説明

キメラ呼吸器合胞体ウイルスポリペプチド抗原

キメラ呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ポリペプチド抗原が提供される。開示されるポリペプチドは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)融合(F)タンパク質ポリペプチドのF1ドメインと切断されないように連結されたF2ドメインを含んでなる第一のアミノ酸配列と、免疫学的に優性なエピトープを含んでなるRSV付着(G)タンパク質ポリペプチドの一部を含んでなる第二のアミノ酸配列とを含む。本開示はまた、該キメラRSVポリペプチドをコードする核酸、該キメラRSVポリペプチドを含む医薬組成物、ならびにそれらの製造および使用のための方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
先行出願の相互参照
本願は、2008年7月18日出願の米国仮出願第61/081,888号の先の出願日の利益を主張し、その開示は引用することにより本明細書の一部とされる。
【0002】
37C.F.R.§1.71(E)に従う著作権の通知
本特許文献の開示の一部は、著作権保護の対象となる内容を含む。著作権者は、特許文献または特許開示のいずれのものによる複製も、特許商標庁の特許ファイルまたは記録に表れるので、これに異議を申し立てないが、その他の場合の全ての著作権はいかなる場合にも保護される。
【0003】
発明の分野
本開示は免疫学の分野に関する。より詳しくは、本開示は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に特異的な免疫応答を惹起するための組成物および方法に関する。
【0004】
背景技術
ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、月齢6か月未満の乳児および妊娠35週以前の未熟児における下気道感染(LRI)の、世界で最も多い原因である。RSV疾患のスペクトルには、鼻炎および耳炎から肺炎および細気管支炎までの幅広い一連の呼吸器徴候が含まれ、後者の2つに疾患は相当な罹患率および死亡率を伴う。ヒトはRSVの唯一の既知の保有者である。汚染された鼻腔分泌物からのウイルスの拡散は大きな呼吸器飛沫を介して起こり、伝染には感染個体または汚染された表面との密な接触が必要である。RSVは玩具またはその他の物品上で数時間存続でき、これにより、院内、特に小児科病棟でのRSV感染率が高いことが説明される。
【0005】
RSVの世界の年間感染数および死亡数はそれぞれ6千4百万および16万と推計される。米国では、RSVだけで、年間、18,000〜75,000人の入院、そして90〜1900人の死亡の原因となっていると見積もられる。温帯気候では、RSVが、毎年の冬に流行する、細気管支炎および肺炎を含む急性LRIの原因であることがよく述べられている。米国では、ほぼ全ての小児が、2歳までにRSVに感染している。それ以外の点では健康な小児におけるRSV関連LRIの罹患率は、2歳までで年間小児1000人当たり37人(6か月未満の乳児では年間小児1000人当たり45人)および入院リスクは年間小児1000人当たり6人(6か月未満の乳児では年間小児1000人当たり11人)として計算された。罹患率は心臓肺疾患を有する小児および未熟児で高く、米国のRSV関連入院のほぼ半数を占めている。RSVにより引き起こされるより重篤なLRIを受けた小児はその後、小児喘息の発症率が高まる。重篤なLRIおよびそれらの後遺症を持つ小児の医療費は大きく、RSVは、高齢者のインフルエンザ様疾患からの罹患の重要な原因としてますます認識されるようになっており、RSVにより引き起こされる疾患から保護することができる安全かつ有効なワクチンの必要性が強調されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明はキメラ呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗原に関する。キメラRSV抗原は、N末端からC末端の方向に、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)融合(F)タンパク質ポリペプチドのF1ドメインと切断されないように連結されたF2ドメインを含んでなる第一のアミノ酸配列と、免疫学的に優性なエピトープを含んでなるRSV付着(G)タンパク質ポリペプチドの一部を含んでなる第二のアミノ酸配列とを含む。この抗原は、対象に投与すると免疫応答を惹起し、RSV感染の徴候を治療および/または予防するために使用することができる。また、該キメラ抗原をコードする核酸、該キメラ抗原を含む免疫原性組成物、および該キメラ抗原を製造および使用する方法に関する。
【発明の具体的説明】
【0007】
導入
RSV感染により引き起こされる徴候および後遺症から保護するワクチンの開発は、宿主の免疫応答がその疾病の病因に役割を果たしているようであるという事実により複雑化している。1960年代の初期の研究では、ホルマリンで不活性化されたRSVワクチンを接種した小児が非接種対照被験者に比べて、次にウイルスに曝された際により重篤な疾患を患うことが示されている。これらの初期の治験は、ワクチン接種を受けた人の80%の入院と2人の死者を出した。疾患の高い重篤度は動物モデルでも再現され、血清中和抗体の不十分なレベル、局部的免疫性の欠如、ならびに肺の好酸球増加とIL−4およびIL−5サイトカインの産生の増大を伴う2型ヘルパーT細胞様(Th2)免疫応答の過度な誘導から起こると思われる。これに対し、RSV感染から保護する首尾よいワクチンは、IL−2およびγ−インターフェロン(IFN−γ)の産生を特徴とするTh1型の免疫応答を誘導する。
【0008】
健康集団およびリスク集団で持続的かつ防御免疫応答を生じる安全かつ有効なRSVワクチンを生産するために、死滅もしくは不活性化ウイルス、弱毒した生ウイルスおよび精製サブユニットアプローチを含む種々のアプローチが試みられてきた。しかしながら、これまでに評価された候補に、RSV感染を予防する、および/またはRSV疾患を軽減もしくは予防する目的でワクチンの市販に至ったものは無い。1つのアプローチは、RSV融合(F)糖タンパク質および付着(G)糖タンパク質の双方の成分を含む組換えキメラ抗原の生産に関する。キメラRSV抗原の例は米国特許第5,194,595号に開示されている。これらのキメラ構築物は、RSV FおよびGタンパク質の全細胞外ドメイン(すなわち、RSV Fのアミノ酸残基1〜526、そしてRSV Gの69〜298)を含んでいた。このキメラ抗原は動物モデル(例えば、マウス、コットンラット)において免疫応答を惹起したが、生産および安定性の難しさから市販用に加工することはできなかった。
【0009】
本発明は、優れた免疫原性と優れた加工特性を有する新規なキメラFGポリペプチドに関する。これらの新規なキメラRSV抗原は、予防用ワクチンおよび治療用ワクチンとしての投与に好適な安全かつ有効なキメラRSV抗原を生産するために、これまでの試みで直面したいくつかの重大な欠点を克服する。
【0010】
一態様において、本発明は、N末端からC末端の方向に、(i)Fタンパク質ポリペプチドのF1ドメインと切断されないように連結されたF2ドメインを含んでなる第一のアミノ酸配列と、(ii)免疫学的に優性なエピトープを含んでなるGタンパク質ポリペプチドの一部を含む第二のアミノ酸配列とを含んでなるキメラポリペプチドを含む呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗原に関する。典型的には、RSV Fタンパク質ポリペプチドのF2ドメインとF1ドメインはアミノ酸リンカーによって切断されないように連結されている。F2ドメインとF1ドメインは、F2ドメインとF1ドメインを分離可能とし、天然Fタンパク質の成熟およびアセンブリの際にpep27ペプチドの放出をもたらすフリン切断認識配列および/または部位を削除することにより切断できない様式で連結することができる。例えば、該キメラRSVポリペプチドは、フリン切断部位を除去し、それによりキメラポリペプチドを切断できないようにする少なくとも1つのアミノ酸欠失または置換を含むことができる。例えば、1以上のアミノ酸(例えば、106番と133番の位置で)欠失させるか、または置換して切断不能のFタンパク質を作出することができる。ある特定の例示的実施形態では、2つのアミノ酸(少なくとも1つのアルギニン、例えば、106番と107番の位置のアルギニンとアラニン、また、133番と134番の位置のアルギニンとリシンを含む)を欠失させるか、または置換することができる。
【0011】
所望により、発現および回収を助けるために、キメラRSVポリペプチドはN末端にシグナルペプチドを含んでもよい。シグナルペプチドは、当技術分野で公知の多数のシグナルペプチドの中から選択することができ、一般には、キメラポリペプチドの組換え発現向けに選択された系における生産およびプロセシングを助長(増強または最大化)するように選択される。シグナルペプチドは通常、アミノ酸18〜25個の範囲の長さである。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドはRSV Fタンパク質に由来し、例えば、配列番号2のアミノ酸残基1〜23である。F2ドメインは天然Fタンパク質ポリペプチドのアミノ酸残基24〜105を含み得る。シグナルペプチドとF2ドメインとの間の厳密なアミノ酸限界は1以上のアミノ酸で異なり得る(実際には、RSV Fタンパク質から選択されたシグナルペプチドの場合には、このような限界は任意である)。例示的実施形態では、F1ドメインは、F1ドメインの細胞外部分の本質的に全て、例えば、天然Fタンパク質ポリペプチドの残基137〜残基528を含む。上記で示したように、F2およびF1ドメインは、アミノ酸リンカー配列によって、切断されないように連結させることができる。本明細書に開示されているキメラFGポリペプチドに関して好適な多くのアミノ酸リンカーが当業者に知られている。例示的実施形態では、該リンカーは配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8の配列から選択される。
【0012】
Fポリペプチド配列は、RSV Gタンパク質ポリペプチドの一部とフレーム内で連結される。Gタンパク質の一部は、生産特性を改良するように選択される(例えば、全長Gタンパク質ポリペプチドと比べて)。このGタンパク質の一部は、免疫学的に優性なエピトープ、特に、アミノ酸残基183〜203の間の免疫学的に優性なエピトープを保持するように選択される。例えば、RSV Gタンパク質の一部はアミノ酸152〜229を含む。ある特定の例示的実施形態では、RSV Gタンパク質の一部は、Gタンパク質のアミノ酸残基149〜229を含む。
【0013】
F成分およびG成分の配列は、天然に存在するFタンパク質配列およびGタンパク質配列から選択することができ、単一の株または1を超える株に配列が相当するように選択することができる。例えば、F部分とG部分は同じ株に由来してもよいし、あるいはF部分とG部分はそれぞれ異なる株に由来してもよいし、あるいはF部分またはG部分またはその双方は、1を超える株に由来するアミノ酸に相当するハイブリッドであり得る。所望により、キメラRSVポリペプチドは天然に存在するRSVポリペプチドと比較して1以上のアミノ酸置換を含み得る。例えば、モデル系においてワクチンにより増強されるウイルス性疾患の軽減または予防に関連しているアミノ酸置換などのアミノ酸置換をGタンパク質部分に導入することができ、例えば、キメラポリペプチドはGタンパク質の残基191のアラニン(N191A)によるアスパラギンの置換を含み得る。
【0014】
所望により、本明細書に開示されているキメラRSVポリペプチドは、ポリヒスチジンタグ、あるいは組換え発現タンパク質の回収および/または精製を助長または促進するように設計された別のこのような配列を含み得る。
【0015】
ある特定の例示的実施形態では、キメラRSVポリペプチドは、配列番号11もしくは13またはその部分配列(例えば、アミノ酸1〜23のシグナル配列を欠く、または違うシグナル配列の置換を有する、かつ/またはC末端ヒスチジンタグを欠く部分配列)から選択されるアミノ酸配列を有する。有利には、該キメラRSVポリペプチドは、RSV Fタンパク質およびRSV Gタンパク質双方の免疫優性エピトープを少なくとも1つ含む。
【0016】
発現(例えば、および精製または単離)時、キメラRSVポリペプチドは、天然Fタンパク質と免疫学的に類似するコンフォメーションを有する多量体へと組み立てられる。例えば、キメラRSVポリペプチドは有利には三量体へと組み立てられる。
【0017】
また、この開示には、担体または賦形剤とともに処方されたキメラRSVポリペプチドのいずれかを含む免疫原性組成物が包含される。一般に、担体または賦形剤は、バッファーなどの薬学上許容される担体または賦形剤である。所望により、担体または賦形剤は、キメラRSVポリペプチドの安定性、溶解度または安定性と溶解度の双方を高める付加的成分を含み得る。所望により、免疫原性組成物は、例えばRSVにより誘発される疾患または徴候を予防、軽減または改善するためにその組成物の投与が意図される対象集団に投与するのに好適なアジュバントをさらに含んでなる。よって、アジュバントは、新生児、幼児または成人、例えば、少なくとも65歳の成人に投与するように選択することができる。有利には、アジュバントは、Th1偏向アジュバント(Th1-biasing adjuvant)である。ある特定の実施形態では、アジュバントは3D−MPLなどのTLR−4リガンド、または脂質Aの他の任意の合成誘導体である。所望により、免疫原性組成物はまた、ミョウバンなどの特定の担体を含んでもよい。ある特定の実施形態では、アジュバントはリポソームまたはエマルション、例えば、水中油型エマルションを含み得る。
【0018】
免疫原性組成物は有利には、ヒトにおいて薬剤として用いるために、例えば、ヒト対象への投与後にRSVによる感染を予防もしくは軽減するため、またはヒト対象への投与後にRSVによる感染により引き起こされる病的応答を予防または軽減するために処方される。所望により、免疫原性組成物はまた、RSV以外の病原性生物の少なくとも1つの付加的抗原も含む。例えば、病原性生物は、パラインフルエンザウイルス(PIV)、インフルエンザウイルス、B型肝炎ウイルスおよび/またはポリオウイルスなどのRSV以外のウイルスであり得る。あるいは、病原性生物はジフテリア、破傷風、百日咳、好血性インフルエンザ(Hemophilus influenza)および/または肺炎球菌などの細菌であり得る。
【0019】
本発明の別の態様は、本明細書で提供されるキメラポリペプチドのいずれかをコードする組換え核酸に関する。いくつかの実施形態では、該核酸は、選択された宿主細胞における発現のために至適化されたコドン(例えば、哺乳類細胞、酵母細胞、植物細胞などにおける発現のために至適化されたコドン)を持ったポリヌクレオチド配列を含む。場合によっては、該核酸は原核生物または真核生物発現ベクターなどのベクター中に含まれる。このような核酸またはベクターが導入された細胞(すなわち、宿主細胞)も、本発明の1つの特徴である。該宿主細胞は細菌細胞であり得るが、より一般には、酵母細胞(例えば、ピッチア(picchia))、植物細胞、昆虫細胞または哺乳類細胞(例えば、CHO細胞)などの真核細胞であろう。
【0020】
キメラポリペプチドおよび核酸は、RSV感染を処置する(例えば、予防的に)ための薬剤の製造において有用である。よって、本発明はまた、本明細書に開示されているキメラRSVポリペプチドのいずれかを含有する、免疫学的に有効な量の組成物を投与することにより、RSVに対して免疫応答を惹起する方法も提供する。有利には、ヒト対象(新生児、幼児または小児または高齢者など)に投与した際に、該組成物はRSVとの接触後にウイルス性疾患を増強することなく、RSVに特異的な免疫応答を惹起する。有利には、該組成物は、RSVによる感染を軽減もしくは予防する、かつ/またはRSVによる感染後に病的応答を軽減もしくは予防する防御免疫応答を惹起する。一般に、該免疫応答はTh1型サイトカインの産生を特徴とする免疫応答、例えば、Th1型免疫応答を惹起する。
【0021】
用語
反対の説明がない限り、本明細書で用いられる総ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者によって一般に理解されているものと同じ意味を持つ。分子生物学の一般用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V, Oxford University Press発行, 1994 (ISBN 0-19-854287-9); Kendrew et al. (編), The Encyclopedia of Molecular Biology, Blackwell Science Ltd.発刊, 1994 (ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers (編), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, Inc.発行, 1995 (ISBN 1-56081-569-8)に見出せる。
【0022】
単数の「a」、「an」および「the」は、文脈が反対のことを明確に示さない限り、複数の対象も含む。同様に、「または(or)」という用語は、文脈が反対のことを明確に示さない限り、「および(and)」を含むものとする。「複数」とは、2以上を表す。さらに、核酸またはポリペプチドに関して示される総ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、ならびに総ての分子量または分子質量値は概数であり、説明のために示される。さらに、抗原などの物質の濃度またはレベルに関して示される数値限界も概数であるものとする。よって、濃度が少なくとも(例えば)200pgであることが示される場合には、その濃度は少なくともおよそ(または「約」または「〜」)200pgであると理解されるものとする。
【0023】
本明細書に記載されているものと類似または等価な方法および材料は本開示の実施または試験に使用可能であるが、以下に好適な方法および材料を記載する。「含んでなる」とは、「含む」を意味する。よって、文脈上そうでないという必要がない限り、「含んでなる(comprises)」ならびに「含んでなる(comprise)」および「含んでなる(comprising)」という用語は、示された化合物または組成物(例えば、核酸、ポリペプチド、抗原)もしくは工程、または化合物群もしくは工程群を包含するが、他のいずれの化合物、組成物、工程またはそれらの群を排除しないことを意味する。省略形の「e.g.」は、「Latin exempli gratia」に由来し、本明細書では限定されない例を示して用いる。よって、省略形の「e.g.」は、「for example」という用語と同義である。
【0024】
本開示の種々の実施形態の検証を助けるため、以下、用語を説明する。その他の用語および説明は本開示の文脈で示す。
【0025】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、パラミクスウイルス科肺炎ウイルス亜科肺炎ウイルス属の病原性ウイルスである。RSVのゲノムは、11のタンパク質をコードする、15,222ヌクレオチド長の一本鎖、ネガティブセンスRNA分子である。RNAゲノムとウイルスNタンパク質との強固な会合は、ウイルスエンベロープ内部に包まれたヌクレオキャプシドを形成する。G糖タンパク質の抗原性の違いに基づき、A群およびB群の2群のヒトRSV株が記載されている。これまでに多数のRSV株が単離されている。図4および5に、例示的な株がGenBankおよび/またはEMBL受託番号により示されている。さらなるRSV株も単離されると思われ、RSV属に包含される。同様に、RSV属には、遺伝的浮動または人工合成および/もしくは組換えにより天然から生じる変異体(例えば、これまでに同定された、または今後同定される株)も包含される。
【0026】
「Fタンパク質」または「融合タンパク質」または「Fタンパク質ポリペプチド」または「融合タンパク質ポリペプチド」とは、RSV融合タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全部または一部を有するポリペプチドまたはタンパク質を意味する。「Gタンパク質」または「Gタンパク質ポリペプチド」とは、RSV付着タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全部または一部を有するポリペプチドまたはタンパク質を意味する。多くのRSV融合タンパク質および付着タンパク質が記載されており、当業者に知られている。
【0027】
本開示の理解を助けるために、RSV Fおよび/またはGタンパク質のアミノ酸残基位置に関して、総てのアミノ酸残基位置は、配列番号2の例示的Fタンパク質のアミノ酸位置および配列番号4の例示的Gタンパク質のアミノ酸位置を参照して示される(すなわち、アミノ酸残基位置は配列番号2の例示的Fタンパク質のアミノ酸位置および配列番号4の例示的Gタンパク質のアミノ酸位置に相当する)。しかしながら、いずれのRSV A株またはB株からの匹敵するアミノ酸を使用してもよい。他のいずれのRSV A株またはB株の匹敵するアミノ酸位置も、容易に入手できる周知のアライメントアルゴリズム(BLAST、例えば、デフォルトパラメーターを使用)を用いて、選択されたRSV株と配列番号2のアミノ酸配列をアラインすることにより、当業者によって容易に決定することができる。多くの株からの例示的FおよびGタンパク質配列がWO2008114149に示されており、そのいずれを本明細書に開示されているキメラFGタンパク質に関して用いてもよい。WO2008114149は、キメラGタンパク質において用いるのに好適なRSV FおよびGタンパク質の配列を開示する目的で、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0028】
「キメラFGポリペプチド」または「FG抗原」または「FGポリペプチド抗原」は、一般にRSV Fタンパク質およびRSV Gタンパク質の双方の抗原決定基またはエピトープを含むポリペプチド成分を組み込んだキメラポリペプチドである。本開示に関して、キメラFGポリペプチドは、N末端からC末端の方向に、F1ドメインと切断されないように連結されたF2ドメインを含む第一のアミノ酸配列と、免疫学的に優性なエピトープを含むRSV Gタンパク質の一部を含む第二のアミノ酸配列とを含む。サブユニットおよびドメインという用語は、Fタンパク質および/またはF0ポリペプチドの構造ドメインに関して互換的に用いられる。本明細書においてキメラとは、Fタンパク質成分とGタンパク質成分が双方とも同じ血清型または株に由来するポリペプチド、ならびにFタンパク質成分およびGタンパク質成分が異なる血清型または株に由来するポリペプチドを含む。
【0029】
核酸またはタンパク質(例えば、RSV FもしくはGタンパク質もしくはタンパク質ドメイン、またはFGキメラポリペプチド)に関して「変異体」は、参照核酸またはタンパク質とは異なる核酸またはポリペプチドである。通常、変異体と参照核酸またはタンパク質の間の違いは、参照と比べた場合に比較的少数の違いからなる。このような違いはアミノ酸付加、欠失または置換であり得る。よって、変異体は一般に、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基のせいぜい約1%、または2%、または5%、または10%、または15%、または20%だけが異なる。よって、RSV FもしくはGタンパク質、またはキメラFGポリペプチドに関して変異体は、一般に、参照タンパク質、例えば、配列番号2および4に示されている参照配列、または本明細書に開示されているいずれかの例示的FGポリペプチドと少なくとも80%、または85%、より一般には少なくとも約90%以上、例えば、95%またはさらには98%または99%の配列同一性を有する。本開示の特徴として含まれるさらなる変異体は、例えばWO2008114149に示されている例示的配列のいずれかに由来する(同じ株でも異なる株でもよい)F2成分(例えば、配列番号2とのアライメントにより数値的に示されるアミノ酸24〜105の全部または一部を含んでなる)および/またはF1成分(例えば、配列番号2とのアライメントにより数値的に示されるアミノ酸137〜528の全部または一部を含んでなる)と、例えばWO2008114149に示されている例示的配列のいずれかから選択されるGタンパク質成分(例えば、配列番号4とのアライメントにより数値的に示されるアミノ酸149〜229の全部または一部)を組み込んだキメラFGポリペプチドである。変異体は遺伝的浮動により生じる場合もあるし、あるいは部位指定もしくはランダム突然変異誘発を用いて、または2つ以上の既存の変異体の組換えによって人工的に作出することもできる。例えば、変異体FGポリペプチドは、配列番号11および13の例示的FGキメラと比べて1または2または5または10または15または50個のアミノ酸の違いか、あるいは例えば配列番号10および12などの例示的FGキメラ核酸と比べて約100個までのヌクレオチドの違いを含み得る。
【0030】
ポリペプチドまたはタンパク質の「ドメイン」は、そのポリペプチドまたはタンパク質内の構造的に定義された要素である。本開示に関して「フリン切断ドメイン」とは、フリンプロテアーゼによる前駆体ポリペプチドの切断により定義されるドメインである。例えば、Fタンパク質は、F0と呼ばれる単一のポリペプチドとして合成される。このF0ポリペプチドは次に、フリンプロテアーゼにより、コンセンサスフリン認識モチーフにおいて切断され、F2およびF1と呼ばれる2つの構造的に独立したポリペプチド単位を生じる。F2は、アミノ酸24(シグナルペプチドの後)から第一の(N末端からC末端の方向に)フリン切断認識部位にわたる。F1は、第二のフリン切断部位からF0ポリペプチドのC末端にわたる。本開示に関してF1とはまた、F1ドメインの細胞外部分(例えば、アミノ酸137〜528)を含むF0ポリペプチドの一部を指しても用いられる。
【0031】
「天然」および「天然に存在する」とは、それが天然にあるのに同じ状態で存在するタンパク質、ポリペプチドまたは核酸などの要素を意味する。すなわち、この要素は人工的に改変されたものではない。本開示に関して、例えば、種々の天然に存在する株またはRSVの単離物から得られたRSVタンパク質またはポリペプチドの多くの天然/天然に存在する変異体が存在すると理解される。
【0032】
「ポリペプチド」とは、単量体がアミド結合によって連結されているアミノ酸残基である。本明細書において「ポリペプチド」または「タンパク質」とは、任意のアミノ酸配列を包含するものとし、糖タンパク質などの修飾配列を含む。「ポリペプチド」とは、特に、天然に存在するタンパク質ならびに組換えまたは合成生産されたものを包含する。ポリペプチドに関して「断片」とは、ポリペプチドの一部(すなわち、部分配列)を意味する。「免疫原性断片」とは、全長参照タンパク質またはポリペプチドの少なくとも1つの優性免疫エピトープを保持するポリペプチドのあらゆる断片を意味する。ポリペプチド内での配向は一般に、N末端からC末端の方向に示され、個々のアミノ酸のアミノ部分およびカルボキシ部分の配向により定義される。ポリペプチドはN末端またはアミノ末端からC末端またはカルボキシ末端に向かって翻訳される。
【0033】
「シグナルペプチド」は、新たに合成される分泌型タンパク質または膜タンパク質の、例えば小胞体の膜からの出入りを命令する短いアミノ酸配列(例えば、およそ18〜25アミノ酸長)である。シグナルペプチドは、普遍的ではないが多くの場合、ポリペプチドのN末端に位置し、多くの場合、タンパク質が膜を通過した後にシグナルペプチダーゼによって切断される。シグナル配列は一般に、N末端極性塩基性領域(n−領域)、疎水核および親水性領域(c−領域)の、3つの共通する構造的特徴を含む。
【0034】
「ポリヌクレオチド」および「核酸配列」とは、少なくとも10塩基長の、重合形態のヌクレオチドを意味する。ヌクレオチドはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはいずれかのヌクレオチドの修飾形態であり得る。この用語は一本鎖または二本鎖形態のDNAを含む。「単離されたポリヌクレオチド」とは、由来する生物の天然に存在するゲノムにおいてそれが直接連続する両方のコード配列(1つは5’末端、1つは3’末端)とは直接連続しないポリヌクレオチドを意味する。一実施形態において、ポリヌクレオチドはポリペプチドをコードする。核酸の5’および3’配向は、個々のヌクレオチド単位の接続性に関して定義され、デオキシリボース(またはリボース)糖環の炭素の位置によって示される。ポリヌクレオチド配列の情報(コード)内容は5’から3’方向に読み取られる。
【0035】
「組換え」核酸とは、天然には存在しない配列を有するか、またはそうでなければ別個の2つの配列セグメントの人工的組合せにより作出される配列を有するものである。この人工的組合せは、化学合成よって、あるいはより一般には、例えば遺伝子工学技術などの単離された核酸セグメントの操作によって行うことができる。「組換え」タンパク質は、細菌または真核細胞などの宿主細胞に導入された異種(例えば、組換え)核酸によりコードされているものである。この核酸は、導入された核酸によりコードされているタンパク質を発現することができるシグナルを有する発現ベクターに導入することもできるし、あるいはこの核酸は宿主細胞染色体に組み込むこともできる。
【0036】
「精製」(例えば、病原体または病原体を含む組成物に関して)とは、組成物からその存在が望まれない成分を除去するプロセスを意味する。精製は相対的な言葉であり、必ずしも、望まれない成分の総ての痕跡を組成物から除去する必要はない。ワクチン生産に関しては、精製は、遠心分離、透析、イオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー、親和性精製または沈殿などのプロセスを含む。よって、「精製された」とは、絶対的な純粋を必要とするのではなく、相対的な言葉として意図される。よって、例えば、精製された核酸調製物は、特定のタンパク質が、その核酸がその生成環境、例えば、細胞内または生化学反応チャンバー内にある場合よりも富化されているものである。実質的に純粋な核酸またはタンパク質の調製物は、所望の核酸がその調製物の全核酸含量の少なくとも50%を示すように精製することができる。ある特定の実施形態では、実質的に純粋な核酸は、その調製物の全核酸またはタンパク質含量の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%またはそれ以上を占める。
【0037】
「単離された」生体成分(核酸分子、タンパク質またはオルガネラなど)は、その成分が天然に存在する生物の細胞中の他の生体成分、例えば、他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、タンパク質ならびにオルガネラから実質的に分離または精製されたものである。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法により精製された核酸およびタンパク質が含まれる。この用語にはまた、宿主細胞での組換え発現により製造された核酸およびタンパク質、ならびに化学的に合成された核酸およびタンパク質も包含される。
【0038】
「抗原」は、動物において抗体の産生および/またはT細胞応答を刺激することができる化合物、組成物または物質であり、動物に注射、吸収またはそうでなければ導入された組成物を含む。「抗原」とは、総ての関連する抗原エピトープを含む。「エピトープ」または「抗原決定基」とは、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原上の部位を意味する。「免疫学的に優性な」エピトープとは、機能的に重要な宿主免疫応答、例えば、抗体応答またはT細胞応答が生じるエピトープである。よって、病原体に対する防御免疫応答に関して、免疫学的に優性なエピトープは、宿主の免疫系により認識される場合に、その病原体により引き起こされる疾患からの防御をもたらす抗原部分である。「T細胞エピトープ」とは、適当なMHC分子と結合した際に、T細胞により(T細胞受容体を介して)特異的に結合されるエピトープを意味する。「B細胞エピトープ」とは、抗体(またはB細胞受容体分子)により特異的に結合されるエピトープである。
【0039】
「アジュバント」とは、非特異的に免疫応答の生成を増強する薬剤である。一般的なアジュバントとしては、抗原が吸着される無機物(ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム)の懸濁液、油中水および水中油型エマルション(二重エマルションおよび可逆的エマルションを含むその変種)を含むエマルション、リポ糖類、リポ多糖類、免疫刺激性核酸(CpGオリゴヌクレオチドなど)、リポソーム、Toll受容体アゴニスト(特に、TLR2、TLR4、TLR7/8およびTLR9アゴニスト)、およびこのような成分の種々の組合せが挙げられる。
【0040】
「免疫原性組成物」とは、例えばRSVなどの病原体に対して特異的免疫応答を惹起することができる、ヒトまたは動物対象への投与に好適なものの組成物である。免疫原性組成物はそれ自体、1以上の抗原(例えば、ポリペプチド抗原)または抗原エピトープを含む。免疫原性組成物はまた、賦形剤、担体および/またはアジュバントなどの免疫応答を惹起または増強し得る1以上の付加的成分を含むことができる。ある特定の場合では、免疫原性組成物は、病原体により引き起こされる徴候または症状から対象を保護する免疫応答を惹起するために投与される。場合によっては、病原体により引き起こされる徴候または症状は、対象の病原体曝露の後に病原体(例えばRSV)の複製を阻害することにより予防(または軽減または改善)される。本開示に関して、免疫原性組成物は、RSVに対して防御的または待期的免疫応答を惹起する目的で対象または対象集団へ投与することが意図される組成物(すなわち、ワクチン組成物またはワクチン)を包含するものと理解される。
【0041】
「免疫応答」とは、刺激に対するB細胞、T細胞または単球などの免疫系細胞の応答である。免疫応答は、抗原特異的中和抗体などの特異的抗体の産生をもたらすB細胞応答であり得る。免疫応答はまた、CD4+応答またはCD8+応答などのT細胞応答であり得る。場合によっては、この応答は特定の抗原に特異的である(すなわち、「抗原特異的」応答)。抗原が病原体に由来する場合には、この抗原特異的応答は「病原体特異的応答」である。「防御免疫応答」とは、病原体の有害な機能または活性を阻害する免疫応答であり、病原体による感染を軽減するか、または病原体による感染から生じる徴候(死を含む)を低減する。防御免疫応答は例えば、プラーク減少アッセイ(plaque reduction assay)もしくはELISA中和アッセイにおけるウイルス複製またはプラーク形成の阻害により、またはin vivoにおいて病原体投与に対する耐性を測定することにより測定することができる。
【0042】
「Th1」型免疫応答は、IL−2およびIFN−γを産生するCD4+ Tヘルパー細胞を特徴的とする。これに対し、「Th2」型の免疫応答、IL−4、IL−5およびIL−13を産生するCD4+ヘルパー細胞を特徴とする。
【0043】
「免疫学的に有効な量」は、対象において免疫応答を惹起するために用いられる組成物(一般に、免疫原性組成物)の量である。一般に、求められる結果は、病原体から対象を保護することができる、または保護することに寄与する抗原(例えば病原体)特異的免疫応答の生成である。しかしながら、病原体に対して防御免疫応答を得るには、免疫原性組成物を何回も投与する必要のある場合がある。よって、本開示において、免疫学的に有効な量には、防御免疫応答を獲得するための、それまでの投与またはその後の投与と組み合わさって寄与する分割用量を包含する。
【0044】
形容句の「薬学上許容される」とは、その対象物が対象(例えば、ヒトまたは動物対象)への投与に好適であることを示す。Remington’s Pharmaceutical Sciences, E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 第15版 (1975)には、免疫原性組成物を含む治療用および/または予防用組成物の医薬送達に好適な組成物および処方物(希釈剤を含む)が記載されている。
【0045】
免疫応答などの応答に関して「調整する」とは、その応答の開始、大きさ、持続期間または特徴を変化または変動させることを意味する。免疫応答を調整する薬剤は、その投与後の免疫応答の開始、大きさ、持続期間または特徴の少なくとも1つを変化させるか、あるいは参照薬剤と比べてその開始、大きさ、持続期間または特徴の少なくとも1つを変化させる。
【0046】
「軽減する」とは相対的な言葉であり、従って、薬剤の投与後に応答または症状が量的に少なくなるか、または薬剤の投与後に参照薬剤に比べてそれが少なくなれば、薬剤はその応答または症状を軽減するといえる。同様に、「予防する」という用語も、その応答または症状の少なくとも1つの特徴が少なくなる限り、薬剤がその応答または症状を必ずしも完全に消失させることを意味するのではない。よって、病的応答、例えば、ワクチンにより増強されるウイルス性疾患などの感染または応答を軽減または予防する免疫原性組成物は、そのような感染または応答を完全に消失させる場合もあるが、その感染または応答が、測定可能に、例えば、薬剤の不在下での、または参照薬剤と比較しての感染または応答の、少なくとも約50%、例えば、少なくとも約70%または約80%またはさらには約90%少なくなる(すなわち、10%以下)限り、必ずしも完全に消失させなくてもよい。
【0047】
「対象」は、生きている多細胞脊椎動物である。本開示において、対象は、例えば、非ヒト動物、例えば、マウス、コットンラット、または非ヒト霊長類などの実験対象であり得る。あるいは、対象はヒト対象であり得る。
【0048】
FGキメラRSV抗原
RSVのウイルスエンベロープは、ウイルスにコードされているF、GおよびSH糖タンパク質を含む。FおよびG糖タンパク質は、RSV特異的中和抗体を誘導することが知られているRSVビリオンのただ2つの成分である。本明細書に開示されているキメラFGポリペプチドは、天然Fタンパク質の構造的特徴を組み込むと同時に、RSV Gタンパク質の重要な免疫優性エピトープを示すように設計される。
【0049】
RSVの天然Fタンパク質は、F0と呼ばれる単一のポリペプチド前駆体として翻訳される。F0は折りたたまれ、タンパク質分解およびその他の翻訳後修飾を受ける。まず、シグナルペプチド(Sp)は未完成ポリペプチドの翻訳を小胞体(ER)に向け、その後、シグナルペプチダーゼにより切断される。次に、未完成ポリペプチドは、配列番号2の例示的Fポリペプチド配列のアミノ酸27番、70番および500番の3つの部位でREがNグリコシル化される。フリン切断によりF2およびF1が生じ、ヘテロ二量体の三量体(F2−F1×3)として一緒に折りたたまれる。フリンは、前駆体タンパク質を対合した塩基性アミノ酸プロセシング部位において効率的に切断することができるカルシウム依存性セリンエンドプロテアーゼである。一般に、このようなプロセシング部位は塩基性アミノ酸標的配列(標準的には、Arg−X−(Arg/Lys)−Arg’)を含む。RSV Fタンパク質は、106〜109と133〜136の位置に2つのフリン認識部位を含む。RAR/KR109(FCS−2)とKKRKRR136(FCS−1)の2つの保存されたフリンコンセンサス配列におけるフリンプロテアーゼによる、天然に存在する成熟F0ポリペプチドのタンパク質分解性切断の結果、3つのタンパク質分解断片が生じる。N末端に疎水性の融合ペプチドを含む大きな膜固定サブユニットF1(アミノ酸137〜574に相当)が、小サブユニットF2(アミノ酸24〜105に相当)にジスルフィド橋を介して結合されており、もともとこの2つの切断部位にあった27個のアミノ酸からなる小ペプチド(pep27)が遊離する。当業者ならば、略号F0、F1およびF2は科学文献では一般にF、FおよびFと記載されることが分かるであろう。RSV Fタンパク質のフリンプロセシングの説明は、当技術分野で認められている用語の定義とともに、Zimmer et al. "Proteolytic activation of Respiratory Syncytial Virus fusion protein." J Biol. Chem. 276:31642-31650, 2001、およびZimmer et al, "Cleavage at the furin consensus sequence RAR/KR109 and presence of the intervening peptide of the Respiratory Syncytial Virus fusion protein are dispensable for virus replication in cell culture." J Virol. 76:9218-9224, 2002に見出せる。このタンパク質は、C末端領域において白い菱形(TM)で示されるそのトランスメンブランヘリックスを用いて膜に固定される。さらに、RSV Fタンパク質は、15個のシステイン残基、4つの同定されている中和エピトープ、2つのコイルドコイル領域および脂質化モチーフを特徴とする。
【0050】
天然Gタンパク質は、そのトランスメンブラン疎水性領域(アミノ酸41〜63)によってビリオン膜に固定されている298アミノ酸のタンパク質である。アミノ酸65〜298は、RSVの表面に露出しているGタンパク質の一部を含む。各末端には、高O−グリコシル化ムチン様領域が存在する。これらの2つの領域には、5つのN−グリコシル化モチーフも存在する。グリコシル化されていない中央部は、1)構造データが入手可能な、Gの唯一の部分であるシステインヌース(cysteine noose)(aa173〜190)、2)aa183〜203の免疫優性MHCクラスIIエピトープ、および3)宿主細胞表面へのウイルス付着のプロセスに関連づけられているケモカインフラクタルカイン受容体(C3XCR)およびグリコサミノグリカン(GAG)結合モチーフを含む、数個の重要な構造モチーフを含む。
【0051】
本発明は、N末端からC末端の方向に、(i)RSV Fタンパク質のF1ドメインと連結されたF2ドメインを含む第一のアミノ酸配列と、(ii)RSV Gタンパクの一部を含む第二のアミノ酸配列を含むキメラRSVポリペプチドに関する。生成中の折りたたみと組み立てを助けるために、天然Fタンパク質配列は、内部フリン認識部位を削除し、フリン切断が妨げられるように改変される。フリン切断部位は、アミノ酸残基106〜109および/または133〜136の領域における1以上のアミノ酸の付加、欠失または置換により破壊することができる。例えば、フリン認識部位は、フリン切断部位を破壊する、1または2個のアミノ酸(例えば、106番と107番の位置のアルギニンとアラニン、および133番と134番の位置のアルギニンとライシン)の欠失により削除することができる。従って、発現および組み立ての際に、キメラポリペプチドのF2およびF1部分は、単一の、切断可能のポリペプチドのまま残る。
【0052】
Fタンパク質のF2およびF1ドメインの選択においては、当業者ならば、必ずしも完全なF2および/またはF1ドメインを含む必要はないことが分かるであろう。一般に、F2ドメインの部分配列(または断片)を選択する場合には、コンフォメーション的観点が重要である。従って、F2ドメインは一般に、キメラポリペプチドの組み立ておよび安定性を助けるF2ドメイン部分を含む。ある特定の例示的変型では、F2ドメインは、アミノ酸24〜105を含む。所望により、F2ドメインは、天然F0ポリペプチドのシグナルペプチド(例えば、アミノ酸1〜23)を含むことができる。
【0053】
一般に、F1ドメインの少なくとも部分配列(または断片)は、Fタンパク質の免疫優性エピトープを含む安定なコンフォメーションを維持するように選択および設計される。例えば、一般に、アミノ酸262〜275(パリビズマブ(palivizumab)中和)および423〜436(Centocorのch101F MAb)の領域に中和抗体により認識されるエピトープを含むF1ポリペプチドドメインの部分配列を選択することが望ましい。さらに、例えばアミノ酸328〜355の領域にT細胞エピトープを含むのが望ましい。しかし、より一般には、エピトープは、F1サブユニットの1つの連続する部分(例えば、アミノ酸262〜436にわたる)として、これらの免疫優性エピトープを安定なコンフォメーションに組み立てられた不連続の要素として含む合成配列中に保持させることもできる。よって、F1ドメインポリペプチドは、RSV Fタンパク質ポリペプチドの少なくともほぼアミノ酸262〜436を含んでなる。本明細書に示される1つの限定されない例では、F1ドメインは、天然Fタンパク質ポリペプチドのアミノ酸137〜528を含んでなる(しかしながら、例えば、アミノ酸残基151またはアミノ酸161で始まるか、または524番で終わる断片など、やや小さい断片を使用することもできる)。当業者ならば、従事者の判断でさらなる短い部分配列を使用することができることが分かる。
【0054】
折りたたみおよび組み立てを助け、コンフォメーショナルエピトープの保持を最大限とするために、これら2つのFタンパク質ドメインの間にアミノ酸リンカーを導入する。長さおよび構造の特性が異なる多くのリンカーが当業者に知られている。本明細書に開示されているキメラRSVポリペプチドに関しては、このようなリンカーの多くが使用可能である。例えば、実施形態に示されているようにV1−1およびV1−2と呼ばれる、単純なグリシンリッチリピート配列がリンカーとして遊離に用いられる。FG V1−1では、単純なグリシンおよびセリンリピート配列がリンカーとして用いられる。FG V 1−2の変種としては、グリコシル化部位を含むように適合されたグリシン/セリンリンカーが含まれる。特定の例示的グリシン/セリンリンカー配列は、それぞれ配列番号5および6に示されている。あるいは、より複雑な構造特性を有するリンカーも使用可能である。ある特定の実施形態では、リンカーは、天然Fタンパク質から選択される。例えば、ある特定の好都合な実施形態では、リンカーは、実施例により示されているようにV2−1およびV2−2と呼ばれる、pep27配列の全部または一部に配列が相当する。このようなリンカーを用いる場合、例えば、グリコシル化などの構造的または機能的特徴を改変するための長さが異なる場合がある。pep27に基づくリンカーの2つの例示的変種が配列番号7および8に示されている。
【0055】
Gタンパク質ポリペプチド成分は、免疫学的に優性なまたは免疫優性T細胞エピトープを、例えば、アミノ酸183〜197の領域に保持するGタンパク質の部分(または部分配列もしくは断片)を含むように選択される。例示的変異体は、例えば、アミノ酸152、151、150、149、148などからアミノ酸226、227、228、229、230などまでを含むGタンパク質の部分配列または断片を含む。所望により、天然Gタンパク質のより大きな断片(例えば、アミノ酸残基128〜229または130〜230を含む断片)も置換可能である。当業者ならば、Gタンパク質のより大きなまたはより小さな部分も、その選択された部分がキメラFGポリペプチドの発現、折りたたみまたはプロセシングをコンフォメーション的に不安定化または混乱させない限り、使用可能であることが容易に分かる。所望により、Gタンパク質ドメインは、これまでにホルマリン不活性化RSVワクチンに関連する好酸球増加を特徴とする疾患の増強の軽減および/または予防と関連づけられている191番の位置にアミノ酸置換を含む。天然および置換(N191A)Gタンパク質の特性に関する詳しい説明は、例えば、目的を問わず、引用することにより本明細書の一部とされる米国特許公報第2005/0042230号に見出せる。
【0056】
所望であれば、アンカーモチーフまたはニューラルネットもしくは多項式解法などの当技術分野で公知の他の方法(例えば、RANKPEP (the world wide webにてmif.dfci.harvard.edu/Tools/rankpep.htmlで入手可能); ProPredI (the world wide webにてimtech.res.in/raghava/propredI/index.htmlで入手可能); Bimas (the world wide webにてwww-bimas.dcrt.nih.gov/molbi/hla_bind/index.htmlで入手可能);およびSYFPEITH (the world wide webにてsyfpeithi.bmi-heidelberg.com/scripts/MHCServer.dll/home.htmで入手可能)を用いて、さらなるT細胞エピトープを特定することもできる。例えば、ペプチドの「結合閾値」を決定するため、また、ある特定の親和性においてそれら高い確率のMHCまたは抗体結合を与えるスコアを有するものを選択するためのアルゴリズムが使用される。これらのアルゴリズムは、特定の位置における特定のアミノ酸のMHC結合に対する影響、特定の位置における特定のアミノ酸の抗体結合に対する影響、またはモチーフを含むペプチドにおける特定の置換の結合に対する影響のいずれかに基づく。免疫原性ペプチドの範囲内で、「保存残基」とは、ペプチドの特定の位置におけるランダム分布により推定されるものよりも有意に高い頻度で見られるものである。アンカー残基は、MHC分子との接触点を提供する、保存残基である。このような推定法により同定されたT細胞エピトープは、それらの、特定のMHCタンパク質との結合を測定することにより、また、MHCタンパク質に関して示される場合には、それらのT細胞刺激能により確認することができる。
【0057】
例示的実施形態が配列番号11および13に示されているが、当業者ならば、余分な実験を行わずとも、他の多くの実施形態を作出することができる。当業者には、いずれのRSV Fおよび/またはGタンパク質配列でも組換えキメラRSV FGポリペプチドの構築に使用可能であることが自明である。ウイルスエンベロープと標的細胞膜の融合を担うFタンパク質の配列は、RSV単離物の中でも保存性が高い。これに対し、ウイルス付着を担うGタンパク質の配列は、比較的変動がある。異なるタンパク質間の属性とバリエーションを示すRSV FおよびGタンパク質配列のアライメントがWO2008114149に示されている。保存領域と可変領域はこれらのアライメントから容易に明らかになる。
【0058】
例えば、一実施形態において、F2ドメイン(例えば、参照Fタンパク質配列のアミノ酸24〜105に相当)は、配列番号5、6、7または8から選択されるリンカーにより、F1ドメイン(例えば、参照Fタンパク質配列のアミノ酸137〜528に相当)と切断されないように連結され、Gタンパク質のアミノ酸183〜203(例えば、参照Fタンパク質配列のほぼ149番に相当するアミノ酸からほぼ229番に相当するアミノ酸まで、例えば、148、149、150、151または152番の位置から226、227、228、229または230番の位置まで)により示される免疫優性エピトープを含むGタンパク質ドメインとフレーム内で連結される。F2ドメインとF1ドメインは同じFタンパク質ポリペプチド、例えば、配列番号2などの天然Fタンパク質から選択されるFタンパク質ポリペプチド、または他のいずれかの例示的Fタンパク質ポリペプチド(例えば、WO2008114149に開示されているもの)から選択することができる。あるいは、F2ドメインとF1ドメインは異なる天然Fタンパク質ポリペプチドから選択することもできる。あるいは、F2ドメインとF1ドメインの一方または双方を、本明細書において変異体に関しての考察でより詳しく示されているように改変することもできる。同様に、Gタンパク質ドメインは、配列番号4から、またはWO2008114149に開示されている変異体のいずれかから選択することができる。
【0059】
他の例示的実施形態として、1以上のアミノ酸の欠失を有する変異体がある。より短い断片が望まれる場合にも、やはり、本明細書に記載されるように、キメラポリペプチドの成分の構造的および免疫学的に重要な特徴を保持する部分が選択される。あるいは、変異体は付加的なアミノ酸を含むこともできる。例えば、変異体は精製を助ける付加的アミノ酸(例えば、ポリヒスチジンタグ)を含むことができる。
【0060】
それに加えて、またはその代わりに、開示されているキメラFG ポリペプチドのいずれかに対して、選択された発現系で産生される場合、キメラポリペプチドの発現および安定性を改良するための改変を行うこともできる。例えば、真核生物構築物は一般に、発現系に対応するシグナルペプチドを含むように設計され、例えば、哺乳類細胞でキメラポリペプチドを発現させる場合には、有利にはRSV F0天然シグナル配列などの哺乳類またはウイルスシグナルペプチドが選択される。あるいは、昆虫細胞での発現のためには、シグナルペプチド(バキュロウイルスシグナルペプチドまたはメリチンシグナルペプチドを置換することができる。植物発現系が好ましい場合には、好適な植物シグナルペプチドが当技術分野で公知である。本明細書に開示されているキメラFGポリペプチドに関して用いるのに好適な例示的シグナルペプチドとしては、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、単純ヘルペスウイルス(HSV)gDタンパク質、ヒトエンドスタチン、HIV gp120、CD33、サイトメガロウイルスgBタンパク質、ヒトHer2Neu、エプスタインバーウイルス(EBV)gp350およびTan et al. , Protein Eng. 15:337-45のシグナルペプチドが挙げられる。
【0061】
ある特定の実施形態では、キメラFGポリペプチドは、グリコシル化のパターンまたは状態を変化させるように改変される(例えば、天然Fタンパク質ポリペプチド中に存在する1以上のグリコシル化部位においてグリコシル化された分子の産生を増加または低下させることによる)。例えば、配列番号2の天然Fタンパク質ポリペプチドは、アミノ酸27番、70番および500番の位置でグリコシル化されていると推定される。一実施形態では、改変はアミノ酸500番のグリコシル化部位の付近に導入される。例えば、グリコシル化部位は、参照Fタンパク質配列(配列番号2)の500番に相当する位置におけるアスパラギンの代わりにグルタミン(Q)など、アミノ酸を置換することによって除去することができる。有利には、このグリコシル化部位におけるグリコシル化効率を増大させる改変が導入される。好適な改変の例には、500〜502番の位置における以下のアミノ酸配列NGS、NKS、NGT、NKTが含まれる。グリコシル化の増大をもたらすこのグリコシル化部位の改変はまた、実質的に高いタンパク質産生ももたらし得る。
【0062】
キメラFGポリペプチド抗原をコードする核酸
本発明の別の態様は、上記のキメラFGポリペプチドをコードする組換え核酸に関する。この組換え核酸は、5’から3’の方向に、(1)RSV Fタンパク質ポリペプチドフリン切断ドメイン2(F2ドメイン)の少なくとも一部または断片をコードするポリヌクレオチド配列;(2)アミノ酸リンカーをコードするポリヌクレオチド配列;(3)RSV Fタンパク質ポリペプチドフリン切断ドメイン1(F1ドメイン)の少なくとも一部または断片をコードするポリヌクレオチド配列;および(4)RSV Gタンパク質ポリペプチドの少なくとも一部または断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む。成分ポリヌクレオチド配列は、上記で開示されたように、コードされているポリペプチドセグメントが単一の連続したキメラポリペプチドとして産生されるように連結される。
【0063】
ある特定の実施形態では、この組換え核酸は、F2ドメイン(例えば、参照Fタンパク質配列のアミノ酸24〜105に相当)が、配列番号5、6、7または8のいずれかから選択されるリンカーにより、F1ドメイン(例えば、参照Fタンパク質配列のアミノ酸137〜528に相当)と切断されないように連結され、Gタンパク質のアミノ酸183〜203(例えば、参照Fタンパク質配列のほぼ149番に相当するアミノ酸からほぼ229番に相当するアミノ酸まで、例えば、148、149、150、151または152番の位置から226、227、228、229または230番の位置まで)により示される免疫優性エピトープを含むGタンパク質ドメインとフレーム内で連結されているキメラFGポリペプチドをコードする。F2ドメインおよびF1ドメインをコードするポリヌクレオチドは同じFタンパク質ポリペプチド、例えば、配列番号2のものなどの天然に存在するFタンパク質から選択されるFタンパク質ポリペプチド(例えば、配列番号1)、または他のいずれかの例示的Fタンパク質ポリペプチド(例えば、WO2008114149に開示されているもの)をコードするものから選択することができる。あるいは、F2ドメインとF1ドメインは異なる天然Fタンパク質ポリペプチドをコードするように選択することもできる。あるいは、F2ドメインとF1ドメインの一方または双方をコードするポリヌクレオチドは、本明細書において変異体に関しての考察でより詳しく示されているようにポリペプチドを改変するため(例えば、27番、70番および/または500番の位置のグリコシル化部位を改変するため)に、1以上の突然変異(例えば、ヌクレオチドの付加、欠失または置換)を含むこともできる。同様に、Gタンパク質ドメインをコードするポリヌクレオチドは、配列番号4から、またはWO2008114149に開示されている変異体のいずれかから選択することができる。
【0064】
ある特定の実施形態では、この組換え核酸は、選択された原核生物または真核生物宿主細胞、例えば、哺乳類、植物または昆虫細胞での発現のために至適化されたコドンである。複製および発現を助けるために、これらの核酸を原核生物または真核生物発現ベクターなどのベクターに組み込むことができる。本明細書に開示されている核酸は、多様なベクター(例えば、細菌プラスミド;ファージDNA;バキュロウイルス;酵母プラスミド;プラスミドとファージDNA、ウイルスDNA、例えば、ワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスおよびその他多くのものとの組合せに由来するベクター)のいずれのものにも組み込むことができるが、最も一般的には、ベクターはポリペプチド発現産物を生成するのに好適な発現ベクターである。発現ベクターでは、FGキメラをコードする核酸は一般に、mRNA合成を指令するために適当な転写制御配列(プロモーター、および所望により、1以上のエンハンサー)に近接し、かつ、配向して配置される。すなわち、目的のポリヌクレオチド配列は適当な転写制御配列と機能的に連結される。このようなプロモーターの例としては、CMVの前初期プロモーター、LTRまたはSV40プロモーター、バキュロウイルスのポリへドロンプロモーター、大腸菌lacまたはtrpプロモーター、ファージT7およびλPプロモーター、および原核細胞もしくは真核細胞において遺伝子の発現を制御することが知られている他のプロモーターまたはそれらのウイルスが挙げられる。発現ベクターはまた一般に、翻訳開始のためのリボソーム結合部位および転写ターミネーターも含む。該ベクターは所望により、発現を増幅するのに適当な配列を含む。さらに、該発現ベクターは所望により、真核細胞培養のためのジヒドロ葉酸レダクターゼもしくはネオマイシン耐性など、または大腸菌におけるテトラサイクリンもしくはアンピシリン耐性などの、形質転換宿主細胞の選択のための表現型形質を手今日するための1以上の選択マーカー遺伝子を含んでなる。
【0065】
発現ベクターはまた、例えば、翻訳の効率を向上させるための付加的な発現エレメントを含むこともできる。これらのシグナルは、例えば、ATG開始コドンおよび隣接配列を含み得る。場合によっては、例えば、翻訳開始コドンおよび関連配列エレメントは、目的のポリヌクレオチド配列(例えば、天然開始コドン)と同時に適当な発現ベクターに挿入される。場合によっては、付加的翻訳制御シグナルは必要とされない。しかしながら、ポリペプチドコード配列またはその一部だけを挿入する場合には、キメラFG配列の発現のためにATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルが提供される。開始コドンは、目的のポリヌクレオチド配列の翻訳を確保するのに適正なリーディングフレームに置かれる。外因性転写エレメントおよび開始コドンは、天然および合成双方の種々の起源のものであり得る。
【0066】
所望であれば、発現の効率は、使用において細胞系に適当なエンハンサーを含めることによってさらに増強することができる(Scharf et al. (1994) Results Probl Cell Differ 20:125-62; Bitter et al (1987) Methods in Enzvmol 153:516-544)。場合によっては、FGポリペプチドをコードする核酸(ベクターなど)は、宿主細胞に導入された際に、FGをコードする核酸の発現を増強および/または至適化するように選択された1以上の付加的配列エレメントを含む。1つの発現増強配列種は、マトリックス付着領域(またはMAR)などの後成的エレメント、または類似の後成的エレメント、例えばSTARエレメント(例えば、Otte et al, Biotechnol. Prog. 23:801-807, 2007などのSTARエレメント)を含む。特定の理論に縛られるものではないが、MARは、標的DNA配列の核マトリックスへの固定を媒介すると考えられており、異質染色質核から外へ延びるクロマチンループドメインを形成する。MARは明らかなコンセンサス配列または認識可能な配列を含まないが、それらの最も一貫した特徴は、全体的に高いA/T含量と一方の鎖に優勢なC塩基であると思われる。これらの領域は、鎖が分離しやすい屈曲した二次構造を形成すると思われ、鎖の分離のための核形成点として働き得る核巻き戻しエレメント(core- unwinding element)(CUE)を含み得る。いくつかの単純なATリッチ配列モチーフがMAR配列、例えば、A−ボックス(AATAAAYAAA)、T−ボックス(TTWTWTTWTT)、DNA巻き戻しモチーフ(AATATATT、AATATT)、SATB1結合部位(H−ボックス、A/T/C25)および脊椎動物(RNYNNCNNGYNGKTNYNY)またはショウジョウバエ(GTNWAYATTNATNNR)のコンセンサストポイソメラーゼII部位と組み合わされている。例示的MAR配列は公開米国特許出願第20070178469号および国際特許出願第WO02/074969(これらは引用することにより本明細書の一部とされる)に記載されている。FGポリペプチドをコードする核酸の発現を増強するために使用可能なさらなるMAR配列としては、Girod et al, Nature Methods, 4:747-753, 2007に記載されているニワトリリゾチームMAR、MARp1−42、MARp1−6、MARp1−68およびMARpx−29(それぞれGenBank受託番号EA423306、DI107030、DI106196、DI107561およびDI106512で開示されている)。当業者ならば、MAR1−9に関して報告されているように、発現は中間レベルの増強をもたらすMARを選択することによってさらに調整することができると分かるであろう。所望であれば、例えば、FGポリペプチドの発現を増強するための別のMAR配列を、例えば、MAR−ファインダー(ウェブのfuturesoft.org/MarFinderで入手可能)、SMARTest(ウェブのgenomatix.deで入手可能)、またはSMARScan I(Levitsky et al, Bioinformatics 15:582-592, 1999)などのソフトウエアを用い、配列データベースを検索することにより同定することができる。ある特定の実施形態では、MARは、FGポリペプチドをコードする配列と同じ核酸(例えば、ベクター)で宿主細胞に導入(例えば、トランスフェクト)される。別の実施形態では、MARは、別個の核酸で(例えば、トランスで)導入され、それを所望によりFG核酸とともに組み込むことができる。
【0067】
組換えFG核酸の生産の際に当業者に指針を与えるに十分な例示的手順は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989; Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版, Cold Spring Harbor Press, 2001; Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates, 1992 (および2003までの増補);およびAusubel et al., Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, 第4版, Wiley & Sons, 1999に見出せる。
【0068】
キメラFGポリペプチドをコードする例示的核酸は、配列番号10および12に示されている。さらなる変異体は、例えば図4および5に示されているような、既知または(今後)発見されるRSV株のいずれかから選択される類似体F2、F1およびGタンパク質ポリペプチド配列を組み立てることによって作製することができる。例示的変異体と配列同一性を持つさらなる配列変異体も当業者により作製することができる。一般に、核酸変異体はせいぜい1%または2%または5%または10%または15%または20%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基だけで異なるポリペプチドをコードする。すなわち、コードされているポリペプチドは少なくとも80%または85%、より一般的には少なくとも約90%以上、例えば95%、またはさらには98%または99%の配列同一性を有する。当業者ならば、FGポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は遺伝コードの縮重のためにそれら自体、配列同一性は低い場合があることがすぐに理解できるであろう。
【0069】
当業者ならば、ポリペプチドおよびヌクレオチド配列についてのキメラFGポリペプチド配列とポリヌクレオチド配列の間の類似性は一般に、そうでなければ配列同一性と呼ばれる配列間の類似性として表すことができることが理解できるであろう。配列同一性は多くの場合、同一性(または類似性)パーセンテージとして評価され、パーセンテージが高いほど、その2つの配列の一次構造の類似性が高い。一般に、2つのアミノ酸(またはポリヌクレオチド)の一次構造の類似性が高いほど、折りたたみおよび組み立てからもたらされるより高次の構造の類似性が高い。キメラFGポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列の変異体は1つまたは少数のアミノ酸欠失、付加または置換を持ち得るが、やはり、それらのアミノ酸、一般にはそれらのポリヌクレオチド配列の極めて高いパーセンテージを共有する。
【0070】
配列同一性を決定する方法は当技術分野でよく知られている。種々のプログラムおよびアライメントアルゴリズムが、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981; Needleman and Wunsch, J Mol. Biol. 48:443, 1970; Higgins and Sharp, Gene 73:237, 1988; Higgins and Sharp, CABIOS 5:151, 1989; Corpet et al, Nucleic Acids Research 16:10881, 1988;およびPearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988に記載されている。Altschul et al., Nature Genet. 6:119, 1994は、配列アラインメント法および相同性算出の詳細な検討を提供している。配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxとともに用いるためのNCBI Basic Local Alignment Search Tool (BLAST) (Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403, 1990)は、National Center for Biotechnology Information (NCBI, Bethesda, MD)を含むいくつかのソースから、またインターネットで入手できる。このプログラムを用いてどのように配列同一性を決定すればよいかという説明は、インターネットにてNCBIのウェブサイトで入手できる。
【0071】
2つの核酸間の配列類似性のもう1つの指標がハイブリダイズ能である。2つの核酸配列の類似性が高いほど、それらがハイブリダイズする条件のストリンジェンシーが高い。ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーは配列に依存し、環境パラメーターが違えば異なる。従って、特にストリンジェンシーの程度を左右するハイブリダイゼーション条件は、選択するハイブリダイゼーション法ならびにハイブリダイズする核酸配列の組成および長さによって異なる。一般に、ハイブリダイゼーションの温度およびハイブリダイゼーションバッファーのイオン強度(特に、Naおよび/またはMg++濃度)がハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定するが、洗浄回数もストリンジェンシーに影響を及ぼす。一般に、ストリンジェント条件は、所定のイオン強度およびpHで、特定の配列の融点(T)よりも約5℃〜20℃低くなるように選択される。Tは、標的配列の50%が完全に一致するプローブとハイブリダイズする温度である(所定のイオン強度およびpH下)。核酸ハイブリダイゼーションの条件およびストリンジェンシーの算出は、例えば、Sambrook et al. , Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001; Tijssen, Hybridization With Nucleic Acid Probes, Part I: Theory and Nucleic Acid Preparation, Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Elsevier Science Ltd., NY, NY, 1993およびAusubel et al. Short Protocols in Molecular Biology, 第4版, John Wiley & Sons, Inc., 1999に見出せる。
【0072】
本開示の目的では、「ストリンジェント条件」は、ハイブリダイゼーション分子と標的配列の間の不一致が25%未満である場合にのみハイブリダイゼーションが起こる条件を含む。「ストリンジェント条件」は、より厳密な定義の特定のストリンジェンシーレベルに分解することができる。よって、本明細書において、「中程度(moderate)ストリンジェンシー」条件とは、25%を超える配列不一致を有する分子はハイブリダイズしない条件であり、「中(medium)ストリンジェンシー」条件とは、15%を超える不一致を有する分子がハイブリダイズしない条件であり、「高ストリンジェンシー」条件とは、10%を超える不一致を有する配列がハイブリダイズしない条件である。「極めて高いストリンジェンシー」条件とは、6%を超える不一致を有する分子がハイブリダイズしない条件である。これに対し、「低ストリンジェンシー」条件下でハイブリダイズする核酸は、はるかに低い配列同一性を有するもの、または核酸の短い部分配列にのみ配列同一性を有するものが含まれる。従って、この開示により包含される核酸の種々の変異体は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、67または69の少なくとも1つと、実質的にそれらの全長にわたってハイブリダイズすることができる。
【0073】
キメラRSV抗原ポリペプチドの生産方法
本明細書に開示されているキメラFGポリペプチドは、組換えタンパク質の発現および精製に関して十分に確立された手順を用いて生産される。当業者に指針を与えるに十分な手順は、例えば、先に引用したSambrook and the Ausubelの参照文献に見出せる。さらなる、また、具体的な詳細を以下に示す。
【0074】
上記のキメラFG RSV抗原のいずれかをコードする組換え核酸、例えば(限定されるものではないが)、配列番号10および12で示される例示的核酸は、ベクターおよび宿主細胞の選択に応じて、エレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、感染、トランスフェクションなどの様々な周知の手順のいずれかによって、宿主細胞に導入される。
【0075】
よって、組換えキメラFGポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞もまた本開示の特徴である。好ましい宿主細胞としては、例えば大腸菌などの原核生物(すなわち細菌)宿主細胞、ならびに真菌(例えば酵母、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびピッチア・パストリス(Picchia pastoris))細胞、昆虫細胞、植物細胞および哺乳類細胞(CHO細胞など)を含む多くの真核生物宿主細胞が挙げられる。組換えFG核酸は、例えば、発現ベクターなどのベクターを介して宿主細胞に導入(例えば、形質導入、形質転換またはトランスフェクト)される。上記のように、ベクターは最も一般的にはプラスミドであるが、このようなベクターは例えばウイルス粒子、ファージなどであってもよい。適当な発現宿主の例としては、大腸菌(E. coli)、放線菌(streptomyces)およびネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)などの細菌細胞;サッカロミセス・セレビシエ、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)およびアカパンカビ(Neurospora crassa)などの真菌細胞;ショウジョウバエ(Drosophila)およびヨトウガ(Spodoptera frugiperda)などの昆虫細胞;3T3、COS、CHO、BHK、HEK 293またはBowesメラノーマなどの哺乳類細胞;藻類細胞を含む植物細胞などが挙げられる。
【0076】
これらの宿主細胞は、適当であれば、プロモーターを活性化する、形質転換体を選択する、または挿入されたポリヌクレオチド配列を増幅するよう改変された慣例の栄養培地で培養することができる。温度、pHなどの培養条件は一般に、発現のために選択された宿主細胞で事前に用いられたものであり、当業者には、本明細書に引用されている参照文献、例えば、Freshney (1994) Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique, 第3版, Wiley-Liss, New Yorkおよびそこに引用されている参照文献を参照すれば明らかになる。本発明の核酸に相当する発現産物はまた、植物、酵母、真菌、細菌などの非動物細胞で産生させることもできる。Sambrook, Berger and Ausubelの他、細胞培養に関する詳細はPayne et al. (1992) Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems John Wiley & Sons, Inc. New York, NY; Gamborg and Phillips (編) (1995) Plant Cell, Tissue and Organ Culture; Fundamental Methods Springer Lab Manual, Springer-Verlag (Berlin Heidelberg New York)およびAtlas and Parks (編) The Handbook of Microbiological Media (1993) CRC Press, Boca Raton, FLに見出せる。
【0077】
細菌系において、発現産物に意図される使用に応じていくつかの発現ベクターを選択することができる。例えば、抗体生産のために多量のポリペプチドまたはその断片が必要な場合は、容易に精製される融合タンパク質の高レベル発現を指令するベクターを用いるのが有利である。このようなベクターとしては、限定されるものではないが、BLUESCRIPT(Stratagene)(この場合、目的のコード配列、例えば、上記のような本発明のポリヌクレオチドを、ベクター中の、触媒的に活性なβガラクトシダーゼ融合タンパク質を産生するβ−ガラクトシダーゼのアミノ末端翻訳開始メチオニンとそれに続く7残基の配列とフレーム内で連結することができる);pINベクター(Van Heeke & Schuster (1989) J Biol Chem 264:5503-5509);pETベクター(Novagen, Madison WI)(この場合、アミノ末端メチオニンをヒスチジンタグとフレーム内で連結する)などの多機能性大腸菌クローニングおよび発現ベクターが挙げられる。
【0078】
同様に、サッカロミセス・セレビシエなどの酵母では、α因子、アルコールオキシダーゼおよびPGHなどの構成プロモーターまたは誘導プロモーターを含む多くのベクターが、所望の発現産物の生産のために使用可能である。総説としては、Berger, Ausubelおよび例えばGrant et al. (1987; Methods in Enzymology 153:516-544)を参照。哺乳類宿主細胞では、プラスミド系およびウイルス系の双方を含むいくつかの発現系が使用可能である。
【0079】
宿主細胞は、所望により、挿入配列の発現を調整する、または発現タンパク質を所望の様式でプロセシングする、その能力に関して選択される。タンパク質のこのような修飾としては、限定されるものではないが、グリコシル化(ならびに、例えば、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化)が挙げられる。例えば前駆形態をそのタンパク質の成熟形態へと切断する翻訳後プロセシング(例えば、フリンプロテアーゼによる)が所望により宿主細胞に関して行われる。3T3、COS、CHO、HeLa、BHK、MDCK、293、WI38などの種々の宿主細胞がこのような翻訳後活性に特異的な細胞機構および特徴的な機構を有し、導入された外来タンパク質の適正な修飾およびプロセシングを確保するために選択することができる。
【0080】
本明細書に開示されている核酸によりコードされている組換えキメラFGポリペプチドの長期、高収率生産のためには、一般に安定な発現系が用いられる。例えば、キメラFGポリペプチドを安定発現する細胞系統は、ウイルス起源の複製または内因性発現エレメントおよび選択マーカー遺伝子を含む発現ベクターを用いて宿主細胞に導入される。ベクターの導入後、細胞を富化培地で1〜2日間増殖させた後、選択培地に切り換える。選択マーカーの目的は選択に対する耐性を付与することであり、その存在により、導入された配列を首尾よく発現する細胞の増殖と回収が可能となる。例えば、耐性群、すなわち安定して形質転換された細胞のコロニーを、その細胞種に適当な組織培養技術を用いて増殖させることができる。キメラFGポリペプチドをコードする核酸で形質転換された宿主細胞は所望により、コードされているタンパク質の発現および細胞培養物からの回収に好適な条件下で培養する。
【0081】
好適な宿主細胞系統の形質導入を行い、それらの宿主細胞を適当な細胞密度まで増殖させた後、選択されたプロモーターを適当な手段(例えば、温度シフトまたは化学誘導)によって誘導し、細胞をさらなる期間培養する。その後、分泌されたポリペプチド産物を培養培地から回収する。あるいは、細胞を遠心分離により採取し、物理的または化学的手段によって破壊し、得られた粗抽出物をさらなる精製のために保持する。タンパク質の発現に用いた真核生物または微生物細胞は、冷凍−解凍サイクル、音波処理、機械的破砕または細胞溶解剤の使用、または当業者によく知られた他の方法を含む、通常のいずれかの方法によって破砕することができる。
【0082】
発現したキメラFGポリペプチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿法、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、本発明で示されているタグ系を使用)、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含む当技術分野でよく知られたいくつかの方法のいずれかによって、組換え細胞培養物から回収および精製することができる。成熟タンパク質の立体配置を完成させる上で、所望であれば、タンパク質再折りたたみ工程を使用することができる。最後に、最終精製工程で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用することができる。上記の参照文献に加え、例えば、Sandana (1997) Bioseparation of Proteins, Academic Press, Inc.;およびBollag et al. (1996) Protein Methods. 第2版 Wiley-Liss, NY; Walker (1996) The Protein Protocols Handbook Humana Press, NJ, Harris and Angal (1990) Protein Purification Applications: A Practical Approach IRL Press at Oxford, Oxford, U.K.; Scopes (1993) Protein Purification: Principles and Practice 第3版Springer Verlag, NY; Janson and Ryden (1998) Protein Purification: Principles, High Resolution Methods and Applications, Second Edition Wiley- VCH, NY;およびWalker (1998) Protein Protocols on CD-ROM Humana Press, NJに示されているものなどを含む精製方法が当技術分野でよく知られている。
【0083】
ある特定の例では、該核酸は原核細胞、例えば大腸菌細胞における導入および発現に好適なベクターに導入される。例えば、FGキメラRSV抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸は、pET系の発現ベクター(例えば、pET19bおよびpET21d)などの種々の市販または専売ベクターのいずれかに導入することができる。コード配列の発現はIPTGにより誘導可能であり、高レベルのタンパク質発現が生じる。キメラRSV抗原をコードするポリヌクレオチド配列は、ファージT7プロモーター下で転写される。また、熱誘導型λpLプロモーターを含むpURV22などの別のベクターも好適である。
【0084】
該発現ベクターを好適な細菌宿主に導入する(例えば、エレクトロポレーションによる)。多くの好適な大腸菌株が利用可能であり、当業者ならば選択することができる(例えば、RosettaおよびBL21(DE3)株は、FGキメラRSV抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含む組換えベクターの発現に有利であることが分かっている)。
【0085】
別の例では、キメラFGポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞)に導入するのに好適なベクターにクローニングする。この例示的実施形態では、キメラRSV抗原をコードするポリヌクレオチド配列を、Lonza Biologicals firmにより開発されたpEE14ベクターに導入する。キメラポリペプチドを構成プロモーターである前初期CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター下で発現させる。キメラを発現する安定トランスフェクト細胞の選択は、トランスフェクト細胞がグルタミン源の不在下で増殖する能力に基づいて行う。pEE14が上手く組み込まれた細胞は、pEE14ベクターがGS(グルタミンシンセターゼ)酵素を発現するので、外因性のグルタミンの不在下で増殖することができる。選択された細胞をクローン増殖させ、キメラポリペプチドの発現を同定する。
【0086】
別の例では、FGキメラRSV抗原をコードするポリヌクレオチド配列を、バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)を用いて昆虫細胞に導入する。昆虫細胞を感染させることができる組換えバキュロウイルスを、市販のベクター、キットおよび/または系、例えば、BD BioScienceからのBD BaculoGold系を用いて作製することができる。要するに、FGキメラRSV抗原をコードするポリヌクレオチド配列をpAcSG2トランスファーベクターに挿入する。次に、宿主細胞SF9(ヨトウガ(Spodoptera frugiperda))を、pAcSG2キメラ(pAcSG2-chimer)プラスミドと、バキュロウイルスオートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多核体病ウイルス(AcNPV)の線状化ゲノムDNAを含むBD BaculoGoldとで同時トランスフェクトする。トランスフェクション後、pACSG2プラスミドとバキュロウイルスゲノムの間で相同組換えが起こり、組換えウイルスを生じる。一例では、キメラRSV抗原はポリヘドリンプロモーター(pH)の調節制御下で発現される。基本(Ba)プロモーターおよびp10プロモーターなどの他のプロモーターを用い、同様のトランスファーベクターを作製することができる。同様に、Sf9と近縁のSF21およびキャベツシャクトリムシ(cabbage looper) Trichoplusia niに由来するHigh Five(Hi5)細胞系統などの別の昆虫細胞も使用可能である。
【0087】
トランスフェクションおよび発現誘導(選択されたプロモーターおよび/またはエンハンサーまたはその他の調節エレメントによる)の後、発現されたキメラポリペプチドを回収し(例えば、精製または富化し)、抗原的に有効なコンフォメーションへと確実に折りたたまれるように変性させる。一般に、抗原的に活性なコンフォメーションはキメラFGポリペプチドの多量体である。有利には、多量体は三量体である。
【0088】
免疫原性組成物および方法
また、キメラFGポリペプチドおよび薬学上許容される希釈剤、担体または賦形剤を含む免疫原性組成物も提供される。多くの薬学上許容される希釈剤および担体および/または薬学上許容される賦形剤は当技術分野で公知であり、Remington 's Pharmaceutical Sciences, E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 第15版(1975)に記載されている。
【0089】
一般に、希釈剤、担体および/または賦形剤の性質は、用いる特定の投与様式によって異なる。例えば、非経口処方物は通常、ビヒクルとして水、生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロースまたはグリセロールなどの薬学上および生理学上許容される流体を含む注射可能な流体を含む。ある特定の処方物(例えば、粉末形態などの固体組成物)では、液体希釈剤は用いられない。このような処方物では、例えば、製薬級のトレハロース、マンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムを含む無毒な固体担体を使用することができる。
【0090】
よって、好適な賦形剤および担体は、選択された投与経路により対象に送達するのに好適な処方物を形成するように当業者により選択可能である。
【0091】
特定の例を表1に示す。さらなる賦形剤としては、限定されるものではないが、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、ガラス形成ポリオール(ソルビトール、トレハロースなど)、N−ラウロイルサルコシン(例えば、ナトリウム塩)、L−プロリン、非洗剤スルホベタイン、塩酸グアニジン、尿素、酸化トリメチルアミン、KCl、Ca2+、Mg2+、Mn2+、Zn2+(およびその他の二価陽イオン関連塩)、ジチオトレイトール(DTT)、ジチオエリトロール、β−メルカプトエタノール、洗剤(例えば、Tween80、Tween20、Triton X−100、NP−40、Empigen BB、オクチルグルコシド、ラウロイルマルトシド、Zwittergent 3−08、Zwittergent 3−10、Zwittergent 3−12、Zwittergent 3−14、Zwittergent 3−16、CHAPS、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、および臭化セチルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0092】
ある特定の有利な例では、疫原性組成物はまたアジュバントも含む。キメラFGポリペプチドを含有する免疫原性組成物に用いるのに好適なアジュバントは、本明細書に開示されているFG抗原と組み合わせて、対象に投与した際に安全かつ最小の反応原性であるアジュバントである。
【0093】
FGキメラ抗原と組み合わせて用いるのに好適な1つのアジュバントは、無毒な細菌リポ多糖誘導体である。脂質Aの好適な無毒な誘導体の一例が、モノホスホリル脂質Aまたはより詳しくは3−脱アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)である。3D−MPLは、GlaxoSmithKline Biologicals N.A.によりMPLの名称で販売されており、文献にはMPLまたは3D−MPLとして示されている。例えば、米国特許第4,436,727号、同第4,877,611号、同第4,866,034号および同第4,912,094号参照。3D−MPLは主としてCD4+ T細胞応答を誘導し、IFN−γ(Th1)の表現型を伴う。3D−MPLはGB2220211 Aに開示されている方法に従って生産することができる。これは化学的には、3、4、5または6つのアシル化鎖を有する3−脱アシル化モノホスホリル脂質Aの混合物である。本発明の組成物では、小粒子3D−MPLを使用することができる。小粒子3D−MPLは、0.22μmフィルターで濾過除菌できるような粒径を有する。このような調製物はWO94/21292に記載されている。
【0094】
3D−MPLなどの該リポ多糖は、免疫原性組成物のヒト用量当たり1〜50μgの間の量で使用することができる。このような3D−MPLは、約25μgのレベル、例えば20〜30μgの間、好適には21〜29μgの間または22〜28μgの間または23〜27μgの間または24〜26μgの間、または25μgで使用することができる。別の実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、3D−MPLを約10μgのレベル、例えば5〜15μgの間、好適には6〜14μgの間、例えば7〜13μgの間または8〜12μgの間または9〜11μgの間、または10μgで含んでなる。さらなる実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、3D−MPLを約5μgのレベル、例えば1〜9μgの間、または2〜8μgの間または好適には3〜7μgの間または4〜 μgの間、または5μgで含んでなる。
【0095】
他の実施形態では、リポ多糖類は、米国特許第6,005,099号および欧州特許第0729473 B1号に記載されているようなβ(1−6)グルコサミン二糖であり得る。当業者ならば、これらの参照文献の教示に基づき、3D−MPLなどの種々のリポ多糖類を生産することができる。これらの各参照文献もやはり、引用することにより本明細書の一部とされる。上述の免疫刺激剤(LPSまたはMPLまたは3D−MPLと構造が類似する)の他、MPLの上記構造の一部であるアシル化単糖および二糖誘導体も好適なアジュバントである。他の実施形態では、アジュバントは脂質Aの合成誘導体であり、そのあるものはTLR−4アゴニストとして記載されており、限定されるものではないが、
【0096】
OM174(2−デオキシ−6−o−[2−デオキシ−2−[(R)−3−ドデカノイルオキシテトラ−デカノイルアミノ]−4−o−ホスホノ−β−D−グルコピラノシル]−2−[(R)−3−ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]−α−D−グルコピラノシル二水素ホスフェート)、(WO95/14026)、
OM294DP(3S,9R)−3−[(R)−デカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−4−オキソ−5−アザ−9(R)−[(R)−3−ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン−1,10−ジオール,1,10−ビス(ジヒドロゲノホスフェート)(WO99/64301およびWO00/0462)、
OM197MP−Ac DP(3S−,9R)−3−[(R)−デカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−4−オキソ−5−アザ−9−[(R)−3−ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン−1,10−ジオール,1−ジヒドロゲノホスフェート10−(6−アミノヘキサノエート)(WO01/46127)
が挙げられる。
【0097】
使用可能な他のTLR4リガンドは、WO98/50399または米国特許第6,303,347号(AGPの製造方法も開示されている)に開示されているものなどのアルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)、好適には、RC527またはRC529または米国特許第6,764,840号に開示されているようなAGPの薬学上許容される塩である。いくつかのAGPはTLR4アゴニストであり、またいくつかはTLR4アンタゴニストである。双方ともアジュバントとして有用であると思われる。
【0098】
TLR−4を介してシグナル伝達応答を生じ得る(Sabroe et al, JI 2003 p1630-5)他の好適なTLR−4リガンドは、例えば、グラム陰性菌由来のリポ多糖およびその誘導体、またはその断片、特に、LPS(3D−MPLなど)の無毒な誘導体である。他の好適なTLRアゴニストとしては、熱ショックタンパク質(HSP)10、60、65、70、75または90;界面活性剤タンパク質A、ヒアルロナンオリゴ糖、ヘパラン硫酸断片、フィブロネクチン断片、フィブリノゲンペプチドおよびb−デフェンシン−2、およびムラミルジペプチド(MDP)がある。一実施形態では、TLRアゴニストはHSP 60、70または90である。他の好適なTLR−4リガンドはWO2003/011223およびWO2003/099195に記載されている通りであり、例えば、WO2003/011223の第4〜5頁またはWO2003/099195の第3〜4頁に開示されている化合物I、化合物IIおよび化合物III、特に、WO2003/011223にER803022、ER803058、ER803732、ER804053、ER804057、ER804058、ER804059、ER804442、ER804680およびER804764に開示されている化合物である。例えば、1つの好適なTLR−4リガンドはER804057である。
【0099】
さらなるTLRアゴニストもアジュバントとして有用である。「TLRアゴニスト」とは、直接的リガンドとして、または内因性もしくは外因性リガンドの生成によって間接的に、TLRシグナル伝達経路を介してシグナル伝達応答を生じ得る薬剤を意味する。このような天然または合成TLRアゴニストは、代替または付加的アジュバントとして使用可能である。アジュバント受容体としてのTLRの役割の簡単な総説が、Kaisho & Akira, Biochimica et Biophysica Acta 1589: 1-13, 2002に示されている。これらの可能性のあるアジュバントとしては、限定されるものではないが、TLR2、TLR3、TLR7、TLR8およびTLR9のアゴニストが挙げられる。よって、一実施形態において、アジュバントおよび免疫原性組成物は、TLR−1アゴニスト、TLR−2アゴニスト、TLR−3アゴニスト、TLR−4アゴニスト、TLR−5アゴニスト、TLR−6アゴニスト、TLR−7アゴニスト、TLR−8アゴニスト、TLR−9アゴニストまたはその組合せからなる群から選択されるアジュバントをさらに含んでなる。
【0100】
本発明の一実施形態では、TLR−1を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストが用いられる。好適には、TLR−1を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストは、トリアシル化リポペプチド(LP);フェノール溶解性モジュリン;結核菌(Mycobacterium tuberculosis)LP;細菌リポタンパク質のアセチル化アミノ末端を模倣するS−(2,3−ビス(パルミトイルオキシ)−(2−RS)−プロピル)−N−パルミトイル−(R)−Cys−(S)−Ser−(S)−Lys(4)−OH三塩酸塩(Pam3Cys)LPおよびライム病ボレリア(Borrelia burgdorfei)由来のOspA LPから選択される。
【0101】
別の実施形態では、TLR−2を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストが用いられる。好適には、TLR−2を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストは、結核菌(M tuberculosis)、ライム病ボレリア(B burgdorferi)または梅毒トレポネーマ(T pallidum)由来の1以上のリポタンパク質、ペプチドグリカン、細菌リポペプチド;黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を含む種に由来するペプチドグリカン;リポテイコ酸、マンヌロン酸、ナイセリア属のポーリン類、細菌線毛、エルシニア属(Yersina)病原因子、CMVビリオン、麻疹ヘマグルチニンおよび酵母由来のザイモサンである。
【0102】
別の実施形態では、TLR−3を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストが用いられる。好適には、TLR−3を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストは二本鎖RNA(dsRNA)、またはウイルス感染に関連する分子核酸パターンであるポリイノシンポリシチジル酸(ポリIC)である。
【0103】
別の実施形態では、TLR−5を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストが用いられる。好適には、TLR−5を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストは細菌フラジェリンである。
【0104】
別の実施形態では、TLR−6を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストが用いられる。好適には、TLR−6を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストは、マイコバクテリアリポタンパク質、ジアシル化LPおよびフェノール溶解性モジュリンである。さらなるTLR6アゴニストがWO2003/043572に記載されている。
【0105】
別の実施形態では、TLR−7を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストが用いられる。好適には、TLR−7を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストは、一本鎖RNA(ssRNA)、ロキソリビン、N7およびC8位のグアノシン類似体、またはイミダゾキノリン化合物、またはその誘導体である。一実施形態において、TLRアゴニストはイミキモドである。さらなるTLR7アゴニストがWO2002/085905に記載されている。
【0106】
別の実施形態では、TLR−8を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストが用いられる。好適には、TLR−8を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストは、一本鎖RNA(ssRNA)、抗ウイルス活性を有するイミダゾキノリン分子、例えば、レシキモド(R848)であり、レシキモドはまたTLR−7によっても認識され得る。使用可能な他のTLR−8アゴニストとしては、WO2004/071459に記載されているものが挙げられる。
【0107】
別の実施形態では、TLR−9を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストが用いられる。一実施形態において、TLR−9を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストはHSP90である。あるいは、TLR−9を介してシグナル伝達応答を生じ得るTLRアゴニストは、細菌またはウイルスDNA、CpGヌクレオチド、特に、CpGモチーフとして知られる配列構成を含むDNAである。CpGを含むオリゴヌクレオチドは主としてTh1応答を誘導する。このようなオリゴヌクレオチドは周知であり、例えば、WO96/02555、WO99/33488および米国特許第6,008,200号および同第5,856,462号に記載されている。好適には、CpGヌクレオチドはCpGオリゴヌクレオチドである。本発明の免疫原性組成物に用いるのに好適なオリゴヌクレオチドは、CpGを含む、所望により、少なくとも3つ、好適には少なくとも6以上のヌクレオチドにより分離された2以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドである。CpGモチーフはシトシンヌクレオチドとそれに続くグアニンヌクレオチドである。本発明のCpGオリゴヌクレオチドは一般に、デオキシヌクレオチドである。特定の実施形態では、該オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間はスホロジチオエート、または好適にはホスホロチオエート結合であるが、ホスホジエステル結合および他のヌクレオチド間結合も本発明の範囲内にある。また、本発明の範囲には、混合ヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドも含まれる。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドまたはホスホロジチオエートを作出する方法は、米国特許第5,666,153号、同第5,278,302号およびWO95/26204に記載されている。
【0108】
キメラFGポリペプチドを伴う免疫原性組成物に、例えばそれら単独でまたは3D−MPLもしくは本明細書に記載の別のアジュバントと組み合わせて使用可能な他のアジュバントとしては、QS21などのサポニンがある。
【0109】
サポニンは、Lacaille-Dubois, M and Wagner H. (1996. A review of the biological and pharmacological activities of saponins. Phytomedicine vol 2 pp 363-386)に教示されている。サポニンは植物界および海洋動物界に広く分布しているステロイドまたはトリテルペングリコシドである。サポニンは、浸透すると発泡するコロイド水溶液を形成すること、コレステロールを沈殿させることが示されている。サポニンが細胞膜付近にあると、膜に穿孔様構造を作り、膜をバーストさせる。赤血球の溶血はこの現象の一例であり、総てではないがある種のサポニンの特性である。
【0110】
サポニンは全身投与用のワクチンのアジュバントとして知られている。個々のサポニンのアジュバントおよび溶血活性は当技術分野で鋭意研究されている(Lacaille-Dubois and Wagner, 前掲)。例えば、Quil A(南アメリカの樹木キラジャ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮に由来する)およびその画分が、米国特許第5,057,540号および"Saponins as vaccine adjuvants", Kensil, C. R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12 (1-2): 1-55;およびEP0362279 B1に記載されている。Quil Aの画分を含んでなる免疫刺激複合体(Immune Stimulating Complexes)(ISCOMS)と呼ばれる特定の構造は溶血性があり、ワクチンの製造に用いられている(Morein, B., 0109942 B1;WO96/11711;WO96/33739)。溶血性サポニンQS21およびQS17(Quil AのHPLC精製画分)は効力のある全身アジュバントとして記載されており、それらの製造方法は、引用することにより本明細書の一部とされる米国特許第5,057,540号およびEP0362279 B1に開示されている。全身ワクチン接種研究に用いられている他のサポニンとしては、Gypsophila and Saponaria (Bomford et al., Vaccine, 10(9):572-577, 1992)などの他の植物種に由来するものが挙げられる。QS21は、キラジャ・サポナリア・モリナ樹皮由来の、Hplc精製された無毒な画分である。QS21の生産方法は米国特許第5,057,540号に開示されている。QS21を含有する非反応原性アジュバント処方物はWO96/33739に記載されている。上述の参照文献は引用することにより本明細書の一部とされる。QS21などの免疫学的に活性なサポニンは、免疫原性組成物のヒト用量当たり1〜50μgの量で使用することができる。有利には、QS21は、約25μgのレベル、例えば、20〜30μgの間、好適には21〜29μgの間または22〜28μgの間または23〜27μgの間または24〜26μgの間または25μgで用いられる。別の実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、QS21を、約10μgのレベル、例えば5〜15μgの間、好適には6〜14μgの間、例えば7〜13μgの間または8〜12μgの間または9〜11μgの間、または10μgで含んでなる。さらなる実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、QS21を、約5μgのレベル、例えば1〜9μgの間、または2〜8μgの間、または好適には3〜7μgの間、または4〜6μgの間、または5μgで含んでなる。QS21とコレステロールを含んでなるこのような処方物は、抗原とともに処方した場合に良好なTh1刺激アジュバントとなることが示されている。よって、例えば、キメラFGポリペプチドは有利には、免疫原性組成物でQS21とコレステロールの組合せを含んでなるアジュバントとともに使用することができる。
所望により、アジュバントはまた、アルミニウムまたはカルシウム塩、特に、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムおよびリン酸カルシウムなどの無機塩を含むことができる。例えば、3D−MPLをアルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウムまたは「ミョウバン」)と組み合わせて含むアジュバントは、ヒト対象に投与するためのキメラFGポリペプチド含有免疫原性組成物の処方物に好適である。
【0111】
キメラFGポリペプチドを含む処方物に用いるのに好適な、別種のTh1偏向アジュバントとしては、OMPに基づく免疫刺激組成物が挙げられる。OMPに基づく免疫刺激組成物は、例えば鼻腔内投与のための粘膜アジュバントとして特に好適である。OMPに基づく免疫刺激組成物は、限定されるものではないが、ナイセリア種(例えば、Lowell et al, J. Exp. Med. 167:658, 1988; Lowell et al, Science 240:800, 1988; Lynch et al, Biophys. J. 45:104, 1984; Lowell, "New Generation Vaccines" 第2版, Marcel Dekker, Inc., New York, Basil, Hong Kong, 193頁, 1997;米国特許第5,726,292号;米国特許第4,707,543号参照)などのグラム陰性菌に由来する外膜タンパク質(OMP、数種のポーリンを含む)の一種の調製物であり、細菌またはウイルス抗原などの免疫原の担体または組成物として有用である。いくつかのOMPに基づく免疫刺激組成物は「プロテオソーム」とも呼ぶことができ、疎水性であり、ヒト使用にとって安全である。プロテオソームは約20nm〜約800nmの小胞または小胞様OMPクラスターへと自己組み立てする能力およびタンパク質抗原(Ag)、特に、疎水性部分を有する抗原を非共有結合的に組み込む、配位する、結合する(例えば、静電気的にもしくは疎水的に)またはそうでなければ協働する能力を有する。多分子膜構造または1以上のOMPの融解球状OMP組成物を含む小胞または小胞様形態の外膜タンパク質成分をもたらすいずれの製造方法もプロテオソームの定義に含まれる。プロテオソームは、例えば当技術分野で記載されているように製造することができる(例えば、米国特許第5,726,292号または同第5,985,284号参照)。プロテオソームはまた、OMPポーリンの生産に用いられる細菌(例えば、ナイセリア種)起源の内因性リポ多糖またはリポオリゴ糖(それぞれLPSまたはLOS)を含み得る(一般に、全OMP調製物の2%未満である)。
【0112】
プロテオソームは主として、洗剤により溶液中で維持された髄膜炎菌(Neisseria menigitidis)から化学的に抽出された外膜タンパク質(OMP)(ほとんどポーリンAおよびBならびにクラス4 OMP)からなる(Lowell GH. Proteosomes for Improved Nasal, Oral, or Injectable Vaccines. In: Levine MM, Woodrow GC, Kaper JB, Cobon GS編, New Generation Vaccines. New York: Marcel Dekker, Inc. 1997; 193-206)。プロテオソームは、本明細書に開示されているキメラFGポリペプチドを含む、ウイルス源由来の精製(例えば、ダイアフィルトレーションまたは従来の透析法による)または組換えタンパク質などの種々の抗原とともに処方することができる。洗剤を段階的に除去することで、およそ100〜200nm径の粒状疎水性複合体が形成される(Lowell GH. Proteosomes for Improved Nasal, Oral, or Injectable Vaccines. In: Levine MM, Woodrow GC, Kaper JB, Cobon GS編, New Generation Vaccines. New York: Marcel Dekker, Inc. 1997; 193-206)。
【0113】
本明細書において「プロテオソーム:LPSまたはプロトリン」とは、OMP−LPS組成物(免疫刺激組成物として働き得る)を提供するために少なくとも1種のリポ多糖と、例えば外から加えることにより混合したプロテオソームの調製物を意味する。よって、OMP−LPS組成物は、(1)髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)などのグラム陰性菌から調製されたプロテオソームの外膜タンパク質調製物(例えば、プロジュバント(Projuvant))と、(2)1以上のリポ糖の調製物を含む、プロトリンの2つの基本成分からなり得る。リポオリゴ糖は内因性であってもよいし(例えば、OMPプロテオソーム調製物とともに天然に含まれる)、外因的に調製された(例えば、OMP調製物とは異なる培養物または微生物から調製された)リポオリゴ糖由来のOMP調製物と混合または組み合わせてもよいし、あるいはその組合せであってもよい。このような外から加えられるLPSは、そのOMP調製物が作られたものと同じグラム陰性細菌に由来してもよいし、あるいは異なるグラム陰性細菌に由来してもよい。プロトリンはまた、所望により、脂質、糖脂質、糖タンパク質または小分子など、およびその組合せを含んでもよいと理解すべきである。プロトリンは、例えば米国特許出願公開番号2003/0044425に記載されているように製造することができる。
【0114】
上述のもののような異なるアジュバントの組合せもまた、キメラFGポリペプチドを伴う組成物に使用することができる。例えば、すでに示したように、QS21は3D−MPLとともに処方することができる。QS21:3D−MPLの比率は一般に1:10〜10:1程度、例えば1:5〜5:1、多くの場合は実質的に1:1である。一般に、この比率は2.5:1〜1:1 3D−MPL:QS21の範囲である。別の組合せアジュバント処方物としては、3D−MPLとアルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウムを含む。組み合わせて処方する場合、この組合せは抗原特異的Th1免疫応答を増強することができる。
【0115】
場合によっては、アジュバント処方物は、リポソーム、水中油型エマルション、またはカルシウム塩もしくはアルミニウム塩などの無機塩、例えば、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウムを含む。
水中油型エマルションの一例は、水性担体中にスクアランなどの代謝可能な油、α−トコフェロールなどのトコール、およびポリソルベート80またはTween 80などの界面活性剤を含んでなり、付加的な免疫刺激剤を含まず、特に、それは無毒な脂質A誘導体(3D−MPLなど)またはサポニン(QS21など)を含まない。水性担体は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水であり得る。さらに、水中油型エマルションはスパン85および/またはレシチンおよび/またはトリカプリリンを含み得る。
【0116】
本発明の別の実施形態では、抗原または抗原組成物を含んでなるワクチン組成物と、水中油型エマルションおよび所望により1以上のさらなる免疫刺激剤を含んでなるアジュバント組成物を提供し、該水中油型エマルションは0.5〜10mgの代謝可能な油(好適には、スクアラン)、0.5〜11mgのトコール(好適には、α−トコフェロール)および0.4〜4mgの乳化剤を含んでなる。
【0117】
1つの特定の実施形態では、アジュバント処方物は水中油型エマルションなどのエマルションの形態で製造された3D−MPLを含む。場合によっては、このエマルションは、WO94/21292に開示されているように0.2μm径未満の小粒径である。例えば、3D−MPLの粒子は、0.22ミクロンの膜で濾過除菌されるに十分小さいものであり得る(欧州特許第0689454号に記載の通り)。あるいは、3D−MPLはリポソーム処方物として製造することもできる。所望により、3D−MPL(またはその誘導体)を含有するアジュバントはまた、付加的な免疫刺激成分も含む。
【0118】
例えば、キメラFGポリペプチド抗原を伴う免疫原性組成物が幼児への投与のために処方される場合には、アジュバントの用量は幼児対象において有効で、かつ、比較的反応原性の無いように決定される。一般に、幼児処方物におけるアジュバントの用量は、成人(例えば、65歳以上の成人)への投与のために設計された処方物で用いられるものよりも少ない。例えば、3D−MPLの量は一般に、用量当たり1μg〜200μg、例えば10〜100μg、または10μg〜50μgの範囲である。幼児用量は一般にこの範囲の下端であり、例えば約1μg〜約50μg、例えば約2μg、または約5μg、または約10μg、約25μgまで、または約50μgまでである。一般に、QS21が処方物に用いられる場合、それらの範囲は匹敵するものである(上記で示した比率に従う)。成人および高齢者では、処方物は一般に、幼児処方物に一般に見られるものよりも多いアジュバント成分を含む。特に、水中油型エマルションを用いる処方物では、このようなエマルションは、例えば、コレステロール、スクアラン、αトコフェロール、および/またはtween 80またはスパン85などの洗剤のような付加的成分を含み得る。例示的処方物では、このような成分は、以下の量:約1〜50mgのコレステロール、2〜10%のスクアラン、2〜10%のαトコフェロールおよび0.3〜3%のtween 80で存在し得る。一般に、スクアラン:αトコフェロールの比率は、これがより安定なエマルションを提供することから、1または1未満である。場合によっては、処方物は安定剤を含んでもよい。ミョウバンが例えば3D−MPLと組み合わせて存在する場合、その量は一般に用量当たり約100μg〜1mg、例えば約100μg、または約200μg〜約750μg、例えば約500μgである。
【0119】
免疫原性組成物は一般に、免疫防御的量(またはその分割用量)の抗原を含み、慣例の技術によって製造することができる。ヒト対象への投与のためのものを含む免疫原性組成物の製造は一般に、Pharmaceutical Biotechnology, Vol.61 Vaccine Design-the subunit and adjuvant approach, Powell and Newman編, Plenum Press, 1995. New Trends and Developments in Vaccines, Voller et al.編, University Park Press, Baltimore, Maryland, U.S.A. 1978に記載されている。リポソーム内へのカプセル封入は、例えば、Fullertonにより米国特許第4,235,877号に記載されている。タンパク質の高分子へのコンジュゲーションは、例えば、Likhiteにより米国特許第4,372,945号およびArmor et al.により米国特許第4,474,757号に記載されている。
【0120】
一般に、免疫原性組成物の各用量中のタンパク質の量は、典型的な対象において重大な有害副作用無く、免疫防御応答を誘導する量として選択される。これに関して免疫防御は、感染に対する完全な防御を必ずしも意味するのではなく、徴候または疾患、特にウイルスに関連する重篤な疾患に対する防御を意味する。抗原の量は、どの特定の免疫原を用いるかによって異なり得る。一般に、各ヒト用量は1 1000μg、例えば約1μg〜約100μg、例えば約1μg〜約50μg、例えば約1μg、約2μg、約5μg、約10μg、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約40μg、または約50μgのタンパク質を含んでなると考えられる。免疫原性組成物に用いる量は、対象集団(例えば、幼児または高齢者)に基づいて選択される。特定の組成物に対する最適量は、抗体力価の所見および対象における他の応答を含む標準的な試験によって確認することができる。初回ワクチン接種の後、対象に約4週間以内に追加免疫を施すことができる。
【実施例】
【0121】
実施例1:例示的キメラRSVポリペプチド抗原
例示的真核生物FGポリペプチド
例示的真核生物キメラFG V1−1およびFG V2−1を本開示に従って作製した。このような例示的FGキメラの配列を配列番号10および11に示す。キメラFGポリペプチドはF0天然シグナル配列を含んでいた。シグナル配列を組み込むと、グリコシル化などの翻訳後修飾が増強される。これらの例示的実施形態では、双方のフリン認識モチーフを除去し、F2ドメインとF1ドメインの間にリンカーを挿入した。FG V1−1およびFG V2−1に存在するリンカーの配列をそれぞれ配列番号5および6に示す。
【0122】
この例示的組換えタンパク質を、GS発現系を用い、哺乳類チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で発現されるように設計した。グルタミン不含培地で増殖させたCHO細胞は最適な増殖に外因性のグルタミンを必要とする。CHO細胞を、キメラFGポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むpEE14ベクターでトランスフェクトした後、この系は、pEE14ベクターによるグルタミンシンターゼの発現のために、代謝欠乏を介した安定クローンの選択を可能とする。ここに記載される構築物はCHO細胞での発現のために作製されたものであるが、これらの構築物は同様に、バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)を用いた発現のためにも作製可能である。
【0123】
実施例2:キメラRSVポリペプチドによるヒト血清における中和阻害
ボランティアから得たヒト血清をELISAによりRSV Aに対する反応性に関してスクリーニングし、事前のRSV中和能滴定に基づき、適切な希釈で中和阻害(NI)アッセイに用いた。血清を25μg/ml濃度の阻害タンパク質と混合し、37℃で1.5〜2時間インキュベートした。丸底96ウェルプレートにて、血清およびタンパク質を固定濃度のRSV Aと混合し、33℃で20分間インキュベートした。その後、血清−阻害剤−ウイルスの混合物を、予めVero細胞を播種した平底96ウェルプレートに入れ、NI力価検出のための免疫蛍光アッセイまで、5%CO2下、33℃でさらに5〜6日間インキュベートした。
【0124】
Reed−Muench法を用いて力価を計算し、NIのパーセンテージを次のように計算した:[(25μg/ml阻害剤のNI力価−0μg/ml阻害剤のNI力価)/0μg/ml阻害剤のNI力価]×100。
【0125】
【表1】




【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】FG V1−1およびFG V2−1を製造するために原型FG(FG Rix)に対して行った改変の模式図である。数字の1と2は、それぞれ、導入されたリンカーとGタンパク質断片の位置を示す。
【図2】FG−Rixと2例の新規改変型FGキメラ(FG V1−1およびFG V2−1と呼ばれる)の比較を示す配列アラインメントである。
【図3】図3AおよびBは FG V1−1およびFG V2−1によるヒト血漿の中和阻害を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端からC末端の方向に、
(i)呼吸器合胞体ウイルス(RSV)融合(F)タンパク質ポリペプチドのF1ドメインと切断されないように連結されたF2ドメインを含んでなる第一のアミノ酸配列と、
(ii)免疫学的に優性なエピトープを含んでなるRSV付着(G)タンパク質ポリペプチドの一部を含んでなる第二のアミノ酸配列と
を含んでなる、キメラRSVポリペプチド。
【請求項2】
RSV Fタンパク質ポリペプチドのF2ドメインとF1ドメインとがアミノ酸リンカーによって切断されないように連結されている、請求項1に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項3】
アミノ酸リンカーが、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8の群から選択される、請求項2に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項4】
第一のアミノ酸配列が、フリン切断部位を除去する少なくとも1つのアミノ酸欠失または置換を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項5】
第一のアミノ酸配列が、RSV Fタンパク質ポリペプチド106番と133番の位置にアミノ酸欠失を含んでなる、請求項4に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項6】
シグナルペプチドをさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項7】
F2ドメインが、天然Fタンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の残基24〜105を含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項8】
F1ドメインが、天然Fタンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の残基137〜528を含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項9】
RSV Gタンパク質ポリペプチドの一部が、天然Gタンパク質ポリペプチドのアミノ酸残基183〜203を含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項10】
RSV Gタンパク質ポリペプチドの一部が、天然Gタンパク質ポリペプチドのアミノ酸残基152〜229を含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項11】
RSV Gタンパク質ポリペプチドの一部が、天然Gタンパク質ポリペプチドのアミノ酸残基149〜229を含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項12】
キメラポリペプチドが、天然に存在するRSVポリペプチドに対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含んでなり、そのアミノ酸置換がワクチンにより増強されるウイルス性疾患の軽減または予防に関連している、請求項1〜11のいずれか一項に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項13】
キメラポリペプチドが、Gタンパク質の残基191におけるアラニンによるアスパラギンの置換(N191A)を含んでなる、請求項12に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項14】
Fタンパク質ポリペプチドおよびGタンパク質ポリペプチドの少なくとも一部が、配列においてRSV A Long株またはRSV A2株に相当する、請求項1〜13のいずれか一項に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項15】
キメラポリペプチドが、ポリヒスチジンタグをさらに含んでなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項16】
キメラポリペプチドが、配列番号11および13から選択されるアミノ酸配列またはその部分配列を含んでなる、請求項1に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項17】
部分配列から選択配列のアミノ酸残基1〜23が除かれた、請求項16に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項18】
RSV Fタンパク質およびRSV Gタンパク質双方の免疫優性エピトープを少なくとも1つ含んでなる、請求項1〜17のいずれか一項に記載のキメラRSVポリペプチド。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載のキメラRSVポリペプチドの多量体を含んでなる、組換えRSV抗原。
【請求項20】
RSV抗原が、キメラポリペプチドの三量体を含んでなる、請求項19に記載の組換えRSV抗原。
【請求項21】
請求項1〜18のいずれか一項に記載のキメラRSVポリペプチドと担体または賦形剤とを含んでなる、免疫原性組成物。
【請求項22】
担体または賦形剤が、薬学上許容される担体または賦形剤である、請求項21に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
担体または賦形剤がバッファーを含んでなる、請求項21または22に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
担体または賦形剤が、溶解度、安定性または溶解度と安定性の双方を安定化させる少なくとも1つの成分を含んでなる、請求項21〜23のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
アジュバントをさらに含んでなる、請求項21〜24のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
アジュバントが、新生児への投与に好適である、請求項25に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
アジュバントが、少なくとも65歳のヒトにおいて免疫応答を増強し得る、請求項25に記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
アジュバントが、Th1偏向アジュバントである、請求項25〜27のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
アジュバントが、TLR−4リガンドである、請求項28に記載の免疫原性組成物。
【請求項30】
脂質A誘導体が、3D−MPLおよび脂質Aの任意の合成誘導体から選択される、請求項29に記載の免疫原性組成物。
【請求項31】
特定の担体をさらに含んでなる、請求項28〜30のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項32】
前記担体がミョウバンである、請求項31に記載の免疫原性組成物。
【請求項33】
アジュバントが、水中油型エマルションを含んでなる、請求項25〜30のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項34】
薬剤として用いるための、請求項21〜33のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項35】
ヒト対象への投与後のRSVによる感染の予防または軽減に用いるための、請求項21〜33のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項36】
ヒト対象への投与後にRSVによる感染により引き起こされる病的応答の予防または軽減に用いるための、請求項21〜33のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項37】
ヒト対象への投与後にRSVによる感染を軽減または予防する、請求項21〜33のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項38】
ヒト対象への投与後にRSVによる感染により引き起こされる病的応答を軽減または予防する、請求項21〜33のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項39】
RSV以外の病原性生物の少なくとも1つの付加的抗原をさらに含んでなる、請求項21〜33のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項40】
病原性生物が、RSV以外のウイルスである、請求項39に記載の免疫原性組成物。
【請求項41】
免疫原性ウイルスが、パラインフルエンザウイルス(PIV)である、請求項40に記載の免疫原性組成物。
【請求項42】
病原性生物が、B型肝炎、インフルエンザ、ジフテリア、破傷風、百日咳、好血性インフルエンザ、ポリオウイルスおよび肺炎球菌から選択される、請求項39に記載の免疫原性組成物。
【請求項43】
請求項1〜18のいずれか一項に記載のキメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる、組換え核酸。
【請求項44】
キメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列が、選択された宿主細胞における発現のために至適化された少なくとも1つのコドンを含んでなる、請求項43に記載の組換え核酸。
【請求項45】
請求項43または44に記載の組換え核酸を含んでなる、ベクター。
【請求項46】
原核生物または真核生物発現ベクターを含んでなる、請求項45に記載のベクター。
【請求項47】
請求項43もしくは44に記載の核酸、または請求項46に記載の発現ベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項48】
細菌細胞、 酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞および哺乳類細胞から選択される、請求項47に記載の宿主細胞。
【請求項49】
RSV感染を処置するための薬剤の製造における、請求項1〜18のいずれか一項に記載のキメラRSVポリペプチドまたは請求項43〜46のいずれか一項に記載の核酸の使用。
【請求項50】
薬剤が、RSV感染を予防的に処置する目的で投与される、請求項49に記載のキメラRSVポリペプチドまたは核酸の使用。
【請求項51】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に対して免疫応答を惹起するための方法であって、請求項1〜18のいずれか一項に記載のキメラRSVポリペプチドを含んでなる、免疫学的に有効な量の組成物を対象に投与する工程を含んでなる、方法。
【請求項52】
キメラRSVポリペプチドを含んでなる組成物の投与が、RSVとの接触後にウイルス性疾患を増強することなくRSVに特異的な免疫応答を惹起する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
免疫応答が、Th1型免疫応答を含んでなる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
免疫応答が、RSVによる感染を軽減もしくは予防する、および/またはRSVによる感染後に病的応答を軽減もしくは予防する防御免疫応答を含んでなる、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
対象がヒト対象である、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
キメラRSVポリペプチドを含んでなる組成物の投与が、鼻腔内経路による投与を含んでなる、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
キメラRSVポリペプチドを含んでなる組成物の投与が、筋肉内経路による投与を含んでなる、請求項51に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−528222(P2011−528222A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517723(P2011−517723)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001021
【国際公開番号】WO2010/006447
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(502296914)アイディー バイオメディカル コーポレイション オブ ケベック (9)
【Fターム(参考)】