説明

キメラ水痘帯状疱疹ウイルス−ウイルス様粒子

本発明は、キメラVZV糖タンパク質を含む水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の新規キメラウイルス様粒子(VLP)を開示する。本発明はまた、キメラVZV−VLPのワクチン製剤、及び対象において免疫応答を誘導する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年9月9日出願の米国仮特許出願第60/970,592号、2008年5月20日出願の米国仮特許出願第61/071,835号、及び2007年7月19日出願の米国仮特許出願第60/950,707号に対する優先権を主張し、これらの全ては、あらゆる目的のため全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルに関する記載事項
本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は、全体として参照により本明細書に援用される:配列表のコンピュータ取り可能フォーマットコピー(ファイル名:NOVV 035 02WO SeqList_ST25.txt、記録日:2008年7月21日、ファイルサイズ37キロバイト)。
【背景技術】
【0003】
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は、ヒトヘルペスウイルス3型(HHV−3)としても知られ、ウイルスのうちヘルペスウイルス(Herpesviridae)科のアルファヘルペスウイルス亜科のメンバーである。VZVはエンベロープを有するウイルスであり、約125,000ヌクレオチドの線状二本鎖DNAをゲノムとする。そのゲノムは正二十面体のヌクレオカプシドによって囲い込まれている。ヌクレオカプシドとウイルスエンベロープとの間の空間に位置するテグメントは、ウイルスがコードするタンパク質と酵素とからなる構造体である。ウイルスエンベロープは宿主細胞膜から得られ、ウイルスがコードする糖タンパク質を含む。
【0004】
ヒトヘルペスウイルスのなかで最小のVZVゲノムは、少なくとも70個のオープンリーディングフレームをコードし、そのうち8個は、ウイルス複製周期の種々の段階で機能する推定上の糖タンパク質(gE、gI、gB、gH、gK、gL、gC、及びgM)をコードする。糖タンパク質E(gE、ORF 68とも表記される)はウイルス複製に必須であり(Mallory et al. (1997)J. Virol. 71: 8279-8288;Mo et al. (2002)Virology 304: 176-186)、感染細胞並びに成熟ビリオン中に最も豊富に見られる糖タンパク質である(Grose, 2002, The predominant varicella-zoster virus gE and gI glycoprotein complex, In Structure-function relationships of human pathogenic viruses, Holzenburg and Bogner (eds.), Kluwer Academic/Plenum Publishers, New York, NY)。糖タンパク質I(gI、ORF 67とも表記される)は感染細胞中でgEと複合体を形成し、それによって双方の糖タンパク質のエンドサイトーシスが促進されて、それらはトランス−ゴルジに送り込まれ、そこで最終的なウイルスエンベロープが得られる(Olson and Grose (1998)J. Virol. 72: 1542-1551)。ウイルス侵入において役割を果たすと考えられる糖タンパク質B(gB、ORF 31とも表記される)は中和抗体と結合し、2番目に最もよく見られる糖タンパク質である(Arvin (1996)Clin. Microbiol. Rev. 9: 361-381に論考がある)。糖タンパク質H(gH)は、ウイルスの細胞間伝播を促進する融合機能を有すると考えられる。gE、gB、及びgHに対する抗体は、自然感染後及びワクチン接種後によく見られ、インビトロでウイルスの感染力を中和することが示されている(Keller et al. (1984)J. Virol. 52: 293-297;Arvin et al. (1986)J. Immunol. 137: 1346-1351;Vafai et al. (1988)J. Virol. 62: 2544-2551;Forghani et al. (1990)J. Clin. Microbiol. 28: 2500-2506)。
【0005】
VZVに初感染すると水疱瘡(水痘)を発症し、これは、主に顔面及び体幹上に生じる極めて伝染性の高い皮膚発疹を特徴とする。初期感染後、ウイルスDNAは宿主神経細胞のゲノムに組み込まれ、数年間は潜伏したままとなり得る。成人においてウイルスは再活性化し、帯状疱疹(帯状ヘルペス)の疾患を引き起こし得る。帯状疱疹は、初感染時に生じたものとは異なる皮膚発疹を生じる。この発疹は激痛を伴い、結果として帯状疱疹後神経痛などのより重篤な病態となり得る。
【0006】
水痘ワクチン(Varivax)は一般公衆に利用可能であり、米国を含むいくつかの国では、子供のワクチン接種推奨スケジュールに加えられている。高齢の集団構成員における帯状疱疹の予防用として、より高濃度の水痘ワクチン製剤(Zostavax)がFood and Drug Administrationにより認可されている。水痘ワクチンは安全性が証明されているものの、ワクチンによって付与されるVZV感染症に対する免疫は、時間の経過とともに減弱するという証拠がいくつかある(Chaves et al. (2007)N. Engl. J. Med. 356: 1121-1129)。従って、ワクチン接種を受けた個人であっても依然として帯状疱疹に罹り易く、VZVによって引き起こされるその病態はより重篤である。加えて、ワクチンは弱毒生ウイルスから製造され、そのため個人がワクチン接種によって水疱瘡又は帯状疱疹のいずれかを発症する可能性が生じる。実際、ワクチンに使用された株によって引き起こされたと見られる帯状疱疹の症例がいくつか報告されている(Matsubara et al. (1995). Acta Paediatr Jpn 37: 648-50;Hammerschlag et al. (1989). J Infect Dis. 160: 535-7)。ワクチンに存在する弱毒生ウイルスはまた、免疫無防備状態の個人におけるワクチンの使用も制限する。
【0007】
ウイルス様粒子(VLP)は、構造的には成熟ビリオンと類似しているが、ウイルスゲノムがなく、ウイルス複製が起こり得ないようにされている。VLPは、インタクトなウイルスと同じく、カプシドタンパク質及びウイルスエンベロープタンパク質などの抗原タンパク質を含み、さらに、その表面上に外来性の構造タンパク質を発現するように作製することができる。従って、VLPは免疫原性組成物(例えばワクチン)として安全に投与することができる。さらに、VLPは天然ウイルスに似ているとともに多価の粒子状構造であるため、VLPは可溶性抗原と比べて中和抗体の誘導により有効であり得る。
【0008】
糖タンパク質又はテグメントタンパク質(tegument protein)を発現するVLPが、これまで種々のヘルペスウイルス科のメンバーから作り出されている。エンベロープを有するテグメントタンパク質からなるLight粒子(L粒子)が、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)、ウマヘルペスウイルス1型(EHV−1)、又は仮性狂犬病ウイルスのいずれかに感染させた細胞から得られている(McLauchlan and Rixon (1992)J. Gen. Virol. 73: 269-276;米国特許第5,384,122号)。ウイルスDNA複製阻害薬の存在下でHSV−1に感染させた細胞から、プレウイルスDNA複製エンベロープ粒子(pre-viral DNA replication enveloped particle:PREP)と称される別のタイプのVLPを生成することも可能となった。PREPは構造上はL粒子と似ていて、但し異なるタンパク質組成物を含んでいた(Dargan et al. (1995)J. Virol. 69: 4924- 4932;米国特許第5,994,116号)。酵母Tyレトロトランスポゾンによってコードされるタンパク質p1を使用する技術により、VZVからgEタンパク質の断片を発現するハイブリッドVLPが産生されている(Garcia-Valcarcel et al. (1997)Vaccine 15: 709-719;Welsh et al. (1999)J. Med. Virol. 59: 78-83;米国特許第6,060,064号)。本発明は、少なくとも1つのVZVタンパク質を含むが、酵母Tyタンパク質は含まない新規キメラVLPについて記載する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ウイルスコアタンパク質と少なくとも1つの水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)タンパク質とを含む精製キメラVLPを含み、ここで前記VLPは、酵母Tyタンパク質を含まず、且つVZV核酸を含まない。一実施形態において、前記VZVタンパク質はキメラであり、VZVタンパク質のエクトドメインと異種タンパク質の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインとを含む。別の実施形態において、前記異種タンパク質は、前記ウイルスコアタンパク質と結合する。別の実施形態において、前記VZVタンパク質は、gE、gI、gB、gH、gK、gL、gC、及びgMからなる群から選択される。別の実施形態において、前記VZVタンパク質は、gE及び/又はgIである。別の実施形態において、前記異種タンパク質の前記膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインは、インフルエンザウイルスに由来する。別の実施形態において、前記インフルエンザウイルスタンパク質は、赤血球凝集素(HA)及び/又はノイラミニダーゼ(NA)である。別の実施形態において、前記HA及び/又はNAは、インフルエンザウイルスA/Indonesia/5/05に由来する。別の実施形態において、前記ウイルスコアは、オルトミクソウイルスに由来する。別の実施形態において、前記ウイルスコアは、パラミクソウイルスに由来する。別の実施形態において、前記キメラVLPは、配列番号1及び/又は配列番号9を含む。
【0010】
本発明はまた、キメラVLPを産生する方法も含み、これは、少なくとも1つのVZVタンパク質とウイルスコアタンパク質とをコードするベクターを好適な宿主細胞にトランスフェクトすることと、VLPを形成可能な条件下で前記キメラVZVとウイルスコアタンパク質とを発現させることとを含み、ここで前記宿主細胞は、酵母Tyタンパク質を含まない。一実施形態において、前記VZVタンパク質はキメラであり、VZVタンパク質のエクトドメインと異種タンパク質の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインとを含む。別の実施形態において、前記VZVタンパク質は、gE及び/又はgIである。別の実施形態において、前記異種タンパク質は、前記ウイルスコアタンパク質と結合する。別の実施形態において、前記異種タンパク質の前記膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインは、インフルエンザウイルスに由来する。別の実施形態において、前記コアは、インフルエンザウイルスA/Indonesia/5/05由来のインフルエンザウイルスM1である。
【0011】
本発明はまた、VLPを含む抗原製剤も含み、ここで前記キメラVLPは、少なくとも1つのVZVタンパク質とウイルスコアタンパク質とを含み、且つ酵母Tyタンパク質を含まない。一実施形態において、少なくとも1つのVZVタンパク質はキメラであり、gE、gI、gB、gH、gK、gL、gC、及びgMからなる群から選択される。別の実施形態において、前記VZVタンパク質は、gE及び/又はgIである。別の実施形態において、前記VZVタンパク質は、gE及び/又はgIである。別の実施形態において、前記コアタンパク質は、インフルエンザウイルスA/Indonesia/5/05由来のインフルエンザウイルスM1である。
【0012】
本発明はまた、キメラVLPを含むワクチンも含み、ここで前記キメラVLPは、少なくとも1つのVZVタンパク質とウイルスコアタンパク質とを含み、且つ酵母Tyタンパク質を含まない。一実施形態において、少なくとも1つのVZVタンパク質はキメラであり、gE、gI、gB、gH、gK、gL、gC、及びgMからなる群から選択される。別の実施形態において、前記VZVタンパク質は、gE及び/又はgIである。別の実施形態において、前記VZVタンパク質は、gE及び/又はgIである。別の実施形態において、前記コアタンパク質は、インフルエンザウイルスA/Indonesia/5/05由来のインフルエンザウイルスM1(配列番号9)である。
【0013】
本発明はまた、ヒト又は動物において感染に対する防御免疫を誘発する方法も含み、これは、ヒト又は動物にキメラVZV−VLPを含む抗原製剤又はワクチンを投与することを含み、ここで前記キメラVZV−VLPは、少なくとも1つのVZVタンパク質とウイルスコアタンパク質とを含み、前記キメラVLPは酵母Tyタンパク質を含まず、且つVZV核酸を含まない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)AcMNPVバキュロウイルスポリヘドリンプロモーター(PolH)の下流に鳥インフルエンザA/Indonesia/5/05(H5N1)由来のインフルエンザ膜貫通エンドドメインとC末端エンドドメインを伴うキメラVZV gE遺伝子を示す。(B)クマシーブルーで染色したSDS−PAGE(左側のパネル)及び抗Eモノクローナル抗体によるウエスタンブロット(右側のパネル)を示す。
【図2】精製キメラVZV gE VLPのEM分析を示す。VZV gE(HA TM/CT)/Indo M1キメラVLPのPTAによる電子顕微鏡(EM)ネガティブ染色(高倍率)。黒色バーが100nmを表す。
【図3】(A)精製キメラVZV gE VLPの免疫金EM分析を示す。VZV gE(HA TM/CT)/Indo M1キメラVLPの免疫金EM画像。対照である。黒色バーが100nmを表す。(B)精製キメラVZV gE VLPの免疫金EM分析を示す。VZV gE(HA TM/CT)/Indo M1キメラVLPの免疫金EM画像。キメラVLP上にある6nmの金粒子を示す。黒色バーが100nmを表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用される用語「ウイルス様粒子」(VLP)は、少なくとも1つの属性がウイルスに似ているが、非感染性であることが立証されている構造体を指す。本発明に係るウイルス様粒子は、ウイルス様粒子のタンパク質をコードする遺伝情報を保持せず、且つTy酵母タンパク質、又はその一部を含有しない。一般に、ウイルス様粒子はウイルスゲノムがなく、複製することができない。加えて、ウイルス様粒子は多くの場合に異種発現によって多量に産生することができ、且つ容易に精製することができる。この用語はまた、以下に記載される方法によって産生される任意のサブウイルス粒子も指す。この用語は、以下に記載される方法又は当該技術分野において公知の方法のうちの任意の方法によって精製することのできるタンパク質凝集体を含む。
【0016】
本明細書で使用される用語「キメラの」又は「キメラタンパク質」は、VZVによって産生されることのない成分の一部を含むタンパク質を指す。この用語に酵母Ty−p1−VZV融合タンパク質は含めない。一般に、この用語は、異種タンパク質の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインと融合したVZVエクトドメインを指す。
【0017】
本明細書で使用される用語「コアタンパク質」は、宿主細胞からの粒子の出芽及び放出を駆動するタンパク質である。本明細書で使用される用語「コア」及び「マトリクス」タンパク質は同義的に使用される。宿主細胞からの粒子の出芽及び放出を駆動するコアタンパク質の例としては、インフルエンザM1及びニューカッスル病タンパク質Mが含まれる。
【0018】
本明細書で使用される用語「抗原製剤」又は「抗原組成物」は、脊椎動物、例えば哺乳動物に投与されると、免疫応答を誘導し得る製剤を指す。
【0019】
本明細書で使用される用語「精製VLP」は、混合物中の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上について他の分子(溶媒を除く)を含まない本発明のVLPの製剤を指す。例えば、本発明のVLPは、本発明のVLPの作製に関連した他のウイルス、タンパク質、脂質、及び炭水化物を実質的に含まないものであり得る。この用語はまた、夾雑(contaminating)VZVゲノムDNA又はその一部を有するVLPから単離されたVLPも包含する。
【0020】
本明細書で使用される用語「キメラVLP」は、少なくとも2つの異なるウイルス(異種タンパク質)由来のタンパク質、又はその一部を含有するVLPを指す。本発明の目的上、タンパク質の1つは、宿主細胞からVLPの形成を駆動することのできるウイルスに由来し(例えば、インフルエンザM1)、他方のタンパク質はキメラVZVタンパク質である。
【0021】
本明細書で使用される用語「ワクチン」は、本発明のVLPを含有する製剤を指し、これは、脊椎動物に投与可能な形態であり、且つ、感染症を予防及び/又は改善させたり、及び/又は感染症の少なくとも1つの症状を軽減したり、及び/又は追加用量のVLPの効力を亢進したりするための免疫を誘導するのに十分な防御免疫応答を誘導する。
【0022】
本明細書で使用される用語「有効量」は、所望の生物学的効果を実現するのに必要又は十分なVLPの量を指す。組成物の有効量は、特定の結果を達成する量であり得るとともに、当業者は日常のこととしてかかる量を決定することができるであろう。例えば、感染症を予防し、治療し、及び/又は改善させるための有効量は、本発明のVLPに曝露したとき免疫系を活性化させ、結果として抗原特異的な免疫応答を生じさせるために必要な量であり得る。この用語はまた、「十分量」と同義語でもある。
【0023】
本明細書で使用される用語「防御免疫」又は「防御免疫応答」は、脊椎動物(例えば、ヒト)によって示される、感染症を予防するか、若しくは改善させたり、又はその少なくとも1つの症状を軽減したりするような感染病原体に対する免疫又は免疫応答の誘発を指す。
【0024】
本明細書で使用される用語「脊椎動物」又は「対象」又は「患者」は、限定なしに、ヒトと、チンパンジー並びに他の類人猿及びサル種などの非ヒト霊長類を含む他の霊長類とを含む脊索動物亜門の任意のメンバーを指す。ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマなどの家畜;イヌ及びネコなどの家庭飼育用哺乳動物;マウス、ラット(コットンラットを含む)及びモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物;ニワトリ、シチメンチョウ及びその他の、アヒル、ガチョウ等の鶉鶏類などの家禽、野鳥及び狩猟鳥を含む鳥類もまた、非限定的な例である。用語「哺乳動物」及び「動物」は、この定義に含まれる。成体及び新生個体の双方とも網羅されることが意図される。
【0025】
一般に、ウイルス様粒子(VLP)はウイルスゲノムがなく、従って非感染性である。加えて、ウイルス様粒子は多くの場合に異種発現によって産生することができ、且つ容易に精製することができる。ほとんどのVLPが少なくともウイルスコアタンパク質を含む。このコアタンパク質は、通常、宿主細胞からの粒子の出芽及び放出を駆動する。しかしながら、ワクチン又は抗原性生成物が有効であるためには、免疫応答を誘導するよう、抗原がVLP上で発現して適切に提示されなければならない。本発明は、VZVタンパク質を含むキメラVLPを含む。一実施形態において、前記VZVタンパク質はキメラである。本発明のキメラVLPは、VZV感染症を治療し、予防し、及び/又は改善させるためのワクチン及び免疫原性組成物の調製に有用である。
【0026】
前記キメラVLPの1つの重要な特徴は、前記VLPの表面上でタンパク質を発現させる能力であり、それによって脊椎動物の免疫系は、前記タンパク質に対する免疫応答を誘導することができるようになる。しかしながら、全てのタンパク質がVLPの表面上で発現することができるとは限らない。VLPの表面上で特定のタンパク質が発現しない、又は発現しにくい理由は、数多くあり得る。1つの理由は、前記タンパク質が宿主細胞の膜に送り込まれないこと、すなわち前記タンパク質が膜貫通ドメインを有しないことである。従って、VLPの表面上でVZVタンパク質の発現を増加させ、及び/又は前記タンパク質のVLPへの取り込みを増加させる一方法は、異種タンパク質の細胞質ドメイン及び/又は膜貫通ドメインをVZVタンパク質と融合してVZVキメラタンパク質を作成することである。本発明の一実施形態において、前記異種細胞質ドメイン及び/又は膜貫通ドメインは、前記コアタンパク質と結合し得る。特定の理論に制約されないが、前記異種タンパク質の細胞質ドメイン及び/又は膜貫通ドメインのコアとの結合は、前記キメラVZVタンパク質のVLPへの送り込みを促進し得る。従って、本発明の別の実施形態はキメラVLPを含み、これは、VLPの産生を駆動し、且つキメラVZVタンパク質をVLPに送り込んで取り込ませるよう促すコアタンパク質を含む。別の実施形態において、前記キメラVLPは酵母Tyタンパク質を含まない。
【0027】
ある実施形態において、本発明は、少なくとも1つのキメラVZVタンパク質を含むキメラVLPを含み、ここで前記キメラVZVタンパク質は、異種タンパク質の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインを含む。一実施形態において、前記VLPは、VLPの形成を駆動するコアタンパク質を含む。別の実施形態において、前記異種タンパク質の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインは、前記コアタンパク質と結合して前記キメラVZVタンパク質をVLPに送り込む。別の実施形態において、前記キメラVZVタンパク質は、gE、gI、gB、gH、gK、gL、gC、及びgMからなる群から選択されるVZVタンパク質の一部を含む。別の実施形態において、前記VZVタンパク質はgEである。別の実施形態において、前記VZVタンパク質はgIである。別の実施形態において、キメラVZV gE及びキメラVZV gIは、同じVLPのなかにある。
【0028】
本発明で用いることのできるコアタンパク質は、細胞中で発現するとVLPの形成を駆動するウイルスタンパク質である。特に、ウイルスコアタンパク質としては、限定はされないが、ウイルスGagタンパク質、特にレトロウイルスgagタンパク質(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)Gagウイルスタンパク質(GenBankシリアル番号AAA44987及びp55gag GenBankシリアル番号AAF43628)、サル免疫不全ウイルス(SIV)Gagウイルスタンパク質(GenBankシリアル番号AAA91922))、マウス白血病ウイルス(MuLV)Gagウイルスタンパク質(GenBankシリアル番号NP040332))、ラブドウイルスマトリクスタンパク質Mタンパク質(例えば、水疱性口内炎ウイルス(VSV)Mタンパク質(GenBank受託番号CAM83684))、フィロウイルスウイルスコアタンパク質(例えば、エボラVP40ウイルスタンパク質(GenBank受託番号AAN37506))、リフトバレー熱ウイルスNタンパク質(GenBank受託番号ABK91994)、コロナウイルスM、E及びNPタンパク質(NPタンパク質についてはGenBank受託番号AAP49024、Mタンパク質についてはAAR86790、Eタンパク質についてはAAP82979(SARSコロナウイルスShanghaiQXC1))、ブニヤウイルスNタンパク質(GenBank受託番号AAA47114)、インフルエンザM1タンパク質、パラミクソウイルスMタンパク質(例えば、ニューカッスル病タンパク質M(AAK55549)及び呼吸器合胞体ウイルス(RSV)M(NP_056860))、アレナウイルスZタンパク質(例えば、ラッサ熱ウイルスZタンパク質)、ニューカッスル病タンパク質M(AAK55549)、パラインフルエンザM(例えば、ヒトパラインフルエンザウイルス1型MAAB22344))及びこれらの組み合わせを挙げることができる。一実施形態において、前記コア又はマトリクスタンパク質は、オルトミクソウイルスに由来する。別の実施形態において、前記オルトミクソウイルスコアはインフルエンザウイルスM1を含まない。別の実施形態において、前記コア又はマトリクスタンパク質は、パラミクソウイルスに由来する。別の実施形態において、前記パラミクソウイルス
コアは、ニューカッスル病ウイルスM、RSV M、又はヒトパラインフルエンザウイルスMを含まない。
【0029】
本発明の別の実施形態において、前記異種タンパク質は、前記コアタンパク質と相互作用し、VZVキメラタンパク質のVLPへの送り込みを促進し得る。例えば、本発明の前記キメラVLPがインフルエンザM1を含む場合、VZVタンパク質と融合する前記異種膜貫通及び/又は細胞質は、インフルエンザウイルスHA及び/又はNAに由来し得る。これらのタンパク質は、異種タンパク質のVLPへの送り込みを促進することが示されている(全体として参照により本明細書に援用される同時係属出願中の国際公開第2008/005777号を参照)。前記コアと異種タンパク質とは、必ずしも同じウイルスに由来しなくともよい。例えば、非HIVウイルス由来のいくつかの膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインは、HIV由来のp55 gagコアを伴う発現に使用し得ることが示されている(全体として参照により本明細書に援用されるWang et al., J. Virol., 81, 10869-10878を参照)。
【0030】
特定の実施形態において、前記異種タンパク質の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインは、同じウイルスに由来し得る。一実施形態において、前記キメラVLPは、インフルエンザウイルスM1と、インフルエンザHA及び/又はNA由来の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインを有するキメラVZVタンパク質とを含む。別の実施形態において、前記キメラVLPは、A/Indonesia/5/05由来のインフルエンザウイルスM1と、インフルエンザウイルスHA及び/又はNA由来の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインを有するキメラVZVタンパク質とを含む。別の実施形態において、インフルエンザHA及び/又はNA由来の前記膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインは、A/quail/Hong Kong/G1/97、A/Hong Kong/1073/99、A/Hong Kong/2108/03、Duck/HK/Y280/97、CK/HK/G9/97、Gf/HK/SSP607/03、Ph/HK/CSW1323/03、WDk/ST/4808/01、CK/HK/NT142/03、CK/HK/WF126/03、SCk/HK/WF285/03、CK/HK/YU463/03、CK/HK/YU577/03、SCk/HK/YU663/03、Ck/HK/CSW161/03、及びGF/HK/NT101/03から選択される群に由来する。別の実施形態において、インフルエンザウイルスHA及び/又はNAの膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインは、A/Indonesia/5/05に由来する。別の実施形態において、前記キメラVZVタンパク質は、インフルエンザHA及び/又はNAの膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインを有するgEのエクトドメインを含む。別の実施形態において、前記gEの膜貫通ドメインは、前記インフルエンザHA及び/又はNAに置き換えられる。一実施形態において、前記キメラタンパク質は配列番号1を含む。別の実施形態において、前記キメラVZVタンパク質は、インフルエンザウイルスHA及び/又はNAの膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインを有するgIのエクトドメインを含む。別の実施形態において、前記キメラタンパク質は配列番号3を含む。別の実施形態において、前記キメラVLPは、インフルエンザウイルスM1と、キメラgEと、キメラgIとを含む。別の実施形態において、前記キメラVLPは、インフルエンザウイルスM1と、天然gEと、キメラgIとを含む。別の実施形態において、前記キメラVLPは、インフルエンザウイルスM1と、キメラgEと、天然gIとを含む。別の実施形態において、前記天然gE及びIgは改変され、それらの天然膜貫通ドメインが除去されている(それぞれ、配列番号10及び12)。gEとIgとはヘテロ二量体を形成することから、VLPに取り込まれるためには、前記二量体のうち一方のメンバーのみが異種膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインを有していればよい。
【0031】
本発明の一実施形態において、前記キメラVLPはニューカッスル病ウイルス(NDV)タンパク質Mと、ニューカッスル病ウイルスタンパク質由来の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインを有するキメラVZVタンパク質とを含む。一実施形態において、NDVタンパク質由来の前記膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインは、融合(F)タンパク質及び/又は赤血球凝集素−ノイラミニダーゼ(HN)タンパク質に由来する(NDV FについてはGenBank受託番号CAA00288、及びNDV HNについてはCAA00292)。別の実施形態において、前記キメラVLPは、NDV MとキメラgEとを含む。別の実施形態において、前記キメラVLPは、キメラgIをさらに含む。
【0032】
本発明の一実施形態において、前記キメラVLPは、RSVタンパク質Mと、RSVタンパク質由来の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインを有するキメラVZVタンパク質とを含む。一実施形態において、RSVタンパク質由来の前記膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインは、融合(F)タンパク質及び/又はGタンパク質に由来する(RSV FについてはGenBank受託番号AAR14266、及びRSV GについてはAAR14265)。別の実施形態において、前記キメラVLPは、RSV MとキメラgEとを含む。別の実施形態において、前記キメラVLPは、キメラgIをさらに含む。
【0033】
特定の実施形態において、前記異種タンパク質(例えばインフルエンザHA及び/又はNA)の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインは、タンパク質セグメントの間にスペーサー配列を含む。前記スペーサー配列は、VZV又は前記異種タンパク質を起源としない任意のアミノ酸であってよい。このスペーサー配列は、前記VZVキメラタンパク質がVLPの表面上で発現するために重要であり得る。スペーサー配列の例としては、ポリGアミノ酸が挙げられる。前記スペーサーは、1〜約100アミノ酸長であり得る。
【0034】
本発明はまた、本発明のVLP上又はその中で発現する前記VZVタンパク質の変異体(前記キメラを含む)も包含する。この変異体は、構成タンパク質のアミノ酸配列に変化を含み得る。ポリペプチドに関連する用語「変異体」は、参照配列に対して1つ又は複数のアミノ酸が変化しているアミノ酸配列を指す。変異体は、例えばロイシンのイソロイシンとの置換など、置換アミノ酸が同様の構造又は化学特性を有する「保存的な」変更を有することができる。或いは、変異体は、例えばグリシンのトリプトファンとの置換など、「非保存的な」変更を有することもできる。類似の小さい変異としてはまた、アミノ酸の欠失若しくは挿入、又はそれらの双方を挙げることもできる。生物学的又は免疫学的活性を失うことなく、どのアミノ酸残基を置換、挿入、又は欠失することができるかを決定する際の指針は、当該技術分野において周知のコンピュータプログラム、例えば、DNASTARソフトウェアを使用して見出すことができる。
【0035】
クローニング、突然変異、細胞培養などの、本発明に適用可能な分子生物学的技術について記載している一般的な教本としては、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, Calif.(Berger);Sambrook et al., Molecular Cloning--A Laboratory Manual (3rd Ed.), Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 2000(「Sambrook」)及びCurrent Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, Greene Publishing Associates, Inc.とJohn Wiley & Sons, Inc.,との合弁事業(「Ausubel」)が挙げられる。これらの教本は、突然変異誘発、ベクターの使用、プロモーター及びその他の、例えば、VZVのgE、gI、gM、gH、gB又はテグメントタンパク質のクローニング及び突然変異等に関する多くの関連論題について記載している。従って、本発明はまた、本発明のキメラVLP上又はその中で発現するタンパク質の特性を改良したり、又は変化させたりするためのタンパク質改変及び組換えDNA技術の公知の方法も包含する。様々なタイプの突然変異誘発を使用して、タンパク質分子をコードする変異核酸を産生及び/又は単離し、及び/又は本発明のキメラVLP内又はその上のタンパク質をさらに修飾する/変異させることができる。そうした突然変異誘発としては、限定はされないが、部位特異的突然変異誘発、ランダム点突然変異誘発、相同組換え(DNAシャフリング)、ウラシル含有鋳型を使用する突然変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発、ホスホロチオエート修飾DNA突然変異誘発、ギャップを有する二重鎖DNAを使用した突然変異誘発などが挙げられる。さらなる好適な方法としては、点ミスマッチ修復(point mismatch repair)、修復欠損宿主株を使用した突然変異誘発、制限選択及び制限精製、欠失突然変異誘発、全遺伝子合成による突然変異誘発、二本鎖切断修復などが挙げられる。
【0036】
本発明のVZVタンパク質をクローニングする方法は、当該技術分野において公知である。例えば、特定のVZVタンパク質をコードする遺伝子は、VZVウイルスに感染させた細胞から抽出したポリアデニル化mRNAから、RT−PCRによって単離することができる。得られる産物遺伝子は、DNAインサートとしてベクターにクローニングすることができる。用語「ベクター」は、生体、細胞、又は細胞成分の間を核酸が伝播及び/又は転移することができるという意味を指す。ベクターとしては、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、ファージミド、トランスポゾン、人工染色体などが挙げられ、これらは自己複製するか、又は宿主細胞の染色体に組み込むことができる。ベクターは、ネイキッドRNAポリヌクレオチド、ネイキッドDNAポリヌクレオチド、同じ鎖内でDNA及びRNAの双方からなるポリヌクレオチド、ポリリジンコンジュゲートDNA又はRNA、ペプチドコンジュゲートDNA又はRNA、又はリポソームコンジュゲートDNAなどであってもよく、これは自己複製しない。全てではないにしろ、多くの一般的実施形態において、本発明のベクターはプラスミドである。
【0037】
従って、本発明は、本発明のキメラVLPの形成を誘導する細胞中で発現することができる発現ベクターにクローニングされたタンパク質(例えばコアタンパク質及び少なくとも1つのVZVタンパク質又はキメラVZVタンパク質)をコードするヌクレオチドを含む。「発現ベクター」は、プラスミドなどの、取り込んだ核酸の発現並びに複製を促進することが可能なベクターである。典型的には、発現させる核酸はプロモーター及び/又はエンハンサーと「作動可能に連結され」、プロモーター及び/又はエンハンサーによる転写調節制御に供される。一実施形態において、前記ヌクレオチドは、VZV gE(ORF 68)タンパク質又はキメラVZV gEタンパク質をコードする。別の実施形態において、前記ベクターは、VZV gEと、少なくとも1つのさらなるVZVタンパク質(例えばgI又はキメラgI)とをコードするヌクレオチドを含む。別の実施形態において、前記ベクターは、VZV gEタンパク質と、gI(ORF 67)、gM(ORF 50)、gH、gB及び/又はテグメントVZVタンパク質(又は前記タンパク質のキメラ型)とをコードするヌクレオチドを含む。別の実施形態において、前記ベクターはまた、VLPの形成を駆動することが可能なコアタンパク質も含む。別の実施形態において、発現ベクターはバキュロウイルスベクターである。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態において、タンパク質は突然変異を含んでもよく、この突然変異は、サイレント置換、付加、又は欠失を生じさせるが、コードされたタンパク質の特性若しくは活性又はタンパク質の構成のされ方を変えることはない変化を含む。ヌクレオチド変異を生じさせる理由は様々であってよく、例えば、コドン発現を特定の宿主に対して最適化する(ヒトmRNAのコドンを、Sf9細胞などの昆虫細胞によって好ましいコドンに変化させる)ためであり得る。
【0039】
加えて、ヌクレオチドを配列決定することにより、正しいコード領域がクローニングされたとともに、いかなる不要な突然変異も含まないことを確認することができる。ヌクレオチドを発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)にサブクローニングして、任意の細胞中で発現させ得る。上記は、VZVウイルスタンパク質をいかにクローニングできるかについての一例に過ぎない。当業者であれば、別の方法が有効且つ可能であることを理解するであろう。
【0040】
本発明はまた、gE、gI、gM、gH、gB、テグメントタンパク質、キメラタンパク質又はその一部を含むVZVタンパク質をコードするVZVヌクレオチドを含むコンストラクト及び/又はベクターも提供する。ベクターは、例えば、ファージベクター、プラスミドベクター、ウイルスベクター、又はレトロウイルスベクターであってもよい。gE、gI、gM、gH、gB、テグメントタンパク質、それらのキメラ、又はその一部を含むVZV遺伝子を含むコンストラクト及び/又はベクターは、適切なプロモーターに作動可能に連結されなければならず、AcMNPVポリヘドリンプロモーター(又は他のバキュロウイルス)、ファージλPLプロモーター、大腸菌(E. coli)lac、phoA及びtacプロモーター、SV40初期及び後期プロモーター、並びにレトロウイルスLTRのプロモーターが非限定的な例である。他の好適なプロモーターは、宿主細胞及び/又は所望の発現率に依存して、当業者には公知であろう。発現コンストラクトは、転写開始部位と、転写終結部位と、及び転写領域に、翻訳のためのリボソーム結合部位とをさらに含み得る。コンストラクトによって発現した転写産物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるポリペプチドの始端に翻訳開始コドンと、末端に適切に位置する終止コドンとを含み得る。
【0041】
発現ベクターは好ましくは、少なくとも1つの選択可能なマーカーを含み得る。かかるマーカーとしては、真核生物細胞培養について、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、G418耐性又はネオマイシン耐性遺伝子、及び大腸菌(E. coli)及び他の細菌での培養について、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性又はアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。好ましいベクターには、ウイルスベクター、例えば、バキュロウイルス、ポックスウイルス(例えば、ワクチニアウイルス、アビポックスウイルス、カナリア痘ウイルス、鶏痘ウイルス、ラクーンポックスウイルス、豚痘ウイルス等)、アデノウイルス(例えば、イヌアデノウイルス)、ヘルペスウイルス、及びレトロウイルスがある。本発明で使用され得る他のベクターとしては、細菌において用いられるベクターが含まれ、それとしては、pQE70、pQE60及びpQE−9、pBluescriptベクター、Phagescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A、ptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5が含まれる。好ましい真核生物ベクターには、pFastBacl pWINEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1及びpSG、pSVK3、pBPV、pMSG、並びにpSVLがある。他の好適なベクターは、当業者には直ちに明らかであろう。
【0042】
次に、上述の組換えコンストラクトを使用して、トランスフェクション、感染、又は形質転換が行われてもよく、gE、gI、gM、gH、gB、及びテグメントタンパク質、又はその一部を含むキメラVZVタンパク質と、少なくとも1つのコアタンパク質とを、真核生物細胞及び/又は原核生物細胞中で発現させることができる。従って、本発明は、gE、gI、gM、gH、gB、及びテグメントタンパク質、又はその一部を含むキメラVZVタンパク質と、少なくとも1つのコアタンパク質とをコードする核酸を含有する1つのベクター(又は複数のベクター)を含み、且つVLPを形成可能な条件下でキメラVZV遺伝子を発現させることができる宿主細胞を提供する。
【0043】
真核生物宿主細胞には、酵母、昆虫、両生類、鳥類、植物、C.エレガンス(C. elegans)(すなわち線虫)及び哺乳動物の宿主細胞がある。昆虫細胞の非限定的な例は、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf)細胞、例えば、Sf9、Sf21、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)細胞、例えばHigh Five細胞、及びショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞である。真菌(酵母を含む)宿主細胞の例は、S.セレビシエ(S. cerevisiae)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)(K.ラクチス(K. lactis))、C.アルビカンス(C. albicans)及びC.グラブラタ(C. glabrata)を含むカンジダ(Candida)種、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(S.ポンベ(S. pombe))、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、並びにヤロウイア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)である。哺乳動物細胞の例は、COS細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、マウスL細胞、LNCaP細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、及びアフリカミドリザル細胞、CV1細胞、HeLa細胞、MDCK細胞、Vero及びHep−2細胞である。アフリカツメガエル卵母細胞、又は他の両生類起源の細胞もまた用いられ得る。原核生物宿主細胞としては、細菌細胞、例えば、大腸菌(E. coli)、B.スブチリス(B. subtilis)、及びミコバクテリアが挙げられる。
【0044】
ベクター、例えば、gE、gI、gM、gH、gB、及びテグメントタンパク質、又はその一部をコードする遺伝子を含むVZV遺伝子(又はキメラVZV遺伝子)のポリヌクレオチドと、少なくとも1つのコアタンパク質とを含むベクターは、当該技術分野において周知の方法に従い宿主細胞にトランスフェクトすることができる。例えば、真核生物細胞への核酸の導入は、リン酸カルシウム共沈殿、電気穿孔、マイクロインジェクション、リポフェクション、及びポリアミントランスフェクション試薬を用いるトランスフェクションによることができる。一実施形態において、前記ベクターは組換えバキュロウイルスである。別の実施形態において、前記組換えバキュロウイルスは、真核生物細胞にトランスフェクトされる。好ましい実施形態において、前記細胞は昆虫細胞である。別の実施形態において、前記昆虫細胞はSf9細胞である。
【0045】
別の実施形態において、前記ベクター及び/又は宿主細胞は、キメラVZVタンパク質gE、又はその一部をコードするヌクレオチドを含む。別の実施形態において、前記ベクター及び/又は宿主細胞は、キメラVZVタンパク質gE、又はその一部をコードするヌクレオチドから本質的になる。さらなる実施形態において、前記ベクター及び/又は宿主細胞は、キメラVZVタンパク質gI、gM、gH、gB、及び/又はテグメント、又はその一部をコードするヌクレオチドを含む。ある実施形態において、上記のベクター及び/又は宿主細胞は、キメラVZV gE、gI、gM、gH、gB、若しくはテグメントタンパク質、又はその一部と、場合により任意のさらなるキメラVZVタンパク質とを含有し、且つ、細胞タンパク質、バキュロウイルスタンパク質、脂質、炭水化物等のさらなる細胞構成要素を含有し得る。
【0046】
本発明はまた、キメラVLPを産生する方法も提供し、前記方法は、少なくとも1つのコアタンパク質と、gE、gI、gM、gH、gB、テグメント又はその一部を含む少なくとも1つのキメラVZV遺伝子とを、VLPを形成可能な条件下で発現させることを含む。選択された発現系及び宿主細胞によっては、組換えタンパク質が発現し、且つキメラVLPが形成される条件下で、発現ベクターにより形質転換した宿主細胞を成長させることによってVLPが産生される。一実施形態において、本発明はキメラVLPを産生する方法を含み、これは、ウイルスコアタンパク質とキメラVZV gEタンパク質とをコードするベクターを好適な宿主細胞にトランスフェクトし、VLPを形成可能な条件下で前記タンパク質を発現させることを含む。別の実施形態において、本発明はキメラVLPを産生する方法を含み、これは、ウイルスコアタンパク質と、キメラVZV gE及びキメラVZV gIタンパク質とをコードするベクターを好適な宿主細胞にトランスフェクトし、VLPを形成可能な条件下で前記タンパク質を発現させることを含む。別の実施形態において、前記真核生物細胞は、酵母、昆虫、両生類、鳥類又は哺乳動物細胞からなる群から選択される。別の実施形態において、前記キメラVLPは酵母Tyタンパク質を含まない。適切な成長条件の選択は、当業者の能力の範囲内である。
【0047】
本発明のキメラVLPを産生するように改変された細胞を成長させる方法としては、限定はされないが、回分、流加、連続及び灌流細胞培養技術が挙げられる。細胞培養とは、バイオリアクター(発酵チャンバ)内での細胞の成長及び伝播を意味し、そこで精製及び単離用に細胞が伝播してタンパク質(例えば、組換えタンパク質)を発現する。典型的には、細胞培養はバイオリアクター内において、無菌下、制御された温度下、且つ大気条件下で実施される。バイオリアクターは、温度、大気、撹拌及び/又はpHなどの環境条件をモニタすることのできるなかで細胞を培養するために使用されるチャンバである。
【0048】
次にキメラVLPは、勾配遠心分離、例えば塩化セシウム、スクロース及びイオジキサノールによるなど、その完全性を維持する方法と、さらに、例えばイオン交換及びゲルろ過クロマトグラフィーを含む標準的な精製技術とを用いて単離される。一実施形態において、本発明は、本発明の精製キメラVLPを含む。別の実施形態において、本発明の前記キメラVLPは、混合物中の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上について、他の分子(溶媒を除く)の存在がない。別の実施形態において、本発明の前記キメラVLPは、本発明のキメラVLPの作製に関連する他のウイルス、タンパク質、脂質、及び炭水化物を実質的に含まない。以下は本発明のキメラVLPを作製、単離及び精製する方法の例である。通常、前記細胞が細胞培養において成長するとキメラVLPが生じるように改変された組換え細胞系統から、キメラVLPは産生される(上記参照)。当業者は、本発明のキメラVLPを作製及び精製するために利用することのできる別の方法が存在することを理解するであろうことから、従って本発明は記載される方法に限定されない。
【0049】
本発明のVLPの産生は、Sf9細胞(非感染)を振盪フラスコに播種することから開始することができ、細胞の成長及び増殖に従い細胞を拡張して大規模に(例えば125mlフラスコから50LのWaveバッグに)する。細胞を成長させるために使用される培地は、適当な細胞系に合わせて調合される(好ましくは無血清培地、例えば昆虫用培地ExCell-420、JRH)。次に、最も効率の高い感染多重度のときに前記細胞を組換えバキュロウイルスに感染させる(例えば、細胞1個当たり約1〜約3プラーク形成単位)。感染が起こると、キメラVZVタンパク質及び/又は他のタンパク質は自己組織化してキメラVLPとなり、感染後約24〜72時間で細胞から分泌される。通常、感染の効率は、細胞が成長の対数期中期にあり(4〜8×10細胞/ml)、且つ少なくとも約90%が生細胞であるときに最も高い。
【0050】
本発明のキメラVLPは感染後約48〜96時間で、細胞培養培地中のキメラVLPのレベルがほぼ最大のとき、但し広範に細胞溶解する前に回収され得る。回収した時点でのSf9細胞の密度及び生存能力は、色素排除アッセイによって示されるとおり、約0.5×10細胞/ml〜約1.5×10細胞/mlで、少なくとも20%の生存能力であり得る。次に、培地が除去され、清澄化される。濃度が約0.4〜約1.0Mになるまで、好ましくは約0.5Mまで、培地にNaClが添加され、VLP凝集が回避される。本発明のVLPを含有する細胞培養培地からの細胞及び細胞デブリの除去は、予め滅菌された使い捨ての中空糸0.5又は1.00μmフィルタカートリッジ又は同様の装置によるタンジェンシャルフローろ過(TFF)によって達成することができる。
【0051】
次に、予め滅菌された使い捨ての500,000分子量カットオフ中空糸カートリッジを使用した限外ろ過により、清澄化した培養培地のキメラVLPを濃縮することができる。濃縮したVLPは、0.5MのNaClを含有する10倍容量のpH7.0〜8.0のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対してダイアフィルトレーションを行い、残りの培地成分を除去することができる。濃縮してダイアフィルトレーションを行ったVLPは、0.5MのNaClを含有するpH7.2のPBS緩衝液中の20%〜60%の不連続スクロース勾配において、約4℃〜約10℃で18時間にわたり6,500×gで遠心することによりさらに精製することができる。通常、キメラVLPは、(20%及び60%の段階勾配において)約30%〜約40%スクロースの間又は界面に特有の可視バンドを形成し、これは勾配から集めて保存され得る。この生成物は、精製プロセスにおける次のステップのために、製剤中200mMのNaClを含むように希釈することができる。この生成物はキメラVLPを含有し、且つインタクトなバキュロウイルス粒子を含有し得る。
【0052】
キメラVLPのさらなる精製は、陰イオン交換クロマトグラフィー、又は44%等密度スクロースクッション遠心法によって実現することができる。陰イオン交換クロマトグラフィーでは、スクロース勾配からの試料(上記を参照)、陰イオンの媒質(例えばMatrix Fractogel EMD TMAE)を含有するカラムに負荷され、塩勾配(約0.2M〜約1.0MのNaCl)を介して溶離されることで、キメラVLPが他の混入物(例えばバキュロウイルス及びDNA/RNA)と分離され得る。スクロースクッション法では、キメラVLPを含有する試料が44%スクロースクッションに添加され、約18時間、30,000gで遠心される。VLPは44%スクロースの上層にバンドを形成し、一方、バキュロウイルスは底面に沈殿し、及び他の夾雑タンパク質は上層で0%スクロース層に留まる。
【0053】
インタクトなバキュロウイルスは、必要に応じて不活化することができる。不活化は、化学的方法、例えば、ホルマリン又はβ−プロピオラクトン(BPL)によって達成することができる。インタクトなバキュロウイルスの除去及び/又は不活化は、ほとんどが、上記に例示されるとおり、当該技術分野において公知の選択的沈殿及びクロマトグラフ法を使用して達成することができる。不活化の方法は、0.2%のBPL中、約25℃〜約27℃で3時間にわたり、VLPを含有する試料をインキュベートすることを含む。バキュロウイルスはまた、0.05%のBPLにおいて4℃で3日間、次に37℃で1時間にわたり、VLPを含有する試料をインキュベートすることによって不活化することもできる。不活化/除去ステップの後、VLPを含有する生成物をさらなるダイアフィルトレーションステップにかけることにより、不活化ステップからの任意の試薬及び/又は任意の残留スクロースを除去し、キメラVLPを所望の緩衝液(例えば、PBS)に入れることができる。キメラVLPを含有する溶液は、当該技術分野において公知の方法により滅菌(例えば、滅菌ろ過)して、冷蔵庫又は冷凍庫で保存することができる。
【0054】
上記の技術は、様々な規模にわたって実施することができる。例えば、Tフラスコ、振盪フラスコ、回転ボトル、工業規模のバイオリアクターに至るまで。バイオリアクターとしては、ステンレス鋼タンク又は予め滅菌されたプラスチック袋(例えば、Wave Biotech, Bridgewater, NJによって販売されているシステム)のいずれかが含まれ得る。当業者は、その目的に最も望ましいものが何か、分かるであろう。
【0055】
医薬製剤又はワクチン製剤及び投与
本明細書において有用な医薬組成物は、本発明のキメラVLPと、任意の好適な希釈剤又は賦形剤を含む薬学的に許容可能な担体とを含有し、担体としては、それ自体がその組成物を与えられる脊椎動物に有害な免疫応答の発生を誘導することがなく、且つ過度の毒性なく投与され得る任意の医薬品が挙げられる。本明細書で使用される用語「薬学的に許容可能」とは、哺乳動物、及びより詳細にはヒトにおける使用向けとして、連邦政府若しくは州政府の規制当局により認可されているか、又はU.S. Pharmacopia、European Pharmacopia若しくは他の一般に認知されている薬局方に列挙されていることを意味する。こうした組成物は、脊椎動物において防御免疫応答を誘導するためのワクチン製剤及び/又は抗原製剤として有用であり得る。本発明は、少なくとも1つのVZVタンパク質、例えばキメラgEタンパク質を含むが、VZV核酸又は酵母Tyタンパク質は含まないキメラVLPを含む抗原製剤を包含する。別の実施形態において、前記抗原製剤は、VLPに組み込まれた少なくとも1つのさらなるキメラVZVタンパク質を含むキメラVLPを含む。別の実施形態において、前記さらなるキメラVZVタンパク質は、gI(ORF 67)タンパク質を含む。別の実施形態において、前記さらなるキメラVZVタンパク質は、gM(ORF 50)タンパク質を含む。別の実施形態において、前記さらなるキメラVZVタンパク質はgHを含む。別の実施形態において、前記さらなるキメラVZVタンパク質はgBを含む。別の実施形態において、前記さらなるキメラVZVタンパク質はテグメントタンパク質を含む。別の実施形態において、前記さらなるキメラVZVタンパク質は、gI、gM、gH、gB又はテグメントタンパク質の組み合わせを含む。別の実施形態において、前記キメラVZV VLPは、VZVカプシドタンパク質(例えば、ORF 20、ORF 40、ORF 41)を含まない。
【0056】
典型的には、ワクチンは従来の生理食塩水又は緩衝水溶液媒体を含み、その中に本発明の組成物が懸濁又は溶解される。本発明の組成物は好都合には、この形態で、感染症を予防したり、改善させたり、又はその他の形で治療したりするために使用することができる。ワクチンは宿主に導入されると、限定はされないが、抗体及び/又はサイトカインの産生、及び/又は、細胞傷害性T細胞、抗原提示細胞、ヘルパーT細胞、樹状細胞の活性化、及び/又は他の細胞応答を含む免疫応答を引き起こすことができる。
【0057】
本発明はまた、少なくとも1つのVZVタンパク質、例えばキメラgEを含むが、VZV核酸又は酵母Tyタンパク質は含まないキメラVLPを含むワクチン製剤も包含する。別の実施形態において、前記ワクチン製剤は、VLPに組み込まれた少なくとも1つのさらなるキメラVZVタンパク質を含むキメラVLPを含む。別の実施形態において、前記さらなるキメラVZVタンパク質は、キメラgI(ORF 67)タンパク質を含む。別の実施形態において、前記さらなるキメラVZVタンパク質は、キメラgM(ORF 50)タンパク質を含む。別の実施形態において、前記さらなるキメラVZVタンパク質はキメラgHである。別の実施形態において、前記さらなるキメラVZVタンパク質はキメラgBである。別の実施形態において、前記さらなるキメラVZVタンパク質はキメラテグメントタンパク質を含む。別の実施形態において、前記さらなるキメラVZVタンパク質は、キメラgI、gM、gH、gB又はテグメントタンパク質の組み合わせを含む。別の実施形態において、前記VZV VLPはVZVカプシドタンパク質(例えば、ORF 20、ORF 40、ORF 41)を含まない。
【0058】
本発明の前記抗原製剤及びワクチン製剤は、上記のとおりの本発明のVLPと、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む。薬学的に許容可能な担体としては、限定はされないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、無菌等張水性緩衝液、及びこれらの組み合わせが挙げられる。薬学的に許容可能な担体、希釈剤、及び他の賦形剤についての詳細な考察は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Pub. Co. NJ. 現行版)に掲載されている。製剤は、投与方法に適したものでなければならない。好ましい実施形態において、製剤は、ヒトに対する投与に好適であり、好ましくは無菌で、非粒子状及び/又は非発熱性である。
【0059】
必要に応じて、本医薬組成物はまた、微量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤も含有し得る。本組成物は、再構成に好適な凍結乾燥粉末、液状溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸薬、カプセル、徐放製剤、又は粉末などの固体形態であり得る。経口製剤は、標準的な担体、例えば、医薬品級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を含むことができる。
【0060】
本発明は、キメラVLP製剤が、組成物の分量が指示されたアンプル又はサシェなどの密閉シール容器に包装されていることを提供する。一実施形態では、キメラVLP組成物は液体として供給され、別の実施形態では、密閉シール容器に乾燥滅菌された凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として供給され、且つ、例えば水又は生理食塩水により、対象への投与に適切な濃度に再構成することができる。
【0061】
代替的実施形態において、キメラVLP組成物は、キメラVLP組成物の分量及び濃度を指示した密閉シール容器に液状形態で供給される。好ましくは、キメラVLP組成物の液状形態は、密閉シール容器に、少なくとも約50μg/ml、より好ましくは少なくとも約100μg/ml、少なくとも約200μg/ml、少なくとも500μg/ml、又は少なくとも1mg/mlが供給される。
【0062】
概して、本発明のキメラVZV VLPは、1つ又は複数のVZV株に対する免疫応答を刺激するのに十分な有効量又は分量で投与される。好ましくは、本発明のキメラVLPの投与は、VZVに対する免疫を誘発する。典型的には、用量はこの範囲内で、例えば、年齢、健康状態、体重、性別、食事、投与時間、及び他の臨床要因に基づき調整され得る。予防ワクチン製剤は、例えば、針及びシリンジ、又は無針注射装置を使用した皮下注射又は筋肉注射によって全身投与される。或いはワクチン製剤は、ドロップ、大型粒子エアロゾル(約10μm超)、又は上気道への噴霧のいずれかによって鼻腔内投与される。上記の送達経路のいずれも免疫応答を引き起こす結果となるが、鼻腔内投与は、VZVを含む多くのウイルスの侵入部位において粘膜免疫を誘発するというさらなる利点をもたらす。
【0063】
従って、本発明はまた、哺乳動物に対する感染症又はその少なくとも1つの症状に対する免疫を誘導するワクチン又は抗原組成物を製剤化する方法も含み、これは、前記製剤に有効用量のキメラVZV VLPを添加することを含む。一実施形態において、前記感染症はVZV感染症である。「有効用量」は、概して、免疫を誘導し、それによって感染症を予防し、及び/又は改善させるか、若しくは感染症の少なくとも1つの症状を軽減し、及び/又は追加用量のキメラVLPの効力を亢進するのに十分な本発明のVLPの量を指す。有効用量は、感染症の発症を遅延させるか、又は最小限に抑えるのに十分なキメラVLPの量を指すこともある。有効用量はまた、感染症の処置又は管理において治療利益を提供するキメラVLPの量を指すこともある。さらに、有効用量は、感染症の処置又は管理において治療利益を提供するような、本発明のキメラVLPに関する単独の、又は他の治療薬と組み合わせた量である。有効用量はまた、感染病原体に対する二次的な曝露に対する対象(例えば、ヒト)自身の免疫応答を亢進するのに十分な量であってもよい。免疫のレベルは、例えば、プラーク中和アッセイ、補体結合アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ、又はマイクロ中和アッセイにより、例えば中和分泌抗体及び/又は血清抗体の量を計測することによってモニタすることができる。ワクチンの場合、「有効用量」は、疾患を予防し、及び/又は症状の重症度を軽減する用量である。
【0064】
上述されるとおり、本発明のVLPは、対象におけるVZV感染症の少なくとも1つの症状を予防又は軽減する。VZV感染によって引き起こされる2つの疾患の症状は、当該技術分野において周知である。一次VZV感染によって引き起こされる水疱瘡(水痘)の症状としては、発熱、倦怠、頭痛、腹痛、疲労、食欲不振、並びに主に頭皮、顔面、及び体幹に生じる皮膚病変が挙げられる。潜伏VZVが再活性化する結果として起こる帯状疱疹(帯状ヘルペス)は、以下の症状、すなわち、皮膚発疹(通常は胸部の皮膚分節に片側性に現れる)、急性神経炎痛、及び過敏症を特徴とする。従って、本発明の方法は、VZV感染症に付随する少なくとも1つの症状の予防又は軽減を含む。症状の軽減は主観的に判断されても、又は客観的に判断されてもよく、例えば、対象による自己評価か、臨床医の評価によるか、或いは、例えば、クオリティ・オブ・ライフ評価、VZV感染症若しくは別の症状の進行の遅延、VZV症状の重症度の軽減、又は好適なアッセイ(例えば抗体力価及び/又はT細胞活性化アッセイ)を含めた適切なアッセイ又は測定(例えば体温)を行うことによる。客観的評価は、動物及びヒトの双方の評価を含む。
【0065】
免疫の刺激は単回用量によることが好ましいが、所望の効果を実現するため、同じ、又は異なる経路によって追加の投薬量が投与されてもよい。新生児及び乳幼児では、例えば、十分なレベルの免疫を誘発するのに複数回投与が必要となり得る。感染症、例えばVZV感染症に対する十分なレベルの防御を維持するため、必要に応じて間隔を置いた投与が小児期を通じて継続され得る。同様に、反復する、又は重篤な感染症に特に罹り易い成人、例えば、保健医療従事者、デイケア従事者、低年齢小児の家族成員、高齢者、及び心肺機能に障害を有する人は、防御免疫応答を確立及び/又は維持するために複数回の免疫付与が必要となり得る。誘導された免疫のレベルは、例えば、分泌型及び血清中和抗体量を計測することによってモニタすることができ、所望のレベルの防御を誘発及び維持するため、必要に応じて投薬量が調節されたり、又はワクチン接種が反復されたりし得る。
【0066】
キメラVLPを含む組成物(ワクチン製剤及び/又は抗原製剤)を投与する方法としては、限定はされないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、静脈内及び皮下)、硬膜外投与、及び粘膜投与(例えば、鼻腔内及び口腔若しくは肺経路、又は坐薬による)が挙げられる。特定の実施形態において、本発明の組成物は、経口的に、皮内に、鼻腔内に、筋肉内に、腹腔内に、静脈内に、又は皮下に投与される。本組成物は、任意の好都合な経路、例えば、注入又はボーラス投与、上皮又は皮膚粘膜の内層を介した吸収(例えば、口腔粘膜、結腸、結膜、鼻咽腔、口腔咽頭、腟、尿道、膀胱及び腸粘膜等)によって投与されてもよく、他の生物学的に活性な薬剤と共に投与されてもよい。ある実施形態において、本発明のキメラVLPを含む組成物の鼻腔内又は他の粘膜の投与経路は、他の投与経路より実質的に高い抗体又は他の免疫応答を誘導し得る。別の実施形態において、本発明のキメラVLPを含む組成物の鼻腔内又は他の粘膜の投与経路は、他のVZV株に対する交差防御を誘導し得る抗体又は他の免疫応答を誘導し得る。投与は全身的であっても、又は局所的であってもよい。
【0067】
本発明のワクチン製剤及び/又は抗原製剤はまた、例えば、ワクチン組成物の初回投与と、続く追加免疫投与といった投薬スケジュールに従い投与されてもよい。詳細な実施形態において、組成物の2回目の用量は、初回投与後2週間から1年まで、好ましくは約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月から約6ヶ月までの範囲内に投与される。加えて、3回目の用量が、2回目の用量の後に、且つ初回投与後約3ヶ月から約2年まで、又はそれ以上、好ましくは約4ヶ月、約5ヶ月、若しくは約6ヶ月、又は約7ヶ月から約1年までに投与されてもよい。3回目の用量は、場合により、2回目の用量後の対象の血清及び/又は尿又は粘膜分泌物中に、特定の免疫グロブリンが検出されないか、検出されるレベルが低いときに投与され得る。好ましい実施形態において、2回目の用量は最初の投与後約1ヶ月に投与され、3回目の用量は最初の投与後約6ヶ月に投与される。別の実施形態において、2回目の用量は最初の投与後約6ヶ月に投与される。別の実施形態において、本発明の前記キメラVLPは、併用療法の一部として投与することができる。例えば、本発明のキメラVLPは、他の免疫原性組成物、抗ウイルス薬及び/又は抗生物質と共に製剤化することができる。
【0068】
医薬製剤の投薬量は当業者が容易に決定することができ、例えばこれは、まず初めに、例えばウイルス特異的免疫グロブリンの血清力価を測定するか、又は血清試料若しくは尿試料若しくは粘膜分泌物中の抗体の阻害率を測定することによって、予防的又は治療的な免疫応答の誘発に有効な用量を特定することによる。前記投薬量は、動物試験から決定することができる。ワクチンの効力を試験するために用いられる動物を非限定的に列挙すれば、モルモット、ハムスター、フェレット、チンチラ、マウス及びコットンラットが挙げられる。ほとんどの動物は、感染病原体の天然宿主ではないが、それでもなお、疾患の様々な側面を試験するうえで役に立ち得る。例えば、上記の動物のいずれも、ワクチン候補、例えば本発明のキメラVLPを投与することで、誘導された免疫応答を部分的に特徴付けたり、及び/又は任意の中和抗体が産生されたかどうかを決定したりすることができる。例えば、マウスはサイズが小さく安価であることから、研究者が試験を大規模に行うことができるため、多くの試験がマウスモデルで行われている。
【0069】
加えて、当業者はヒト臨床試験を実施して、ヒトに好ましい有効用量を決定することができる。かかる臨床試験はルーチン的なもので、当該技術分野において周知である。用いられる正確な用量はまた、投与経路にも依存する。有効用量は、インビトロ又は動物試験系から導き出された用量反応曲線から推定されてもよい。
【0070】
同様に当該技術分野において周知のとおり、特定の組成物の免疫原性は、アジュバントとして知られる非特異的免疫応答の刺激薬を使用することによって亢進させることができる。用語「アジュバント」は、製剤中の特定の免疫原(例えばVLP)と組み合わせて用いられるとき、得られる免疫応答を増進するか、又はその他の形で変化させたり、若しくは改良したりする化合物を指す。免疫応答の改良としては、抗体免疫応答及び細胞性免疫応答のいずれか又は双方の特異性の強化又は拡大が挙げられる。免疫応答の改良はまた、特定の抗原特異的免疫応答を低下させるか、又は抑制することも意味し得る。アジュバントは、未知の抗原に対する免疫の全身的な上昇を促進するために実験的に用いられている(例えば、米国特許第4,877,611号)。長年にわたり、免疫化プロトコルには応答を刺激するためアジュバントが用いられており、そのためアジュバントは当業者に周知である。アジュバントのなかには、抗原の提示のされ方に影響を及ぼすものもある。例えば、タンパク質抗原をミョウバンによって沈降させると、免疫応答は増加する。抗原の乳化もまた、抗原提示期間を延長させる。あらゆる目的のため全体として参照により本明細書に援用されるVogel et al., ”A Compendium of Vaccine Adjuvants and Excipients (2nd Edition)”に記載される任意のアジュバントを含めることが、本発明の範囲内で想定される。
【0071】
例示的に、アジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(死滅結核菌(Mycobacterium)を含有する非特異的免疫応答刺激薬)、不完全フロイントアジュバント及び水酸化アルミニウムアジュバントが挙げられる。他のアジュバントとしては、GMCSP、BCG、水酸化アルミニウム、MDP化合物、例えば、thur−MDP及びnor−MDP、CGP(MTP−PE)、リピドA、並びにモノホスホリルリピドA(MPL)が含まれる。細菌から抽出された3つの成分、MPLと、トレハロースジミコレート(TDM)と、細胞壁骨格(CWS)とを2%スクアレン/Tween 80乳剤中に含有するRIBIもまた、企図される。MF-59、Novasomes(登録商標)、MHC抗原もまた用いられ得る。
【0072】
本発明の一実施形態において、アジュバントはパウシラメラ(paucilamellar)脂質ベシクルであり、これは水層によって隔てられた約2〜10の二重層が、脂質二重層のない大きい無定形の中心空洞を取り囲んで実質的に球状シェルの形態に配置されているものである。パウシラメラ脂質ベシクルは、非特異的刺激薬として、抗原の担体として、別のアジュバントの担体として、及びこれらの組み合わせとして、免疫応答をいくつかの方法で刺激する働きをし得る。パウシラメラ脂質ベシクルは、例えば、抗原がベシクルの細胞外に留まるように予め形成されたベシクルと抗原を混ぜ合わせることによってワクチンが調製されると、非特異的免疫刺激薬として働く。抗原をベシクルの中心空洞内に封入することにより、ベシクルは免疫刺激薬及び抗原の担体の双方として働く。別の実施形態において、ベシクルは主に非リン脂質ベシクルから構成される。他の実施形態において、ベシクルはNovasomes(登録商標)である。Novasomes(登録商標)は、約100nm〜約500nmの範囲のパウシラメラ非リン脂質ベシクルである。これらは、Brij 72、コレステロール、オレイン酸及びスクアレンを含む。Novasomesは、インフルエンザ抗原の有効なアジュバントであることが示されている(あらゆる目的のため全体として参照により本明細書に援用される米国特許第5,629,021号、同第6,387,373号、及び同第4,911,928号を参照)。
【0073】
本発明のキメラVLPはまた、「免疫刺激薬」と共に製剤化することもできる。用語「免疫刺激薬」は、生体自身の化学的メッセンジャー(サイトカイン)を介して免疫応答を亢進する化合物を指す。こうした分子としては、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−12、IL−13);成長因子(例えば、顆粒球マクロファージ(GM)コロニー刺激因子(CSF));及び他の免疫賦活性分子、例えば、マクロファージ炎症性因子、Flt3リガンド、B7.1;B7.2等の、免疫賦活活性、免疫強化活性、及び炎症誘発活性を有する様々なサイトカイン、リンホカイン及びケモカインが含まれる。免疫刺激分子は、本発明のVLPと同じ製剤で投与されてもよく、又は別個に投与されてもよい。タンパク質又はタンパク質をコードする発現ベクターのいずれも、投与によって免疫賦活効果を生じさせることができる。従って一実施形態において、本発明は、アジュバント及び/又は免疫刺激薬を含む抗原製剤及びワクチン製剤を含む。
【0074】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明され、この実施例は限定と見なされてはならない。本願全体を通じて引用される全ての参考文献、特許、及び公開された特許出願の内容、並びに図及び配列表は、あらゆる目的のため参照により本明細書に援用される。
【実施例】
【0075】
実施例1
以下では、Sf9昆虫細胞中にキメラgE(HA TM/CT)糖タンパク質(配列番号1)と鳥インフルエンザM1(A/Indonedia/5/05 H5N1株)マトリクスタンパク質(配列番号9)とを含むキメラVZV VLPのクローニング、発現及び精製方法が記載される。キメラgE及び鳥インフルエンザM1は、VLPを形成可能な条件下でバキュロウイルス発現系にクローニングし、発現させた。このコンストラクトが図1Aに示される。
【0076】
VLPが作製されたことを確認するため、VZV gE(HA TM/CT)/Indo M1キメラのコンストラクトを含むバキュロウイルス感染Sf9細胞を含有するSf9細胞培養培地を、バキュロウイルス感染後64時間で低速遠心により遠心した。500kDaのMWCO中空糸フィルタ(GE healthcare)による限外ろ過(UF)によって無細胞培地を濃縮した。残留液を、ダイアフィルトレーション(DF)によって25mMのTrisCl、pH8.0、500mMのNaClに緩衝液交換した。同じ緩衝液中で平衡させたイオン交換カラム(Fractogel TMAE)にUF/DF残留液を負荷した。
【0077】
次に、VLP及びバキュロウイルスを含有するフロースルー画分を限外ろ過によってさらに濃縮した後、25mMのTrisCl、pH8.0、300mMのNaClで平衡させたSephacryl S500サイズ排除カラム(GE healthcare)に負荷した。S500カラムの空隙容量にVLP及びバキュロウイルス画分が溶離され、一方、後のクロマトグラフィー画分に可溶性タンパク質及び細胞断片が溶離された。S500カラムの空隙ピークを、300mM NaClで第2のTMAEカラムに負荷した。こうした条件下では、VLPはアニオン性樹脂と結合せず、一方、より負に帯電したバキュロウイルスがカラムと結合する。これは、VLPにDNA又はRNAゲノムがなく、一方、バキュロウイルスは、137kDaの大型の二本鎖DNAゲノムを含有し、それによりバキュロウイルスの負電荷が、ひいてはウイルスの結合特性が増大するという事実に依存する、決定的に重要な分離ステップであった。VLPを含有する第2のTMAEフロースルー画分を、30%スクロースクッションを介した超遠心法(100K g 時間)により濃縮した(図1B、レーン2)。次に精製したキメラVZV gE(HA TM/CT)/Indo M1キメラVLPを、SDS PAGE分析、ウエスタンブロット分析、電子顕微鏡(EM)分析及び免疫金分析に使用した。
【0078】
SDS PAGE分析及びウエスタンブロット分析は、先述のとおり実施した。これらの結果が図1Bに示される。レーン1は第2のTMAEイオン交換クロマトグラフィーカラムからのVLPであり、レーン2及びレーン3は、高速遠心後にそれぞれ30%スクロースの界面及びペレットの上層近傍で回収されたVLPである。超遠心法によって微量のバキュロウイルス及びVZVキメラVLPがペレット状になったが、大部分のgE/M1キメラVLPは浮遊密度がより高く、30%スクロース界面の近傍にあったことに留意されたい。キメラgE(HA TM/CT)はバキュロウイルスタンパク質GP64と同じ分子量を有し、それらのバンドはゲル上で重なることに留意されたい。従って、レーン2の64kDaのタンパク質(精製VLPを含む)は、主にキメラgE(HA TM/CT)であり、及びレーン3の同じサイズのバンド(VLP及びバキュロウイルスを含む)は主にバキュロウイルスエンベロープ糖タンパク質GP64である。この結論は、クマシーブルー染色ゲルと抗gEウエスタンブロットとの比較によって導き出された。精製キメラVZV VLP(レーン1)は純度が90%超で、主要なタンパク質は、M1、及びSDSによって完全には破壊されないM1二量体(25KDa及び50KDa)、並びにキメラgE(60KDa)であった。従って、これらの結果は、キメラVLPが産生され、精製されたことを示している。
【0079】
次に、電子顕微鏡法(EM)ネガティブ染色によりキメラVLPを撮像した(図2)。これらのEM画像は、キメラVLPが、高度に構造化されたエンベロープを伴う球状コアを有することを示している。
【0080】
VLPの免疫金染色を実施して、VZV gEがキメラVLPの表面上で発現するかどうかを判定した。EM画像を撮る前、キメラVLPは正常マウスIgG(A)又はマウス抗VZV−gE(Santa Cruzからのクローン9C8)(B)のいずれかと共にインキュベートし、続いてマウスに対する金標識二次抗体と共にインキュベートした。6nmの金粒子がキメラVLP上にあったことから、VLP上にgEタンパク質が存在することが確認された。図3に示されるとおり、抗体は確かにVLPを染色した。従って、VLPはVZV gEを確かに発現する。
【0081】
これらのデータは、キメラVZVタンパク質を含むキメラVZV VLPが産生され、且つ精製され得ることを示している。
【0082】
本明細書の全ての特許、刊行物及び特許出願は、個々の各特許、刊行物又は引用特許出願が、参照によって援用されるとして具体的且つ個別に指摘された場合と同じ範囲において、参照により援用される。
【0083】
前述の詳細な説明は、理解を明確にするために与えられたに過ぎず、当業者には改良が明らかであろうことから、そこからいかなる不必要な限定も解釈されてはならない。これは、本明細書に提供された任意の情報が先行技術である、若しくは本明細書に特許請求される発明に関するものであること、又は具体的若しくは非明示的に参照される任意の刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0084】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0085】
本発明はその特定の実施形態に関連して記載されているが、さらなる改良が可能であるとともに、概して本発明の原理に従い、且つ本開示からのかかる逸脱を含む、本発明のいかなる変形、使用、又は適応も、本発明が関わる技術分野における公知の、又は通常の実践の範囲内にあるものとして、且つ以上に記載された本質的な特徴に適合し得るものとして、且つ添付の特許請求の範囲の範囲に従うものとして網羅されることを、本願は意図していることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスコアタンパク質と、少なくとも1つの水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)タンパク質とを含むキメラVLPであって、VLPは酵母Tyタンパク質を含まず、且つVZV核酸を含まない、キメラVLP。
【請求項2】
前記VZVタンパク質がキメラであり、且つVZVタンパク質のエクトドメインと、異種タンパク質の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインとを含む、請求項1に記載のキメラVLP。
【請求項3】
前記異種タンパク質が、前記ウイルスコアタンパク質と結合する、請求項2に記載のキメラVLP。
【請求項4】
前記VZVタンパク質が、gE、gI、gB、gH、gK、gL、gC、及びgMからなる群から選択される、請求項2に記載のキメラVLP。
【請求項5】
前記VZVタンパク質がgEである、請求項4に記載のキメラVLP。
【請求項6】
前記キメラVLPがgE及びgIを含む、請求項4に記載のキメラVLP。
【請求項7】
異種タンパク質の前記膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインが、インフルエンザウイルスに由来する、請求項2に記載のキメラVLP。
【請求項8】
前記インフルエンザウイルスタンパク質が、赤血球凝集素(HA)及び/又はノイラミニダーゼ(NA)である、請求項7に記載のキメラVLP。
【請求項9】
前記HA及び/又はNAが、インフルエンザウイルスA/Indonesia/5/05に由来する、請求項8に記載のキメラVLP。
【請求項10】
前記ウイルスコアが、オルトミクソウイルス又はパラミクソウイルスに由来する、請求項1に記載のキメラVLP。
【請求項11】
前記ウイルスコアが、インフルエンザウイルスM1、NDV M、RSV M及びHIV gagからなる群から選択される、請求項1に記載のキメラVLP。
【請求項12】
前記ウイルスコアがインフルエンザウイルスM1である、請求項11に記載のキメラVLP。
【請求項13】
前記インフルエンザM1が、インフルエンザウイルスA/Indonesia/5/05に由来する、請求項12に記載のキメラVLP。
【請求項14】
前記キメラVLPが、配列番号1又は配列番号9を含む、請求項1に記載のキメラVLP。
【請求項15】
前記キメラVLPが、配列番号1及び配列番号9を含む、請求項1に記載のキメラVLP。
【請求項16】
少なくとも1つのVZVタンパク質とウイルスコアタンパク質とをコードする1つ又は複数のベクターを好適な宿主細胞にトランスフェクトすることと、VLPを形成可能な条件下で前記キメラVZV及びウイルスコアタンパク質を発現させることとを含む、キメラVLPを産生する方法であって、前記宿主細胞が酵母Tyタンパク質を含まない、方法。
【請求項17】
前記VZVタンパク質がキメラであり、且つVZVタンパク質のエクトドメインと異種タンパク質の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインとを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記異種タンパク質が、前記ウイルスコアタンパク質と結合する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つのVZVタンパク質が、gE、gI、gB、gH、gK、gL、gC、及びgMからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記VZVタンパク質が、gE又はgIである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記VZVタンパク質が、gE及びgIである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
異種タンパク質の前記膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインが、インフルエンザウイルスに由来する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記インフルエンザウイルスタンパク質が、HA及び/又はNAである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記HA及び/又はNAが、インフルエンザウイルスA/Indonesia/5/05に由来する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ウイルスコアが、オルトミクソウイルスに由来する、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記ウイルスコアがパラミクソウイルスに由来し、但し前記コア又はマトリクスタンパク質は呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Mであるものとする、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記ウイルスコアが、インフルエンザウイルスM1、NDV M、RSV M及びHIV gagからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記ウイルスコアが、インフルエンザウイルスM1である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記インフルエンザM1が、インフルエンザウイルスA/Indonesia/5/05に由来する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記キメラVLPが、配列番号1又は配列番号9を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
前記キメラVLPが、配列番号1及び配列番号9を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項32】
キメラVLPを含む抗原製剤であって、前記キメラVLPが、少なくとも1つのVZVタンパク質とウイルスコアタンパク質とを含み、且つ酵母Tyタンパク質を含まない、抗原製剤。
【請求項33】
前記VZVタンパク質がキメラであり、且つVZVタンパク質のエクトドメインと異種タンパク質の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインとを含む、請求項32に記載の抗原製剤。
【請求項34】
前記異種タンパク質が、前記ウイルスコアタンパク質と結合する、請求項33に記載の抗原製剤。
【請求項35】
少なくとも1つのVZVタンパク質が、gE、gI、gB、gH、gK、gL、gC、及びgMからなる群から選択される、請求項32に記載の抗原製剤。
【請求項36】
前記VZVタンパク質が、gE又はgIである、請求項35に記載の抗原製剤。
【請求項37】
前記VZVタンパク質が、gE及びgIである、請求項35に記載の抗原製剤。
【請求項38】
前記コアタンパク質が、インフルエンザウイルスA/Indonesia/5/05由来のインフルエンザM1である、請求項32に記載の抗原製剤。
【請求項39】
前記キメラVLPが、配列番号1又は配列番号9を含む、請求項32に記載の抗原製剤。
【請求項40】
前記キメラVLPが、配列番号1及び配列番号9を含む、請求項32に記載の抗原製剤。
【請求項41】
キメラVLPを含むワクチンであって、前記キメラVLPが、少なくとも1つのVZVタンパク質とウイルスコアタンパク質とを含み、且つ酵母Tyタンパク質を含まない、ワクチン。
【請求項42】
前記キメラVZVタンパク質がキメラであり、且つVZVタンパク質のエクトドメインと異種タンパク質の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインとを含む、請求項41に記載のワクチン。
【請求項43】
前記異種タンパク質が、前記ウイルスコアタンパク質と結合する、請求項42に記載のワクチン。
【請求項44】
少なくとも1つのVZVタンパク質が、gE、gI、gB、gH、gK、gL、gC、及びgMからなる群から選択される、請求項40に記載のワクチン。
【請求項45】
前記VZVタンパク質が、gE又はgIである、請求項44に記載のワクチン。
【請求項46】
前記VZVタンパク質が、gE及びgIである、請求項44に記載のワクチン。
【請求項47】
前記コアタンパク質が、インフルエンザウイルスA/Indonesia/5/05由来のインフルエンザM1である、請求項41に記載のワクチン。
【請求項48】
前記キメラVLPが、配列番号1又は配列番号9を含む、請求項41に記載のワクチン。
【請求項49】
前記キメラVLPが、配列番号1及び配列番号9を含む、請求項41に記載のワクチン。
【請求項50】
ヒト又は動物において感染に対する防御免疫を誘発する方法であって、ヒト又は動物に対し、キメラVZV−VLPを含む抗原製剤又はワクチンを投与することを含み、前記キメラVZV−VLPが、少なくとも1つのキメラVZVタンパク質とウイルスコアタンパク質とを含み、前記キメラVLPが、酵母Tyタンパク質を含まず、且つVZV核酸を含まない、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2010−533737(P2010−533737A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517201(P2010−517201)
【出願日】平成20年7月21日(2008.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/070636
【国際公開番号】WO2009/012487
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(507301246)ノババックス,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】