説明

キャップの装着装置、取り外し装置、装着方法並びに取り外し方法

【課題】試験管形状を有するチューブの上面に取り付けられた弾性材料からなるキャップを取り外す装置であって、取り外し動作の稼働範囲が小さく、縦横列をなしてラックに収容されるチューブから一度に全てのキャップを取り外すことができるキャップを取り外す装置を提供すること。
【解決方法】本発明のキャップ取り外し装置は、キャップと係合する係合手段と、係合手段を昇降動作させる昇降手段とを備え、係合手段の作動により平面形状が円形である凹部を楕円形となるように変形させて係合するとともに、昇降手段によりキャップを持ち上げることでチューブからキャップを取り外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬、化合物、検体等が入った容器にキャップを着脱するキャップ装着装置、取り外し装置、装着方法、並びに取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
創薬スクリーニング分野、バイオテクノロジー分野等の生化学分野においては、物質の生化学反応テストなどの各種試験が行われる。これらの試験においては、培養や生化学反応を行わせるための液状または粉状等のサンプル試薬や化合物や検体等を収納する容器の運搬・保管は、蒸発・内容物の漏れ(舞い上がり)・ゴミの混入を防止するためにチューブに収納し、その上面開口部をキャップで密封したものを容器(ラック)の縦横に複数規則的に並んだ正方形の孔部(ウェル)に収納されて行われる。
【0003】
図1はラック11を示しており、このラック11ではウェル12が縦8個、横12個備えられている。15に示すチューブは直径8ミリ程度、高さ45ミリ程度の試験管形状をしており、熱可塑性エラストマー等により形成されている。(ここで、熱可塑性エラストマーは、プラスチックとゴムの中間的性質を有する。この性質によりチューブ15は、ゴムのように柔らかく、プラスチックのように加工しやすい性質を有している。)チューブ底面16には図示しない2次元バーコードが貼り付けられており、これにより試薬の種類情報等の管理をすることができる。20はキャップであり、チューブ15の上部開口部に挿入してチューブ15の内容物を閉栓するためのものである。
【0004】
図2は、キャップ20の垂直断面図である。キャップ20は、フランジ部21(鍔部)を有し、高さ4ミリ程度、チューブ15内に挿入できる挿入部22を有する。23はチューブ15の内壁との当接部である。キャップ20の上面中央には円柱形の凹部(以下、キャップ凹部24と称する。)を有しており、全体の形状は帽子を上下ひっくり返した形状となっている。キャップ凹部24は、キャップ凹部24の内壁面の下部付近の肉厚が、上部に比べて薄くなっており(以下、この箇所を内壁凹部25と称する。)、後述するキャップ装着・取り外し装置の係合手段31(32)が挿入された際に係合手段31(32)の鉤部33と該内壁凹部25とが係合する。このキャップ20は樹脂やゴム等の弾性のある材料により形成されており、外力がかかることにより容易に変形させることができる。
【0005】
前述のチューブ15には常時キャップ20が取り付けられており、チューブ15の内容物である試薬等を使用する際には、人手により若しくは取り外し装置によりチューブ15を密封しているキャップ20を取り外す必要がある。先行文献1は、キャップ20の取り外しを自動で行う取り外し装置についての先行技術である。このシステムについて図13を参照に以下に説明する。80はキャップ装着・取り外し装置81と分注装置83とが隣接して備える分注システムを示すものである。この分注システム80は、チューブ15に収納される化合物をマイクロプレート82に分注作業を行うものである。
【0006】
図13に示すキャップ装着・取り外し装置81について図14を参照に以下に説明する。このキャップ装着・取り外し装置81は、キャップ20の保持具85をキャップ凹部に挿入して保持した後、保持具85を傾斜することでチューブ15内部の気体を開放して、ラック11に収納されるチューブ15からキャップ20を取り外すものである。このキャップ装着・取り外し装置81は、キャップ20を上面側より保持する保持具85と、キャップ20とチューブ15の開口部とを位置合わせする位置合わせ機構86と、保持具85を垂直姿勢で及び傾斜姿勢をとりえるようにする保持具傾斜機構87と、保持具85をチューブ15に対して昇降させる保持具昇降機構88とを備える。さらに、キャップを保持具に安定して固定するにはバルブ機構(吸着手段)89により真空吸着する必要がある。
【0007】
このキャップ装着・取り外し装置81ではラック11に縦横に並んで収納されるチューブ15のキャップ20のうち、一列ずつ取り外すものである。このため、キャップ20を保持する保持具85を一列分の個数に対応して備えている(図14においては12個備える)。図15は、保持具傾斜機構87を作動する前後の状態を示す側面図である。図15(a)は保持具傾斜機構88を作動する前であって、保持具85を傾斜する前の状態を示しており、図15(b)は保持具傾斜機構88を作動した後の保持具85がα°傾斜した状態を示す図である。
【特許文献1】特開2005−3423
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の分注システム80ではキャップ装着・取り外し装置81を分注装置83に隣接して備えることから、キャップ装着・取り外し装置81によりチューブ15からキャップ20を取り外した後に分注装置83へと運搬され分注作業が行われる。このため、キャップ20が取り外されているチューブ15にゴミが混入する不具合、チューブ15の内部の粉状化合物が舞う不具合、液状化合物が蒸発する不具合等が生じている。このため、キャップ取り外し後にはラック11を運搬しないように、分注作業が行われる分注装置83上でキャップ20を取り外すことが望まれている。
【0009】
また、従来のキャップ装着・取り外し装置81では、チューブ15に密着するキャップ20を取り外すのに、キャップ20を水平状態から傾斜させることでキャップ20を取り外していた。しかし、このような取り外し方法では、キャップ装着・取り外し装置81の取り外し動作の稼働範囲が広くなるため、狭い面積内に縦横列をなして収納(現在、ラック11が収容できるチューブ15は数96本である。)するチューブ15から一度に全てのキャップ20を取り外すことが困難であり、現状では一列分ずつキャップ20を取り外すしかなかった。このため、取り外したキャップ20を一時他の場所へ保管するか、列ごとに各種処理が行われるのを待って再びチューブ15に装着するまでの間、保持具85により保持し続ける必要があったため、次行程の分注作業の作業時間が長くなってしまう不具合が生じていた。
【0010】
ラック11に収容される全てのチューブ15を一度に取り外すには、96個の機構が密集する狭いスペースにキャップを取り外す機構を納める必要があり、このため、1つ1つがシンプルで、小さくて、高精度な機構であり、駆動源の数自身も少ないことが望まれている。また、96個の係合手段を同時に動作させるには、1個の時に比べて駆動力が96倍要し、設置スペースも96倍要する事となる。また、キャップは縦横整然と並んで備える。さらにラック11はプラスチック成形品であり、ラック11のウェル12はチューブ15と多少の隙間を有するように備えるため、チューブ15の位置がその隙間の分だけ多少位置ずれが生じることがある。これらのことから、一度に複数個の係合手段を動作させるには、係合手段に均等で安定した駆動力を与えて、均等で精密に動作させる必要がある。
【0011】
従来のキャップ装着・取り外し装置81では、キャップ凹部24の大きさより一回り小さい保持具85を挿入した後、確実に固定するため吸着手段89により吸着固定した後、保持具85を傾斜させてキャップ20を取り外している。
【0012】
さらに、従来のキャップ装着・取り外し装置81では、キャップ20を傾斜して取り外す方法を採用することから、保持具85を傾斜すればキャップに当接しやすいように、保持具85の大きさがキャップ凹部24の大きさより一回り小さい大きさとなっている。このため、キャップ凹部24から保持具85を取り外す際に、キャップがつられて引き抜かれる不具合が生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のキャップ装着・取り外し装置は、ラックに収納される試験管形状を有するチューブの上面に取り付けられた弾性材料からなるキャップを取り外す装置であって、キャップ上部の凹部に挿入して、キャップと係合する係合手段と、係合手段を昇降動作させる昇降手段とを備え、係合手段の作動により平面形状が円形の凹部を楕円形となるように変形させて係合するとともに、昇降手段によりキャップを持ち上げることでチューブからキャップを取り外すことができる。また、昇降手段は、チューブを持ちあげるためのものであっても、ラックを降下させるためのものであってもよく、ラックに対してチューブを相対的に昇降動作させるものである。
【0014】
本発明のキャップ装着・取り外し装置は、係合手段が、第一係合部材と第二係合部材とからなり、第一係合部材と第二係合部材とを相反する方向であって水平移動もしくは回動させてキャップと係合することができる。第一係合部材と第二係合部材とを相反する方向であって回動させる機構として、はさみと同様の機構(以下、はさみ機構と称する。)であって、つまり、第一係合部材と第二係合部材とを支軸により貫通して回動可能として、第一係合部材と第二係合部材との一端を押圧する(支持板に向けて押しつける)ために、モータと、モータの回転支軸に連結されるネジ軸とからなる直線移動手段を備えることで可能である。また、直線移動手段としてエアシリンダ等の公知の機構をそなえることが可能である。また、第一係合部材と第二係合部材とを相反する方向であって直線移動させる機構として前述の直線移動手段を第一係合部材と第二係合部材とにそれぞれ備えることにより同期動作して、若しくは一つの直線移動手段によりリンク・カム・歯車等を介して連動して、第一係合部材と第二係合部材を動作させることができる。
【0015】
また、直線移動手段がエアシリンダである場合においても、停止位置が以下の三点備えることにより後述するように把持したキャップの(楕円の長径)を変化させることができる。なお、停止位置の三点とは、待機位置(はさみ機構が閉じた状態)、把持位置(係合部とキャップが当接して、その摩擦力によりチューブとキャップとが落下しない程度の状態)、取り外し位置(把持位置以上に挟み機構が広がってキャップが変形した状態)の三点である。これにより、把持位置と取り外し位置とを一回もしくは複数回往復運動させることで、チューブを確実に取り外すことができる。
【0016】
具体的には、本発明のキャップ装着・取り外し装置は、係合手段が、第一係合部材と、第二係合部材と、第一係合部材と第二係合部材とを貫通して回動可能に支持する支軸と、支軸の周辺もしくは周囲に巻いて備えるとともにその一端を第一係合部材と第二係合部材の一方の側部に、他端を他方の側部に掛設する弾性体と、第一係合部材と第二係合部材とを回動可能に支持する支持板と、第一係合部材と第二係合部材とを作動する可動部材とを備える。このキャップ装着・取り外し装置は、可動部材の作動により第一係合部材と第二係合部材を下方に押付けることで弾性体に抗して第一第二係合部材を回動させてキャップを保持又は取り外し動作をすることができる。
【0017】
第一係合部材と第二係合部材の先端部の凹部分が、第一係合部材と第二係合部材の回動動作によりキャップと当接した際に鉤状つまり、キャップの凹部壁面に備える壁面凹部を引っかける形状となっている。これにより容易にキャップを保持又は取り外し動作をすることができる。
【0018】
ここで、弾性体は、ぜんまいバネ、つるまきバネでもよくまた、第一係合部材と第二係合部材との外周側面にOリングを取り付けることで第一係合部材と第二係合部材とのキャップとの当接部分が重なっていない状態から重なった状態(はさみ形状をなす第一係合部材と第二係合部材とが開いた状態から閉じた状態)となるように力がかかる部材に置き換える事ができる。
【0019】
本発明のキャップの取り外し装置は、多数のキャップを取り外す場合においても前記第一係合部材と前記第二係合部材とを一組として複数組を同一水平面内に備え、前記可動部材により上方から第一係合部材と第二係合部材を押圧することで、第一係合部材と第二係合部材に対して一方向より均等で精度良く駆動力を与えることができる簡素な構造とすることができる。また、複数の駆動源を備えて、また、可動部材を一列ごともしくはエリアごとに区分してそなえることにより一列、若しくはエリアごとに動作させることができる。
【0020】
本発明のキャップの取り外し装置は、精度良く正確な動作を保証するために第一係合部材及び第二係合部材と当接する可動部材の箇所に長溝状の案内手段を備える構成としてもよい。また、支軸にリング状に2つの溝を切って、第一係合部材と第二係合部材とを適度に挟み込むべく溝にCリングを取り付けることにより、第一係合部材と第二係合部材を、ガタを軽減して精度良く動作させることができる。
【0021】
本発明のキャップの取り外し装置により試験管形状を有するチューブの上面に取り付けられた弾性材料からなるキャップを取り外すには、係合手段をキャップ上部の凹部に挿入して、キャップの平面形状が円形の凹部を楕円形となるように変形するように係合し、昇降手段により係合手段を上方へ持ち上げることでキャップを取り外すことができる。ここで、チューブを持ちあげる方法として、キャップごとチューブを持ちあげる方法と、チューブを収納するラックを降下する方法とがある。
【0022】
また、前述の方法によりキャップを取り外す動作を行った後、第一係合部材と第二係合部材とを閉じた状態と開いた状態とで繰り返すことによりキャップの平面形状である楕円の長径の長さを変化させることができ、確実にキャップを取り外すことができる。
【0023】
本発明のキャップの装着装置は、前述のキャップの取り外し装置により取り外されたキャップを再びチューブに装着するものであって、キャップを楕円形となるように保持する係合手段と、保持したキャップをチューブの開口部上方で昇降動作する昇降手段とを備える。このキャップの装着装置では、昇降手段によりキャップをチューブ開口部に挿入するとともに、係合手段によりキャップ形状が楕円から円形となるように保持状態を解除することでキャップをチューブに装着することができる。
【0024】
また、前述の方法によりキャップを取り外されたキャップを再びチューブに装着するために、係合手段により楕円形となるように保持したキャップを、昇降手段によりチューブの開口部上方から降下するとともに、キャップ形状が楕円から円形となるように保持状態を解除することでキャップの取り付けることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のキャップ装着・取り外し装置では、キャップが楕円となるようキャップとチューブとの接触部分に隙間を形成することでくっつき現象を解消・内部気体の開放し、キャップの当接部とチューブの内壁との当接位置を微量ずらすこと、及び、キャップの挿入部が斜度をなすようにしたことにより滑りやすくすることで容易にキャップを取り外すことができる。また、それと共に、チューブを取り外す方向に外力を与えるべくキャップごと持ちあげた事により自重による鉛直下向きの外力がかかり、より容易にキャップを取り外すことができる。この装置によれば、従来例のようにキャップを力ずくで傾斜して取り外すことがないため、小さな駆動力でキャップの脱着が可能であり、繰り返し着脱動作を行ってもキャップやチューブを破損させることが無く、さらに微小なゴミを発生させることも無くキャップを取り外すことができる。
【0026】
複数の係合手段を同一水平面内に備え、上方から押圧するだけで該係合手段が同時に作動することでき、従来の装置と比較して保持具傾斜機構を有さないことから構造がシンプルであり、可動範囲が狭くてよく、駆動軸数(駆動源の数)が少なくなる。これにより複数(96本)のチューブからキャップを一度に取り外すことができる。さらに、複数(96本)のチューブを同時に取り外すことができるので従来装置のように位置決め機構が不要となる。
【0027】
本発明のキャップ装着・取り外し装置では、可動部材に案内手段を備えるため、係合手段を、ガタを軽減して精度良く正確な動作を保証することができる。
【0028】
本発明の第一係合部材と第二係合部材とが重なった状態(はさみ機構を閉じた状態)でキャップに挿入するので、キャップ凹部形状に対して大幅に小さい。これにより、キャップ凹部の内壁に接触することなく第一係合手段等を挿入できる程度に小さいため、従来のようにキャップと当接し、さらに真空吸着して保持することがなく、第一係合部材等を抜き差しする動作により、チューブ内に押し込んでしまう不具合若しくは、真空吸着したことにより真空状態を解除が不十分であったために生じていた、キャップがチューブ開口部から少し浮いて栓が出来ていない不具合を防止できる。
【0029】
分注システムの分注装置の一部をキャップ装着・取り外し装置に置き換えて備えることもでき、この場合、キャップ取り外し後にラックを移動することなく分注作業を行うことができるため、粉状化合物なら舞い上がることなく、液状化合物なら蒸発量を減少することができ、チューブ内にゴミ混入を防止でき、化合物等をチューブからマイクロプレートへ分注作業することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明のキャップ装着・取り外し装置3を含む分注システム1について図3を参照に説明する。この分注システム1は、分注ヘッド2a、2b下部に取り付けられた後述する分注ティップ50によりチューブ15内の液状化合物を一旦吸引して分注台46上にあるマイクロプレート45へ小分けにして移し変えるための装置である。この分注システム1においては、2つの分注ヘッド2a、2bをそれぞれ独立して動作可能に備える。この分注ヘッド2a、2bは分注台46の上方をまたぐ2本の支柱47の間に備えており、分注システム1上部に備えるX軸移動手段40によりX方向に直線移動できる。また、分注ヘッド2a、2bは支柱47内部に備えるY軸移動手段41によりY方向に直線移動可能である。さらに分注ヘッド2a、2b内部には、支柱47に対してZ方向へ移動するためのZ軸移動手段42を備える。
【0031】
図4は、図3中の分注ヘッド2aを示す垂直断面図である。この分注ヘッド2aは、可動基台51を、Y軸移動機構41を介して支柱47に取り付けられている。この分注ヘッド2a内部には、支柱47に対して分注ヘッド2a自身をZ方向へ移動させる場合や、ティップ50を取り付ける場合に基台51に対して可動基台57を昇降動作させるZ軸移動手段42と、ティップ取り外し手段53を作動させるために昇降する昇降手段56を備える。また、この分注ヘッド2a下部には、縦横整列して、下方に突出して管形状を有するティップ装着部54を複数備える。このティップ装着部54はティップ50の開口部に挿入して連結するものである。
【0032】
ティップ取り外し手段53は、縦横(縦8行×横12列)に整列した複数の穴を備える板材55であり、支柱64を介して取り外し用可動部材69に備える。板材55の穴は、ティップ装着部54を貫通しており、昇降手段56の作動によりティップ取り外し手段53を昇降動作した際にティップ装着部54と接触しない程度に大きいものである。
【0033】
昇降手段56は、基台57上に備えるモータ58aとこのモータ58aの回転軸に備えるプーリ59aと、プーリ59bとベルト60aを介して連結するネジ軸61aとからなる。62a、62bはネジ軸61aによる移動を直線方向に案内するための直線案内手段である。
【0034】
このティップ取り外し手段53によりティップ装着部54からティップ50を取り外す手順を以下に説明する。通常時は、板材55は、ティップ装着部54のティップ50と当接する箇所より上方にあり、ティップ取り外し時に昇降手段56を作動して下方へ移動することでティップ50と当接して、ティップ装着部54からティップ50を取り外すことができる。
【0035】
昇降手段56の上方には、分注ヘッド2a全体を昇降動作させるZ軸移動手段42を備える。このZ軸移動手段42は、分注ヘッド2a内に備えるモータ58bと、このモータ58bの回転軸に備えるプーリ59cと、プーリ59dとベルト60bを介して連結するネジ軸61bとを備える。ネジ軸61bの可動部63が可動基台51に取り付けられており、モータ58bの作動により可動基台51が昇降動作する。62c、62dはネジ軸61bによる移動を直線方向に案内するための直線案内手段である。可動基台51は、Y軸移動手段41の可動部を介して支柱47に取り付けられる。
【0036】
図5は、分注ヘッド2bの下端に取り付けられたキャップ20の取り外し装置3を示す斜視図である。この分注ヘッド2bは、図4に示す分注ヘッド2aのティップ取り外し手段53を係合手段66に置き換えたものである。このため図4の板材55と支柱64等を取り外し、これに代えて係合手段66を備える。ここで係合手段66は、図4の分注ヘッド2bにおいて板材55を昇降動作させていた昇降手段56を使用して、係合手段66の可動部材67を支持板68に押しつけることで適正にキャップ20を把持する動作を行うことができる。なお、図5と図4中において、同一符号のものは同じものを指す。
【0037】
図6は、係合手段66を示す垂直断面図である。図6(a)は可動部材67を動作させる前の状態を示す側面図であり、図6(b)は、図の上部に記載の白抜き矢印方向に可動部材を押しつけた後の状態を示す側面図である。31、32は、「く」の字形状を有する第1係合部材と第2係合部材である。この第1係合部材31、第2係合部材32の中間(係合部材の屈曲箇所より下方)に孔部70を備える。ここで、力点である第一係合部材31等の一端から支点である支軸までの距離を長くすることで安定した動作が可能である。該孔部70に1つの支軸72を貫通して取り付けることで、同芯状で回動可能に支持することができる。また、この支軸72の側面周辺に弾性体であるぜんまいバネ73を備える。ぜんまいバネ73の一端は第一係合部材31と第二係合部材32との一方の側部に掛止しており、他端は他方側部に引っかけて備えている。これにより、図6(b)上部の上方からの押しつける力(白抜き矢印方向の力)により、図6(b)下部の第一係合部材31等の側部左右(白抜き矢印)方向からバネ力がかかることとなる。68は平板形状の支持板であり、この支持板68は、垂直貫通穴74を備えることで第一係合部材31と第二係合部材32とを上方から通すことができるとともに、垂直貫通穴74の縁部に支軸72の両端部を支持するため、(後述する)凹形状の長溝75を2つ備える。この支持板68の両縁部付近に備える2つの案内部材76は、支持板68に対して可動部材67を平行に移動を案内するために備える。案内部材76の上端にはストッパ77を備えており、可動部材67の高さ方向の動作範囲を制限している。この可動部材67は、支持板68上に取り付けられた第一係合部材31と第二係合部材32の上端と当接している。これにより、前述した分注ヘッド2bのモータ58bを作動した際に可動部材67が連動して第一係合部材31と第二係合部材32とを支持板68にむけて押すことができる。この結果、第一係合部材31と第二係合部材32は、それぞれ支軸72を中心に互いに異なる方向に回動して図6(a)の状態から図6(b)の状態へと動作する。第一係合部材31と第二係合部材32の下端をキャップ20の上面凹部24に挿入して後、前述の動作により、キャップ凹部24の内壁と当接してさらに、キャップ20の平面形状を円形から楕円に変形させて保持及びキャップの取り外しをすることができる。
【0038】
図7は係合手段を示す斜視図である。図7(a)は、第一係合部材31等を支持板68に挿入する前の状態を示す斜視図である。図7(b)は、第一係合部材31等を挿入した後の状態を示す斜視図である。この係合手段の支持板68には、垂直貫通穴74の縁部に支軸72をその内部に挿入して支持する長溝75を備える。本実施例では、支軸72は第一係合部材31等を貫通して備えるが、第一係合部材31と第二係合部材32に取り付けられた支軸72の左右から押さえ込む部材、例えば支軸72に溝を2つ設けて第一係合部材31等に貫通して備える支軸72の左右端からCリング等で押さえ込む構造とするもことができる。
【0039】
図8の係合手段では、複数組の第一係合部材31等を備える実施例を示す斜視図である。図中の第一係合部材31と第二係合部材32は、細い棒状の部材であることから、支軸72付近でのガタつきがあれば適当にキャップは取り外せない不具合が生じる事がある。本実施例では、力点においてガタつきを抑えることで、支軸72において力点より大きなガタつきを抑える力受けることができる構造について以下に説明する。本実施例は、力点である第一係合手段31等と当接する可動部材67に案内溝78を備える。第一係合部材31と第二係合部材32とを案内溝78内で滑らせて押圧することで案内溝78の側壁がガイドとなり、ガタつきを大幅に抑えて動作させることができる。
【0040】
図9は、図8と異なる係合手段を示す斜視図である。1組の櫛歯状の第一係合部材31と第二係合手段32とをそれぞれエアシリンダ79a、79bとを相対する直線方向に作動させることで、キャップ20を把持及び取り外し動作するものである。
【0041】
図10は、本発明のキャップ装着・取り外し装置3によりキャップ20を取り外す方法を説明するためのものである。図10(a)の状態から図10(b)の状態となるように、キャップ20の上方からキャップ20に、第一係合部材31と第二係合部材32とを(キャップ凹部24の底面と第一係合部材31等とが接触しない距離Sだけ隔てた程度)挿入する。図10(b)の状態では、第一係合部材31等の側部からキャップ凹部24の内壁までの距離はTだけ隙間を有しており、接触することなく挿入することができる。その後、図10(b)の状態から図10(c)の状態となるように、キャップ凹部24と第一係合部材31と第二係合部材32とが当接する程度まで、はさみ形状の第一係合部材31と第二係合部材32とが開く。その後、図10(c)の状態から図10(d)の状態となるように、Y軸移動手段41を作動してチューブ15ごとキャップ20をラック11から持ち上げる。その後、図10(d)の状態から図10(e)の状態となるように、第一係合部材31と第二係合部材32を、キャップの挿入部22が鉛直方向からβ°傾斜するまで開くことで、キャップ20の形状を通常時円形から楕円に変形して、さらに、自重に耐え切れなくなったチューブ15が落下することでチューブ15からキャップが取り外される。落下したチューブ15は、再びラック11へと収納される。
【0042】
また、前述のキャップ取り外し手順を一回行っただけではキャップ20が取り外せなかった場合は図10(d)と図10(e)の状態を複数回繰り返すことにより確実にキャップを取り外すことができる。
【0043】
図11(a)、(b)は、図10(d)、(e)の状態を示した斜視図である。第一係合部材31と第二係合部材とを作動することによりキャップ20が図11(a)から図11(b)の状態へとキャップ凹部24が楕円形に変形している。
【0044】
図12は、前述の方法により取り外したキャップ20を再び装着する際の動作手順を示す説明図である。図12(a)の状態となるように、取り外したキャップ20をチューブ15の開口部の上方に移動する。その後、図12(a)の状態から図12(b)の状態となるように、図示しないY軸移動手段41の作動により第一係合部材31等を降下すると共に、第一係合部材31と第二係合部材32とを徐々に閉じていくことでチューブ15とキャップ20の挿入部22との間に隙間を作りながらキャップ20を装着する。その後、図12(b)の状態から図12(c)の状態となるように、第一係合部材31と第二係合部材32とが重なるまで閉じて、第一係合部材31等を上昇すれば、装着動作は完了する。図10(a)と同様に第一係合手段31等とキャップ凹部24の内壁との間には隙間Tがあり、第一係合手段31等を上昇する際にキャップと接触しないため、キャップ20を誤って持ちあげる不具合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】チューブを収納するラックを示す斜視図である。
【図2】キャップの断面図である。
【図3】キャップ装着・取り外し装置を含む分注システムを示す斜視図である。
【図4】分注ヘッドを示す断面図である。
【図5】本発明のキャップ装着・取り外し装置を示す断面図である。
【図6】係合手段の動作方法を説明するための断面図である。係合部がキャップを取り外す動作を説明するための側面図である。
【図7】支軸の支持方法を説明するための斜視図である。
【図8】第一係合手段等を複数組備える係合手段を示す斜視図である。
【図9】図8の係合手段と異なる係合手段を示す斜視図である。
【図10】キャップ装着(取り外し)装置によりキャップを装着する方法を説明するための説明図である。
【図11】キャップを楕円形にした様子を示す斜視図である。
【図12】キャップの装着手順を説明するための断面図である。
【図13】従来の分注システムを示す平面図である。
【図14】従来のキャップ装着・取り外し装置を示す側面図である。
【図15】従来のキャップ装着・取り外し装置の動作説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 分注システム
2a、2b 分注ヘッド
3 キャップ装着・取り外し装置
11 ラック
12 ウェル
15 チューブ
16 チューブ底面
20 キャップ
21 フランジ部
22 挿入部
23 当接部
24 キャップ凹部
25 内壁凹部
31 第一係合部材
32 第二係合部材
33 鉤部
40 X軸移動手段
41 Y軸移動手段
42 Z軸移動手段
45 マイクロプレート
46 分注台
47 支柱
50 ティップ
51 可動基台
53 ティップ取り外し手段
54 ティップ装着部
55 板材
56 昇降手段
57 基台
58a、58b モータ
59a、59b、59c、59d プーリ
60a、60b ベルト
61a、61b ネジ軸
62a、62b、62c、62d 直線案内手段
63 可動部
64 支柱
66 係合手段
67 可動部材
68 支持板
69 取り外し用可動部材
70 孔部
72 支軸
73 ぜんまいバネ(弾性体)
74 垂直貫通穴
75 長溝(案内手段)
76 案内部材
77 ストッパ
78 案内溝
79a、79b エアシリンダ
80 (従来の)分注システム
81 キャップ装着装置・取り外し装置
82 マイクロプレート
83 分注装置
85 保持具
86 位置合わせ機構
87 保持具傾斜機構
88 保持具昇降機構
89 バルブ機構(吸着手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験管形状を有するチューブの上面に取り付けられた弾性材料からなるキャップを取り外す装置であって、キャップと係合する係合手段と、係合手段を昇降動作させる昇降手段とを備え、係合手段の作動により平面形状が円形である凹部を楕円形となるように変形させて係合するとともに、昇降手段によりキャップを持ち上げることでチューブからキャップを取り外すことを特徴とするキャップの取り外し装置。
【請求項2】
前記係合手段が、第一係合部材と第二係合部材とからなり、第一係合部材と第二係合部材とを相反する方向であって水平移動もしくは回動させてキャップと係合することを特徴とする請求項1記載のキャップの取り外し装置。
【請求項3】
係合手段が、第一係合部材と、第二係合部材と、第一係合部材と第二係合部材とを貫通して回動可能に支持する支軸と、支軸の周囲または、第一係合部材と第二係合部材との外周に備える弾性部材と、第一係合部材と第二係合部材とを回動可能に支持する支持板と、第一係合部材と第二係合部材とを作動する可動部材とを備えるキャップの取り外し装置であって、可動部材の作動により第一係合部材と第二係合部材を下方に押付けることでぜんまいバネに抗して第一第二係合部材を回動させてキャップを保持又は取り外し動作をすることを特徴とする請求項1または2いずれかに記載のキャップの取り外し装置。
【請求項4】
前記第一係合部材と前記第二係合部材とを一組として複数組を同一水平面内に備え、前記可動部材により上方から第一係合部材と第二係合部材を押すことでキャップの把持又は取り外し動作することを特徴とする請求項3記載のキャップの取り外し装置。
【請求項5】
第一係合部材及び第二係合部材と当接する可動部材の箇所に長溝状の案内手段を備えることを特徴とする請求項3又は4の何れか記載のキャップの取り外し装置。
【請求項6】
試験管形状を有するチューブの上面に取り付けられた弾性材料からなるキャップを取り外す方法であって、係合手段をキャップ上部の凹部に挿入して、キャップの平面形状が円形の凹部を楕円形となるように変形するように係合し、昇降手段により係合手段を上方へ持ち上げることでキャップを取り外すことを特徴とするキャップの取り外し方法。
【請求項7】
昇降手段により係合手段を上昇して、係合手段を作動して楕円の長径の長さを変化させることを特徴とする請求項6記載のキャップの取り外し方法。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか記載のキャップの取り外し装置により取り外されたキャップを再びチューブに装着するキャップの装着装置であって、キャップを楕円形となるように保持する係合手段と、保持したキャップをチューブの開口部上方で昇降動作する昇降手段とを備えており、昇降手段によりキャップをチューブ開口部に挿入するとともに、係合手段によりキャップ形状が楕円から円形となるように保持状態を解除することを特徴とするキャップの装着装置。
【請求項9】
請求項6または7に記載のキャップの取り外し方法により取り外されたキャップを再びチューブに装着する方法であって、係合手段により楕円形となるように保持したキャップを、昇降手段によりチューブの開口部上方から降下するとともに、キャップ形状が楕円から円形となるように保持状態を解除することを特徴とするキャップの取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−120200(P2009−120200A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170333(P2006−170333)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(302033126)アイエス・テクノロジー・ジャパン株式会社 (10)
【Fターム(参考)】