説明

キャストコート紙及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、リウェット法によるキャストコート紙に関し、高い白紙光沢を有し、印刷適性に優れると共に、紫外線硬化インク又は溶剤インクを用いたインクジェットプリンター適性に優れたキャストコート紙を提供することである。
【解決手段】本発明に係るキャストコート紙は、基材上に無機顔料及びバインダーを主体として含有するキャストコート層をリウェット法で形成したキャストコート紙において、キャストコート層が、更に界面活性剤を含有し、界面活性剤がアセチレンアルコール化合物、アセチレングリコール化合物又はアセチレン系ジアルコールのポリエーテル化合物の少なくとも1種であり、キャストコート層の乾燥塗工量が、8〜30g/mであり、表面のJIS Z8741:1997「鏡面光沢度−測定方法」に従って測定した60°における光沢度が、50%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の光沢を維持しつつ、鮮明な画像再生を実現する非水溶性インク対応のキャストコート紙及びその製造方法に関し、特に、非水溶性インクとして、紫外線硬化インク又は溶剤インク(油性インク)を用いるインクジェット方式に適するキャストコート紙及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャストコート紙は、その表面の高光沢性、高平滑性などによって、印刷の再現性が極めて良好であり、精密な高級印刷に適用され、例えば、美術印刷物、高級カタログ、包装箱、ラベルなどのタック紙に広く使用されている。
【0003】
キャストコート紙は、原紙の表面に、顔料及び接着剤を主成分とする塗料を用いてキャストコート層を設け、続いて該キャストコート層を、加熱された金属製の鏡面ドラム(以降、加熱ドラム又はキャストドラムということもある。)に圧着して乾燥することで製造されている。
【0004】
キャストコート紙の製造方法は、キャストコート層を得る光沢仕上げを行う処理方法によって、ウェット法(直接法)、ゲル化法(凝固法)又はリウェット法(間接法)に大別される。すなわち、キャストコート層が、ウェット状態にあるうちに加熱された金属製の鏡面ドラムに圧着し乾燥して光沢仕上げするのがウェット法である。また、ウェット状態にあるキャストコート層を凝固液中に通してゲル化状態にした後、加熱された金属製の鏡面ドラムに圧着し乾燥して光沢仕上げするのがゲル化法である。そして、ウェット状態にあるキャストコート層を一旦乾燥した後、再湿潤液でキャストコート層を再湿潤し、可塑状態にしてから加熱された金属製の鏡面ドラムに圧着し乾燥して光沢仕上げするのがリウェット法である(例えば、特許文献1又は2を参照。)。
【0005】
インクジェットプリンター技術は、産業用の各種分野への応用に関して、急速に利用が進んでいる。インクジェットプリンター技術は、基本的に低粘度の液体を吐出させる技術であり、従来、個人向けのパーソナルプリンターの分野で普及している。しかし、これらの個人向けインクジェットプリンターは、親水性溶剤又は水と親水性溶剤との混合溶剤中に各種の水溶性染料を溶解し、必要によって各種の添加剤を配合した水性インクを使用している。水性インクは、印字後の色調が鮮やかで明るく、インクドットのコントラストが大きく、またインク粘度の調整が容易であり、安全性が高いなどの利点を有する。水性インクに対応するインクジェット記録媒体が提案されている(例えば、特許文献3又は4を参照。)。
【0006】
近年、インクジェット記録方式において、インクの乾燥性に優れ、更に画像の耐光性、耐水性などの保存性に優れることから溶剤インク(油性インク)又は紫外線硬化インクを用いたプリンターが産業用に急速に普及している。
【0007】
溶剤インクの場合、例えば、色材として、染料系としては、分散染料、ナフトール染料、建染染料又は硫化染料、顔料としては、カーボンブラック又は各種色顔料を用い、かつ、インクの溶剤として、イソパラフィン類、エーテル類又は可塑剤などの有機溶剤を用いた溶剤インクが非常に有効であり、実用化がされている。
【0008】
紫外線硬化インクは、各種顔料と液状の樹脂モノマーとを少量の有機溶剤に分散したもの又は近年商品化されている有機溶剤を含まないものがあるが、基本的には、記録媒体に紫外線硬化インクを吐出した後、プリンターに搭載された紫外線照射ランプの照射によって、液状モノマーが結合して高分子化し、インクが硬化及び定着するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−93593号公報
【特許文献2】特開平8−13389号公報
【特許文献3】特開2005−280012号公報
【特許文献4】特開平8−295074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3又は4をはじめとする水性インク用のインクジェット光沢キャストコート紙は、色材として水溶性染料を選択していることから記録画像の保存性に劣る。また、従来用いられているインクジェットキャストコート紙又はその他の光沢紙では、記録層は、多量の水性インクを吸収できるように、インク吸収層及び光沢層を設けた複数層からなるものである。また、光沢層には、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、アルミナなどといった微細な顔料を用いている。これらは、主に印画紙ベースのインクジェット記録紙やデジタルカメラなどの写真記録用のメディアとして用いられている。しかし、(1)コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、アルミナなどの微細な顔料が非常に高価であり、更に光沢層とは別にインク吸収層を設けていることから製造工程が多くコストが高い、(2)微細な顔料を使用していることから印刷強度に劣る、(3)水溶性インクの吸収を目的としていることから記録層に耐水性が無いなどの理由から、従来のキャストコート紙のように、印刷、包装又はラベルなどの多目的な産業用途には適さなかった。
【0011】
従来、使用されているキャストコート紙は、前述したとおり、主に水性インクを使用する印刷用途に用いられるものである。しかし、ラベル用途では、その記録方式は熱転写方式である。このため、溶剤インクを用いて、インクジェット印刷した場合、インクに含まれる溶剤分を吸収することができず、画像が滲む、又は乾燥不良で裏移りし易いという問題が生じる。
【0012】
また、紫外線硬化インクは、その特徴として吸収性の無い記録媒体にも印刷できることを利点にしているが、実用上は吐出したインクを紫外線照射する前に均一に拡げる必要がある。従来のキャスト紙では、吐出された紫外線硬化インクがハジキを生じて均一に広がらず、記録画像に筋が現れる、又は記録画像が凹凸になり光沢感が失われる。
【0013】
キャストコート紙の製造方法は、ウェット法(直接法)、ゲル化法(凝固法)又はリウェット法(間接法)のいずれも、キャストコート層が湿潤又は可塑状態にあるうちに鏡面ドラムに圧着して乾燥するものである。このため、キャストコート層の水分は、原紙層を通して鏡面ドラム方向に向かって蒸発する。蒸発速度が、ある限度を超えて速くなると、得られるキャストコート層表面にピンホールが発生し、印刷又はラミネート加工などの後加工に支障をきたすようになる。このような現象は、蒸発水分量が比較的多いウェット法において顕著であり、加工速度がなかなか上げられないのが現状である。
【0014】
リウェット法は、主にインクジェットキャストコート紙の製造方法として用いられるゲル化法と比較して、キャストコート層が緻密になりやすく、インクジェット用途では水溶性の塗料を用いたとしてもインクジェットインクを吸収し難くなってしまうという問題がある。しかし、リウェット法は、塗工層の表面だけを再湿潤して可塑状態とするため、蒸発する水分量が少なく、乾燥負荷が小さくて済むために、操業速度を上げることができ、生産効率を上げることができる。したがって、キャストコート紙の製造にリウェット法を用いることができれば、高い生産性を期待できる。
【0015】
本発明の目的は、リウェット法によるキャストコート紙に関し、高い白紙光沢を有し、印刷適性に優れると共に、近年、ラベル用途などで普及してきている紫外線硬化インク又は溶剤インク(油性インク)を用いたインクジェットプリンター適性に優れたキャストコート紙を提供することである。また、本発明の第二の目的は、紫外線硬化インク又は溶剤インク(油性インク)を用いたインクジェットプリンター適性に優れたキャストコート紙を、高効率で、かつ、安価に生産できる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るキャストコート紙は、基材上に無機顔料及びバインダーを主体として含有するキャストコート用塗料を塗工した塗工面を乾燥後、該塗工面を再湿潤液で再湿潤した後、鏡面状に研磨された加熱ドラムに圧着して乾燥するリウェット法でキャストコート層を形成したキャストコート紙において、前記キャストコート層が、更に界面活性剤を含有し、該界面活性剤がアセチレンアルコール化合物、アセチレングリコール化合物又はアセチレン系ジアルコールのポリエーテル化合物の少なくとも1種であり、前記キャストコート層の乾燥塗工量が、8〜30g/mであり、表面のJIS Z8741:1997「鏡面光沢度−測定方法」に従って測定した60°における光沢度が、50%以上であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るキャストコート紙では、前記界面活性剤が、前記アセチレンアルコール化合物として(1)3,5‐ジメチル‐1‐ヘキシン‐3‐オール、前記アセチレングリコール化合物として(2)2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール、(3)2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオールのポリエトキシレート、(4)2,5,8,11‐テトラメチル‐6‐ドデシン‐5,8‐ジオールのポリエトキシレート、前記アセチレン系ジアルコールのポリエーテル化合物として(5)2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール‐ジ(ポリオキシエチレン)エーテルの(1)〜(5)のうち少なくとも1種を含有することが好ましい。紫外線硬化インク又は溶剤インクのレベリング及び吸収性をより高めることができる。
【0018】
本発明に係るキャストコート紙では、前記無機顔料として、レーザー回折・散乱法で測定した体積平均粒子径が0.5〜10μmの合成非晶質シリカを含み、該合成非晶質シリカの含有量が、前記キャストコート層の乾燥質量に対して、0.1〜15質量%であることが好ましい。紫外線硬化インク又は溶剤インクの吸収性を更に高めることができる。
【0019】
本発明に係るキャストコート紙の製造方法では、基材上に無機顔料及びバインダーを主体として含有するキャストコート用塗料を塗工した塗工面を乾燥後、該塗工面を再湿潤液で再湿潤した後、鏡面状に研磨された加熱ドラムに圧着して乾燥するリウェット法でキャストコート層を形成するキャストコート紙の製造方法において、前記キャストコート用塗料若しくは前記再湿潤液のいずれか一方又は両方が、界面活性剤を含有し、該界面活性剤がアセチレンアルコール化合物、アセチレングリコール化合物又はアセチレン系ジアルコールのポリエーテル化合物の少なくとも1種であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、リウェット法によるキャストコート紙に関し、高い白紙光沢を有し、印刷適性に優れると共に、近年、ラベル用途などで普及してきている紫外線硬化インク又は溶剤インク(油性インク)を用いたインクジェットプリンター適性に優れたキャストコート紙を提供することができる。また、本発明は、紫外線硬化インク又は溶剤インク(油性インク)を用いたインクジェットプリンター適性に優れたキャストコート紙を、高効率で、かつ、安価に生産できる製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0022】
本実施形態に係るキャストコート紙は、基材上に無機顔料及びバインダーを主体として含有するキャストコート用塗料を塗工した塗工面を乾燥後、塗工面を再湿潤液で再湿潤した後、鏡面状に研磨された加熱ドラムに圧着して乾燥するリウェット法でキャストコート層を形成したキャストコート紙において、キャストコート層が、更に界面活性剤を含有し、界面活性剤がアセチレンアルコール化合物、アセチレングリコール化合物又はアセチレン系ジアルコールのポリエーテル化合物の少なくとも1種であり、キャストコート層の乾燥塗工量が、8〜30g/mであり、表面のJIS Z8741:1997「鏡面光沢度−測定方法」に従って測定した60°における光沢度が、50%以上である。
【0023】
本実施形態に係るキャストコート紙では、キャストコート層が、界面活性剤として、アセチレンアルコール化合物、アセチレングリコール化合物又はアセチレン系ジアルコールのポリエーテル化合物の少なくとも1種を含有する。アセチレンアルコール化合物は、例えば、3,5‐ジメチル‐1‐ヘキシン‐3‐オール、アセチレングリコール化合物である。アセチレングリコール化合物は、例えば、2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール、2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオールのポリエトキシレート、2,5,8,11‐テトラメチル‐6‐ドデシン‐5,8‐ジオールのポリエトキシレート、アセチレン系ジオールの酸化エチレン付加物である。アセチレン系ジアルコールのポリエーテル化合物は、例えば、2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール‐ジ(ポリオキシエチレン)エーテル、ポリオキシエチレン(4)アセチレニック・グリコールエーテルである。これらは、1種を単独で使用するか、又は複数を併用することができる。これらは、疎水基と親水基との組み合わせからできている。よって、水溶性であるキャストコート用塗料と非水溶性である紫外線硬化インク又は溶剤インクとの親和性を向上させる役割をもつ。
【0024】
本実施形態に係るキャストコート紙では、界面活性剤が、これらのうち特に、アセチレンアルコール化合物として(1)3,5‐ジメチル‐1‐ヘキシン‐3‐オール、アセチレングリコール化合物として(2)2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール、(3)2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオールのポリエトキシレート、(4)2,5,8,11‐テトラメチル‐6‐ドデシン‐5,8‐ジオールのポリエトキシレート、アセチレン系ジアルコールのポリエーテル化合物として(5)2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール‐ジ(ポリオキシエチレン)エーテルの(1)〜(5)のうち少なくとも1種を含有することが好ましい。これらを用いることで、インクジェットプリンター用の紫外線硬化インク又は溶剤インクが、キャストコート層の表面に印字された時に、良好なレベリング及び吸収性を得ることができる。これらは、1種を用いるか、又は複数を混合して用いてもよい。界面活性剤には、アセチレンアルコール化合物、アセチレングリコール化合物又はアセチレン系ジアルコールのポリエーテル化合物の他に、各種タイプが存在し、代表的な例としてシリコーン系界面活性剤がある。シリコーン系界面活性剤をキャストコート層に含有させると、紫外線硬化インク又は溶剤インクで印字を行った場合、画像部のインクにハジキを生じ、ムラになってしまう。
【0025】
界面活性剤の含有量は、特に限定されるものではないが、キャストコート紙の単位面積あたり、0.01〜5.00g/mであることが好ましい。より好ましくは0.10〜3.00g/mであり、特に好ましくは0.30〜2.00g/mである。これによって、紫外線硬化インク又は溶剤インクとの親和性を向上させる効果を奏しながら、塗料若しくは再湿潤液の泡立ち及び塗工時のハジキが無く、均一な塗工面を得ることができる。また、界面活性剤の親水性及び疎水性の関係を表す指標としてHLB(Hydrophile‐Lipophile Balance)がある。HLBは、数1によって求められ、ポリエチレングリコール型又は多価アルコール型の界面活性剤の親水性を表す指標として用いられる。HLBの値が小さいほど疎水性が強く、水溶性の液体となじみ難くなる。一方、HLBの値が大きいほど、水溶性の液体と馴染みやすいが、泡立ちやすくなる。本実施形態では、界面活性剤のHLBは、特に限定されるものではないが、塗工適性及び食品ラベル用途では塗工層の耐水性が求められることから、4〜20であることが好ましい。より好ましくは6〜16である。
【0026】
【数1】

【0027】
本実施形態に係るキャストコート紙は、表面のJIS Z8741:1997「鏡面光沢度−測定方法」に従って測定した60°における光沢度(以降、60°光沢度ということもある。)が、50%以上である。より好ましくは、70%以上である。本実施形態に係るキャストコート紙は、キャストコート層の光沢処理をリウェット法とすることで、コロイダルシリカなどの微細な顔料を使用しなくとも、60°光沢度を前記した範囲にすることができる。
【0028】
また、目視で更に高級感を求める用途に用いる場合には、JIS Z8741:1997「鏡面光沢度−測定方法」に従って測定した60°における光沢度が50%以上であり、かつ、JIS Z8741:1997「鏡面光沢度−測定方法」に従って測定した20°における光沢度(以降、20°光沢度ということもある。)が30%以上であることが好ましい。より好ましくは、60°光沢度が70%以上であり、かつ、20°光沢度が35%以上である。本実施形態に係るキャストコート紙では、キャストコート層の光沢処理をリウェット法とし、かつ、合成非晶質シリカの含有量を、キャストコート層中の全顔料に対して、乾燥質量で18質量%以下とすることで、60°光沢度及び20°光沢度を前記した範囲にすることができる。キャストコート層中の全顔料に対する合成非晶質シリカの含有量は、より好ましくは、乾燥質量で15質量%以下である。
【0029】
無機顔料としては、キャストコート紙で一般的に用いられる無機顔料を用いることができ、例えば、カオリン、焼成カオリン、クレー、炭酸カルシウム、タルク、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカである。これらは、1種を単独で使用するか、又は複数を併用することができる。本実施形態では、無機顔料のレーザー回折・散乱法で測定した体積平均粒子径が、1.0〜10μmであることが好ましい。より好ましくは、0.5〜6.0μmである。これによって、塗工層の物理的強度が強く、かつ、高いインク吸収性を有するキャストコート紙とすることができる。
【0030】
本実施形態に係るキャストコート紙では、無機顔料として、レーザー回折・散乱法で測定した体積平均粒子径が0.5〜10μmの合成非晶質シリカを含み、合成非晶質シリカの含有量が、前記キャストコート層の乾燥質量に対して、0.1〜15.0質量%であることが好ましい。これによって、紫外線硬化インク又は溶剤インクの吸収性を更に高めることができる。体積平均粒子径は、より好ましくは1.0〜8.0μmであり、特に好ましくは2.5〜6.0μmである。体積平均粒子径が0.5μm未満では、塗工層の強度低下が大きくなり、製造時に加熱ドラムに圧着した時にドラムピックを生じる場合がある。また、印刷工程でのトラブルが発生する場合がある。10μmを超えると、塗工面の凹凸が大きくなり、製造時に加熱ドラムに圧着した時にドラムピックを生じる場合がある。また、加熱ドラムとの密着性が足らず、高い光沢面が得られない場合がある。これらの問題点は、塗工速度を大きく落とすことで、ある程度は改善できるが、リウェット法の利点である高い生産効率を大きく減じることとなる。合成非晶質シリカの含有量は、より好ましくは、キャストコート層の乾燥質量に対して、2.5〜12.5質量%であり、特に好ましくは、2.6〜10.0質量%である。0.1質量%未満では、合成非晶質シリカを配合する効果が小さい場合がある。15.0質量%を超えると、紫外線硬化インク又は溶剤インクの吸収性は向上するものの、製造時に光沢度が低下する場合がある。また、塗工層の強度が低下し、オフセット印刷などの印刷工程でのトラブルが発生する場合がある。
【0031】
バインダーは、特に限定されないが、例えば、スチレン‐ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート‐ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体などのアクリル系重合体ラテックス、エチレン‐酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス、これら各種重合体のカルボキシル基、カチオン性基などの官能基含有変性重合体ラテックス、カゼイン、ポリビニルアルコール、澱粉、酸化澱粉、大豆蛋白、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースなどの水溶性接着剤である。これらは、1種を単独で使用するか、又は複数を併用することができる。バインダーは、無機顔料の合計質量100質量部に対して、合計質量で、15〜50質量部の範囲で配合することが好ましい。より好ましくは、20〜30質量部である。
【0032】
従来のインク吸収層及び光沢層を設けた複数層からなるインクジェット用光沢紙では、最上層の光沢層には、微粒子であるコロイダルシリカ、ヒュームドシリカ又はアルミナが一般的に用いられている。これらの体積平均粒子径は、数十nm〜数百nmと非常に細かく、産業用のキャストコート紙で一般的に用いられる無機顔料として前記したクレー、炭酸カルシウムなどの体積平均粒子径が数μmの無機顔料に比べると、高いインク吸収性をもつが、非常に高価であり、更に、微粒子であるが故、塗工層の物理的強度が不足して、一般印刷に耐えられないことから、あくまでパーソナルユース、写真用途のインクジェットプリンター向けであり、本発明が目的とするラベル用途などの産業用途での要求品質を満たすことができない。
【0033】
本実施形態では、基材上に直接キャストコート用塗料を塗工し、リウェット法にて光沢面を得ることで、高効率で、かつ、安価にキャストコート紙を得ることができる。ゲル化法によって形成したキャストコート層とリウェット法によって形成したキャストコート層とを比較すると、ゲル化法によって形成したキャストコート層の方が、空隙が多い。それ故、ゲル化法によって形成したキャストコート層では、リウェット法によって形成したキャストコート層よりも、光沢度が低くなる反面、インクジェットインク適性(特に、乾燥性)に優れるという特徴を有する。他方、リウェット法によって形成したキャストコート層では、ゲル化法によって形成したキャストコート層よりも、インクジェットインク適性(特に、乾燥性)が劣る反面、インクジェットインクの表面の光沢度が高くなるという特徴を有する。キャストコート層の乾燥塗工量は、8〜30g/mである。より好ましくは10〜25g/mであり、特に好ましくは12〜20g/mである。8g/m未満では、基材の凹凸に影響を受けて、均一な塗工面及び高い光沢感を得られない場合がある。また、印刷適性が劣る場合がある。また、後加工において、接着不良が起こる場合がある。30g/mを超えると、塗工層の強度が不足して、断裁時の紙粉トラブル、耐刷力の不足又は印刷面の欠陥を誘発する場合がある。また、乾燥に要する時間が長くなり、生産効率が低下する。さらに、キャストコート用塗料を過剰に使用することとなり不経済である。
【0034】
基材は、キャストコート法を採用することから、透気性を有する紙基材であることが好ましい。紙基材は、原料パルプを公知の抄紙機で単層又は多層で抄紙した紙又は板紙である。原料パルプは、例えば、広葉樹材又は針葉樹材を蒸解して得られる未さらしパルプ、広葉樹さらしクラフトパルプ(LBKP)、針葉樹さらしクラフトパルプ(NBKP)などの化学パルプ、グランドパルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナー砕木パルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、ケミグランドパルプ(CGP)などの機械パルプ、脱墨古紙パルプなどの古紙パルプである。これらの原料パルプから適宜選択したパルプを単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、抄紙において、原料パルプの他に、必要に応じて、従来公知の填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤などの各種助剤を1種以上混合することが好ましい。公知の抄紙機は、例えば、円網抄紙機、長網抄紙機、短網のコンビネーション抄紙機であり、選択は自由に行うことができる。
【0035】
本実施形態に係るキャストコート紙の製造方法は、基材上に無機顔料及びバインダーを主体として含有するキャストコート用塗料を塗工した塗工面を乾燥後、塗工面を再湿潤液で再湿潤した後、鏡面状に研磨された加熱ドラムに圧着して乾燥するリウェット法でキャストコート層を形成するキャストコート紙の製造方法において、キャストコート用塗料若しくは再湿潤液のいずれか一方又は両方が、界面活性剤を含有し、界面活性剤がアセチレンアルコール化合物、アセチレングリコール化合物又はアセチレン系ジアルコールのポリエーテル化合物の少なくとも1種である。
【0036】
基材の上に、キャストコート層を設けることになるが、キャストコート用塗料は、無機顔料及びバインダーを主体として含有する。キャストコート用塗料には、必要に応じて、離型剤、消泡剤、着色剤、粘性改良剤、耐水化剤、防腐剤などの添加剤を更に配合することができる。無機顔料及びバインダーの合計質量が、キャストコート用塗料の全固形分のうち、95.0質量%以上を占めることが好ましい。より好ましくは、97.5質量%以上である。
【0037】
キャストコート用塗料の塗工は、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ロッドコーターなどの公知のコーターを用いて行うことができる。また、塗工は、1回又は複数回に分けて行うことができる。なお、それぞれのコーターには、適正な塗料粘度が存在するので、操業性及び塗工設備にあった固形分の設定及び粘度の調整が必要になってくる。キャストコート用塗料の固形分濃度は、このように塗工条件に応じて適宜調節する事項であり、特に限定されないが、例えば、25〜65質量%とすることが好ましい。
【0038】
次に、キャストコート用塗料を塗工した面は、湿潤状態のうち、ある所望の水分を維持するような条件のもと、温風ヒーター、赤外線ヒーターなどによって半乾燥状態にした後、再湿潤液によって処理する。
【0039】
再湿潤液は、特に限定されるものでないが、一般的には、半乾燥したキャストコート層を可塑化する目的で、蟻酸、クエン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどの燐酸塩又は有機酸の塩類を配合することが好ましい。さらに、再湿潤液には、離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、脂肪酸の塩類、ロート油である。これらは、製造の設備又はキャストコート用塗料の成分、要求される品質又は用途によって適宜配合される。再湿潤液の固形分濃度は、特に限定されないが、0.2〜5.0質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜3.0質量%である。
【0040】
続けて、再湿潤した面を、鏡面状に研磨された加熱ドラムに圧着して乾燥する。加熱ドラムの表面温度は、100〜140℃であることが好ましい、より好ましくは、110〜125℃である。100℃未満では、乾燥不良によってキャストコート層表面の光沢の発現性に乏しい場合がある。そして、得られるキャストコート紙は、放湿によってカールが発生し、印刷及び各種後加工の操業トラブルを招く場合がある。反対に、140℃を超えると、過乾燥となり、再湿潤液が突沸してキャストコート層の表面が荒れ、ピンホール、ブリスターなどの品質不良となる場合がある。そして、得られるキャストコート紙は、吸湿によってカールが発生し、印刷及び各種後加工の操業トラブルを招く場合がある。さらに、紙のしなやかさが失われると、ギロチンによる断裁又は打ち抜き加工時に紙粉が多く発生する場合がある。また、加工時の紙へのダメージが顕著になる。
【0041】
キャストコート層に界面活性剤を含有させる方法としては、キャストコート用塗料に含有させる方法又は再湿潤液に含有させる方法がある。本実施形態では、キャストコート用塗料に含有させる方法若しくは再湿潤液に含有させる方法のいずれか一方又は両方の方法を行うことができる。このように、本実施形態に係るキャストコート紙の製造方法は、基材の上に、直接キャストコート層をリウェット法で形成し、キャストコート用塗料又は再湿潤液の少なくとも一方が界面活性剤を含有することで、紫外線硬化インク又は溶剤インク(油性インク)を用いたインクジェットプリンター適性に優れたキャストコート紙を得ることができる。したがって、インク吸収層と光沢層との複数層を設けた従来のキャストコート紙と比較して、工程数が少なく、高効率で、かつ、安価に生産できる。
【実施例】
【0042】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0043】
<基材の作製>
LBKP100部(カナディアンスタンダードフリーネス:CSF=500ml)のパルプスラリーに、カチオン澱粉(ネオタック40T、日本NSC社製)1.0部と、タルク(太平タルク、太平タルク社製)5.0部と、酸性ロジンサイズ剤(AL1200、星光PMC社製)0.2部と、液体硫酸バンド1.0部と、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂0.2部とを配合して紙料を調製した。この紙料を長網式抄紙機で抄造して坪量70g/mの原紙を得た。原紙の両面に、酸化澱粉(王子エースA、王子コーンスターチ社製)6%をサイズプレスによって乾燥塗工量が片面当たり1.5g/mとなるように塗工し、乾燥して基材を得た。
【0044】
<再湿潤液Aの作製>
クエン酸ナトリウム0.15%と、蟻酸0.8%と、離型剤として脂肪酸誘導体(R‐053D、日新化学研究所社製)0.05%とを分散機にて水中に分散及び溶解させ、再湿潤液Aを調製した。なお、再湿潤液Aの固形分濃度は、1.0%であった。
【0045】
<顔料スラリーAの調製>
無機顔料としてクレー(KAMINGLOSS、KaMin社製、体積平均粒子径0.9μm)70部及び炭酸カルシウム(TP‐123、奥多摩工業社製、体積平均粒子径1.0μm)30部と助剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PE‐61、三洋化成工業社製)0.3部とを分散機にて水中に分散し、顔料スラリーAを調製した。
【0046】
<キャストコート用塗料Aの調製>
顔料スラリーA100部と、バインダーとしてカゼイン(ALACID LACTIC CASEIN、Fonterra社製)8部及びスチレン‐ブタジエンラテックス(E‐1974、旭化成社製)20部と、界面活性剤として2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール‐ジ(ポリオキシエチレン)エーテル(オルフィンE1010、日信化学社製)3部と、助剤として複合ワックス(DKワックスNo.18、大京化学社製)2部とを配合し、水で固形分濃度43%に調製して、キャストコート用塗料Aを得た。
【0047】
(実施例1)
基材の上に、キャストコート用塗料Aを乾燥塗工量で16g/mとなるようにエアーナイフコーターでオフコートした。塗工面を、エアードライヤーにて、所定水分を維持するような条件で、半乾燥させた。半乾燥させた塗工面に、再湿潤液Aを塗布して、再湿潤処理した後に、120℃に加熱したキャストドラムに圧着して乾燥後、ドラム表面から剥離させ、リワインドしてキャストコート紙を得た。
【0048】
(実施例2)
実施例1において、キャストコート用塗料Aの界面活性剤を、2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール‐ジ(ポリオキシエチレン)エーテルに替えて、2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール(オルフィンPD001、日信化学社製)とした以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0049】
(実施例3)
実施例1において、キャストコート用塗料Aの界面活性剤を2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール‐ジ(ポリオキシエチレン)エーテルに替えて、2,5,8,11‐テトラメチル‐6‐ドデシン‐5,8‐ジオールのポリエトキシレート(ダイノール604、エアープロダクツジャパン社製)とした以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0050】
(実施例4)
実施例1において、キャストコート用塗料Aの界面活性剤を2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール‐ジ(ポリオキシエチレン)エーテルに替えて、2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール及びそのポリエトキシレートの混合物(サーフィノール485、エアープロダクツジャパン社製)とした以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0051】
(実施例5)
実施例1において、キャストコート用塗料Aの界面活性剤を2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール‐ジ(ポリオキシエチレン)エーテルに替えて、3,5‐ジメチル‐1‐ヘキシン‐3‐オール(サーフィノール61、エアープロダクツジャパン社製)とした以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0052】
<顔料スラリーBの調製>
無機顔料として、クレー(KAMINGLOSS、KaMin社製)64.5部、炭酸カルシウム(TP‐123、奥多摩工業社製)27部及び合成非晶質シリカ(サイロイド72W、グレースデビソン社製、体積平均粒子径3μm)8部と助剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PE‐61、三洋化成工業社製)0.3部とを分散機にて水中に分散し、顔料スラリーBを調製した。
【0053】
(実施例6)
実施例1において、顔料スラリーAを顔料スラリーBに変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0054】
<顔料スラリーCの調製>
無機顔料としてクレー(KAMINGLOSS、KaMin社製)58.0部、炭酸カルシウム(TP‐123、奥多摩工業社製)24部及び合成非晶質シリカ(サイロイド72W、グレースデビソン社製、体積平均粒子径3μm)18.0部と助剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PE‐61、三洋化成工業社製)0.3部とを分散機にて水中に分散し、顔料スラリーCを調製した。
【0055】
(実施例7)
実施例1において、顔料スラリーAを顔料スラリーCに変更し、キャストコート用塗料の乾燥塗工量を18.5g/mに変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0056】
<再湿潤液Bの調製>
再湿潤液A(1%液)100部に、界面活性剤として2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール‐ジ(ポリオキシエチレン)エーテル(オルフィンE1010、日信化学社製)を1.5部配合した以外は、再湿潤液Aと同様にして再湿潤液Bを調製した。再湿潤液Bの固形分濃度は、1.1%であった。
【0057】
(実施例8)
実施例1において、キャストコート用塗料Aの界面活性剤を配合せず、再湿潤液Aを再湿潤液Bに変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0058】
(実施例9)
実施例1において、再湿潤液Aを再湿潤液Bに変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0059】
<顔料スラリーDの調製>
無機顔料としてクレー(KAMINGLOSS、KaMin社製)67.5部、炭酸カルシウム(TP‐123、奥多摩工業社製)29部及び合成非晶質シリカ(サイロイド72W、グレースデビソン社製、体積平均粒子径3μm)3.5部と助剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PE‐61、三洋化成工業社製)0.3部とを分散機にて水中に分散し、顔料スラリーDを調製した。
【0060】
(実施例10)
実施例1において、顔料スラリーAを顔料スラリーDに変更し、キャストコート用塗料の乾燥塗工量を9g/mに変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0061】
(実施例11)
実施例10において、キャストコート用塗料の乾燥塗工量を28g/mに変更した以外は、実施例10と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0062】
<顔料スラリーEの調製>
無機顔料としてクレー(KAMINGLOSS、KaMin社製)67.5部、炭酸カルシウム(TP‐123、奥多摩工業社製)29部及び合成非晶質シリカ(サイロイド74x4500、グレースデビソン社製、体積平均粒子径9μm)3.5部と助剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PE‐61、三洋化成工業社製)0.3部とを分散機にて水中に分散し、顔料スラリーEを調製した。
【0063】
(実施例12)
実施例1において、顔料スラリーAを顔料スラリーEに変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0064】
(比較例1)
実施例1において、界面活性剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0065】
(比較例2)
実施例6において、界面活性剤を配合しなかった以外は、実施例6と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0066】
(比較例3)
実施例10において、キャストコート用塗料の乾燥塗工量を5g/mに変更した以外は、実施例10と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0067】
(比較例4)
実施例6において、キャストコート用塗料の乾燥塗工量を35g/mに変更した以外は、実施例6と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0068】
<顔料スラリーFの調製>
無機顔料としてクレー(KAMINGLOSS、KaMin社製)52.5部、炭酸カルシウム(TP‐123、奥多摩工業社製)21部及び合成非晶質シリカ(サイロイド72W、グレースデビソン社製、体積平均粒子径3μm)26.5部と助剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PE‐61、三洋化成工業社製)0.3部とを分散機にて水中に分散し、顔料スラリーFを調製した。
【0069】
(比較例5)
実施例1において、顔料スラリーAを顔料スラリーFに変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0070】
(比較例6)
実施例1において、キャストコート用塗料Aの界面活性剤を2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール‐ジ(ポリオキシエチレン)エーテル(オルフィンE1010、日信化学社製)に替えて、ジメチル,メチル(ポリエチレンオキサイトアセテートシロキサン)(57ADDITIVE、東レ・ダウコーニング社製)とした以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0071】
(比較例7)
実施例1において、キャストコート用塗料Aの界面活性剤を2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール‐ジ(ポリオキシエチレン)エーテル(オルフィンE1010、日信化学社製)に替えて、ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(SN−8X 3200、サンノプコ社製)とした以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0072】
<顔料スラリーGの調製>
無機顔料としてクレー(KAMINGLOSS、KaMin社製)64.5部、炭酸カルシウム(TP‐123、奥多摩工業社製)27部及びコロイダルシリカ(サイロジェット4000A、グレースデビソン社製、体積平均粒子径30〜40nm)8部と助剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PE‐61、三洋化成工業社製)0.3部とを分散機にて水中に分散し、顔料スラリーGを調製した。コロイダルシリカの含有量は、キャストコート層の乾燥質量に対して、6.0%であった。
【0073】
(比較例8)
実施例1において、顔料スラリーAを顔料スラリーGに変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0074】
<顔料スラリーHの調製>
無機顔料としてクレー(KAMINGLOSS、KaMin社製)64.5部、炭酸カルシウム(TP‐123、奥多摩工業社製)27部及び合成非晶質シリカ(サイロジェットP‐616、グレースデビソン社製、体積平均粒子径16μm)8部と助剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PE‐61、三洋化成工業社製)0.3部とを分散機にて水中に分散し、顔料スラリーHを調製した。
【0075】
(比較例9)
実施例1において、顔料スラリーAを顔料スラリーHに変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0076】
得られた実施例及び比較例のキャストコート紙について、次に示す評価方法及び判断基準に基づいて評価した。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
<紫外線硬化インクジェットインク適性>(紫外線硬化IJインク適性)
キャストコート層側の表面に、インクジェットプリンター(HP DeskJet560J、ヒューレットパッカード社製)のインクカートリッジにUVインク(ブラックインク 型番SPC−0516、ミマキエンジニアリング社製)を注入し、テスト印字パターン(罫線及びベタ)を印字し、紫外線ランプ(メタルハライドタイプMB−250N、GSユアサ社製)を80W/cmで2秒間照射して、硬化させた後、画像のムラ感及び均一性を視感で評価した。評価基準は、次のとおりである。
◎:ムラがなく、均一性が優れている(実用レベル)、
○:ムラがなく、均一性が良好である(実用レベル)、
△:ムラがなく、均一性がある(実用下限レベル)、
×:ムラが著しい(実用不適レベル)。
【0079】
<溶剤インクジェットインク適性1>(溶剤IJインク適性1)
キャストコート層側の表面に、溶剤インクジェットプリンター(JV‐3、ミマキエンジニアリング社製)を用いて、ヒーター温度40℃にてテスト印字パターン(罫線及びベタ)を印字し、印字終了後30秒経過後、1分経過後又は2分経過後に、罫線印字部を指で擦り、乾燥性を視感で評価した。評価基準は、次のとおりである。
◎:印字終了後、30秒経過後に擦って印字がカスれない(実用レベル)、
○:印字終了後、1分経過後に擦って印字がカスれない(実用レベル)、
△:印字終了後、2分経過後に擦って印字がカスれない(実用下限レベル)、
×:印字終了後、2分経過した後に印字部を擦っても印字にカスレを生じる(実用不適レベル)。
【0080】
<溶剤インクジェトインク適性2>(溶剤IJインク適性2)
キャストコート層側の表面に、溶剤インクジェットプリンター(JV‐3、ミマキエンジニアリング社製)を用いて、ヒーター温度40℃にてテスト印字パターン(罫線及びベタ)を印字し、画像のムラ感及び均一性を視感で評価した。評価基準は、次のとおりである。
◎:ムラがなく、均一性が優れている(実用レベル)、
○:ムラがなく、均一性が良好である(実用レベル)、
△:ムラがなく、均一性がある(実用下限レベル)、
×:ムラが著しい(実用不適レベル)。
【0081】
<擦過性>
紫外線硬化インクジェットインク適性又は溶剤インクジェトインク適性試験で得られた印字画像部を指で擦り、印字画像の擦れ落ち易さを評価した。
◎:画像及びキャスト光沢面の密着性が非常に良く、擦れ落ち難い(実用レベル)、
○:画像及びキャスト光沢面の密着性が良く、擦れ落ち難い(実用レベル)、
△:画像及びキャスト光沢面の密着性があり、擦れ落ち難い(実用下限レベル)、
×:画像及びキャスト光沢面の密着性が劣り、擦れ落ちる(実用不適レベル)。
【0082】
<印刷適性>
RI印刷適性試験機(RI‐3型、明製作所社製)を使用して印刷強さを評価した。印刷速度は30rpm、印圧は8.5mmとし、インクは、プロセスインキ(SMX、東洋インキ社製)タック値15 0.4mlを使用し、1回刷りで評価を行った。評価は、200mm×250mmのキャストコート紙表面のピック数に基づいて、次に示す評価基準で視感評価した。
◎:ピックが無い(実用レベル)、
○:ピック数が1〜2個である(実用レベル)、
△:ピック数が3〜4個である(実用下限レベル)、
×:ピック数が5個以上である(実用不適レベル)。
【0083】
<白紙面感>
キャストコート層側の表面の面質及び均一性の程度を目視評価した。
◎:極めて良好である(実用レベル)、
○:良好である(実用レベル)、
△:若干劣る(実用下限レベル)、
×1:光沢が不均一で面質及び均一性が劣る(実用不適レベル)。
×2:ドラムピックによって、面質及び均一性が劣る(実用不適レベル)。
【0084】
<60°光沢度>
JIS Z8741:1997「鏡面光沢度−測定方法」に従って、キャストコート層表面の60°光沢度を測定した。60°光沢度が、50%以上を実用レベルとし、50%未満を実用不適レベルとした。
【0085】
<20°光沢度>
JIS Z8741:1997「鏡面光沢度−測定方法」に従って、キャストコート層表面の20°光沢度を測定した。
【0086】
実施例のキャストコート紙は、いずれも、キャストコート層に特定の界面活性剤を配合することによって、紫外線硬化インク又は溶剤インクなどの非水溶性インクジェットインクがレベリングし易く、インクの吸収性、印字画像の均一性及び定着性に優れていた。さらに、リウェット法によるキャスト法で製造することによって、従来の産業用キャストコート紙に要望される良好な印刷適性及び高い光沢度(60°光沢度及び20°光沢度)を有していた。また、リウェット法によるキャスト法で製造することによって、高い効率で生産可能であった。
【0087】
実施例1〜実施例7及び実施例10〜実施例12は、界面活性剤をキャストコート層用塗料だけに配合した例であり、すべての評価において良好な結果が得られた。実施例8は、界面活性剤を再湿潤液だけに配合したが、すべての評価において良好な結果が得られた。実施例9は、界面活性剤をキャストコート用塗料及び再湿潤液の両方に配合したが、すべての評価において良好な結果が得られた。
【0088】
実施例6は、合成非晶質シリカを配合したため、実施例1よりも擦過性が優れていた。また、実施例1よりも溶剤インクジェットインク適性(乾燥性)が優れていた。実施例7は、合成非晶質シリカの配合量を実施例6よりも多くしたため、溶剤インクジェットインク適性(乾燥性)及び擦過性が非常に優れていた。実施例10は、合成非晶質シリカの配合量を実施例6よりも少なくし、かつ、キャストコート層の塗工量を実施例6よりも少なくしたため、実施例6と比較して印刷適性が優れていた。実施例11は、合成非晶質シリカの配合量を実施例6よりも少なくし、かつ、キャストコート層の塗工量を実施例6よりも多くしたため、実施例6と比較して高い光沢度(60°光沢度及び20°光沢度)を有していた。実施例12は、合成非晶質シリカの体積平均粒子径を実施例6よりも大きいものを用いたため、印刷適性が優れていた。
【0089】
比較例1は、界面活性剤を用いなかったため、紫外線硬化インクジェットインク適性、溶剤インクジェットインク適性及び擦過性が実用不適レベルであった。比較例2は、界面活性剤を用いなかったため、紫外線硬化インクジェットインク適性及び溶剤インクジェットインク適性のムラ感及び均一性が実用不適レベルであった。比較例3は、キャストコート層の塗工量が少なすぎたため、基材の凹凸の影響を受けて、印刷適性及び白紙面感が実用不適レベルであり、また光沢度(60°光沢度及び20°光沢度)が低かった。比較例4は、キャストコート層の塗工量が多すぎたため、印刷適性が実用不適レベルであった。比較例5は、合成非晶質シリカの配合量が多すぎたため、塗工層の強度が不足して印刷適性が実用不適レベルであった。また、光沢が不均一であり、光沢度(60°光沢度及び20°光沢度)が低かった。比較例6及び比較例7は、界面活性剤としてシリコーン系界面活性剤を用いたため、紫外線硬化インクジェットインク又は溶剤インクジェットインクがハジキを生じて、均一な画像が得られなかった。比較例8は、無機顔料としてコロイダルシリカを用いたため、塗工層の強度が低下して印刷適性が実用不適レベルであった。また、加熱ドラムに圧着時にドラムピックが生じたため、光沢度(60°光沢度及び20°光沢度)が低かった。比較例9は、無機顔料として配合した合成非晶質シリカの体積平均粒子径が大きすぎて、塗工面の凹凸が大きくなり、光沢が不均一で、光沢度(60°光沢度及び20°光沢度)が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係るキャストコート紙は、紫外線硬化インク又は溶剤インク(油性インク)を用いたインクジェットプリンター適性に優れ、高効率、かつ、安価に製造することができるため、包装、ラベルなどの多目的な産業用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に無機顔料及びバインダーを主体として含有するキャストコート用塗料を塗工した塗工面を乾燥後、該塗工面を再湿潤液で再湿潤した後、鏡面状に研磨された加熱ドラムに圧着して乾燥するリウェット法でキャストコート層を形成したキャストコート紙において、
前記キャストコート層が、更に界面活性剤を含有し、該界面活性剤がアセチレンアルコール化合物、アセチレングリコール化合物又はアセチレン系ジアルコールのポリエーテル化合物の少なくとも1種であり、
前記キャストコート層の乾燥塗工量が、8〜30g/mであり、
表面のJIS Z8741:1997「鏡面光沢度−測定方法」に従って測定した60°における光沢度が、50%以上であることを特徴とするキャストコート紙。
【請求項2】
前記界面活性剤が、前記アセチレンアルコール化合物として(1)3,5‐ジメチル‐1‐ヘキシン‐3‐オール、前記アセチレングリコール化合物として(2)2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール、(3)2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオールのポリエトキシレート、(4)2,5,8,11‐テトラメチル‐6‐ドデシン‐5,8‐ジオールのポリエトキシレート、前記アセチレン系ジアルコールのポリエーテル化合物として(5)2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール‐ジ(ポリオキシエチレン)エーテルの(1)〜(5)のうち少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載のキャストコート紙。
【請求項3】
前記無機顔料として、レーザー回折・散乱法で測定した体積平均粒子径が0.5〜10μmの合成非晶質シリカを含み、
該合成非晶質シリカの含有量が、前記キャストコート層の乾燥質量に対して、0.1〜15質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のキャストコート紙。
【請求項4】
基材上に無機顔料及びバインダーを主体として含有するキャストコート用塗料を塗工した塗工面を乾燥後、該塗工面を再湿潤液で再湿潤した後、鏡面状に研磨された加熱ドラムに圧着して乾燥するリウェット法でキャストコート層を形成するキャストコート紙の製造方法において、
前記キャストコート用塗料若しくは前記再湿潤液のいずれか一方又は両方が、界面活性剤を含有し、
該界面活性剤がアセチレンアルコール化合物、アセチレングリコール化合物又はアセチレン系ジアルコールのポリエーテル化合物の少なくとも1種であることを特徴とするキャストコート紙の製造方法。

【公開番号】特開2012−197542(P2012−197542A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63877(P2011−63877)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000241810)北越紀州製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】