説明

キャップ式紫外線ランプ

【課題】人間の頭部に装着されるキャップ式紫外線ランプを提供する。
【解決手段】紫外線LED3や可視光LED4やヘリウムネオンレーザやこれ等の電源部5を収納するキャップケース2は装着用バンド7により人間頭部に装着される。このキャップケース2の前面にはUV透過フィルタ6が装着され、頭部を動かすことにより被検査体のキズ面を紫外線照射やヘリウムネオンレーザを照射しキズを検出することができる。また、両手が常に自由となり、紫外線や可視光やヘリウムネオンレーザを照射しながら両手作業ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭鉱夫の頭部に装着するカンテラのような形状の紫外線ランプに係り、特に、紫外線照射と可視光照射とヘリウムネオンレーザとが切替実施されるキャップ式紫外線ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラックライトを用いる螢光浸透探傷試験や磁粉探傷試験は、暗所下において微小キズ指示模様を螢光発光させることで検査員の目視確認精度を向上させて見落としの防止を図るものであり、航空機産業における部品検査や火力,原子力機器の製造中や運転経過における損傷確認手段として広く採用されている。しかしながら、螢光探傷のキズ指示模様の写真記録は暗所下で微小な螢光指示を銀盤フィルムに感光させるために長い経験を必要とし特定の人しか行えない問題点があった。このため、デジタルカメラと紫外線ストロボを利用することにより、誰でもが容易に螢光指示模様をデジタル画像として記録することが可能になった。このものは紫外線ストロボ(UVストロボ)と称されるものであるが簡便構造のものは従来なかった。なお、紫外線探傷灯用紫外線透過フィルタとしては「特許文献1」に示すように公知の技術が存在していた。また、車両エンジンを始めあらゆる内燃機関には潤滑材等として使用されるオイルに蛍光材が混合されている。このためオイルタンク等にクラック等が発生した場合に、滲んでいるオイルに紫外線を照射するとタンクにクラックが生じていることがわかる。しかしながら、従来の紫外線ランプとしては例えば、「特許文献2」や「特許文献3」等にあるようにリード線が必要であった。このため、紫外線照射がやりにくく、キズ検査に時間がかかり、そのメンテナンス費用が大となる問題点があった。また、紫外線照射のために両手がフリーの状態にならず、照射しながら同時に他の作業ができない問題点があった。また、従来の紫外線ランプは、紫外線照射のみであり、可視光照射と併用するものはなかった。また、ヘリウムネオンレーザを併用するものもなかった。
【特許文献1】登録実用新案第3027343号(図1)
【特許文献2】特開2003−282025(図1)
【特許文献3】特開平10−85149(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上の事情に鑑みて発明されたものであり、リード線が不要でどんな狭い所でも検査ができ、紫外線照射やヘリウムネオンレーザにより被検査体のキズの発見が容易に、かつ明瞭にできると共に可視光照射により暗い所への移動や作業が容易にでき、頭部に装着されているため両手がフリーとなり、各種の作業が同時にでき、紫外線照射しながら写真撮影も可能であり、両手が使えるため危険な場所や急な斜面においても安全移動や動作ができるキャップ式紫外線ランプを提供することを目的とする。また、紫外線LEDと可視光LEDとヘリウムネオンレーザとが切替使用可能であり、作業目的に応じて便利に対応することができLED使用のため省電力化と小型化ができ、UV透過フィルタは所望形状のものを容易に、かつ多量に、高精度に製作できるキャップ式紫外線ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以上の目的を達成するために、請求項1のキャップ式紫外線ランプは、頭部に装着されるカンテラ状の紫外線ランプであって、該ランプは、装着用バンドを設けたキャップケースと、この内部に収納される複数個の紫外線LELと可視光LEDとヘリウムネオンレーザ及びこれ等の電源部と、前記キャップケースの前面に装着される紫外線透過フィルタ(UV透過フィルタ)とからなることを特徴とする。
【0005】
また、請求項2のキャップ式紫外線ランプは、前記UV透過フィルタは、透過波長が230nm乃至410nmのガラス板からなることを特徴とする。
【0006】
また、請求項3のキャップ式紫外線ランプは、前記紫外線LEDと可視光LEDとヘリウムネオンレーザとは切替可能に形成されるものからなることを特徴とする。
【0007】
また、請求項4のキャップ式紫外線ランプは、前記紫外線LED又はヘリウムネオンレーザが点灯時には、その点灯を確認すべく前記可視光LEDの1個が点灯されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項5のキャップ式紫外線ランプは、前記UV透過フィルタは、透過波長210nm乃至410nmの大盤のガラス板から所望の形状にレーザ加工又はガラス切断カッタにより切断加工されるものからなり、切断されたガラス板はアニール処理されるものからなることを特徴とする。
【0009】
また、請求項6のキャップ式紫外線ランプは、前記アニール処理が、110℃/hで約6h加熱して520℃±0.5℃まで昇温した状態で約2h保持し、その後7.4℃/hで約34h降温して250℃以下にして以下自然降熱されるものからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1のキャップ式紫外線ランプによれば、キャップ式紫外線ランプは、紫外線LEDと可視光LEDとヘリウムネオンレーザとからなり、前面にUV透過フィルタがあるため紫外線照射と可視光照射とヘリウムネオンレーザの照射ができる。また、頭部に装着されるため両手がフリーとなり、照射しながら両手作業が出来、極めて便利であると共に安全作業ができる。ヘリウムネオンレーザによりキズの直接照射ができキズの発見とその形状の確認が正確にできる。
【0011】
また、本発明の請求項2のキャップ式紫外線ランプによれば、UV透過フィルタとしてはこの透過波長内のものがすべてであり、目的に応じて適切なUV透過フィルタを採用することができる。
【0012】
また、本発明の請求項3のキャップ式紫外線ランプによれば、紫外線LEDと可視光LEDとヘリウムネオンレーザは切替可能のため、目的に応じた夫々の作業を行うことができる。
【0013】
また、本発明の請求項4のキャップ式紫外線ランプによれば、紫外線LED又はヘリウムネオンレーザが点灯時に可視光LEDの1つを点灯することにより、紫外線照射又はヘリウムネオンレーザの照射が行われていることが明確となり安全作業ができる。
【0014】
また、本発明の請求項5のキャップ式紫外線ランプによれば、UV透過フィルタの製作が明示され、それにより多数個の所望形状のUV透過フィルタを効率的に、かつ高精度に製作することができる。また、アニーハ処理により表面キズの発生が少なく安全で高強度のUV透過フィルタを製作することができる。
【0015】
また、本発明の請求項6のキャップ式紫外線ランプによれば、アニーハ処理の内容が具体的に明示され、これにより、高精度、高強度のUV透過フィルタを確実に製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のキャップ式紫外線ランプの実施の形態を図面を参照して詳述する。図1及び図2に示すように、キャップ式紫外線ランプ1は、カンテラ状のキャップケース2と、この内部に収納される複数個の紫外線LED3及び可視光LED4とヘリウムネオンレーザ17これ等の電源部5と、キャップケース2の前面に装着されるUV透過フィルタ6と、キャップケース2を図略の頭部に着脱可能に係着する装着用バンド7等とからなる。なお、紫外線LED3及び可視光LED4とヘリウムネオンレーザ17とはキャップケース2内に設けられている半球面状のミラー8に装着され、夫々電源部5に連結される。
【0017】
UV透過フィルタ6は紫外線通過・可視光吸収フィルタとしての機能を有するガラス板からなり、透過波長が230nmから410nmや透過波長が270nmから390nmのものや透過波長300nmから400nmのものからなり、全体として230nmから410nmの範囲のものが用いられているがこれに限定するものではない。また、厚みも2.5mmのものが一例として採用されているが、勿論これに限定するものではない。このUV透過フィルタ6は、本実施例の場合は円形のものからなるが、これに限定するものではなく、レーザ加工により所望の形状のものに加工される。勿論、加工方法もレーザ加工に限定するものではなく、例えばガラス切断カッタでもよい。
【0018】
UV透過フィルタ6の製造方法としては図3,図4及び図5のフローチャート及び図6に示されている。即ち、前記の透過波長の大盤のガラス板9を準備し(ステップ100)、図3に示すように所望の円板状ガラス板10をレーザ加工又はガラス切断用カッタにより切断形成する(ステップ101)。次に、図4に示すように切断された円板状ガラス板10をアニール処理する(ステップ102)。これによりキャップケース2の表面に装置されるUV透過フィルタ6が製作される(ステップ103)。
【0019】
図6はアニール処理の一例を示すものである。即ち、常温状態であるガラス板を約111℃/hの昇温率で約6h昇温し、約520℃±0.5℃の状態とし、この状態で約2h保持する。次に、降温率約7.4℃/hで約34h降温し、250℃以下とし、その後、放置して自然降温として常温まで降下させる。以上により、アニール処理されたUV透過フィルム6が形成される。
【0020】
図7は、以上の構造のキャップ式紫外線ランプ1を頭部11に装着し、被検査体12のキズ13の検出の状態を示す模式図である。なお、被検査体12のキズ13の検出のためにはその表面に蛍光塗料14を塗布すると発見し易い。また、例えば、人間15(検査員)の首にはカメラ16が係着されている。
【0021】
キャップ式紫外線ランプ1が人間15(検査員)の頭部11に装着されているため、被検査12にキャップ状紫外線ランプ1のUV透過フィルタ6の面を向けることによりキズ13が紫外線照射により、明示される。また、キズ13の検出を行わない場合には紫外線LED3を消灯し、可視光LED4を点灯することにより普通の照明器具と同じく、所望の場所の照射を行うことができる。なお、紫外線LED3又はヘリウムネオンレーザ17が点灯していることを確認し得と共にその照射による危険の発生を防止するため可視光LED4の1個が点灯し、紫外線照射又はヘリウムネオンレーザが照射状態にあることを知らせるようにしている。これにより紫外線照射やヘリウムネオンレーザ照射の場合の安全性確保している。なお、紫外線照射時等には例えば眼鏡(黒メガネ)をかけ、安全性を確保するようにしてもよい。
【0022】
図8はヘリウムネオンレーザ17を被検査体12に照射している状態を示す模式図である。ヘリウムネオンレーザ17はキズ13の位置に集中照射することができるため、キズ13の検出と形状の確認等を正確に行うことができる。
【0023】
前記のように。キャップ式紫外線ランプ1は人間15の頭部11に装着されているため、人間15の両手が自由状態におかれる。このため、被検査体12を自由に動かすことが容易にできる。また、キズ13の検査の場合、被検査体12のキズ13のある面に蛍光塗料14を塗布し、キズ13の部分に蛍光塗料を残し、他を除去する作業が必要であるが、この作業を両手で行うことができる。また、検査後にこの蛍光塗料14に被検査体12から完全に取り除くことも容易にできる。また、両手が自由のため、移動時の安全性が確保され、特に悪路や傾斜路における歩行の安全性が確保される。また、首等に係着されるカメラ16を両手で持ってキズ13の部分の撮影が容易に、かつ確実にできる。
【0024】
以上のように、キャップ式紫外線ランプ1は頭部11に装着されているため、この状態で任意の場所を照射することができると共に両手が常に自由状態にあり、色々の作業を同時に、確実に行うことができる。また、被検査体12のキズ13の検出も手持ちの紫外線ランプと同じく確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のキャップ式紫外線ランプは任意の被検査体のキズ発見に便利に使用されると共に、UV透過フィルタを汎用ストロボに設けてUVストロボとして使用することができ、その利用範囲は広い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のキャップ式紫外線ランプの外観形状を示す模式的斜視図。
【図2】本発明のキャップ式紫外線ランプの内部構造を示す断面図。
【図3】本発明のキャップ式紫外線ランプに使用されるUV透過フィルタの製作方法の1つを示すための平面図。
【図4】大盤のガラス板からレーザ加工により切断形状された円板状ガラス板をアニール処理してUV透過フィルタとするプロセスを示す平面図。
【図5】本発明のキャップ式紫外線ランプのUV透過フィルタの製作方法を示すフローチャート。
【図6】UV透過フィルタ製作におけるアニール処理の一例を示す温度時間線図。
【図7】本発明のキャップ式紫外線ランプの使用状態を示す模式図。
【図8】ヘリウムネオンレーザ照射によるキズ検出の状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0027】
1 キャップ式紫外線ランプ
2 キャップケース
3 紫外線LED
4 可視光LED
5 電源部
6 UV透過フィルタ
7 装着用バンド
8 ミラー
9 大盤のガラス板
10 円板状ガラス板
11 頭部
12 被検査体
13 キズ
14 蛍光塗料
15 人間(検査員)
16 カメラ
17 ヘリウムネオンレーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部に装着されるカンテラ状の紫外線ランプであって、該ランプは、装着用バンドを設けたキャップケースと、この内部に収納される複数個の紫外線LELと可視光LEDとヘリウムネオンレーザ及びこれ等の電源部と、前記キャップケースの前面に装着される紫外線透過フィルタ(UV透過フィルタ)とからなることを特徴とするキャップ式紫外線ランプ。
【請求項2】
前記UV透過フィルタは、透過波長が230nm乃至410nmのガラス板からなることを特徴とする請求項1に記載のキャップ式紫外線ランプ。
【請求項3】
前記紫外線LEDと可視光LEDとヘリウムネオンレーザとは切替可能に形成されるものからなることを特徴とする請求項1に記載のキャップ式紫外線ランプ。
【請求項4】
前記紫外線LED又はヘリウムネオンレーザが点灯時には、その点灯を確認すべく前記可視光LEDの1個が点灯されることを特徴とする請求項3に記載のキャップ式紫外線ランプ。
【請求項5】
前記UV透過フィルタは、透過波長210nm乃至410nmの大盤のガラス板から所望の形状にレーザ加工又はガラス切断用カッタにより切断加工されるものからなり、切断されたガラス板はアニール処理されるものからなることを特徴とする請求項1に記載のキャップ式紫外線ランプ。
【請求項6】
前記アニール処理が、110℃/hで約6h加熱して520℃±0.5℃まで昇温した状態で約2h保持し、その後7.4℃/hで約34h降温して250℃以下にして以下自然降熱されるものからなることを特徴とする請求項5に記載のキャップ式紫外線ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−189357(P2006−189357A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2234(P2005−2234)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(593210525)
【Fターム(参考)】