説明

キメラポリペプチドおよびその使用

本開示は、キメラポリペプチドをコードする核酸分子、キメラポリペプチド、キメラポリペプチドを含む薬学的組成物、ならびに糖尿病および肥満等の代謝異常をかかる核酸、ポリペプチド、または薬学的組成物を用いて治療するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年6月17日に出願された米国仮出願第61/187,767号および2009年12月1日に出願された米国仮出願第61/265,548号の利益を主張するものであり、これらの出願は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、キメラポリペプチドをコードする核酸分子、キメラポリペプチド、キメラポリペプチドを含む薬学的組成物、ならびに多様な代謝異常をかかる核酸、ポリペプチド、または薬学的組成物を用いて治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
FGF19、FGF21、およびFGF23は、線維芽細胞成長因子(FGF)の固有のサブファミリーを形成する。他のFGFと異なり、3つ全ては、種々の代謝プロセスの調節における内分泌ホルモンとして機能することが示されている(Fukumoto,(2008).Endocr.J.55:23−31)。例えば、FGF23は、骨に由来し、腎臓内のリン酸塩恒常性を調節し(Fukumoto&Yamashita,(2007)Bone40:1190−1195)、FGF21は、主に肝臓内で発現されるが、脂肪組織内でシグナル伝達することができ(Ogawa et al.,(2007)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.104:7432−7437)、FGF19は、回腸から分泌され、胆汁酸代謝の調節のための腸肝シグナルとして機能する(Inagaki et al.(2005)Cell.Metab.2:217−225)。
【0004】
FGF19およびFGF21は、グルコース、脂質、およびエネルギー代謝の調節に及ぼす報告されている影響により、多くの類似点を共有すると思われる。FGF19およびFGF21トランスジェニックマウスの双方は、食餌性肥満に耐性であり、より低い体脂肪率、および改善されたインスリン感受性、グルコース処理、および血漿脂質パラメータを有する(Tomlinson et al.,(2002)Endocrinology143:1741−1747、Fu et al.,(2004)Endocrinology145:2594−2603、Kharitonenkov et al.(2005)J Clin Invest115:1627−1635、Xu et al.,(2008)Diabetes58:250−59)。糖尿病マウスモデルにおける組み換えFGF19またはFGF21タンパク質の注射は、血清グルコースおよびインスリンレベルの低下、耐糖能および脂肪肝の改善、ならびに体重の低下をもたらした(Kharitonenkov et al.,(2005)J.Clin.Invest.115:1627−1635、Xu et al.(2008)Diabetes58:250−59)。加えて、FGF21はまた、糖尿病アカゲザルにおいて体重の低下と共に、グルコース、インスリン、および脂質プロフィールを改善することも示されている(Kharitonenkov et al.,(2007)Endocrinology148:774−781)。総合すると、これらの観察は、糖尿病および肥満の治療に対する新規の療法としてのこれらの分子の潜在的実用性を示す。
【0005】
このサブファミリーは、他のFGF分子と比較して固有の特徴を示すが(Kurosu&Kuro−o,(2008)Curr.Opin.Nephrol.Hypertens.17:368−372(2008)、Wu et al.,(2008)J.Biol.Chem.283(48):33304−9)、骨格筋内でFGF19を過剰発現するトランスジェニックマウスにおいて、FGF19、肝細胞癌(HCC)の形成が観察された(Nicholes et al.、(2002)Am.J.Pathol.160:2295−2307)。これは、糖尿病、肥満、および他の代謝異常のための療法としてFGF19を開発する際の考慮すべき事項となっている。
【0006】
したがって、治療的使用に対する潜在性を示す一方で、同時に、ポリペプチドの使用に支障をきたすであろう分裂促進性等の望ましくない特性を示さないキメラポリペプチドが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Fukumoto,(2008).Endocr.J.55:23−31
【非特許文献2】Fukumoto&Yamashita,(2007)Bone40:1190−1195
【非特許文献3】Ogawa et al.,(2007)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.104:7432−7437
【非特許文献4】Inagaki et al.(2005)Cell.Metab.2:217−225
【非特許文献5】Tomlinson et al.,(2002)Endocrinology143:1741−1747
【非特許文献6】Fu et al.,(2004)Endocrinology145:2594−2603
【非特許文献7】Kharitonenkov et al.(2005)J Clin Invest115:1627−1635
【非特許文献8】Xu et al.,(2008)Diabetes58:250−59
【非特許文献9】Kharitonenkov et al.,(2007)Endocrinology148:774−781
【非特許文献10】Kurosu&Kuro−o,(2008)Curr.Opin.Nephrol.Hypertens.17:368−372(2008)
【非特許文献11】Wu et al.,(2008)J.Biol.Chem.283(48):33304−9)
【非特許文献12】Nicholes et al.、(2002)Am.J.Pathol.160:2295−2307
【発明の概要】
【0008】
配列番号4を含む野生型成熟FGF19ポリペプチド足場を含み、FGFR4媒介型シグナル伝達活性を減少させる修飾をさらに含むキメラポリペプチドが提供される。
【0009】
一実施形態では、FGF19ポリペプチド足場の16〜20位の残基WGDPIの1つ以上は、(a)アミノ酸なし、または(b)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されている。WGDPI配列のトリプトファン残基は、欠失されてもよい。加えて、残基WGDPIは、野生型FGF21または野生型FGF23アミノ酸配列のいずれかの中に存在する1〜5個の隣接した残基で置換されてもよい。1〜5個の隣接した残基は、野生型FGF21アミノ酸配列中に存在してもよく、例えば、1〜5個の隣接した残基は、GQVである。
【0010】
さらなる実施形態では、FGF19ポリペプチド足場の28〜35位の残基SGPHGLSSの1つ以上は、(a)アミノ酸なし、または(b)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸のいずれかで置換されている。残基SGPHGLSSは、野生型FGF21または野生型FGF23アミノ酸配列のいずれかの中に存在する1〜8個の隣接した残基で置換されてもよい。1〜8個の隣接した残基は、野生型FGF21アミノ酸配列中に存在してもよく、例えば、1〜8個の隣接した残基は、DDAQQTEであってもよい。
【0011】
別の実施形態では、FGF19ポリペプチド足場の124〜140位の残基SSAKQRQLYKNRGFLPLの1つ以上は、(a)アミノ酸なし、または(b)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸のいずれかで置換されていてもよい。残基SSAKQRQLYKNRGFLPLは、野生型FGF21または野生型FGF23アミノ酸配列のいずれかの中に存在する1〜17個の隣接した残基で置換されてもよい。1〜17個の隣接した残基が野生型FGF21アミノ酸配列中に存在する場合、1〜17個の隣接した残基は、PGNKSPHRDPAPRGPであってもよい。
【0012】
また、配列番号4を含む野生型FGF19ポリペプチド足場を含むキメラポリペプチドも提供され、ここで配列番号4の16〜20位の残基WGDPIの1つ以上は、(a)アミノ酸なし、または(b)前記野生型アミノ酸配列中の前記位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸、およびのうちの1つまたは両方で置換されており、かつ(i)配列番号4の28〜35位の残基SGPHGLSSの1つ以上が、(1)アミノ酸なし、または(2)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されていること、および(ii)配列番号4の124〜140位の残基SSAKQRQLYKNRGFLPLの1つ以上が、(1)アミノ酸なし、または(2)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されていることのうちの1つまたは両方が当てはまる。
【0013】
残基WGDPIは、FGF21またはFGF23のいずれかの中に存在する1〜5個の隣接した残基で置換されてもよい。1〜5個の隣接した残基は、野生型FGF21アミノ酸配列中に存在してもよい。1〜5個の隣接した残基は、GQVであってもよい。さらに、WGDPI配列のトリプトファン残基は、欠失されてもよい。
【0014】
残基SGPHGLSSは、野生型FGF21または野生型FGF23アミノ酸配列のいずれかの中に存在する1〜8個の隣接した残基で置換されてもよい。1〜8個の隣接した残基は、野生型FGF21アミノ酸配列中に存在してもよい。1〜8個の隣接した残基は、DDAQQTEである。
【0015】
残基SSAKQRQLYKNRGFLPLは、野生型FGF21または野生型FGF23アミノ酸配列のいずれかの中に存在する1〜17個の隣接した残基で置換されてもよい。1〜17個の隣接した残基は、野生型FGF21アミノ酸配列中に存在してもよい。1〜17個の隣接した残基は、PGNKSPHRDPAPRGPであってもよい。
【0016】
特定の一実施形態では、配列番号4の16〜20位の残基WGDPIは、GQVで置換され、かつ(a)配列番号4の28〜35位の残基SGPHGLSSは、DDAQQTEで置換されること、および(b)配列番号4の124〜140位の残基SSAKQRQLYKNRGFLPLは、PGNKSPHRDPAPRGPで置換されることのうちの1つまたは両方が当てはまる。
【0017】
本明細書に提供されるキメラポリペプチドの他の実施形態では、配列番号4のポリペプチド足場は、N末端上で1〜5個のアミノ酸、C末端上で1〜15個のアミノ酸、またはN末端上で1〜15個のアミノ酸およびC末端上で1〜15個のアミノ酸の両方を切断される。キメラポリペプチドのさらに別の実施形態では、FGFR4媒介型シグナル伝達活性を減少させる修飾を除いて、キメラポリペプチドは、配列番号4と95%以上同一であるポリペプチド足場を含む。
【0018】
また、キメラポリペプチドをコードする核酸分子、ならびに核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞も開示される。
【0019】
また、キメラポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物も開示される。別の態様では、治療を必要とするヒト患者にかかる薬学的組成物を投与することを含む、糖尿病および肥満を治療する方法も開示される。
【0020】
また、開示されるキメラポリペプチドに特異的に結合する抗体も開示される。また、かかる抗体を含む、開示されるキメラポリペプチドの存在を検出するためのキットも開示される。
【0021】
また、IgG分子またはPEG分子のFc領域等の異質部分に融合されるキメラポリペプチドを含むキメラ融合ポリペプチドも開示される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】FGF19およびFGF21によるBrdUの組み込みを示す。図1Aは、FGF19およびFGF21処置動物からの肝臓切片を示す。
【図1B】FGF19およびFGF21によるBrdUの組み込みを示す。図1Bは、各試験群におけるBrdU標識組み込みを示す棒グラフである。
【図2A】FGFR1c(図2A)、FGFR2c(図2B)、FGFR3c(図2C)、およびFGFR4(図2D)の、FGF21またはFGF19媒介型活性を示す一連のウェスタンブロット。
【図2B】FGFR1c(図2A)、FGFR2c(図2B)、FGFR3c(図2C)、およびFGFR4(図2D)の、FGF21またはFGF19媒介型活性を示す一連のウェスタンブロット。
【図2C】FGFR1c(図2A)、FGFR2c(図2B)、FGFR3c(図2C)、およびFGFR4(図2D)の、FGF21またはFGF19媒介型活性を示す一連のウェスタンブロット。
【図2D】FGFR1c(図2A)、FGFR2c(図2B)、FGFR3c(図2C)、およびFGFR4(図2D)の、FGF21またはFGF19媒介型活性を示す一連のウェスタンブロット。
【図3A】FGF19のC末端で切断された形態の構造および活性を示す。図3Aは、FGF19のC末端で切断された形態の構造を図式化して示す図表である。
【図3B】FGF19のC末端で切断された形態の構造および活性を示す。図3Bは、FGFR4またはFGFR1cの、FGF19または切断されたFGF19媒介型活性を示す一連のウェスタンブロットである。
【図3C】FGF19のC末端で切断された形態の構造および活性を示す。図3Cは、FGF19またはFGF19の切断された形態によるBrdU組み込みを示す棒グラフである。
【図4A】複数のFGF19/FGF21キメラポリペプチドの構造、ならびに各々のFGFR4媒介型活性およびBrdU組み込みに及ぼす影響を示す。図4Aは、FGF19/21−1、FGF19/21−2、FGF19/21−3、FGF19/21−4、およびFGF19/21−5キメラタンパク質の図式化表示であり、FGF19は白色で示され、FGF21は灰色で示される。
【図4B】複数のFGF19/FGF21キメラポリペプチドの構造、ならびに各々のFGFR4媒介型活性およびBrdU組み込みに及ぼす影響を示す。図4Bは、FGF19/21−1、FGF19/21−2、FGF19/21−3、FGF19/21−4、およびFGF19/21−5キメラポリペプチドの、FGFR1c(上部パネル)およびFGFR4(下部パネル)媒介型活性に及ぼす影響を示す一連のウェスタンブロットである。
【図4C】複数のFGF19/FGF21キメラポリペプチドの構造、ならびに各々のFGFR4媒介型活性およびBrdU組み込みに及ぼす影響を示す。図4Cは、FGF19/21−1、FGF19/21−2、FGF19/21−3、FGF19/21−4、およびFGF19/21−5キメラポリペプチドの、グルコース取り込みに及ぼす影響を示すプロットである。
【図4D】複数のFGF19/FGF21キメラポリペプチドの構造、ならびに各々のFGFR4媒介型活性およびBrdU組み込みに及ぼす影響を示す。図4Dは、FGF19/21−1、FGF19/21−2、FGF19/21−3、FGF19/21−4、およびFGF19/21−5キメラポリペプチドによる、BrdUの組み込みを示す棒グラフである。
【図5A】FGF21/1938−42キメラポリペプチドの構造および活性を示し、ここでFGF21の残基42〜44は、FGF19の残基38〜42によって置換されている。図5Aは、キメラポリペプチドの図式化表示であり、FGF21は灰色で、FGF19は白色で示される。
【図5B】FGF21/1938−42キメラポリペプチドの構造および活性を示し、ここでFGF21の残基42〜44は、FGF19の残基38〜42によって置換されている。図5Bは、キメラFGF21/1938−42ポリペプチドのFGFR1cおよびFGFR4媒介型活性を示す一連のウェスタンブロットである。
【図5C】FGF21/1938−42キメラポリペプチドの構造および活性を示し、ここでFGF21の残基42〜44は、FGF19の残基38〜42によって置換されている。図5Cは、キメラFGF21/1938−42ポリペプチドによるBrdUの組み込みを示す棒グラフである。
【図6A】2つのキメラポリペプチド、つまりFGF21のいずれかの残基42〜44がFGF19の残基38〜42によって置換されたFGF21/1938−42キメラポリペプチド、およびFGF19の残基38〜42がFGF21の残基42〜44で置換されたFGF19/2142−44キメラポリペプチドの構造および活性を示す。図6Aは、キメラポリペプチドの図式化表示であり、FGFR4活性およびBrdU組み込みを示す。
【図6B】2つのキメラポリペプチド、つまりFGF21のいずれかの残基42〜44がFGF19の残基38〜42によって置換されたFGF21/1938−42キメラポリペプチド、およびFGF19の残基38〜42がFGF21の残基42〜44で置換されたFGF19/2142−44キメラポリペプチドの構造および活性を示す。図6Bは、FGF19(配列番号47)およびFGF21(配列番号48)の領域を示し、それらの部分配列(FGF19について配列番号49)は、2つのキメラポリペプチド、FGF21/1938−42およびFGF19/2142−44において交換されており、またFGF23(配列番号50)類似領域も示される。
【図6C】2つのキメラポリペプチド、つまりFGF21のいずれかの残基42〜44がFGF19の残基38〜42によって置換されたFGF21/1938−42キメラポリペプチド、およびFGF19の残基38〜42がFGF21の残基42〜44で置換されたFGF19/2142−44キメラポリペプチドの構造および活性を示す。図6Cは、FGF21/1938−42およびFGF19/2142−44キメラポリペプチドの、FGFR1cおよびFGFR4媒介型活性を示す一連のウェスタンブロットである。
【図6D−1】2つのキメラポリペプチド、つまりFGF21のいずれかの残基42〜44がFGF19の残基38〜42によって置換されたFGF21/1938−42キメラポリペプチド、およびFGF19の残基38〜42がFGF21の残基42〜44で置換されたFGF19/2142−44キメラポリペプチドの構造および活性を示す。図6Dは、ヘパリンの存在および非存在下での、FGFR4とFGF21/1938−42またはFGF19/2142−44との間の相互作用を測定する固相結合アッセイの結果を示す一連のプロットである。
【図6D−2】2つのキメラポリペプチド、つまりFGF21のいずれかの残基42〜44がFGF19の残基38〜42によって置換されたFGF21/1938−42キメラポリペプチド、およびFGF19の残基38〜42がFGF21の残基42〜44で置換されたFGF19/2142−44キメラポリペプチドの構造および活性を示す。図6Dは、ヘパリンの存在および非存在下での、FGFR4とFGF21/1938−42またはFGF19/2142−44との間の相互作用を測定する固相結合アッセイの結果を示す一連のプロットである。
【図6E】2つのキメラポリペプチド、つまりFGF21のいずれかの残基42〜44がFGF19の残基38〜42によって置換されたFGF21/1938−42キメラポリペプチド、およびFGF19の残基38〜42がFGF21の残基42〜44で置換されたFGF19/2142−44キメラポリペプチドの構造および活性を示す。図6Eは、PBS、2mg/kg/日の組み換えFGF19、FGF21/1938−42、またはFGF19/2142−44で6日間処置されたメスFVBマウスからの肝臓の、BrdU免疫染色の半定量的分析の結果を示す棒グラフである。
【図7】FGF19、ならびにFGF21(β1〜β2ループ領域、配列番号53、下線付きループ、配列番号54;β10〜β12セグメント領域、配列番号57、下線付きセグメント、配列番号60)およびFGF23(β1〜β2ループ領域配列番号55、ループ下線付き配列番号56;β10〜β12セグメント領域、配列番号61、下線付きセグメント、配列番号62)の類似配列における、β1〜β2ループ領域(配列番号51)およびループ自体(下線付き、配列番号52)、ならびにβ10〜β12セグメント領域(配列番号57)およびセグメント自体(下線付き、配列番号58)を示す。
【図8A】3つのキメラポリペプチド、FGF19−1、FGF19−2、およびFGF19−3の構造および活性を示し、ここでFGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており(FGF19−1)、FGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されているか(FGF−2)、あるいはFGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており、FGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されている(FGF19−3)。図8Aは、3つのキメラポリペプチドFGF19−1、FGF19−2、およびFGF19−3の図式化表示である。
【図8B】3つのキメラポリペプチド、FGF19−1、FGF19−2、およびFGF19−3の構造および活性を示し、ここでFGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており(FGF19−1)、FGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されているか(FGF−2)、あるいはFGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており、FGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されている(FGF19−3)。図8Bは、ヘパリンの存在および非存在下での、FGF19−1、FGF19−2、およびFGF19−3コンストラクトのグルコース低下効果を示す一連のプロットである。
【図8C】3つのキメラポリペプチド、FGF19−1、FGF19−2、およびFGF19−3の構造および活性を示し、ここでFGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており(FGF19−1)、FGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されているか(FGF−2)、あるいはFGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており、FGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されている(FGF19−3)。図8Cは、βKlothoの存在および非存在下での、FGF19−1、FGF19−2、およびFGF19−3コンストラクトのグルコース低下効果を示す一連のプロットである。
【図8D】3つのキメラポリペプチド、FGF19−1、FGF19−2、およびFGF19−3の構造および活性を示し、ここでFGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており(FGF19−1)、FGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されているか(FGF−2)、あるいはFGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており、FGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されている(FGF19−3)。図8Dは、βKlothoの存在および非存在下での、FGF19−1、FGF19−2、およびFGF19−3キメラポリペプチドの、FGFR1cおよびFGFR4媒介型活性を示す一連のウェスタンブロットである。
【図8E】3つのキメラポリペプチド、FGF19−1、FGF19−2、およびFGF19−3の構造および活性を示し、ここでFGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており(FGF19−1)、FGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されているか(FGF−2)、あるいはFGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており、FGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されている(FGF19−3)。図8Eは、FGF19およびFGF19−1によって媒介されるBrdU組み込みを示す棒グラフである。
【図9A】3つのキメラポリペプチドFGF19−4、FGF19−5、およびFGF19−6の構造および活性を示し、ここでFGF19の残基38〜42は、FGF21の残基42〜44で置換されており、かつFGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており(FGF19−4)、FGF19の残基38〜42は、FGF21の残基42〜44で置換されており、かつFGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されており(FGF19−5)、またFGF19の残基38〜42は、FGF21の残基42〜44で置換されており、FGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており、かつFGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されている(FGF19−6)。図9Aは、3つのキメラポリペプチドFGF19−4、FGF19−5、およびFGF19−6の図式化表示である。
【図9B】3つのキメラポリペプチドFGF19−4、FGF19−5、およびFGF19−6の構造および活性を示し、ここでFGF19の残基38〜42は、FGF21の残基42〜44で置換されており、かつFGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており(FGF19−4)、FGF19の残基38〜42は、FGF21の残基42〜44で置換されており、かつFGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されており(FGF19−5)、またFGF19の残基38〜42は、FGF21の残基42〜44で置換されており、FGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており、かつFGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されている(FGF19−6)。図9Bは、βKlothoの存在および非存在下での、FGF19−4、FGF19−5、およびFGF19−6キメラポリペプチドのFGFR1c、およびFGFR4媒介型活性を示す一連のウェスタンブロットである。
【図9C】3つのキメラポリペプチドFGF19−4、FGF19−5、およびFGF19−6の構造および活性を示し、ここでFGF19の残基38〜42は、FGF21の残基42〜44で置換されており、かつFGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており(FGF19−4)、FGF19の残基38〜42は、FGF21の残基42〜44で置換されており、かつFGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されており(FGF19−5)、またFGF19の残基38〜42は、FGF21の残基42〜44で置換されており、FGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されており、かつFGF19の残基146〜162は、FGF21の残基147〜161で置換されている(FGF19−6)。図9Cは、FGF19、ならびにFGF19−4、FGF19−5、およびFGF19−6によって媒介されるBrdU組み込みを示す棒グラフである。
【図10A】FGF19、FGF19−1、およびFGF19−4に関して行われた複数のアッセイの結果を示す一連のプロット。図10Aは、3T3L1細胞ベースのアッセイにおいて、グルコース取り込みに及ぼすFGF19およびFGF19−4キメラポリペプチドの影響を示す。
【図10B−1】FGF19、FGF19−1、およびFGF19−4に関して行われた複数のアッセイの結果を示す一連のプロット。図10Bは、ob/obマウスモデルにおいて、血漿グルコースに及ぼすFGF19およびFGF19−4の影響を示す。
【図10B−2】FGF19、FGF19−1、およびFGF19−4に関して行われた複数のアッセイの結果を示す一連のプロット。図10Bは、ob/obマウスモデルにおいて、血漿グルコースに及ぼすFGF19およびFGF19−4の影響を示す。
【図10C】FGF19、FGF19−1、およびFGF19−4に関して行われた複数のアッセイの結果を示す一連のプロット図10Cは、3T3L1細胞ベースのアッセイにおいて、グルコース取り込みに及ぼすFGF19およびFGF19−1キメラポリペプチドの影響を示す。
【図10D】FGF19、FGF19−1、およびFGF19−4に関して行われた複数のアッセイの結果を示す一連のプロット。図10Dは、ob/obマウスモデルにおいて、血漿グルコースに及ぼすFGF19およびFGF19−1の影響を示す。
【図11】種々のFGF19/21キメラタンパク質の薬物動態特性を示すプロット。
【図12】FGFR1cおよびFGFR4に対してWGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する、種々のFGF19変異体の結合反応を示す表。
【図13A】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c誘発性活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図13B】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c誘発性活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図13C】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c誘発性活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図13D】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c誘発性活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図13E】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c誘発性活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図13F】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c誘発性活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図13G】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c誘発性活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図13H】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c誘発性活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図13I】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c誘発性活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図13J】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c誘発性活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図13K】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c誘発性活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図14A】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、33、67、および200nMの濃度で試験された。
【図14B】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、33、67、および200nMの濃度で試験された。
【図14C】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、33、67、および200nMの濃度で試験された。
【図14D】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、33、67、および200nMの濃度で試験された。
【図14E】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、33、67、および200nMの濃度で試験された。
【図14F】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、33、67、および200nMの濃度で試験された。
【図14G】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、33、67、および200nMの濃度で試験された。
【図14H】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR1c媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、33、67、および200nMの濃度で試験された。
【図15A】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図15B】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図15C】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図15D】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図15E】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図15F】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図15G】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図15H】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図15I】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図15J】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図15K】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、16、および100nMの濃度で試験された。
【図16A】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、22、67、および200nMの濃度で試験された。
【図16B】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、22、67、および200nMの濃度で試験された。
【図16C】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、22、67、および200nMの濃度で試験された。
【図16D】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、22、67、および200nMの濃度で試験された。
【図16E】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、22、67、および200nMの濃度で試験された。
【図16F】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、22、67、および200nMの濃度で試験された。
【図16G】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、22、67、および200nMの濃度で試験された。
【図16H】WGDPI領域内で1つ以上の突然変異または欠失を有する複数のFGF19変異体のFGFR4媒介型活性を示す一連の棒グラフ。各コンストラクトは、0、2.5、7.4、22、67、および200nMの濃度で試験された。
【発明を実施するための形態】
【0023】
構成的肝細胞増殖は、形質転換のための必須条件であることが示唆されている(Fausto,(1999)Seminars in Liver Disease19:243−252)。したがって、FGF19トランスジェニック動物において、ならびに組み換えFGF19の6回の連日注射に供された正常なマウスにおいて、強化されたBrdU標識によって測定されたときの、中心周囲の肝細胞の増殖における劇的な増加が生後2〜4ヶ月の早期で観察されたことに留意される(Nicholes et al.,(2002)Am.J.Pathol.160:2295−2307)。FGF19誘発性腫瘍の細胞系統分析は、中心静脈周辺に由来する形成異常および腫瘍性が、BrdU標識によって観察された増加した中心周囲の増殖と一致することを示唆する(Nicholes et al.,(2002)Am.J.Pathol.160:2295−2307)。したがって比較的短いBrdU標識アッセイは、これらの分子の体内の分裂促進潜在性を研究するマーカーとしての役割を果たすことができた。FGF21は、体外での細胞増殖に対する潜在性を欠くことが示されている(Kharitonenkov et al.,(2005)J.Clin.Invest.115:1627−1635)。
【0024】
FGF19、FGF21、FGF23サブファミリーに対する受容体が近年解明されている。FGF19およびFGF21の両方は、FGFR1c、2c、および3cを通じて媒介されるシグナル伝達に必要とされる共受容体として、単一の膜貫通タンパク質であるβKlothoを利用する(Kurosu&Kuro−o,(2009)Mol.Cell.Endocrinol.299:72−78)。FGFR1cおよび2cは、脂肪組織内で発現される優性受容体であるため、FGF19またはFGF21のいずれかでの処置時の、体外および体内での脂肪細胞中のERKリン酸化の誘発および増加したグルコース取り込みは、脂肪細胞中のβKlothoと複合されたこれらの受容体を通じて媒介された可能性がある(Kurosu et al.,(2007)J.Biol.Chem.282:26687−26695)。これらの類似点にもかかわらず、FGFR4に関して、FGF19とFGF21との間で主要な差異が存在する。FGF19およびFGF21の両方は、βKlotho/FGFR4複合体に結合することができると思われるが、FGF19のみがFGFR4を通じて効率的にシグナル伝達する(Kurosu et al.,(2007)J.Biol.Chem.282:26687−26695)。これらの体外での観察と一致するように、FGF19は、肝臓ERKリン酸化を活性化し、それは肝臓で発現される優性受容体であるFGFR4を通じて媒介される可能性があるが、FGF21はそれを活性化しない(Kurosu et al.,(2007)J.Biol.Chem.282:26687−26695)。加えて、FGFR4が肝細胞癌進行に寄与し得ることが示唆されており、肝細胞癌バイオマーカーである増加したアルファ−フェトプロテインの生成がFGF19刺激性肝臓癌細胞株で観察されている(Ho et al.,(2009)J.Hepatol.50:118−127)。
【0025】
本明細書に記載される通り、C末端で切断されたFGF19ならびに一連のFGF19およびFGF21キメラタンパク質が調製されたが、FGFR4活性に関与するFGF19において3つの領域を特定することが可能であった。BrdU組み込みによって示される、FGFR4活性と肝細胞増殖との間の相関が開示される。これらの結果は、体内の肝臓FGFR4活性と肝細胞増殖との間の直接的関連を提供する。さらに、FGF19と対照的に、FGF21は、FGFR4を活性化せず、体内で肝細胞増殖を誘発しないことが開示され、本明細書に開示されるFGF19の種々の形態を、肥満、糖尿病、および脂質異常症等の治療代謝疾患のための固有の潜在的治療アプローチにしている。
【0026】
実施例を含む本明細書で使用される組み換え核酸方法は、概して、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)またはCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.,Green Publishers Inc.and Wiley and Sons 1994)に記載され、それらの全ては、任意の目的で参照により本明細書に援用される。
【0027】
I. 定義
【0028】
本明細書で使用される「a」および「an」という用語は、別途記載のない限り1つ以上を意味する。
【0029】
本明細書で使用される「キメラポリペプチド」という用語は、1〜20個の隣接したアミノ酸を含む1つ以上の領域の少なくとも1個のアミノ酸が、アミノ酸なし、または野生型ポリペプチド足場の領域内の置換されたアミノ酸の位置で見出されないアミノ酸のいずれかで置換されている、ポリペプチド足場を指す。キメラポリペプチドの一例では、FGF19ポリペプチド足場の残基38〜42は、FGF21ポリペプチドからの3つの残基、例えば、FGF21の42〜44位で見出されるGQVで、またはFGF23ポリペプチドからの3つの残基、例えば、FGF23の36〜38位で見出されるWGGで置換される。別の例では、FGF19ポリペプチド足場の38位のトリプトファン残基は、トリプトファン以外のアミノ酸で置換される。
【0030】
本明細書で使用される「単離された核酸分子」という用語は、(1)タンパク質、脂質、炭水化物、もしくは源の細胞から全核酸が単離されるときそれと共に自然に見出される他の物質の、少なくとも約50、60、70、80、90、95パーセント以上から分離されている、(2)「単離された核酸分子」が自然に結合するポリヌクレオチドの全てもしくは一部に結合されない、(3)自然には結合されないポリヌクレオチドに操作可能に結合される、または(4)より大きなポリヌクレオチド配列の一部として自然には発生しない、本開示の核酸分子を指す。好ましくは、本発明の単離された核酸分子は、ポリペプチドの生成における使用、または治療的、診断的、予防的、もしくは研究的使用を妨げるであろう、任意の他の汚染核酸分子あるいはその自然環境において見出される他の汚染物質を実質的に含まない。
【0031】
「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、概して本明細書で交換可能に使用され、典型的なポリヌクレオチドに水素結合することができる塩基を支持する骨格を有するポリマー分子を指し、ここでポリマー骨格は、ポリマー分子と典型的なポリヌクレオチド(例えば、1本鎖DNA)との間の配列特異的な様式で、かかる水素結合を可能にするような様態で塩基を提示する。一般的な塩基には、イノシン、アデノシン、グアノシン、シトシン、ウラシル、およびチミジンが含まれる。
【0032】
本明細書で使用される「単離されたポリペプチド」という用語は、(1)ポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、もしくは源の細胞から全核酸が単離されるときそれと共に自然に見出される他の物質の、少なくとも約50、60、70、80、90、95パーセント以上から分離されている、(2)「単離されたポリペプチド」が自然に結合するポリペプチドの全てもしくは一部に結合(共有結合性相互作用または非共有結合性相互作用によって)されない、(3)自然には結合されないポリペプチドに操作可能に結合される(共有結合性相互作用または非共有結合性相互作用によって)、または(4)自然には発生しない、本発明のポリペプチドを指す。好ましくは、単離されたポリペプチドは、その治療的、診断的、予防的、もしくは研究的使用を妨げるであろう、任意の他の汚染ポリペプチドまたはその自然環境において見出される他の汚染物質を本質的に含まない。
【0033】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、交換可能に使用され、ペプチド結合によって結合された1本鎖のアミノ酸残基からなる化合物を指す。ポリペプチドまたはタンパク質は、非自然発生アミノ酸およびアミノ酸誘導体を含んでもよいが、その必要はない。タンパク質またはポリペプチド(本明細書に開示されるキメラポリペプチドを含む)中に挿入することができる非自然発生アミノ酸の非限定的例としては、β−アミノ酸、ホモアミノ酸、環状アミノ酸、および誘導体化された側鎖を有するアミノ酸が挙げられる。例えば、パラ−アセチル−フェニルアラニン、パラ−アジド−フェニルアラニン、パラ−ブロモ−フェニルアラニン、パラ−ヨード−フェニルアラニンおよびパラ−エチニル−フェニルアラニン、シトルリン(Cit)、ホモシトルリン(hCit)、Nα−メチルシトルリン(NMeCit)、Nα−メチルホモシトルリン(Nα−MeHoCit)、オルニチン(Orn)、Nα−メチルオルニチン(Nα−MeOrnまたはNMeOrn)、サルコシン(Sar)、ホモリジン(hLysまたはhK)、ホモアルギニン(hArgまたはhR)、ホモグルタミン(hQ)、Nα−メチルアルギニン(NMeR)、Nα−メチルロイシン(Nα−MeLまたはNMeL)、N−メチルホモリジン(NMeHoK)、Nα−メチルグルタミン(NMeQ)、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン(Nva)、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(Tic)、オクタヒドロインドール−2−カルボン酸(Oic)、3−(1−ナフチル)アラニン(1−Nal)、3−(2−ナフチル)アラニン(2−Nal)、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(Tic)、2−インダニルグリシン(IgI)、パラ−ヨードフェニルアラニン(pI−Phe)、パラ−アミノフェニルアラニン(4AmPまたは4−アミノ−Phe)、4−グアニジノフェニルアラニン(Guf)、グリシルリジン(「K(Nε−グリシル)」または「K(グリシル)」または「K(gly)」と略される)、ニトロフェニルアラニン(nitrophe)、アミノフェニルアラニン(aminopheまたはAmino−Phe)、ベンジルフェニルアラニン(benzylphe)、γ−カルボキシグルタミン酸(γ−carboxyglu)、ヒドロキシプロリン(hydroxypro)、p−カルボキシ−フェニルアラニン(Cpa)、α−アミノアジピン酸(Aad)、Nα−メチルバリン(NMeVal)、N−α−メチルロイシン(NMeLeu)、Nα−メチルノルロイシン(NMeNle)、シクロペンチルグリシン(Cpg)、シクロヘキシルグリシン(Chg)、アセチルアルギニン(acetylarg)、α,β−ジアミノプロピオン酸(Dpr)、α,γ−ジアミノ酪酸(Dab)、ジアミノプロピオン酸(Dap)、シクロヘキシルアラニン(Cha)、4−メチル−フェニルアラニン(MePhe)、β,β−ジフェニル−アラニン(BiPhA)、アミノ酪酸(Abu)、4−フェニル−フェニルアラニン(またはビフェニルアラニン、4Bip)、α−アミノ−イソ酪酸(Aib)、β−アラニン、β−アミノプロピオン酸、ピペリジン酸、アミノカプロン酸、アミノヘプタン酸、アミノピメリン酸、デスモシン、ジアミノピメリン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン酸、ヒドロキシリジン、アロ−ヒドロキシリジン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン、N−メチルイソロイシン、N−メチルバリン、4−ヒドロキシプロリン(Hyp)、γ−カルボキシグルタミン酸、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、ω−メチルアルギニン、4−アミノ−O−フタル酸(4APA)、および他の同様のアミノ酸、ならびに具体的に列挙されたアミノ酸のうちのいずれかの誘導体化された形態が挙げられる(L型またはD型、括弧内は省略形)。
【0034】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、宿主細胞にコード情報を伝えるために使用される任意の分子(例えば、核酸、プラスミド、またはウイルス)を指して使用される。
【0035】
本明細書で使用される「発現ベクター」という用語は、宿主細胞の形質転換に好適であり、挿入された異種核酸配列の発現を指揮するおよび/または制御する核酸配列を含有するベクターを指す。発現は、これらに限定されないが、転写、翻訳、およびRNAスプライシング(イントロンが存在する場合)等のプロセスを含む。
【0036】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、形質転換されているか、または核酸配列を用いて形質転換され、次いで、選択された目的の遺伝子を発現することが可能な細胞を指して使用される。この用語は、選択された遺伝子が存在する限り、子孫が形態または遺伝的構造においてその元の親と同一であるかどうかにかかわらず、親細胞の子孫を含む。
【0037】
本明細書で使用される「自然発生」という用語は、核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞等の生物学的物質に関連して使用される場合、自然に見出され、ヒトによって操作されていない物質を指す。同様に、本明細書で使用される「非自然発生」という用語は、自然に見出されないか、またはヒトによって構造的に修飾もしくは合成された物質を指す。ヌクレオチドに関連して使用される場合、「自然発生」という用語は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン、(G)、チミン(T)、およびウラシル(U)の塩基を指す。アミノ酸に関連して使用される場合、「自然発生」という用語は、アラニン(A)、システイン(C)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、リジン(K)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、セリン(S)、スレオニン(T)、バリン(V)、トリプトファン(W)、およびチロシン(Y)の20個のアミノ酸を指す。
【0038】
本明細書で使用される「FGF19ポリペプチド」という用語は、ヒトを含む任意の種において発現されるポリペプチドを指す。本開示の目的のために、「FGF19ポリペプチド」という用語は、216個のアミノ酸残基からなり、配列番号1のヌクレオチド配列によってコードされる、任意の完全長FGF19ポリペプチド、例えば、配列番号2、および194個のアミノ酸残基からなり、配列番号3のヌクレオチド配列によってコードされ、かつ完全長FGF19ポリペプチドのアミノ末端で22個のアミノ酸残基(すなわち、単一のペプチドを構成する残基)が除去されている、ポリペプチドの任意の成熟型、例えば、配列番号4を指して、交換可能に使用することができる。成熟FGF19ポリペプチドの細菌発現型は、配列番号5のヌクレオチドから生成することができ、配列番号6のアミノ酸配列を有し、それはN末端メチオニン残基を含むであろう。「FGF19ポリペプチド」は、例えば、配列番号1、3、および5、ならびに遺伝的コードの縮重に起因して、配列番号1、3、および5のポリヌクレオチド配列からの1つ以上の塩基によって変化させられるポリヌクレオチド配列を有する任意のポリヌクレオチド配列、ならびに配列番号1、3、および5の対立遺伝子変異体によってコードすることができる。また、「FGF19ポリペプチド」という用語は、自然発生のFGF19変異体も包含する。「FGF19」ポリペプチドは、1つ以上の非自然発生アミノ酸を組み込むことができるが、その必要はない。
【0039】
本明細書で使用される「FGF21ポリペプチド」という用語は、ヒトを含む任意の種において発現されるポリペプチドを指す。本開示の目的のために、「FGF21ポリペプチド」という用語は、209個のアミノ酸残基からなり、配列番号7のヌクレオチド配列によってコードされる任意の完全長FGF21ポリペプチド、例えば、配列番号8;181個のアミノ酸残基からなり、配列番号9のヌクレオチド配列によってコードされ、かつ完全長FGF21ポリペプチドのアミノ末端で28個のアミノ酸残基(すなわち、単一のペプチドを構成する残基)が除去されている、ポリペプチドの任意の成熟型、例えば、配列番号10を指して、交換可能に使用することができる。成熟FGF21ポリペプチドの細菌発現型は、配列番号11のヌクレオチドから生成することができ、配列番号12のアミノ酸配列を有し、N末端メチオニン残基を含むであろう。「FGF21ポリペプチド」は、例えば、配列番号7、9、および11、ならびに遺伝的コードの縮重に起因して、配列番号7、9、および11のポリヌクレオチド配列からの1つ以上の塩基によって変化させられるポリヌクレオチド配列を有する任意のポリヌクレオチド配列、ならびに配列番号7、9、および11の対立遺伝子変異体によってコードすることができる。また、「FGF21ポリペプチド」という用語は、自然発生の変異体も包含する。「FGF21」ポリペプチドは、1つ以上の非自然発生アミノ酸を組み込むことができるが、その必要はない。
【0040】
本明細書で使用される「FGF23ポリペプチド」という用語は、ヒトを含む任意の種において発現されるポリペプチドを指す。本開示の目的のために、という用語は、「FGF23ポリペプチド」という用語は、251個のアミノ酸残基からなり、配列番号13のヌクレオチド配列によってコードされる任意の完全長FGF23ポリペプチド、例えば、配列番号14;227個のアミノ酸残基からなり、配列番号15のヌクレオチド配列によってコードされ、かつ完全長FGF23ポリペプチドのアミノ末端で24個のアミノ酸残基(すなわち、単一のペプチドを構成する残基)が除去されている、ポリペプチドの任意の成熟型、例えば、配列番号16を指して、交換可能に使用することができる。成熟FGF23ポリペプチドの細菌発現型は、配列番号18のヌクレオチドから生成することができ、配列番号17のアミノ酸配列を有し、N末端メチオニン残基を含むであろう。「FGF23ポリペプチド」は、例えば、配列番号13、15、および17、ならびに遺伝的コードの縮重に起因して、配列番号13、15、および17のポリヌクレオチド配列からの1つ以上の塩基によって変化させられるポリヌクレオチド配列を有する任意のポリヌクレオチド配列、ならびに配列番号13、15、および17の対立遺伝子変異体によってコードすることができる。また、「FGF23ポリペプチド」という用語は、自然発生の変異体も包含する。「FGF23」ポリペプチドは、1つ以上の非自然発生アミノ酸を組み込むことができるが、その必要はない。
【0041】
本明細書で使用される「有効量」および「治療上有効量」という用語は、各々、ヒトまたは非ヒト対象における、血糖値、インスリン、トリグリセリド、もしくはコレステロールレベルを低下させる能力、体重を減少させる能力、または耐糖能、エネルギー消費量、もしくはインスリン感受性を改善する能力等の、野生型ポリペプチド足場の1つ以上の生物学的活性の観察可能なレベルを維持するために使用される、本明細書に開示されるキメラポリペプチドの量を指す。
【0042】
本明細書で使用される本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」または「生理学的に許容される担体」という用語は、本明細書に開示されるキメラポリペプチドの送達を達成または強化するために好適な1つ以上の製剤用物質を指す。
【0043】
本明細書で使用される「生物学的活性」および「生物学的に活性な」という用語は、ポリペプチド足場または本開示のキメラポリペプチドに関連して使用される場合、ポリペプチド足場またはキメラポリペプチドが、血糖値、インスリン、トリグリセリド、もしくはコレステロールを低下させる能力、体重を減少させる能力、または耐糖能、エネルギー消費量を改善する、もしくはインスリン感受性を強化する能力等の、ポリペプチド足場の活性を有することを意味する。ポリペプチド足場と比較して幾らか減少したレベルの活性を有するキメラポリペプチドは、それにもかかわらず生物学的に活性なキメラポリペプチドであると見なすことができる。生物学的活性の特定の一例としては、実施例10に示される体外グルコース取り込みアッセイにおいて、3T3L1細胞中のグルコース取り込みを、基底レベルよりも1.2倍以上増加させる能力が挙げられる。
【0044】
本明細書で使用される「ポリペプチド足場」という用語は、本明細書に記載のキメラポリペプチドを形成するように修飾されているポリペプチドを意味する。キメラポリペプチドの塩基を形成することができるポリペプチド足場の例としては、野生型FGF19、FGF21、およびFGF23ポリペプチド配列が挙げられる。
【0045】
本明細書で使用される「保存的アミノ酸置換」という用語は、その位置のアミノ酸残基の極性または電荷に影響がほとんどないかもしくは全くないように、天然アミノ酸残基(すなわち、野生型ポリペプチド足場配列の所与の位置に見出される残基)を非天然残基(すなわち、野生型ポリペプチド足場配列の所与の位置に見出されない残基)と置換することを意味する。また、保存的アミノ酸置換は、生体系における合成ではなく、典型的には化学的合成によって組み込まれる非自然発生アミノ酸残基も包含する。これらは、ペプチド模倣体、およびアミノ酸部分の他の逆転または反転した形態を含む。
【0046】
自然発生残基は、共通する側鎖特性に基づいて次のクラスに分類することができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg、
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro、および
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0047】
保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーと同じクラスの別のメンバーとの交換を含むことができる。非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーと別のクラスのメンバーとの交換を含むことができる。
【0048】
所望のアミノ酸置換(保存的または非保存的のいずれか)は、かかる置換が所望される場合に当業者によって決定されてもよい。アミノ酸置換の例示的な(しかし、限定的ではない)リストを表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
II. キメラポリペプチド
【0051】
本開示の一態様では、一連のキメラポリペプチドが説明される。これらのキメラポリペプチドは、野生型FGF19、FGF21、またはFGF23ポリペプチド足場に基づき、ここでポリペプチド足場の1〜20個のアミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアミノ酸の隣接した領域内の残基のうちの1つ以上は、(a)アミノ酸なし(欠失)、または(b)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸(すなわち、置換または突然変異)で置換されている。
【0052】
ポリペプチド足場の特定の生物学的活性に対して調節効果を有することに加えて、本明細書に記載されるキメラポリペプチドは、体内の血糖値を低下させる能力等の、他の保持されたまたは強化されたポリペプチド足場の生物学的活性を有することができる。例えば、本明細書に開示されるキメラポリペプチドは、強化されたまたは減少したFGFR4活性の程度を示し、なおかつポリペプチド足場に固有の任意のグルコース低下効果を保持することができ、潜在的にかかる分子を、修飾されていないポリペプチド足場よりも治療上より魅力的なものとする。FGF19ポリペプチド足場の場合、例えば、FGF19足場上に構築されるキメラポリペプチドは、同時にFGF19に固有のグルコース低下効果を依然として示しながら、FGFR4を活性化する減少した能力および/または減少した肝細胞分裂促進性を有することができる。別の例では、FGF21足場上に構築されるキメラポリペプチドは、FGF21に固有のグルコース低下効果を同時に示しながら、FGFR4を活性化する増加した能力および/または強化された肝細胞分裂促進性を有することができる。したがって、幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチドは、所定の状況で望ましいと見なされる特性が維持または増大されている一方で、同一の状況で望ましくないと見なされる特性が減少または排除されている分子を含む。
【0053】
開示されるキメラポリペプチドのいずれかにおいて、置換は、任意の自然または非自然発生アミノ酸を含んでもよい。かかる置換は、本明細書に記載の通り保存的置換であってもよく、または非保存的置換であってもよい。特定の効果を妨害することが所望される場合には、所定の位置で非保存的置換を行うか、または非自然発生アミノ酸を挿入することが望ましい可能性がある。他の場合には、保存的置換は、特定の効果を所望の程度に軽減または強化することができる。さらに他の場合には、1つ以上の位置でのアミノ酸なしの置換(欠失)が、特定の効果を所望の程度に軽減または強化することができる。
【0054】
2つ以上のアミノ酸残基がアミノ酸またはアミノ酸なしで置換されている、ポリペプチド足場の隣接した領域の長さにわたって、任意の組み合わせを制限なしに用いることができる。つまり、隣接した領域内の2つ以上のアミノ酸は、アミノ酸なし、自然発生アミノ酸、非自然発生アミノ酸、保存的置換、非保存的置換、またはそれらの任意の組み合わせで置換することができる。実際、場合によっては、足場の同一の領域内の1つ以上の他の位置での保存的および/または非保存的置換を伴うポリペプチド足場の領域内の所定の位置での欠損は、特定の効果を所望の程度に軽減または強化することができ、キメラポリペプチドの活性に対するある程度の制御を可能にする。
【0055】
したがって、本開示は、所望の効果または特性を完全に付与するキメラポリペプチドだけでなく、所望の効果または特性を部分的に付与するキメラポリペプチドもまた包含する。例えば、本開示は、通常FGF19ポリペプチド足場に関連する分裂促進性またはFGFR4活性等の効果を完全に排除するキメラポリペプチド、および状況によっては望ましい可能性がある、同一の効果を部分的に排除するキメラポリペプチドの両方を包含する。また、状況によっては望ましい可能性がある、分裂促進性またはFGFR4活性等の効果を強化するキメラポリペプチドも包含される。
【0056】
本明細書に開示されるキメラポリペプチドの生物学的活性は、所望の計量に適切な任意のアッセイでアッセイすることができる。例えば、体外または体内のERKまたはFRS2アッセイ等の結合アッセイを用いて、FGFR活性を検査することができ、標的遺伝子発現分析を体外または体内で行うことができ、グルコース取り込みを脂肪細胞中で研究することができ、本明細書の実施例2.3および10で示される通り、グルコース低下能力、体重、血漿脂質プロフィール、エネルギー消費量に及ぼす影響を、他の体外または体内機能アッセイで研究することができる。また、試験動物の肝臓におけるBrdU組み込みを検査する病理組織学的分析を含む、種々の体内アッセイを利用して、ポリペプチド足場およびキメラポリペプチド生物学的活性を研究することができる。このアッセイは、実施例2.4に示され、例示的結果は、図1Aに示される。
【0057】
II.A. FGFR4を通じてシグナル伝達しないキメラポリペプチド
【0058】
本開示は、FGFR4を通じてシグナル伝達しないキメラポリペプチドに関する。一実施形態では、単離されたキメラポリペプチドは、FGFR4を通じてシグナル伝達しないように修飾された、野生型FGF19(例えば、配列番号2、4、または6)ポリペプチド足場のアミノ酸配列を含む。本明細書に提示される実施例に示される通り、3つの領域またはそれらのサブセット、つまり配列番号2の残基38〜42、50〜57、および146〜162(配列番号4の残基16〜20、28〜35、および124〜140、ならびに配列番号6の残基17〜21、29〜36、および125〜141)は、FGF19ポリペプチド足場におけるFGFR4シグナル伝達のために十分である。しがたって、FGFR4ではなくFGFR1cを通じてシグナル伝達するFGF19ポリペプチド足場に基づくキメラポリペプチドは、これらの修飾された領域のうちの少なくとも1つを有するであろう。一例では、FGF19ポリペプチド足場のこれらの領域のうちの少なくとも1つは、領域内の少なくとも1つのアミノ酸を、アミノ酸なしまたは足場の領域内の位置で見出されないアミノ酸のいずれかで置換することによって修飾することができる。したがって、この例では、FG19足場の残基38〜42の少なくとも1つの残基は、アミノ酸なしまたは足場内の位置で見出されないアミノ酸のいずれかで置換されるであろう。特定の一実施形態では、38位のトリプトファン残基は、トリプトファン以外の残基に突然変異させられるか、または欠失される(実施例12参照)。
【0059】
同様に、FGFR1cではなくFGFR4を通じてシグナル伝達する能力を付与することが所望される場合、配列番号2の残基38〜42、50〜57、および146〜162(配列番号4の残基16〜20、28〜35、および124〜140、ならびに配列番号6の残基17〜21、29〜36、および125〜141)を使用して、FGF21またはFGF23ポリペプチド足場等の非FGF19ポリペプチド足場の類似領域を置換することができる。
【0060】
FGF19の開示される領域は、FGFR4媒介型シグナル伝達のために十分であるが、FGF19の追加的な領域もまたFGFR4媒介型シグナル伝達に寄与し得ることに留意される。本開示は、したがって、足場ポリペプチドの追加的な残基および/または領域が、開示される領域と併せて、FGFR4媒介型シグナル伝達において役割を果たし得ることを考察する。したがって、それらの領域における置換および/または欠失を含むキメラポリペプチドは、本開示の実施形態を形成する。
【0061】
II.B. FGF19残基38〜42を欠くまたは組み込むキメラポリペプチド
【0062】
一態様では、本開示は、FGF21ポリペプチド足場に基づくキメラポリペプチドに関する。一実施形態では、かかるキメラポリペプチドは、野生型FGF21(例えば、配列番号8、10、および12)ポリペプチド足場のアミノ酸配列を含み、ここで配列番号8の42〜44位のGQVの残基のうちの1つ以上(配列番号10の14〜16位および配列番号12の15〜17位)は、(a)アミノ酸なし(欠失)、または(b)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されている。別の例では、野生型FGF21ポリペプチド(すなわち、GQV)の42〜44位の残基は、野生型FGF19配列(すなわち、WGDPI)(配列番号49)の38〜42位の残基によって置換される。この特定のキメラポリペプチドでは、FGF21ポリペプチド足場の領域内の3つの残基が、FGF19ポリペプチドからの5つの残基によって置換され、ポリペプチド足場内の特定の位置の特定の残基を、1つを超えるアミノ酸で置換する、すなわち、領域内の3つのアミノ酸を5つのアミノ酸で置換する選択肢を強調していることに留意される。
【0063】
また、本開示は、FGF19ポリペプチド足場に基づくキメラポリペプチドにも関する。一実施形態では、かかるキメラポリペプチドは、野生型FGF19(配列番号2、4、または6)ポリペプチド足場のアミノ酸配列を含み、ここで配列番号2の38〜42位のWGDPI(配列番号49)の残基のうちの1つ以上(配列番号4の16〜20位および配列番号6の17〜21位)は、(a)アミノ酸なし(欠失)、または(b)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されている。別の例では、配列番号8の42〜44位の残基FGF21(配列番号10の14〜16位および配列番号12の15〜17)、すなわち、残基GQVは、配列番号2の38〜42位に挿入される(配列番号4の16〜20位および配列番号6の17〜21位)。この特定のキメラポリペプチドでは、FGF19ポリペプチド足場の5つの残基が、FGF21ポリペプチド3つの残基によって置換されており、ポリペプチド足場内の特定の位置の特定の残基を、アミノ酸なしで置換する(すなわち、欠失を作製する)選択肢を強調していることに留意される。かかるキメラポリペプチドは、低減されたFGF4活性および/または肝細胞分裂促進性の特性を示すことができる。
【0064】
別の実施形態では、キメラポリペプチドは、野生型FGF23(配列番号14、16、または18)ポリペプチド足場のアミノ酸配列を含み、ここで配列番号14の36〜38位のWGGの残基のうちの1つ以上(配列番号16における12〜14位および配列番号18における13〜15位)は、(a)アミノ酸なし(欠失)、または(b)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されている。別の例では、配列番号14の36〜38位のFGF23の残基(配列番号16の12〜14位および配列番号18における13〜15位)、例えば、残基WGGは、配列番号2の38〜42位のFGF19残基(配列番号4の16〜20位および配列番号6の17〜21位)、例えば、WGDPI(配列番号49)によって置換される。この特定のキメラポリペプチドでは、FGF23ポリペプチド足場の3つの残基が、FGF19ポリペプチドからの5つの残基によって置換されており、ポリペプチド足場内の特定の位置の特定の残基を、1つを超えるアミノ酸で置換する、すなわち、領域内の3つのアミノ酸を5つのアミノ酸で置換する選択肢を強調していることに留意される。
【0065】
本発明のキメラポリペプチドの全てと同様に、FGF19、FGF21、またはFGF23ポリペプチド足場内の置換対象の特定のアミノ酸は、アミノ酸なしまたは野生型配列中のその位置にあると思われる残基以外の任意のアミノ酸のいずれかで置換することができる。例えば、配列番号2のFGF19残基38〜42(配列番号4の16〜20位および配列番号6の17〜21位)は、5つの残基配列WGDPIを含み、WGDPI以外の任意の配列で置換することができ、また、5つ未満の残基または5つを超える残基を含むこともできる。より具体的な例としては、FGF19の5つの残基の置換、つまりWGDPIを、配列番号8の42〜44位のFGF21において通常見出される3つの残基(配列番号10の14〜16位および配列番号12の15〜17位)、つまりGQVで置換することが挙げられる。
【0066】
II.C. FGF19β1−β2ループを欠くまたは組み込むキメラポリペプチド
【0067】
FGF19のβ1−β2ループは、ヘパリン結合活性に寄与すると考えられ、類似領域は、FGF21およびFGF23において見出される。このループ領域を含むキメラポリペプチドは、例えば、通常はFGF21またはFGF23によって活性化されないFGFR4の活性に寄与することが予測され、また再び通常はFGF21またはFGF23において観察されない特性であるが、肝細胞分裂促進性に寄与することができる。同様に、このループ領域を欠くキメラポリペプチドは、他の修飾と併せて、FGFR4を通じてシグナル伝達する能力を欠くことが予測される。
【0068】
一態様では、本開示は、FGF21足場に基づくキメラポリペプチドに関する。一態様では、キメラポリペプチドは、野生型FGF21(配列番号 8、10、または12)ポリペプチド足場のアミノ酸配列を含み、ここで配列番号8の52〜58位の残基DDAQQTE(配列番号54)(配列番号10における24〜30位および配列番号12における25〜31位)のうちの1つ以上は、(a)アミノ酸なし(欠失)、または(b)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されている。
【0069】
一態様では、本開示は、FGF23足場に基づくキメラポリペプチドに関する。一態様では、キメラポリペプチドは、野生型FGF23(配列番号14、16、または18)ポリペプチド足場のアミノ酸配列を含み、ここで配列番号14の45〜50位の残基ATARNS(配列番号56)(配列番号16の21〜26位および配列番号18の22〜27位)のうちの1つ以上は、(a)アミノ酸なし(欠失)、または(b)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸のうちの少なくとも1つで置換されている。
【0070】
また、本開示は、FGF19足場に基づくキメラポリペプチドにも関する。一実施形態ではかかるキメラポリペプチドは、野生型FGF19(配列番号2、4、または6)ポリペプチド足場のアミノ酸配列を含み、ここで配列番号2の50〜57位の残基SGPHGLSS(配列番号52)(配列番号4の28〜35位および配列番号6の29〜36位)のうちの1つ以上は、(a)アミノ酸なし(欠失)、または(b)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸のうちの少なくとも1つで置換されている。一例では、配列番号8の52〜58位のFGF21残基(配列番号10の24〜30位および配列番号12の25〜31位)、例えば、残基DDAQQTE、(配列番号54)は、野生型FGF19配列の50〜57位に挿入される。この特定のキメラポリペプチドでは、FGF19ポリペプチド足場の8つの残基が、FGF21ポリペプチドからの7つの残基によって置換されており、ポリペプチド足場内の特定の位置の特定の残基を、アミノ酸なしで置換する選択肢を強調していることに留意される。かかるキメラポリペプチドは、それ自体でおよびそれ自体の低減されたFGF4活性および/または肝細胞分裂促進性の特性を示すことができるか、またはかかる置換は、本明細書に記載の通り、組み合わせキメラポリペプチドにおける1つの要素を形成することができる。
【0071】
本発明のキメラポリペプチドの全てと同様に、置換対象の特定のアミノ酸は、アミノ酸なしまたは野生型配列中のその位置にあると思われる残基以外の任意のアミノ酸のいずれかで置換することができる。例えば、配列番号2のFGF19残基50〜57(配列番号4の28〜35位および配列番号6の29〜36位)は、8つの残基配列SGPHGLSSであり、SGPHGLSS以外の任意の配列で置換される場合があり、また8つ未満の残基を含む場合もある。より具体的な例としては、これらの残基を、配列番号8の52〜58位で見出される7つのFGF21残基(配列番号10の24〜30位および配列番号12の25〜31位)、つまりDDAQQTE(配列番号54)で置換することが挙げられる。
【0072】
II.D. FGF19β10−β12セグメントを欠くまたは組み込むキメラポリペプチド
【0073】
FGF19のβ10−β12セグメントは、ヘパリン結合活性に寄与すると考えられ、FGF19、FGF21、およびFGF23において類似して見出される領域である。かかるキメラポリペプチドは、通常はFGF21によって活性化されないFGFR4の活性に寄与することができ、ならびに再び通常はFGF21において観察されない特性であるが、肝細胞分裂促進性に寄与することができる。種々の実施形態では、本開示は、FGF19、FGF21、およびFGF23足場に基づくキメラポリペプチドに関する。
【0074】
一態様では、配列番号8の147〜161位の残基PGNKSPHRDPAPRGP(配列番号60)(配列番号10における119〜133位および配列番号12における120〜134位)のうちの1つ以上が、(a)アミノ酸なし(欠失)、または(b)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸のうちの少なくとも1つで置換されている、野生型FGF21ポリペプチド足場(例えば、配列番号10、12、または14)のアミノ酸配列を含むキメラポリペプチドに関する。
【0075】
一態様では、配列番号14の139〜154位の残基GRAKRAFLPGMNPPPY(配列番号62)(配列番号16における115〜130位および配列番号18における116〜131位)のうちの1つ以上が、(a)アミノ酸なし(欠失)、または(b)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されている、野生型FGF23ポリペプチド足場(例えば、配列番号14、16、または18)のアミノ酸配列を含むキメラポリペプチドに関する。
【0076】
また、本開示は、FGF19足場に基づくキメラポリペプチドにも関する。かかるキメラポリペプチドの一実施形態では、配列番号2の146〜163位の残基SSAKQRQLYKNRGFLPL(配列番号58)(配列番号4における124〜140位および配列番号6における125〜141位)のうちの1つ以上が、(a)アミノ酸なし(欠失)、または(b)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されている、野生型FGF19ポリペプチド足場(例えば、配列番号2、4、または6)のアミノ酸配列を含む。一例では、配列番号8の147〜161位のFGF21残基(配列番号10の119〜133位および配列番号12の120〜134位に相当する)、例えば、PGNKSPHRDPAPRGP(配列番号60)は、FGF19配列配列番号2の146〜162位に挿入される(配列番号4の124〜140位および配列番号6の125〜141位に相当する)。この特定のキメラポリペプチドでは、FGF19ポリペプチドの17個の残基が、FGF21ポリペプチドからの15個の残基によって置換されており、ポリペプチド足場内の特定の位置の特定の残基を、アミノ酸なしで置換する選択肢を強調していることに留意される。かかるキメラポリペプチドは、それ自体でおよびそれ自体の低減されたFGF4活性および/または肝細胞分裂促進性の特性を示すことが予測されるか、またはかかる置換は、本明細書に記載の通り、組み合わせキメラポリペプチドにおける1つの要素を形成することができる。
【0077】
本発明のキメラポリペプチドの全てと同様に、置換対象の特定のアミノ酸は、アミノ酸なしまたは野生型配列中のその位置にあると思われる残基以外の任意のアミノ酸のいずれかで置換することができる。例えば、配列番号2のFGF19残基146〜162(配列番号4の124〜140位および配列番号6の125〜141位に相当する)は、17個の残基配列SSAKQRQLYKNRGFLPL(配列番号58)であり、SSAKQRQLYKNRGFLPL以外の任意の配列で置換される場合があり、また17個未満の残基を含む場合もある。より具体的な例としては、これらの残基を、配列番号8の147〜161位で見出される15個のFGF21残基(配列番号10の119〜133位および配列番号12の120〜134位)、つまりPGNKSPHRDPAPRGP(配列番号60)で置換することが挙げられる。
【0078】
II.E. キメラ組み合わせポリペプチド
【0079】
また、本開示は、キメラ組み合わせポリペプチドにも関する。キメラ組み合わせポリペプチドは、ポリペプチド足場の2つ以上の領域が、各領域の各位置でアミノ酸なしか、または野生型ポリペプチド足場内の位置では通常見出されないアミノ酸のいずれかで置換されている、キメラポリペプチドである。したがって、キメラ組み合わせポリペプチドは、通常はポリペプチド足場に関連する、または通常はポリペプチド足場に関連しない、強化されたまたは低減された特性を示すように操作することができる。種々の実施形態では、キメラ組み合わせポリペプチドは、減少したFGFR4媒介型シグナル伝達を示す特性を有することができる。
【0080】
例えば、キメラ組み合わせポリペプチドは、FGF19足場上に構築することができる。配列番号2の38〜42位を含む領域および/または50〜57位を含む領域および/または146〜162位を含む領域(配列番号4の16〜20、28〜35、および124〜140位ならびに配列番号6の17〜21、29〜36、および125〜141位に相当する)等の、FGF19足場の2つ以上の特定の領域内のアミノ酸は、配列番号2における38〜42および/もしくは50〜57および/もしくは146〜162位(配列番号4の16〜20、28〜35、および124〜140位ならびに配列番号6の17〜21、29〜36、および125〜141位)の各々で見出されない残基によって、またはアミノ酸なしのいずれかによって、各々置換することができる。特定の一実施形態では、キメラ組み合わせポリペプチドは、FGF19ポリペプチド足場の野生型領域の代わりに置換されたFGF21の領域からのアミノ酸を有することができる。このキメラポリペプチドの1つの潜在的配列は、(a)配列番号2の38〜42位の残基WGDPIのうちの1つ以上が、(i)アミノ酸なし(欠失)、または(ii)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されている、(b)配列番号2の50〜57位の残基SGPHGLSS(配列番号4の28〜35位および配列番号6の29〜36位に相当する)のうちの1つ以上が、(i)アミノ酸なし(欠失)、または(ii)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されている、および(c)配列番号2の146〜163位の残基SSAKQRQLYKNRGFLPL(配列番号4の124〜140位および配列番号6の125〜141位に相当する)のうちの1つ以上が、(i)アミノ酸なし、または(ii)野生型アミノ酸中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されている、FGF19足場を含む。
【0081】
本明細書に記載される通り、配列番号2のFGF19ポリペプチド足場の38〜42領域(配列番号4の14〜20位および配列番号6の15〜21位に相当する)の少なくとも1つのアミノ酸を、アミノ酸なしまたはこれらの位置のうちの少なくとも1つにおける非野生型残基のいずれかで置換することによって、FGFR4を活性化するFGF19の能力が弱められ、また肝細胞分裂促進性も弱められる。配列番号2のFGF19ポリペプチド足場の50〜57領域(配列番号4の28〜35位および配列番号6の29〜36位に相当する)のうちの少なくとも1つ(ヘパリン結合β1−β2ループおよび/または配列番号2のFGF19ポリペプチド足場の146〜162領域(配列番号4の124〜140位および配列番号6の125〜141位に相当する)の少なくとも1つのアミノ酸を含む)(β10−β12セグメントを含む)を、アミノ酸なしまたはこれらの位置のうちの少なくとも1つにおける非野生型残基のいずれかで置換することによって、FGF19のFGFR4活性および肝細胞分裂促進性を、なおさらに弱めるか排除することができる。しかしながら、1つ以上の領域での置換を含むキメラ組み合わせポリペプチドが、血糖値レベルを低下させるまたは体重を減少させる能力等の、他の生物学的活性を依然として維持することに注意することは重要である。したがって、キメラ組み合わせポリペプチドは、ポリペプチド足場の2つ以上の領域のアミノ酸を、野生型ポリペプチド足場内の領域の位置の各々で見出されないアミノ酸、またはアミノ酸なし(欠失)で置換することによって、種々の目的を達成するおよび所望の活性プロフィールを示すように操作することができる。
【0082】
別の例では、キメラ組み合わせポリペプチドは、FGF21足場上に構築することができる。配列番号8の42〜44位を含む領域および/または52〜58位を含む領域および/または147〜161位を含む領域(配列番号10の14〜16、24〜30、および119〜133位ならびに配列番号12の15〜17、25〜31、および120〜134位に相当する)等の、FGF21足場の2つ以上の特定の領域内のアミノ酸(例えば、配列番号8、10、または12)は、配列番号8の42〜44および/または52〜58および/または147〜161位(配列番号10の14〜16、24〜30、および119〜133位ならびに配列番号12の15〜17、25〜31、および120〜134位に相当する)の各々で見出されない残基で、またはアミノ酸なしで、各々置換することができる。かかるキメラ組み合わせポリペプチド特定の一実施形態では、FGF21ポリペプチド足場の野生型領域の代わりに置換されたFGF19の領域からのアミノ酸を有する場合がある。かかるキメラポリペプチドの1つの潜在的配列は、(a)配列番号8の42〜44位の残基GQV(配列番号10の14〜16位および配列番号12の15〜17位に相当する)のうちの1つ以上が、(i)アミノ酸なし(欠失)、または(ii)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されている、(b)配列番号8の52〜58位の残基DDAQQTE(配列番号10における24〜30位および配列番号12の25〜31位に相当する)のうちの1つ以上が、(ii)アミノ酸なし(欠失)、または(ii)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されている、および(c)配列番号8の147〜161位の残基PGNKSPHRDPAPRGP(配列番号10における119〜133位および配列番号12における120〜134位に相当する)のうちの1つ以上が、(i)アミノ酸なし(欠失)、または(ii)野生型アミノ酸中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されている、ポリペプチド足場を含む。
【0083】
本明細書に記載の通り、配列番号8のFGF21ポリペプチド足場の42〜44領域(および配列番号10および12における対応する残基)の少なくとも1つのアミノ酸を、アミノ酸なしまたはこれらの位置のうちの少なくとも1つ以上における非野生型残基で置換することによって、FGFR4を活性化するFGF21の能力が付与され、また肝細胞分裂促進性も付与される。配列番号8のFGF21ポリペプチド足場の52〜58領域(および配列番号10および12の対応する残基)のうちの少なくとも1つ(ヘパリン結合β1−β2ループ、および/または配列番号8のFGF19ポリペプチド足場の147〜161領域1つ以上のアミノ酸(および配列番号10および12の対応する残基)を含む)(β10−β12セグメントを含む)を、アミノ酸なしまたはこれらの位置のうちの少なくとも1つ以上における非野生型残基で置換することによって、FGF19のFGFR4活性および肝細胞分裂促進性をさらに増大することができる。
【0084】
さらに別の例では、キメラ組み合わせポリペプチドは、FGF23足場上に構築することができる。配列番号14の36〜38位を含む領域および/または45〜50位を含む領域および/または139〜154位を含む領域(配列番号16の12〜14、21〜26、および115〜130位ならびに配列番号18の13〜15、22〜27、および116〜131位に相当する)等の、FGF23足場の2つ以上の特定の領域内のアミノ酸(例えば、配列番号14、16、または18)は、配列番号14における36〜38および/または45〜50および/または139〜154位(配列番号16の12〜14、21〜26、および115〜130位ならびに配列番号18の13〜15、22〜27、および116〜131位に相当する)の各々で見出されない残基によって、またはアミノ酸なしによって、各々置換することができる。かかるキメラ組み合わせポリペプチドの特定の一実施形態では、FGF23ポリペプチド足場の野生型領域の代わりに置換されたFGF19の領域からのアミノ酸を有することができる。かかるキメラポリペプチドの1つの潜在的配列は、(a)配列番号14の36〜38位の残基WGG(配列番号16における12〜14位および配列番号18における13〜15位に相当する)のうちの1つ以上が、(i)アミノ酸なし、または(ii)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されている、(b)配列番号14の45〜50位の残基ATARNS(配列番号16における21〜26位のおよび配列番号18における22〜27位に相当する)のうちの1つ以上が、(i)アミノ酸なし、または(ii)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸のうちの少なくとも1つで置換されている、および(c)配列番号14の139〜154位の残基GRAKRAFLPGMNPPPY(配列番号16の115〜130位および配列番号18の116〜131位に相当する)のうちの1つ以上が、(i)アミノ酸なし、または(ii)野生型アミノ酸中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸のうちの少なくとも1つで置換されている、ポリペプチド足場を含む。
【0085】
本明細書に記載される通り、配列番号14のFGF23ポリペプチド足場の36〜38領域(配列番号16における12〜14位および配列番号18における13〜15位に相当する)の少なくとも1つのアミノ酸を、アミノ酸なしまたはこれらの位置のうちの少なくとも1つにおける非野生型残基のいずれかで置換することによって、FGFR4を活性化するFGF23の能力が付与され、また肝細胞分裂促進性も付与される。配列番号14のFGF23ポリペプチド足場の45〜50領域(配列番号16の21〜26位および配列番号18の22〜27位に相当する)のうちの1つ以上(ヘパリン結合β1−β2ループおよび/または配列番号14のFGF23ポリペプチド配列の139〜154領域(配列番号16の115〜130位および配列番号18の116〜131位に相当する)の少なくとも1つのアミノ酸を含む)(β10−β12セグメントを含む)を、アミノ酸なしまたはこれらの位置のうちの少なくとも1つにおける非野生型残基のいずれかで置換することによって、FGF23のFGFR4活性および肝細胞分裂促進性をさらに増大することができる。
【0086】
III. 切断されたキメラポリペプチド
【0087】
本明細書に記載されるキメラポリペプチドのNおよびC末端で切断された形態は、本開示の別の態様を形成する。本明細書で使用される「切断されたキメラポリペプチド」という用語は、1つ以上のアミノ酸残基がキメラポリペプチドのアミノ末端(またはN末端)から除去されいるか、アミノ酸残基がキメラポリペプチドのカルボキシル末端(またはC末端)から除去されているか、または1つ以上のアミノ酸残基がキメラポリペプチドのアミノ末端およびカルボキシル末端の両方から除去されている、キメラポリペプチドを指す。切断されたキメラポリペプチドは、例えば、ポリペプチドのC末端、N末端、またはC末端およびN末端の両方から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20個以上の残基が切断されてもよい。
【0088】
N末端で切断されたキメラポリペプチドおよびC末端で切断されたキメラポリペプチドの活性は、例えば、実施例2.1および2.2に記載される体外ERKアッセイを用いることによって、本明細書に記載の通りアッセイすることができる。切断されたキメラポリペプチドの活性を検査するために使用することができる体外アッセイの具体的な詳細は、実施例2および本明細書に見出すことができる。
【0089】
また、本明細書に開示される切断されたキメラポリペプチドの活性は、本明細書に開示されるキメラポリペプチドのいずれかについて行われ得るのと同様に、例えば、実施例2.4に示されるBrdU組み込みアッセイで、または疾患モデル(例えば、ob/obまたはDIOマウス)における1つ以上の代謝パラメータに及ぼす、切断されたキメラポリペプチドの影響を検査することによって、またはERKリン酸化レベル等の組織機能に及ぼす、切断されたキメラポリペプチドの影響を検査することによって、体内アッセイで査定することもできる。概して、切断されたキメラポリペプチドの体内の活性を査定するために、切断されたキメラポリペプチドを、試験動物の腹腔内に投与することができる。所望のインキュベーション時間後(例えば、5、10、15、20、30、40、50、または60分以上)、後に続く分析のために、血液試料を採ることができ、血糖値レベルを測定することができ、および/または組織を採取することができる。切断されたキメラポリペプチドの活性を検査するために使用することができる体内アッセイの具体的な詳細は、実施例10に見出すことができる。別のアッセイでは、試験動物にBrdU標識を投与し、その後屠殺し、BrdU組み込みについておよび/または観察され得る形態変化について、肝臓を検査することができる。
【0090】
本開示の全てのキメラポリペプチドと同様に、切断されたキメラポリペプチドは、アミノ末端メチオニン残基を任意に含むことができ、それは定方向突然変異によって、または細菌発現プロセスの結果として導入されてもよい。
【0091】
本明細書に開示される切断されたキメラポリペプチド、実際には本明細書に開示されるキメラポリペプチドの全ては、実施例1に記載される通りに調製することができる。標準的な分子生物学技術に精通する当業者は、本開示と共にその知識を用いて、本明細書に記載される切断されたキメラポリペプチドを作製し、使用することができる。標準技術は、組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養、および形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)に使用されてもよい。例えば、上述のSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manualを参照されたく、この参考文献は、任意の目的で参照により本明細書に援用される。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様に従って、当該技術分野において一般的に達成される通り、または本明細書に記載される通りに行われてもよい。特段の記載のない限り、本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに医学および薬学化学に関連して利用される命名、ならびにそれらの臨床検査手順および手法は、当業者に周知であり、当該技術分野で一般的に使用されるものである。標準的な手法は、化学合成、化学分析、薬学調製、製剤、および送達、ならびに患者の治療に使用することができる。
また、本発明の切断されたキメラポリペプチドは、追加的な特性を切断されたキメラポリペプチドに付与することができる、別の成分に融合されてもよい。本発明の一実施形態では、切断されたキメラポリペプチドは、本明細書に記載されるFc配列に融合されてもよい。かかる融合は、既知の分子生物学的方法および/または本明細書に提供されるガイダンスを用いて作り出すことができる。かかる融合ポリペプチドの利益、ならびにかかる融合ポリペプチドを作製するための方法は、本明細書でさらに詳述される。
【0092】
IV. キメラポリペプチド変異体
【0093】
別の態様では、キメラポリペプチド変異体が提供される。キメラポリペプチド変異体は、強化されたまたは減少したFGFR4媒介型シグナル伝達を示し、FGF19のアミノ酸配列(例えば、配列番号4)と少なくとも約85パーセント同一であるアミノ酸配列を含むが、ここでFGF19のFGFR4媒介型シグナル伝達活性を強化するまたは減少させる修飾を含む特定の残基は、さらには修飾されない。換言すると、強化されたまたは減少したFGFR4媒介型シグナル伝達を与えるために修飾されているキメラポリペプチドにおける残基を除いて、キメラポリペプチド配列中の他の全てのアミノ酸残基の約15パーセントが修飾されてもよい。FGF19ポリペプチド足場の16〜20位の残基WGDPIの1つ以上が、(a)アミノ酸なし、または(b)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸(配列番号4)で置換されている、減少したFGFR4媒介型活性を示すキメラポリペプチドの特定の例では、FGF19ポリペプチド足場の16〜20位で変化させられた残基以外の、全てのアミノ酸残基の最大15パーセントが修飾される場合がある。
【0094】
さらに他の実施形態では、キメラポリペプチドは、強化されたまたは減少したFGFR4媒介型シグナル伝達を示し、ポリペプチド足場(例えば、配列番号4)のアミノ酸配列と少なくとも約90パーセント、または約95、96、97、98、もしくは99パーセント同一であるアミノ酸配列を含むが、ここでキメラポリペプチドの強化されたまたは減少したFGFR4媒介型シグナル伝達特性を与える特定の残基は、さらには修飾されない。
【0095】
また、かかるキメラポリペプチド変異体をコードする核酸も提供される。したがって、強化されたまたは減少したFGFR4媒介型シグナル伝達を示し、FGF19(例えば、配列番号4)のアミノ酸配列と少なくとも約85パーセント同一であるアミノ酸配列をコードする核酸分子(しかしFGF19のFGFR4媒介型シグナル伝達活性を強化するまたは減少させる修飾を含む特定の残基は、さらには修飾されない)が提供される。換言すると、減少したFGFR4媒介型シグナル伝達または他の特性を与えるために修飾されているキメラポリペプチにおける残基をコードするヌクレオチドを除いて、キメラポリペプチドにおける他の全てのアミノ酸の約15パーセントをコードするヌクレオチドが修飾されてもよい。ポリペプチド足場の16〜20位の残基WGDPIのうちの1つ以上が、例の通り(a)アミノ酸なし、または(b)野生型アミノ酸配列中の位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されている、減少したFGFR4媒介型シグナル伝達を示すキメラポリペプチドの場合を再び用いて、FGF19ポリペプチド足場の16〜20位の残基をコードするヌクレオチド以外の、全てのアミノ酸の最大15パーセントをコードするFGF19ヌクレオチドが修飾される場合がある。
【0096】
また、減少したFGFR4媒介型シグナル伝達を示し、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも約90パーセント、または約95、96、97、98、もしくは99パーセント同一であるアミノ酸配列を含む、キメラポリペプチドをコードする核酸分子も提供されるが、ここでFGF19のFGFR4媒介型シグナル伝達活性を減少させる修飾を含む特定の残基は、さらには修飾されない。
【0097】
V. キメラ融合ポリペプチド
【0098】
キメラ融合ポリペプチドは、本開示の別の態様を形成する。本明細書で使用される「キメラ融合ポリペプチド」または「キメラ融合タンパク質」という用語は、本明細書に開示されるキメラポリペプチドのいずれかのN末端またはC末端の、1つ以上のアミノ酸残基を含む(異種タンパク質またはペプチド等のより長い配列を含む)アミノ酸配列の融合を指す。
【0099】
異種ペプチドおよびポリペプチドは、これらに限定されないが、キメラポリペプチドの検出および/または単離を可能にするエピトープ;細胞外ドメインもしくは膜貫通および細胞内ドメイン等の膜貫通受容体タンパク質またはその一部;膜貫通受容体タンパク質に結合するリガンドまたはその一部;触媒的に活性な酵素またはその一部;ロイシンジッパードメイン等のオリゴマー化を促進するポリペプチドまたはペプチド;免疫グロブリン定常領域(「Fc」ドメイン)等の安定性を増加させるポリペプチドまたはペプチド;機能的もしくは抗機能的抗体、またはその重鎖もしくは軽鎖;ならびに本発明のキメラポリペプチドと異なる、治療活性等の活性を有するポリペプチドが含まれる。また、ヒト血清アルブミン(HSA)に融合されるキメラポリペプチドも本発明に包含される。
【0100】
キメラ融合ポリペプチドは、キメラポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかにおいて異種配列を融合させることによって作製することができる。本明細書に記載の通り、異種配列は、アミノ酸配列またはアミノ酸なし含有ポリマーであってもよい。異種配列は、直接にまたはリンカーもしくはアダプター分子を介してのいずれかで、キメラポリペプチドに融合することができる。リンカーまたはアダプター分子は、1つ以上のアミノ酸残基(または−mer)、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、または9個の残基(または−mer)、好ましくは10〜50個のアミノ酸残基(または−mer)、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、または50個の残基(または−mer)、およびより好ましくは15〜35個のアミノ酸残基(または−mer)であってもよい。リンカーの実施例は、配列番号63〜70のペプチドを含む。また、リンカーまたはアダプター分子は、融合部分の分離を可能にするDNA制限エンドヌクレアーゼのためまたはプロテアーゼのための切断部位と共に設計されてもよい。
【0101】
V.A. Fc融合
【0102】
本発明の一実施形態では、キメラポリペプチドは、ヒトIgGのFc領域の1つ以上のドメインに融合される。抗体は、2つの機能的に独立した部分、つまり抗原に結合する、「Fab」として知られる可変ドメイン、ならびに補体活性および食細胞による攻撃等のエフェクター機能に関与する、「Fc」として知られる定常ドメインを含む。Fcは、長い血清半減期を有する一方で、Fabは、短命である(Capon et al.,(1989)Nature337:525−31)。治療薬タンパク質と結合された場合、Fcドメインは、より長い半減期を提供するか、またはFc受容体結合、タンパク質A結合、補体結合、またおそらくはさらに経胎盤伝達として、かかる機能を組み込むことができる(Capon et al.,1989)。
【0103】
得られたキメラ融合ポリペプチドは、例えば、タンパク質A親和性カラムの使用によって、精製することができる。Fc領域に融合されるペプチドおよびタンパク質は、融合されていない相対物よりも実質的に長い体内半減期を示すことが見出されている。また、Fc領域への融合は、融合ポリペプチドの二量体化/多量体化を可能にする。Fc領域は、自然発生Fc領域であってもよく、または治療の質、循環期間、もしくは低減された凝集等の特定の質を改善するように変化させられてもよい。
【0104】
抗体の「Fc」ドメインとの融合による、タンパク質治療剤の有用な修飾は、国際公開第00/024782号明細書に詳述され、この公報は、参照によりその全体がこれによって援用される。この文書は、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、またはFc領域等の「ビヒクル」との結合を説明する。
【0105】
V.B. 融合タンパク質リンカー
【0106】
本開示のキメラ融合ポリペプチドを形成する場合に、リンカーが用いられてもよいが、その必要はない。存在する場合、リンカーは、主にスペーサとしての役割を果たすため、その化学構造は常に重要でなくてもよい。リンカーは、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸からなってもよい。本発明の幾つかの実施形態では、リンカーは、ペプチド結合によって結合される1〜20個のアミノ酸からなり、ここでアミノ酸は、20個の自然発生アミノ酸から選択される。種々の実施形態では、1〜20個のアミノ酸は、アミノ酸グリシン、セリン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、およびリジンから選択される。幾つかの実施形態では、リンカーは、グリシンまたはアラニン等の、立体障害のないアミノ酸の大部分からなる。幾つかの実施形態では、リンカーは、ポリグリシン((Gly)(配列番号63)および(Gly)(配列番号64)等)、ポリアラニン、グリシンおよびアラニンの組み合わせ(ポリ(Gly−Ala)等)、またはグリシンおよびセリンの組み合わせ(ポリ(Gly−Ser)等の)である。他の好適なリンカーには、次のものが含まれる:(Gly)−Ser−(Gly)−Ser−(Gly)−Ser(配列番号65)、(Gly)−Ser−(Gly)−Ser−(Gly)−Ser(配列番号66)、(Gly)−Lys−(Gly)(配列番号67)、(Gly)−Asn−Gly−Ser−(Gly)(配列番号68)、(Gly)−Cys−(Gly)(配列番号69)、およびGly−Pro−Asn−Gly−Gly(配列番号70)。キメラ融合ポリペプチドの形成の際に、任意の長さまたは組成のリンカーを用いることができる。
【0107】
本明細書に記載されるリンカーは、例示的であり、はるかに長いおよび他の残基を含むリンカーが本発明によって考察される。また、非ペプチドリンカーも本発明によって考察される。例えば、−NH−(CH−C(O)−(式中、s=2〜20)等のアルキルリンカーが使用されてもよい。これらのアルキルリンカーは、これらに限定されないが、低級アルキル(例えば、C1〜C6)、低級アシル、ハロゲン(例えば、Cl、Br)、CN、NH、またはフェニルを含む、立体障害のない任意の基によってさらに置換されてもよい。例示的非ペプチドリンカーは、ポリエチレングリコールリンカーであり、ここでリンカーは、100〜5000kD、例えば、100〜500kDの分子量を有する。
【0108】
VI. 化学修飾されたキメラポリペプチド
【0109】
それらの切断された形態を含む、本明細書に記載されるキメラポリペプチドの化学修飾された形態は、当該技術分野で既知の技術と共に本開示を用いて、当業者によって調製することができる。かかる化学修飾されたキメラポリペプチドは、化学修飾されたキメラポリペプチドが、キメラポリペプチドに自然結合される分子のタイプまたは位置のいずれかの点で修飾されていないキメラポリペプチドと異なるように変化させられる。化学修飾されたキメラポリペプチドは、1つ以上の自然結合された化学基の欠失によって形成された分子を含んでもよい。
【0110】
一実施形態では、本発明のキメラポリペプチドは、1つ以上のポリマーの共有結合によって修飾されてもよい。例えば、選択されたポリマーは、それが結合するタンパク質が生理的環境等の水性環境において沈殿しないように、しばしば水溶性である。好適なポリマーの範囲には、ポリマーの混合物が含まれる。好ましくは、最終生成調製物の治療的使用のために、ポリマーは、薬学的に許容されるものであろう。また、本開示のキメラポリペプチドと共役させられる非水溶性ポリマーも、本発明の態様を形成する。
【0111】
代表的なポリマーは、それぞれ任意の分子量であってもよく、分岐していてもまたは分岐していなくてもよい。ポリマーは、それぞれ典型的には、約2kDa〜約100kDaの平均分子量を有する(「約」という用語は、水溶性ポリマーの調製において、幾つかの分子は記載した分子量よりも重く、幾つかはそれよりも軽いことを意味する)。各ポリマーの平均分子量は、好ましくは約5kDa〜約50kDa、より好ましくは約12kDa〜約40kDa、また最も好ましくは約20kDa〜約35kDaである。
【0112】
好適な水溶性ポリマーまたはそれらの混合物には、これらに限定されないが、N結合もしくはO結合炭水化物、糖、リン酸塩、ポリエチレングリコール(PEG)(モノ−(C〜C10)、アルコキシ、またはアリールオキシ−ポリエチレングリコールを含む、タンパク質を誘導体化するために使用されたPEGの形態を含む)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン(例えば約6kDの低分子量デキストラン等)、セルロース、または他の炭水化物ベースのポリマー、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、およびポリビニルアルコールが含まれる。また、共有結合したキメラポリペプチドマルチマーを調製するために用いることのできる二機能性架橋分子も、本発明に包含される。また、ポリシアル酸に共有結合したキメラポリペプチドも、本発明に包含される。
【0113】
本発明の幾つかの実施形態では、キメラポリペプチドは、これらに限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレングリコール、またはポリプロピレングリコールを含む1つ以上の水溶性ポリマーを含むように、共有結合的にまたは化学的に修飾される。例えば、米国特許第4,640,835号、第4,496,689号、第4,301,144号、第4,670,417号、第4,791,192号、および第4,179,337号明細書を参照されたい。本発明の幾つかの実施形態では、キメラポリペプチドは、これらに限定されないが、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、別の炭水化物ベースのポリマー、ポリ−(N−ビニルピロリドン)−ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、またはそのようなポリマーの混合物を含む、1つ以上のポリマーを含む。
【0114】
本発明の幾つかの実施形態では、キメラポリペプチドは、PEGサブユニットで共有結合的に修飾される。他の実施形態では、1つ以上の水溶性ポリマーが、キメラポリペプチドの1つ以上の特異的な位置で(例えば、N末端で)結合される。さらに他の実施形態では、1つ以上の水溶性ポリマーは、キメラポリペプチドの1つ以上の側鎖に無作為に結合される。幾つかの実施形態では、PEGは、キメラポリペプチドの治療能力を改善するために使用される。特定のかかる方法は、例えば、米国特許第6,133,426号明細書で説明され、この特許は、任意の目的でこれによって参照により援用される。
【0115】
ポリマーがPEGである本発明の実施形態では、PEG基は、任意の簡便な分子量の基であってもよく、直鎖または分岐鎖であってもよい。PEG基の平均分子量は、好ましくは約2kD〜約100kDa、またより好ましくは約5kDa〜約50kDaの範囲に及び、例えば、10、20、30、40、または50kDaである。PEG基は、概して、PEG部分(例えば、アルデヒド基、アミノ基、チオール基、またはエステル基)上の反応基による、キメラポリペプチド(例えば、アルデヒド基、アミノ基、またはエステル基)上の反応基へのアシル化または還元的アルキル化を介して、キメラポリペプチドに結合される。
【0116】
本発明のキメラポリペプチドを含む、ポリペプチドのPEG化は、当該技術分野で既知のPEG化反応のいずれかを用いて特異的に行うことができる。かかる反応は、例えば、次の参考文献に記載される:Francis et al.,(1992),Focus on Growth Factors 3:4−10、欧州特許第0 154 316号および第0 401 384号明細書、ならびに米国特許第4、179、337号明細書。例えば、PEG化は、本明細書に記載の反応性ポリエチレングリコール分子(または類似反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を介して行うことができる。アシル化反応について、選択されるポリマーは、単一の反応性エステル基を有するべきである。還元的アルキル化について、選択されるポリマーは単一の反応性アルデヒド基を有するべきである。反応性アルデヒドは、例えば、水溶性であるポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、またはそのモノC〜C10アルコキシ誘導体もしくはアリールオキシ誘導体(例えば、米国特許第5,252,714号明細書を参照されたい)である。
【0117】
本発明の幾つかの実施形態では、PEG基をポリペプチドに結合させるための有用なストラテジーは、溶液中で共役結合を形成することによって、各々が他方に対して相互に反応性である特別な官能性を有するペプチドとPEG部分とを組み合わせることを含む。ペプチドは、従来の固相合成により容易に調製することができる。ペプチドは、特異的部位で、適切な官能基により「事前に活性化」される。前駆体は、PEG部分と反応させる前に、精製され、十分に特徴付けられる。ペプチドとPEGのライゲーションは、通常は水相で起こり、逆相分析用HPLCによって容易にモニターすることができる。PEG化ペプチドは、分取HPLCによって容易に精製することができ、分析用HPLC、アミノ酸分析、およびレーザー脱離質量分析法によって特徴付けることができる。
【0118】
多糖類ポリマーは、タンパク質の修飾に使用することのできる別のタイプの水溶性ポリマーである。したがって、多糖類ポリマーに融合される本発明のキメラポリペプチドは、本発明の実施形態を形成する。デキストランは、主にアルファ1〜6結合によって結合されるグルコースの個々のサブユニットからなる多糖類ポリマーである。デキストラン自体は、多くの分子量の範囲で利用可能であり、約1kD〜約70kDの分子量で容易に利用可能である。デキストランは、単独のビヒクルとして、または別のビヒクル(例えば、Fc)と組み合わせたビヒクルとして使用するのに好適な水溶性ポリマーである。例えば、国際公開第96/11953号明細書を参照されたい。治療用または診断用免疫グロブリンと共役させられたデキストランの使用が報告されている。例えば、欧州特許出願公開第0 315 456号明細書を参照されたく、この特許は、参照により、これによって援用される。また、本発明は、約1kD〜約20kDのデキストランの使用も包含する。
【0119】
概して、化学修飾は、タンパク質を活性化ポリマー分子と反応させるために使用される任意の好適な条件下で行うことができる。化学修飾されたポリペプチドを調製するための方法は、概して、次のステップを含むであろう:(a)それによってキメラポリペプチドが1つ以上のポリマー分子に結合されるような条件下で、ポリペプチドを活性化ポリマー分子(ポリマー分子の反応性エステルまたはアルデヒド誘導体等)と反応させるステップ、および(b)反応生成物を得るステップ。最適な反応条件は、既知のパラメータおよび所望の結果に基づいて決定される。例えば、タンパク質に対するポリマー分子の比率が高いほど、結合するポリマー分子の割合が大きい。本発明の一実施形態では、化学修飾されたキメラポリペプチドは、アミノ末端に単独のポリマー分子部分を有することができる(例えば、米国特許第5,234,784号明細書を参照されたい)。
【0120】
本発明の別の実施形態では、キメラポリペプチドは、ビオチンに化学結合される。次いでビオチン/キメラポリペプチドは、アビジンに結合させられ、四価アビジン/ビオチン/キメラポリペプチドをもたらす。また、キメラポリペプチドは、ジニトロフェノール(DNP)またはトリニトロフェノール(TNP)に共有結合されてもよく、得られた共役体を、抗DNPまたは抗TNP−IgMで沈殿させて、10の原子価を有する十量体の共役体を形成する。
【0121】
概して、本発明の化学修飾されたキメラポリペプチドの投与によって緩和または調節することができる条件は、キメラポリペプチドについて本明細書に記載される条件を含む。しかしながら、本明細書に開示される化学修飾されたキメラポリペプチドは、修飾されていないキメラポリペプチドと比較して、追加的な活性、強化されたもしくは低減された生物学的活性、または増加したもしくは減少した半減期等の他の特徴を有することができる。
【0122】
VII. 薬学的組成物
【0123】
開示されるキメラポリペプチドを含む治療用組成物は、本開示の範囲内であり、望ましい特性を示す複数のキメラポリペプチドの同定を考慮して具体的に考察される。かかるキメラポリペプチド薬学的組成物は、投与様式との適合性に合わせて選択される薬学的にまたは生理学的に許容される製剤(例えば、担体、製剤用物質等)と混和されたキメラポリペプチドの治療上有効量を含んでもよい。
【0124】
許容される製剤用物質は、好ましくは、用いられる投与量および濃度で受容者に非毒性である。
【0125】
薬学的組成物は、例えば、組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘性、透明性、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解もしくは放出速度、吸収速度、または浸透速度等を、変更、維持、または保存するための製剤用物質を含有することができる。好適な製剤用物質には、これらに限定されないが、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジン等)、抗菌剤、抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、もしくは亜硫酸水素ナトリウム等)、緩衝剤(ホウ酸塩、炭酸水素塩、Tris−HCl、クエン酸塩、リン酸塩、もしくは他の有機酸等)、増量剤(マンニトールもしくはグリシン等)、キレート化剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等)、錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β−シクロデキストリン、もしくはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン等)、充填剤、単糖類、二糖類、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、もしくはデキストリン等)、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン等)、着色剤、香味剤および希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(ポリビニルポロリドン等)、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン(ナトリウム等)、保存剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、もしくは過酸化水素等)、溶剤(グリセリン、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコール等)、糖アルコール(マンニトールまたはソルビトール等)、懸濁剤、界面活性剤または湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20もしくはポリソルベート80等のポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、またはチロキサポール等)、安定性増進剤(スクロースまたはソルビトール等)、等張性増進剤(アルカリ金属ハロゲン化物―好ましくは塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム−またはマンニトールソルビトール等)、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントが含まれる(例えば、任意の目的で参照により本明細書に援用される、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th Ed.,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company1990)、およびその改訂版を参照されたい)。
【0126】
最適な薬学的組成物は、例えば、意図される投与経路、送達形態、および所望の投与量に依存して、当業者によって決定されるであろう(例えば、上述のRemington’s Pharmaceutical Scienceを参照されたい)。かかる組成物は、キメラポリペプチドの物理的状態、安定性、体内放出の速度、および体内クリアランスの速度に影響を及ぼすことが可能である。
【0127】
薬学的組成物中の一次ビヒクルまたは担体は、本質的に、水性または非水性のいずれかであってもよい。例えば、注射に好適なビヒクルまたは担体は、非経口投与のための組成物に共通の他の物質が補充された可能性のある、水、生理食塩水、または人工脳脊髄液であってもよい。中性緩衝食塩水または血清アルブミンと混合された生理食塩水は、さらなる例示的ビヒクルである。他の代表的な薬学的組成物は、ソルビトールまたは好適な代替物をさらに含むことができる約pH7.0〜8.5のTris緩衝液、または約pH4.0〜5.5の酢酸緩衝液を含む。本開示の一実施形態では、キメラポリペプチド組成物は、所望の純度を有する選択された組成物と、任意の製剤(上述のRemington’s Pharmaceutical Sciences)とを、凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形態で混合することによって、保管のために調製されてもよい。さらに、キメラポリペプチド生成物は、スクロース等の適切な賦形剤を用いて凍結乾燥物として製剤化されてもよい。
【0128】
キメラポリペプチド薬学的組成物は、非経口送達のために選択されてもよい。代替として、組成物は、吸入のために、または経口等の消化管を通じる送達のために選択されてもよい。かかる薬学的に許容される組成物の調製は、当業者に既知である。
【0129】
製剤の構成成分は、投与部位に許容される濃度で存在する。例えば、組成物を生理学的なpHで、または若干低いpHで、典型的には、約5〜約8のpH範囲内で保持するために緩衝液が使用される。
【0130】
非経口投与が考察される場合、本発明で使用するための治療用組成物は、薬学的に許容されるビヒクル中に所望の所望のキメラポリペプチドを含む、パイロジェンフリーの、非経口的に許容される水溶液の形態であってもよい。非経口注射のために特に好適なビヒクルは、キメラポリペプチドがその中で適切に保存された滅菌の等張液として製剤化される、滅菌蒸留水である。さらに別の調製物は、所望の分子と、注射用ミクロスフェア、生体侵食性粒子、ポリマー化合物(ポリ乳酸またはポリグリコール酸等)、ビーズ、またはリポソーム等の薬剤との製剤化を含むことができ、それは次いでデポー注射を介して送達されてもよい生成物の制御放出または徐放性放出を提供する。また、ヒアルロン酸が使用されてもよく、これは、循環における徐放期間を促進する効果を有することができる。所望の分子を導入するための他の好適な手段は、移植可能な薬物送達デバイスを含む。
【0131】
一実施形態では、薬学的組成物は、吸入のために製剤化されてもよい。例えば、キメラポリペプチドは、吸入のために乾燥粉末として製剤化されてもよい。また、キメラポリペプチド吸入溶液は、エアロゾル送達のための噴霧剤とともに製剤化されてもよい。さらに別の実施形態では、溶液は噴霧されてもよい。肺投与は、国際公開第94/20069号明細書にさらに記載され、この公報は化学修飾されたタンパク質の肺送達を説明する。
【0132】
また、特定の製剤が経口投与されてもよいことも考察される。本発明の一実施形態では、この様式で投与されるキメラポリペプチドは、錠剤およびカプセル剤等の固体剤形の配合において習慣的に使用されるそれらの担体を用いてまたは用いずに製剤化することができる。例えば、カプセル剤は、生物学的利用能が最大化され、かつ前全身的分解が最小化されるときに、消化管のポイントで製剤の活性部分を放出するように設計されてもよい。キメラポリペプチドの吸収を促進するために、追加的な薬剤が含まれてもよい。また、希釈剤、香味剤、低融点ワックス、植物油、滑沢剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤、および結合剤が用いられてもよい。
【0133】
別の薬学的組成物は、錠剤の製造に好適な非毒性賦形剤との混合物中に、有効量のキメラポリペプチドを含んでもよい。滅菌水または別の適切なビヒクルに錠剤を溶解させることによって、溶液を単位剤形で調製することができる。好適な賦形剤は、これらに限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムもしくは重炭酸塩、ラクトースもしくはリン酸カルシウム等の不活性希釈剤、またはデンプン、ゼラチン、もしくはアカシア等の結合剤、またはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸もしくは滑石等の潤沢剤を含む。
【0134】
徐放性送達または制御送達製剤中にキメラポリペプチドを含む製剤を含む、追加的なキメラポリペプチド薬学的組成物は、当業者に明白であろう。また、リポソーム担体、生体侵食性微粒子または多孔質ビーズ、およびデポー注射等の、多様な他の徐放性送達手段または制御送達手段を調合するための技術も当業者に既知である(例えば、薬学的組成物の送達のための多孔質ポリマー微粒子の制御放出を説明する国際公開第93/15722号明細書、ならびにWischke&Schwendeman,(2008)Int.J.Pharm.364:298−327、およびミクロスフェア/微粒子調製および使用を説明するFreiberg&Zhu,(2004)Int.J.Pharm.282:1−18を参照されたい)。
【0135】
徐放性調製物の追加的な例としては、例えば、フィルムまたはマイクロカプセル等の成形された物体の形態の、半透性のポリマーマトリクスが挙げられる。徐放性放出マトリクスには、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号明細書および欧州特許第0 058 481号明細書)、L−グルタミン酸およびガンマエチル−L−グルタミン酸塩のコポリマー(Sidman et al.,(1983)Biopolymers 22:547−56)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)(Langer et al.,(1981)J.Biomed.Mater.Res.15:167−277およびLanger,1982,Chem.Tech.12:98−105)、エチレン酢酸ビニル(上述のLanger et al.)、またはポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第0 133 988号明細書)が含まれてもよい。また、徐放性放出組成にはリポソームが含まれてもよく、それは当該技術分野で既知の複数の方法のうちのいずれかによって調製することができる。例えば、Epstein et al.,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:3688−92、および欧州特許第0 036 676号、第0 088 046号、および第0 143 949号明細書を参照されたい。
【0136】
体内投与に使用されるキメラポリペプチド薬学的組成物は、典型的には滅菌されていなければならない。これは、滅菌ろ過膜を通したろ過によって達成することができる。組成物が凍結乾燥される場合は、この方法を用いる滅菌は、凍結乾燥および再構成の前または後のいずれに行われてもよい。非経口投与のための組成物は、凍結乾燥形態でまたは溶液中に保管されてもよい。さらに、非経口組成物は、概して、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射用の針で穿刺することができるストッパーを有する静脈注射溶液用のバッグまたはバイアル中に入れられる。
【0137】
いったん薬学的組成物が製剤化されると、溶液、懸濁液、ゲル、エマルジョン、固体として滅菌バイアル中に保管されてもよいか、または脱水粉末もしくは凍結乾燥粉末として保管されてもよい。そのような製剤は、すぐに使用できる形態か、または投与前に再構成する必要のある形態(例えば、凍結乾燥)のどちらで保管されてもよい。
【0138】
特定の実施形態では、本発明は、単回用量の投与単位を生成するためのキットに関する。キットは、各々、乾燥したタンパク質を有する第1の容器、および水性製剤を有する第2の容器の両方を含有してもよい。また、単一チャンバおよびマルチチャンバのプレフィルドシリンジ(例えば、液体シリンジおよびリオシリンジ(lyosyringe))を含有するキットも本発明の範囲内に含まれる。
【0139】
治療的に用いられるキメラポリペプチド薬学的組成物の有効量は、例えば、治療の内容および目的に依存するであろう。当業者であれば、治療に適切な投与量レベルは、したがって、送達される分子、キメラポリペプチドがそのために使用されている適応症、投与経路、ならびに患者のサイズ(体重、体表面積、または器官のサイズ)および状態(年齢および総体的な健康)に一部依存して異なることを理解するであろう。したがって、臨床医は、最適な治療効果を得るように、投与量を滴定し、投与経路を変更することができる。典型的な投与量は、上記の因子に依存して、約0.1μg/kg〜最大約100mg/kg以上の範囲に及んでもよい。他の実施形態では、投与量は、0.1μg/kg〜最大約100mg/kg、または1μg/kg〜最大約100mg/kg、または5μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、35μg/kg、40μg/kg、45μg/kg、50μg/kg、55μg/kg、60μg/kg、65μg/kg、70μg/kg、75μg/kg〜最大約100mg/kgの範囲に及んでもよい。さらに他の実施形態では、投与量は、50μg/kg、100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、350μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、650μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、850μg/kg、900μg/kg、950μg/kg、100μg/kg、200μg/kg、300μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1000μg/kg、2000μg/kg、3000μg/kg、4000μg/kg、5000μg/kg、6000μg/kg、7000μg/kg、8000μg/kg、9000μg/kg、10mg/kg以上であってもよい。
【0140】
投薬頻度は、使用されている製剤中のキメラポリペプチドの薬物動態パラメータに依存するであろう。典型的には、臨床医は、所望の効果を達成する投与量に達するまで組成物を投与するであろう。したがって、組成物は、単回用量として、2回以上の用量(同量の所望の分子を含有してもしなくてもよい)として経時的に、または移植デバイスもしくはカテーテルを介した連続注入として投与されてもよい。適切な投与量のさらなる微調整は、当業者によって日常的に行われ、当業者によって日常的に行われる作業の範囲内である。適切な投与量は、適切な用量−反応データの使用を通じて確認することができる。
【0141】
薬学的組成物の投与経路は、例えば、経口;静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、または病巣内の経路による注射;徐放性系による(これも注射されてもよい);または移植デバイスによる、既知の方法に従う。所望の場合、組成物は、ボーラス注射によって投与されてもよいか、または注入によって連続的に投与されてもよいか、または移植デバイスによって投与されてもよい。
【0142】
代替的にまたは追加的に、組成物は、所望の分子が吸収されているかまたは封入されている膜、スポンジ、または他の適切な物質の移植を介して、局所的に投与されてもよい。移植デバイスが使用される場合は、デバイスは任意の好適な組織または器官中に移植されてもよく、所望の分子の送達は、拡散、持続放出ボーラス、または連続的投与を介してもよい。
【0143】
VIII. キメラポリペプチドの治療薬使用および他の使用
【0144】
キメラポリペプチドを使用して、これらに限定されないが、代謝異常および腫瘍関連障害を含む幾つかの疾患、障害、または病態を、治療、診断、寛解、または予防することができる。一実施形態では、治療される代謝異常は糖尿病、例えば2型糖尿病である。別の実施形態では、代謝異常は肥満である。他の実施形態は、脂質異常症等の代謝疾患または代謝異常、高血圧、非アルコール性脂肪性肝炎等(NASH)等の脂肪肝、粥状動脈硬化等の循環器疾患、および加齢を含む。別の実施形態では、腫瘍関連障害は、癌の一形態である。
【0145】
適用の際には、糖尿病または肥満等の障害または病態は、本明細書に記載されるキメラポリペプチドを、それを必要とする患者に治療上有効用量の量で投与することによって治療することができる。投与は、静脈注射、腹腔内注射、筋肉内注射によって、または錠剤もしくは液体の形態で経口的に等、本明細書に記載される通りに行われてもよい。ほとんどの状況で、所望の投与量は、本明細書に記載の通り臨床医によって決定されてもよく、キメラポリペプチドの治療上有効用量を表してもよい。所定のキメラポリペプチドの治療上有効用量は、とりわけ、投与スケジュール、投与される抗原の単位用量、核酸分子またはポリペプチドが他の治療剤と併用投与されるかどうか、受容者の免疫状態および健康に依存することは、当業者にとって明らかであろう。本明細書で使用される「治療上有効用量」という用語は、研究者、医師、もしくは他の臨床医に求められている、組織系、動物、もしくはヒトにおける生物学的または医学的な反応を導く、所定のキメラポリペプチドの量を意味する。
【0146】
IX. 抗原結合タンパク質
【0147】
本明細書で使用される抗原結合タンパク質は、抗原に結合する一部分、および任意に、抗原結合部分が、抗原結合タンパク質の抗原への結合を促進する立体配座を採用することを可能にする足場またはフレームワーク部分を含むタンパク質である。抗原結合タンパク質の例としては、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組み換え抗体、1本鎖抗体、二量体、三量体、四量体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、またはIgG4抗体、およびそれらのフラグメントが挙げられる。抗原結合タンパク質は、例えば、移植CDRまたはCDR誘導体を有する、代替タンパク質足場または人工足場を含んでもよい。かかる足場は、これらに限定されないが、例えば、抗原結合タンパク質の3次元構造を安定化するために導入された突然変異を含む抗体由来足場、ならびに、例えば、生体適合性ポリマーを含む完全合成足場を含む。例えば、Korndorfer et al.,2003,Proteins:Structure,Function,and Bioinformatics,53(1):121−129(2003)、Roque et al.,Biotechnol.Prog.20:639−654(2004)を参照されたい。加えて、ペプチド抗体模倣体(「PAMs」)、ならびに足場としてフィブロネクチン構成成分を利用する抗体模倣体に基づく足場が使用されてもよい。
【0148】
本発明のキメラポリペプチドに特異的に結合するが、野生型ポリペプチド足場には特異的に結合しない抗原結合タンパク質が考察され、本開示の範囲内である。抗原結合タンパク質(例えば、抗体)は、解離定数(K)が10−8M以下であるとき、その標的抗原に「特異的に結合」するといわれる。抗体は、Kが5×10−9M以下であるとき、「高い親和性」で抗原に特異的に結合し、Kが5×10−10M以下であるとき、「非常に高い親和性」で抗原に特異的に結合する。
【0149】
抗原結合タンパク質が抗体であるとき、抗体は、単一特異的なポリクローナルを含むポリクローナル;モノクローナル(MAbs);組み換え;キメラ;相補性決定領域(CDR)移植等のヒト化;ヒト;単鎖;および/または二重特異性、ならびにそれらのフラグメント、変異体、あるいは化学修飾された分子であってもよい。抗体フラグメントは、キメラポリペプチドのエピトープに特異的に結合する抗体のそれらの部分を含む。かかる断片の例としては、完全長抗体の酵素的切断によって作製されるFabおよびF(ab’)フラグメントが挙げられる。他の結合フラグメントには、抗体可変領域をコードする核酸配列を含有する組み換えプラスミドの発現等の、組み換えDNA技術によって作製されるものが含まれる。
【0150】
概して、キメラポリペプチドを対象とするポリクローナル抗体は、キメラポリペプチドおよびアジュバントの複数回の皮下注射または腹腔内注射を用いて、動物(例えば、ウサギまたはマウス)において生成される。キメラポリペプチドを、キーホールリンペットヘモシアニン、血清、アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害因子等の、免疫付与対象の種において免疫原性である担体タンパク質と共役させることが有用であり得る。また、免疫反応を強化するためにミョウバン等の凝集剤が使用される。免疫付与後、動物から採血し、抗キメラポリペプチド抗体力価について血清をアッセイする。
【0151】
キメラポリペプチドを対象とするモノクローナル抗体は、培養物中の連続細胞株による抗体分子の生成を提供する任意の方法を用いて生成されてもよい。モノクローナル抗体を調製するための好適な方法の例としては、Kohler et al.,1975,Nature256:495−97のハイブリドーマ法およびヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor,1984,J.Immunol.133:3001、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications51−63(Marcel Dekker,Inc.,1987)が挙げられる。また、キメラポリペプチドと反応性であるモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞株も本発明によって提供される。
【0152】
本発明の抗キメラポリペプチド抗体は、キメラポリペプチドポリペプチドの検出および定量化のために、競合結合アッセイ、直接的および間接的サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイ(例えば、参照によりその全体が本明細書に援用されるSola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques147−158,CRC Press,Inc.,1987)を参照されたい)等の、任意の既知のアッセイ法に用いられてもよい。抗体は、用いられているアッセイ法に適切な親和性でキメラポリペプチドに結合するであろう。
【0153】
診断的適用について、ある種の実施形態では、抗キメラポリペプチド抗体は、検出可能部分で標識化されてもよい。検出可能部分は、直接的または間接的のいずれかで検出可能なシグナルを生成することができる任意の部分であってもよい。例えば、検出可能部分は、H、14C、32P、35S、125I、99Tc、111In、または67Ga等の放射性同位元素;フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、もしくはルシフェリン等の蛍光または化学発光化合物;あるいはアルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、もしくは西洋ワサビペルオキシダーゼ等の酵素であってもよい(Bayer et al.,1990,Meth.Enz.184:138−63)。
【0154】
競合結合アッセイは、限られた量の抗キメラポリペプチド抗体との結合をめぐり、試験試料分析物(例えば、キメラポリペプチド)と競合する標識化標準物(例えば、キメラポリペプチド、またはその免疫反応性部分)の能力に依存する。試験試料中のキメラポリペプチドの量は、抗体に結合する標準物の量と反比例する。結合する標準物の量を決定し易くするために、抗体を典型的には競合の前および後で不溶化して、抗体に結合した標準物および分析物が、未結合のままの標準物および分析物から簡便に分離できるようにする。
【0155】
サンドイッチアッセイは、典型的には、検出および/または定量化しようとするタンパク質の異なる免疫原性部分またはエピトープに各々結合可能な、2つの抗体の使用を含む。サンドイッチアッセイにおいて、試験試料分析物は、典型的には、固体支持体上に固定化された第1の抗体によって結合され、その後、第2の抗体が分析物に結合し、このようにして不溶性の3成分複合体を形成する。例えば、米国特許第4,376,110号明細書を参照されたい。第2の抗体は、それ自体が検出可能部分によって標識化されてもよいか(直接サンドイッチアッセイ)、または検出可能部分で標識化された抗免疫グロブリン抗体を用いて測定されてもよい(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、ある種のサンドイッチアッセイは酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)であり、この場合、検出可能部分は酵素である。
【0156】
また、本発明の抗キメラポリペプチド抗体は、体内撮像にも有用である。検出可能部分で標識化された抗体は、動物に、好ましくは、血流中に投与されてもよく、宿主内の標識化抗体の存在および位置がアッセイされる。抗体は、核磁気共鳴、放射線医学、または当該技術分野で既知の他の検出手段のいずれにかかわらず、動物内で検出可能な任意の部分で標識化することができる。
【0157】
また、本発明は、生物学的試料中のキメラポリペプチドレベルを検出するために有用な、抗キメラポリペプチド抗体および他の試薬を含むキットにも関する。かかる試薬は、検出可能な標識、ブロッキング血清、陽性および陰性対照サンプル、ならびに検出試薬を含むことができる。かかるキットは、試薬およびキットが使用され得る方法を示す一連の指示書をさらに含む。
【実施例】
【0158】
以下の実施例は、本発明の具体的な実施形態およびそれらの種々の使用を例証するものである。これらは説明の目的のために記述されているにすぎず、決して開示される本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0159】
実施例1
組み換え足場ポリペプチドおよびキメラタンパク質の発現および精製
【0160】
分泌リーダーペプチドを含まない野生型FGF19(残基23〜216、配列番号4)およびキメラポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をpET30ベクターにクローン化した(Novagen)。手短に述べると、野生型FGF19およびキメラポリペプチドに対するヌクレオチドをポリメラーゼ鎖反応(PCR)によって生成し、PCR生成物およびpET30ベクターの両方を制限酵素Nde IおよびBamH Iで分解し、リガーゼでライゲーションした。DNAコンストラクトをBL21(DE3)大腸菌(Novagen)に形質転換した。タンパク質発現を37℃のIPTGで誘発した。精製プロセスは、前述のプロセスと同一であった(Wu et al.,(2008)J.Biol Chem.283:33304−9)。分泌リーダーペプチドを含まないFGF21(残基29〜209、配列番号10)を、前述の通りに精製した(Xu et al.,(2008)Diabetes58:250−59)。
生成されたポリペプチドの幾つかの説明を表2に示す:
【0161】
【表2】

【0162】
表2で、各コンストラクトはN〜C末端方向に提示される。「M」は、N末端メチオニンを示し、hFGF19(X−Y)は、野生型FGF19アミノ酸配列の残基Xと残基Yとの間に延長するヒトFGF19の領域を示し、hFGF21(X−Y)は、野生型FGF21アミノ酸配列の残基Xと残基Yとの間に延長するヒトFGF21の領域を示す。例えば、表2のFGF19/21−1の場合、この配列は、M::hFGF19(23−80)::hFGF21(82−209)を含み、配列が、メチオニン、続いてヒトFGF19配列23〜80、次いで続いてヒトFGF21配列82〜209からなることを意味する。
【0163】
実施例2
実験方法
【0164】
実施例3〜10で次の実験方法を用いた。
【0165】
2.1 FGFシグナル伝達のウェスタンブロット分析
【0166】
10%ウシ胎児血清およびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したダルベッコ変法イーグル培地中に、L6細胞を保持した。製造業者のプロトコルに従ってLipofectamine2000トランスフェクション試薬(Invitrogen)を用いて、細胞を発現ベクターでトランスフェクトした。
【0167】
前述の通りにL6細胞中のFGFシグナル伝達の分析を行った。FGF19またはキメラの処置の10分後に細胞培養物を収集し、液体窒素中で急速冷凍し、、溶解緩衝液中で均質化し、抗リン酸化p44/42MAPキナーゼ(ERK1/2)抗体および抗ERK抗体(細胞シグナル伝達)を用いてウェスタンブロット分析に供した。
【0168】
2.2 FGFシグナル伝達についてのMSDアッセイ
【0169】
24ウェルプレート(10細胞/ウェル)中にプレートしたL6細胞を、FGFR1cおよびFGFR4、ならびにαKlothoまたはβKlothoを含む種々のFGF受容体でトランスフェクトし、FGF処置前に0.2%ウシ血清アルブミン中で一晩、血清飢餓処置を行った。10分後に培地を吸引し、プレートを液体窒素中で急速冷凍した。各ウェル中の細胞を60μlのコンプリート溶解緩衝液中に溶解させ、製造業者の指示に従って、MSD全細胞溶解液Phospho−ERK1/2キット(Meso Scale Discovery,Gaithersburg,Maryland)を用いて総ERKおよびリン酸化ERKを測定した。
【0170】
2.3 グルコース取り込みアッセイ
【0171】
3T3L1前駆脂肪細胞(ATCC CL−173)を培養し、分化を誘発させた。Kharitonenkov,et al.,(2005)J Clin Invest 115,1627−1635に記載される通りにグルコース取り込みをアッセイした。
【0172】
2.4 体内肝細胞BrdU標識アッセイ
【0173】
本明細書に記載される全てのBrDU研究について、研究の1日目に、5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU、Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)(16mg/mL)を含有する浸透圧ミニポンプ(ALZET(登録商標)、モデル1007D)を、生後7〜10 8週間のメスFVBマウスの各々の皮下に移植した(Charles River Laboratories,Charles River,MA)。2日目から開始し6日連続で継続しながら、各マウスに、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、ビヒクル)、または種々のタンパク質のいずれかを、示される通りに2mg/kg/日で連日、腹腔内注射により与えた。最後の腹腔内注射の翌日、各マウスから肝臓および十二指腸の試料を収集し、パラフィン包埋、分割、および光学顕微鏡検査に備えて10%中性緩衝ホルマリン中に配置した。全ての収集された組織の切片を、本明細書に記載される免疫組織化学的方法によって染色して、有糸活性のマーカーとしてBrdU組み込みを可視化した。処置群の情報を伴わずに、日常的な光学顕微鏡検査によって組織切片を無作為に検査した。BrdU組み込みついて染色された肝細胞核の数に、半定量的スケール上のスコアを割り当て、この場合、ビヒクル処置(対照)マウスにおける予測レベルを上回る増加が、0=なし、ならびに対照レベルを上回る増加が、±=曖昧、1=最小、2=低度、3=中程度、および4=顕著である、とした。また、BrdU組み込みについて染色された肝細胞の局在性(小葉中心性、または肝小葉にわたって拡散的に散在)も記録した。
【0174】
脱パラフィンした細胞切片を0.1%プロテアーゼ(Sigma,St.Louis,MO)で分解し、切片を2N塩酸で処置することによって、BrdUの細胞組み込みを検出した。切片をCAS BLOCK(Zymed Laboratories,San Francisco,CA)でブロックし、BrdU(Accurate,Westbury,NY、カタログ番号OBT0030、ロット番号H9180)に対するラット抗体でインキュベートし、結合したラット抗体を、ラットIgG(Vector Laboratories,Burlingame,CA、カタログ番号BA4001、ロット番号S0907)に対するビオチン化ウサギ抗体で検出した。組織切片をPeroxidase Blocking Solution(DAKO Corp.,Carpinteria,CA)でクエンチし、保持されたビオチンをVectastain Elite ABCキット(Vector Laboratories)で検出した。反応部位をDAB+Substrate−Chromagen System(DAKO Corp.)で可視化した。切片をヘマトキシリンで対比染色した。
【0175】
実施例3
FGF21は、体内で肝細胞増殖を増加させない
【0176】
FGF21は、FGF19と同一のサブファミリーにあり、双方が、受容体/共受容体要件において、ならびにグルコースおよび脂質代謝の調節において有意な類似点を示すため、肝細胞増殖に及ぼす各々の影響を研究した。組み換えFGF19タンパク質の連日注射の6日後に、体内BrdU標識を用いて、FGF19トランスジェニック動物において、ならびに非トランスジェニック動物において、中心静脈周辺の強化された肝細胞増殖を観察した。Nicholes et al.,(2002)Am J Pathol 160,2295−2307を参照されたい。類似したBrdU標識方法を用いて、肝細胞増殖に及ぼすFGF21処置の影響を検査し、その活性をFGF19の活性と比較した。図1Aに示される通り、FGF19処置動物からの肝臓切片の病理組織学的検査は、発表された観察と一致するように(例えば、Nicholes et al.,(2002)Am J Pathol160,2295−2307を参照されたい)、増加したBrdU標識化肝細胞が肝小葉の小葉中心領域内に集中していることを示した。これに対し、FGF21処置動物からの肝臓は、中心周囲の領域内で増加した数のBrdU標識化肝細胞を示さず、肝臓の他の任意の領域内でも増加したBrdU標識は認められなかったことから、FGF21が試験条件下で肝細胞増殖を強化せず、したがってFGF19と異なるということが示唆された。図1Bは、この実験の終わりにあたり、BrdU標識の組み込みレベルを図式化して示し、FGF19がBrdU組み込みをもたらした一方で、PBS対照およびFGF21はBrdU組み込みをもたらさなかったという観察を強調する。
【0177】
実施例4
FGF21ではなく、FGF19がFGFR4媒介型ERKリン酸化を活性化し、肝臓におけるFGFR4の選択的活性は、中心周囲の肝細胞増殖を誘発する
【0178】
FGF19誘発肝細胞増殖に関する機構およびそのFGF21との差異をより理解するために、FGF19とFGF21との間の受容体および共受容体要件を最初に比較した。非常に低いレベルの内因性FGF受容体を発現する、ラット筋芽細胞の細胞株L6、を、βKlothoと共にFGFR1c、2c、3c、または4でトランスフェクトした。処置された細胞中のリン酸化−ERKレベルのウェスタンブロット分析によって、受容体活性を決定した。図2A〜2Dに示すように、FGF19およびFGF21の両方が、FGFR1c(図2A)、2c(図2B)、および3c(図2C)を活性化することができた一方で、FGF21ではなく、FGF19のみが、FGFR4(図2D)を介してERKリン酸化を誘発した(例えば、Kurosu et al.,(2007)J.Biol Chem.282,26687−26695、およびLin et al.,(2007)J.Bio.Chem.282,27277−27284を参照されたい)。FGFR4が肝細胞中で発現される優性受容体であることを考慮して、ERKリン酸化によって測定したFGFR4活性の、FGF19処置動物において観察した強化された肝細胞増殖に及ぼす影響を研究した。
【0179】
この実験では、選択的FGFR4アゴニストとして特定されるFGF19の変異体、FGF19dCTDを用いた。図3Aに示す通り、FGF19dCTDは、C末端残基178〜216が除去されている、FGF19の切断された形態である。この領域は、共受容体βKlotho相互作用に必須であるため、FGF19dCTDは、FGF19およびFGF21の両方による活性についてβKlothoに依存するFGFR1c、2c、および3cを活性化することができない(図3B、またWu et al.,(2008)J.Biol Chem.283(48):33304−9も参照されたい)。しかしながら、FGF19dCTDは、体外(図3B)および体内の両方で依然としてFGFR4を活性化することができる。したがって、FGF19dCTDを用いて、肝細胞増殖に及ぼす選択的FGFR4活性の影響を検査した。FGF19dCTD処置動物からのBrdU免疫染色された肝臓切片の分析もまた、強化されたBrdU標識を示したことから、増加した有糸活性が、野生型FGF19で処置された動物において観察した場合とほぼ同様に明確であることが示された。したがって、FGFR4の活性は単独で、増加した肝細胞増殖を引き起こすのに十分であり得る。
【0180】
実施例5
FGFR4活性に必須であるFGF19の領域の特定
【0181】
実施例4に示す結果を考慮して、FGFR4シグナル伝達に関与するFGF19の領域を特定および研究した。FGF19およびFGF21は、有意な配列相同性を共有するが、FGFR4シグナル伝達を活性化する能力においては異なるため、FGF19およびFGF21の領域を含むキメラタンパク質を生成した。FGFR4活性に関与する領域を特定するために、FGF21野生型配列の領域をFGF19の領域と連続的に置換するアプローチを取った。
【0182】
FGF19dCTDを用いた実験からの結果は、FGF19のC末端領域がFGFR4活性に必須ではないことを示し、したがって、FGF21のN末端領域をFGF19の対応する領域と連続的に置換した、一連のFGF19/FGF21キメラポリペプチドを生成した。これらのキメラポリペプチドを図4Aに図式化して示す。次いでこれらのキメラポリペプチドの特性を、体外受容体活性アッセイ、脂肪細胞グルコース取り込みアッセイ、および体内肝細胞増殖アッセイで査定した。図4Bの上部パネルに示す通り、全てのキメラポリペプチドは、FGFR1cおよびβKlothoでトランスフェクトしたL6細胞中のERKリン酸化を活性化した。一貫して、FGFR1cは、脂肪細胞中で発現される優性受容体であるため、全てのキメラポリペプチドは、類似した効力および有効性により、分化マウス3T3−L1脂肪細胞中のグルコース取り込みを誘発した(図4C参照)。これらの結果は、全てのキメラポリペプチドが機能的であること、ならびにFGF19とFGF21との間の融合が適切に折り畳まれた活性なタンパク質を産出することを示唆する。
【0183】
しかしながら、これらのキメラポリペプチドは、FGFR4選択的アッセイにおいて差異を示した。例えば、FGFR4およびβKlothoでトランスフェクトしたL6細胞中で、ERK−リン酸化は、FGF19残基23〜42を共有する(図4B)、キメラポリペプチドFGF19/21−1、FGF19/21−2、およびFGF19/21−3で観察されたのみである。ERK−リン酸化は、FGF19に由来するより短いN末端フラグメントを含む、FGF19/21−4またはFGF19/21−5では観察されなかった(図4B、下部パネル)。これらの結果は、必須のFGFR4活性化残基がFGF19残基38〜42内に含有されることを示す。
【0184】
次いで肝細胞増殖に及ぼすこれらのキメラポリペプチドの影響を、体内BrdU組み込みアッセイで試験した。処置動物からのBrdU免疫染色された肝臓切片の検査は、FGF19と同様に、キメラポリペプチドFGF19/21−1、FGF19/21−2、FGF19/21−3、およびFGF19/21−4が全て、中心周囲の肝細胞中で増加したBrdU標識を示したが、かかる増加は、FGF19/21−5およびFGF19/21−6で処置された動物では観察されなかったことを示した(図4D)。したがって、BrdU標識は、FGFR4媒介型ERKリン酸化を活性化する(図4Aに示される通り)各分子の能力と直接に相関した。
【0185】
実施例6
FGF19の残基38〜42は、FGFR4活性および増加した肝細胞増殖を与える
【0186】
FGF19/21−4(成熟野生型FGF19ポリペプチドからの最初の15残基を含有する)とFGF19/21−5(成熟野生型FGF19ポリペプチドからの最初の10残基を含有する)との間の比較により、FGFR4を活性化するおよび肝細胞増殖誘発する各キメラポリペプチドの能力における差異が示された。この2つのキメラポリペプチドは、5個のアミノ酸が異なるのみであるため、これらの5つの残基、つまり完全長FGF19の残基38〜42位(成熟型の残基16〜20)が、FGFR4活性を与えるのに十分であるか否かを決定するために、研究を開始した。「FGF21/1938〜42」(配列番号32)と指定され、FGF21足場を含む、別のキメラポリペプチド(完全長野生型FGF19アミノ酸配列の残基38〜42(成熟型の残基16〜20)により、完全長FGF21(成熟型の残基14〜16)の残基42〜44を置換した)を構築し、図5Aで図式化して示す。FGF19およびFGF21と類似して、FGF21/1938〜42は、FGFR1cおよびβKlothoでトランスフェクトしたL6細胞中のERK−リン酸化を誘発し(図5B)、脂肪細胞グルコース取り込みアッセイにおいて活性であった。FGF19と類似するが、FGF21とは対照的に、FGF21/1938〜42キメラポリペプチドは、FGFR4およびβKlothoでトランスフェクトしたL6細胞中のERK−リン酸化を誘発した(図5B)。FGF19処置と類似するが、FGF21とは異なり、FGF21/1938〜42処置動物からの肝臓切片の病理組織学的検査分析は、中心周囲の肝細胞中で強化されたBrdU標識を示した(図5C)。これらの結果は、FGF19からのこれらの5残基の導入が、体外FGFR4活性および体内肝細胞増殖の誘発に関して、FGF21に対して機能獲得型の表現型を与えたことを示す。
【0187】
実施例7
FGF19からの残基38〜42を置換することは、FGFR4活性および肝細胞増殖を完全には無効にしない
【0188】
FGF19 C末端切断変異体および新規のFGF19/FGF21キメラ分子を用いて、ERKリン酸化によって測定した肝細胞FGFR4活性が、増加した肝細胞増殖をもたらす可能性を決定した。また、直接の対照比較研究において、FGF21がFGF19と異なること、およびそれがFGFR4を活性化する能力を欠き、体内BrdU標識を用いて測定したとき肝細胞増殖を誘発しないことも決定した。加えて、これらの観察は、FGFR4活性に対するFGF19N末端領域の重要性を示し、完全長FGF19の残基38〜42が、その中でFGF21における対応する領域をこれらの5つのアミノ酸残基と置換することにより(図6AでFGF21/1938〜42と指定されるコンストラクト)、FGFR4活性および増加した肝細胞増殖の誘発の形態でFGF21に機能獲得型活性を提供するコンストラクトとして、FGFR4活性を与え、肝細胞増殖を増加させるのに十分であることを特定した(図6A)。加えて、FGF19のこの領域内の突然変異が、FGFR4を活性化するFGF19の能力を無効にし、肝細胞増殖を誘発するその能力を排除するか否かという問題を研究した。
【0189】
これらの5アミノ酸残基周辺のFGF19、FGF21、およびFGF23の整列を図6Bに示す。これらの5つの残基は、FGF19配列内で下線を引かれ、FGF23における対応する領域は、3つのアミノ酸、WGGのみを含有し、同様に、FGF21における対応する領域は、3つのアミノ酸、G424344のみを含有する。この領域のFGF19とFGF21との間の交換を含むコンストラクトを、6Aに示す通り構築した。FGF21/1938〜42については、前述の通り、完全長FGF21における42〜44位(成熟FGF21における14〜16位)の残基GQVを、完全長FGF19の38〜42位(成熟FGF19の16〜20位)の対応するFGF19残基WGDPI(配列番号49)と置換し、逆交換である、FGF19/2142〜44(配列番号34)については、完全長FGF19における38〜42位(成熟FGF19の16〜20位)の残基WGDPIを、完全長FGF21の42〜44位(成熟FGF21の14〜16位)で見出される対応する残基GQVと置換した。この領域がFGFR4活性に寄与する唯一の領域である場合、FGF21配列のFGF19への置換は、その活性を無効にするであろう。
【0190】
受容体活性アッセイにおいてこれらのキメラFGF分子の活性を試験するために、ごく僅かなレベルの内因性FGF受容体およびβKlothoを発現する、前述のラット筋芽細胞株L6を利用した。FGFRを単独でまたはβKlothoと共にのいずれかでトランスフェクトし、シグナル伝達をERKリン酸化レベルによってモニターした(Wu et al.,(2008)J.Biol.Chem.283(48):33304−9)。このアッセイ形態では、FGF19/2142〜44は、共受容体βKlothoの存在下で、FGFR4シグナル伝達を依然として活性化し、またFGFR1c/βKlotho複合体を活性化するその能力も影響を受けなかった。図6Aおよび6Cを参照されたい。
【0191】
組み換えタンパク質の7日間の連日腹腔内(i.p.)注射後に標識BrdUの肝細胞への組み込みを測定することによって、肝細胞増殖に及ぼすFGF19/2142〜44の影響を体内で検査した。前に観察した肝臓FGFR4活性と強化された肝細胞増殖との間の関連性と一致するように、FGF19/2142〜44処置動物からの肝臓切片の病理組織学的検査は、FGF19と類似して、中心周囲の肝細胞中で強化されたBrdU標識を示した(図6E)。これらの結果は、FGF19の追加的な領域が独立してFGFR4活性に寄与することを示す。
【0192】
βKlothoの非存在下では、FGF19/2142〜44がもはやFGFR4を活性化することができないことは、1つの驚くべき知見である(図6Cの下部パネルFGFR4のみのトランスフェクション)。これは、ヘパリン誘発性FGF19/2142〜44/FGFR4活性がこの置換によって影響を受けたことを示唆する。これは、図7に示されるβ1−β2およびβ10−β12領域のヘパリン結合部位における突然変異において観察した影響と類似して、ヘパリンの付加がもはやFGF19/2142〜44のFGFR4との相互作用を刺激しない(図6D)という固相結合アッセイによってさらに裏付けられる。FGF21/1938〜42は、ヘパリンの存在下で、FGFR4と相互作用せず、FGFR4を活性化しないため(図6D)、ヘパリン誘発性FGFR4相互作用に及ぼす、FGF19のN末端の5つの残基(38〜42)の影響は、間接的な影響であり得る。
【0193】
実施例8
FGF19においてヘパリン結合ループを置換することは、FGF19によるβKlotho独立性FGFR4活性を無効にした
【0194】
FGF19サブファミリー員は、ヘパリン/ヘパリン硫酸に対する低減された親和性を有し、共受容体αまたはβKlothoの存在は、このサブファミリー員によるFGFRの結合および活性を促進して、弱いヘパリン結合親和性を補う。唯一の例外は、FGF19/FGFR4相互作用である。比較的高い濃度のヘパリンで、FGF19は、体外および体内の両方で、βKlothoの非存在下で、FGFR4に結合しFGFR4を活性化する。
【0195】
発表されたapo−FGF19およびFGF23構造(PDBコード:2P23および2P39、Goetz et al.,(2007)Mol.Cell.Biol.27:3417−28)は、このサブファミリーのヘパリンに対して弱められた親和性についての幾つかの洞察を提供した。図7に示し、他のFGFファミリー員によるヘパリンの高い親和性結合に関与することが示されている、β1−β2ループ(配列番号52、54、および56)およびβ10−β12領域(配列番号58、60、および62)は、このサブファミリー内ではるかに大きく、FGFRとの三重複合体中のヘパリンと、潜在的に立体衝突を形成し得、したがってヘパリンに対するより低い親和性をもたらす(Goetz et al.,(2007)Mol.Cell.Biol.27:3417−28)。
【0196】
発表されたapo−FGF19構造に基づいて構築されたFGF21モデルは、潜在的立体衝突に加えて、これらの領域におけるFGF21の表面電荷もまた、ヘパリン結合にあまり好ましくなく、ヘパリンに対するFGF21の、FGF19と比較してさらに低い親和性の要因となり得ることを示した(Goetz et al.,(2007)Mol.Cell.Biol.27:3417−28)。これはFGF19とFGF21との間の主な差異の1つであるため、発表されたFGF2/FGFR1複合体構造(PDBコード:1FQ9)に基づくモデル化FGF19/FGFR構造は、これらの推定ヘパリン結合ドメインが、完全長FGF19における38〜42位の5つのアミノ酸残基の反対側に位置し、また受容体とも接触し得ることを示した。(Schlessinger et al.,(2000)Mol.Cell 6:743−50)。この観察に照らして、これらの領域がFGF19によるFGFR4活性に寄与するか否かという問題を研究した。
【0197】
推定ヘパリン結合ドメインにおけるFGF19とFGF21との間の差異を検査するために、その中でFGF19におけるβ1−β2ループおよびβ10−β12セグメントと相互作用しているヘパリンを、FGF21からの対応する配列で置換したキメラコンストラクトを設計し、発現させた。これらのキメラコンストラクトを図8Aで図式化し示す。図8Aで、FGF19−1は、その中で完全長FGF21の残基52〜58(成熟FGF21における24〜30位)によってFGF19の残基50〜57(成熟FGF19における28〜35位)を置換したキメラに相当し、FGF19−2は、その中で完全長FGF21の残基147〜161(成熟FGF21における119〜133位)によってFGF19の残基146〜162(成熟FGF19の124〜140位)を置換したキメラに相当し、FGF19−3は、その中で完全長FGF21の残基52〜58(成熟FGF21の24〜30位)によって完全長FGF19の残基50〜57(成熟FGF19における28〜35位)を置換し、かつ完全長FGF21の残基147〜161(成熟FGF21における119〜133位)によって完全長FGF19の残基146〜162(成熟FGF21の124〜140位の)を置換したキメラに相当する。これらのキメラポリペプチドを使用して、ヘパリン結合およびFGFR4活性に対するこれらのドメインの寄与を調査した。
【0198】
固相結合アッセイの結果が示す通り、FGF19のβ1−β2ループおよびβ10−β12セグメントを個々にまたは組み合わせて置換することは、βKlothoの存在下でFGFR4と相互作用する能力を保存しながら(図8C)、ヘパリン誘発性FGF19/FGFR4相互作用を無効にしたが(図8B)、これはヘパリンと相互作用するこれらの2つの領域の役割と一致する。
【0199】
機能的アッセイにおけるこれらの知見をさらに評価するために、受容体を再びL6細胞にトランスフェクトした。FGFR4を単独でまたはβKlothoと共にのいずれかでトランスフェクトし、ERKリン酸化レベルによってシグナル伝達をモニターした。固相結合結果と一致するが、FGF19とは対照的に、これらの推定ヘパリン結合ドメインにおけるキメラ置換は、ヘパリン依存性FGFR4活性を無効にした一方で(図8D、下部パネル)、βKlotho依存性FGFR1cおよびFGFR4活性は保存された(図8D、上部パネル)。これらの結果は、推定ヘパリン結合ドメインにおける突然変異が、実際にヘパリン依存性受容体活性を無効にしたことを示す。
【0200】
野生型FGF19が、ヘパリンまたはβKlothoのいずれかを通じてFGFR4を活性化し得ることが示されている。FGF19の1つの変異体、つまりFGF19dCTDは、ヘパリン依存性様態でFGFR4を選択的に活性化することができ、この活性は、強化された肝細胞増殖を依然として誘発した。本明細書に記載されるFGF19の−1変異体の場合、ヘパリン依存性FGFR4活性は、βKlotho依存性FGFR4活性を保存しながら無効にされた。FGF19dCTDおよびFGF19−1に関して、各々は、野生型FGF19機能の一部を保持すると思われ、双方ともFGFR4を活性化することができるが、シグナル伝達は、異なる補因子を通じて媒介される。
【0201】
次いで、βKlothoを通じて媒介されるFGFR4シグナル伝達対ヘパリンを通じて媒介されるシグナル伝達において、肝細胞増殖の刺激に関して定性的差異が存在するか否かという問題を研究した。FGF19−1処置動物からの肝臓切片の病理組織学的検査は、FGF19処置と類似して、中心周囲の肝細胞中の強化されたBrdU標識を示し(図8E)、ヘパリン誘発性FGFR4活性およびβKlotho誘発性FGFR4活性の両方が、強化された肝細胞増殖をもたらすことを示唆している。野生型FGF19の場合と同様に、FGF19−1もまた、他の代謝アッセイにおいて依然として活性であり、ob/ob糖尿病動物モデルにおいて脂肪細胞細胞へのグルコース取り込みおよび低減された血漿グルコースレベルを誘発することができ、ヘパリンドメイン突然変異が他のFGF19媒介型機能に影響を及ぼさなかったことを示している。
【0202】
実施例9
完全長FGF19の残基38〜42およびFGF19の両方のヘパリン結合領域がその中で置換されるキメラタンパク質は、減少したFGFR4活性および肝細胞増殖を示す
【0203】
完全長FGF19の残基38〜42(成熟FGF19の14〜20位)の5つのアミノ酸領域およびヘパリン結合ドメインにおける単一の変化は、FGFR4活性を完全には無効にしなかったため、これらの領域の3つ全ての置換を研究したキメラタンパク質。完全長FGF19の残基38〜42およびヘパリン相互作用領域の1つまたは両方を組み合わせた追加的なキメラポリペプチドを構築し、発現させた。これらのキメラポリペプチドを、それぞれFGF19−4、FGF19−5、およびFGF19−6と指定し、図9Aに図式化して示す。これらのキメラポリペプチドの活性を体外および体内アッセイで試験した。
【0204】
これらの組み合わせキメラポリペプチドは、βKlothoの存在または非存在下で、L6細胞中のFGFR4シグナル伝達を活性化することはもはやできなかったが、FGFR1cシグナル伝達を活性化することは依然としてでき(図9B)、したがってFGFR4活性を選択的に無効にしている。この観察と一致するように、FGF19−4、−5、および−6処置動物からの肝臓切片の病理組織学的検査は、中心周囲の領域内で増加した数のBrdU標識化肝細胞を示さず、肝臓の他の任意の領域内でも増加したBrdU標識は認められなかった(図9C)。したがって、野生型FGF19に関連する強化された肝細胞増殖は、5つのFGF19アミノ酸残基WGDPIおよびヘパリンドメインを組み合わせた突然変異によって無効にされた。
【0205】
陽性BrdU標識の欠如が、血清中のキメラタンパク質の分解およびクリアランスにおける差異に起因するという可能性を除外するために、マウスへの注射後の種々の時点でキメラの血清濃度を測定し、野生型FGF19と類似した、キメラタンパク質の薬物動態特性を観察した。
【0206】
実施例10
FGFR4を活性化する能力を欠くキメラ分子は、グルコース恒常性を依然として調節することができる
【0207】
完全長FGF19の38〜42位からの5つのアミノ酸、つまり残基WGDPIと、さらにヘパリン結合ドメインの1つまたは両方との組合された置換を含む、キメラFGF19分子FGF19−4、FGF19−5、およびFGF19−6は、L6細胞中のFGFR1c/βKlotho受容体シグナル伝達を依然として活性化することができたため(図9B)、グルコース恒常性を調節するそれらの能力を試験した。
【0208】
脂肪細胞へのグルコース取り込みに及ぼす、これらのキメラタンパク質の影響を最初に試験した。野生型FGF19タンパク質と類似して、キメラタンパク質もまた、インスリンから独立して、体外3T3L1脂肪細胞へのグルコース取り込みを刺激することができた(図10A)。
【0209】
グルコース恒常性を調節するキメラタンパク質の能力をさらに調査するために、ob/obマウスの腹腔内にFGF19またはFGF19−4を注射し、注射の0、1、3、および5時間後に血糖値レベルを測定した。この期間にわたる曲線下面積(AUC)平均値±S.E.M.として値を報告する(図10B)。血漿グルコースレベルは、FGF19およびFGF19−4を注射されたマウスの両方において、同等の効力および有効性により有意に低減された(図10B)。これらの結果は、FGF19−4が、FGFR4媒介型肝細胞増殖を誘発するその能力を選択的にのみ喪失したが、グルコース調節を調整するその能力を保持したことを示す。
【0210】
FGF19のβ1−β2ループセグメントのみを置換することは(FGF19−1)、βKlothoの存在下でFGFR4と相互作用する能力を保存しながら、ヘパリン誘発性FGF19/FGFR4相互作用を無効にした。野生型FGF19と類似して、FGF19−1もまた、他の代謝アッセイにおいて依然として活性であり、ob/ob糖尿病動物モデルにおいて脂肪細胞細胞へのグルコース取り込み(図10C)および低減された血漿グルコースレベル(図10D)を誘発することができ、ヘパリンドメイン突然変異が他のFGF19媒介型機能に影響を及ぼさなかったことを示唆している。
【0211】
実施例11
キメラタンパク質の薬物動態分析
【0212】
キメラコンストラクトFGF19/21−1、FGF19/21−2、FGF19/21−3、FGF19/21−4、およびFGF19/21−5の薬物動態プロフィールを研究した。次のプロトコルを用いた。2mg/kgのFGF19/21キメラタンパク質(n=5)の腹腔内注射に続いて、注射の15分、1時間、3時間、および6時間後に、C57BL6マウス血清試料を収集した。Amgenにおいて開発された酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、FGF19/21キメラタンパク質濃度を決定した。捕捉体として使用した抗体、および検出試薬は、自家で生成した。ヒトFGF21に対して産生されたマウスモノクローナル抗体を捕捉抗体として使用し、それはヒトFGF21上のC末端近辺のエピトープに特異的であった。ヒトFGF21に対して産生された、ビオチンで共役させたウサギポリクローナル抗体を検出抗体として使用し、それはヒトFGF21上の多数のエピトープを認識した。
【0213】
ELISAを次の通り行った。捕捉抗体を96ウェルのポリエチレンマイクロプレート上に結合させた。FGF19/21キメラをマウス血漿中にスパイクすることによって、標準物および精度管理試料を調製した。アッセイ緩衝液中での前処置後、標準物、精度管理、マトリクスブランク、および未知の試料をウェルに充填した。2時間のインキュベーションとそれに続く洗浄後、ビオチンで共役させた検出抗体をウェルに添加した。1時間のインキュベーションとそれに続く洗浄後、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)共役体(R&D Systems,Inc)をウェルに添加した。30分のインキュベーションとそれに続く洗浄後、テトラメチルベンジジン(TMB)ペルオキシダーゼ基質溶液をウェルに添加した。HRPの存在下で、捕捉抗体によって結合されたFGF19/21キメラの量と比例した比色定量シグナルが生成された。色の発達が停止し、プレートリーダーを用いて450〜650nmで、色の強度(光学密度、OD)を測定した。同一のプレート上でアッセイした標準曲線とのソフトウェア媒介による比較を通じて、OD単位の変換を未知の試料についての濃度に変換した。SoftMax Pro5(Molecular Devices Corp.)データ整理パッケージを用いてデータを回帰させた。
研究の結果を図11に提示する。
【0214】
実施例12
FGF19残基W38の欠失または突然変異は、FGFR4およびFGFR1c機能を無効にする
【0215】
FGF19−1ポリペプチドの38〜42位の残基WGDPI(配列番号49)領域内の16個の変異体(ここでFGF19の残基50〜57は、FGF21の残基52〜58で置換されている;図8参照)を、実施例1に記載される通り発現させ、精製した。FGFR1c/βKlothoまたはFGFR4/βKlothoのいずれかでトランスフェクトしたL6細胞を、それらの精製されたタンパク質で処置した。処置の15分後、ERKリン酸化レベルを測定することによって、FGFR1cまたはFGFR4の変異体の活性を決定したが、それを図12に要約する。
【0216】
図13の棒グラフは、0、2.5、16、および100nMの濃度で投与したFGF19変異体のFGFR1c媒介型活性のレベルを反映する。図14の棒グラフは、0、2.5、7.4、44、67、および200nMの濃度で投与したFGF19変異体のFGFR1c媒介型活性のレベルを反映する。
【0217】
図15の棒グラフは、0、2.5、16、および100nMの濃度で投与したFGF19変異体のFGFR4媒介型活性のレベルを反映する。図15の棒グラフは、0、2.5、7.4、44、67、および200nMの濃度で投与したFGF19変異体のFGFR4媒介型活性のレベルを反映する。
【0218】
W38、P41、およびI42の欠失は、変異体FGF19タンパク質によるFGFR1cおよびFGFR4受容体の両方の活性を無効にした一方で、G39の欠失は、双方の受容体上の活性を低減させ、D40の欠失は、FGFR1c活性を選択的に除去し、FGFR4活性に対してはそれよりはるかに低い影響を有した。
【0219】
次いで5つのアミノ酸の各々を、アラニンに個々に突然変異させて、受容体活性におけるそれらの関与を研究した。GDPI(配列番号71)配列のアラニンへの突然変異の幾つかが、効力および/または有効性のいずれかに影響を及ぼした一方で、W38AのみがFGFR1cおよびFGFR4の両方の活性を完全に無効にした。
【0220】
この研究の結果は、W38がFGF19誘発性FGFR活性に必須の残基であることを示す。この結果は、FGF19からFGFR4媒介型活性を選択的に減少させるまたは除去するためのこの残基の欠失または突然変異が、38位の野生型からの変化、特に欠失または突然変異を必要とするであろうことをさらに示す。FGFR4媒介型活性におけるこの減少は、W38のみを突然変異もしくは欠失させることよって達成可能であり得るか、またはWGDPIもしくは周辺領域において追加的な欠失もしくは突然変異を必要とする可能性がある。1つのかかる例は、FGF19−4(FGF19の残基38〜42をFGF21の残基42〜44で置換し、FGF19の残基50〜57をFGF21の残基52〜58で置換した;図8参照)であり、この場合、W38、P41の欠失およびI42Vの突然変異を同時に行うことにより、かかる選択的FGFR1c媒介型活性を得た。
【0221】
FGF19の分裂促進性を軽減することによって、38位の突然変異または欠失を含むFGF19の変異型は、FGF19を治療用に適切な分子および製薬開発のために魅力的な候補にさせる可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4を含む野生型成熟FGF19ポリペプチド足場を含み、FGFR4媒介型シグナル伝達活性を減少させる修飾をさらに含む、キメラポリペプチド。
【請求項2】
前記修飾は、前記FGF19ポリペプチド足場の16〜20位の残基WGDPIの1つ以上を、(a)アミノ酸なし、または(b)前記野生型アミノ酸配列中の前記位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換することを含む、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項3】
前記WGDPI配列のトリプトファン残基が欠失される、請求項2に記載のキメラポリペプチド。
【請求項4】
前記残基WGDPIは、野生型FGF21または野生型FGF23アミノ酸配列中に存在する1〜5個の隣接した残基で置換される、請求項2に記載のキメラポリペプチド。
【請求項5】
前記1〜5個の隣接した残基は、野生型FGF21アミノ酸配列中に存在する、請求項4に記載のキメラポリペプチド。
【請求項6】
前記1〜5個の隣接した残基は、GQVである、請求項5に記載のキメラポリペプチド。
【請求項7】
前記修飾は、前記FGF19ポリペプチド足場の28〜35位の残基SGPHGLSSの1つ以上を、(a)アミノ酸なし、または(b)前記野生型アミノ酸配列中の前記位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換することを含む、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項8】
前記残基SGPHGLSSは、野生型FGF21または野生型FGF23アミノ酸配列中に存在する1〜8個の隣接した残基で置換される、請求項7に記載のキメラポリペプチド。
【請求項9】
前記1〜8個の隣接した残基は、野生型FGF21アミノ酸配列中に存在する、請求項8に記載のキメラポリペプチド。
【請求項10】
前記1〜8個の隣接した残基は、DDAQQTEである、請求項9に記載のキメラポリペプチド。
【請求項11】
前記修飾は、前記FGF19ポリペプチド足場の124〜140位の残基SSAKQRQLYKNRGFLPLの1つ以上を、(a)アミノ酸なし、または(b)前記野生型アミノ酸配列中の前記位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換することを含む、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項12】
前記残基SSAKQRQLYKNRGFLPLは、野生型FGF21または野生型FGF23アミノ酸配列のいずれかの中に存在する1〜17個の隣接した残基で置換される、請求項11に記載のキメラポリペプチド。
【請求項13】
前記1〜17個の隣接した残基は、野生型FGF21アミノ酸配列中に存在する、請求項12に記載のキメラポリペプチド。
【請求項14】
前記1〜17個の隣接した残基は、PGNKSPHRDPAPRGPである、請求項13に記載のキメラポリペプチド。
【請求項15】
減少したFGFR4媒介型シグナル伝達活性を示し、配列番号4を含む野生型FGF19ポリペプチド足場を含む、キメラポリペプチドであって、配列番号4の16〜20位の残基WGDPIの1つ以上は、(a)アミノ酸なし、または(b)前記野生型アミノ酸配列中の前記位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されており、かつ
(i) 配列番号4の28〜35位の残基SGPHGLSSの1つ以上が、(1)アミノ酸なし、または(2)前記野生型アミノ酸配列中の前記位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されていることと、
(ii) 配列番号4の124〜140位の残基SSAKQRQLYKNRGFLPLの1つ以上が、(1)アミノ酸なし、または(2)前記野生型アミノ酸配列中の前記位置に位置するアミノ酸以外のアミノ酸で置換されていることと、のうちの1つまたは両方である、キメラポリペプチド。
【請求項16】
前記WGDPI配列のトリプトファン残基が欠失される、請求項15に記載のキメラポリペプチド。
【請求項17】
前記残基WGDPIは、野生型FGF21または野生型FGF23アミノ酸配列中に存在する1〜5個の隣接した残基で置換される、請求項15に記載のキメラポリペプチド。
【請求項18】
前記1〜5個の隣接した残基は、野生型FGF21アミノ酸配列中に存在する、請求項17に記載のキメラポリペプチド。
【請求項19】
前記1〜5個の隣接した残基は、GQVである、請求項17に記載のキメラポリペプチド。
【請求項20】
前記残基SGPHGLSSは、野生型FGF21または野生型FGF23アミノ酸配列中に存在する1〜8個の隣接した残基で置換される、請求項15に記載のキメラポリペプチド。
【請求項21】
前記1〜8個の隣接した残基は、野生型FGF21アミノ酸配列中に存在する、請求項20に記載のキメラポリペプチド。
【請求項22】
前記1〜8個の隣接した残基は、DDAQQTEである、請求項21に記載のキメラポリペプチド。
【請求項23】
前記残基SSAKQRQLYKNRGFLPLは、野生型FGF21または野生型FGF23アミノ酸配列中に存在する1〜17個の隣接した残基で置換される、請求項15に記載のキメラポリペプチド。
【請求項24】
前記1〜17個の隣接した残基は、野生型FGF21アミノ酸配列中に存在する、請求項23に記載のキメラポリペプチド。
【請求項25】
前記1〜17個の隣接した残基は、PGNKSPHRDPAPRGPである、請求項24に記載のキメラポリペプチド。
【請求項26】
配列番号4の16〜20位の前記残基WGDPIは、GQVで置換され、かつ
(a)配列番号4の28〜35位の前記残基SGPHGLSSは、DDAQQTEで置換されることと、
(b)配列番号4の124〜140位の前記残基SSAKQRQLYKNRGFLPLは、PGNKSPHRDPAPRGPで置換されることと、のうちの1つまたは両方である、請求項15に記載のキメラポリペプチド。
【請求項27】
請求項1または15に記載のキメラポリペプチドをコードする、核酸分子。
【請求項28】
請求項27に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項29】
請求項27に記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項30】
請求項1または15に記載のキメラポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項31】
糖尿病および肥満からなる群から選択される代謝疾患を治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、請求項30に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。
【請求項32】
請求項1または15に記載のキメラポリペプチドに特異的に結合する、抗原結合タンパク質。
【請求項33】
異質部分に融合された、請求項1または15に記載のキメラポリペプチドを含む、キメラ融合ポリペプチド。
【請求項34】
前記異質部分は、IgG分子およびPEG分子のFc領域からなる群から選択される、請求項33に記載のキメラ融合ポリペプチド。
【請求項35】
配列番号4は、N末端上で1〜15個のアミノ酸、C末端上で1〜15個のアミノ酸、またはN末端上で1〜15個のアミノ酸およびC末端上で1〜15個のアミノ酸の両方を切断される、請求項1または15に記載のキメラポリペプチド。
【請求項36】
FGFR4媒介型シグナル伝達活性を減少させる前記修飾を除いて、配列番号4と95%以上同一であるポリペプチド足場を含む、請求項1または15に記載のキメラポリペプチド。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D−1】
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【図6D−2】
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【図6E】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B−1】
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【図10B−2】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図13F】
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【図13G】
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【図13H】
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【図13I】
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【図13J】
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【図13K】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図14F】
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【図14G】
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【図14H】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図15F】
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【図15G】
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【図15H】
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【図15I】
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【図15J】
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【図15K】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図16E】
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【図16F】
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【図16G】
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【図16H】
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【公表番号】特表2012−530493(P2012−530493A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516277(P2012−516277)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/038894
【国際公開番号】WO2010/148142
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】