説明

キャスト塗工紙の製造方法及びその製造装置

【課題】
生産効率に優れたキャスト塗工紙の製造方法及びその製造装置の提供。
【解決手段】
この課題は、基材上に、結着剤を含む塗工液で下塗り塗工層を形成する第一段階と、更に第一段階にて得られた下塗り塗工層の上に、結着剤を含む塗工液で上塗り塗工層を形成した後に、ゲル化処理又はリウェット処理を行い、加熱された鏡面仕上げの金属面に該塗工面を圧着させて表面光沢処理を行う第二段階とが、一工程で構成されており、かつ、上塗り塗工層及び/又は下塗り塗工層に顔料を含有することを特徴とするキャスト塗工紙の製造方法並びにこれを実施するための装置によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産効率に優れたキャスト塗工紙の製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャスト塗工紙と呼ばれる光沢紙の製造方法としては、顔料及び結着剤を主成分とするキャスト用塗工液を原紙に塗工した後、塗工層が湿潤状態にあるうちに鏡面仕上げの金属面を有する加熱ドラムの表面に圧着、乾燥させて表面を光沢処理するウェットキャスト法、湿潤状態の塗工層をいったん乾燥させた後、再湿潤液によって可塑化させ、加熱ドラム面に圧着するリウェットキャスト法、そして湿潤状態の塗工層をゲル状態にして加熱ドラム面に圧着するゲル化キャスト法等が一般に知られている。
【0003】
通常、目標の品質を得るために、キャスト塗工紙は複数の塗工層から形成されている構成が多い。品質及び操業性に優れた製品にするため、各層の塗工成分及び塗工量を調整することが重要である。また塗工層は、その経済性及び品質の観点から2〜4層構造を有しているのが一般的である。
【0004】
しかしながら、キャスト法を用いた塗工機は、一段塗工であるため、その下塗り層を別工程にて施す必要があった。そのため、工程数の増加や工程毎に発生する基材の損失は、経済性の面で問題となっていた。
【0005】
一方、高い生産効率を目的として、塗工工程を2段以上もつ多段塗工機が普及してきている。多段塗工機は、ブレード塗工やロッド塗工では一般的に行われており、特にカーテン塗工方式では、その有利性を生かして多段塗工による製品の開発が行われてきている(特許文献1)。
【特許文献1】特表2004−527669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キャスト法を用いた塗工機においても、キャスト塗工の直前に下塗り塗工を設けることで効率の向上が期待できるが、従来技術では例がなく、高効率生産を実施するのが難しいのが現状である。
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のキャスト塗工紙の製造方法は、キャスト塗工の直前に下塗り塗工工程を備えたものである。その結果として、高品質のキャスト塗工紙が効率良く生産できることを見出したのである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は次の技術的手段を実施した。
【0009】
すなわち、基材上に結着剤を含む塗工液で塗工層を形成する第一段階と、更に第一段階にて得られた下塗り塗工層の上に、結着剤を含む塗工液で上塗り塗工層を形成した後に、ゲル化処理又はリウェット処理を行い、加熱された鏡面仕上げの金属面に該塗工面を圧着させて表面光沢処理を行う第二段階とが、一工程で構成されており、かつ、上塗り塗工層及び/又は下塗り塗工層に顔料を含有することを特徴とする。
【0010】
さらに、表面光沢処理後に一工程でカレンダー処理をする構成としたものである。
【0011】
前記の方法は、基材が、下塗り用塗工ロール(4)、乾燥装置(7)、上塗り塗工ロール(8)、乾燥装置(12)、ゲル化処理又はリウェット処理装置(13)及び表面光沢処理装置(15,16)に順次案内される、キャスト塗工紙の連続製造装置によって効率的に実施することができる。
【0012】
表面光沢処理装置(15,16)の後にカレンダー処理装置(18)を備えることが、塗工後の表面性を向上させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、生産効率の高いキャスト塗工紙を製造することが可能であり、その効果は極めて大なるものがある。また、表面光沢処理後にカレンダー処理を行うことで、紙のプロファイル、ボコツキ、塗工紙の裏面肌を適正に調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について、その一実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の製造方法及び該方法を実施するための製造装置の工程概略説明図である。本実施形態においては、先ず、図1に示すように、給紙リール1に巻かれた基材2に、塗工ロール3によって塗工液4を塗布して下塗り層6を形成し、乾燥装置7にて水分を調整する。
【0015】
下塗り層6は、製品の目的に応じて顔料添加の有無を選択することができる。高い平滑性を目的する場合は、塗工液に顔料を添加することが好ましい。また、上塗り層11の塗工性を向上させる目的として、結着剤及び助剤を含有した塗工液で塗工するのもよい。下塗り層6の塗工量は、平滑性を高めつつ、経済性の観点から、乾燥固化後の質量で1〜45g/m2の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、5〜30g/m2の範囲である。
【0016】
次に、乾燥した下塗り層6に、塗工ロール8によって塗工液9を塗工して上塗り層11を形成し、乾燥装置12にて水分を調整する。さらに、液供給装置(ゲル化処理又はリウェット処理装置)13にてゲル化液又は再湿潤液14を塗布した後、加熱された鏡面ドラム15と圧接ロール16(表面光沢処理装置)で圧接することにより表面光沢処理を行う。
【0017】
上塗り層11も、製品の目的に応じて顔料有無を選択することができる。ゲル化キャスト法で実施する場合は、塗工液に顔料を添加することが望ましい。リウェットキャスト法では、再湿潤性を向上させる目的として、結着剤及び助剤を含有した塗工液で塗工するのもよい。上塗り層11の塗工量は、表面光沢を高めつつ経済性の観点から乾燥固化後の質量で1〜45g/m2の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、5〜30g/m2の範囲である。
【0018】
さらに、塗工後の表面性の向上を目的として、圧接後のキャスト塗工紙17にカレンダー処理装置18によってカレンダー処理を施すことが、更に好ましい。
【0019】
本実施形態に係るキャスト塗工紙において使用する基材の原料は、木材パルプが最も好適に用いられるが、その他の天然パルプ、古紙パルプ、合成パルプなどを必要に応じて適宜組み合わせて用いても構わない。天然パルプは、塩素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素漂白などの通常の漂白処理若しくはアルカリ抽出若しくはアルカリ処理及び必要に応じた過酸化水素、オゾン漂白などの酸化漂白処理若しくはその組み合わせ処理を施した広葉樹パルプ、針葉樹パルプ又はその混合パルプが望ましく、更に、ソーダパルプ、機械パルプなども用いることもできる。古紙パルプは、その原料、脱墨方法及び漂白方法を問わないが、紙の強度を損なわない程度の配合量としなければならない。合成パルプも、ポリオレフィン等の各種のものを用いることができる。
【0020】
前記のパルプは、ディスク型、コニカル型などの各種の叩解機によって適当なフリーネスとなるように必要に応じて叩解する。フリーネスは、紙の強度を決定する重要な要因であり、叩解が進むほどに強度が増すが、透気性、不透明度、嵩などの低下をもたらすため、一般的には400〜550mlCSF(カナダ標準ろ水度)程度で、本実施形態においてもこの範疇でコントロールすることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0021】
紙料中には、前記のパルプ以外に、紙力剤、白色顔料、硫酸バンド、歩留まり向上剤、サイズ剤、染料、蛍光染料などの各種抄紙用薬品が適宜用いられる。紙力剤としては、カチオンでんぷん、両性でんぷん、ポリアクリルアマイドなどが用いられる。歩留まり向上剤は、コロイダルシリカ、ポリアクリルアマイド、ポリエチレンイミンなどが用いられる。染料及び蛍光染料は、紙の色相を調整するために添加され、直接染料、塩基性染料、酸性染料などが用いられる。サイズ剤としては、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、中性ロジン、強化ロジン、鹸化ロジンなどが抄紙pHなどに応じて適宜選択される。この他、嵩高剤も繊維間結合強度の低下が問題とならない程度に添加することが可能である。
【0022】
基材には、デンプン、ポリビニルアルコール類、カチオン樹脂などを塗布・含浸させ、表面強度、サイズ度などを付与するサイズプレス工程において調整できる。さらに、基材には、塗工層が施されていてもよい。
【0023】
塗工層には、次のような顔料を用いることができる。例えば、非晶質シリカ、非晶質アルミナ、カオリン、クレー、焼成クレー、タルク、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、珪酸リチウム、珪藻土、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、マイカ、天然ゼオライト、合成ゼオライト、擬ベーマイト、ハイドロキシアパタイト、層間化合物などの無機顔料があり、又は、アクリル/メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などの単量体若しくは共重合体からなる球状若しくは不定形の有機顔料がある。また、これらの顔料にカップリング剤若しくは有機物による表面改質など、又は、金属イオン交換法、気相蒸着法若しくは液相析出法による表面処理など、多元的な機能性を付与させるための表面処理を施してもかまわない。また、これらを二種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0024】
塗工層には、次のような結着剤を用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、でんぷん、変性でんぷん、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、カゼイン、ゼラチン、テルペンなどの水溶性バインダー、又は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリビスクロロメチルオキサシクロブタン、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフォン、ポリ−p−キシリレン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、変性スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合体などのエマルジョン型バインダーである。これらのバインダーの重合度、ケン化度、Tg(ガラス転移温度)、MFT(最低造膜温度)などは、限定されない。また、これらの分子鎖中に架橋性の官能基を付加しても構わない。
【0025】
塗工層の塗工液には、必要に応じて分散剤、消泡剤、pH調整剤、湿潤剤、保水剤、増粘剤、架橋剤、離型剤、潤滑剤、防腐剤、柔軟剤、ワックス、導電防止剤、帯電防止剤、サイズ剤、耐水化剤、可塑剤、蛍光増白剤、着色顔料、着色染料、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、脱臭剤などの各種助剤を適宜選定して添加することができる。さらに、該助剤を顔料スラリーに含有させてなる複合物及び/又は結着剤に含有させてなる複合物も適宜選定して添加することができる。また、該助剤及び/又は該複合物を添加する場所、方法についても限定されない。
【0026】
塗工液を塗工する方法としては、一般の塗工機、例えば、ブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター、リップコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ダイコーター、チャンブレックスコーターなどを使用することができる。
【0027】
また、キャスト法として、塗工液の塗工後いったん乾燥させた塗工層を、水又は塗工層を再膨潤させる成分を含有する処理液、すなわち、リウェット液で再膨潤させた後に加熱された鏡面ドラムに圧接させて仕上げるリウェットキャスト法、塗工液の塗工後、塗工層をゲル化させる成分を含有する処理液、すなわち、ゲル化液でゲル化させた後に加熱された鏡面ドラムに圧接させて仕上げるゲル化キャスト法のいずれを用いてもよい。特に、その原理上、高い塗工速度が得られるリウェットキャスト法を用いることが好ましい。
【0028】
また、鏡面ドラムによる表面光沢処理後に、裏面に水及び/又はカール調整剤を塗布したり又は加湿したりしてカール調整を行ってもよい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。また、例中の「%」は、特に断らない限り「乾燥質量%」を表し、「部」は「乾燥質量部」を表す。
【0030】
[実施例1]
[キャスト塗工原紙(基材)の作成]
L−BKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)80部(カナダ標準ろ水度(CSF)440ml)、N−BKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)20部(CSF440ml)からなるパルプ配合に、パルプに対し硫酸バンド1%、軽質炭酸カルシウム5%(TP−121奥多摩工業社製)、カチオン化タピオカでんぷん(商品名:ネオタック40T 日本食品化工社製)、0.7%、ロジン系エマルジョン(商品名:AL−120 星光PMC社製、)0.3%を添加した調成原料を長網抄紙機で抄紙し、表面紙力剤として変性ポリアクリルアミド系樹脂(商品名:ST−5000星光PMC社製)を乾燥固形分量両面に1.0g/m2 になるように処理し、乾燥坪量84g/m2 の原紙Aを得た。
【0031】
[塗工液Aの調製]
顔料としてカオリン(商品名:ハイドラグロス90 ヒューバー社製)70部と軽質炭酸カルシウム30部(商品名:TP−123CS 奥多摩工業社製)及び結着剤としてカゼイン溶解液10部とスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:G−1578 旭化成社製)10部を加え、更に水を加えて固形分濃度50%の塗工液を調整したものを塗工液Aとした。
【0032】
[塗工液Bの調製]
顔料として重質炭酸カルシウム(商品名:カービタル90 イメリスミネラルズ社製)100部と、結着剤としてスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:G−1578 旭化成社製)10部及び尿素リン酸エステル化でんぷん(商品名:MS−4600 日本食品加工社製)3部を加え、更に水を加えて固形分濃度50%の塗工液を調整したものを塗工液Bとした。
【0033】
[キャスト塗工紙の作成]
本発明のキャスト塗工紙の製造装置を用いて、塗工液Bを原紙A に、塗工量が10g/m2となるようにエアナイフコーターを用いて片面塗工した後、エアドライヤーで乾燥、更にその上に塗工液Aを塗工量が10g/m2となるようにエアナイフコーターで塗工した後、エアドライヤーで乾燥、次いで再湿潤液(ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液:1.0%)によって塗工層表面を再湿潤化した後、表面温度が120℃のキャストドラムに圧接、乾燥してキャスト塗工紙を得る工程を、一工程で実施した。このときの塗工速度は、80m/分であった。また、塗工開始時の条件調整完了までに3分を要したため、このときの損紙長は240mであった。2本目以降は、塗工量の微調整で各30秒を要したため、このときの損紙長は各40mであった。また、各原紙の下巻き損紙長は、各10mであった。
【0034】
[実施例2]
実施例1において、キャスト処理後に表面を樹脂ロール−金属ロール間で50kN/m の条件下にカレンダー処理を表裏各1回ずつ行った。
【0035】
[実施例3]
[塗工液Cの調製]
顔料としてコロイダルシリカスラリー(商品名:スノーテックスAK−L 日産化学工業社製)100部及び結着剤としてポリビニルアルコール(商品名:PVA124 クラレ社製)8部を混合した後、インク定着剤(商品名:スミレーズレジン1001 住友化学社製)7部、アクリルラテックス(商品名:パスコールJK−714 明成化学工業社製)10部及び離型剤としてポリエチレンエマルジョン(商品名:SNコート287 サンノプコ社製)1部を加えて攪拌し、固形分濃度20%に調整したものを塗工液Cとした。
【0036】
[塗工液Dの調製]
顔料として合成非晶質シリカ(商品名:ミズカシルP−78A 水澤化学工業社製)100部に、純水とpH調整剤として酢酸0.2部を添加し、カウレス分散機で固形分濃度20%の顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに、結着剤としてポリビニルアルコール(商品名:PVA117 クラレ社製)15部、ポリエチレン酢酸ビニル(EVA)バインダー(商品名:ポリゾールEVAAD−6 昭和高分子社製)30部と、インク定着剤(商品名:パピオゲンP−105 センカ社製)15部を添加・攪拌し、更に純水を添加し、固形分濃度が20%に調整したものを塗工液Dとした。
【0037】
[キャスト塗工紙の作成]
本発明のキャスト塗工紙の製造装置を用いて、塗工液Dを原紙A に、塗工量が10g/m2となるようにエアナイフコーターを用いて片面塗工した後、エアドライヤーで乾燥、更にその上に塗工液Cを塗工量が10g/m2となるようにエアナイフコーターで塗工した後、ゲル化液(硼酸ナトリウム水溶液:1.0%)によって塗工層表面をゲル化、次いで表面温度が100℃のキャストドラムに圧接、乾燥してキャスト塗工紙を得る工程を一工程で実施した。このときの塗工速度は、40m/分であった。また、塗工開始時の条件調整完了までに5分を要したため、このときの損紙長は200mであった。2本目以降は、塗工量の微調整で各30秒を要したため、このときの損紙長は各20mであった。また、各原紙の下巻き損紙長は、各50mであった。
【0038】
[比較例1]
通常塗工機にて、塗工液Bを原紙Aに、塗工量が10g/m2となるようにロッドコーターを用いて片面塗工した後、エアドライヤーで乾燥して下塗り層を形成した。このときの塗工速度は、800m/分であった。また、塗工開始時の条件調整完了までに1分を要したため、このときの損紙長は800mであった。2本目以降は、塗工量の微調整で各15秒を要したため、このときの損紙長は各200mであった。また、各下塗り塗工紙の下巻き損紙長は、各10mであった。その後、従来のキャスト法塗工機にて、塗工液Aを塗工量が10g/m2となるように下塗り層を形成した面にエアナイフコーターで塗工した後、エアドライヤーで乾燥した。次いで再湿潤液(ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液:1.0%)によって塗工層表面を再湿潤化した後、表面温度が120℃のキャストドラムに圧接、乾燥した後ドラムから剥離することによってキャスト塗工紙を得た。このときの塗工速度は、80m/分であった。また、塗工開始時の条件調整完了までに2分を要したため、このときの損紙長は160mであった。2本目以降は、塗工量の微調整で各30秒を要したため、このときの損紙長は各40mであった。しかし、各下塗り塗工紙の下巻き部分は、下塗り塗工開始時の条件調整部分があるので巻き芯のシワに影響されることはないため下巻き損紙を発生させることはなかった。
【0039】
[比較例2]
通常塗工機にて、塗工液Dを原紙A に、塗工量が10g/m2となるようにロッドコーターを用いて片面塗工した後、エアドライヤーで乾燥して下塗り層を形成した。このときの塗工速度は、800m/分であった。また、塗工開始時の条件調整完了までに1分を要したため、このときの損紙長は800mであった。2本目以降は、塗工量の微調整で各15秒を要したため、このときの損紙長は各200mであった。その後、従来のキャスト法塗工機にて、塗工液Cを塗工量が10g/m2となるように下塗り層を形成した面にエアナイフコーターで塗工した後、エアドライヤーで乾燥した。次いでゲル化液(硼酸ナトリウム水溶液:1.0%濃度)によって塗工層表面をゲル化した後、表面温度が100℃のキャストドラムに圧接、乾燥した後ドラムから剥離することによってキャスト塗工紙を得た。このときの塗工速度は、40m/分であった。また、塗工開始時の条件調整完了までに4分を要したため、このときの損紙長は80mであった。2本目以降は、塗工量の微調整で各30秒を要したため、このときの損紙長は各20mであった。しかし、各下塗り塗工紙の下巻き部分は、下塗り塗工開始時の条件調整部分があるので巻き芯のシワに影響されることはないため下巻き損紙を発生させることはなかった。
【0040】
[評価方法]
各実施例及び比較例のキャスト塗工紙を、次に示す方法で評価した。各評価が△以上であれば、実用上問題がない。
【0041】
損紙長は、キャスト塗工紙が5本仕上がるまでに生じる長さを算出した。この場合、塗工速度の増減を考慮に入れず、常に設定速度であると仮定して計算を行った。
【0042】
紙厚プロファイルは、幅方向に10点測定した値を比較し、紙厚の厚薄が5μm未満のものを○、5μm以上10μm未満のものを△、10μm以上のものを×とした。
【0043】
得られた結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
[評価のまとめ]
実施例1〜3は、いずれも、塗工工程を少なくすることができただけでなく、工程ロスによる損紙長も短くすることができた。さらに、カレンダー処理を実施することによって平らな紙厚プロファイルを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の製造装置の一実施態様を示す概略構成図(給紙ロール〜鏡面ドラム)である。
【図2】本発明の製造装置の一実施態様を示す概略構成図(鏡面ドラム〜リール)である。
【符号の説明】
【0047】
5 エアナイフリップ
10 エアナイフリップ
19 リール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、結着剤を含む塗工液で下塗り塗工層を形成する第一段階と、更に第一段階にて得られた下塗り塗工層の上に、結着剤を含む塗工液で上塗り塗工層を形成した後に、ゲル化処理又はリウェット処理を行い、加熱された鏡面仕上げの金属面に該塗工面を圧着させて表面光沢処理を行う第二段階とが、一工程で構成されており、かつ、上塗り塗工層及び/又は下塗り塗工層に顔料を含有することを特徴とするキャスト塗工紙の製造方法。
【請求項2】
前記第二段階での塗工層の表面光沢処理後に一工程でカレンダー処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のキャスト塗工紙の製造方法。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とするキャスト塗工紙。
【請求項4】
請求項1又は2のキャスト塗工紙を製造する方法を実施するための装置において、基材が、下塗り用塗工ロール(4)、乾燥装置(7)、上塗り塗工ロール(8)、乾燥装置(12)、ゲル化処理又はリウェット処理装置(13)及び表面光沢処理装置(15,16)に順次案内される、キャスト塗工紙の連続製造装置。
【請求項5】
表面光沢処理装置(15,16)の後にカレンダー処理装置(18)を備える、請求項4に記載のキャスト塗工紙の連続製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−144291(P2010−144291A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324072(P2008−324072)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000241810)北越紀州製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】