinenらが、COMP-Ang1が培養された内皮細胞中のTiel酸化を刺激することを実証した(Saharinen et al., 2005, J Cell Biol. 169 : 239-243)。さらに、それらは次のことを示した、COMP-Ang1誘導Tie1活性化は、Tie2によって増幅され、天然のAng1とAng4に引き起こされたTie1活性化より効率的だった。したがって、COMP-Ang1およびAng1は、今や、Tie1とTie2の両方のためのリガンドを活性化していると知られている。しかしながら、我々のデータは、成人の気管の血管のCOMP-Ang1誘導血管リモデリングが、Tie1によるのではなく、Tie2の活性化を通じて主として媒介することを示す。
【0160】
Ang1は血管の拡大を引き起こし、いくつかの実験動物モデルに虚血の組織に対して治療の利点を持っているが、血管の拡大には増強された血流が伴うかどうかについてほとんど知られていない(Shyu et al., 1998, Circulation 98 : 2081-2087 ; Chae et al., 2000, Arterioscler Thromb Vase Biol. 20 : 2573-2578 ; Zhou et al., 2004, J Am Coll Cardiol. 44:897-903) 。我々の結果は次のことを示した、COMP-Ang1誘導された血管の拡大に、気管中の増強された組織血流が伴われた。したがって、COMP-Ang1によって引き起こされた小動脈・小静脈の拡大による増強された血流は、虚血の末梢組織に大きな治療の利点を提供する。実際、Ang1誘導の血管拡大は多くの成長因子中のユニークな特性である。ホスホヒストンH3の免疫組織学的な検査は次のことを明らかにした、つまりCOMP-Ang1誘導の血管の拡大は明らかに内皮の増殖の結果だった。それは、最近の報告(Baffert et al., 2004, Circ Res. 94 : 984-992)と一致している。したがって、小動脈・小静脈の拡大は主として周辺の内皮の増殖によって達成される。それはユニークな現象で、脈管形成と血管形成に多重方向のある内皮細胞増殖とは異なる。さらに、我々の結果は、異なる器官が、長期的で保持されたCOMP-Ang1に対し、異なる感度を示すことを明らかにした。 事実、皮膚中の血管、心臓、副腎皮質および肝臓では、他の器官と比べ、COMP-Ang1誘導血管拡大に比較的敏感である。したがって、COMP-Ang1は、血管リモデリングを促進するその能力によって、遅れた皮膚創傷治癒および虚血心疾病を持った患者に大きな治療の利点を提供できた。 しかしながら、永続的で持続されたCOMP-Ang1で処理されたマウスは、体重、全身血圧あるいは心拍数の著しい変化を示さなかった。もっと詳細な分析で、明確にすることが必要になり、長期的で持続されたCOMP-Ang1によって引き起こされた、拡大した血管を有するマウスに正常血圧と心拍数があることはどのようなことであろうか。
【0161】
Ang1は発生の間、内皮細胞への周皮細胞のリクルートメントの強い成長要因であると知られている(Suri et al., 1996, Cell 87 : 1171-1 180 ; Suri et al., 1998, Science 282 : 468-471 ; Thurston et al.,1999, Science 286 : 2511-2514 )。このAng1に引き起こされた周皮細胞リクルートメントは、VEGFおよび前炎症性の刺激に対するAng1に引き起こされた抗漏出効果と関係がある(Thurston et al.,1999, Science 286 : 2511-2514) 。しかしながら、我々の結果はより低い数を示し、また、COMP-Ang1誘導の、拡大した後毛細血管細静脈における、周皮細胞の中でより貧弱なカバリング(covering)を示した。マウス・モデルにおいて、実際、完全に血小板由来増殖因子受容体に対する相反する単クローン抗体(血小板由来成長因子受容体−β)に対する抗体)誘導の注入によって血管を発生することへの周皮細胞リクルートメントをブロックし、Ang1は、成長している血管の階層的アーキテクチャーおよび救助に周皮細胞リクルートメントがない状態でさえ網膜浮腫および出血を回復することができる(Uemura et al., 2002, J Clin Invest. 110:1619-1628)。したがって、COMP-Ang1は、COMP-Ang1で引き起こされた拡大した血管中の周皮細胞リクルートメントのない階層的アーキテクチャーの構造中の内皮細胞を組み立てることができる。
【0162】
結論として、永続的な血管の拡大および血流の増強は、COMP-Ang1への長期的で持続された接触によって達成することができる。
【0163】
COMP-Ang1は、糖尿病のマウス・モデル中の増強された血管形成、リンパ管形成および血流によって創傷治癒を促進する。
大人の皮膚の(皮膚)傷が直るのは、異なる組織および細胞系統活動を統合する複雑なプロセスである(Martin, 1997, Science 276:75-81)。寄与する細胞タイプは、どのように、増殖、遊走、マトリックス合成および収縮中に振舞うのかを、正常で病理学の状態の傷部位で成長因子およびマトリックスシグナルが提供するのと同様に、広範囲に検討された。これらのうち、血管形成とリンパ管形成は、創傷治癒プロセスに重大である(Tonnesen et al., 2000, J Dermatol Symp Proc. 5 :40-46 ; Hirakawa et al., 2004, J Dermatol Sci. 35 : 1-8)。血管内皮成長因子(VEGF)およびアンジオポイエチンによって媒介した信号は、血管形成およびリンパ管形成のコントロールおよび規則に関連している(Yancopoulos et al., 2000, Nature 407 : 242-248 ; Tammela et al.,2005, Trends Cell Biol. 15 : 434-441 )。
【0164】
遅延性皮膚創傷治癒は糖尿病中の重大な併発症である。それは、害された皮膚の血流、低酸素症、加速された炎症、浮腫および内皮の神経の機能障害が伴った微小血管病と末梢神経障害によって主として引き起こされる(The Diabetes Control and Complications Trial Study Group. 1993, New Engl J Med. 329 : 977-986 ; Mrtin et al., 2003, Med Res Rev. 23:117-145 ; Laing et al., 1998, Am J Surg. 176 : 1 1 S-19S ; Reiber et al., 1999,Diabetes Care 22 : 157-162)。さらにVEGF-AおよびTie2(Angl受容体)の発現が、糖尿病患者の傷の中で著しく縮小される (Frank et al., 1995, J Biol Chem. 26 : 12607-12613 ; kampfer et al., 2001, Lab Invest 81 : 361-373)。したがって、VEGF-AあるいはAng1の補足の運搬によって構造・機能的な微小血管系を回復することは糖尿病患者の中の創傷治癒を促進するのに有益になりえる。実際、最近の報告は、増加した血管形成によって、および骨髄由来細胞の動員および補充によりVEGF-Aの局所適用が皮膚の創傷治癒を促進することを示した(Galeano et al., 2003, Diabetologia. 46 : 546-555 ; Galiano et al., 2004, Am J Pathol.164:1935-1947)。しかしながら、VEGF-Aの局所の適用は、しばしば漏出する、炎症がある、および奇形の血管の結果をもたらす。それは非常にその治療の有用性を危険にさらす(Galeano et al., 2003, Diabetologia. 46 : 546-555 ; Galiano et al., 2004, Am J Pathol.164:1935-1947 ; Thurston et al., 1999, Science 286:2511-2514)。 それに比べて、Ang1は、Tie2とTie1の受容体によって安定して機能的な血管を生成するために機能するユニークで特異的な成長因子である(Thurston et al., 1999, Science 286:2511-2514 ; Davis et al., 1996, Cell 87 : 1161-1 169 ; Suri et al., 1996, Cell 87 : 1171-1180 ; Cho et al., 2005, Circ Res. 97 :86-94 ; Saharinen et al., 2005, J Cell Biol. 169 : 239-243)。我々は可溶で、安定して、有力なAng1変異体、COMP-Ang1を最近開発した(Cho et al., 2004, Proc Natl Acad Sci. USA 101 : 5547-5552)。このタンパク質を作成するために、Ang1のアミノ-末端の部分を、オリゴマーのマトリックス・タンパク質(COMP) の軟骨の短いコイルドコイル領域を置換した。COMP-Ang1は、Tie2受容体の燐酸化と、初代培養内皮細胞におけるのAktによるシグナリングは、天然のAng1より強力である(Cho et al., 2004, Proc Natl Acad Sci. USA 101:5547-5552)。更に、COMP-Ang1の長期的で持続された治療は永続的で安定した血管の拡大および増加した血流生産することができた(Cho et al., 2005, Circ Res. 97 : 86-94)。
【0165】
本出願では、我々は、正常な糖尿病のマウスの皮膚の傷をいやすプロセスの促進において、COMP-Anglの有効性を決定した。さらに、Ang1で引き起こされた血管形成が内皮の活性化された内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)による一酸化窒素の生成を必要とするように見える(Babaei et al., 2003, Am J Pathol. 162 : 1927-1936)ので、我々は、eNOSあるいは誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)が、COMP-Ang1誘導加速化創傷治癒に関与するかどうかを、eNOS(-/-)およびiNOS(-/-)マウスを使用して、検討した。 我々の結果は、COMP-Ang1が、増強された血管形成、リンパ管形成および血流を備えた正常で糖尿病のマウス中の創傷治癒を促進することができることを示した。傷閉鎖および血管形成のCOMP-Ang1で引き起こされた促進は、eNOSとiNOSに依存しなかった。
【0166】
COMP-Angl1は、心室のリモデリングを減じて、血管形成を引き起こし、遅い再還流の経壁の心筋梗塞(LMI) ネズミモデルにおいて、心室機能を元に戻す。
本発明者は、COMP-Ang1が、心筋梗塞のネズミ・モデル中の残された心室のリモデリングを著しく減ずることをさらに実証した。これらの発見は、COMP-Anglが、虚血心の治療的血管形成の有効な物質であることを示す。実施例4を参照。
【実施例】
【0167】
実施例 1.1
COMP-Ang1組換え型タンパク質およびAde-COMP-Ang1の生成
COMP-Ang1を発現する組換えチャイニーズハムスター卵巣(rCHO)細胞(CA 1-2; 生産速度、〜30mg/L)は、記述されたように確立されている(Hwang et al., 2005, Protein Express Purif. 39 : 175-183)。COMP-Ang1あるいはLacZを発現する組換えアデノウイルスは、pAdEasy(TM)ベクター・システム(Qbiogene)を使用して構築された。
【0168】
実施例 1.2
動物、処置及び血圧と心拍数の測定
特定病原体未感染のFVB/NマウスおよびTie2-GFPの遺伝子組み換えのマウス(FVB/N)(Schlaeger et al., 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 94 :3058-3063 )が、ジャクソン研究所より購入され、そして我々の病原体なしの動物設備の中で飼育した。8-10週令の雄性マウスが、この研究に使用された。動物の世話および実験の手続きは、KAISTの動物ケア委員会から承認の下で行なわれた。タンパク質治療については、無菌の0.9%のNaClの50μLで溶かされた、COMP-Angl組み換え型タンパク質あるいはBSAの200μgが、2週間尾部静脈に毎日注入された。アデノウイルス治療については、無菌の0.9%のNaClの50μLで希釈された、表示の量のAde-COMP-Ang1、Ade-LacZあるいはAde-sTie2-Fc(可溶のTie2受容体アデノウイルス構成物)(リジェネロン・ファーマシューティカルズのガヴィン・サーストン博士およびエラIoffe博士からの寛大なる提供物)は、尾部静脈から静脈内に注入された。全身血圧と心拍数は麻酔の下で測定された。
【0169】
実施例 1.3
酵素免疫吸着法(ELISA)
血液のおよそ50μLが、表示の時に、ヘパリン処理された毛細管へ、尾部静脈から回収された。ELISAは、血漿中のCOMP-Ang1の正確な検知のために採用された。
【0170】
実施例 1.4
免疫組織化学的染色
マウスは、麻酔され、1%のパラホルムアルデヒド含有PBS中で、灌流された。また、気管を含むいくつかの器官が除去された。気管と耳の皮膚が全体が免疫染色され、一方、他の器官は切片として免疫染色された。シグナルは視覚化され、また、デジタル像は、Zeiss Apotome顕微鏡およびZeiss LSM 510共焦点顕微鏡で得られた。
【0171】
実施例 1.5
気管組織の血流測定
マウスは麻酔をかけられた後、タイプNフロープローブ(Transonic System社、Ithaca(ニューヨーク、アメリカ)が、管を塞ぎ、所望部位における灌流を減少するように、圧をかけることなく、第2、第3、第4の軟骨リングにそって、気管壁に設置された。フロープローブは、微調整装置によって高感度の位置上で適所に維持されレーザー-ドップラー流量計(モデルBLF21; トランソニック・システムズ社)に接続された。それは、灌流のリアルタイム評価のために組織の1mm3で微小循環系を測定することができる(組織のml/min/100g)。
【0172】
実施例 1.6
形態測定の測定および統計
以前に記述された(Baluk et al., 2004, Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 287 : L307-L317)ように、マウス気管中の血管径および面密度の形態測定の測定がなされた。 各気管については、PH3の免疫陽性内皮細胞、PECAM-1免疫陽性な血管およびデスミン/NG2免疫陽性な周皮細胞の数が、5つの領域、各0.21mm2で測定された。値は、mm2につき表わされた。表示の値は平均値±標準偏差(SD)。 平均の違いの重要性は、スチューデント-ニューマン-クールズテストにより、偏差の分析によってテストされた。統計的有意性はP<0.05で設定した。
【0173】
実施例 1.7
全身性のアデノウイルスのCOMP-Ang1は、マウスの気管の粘膜中の血管の異なる拡大を生じる。
COMP-Ang1による生体内の治療については、我々は、〜30mg/LでCOMP-Ang1を生産する安定した中国のハムスター卵巣(CHO)細胞系(CAl-2)を開発した。CAl-2から生産した、COMP-Ang1の性能、可溶性、オリゴマー化ステータスおよび安定性は、COMP-Ang1遺伝子を含んでいるプラスミドベクターで一時的にトランスフェクトされたCOS-7細胞から生産したCOMP-Anglのものに似ている(Cho et al.,2004, Proc Natl Acad Sci U S A 101:5547-52)(データは示さず)。 成体マウスは、2週間、COMP-Ang1組換え型タンパク質あるいはウシ血清アルブミン(BSA)の200μgを、後肢部静脈から、毎日静脈注射で処理された。次に、気管の粘膜中の血管が、血小板/内皮細胞接着分子-1(PECAM-1)免疫染色で視覚化された(図22)。微小血管系の6つのセグメントが、内皮細胞形態で管の階層中のそれらの位置および違いによって識別された。(McDonald et al., 1994, Am J Physiol. 266 : L61-L83)。気管の血管の拡大は、効力の次の減少順にCOMP-Ang1を受けたマウスで見られた : 後毛細血管細静脈>毛細管>集合(collecting)小静脈>小静脈>ターミナルの小動脈(図22B)。 重要な変更は分節の小動脈では示されなかった。これらの現象は、研究されたいくつかのマウス系統(FVB/N、C57BL/6、BALB/c、BALB/c-nu、C3H/HeJ)のすべての固体に観察された。気管の血管のサイズか形の変化は、BSA投与を受けたマウスで見つからなかった。
【0174】
実施例1.8
短期・断続的な循環COMP-Ang1は、気管の後毛細血管細静脈および小動脈の可逆的な拡大を引き起こす。
COMP-Ang1組換え型タンパク質の200μgが、オスの成体マウスに静脈内で注入された時、循環するCOMP-Ang1レベル、注入(〜3.75min)の後に直ちにピークに達し、その後、下降した、治療後の3-4時間で、またコントロールレベルにほとんど戻った(図23A)。循環COMP-Ang1の半減期(tl/2)は、11.8分だった。1週間、COMP-Ang1の200μgの毎日の静脈注射は、マウスの後毛細血管細静脈のおおよそ2.0倍の拡大、および気管中の末端小動脈におおよそ1.4倍の拡大をもたらした(図23)。 COMP-Ang1で引き起こされた、後毛細血管細静脈、集合小静脈、毛細管の末端静脈、小静脈および末端小動脈の拡大は、2週までの間、COMP-Ang1の毎日の投与の継続で、さらに、2週まで増加した。しかしながら、COMP-Anglで引き起こした拡大した血管をは、COMP-Ang1治療の停止の後に徐々に正常となった(図23)。COMP-Ang1治療の停止の1か月後に、2週間の、COMP-Ang1の200μgの毎日の静脈注射による治療の第2ラウンドは、可逆的な状態(データ示さず)で気管の同様の拡大を再び引き起こした。それに比べて、BSA(データ示さず)で処理されたマウスの気管の直径は、コントロールと実験期間の間で判別不能だった。これらの結果は、循環COMP-Anglの短いスパイクは、いくつかの気管の血管(tracheal vessels)の可逆的な拡大を引き起こす。
【0175】
実施例 1.9
長期的で持続された循環COMP-Ang1は、気管の血管(tracheal vessels)の後毛細血管細静脈および末端小動脈の長期持続的な拡大を引き起こす。
COMP-Ang1での全身的治療のための代替方法として、COMP-Ang1遺伝子(Ade-COMP-Ang1)をコードするアデノウイルスのベクターも開発された。 コントロールとして、LacZ遺伝子(Ade-LacZ)をコードするアデノウイルスのベクターが開発された。Ade-COMP-Anglで形質転換されたHEK293細胞から生産した、COMP-Ang1の 性能、可溶性、オリゴマー化ステータスおよび安定性は、COMP-Ang1遺伝子(データ示さず)を含んでいるプラスミドベクターで一時的にトランスフェクトされたCOS-7細胞から生産したCOMP-Ang1(Cho et al., 2004, Proc Natl Acad Sci U S A. 101 : 5547-52)のそれに似ている。成体マウスは、1x109pfu Ade-COMP-Ang1あるいはAde-LacZで処理された。16週の期間にわたる多数の回に、循環血漿COMP-Ang1レベルは測定された。また、気管の粘膜中の血管は、PECAM-1免疫染色で視覚化された(図24)。循環COMP-Ang1は、治療の後は、早くも12時間で増加し、1-2週でピークとなり、徐々にその後下降し、そして、治療6週でコントロールレベルに返った(図24A)。循環COMP-Ang1のピーク濃度は、ほぼ3.5-4.5μgだった。分節小動脈ではなく末端小動脈、後毛細血管細静脈、毛細管(特徴的に、毛細管の静脈の末端だけが拡大した)、集合小静脈の著しい拡大は、Ade-COMP-Angl治療の後に1週で顕著だった(図24B)。Ade-COMP-Ang1によって引き起こされた管の拡大は、6週以内の間さらに増加し、次に、プラトーに達した(図24Aおよび24B)。例えば、後毛細血管細静脈の直径は、2週で4.3倍、4週で6.0倍および6週で6.8倍に増加した(図24A)。さらに、末端小動脈の拡大は、治療の後1週で明確に始まって、時間依存的に増加した。しかしながら、末端小動脈中の直径の増加は、後毛細血管細静脈におけるより少なかった(図24Aおよび24B)。重要なことには、Ade-COMP-Ang1誘導で拡大した血管のサイズは、循環COMP-Ang1は治療後6週でコントロールレベルにもどったが、治療後16週の間著しくは減少しなかった(図24A)。 それに比べて、Ade-LacZで扱われたマウスの気管の血管(tracheal vessels)の直径はコントロールと実験期間(データは示されない)の間で判別不能だった。レーザードップラー流量計を使用して、気管組織の血流が、Ade-LacZあるいはAde-COMP-Ang1処置後2週(循環COMP-Ang1のピーク・レベル)と16週(循環COMP-Ang1の検出できないレベル)で測定された。2週では、気管の組織血流は、Ade-LacZで処置されたマウスと比較して、Ade-COMP-Ang1で処置されたマウスでおよそ25%増加した(図24Cおよび24D)。16週では、重要なことには、Ade-COMP-Ang1による増加した気管の組織血流は著しく変更されなかった(図24Cおよび24D)。 これらの結果は、長期持続的な循環COMP-Ang1処置が、成体マウスの組織血流の長期持続的な増強を伴い、気管の血管の長期持続的な拡大を引き起こすことを示す。
【0176】
実施例 1.10
Tie2活性化は、COMP-Ang1で引き起こされた血管リモデリングに関係する。
COMP-Ang1で引き起こされた血管リモデリングへのTie2活性化の関与を決定するために、マウスは、1x108pfuのAde-COMP-Ang1治療に先立って24時間前に、1x108pfu 又は5x108pfuのAde-sTie2-Fcで前処理された。2週間後に、後毛細血管細静脈および末端小動脈の直径が測定された。1x108pfuあるいは5x108pfu のAde-sTie2-Fcでの前処理は、COMP Anglで引き起こされた血管リモデリングを次の程度に抑制した:後毛細血管細静脈での各46.5±7.7%あるいは93.5±6.4%および末端小動脈での各59.7±6.6%或いは95.1±5.7%、 (図24Eおよび24F)。これらのデータは次のことを示す、COMP-Ang1で引き起こされた血管リモデリングは、主として、成人の気管の血管(tracheal vessels)におけるTie2活性化を通じて媒介される。
【0177】
実施例 1.11 長期的で持続された循環COMP-Ang1は、異なる器官中の様々な血管(vascular)リモデリングを引き起こす。
Ade-LacZ(1x109pfu)で処理されたマウスおよびAde-COMP-Ang1(1x109pfu)で処理されたものの両方が、正常に体重を増したので、一般に健康に見えた。しかしながら、Ade-COMP-Ang1で処理されたマウスの皮膚は、Ade-LacZで扱われたハツカネズミの皮膚より著しく赤く見え、それは治療後に10-14日で始まった。Ade-COMP- Ang1で引き起こされた皮膚赤色は、処置後16週間持続した(図25)。処置後16週間、Ade-COMP-Ang1で処置されたマウスの顔面、手、底部、陰茎および尾のような毛希薄な部分の皮膚色は、Ade-LacZで処置されたマウスのものより明確に赤かった。
Ade-COMP-Ang1で処置されたマウスの耳の血管、および心臓、副腎皮質および肝臓の毛細管は拡大した(図25および26)。より多くのPECAM-1陽性の内皮細胞が、Ade-LacZで処置されたマウスと比較して、Ade-COMP-Ang1で処置されたマウスの肺、心臓、肝臓および腎髄質に存在した(図25および26)。しかしながら、Ade-COMP-Ang1で処置されたマウスとAde-LacZで処置されたマウスにおいて、糸球体を含む腎皮質の血管、及び、腸絨毛は判別不能だった。さらに、マウスの2つのグループの体重、全身血圧および心拍数は判別不能だった。これらの結果は、循環COMP-Anglの長期の持続的処置が、全身血圧および心拍数の顕著な変化なく、異なる血管の長期持続的な組織に特有の血管(vascular)リモデリングを引き起こすことを示す(テーブル1)。
【0178】
テーブル1
コントロールおよびCOMP-Ang1処置マウス間の血行力学のパラメーターの比較

コントロール COMP-Ang1 兆候(significance)
体重(g) 30.5±1.9 29.0±1.1 NS
SBP(mmHg) 87.8±5.8 90.7±3.6 NS
DBP(mmHg) 51.7±4.9 59.2±4.2 NS
MAP(mmHg) 70.1±6.8 74.1±3.2 NS
心拍数(bpm) 1901±16 212±1.0 NS
【0179】
FVB/Nマウスは、1x109pfu Ade-LacZ(n=5)あるいはAde-COMP-Ang1(n=5)で処置された。16週間後に、マウスは麻酔をかけられ、そして、それらの収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、平均動脈圧(MAP)および心拍数が測定された。 値は5匹のマウスからの平均値±SD。 NSは差を認めず。
【0180】
実施例 1.12
Tie2の誘導は、COMP-Ang1で引き起こされた血管(vascular)リモデリングの恒久的変更に関係する。
これらの観察に基づいて、我々は、Tie2発現がマウス気管中の末端小動脈より後毛細血管細静脈においてより豊富かどうかを検討した。それゆえ、我々は、Tie2のプロモーター駆動緑色蛍光タンパク質(GFP)を担持する遺伝子組み換えマウスを使用して、Tie2発現の程度を検討した(Schlaeger、1997年ら、Proc Natl Acad Sci U S A.94:3058-、3063)。成体マウスの気管粘膜では、Tie2発現は、後毛細血管細静脈のほとんどの内皮細胞において検知できなかった。その一方で、それは、気管の血管(tracheal vessels)の末端および前毛細管小動脈の内皮細胞では、適度に発現された(図27)。したがってCOMP- Ang1刺激による、気管の血管(tracheal vessels)の拡大の差異は、Tie2発現の程度に依存しない。しかしながら、Tie2発現は、Ade-COMP-Ang1処置後2週で、集合小静脈(collecting venules)、小静脈、後毛細血管細静脈および毛細管の内皮細胞で著しく増加した(図27)。それはAde-Ang1の最近の報告書とほぼ一致している(Baffert et al., 2004, Circ Res. 94:984-992)。Tie2発現は、Ade-COMP-Ang1 処置後16週で、同じ管(vessels)の内皮細胞でさらに増加した(図27)。対照的に、Tie2発現は、組み換えCOMP-Ang1タンパク質での処置後2週で、拡大した気管の血管(tracheal vessel)のどんな内皮細胞の中でも変化がなかった(図27)。気管の粘膜(tracheal vessel)の細動脈、毛管(capillarie's)、および小静脈(venules)について、顕微鏡視野範囲 (0.22mm2)でのTie2発現の面積密度は、Ade-LacZ処置後(2週)で各々8.2±1.7、2.8±0.4および3.3±0.6% (4匹のマウスからの平均±SD)、COMP-Ang1タンパク質処置後(2週)でそれぞれ、7.6±1.9、3.1±0.5および3.7±0.6%、Ade-COMP処置後(2週)で各々11.3±2.2、10.3±1.7および28.1±5.4%、Ade-COMP処置後(16週)で、13.3±2.7、18.2±3.5および47.7±7.2であった。さらに、Tie2発現は、Ade-COMP-Anglで処置されたマウスの、腹部の皮膚の拡大した静脈及び肝臓中の洞様毛細血管において、該処置の後に16週で、Ade-LacZで処置されたマウスより、顕著により高かった。したがって、小静脈及び毛状の内皮細胞中のTie2発現は、Ade-COMP-Ang1によって引き起こされた長期的で保持されたTie2刺激で引き起こされる、しかし、組換えのCOMP-Ang1タンパク質によって引き起こされた、短期のスパイクTie2刺激ではおこらなかった。
【0181】
実施例 1.13
COMP-Ang1で引き起こされた管(vascular)の拡大は、周辺の内皮細胞増殖に起因する。
内皮細胞がサイズで正常だった(図28Aおよび28B)ので、血液小静脈のCOMP-Ang1で引き起こされた拡大は、血管拡張か内皮細胞異常発達ではなく、内皮細胞増殖に起因するように見える。この可能性をテストするために、我々は、免疫染色によりホスホヒストンH3(diving細胞の核タンパク質)の陽性の内皮細胞の数を検査した。Ade-COMP-Ang1処置、あるいは組換えのCOMP-Ang1タンパク質処置(データ示さず)の後4日及び2週で、気管の血管(tracheal vessel)の後毛細血管細静脈、毛細管、集合小静脈、小静脈および末端小動脈を含む様々な部分に免疫染色されたホスホヒストンH3陽性の内皮細胞が検知された(図28D、28Fおよび28I)。 しかしながら、ホスホヒストンH3陽性の内皮細胞は、Ade-LacZ処置後4日、2及び16週で、及びAde-COMP-Angl処置後16週で、気管の血管(tracheal vessel)のどのような部分でも、検出されていない(図28C、28E、28Gおよび28I)。 これらの知見は、COMP-Ang1よって引き起こされた管(vascular)の拡大が、血管拡張か内皮細胞異常発達からよりも、循環COMP-Ang1の濃度に依存する内皮細胞増殖に起因するようである。
【0182】
実施例 1.14
COMP-Ang1で引き起こされた後毛細血管細静脈拡大には、周皮細胞補充(recruitment)が伴わない。
Ang1は、生理学及び病理学の状態での血管形成の間の、発生期の内皮細胞に対して周皮細胞補充の強い成長因子であると知られている(Suri et al., 1996, Cell 87:1171-1180 ; Suri et al., 1998, Science 282 : 468-471 ; Thurston et al., 1999, Science 286 : 2511-2514)。したがって、我々は、Ade-LacZあるいはAde-COMP-Ang1処置後4週で、内皮細胞と周皮細胞のダブル免疫染色により、気管の拡大した血管での内皮細胞と周皮細胞の間の相互作用を検討した。Ade-COMP-Ang1処置されたマウスのほとんどの気管の血管(tracheal blood vessels)(後毛細血管細静脈以外の)の内皮細胞と周皮細胞の相互作用は、Ade-LacZ処置のマウスのそれに類似した (図29) 。 周皮細胞と内皮細胞のより少ない相互作用が、他のところより拡大した後毛細血管細静脈で見つかったが、拡大した後毛細血管細静脈の周皮細胞の数は、コントロールの後毛細血管細静脈に似ていた(図29)。したがって、COMP-Ang1は、気管のCOMP-Ang1で引き起こされた拡大した小静脈に対し、周皮細胞の補充を促進しなかった。
【0183】
実施例 2
Ade-COMP-Ang1およびCOMP-Ang1組換え型タンパク質の生成
COMP-Ang1又はバクテリアβ-ガラクトシダーゼ(以下β-gal)を発現する組み換えアデノウイルスは、既知方法(Cho et al., 2005, Circ Res. 97 : 86-94)に準じて、pAdEasy(TM)ベクターシステム(Qbiogene、Carlsbad(CA))を使用して構築された。COMP-Ang1(CA 1-2)を発現する組み換えチャイニーズハムスター卵巣細胞は確立され、また、既知の方法(Cho et al., 2005, Circ Res. 97 : 86-94)で、組換えCOMP-Ang1タンパク質が調製された。
【0184】
実施例 2.1
動物、創傷治癒および処置
特定病原体未感染のFVB/Nマウス、糖尿病のC57BLKS/J-m+/+Leprdb(db/db)マウス、C57BL/6J、およびeNOS(-/-)マウスおよびiNOS(-/-)(C57BL/6J遺伝的背景)は、ジャクソン研究所(ジャクソン研究所、バーハーバー(ME))から購入され、我々の病原体なしの動物施設で飼育した。8〜10週令雄性マウスが、この検討に使用された。動物飼育および実験方法はKAISTとKRICTの動物ケア委員会から承認の下で行なわれた。1.5mmの穴は、金属耳パンチ(ハーバード装置、ホリストン(MA))を使用して、FVB/Nマウスの両耳の中心に作られた。十分な厚さの損傷については、切除が、動物の身体へおよそ0.5〜1.0cm遠位(distal)で、尾の背の表面上でなされた(Falanga et al., 2004, Wound Repair Regen.12:320-326)。テンプレートは、マウス尾の背の表面で、10×3mmを描写するために使用された。テンプレート・エリアに相当する十分な厚さの損傷は、個々の無菌の#10ゲージ・メス(ベクトン・ディキンソン、フランクリンレイクス、NJ)を使い作成された。出血は傷への圧力の単純な適用によって止められた。また、傷はフィルム・スプレー包帯(Cavilon、3M、聖ポール、MN)で覆われていた。 手術後に、マウスは暖かくしておかれ、それらの温度が、手術後3日間モニターされた。 術後感染を防ぐために、トリメトプリム・サルファ剤(Sulfatrimの小児用懸濁液)が飲料水に5日間加えられた。傷閉鎖分析用の耳および尾の採取は麻酔を必要とした。それは、0(傷をつける直後)から損傷後8週まで、検討の期間中、麻酔薬のコンビネーション(80mg/kgのケタミンおよび12mg/kgのxylazine)筋肉注射によって行なわれた。アデノウイルスの処置については、無菌の0.9%のNaClの50μLに希釈された1x109pfu Ade-COMP-Ang1あるいはコントロールウィルスが、損傷の後に、尾部静脈から静脈内に12時間注入された。循環COMP-Ang1を検知するために、確立している酵素免疫吸着分析(ELISA)プロトコル(Cho et al., 2005, Circ. Res. 97:86-94)を使った。Ade-COMP-Ang1処置糖尿病(db/db)マウスで、循環COMP-Ang1レベルは、初期に、12時間で増加(355の±98ng/ml)し、1週でピーク(3,221±365ng/ml)となり、徐々に下降し、Ade-COMP-Ang1投与6週後にコントロールレベルに戻った。それは、Ade-COMP-Ang1処置FVB/Nマウスでの以前の知見(Cho et al., 2005, Circ. Res. 97:86-94) に似ている。タンパク質処置については、無菌の0.9%NaClの50μLに溶解された、COMP-Angl組換え型タンパク質あるいはBSAの100μgを、1日目に、フィルム・スプレー傷手当ての前に、損傷部位に直接投与し、及び、損傷の後次の4週間一日単位で、フィルム・スプレー傷手当てと非損傷部位の間の領界損傷部位を露出するため最初に投与した。投与されたタンパク質は、最初の週に、傷手当てフィルムのまわりの傷の端で主として分布され、残りの3週間で傷区域全体に平等に送達された。
【0185】
実施例 2.2
傷閉鎖の形態測定分析
マウスは、麻酔薬(80mg/kgのケタミンおよび12mg/kgのxylazine)のコンビネーション筋肉注射によって麻酔をかけられ、暖パッド上に置かれた。尾と耳の傷はデジタル・カメラ〔Coolpix、ニコン、東京(日本)8400〕で撮影された。尾損傷部位のサイズ(mm2)は、ImageJソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/ii)で、写真の分析をして追跡した、損傷視野計から計算された。また、すべて尾損傷面積(area)は、損傷の週の日の0日面積を100%とした; その後の損傷部位は、0日面積から比率として表現された。
【0186】
実施例 2.3
組織学・形態測定の分析
マウスは、PBSで1%のパラホルムアルデヒドの血管還流によって固定した。耳と尾は除去された。また、組織はパラフィン(ヘマトキシロンおよびエオシン染色用)あるいはクリオーフリージング メディア(免疫染色用)の中へ埋め込んだ。パラフィン切片(6μm厚)およびクリオ切片(20μm厚)が用意され、0.3%のトリトンX-100(PBST)含有PBSに5%の正常なヤギ血清(Jackson Immuno ResearchLaboratories社 West Gorve, PA)を含む、ブロッキング溶液と室温で1時間インキュベーションされた。切片は、1つ以上の一次抗体と室温で2時間インキュベートされた: (a)血管用、抗-PECAM-I抗体、ハムスター・クローン2H8、1:100(Chemiconインターナショナル社 Temecula,CA); (b)リンパ管用、抗マウスLYVE-1抗体、ネズミ単クローン抗体、1:100(Aprogen、Daejeon, Korea); 繊維芽細胞用、FITC結合抗-α-SMA抗体、マウス・クローン1A4、1:200(シグマ・オールドリッチ(セントルイス(MO))); (d)増殖細胞用、抗-Ki67抗体、ウサギポリクローン抗体、1:100(Novocastraラボラトリーズ株式会社、ニューカースル、英国); そして(e)神経細胞用、抗neurofilament抗体、ウサギポリクローン抗体、1:100(Chemiconインターナショナル社)。PBSTで数回の洗浄後、切片は1つ以上の二次抗体で室温で1時間でインキュベートされた: (a) Cy3結合抗-ハムスターIgG抗体、1:500(Jacson ImmunoResearchLaboratories社)i; (b) FITC結合抗ラット抗体あるいは抗ウサギ抗体、1:500(Jacson ImmunoResearchLaboratories社)。 対照実験については、一次抗体は省略するか前免疫血清で代用された。シグナルは、視覚化され、また、デジタル像は、アルゴンおよびヘリウム・ネオン・レーザー(カール・ツァイス、イェーナ、ドイツ)を装備したツァイスApotome顕微鏡およびツァイスLSM 510共焦点顕微鏡を使用して得られた。 耳(mm)の創傷治癒の程度は免疫蛍光検査法のイメージの写真の分析によって画像解析ソフトウェア(LSMイメージ ビュウアー、カール・ツァイス)で分析された。表皮・皮膚の再生のパラメーター、組織肉芽形成の厚さおよび表皮の厚さは、HE染色された切片で評価され得点化された。血液とリンパ管の面密度(組織エリアのパーセンテージ)は、PECAM-1-及びLYVE-1-免疫陽性血及びリンパ管によって、各々、5つの領域、切片当たり、各0.21mm2エリアで、x200の拡大で測定された。
【0187】
実施例 2.4
損傷エリアの組織血流の測定
マウスが、ケタミン(80mg/kg)およびxylazine(12mg/kg)の混合物の筋肉注射によって麻酔をかけられた後、37℃の体温を維持するために、それらは加熱テーブルに置かれた。タイプNフロープローブ(トランソニック・システムズ社、Ithaka、NY)は、圧力を加えずに、尾損傷の管及び静脈部分に置かれ、それは所望の部位で、管を閉塞し、灌流を減少する。フロープローブは、微調整装置によって高感度の部位で適所に維持され、レーザードップラー流量計(モデルBLF21;トランソニック・システムズ社) に接続され、それは灌流のリアルタイム評価のために組織の1mm3で微小循環系を測定することができるものである。 これらのアナログ信号は、100Hz(Digidata 1200、Axon Instrument、フォスターシティー(CA))でディジタル化され、データ収集プログラムによって連続的に呈示された。その後、平均組織灌流率(組織のml/min/100g)は、Axoscope 9.0ソフトウェア(Axon Instrument)を使用して分析された。
【0188】
実施例2.5
Tie1およびTie2燐酸化分析
人間の皮膚の微小血管の内皮細胞(HDMVEC)および基礎培地は、カスケード バイオロジーズ(Cascade biologies, Portland, OR)から購入された。HDMVECsを使用するTie1とTie2の燐酸化分析が、既知(Cho et al., 2005, Circ Res. 97:86-94; Cho et al., 2004, Proc Natl Acad Sci. USA 101:5547-5552)方法で行なわれた。 免疫ブロッテイングからの全てシグナルは、走査濃度計(LAS-1000、富士フィルム、東京(日本))により視覚化され分析された。
【0189】
実施例 2.6
統計
値は、平均± 標準偏差(SD)で示される。平均間の著しい違いはスツーデント-ニューマン-クールズ・テストによる分散分析で決定された。統計的有意性は、P<0.05あるいはP<0.01で設定された。
【0190】
実施例 3
COMP-Ang1は、正常なマウスの耳皮膚の血管形成、リンパ管形成および創傷治癒を促進する。
創傷治癒プロセスを生体内で検討するため、我々は、Ade-COMP-Ang1の1x109pfuあるいはAde-β-galの1x109pfuで、全身的に処置されたマウスの耳にパンチ傷を作り、それは、別段の定めがない限り、COMP-Ang1あるいはコントロールとして引用される。 損傷後の3及び7日では、多くの繊細な管が、コントロールで処置されたマウスと比較して、COMP-Ang1で処置されたマウスのパンチ穴傷のマージン周辺で観察された(図30および図31A)。さらに、傷部位に基底部から通じる耳の同側の血管は、顕著に拡大した(図3OAおよび図31B)。これらの状態は、処置の後28日までの間続いた(図30A)。さらに、我々は、COMP-Ang1で処置されたマウスの創傷治癒が、コントロールで処置されたマウスで見られたそれと比較して、加速されることを観察した(図3OA、3OBおよび30C)。血管内皮細胞マーカー、血小板内皮細胞接着分子(PECAM-1)、及び、傷つけられた耳の横断面でのリンパ管内皮細胞マーカー、リンパ管内皮ヒアルロナン受容体-1(LYVE-1)を使用する免疫蛍光染色によって、COMP-Ang1で処置されたマウスは、コントロールで処置されたマウスより、傷領域の血液およびリンパ管をさらに枝分かれさせて接続していることを明らかにした。(図30B)。創傷治癒の程度は、最初の組織病変の位置で、耳軟骨を越えて成長した皮膚の長さとして測定された。COMP-Ang1(n=5)対コントロール(n=5)では、その長さは、7日で、P<0.01で133±17mm対86±16mm; 14日で、P<0.01で286 ±53mm対184±32mm; また28日で、P<O.01で408±63mm対229±29mmであった(図30C)。これらの観察は、損傷部位の増強された血管形成およびリンパ管形成が、COMP-Ang1で処置されたマウスの耳のより効率的な創傷治癒の起因であることを示唆する。さらに、COMP-Ang1は、皮膚の血液およびリンパ管中で十分に発現される(Babaei et al.,2003, Am J Pathol.162:1927-1936)、その受容体、Tie2およびTie1の活性化を通じて、血管形成、リンパ管形成および血流を増強することができた。
【0191】
COMP-Ang1は、糖尿病マウスの尾皮膚の促進された血管形成、リンパ管形成および血流を伴って創傷治癒を加速する。
【0192】
上の結果は、我々を、主に細小血管障害に起因している(The Diabetes Control and Complications Trial Study Group. 1993, New Engl J Med. 329 : 977-986 ; Mrtin et al., 2003, Med Res Rev. 23:117-145 ; Laing et al., 1998, Am J Surg. 176 : 1 1 S-19S ; Reiber et al., 1999,Diabetes Care 22 : 157-162)糖尿病における、遅延した皮膚創傷治癒におけるCOMP-Ang1の効果の検討に導いた。糖尿病のマウスの皮膚の傷の治癒の促進において、COMP-Ang1の有効性を検討するために、そこでの収縮(contraction)が最小である(Saharinen et al.,2005, J. Cell Biol. 169:239-243)、その表現型は人間の成人の発病タイプII糖尿病に似ている、糖尿病マウスC57BLKS/J-m+/+Leprdb(db/db) (Coleman, 1982, Diabetes 31 : 1-6)の尾の背の横部に切除された十分な厚さの傷を作った。COMP-Ang1あるいはコントロールが、負傷後12時間静脈内に投与された。時間的経過観察は、COMP-Ang1で処置されたマウスがコントロールで処置されたマウスと比較して、加速された傷閉鎖を示すことを示した。傷閉鎖は、処置の後に、最初の傷から表皮の閉鎖(mm2)のエリアとして測定された。COMP-Ang1(n=5)対コントロール(n=5)マウスの値は、2週で9.3±0.9mm2対3.7±0.7mm2、P<0.05 ; 4週で20.7±5.9mm2対10.1±1.5mm2 、P<0.01 ; また8週で28.6±3.2mm2対16.1±5.7mm2、P<0.01(図32Aおよび32B)。 人間のVEGF(Galeano et al., 2003, Diabetologia. 46 :546-555 ; Galiano et al., 2004, Am J Pathol. 164:1935-1947)の局所適用と異なり、明白な浮腫の形成および管の漏出が、COMP-Ang1投与の後の創傷治癒中に傷ベッド(beds)で観察されなかった。時間による組織学的分析(テーブル2)は、COMP-Ang1処置マウスが、コントロール・ウィルスで処置されたマウスに比べ、加速された表皮及び皮膚の再生、α平滑筋アクチンの陽性の繊維芽細胞層の厚さに反映されたグラニュレーション(granulation)組織の促進された形成及び変形、及び、より薄い表皮の厚さを示した(図32C、32D、32Eおよび32F)。
【0193】
テーブル2 創傷治癒を評価する基準
スコア 表皮及び真皮の再生 グラニュレーション(granulation)の厚さ
0 very little thin organization
1 little moderate organization
2 moderate thick organization
3 complete very thick
【0194】
さらに、COMP-Ang1で処置されたマウス(n=5)の再生された真皮の全血管密度(PECAM-1の免疫陽性のエリア/合計面積)は、処置後、2週及び4週で、コントロールマウス(n=5)での観察より大きい、各1.52倍(P<0.01)及び1.77倍(P<0.01)であった(図33Aおよび33B)。さらに、COMP-Ang1処置されたマウス(n=5)の再生成された真皮の全リンパ管密度(LYVE-1の免疫陽性のエリア/合計面積)は、処置後、2週及び4週で、コントロールマウス(n=5)での観察より大きい、各2.06倍(P<0.01)及び2.01倍(P<0.01)であった(図33Cおよび33D)。したがってCOMP- Ang1で処置されたマウスは、コントロールで処置されたマウスと比較して、再生成された真皮の拡大した血液およびリンパ管をもち、増強された血管形成およびリンパ管形成を示した。 レーザー-ドップラー流量計を使用して、右・左の静脈の部位、および、マウスの尾の背の側部に損傷させたマウスの中心動脈において、組織血流が測定された(図33E)。COMP-Ang1で処置されたマウス(n=5)の、損傷させた静脈部位の全血流レート(ml/min)は、処置後、2週及び4週で、コントロールマウス(n=5)での観察より大きい、各1.21-1.44倍(P<0.01)及び1.23-1.64倍(P<0.01)であった (図33Eおよび33F)。COMP-Ang1で処置されたマウス(n=5)の、損傷させた動脈部位の全血流レート(ml/min)は、処置後、2週及び4週で、コントロールマウス(n=5)での観察より大きい、各1.15-1.32倍(P<0.01)及び1.20-1.56倍(P<0.01)であった (図33Eおよび33F)。
これらの結果は、糖尿病のマウスの創傷治癒のCOMP-Ang1で引き起こされた加速は、COMP-Ang1によって引き起こされた増強された血流により、糖尿病の皮膚の乏血の救済によって、媒介するかもしれないことを示唆する。さらに、COMP-Ang1で処置されたマウスは、コントロールマウスに比較して、真皮の表皮の基底細胞およびより多くの神経線維(neurofilament)陽性細胞のより高い増殖活性を呈した(図34)。血管形成が、器官の成長(Thurston et al., 1999, Science 286:2511-2514 ; Davis et al.,1996, Cell 87:1161-1169 ; Suri et al., 1996, Cell 87:1171-1180)および修復(Cho et al., 2005, Circ Res. 97:86-94)に先んじ、血管が、栄養素のキャリアおよび組織の血液の受動のフィルタ以上のものであるので、我々の結果は、多数のメカニズムによって、COMP-Ang1が、糖尿病の傷の基底細胞および神経の再生を間接的に引き起こしているかもしれないことを示す。
【0195】
実施例 3.1
COMP-Ang1は、eNOS(-/-)およびiNOS(-/-)マウスの尾皮膚の創傷治癒を加速する。
内皮の一酸化窒素シンターゼ(eNOS)で引き起こされた一酸化窒素は、正常な創傷治癒に不可欠な役割を果たす(Witte, Me and Barbul,A, 2002, Am J Surg. 183:406-412; Schwentker et al., 2002, Nitric Oxide 7:1-10)。 我々は、eNOS(-/-)マウスが、尾損傷の同じモデルのeNOS(+/+)マウスと比較して、およそ40%に害された傷閉鎖を呈することを観察し、これは以前の知見(Lee et al.,1999, Am. J. Physiol. 277 : H1600-H1608)と一致している。 具体的には、傷閉鎖は、3週で、最初の傷評価値から表皮の閉鎖(mm2)のエリアとして測定された。 eNOS(-/-)(n=4)対eNOS(+/+)(n=4)マウスの値は、11.6±2.2mm2対19.4±3.5mm2、P<0.01だった。対照的に、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)(-/-)マウスは、iNOS(+/+)マウスと比較して、尾損傷の同じモデルの遅延創傷治癒を呈示しなかった(図35Cおよび35D)。さらに、Ang1に引き起こされた血管形成は、内皮の活性化されたeNOSによるNOの生成を必要とするように見える(Babaei et al., 2003, Am J Pathol. 162:1927-1936)。したがって、我々は、eNOSまたはiNOSが、9-10週令雄性のeNOS(-/-)およびiNOS(-/-)マウスにおいて、尾損傷を受けることによって、COMP-Ang1によってもたらされた加速された創傷治癒に関与するかどうかを検討した。時間的経過観察は、COMP-Ang1で処置されたeNOS(-/-)およびiNOS(-/-)マウスが、コントロールマウスに比較して、加速された傷閉鎖を呈することを示した(図35)。さらに、COMP-Ang1で処置されたeNOS(-/-)およびiNOS(-/-)マウスは、コントロール・ウィルスで処置されたマウスと比較して、増強された血管形成を示した。これらの観察は、尾皮膚の創傷治癒中にCOMP-Ang1によって媒介した、増強された血管形成が、eNOSとiNOSには、依存しないことを示す。
【0196】
実施例 3.2
局所的COMP-Ang1は、尾皮膚において、増強された血管形成および血流を伴って創傷治癒を促進する。
COMP-Ang1が糖尿病患者で見られる、遅延創傷治癒に拮抗するとすれば、我々はタンパク質の局所適用がそのような結果を促進するかもしれないかどうかを検討した。この目的のために、COMP-Ang1(CAl-2、生産速度、20-30mg/L)を生産する安定したチャイニーズハムスター卵巣細胞ラインが確立された(Cho et al.,2005, Circ Res. 97:86-94)。COMP-Ang1タンパク質の局所適用の有効性をテストするために、我々は、糖尿病のC57BLKS/J-m+/+Leprdb(db/db)マウスの尾の背の側に作成された十分な厚さの傷へ、一日単位で、COMP-Ang1タンパク質の100μgを含む50μL食塩水(0.9%のNaCl)を直接適用した。平行して、同腹の子の中で作られた傷は、ウシ血清アルブミン(BSA)をコントロールとして毎日処置された。COMP-Ang1タンパク質を投与された傷は、BSAを投与された傷より速く直った。COMP-Ang1(n=6)対BSA(n=6)では、最初の傷からの表皮閉鎖(mm2)への値は、2週で9.5±1.4mm2対3.5±0.6mm2 ,P<0.01 ; そして4週で17.0±4.4mm2対5.5±0.7mm2 , P<0.01 (図36Aおよび36B)。同様に、COMP-Ang1タンパク質を投与された傷は、BSAを投与された傷と比較して、増強された血管形成(14日で〜1.3倍、および4週で〜1.5倍)、リンパ管形成(14日で〜1.3倍、および4週で、〜1.4倍)(図36C、36Dおよび36E)、および血流(静脈部分、2週で1.15から1.28倍; 動脈部分、2週で1.14〜1.25倍)(図36 F)を呈した。
【0197】
実施例 3.3
結論
全身的および局所的COMP-Ang1は、増強された血管形成およびリンパ管形成を伴って皮膚の傷閉鎖を加速する。また、正常及び糖尿病のマウスのこれらは、eNOSとiNOSに依存しない。したがって、COMP-Ang1は、糖尿病皮膚の創傷治癒を促進するための新しい治療物質として有用である。
【0198】
実施例4
ラット心筋梗塞モデル
雄性スピローグ・ドーリー・ラット(200-220gの体重)は、ケタミン塩酸塩(100mg/kg)およびxylazine塩酸塩(2.5mg/kg)で麻酔をかけられた。 麻酔をかけられたラットは、げっ歯動物通風装置(モデル、ハーバード装置、南ナティック(MA)、アメリカ683)を使用して、陽圧の下で換気された。左の胸部切除(thoractomy)が、4番目の肋間腔中で行なわれた。また、心膜を開いた。左冠状動脈は、曲がった針および6-0の絹縫合で、左の心房の付属器官と右心室流出管の間で、心筋内に囲まれ、閉塞され、そして、梗塞ゾーンの中へCOMP-Ang1あるいはウシ血清アルブミンの50μgを含んでいるバッファーの140μlが注入された。その後、胸は重ねられて閉鎖された。また、気胸は空にされた。5時間の後、縫合は解除された、これはいわゆる、「遅延灌流経壁心筋梗塞」(LMI)モデルと呼ばれる。動物の飼育および取り扱いはすべて、国立衛生研究所(NIH出版、改訂された1985年85-23)によって公表された実験動物の飼育および使用のためのガイドによって行なわれた。
【0199】
実施例 4.1 リモデリングおよびヘムダイナミック(hemedynamic)な因子分析を評価するための心エコー検査。
経胸壁超音波心臓図検査は、梗塞エリアへのCOMP-Ang1注入後、2週まで、すべての動物について行なわれた。簡潔に、ラットは、50mg/kgのケタミンおよび10mg/kgのxylazineで麻酔をかけられた。胸の毛はそられ、ラットは、仰向けに置かれた。心エコー図は、7.5MHzのフェーズドアレイの変換器(ヒューレット・パッカード)を装備した市販の心エコー検査システムでえられた。下胸部の毛がそられた後、変換器は、胸の左の前方側に置かれた。心臓は、左心室(LV)の、両胸骨(parasternal)の長いおよび短い軸芯図(views)で2次元モードで最初にイメージされた。これらの図(views)の使用によって、M-モード・カーソルは、心室中隔および後壁に垂直に位置した; その後、M-モード・イメージは、乳頭筋のレベルに、僧帽弁葉状の器官の先端より下のレベルに得られた。 過度の圧力を回避ことに注意した。左心室の壁の肉厚(LVPW)および完全な心室中隔厚 (IVST)を含むLV内部寸法(dimension) は、米心エコー図学会の最先端方法によって測定された: 心収縮機能の測定として、最大LVエンド心拡張径(最大の窩寸法時に、LVdD)、最小のLVエンド収縮径(後壁の最大の前方運動時に、LVsD)および断片的なショートニング(FS)。 測定は、すべて、連続3つの心臓周期で平均され、処置グループについてブラインドにされた熟練技能者によってなされた。
【0200】
実施例4.2
組織学的・免疫組織化学的検査
心臓は、LVの中への、2M KClの2-3mlの直接注射によって心拡張を阻止した。 その後、摘出され、2つのブロックへ、梗塞を横切って横に切断された。組織ブロック(blocks)は10%のホルマリンだった。組織セクションの繊維増多組織はマソントリクロームの方法を使用して染色された。 血管形成の定量分析のために、免疫蛍光染色の分析が、4μm-厚セクションで、抗フォン・ヴィルブランド因子(vWF)抗体で行なわれた。
【0201】
実施例 4.3
統計分析
データは1つのグループ当たり3匹の動物から得られ、平均±標準偏差として表現された。 統計分析は、対がないスチューデントのt検定を使用して行なわれた。p <0.05の値は、統計的に有意であると考えられた。
結果: 血管の構成は梗塞および境界ゾーンで増加された(図37)。 COMP-Ang1は、著しく、梗塞ゾーンの壁の肉厚(コントロール対COMP-Ang1、0.7±0.15対1.01±0.13mm、p<0.05)、IVST(1.43±0.12対1.62±0.12mm、p<0.05)、LVPW(1.51±0.13対1.76±0.31 mm、p<0.05)、LVdD(10.3±0.6対9.4±1.0mm、p<0.05、 LDsD(8.87±0.62対7.52±0.15mm、p<0.05) を減じ、またFS(14.0±3.7対20.0の±8.4%、p<0.05)を改善させた(図37および図38)。 注入されたCOMP-Ang1は、注入後30、120および240minで注入梗塞ゾーンで、大部分は、局在化された。注入されたCOMP-Anglは、注入後に330minで、処理されたエリアにおいてまだ検知できた。したがって、COMP-Ang1は、著しく心筋梗塞のラット・モデルの左心室リモデリングを減ずる。これらの検討結果は、COMP-Ang1が虚血心の治療的血管形成用の有効な分子(化合物)であることを示唆する。
【0202】
ここに引用された文献のすべては、その内容のすべてが、参照によって本願に挿入される。
【0203】
本発明は、ここに記述された特定の実施例の範囲で制限されるものではない。 確かに、ここに記述されたものに加えて、発明の様々な修正は、本願の記述及び図面から、当業者には明白である。そのような修正は、追加された請求項の範囲内にあることが意図される。実施例は、本発明のイラストレーションの手段として記述され、限定を伴うものではない。
【図面の簡単な説明】
【0204】
本発明は、ここの下にある詳細な記述、および実例のみを通して得られた添付されている図面をもってより完全に理解できるようになるが、これ故、本発明は、これらのものにかぎられるものではない。
【図1】アンジオポイエチンとTie2の間の相互作用を示す。アンジオポイエチンは、内皮細胞特異的受容体キナーゼTie2およびTie1と結合し、そして脈管形成、血管形成およびリンパ管形成を調節し、かつ内皮細胞保全を維持することが知られている。それらの中で、Ang1とAng3はアゴニストとして作用し、Ang2およびAng4はアゴニストとして働くばかりでなく、また、環境依存形式で、アンタゴニストとして作用する。human:人mouse:マウスMaintenance of endthelium integrity(adult endothelium):内皮細胞健全性保持(成人内皮)Vaculogenesis:脈管形成Angiogenesis:血管形成Lymphangiogenesis:リンパ管形成Embryos and Pathologic Angiogenesis:胎児及び治療上の血管形成
【図2】ネイティブAng1のタンパク質構造を概説する説明図を示す。アミノ酸1−19は分泌シグナル配列(S)、アミノ酸20−158はスーパークラスタリング領域(SCD)、アミノ酸158−255はコイルドコイルのオリゴマーの領域(CCOD)である。アミノ酸226−283はリンカー(L)であり、および、アミノ酸284−498はフィブリノーゲン様領域(FLD)である。システイン(C)がアミノ酸41、54、265、315、435、437、439および452にある。oligomerization domain:オリゴマー化領域binding domain:結合領域signal sequence:シグナル配列coild-coil domain(heptad repeat-parallel coiled-coil domain:コイルドコイル領域(7回繰り返し-平行コイルドコイル領域)linker:リンカーfibrinogen-like domai:フィブリノーゲン様領域
【図3】様々な年齢の耳に開けたパンチ穴傷における、VEGFおよびCOMP-Ang1の効果を示す。オスの表示年齢のFVB/nマウスが以下の投与で処理された。1x109pfu Ade-LacZ(コントロール、AおよびD)、1x108pfu Ade-mVEGF(マウスVEGF、BおよびE)、1x109pfu Ade-COMP-Angl(CとF)ウィルス。また、閉じたパンチ穴傷は、耳で作られた。表示の経過時間又は日で、耳は撮影された。normal:正常leak:漏出
【図4】VEGFおよびCOMP-Ang1で処理されたマウスの生存率を示す。8週令のオスのFVB/nマウスが、表示の量のAde-mVEGFまたはAde-COMP-Ang1ウィルスで処理されて、そして生存率が測定された。percent surviving:生存率Time:時間
【図5】図5A-Dは、耳皮膚の血管リモデリングに対するCOMP-Ang1の効果を示す。8週令オスFVB/Nマウスが、14日間、BSAの200μg/日(AとC)あるいは200μg/日のCOMP-Ang1組換え型タンパク質(BとD)の注射で処理された。耳皮膚の切片はH&E染色された(AとB)、および全増加した耳皮膚の血管がPECAM-I(CD31)免疫染色により見えるようにされた(赤)(CとD)。COMP- Ang1で処理されたマウスは耳皮膚の血管(H&E染色の赤矢印の矢頭)を顕著に拡大した。
【図6】図6A-Bは、腹部の皮膚における、血管リモデリングに対するCOMP-Ang1の効果を示す。Tie2を用いたeGFPの血管特異的発現遺伝子組換えマウス(8週令雄Tie2-eGFP マウス)を14日間、BSA(A)の200μg/日注射処理、またはCOMP-Ang1組換え型タンパク質(B)200μg/日の処理を行った。腹部の皮膚切片の血管は、PECAM-I(CD31)免疫染色により目に見えるようにされた(赤)。COMP-Ang1で処理されたマウスは、顕著に血管が拡張されていた。
【図7】図7A-Bは、皮膚の色に対するアデノウイルスCOMP-Ang1の影響を示す。8週令雄BALB/C-HWヌードマウスが、1x109pfu Ade-LacZ(コントロール、A)あるいはAde-COMP-Ang1(B)で処理された。2週間後に、顔面、手および体幹上半部の皮膚の色が撮影された。Ade-COMP-Ang1で処理されたマウスは、一面の皮膚赤色を呈した。3実験の結果は良く似たものであった。control:コントロール
【図8】図8A-Bは、皮膚色に対するアデノウイルスのCOMP-Ang1の影響を示している。8週令雄BALB/c-ro/ヌードマウスが、1x109pfu Ade-LacZ(コントロール、A)あるいはAde-COMP-Ang1(B)で処理された。5週間後に、耳皮膚の血管が撮影された。Ade-COMP-Ang1で処理されたマウスにおいて、コントロール処理されたネズミに比べ、耳の中の血管の数、大きさおよび分岐形態の著しい増加が認められた。control:コントロール
【図9】図9A-Fは、虚血の後肢に対するアデノウイルスのCOMP-Ang1の効果を示す。虚血の後肢マウス・モデルは、8週令雄BALB/c-nuマウスで、大腿動脈の部分的な結紮により作られた。それから、BSA(A、B、C)の100μgあるいはCOMP-Ang1(D、E、F)の100μgが、0日目(AとD)、3日目(BとE)および5日目(CとF)に虚血の筋肉に直接注射された。表示の時間に、虚血の脚の血流がレーザーマイクロドップラー法によって測定された。BSA処理と比較して、COMP-Ang1処理マウスの虚血後肢の血流は、ほとんど全快であった。BSA:牛血清アルブミン
【図10】図10A-Fは、陰茎の海綿体静脈洞に対するCOMP-Ang1の影響を示す。8週令雄FVB/Nマウスが、1x109pfu Ade-LacZ(AとD)あるいはAde-COMP-Ang1(B、C、EおよびF)で処理された。その後表示の時間、陰茎の切片が抗フォン・ヴィルブランド因子抗体で免疫染色(ピンクのスミレ色)された。A、BおよびC(拡大x40); D、EおよびF(拡大x200)。Ade- COMP-Ang1で処理されてマウスの陰茎が、時間依存的にフォン・ヴィルブランド因子誘導の陰茎の海綿体静脈洞を拡張することが示された。
【図11】図11A-Bは、陰茎の海綿体静脈洞におけるCOMP-Ang1の影響を示す。8週令雄FVB/Nマウスが、1x109pfu Ade-LacZ (A)あるいは1x1O9pfu Ade-COMP-Ang1(B)で処理された。3週間後に、陰茎のエポキシ切片がトルイジンブルーで染色された。Ade-COMP-Ang1で処理されたマウスの陰茎の海綿体静脈洞は拡張されたことが示された。
【図12】図12A-Fは、陰茎の海綿体静脈洞に対するCOMP-Ang1の影響を示す。8週令雄FVB/Nマウスが、1x109pfu Ade-LacZ(A、BおよびC)あるいは 1x1O9pfu Ade-COMP-Ang1(D、EおよびF)で処理された。3週間後に、陰茎の切片は、抗-PECAM-1抗体(赤)または抗フォン・ヴィルブランド因子抗体(赤)で免疫染色された。上パネル、拡大x40;下パネル、拡大x200。Ade-COMP-Angl(D-F)で処理されたマウスの陰茎は、時間依存的にフォン・ヴィルブランド因子誘導の陰茎の海綿体静脈洞を拡張することが示された。vWF:フォン・ヴィルブランド因子
【図13】図13A-Cは、高コレステロール血症の勃起性機能障害のネズミ・モデルの創出およびCOMP-Ang1処理のプロトコルールを示す。(A)8週令雄Sprague-Dawleyラット(スプラーグ‐ドウリュウ rat;SDラット)に、3か月間、1%のコール酸添加4%のコレステロールを含む食餌が与えられた。その後、アデノウイルスのCOMP-Ang1(5xlO7pfu)またはアデノウイルスのLacZ(5xlO7pfu)が、高コレステロール血症の勃起性機能障害のネズミ(BとC)の陰茎の海綿体に直接注射された。もう1つの方法として、10-50μg COMP-Ang1組換え型タンパク質(4回の選択日毎に)、または50μgウシ血清アルブミン(4回の選択日毎に)が、高コレステロール血症の勃起性機能障害のネズミ(BとC)の陰茎の海綿体に直接注射された。4%cholesterol:4%コレステロール1%cholic acid diet:1%コール酸食事ICP measurment:体内圧測定Histology:組織学Group1:Adenoviral COMP-Ang1(5xlO7pfu) or Adenoviral LacZ(5xlO7pfu)グループ1:アデノウイルスのCOMP-Ang1(5xlO7pfu)またはアデノウイルスのLacZ(5xlO7pfu)Group2:COMP-Ang1(10,20 or 50μg x 4 times) or BSA(50μg x 4 times)グループ2:COMP-Ang1(10,20又は50μg x 4回) 又は BSA(50μg x 4回)
【図14】図14A-Eは、高コレステロール血症の勃起性機能障害のネズミにおける、勃起性機能に対するCOMP-Ang1の影響を示す。50μg BSA(AとB)、またはCOMP-Ang1組換え型タンパク質(C : 10μg、C-A1 10 ; D : 20μg、C-A1 20 ; E: 50μg、C-A1 50)の用量で、4回の選択日毎に、正常な食餌ネズミ(A)、または高コレステロール血症の勃起性機能障害のネズミ(B-E)の陰茎の海綿体に直接注射された。2週間後、神経の刺激の後の体内圧(ICP)および全身動脈圧(SAP)が、表示の分の間測定された。Normal Diet:正常食事High Fat Diet:高脂肪食minutes:分ICP:体内圧SAP:全身動脈圧
【図15】図15A-Dは、高コレステロール血症の勃起性機能障害のネズミの陰茎に対するCOMP-Ang1の影響を示す。50μg BSA(AとB)、またはCOMP-Ang1組換え型タンパク質(C : 10μg、C-A1 10 ; D : 20μg、C-A1 20)が, 4回の選択日毎に,正常な食餌ネズミ(A)、または高コレステロール血症の勃起性機能障害のネズミ(B、CおよびD、HC)の陰茎の海綿体に直接注射された。2週間後に、陰茎の切片は、抗フォン・ヴィルブランド因子抗体(ピンクのスミレ色)で免疫染色された。COMP-Ang1で処理されたマウスの陰茎は、時間依存的にフォン・ヴィルブランド因子誘導の陰茎の海綿体静脈洞を拡張することが示された。control:コントロール
【図16】図16A-Bは、高コレステロール血症の勃起性機能障害のネズミの陰茎に対するCOMP-Ang1の影響を示す。50μg BSA(A)またはCOMP-Ang1(B)組換え型タンパク質が、4回の選択日毎に、高コレステロール血症の勃起性機能障害のネズミ(B)の陰茎の海綿体に直接注射された。2週間後、陰茎の切片は、抗−内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)抗体(赤)で免疫染色された。COMP-Ang1で処理された陰茎は、eNOS(A)の誘導を示す。BSA:牛血清アルブミン
【図17】図17A-Bは、肺の血管に対するCOMP-Ang1の影響を示す。8週令雄FVB/Nマウスは、14日間、200μg BSA(A)、または200μg COMP-Ang1組換え型タンパク質(B)の毎日の注射で処理された。肺の切片はH&Eで染色された。BSA:牛血清アルブミン
【図18】図18A-Fは、肺の血管に対するCOMP-Ang1の影響を示す。8週令雄FVB/Nマウスが、1x109pfu Ade-LacZ(コントロール、A、B、C)あるいはAde-COMP-Ang1(D、E、F)で処理された。2週間後、FITCレクチンが、マウスの尾静脈に注射されて、顔面の皮膚が赤くなって3分で肺試料を収集し、肺切片は、抗-PECAM-1(CD31)抗体(赤、BおよびE)で免疫染色された。FITC - レクチン標識した血管の内皮細胞は、緑(緑、AおよびD)で見ることができる。両方の画像は合体される(CとF)。control:コントロールFITC-lectin:FITCレクチンMerged:合体
【図19】PECAM-1の燐酸化、および初代培養内皮細胞の閉塞に対するCOMP-Ang1の影響を示す。初代培養ヒト臍静脈内皮細胞(HUVECs)は、1%の血清含有M-199培地で16時間培養された、その後、表示の時間、400ngCOMP-Ang1で培養された。処理後、細胞ライセート(溶解物)を収集した。各レーンは、細胞ライセートの総タンパク質量50μgを含んでいる。ブロットは、抗-PECAM-1抗体または抗occuldin抗体をプローブとして用いた。メンブレンは剥がされ、各レーンのタンパク質が同じ搭載量であることを確認するため、再度、抗アクチン抗体を用いて再精査された。Phospho:燐酸化Actin:アクチン
【図20】図20A-Cは、初代培養内皮細胞のPECAM-1の分配に対するCOMP-Ang1の影響を示す。初代培養HUVECsは、1%の血清含有M-199培地で16時間培養された、次に、30分、400ngBSA(A)、またはCOMP-Ang1(B)、または20ng血管内皮成長因子(VEGF)(C)で培養された。処理の後、細胞は固定され、抗-PECAM-1抗体(緑)で免疫染色された、そしてプロピウムアイオダイド(propiumヨウ化物)(赤、核染色)で染色された。BSA:牛血清アルブミンPropium lodide:プロピウムヨード化物
【図21】図21A-Cは、COMP-Ang1が、肺における、菌体内毒素誘導のEB染料の血管漏出を減少させることを示す。8週令雄FVB/Nマウスに、コントロール・バッファー(A、正常)、菌体内毒素(7.5μg/g体重)(B)添加コントロール・バッファー、またはCOMP-Ang1(100μg)と菌体内毒素(7.5μg/g体重)(C)が与えられた。エバンスブルー(EB)染料(30mg/kg体重)が表示の作用物質の処理直後に投与され、6時間後に屠殺した。肺組織はエオシン(上パネル)あるいはTUNEL(下パネル)で染色された。EB染料を蓄積するマクロファージ(矢頭)の顕著な数は、菌体内毒素処理試料で観察され、一方、EB染料を蓄積するマクロファージは、CBに処理試料で観察されない。COMP-Ang1は、EB染料を蓄積するマクロファージの数を減少させる。colon-ligation induced sepsis:結腸結紮誘導敗血症control(normal):コントロール(正常)
【図22】図22A-Bは、マウスの気管粘膜の血管に対する全身性のCOMP-Ang1タンパク質処理の影響を示す。FVB/Nマウスは、14日間、200μg BSA(A)あるいは200μg COMP-Ang1組換え型タンパク質(B)の毎日の注射で処理された。気管全増加における血管は、PECAM-1(CD31)免疫染色(赤)により見えるようになった。微小血管階層の6セグメントが明白である:区動脈(sa、矢印)、末端細動脈(ta)、毛細血管(cap)、後毛細血管細静脈(pcv)、集合細静脈(ve)、細静脈(cv)。 これらのうち、後毛細血管細静脈および毛細管の静脈末端が、COMP-Ang1による処理後に拡張した。4つの実験の結果は同じであった。スケールバー=50μm。Blood vessels:血管CD31:PECAM-1sa:区動脈ta:末端細動脈cap:毛細血管pcv:後毛細血管細静脈ve:集合細静脈cv:細静脈
【図23】図23A-Bは、後毛細血管細静脈および末端細動脈に対する全身性COMP-Ang1タンパク質処理の影響を示す。FVB/Nマウスは、14日間(A、黒いバー)COMP-Ang1組換え型タンパク質(200μg)の毎日の注射で処理された。表示の時間、気管はPECAM-1免疫染色で見られるようになった(B、赤)。後毛細血管細静脈および末端細動脈の直径が示される(A、右パネル)。COMP-Ang1の循環血漿レベルは、COMP-Ang1組換え型タンパク質(200μg/マウス) の単回投与の後にELISAによって測定された(A、左パネル)。35-40の値が、後毛細血管細静脈(PV)/5領域(褐色の曲線)および10-12の値が末端細動脈(TA)/10領域(青い曲線)の直径で、各マウスの輪状軟骨の端で測定された。値は、4-5匹のマウスの平均±SD(標準偏差)で示される。* コントロール期間に対してP<0.05。COMP-Ang1誘導の、後毛細血管細静脈、集合細静脈、毛細管の静脈末端、細静脈、および末端細動脈の2週間に至るまでの拡張、その後、COMP-Ang1処理の停止後、拡張された血管が徐々に正常に戻った。スケールバー=50μm。TA:末端細動脈PV:後毛細血管細静脈Min after Treatment:処理後分Weeks after Treatment:処理後週Circulating:循環
【図24−1】図24A-Eは、後毛細血管細静脈と末端細動脈、および血流に対するアデノウイルスCOMP-Ang1の影響を示す。図24A-Dは、FVB/Nマウスが、1x109pfu Ade-COMP-Ang1(n=6)で処理されたものを示す。表示の時間、COMP-Ang1の循環血漿レベルがELISAにより測定され(A、黒丸)、また、気管はPECAM-1免疫染色により見えるようにされた(B、赤)。後毛細血管細静脈(PV、褐色の曲線)および末端細動脈(TA、青い曲線)の直径が示される。35-40の値がPV/5領域および10-12の値がTA/10領域の直径で、各マウス輪状軟骨の端で測定された。値は、4-5匹のマウスの平均±SD(標準偏差)で示される。 * コントロール期間に対してP<0.05。スケールバー=50μm。図24Cは、1x109pfu Ade-LacZ(Con)または1x109pfu Ade-COMP-Ang1(CA1)で処理されたマウスの気管組織血流を、レーザー・ドップラー流量測定分析の結果を示す。ConまたはCA1で処理後、2および16週時の気管の血流の数量化。バーは、4-5匹のマウスの平均±SD(標準偏差)を示す。 * 対Con P<0.05。図24D-Eは、1x108pfu Ade-COMP-Ang1処理に先立つ24時間前に、1x108 (1+T2)か、5x108 (5+T2)pfu Ade-sTie2-Fc(各々 n=5)、あるいは5x108pfu Ade-LacZ(LacZ、n=5)でFVB/Nマウスが前処理されたことを示す。2週間後、気管の血管は、PECAM-1免疫染色により見えるようになった(D、赤)。スケールバー=50μm。 35-40の値がPV/5領域および10-12の値がTA/10領域の直径で、各マウスの輪状軟骨の端で測定された。 図24Fは、前処理によって誘導された血管リモデリングの%阻害として、バーは5実験から、平均±S.D.で表わされていることを示す。Ade-LacZの前処理により誘導された血管リモデリングは、100%と任意に与えられる。 * 、対LacZ P<0.05 ; #、対1+T2 P<O.05。TA:末端細動脈PV:後毛細血管細静脈Weeks after Treatment:処理後週Circulating:循環Vessel Diameters:管径Tracheal Tissue Blood Flow(ml/min/100g of tissue):気管組織血流(ml/min/組織100g)inhibition:阻害
【図24−2】同上
【図25】図25A-Jは、処理後、16週の耳皮膚および肺の皮膚の色および血管リモデリングに対するアデノウイルスCOMP-Ang1の影響を示す。FVB/nマウスが、1x109pfu Ade-LacZあるいはAde-COMP-Ang1で処理された。16週間後、顔面、手、足の裏、陰茎および尾部の皮膚色が撮影された(A、B、CおよびD)、耳皮膚(EとF)および肺(GとH)の血管は、PECAM-1(CD31)免疫染色で視覚化され(赤)、また、肺の切片はH&Eで染色された(IとJ)。Ade-COMP-Ang1で処理されたマウスは、明白な皮膚の赤色化を示し、耳皮膚の血管の顕著な拡張を呈し、そして、Ade-LacZで処理されたマウスと比較し、明白な組織学的変性のない肺のPECAM-1陽性の内皮細胞のより高い密度があった。4つの実験の結果は類似していた。スケールバー=50μm。control:コントロール
【図26】図26A-Lは、処理後、16週の心臓、副腎皮質および肝臓中の血管リモデリングに対するアデノウイルスCOMP-Ang1の影響を示す。FVB/nマウスは、1x109pfu Ade-LacZまたはAde-COMP-Ang1で処理された。16週間後に、心臓(A、B、CおよびD)、副腎皮質(E、F、GおよびH)および肝臓(I、J、KおよびL)の血管は、PECAM-1(CD31)免疫染色することで視覚化され(赤)、また、切片はH&Eで染色された。Ade-COMP-Ang1で処理されたマウスは、Ade-LacZで処理されたマウスと比較して、心臓と副腎皮質の毛細血管を拡張させ、および肝臓のより多いPECAM-1陽性の内皮細胞数を呈した。4つの実験の結果は類似していた。スケールバー=25μm。control:コントロール
【図27】図27A-Lは、COMP-Ang1誘導血管リモデリングにおける、Tie2発現の誘導を示す。Tie2-GFP遺伝子組換えマウス(10週令)は、2週間、200μg COMP-Ang1組換え型タンパク質(COMP-Ang1)の毎日の注射で処理され(D、E、F)、または1x109pfu Ade-LacZ(A、B、C)あるいはAde-COMP-Ang1(G、H、I、J、K、L)の単回注射で処理された。処理開始後2および16週では、気管の血管のTie2発現が、GFP発現(緑)およびPECAM-1免疫染色(赤)によって視覚化され、そしてイメージが併せられた。4つの実験の結果は類似したものであった。矢頭、末端細動脈;矢印、前毛細管小動脈。スケールバー=50μm。Merged:合体
【図28−1】図28A-Iは、COMP-Ang1誘導拡張の間、分裂する内皮細胞の増加数を示す。FVB/Nマウスは、1x109 pfu Ade-LacZ(コントロール、A、C EおよびG)、またはAde-COMP-Ang1(COMP-Ang1、B、D、FおよびH)で処理された。4日(CとD)、2週間(EとF)そして16週間後(GとH)に、気管の血管は、PECAM-1(CD31)免疫染色(赤)およびホスホヒストン(phosphohistone) H3(PH3)免疫染色(緑)することで視覚化された。 (F)矢印、PH3免疫陽性の内皮細胞;白い正方形、より高い倍率での、後毛細血管細静脈のPH3免疫陽性の内皮細胞。スケールバー=50μm。 (I) 与えられた0.21mm2領域のPH3免疫陽性の内皮細胞の数。バーは、4匹のマウスの平均±SD。Con、コントロール;CA1、COMP-Ang1l。 * 、対Con P<0.05 。control:コントロールBlood vessels:血管Dividing nuclei:分裂核Number of PH3 Positive Endothelial Cells:PH3免疫陽性の内皮細胞の数
【図28−2】同上
【図28−3】同上
【図29】図29A-Bは、COMP-Ang1-誘導拡張した気管の血管における、内皮細胞と周皮細胞間の相互作用を示す。FVB/nマウスは、1x109pfu Ade-COMP-Angl(B)またはAde-LacZ(A)で処理された。4週間後、気管の血管は、PECAM-1(CD31)免疫染色することで視覚化され(赤)、また、周皮細胞はデスミン(desmin)/NG2免疫染色することで視覚化された(緑)。4つの実験の結果は類似したものであった。スケールバー=50μm。Blood vessels:血管Pericytes(Desmin/NG2):周皮細胞(デスミン/NG2)
【図30】図30A-Cは、COMP-Ang1が血管形成、リンパ管形成および耳皮膚の創傷治癒を促進した。 FVB/nマウスは、1x109pfuのAde-β-gal(コントロール)またはAde-COMP-Ang1(COMP-Ang1)ウィルスで処理され、および閉じたパンチ穴傷は、耳に作られた。表示の日後、(A)耳は撮影され、および治癒長(HL)が測定された(C)。 (B) 耳切片の血液およびリンパ管は、処理後28日で、PECAM-1免疫染色すること(赤)およびLYVE-1免疫染色すること(緑)で視覚化された。HLは、軟骨の最初の切断端から治された部分端までの距離と定義する。 COMP-Ang1処理されたマウスは、誘導された血管形成、リンパ管形成および耳皮膚の創傷治癒を示した。5つの実験の結果は類似したものであった。バーは4匹のマウスの平均±SDを表す。 * 、対コントロール P<0.01。スケールバー(100μm)。control:コントロールDays:日Healing Length:治癒長
【図31】図31A-B は、COMP-Ang1が、血管形成、リンパ管形成および耳皮膚の創傷治癒を促進することを示す。 FVB/nマウスは、1x109pfu Ade-β-gal(コントロール)またはAde-COMP-Ang1(COMP-Ang1)ウィルスで処理され、およびパンチ穴傷は、耳に作られた。7日後、傷の端の血管(矢印)(A)、および耳の皮膚の正常領域における血管とリンパ管(B)は、PECAM-1(赤)およびLYVE-1(緑)免疫染色で視覚化された。COMP-Ang1で処理されたマウスは、創傷端での拡張したおよび密度が高い血管を示し、そしてコントロール・ウィルスで処理されたマウスと比べ、正常領域における、リンパ管とは区別できないが拡張された血管を示した。4つの実験の結果は類似していた。バーは4匹のマウスの平均±SDを表す。 * 、対コントロール P<O.01。スケールバー(50μm)。Blood vessels:血管Lymphatic vessels:リンパ管
【図32−1】図32A-Fは、糖尿病のマウス尾部皮膚において、COMP-Ang1が創傷治癒を加速することを示す。創傷全層の除去(おおよその範囲、30mm2)は、糖尿病db/dbマウスの尾部皮膚で行われ、およびマウスは、1x109pfu Ade-β-gal(コントロール)あるいはAde-COMP-Ang1(COMP-Ang1)ウィルスで処理された。表示の週後に、尾部は撮影されたA)、傷範囲が測定され(B)、そして表皮および真皮の再生活動(D)、肉芽形成厚さ(E)および表皮の厚さ(F)が測定された。ND(決定不能)。(C) ヘマトキシリン・エオシン(HE)染色の写真を示す、そしてα平滑筋アクチン(αSMA)、および処理8週間後にCOMP-Ang1およびコントロール・ウィルスで処理されたマウス傷範囲の切片をPECAM-1免疫染色を示す。5つの実験の結果は類似していた。バーは5匹のマウスの平均±SDを表す。 * 、対各週コントロール P<0.01 。スケールバー(100μm )。control:コントロールWound area:損傷エリアHistological Score:組織学的スコアGranulation:肉芽Epidermal Thickness:表皮厚
【図32−2】同上
【図32−3】同上
【図32−4】同上
【図33−1】図33A-Fは、尾部皮膚の傷部分中の血管形成および血流をCOMP-Ang1が促進することを示す。創傷全層の除去(おおよその範囲、30mm2)は、糖尿病db/dbマウスの尾部皮膚で行われ、およびマウスは、1x109pfu Ade-β-gal(コントロール)あるいはAde-COMP-Ang1(COMP-Ang1)ウィルスで処理された。2週後(A)および4週間後(AとC)、血液とリンパ管は、PECAM-1(赤)(A)およびLYVE-1(緑)(C)免疫染色し、視覚化され、および血液とリンパ管の範囲密度が測定された(BとD)。(E) レーザー-ドップラー流量計を用い、静脈部分の右(1、4、7)および左(3、6、9)、および背尾部面の創傷範囲の中央の動脈部分(2、5、8)が測定された。(F) Fで描かれた領域の皮膚血流の量化は、コントロールまたはCOMP-Ang1ウィルス処理の4週間後に行なわれた。バーは5匹のマウスの平均±SDを表す。 * 、対コントロール P<0.05。スケールバー(50μm )。control:コントロールBlood vessel Area density:血管エリア密度Lymphatic vessel Area density:リンパ管密度Weeks:週Blood flow:血流Portion:領域
【図33−2】同上
【図34】図34は、COMP-Ang1が、表皮の基底細胞の増殖活性を促進し、および尾部皮膚の傷領域真皮の神経フィラメント陽性の細胞数を増加させることを示す。糖尿病のdb/dbマウスは、1x109pfu Ade-β-gal(AおよびC、コントロール)またはAde-COMP-Ang1(BおよびD、COMP-Ang1)ウィルス処理され、および除去される創傷全層の損傷(範囲、30mm2)は尾部皮膚で作られた。2週間後、血管がPECAM-1免疫染色(赤)により、視覚化され、そして増殖する細胞が、Ki-67免疫染色すること(緑)で視覚化された(AとB)。神経細胞は尾部切片の神経フィラメント免疫染色すること(緑)で視覚化された(CとD)。COMP-Ang1で処理されたマウスは、表皮の基底細胞でより多くの増殖する細胞があることを示し、およびコントロール・マウスより、より多くの神経フィラメント免疫陽性細胞があることを示す。4つの実験の結果は類似したものであった。スケールバー(50μm)。Blood vessel:血管Proliferating nuclei:増殖核Neurofilament:神経フィラメント
【図35−1】図35A-Dは、COMP-Ang1が、eNOS(-/-)マウスおよびiNOS(-/-)マウスの尾部皮膚の創傷治癒を加速することを示す。除去される創傷全層(おおよその範囲、30mm2)は、eNOS(-/-)マウス、iNOS(+/+)およびiNOS(-/-)マウスの尾部皮膚で作られ、そしてマウスは、1x109pfu Ade-β-gal(コントロール)またはAde- COMP-Ang1で処理された。表示の週の後、尾部は撮影され(AとC)、そして傷範囲が測定された(BとD)。5つの実験の結果は類似していた。バーは5匹のマウスのの平均±SDを表す。 * 、対各週コントロール P<0.01。control:コントロールWound area:損傷エリア
【図35−2】同上
【図36−1】図36A-Fは、一過性COMP-Ang1が、尾部皮膚の増強された血管形成および血流を伴う、創傷治癒を促進することを示す。100μg BSA(コントロール)または100μgCOMP-Ang1の毎日の一過性処理が、糖尿病のdb/dbマウスの尾部皮膚の除去される全層損傷(おおよその範囲、30mm2)部分に適用された。表示の週の後、尾部は撮影され(A)、そして傷範囲が測定された(B)。2週間または4(CとD)週間後、血液とリンパ管はPECAM-1(赤)またはLYVE-1(緑)免疫染色で視覚化され、および血管の範囲密度が測定された(E)。 (F)2週間後、右(1)および左(3)の静脈領域および背尾部面の中央動脈領域(2)が測定された。 バーは6匹のマウスの平均±SDを表す。 * 、対コントロール P<0.05。スケールバー(50μm)。control:コントロールWound area:損傷エリアWeeks:週Portion:部位Blood flow:血流Blood vessel Area density:血管密度
【図36−2】同上
【図37−1】図37A-Dは、COMP-Ang1が心室リモデリングを著しく弱め、および梗塞した(infarcted)心臓の血管形成を誘導することを示す。LMIは、成熟雄スプラーグ・ドウリュウ(Sprague-Dawley)ラットの心臓において作られ、そして50μg COMP-Ang1またはBSAが梗塞域に注射された。処理2週間後、心臓が収集された。(AとB)繊維化した組織(青色)およびLV肉厚は、横に切片化された組織においてマソン三重染色(Masson's trichrome staining)により視覚化された。(C) BSA処理LMI とCOMP-Ang1(Cal1)処理LMI 間のLV肉厚の量化分析が行われた。バーは5匹のマウスの平均±SDを表す。 * 、対BSA P<0.05。(D) 血管(赤色)は、フォン・ヴィルブランド因子の免疫蛍光染色で視覚化された。(E) BSA処理LMIおよびCOMP-Ang1(CA1)処理LMI間の血管密度の量化分析が行われた。バーは5匹のマウスの平均±SDを表す。 * 、 対BSA P<0.05。myocardial thickness:心筋厚Vascular density:血管密度
【図37−2】同上
【図38】図38A-E は、COMP-Ang1が梗塞した(infarcted)心臓の心室機能を著しく回復することを示す。LMIは、成熟雄スプラーグ・ドウリュウ(Sprague-Dawley)ラットの心臓において作られ、そして50μg COMP-Ang1またはBSAが梗塞域に注射された。処理2週間後、経胸壁心エコー図検査が行なわれた。IVST、LVPW、LVdD、LVsDおよびFsが分析された(A-E)。バーは5匹のマウスの平均±SDを表す。* 、対BSA P<0.05 。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的に活性な多量体を形成し、アンジオポイエチン-1のフィブリノーゲン様の領域であるTie2受容体結合ドメインにリンクされたGCN4、CMP又はCOMPのコイルドコイルドメインを含むコイルドコイル・キメラ分子の有効な量を、必要のある人に投与することを含む心筋梗塞の治療剤。
【請求項2】
前記コイルドコイルドメインは、受容体の細胞外ドメインにリンクされている請求項1に記載の治療剤。
【請求項3】
前記アンジオポイエチン-1がアゴニスト又はアンタゴニストである請求項1に記載の治療剤。
【請求項4】
前記多量体はホモマーである請求項1に記載の治療剤。
【請求項5】
前記多量体はヘテロマーである請求項1に記載の治療剤。
【請求項6】
前記多量体は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体又は十量体である請求項3に記載の治療剤。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24−1】
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【図24−2】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28−1】
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【図28−2】
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【図28−3】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32−1】
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【図32−2】
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【図32−3】
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【図32−4】
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【図33−1】
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【図33−2】
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【図34】
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【図35−1】
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【図35−2】
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【図36−1】
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【図36−2】
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【図37−1】
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【図37−2】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−82207(P2012−82207A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261360(P2011−261360)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【分割の表示】特願2007−532998(P2007−532998)の分割
【原出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(310009627)
【Fターム(参考)】