説明

キャタピラのゴム金属分離装置及びゴム金属分離方法

【課題】 無端のゴム状帯8中にその幅方向に延びる金属からなる芯金10を複数個一定ピッチを以て横並びして埋入したところの廃棄されるキャタピラ6のゴム状帯8から芯金10を分離する処理を容易に為し得るようにする。
【解決手段】一部が切断されて端ができたキャタピラ6を載せる台部4と、台部4の先端より稍前方にて分離用刃16を台部4表面よりキャタピラ6の厚さ以上高い位置と台部4の表面より低い位置との間で上下動させる分離用刃上下動機構14と、台部4の先端よりも稍後方の位置にて上記端ができたキャタピラ6を押さえるキャタピラ押さえ機構30と、を少なくとも備えたゴム金属分離装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端のゴム状帯中にその幅方向に延びる金属からなる芯金を複数個一定ピッチを以て横並びして埋入したところの廃棄されるキャタピラの上記ゴム状帯から上記芯金を分離する処理をする、或いは無端のゴム状帯中にその長さ方向に延びる金属からなる複数本の補強線を埋入されたところの廃棄されるキャタピラの上記ゴム状帯から上記補強線を分離する処理をする新規なキャタピラのゴム金属分離装置及びキャタピラのゴム金属分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャタピラは無限軌道帯とも称され、パワーシャベル等の建築機械、戦車、農業機械等に使用される。そして、キャタピラとして、ゴム状帯中にその幅方向に延びる金属、一般には鉄からなる芯金を複数個一定ピッチを以て横並びして埋入したものがある。
また、キャタピラとして、ゴム状の無端帯にその長手方向に金属からなる複数本の補強線を埋め込んだものもある。
【特許文献1】特開平5−16843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、キャタピラにも寿命があり、いずれは廃棄処分する必要がある。キャタピラが例えば鉄のみからなるようなものであれば、その鉄を再利用することは容易である。
しかし、ゴムからなる無端帯中に例えば鉄からなる芯金を埋入したタイプのキャタピラ、或いは、ゴム状の無端帯にその長手方向に金属からなる複数本の補強線を埋め込んだタイプのキャタピラを廃棄する場合、ゴムとそれに埋入された芯金を分離することが必要である。というのは、そのように分離すると、ゴムは例えば燃料として使用し、芯金や補強線は鉄材として再利用できるからである。
【0004】
また、芯金や補強線を成す金属とゴムを分離することなく産業廃棄物として廃棄処理することは法律によって禁じられているのである。
しかるに、その分離は非常に難しかった。というのは、従来は手作業でするしか方法が無く、それには非常に強い力が必要であり、能率も非常に悪いからである。
そのため、キャタピラに寿命がきても、産業廃棄物処理業者は事実上処理を引き受けない場合が多く、そのことが非常に大きな問題になっていた。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決すべく為されたものであり、無端のゴム状帯中にその幅方向に延びる金属からなる芯金を複数個一定ピッチを以て横並びして埋入したところの廃棄されるキャタピラの上記ゴム状帯から上記芯金を分離する処理をする、或いは、無端のゴム状帯中にその長さ方向に延びる金属からなる複数本の補強線を埋入されたところの廃棄されるキャタピラの上記ゴム状帯から上記補強線を分離する処理をする新規なキャタピラのゴム金属分離装置及びキャタピラのゴム金属分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明キャタピラのゴム金属分離装置の第1及び第2のものは、一部が切断されて端ができた上記キャタピラを載せる台部と、該台部の先端より稍前方にて分離用刃をその台部表面より上記キャタピラの厚さ以上高い位置と上記台部の表面より低い位置との間で上下動させる分離用刃上下動機構と、上記台部の先端よりも稍後方の位置にて上記端ができた上記キャタピラを押さえるキャタピラ押さえ機構と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
本発明キャタピラのゴム金属分離方法の第1及び第2のものは、廃棄されるキャタピラの一部を切断することにより端をつくり、そのキャタピラを台部に載せて上記台部の先端から上記キャタピラの最も先端部分を突出させ、該キャタピラを押さえた状態で、分離用刃によりそのその先端部分にせん断力を加えてその芯金を上記ゴム状帯から分離する、或いは補強線からゴム状帯を剥ぎ取ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、台部に載せたキャタピラの最も先端部分を台部先端から突出させ、キャタピラ押さえ機構で該キャタピラを押さえた状態で上記分離用刃上下動機構により上記分離用刃を降下させて上から下への力を芯金に加えることによりその芯金を上記ゴム状帯から引き剥がして、或いは補強線からゴム状帯を剥ぎ取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明キャタピラのゴム金属分離装置は、基本的には、一部が切断されて端ができた上記キャタピラを載せる台部と、該台部の先端より稍前方にて分離用刃をその台部表面より上記キャタピラの厚さ以上高い位置と上記台部の表面より低い位置との間で上下動させる分離用刃上下動機構と、上記台部の先端よりも稍後方の位置にて上記端ができた上記キャタピラを押さえるキャタピラ押さえ機構と、を少なくとも備えたキャタピラのゴム金属分離装置を用い、廃棄されるキャタピラの一部を切断することにより端をつくり、そのキャタピラを台部に載せて上記台部の先端から上記キャタピラの最も先端部分を突出させ、該キャタピラを押さえた状態で、分離用刃によりその最も先端部分にせん断力を加えてその芯金を上記ゴム状無端帯から分離する、或いは補強線からゴム状帯を剥ぎ取って分離するものであるが、その分離用刃の上下方向に案内するガイドを設けることが好ましい。
【0009】
というのは、上記分離用刃上下動機構には、分離用刃が芯金に対して力を加えるとき或いはゴム状帯に対して力を加えるとき、その分離用刃と台部との間にゴムが挟まりその分離用刃が先端側に押される方向の力を受けるので、その力によって押されることのないようにすることが、強力なせん断力を得る上で必要だからである。後述する実施例においては、そのようなガイドが設けられている。
また、芯金を突出部を除きゴム無端帯に埋め込んだタイプのキャタピラに対してゴム金属分離をするゴム金属分離装置の場合においては、台部の後方に、芯金1個分離する毎にキャタピラをその芯金配置ピッチ分ずつ前方に送るキャタピラ送り機構を設けるようにすることが能率を高める点で、好ましい。というのは、キャタピラ自身がかなり重いものなので、送るとき要する力が強く、また、送り量を適宜にすることが結構面倒だからである。後述する実施例においては、そのような送り機構が設けられている。
尚、ゴム無端帯中にその長手方向に延びる補強線を埋入したタイプのキャタピラの場合、送り機構は必ずしも必要ではない。
【0010】
上記分離用刃上下動機構、上記キャタピラ押さえ機構及び上記キャタピラ押さえ機構(ゴム無端帯中にその長手方向に延びる補強線を埋入したタイプのキャタピラの場合、必ずしも必要ではない。)は、油圧シリンダーを用いて構成すると好ましい。というのは、必要にして充分な力を得ることが可能であり、しかも、力をかけたり抜いたりする制御性が高いからである。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明を図示実施例に従って詳細に説明する。
図1(A)、(B)及び図2は本発明ゴム金属分離装置の第1の実施例を示すもので、図1(A)は縦断面図、(B)は廃棄されたキャタピラの拡大断面図、図2は背面図である。
図面において、2は筐体で、例えば鉄鋼材からなる。4は台部で、筐体2の下部に設けられており、廃棄され一部が切断されて端が生じたキャタピラ6のその端の近傍を載置する。
【0012】
8はキャタピラ6のゴム状帯で、元々は無限軌道帯(無端帯)であったが、廃棄するために一部が切断されて端がつくられる。これには鉄からなる芯金10が一定ピッチで埋入され、芯金10の突起12、12がゴム状帯8の上面から上側に突出している。この芯金10がゴム状帯8から分離されるのである。
14は分離用刃上下動機構で、分離用刃16を上記台部4の稍前方、例えば4〜10mm程度前方にて上下動させる。18はその分離用刃上下動機構14の油圧シリンダ、20はピストン、22は該ピストン20の外端(下端)に取付けられた刃ホルダーで、両側部に被ガイド片24、24を有している。
【0013】
上記被ガイド片24、24は、上記筐体2の内側面に設けられた上下に延びる溝からなるガイド26、26に嵌合され、刃ホルダー22はその被ガイド片24、24にて、該ガイド26、26により上下方向に案内される。このガイド26、26により上下方向に案内されるようにするのは、分離用刃16が降下してキャタピラ6に剪断力を加えるとき前側に押されて上下動の軌道が前側に狂うことを防止し、以て有効に分離を為し得るようにするためである。
上記分離用刃16は、上記刃ホルダー22に交換可能に取付けられている。交換可能にするのは、芯金10がゴム状無端帯8から分離されるキャタピラ6のタイプ、寸法に対応して交換する必要性と、刃こぼれ等により使用不能になった場合に新品と交換する必要性に応えるためである。
【0014】
30はキャタピラ押さえ機構で、押さえ具32にて台部4上のキャタピラ6を先端から適宜後方(例えば30cm程度後方)にて押さえる。34は該キャタピラ押さえ機構30の油圧シリンダ、36はそのピストンで、上記押さえ具32は該ピストン36の先端(下端)に固定されている。
38は送り機構で、台部4の後方に配置され、キャタピラ6を1ピッチ(芯金10の配置ピッチ)ずつ前方(図1における左方向)に送りをかける。40は該送り機構38のスプロケットホイールであり、図面に現れない油圧モータにより所定角度単位で図1における反時計回り方向に回転する。
【0015】
次に、図1(A)及び図2に示すキャタピラのゴム金属分離装置を用いてのキャタピラのゴム金属分離方法の説明をする。
このキャタピラのゴム金属分離装置は、上記2台の油圧シリンダ18、34及び油圧モータをコントロールすることにより操作する。
(1)先ず、分離用刃上下動機構14及びキャタピラ押さえ機構30を、分離用刃16及び押さえ具32が上方に位置した状態にし、元々は無端だったが一部を切断することにより端ができた廃棄するキャタピラ6のその端の近傍部分を台部2上に載せる。
(2)次に、上記送り機構38のスプロケットホイール40の歯42をキャタピラ6の底部中央の凹部44に嵌めた状態にする。
【0016】
(3)そして、図示しない油圧モータの操作によりキャタピラ6を、前進或いは後退させて、その最も先端側の芯金10のみが台部4から前方に食み出す位置に位置制御する。
(4)上記2台の油圧シリンダ18、34の制御により、押さえ具32でそのキャタピラ6を押さえ、その状態で分離用刃16を降下させて最も先端側の芯金10に剪断力を加える。そして、その芯金10が完全にゴム状帯8から完全に分離されるまで、分離用刃16を降下し続ける。
(5)芯金10が完全に分離した状態になると、上記2台の油圧シリンダ18、34の制御により、分離用刃16を台部4の上面よりずっと高い位置まで上昇させると共に、押さえ具32を上昇させてキャタピラ6を解放する。
【0017】
(6)次に、図示しない油圧モータの操作によりキャタピラ6を、前進させて、その最も先端側の芯金10のみが台部4から前方に食み出す位置に位置制御する。
その後、上記ステップ(4)に戻り、以後、ステップ(4)(5)、(6)の動作を順次繰り返し、芯金10を1個ずつ順次剥がす。
【実施例2】
【0018】
尚、本発明は、ゴム無端帯中にその長手方向に延びる金属からなる補強線を埋入したタイプのキャタピラのゴムと金属との分離にも適用できる。
尚、その場合、基本的には、図1(A)、図2に示したと略同様のキャタピラのゴム金属分離装置を用いて分離することができるが、必ずしも送り機構は必要ではない。
図1(A)、図2に示したキャタピラのゴム金属分離装置から送り機構を除いた機構を用いてゴムと金属との分離は次のように行う。
【0019】
一部を切断して端をつくったキャタピラのその先端を適宜量(数cm〜数十cm)台部4から突出させ、そのキャタピラの突出した部分にカッター16により剪断力を加えて金属からなる補強線からゴム状帯のゴムを剥がして、ゴムと金属からなる補強線との分離を行う。
この場合、カッター16による剪断力を加える際に、台部から突出させるキャタピラの突出量は、ピッチなるものがないので、実施例1におけるような特別の限定はない。試行錯誤で最も好ましい突出量を探し出し、その後は、その探し出した突出量だけ突出させて作業をすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、無端のゴム状帯中にその幅方向に延びる金属からなる芯金を複数個一定ピッチを以て横並びして埋入したところの廃棄されるキャタピラの上記ゴム状無端帯から上記芯金を分離する処理をする、或いは無端のゴム状帯中にその幅方向に延びる金属からなる芯金を複数個一定ピッチを以て横並びして埋入したところの廃棄されるキャタピラの上記ゴム状帯から上記芯金を分離する処理をする、或いは無端のゴム状帯中にその長さ方向に延びる金属からなる複数本の補強線を埋入されたところの廃棄されるキャタピラの上記ゴム状帯から上記補強線を分離する処理をする新規なキャタピラのゴム金属分離装置及びキャタピラのゴム金属分離方法に一般的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)は本発明キャタピラのゴム金属分離装置の第1の実施例の縦断面図、(B)は芯金がゴム状帯から分離されるキャタピラを示す断面図である。
【図2】上記実施例の背面図である。
【符号の説明】
【0022】
4・・・台部、6・・・芯金がゴム状帯から分離されるキャタピラ、
8・・・ゴム状帯、10・・・芯金、12・・・芯金の突起部、
14・・・分離用刃上下動機構、16・・・分離用刃、
30・・・キャタピラ押さえ機構、32・・・押さえ具、
38・・・キャタピラ送り機構、40・・・スプロケットホイール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端のゴム状帯中にその幅方向に延びる金属からなる芯金を複数個一定ピッチを以て横並びして埋入したところの廃棄されるキャタピラの上記ゴム状帯から上記芯金を分離する処理をする芯金分離装置であって、
一部が切断されて端ができた上記キャタピラを載せる台部と、
上記台部の先端より稍前方にて分離用刃をその台部表面より上記キャタピラの厚さ以上高い位置と上記台部の表面より低い位置との間で上下動させる分離用刃上下動機構と、
上記台部の先端よりも稍後方の位置にて上記端ができた上記キャタピラを押さえるキャタピラ押さえ機構と、
を少なくとも備え、
上記台部の先端から上記キャタピラの先端の芯金の在る部分を突出させ、上記キャタピラ押さえ機構で該キャタピラを押さえた状態で上記分離用刃上下動機構により上記分離用刃を降下させてせん断力を芯金に加えてその芯金を上記切断により端が生じたゴム状帯から分離するようにされた
ことを特徴とするキャタピラのゴム金属分離装置。
【請求項2】
無端のゴム状帯中にその幅方向に延びる金属からなる芯金を複数個一定ピッチを以て横並びして埋入したところの廃棄されるキャタピラの上記ゴム状帯から上記芯金を分離する処理をするゴム金属分離方法であって、
廃棄されるキャタピラの一部を切断することにより端をつくり、
そのキャタピラを台部に載せて上記台部の先端から上記キャタピラの最も先端の芯金の在る部分を突出させ、
該キャタピラを押さえた状態で、分離用刃によりその最も先端の芯金の在る部分にせん断力を加えてその芯金を前記ゴム状帯から分離する
ことを特徴とするキャタピラの金属ゴム分離方法。
【請求項3】
無端のゴム状帯中にその長さ方向に延びる金属からなる複数本の補強線を埋入されたところの廃棄されるキャタピラの上記ゴム状帯から上記補強線を分離する処理をするゴム金属分離装置であって、
一部が切断されて端ができた上記キャタピラを載せる台部と、
上記台部の先端より稍前方にて分離用刃をその台部表面より上記キャタピラの厚さ以上高い位置と上記台部の表面より低い位置との間で上下動させる分離用刃上下動機構と、
上記台部の先端よりも稍後方の位置にて上記端ができた上記キャタピラを押さえるキャタピラ押さえ機構と、
を少なくとも備え、
上記台部の先端から上記キャタピラの先端を或る長さ突出させ、上記キャタピラ押さえ機構で該キャタピラを押さえた状態で上記分離用刃上下動機構により上記分離用刃を降下させてせん断力を上記キャタピラに加えてゴム状帯を上記補強線から剥ぎ取って上記ゴム状帯と該補強線とを分離するようにされた
ことを特徴とするキャタピラのゴム金属分離装置。
【請求項4】
無端のゴム状帯中にその長さ方向に延びる金属からなる複数本の補強線を埋入されたところの廃棄されるキャタピラの上記ゴム状帯から上記補強線を分離する処理をするゴム金属分離方法であって、
廃棄されるキャタピラの一部を切断することにより端をつくり、
そのキャタピラを台部に載せて上記台部の先端から上記キャタピラの先端部分を突出させ、
該キャタピラを押さえた状態で、分離用刃によりその台部から突出した部分ににせん断力を加えてそのゴム状帯を補強線から分離する
ことを特徴とするキャタピラの金属ゴム分離方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−44076(P2006−44076A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228647(P2004−228647)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(504298741)
【Fターム(参考)】