説明

キャップの開閉装置及び分注システム

【課題】多数のマイクロチューブのキャップを一度に開閉でき、かつ、開閉機構のみならず廃棄機構をも有する開閉装置及び分注システムを提案する。
【解決手段】多数の挿通孔を有する第1のプレートと、基台の面に対して鉛直方向に第1のプレートを移動させる第1の駆動機構と、第1のプレートに回転自在に支持される多数のロッドと、を備え、ロッドは、ロッドの一端に前記挿通孔と螺合するボールねじ部と、ロッドの他端にキャップと嵌合しキャップを開閉するホルダー部と、を有し、第1のプレートが基台の面に対して鉛直方向に移動することでボールねじ部が回転することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型容器のキャップ開閉装置に関する。特に、本発明は、いわゆるマイクロチューブと呼ばれる小型容器のキャップを一度に多数開閉する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
薬の研究や化学物質の分析等において、試料を溶解した溶液はマイクロチューブと呼ばれる小型容器に封入される。薬の研究や化学物質の分析等においては、同じ試料に異なる試薬を注入したり、同じ試料でも注入量を異ならせたり、と一度に多数の分析が必要になるため、一つのラックに多数のマイクロチューブが収容された状態で保管される。一方で、一度に多数のマイクロチューブが取り扱われるため、そのキャップの開閉には大変な労力と時間を要する。
【0003】
特許文献1には、支持板とこの支持板に対して回転運動をする駆動板とを有するキャップの開閉装置が開示されている。具体的には、多数のキャップ回転治具が支持板に回転自在に支持され、一端がキャップ回転治具に連結されたクランクの他端が駆動板に回転自在に支持され、キャップ回転治具がマイクロチューブのキャップと嵌合することで、一度に多数のマイクロチューブのキャップを開閉する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2008−137700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、一端に栓体回転治具をそれぞれ連結した多数のクランクをモータに連結された駆動板を介して回転させることにより、栓体の開閉を行う栓体開閉装置が開示されている。しかしながら、特許文献1では、駆動板をクランク動作させるために大きな動力を必要とし、また、水平方向に十分なマージンを設ける必要である。加えて、特許文献1の開閉装置では、一度に多数のキャップを開閉する開閉機構しか設けられていない。
【0005】
そこで、本発明は、多数のマイクロチューブのキャップを一度に開閉でき、かつ、開閉機構のみならず廃棄機構をも有する開閉装置及び分注システムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するため、本発明のキャップの開閉装置は、多数の挿通孔を有する第1のプレートと、基台の面に対して鉛直方向に第1のプレートを移動させる第1の駆動機構と、第1のプレートに回転自在に支持される多数のロッドと、を備え、ロッドは、ロッドの一方に挿通孔と螺合するボールねじ部と、ロッドの他方にキャップと嵌合しキャップを開閉するホルダー部と、を有し、第1のプレートが基台の面に対して鉛直方向に移動することでボールねじ部が回転することを特徴とする。
【0007】
その結果、第1の駆動機構の駆動によって、多数のロッドが一度に回転するため、多数のキャップを一度に開閉することができる。多数のロッドは基台の面に対して鉛直方向に移動するため、多数のロッド同士の干渉は生じない。
【0008】
また、本発明の分注システムは、多数のマイクロチューブに試料を注入する分注システムであって、多数のマイクロチューブのそれぞれに装着される多数のキャップを一度に開閉するキャップの開閉装置を備え、キャップの開閉装置は、分注システム内の少なくとも一方向の移動を可能とすることを特徴とする。
【0009】
その結果、キャップの開閉装置は、分注システムの各工程(キャップの開閉、キャップの廃棄及び新しいキャップの取り付け)に応じて、分注システム内を移動することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大きな動力を要せず且つロッド間が密接していても、多数あるマイクロチューブのキャップの開閉を一度に行うことができる。また、開閉装置はマイクロチューブのキャップを一度に開閉できるだけでなく、分注システム内を移動してキャップを廃棄することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面を参照しつつ、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0012】
(1)第1の実施の形態
(1−1)分注システム
図1は、本実施の形態に係る分注システム1の正面図を示している。同図に示すように、分注システム1は、分注ヘッド11と、多数のマイクロチューブ12と、キャップ開閉装置(デキャッパー)20と、を含んで構成される。本実施の形態の分注システム1は、96チャネルディスペンサー構成(例えば12×8配列)であるものとする。マイクロチューブ12は、例えば開閉可能なキャップ120を有する樹脂製の筒状体であり、その内部に液体試料を保持する。マイクロチューブ12は、搬送装置(図示せず)によって、分注システム1内のステージ(基台の面)50上を搬送される。分注ヘッド11は、マイクロチューブ12から試料を吸引し、プレート13に設けられた各ウェルに吐出する。分注ヘッド11は、第2の移動機構2’に取り付けられ、分注システム1内の所定のエリア間を自在に移動できるように構成されている。キャップ開閉装置20は、マイクロチューブ12のキャップ120を開閉するための装置である。キャップ開閉装置20の構成については、後述する。キャップ開閉装置20は、第1の移動機構2に取り付けられ、同様に、分注システム1内の所定のエリア間を自在に移動できるように構成されている。図2は、分注システム1内のステージ50上に設けられた各種エリア間の位置的関係を説明するための図である。
【0013】
第2の移動機構2’は、分注システム1内に設けられたガイドレール(図示せず)に沿って分注システム1内をXYZ方向に移動する。ここでは、ステージ50をX―Y平面とし、ステージ50の鉛直方向をZ方向としている。
【0014】
搬送装置は、ステージ50上でチューブケース16に収納されたマイクロチューブ12群を搬送する装置である。搬送装置は、例えば、ロボットアームによってチューブケース16を把持し、所定のエリアに搬送する。あるいは、搬送装置は、自走式であってもよく、その構造は限定されない。
【0015】
スタッカーエリア3は、キャップ120が取り付けられて試料を保存しているマイクロチューブ12群を収納するチューブケース16を多段に収納するスタッカー14が配置されるエリアである。ディスポーサルチップエリア4は、マイクロチューブ12から試料を吸引するためのディスポーサルチップ110が分注ヘッド11に取り付けられるエリアである。分注エリア5は、キャップ開閉装置20によってマイクロチューブ12のキャップ120が開閉され、また、分注ヘッド11によって試料が吸引されるエリアである。吐出エリア6は、吸引された試料がプレート13のウェルに吐出されるエリアである。廃棄エリア7は、外されたキャップ120を廃棄するエリアである。新キャップエリア8は、キャップ開閉装置20によってマイクロチューブ12に新たなキャップ120を取り付けられるエリアである。プレートスタッカーエリア9は、プレート13を多段に収納するスタッカーが配置されるエリアである。
【0016】
なお、ディスポーサルチップ110とは、分注ヘッド11の先端に着脱自在に取付けられる使い捨てピペットをいう。
【0017】
まず、搬送装置が初期位置からスタッカーエリア3に移動すると、搬送装置のアームが伸張し多数のマイクロチューブ12を収納したチューブケース16をスタッカー14から取り出す。そして、搬送装置は、取り出したチューブケース16を分注エリア5に移動させる。一方で、キャップ開閉装置20を搭載する第1の移動機構2がガイドレールに沿って初期位置から分注エリア5に移動すると、キャップ開閉装置20が下方向(Z方向)に移動して、多数のマイクロチューブ12からキャップ120を一度に取り外す。その後、キャップ開閉装置20はキャップ120を保持したまま、分注エリア5から離れて初期位置に戻る。
【0018】
そうすると、分注ヘッド11を搭載する第2の移動機構2’がガイドレールに沿って初期位置からディスポーサルチップエリア4に移動する。次に、分注ヘッド11は、ディスポーサルチップ110を分注ヘッド11に取り付けると、分注エリア5に移動する。そして、分注ヘッド11が多数のマイクロチューブ12から試料を吸引する。この吸引は、試料の酸化を抑えるため、ノズル装置18から噴霧される不活性ガス下で行われる。その後、分注ヘッド11は、吐出エリア6に移動する。分注ヘッド11が吸引した試料をプレート13のウェル上に吐出する。この吐出も、前述した吸引と同様に、試料の酸化を抑えるため、ノズル装置18’から噴霧される不活性ガス下で行われる。搬送装置のアームがプレート13を掴み、プレート13をプレートスタッカーエリア9に搬送する。その後、搬送装置は、プレート13をスタッカー15に収納する。なお、分注ヘッド11を搭載する第2の移動機構2’の初期位置は、キャップ開閉装置20を搭載する第1の移動機構2の初期位置とは異なる位置でもよいし、同じ位置でもよい。
【0019】
一方で、キャップ開閉装置20は、キャップ120を保持しながら廃棄エリア7に移動すると、多数のキャップ120を廃棄エリア7に設けられた廃棄ボックス60に一度に捨てる。その後、キャップ開閉装置20は、新キャップエリア8に移動すると、新キャップエリア8に多数保存されている新たなキャップ120’を保持する。キャップ開閉装置20は、再び分注エリア5に移動すると、分注し終えた多数のマイクロチューブ12に新たなキャップ120’を取り付ける。
【0020】
このように、キャップ開閉装置20が分注システム1内を自在に移動できるので、人の手を介在することなく、分注システム1のステージ50に置かれたマイクロチューブ12のキャップ120を開閉し、廃棄することができる。また、キャップ120を交換する場合には、キャップ開閉装置20が新キャップエリア8から分注エリア5に移動して、新しいキャップ120を分注エリア5で取り付けることができる。
【0021】
なお、本実施の形態では、キャップ開閉装置20側が上下に移動したが、マイクロチューブ12側が上下に移動してもよい。この場合、例えば上下移動できる搬送装置にチューブケース16を乗せて移動させてもよい。
【0022】
(1−2)マイクロチューブの構成
マイクロチューブ12は、例えば、図3に示すように、円筒形状の本体121と、本体121の上端部の開口122を閉塞し、この開口122に着脱自在に取り付けられるキャップ120と、から構成される。
【0023】
本体121の下端部123は断面四角形状を指している。チューブケース16に形成された窪みに係合することで、マイクロチューブ12の本体121の回転を防止するように、本体121の下端部123は略四角柱の形状となっている。キャップ120は、ヘッド部124と、ヘッド部124の下端から延出し本体121と螺合する螺合部125と、ヘッド部124の下端外周に本体121の開口径より大きな径で形成されたフランジ部126と、から構成される。螺合部125の外周には雄ねじ127が形成され、雄ねじ127が本体121の上端部内周に形成された雌ねじ128と螺合することで、キャップ120が本体121の開口122に蓋をする。ヘッド部124の上端には多角形状や円形状に凹んだ嵌合凹部129が形成されている。
【0024】
なお本実施の形態では、このように構成されている96本のマイクロチューブ12は1ユニットとしてチューブケース16に収納され、多数のユニットがスタッカー14に収納されている。
【0025】
(1−3)キャップ開閉装置の構成
多数のマイクロチューブ12のキャップ120を開閉し及び廃棄するキャップ開閉装置20の構成について、図2、図4乃至図13を用いて説明する。
【0026】
キャップ開閉装置20には、第1の移動機構2から延出する4本の固定柱21によって支持された固定プレート25が設けられている。また、固定プレート25を挟んで上下には、昇降プレート24及びイジェクタプレート26が設けられている。昇降プレート24は、第1の移動機構2から延出する2本の昇降プレート用支持柱22により、昇降自在に支持され、また、イジェクタプレート26は、第1の移動機構2から延出する4本のイジェクタプレート用支持柱23により、昇降自在に支持されている。昇降プレート用支持柱22及びイジェクタプレート用支持柱23は、例えば、1対の辺に沿って、固定柱21間に設けられている。
【0027】
これらのプレート24,25,26には、ロッド27が挿通される96個の挿通孔241,251,261がそれぞれ設けられている。また、昇降プレート24とロッド27とは、ボールねじ構造により連結されている。
【0028】
図4にロッド27の拡大側面図を示す。
ロッド27は、キャップ120を開閉する開閉機構であり、ロッド27の上端部から中央部に形成されるボールねじ部270と、ロッド27の下端部に形成されるキャップ保持部272と、ボールねじ部270とキャップ保持部272とを連結する連結部271と、で構成されている。昇降プレート24の昇降動作に伴うボールねじ部270の回転によって、ロッド27が固定プレート25に対して上下し、これによって、キャップ保持部272がマイクロチューブ12に接近し又は離れるように形成されている。また、キャップ保持部272がキャップ120と嵌合し回転することで、キャップ120の開閉を可能としている。
【0029】
ここでボールねじとは、回転運動と直線運動との相互変換を行う機構をいう。本実施の形態では、ボールねじ部270(回転運動)と昇降プレート24(直線運動)とがこの機構を担う。本実施の形態のボールねじ部270は、ボールねじのねじ軸部分をいい、回転運動を担う。
【0030】
キャップ保持部272には、下端から中央付近まで凹部273が形成されている。そして、凹部273の内周には、例えばゴム部材等の弾性部材274が備えられている。キャップ120のヘッド部124が凹部273に嵌入される際、ヘッド部124の外周が凹部273に接触しても傷がつきにくく、嵌入され易い。図5には、キャップ保持部272がキャップ120のヘッド部124と嵌合した状態の断面図を示している。キャップ保持部272の下端径よりフランジ部126の径が大きいので、開口下端2730とフランジ部126の上面1260とが当接した時点で嵌入は停止され、弾性部材がキャップ120のヘッド部124の外周を押圧することでキャップ120を保持する。
【0031】
図6から図8は各プレートの平面図を示し、図9は開閉装置20の部分斜視図を示している。
昇降プレート24には、プレート24の左右端の略中央に位置し、昇降プレート用支持柱22を挿通する2つの挿通孔240、プレート24の略全面に形成され且つロッド27のボールねじ部270を挿通する96穴の挿通孔241、プレート24の四隅に位置する固定柱21を挿通する4つの挿通孔242、及び、挿通孔240,242と同一直線状にあり且つ4本のイジェクタプレート用支持柱23を挿通する4つの挿通孔243が設けられている。また、昇降プレート24に設けられた挿通孔240の内周には、雌ねじが形成され、挿通孔240と昇降プレート用支持柱22とが螺合する。また、昇降プレート24に設けられた挿通孔241の内周にも、雌ねじが形成され、挿通孔241とロッド27のボールねじ部270とが螺合する。
【0032】
昇降プレート24を支持する昇降プレート用支持柱22は、第1の移動機構2側に設けられている駆動機構30によって回転するボールねじのねじ軸として機能する。これにより、昇降プレート用支持柱22と昇降プレート24とが回転運動と直線運動とを相互に変換することができる。
【0033】
また、昇降プレート用支持柱22の上側一端に連結される軸受(図示せず)と、駆動機構30の一端に連結される軸受(図示せず)とにはベルト(図示せず)が巻かれており、駆動機構30の駆動によってベルトが回転すると、昇降プレート用支持柱22が回転する。昇降プレート用支持柱22が回転すると、昇降プレート24が分注システム1内のステージ50に対して鉛直方向(上下方向)に移動する。昇降プレート24が上下に移動することによって、ロッド27が回転する。この回転と同時に第1の移動機構2が上方向に動くとキャップ120が開き、逆に、この回転と同時に第1の移動機構2が下方向に動くとキャップ120が閉まる。
【0034】
なお、分注システム1内はコントローラが搭載されており、コントローラが駆動のオンまたはオフを制御することによって、移動機構2,2’の移動や駆動機構30の駆動を制御する。また、コントローラは、昇降プレート用支持柱22の回転速度を制御することで、昇降プレート24の移動速度、ロッド27の回転数及びロッド27の回転速度を制御する。
【0035】
固定プレート25には、プレート25の四隅に位置する固定柱21と連結されており、プレート25の略全面に配置され且つロッド27の連結部271を挿通する挿通孔251、及びプレート25の左右端に位置する4本のイジェクタプレート用支持柱23を挿通する4つの挿通孔253が設けられている。いずれの挿通孔251,253の内周にも、雌ねじは形成されていない。固定プレート25は、ボールねじ部270の一端を回転自在に保持するプレートであり、ロッド27の回転軸中心がずれないように支持する。
【0036】
イジェクタプレート26には、プレート26の左右端に位置する4本のイジェクタプレート用支持柱23を挿通する挿通孔263、及び、プレートの略全面に配置され且つロッド27のキャップ保持部272を挿通する96穴の挿通孔261が設けられている。イジェクタプレート26に設けられた挿通孔263の内周は、雌ねじが形成され、イジェクタプレート用支持柱23と螺合する。また、イジェクタプレート26を支持するイジェクタプレート用支持柱23は、例えば、第1の移動機構2側に設けられているモータ等の駆動機構31によって回転するボールねじのねじ軸から構成される。これにより、イジェクタプレート用支持柱23とイジェクタプレート26とが回転運動と直線運動とを相互に変換することができる。
【0037】
また、イジェクタプレート用支持柱23の上側一端に連結される軸受(図示せず)と、駆動機構31の一端に連結される軸受(図示せず)とには、ベルト(図示せず)が巻かれている。駆動機構31の駆動によってベルトが回転すると、イジェクタプレート用支持柱23が回転する。イジェクタプレート用支持柱23が回転すると、イジェクタプレート26が基台の面50に対して鉛直方向(上下方向)に移動する。イジェクタプレート用支持柱23に設けられた駆動機構31は昇降プレート用支持柱22に設けられた駆動機構30とは独立しているため、昇降プレート24とイジェクタプレート26は別々に上下移動する。さらに、イジェクタプレート26も昇降プレート24及び固定プレート25と同様に96の挿通孔261が設けられており、ロッド27のキャップ保持部272が挿通される。
【0038】
なお、固定柱21は、例えば、固定プレート25を支持できる金属製の柱から構成され、第1の移動機構2に対して固定して設けられる。また、それぞれの支持柱22,23及び固定柱21の構成は一例であるため、この一例には限られない。昇降プレート用支持柱22及びイジェクタプレート用支持柱23は、それぞれのプレート24,26が独立して基台の面50に対して鉛直方向(上下方向)に移動できるような機構であればよく、例えば、エアシリンダ等のサーボ機構を設け、このサーボ機構が往復動作を行うことで、昇降プレート24またはイジェクタプレート26が上下方向(Z方向)に移動する構成であってもよい。固定柱21は、固定プレート25が基台の面50に対して移動することなく固定できるような機構であればよい。また、上述した各種の機構2,20,30,31は、分注システム1内のコントローラによって開始や停止の制御が行われる。
【0039】
(1−4)キャップの開閉動作
次に、キャップ120の開閉動作について説明する。
まず図10はマイクロチューブ12からキャップ120を取り外す前の状態を示す図である。図10は、96本あるマイクロチューブ12のキャップ120が装着された状態で、マイクロチューブ12がチューブケース16に収納されている。マイクロチューブ12が搬送装置によって分注エリア5に運ばれ、また、キャップ開閉装置20も第1の移動機構2によって分注エリア5に移動する。
【0040】
そして、第1の移動機構2が下方向に移動して、キャップ保持部272がキャップ120に接近する。ロッド27の回転軸とキャップ120の回転軸とが一致すると、キャップ保持部272の開口273にキャップ120のヘッド部124が嵌入する。キャップ保持部272の開口273とキャップ120のヘッド部124とが嵌合した状態を図11に示す。キャップ保持部272の開口端2730とキャップ120のヘッド部124の上面1260とが当接した時点で第1の移動機構2は下方向に移動できなくなるので、第1の移動機構2がこれを検知信号としてコントローラに送ると、コントローラは第1の移動機構2の下方向への移動を停止させ、駆動機構30の駆動を開始させる。
【0041】
その後、キャップ開閉装置20は、昇降プレート用支持柱22を回転させ、昇降プレート24を下降させる。なお、昇降プレート24が固定プレート25に近接している状態の場合には、昇降プレート24を上昇させて、ロッド27を回転させる。昇降プレート24が下降するとロッド27が回転し、キャップ開閉装置20がこれを検知信号としてコントローラに送ると、コントローラは第1の移動機構2の上方向への移動を開始させる。ロッド27が回転し、第1の移動機構2が上方向へ移動するので、マイクロチューブ12からキャップ120が取り外せ、取り外したキャップ120がキャップ保持部272に保持されることになる。このようにキャップ開閉装置20がキャップ120を保持した状態を図12に示す。
【0042】
その後、第1の移動機構2が、キャップ120を保持したキャップ開閉装置20を廃棄エリア7に移動させる。キャップ開閉装置20にキャップ120が取り付けられた状態で駆動機構31を駆動させると、イジェクタプレート26が下方向に移動する。イジェクタプレート26にキャップ120のフランジ部126が接触する。キャップ開閉装置20はイジェクタプレート26をさらに下方向に移動させると、イジェクタプレート26に接触するキャップ120のフランジ部126も下方向にさらに移動する。このため、キャップ120のフランジ部126がキャップ保持部272から離されるので、キャップ開閉装置20からキャップ120を取り外すことができる。このように、キャップ開閉装置20からキャップ120が取り外された状態を図13に示す。
【0043】
(1−5)本実施の形態の効果
以上のように、本実施の形態によれば、大きな動力を要せず且つロッド間が密接していても、多数あるマイクロチューブのキャップの開閉を一度に行うことができる。また、開閉装置が分注システム内を自在に移動できるため、マイクロチューブのキャップの開閉のみならず、キャップの廃棄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】分注システムの正面図を示す。
【図2】分注システム内のステージ上に設けられた各種エリア間の位置的関係を説明するための図を示す。
【図3】マイクロチューブの構成図を示す。
【図4】ロッドの拡大側面図を示す。
【図5】キャップ保持部とヘッド部とが嵌合した状態の断面図を示す。
【図6】昇降プレートの平面図を示す。
【図7】固定プレートの平面図を示す。
【図8】イジェクタプレートの平面図を示す。
【図9】キャップ開閉装置の部分斜視図を示す。
【図10】キャップの開閉動作前のキャップ開閉装置の平面図を示す。
【図11】キャップと嵌合するキャップ開閉装置の平面図を示す。
【図12】キャップの開閉動作中のキャップ開閉装置の平面図を示す。
【図13】キャップの廃棄動作中のキャップ開閉装置の平面図を示す。
【符号の説明】
【0045】
1……分注システム、2……第1の移動機構、2’……第2の移動機構、3……スタッカーエリア、4……ディスポーサルチップエリア、5……分注エリア、6……吐出エリア、7……廃棄エリア、8……新キャップエリア、9……プレートスタッカーエリア、11…分注ヘッド、12……マイクロチューブ、13……プレート、14,15…スタッカー、16…チューブケース、21……固定柱、22……昇降プレート用支持柱、23……イジェクタプレート用支持柱、24……昇降プレート、25……固定プレート、26……イジェクタプレート、27……ロッド、50……基台の面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の挿通孔を有する第1のプレートと、
基台の面に対して鉛直方向に前記第1のプレートを移動させる第1の駆動機構と、
前記第1のプレートに回転自在に支持される多数のロッドと、を備え、
前記ロッドは、
前記ロッドの一方に前記挿通孔と螺合するボールねじ部と、
前記ロッドの他方にキャップと嵌合し前記キャップを開閉するホルダー部と、を有し、
前記第1のプレートが前記基台の面に対して鉛直方向に移動することで前記ボールねじ部が回転する
ことを特徴とするキャップの開閉装置。
【請求項2】
前記第1のプレートを支持する支持柱を備え、
前記支持柱は、前記第1の駆動機構に接続している
ことを特徴とする請求項1記載のキャップの開閉装置。
【請求項3】
多数の挿通孔を有し、前記ホルダー部を回転自在に支持する第2のプレートと、
基台の面に対して鉛直方向に前記第2のプレートを移動させる第2の駆動機構と、を備え
キャップを前記ホルダー部から取り外すときに前記第2の駆動機構を駆動させる
ことを特徴とする請求項1記載のキャップの開閉装置。
【請求項4】
多数のマイクロチューブに試料を注入する分注システムであって、
前記多数のマイクロチューブのそれぞれに装着される多数のキャップを一度に開閉するキャップの開閉装置を備え、
前記キャップの開閉装置は、分注システム内の少なくとも一方向の移動を可能とする
ことを特徴とする分注システム。
【請求項5】
分注システム内には、
前記多数のマイクロチューブに試料を注入する分注エリアが少なくとも設けられ、
前記キャップの開閉装置は、
前記多数のキャップを一度に開閉する開閉機構を有し、
移動機構に搭載される前記キャップの開閉装置が前記分注エリアに移動する
ことを特徴とする請求項4記載の分注システム。
【請求項6】
分注システム内には、
前記多数のマイクロチューブのそれぞれに新たな多数のキャップを取り付ける新キャップエリアが少なくとも設けられ、
前記キャップの開閉装置は、
前記多数のキャップを一度に開閉する開閉機構を有し、
移動機構に搭載される前記キャップの開閉装置が前記新キャップエリアに移動する
ことを特徴とする請求項4記載の分注システム。
【請求項7】
分注システム内には、
前記多数のマイクロチューブのキャップを廃棄する廃棄エリアが少なくとも設けられ、
前記キャップの開閉装置は、
保持した前記多数のキャップを前記キャップの開閉装置から取り外す廃棄機構を有し、
移動機構に搭載される前記キャップの開閉装置が前記廃棄エリアに移動する
ことを特徴とする請求項4記載の分注システム。
【請求項8】
前記開閉機構は、
多数の挿通孔を有する第1のプレートと、
基台の面に対して鉛直方向に前記第1のプレートを移動させる第1の駆動機構と、
前記第1のプレートに回転自在に支持される多数のロッドと、を備え、
前記ロッドは、
前記ロッドの一方に前記挿通孔と螺合するボールねじ部と、
前記ロッドの他方にキャップと嵌合し前記キャップを開閉するホルダー部と、を有することを特徴とする請求項5又は6記載の分注システム。
【請求項9】
前記廃棄機構は、
多数の挿通孔を有し、前記ホルダー部を回転自在に支持する第2のプレートと、
基台の面に対して鉛直方向に前記第2のプレートを移動させる第2の駆動機構と、を備えることを特徴とする請求項7記載の分注システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−100312(P2010−100312A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273331(P2008−273331)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000113573)マイクロニクス株式会社 (13)
【出願人】(508128129)株式会社C.A.N. (4)
【出願人】(503318666)日京テクノス株式会社 (19)
【Fターム(参考)】