説明

キメラブタサーコウイルスPCV2Gen−1Repおよびその使用

本発明は、ブタサーコウイルス1型(PCV1)のRepタンパク質をコードする核酸配列を含むブタサーコウイルス2型(PCV2)をコードする核酸分子を含む、ブタサーコウイルスの新規のキメラ核酸分子(PCV2Gen−1Rep)に関し、詳細には、ここでPCV1のRepタンパク質をコードする核酸配列はオープンリーディングフレーム(ORF)遺伝子であり、より詳細には、ここでそのORF Rep遺伝子はORF1である。非常に望ましいキメラ核酸分子は、PCV2のORF1 Rep遺伝子をPCV1のORF1 Rep遺伝子により入れ替えることにより構築される。本発明は、その独特のキメラ核酸分子を含む、生物学的に機能性のプラスミドまたはウイルスベクター、そのプラスミドまたはベクターによりトランスフェクションされる適切な宿主細胞、その適切な宿主細胞により産生される感染性キメラブタサーコウイルス、その新規キメラを利用する免疫原性ポリペプチド生成物の生産のためのプロセス、ブタをPCV2により引き起されるウイルス感染または離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に対して保護するウイルスワクチン、ブタをPCV2により引き起されるウイルス感染または離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に対して保護する方法、PCV2Gen−1Repの独特のキメラおよび同様のものを調製する方法も含む。この発明はさらに、細胞培養におけるPCV2の複製および力価を向上させるための新規の方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する米国出願への相互参照
この出願は2008年4月16日に出願された米国仮出願第61/124,383号の35 U.S.C. § 119(e)の下の利益を主張する。その先行出願をそのまま本明細書に援用する。
【0002】
政府の資金提供を受けた研究または開発に関する記載
該当無し
”配列表”への参照
この出願において提供される配列表ファイルを含む1個のコンパクトディスク上の資料を援用する。
【0003】
発明の背景
発明の分野
本発明は、PCV1のRepタンパク質をコードする核酸配列がPCV2のゲノムバックボーンの中に挿入されている独特のキメラブタサーコウイルス(PCV2Gen−1Rep)およびブタのPCV2により引き起こされるウイルス感染または離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)からの保護のための新規の死菌または弱毒化キメラワクチンにおける抗原としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
関連技術についての記述
この出願において引用される全ての特許および刊行物をそのまま本明細書に援用する。
1974年に、ブタサーコウイルス1型(PCV1)は最初はPK−15細胞株ATCC CCL−33のしつこい汚染菌として単離された(I. Tischer et al., ”永久ブタ腎臓細胞株におけるパポバウイルスおよびピコルナウイルス様粒子の特性付け” Zentralbl. Bakteriol. Hyg. Otg. A. 226(2):153-167 (1974))。その同定以来、PCV1はブタにおいて何の疾患も引き起こさない遍在性ブタウイルスであることが決定されている(G. M. Allan et al., ”ブタサーコウイルスの病理発生;初乳無摂取の仔ブタの実験的な感染およびブタ胎児物質の試験” Vet. Microbiol. 44:49-64 (1995); G. C. Dulac and A. Afshar, ”PK−15細胞株(ATCC CCL−33)中のブタサーコウイルス抗原およびカナダのブタにおけるサーコウイルスに対する抗体の証拠” Can. J. Vet. Res. 53:431-433 (1989); S. Edwards and J. J. Sands, ”英国のブタにおけるサーコウイルス感染の証拠” Vet. Rec. 134:680-681 (1994); I. Tischer et al., ”ブタサーコウイルスの疫学および病原性についての研究” Arch. Virol. 91:271-276 (1986))。PCV1はブタにおいて何の疾患も引き起こさないが、続いてブタサーコウイルス2型が病原性であることが決定された。1991年に、ブタサーコウイルス2型(PCV2)と名付けられたPCVの異なる株がカナダのブタにおいて最初に認められ、離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)と関係していることが分かった(G. M. Allan et al., ”米国および欧州における消耗性疾患を有するブタからのブタサーコウイルス様ウイルスの単離” J. Vet. Diagn. Invest. 10:3-10 (1998); I. Morozov et al., ”離乳後多臓器消耗症候群を有するブタにおけるブタサーコウイルスの新規の株の検出” J. Clin. Microbiol. 36:2535-2541 (1998))。
【0005】
PCV1およびPCV2は2個の主なオープンリーディングフレーム(ORF)を有する類似したゲノム構成を有する:ORF1はウイルスの複製に関わるウイルスのRepタンパク質をコードしており、ORF2はウイルスのカプシドタンパク質をコードしている。概して、PCV1およびPCV2はそれらのゲノム全体において68〜76%のヌクレオチド配列の同一性を共有しており、一方でそれぞれの遺伝子型内の分離株は90%より大きい同一性を共有している(A.K. Cheung, ”ブタサーコウイルス2型のウイルスタンパク質合成およびDNA複製に必須の、および必須で無い転写単位” Virology 313:452-9 (2003))。PCV1およびPCV2は2個のオープンリーディングフレーム(ORF)を有する類似したゲノム構成を有する(A.K. Cheung, ”ブタサーコウイルス1型のタンパク質合成、DNA複製および感染性ウイルス産生に必須の、および必須で無い転写単位の同定” Arch. Virol. 149(5):975-88 (2004); A. K. Cheung, ”ブタサーコウイルス2型の転写の分析” Virology 305(1):168-180 (2003); A. Mankertz et al., ”ブタサーコウイルスの複製に必須なタンパク質の同定” J. Gen. Virol. 79(Pt 2):381-384 (1998); P. Nawagitgul et al., ”ブタサーコウイルス2型のオープンリーディングフレーム2は主要カプシドタンパク質をコードしている” J. Gen. Virol. 81:2281-2287 (2000))。両方のウイルスにおいて、ORF1はウイルスの複製に寄与しており、オルタナティブスプライシングされて2種類の主な機能タンパク質であるRepおよびRep’となる(A.K. Cheung, ”ブタサーコウイルス1型のタンパク質合成、DNA複製および感染性ウイルス産生に必須の、および必須で無い転写単位の同定” Arch. Virol. 149(5):975-88 (2004); A. K. Cheung, ”ブタサーコウイルス2型の転写の分析” Virology 305(1):168-180 (2003); A. Mankertz and B. Hillenbrand, ”ブタサーコウイルス1型の複製はウイルスのrep遺伝子によりコードされる2種類のタンパク質を必要とする” Virology 279:429-38 (2001); A. Mankertz et al., ”ブタサーコウイルスの複製に必須なタンパク質の同定” J. Gen. Virol. 79(Pt 2):381-384 (1998); A. Mankertz et al., ”ブタサーコウイルスのDNA複製の起点のマッピングおよび特性付け” J. Virol. 71:2562-6 (1997))。ORF1は、PCV1およびPCV2の間で、おおよそ83%のヌクレオチドおよび86%のアミノ酸配列の同一性で高度に保存されている(I. Morozov et al., ”離乳後多臓器消耗症候群を有するブタにおけるブタサーコウイルスの新規の株の検出” J. Clin. Microbiol. 36:2535-2541 (1998))。ORF2は両方のウイルスにおいて免疫原性ウイルスカプシドタンパク質をコードしており(P. Nawagitgul et al., “ブタサーコウイルス2型のオープンリーディングフレーム2は主要カプシドタンパク質をコードしている” J. Gen. Virol. 81:2281-2287 (2000))、それはRepタンパク質よりも変化しやすく、PCV1およびPCV2の間でおおよそ67%のヌクレオチドおよび65%のアミノ酸配列の同一性を有する(I. Morozov et al., ”離乳後多臓器消耗症候群を有するブタにおけるブタサーコウイルスの新規の株の検出” J. Clin. Microbiol. 36:2535-2541 (1998))。最近、第3のORFであるORF3がPCV2において同定されたが、PCV1においては同定されておらず、それは報告によるとアポトーシスに関わっていた(J. Liu et al., ”ブタサーコウイルス2に感染した細胞における以前に同定されていないウイルスタンパク質の特性付けおよびウイルスに誘導されるアポトーシスにおけるその役割” J. Virol. 79:8262-74 (2005))。
【0006】
以前に、米国特許第7,279,166号B2、米国特許第7,276,353号B2、M. Fenaux et al., ”非病原性PCV1のゲノムバックボーンの中にクローン化された病原性PCV2型(PCV2)の免疫原性カプシド遺伝子を有するキメラブタサーコウイルス(PCV)は、ブタにおいてPCV2感染に対する防御免疫を誘導する” J. Virol. 78:6297-303 (2004)、およびM. Fenaux et al., ”病原性ブタサーコウイルス2型(PCV2)および非病原性PCV1のキメラ感染性DNAクローンの、離乳したブタにおける免疫原性および病原性” J. Virol. 77:11232-243 (2003)は、PCV2のORFがPCV1ゲノムのバックボーンの中にクローン化された、PCV1−2と名付けられたキメラウイルスの構築を記述した。それらの刊行物は、PCV1のORF2の代わりの、PCV2からのその遺伝子間配列を含むORF2カプシド遺伝子の相互交換を強調しており、さらに、病原性PCV2核酸分子のORF2遺伝子の代わりに非病原性PCV1からの免疫原性ORF2遺伝子を有するPCV2をコードしている核酸分子を含む、PCV2−1の感染性の相互キメラ核酸分子を開示している。PCV1−2キメラは生来無毒性である特質をもたらしたが、単に実験的なモデルとして作成されたPCV2−1の相互キメラ核酸分子は、毒性のままであり、PCV1−2とウイルス特性を比較する研究目的のため以外には、親であるPCV2を超える商業的な利点が何も無かった。前記の特許または論文はいずれも、病原性PCV2のゲノムバックボーンを利用した他の相互キメラウイルスの作成を全く開示または示唆しておらず、そして確かに、明記された、および明確なORF2免疫原性カプシド遺伝子以外の代替オープンリーディングフレームの交換を暗示していない。
【0007】
さらに、PCV1−2キメラウイルスはPK−15細胞においてPCV2の力価に類似した力価にまで複製する(M. Fenaux et al., ”病原性ブタサーコウイルス2型(PCV2)および非病原性PCV1のキメラ感染性DNAクローンの、離乳したブタにおける免疫原性および病原性” J. Virol. 77:11232-243 (2003))。一方、PCV1はPK−15細胞においてよりよく増殖するように適応しており、そのPK−15細胞培養に適応したPCV1ウイルスはPCV2よりもよく増殖し、PK−15細胞においてPCV2よりも少なくともおおよそ1−log高い力価まで複製する(M. Fenaux et al., ”2型ブタサーコウイルス(PCV2)のカプシドタンパク質における2アミノ酸変異はインビトロでPCV2の複製を増進し、インビボでそのウイルスを弱毒化した” J. Virol. 78:13440-6 (2004); M. Fenaux et al., ”病原性ブタサーコウイルス2型(PCV2)および非病原性PCV1のキメラ感染性DNAクローンの、離乳したブタにおける免疫原性および病原性” J. Virol. 77:11232-243 (2003))。PK−15細胞におけるPCV1のこの増進された複製能力は、PCV1が元々PK−15細胞株からしつこい細胞培養汚染菌として単離されたものであり、従ってPK−15細胞において増殖するのに適応しているという事実によるものでありそうである。しかし、病原性PCV2株はPCV1と同じ複製能力を有しておらず、その病原体のPK−15細胞における比較的低い力価のため、PCV2のワクチンの生産に関する主要な問題を引き起こす。結果として、PCV2に基づくワクチン、例えば不活化したPCV2全体、(PCV1起源のゲノムバックボーンに基づく)生来無毒性であるキメラPCV1−2、組み換えPCV2カプシドタンパク質、および同様のものの効率的な生産レベルを満たすことは、その産業におけるワクチン製造業者への真の難問および苦境である。
【0008】
PCV2の遺伝子間配列が以前に調べられた際に、インターフェロン−α−刺激応答要素(ISRE)様配列(GAAANNGAAA)がPCV2において同定され、それは当分野で認められているISRE要素の活性と同様にIFN−αに応答して遺伝子の転写を活性化する可能性がある(J.E. Darnell, Jr., et al., ”IFN類および他の細胞外シグナル伝達タンパク質に応答したJak−STAT経路および転写の活性化” Science 264:1415-21 (1994))。カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスは、さらなるウイルス遺伝子の活性化に寄与するウイルスにコードされるISRE様配列と相互作用するウイルス遺伝子を発現することが示されている(J. Zhang, ”カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス/ヒトヘルペスウイルス8の複製および転写活性化因子は、インターフェロン刺激応答要素を介してウイルスおよび細胞の遺伝子を制御している” J. Virol. 79:5640-52 (2005))。Meertsらは最近、PCV2を接種した後IFN−αで処理したブタの腎臓細胞(PK−15)およびブタの単球細胞(3D4/31)がそれぞれ529%および308%まで増大した数の感染した細胞を有していたことを示した(P. Meerts et al., ”IFN−ガンマの前および後処理による、ならびにIFN−αの後処理による、ブタ細胞株におけるブタサーコウイルス2の複製の増進” J. Interferon Cytokine Res 25(11):684-93 (November 2005))。興味深いことに、PCV2の接種の前にIFN−αで処理したPK−15細胞は、減少した数の感染した細胞(69%)を有していた(同書)。IFN−αに加え、PK−15および3D4/31細胞の両方におけるIFN−γのPCV2感染への作用も評価された。PCV2感染の後のIFN−γでの処理は結果としてPK−15細胞において691%大きな数の感染した細胞をもたらし、PCV2接種の前のIFN−γの添加は、細胞のウイルスの内在化の増大により3D4/31細胞においてPCV2抗原陽性細胞の数を706%増大させたことが分かった(同書)。IFN−γの活性化に応答する転写因子はPCV2配列のプロモーター領域に存在する可能性があるが、現時点では、それは全て推測であり、まだ立証されていない。多くのウイルスは、細胞のIFN応答を逃れるために、いくつかの転写経路によりIFNの発現に応答するだけでなくそれを操作する(S. Goodbourn, ”インターフェロン:細胞のシグナル伝達、免疫調節、抗ウイルス応答およびウイルス対策” J. Gen. Virol. 81:2341-64 (2000))。まとめると、細胞培養におけるIFN−αおよびIFN−γのPCV2感染への作用ならびにIFN−αおよびIFN−γ応答の制御におけるISRE様配列の役割はまだ研究されていない。それにも関わらず、インターフェロンを添加してPCV2の増殖を刺激することは、先行する研究により示されたように矛盾する結果をもたらした。インターフェロンをブタに与えることはできるが、インターフェロンは特に肝臓に有害な不都合な反応および副作用を引き起し得るため、インターフェロンに基づく最終的なPCV2製品における投与レベルに関して懸念があるであろう。安全にブタに投与することができる天然の成分の使用によりPCV2の複製特性を向上させるのがより望ましいであろう。
【0009】
結果として、PCV2ワクチンの製造の間の抗原生産の不十分な量が原因である、明確な分野で認められた問題が存在し、本発明はそれを、以前に入手可能であったものよりも大きいバッチ(batches)のキメラワクチンを製造するためにそのウイルスの低い力価および複製能力を大きく向上させる新規のブタサーコウイルスキメラを開発することにより解決する。
【0010】
従って、病原性PCV2の抗原能力を保持しており十分な免疫応答を引き出すがPCV1の優れた力価増大特性を革新的に達成するPCV1およびPCV2の独特の組み合わせを提供することは、本発明の重要な目的である。
【0011】
ブタをPCV2により引き起されるウイルス感染または離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に対して保護するための、PCV2に基づく向上したキメラワクチン製品を作ることは、本発明のさらに重要な目的であり、その向上は親のPCV2よりも優れた複製を含む。
【0012】
本発明のさらなる目標および目的は、明細書が進むにつれて見えてくるであろう。
前記の目的は、本明細書で記述されるようにPCV1 Rep遺伝子をPCV2のゲノムバックボーン中に含む新規のキメラPCV2ウイルスを提供することにより達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第7,279,166号B2
【特許文献2】米国特許第7,276,353号B2
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】I. Tischer et al., ”永久ブタ腎臓細胞株におけるパポバウイルスおよびピコルナウイルス様粒子の特性付け” Zentralbl. Bakteriol. Hyg. Otg. A. 226(2):153-167 (1974)
【非特許文献2】G. M. Allan et al., ”ブタサーコウイルスの病原性;初乳無摂取の小豚の実験的な感染およびブタ胎児物質の試験” Vet. Microbiol. 44:49-64 (1995)
【非特許文献3】G. C. Dulac and A. Afshar, ”PK−15細胞株(ATCC CCL−33)中のブタサーコウイルス抗原およびカナダのブタにおけるサーコウイルスに対する抗体の証拠” Can. J. Vet. Res. 53:431-433 (1989)
【非特許文献4】S. Edwards and J. J. Sands, ”英国のブタにおけるサーコウイルス感染の証拠” Vet. Rec. 134:680-681 (1994)
【非特許文献5】I. Tischer et al., ”ブタサーコウイルスの疫学および病原性についての研究” Arch. Virol. 91:271-276 (1986)
【非特許文献6】G. M. Allan et al., ”米国および欧州における消耗性疾患を有するブタからのブタサーコウイルス様ウイルスの単離” J. Vet. Diagn. Invest. 10:3-10 (1998)
【非特許文献7】I. Morozov et al., ”離乳後多臓器消耗症候群を有するブタにおけるブタサーコウイルスの新規の株の検出” J. Clin. Microbiol. 36:2535-2541 (1998)
【非特許文献8】A.K. Cheung, ”ブタサーコウイルス2型のウイルスタンパク質合成およびDNA複製に必須の、および必須で無い転写単位” Virology 313:452-9 (2003)
【非特許文献9】A.K. Cheung, ”ブタサーコウイルス1型のタンパク質合成、DNA複製および感染性ウイルス産生に必須の、および必須で無い転写単位の同定” Arch. Virol. 149(5):975-88 (2004)
【非特許文献10】A. K. Cheung, ”ブタサーコウイルス2型の転写の分析” Virology 305(1):168-180 (2003)
【非特許文献11】A. Mankertz et al., ”ブタサーコウイルスの複製に必須なタンパク質の同定” J. Gen. Virol. 79(Pt 2):381-384 (1998)
【非特許文献12】P. Nawagitgul et al., ”ブタサーコウイルス2型のオープンリーディングフレーム2は主要カプシドタンパク質をコードしている” J. Gen. Virol. 81:2281-2287 (2000)
【非特許文献13】A. Mankertz and B. Hillenbrand, ”ブタサーコウイルス1型の複製はウイルスのrep遺伝子によりコードされる2種類のタンパク質を必要とする” Virology 279:429-38 (2001)
【非特許文献14】A. Mankertz et al., ”ブタサーコウイルスのDNA複製の起点のマッピングおよび特性付け” J. Virol. 71:2562-6 (1997)
【非特許文献15】I. Morozov et al., ”離乳後多臓器消耗症候群を有するブタにおけるブタサーコウイルスの新規の株の検出” J. Clin. Microbiol. 36:2535-2541 (1998)
【非特許文献16】J. Liu et al., ”ブタサーコウイルス2に感染した細胞における以前に同定されていないウイルスタンパク質の特性付けおよびウイルスに誘導されるアポトーシスにおけるその役割” J. Virol. 79:8262-74 (2005)
【非特許文献17】M. Fenaux et al., ”非病原性PCV1のゲノムバックボーンの中にクローン化された病原性PCV2型(PCV2)の免疫原性カプシド遺伝子を有するキメラブタサーコウイルス(PCV)は、ブタにおいてPCV2感染に対する防御免疫を誘導する” J. Virol. 78:6297-303 (2004)
【非特許文献18】M. Fenaux et al., ”病原性ブタサーコウイルス2型(PCV2)および非病原性PCV1のキメラ感染性DNAクローンの、離乳したブタにおける免疫原性および病原性” J. Virol. 77:11232-243 (2003)
【非特許文献19】M. Fenaux et al., ”2型ブタサーコウイルス(PCV2)のカプシドタンパク質における2アミノ酸変異はインビトロでPCV2の複製を増進し、インビボでそのウイルスを弱毒化した” J. Virol. 78:13440-6 (2004)
【非特許文献20】J.E. Darnell, Jr., et al., ”IFN類および他の細胞外シグナル伝達タンパク質に応答したJak−STAT経路および転写の活性化” Science 264:1415-21 (1994)
【非特許文献21】J. Zhang, ”カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス/ヒトヘルペスウイルス8の複製および転写活性化因子は、インターフェロン刺激応答要素を介してウイルスおよび細胞の遺伝子を制御している” J. Virol. 79:5640-52 (2005)
【非特許文献22】P. Meerts et al., ”IFN−ガンマの前および後処理による、ならびにIFN−αの後処理による、ブタ細胞株におけるブタサーコウイルス2の複製の増進” J. Interferon Cytokine Res 25(11):684-93 (November 2005)
【非特許文献23】S. Goodbourn, ”インターフェロン:細胞のシグナル伝達、免疫調節、抗ウイルス応答およびウイルス対策” J. Gen. Virol. 81:2341-64 (2000)
【発明の概要】
【0015】
本発明は、ブタサーコウイルス1型(PCV1)の複製またはRepタンパク質をコードする核酸配列がブタサーコウイルス2型(PCV2)のゲノムバックボーンの中に組み込まれた独特のキメラブタサーコウイルスに関する。本発明の非常に望ましい態様は、PCV1のオープンリーディングフレーム1(ORF1)Rep遺伝子がPCV2のゲノム構造中でPCV2のORF1 Rep遺伝子と入れ替わっているPCV2Gen−1Repキメラの構築に関する。本発明は、本明細書で記述される新規のキメラ核酸分子を含む生物学的に機能性のプラスミド、ウイルスベクターおよび同様のもの、そのキメラDNAを含むプラスミドまたはベクターをトランスフェクションする適切な宿主細胞、ならびにそのキメラコンストラクトを作成する方法も含む。加えて、例えばキメラDNA、キメラDNAをふくむプラスミド、キメラウイルス等を含む弱毒化または不活化ワクチン、およびその保護を必要とするブタに免疫学的有効量の弱毒化または不活化ワクチンを投与することを含むPCV2により引き起されるウイルス感染または離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に対してブタを保護する新規の方法が本発明の範囲内に含まれる。驚いたことに、および好都合なことに、この発明のキメラブタサーコウイルスは親ウイルスであるPCV2を超えて大きく向上した複製および力価をもたらし、従って、本発明のさらなる態様は、細胞培養においてPCV2の複製および力価を向上させるための新規の方法に向けられている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の背景およびその当分野からの発展は、添付された図への参照により以下でさらに記述され、ここで:
【図1】図1は、キメラSDM−C6 DNAクローン(PCV2ゲノムのバックボーンの中にクローン化されたPCV1のRep遺伝子を有する)がPK−15細胞の中にトランスフェクションされた際に感染性であることを示す。パネルAおよびaは、コンカテマー形成した(concatomerized)SDM−C6キメラゲノムをトランスフェクションされたPK−15細胞を図説している;パネルBおよびbは、線状にした単一コピーのSDM−C6キメラゲノムをトランスフェクションされたPK−15細胞を図説している;ならびに、パネルCおよびcは、陰性対照としてのトランスフェクション試薬およびMEMを図説している。左のパネルは、PCV2 ORF2モノクローナル抗体で染色したIFAの結果を与える;一方、右のパネルは、IFAの結果と重ね合わせたPK−15細胞の単層を与える。
【図2】図2は、1段増殖曲線によるPK−15細胞におけるPCV1(◆)、PCV2(■)およびキメラSDM−C6(Δ)ウイルスの増殖特性の特性付けを図説している。6〜12ウェルプレート上のPK−15細胞を、0.1感染多重度でそれぞれのウイルスを用いて2通り(duplicate)で接種した。2個の2通りのウェルの感染した細胞を12時間ごとに集め、ウイルスの力価をIFAにより測定した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に従って、ブタサーコウイルスの独特の、感染性のキメラ核酸分子(PCV2Gen−1Rep)、そのキメラ核酸分子から産生される生キメラウイルスおよびブタをブタサーコウイルス2型(PCV2)により引き起されるウイルス感染または離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)から保護するための獣医用ワクチンが提供される。本発明は、具体的には、PCV2をコードする核酸分子がブタサーコウイルス1型(PCV1)の複製(Rep)タンパク質をコードする核酸配列を含むブタサーコウイルスのキメラ核酸分子(PCV2Gen−1Rep)の構築およびインビトロでの特性付けを取り扱う。PCV2核酸分子の中に挿入するために、Repタンパク質をコードする核酸配列は、非病原性ブタサーコウイルス株のウイルス複製に必要である1種類以上の複製タンパク質をコードする1種類以上の機能性ヌクレオチド配列であることができる。PCV2のゲノムバックボーン中への組み込みのために、PCV1のRepタンパク質をコードする完全なオープンリーディングフレーム(ORF)遺伝子を用いるのが、好ましくは、PCV1のORF1 Rep遺伝子を用いるのが望ましい。最適なキメラ特性のためには、PCV1のORF1 Rep遺伝子が、PCV2のゲノムバックボーン中でPCV2のオープンリーディングフレーム、特にPCVのORF1 Rep遺伝子と入れ替わるのがさらにもっと好ましい。
【0018】
本発明の別の態様は、本発明で記述されるPCV2Gen−1Repのキメラ核酸分子を作成する新規の方法を含み、それは次の工程を含む:
(a)PCV1をコードする核酸分子からRepタンパク質をコードする核酸配列を取り外す;
(b)PCV1のRepタンパク質をコードする核酸配列を、PCV2をコードする核酸分子の中に組み込む;および
(c)そのキメラ核酸分子を回復する。
【0019】
その方法は本発明のキメラウイルスの変種を構築するために都合よく修正することができ、その場合工程(a)はPCV1のRepタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)遺伝子を含む核酸配列を取り外すこと、またはより具体的には、PCV1のORF1 Rep遺伝子を含む核酸配列を取り外すことを含んでいてよい。この発明の代わりの態様として、工程(b)はさらに、PCV2のORF1遺伝子を取り外し、次いでPCV1のORF1 Rep遺伝子を含む核酸配列をPCV2をコードする核酸分子のORF1遺伝子の位置に組み込むことを含んでいてよい。
【0020】
この発明の新規のキメラブタサーコウイルスは、親ウイルスであるPCV2を超えて大きく向上した複製能力および増進された力価をもたらすように優先的に設計される。代表的なキメラが本明細書の下記の実施例において構築され、”SDM−C6”と名付けられた。SDM−C6キメラウイルス試料は、PK−15細胞の中にトランスフェクションした際にインビトロで感染性であり、これはPCV1およびPCV2の間でRep遺伝子を交換可能であることを示している。
【0021】
SDM−C6キメラウイルスの向上した増殖の特質は、キメラウイルスの増殖特性を野生型のPCV1およびPCV2ウイルスと比較する1段増殖曲線により特性付けられる。その結果は、キメラウイルスは驚いたことに細胞培養においてその親ウイルスであるPCV2よりもおおよそ1−log高い力価で、より効率的に複製することを実証している。キメラウイルスは非病原性PCV1と類似した力価まで複製するが、研究はさらに本発明のキメラPCV2Gen−1Repが意外にもPK−15細胞のトランスフェクション(すなわち、感染または接種)の際にその親のPCV1およびPCV2ウイルスの両方よりも急速に複製することを示している。
【0022】
PCV2を産業的スケールでの十分なワクチン生産のためにより高い力価まで増殖させることは解決が難しかったため−そこでは1−logの力価の増大さえも重要であると考えられる−、本発明は獣医学の分野においてPCV2ワクチンの開発に重要な影響を及ぼす注目すべき進歩を可能にする。他のウイルスに関しては1−logの差は重要ではないかもしれないが、PCV2に関する1−logの力価の増大はPCV2ワクチンの生産において非常に大きな違いを生み、すなわち、より高い力価はワクチンの用量あたりの体積を低減させ、それにより最終的な製品の効力および製造プロセス全体の効率を増大させるであろう。好都合なことに、本発明の新規のPCV2Gen−1Repキメラの使用は、以前に過去に成し遂げることが可能であったよりも明らかに優れたPCV2ワクチンの生産を提供する。また、PCV2Gen−1Repキメラは独特にPCV2起源のゲノムバックボーンに基づいているので、接種されたブタにおいて免疫応答を引き出すのに重要であるキメラコンストラクト内のPCV2の免疫原性ORF2カプシド遺伝子の存在のため、それはブタをPCV2により引き起されるウイルス感染またはPMWSに対して保護するためのワクチン中の優秀な抗原物質を作る。
【0023】
本発明のSDM−C6キメラウイルスを以前に米国特許第7,279,166号B2および米国特許第7,276,353号B2において記述されたPCV1−2キメラウイルスから区別する主な違いの1つは核酸配列である:本発明のPCV2Gen−1Repキメラウイルス(SDM−C6)のゲノム配列は病原性PCV2起源のものであり、一方で前のPCV1−2キメラウイルスは非病原性PCV1起源のものである。文献において、2種類のウイルス(PCV1およびPCV2)のCapおよびRep遺伝子の間の遺伝子間配列がPCVの複製の制御において重要な役割を果たしている可能性があると報告されている(A. K. Cheung, ”ブタサーコウイルス1型のDNA複製の起点における高頻度(rampant)ヌクレオチド復帰変異の検出” Virology 333:22-30 (2005); A. K. Cheung, ”ブタサーコウイルス2型のDNA複製の起点における、ウイルスタンパク質、DNA、および子孫ウイルスの生合成に必須な8ヌクレオチドモチーフ配列の同定” Virology 324:28-36 (2004); A. Mankertz et al., ”新規のレポーター遺伝子に基づく複製アッセイはブタサーコウイルス1型および2型の複製因子の交換可能性を明らかにする” J. Virol. 77:9885-93 (2003))。キメラSDM−C6ウイルスを構築するためのPCV2株の改変は、PCV2のDNA配列中のRep遺伝子の代わりのPCV1からのRep遺伝子の付加にあるため、PCV1のRep遺伝子が増進された複製能力に寄与している可能性があると仮定するかもしれない。しかし、その仮定は、特に非病原性PCV1および病原性PCV2はそれらの全ゲノムにおいて68〜76%のヌクレオチド配列の相同性しか共有していないという事実のため、そのコンストラクトが実際に作られて増殖試験において試験されるまでは全くの憶測であろう。PCV1のRep遺伝子はPCV2ゲノムの機能的コード(functional codes)に翻訳されないかもしれないし、またはPCV2をコードする異なるヌクレオチド配列内ではよりよい複製能力をもたらさないかもしれない。従って、キメラSDM−C6ウイルスがPCV1の力価に類似した力価まで複製するという本発明に関する最新の観察は、驚くべき結果である。別の意外な特質として、SDM−C6ウイルスはPCV1およびPCV2親株の両方よりも速く複製し、これは本発明のPCV2Gen−1Repキメラウイルスに関する増進された複製能力の機構がまだ決定されていないことを示している。
【0024】
現在までに、本明細書で記述されるようにPCV1のRep遺伝子を病原性PCV2のゲノムバックボーン内に組み込み、両方の親株を超える向上した複製特性を有する感染性病原体を得る先行する報告は存在しない。従って、新規PCV2Gen−1Repキメラウイルスの増進された複製能力を考慮すると、本発明のさらなる態様は、次の工程を含む、細胞培養におけるPCV2の複製および力価を向上させるための新規の方法に関する:
(a)PCV2のORF1 Rep遺伝子がPCV1のORF1 Rep遺伝子により入れ替えられたPCV2Gen−1Repキメラウイルスを構築する;
(b)適切な細胞株にPCV2Gen−1Repキメラを接種する;
(c)PCV2Gen−1Repキメラを適切なウイルス増殖培地において、標準的な条件の下で、十分な長さの時間培養してウイルス産生を誘導する;および
(d)キメラウイルスを集める。
【0025】
前記の方法において、適切な細胞株の例は、ブタ抗原を含まないブタ腎臓細胞株(PK−15細胞)、ブタ精巣(ST)細胞株およびブタサーコウイルスを増殖させることができる、または特にブタサーコウイルスを増殖させるのに適応させた類似の細胞株であろう。
【0026】
本明細書で記述される新規のキメラ核酸分子を含む生物学的に機能性のプラスミド、ウイルスベクターおよび同様のもの、それらのプラスミドまたはベクターをトランスフェクションする適切な宿主細胞、ならびにその宿主細胞により産生される生キメラブタサーコウイルスも本発明の範囲内に含まれる。本発明はさらに、免疫原性ポリペプチド生成物の生産のためのプロセスを含み、ここでそのプロセスは、本明細書で記述されるブタサーコウイルス(PCV2Gen−1Rep)のキメラ核酸分子をトランスフェクションした原核または真核宿主細胞を、適切な栄養条件下で、前記ポリペプチド生成物を発現させる方式で増殖させること、およびキメラ分子の発現の望ましいポリペプチド生成物を単離することを含む。
【0027】
キメラウイルスおよびDNA分子の適切に弱毒化または不活化された(すなわち死菌)ワクチン、ならびにそれらを用いる方法も、本発明の範囲内に含まれる。接種されたブタは、PCV2により引き起される重篤なウイルス感染およびPMWSから保護される。その新規の方法は、ウイルス感染またはPMWSに対する保護を必要とするブタを、そのブタに免疫学的有効量の本発明に従うワクチン、例えば免疫原性の量のPCV2Gen−1RepをコードするキメラDNA配列、クローン化されたキメラウイルス、そのキメラDNA分子を含むプラスミドまたはウイルスベクター、組み換えPCV2Gen−1Rep DNA配列等を含むワクチンを投与することにより保護する。ウイルス感染に対する広いスペクトルの保護を提供するために、他の抗原、例えばPRRSV、PPV、他のブタの感染性因子(infectious swine agents)および免疫刺激剤を同時にブタに与えてよい。
【0028】
そのワクチンは、例えばPCV2Gen−1Repのキメラ核酸分子、例えばpSKベクターのような適切なプラスミドまたはベクター中のクローン化されたキメラゲノム、死菌(不活化)または弱毒化キメラウイルス等を、非毒性の生理的に許容できるキャリヤーおよび場合により1種類以上の標準的なアジュバントとの組み合わせで含む。好ましくは、そのワクチンは死菌キメラウイルスを抗原として用いる。
【0029】
本発明のワクチンと共に投与されてよいアジュバントは、ブタのそのワクチンへの免疫応答を増大させる物質である。そのアジュバントはワクチンと同時に同じ部位で投与されてよく、または異なる時点で、例えばブースターとして投与されてよい。アジュバントはブタに、そのワクチンが投与された方式または部位と異なる方式または部位で、都合よく投与されてもよい。獣医学の分野の当業者に既知の適切なアジュバントには、水酸化アルミニウム(alum)、免疫刺激複合体(ISCOMS)、非イオン性ブロックポリマーまたはコポリマー、サイトカイン類(例えばIL−1、IL−2、IL−7、IFN−α、IFN−β、IFN−γ等)、サポニン類、モノホスホリル脂質A(MLA)、ムラミールジペプチド類(MDP)および同様のものが含まれるが、それらに限定されない。他の適切なアジュバントには、例えば、硫酸アルミニウムカリウム、大腸菌から単離された易熱性または熱安定性腸毒素、コレラ毒素またはそのBサブユニット、ジフテリア毒素、破傷風毒素、百日咳毒素、フロイント不完全または完全アジュバント等が含まれる。毒素に基づくアジュバント、例えばジフテリア毒素、破傷風毒素および百日咳毒素は使用の前に、例えばホルムアルデヒドを用いた処理により不活化してよい。
【0030】
そのワクチンはさらに、例えば豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、ブタパルボウイルス(PPV)、他のブタの感染性因子および免疫刺激剤のような、本発明のキメラウイルスまたはDNAの免疫学的活性を促進するための追加の抗原を含んでいてよい。
【0031】
この発明の新規のワクチンは、いずれかの特定のタイプまたは調製の方法に限定されることは決して無い。クローン化されたウイルスのワクチンには、感染性DNAワクチン(すなわち、プラスミド、ベクターまたは他の一般に用いられるキャリヤーを用いてDNAをブタの中に直接注入する)、弱毒化ワクチン、不活化(死菌)ワクチン、遺伝学的に設計したワクチン等が含まれるがそれらに限定されない。これらのワクチンは、当分野で既知の標準的な方法により調製される。
【0032】
この発明のワクチン中の抗原物質は病原性PCV2株に基づいているため、その活性な薬剤はまず適切な分野で認められている方法により弱毒化または不活化されなければならない。不活化されたウイルスワクチンを調製するためには、例えば、その感染性DNAクローンからのウイルスの増殖を、当分野で既知の、または本明細書で記述される方法により行う。次いで、一連のウイルスの不活化を、当業者に一般的に知られているプロトコルにより最適化する。
【0033】
不活化されたウイルスワクチンは、クローン化されたDNAに由来するキメラウイルスを、不活化剤、例えばホルマリンまたは疎水性溶媒、酸等を用いて、紫外線またはX線の照射により、加熱により、等で処理することにより調製されてよい。不活化は当分野で理解されている方式で実施される。例えば、化学的不活化では、そのウイルスを含む適切なウイルス試料または血清試料を、通常は十分な長さの時間、十分な量または濃度の不活化剤を用いて、十分に高い(または低い、不活化剤による)温度またはpHで処理してそのウイルスを不活化する。加熱による不活化は、そのウイルスを不活化するのに十分な温度で、および十分な長さの時間実施するのが典型的である。照射による不活化は、しばしばそのウイルスを不活化するのに十分な波長の光または他のエネルギー源を、十分な長さの時間用いて実施される。一般に、用語”不活化”、”死菌”(”dead” or ”killed”)は、ウイルスワクチンの文脈で、そのワクチンが不活化されたウイルスを含むことを意味するように交換可能で用いられる。そのウイルスは、もしそれが感染に感受性のある細胞を感染させることができないならば、不活化されていると考えられる。
【0034】
病原性のクローンから弱毒化ワクチンを調製するため、組織培養に適応させた、生きた、病原性PCV2Gen−1Repを、まず当分野で既知の方法により弱毒化し(非病原性または無害にする)、それは細胞培養を通した連続継代によりなされるのが典型的である。病原性クローンの弱毒化は、遺伝子欠失またはウイルス産生遺伝子変異によりなされてもよい。
【0035】
さらに、毒性の原因であるウイルスゲノム中のヌクレオチド配列を正確にねらう(pinpoint)、および例えば部位特異的変異誘発により無毒性のウイルスを遺伝学的に設計することが可能である。部位特異的変異誘発は、1個以上のヌクレオチドを追加する、削除する、または変化させることができる(例えばZoller et al., DNA 3:479-488, 1984を参照)。望まれる変異を含むオリゴヌクレオチドを合成し、1本鎖ウイルスDNAの一部にアニーリングする。その手順から得られるハイブリッド分子を用いて細菌を形質転換する。次いでその適切な変異を含むものを単離した2本鎖DNAを用いて、後者の制限酵素切断断片へのライゲーションにより完全長DNAを生成し、続いてそれを適切な細胞培養物の中にトランスフェクションする。ゲノムの移入に適したベクター中へのライゲーションは、当業者に既知のあらゆる標準的な技法により成し遂げられてよい。ウイルスの子孫の産生のための、そのベクターの宿主細胞中へのトランスフェクションは、一般に行われている方法の内のいずれか、例えばリン酸カルシウムまたはDEAE−デキストランを介したトランスフェクション、電気穿孔法、プロトプラスト融合および他の周知の技法を用いて行われてよい(例えば、Sambrook et al., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual,” Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。次いで、クローン化されたウイルスは望まれる変異を示す。あるいは、適切な変異を含む2種類のオリゴヌクレオチドを合成することができる。これらをアニーリングして2本鎖DNAを形成することができ、それをウイルスDNAに挿入して完全長DNAを生成することができる。
【0036】
そのウイルスの免疫優性タンパク質の内の1種類以上をコードする、そのウイルスから得られた、またはそのウイルスゲノムからコピーされた核酸分子を含む移入ベクターを用いて、(HI−FIVEのような)昆虫細胞株を形質転換することができる。その移入ベクターには、例えば、線状にしたバキュロウイルスDNAおよびその免疫原性ポリヌクレオチドを含むプラスミドが含まれる。組み替えバキュロウイルスを作るために、宿主細胞株をその線状にしたバキュロウイルスDNAおよびプラスミドでコトランスフェクションすることができる。あるいは、生ベクター(live vector)、例えばポックスウイルスまたはアデノウイルスを、本発明のキメラと組み合わせてワクチンとして用いることができる。
【0037】
免疫学的有効量の本発明のワクチンを、ウイルス感染またはPMWSに対する保護を必要とするブタに投与する。ブタに接種する免疫学的有効量または免疫原性の量は、型にはまった試験により容易に決定する、またはすぐに滴定することができる。有効量は、PMWSを引き起すウイルスに晒されたブタを保護するのに十分なそのワクチンに対する免疫応答が得られる量である。好ましくは、そのブタは、そのウイルス性疾患の不都合な生理的症状または影響の1から全てまで(one to all)が著しく低減する、改善される、または完全に予防される程度まで保護される。
【0038】
そのワクチンは、1回量で、または反復用量で投与することができる。投与量は、例えば約1マイクログラムから約1,000マイクログラムまでの感染性キメラDNAゲノムを含むプラスミドDNA(そのワクチンの免疫活性成分の濃度に依存する)、好ましくは100〜200マイクログラムのキメラPCV2Gen−1Rep DNAクローンの範囲であってよい。有効な抗原性薬剤の適切な投与量を決定または滴定して、ブタの体重、抗原の濃度および他の典型的な要素に基づく最小有効投与量を見出すための方法は、当分野で既知である。
【0039】
望ましくは、そのワクチンはまだPCVウイルスに晒されていないブタに投与される。抗原性物質を含むワクチンは、鼻腔内で、経皮で(すなわち、全身吸収のために皮膚の表面上で、または皮膚の表面において適用される)、非経口で、等で都合よく投与することができる。非経口投与経路には、筋肉内、静脈内、腹膜内、皮内(すなわち、皮膚の下に注射される、またはそうでなければ置かれる)、皮下経路および同様のものが含まれるが、それらに限定されない。筋肉内および皮内接種経路は、ウイルス感染性DNAクローンを用いた他の研究で成功しているため(E. E. Sparger et al., ”ネコ免疫不全ウイルスの分子クローンのDNAの注射によるネコの感染” Virology 238:157-160 (1997); L. Willems et al., ”ウシ白血病プロウイルスのヒツジ中へのインビボトランスフェクション” Virology 189:775-777 (1992))、これらの経路は実用的な鼻腔内投与経路に加えて最も好ましい。それほど好都合では無いが、そのワクチンをブタにリンパ内(intralymphoid)接種経路を通して与えることも意図される。
【0040】
液体として投与される場合、本ワクチンは水溶液、シロップ、エリキシル、チンキおよび同様のものの形で調製されてよい。その配合物は当分野で既知であり、抗原および他の典型的な添加物の、適切なキャリヤーまたは溶媒系中での溶解により調製されるのが典型的である。適切なキャリヤーまたは溶媒には、水、生理食塩水、エタノール、エチレングリコール、グリセロール等が含まれるがそれらに限定されない。典型的な添加物は、例えば、保証された染料、香味、甘味剤および抗微生物性保存剤、例えばチメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)である。その溶液は、例えば、部分的に加水分解されたゼラチン、ソルビトールまたは細胞培養培地の添加により安定化されてよく、当分野で既知の試薬、例えばリン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、それらの混合物、および同様のものを用いる一般に行われる方法により緩衝されてよい。
【0041】
液体配合物は、懸濁化剤または乳化剤を含む懸濁液および乳濁液を、他の標準的な共配合剤(co−formulants)との組み合わせで含んでいてもよい。これらのタイプの液体配合物は一般に行われる方法により調製されてよい。例えば懸濁液はコロイドミルを用いて調製してよい。例えば乳濁液はホモジェナイザーを用いて調製してよい。
【0042】
体液系の中への注入のために設計された非経口配合物は、ブタの体液の一致するレベルまでの適切な等張性およびpHの緩衝を必要とする。等張性は塩化ナトリウムおよび必要に応じて他の塩類を用いて適切に調節することができる。適切な溶媒、例えばエタノールまたはプロピレングリコールを用いてその配合物中の成分の溶解性およびその液体製剤の安定性を増大させることができる。本ワクチン中で用いることができるさらなる添加物には、デキストロース、一般に用いられる抗酸化剤および一般に用いられるキレート剤、例えばエチレンジアミン4酢酸(EDTA)が含まれるが、それらに限定されない。また、非経口剤形は使用の前に滅菌されなければならない。
【0043】
下記の実施例は本発明の特定の観点を実証する。しかし、これらの実施例は説明のためだけのものであり、この発明の条件および範囲に関して完全に決定的なものであることを意味しないことは理解されるべきである。典型的な反応条件(例えば、温度、反応時間等)が与えられた際に、一般にそれほど好都合では無いがその明記された範囲の上および下の条件も共に用いることができることは理解されるべきである。実施例は室温(約23℃〜約28℃)において大気圧で実施される。別途明記しない限り、本明細書で言及される全ての部(parts)およびパーセントは重量に基づくものであり、全ての温度は摂氏度で表される。
【0044】
下記に続く限定的で無い実施例から、本発明のさらなる理解を得ることができる。
【実施例】
【0045】
実施例1
キメラPCV2Gen−1Repの構築
下記に続くインビトロ実験全体を通して、PCVを含まないPK−15細胞を用いた。これらの細胞は、以前に終点希釈(end−point dilution)により得られた(M. Fenaux et al., ”2型ブタサーコウイルスのクローン化されたゲノムDNAは、直接ブタの肝臓およびリンパ節中に注入した際に感染性である:臨床疾患、ウイルスの分布、および病理学的病変の特性付け” J. Virol. 76:541-51 (2002))。PCV2およびPCV1単一コピーならびに二量体化したタンデム反復の感染性DNAクローンの構築は、以前に記述された(同書)。
【0046】
PCV2ゲノムのバックボーン中で(その遺伝子間配列を含めて)PCV2のORF1 Rep遺伝子と入れ替わったPCV1のORF1 Rep遺伝子を有するキメラPCV2Gen−1Repを構築するため、pBluescript II SK+ベクター中のPCV1感染性DNAクローンの単一コピーゲノムを、プライマーPCV1REPF(5’ CAACTGGCCAAGCAAGAAAAG 3’(配列ID番号:1に対応する))およびPCV1REPR(5’ AACCATTACGATGTGATCAAAAAGACTCAGTAATTTATTTTATATGGGAAAAGGG 3’(配列ID番号:2に対応する))を用いたPCRにより増幅し、それぞれの末端に設計された制限酵素部位BalIおよびBclIを有するPCV1Rep遺伝子断片を生成した。PCR反応は45μlのPlatinum PCR SuperMix High Fidelity(Invitrogen,カリフォルニア州カールズバッド)、20pMのプライマーPCV1REPR、20pMのプライマーPCV1REPF、および1μlの単一コピーPCV1感染性DNAクローンで構成されていた。サーモサイクラー反応は、94℃で2分間の最初の変性、ならびに35サイクルの94℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、および68℃で30秒間の伸張、その後68℃で7分間の最後の保温で構成されていた。PCV1Rep断片を1%アガロースゲルにより分離し、Geneclean II Kit(Qbiogene,カリフォルニア州アーバイン)を用いて精製した。次いでPCV1Rep断片をBalIおよびBclIで別々に消化し、得られた消化された断片を1%アガロースゲル中で泳動し(run)、Geneclean II Kitを用いて精製した。
【0047】
Rep遺伝子を除いたPCV2ゲノムバックボーン断片を、pBluescriptベクター中の単一コピーPCV2感染性DNAクローンから、プライマーPCV2GENF(5’ CTTTTTGATCACTTCGTAATGGTTTTTA 3’(配列ID番号:3に対応する))およびPCV2GENR(5’ GCTTACCATGTTGCTGCTGAGGT 3’(配列ID番号:4に対応する))を用いたPCRにより増幅させた。その断片のそれぞれの末端においてBfrBIおよびBclI制限酵素部位が導入された。PCR反応は20pMのプライマーPCV2GENF、20pMのプライマーPCV2GENR、40mM dNTP(Fisher Scientific,ペンシルベニア州ピッツバーグ)、200mM MgCl、10μl 10X PCR緩衝液、72μl dH2O、5ユニット AmpliTaq(Applied Biosystems,カリフォルニア州フォスターシティ)、および1μlの単一コピーPCV2感染性DNAクローンで構成されていた。サーモサイクラー反応は、94℃で10分間の最初の変性、ならびに38サイクルの94℃で1分間の変性、50℃で1分間のアニーリング、および72℃で45秒間の伸張、その後72℃で7分間の最後の伸張で構成されていた。PCV2ゲノムバックボーン断片(Rep遺伝子無し)、PCV2Gen断片を、1%アガロースゲルにより分離し、Geneclean II Kitを用いて精製した。次いでPCV2Gen断片をBfrBIおよびBclIで別々に消化し、1%アガロースゲル上で泳動し、Geneclean II Kitを用いて精製した。
【0048】
キメラPCV感染性DNAクローンを生成するため、StratageneのDNAライゲーションキット(カリフォルニア州ラホヤ)を用いてPCV1RepおよびPCV2Gen断片の一夜ライゲーションを行った。そのライゲーション混合物を用いて、製造業者のプロトコルに従ってTOP10細胞(Invitrogen)を形質転換した。白いコロニーを選択し、一夜培養し、SigmaのGenElute Plasmid Miniprep Kit(ミズーリ州セントルイス)を用いてプラスミドを抽出した。そのプラスミドを制限酵素KpnIで消化し、1%アガロースゲル上で泳動して、おおよそ1.7kb(PCV2Gen−1Rep)および2.9kb(pBluescript II SK+ベクター)の2種類のバンドを有する本物のプラスミドを同定した。
【0049】
実施例2
キメラPCV2Gen−1Rep DNAクローンの生存度試験
キメラPCV2Gen−1Rep DNAクローンの生存度試験を、PK−15細胞のトランスフェクションにより行った。制限酵素KpnIを用いてキメラPCV2Gen−1RepゲノムをpBluescript II SK+プラスミドベクターから切り出した。キメラPCV2Gen−1Repゲノムを1%アガロースゲル上で泳動し、Geneclean IIを用いて精製し、続いてT4 DNAリガーゼにより、本質的に以前に記述された一般に行われる技法を用いてコンカテマー形成した(M. Fenaux et al., 2002, 上記)。Lab−Tek chamber slide上で増殖しているおおよそ70%コンフルエントのPK−15細胞を、コンカテマー形成したPCV2Gen−1RepゲノムDNAで、LipofectamineおよびPlus Reagentを用いて製造業者のプロトコル(Invitrogen)に従ってトランスフェクションした。トランスフェクションの3日後、PCV2 ORF2特異的ポリクローナル抗体を用いる間接免疫蛍光アッセイ(IFA)を、以前に記述されたように行い(同書)、感染性を決定した。PCV2Gen−1Repキメラゲノムの感染性をさらに評価するため、T−25フラスコ中で増殖している70%コンフルエントのPK−15細胞を、フラスコあたりおおよそ12μgのコンカテマー形成したキメラゲノムで、以前に記述されたようにトランスフェクションした(同書)。トランスフェクションの3日後にウイルスストックを集め、PCV2 ORF2特異的ポリクローナル抗体を用いるIFAにより、以前に記述されたように滴定した(同書)。
【0050】
実施例3
キメラゲノムを確認するためのDNA配列決定
プライマーRep830F(5’ GGTGTCTTCTTCTGCGGTAACG 3’ (配列ID番号:5に対応する))およびRep830R(5’ GTTCTACCCTCTTCCAAACCTTCC 3’ (配列ID番号:6に対応する))を用いて、PCV2Gen断片の3’とPCV1Rep断片の5’の間の連結領域を増幅した。プライマーRep10F(5’ GGAAGACTGCTGGAGAACAATCC 3’ (配列ID番号:7に対応する))およびRep10R(5’ CGTTACTTCACACCCAAACCTG 3’ (配列ID番号:8に対応する))を用いて、PCV1Rep断片の5’とPCV2Gen断片の3’の間の連結領域を増幅した。増幅したPCR産物を、両方の鎖に関して配列決定した。
【0051】
実施例4
部位特異的変異誘発
最初のキメラPCV2Gen−1Rep DNAクローンは、PK−15細胞中にトランスフェクションした際に感染性では無かった。キメラゲノムの配列を分析した後、PCV1 ORF1 Rep遺伝子のATG開始コドンの後に6ヌクレオチド(GTAAGC)の挿入が確認された。PCRおよびクローニングの工程を通して導入されたこのエラーおよび望まれない挿入を訂正するため、プライマーMVTF(5’ CTCAGCAGCAACATGCCAAGCAAGAAAAGCGG 3’ (配列ID番号:9に対応する))およびMVTR(5’ CCGCTTTTCTTGCTTGGCATGTTGCTGCTGAG 3’ (配列ID番号:10に対応する))を用いて、QuikChange II Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)を用いてその6ヌクレオチドの挿入を削除した。TOP10細胞を、その変異誘発した産物で、製造業者のプロトコル(Invitrogen)に従って形質転換した。白いコロニーを選択し、一夜培養した。クローンSDM−C6をアンピシリンを含むLB寒天プレート上にストリークし、37℃で一夜増殖させた。4個のコロニーを選択し、一夜培養した。それらのプラスミドを抽出し、プライマーRep830FおよびRep830Rを用いて配列決定し、導入された6ヌクレオチドがキメラゲノムから除去されたことを確認した。
【0052】
その6ヌクレオチド(GTAAGC)の挿入がキメラクローンを非感染性にしたこと、およびその望まれない挿入が部位特異的変異誘発により上手く除去されたことが分かった。その新規キメラクローンSDM−C6は、その後のPK−15細胞中へのトランスフェクションの際に感染性であることが分かった。
【0053】
実施例5
キメラウイルスのインビトロでの特性付けのためのウイルスストックの調製
PCV1およびPCV2ウイルスストックを、それぞれPCV1およびPCV2感染性DNAクローンから、PK−15細胞のトランスフェクションにより、以前に記述された一般に行われる技法(M. Fenaux et al., 2002, 上記)に従って調製した。それぞれのウイルスストックの感染力価を、PCV2 ORF2特異的抗体を用いるIFAにより決定した(同書)。
【0054】
PCV2ゲノムのバックボーン中でPCV1 Rep遺伝子を含むSDM−C6キメラゲノムを、pBluescript II SK+プラスミドから、制限酵素KpnIを用いて切り出し、Geneclean II Kitを用いて精製した。おおよそ40μgのSDM−C6キメラゲノムを、T4 DNAリガーゼによりコンカテマー形成し、それを用いて4フラスコのおおよそ70%コンフルエントのPK−15細胞を以前に記述されたように(同書)LipofectamineおよびPlus Reagentを用いてトランスフェクションした(フラスコあたり10μg)。トランスフェクションの3日後、トランスフェクションされた細胞を3回凍結融解することによりSDM−C6キメラウイルスを集め、キメラSDM−C6ウイルスストックの感染力価を、リン酸緩衝生理食塩水(10X, pH 7.4)(Invitrogen)中1:1000希釈のPCV2 ORF2モノクローナル抗体(Rural Technologies Inc.,サウスダコタ州ブルッキングズ)を用いるIFAにより決定した。SDM−C6ウイルスストックは、0.5 x 105.5 TCID50/mlの優秀なウイルス感染力価を有していた。コンカテマー形成した、および線状にしたSDM−C6ゲノムをトランスフェクションしたPK−15細胞は共にIFAにより強く陽性であり(図1)、これはPCV2ゲノムのバックボーン中にクローン化されたPCV1 Rep遺伝子を有するSDM−C6キメラゲノムがインビトロで感染性であることを証明している。
【0055】
実施例6
1段増殖曲線
キメラウイルスの増殖特性を特性付けるため、ならびにそれを野生型のPCV1およびPCV2ウイルスと比較するため、1段増殖曲線を行った。PK−15細胞を6枚の12ウェルプレートの8個のウェルの中で培養した。おおよそ70%コンフルエントにおいて、それぞれのウェルを2mLのMEMで洗浄した。2通りのプレート中の8個のウェルをそれぞれPCV1、PCV2、およびSDM−C6を用いて、0.1感染多重度(MOI)で接種した。1時間の培養の後、接種物を除去した。続いて細胞の単層を3回、それぞれ2mLのPBSで洗浄して、あらゆる余分な量のウイルス接種物を除去した。2%FBSおよび1X抗生物質−抗真菌物質を含む2mLのMEMをそれぞれのウェルに添加し、プレートを37℃、5%COで連続して培養した。接種後0、12、24、36、48、60、72、84、および96時間(hpi)の時点で、それぞれの2通りのプレートの1ウェル中の細胞を上清中へかき落とす(scraping)ことにより集めた。集めた細胞を3回凍結融解し、滴定まで−80℃で保管した。それぞれのhpiにおける感染力価を、8ウェルLab−Tek II chamber slide(Nalge Nunc International,ニューヨーク州ロチェスター)において、系列希釈した接種物、続いてPCV2 ORF2モノクローナル抗体によるIFAを用いて、スペアマン−カーバー(Spearman−Karber)法を用いて決定した(M. Fenaux et al., 2002, 上記)。
【0056】
データは、SDM−C6キメラウイルスが、PCV1ウイルスが増殖するのと同じくらいよく、96hpiにおいて2.20 x 104.0 TCID50/mLの力価まで増殖し(図2)、一方でPCV2は96hpiにおいて2.20 x 103.0 TCID50/mLまでしか増殖しなかったことを示した。12hpiにおいて、キメラSDM−C6ウイルスは6.95 x 102.0 TCID50/mLの力価まで増殖し、一方でPCV1およびPCV2ウイルスは両方とも検出不能な力価を有しており、これはそのキメラウイルスが親ウイルスよりも速く複製するという結論を可能にする。PCV1は24hpiまでには検出可能なウイルスの力価である8.70 x 102.0 TCID50/mLを有しており、一方でPCV2は48hpi(7.91 x 101.0 TCID50/mL)まで検出可能な力価を有しなかった。従って、キメラSDM−C6ウイルスおよびPCV1は類似の力価まで増殖し、それは親のPCV2ウイルスの力価よりもおおよそ1−log高かったことが観察された。
【0057】
上記において、本発明の特定の態様の詳細な記述を、説明のために、かつ限定のためでは無く提供した。この開示に基づいて当業者には明らかである全ての他の修正、分岐および均等物は、主張される本発明の範囲内に含まれることを意図することは理解されるべきである。
【図1A】

【図1a】

【図1B】

【図1b】

【図1C】

【図1c】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタサーコウイルス1型(PCV1)のRepタンパク質をコードする核酸配列を含むブタサーコウイルス2型(PCV2)をコードする核酸分子を含む、ブタサーコウイルスのキメラ核酸分子(PCV2Gen−1Rep)。
【請求項2】
請求項1に記載のキメラ核酸分子であって、PCV1のRepタンパク質をコードする核酸配列がオープンリーディングフレーム(ORF)遺伝子であるキメラ核酸分子。
【請求項3】
ORF Rep遺伝子がORF1である、請求項2に記載のキメラ核酸分子。
【請求項4】
PCV2のORF1 Rep遺伝子がPCV1のORF1 Rep遺伝子により入れ替えられている、請求項3に記載のキメラ核酸分子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のキメラ核酸分子を含む、生物学的に機能性のプラスミドまたはウイルスベクター。
【請求項6】
請求項5に記載のプラスミドまたはベクターによりトランスフェクションされた、適切な宿主細胞。
【請求項7】
請求項6に記載の宿主細胞により産生された、感染性キメラブタサーコウイルス。
【請求項8】
免疫原性ポリペプチド生成物の生産のためのプロセスであって、前記プロセスが次のことを含むプロセス:請求項1〜4のいずれか1項に記載のブタサーコウイルスのキメラ核酸分子をトランスフェクションした原核または真核宿主細胞を、適切な栄養条件下で、前記ポリペプチド生成物を発現させる方式で増殖させる、およびキメラ分子の発現の望ましいポリペプチド生成物を単離する。
【請求項9】
ブタをPCV2により引き起されるウイルス感染または離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に対して保護するウイルスワクチンであって、非毒性の生理的に許容できるキャリヤーおよび免疫原性の量の適切に弱毒化または不活化された、次のものからなるグループから選択されたメンバーを含むウイルスワクチン:
(a)ブタサーコウイルス1型(PCV1)のRepタンパク質をコードする核酸配列を含むブタサーコウイルス2型(PCV2)をコードする核酸分子を含む、ブタサーコウイルスのキメラ核酸分子(PCV2Gen−1Rep);
(b)ブタサーコウイルス1型(PCV1)のRepタンパク質をコードする核酸配列を含むPCV2をコードする核酸分子を含むブタサーコウイルスのキメラ核酸分子(PCV2Gen−1Rep)を含む、生物学的に機能性のプラスミドまたはウイルスベクター;および
(c)ブタサーコウイルス1型(PCV1)のRepタンパク質をコードする核酸配列を含むPCV2をコードする核酸分子を含むブタサーコウイルスのキメラ核酸分子(PCV2Gen−1Rep)から作られる、感染性キメラブタサーコウイルス。
【請求項10】
請求項9に記載のワクチンであって、キメラ核酸分子がPCV1のRepタンパク質をコードする核酸配列を含み、それがオープンリーディングフレーム(ORF)遺伝子を含むワクチン。
【請求項11】
キメラ核酸分子がPCV1のORF1 Rep遺伝子を含む、請求項10に記載のワクチン。
【請求項12】
キメラ核酸分子がPCV2のORF1 Rep遺伝子の代わりにPCV1のORF1 Rep遺伝子を含む、請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
保護を必要とするブタに免疫学的有効量の請求項9〜12のいずれか1項に記載のワクチンを投与することを含む、PCV2により引き起されるウイルス感染または離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に対してブタを保護する方法。
【請求項14】
そのワクチンを非経口で、鼻腔内で、皮内でまたは経皮でブタに投与することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載のPCV2Gen−1Repのキメラ核酸分子を調製する方法であって、次の工程を含む方法:
(a)PCV1をコードする核酸分子からRepタンパク質をコードする核酸配列を取り外す;
(b)PCV1のRepタンパク質をコードする核酸配列を、PCV2をコードする核酸分子の中に組み込む;および
(c)そのキメラ核酸分子を回復する。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、工程(a)がPCV1のRepタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)遺伝子を含む核酸配列を取り外すことを含む方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、工程(a)がPCV1のORF1 Rep遺伝子を含む核酸配列を取り外すことを含む方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、工程(b)がさらにPCV2のORF1遺伝子を取り外し、次いでPCV1のORF1 Rep遺伝子を含む核酸配列をPCV2をコードする核酸分子のORF1遺伝子の位置に組み込むことを含む方法。
【請求項19】
次の工程を含む、細胞培養におけるPCV2の複製および力価を向上させるための方法:
(a)PCV2のORF1 Rep遺伝子がPCV1のORF1 Rep遺伝子により入れ替えられたPCV2Gen−1Repキメラウイルスを構築する;
(b)適切な細胞株にPCV2Gen−1Repキメラを接種する;
(c)PCV2Gen−1Repキメラを適切なウイルス増殖培地において、標準的な条件の下で、十分な長さの時間培養してウイルス産生を誘導する;および
(d)キメラウイルスを集める。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、適切な細胞株が、ブタ抗原を含まないブタ腎臓細胞株(PK−15細胞)またはブタ精巣(ST)細胞株である方法。

【図2】
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【公表番号】特表2011−519273(P2011−519273A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504999(P2011−504999)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/002189
【国際公開番号】WO2009/128878
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(508148884)ヴァージニア テック インテレクチュアル プロパティーズ,インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】