説明

キャスト塗被紙

【課題】 本発明は、従来技術では困難であった、白紙光沢、印刷光沢に優れ、光沢ムラやピンホールを解消し、かつ高い速度での生産を実現するキャスト塗被紙を提供する。
【解決手段】 原紙上に顔料と接着剤を主成分とする塗被液を塗被した後、塗被層が湿潤状態にある間に鏡面を有する加熱ドラムに圧接、乾燥させて強光沢仕上げするキャスト塗被紙において、前記顔料中に針状の軽質炭酸カルシウムを含有し、該軽質炭酸カルシウムのレーザー回折法による粒度分布曲線の50体積%粒子径(D50)が0.2〜0.7μmであり、かつ90体積%の粒子径(D90)と10体積%の粒子径(D10)の比(D90/D10)が8以下であることを特徴とするキャスト塗被紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスト塗被紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャスト塗被紙は一般の塗被紙に比べて白紙光沢および平滑性が極めて高いため、その特色からカタログ、カレンダー、雑誌の表紙等、高級印刷用紙や、包装紙、ショッピングバッグ、粘着ラベルとして主に利用されている。
【0003】
キャスト塗被紙の代表的な製造方法としては、ウェットキャスト法、リウェットキャスト法、ゲル化キャスト法がある。ウェットキャスト法とは塗被層が湿潤状態にある間に鏡面を有する加熱ドラムに圧接、乾燥させて強光沢仕上げする製造方法である。リウェットキャスト法とは塗被層を湿潤状態から一旦乾燥させた後、塗被層を水又は湿潤液にて再度湿潤状態にさせ、鏡面を有する加熱ドラムに圧接、乾燥させて強光沢仕上げする製造方法である。ゲル化キャスト法とは塗被層をゲル状態に凝固させた後、鏡面を有する加熱ドラムに圧接、乾燥させて強光沢仕上げする製造方法である。いずれの製造方法も塗被層が湿潤可塑状態にある間に鏡面を有する加熱ドラムに圧接、乾燥させて強光沢仕上げする点において共通しているが、塗被層中の水分又は湿潤液中の水分は塗被層、原紙層の順に通過し、他面より蒸発乾燥することになるため、両面から水分が蒸発乾燥する一般の塗被紙に比べて極めて低い速度での生産が行われており、また生産速度を上げるために加熱ドラム表面温度を高くすると、塗被層中の水分又は湿潤液中の水分が急激に沸騰し、無数のピンホールを発生させてしまうおそれがある。
【0004】
キャスト塗被紙の塗被液に含有される顔料としては、白紙光沢、印刷光沢を得られ易い板状結晶のカオリンが主に使用されていたが、カオリンは塗被層表面および塗被層中において横並びに配向する特徴があり、白紙光沢、印刷光沢は向上しても水分の通過性が低下するため、生産速度が上がらず、また光沢ムラが発生し易くなる。
【0005】
以上のような状況から、白紙光沢、印刷光沢に優れ、光沢ムラやピンホールを解消し、かつ高い速度での生産を実現し得るキャスト塗被紙の開発は大きな課題であり、特にキャスト塗被液の顔料に特定の形状を有する軽質炭酸カルシウムを含ませることにより上記課題の解決を図る研究開発が進められてきた。
【0006】
例えば、特許文献1では重質炭酸カルシウムと平均粒子径が0.1〜1.0μmの立方状軽質炭酸カルシウムをキャスト塗被液の顔料として使用することを提案しているが、軽質炭酸カルシウムの形状が立方状であるため優れた白紙光沢の実現が十分ではなく、また光沢ムラの問題も解消されてはいない。
【0007】
特許文献2では長径3.0μmを超えて5.0μmまでで、短径が0.2〜0.5μmの針状または柱状の軽質炭酸カルシウムをキャスト塗被液の顔料として使用することを提案しているが、優れた白紙光沢は実現されるものの、高い速度での生産ではピンホールが発生するおそれがある。
【0008】
特許文献3では平均粒子径0.5μm以下のカオリンと長辺の平均長さが1.0〜3.0μmの針状または柱状の軽質炭酸カルシウムをキャスト塗被液の顔料として使用することを提案しているが、優れた白紙光沢、印刷光沢は実現されるものの、光沢ムラおよびピンホールの解消効果が十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−313796号公報
【特許文献2】特開平11−100798号公報
【特許文献3】特開平1−118691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術では困難であった、白紙光沢、印刷光沢に優れ、光沢ムラやピンホールを解消し、かつ高い速度での生産を実現するキャスト塗被紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、キャスト塗被液の顔料について研究を重ねた結果、特定の形状と粒径を有する軽質炭酸カルシウムを顔料に含有させることが重要な技術要素であることを見出した。
【0012】
本発明は、以下の構成を有している。
[1]原紙上に顔料と接着剤を主成分とする塗被液を塗被した後、塗被層が湿潤状態にある間に鏡面を有する加熱ドラムに圧接、乾燥させて強光沢仕上げするキャスト塗被紙において、前記顔料中に針状の軽質炭酸カルシウムを含有し、該軽質炭酸カルシウムのレーザー回折法による粒度分布曲線の50体積%の粒子径(D50)が0.2〜0.7μmであり、かつ90体積%の粒子径(D90)と10体積%の粒子径(D10)の比(D90/D10)が8以下であることを特徴とするキャスト塗被紙。
[2]軽質炭酸カルシウムは、粒度分布曲線の50体積%の粒子径(D50)が0.3〜0.6μmであり、かつ90体積%の粒子径(D90)と10体積%の粒子径(D10)の比(D90/D10)が6以下であることを特徴とする[1]記載のキャスト塗被紙。
[3]軽質炭酸カルシウムは、生石灰に対するモル比が2.5以下の範囲で消和水を添加し混合することにより消石灰を得る工程(A)、該消石灰と水とを混合することにより消石灰を得る工程(B)、および該消石灰に二酸化炭素含有ガスを吹き込み炭酸化する工程(C)を経て製造されることを特徴とする[1]、[2]のいずれか一項記載のキャスト塗被紙。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、白紙光沢、印刷光沢に優れ、光沢ムラやピンホールを解消し、かつ高い速度での生産を実現するキャスト塗被紙を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[塗被液]
本発明のキャスト塗被紙において、塗被液は顔料と接着剤を主成分とし、その他必要に応じて助剤を添加する。
【0015】
[顔料]
(軽質炭酸カルシウム)
本発明に使用する軽質炭酸カルシウムは針状の形状を有し、レーザー回折法により前記軽質炭酸カルシウムの粒度分布曲線の50体積%の粒子径(D50)が0.2〜0.7μmであり、かつ90体積%の粒子径(D90)と10体積%の粒子径(D10)の比(D90/D10)が8以下であることにより、白紙光沢、印刷光沢に優れ、光沢ムラやピンホールを解消し、かつ高い速度での生産を実現するキャスト塗被紙を提供することが可能となる。
【0016】
軽質炭酸カルシウムの形状は針状、立方状、紡錘状、柱状等があるが、本発明の効果である白紙光沢、光沢ムラ、ピンホール、高い速度での生産をすべて満足する効果を得るには、針状である必要がある。その理由としては、針状という形状の特質から、塗被層表面および塗被層中において配向ムラが生じ難いこと、塗被層中において適度な空隙を有し易いことが考えられる。
【0017】
本発明に使用する軽質炭酸カルシウムのD50は0.2〜0.7μmであり、好ましくは0.3〜0.6μmであり、さらに好ましくは0.35〜0.55μmである。D50が0.2μm未満では、接着強度が低下するため、接着剤の含有量を増やす必要が生じ、加熱ドラムでの乾燥において水分の通過性の低下をもたらすことでピンホールが発生し易くなり、D50が0.7μmを超えると、顔料中の軽質炭酸カルシウムが局在化するため、白紙光沢の低下と光沢ムラが発生し易くなるためである。
【0018】
本発明に使用する軽質炭酸カルシウムのD90/D10は8以下であり、好ましくは6以下であり、さらに好ましくは5.5以下である。D90/D10が8を超えると、粒度分布が不均一となり、白紙光沢、印刷光沢の低下と光沢ムラが発生し易くなるためである。
【0019】
なお、軽質炭酸カルシウムのD50とD90/D10が前記規定範囲内にあれば、粘度が低い状態で塗被液を高濃度化することが可能となるため、加熱ドラムでの乾燥負荷を小さくすることができ、高い速度での生産が可能となる。
【0020】
軽質炭酸カルシウムを得る方法は特に限定しないが、分散、粉砕、分級のし易さから消石灰に炭酸ガスを吹き込んで反応させる「液−ガス法」が好ましい。特に、生石灰に対するモル比が2.5以下の範囲で消和水を添加し混合することにより消石灰を得る工程(A)、該消石灰と水とを混合することにより消石灰を得る工程(B)、および該消石灰に二酸化炭素含有ガスを吹き込み炭酸化する工程(C)を経て製造されることを特徴とする軽質炭酸カルシウムであれば、所望の粒子形状、粒子径、粒度分布が得られ易い。
【0021】
前記(A)、(B)、(C)の各工程について詳述する。
生石灰は、石灰石を焼成したものであればよく、焼成装置に関しては、ベッケンバッハ炉、メルツ炉、ロータリーキルン、カーハーディー炉、コマ式炉、カルマチック炉、流動焼成炉、混合焼き立炉など、石灰石を転化する装置であれば特に限定はない。焼成温度および焼成時間は適宜調整可能であるが、石灰石を低温かつ長時間で生石灰を生成させた方が、高温かつ短時間で生成させた生石灰よりも針状形状の軽質炭酸カルシウムが得られやすい。また、生石灰中の二酸化炭素含有率が低い方が、針状形状の軽質炭酸カルシウムが得られやすく、石灰石の焼け残り成分としてJIS R 9011:2006に規定されている炭酸バリウム逆滴定法による二酸化炭素含有率が1.5%以下であることが好ましい。より好ましいのは二酸化炭素含有率が1.0%以下である。
軽質炭酸カルシウムは塗被液用顔料として利用するため、原料としてなるべく白色度の高い石灰石を用いるのがよい。特に、Fe、Mnなどの着色成分が問題となる場合があるので、なるべく着色成分含有量が少ない石灰石を用いることに留意する必要がある。
【0022】
消石灰の製造方法としては、生石灰すなわち酸化カルシウムに理論水和量の2倍前後の水を加えて消和を行う乾式消和法を用いる方が好ましい。乾式消和において、添加する消和水量は、生石灰に対するモル比で2.5以下であるのが好ましい。消和水量が、生石灰モル比で2.5を超えると、生石灰に消和水を添加した際に水が局在化するため、微細な消石灰が多く生成し、得られる軽質炭酸カルシウムの形状が紡錘状になり、紙に塗被すると平滑性、光沢発現性などの品質が低下する。
【0023】
上述のように、原料となる消石灰粒子が微細な粒子を多く含むと、生産される軽質炭酸カルシウムの品質は低下する。このため本発明者らは、レーザー回折法により消石灰粒子の体積粒度分布を測定することとした。体積粒度分布における粒径が1.0μm以下の微細な消石灰粒子の累積体積が20%を超えると、それを原料として用いた時に紡錘状の軽質炭酸カルシウムが生成される。この生成物である軽質炭酸カルシウムには、粗粒の粒子が混在し、粒径も不均一であるため、塗工用顔料に用いた場合には品質が劣る。従って、粒径が1.0μm以下の消石灰粒子の累積体積は20%以下とするのが好ましい。1.0μm以下の消石灰粒子の累積体積は、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。また、消石灰粒子の粒度分布をシャープにすることで、炭酸化反応が均一になり、軽質炭酸カルシウムの粒子径をより均一にすることができる。
【0024】
微細な粒子の混入の少ない粒径の均一な消石灰を生成するためには、生石灰と消和水とを混合する混合機が、混合物あるいは反応物を浮遊拡散効果で3次元的に流動・攪拌できる構造を有していることが好ましい。具体的には、混合容器自体が回転するミキサおよび容器と攪拌羽根との隙間が少ないミキサが挙げられる。これらのミキサを用いることで、攪拌時にデッドスペースが生じず、常に混合物が流動するため、生石灰に消和水を添加した際に水が局在化せず、生成した消石灰の凝集を防止することができ、微細粒子および粗大粒子の少ない均一な消石灰粒子を得ることができる。混合機内の浮遊拡散効果が低いと、生石灰に消和水を添加した際に水が局在化するおそれがあるため、微細な消石灰が多く生成し、得られる軽質炭酸カルシウムの形状が紡錘状になり、紙に塗被すると平滑性、光沢発現性などの品質が低下する場合がある。
【0025】
浮遊拡散効果を高めるためには、混合機での混合が攪拌羽根回転によって行なわれる場合は、該攪拌羽根回転の周速を0.5m/s以上とする必要がある。該攪拌羽根回転の周速は0.8m/s以上であることが好まく、1.5m/s以上にすることがさらに好ましい。また、混合機での混合が容器回転によって行なわれる場合は、該容器回転の周速が0.2m/s以上である必要がある。該容器回転の周速は0.4m/s以上であることが好ましい。さらに、分散混合用のせん断用攪拌羽根を設けることで、せん断効果を向上させ、微細粒子および粗大粒子の少ないより均一な消石灰粒子を得ることができる。
【0026】
連続方式に好適な混合機としては、混合機内の反応物を循環させるために送り機構と戻り機構を有した拡散用攪拌羽根を用い、さらにスキ型ショベル羽根、鋸歯状ショベル羽根などの特殊攪拌羽根を用いることで、より浮遊拡散効果が得られるので好ましい。攪拌羽根周速を2.0m/s以上とすることで、生石灰と水とを均一に混合でき、消石灰粒子の凝集を防止することができる。また、混合機を1機だけではなく、2機以上用いてもよい。混合機を2機以上用いることで、個々の混合機の攪拌周速、滞留時間を変えることができ、粗大粒子が少ないより好適な消石灰を得ることができる。
【0027】
生石灰の平均の大きさが5mm以下の場合、生石灰に添加する消和水温度は、低温であると消化反応が急激に進行し、得られる消石灰粒子の粒度分布の幅が広くなる。そのため、分級、粉砕工程を設ける場合に、作業に対する負荷が大きくなり、分級、粉砕設備にかかるコストが増大する。従って、消加水温度は40℃以上とするのが好ましく、60℃以上とするのがさらに好ましい。
生石灰の平均の大きさが5mmを超える場合は、生石灰に添加する消和水温度は、特に限定はなく、20℃前後の常温のものを用いても構わない。
【0028】
生石灰と消和水とを均一に混合するため、消和水の添加口は、1箇所ではなく、2箇所以上設けることが好ましい。また、消和水の添加方法としては、ノズル方式だけでなく、消和水を広範囲に噴霧できるスプレー方式を用いることも可能である。特に、粉末状生石灰や消和反応途中のものは、スプレー方式を用いることで、消和水の局在化を防止できるので好ましい。
バッチ方式の好適な消和水の添加方法としては、消和水の添加は一括で行うのではなく、分割添加または連続的に5〜30分程度の時間をかけて添加する方が好ましい。連続方式の好適な消和水の添加方法としては、生石灰をミキサの一方の端に供給し、これを混合・攪拌しつつ他方の端に移動させるまでの間にミキサ上に複数の消和水供給口を設け、さらにミキサ出口に近い供給口は、スプレー方式とするのがよい。
【0029】
生石灰と消和水を混合する時間としては、特に制限はないが、規定量の消和水を添加した後、1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上、混合機内で攪拌するのがよい。生産性を考慮すると混合時間は8〜15分程度が好ましい。
【0030】
このようにして得られた消石灰をそのまま炭酸化反応に供することもできるが、粗大粒子を除去すれば、炭酸化反応が均一になり、軽質炭酸カルシウムの粒径をより均一にすることができるようになる。消石灰粒子の粒径は、150μm以下とするのが好ましく、75μm以下とするのがより好ましく、50μm以下とするのがさらに好ましい。
【0031】
粗大消石灰粒子を除去する方法としては、遠心分離式の分級機、振動スクリーン、スクリーン分級機などが挙げられる。分級機などで篩い分けされた粗大消石灰粒子は、粉砕機で粉砕し、分級工程へ戻す分級・粉砕閉回路とすることも可能である。分級・粉砕工程は、乾式または湿式のどちらの方式を用いてもよい。粉砕機での消石灰粒子の過粉砕は、得られる軽質炭酸カルシウムが紡錘状になり、品質低下の要因となるため、防止する必要がある。
【0032】
炭酸化に供する消石灰スラリーの固形分濃度は、5質量%未満とすると、生産効率が低下し、40質量%を超えると微細な軽質炭酸カルシウムが生成されて、粘度も上昇して、操業性が劣る。従って、消石灰スラリーの固形分濃度は5〜40質量%であることが好ましい。消石灰スラリーの固形分濃度のより好ましい下限は8質量%であり、より好ましい上限は20質量%である。
【0033】
また、炭酸化開始時の消石灰スラリー温度は、生成物である軽質炭酸カルシウムの結晶形状に影響を及ぼすため、調整する必要がある。炭酸化開始温度が20℃未満であると、炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスを吹き込んだ際、微細な針状結晶が凝集したものになり、一方、50℃を超えると針状と紡錘状のものが混在して、均一な粒径の炭酸カルシウム粒子が形成されず、塗工紙品質が発現しないおそれがある。従って、針状粒子を得るためには、炭酸化開始温度は20〜50℃であることが望ましい。
【0034】
炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスの吹き込み量は、特に制限はないが、結晶形状の点から、反応開始前の消石灰1kg当たり100%炭酸ガス(1気圧、20℃換算)を10L/min以下とするのが好ましく、5L/min以下とすることがより好ましい。10L/minを超えると紡錘状あるいは凝集状の炭酸カルシウム粒子が形成され、塗工紙品質が発現しないおそれがある。生産性の点からは、1.5L/min以上とするのが好ましい。
【0035】
炭酸化反応はバッチ式でも連続式でもどちらでもよく、炭酸化反応槽も炭酸ガスを吹き込むことができればよい。バッチ式の反応槽として、円筒型または円筒で下部のみ円錐になっている円筒コーン型などの反応槽を用いて、炭酸ガスを反応槽下部から吹き込むのが効率の点から好ましい。さらに、半回分式反応槽の下部の円錐に多数の穴をあけることで、炭酸ガスが微細な気泡となり、これらの微細な泡が消石灰スラリーと接触するので、効率的かつ均一に反応させることができる。
【0036】
また、反応槽に攪拌機を備え、攪拌しながら炭酸化を行うことにより、炭酸ガスが微細になり、焼成物懸濁液との接触が良くなり、反応が均一かつ効率的に行われる。攪拌機の攪拌周速としては、2.0m/s以上であるのが好ましく、さらに好ましいのは2.5m/s以上である。攪拌機としては、一軸または二軸型のタンク用攪拌機、コーレスミキサ、高速攪拌式ディスパーザーなどを用いることができる。さらに反応槽中に邪魔板を設置することで、消石灰スラリーのせん断力を高めることができる。
【0037】
炭酸化反応前の消石灰スラリーに種晶を添加してもよい。種晶としてアラゴナイト系針状軽質炭酸カルシウムを予め添加しておくことで、類似の針状結晶が効率よく生成される。種晶の添加率は、水酸化カルシウム:アラゴナイト系針状軽質炭酸カルシウム=99.7:0.3〜95:5となるようにするのが好ましい。
【0038】
炭酸化反応の炭酸ガス含有ガスの好適なものとしては、二酸化炭素を含有する混合ガス、例えば、石灰石焼成排ガス、パルプ製造プラントの石灰焼成排ガス、セメント製造キルン排ガス、発電ボイラー排ガス、ゴミ焼却排ガスなどが挙げられる。炭酸ガス含有ガスとして上記排ガスを用いる場合、排ガス中の石灰石、石灰、硫黄酸化物、未燃カーボン等のダストをバグフィルター、電気集塵機、乾式スクラバー、湿式スクラバーもしくはこれらの組合せを用いることによって排ガスを浄化することが好ましい。
【0039】
炭酸カルシウムスラリーを塗被液用顔料として用いるためには、脱水して脱水組成物とする脱水工程と、該脱水工程により得られる脱水組成物に水分を加えてスラリー状の分散組成物とする分散工程と、所望の粒径に調整する粉砕工程を備えてもよい。
【0040】
脱水工程は、濾過、遠心分離、加圧脱水、圧搾などの操作により、固形分濃度70%程度まで脱水を行うことができる。好適な脱水装置としては、フィルタープレス、ベルトプレスなどがある。脱水工程後の脱水ケーキの固形分濃度が低い場合は、乾燥工程を付加して所望の固形分濃度まで上げることができる。乾燥機としては、ロータリードライヤー、ディスクドライヤー気流乾燥機、流動乾燥機などがある。また、脱水工程と乾燥工程が一体となった乾燥機能付きフィルタープレスを用いることもできる。
【0041】
なお、軽質炭酸カルシウムを本発明範囲の粒径とするために脱水工程後に分散工程および粉砕工程を設けることが好ましいが、分散処理後の平均粒子が所望の平均粒径の範囲にある場合、粉砕を行わずに、そのまま塗工用顔料として使用してもよい。
【0042】
消石灰の製造方法としては、乾式消和法の他に、理論水和量を大きく超える量の水の存在下で消和を行い、消石灰スラリーの状態で得られる湿式消和法を用いることもできる。湿式消和法で製造された消石灰粒子の粒径は1μm以下の微細な粒子が多く、粗大な粒子も混在するため、本発明の軽質炭酸カルシウム粒子を得るためには、粗大消石灰粒子および微細消石灰粒子を除去する必要がある。
【0043】
粗大消石灰粒子を除去する方法としては、振動スクリーン、スクリーン分級機などが挙げられる。振動スクリーンなどを通過した微細消石灰粒子を含む消石灰スラリーは、遠心分離機、サイクロン型分級機など用いて、微細消石灰粒子を除去することができる。
【0044】
軽質炭酸カルシウムの配合量は特に制約されるものではないが、塗被液に含まれる全顔料の5質量%以上、好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。本発明の軽質炭酸カルシウムは光沢発現性に優れるため、光沢発現を目的として一般によく使用されるカオリンの配合量を減ずることができ、加熱ドラムでの乾燥において水分の通過性が向上する。これにより、白紙光沢、印刷光沢、光沢ムラ、ピンホール等の品質が良好で、高い速度での生産も可能となる。
【0045】
(併用可能な顔料)
本発明に使用する顔料としては、本発明で規定する軽質炭酸カルシウム以外に、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ、サチンホワイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、プラスチックピグメント等の無機系あるいは有機系顔料の中から、1種類又は2種類以上を適宜選択して使用する。
【0046】
[接着剤]
本発明に使用する接着剤としては、カゼイン、大豆蛋白等の蛋白系、酸化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉系、大豆蛋白等の蛋白系、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系、ポリビニルアルコール等の合成物、スチレン・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等の合成ゴム系、酢酸ビニル系共重合体、アクリル系共重合体等のビニルポリマー系の中から、1種類又は2種類以上を適宜選択して使用することができるが、ドラム離型性に優れるカゼインを選択することが好ましい。
【0047】
[助剤]
本発明に使用する助剤としては、ポリエチレンエマルジョン、脂肪酸の塩類やその誘導体、マイクロクリスタリンワックス等の離型剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、粘性改良剤、着色剤、潤滑剤、耐水化剤等の中から、1種類又は2種類以上を適宜選択して使用することができる。
【0048】
[原紙]
本発明に使用する原紙としては、特に限定するものではなく、一般的にキャスト塗被用に使用される酸性紙又は中性紙であればよく、また、原紙の片面又は両面に予備塗被(下塗り塗被)された塗被紙であってもよいが、キャスト塗被層中の水分又は湿潤液中の水分の蒸発乾燥を考慮すると、透気度の低い原紙が好ましい。原紙の坪量は、一般的には、30〜400g/m程度のものを使用することができる。
【0049】
[塗被および仕上げ]
キャスト塗被液は、一般的に固形分濃度を20〜70質量%程度に調製し、前記原紙上に乾燥重量で10〜50g/m、より好ましくは20〜30g/mになるように塗被、乾燥する。塗被層を形成する装置としては、ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、スプレーコーター等の従来公知の塗被装置の中から適宜選択して使用することができる。また、リウェットキャスト法では、塗被層を湿潤状態から一旦乾燥させることになるが、湿潤塗被層を乾燥する方法としては、特に限定するものではなく、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥等の各種方式が採用できる。
【0050】
形成された塗被層は、湿潤可塑状態にある間に鏡面を有する加熱ドラムに圧接、乾燥させて強光沢仕上げすることになる。その製造方法としては、ウェットキャスト法、リウェットキャスト法、ゲル化キャスト法の従来公知の製造方法の中から適宜選択して使用することができるが、特にウェットキャスト法、ゲル化キャスト法において本発明の効果である高い生産速度を得られ易く好ましい。
【0051】
キャスト塗被紙の生産性を向上させる方法として、キャスト塗被層の塗被量を減らして、乾燥時に蒸発せしめる水分量を少なくする方法がある。特に、ウェットキャスト法およびゲル化キャスト法において顕著な効果が見られる。まず、顔料と接着剤を主成分とする下塗り塗被層を原紙に塗被し、これを乾燥または半乾燥した上に、キャスト塗被層を設けることで、下塗り塗被層による原紙のピンホールやパルプ繊維の凹凸を平滑化できるので、キャスト塗被層の塗被量を減らしても十分な平滑性と強光沢を有するキャスト塗被紙を効率よく得ることが可能となる。特に、下塗り塗被層の塗被量を多くしたり、二層以上の多層からなる下塗り塗被層を設けることで、キャスト塗被層の塗被量を大幅に減らすことが可能となるため、蒸発水分量を大幅に減らすことが可能となり、生産性を向上させることができる。本発明の下塗り塗被層の顔料として、本発明で規定する針状軽質炭酸カルシウムを使用することで、白紙光沢、印刷光沢、光沢ムラ、ピンホール等の品質が良好になるので、好ましい。軽質炭酸カルシウムの配合量は、塗被液に含まれる全顔料の5質量%以上、好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。
【0052】
リウェットキャスト法で用いられる再湿潤液については、特に限定されるものではないが、一般に離型剤として、例えば、ポリエチレンエマルジョン、脂肪酸の塩類やその誘導体、マイクロクリスタリンワックス、ロート油などの水に溶解または分散させた液が使用される。また、ヘキサメタリング酸ソーダ等の燐酸塩や有機酸、有機酸の塩類等を乾燥塗被層の可塑化を促進させる目的で併用することも可能である。なお、塗被層を再湿潤する前にスーパーカレンダー、ブラシ掛け等の平滑化処理を行うこともできる。
【0053】
ゲル化キャスト法で用いられるゲル化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、蟻酸、酢酸、クエン酸、乳酸、塩酸、硫酸、炭酸、ホウ酸などの酸、およびこれらのカルシウム、亜鉛、バリウム、鉛、カリウム、ナトリウム、カドミウム、アルミニウム等との塩、およびほう砂等が挙げられる。
【0054】
なお、本発明に使用する加熱ドラムとしては、鋼材や鋳物等から成るドラム本体の表面に鏡面状に研磨仕上げされたクロムメッキ層を有する一般的なキャストドラムであればよく、クロムメッキ層の下地にニッケルメッキ層等の特殊層を設けたものであってもよい。
【実施例】
【0055】
以下に、具体例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらによって制約を受けるものではない。なお、実施例および比較例において%および部とあるものはすべて質量%および質量部を示す。
【0056】
1.ゲル化キャスト塗被紙の作成
実施例1
(軽質炭酸カルシウムの調製)
混合機としてチョッパー羽根を取外し、全てをショベル羽根にした連続式プロシェアミキサWA150型(大平洋機工社製)を用いて、混合機の一端から工業用生石灰(CO含有率0.3%)を4kg/min投入し、他端から消石灰が排出されるまでの滞留時間を8分とし、ショベル羽根周速3.0m/s、30℃の消和水を2.58kg/minをノズル方式で2箇所から添加した。得られた消石灰をカットポイント35μmで分級した後、35℃の水と混合し10%消石灰スラリー10kgを調製した。攪拌周速5.0m/s、炭酸/空気混合ガス(ガス濃度20%)を16L/minの流量でpH=7〜8になるまで炭酸化し、軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。
前記炭酸カルシウムスラリーをフィルタープレス・ドライヤーロールフィット(株式会社宇野澤組鐵工所製)により脱水・操作を行い、固形分濃度73%のケーキを得た。次いで、インテンシブミキサを用いて軽質炭酸カルシウムに対し1.0%ポリアクリル酸ソーダ分散剤(商品名:アロンT−50、東亜合成社製)を加えて分散し、軽質炭酸カルシウムスラリーを調製した。さらに、上記軽質炭酸カルシウムスラリーを、解砕メディアとして直径1.0〜1.4mmのガラスビーズを用いてサンドグラインダーで湿式粉砕処理を60分間行い、固形分濃度71%の顔料評価用軽質炭酸カルシウムスラリーを調製した。
【0057】
(キャスト用塗被液の調製)
カオリン(商品名:UW−90、BASF社製)55部、前記軽質炭酸カルシウム45部(固形分換算)、ポリアクリル酸ナトリウム0.5部をコーレス分散機を用いて水中に分散し、固形分濃度65%の顔料スラリーを調成した。このスラリーに消泡剤としてトリブチルフォスフェート0.5部、離型剤としてステアリン酸アンモニウム1.0部、接着剤としてアンモニアを用いて溶解した15%カゼイン水溶液8部(固形分)および、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス18部(固形分)を加え、固形分濃度が50%のキャスト用塗被液を調製した。
【0058】
(原紙の作成)
酸素−オゾン−水酸化ナトリウム−過酸化水素−二酸化塩素からなる工程で多段漂白されたLBKP(CSF430ml)85%と、酸素−オゾン−水酸化ナトリウム−過酸化水素−二酸化塩素からなる工程で多段漂白されたNBKP(CSF450ml)15%とからなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−121−6S、奥多摩工業社製)を原紙灰分が10%となるように添加した後、パルプ固形分に対して硫酸アルミニウム0.5%、カチオン澱粉(商品名:エースK−100、王子コーンスターチ社製)0.5%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(商品名:サイズパインK−287、荒川化学社製)0.1%、ポリアクリルアミド(商品名:リアライザーR−300、ソーマル社製)0.05%を順次添加し、紙料を調製した。得られた紙料をオントップツインワイヤー抄紙機で抄紙し、さらにゲートロールサイズプレス装置で酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)を両面で1.5g/m(固形分)塗布・乾燥し、マシンカレンダーで平滑化処理を施して実量70g/mの原紙を得た。
【0059】
(キャスト塗被紙の作成)
前記原紙上にロールコーターを用いて、乾燥重量で20g/mになるように前記塗被液を片面に塗被し、次いで、ゲル化液(0.5%の蟻酸カルシウム水溶液)に接触させて塗被層をゲル化した。この塗被層を、表面温度98℃のキャストドラムに圧接、乾燥した後、ドラムから剥離することによってキャスト塗被紙を得た。
【0060】
実施例2
(軽質炭酸カルシウムの調製)
実施例1において、得られた消石灰をカットポイント100μmで分級し、45℃の水で混合した以外は、実施例1と同様にして軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。
【0061】
(キャスト用塗被液の調製およびキャスト塗被紙の作成)
実施例1のキャスト用塗被紙の調製において、前記軽質炭酸カルシウムを使用した以外は、実施例1と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0062】
実施例3
(軽質炭酸カルシウムの調製)
攪拌機付容器に60℃の消和水9kgを仕込み、攪拌しながら工業用生石灰(CO含有率0.3%)を1kg添加して、120分間消化した。得られた消石灰を330メッシュ(45μm)の篩で分級した後、遠心分離機を用いて、微粒スラリーと粗粒スラリーに分離した。分離した粗粒消石灰スラリーを40℃まで冷却し、12%の消石灰スラリー10kgを調製した。次に、消石灰スラリーに種結晶として針状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP123CS、奥多摩工業社製)を固形分換算で消石灰:針状軽質炭酸カルシウム=99:1となる比率で添加した。攪拌周速5.0m/s、炭酸ガス(ガス濃度100%)を12L/minの流量でpH=7〜8となるまで炭酸化させ、軽質炭酸カルシウムを得た。
【0063】
(キャスト用塗被液の調製およびキャスト塗被紙の作成)
実施例1のキャスト用塗被紙の調製において、前記軽質炭酸カルシウムを使用した以外は、実施例1と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0064】
比較例1
実施例1のキャスト用塗被液の調製において、顔料をカオリン(商品名:UW−90、前出)100部とした以外は、実施例1と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0065】
比較例2
実施例1のキャスト用塗被液の調製において、実施例1の軽質炭酸カルシウムを市販柱状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP123CS、奥多摩工業製)とした以外は、実施例1と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0066】
比較例3
実施例1のキャスト用塗被液の調製において、実施例1の軽質炭酸カルシウムを市販立方状軽質炭酸カルシウム(商品名:ブリリアントS15、白石カルシウム社製)とした以外は、実施例1と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0067】
比較例4
実施例1のキャスト用塗被紙の調製において、実施例1の軽質炭酸カルシウムを市販紡錘状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP121−7C、奥多摩工業社製)とした以外は、実施例1と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0068】
2.ウェットキャスト塗被紙の作成
実施例4
(下塗り塗被液の調製)
カオリン(商品名:UW−90、BASF社製)50部、実施例1で調製した軽質炭酸カルシウム50部(固形分換算)、ポリアクリル酸ナトリウム0.5部をコーレス分散機を用いて水中に分散し、固形分濃度65%の顔料スラリーを調成した。このスラリーに接着剤として酸化澱粉4部およびスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス15部(固形分)を加え、固形分濃度が60%の下塗り塗被液を調製した。
【0069】
(キャスト用塗被液の調製)
カオリン(商品名:UW−90、BASF社製)55部、実施例1で調製した軽質炭酸カルシウム45部(固形分換算)、ポリアクリル酸ナトリウム0.5部をコーレス分散機を用いて水中に分散し、固形分濃度65%の顔料スラリーを調成した。このスラリーに離型剤としてステアリン酸アンモニウム1.0部、接着剤としてアンモニアを用いて溶解した15%カゼイン水溶液10部(固形分)および、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス15部(固形分)を加え、固形分濃度が54%のキャスト用塗被液を調製した。
【0070】
(原紙の作成)
酸素−オゾン−水酸化ナトリウム−過酸化水素−二酸化塩素からなる工程で多段漂白されたLBKP(CSF430ml)85%と、酸素−オゾン−水酸化ナトリウム−過酸化水素−二酸化塩素からなる工程で多段漂白されたNBKP(CSF450ml)15%とからなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−121−6S、奥多摩工業社製)を原紙灰分が10%となるように添加した後、パルプ固形分に対して硫酸アルミニウム0.5%、カチオン澱粉(商品名:エースK−100、王子コーンスターチ社製)0.5%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(商品名:サイズパインK−287、荒川化学社製)0.1%、ポリアクリルアミド(商品名:リアライザーR−300、ソーマル社製)0.05%を順次添加し、紙料を調製した。得られた紙料をオントップツインワイヤー抄紙機で抄紙し、さらにゲートロールサイズプレス装置で酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)を両面で1.5g/m(固形分)塗布・乾燥し、マシンカレンダーで平滑化処理を施して実量88g/mの原紙を得た。
【0071】
(キャスト塗被紙の作成)
前記原紙上にブレードコーターを用いて、乾燥重量で12g/mになるように前記下塗り塗被液を片面に塗被、乾燥した。次にこの下塗り塗被層上に、上記キャスト塗被紙をロールコーターで乾燥重量が14g/mになるように塗被し、直ちにこの紙をプレスロールで表面温度が80℃のキャストドラムに圧接、乾燥後、ドラムから離型してキャスト塗被紙を得た。
【0072】
実施例5
実施例4の下塗り塗被液の調製において、実施例4の軽質炭酸カルシウムを市販柱状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP123CS、奥多摩工業製)とした以外は、実施例4と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0073】
実施例6
実施例4の下塗り塗被液の調製において、実施例4の軽質炭酸カルシウムを市販紡錘状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP121−7C、奥多摩工業社製)とした以外は、実施例4と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0074】
実施例7
実施例4のキャスト用塗被液の調製において、実施例4の軽質炭酸カルシウムを実施例2の軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例4と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0075】
実施例8
実施例4のキャスト用塗被液の調製において、実施例4の軽質炭酸カルシウムを実施例3の軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例4と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0076】
比較例5
実施例5のキャスト用塗被液の調製において、顔料をカオリン(商品名:UW−90、前出)100部とした以外は、実施例5と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0077】
比較例6
実施例5のキャスト用塗被液の調製において、実施例5の軽質炭酸カルシウムを市販柱状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP123CS、奥多摩工業製)とした以外は、実施例5と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0078】
比較例7
実施例5のキャスト用塗被液の調製において、実施例5の軽質炭酸カルシウムを市販立方状軽質炭酸カルシウム(商品名:ブリリアントS15、白石カルシウム社製)とした以外は、実施例5と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0079】
比較例8
実施例5のキャスト用塗被液の調製において、実施例5の軽質炭酸カルシウムを市販紡錘状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP121−7C、奥多摩工業社製)とした以外は、実施例5と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0080】
3.リウェットキャスト塗被紙の作成
実施例9
(キャスト用塗被液の調製)
カオリン(商品名:UW−90、BASF社製)55部、実施例1で調製した軽質炭酸カルシウム45部(固形分換算)、ポリアクリル酸ナトリウム0.5部をコーレス分散機を用いて水中に分散し、固形分濃度65%の顔料スラリーを調成した。このスラリーに離型剤としてステアリン酸アンモニウム1.0部、接着剤としてアンモニアを用いて溶解した15%カゼイン水溶液8部(固形分)および、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス18部(固形分)を加え、固形分濃度が45%のキャスト用塗被液を調製した。
【0081】
(原紙の作成)
酸素−オゾン−水酸化ナトリウム−過酸化水素−二酸化塩素からなる工程で多段漂白されたLBKP(CSF430ml)85%と、酸素−オゾン−水酸化ナトリウム−過酸化水素−二酸化塩素からなる工程で多段漂白されたNBKP(CSF450ml)15%とからなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−121−6S、奥多摩工業社製)を原紙灰分が10%となるように添加した後、パルプ固形分に対して硫酸アルミニウム0.5%、カチオン澱粉(商品名:エースK−100、王子コーンスターチ社製)0.5%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(商品名:サイズパインK−287、荒川化学社製)0.1%、ポリアクリルアミド(商品名:リアライザーR−300、ソーマル社製)0.05%を順次添加し、紙料を調製した。得られた紙料をオントップツインワイヤー抄紙機で抄紙し、さらにゲートロールサイズプレス装置で酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)を両面で1.5g/m(固形分)塗布・乾燥し、マシンカレンダーで平滑化処理を施して実量70g/mの原紙を得た。
【0082】
(キャスト塗被紙の作成)
前記原紙上にエアーナイフコーターを用いて、乾燥重量で20g/mになるように前記下塗り塗被液を片面に塗被、乾燥した。次にこの塗被紙を、ポリエチレンエマルジョン水溶液1%、クエン酸ナトリウム1%からなる再湿潤液によって塗被層表面を再湿潤した後、表面温度が105℃のキャストドラムに圧接、乾燥したのちドラムから剥離することによってキャスト塗被紙を得た。
【0083】
実施例10
実施例9のキャスト塗被液の調製において、実施例1の軽質炭酸カルシウムを実施例2の軽質炭酸カルシウムを使用した以外は、実施例9と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0084】
実施例11
実施例9のキャスト塗被液の調製において、実施例1の軽質炭酸カルシウムを実施例3の軽質炭酸カルシウムを使用した以外は、実施例9と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0085】
比較例9
実施例9のキャスト用塗被液の調製において、顔料をカオリン(商品名:UW−90、前出)100部とした以外は、実施例9と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0086】
比較例10
実施例9のキャスト用塗被液の調製において、実施例9の軽質炭酸カルシウムを市販柱状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP123CS、奥多摩工業製)とした以外は、実施例9と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0087】
比較例11
実施例9のキャスト用塗被液の調製において、実施例1の軽質炭酸カルシウムを市販立方状軽質炭酸カルシウム(商品名:ブリリアントS15、白石カルシウム社製)とした以外は、実施例9と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0088】
比較例12
実施例9のキャスト用塗被紙の調製において、実施例9の軽質炭酸カルシウムを市販紡錘状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP121−7C、奥多摩工業社製)とした以外は、実施例9と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0089】
各実施例および比較例で得られたキャスト塗被紙を、下記の方法で評価し、その結果を表1〜3に示した。なお、表1はゲル化キャスト法の実施例および比較例を示し、表2はリウェットキャスト法の実施例および比較例を示し、表2はウェットキャスト法の実施例および比較例を示す。
【0090】
(粒径測定)
レーザー回折法(日機装社製マイクロトラックHRAX−100)による粒度分布を測定した。累積体積が10%、50%、90%に相当する粒径をD10、D50、D90として求めた。
参考までに、X線透過式粒度分布測定装置(マイクロメリテックス社製セディグラフ5100)による粒度分布も測定した。累積体積が10%、50%、90%に相当する粒径をd10、d50、d90として求めたが、本発明例と比較例のd10が小さく、測定範囲外であった。
【0091】
(白紙光沢度)
JIS P8142に準拠して、75度における白紙面の光沢度を測定した。
【0092】
(光沢ムラ)
キャスト塗被紙表面の光沢ムラを以下の基準に従って、目視で評価した。
◎:光沢ムラが見られない。
○:光沢ムラが僅かに見られるが、実用上問題無い。
△:光沢ムラが見られ、実用上問題がある。
×:光沢ムラが多く見られる。
【0093】
(ピンホール)
キャスト塗被紙表面のピンホールを実体顕微鏡で観察し、以下の基準にしたがって判定した。
○:1cm中にピンホールが10個未満である。
△:1cm中にピンホールが10〜50個である。
×:1cm中にピンホールが50個以上である。
【0094】
(生産速度)
キャスト塗被紙を作成するにあたり、ドラムピックが発生せず、安定して操業することができる速度(m/min)を示した。
【0095】
(印刷光沢度)
RI印刷機で、印刷インキ(商品名:FUSION−G 墨、Sタイプ、大日本インキ化学工業社製)0.6cc使用して印刷を行い、光沢度計(GM−26D、村上色彩研究所製)を用いて60度光沢度を測定した。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

表1〜3から明らかなように、本発明により、白紙光沢、印刷光沢に優れ、光沢ムラやピンホールを解消し、かつ高い速度での生産を実現するキャスト塗被紙を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙上に顔料と接着剤を主成分とする塗被液を塗被した後、塗被層が湿潤状態にある間に鏡面を有する加熱ドラムに圧接、乾燥させて強光沢仕上げするキャスト塗被紙において、前記顔料中に針状の軽質炭酸カルシウムを含有し、該軽質炭酸カルシウムのレーザー回折法による粒度分布曲線の50体積%粒子径(D50)が0.2〜0.7μmであり、かつ90体積%の粒子径(D90)と10体積%の粒子径(D10)の比(D90/D10)が8以下であることを特徴とするキャスト塗被紙。
【請求項2】
軽質炭酸カルシウムは、粒度分布曲線の50体積%の粒子径(D50)が0.3〜0.6μmであり、かつ90体積%の粒子径(D90)と10体積%の粒子径(D10)の比(D90/D10)が6以下であることを特徴とする請求項1記載のキャスト塗被紙。
【請求項3】
軽質炭酸カルシウムは、生石灰に対するモル比が2.5以下の範囲で消和水を添加し混合することにより消石灰を得る工程(A)、該消石灰と水とを混合することにより消石灰を得る工程(B)、および該消石灰に二酸化炭素含有ガスを吹き込み炭酸化する工程(C)を経て製造されることを特徴とする請求項1、2のいずれか一項記載のキャスト塗被紙。

【公開番号】特開2013−67923(P2013−67923A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208860(P2011−208860)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000122298)王子ホールディングス株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】