説明

キャップ付き容器

【課題】 本発明は、スリット弁構造の吐出弁を、通常のスリット弁の肉厚および形状のままで、高い逆止機能を発揮できるようにすることにより、高価な軟質弾性材の単位消費量の少量化と、大きな設計の自由度を得ることができるようにすることを目的とするものである。
【解決手段】 粘稠性を有する内容物Nを収納したデラミボトルタイプのキャップ付き容器において、吐出弁23をスリット弁構造とし、この吐出弁23の内側の間近に、内容物Nの流動に抑制作用を及ぼす抑制部27を位置させ、容器体1内に減圧が発生した状態で、吐出弁23の内側間近に位置する内容物Nを流動し難い状態にして、スリット弁構造の吐出弁23からの外気の侵入を確実に阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外殻を形成する外層内に、減容変形自在な内袋を形成する内層を剥離自在に積層形成した、ブロー成形品であるデラミボトルタイプの容器体と、この容器体の口筒部に組付けされたキャップ体との組合わせ物であるキャップ付き容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャンプーとかソース等の粘稠性のある内容物を吐出可能に収納する容器として、減容変形および復元変形が可能な、合成樹脂製ボトルであるデラミボトルタイプのキャップ付き容器が知られているが、このデラミボトルタイプの容器は、内容物の吐出口を形成する吐出弁と、外層と内層の間に外気を導入させる吸気弁とを有している。
【0003】
吐出弁は、内容物の吐出口を形成するものであるが、粘稠性のある内容物は、一般に良好な「液切れ」を得ることが難しいので、特開2004−001780号公報に示された従来技術のように、吐出弁として軟質弾性材製のスリット弁を使用して、良好な「液切れ」を得ることができるようにした構成が考えられている。実際に、吐出弁としてスリット弁を使用した上記構成にあっては、内容物が粘稠性のあるものであっても、良好な「液切れ」動作を得ることができる、と云う好ましい作用を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−001780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、スリット弁構造の吐出弁に、できる限り確実な逆止機能を付与することができるように、吐出弁の弁作用部分の肉厚を大きくするとか、その形状を砲弾状にすることが要求され、材料費が嵩むとか設計の自由度が低いなどが指摘されており、このため高価な軟質弾性材の単位消費量を減らすとか、吐出弁の形状に関する制約をなくして、設計の自由度を大きくする、と云う要望が出ている。
【0006】
そこで、本発明は、上記した従来技術における要望を満たすべく創案されたもので、スリット弁構造の吐出弁を、通常のスリット弁の肉厚および形状のままで、高い逆止機能を発揮できるようにすることを技術的課題とし、もって高価な軟質弾性材の単位消費量の少量化と、大きな設計の自由度を得ることができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決する本発明の主たる構成は、
ボトル状にブロー成形され、粘稠性を有する内容物を収納する合成樹脂製の容器体と、この容器体の口筒部を、密に組付いて開閉するキャップ体を有すること、
容器体は、スクイズ変形可能で、復元自在な可撓性を有する外層と、この外層と剥離自在に積層され、内容物を収納して自在に減容変形する内層とから構成されること、
容器体の口筒部に、内容物の吐出は許すが、外気の侵入を阻止する吐出弁を設け、外層の一部に吸気孔を開設し、この吸気孔に、外層と内層の間への外気の侵入は許すが、侵入した外気の排出は阻止する吸気弁を設けること、
吐出弁は軟質弾性材製のスリット弁構造となっていること、
この吐出弁の内側の間近に、内容物の流動に抑制力を作用させる抑制部を位置させたこと、
にある。
【0008】
ボトル状にブロー成形された合成樹脂製の容器体は、吐出弁と吸気弁を有するデラミボトル状に構成されているので、容器体を押圧して、減容方向にスクイズ変形させると、容器体の内圧が上昇し、この上昇した圧力により内容物が吐出弁お押し開いて吐出される。この際、吸気弁は上昇した内圧により「閉」状態を維持し、外層と内層の間に位置する外気の排出を阻止する。
【0009】
容器体に対する押圧力を取り去ると、外層がその復元力により原形に戻ろうとするので、容器体内には減圧が発生する。この減圧により、吸気弁が速やかに開いて、外層と内層の間に外気を吸入し、発生した減圧を消滅させる。この際、吐出弁にも減圧が作用するのであるが、吐出弁の内側には、内容物が抑制部により流動を抑制された状態、すなわち移動し難い状態で位置しているので、吐出弁は速やかに開くことができず、これにより減圧が発生した状態で、逆止弁機能を確実に発揮することになる。
【0010】
なお、容器体を押圧して内容物を吐出させる際に、吐出される内容物に対して抑制部が抑制作用を及ぼすが、この抑制作用による影響は、吐出弁を開いて内容物を吐出させるのに、容器体に作用させる押圧力をわずかに大きくする必要がある、と云う程度のものであり、実際の使用に際しては、この影響により不都合を生じることは全くない。
【0011】
このように、吐出弁が発揮する確実な逆止弁機能は、抑制部との組合わせ、すなわち吐出弁の内側に位置した内容物に対する抑制部の流動抑制作用により得ることができるものであるので、吐出弁を、その開閉弁作用を速やかに得ることのできる通常の肉薄なスリット弁構造とすることができると共に、その形状も砲弾状に特定されることなく、所望する形状に自由に設定することができる。
【0012】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、キャップ体を、容器体の口筒部に外装する本体部を有するキャップ本体と、容器体の口筒部の開口端に密に組付く、有頂筒状の支持中栓と、この支持中栓とキャップ本体との間に挟持状に密に組付け固定される弁体とから構成し、弁体の上端に設けた吐出弁の内側の間近に位置する支持中栓の頂板部分を、梁板片状の邪魔板片を残して通孔を開設した構成とし、邪魔板片を抑制部とした、ことを加えたものである。
【0013】
抑制部を、弁体をキャップ本体との間で挟持する支持中栓に設けた邪魔板片で構成したものにあっては、抑制部を吐出弁の内側の間近に安定して確実に位置させることができる。
【0014】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、抑制部を邪魔板片で形成したことを加えた構成に、吐出弁に設けたスリットを十文字状とし、邪魔板片をスリットに対向して位置する十文字梁片状とした、ことを加えたものである。
【0015】
吐出弁のスリットを十文字状とし、邪魔板片をスリットに対向する十文字梁片状としたものにあっては、吐出弁の開閉孔部であるスリットの間近に邪魔板片を確実に位置させることになるので、スリットの内側に位置している内容物の流動に対して、邪魔板片が直接抑制作用を及ぼすことになり、これにより内容液に対する抑制部の抑制作用を、きわめて効果的に発揮させることになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成にあっては、吐出弁が発揮する確実な逆止弁機能は、吐出弁の内側に位置した内容物に対する抑制部の流動抑制作用により得ることができるものであるので、吐出弁を、通常の肉薄なスリット弁構造とすることができると共に、その形状も所望する形状に自由に設定することができ、吐出弁を成形する高価な軟質弾性材の消費量を減少させて、材料費の低減を得ることができると共に、吐出弁の構造設定の自由度を高めることができる。
【0017】
抑制部を、弁体をキャップ本体との間で挟持する支持中栓に設けた邪魔板片で構成したものにあっては、抑制部を吐出弁の内側の間近に安定して確実に位置させることができるので、抑制部による内容物に対する抑制作用を、吐出弁の逆止弁機能に効果的にかつ有効に作用させることができる。
【0018】
吐出弁のスリットを十文字状とし、邪魔板片をスリットに対向する十文字梁片状としたものにあっては、吐出弁の開閉孔部であるスリットの間近に邪魔板片を確実に位置させることになるので、内容液に対する抑制部の抑制作用を、きわめて効果的に発揮させることになり、これにより吐出弁に安定して確実な逆止弁機能を発揮させることになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態例を示す、要部を半縦断した全体面図である。
【図2】図1の一実施形態例の閉状態時の、要部を半縦断した拡大図である。
【図3】図1の一実施形態例の吐出弁の、拡大平面図である。
【図4】図1の一実施形態例の規制部の、拡大平面図である。
【図5】図1の一実施形態例の開状態時の、要部を半縦断した拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態例を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のキャップ付き容器の、一部破断した閉状態時の一実施形態例を示すものである。ブロー成形品である容器体1は、スクイズ変形可能で復元自在な可撓性を有する低密度ポリエチレン製の外層2(図2参照)と、この外層2に剥離可能に積層され、粘稠性内容物Nを収納し、内圧の減少により自在に減容変形する袋状に成形された、ナイロン製の内層3(図2参照)とから、ブロー成形されて、デラミボトルタイプの容器として構成されている。
【0021】
胴部7は、有底円筒形状をしていて、その上端に肩段部6を有する、上方に円弧状に縮径した肩部を介して円筒状の口筒部4が起立設されており、この口筒部4を構成する外層2には、その略上半部分の外周面には、螺条が刻設されていると共に、略下半部分には、外気を外層2と内層3の間に吸気するための吸気孔5を開設しており、肩段部6の外周面は、螺条の突出端よりも外側に位置した平滑面となっている。
【0022】
容器体1の口筒部4に組付けられるキャップ体8(図2参照)は、キャップ本体9と、軟質弾性材製の弁体20と、支持中栓25を組合わせて構成され、キャップ本体9は、容器体1の口筒部4に組付く主体部10と、この主体部10にヒンジ19で一体に結合された蓋体部16とから構成されている。主体部10は、口筒部4に外装して螺合組付きする組付き筒11と頂壁13を有する有頂円筒状をしており、組付き筒11の内周面下端部には、肩段部6の平滑な外周面に密接触して、吸入した外気の漏出を防止するシール部12が形成されており、さらに頂壁13の中央には、その基端部に吸気口15を開設した筒片14が起立設されている。この主体部10にヒンジ19で結合された蓋体部16は、頂板の下面中央に、主体部10の筒片14に密嵌入可能な栓筒片17を垂下設し、この栓筒片17の内側の頂板部分を、球弧状に陥没した押さえ頂板18としている。
【0023】
弁体20は、基本的には有頂円筒構造をしていて、円筒状の組付き本体21の外周面から外鍔状に吸気弁22を設けると共に、球弧状に陥没した頂壁部分を吐出弁23に構成している。肉薄の外鍔状に成形された吸気弁22は、吸気口15よりも外側の頂壁13下面部分に、周端部を密接触させることにより、吸気口15からの外気の侵入は許すが、吸気口15からの外気の排出を阻止する逆止弁機能を発揮する。球弧状に陥没した頂壁部分に形成された吐出弁23は、この頂壁部分に十文字状のスリット24(図3参照)を設けることにより、肉薄なスリット弁構造に構成されている。なお、吐出弁23を上端に形成している筒状体は、主体部10の筒片14内に位置することにより、保護された状態となっている。
【0024】
支持中栓25は、口筒部4の開口端に密に嵌入組付きすると共に、キャップ本体9の組付き筒11の内周面上端部分に強固に嵌入組付きして、キャップ本体9の主体部10との間に、弁体20を挟持状に保持しており、中央に起立した有頂円筒状の支持筒部26の、吐出弁23と間近に位置する頂壁部分には、四つの通孔28(図4参照)を開設して十文字状の梁板片状の邪魔板片27a(図4参照)を残存形成し、この邪魔板片27aを抑制部27として機能させるようにしている。この梁板片状の邪魔板片27aは、各邪魔板片27aに隣接して通孔28が位置しているので、内容物Nの吐出動作時には、通孔28からスリットに流動する内容物Nに対して大きな抑止力を及ぼすことがない。
【0025】
また、邪魔板片27aと通孔28の大きさの相互関係は、内容物Nの粘度の大きさに従って設定されるものであって、内容物Nの粘度が大きい場合には邪魔板片27aを細くして、通孔28を大きくし、反対に内容物Nの粘度が小さい場合には邪魔板片27aを幅広にして、通孔28を小さくし、これにより内容物Nに対する規制部27の規制作用を調整設定する。
【0026】
次に、図示した一実施形態例の動作例を順に説明する。
図1に示した、蓋体部16の「閉」状態では、蓋体部16の押さえ頂板18が、吐出弁23に対して接触状もしくはきわめて近接して位置して、吐出弁23に「開」動作を引き起こさせないようにしているので、容器体1の内圧が、胴部7に押圧力が作用する等して上昇しても、吐出弁23は押さえ頂板18に押さえられて弁開動作を引き起こすことができず、容器は内容物Nの不正な吐出を生じない状態に安全に保持される。
【0027】
図5に示した、蓋体部16の「開」状態では、容器体1の胴部7を押圧して内圧が上昇すると、上昇した内圧により内容物Nが吐出弁23を押し開き、この吐出弁23から吐出される。所望量の内容物Nを吐出させて押圧力を取り去ると、吐出弁23が閉じて吐出操作が終了する。吐出操作が終了すると、外層2に復元力が発生して容器体1内に減圧が発生し、外気が吸気口15から吸気弁22を開いて、支持中栓25に形成された通孔および口筒部4と組付き筒11の螺合組付き部分を通って、吸気孔5から外層2と内層3の間に吸入され、容器体1内の減圧は速やかに消滅する。
【0028】
この際、上昇した容器体1の減圧は、吐出弁23にも同時に作用するのであるが、吐出弁23の内側に位置している内容物Nは、その流動が抑制部27により抑制されて流動移動し難い状態となっているため、吸気弁22による速やかな減圧消滅動作の間に、吐出弁23が開くことのできる位置まで流動することができない。このため、吐出弁23は、容器体1の減圧により外気を侵入させることがなく、結果的には安定して確実な逆止弁機能を発揮することになる。
【0029】
なお、本発明は上記した実施形態例に限定されるものではなく、例えば胴部7の下端部にベースカップを密に組付け、吸気弁機能部を、このベースカップと容器体1の底部のピンチオフ部に形成する構成とすることも、また邪魔板片27aを十文字梁片状ではなく単純な平板状とすることも、またキャップ本体9をヒンジキャップとするのではなく、主体部10と蓋体部16を別体物とした構成とすることも、また吐出弁23は球弧殻状に陥没した構造とするのではなく、平板状や球弧殻状に膨出する構造とすることも、さらにはスリット24を十文字状ではなく、一本線状や三本線状とすることもできる。また、図示省略したが、吸気弁22を軸対称に一対設け、両吸気弁22を避けた外層2と内層3の間に、容器体1の全高さ範囲に亘って、帯状の接着帯を設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明したように、本発明のキャップ付き容器は,きわめて構造が簡単で速やかな弁動作を行うことが可能なスリット弁を、デラミボトルタイプのキャップ付き容器に安全に使用することができるので、デラミボトルタイプのキャップ付き容器における吐出弁部分を安価にかつ簡単化する効果を発揮するものであり、デラミボトルタイプのキャップ付き容器に対して幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0031】
1 ;容器体
2 ;外層
3 ;内層
4 ;口筒部
5 ;吸気孔
6 ;肩段部
7 ;胴部
8 ;キャップ体
9 ;キャップ本体
10;主体部
11;組付き筒
12;シール部
13;頂壁
14;筒片
15;吸気口
16;蓋体部
17;栓筒片
18;押さえ頂板
19;ヒンジ
20;弁体
21;組付き本体
22;吸気弁
23;吐出弁
24;スリット
25;支持中栓
26;支持筒部
27;抑制部
27a;邪魔板片
28;通孔
N ;内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトル状にブロー成形され、粘稠性を有する内容物(N)を収納する合成樹脂製の容器体(1)と、該容器体(1)の口筒部(4)を、密に組付いて開閉するキャップ体(8)とを有し、前記容器体(1)は、スクイズ変形可能で、復元自在な可撓性を有する外層(2)と、該外層(2)と剥離自在に積層され、前記内容物(N)を収納して自在に減容変形する内層(3)とから構成され、前記口筒部(4)に、前記内容物(N)の吐出は許すが、外気の侵入を阻止する吐出弁(23)を設け、前記外層(2)の一部に吸気孔(5)を開設し、該吸気孔(5)に、前記外層(2)と内層(3)の間への外気の侵入は許すが、侵入した外気の排出は阻止する吸気弁(22)を設け、前記吐出弁(23)は軟質弾性材製のスリット弁構造となっており、該吐出弁(23)の内側の間近に、前記内容物(N)の流動に抑制力を作用させる抑制部(27)を位置させたことを特徴とするキャップ付き容器。
【請求項2】
キャップ体(8)を、容器体(1)の口筒部(4)に外装する本体部(10)を有するキャップ本体(9)と、前記口筒部(4)の開口端に密に組付く、有頂筒状の支持中栓(25)と、該支持中栓(25)とキャップ本体(9)との間に挟持状に密に組付け固定される弁体(20)とから構成し、前記弁体(20)の上端に設けた吐出弁(23)の内側の間近に位置する支持中栓(25)の頂板部分を、梁板片状の邪魔板片(27a)を残して通孔(28)を開設した構成とし、前記邪魔板片(27a)を抑制部(27)とした請求項1に記載のキャップ付き容器。
【請求項3】
吐出弁(23)に設けたスリット(24)を十文字状とし、邪魔板片(27a)をスリット(24)に対向して位置する十文字梁片状とした請求項2に記載のキャップ付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−95455(P2013−95455A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238557(P2011−238557)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】