説明

キャップ

【課題】キャップ全体の強度を維持しつつ、且つ連通部の抜け止めの機能を損なわずに、連通部を拡張する方向への応力に対しては相対的に変形し易いキャップを提供することを目的とする。
【解決手段】カーペットの引き出し部分の外周囲の所定部分に設置され、引き出し部分から引き出されるケーブルが導入される導入開口を有する脚台部と、脚台部から立ち上がって形成され、引き出し部分を空間を開けて覆うと共に、導入開口から導入されるケーブルが引き出される引き出し開口を有するカバー部とを備え、導入開口及び引き出し開口が、ケーブルの太さよりも広い幅に形成されると共に、ケーブルの太さよりも狭い幅の連通部を介して連通しており、脚台部及びカバー部の少なくとも一方には、連通部の幅を拡張する方向への応力を吸収する応力吸収部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、二重床上に敷設されたカーペット等の仕上材に形成される線材の引き出し部分を覆うキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィスなどの床下側に線材を配線して床面上に線材を引き出す二重床構造では、二重床内から線材を引き出す箇所において、二重床上に敷設されたカーペット等の仕上材に、線材の引き出し部分(開口や切欠き等)が設けられる。そして、その引き出し部分には、引き出される線材が踏みつけられることを防止するため、或いは引き出し部分の美観を損なわないようにするために、キャップが設置される。
【0003】
例えば、特許文献1には、引き出し部分の周囲に設置されて線材が導入される導入開口を有する脚台部と、脚台部の内側から立ち上がって形成され、引き出し部分を覆うと共に導入開口から導入された線材が引き出される引き出し開口を有する略トンネル形状のカバー部と、脚台部の裏面に設けられる簡易固着部材とを有するキャップが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、引き出し部分の周囲に設置されて線材が導入される導入開口を有する脚台部と、脚台部の内側から立ち上がって形成され、引き出し部分を覆うと共に導入開口から導入された線材が引き出される引き出し開口を有する略ドーム形状のカバー部とを有するキャップにおいて、導入開口と引き出し開口とがスリット(連通部)を介して連通する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2820633号
【特許文献2】特願2010−97202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のキャップでは、設置後に歩行者に蹴飛ばされるなどして仕上材(カーペット等)から簡易固着部材(マジックテープ等)が剥がれてしまうと、キャップが外れて紛失してしまうような場合があった。
【0007】
一方で特許文献2のキャップは、線材(ケーブル)に一度装着すると、連通部の抜け止めの機能によって安定した状態に設置可能であるものの、キャップ全体の強度(剛性)が高いため、着脱の際に連通部を広げることがやや困難であった。その結果、連通部の幅を狭く設計すると太いケーブルを通すことが困難となり、逆に連通部の幅を広く設計すると細いケーブルに対して抜け止め機能が働かなくなるという問題があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するために提案するものであって、キャップ全体の強度を維持しつつ、且つ連通部の抜け止めの機能を損なわずに、連通部を拡張する方向への応力に対しては相対的に変形し易いキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のキャップは、二重床上の仕上材に形成される線材の引き出し部分を覆うキャップであって、前記引き出し部分の外周囲の所定部分に設置され、前記引き出し部分から引き出される線材が導入される導入開口を有する脚台部と、前記脚台部から立ち上がって形成され、前記引き出し部分を空間を開けて覆うと共に、前記導入開口から導入される線材が引き出される引き出し開口を有するカバー部とを備え、前記導入開口及び前記引き出し開口が、前記線材の太さよりも広い幅に形成されると共に、前記線材の太さよりも狭い幅の連通部を介して連通しており、前記脚台部及び前記カバー部の少なくとも一方には、前記連通部の幅を拡張する方向への応力を吸収する応力吸収部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、脚台部とカバー部とが連結して相互に補強していることによるキャップ全体の強度(剛性)向上の効果と連通部の抜け止めの効果との両方を確保しつつ、連通部の幅を拡張する方向への応力に関しては相対的に変形し易くすることができ、その分だけ作業を簡易化できると共に、キャップに無理な応力をかけて破損してしまうような危険性も極力排除することができる。
【0011】
その結果、連通部の幅を狭く設計しても太いケーブルを通すことが容易であり、細いケーブルに対しても抜け止めの機能を十分に発揮させることが可能になり、使い勝手の良いキャップを実現することができる。
【0012】
本発明のキャップは、前記応力吸収部が前記脚台部にのみ形成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、応力吸収部がカバー部に形成されない分だけ、キャップ全体の強度を向上することができる。
【0014】
本発明のキャップは、前記応力吸収部が少なくとも前記脚台部に形成され、前記仕上材に簡易固着するための簡易固着部材が、前記脚台部の裏面における少なくとも前記応力吸収部の周囲に設けられていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、キャップを線材に装着して仕上材上に設置すると応力吸収部の周囲の脚台部が仕上材に簡易固着されるため、連通部が拡張され難くなり、その分だけ線材から外れ難くなる。
【0016】
本発明のキャップは、前記連通部が形成されている部位と略反対側に前記応力吸収部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、線材引き出し部分から最も遠いところに応力吸収部を設けたので、比較的小さな応力吸収部を設けるだけでも、連通部を大きく拡張することができる。
【0018】
本発明のキャップは、記脚台部及び前記カバー部の少なくとも一方を縁から切り欠くようにして前記応力吸収部が形成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、キャップの一部を切り欠くという簡易な構成によって、本発明のキャップを実現することができる。
【0020】
本発明のキャップは、前記切り欠かれた前記応力吸収部の根元部分が略円弧形状に形成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、キャップを線材に対して着脱する際の変形によって根元部分に応力が集中してキャップを破損してしまう、といったような事態を回避することができる。
【0022】
本発明のキャップは、前記切り欠かれた前記応力吸収部において、根元部分の幅よりも開放端部の幅の方が広く形成されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、キャップを変形させる際に開放端部が干渉するような事態を回避することができ、その分だけキャップを変形させ易い。
【0024】
本発明のキャップは、前記脚台部及び前記カバー部の少なくとも一方に開口を穿つようにして前記応力吸収部が形成されていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、キャップの縁を分断するような位置に応力吸収部が形成されないため、その分だけキャップの強度を向上できる。
【0026】
本発明のキャップは、前記応力吸収部の周縁の一部に、前記周縁の他の部分よりも応力によって変形し易い変形容易部が設けられ、前記変形容易部が、略円弧形状に形成されていることを特徴とする
【0027】
この構成によれば、キャップを線材に対して着脱する際の変形によって変形容易部に応力が集中してキャップを破損してしまう、といったような事態を回避することができる。
【0028】
本発明のキャップは、前記連通部の両側に位置する対向端部の少なくとも一方において、前記対向端部の他の部分よりも厚さを薄くした薄厚部分を形成することで前記応力吸収部が形成されていることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、キャップ全体を変形させなくても連通部を拡張することができるため、その分だけ作業性が向上できる。また、連通部の拡張の容易性を考慮して連通部の幅を予め狭く設定することもでき、その場合には抜け止めの効果をさらに向上できる。
【0030】
本発明のキャップは、前記対向端部に溝を形成することで前記薄厚部分が形成され、前記溝の底部分の断面が略円弧形状に形成されていることを特徴とする
【0031】
この構成によれば、対向端部に溝を穿つという簡易な構成によって、本発明のキャップを実現することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のキャップは、脚台部とカバー部とが連結して相互に補強していることによるキャップ全体の強度(剛性)向上の効果と連通部の抜け止めの効果との両方を確保しつつ、連通部の幅を拡張する方向への応力に関しては相対的に変形し易くすることができ、その分だけ線材に対する着脱時の作業を簡易化できると共に、キャップに無理な応力をかけて破損してしまうような危険性も極力排除することができる。
【0033】
また、連通部の幅を狭く設計しても太いケーブルを通すことが容易であり、細いケーブルに対しても抜け止めの機能を十分に発揮させることが可能になり、使い勝手の良いキャップを実現することができる。
【0034】
さらに、連通部の幅を容易に拡張できる構成であるため、通常状態の連通部の幅を極力狭くすることが可能となり、その結果、抜け止めの機能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)は第1実施形態のキャップの平面図、(b)はその正面図、(c)はその背面図、(d)はその側面図、(e)はその斜視図。
【図2】(a)は連通部拡張前の応力吸収部の模式図、(b)は連通部拡張後の応力吸収部の模式図。
【図3】(a)は第2実施形態のキャップの平面図、(b)はその正面図、(c)はその背面図、(d)はその側面図、(e)はその斜視図。
【図4】(a)は第3実施形態のキャップの平面図、(b)はその正面図、(c)はその背面図、(d)はその側面図、(e)はその斜視図。
【図5】(a)は第4実施形態のキャップの平面図、(b)はその正面図、(c)はその背面図、(d)はその側面図、(e)はその斜視図。
【図6】(a)乃至(h)は他の実施形態のキャップの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づいて説明するが、本発明は係る実施形態に限定されるものではない。
【0037】
〔第1実施形態のキャップ〕
本発明による第1実施形態のキャップ(線材引き出し部分から引き出される線材に装着されるキャップ)について、図1及び図2を用いて説明する。
【0038】
第1実施形態のキャップ1は、図1(a)乃至(e)に示すように、二重床上の仕上材であるカーペット100に形成される線材の引き出し口110(線材引き出し部分)を覆うものであり、二重床下から引き出される線材であるケーブル120の根元部分に装着されるようにして、カーペット100に取り付けられる。キャップ1は、例えば脚台部12と、カバー部14とから構成され、硬質で弾性を有する高分子樹脂等で一体的に形成されている。
【0039】
脚台部12は、図示例では平面視で略円形リング状に形成されており、引き出し口110の外周囲の所定部分に設置される。脚台部12に囲まれた略円形状の部分は、引き出し口110から引き出されるケーブル120が導入される導入開口13になっている。導入開口13は、ケーブル120の中で最も太い部分よりも広い幅に形成され、また、複数本のケーブル120をまとめて導入可能な大きさとしても良い。
【0040】
略リング状に形成された脚台部12には、後述する引き出し開口15の下端に隣接する部分にケーブル120の幅よりも幅が狭いスリット状の間隙でなる連通部16が形成されており、導入開口13と引き出し開口15とがこの連通部16を介して連通している。脚台部12における連通部16の両側に位置する部分である対向端部12a・12aは、脚台部12の内側から外側に向かって連通部16の幅が漸次広くなるテーパー状の部分が外周から形成されている。
【0041】
また、例えばケーブル120がLANケーブルのような線材(最細部分の太さ5.5mm程度)であれば、連通部16の少なくとも一部の幅を少なくとも5.5mmより狭く、好適には例えば0mm以上4mm以下の範囲で狭くするなど、少なくともケーブル120の中で最も細い部分の太さよりも狭くすればよい。更には、例えばケーブル120がVCT(ビニールキャブタイヤ)ケーブルのような線材(最細部分の太さ11mm程度)であれば、連通部16の少なくとも一部の幅を少なくとも11mmより狭く、好適には例えば0mm以上7mm以下の範囲で狭くするなど、少なくともケーブル120の中で最も細い部分の太さよりも狭くすればよい。更には、例えばケーブル120が電話線ケーブルのような線材(短軸の太さ2mm程度)であれば、連通部16の少なくとも一部の幅を少なくとも2mmより狭く、好適には例えば0mm以上1mm以下の範囲で狭くするなど、少なくともケーブル120の短軸方向の太さよりも狭くすればよい。要は、これらのケーブル120等の線材の種類や太さは適宜とすることが可能であり、各種各太さの線材の最も細い部分よりも幅の狭い連通部16を形成すればよい。
【0042】
尚、連通部16は、ケーブル120の幅よりも狭い範囲で離間する構成以外に、対向端部12a・12a同士が当接して連通部16の幅が常態でゼロの切れ目とする構成としてもよい。
【0043】
かかる構成に加え図示例では、この連通部16の幅を拡張する拡張方向への応力がキャップ1に加えられた際に、この拡張方向への応力に対して変形し易い部位(すなわち応力を吸収する部位であり、以下これを応力吸収部18と呼ぶ)が、脚台部12における連通部16の略反対側の端縁(すなわちキャップ1の縁)から切り欠くようにして設けられている。
【0044】
応力吸収部18は、細い間隙としてのスリット状に形成され、その根元部分18aが平面視で略円弧形状に形成されていると共に、根元部分18aからキャップ1の外周に向けて連続する一対の開放端部18b・18bが平面視で内から外に向けてテーパー状に広がって形成されている。
【0045】
ここで、根元部分18aは、連通部16の拡張に応じて応力吸収部18が変形する際に一種の支点のような働きをする部分であり、応力吸収部18の中で応力が集中し易い部分でもある。また、開放端部18b・18bは、連通部16の拡張に応じて応力吸収部18が変形する際に大きく動く部分であり、応力吸収部18の中で相互に干渉しやすい部分でもある。
【0046】
脚台部12の裏面12bには図示しない円柱突起が複数設けられており、この円柱突起を貫通するようにして簡易固着部材としてのマジックテープ17(登録商標)が取り付けられている。そして、円柱突起の先端を加熱溶融してドーム形状の係止部12cを形成することにより、マジックテープ17を脚台部12の裏面12bに強固に固定している。尚、脚台部12の裏面12bへのマジックテープ17の取り付けは、両面テープや接着剤による貼着、リベット留め、ビス留め、ボルト留め、熱融着等の各種方法を用いること、或いはこれらを任意に複数選択して組み合わせて用いることが可能である。
【0047】
カバー部14は、脚台部12の内側端から立ち上がって形成されており、図示例では脚台部12から上方且つ内側に向かって略ドーム形状に形成され、導入開口13及び引き出し口110の上方を空間を開けて覆っている。この空間は、例えば、引き出し口110から引き出されて導入開口13から導入されるケーブル120が、その折り曲げ方向を選択可能な程度の大きさに形成されている。また、カバー部14には、キャップ1から外部にケーブル120が引き出される引き出し開口15が形成されている。尚、ケーブル120にキャップ1が取り付けられてカーペット100上に設置された状態で周囲の任意の方向から見た際に、カーペット100の引き出し口110にカバー部14の一部が重なって見えるような方向が少なくとも一つでもあれば、カバー部14によって引き出し口110が覆われているものとする。
【0048】
この引き出し開口15は、カバー部14の頂上付近よりも僅かに下方の位置からカバー部14の正面視の下端、即ち脚台部12との連結部分にかけて長孔状に形成され、上述の連通部16を介して導入開口13と連通している。このときカバー部14は、長孔状の引き出し開口15の円弧形状の下側にも爪状に延設しており、連通部16の両側の対向端部12a・12aをそれぞれ補強していると共に、ケーブル120の表面を傷つけないように保護してもいる(以下、この爪状の部分を爪部14aと呼ぶ)。
【0049】
引き出し開口15は、ケーブル120の最も太い部分の太さよりも広い幅に形成することが好ましく、複数本のケーブル120を導入可能な程度に幅広としてもよい。尚、引き出し開口15は、カバー部14の頂上付近よりも僅かに下方の位置からカバー部14の正面視の下端、即ち脚台部12との連結部分にかけて設ける構成の他に、前記下端から頂点付近を越えて逆側に至る大きさに形成することも可能である。その場合には、二重床下から引き出されるケーブル120を余裕を持って保護しつつ、或る程度の自由度を持ってキャップ1から外部に引き出すことができる。その結果、カーペット100上にキャップ1が一旦簡易固着すると、ケーブル120を多少動かした程度では、このケーブル120の動きがキャップ1に伝わらないため、簡易固着が容易には外れ難くなる。
【0050】
そして、このような第1実施形態のキャップ1をケーブル120に装着する際、図2(a)及び(b)に示すように、例えばキャップ1の脚台部12を連通部16の拡張方向Aへ引っ張ると、応力吸収部18の幅が狭くなるようにキャップ1全体が変形する。すなわち本来であれば、キャップ1の強度を担っている脚台部12及びカバー部14は、拡張方向Aの応力に対してもその強度を発揮するため容易には変形しない構造であるにも関わらず、応力吸収部18が形成されていることにより、この応力吸収部18の幅を狭める拡張方向Aの応力に関しては、脚台部12及びカバー部14は比較的容易に変形することとなる。これにより第1実施形態のキャップ1は、図2(b)のように連結部16が拡張した状態にすることができ、ケーブル120に容易に装着できる。そして、ケーブル120を装着した後、連通部16の拡張方向Aへの引っ張りを解除すると、キャップ1全体が元も状態(図2(a))に戻り、ケーブル120を抜け止めできるようになっている。
【0051】
その一方でキャップ1は、拡張方向A以外の応力に対する脚台部12及びカバー部14の強度はほとんど損なわれていないため、例えば人による踏圧や歩行者に蹴飛ばされるといった外部応力に対して強い強度を発揮することができる。特に、応力吸収部18が脚台部12にのみ形成されているため、キャップ1の強度低下を抑えることができる。
【0052】
また、第1実施形態のキャップ1では、脚台部12における連通部16の略反対側(すなわちキャップ1の中で連通部16から最も遠い位置)に応力吸収部18が設けられているため、応力吸収部18の変位量に対する連通部16の変位量が最も大きくなり、小さな応力吸収部18で連通部16を大きく拡張することができる。
【0053】
さらに、第1実施形態のキャップ1では、応力吸収部18の根元部分18aが略円弧形状に形成されており、応力が集中するような角状の部分が存在しないため、応力吸収部18が変形する際に応力が局所的に集中して破損してしまうような事態を回避することができる。
【0054】
さらに、第1実施形態のキャップ1では、応力吸収部18の一対の開放端部18b・18bが外に向けてテーパー状に広がって形成されているため、拡張方向Aの応力により応力吸収部18が変形したときに、開放端部18b・18b同士が干渉することがなく、その分だけ連通部16を拡張させ易い。
【0055】
このようにして第1実施形態のキャップ1がケーブル120に装着されると、ケーブル120は、キャップ1の導入開口13から導入されて引き出し開口15から引き出された状態となる。このとき、キャップ1は、ケーブル120の太さよりも連通部16の幅が狭く形成されているため、ケーブル120が一旦装着されると、連通部16の両側の対向端部12a・12aにケーブル120が係止されることになり、安定した装着状態を維持することができる。
【0056】
また、脚台部12の対向端部12a・12aには、内側から外側にかけて連通部16が広がるようなテーパーが形成されているため、キャップ1に対してケーブル120を装着し易くなされている。
【0057】
そしてキャップ1は、脚台部12が引き出し口110の外周囲に配置されると、裏面12bのマジックテープ17によってカーペット100上に簡易固着される。このとき、脚台部12の対向端部12a・12aもマジックテープ17によってカーペット100上に簡易固着されるため、連通部16の拡張方向に応力がかかっても、容易には拡張しない。その一方で、キャップ1をカーペット100から剥がしてからであれば、連通部16を容易に拡張することができる。即ち、装着時の安定性と着脱時の作業性とを両立できることになる。
【0058】
同様に、脚台部12における応力吸収部18の両側の部分もマジックテープ17によってカーペット100上に簡易固着されるため、カーペット100上に設置された状態では仮に連通部16の拡張方向に応力がかかっても容易には応力吸収部18は変形(吸収)せず、その結果、連通部16が拡張することはない。その一方で、キャップ1をカーペット100から剥がした後であれば、連通部16を拡張する応力を応力吸収部18で吸収できることになる。即ちこの点においても、装着時の安定性と着脱時の作業性とを両立できることになる。
【0059】
このようにして設置された第1実施形態のキャップ1は、引き出し口110及びケーブル120の根元部分を保護する側面がある一方、引き出し口110及びケーブル120の根元部分を隠して美観を向上するような側面もあり、その少なくとも一方の効果を発揮すれば良い。
【0060】
また、第1実施形態のキャップ1は、略ドーム形状のカバー部14の頂上付近よりも僅かに下方の位置からカバー部14の正面視の下端、即ち脚台部12との連結部分にかけて長孔状に形成されているため、ケーブル120が引き出し開口15の縁に引っかかった状態で歩行者に上から踏まれるような事態を極力回避することができる。
【0061】
また、カバー部14の引き出し開口15を頂上付近よりも下方の位置から設ける構成により、比較的踏まれやすいカバー部14の頂上付近を確実に保護し、ケーブル120が踏まれることを極力回避すると共に、ケーブル120が引き出し開口15の縁で傷つく危険性も排除できる。
【0062】
また、第1実施形態のキャップ1は、連通部16の間隔を容易に拡張できる構成であるため、このキャップ1に力が加えられていない通常状態における、連通部16の間隔を極力狭くすることが可能となる。
【0063】
すなわち、仮にキャップにおいて連通部の間隔が容易には拡張できない構成である場合には、少なくともキャップを破損しない程度の変形でケーブル120を通すことができる程度に連通部の間隔を設定する(例えば、狭くし過ぎないように設定する)必要があるが、この第1実施形態のキャップ1では容易に連通部16を拡張できるため、例えば通常状態における連通部16の間隔を0mmにまで狭めることも可能であり、その結果、間隔を狭くした分だけキャップ1に抜け止めの機能を向上できる。
【0064】
換言すれば、仮に連通部16の幅を狭く設計しても太いケーブル120を通すことが容易であり、その一方で、細いケーブル120に対しても抜け止めの機能を十分に発揮させることが可能になり、使い勝手の良いキャップを実現することができる。
【0065】
さらには、第1実施形態のキャップ1は、略ドーム形状のカバー部14の頂上付近までは引き出し開口15が開口していないものの、頂上に近いところまでは開口しているため、この引き出し開口15の略水平方向から略垂直上方向までの広い範囲でケーブル120を引き出すことができる。その一方で、略ドーム形状のカバー部14の頂上付近までは引き出し開口15が開口しておらず、キャップ1の内部を覆う構造となっているため、引き出し口110を外部から見え難くして美観を向上することもできる。また、引き出し口110から二重床の内部に塵や埃などが侵入することも防止できる。
【0066】
〔第2実施形態のキャップ〕
次に、第2実施形態のキャップについて、図3を用いて説明する。尚、第2実施形態において、第1実施形態と同一構成の部分については同じ符号を付し、その説明を一部省略する。
【0067】
第2実施形態のキャップ2は、図3(a)乃至(e)に示すように、第1実施形態と同様にケーブル120に装着され、カーペット100上に簡易固着されるものであり、脚台部12とカバー部14とから構成されている。
【0068】
脚台部12は、後述する連通部26に対応する位置で切断されたような略C字形に形成され、その内側に導入開口13が形成されている。カバー部14には、略ドーム形状のカバー部14の頂上付近から中程にかけて、長孔状の引き出し開口15が形成されており、この引き出し開口15の下端と導入開口13とを連通する形で、連通部26が形成されている。
【0069】
また、脚台部12の裏面12b側には、簡易固着部材としての多数の係合突起12eが設けられている。この係合突起12eは、先端が略錨形状或いは略J字形状等に形成され、これがカーペット100の繊維に絡むことにより簡易固着を実現する。尚、この係合突起12eは、脚台部12と一体に形成されていても良いし、脚台部12に対して植え付けられていても良く、その形状も、カーペット100の繊維に絡むことができる形状であれば何でもよい。
【0070】
すなわち、第2実施形態のキャップ2は、脚台部12ではなくカバー部14に連通部26が設けられている点が第1実施形態のキャップ1とは異なるものの、連通部26が導入開口13と引き出し開口15とを連通するように形成されている点では共通している。
【0071】
そして、連通部26によって狭い幅で分割されて対向しているカバー部14の一対の対向端部14b・14bには、対向端部14b・14bの下方に向かって連通部26の幅が漸次広くなるようにテーパー状部分が形成されることにより、連通部26の内側から外側に向かって漸次幅が広くなる領域が設けられている。更に、連通部26の両側部分に位置する一対の対向端部14b・14bは、カバー部14の他の部分に比べて厚みが薄い薄肉部分として形成されている。
【0072】
かかる構成に加え、第2実施形態のキャップ2には、脚台部12における連通部16の略反対側の端縁側からカバー部14まで切り欠くようにして応力吸収部28が設けられている。この応力吸収部28は、根元部分28aから一対の開放端部28b・28bにかけて全体的に広がるように切り欠かれて形成されており、この点が第1実施形態のキャップ1における応力吸収部18とは異なる。
【0073】
第2実施形態のキャップ2では、応力吸収部28がこのような構成であるため、連通部26を拡張するための応力により応力吸収部28が変形したときに、開放端部28b・28bだけでなく、応力吸収部28同士が干渉する危険性を極力排除することができる。
【0074】
また、第2実施形態のキャップ2では、対向端部14b・14bが他のカバー部14よりも薄く形成されている(すなわち、薄厚部分である)ため、ケーブル120への装着時に、連通部26が拡張するだけでなくこの対向端部14b・14bもある程度変形する。すなわち、ケーブル120を通過させられるだけの間隙を連通部26の拡張でのみ実現するのではなく、ある程度は対向端部14b・14bの変形によって拡張することができるため、その分だけ連通部26の拡張範囲(すなわち、応力吸収部28の大きさ)を小さくすることができ、応力吸収部28が小さくて済む分だけキャップ2の強度を向上させることが可能となる。換言すれば、第2実施形態のキャップ2における対向端部14b・14bは、連通部26を拡張する方向の応力を吸収する応力吸収部としても機能している。
【0075】
また、第2実施形態のキャップ2は、略ドーム形状のカバー部14の頂上付近まで引き出し開口15が開口しているため、この引き出し開口15から垂直上方向にケーブル120を引き出すことができる。
【0076】
そして、第2実施形態のキャップ2は、引き出し開口15がカバー部14の頂点付近を含む領域に形成されている構成、及び、対向端部14b・14bの間に連通部26が形成されている構成に対応する効果以外、第1実施形態のキャップ1と同様の効果も奏する。
【0077】
〔第3実施形態のキャップ〕
次に、第3実施形態のキャップについて、図4を用いて説明する。尚、第3実施形態において、第1及び第2実施形態と同一構成の部分については同じ符号を付し、その説明を一部省略する。
【0078】
第3実施形態のキャップ3は、図4(a)乃至(e)に示すように、第1実施形態と同様にケーブル120に装着され、カーペット100上に簡易固着されるものであり、脚台部32とカバー部34とから構成されている。
【0079】
カバー部34は、平面視略正方形で略直方体状の内部空間を有する下面開放の中空箱型に形成されていると共に、その四つの側壁の下端を囲むように脚台部32が外側に屈曲して水平に延設されている。
【0080】
この脚台部32によって囲まれた略正方形の開口が導入開口33になっていると共に、脚台部32の裏面32bには、マジックテープ17が接着剤で貼着されている。
【0081】
カバー部34には、導入開口33からキャップ3内に導入されるケーブル120を外部に引き出すための引き出し開口35が、カバー部34の上面の中央付近から一方向の側壁の中ほどにかけて長孔状に形成されている。尚、ケーブル120の太さに対する導入開口33及び引き出し開口35の幅は、第1及び第2実施形態の導入開口13及び引き出し開口15の幅と同様に、ケーブル120の中で最も太い部分の太さよりも広い幅に形成されている。
【0082】
カバー部34における引き出し開口35の下端から脚台部32にかけての領域と、それに続く脚台部32の領域には、引き出し開口35の下端と導入開口33とを連通するようにして連通部36が設けられている。
【0083】
すなわち、第3実施形態のキャップ2は、脚台部32とカバー部34の両方に亘って連通部36が設けられている点が第1実施形態のキャップ1や第2実施形態のキャップ2とは異なるものの、連通部36が導入開口33と引き出し開口35とを連通するように形成されている点では共通している。
【0084】
かかる構成に加え、第3実施形態のキャップ3の脚台部32には、連通部36が設けられている辺の反対側の辺の両側の頂点部分それぞれに、略矩形の応力吸収部38・38が脚台部32の頂点を切り欠くように設けられており、この点が第1及び第2実施形態のキャップ1及び2とは大きく異なる。
【0085】
この第3実施形態の応力吸収部38も、根元部分38aは略円弧形状になっていると共に、根元部分38aから一対の開放端部38b・38bにかけて全体的に広がるように形成されており、第1実施形態のキャップ1における応力吸収部18や第2実施形態のキャップ2における応力吸収部28に関する効果と同様の効果を奏するものである。更に、応力吸収部38が複数(この場合は二つ)設けられているため、その分だけ連通部36を拡張させ易いという更なる利点がある。
【0086】
また、第3実施形態のキャップ3は、脚台部32とカバー部34の両方に亘って連通部36が設けられており、連通部36が水平方向と垂直方向とに亘って立体的に形成されるため、その分だけケーブル120の抜け止め機能が向上するという利点もある。
【0087】
〔第4実施形態のキャップ〕
次に、第4実施形態のキャップについて、図5を用いて説明する。尚、第4実施形態において、第1乃至第3実施形態と同一構成の部分については同じ符号を付し、その説明を一部省略する。
【0088】
第4実施形態のキャップ4は、図5(a)乃至(e)に示すように、第1実施形態と同様にケーブル120に装着され、カーペット100上に簡易固着されるものであり、脚台部42とカバー部44とから構成されている。
【0089】
脚台部42は、片端が切断されたような略サーキット形状に形成され、その内側には引き出し口110から引き出されるケーブル120が導入される導入開口43が形成されていると共に、脚台部42の裏面42bには、マジックテープ17が両面テープで貼着されている。
【0090】
カバー部44は、脚台部42の内側の端から立ち上がって形成されており、図示例では脚台部42から上方且つ内側に向かって略ドーム形状に立ち上がって形成され、導入開口43及び引き出し口110の上方を空間を開けて覆っている。即ち、カバー部44は、片端が切断された略サーキット形状をドーム形状に膨らませたような略トンネル形状をしている。
【0091】
カバー部44における略サーキット形状が切断されたような片端(すなわち、略トンネル形状の入り口に相当する部分)は、導入開口43と大きく連通した開口となっており、この部分も導入開口43である。また、カバー部44の線状の頂上部分44bには、導入開口43からキャップ4内に導入されるケーブル120を外部に引き出すための長孔形状の引き出し開口45が、この頂上部分44bに沿うように形成されている。尚、ケーブル120の太さに対する導入開口43及び引き出し開口45の幅は、第1乃至第3実施形態と同様に、ケーブル120の太さよりも広い幅に形成されている。
【0092】
カバー部44において、このカバー部44が切断されている片端側には、引き出し開口45と導入開口43とを連通するようにして連通部46が設けられている。この連通部46は、第1乃至第3実施形態と同様に、ケーブル120の中で最も細い部分の太さよりも狭い幅に形成されている。
【0093】
かかる構成に加え、第4実施形態のキャップ4のカバー部44には、引き出し開口45における連通部46の反対側の端縁からこの連通部46とは反対側に切り欠くようにして、スリット状の応力吸収部48が形成されており、この点が第1乃至第2実施形態のキャップとは大きく異なる。
【0094】
このような第4実施形態のキャップ4をケーブル120に装着する際、例えばキャップ4の脚台部42を連通部46が拡張する方向へ引っ張ると、応力吸収部48の幅が広くなるようにキャップ4全体が変形する。これにより第4実施形態のキャップ4は、連結部46が拡張した状態にすることができ、ケーブル120に容易に装着できる。すなわち、第1乃至第3実施形態の応力吸収部は、幅が狭くなるように変形することで連通部を拡張する方向の応力を吸収するようになっていたが、この第4実施形態の応力吸収部48では、幅が広くなるように変形することで応力を吸収する。
【0095】
従って、この応力吸収部48は、通常状態における幅が略ゼロであっても良く、そうすることで、応力吸収部48の幅を狭くした分だけキャップ4全体の強度を向上できると共に、キャップ4の内部を外部から見え難くすることで美観を向上できる。
【0096】
また、第4実施形態のキャップ4では、応力吸収部48の長さによって連通部46の拡張のし易さを設定できる。具体的には、例えば応力吸収部48を長く設計すると、連通部46を容易に且つ広く拡張することができる。逆に、応力吸収部48を狭く設計する程、連通部46を拡張しにくく且つ拡張幅も狭くなるが、その分だけキャップ4全体の強度を向上できる。
【0097】
また、第4実施形態のキャップ4では、応力吸収部48の根元部分48aが、応力吸収部48の幅よりも大きい直径の略円状に形成されており、応力が集中するような角状の部分が存在しないと共に、応力を分散する周長を大きく確保しているため、応力吸収部48が変形する際に応力が局所的に集中して破損してしまうような事態を回避することができる。尚、根元部分48aは、第1実施形態の根元部分18aのように応力吸収部48の幅と同じ程度の直径の略円弧形状であっても良いし、円弧形状とせず、矩形等の別の形状であっても構わない。
【0098】
また、第4実施形態のキャップ4では、第1乃至第3実施形態の各キャップとは異なり、応力吸収部48が脚台部42には設けられていないため、脚台部42の裏面42bに設けるマジックテープ17の面積をその分だけ増加でき、その結果、カーペット100への簡易固着性能を向上することができる。
【0099】
このように、第4実施形態のキャップ4は、応力吸収部48がカバー部44に形成されているため連通部を拡張する際の応力吸収の挙動が異なるものの、上述の第1乃至第3実施形態のキャップ1乃至3と同様に、脚台部42がカバー部44を補強することによるキャップ4全体の強度向上の効果と連通部46の抜け止めの効果との両方を確保しつつ、連通部46の幅を拡張する方向への応力に関しては相対的に変形し易くすることができ、その分だけ着脱時の作業を簡易化できると共に、キャップに無理な応力をかけて破損してしまうような危険性も極力排除することができる。
【0100】
〔実施形態の変形例及び他の実施形態等〕
本明細書開示の発明は、各発明や各実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものをも含み、下記の変形例等も包含する。
【0101】
例えば、上述の第1乃至第4実施形態において、キャップを硬質で弾性を有する高分子樹脂で形成する場合について述べたが、応力吸収部を設けた場合に作業者がキャップの連通部を拡張できる程度の弾性を有するものであれば、その材質は特に限定せず、木製や金属製、カーボンファイバーやグラスファイバーを含む樹脂製(FRP:Fiber Reinforced Plastics)、硬質の紙製、廃プラスチック等のリサイクル製品製、或いはそれらの複合製品であっても構わない。
【0102】
また、キャップは必ずしも一体に形成する必要はなく、必要な強度を有するのであれば、別体を複合して形成しても同等の効果を得ることができるものである。具体的には、第1乃至第4実施形態においてカバー部と脚台部とを別体に形成するなどしてもよい。
【0103】
また、第1、第2及び第4実施形態において、応力吸収部にスリット状の間隙を適用した場合について述べたが、他の形状の間隙であっても良いし、脚台部を複数の部分に大きく分割するような構成でも良いし、応力を吸収できるのであれば間隙である必要もなく蛇腹等の連続構造体であっても良い。更に、応力吸収部は、脚台部を分断するように形成しても良いし、脚台部の途中まで切り欠くように形成しても良いし、脚台部だけでなくカバー部にまで連続的に切り欠くように形成しても良い。ここで、各種応力吸収部に関する具体例を図6(a)乃至(h)を用いて説明する。
【0104】
図6(a)に示すキャップ200は、脚台部12、導入開口13(図示せず)、カバー部14及び引き出し開口15が第1実施形態のキャップ1と同じ構成であるが、連通部201が脚台部12とカバー部14との両方に亘ってジグザグに形成されている点と、応力吸収部202が脚台部12を大きく分割するように切り欠かれて形成されている点とが異なる。このキャップ200は、応力吸収部202を大きく変形させることができるため、その分だけ連通部201を大きく拡張して太いケーブル120を通すことができる。また、連通部201が脚台部12とカバー部14との両方に亘ってジグザグに形成されているため、ケーブル120を係止する部分が多く、その分だけ抜け止め効果を向上できる。
【0105】
図6(b)に示すキャップ210は、脚台部12、導入開口13(図示せず)、カバー部14及び引き出し開口15が第1実施形態のキャップ1と同じ構成であるが、ケーブル120の抜け止めのために脚台部12の対向端部12a・12aが連通部211の周囲だけ引き出し開口15側に突出している点と、連通部211を拡張させ易くするために応力吸収部212が脚台部12だけでなくカバー部14の下側の一部にまで切り欠かれて(切り込まれて)形成されている点とが異なる。このキャップ210は、連通部211を拡張させ易いため、その分だけ連通部211を大きく拡張して太いケーブル120を通すことができる。また、脚台部12の対向端部12a・12aが連通部211の周囲だけ引き出し開口15側に突出しているため、ケーブル120の抜け止め機能をさらに向上できる。
【0106】
図6(c)に示すキャップ220は、脚台部12、導入開口13(図示せず)、カバー部14、引き出し開口15及び連通部16が第1実施形態のキャップ1と同じ構成であるが、カバー部14における引き出し開口15の反対側に略菱形の開口を穿つようにして応力吸収部221が形成されている点が大きく異なる。このキャップ220をケーブル120に装着する際、キャップ220の脚台部12を連通部16が拡張する方向へ引っ張ると、略菱形の応力吸収部221の長軸の幅が狭くなるようにキャップ220全体が変形することで、応力を吸収することができる。
【0107】
このキャップ220では、キャップ220の縁を分断するような位置に応力吸収部222が形成されないため、その分だけキャップの強度を向上できる。また、応力吸収部222が脚台部12には設けられていないため、脚台部12の裏面12bに設けるマジックテープ17等の簡易固着部材の面積をその分だけ増加でき、その結果、カーペット100への簡易固着性能を向上することができる。
【0108】
また、例えば第1実施形態のキャップ1であれば、脚台部12をスリット状に切り欠くことで応力吸収部18が形成されているため、連通部16を拡張する際、単に拡張しても、又はキャップ1全体を捻るようにして拡張しても、その応力を応力吸収部18で吸収することができた。一方で、キャップ220の応力吸収部222は、捻るような応力を吸収し難い構造であるため、連通部221を拡張できる方向はある程度限定されるものの、捻りに対する強度が高いという利点がある。
【0109】
さらには、このキャップ220において、略菱形の応力吸収部221の頂点部分における変形容易部221aのそれぞれは、応力吸収の際に支点のような働きをする部分、すなわち応力が集中する部分である。この変形容易部221aを、上述の各実施形態のキャップにおける根元部分と同様に略円弧形状に形成すると、応力が集中するような角状の部分が存在しなくなるため、応力吸収部221が変形する際に応力が局所的に集中して破損してしまうような事態を回避することができ、強度を向上させることができる。
【0110】
図6(d)に示すキャップ230は、脚台部12、導入開口13(図示せず)、カバー部14、引き出し開口15及び連通部16が第1実施形態のキャップ1と同じ構成であるが、カバー部14に爪部14aが無い点と、キャップ220の平面視(連通部16を下に配置した際の平面視)で略4時方向と略8時方向のカバー部14の中ほどから脚台部12の中ほどにかけて、スリット状の開口としての応力吸収部231・231が切り欠くように設けられている点が大きく異なる。このようなキャップ230をケーブル120に装着する際、キャップ230の脚台部12を連通部16が拡張する方向へ引っ張ると、応力吸収部231を支点として対向端部12a・12aが上方に折れ曲がるようにキャップ230全体が変形することで、応力を吸収することができる。
【0111】
尚、このキャップ230において、スリット状の応力吸収部231の両端の変形容易部231aを、上述の他の実施形態の根元部分と同様に略円弧形状に形成すると、応力が集中するような角状の部分が存在しなくなるため、応力吸収部231が変形する際に応力が局所的に集中して破損してしまうような事態を回避することができ、強度を向上させることができる。
【0112】
図6(e)に示すキャップ240は、脚台部32、導入開口33(図示せず)、及びカバー部34が第3実施形態のキャップ3と同じ構成であるが、平面視で略正方形であるカバー部34の頂点部分に引き出し開口35が設けられると共にこの引き出し開口35と導入開口33(図示せず)とを連通するように脚台部32の頂点部分に連通部241が設けられている点と、脚台部32における連通部241の反対側の頂点部分にスリット状の応力吸収部242が設けられている点とが異なる。この応力吸収部242は、脚台部32の外周から中ほどまで切り込んだスリット状であり、カバー部34まで切り込まれていないため、その分だけキャップ240の強度を高くすることができる。そして上述の各実施形態と同様に、このキャップ240も連通部241を拡張すると、その際の応力を応力吸収部242で吸収することができる。
【0113】
尚、上述の第4実施形態で述べたように、このキャップ240においても、応力吸収部242の長さによって連通部241の拡張のし易さを設定できる。具体的には、例えば応力吸収部242を長く設計すると、連通部241を容易に拡張し易くすることができる。逆に、応力吸収部242を狭く設計する程、連通部241を拡張しにくくなるが、その分だけキャップ240全体の強度を向上できる。
【0114】
図6(f)に示すキャップ250は、脚台部32、導入開口33(図示せず)、及びカバー部34が第3実施形態のキャップ3と同じ構成であるが、平面視で略止方形であるカバー部34の頂点部分に引き出し開口35が設けられると共にこの引き出し開口35と導入開口33(図示せず)とを連通するように脚台部32の頂点部分に略円弧形状に湾曲したスリット状の連通部251が設けられている点と、キャップ250の平面視(連通部251を下に配置した際の平面視)で略4時方向と略8時方向の脚台部32にスリット状応力吸収部252・252が設けられている点が大きく異なる。そして上述の各実施形態と同様に、このキャップ250も連通部251を拡張すると、その際の応力を応力吸収部252で吸収することができる。尚、この応力吸収部252は片方だけでもよいし、片側に複数設けられていてもよい。
【0115】
図6(g)に示すキャップ260は、脚台部32、導入開口33(図示せず)、及びカバー部34が第3実施形態のキャップ3と同じ構成であるが、平面視で略正方形であるカバー部34の頂点部分に引き出し開口35が設けられると共にこの引き出し開口35と導入開口33(図示せず)とを連通するように脚台部32の頂点部分にスリット状の連通部261が斜めに設けられている点と、カバー部34における連通部261の反対側、且つ引き出し開口35に連通するようにして、略Y字状のスリットでなる応力吸収部262が形成されている点とが大きく異なる。このキャップ260では、第4実施形態のキャップ4の応力吸収部48と同様に、応力吸収部262がカバー部34に設けられているため、連通部261を拡張すると、その際の応力を応力吸収部262が広がる方向に変形することで吸収することができ、その結果、上記第4実施形態と同様の効果が得られる。また、このキャップ260では、応力吸収部262が略Y字形状に形成されているため、連通部261を拡張する際の応力を分散して吸収することができるという利点がある。
【0116】
図6(h)に示すキャップ270は、脚台部32、導入開口33(図示せず)、及びカバー部34が第3実施形態のキャップ3と同じ構成であるが、平面視で略正方形であるカバー部34の頂点部分に引き出し開口35が設けられると共にこの引き出し開口35と導入開口33(図示せず)とを連通するように脚台部32の頂点部分にスリット状の連通部271が設けられている点と、連通部271の両側の対向端部32a・32aそれぞれの上面に、他の部分よりも厚みが薄い薄厚部分としての溝状の応力吸収部272が形成されている点とが大きく異なる。
【0117】
このキャップ270では、連通部271の両側の対向端部32a・32aを図6(h)の手前側に引っ張ると、応力吸収部272を支点として対向端部32a・32aが図6(h)の手前側に折れ曲がるように変形することで、応力を吸収することができるようになされている。また、この応力吸収部272は、対向端部32a・32aの片側だけに設けられていても良いし、片側に複数設けられていても良い。さらに、溝状の応力吸収部272の底部分の断面を略円弧形状に形成すれば、応力が集中するような角状の部分が存在しなくなるため、応力吸収部272が変形する際に応力が局所的に集中して破損してしまうような事態を回避することができ、強度を向上させることができる。
【0118】
尚、このキャップ270では、溝状の薄厚部分でなる応力吸収部272について述べたが、この薄厚部分は、テーパー状の傾斜によって形成したり、ある程度の幅を有する段部として形成したり、対向端部32aの大部分や全体を薄く形成してもよく、特に、対向端部32aの引き出し開口35側からキャップ270の外側へと横断(図6(h)では縦に横断)するように設けられていると、連通部271を拡張し易くなり好適である。また、溝状の薄厚部分でなる応力吸収部272は、対向端部32aの表面側に設けられていてもよいし、裏面側に設けられていてもよいし、両側に設けられていても良いし、一対の対向端部32a・32aの一方には表面側に設け他方には裏面側に設けるようにしてもよい。
【0119】
また、第1、第2及び第4実施形態において、脚台部における連通部の反対側に応力吸収部を一つ設けるようにした場合について述べたが、応力吸収部を設ける位置やその数は適宜である。
【0120】
また、上述の第1乃至第4実施形態、及び他の実施形態において、応力吸収部の根元部分や変形容易部、薄厚部分を略円弧形状にした場合について述べたが、円弧の半径は適宜であり、また、必ずしも円弧形状である必要もなく、楕円形上や、角状の部分を持たない他の曲線形状であってもよい。また、強度をあまり気にしない、あるいはキャップの素材自体が強靭で応力に対する強度を確保できているのであれば、応力吸収部の根元部分や変形容易部は、鋭角或いは鈍角の頂点を有する形状であっても良い。
【0121】
また、上述の第4実施形態において、応力吸収部48の根元部分48aを、応力吸収部48の幅よりも大きい直径の略円状に形成した場合について述べたが、この根元部分48aをケーブル120の太さよりも大きく形成し、第二の引き出し開口として兼用するようにしても良い。すなわちその場合、応力吸収部48は第二の引き出し開口に対する連通部としても機能することになる。そして、この第二の引き出し開口に対して別途応力吸収部を設けることも適宜である。
【0122】
また、上述の第1乃至第4実施形態において、連通部にスリット状の間隙を適用した場合について述べたが、他の形状の間隙であっても適宜であり、要は、ケーブルの中で最も細い部分の太さよりも狭い幅の間隙を有する構造であれば適宜である。
【0123】
また、上述の第1乃至第4実施形態において、連通部の両側の対向端部にテーパーが形成されている場合について述べたが、段状の構造であってもよいし、必ずしもテーパーの様な構造を形成しなくてもよい。
【0124】
また、上述の第1乃至第4実施形態において、仕上材としてカーペットを適用するようにした場合について述べたが、フローリング床や床シート材等であっても良く、その場合には、キャップを仕上材に簡易固着する簡易固着部材として吸盤や両面テープ、粘着質の防振ゲル材等を適用すると好適である。
【0125】
また、上述の第1及び第2実施形態において脚台部12を平面視で略リング形状に形成するようにした場合について述べたが、この形状は楕円や矩形、三角形、五角形、六角形、八角形等の多角形若しくは、略星型など適宜である。
【0126】
また、脚台部に対して取り付けられる簡易固着部材としてのマジックテープ17や係合突起12eを脚台部の裏面全体に亘って設けても良いし一部分だけに設けることも可能であり、また、複数種の簡易固着部材を併用したり、複数の固定手段で簡易固着材を脚台部の裏面に取り付けることも可能であり、キャップを仕上材に簡易固着する強度を確保できる範囲で適宜選択することが可能である。例えば、マジックテープ17は、脚台部12の対向端部12a・12aには必ずしも設けられてなくても良いし、対向端部12a以外の脚台部12では係止部12dによってマジックテープ17を固定し分割端部12aでは接着剤や両面テープで固定するようにしても良い。
【0127】
特に、簡易固着部材を脚台部の一部分に設ける場合には、脚台部のうち少なくとも連通部の両側の対向端部等の周囲部分に簡易固着部材を設けておけば、この簡易固着部材による簡易固着が解除されない限りは線材からキャップが外れないため、安定した装着状態の維持という観点で有利である。同様に、脚台部のうち少なくとも応力吸収部の両側の部分に簡易固着部材を設けておけば、この簡易固着部材による簡易固着が解除されない限りは線材からキャップが外れ難くなるため、安定した装着状態の維持という観点で有利である。
【0128】
また、上述の第1乃至第4実施形態において、キャップの脚台部の内側端からカバー部が立ち上がって形成するようにした場合、すなわち、キャップのカバー部の下端から水平方向の外側に向けて脚台部を形成するようにした場合について述べたが、脚台部はカバー部の下端から水平方向の内側に向けて形成する構成や、内側と外側の両方に向けて形成する構成とすることも可能である。尚、第1乃至第3実施形態において、カバー部の下端から水平方向の内側に向けて脚台部を形成した場合、その脚台部に形成される応力吸収部は、連通部を拡張する方向の応力を受けると、応力吸収部の幅が広くなる方に変形することで応力を吸収することになるが、得られる効果としては同様である。
【0129】
また、上述の第1乃至第4実施形態において、引き出し口110やケーブル120の根元部分を保護するカバー部をドーム形状、略箱形状、略トンネル形状にした場合について述べたが、カバー部の形状は適宜とすることができる。
【0130】
また、上述の第1乃至第4実施形態において、各引き出し開口を略長孔形状とした場合について述べたが、略円形状、略楕円形状、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状、各種多角形状、星形状等、引き出し開口の形状は適宜とすることができる。同様に、各導入開口の形状も適宜である。
【0131】
また、上述の第1乃至第4実施形態において、線材引き出し開口をカバー部の一方の下端からカバー部の頂上付近より僅かに下の位置まで長孔形状に形成するようにしたり、カバー部の中ほどから頂上付近まで長孔形状に形成するようにした場合などについて述べたが、カバー部の一方の下端から頂上付近を介して他方の下端まで連通するように形成しても良く、要は上述の第1乃至第4実施形態の効果を得られるのであれば、その形状や大きさは適宜である。
【0132】
また、上述の第1乃至第4実施形態において、キャップに対して一つの引き出し開口を設けるようにした場合について述べたが、引き出し開口を設ける数は限定しない。従って複数の引き出し開口を設ける場合には、それぞれの引き出し開口に連通部とこの連通部を拡張する際の応力を吸収する応力吸収部とを形成してもよいし、複数の引き出し開口に対してそれよりも数が少ない1以上の連通部や応力吸収部を兼用で設けたりしてもよい。
【0133】
尚、線材に対する各種キャップの装着のし易さ、一旦装着した後のケーブルの外れ難さ、ケーブルの取り回しの容易さ、キャップの強度の最適化、等を考慮し、第1乃至第4実施形態のキャップや、他の実施形態の各キャップの各構成の一部や全部を任意に組み合わせる構成とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明のキャップは、二重床の上面に敷設される仕上材の線材引き出し部分から引き出される線材の根元を覆う際に利用することができる。
【符号の説明】
【0135】
1、2、3、4、200、210、220、230、240、250、260、270…キャップ 12、22、32、42…脚台部 13、33…導入開口 14、34、44…カバー部 15…引き出し開口 16、26、36、46、201、211、241、251、261、271…連通部 18、28、38、48、202、212、221、231、242、252、262、272…応力吸収部 18a、28a、38a,48a…根元部分 18b、28b、38b…開放端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重床上の仕上材に形成される線材の引き出し部分を覆うキャップであって、
前記引き出し部分の外周囲の所定部分に設置され、前記引き出し部分から引き出される線材が導入される導入開口を有する脚台部と、
前記脚台部から立ち上がって形成され、前記引き出し部分を空間を開けて覆うと共に、前記導入開口から導入される線材が引き出される引き出し開口を有するカバー部とを備え、
前記導入開口及び前記引き出し開口が、前記線材の太さよりも広い幅に形成されると共に、前記線材の太さよりも狭い幅の連通部を介して連通しており、
前記脚台部及び前記カバー部の少なくとも一方には、前記連通部の幅を拡張する方向への応力を吸収する応力吸収部が形成されていることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記応力吸収部が、前記脚台部のみに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記応力吸収部が少なくとも前記脚台部に形成され、
前記仕上材に簡易固着するための簡易固着部材が、前記脚台部の裏面における少なくとも前記応力吸収部の周囲に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記連通部が形成されている部位と略反対側に前記応力吸収部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のキャップ。
【請求項5】
前記脚台部及び前記カバー部の少なくとも一方を縁から切り欠くようにして前記応力吸収部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のキャップ。
【請求項6】
前記切り欠かれた前記応力吸収部は、根元部分が略円弧形状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のキャップ。
【請求項7】
前記切り欠かれた前記応力吸収部は、根元部分の幅よりも開放端部の幅の方が広く形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のキャップ。
【請求項8】
前記脚台部及び前記カバー部の少なくとも一方に開口を穿つようにして前記応力吸収部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のキャップ。
【請求項9】
前記応力吸収部の周縁の一部に、前記周縁の他の部分よりも応力によって変形し易い変形容易部が設けられ、
前記変形容易部が、略円弧形状に形成されていることを特徴とする請求項8に記載のキャップ。
【請求項10】
前記連通部の両側に位置する対向端部の少なくとも一方において、前記対向端部の他の部分よりも厚さを薄くした薄厚部分を形成することで前記応力吸収部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のキャップ。
【請求項11】
前記対向端部に溝を形成することで前記薄厚部分が形成され、
前記溝の底部分の断面が略円弧形状に形成されていることを特徴とする請求項10に記載のキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−225136(P2012−225136A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107655(P2011−107655)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000162135)共同カイテック株式会社 (66)
【Fターム(参考)】