説明

キャニスタの密封監視方法、およびキャニスタの密封監視装置

【課題】 使用済み核燃料を収容したキャニスタの密封性の破壊の有無を、精度よく検知する。
【解決手段】 キャニスタCを冷却した空気を採取し、採取された空気に含まれる物質の種類からキャニスタCの密封性の破壊の有無を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所において発生した使用済み核燃料を収容するキャニスタの密封監視方法、キャニスタの密封監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所において発生した使用済み核燃料は、放射線と崩壊熱とを発生していることから、耐食性および耐熱性に優れたステンレス製の容器、すなわちキャニスタに不活性ガスとともに収容されて密封される。
使用済み核燃料を収容したキャニスタは、コンクリートキャスクと呼ばれるコンクリート製の容器等に収容され、一定期間安全な場所で冷却されながら貯蔵された後、再処理工場に送られて再処理が施される。
【0003】
キャニスタは、腐食等による密封性の破壊の有無を定期的に監視する必要性がある。腐食等によりキャニスタの密封性が破壊されると、内部の不活性ガス環境が崩れて使用済み核燃料が腐食し、有害なFPガス(核分裂生成ガス)が漏洩して周囲を汚染する可能性があるためである。
キャニスタの密封監視方法としては、キャニスタ内部の圧力低下に伴ってキャニスタの振動や温度、歪みが変化することを利用し、キャニスタの外部にセンサを設置して振動や温度、歪みを測定する方法が検討されている(下記の特許文献1,2)。それらの測定に際してキャニスタをコンクリートキャスクから取り出し、別の密封容器に移動させる方法も検討されている(下記の特許文献3)。
【特許文献1】特開2003−156590号公報
【特許文献2】特開2003−194990号公報
【特許文献3】特開2002−122694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように振動や温度、歪みを測定する方法は、キャニスタ内部の圧力低下を間接的に測定するので、ある程度大きな圧力変化が現れなければ、圧力の低下を検知することは難しい。また、キャニスタ内部の圧力は、一日の気温の変化によっても変動するので、異常な圧力低下を検知するためには、精度の高いセンサを用いる必要がある。
また、キャニスタをコンクリートキャスクから取り出して移動させる方法は、キャニスタを移動させるために大規模な装置を追加して設置する必要がある。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、使用済み核燃料を収容したキャニスタの密封性の破壊の有無を、精度よく検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のキャニスタの密封監視方法は、キャニスタを冷却した空気を採取し、採取された空気に含まれる物質の種類から前記キャニスタの密封性の破壊の有無を判別することを特徴とする。
【0007】
本発明のキャニスタの密封監視装置は、キャニスタを冷却した空気を採取する採取部と、前記採取部で採取された空気に含まれる特定の物質の量、または空気中の放射線量を測定する測定部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のキャニスタ貯蔵施設は、キャニスタを配置する貯蔵部と、前記貯蔵部に前記キャニスタを冷却する空気を供給する冷却空気供給部とを備えるキャニスタ貯蔵施設であって、
前記キャニスタを冷却した空気を採取する採取部と、前記採取部で採取された空気に含まれる特定の物質の量、または空気中の放射線量を測定する測定部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、キャニスタからのガスの漏洩によって起こるキャニスタ内部の圧力低下を間接的に測定する従来の方法とは違い、キャニスタから漏洩したガスの有無を直接的に測定するので、測定精度が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ボールド方式を採用したキャニスタ貯蔵施設の一例を図1に示す。ボールド方式とは、キャニスタをキャスクには収容せず、周囲とは区画された空間に複数のキャニスタを配置する方式である。キャニスタ貯蔵施設は、複数のキャニスタCを配置される貯蔵室1と、貯蔵室1にキャニスタCを冷却する空気を供給する冷却空気供給部2と、キャニスタCを冷却し終えた空気を排出する冷却空気排出部3と、キャニスタCを移動させる移動装置4とを備えている。
【0011】
貯蔵室1は、図2に示すように、キャニスタCの長さよりも離間して設けられた床スラブ11と天井スラブ12との間に画成されている。床スラブ11上には、キャニスタCを載置する支持台13が設置されている。さらに、床スラブ11上には、支持台13に載置されたキャニスタCの周囲を覆い、キャニスタCの周囲に冷却空気を流通させる通風管14が設けられている。通風管14は、床スラブ11上に立設された支持架構15に支持された躯体16に形成されている。
【0012】
天井スラブ12には、支持台13に設置されたキャニスタCの直上にあたる位置に、キャニスタCを出し入れする開口17が設けられている。開口17には、キャニスタCを出し入れするとき以外は、上方からプラグ18が挿入されている。
【0013】
貯蔵室1には、上記支持台13、通風管14等からなる複数の貯蔵ピットが縦横に配列されて設けられており、これらが貯蔵モジュールを構成している。図示しないが、キャニスタ貯蔵施設には、同様の貯蔵室1が複数設けられている。通風管14の下部開口14aは、床スラブ11と躯体16の下面との間に画成される空間(下部プレナム部と呼ぶ)19Aに連通し、通風管14の上部開口14bは、天井スラブ12と躯体16の上面との間に画成される空間(上部プレナム部と呼ぶ)19Bに連通している。下部プレナム部19Aは冷却空気供給部2に連通し、上部プレナム部19Bは冷却空気排出部3に連通している。
【0014】
貯蔵室1には、個々のキャニスタCの密封監視装置20が設けられている。密封監視装置20は、キャニスタCを冷却した空気を採取する採取カバー(採取部)21と、採取カバー21によって採取された空気に含まれる特定の物質の量、または空気中の放射線量を測定するサンプリングプローブ(測定部)22とを備えている。
採取カバー21は、上下を逆転させた漏斗状をなしており、径を絞られた上端の開口21bの内側には、サンプリングプローブ22が設けられている。採取カバー21は、下方に移動することにより、径を拡大させた下端の開口21aを、通風管14の上部開口14bに隙間なく被着させることが可能である。
サンプリングプローブ22は、採取カバー21と一体化されており、後述するように測定対象の物質に合わせて放射線測定器、質量分析器等が採用される。
天井スラブ12の下面には、貯蔵ピットの配列方向に沿ってガイドレール23が設けられている。ガイドレール23には、自走式の台車24が設けられており、密封監視装置20は、この台車24に設置されている。なお、ガイドレール23を躯体16の上面に設置することも可能である。
【0015】
上記のように構成されたキャニスタ貯蔵施設においては、冷却空気供給部2から、下部プレナム部19Aを通じて各通風管14に冷却空気が導入される。各通風管14の内側に配置されたキャニスタCは、通風管14に導入された冷却空気によって冷却される。通風管14を下方から上方に流通する過程でキャニスタCを冷却した空気は、上部プレナム部19Bを通じて冷却空気排出部3から外部に排出される。
【0016】
個々のキャニスタCについては、上記したように、密封性の破壊の有無を、例えば一ヶ月に一度の周期で定期的に検査する必要がある。
上記のように構成されたキャニスタ貯蔵施設においては、まず、検査対象となったキャニスタCの直上に、密封監視装置20を載せた台車24を移動させる。次に、採取カバー21の下端の開口21aを通風管14の上部開口14bに被着させる。なお、測定時に下部開口14aを閉鎖することで密閉空間を画成する場合もある。
採取カバー21を通風管14に被着させると、キャニスタCを冷却し終えた空気が採取カバー21に導入され、採取カバー21の形状に従って径を絞られた上端に集まり、開口21bから上部プレナム部19Bに排出される。サンプリングプローブ22は、採取カバー21の上端に集まった空気に含まれる特定の物質の量、または空気中の放射線量を測定する。測定対象の物質としては、キャニスタCの蓋間に封入されるXe(キセノン)、キャニスタCの胴部に封入されるHe(ヘリウム)、使用済み核燃料から放出されるKr(クリプトン)等が挙げられる。Krを測定する場合には、サンプリングプローブ22として放射線測定器を使用し、その他の物質を測定する場合には、サンプリングプローブ22として質量分析器を使用する。
キャニスタCに密封性の破壊が有れば、キャニスタCを冷却し終えた後に採取カバー21に導入された冷却空気に上記物質のいずれかが通常よりも多く含まれるので、それらの量が異常な値を示した場合は、キャニスタCに密封性の破壊が有ると判別し、適切に対処する。
【0017】
以上のようにしてキャニスタCの密封性の破壊の有無を検査すれば、キャニスタCから漏洩したガスの有無を直接的に測定できるので、非常に高い測定精度が得られる。
【0018】
本実施形態においては、本発明をボールド方式のキャニスタ貯蔵施設に適用した例について説明したが、本発明は、この方式に限らず、コンクリートキャスク方式、サイロ方式等、他の方式を採用した貯蔵施設に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態を示す図であって、ボールド方式を採用したキャニスタ貯蔵施設の構造を示す図である。
【図2】キャニスタの密封監視装置の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 貯蔵室
2 冷却空気供給部
3 冷却空気排出部
14 通風管
19A 下部プレナム部
19B 上部プレナム部
20 密封監視装置
21 採取カバー(採取部)
22 サンプリングプローブ(測定部)
23 ガイドレール
24 台車
C キャニスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャニスタを冷却した空気を採取し、
採取された空気に含まれる物質の種類から前記キャニスタの密封性の破壊の有無を判別する
ことを特徴とするキャニスタの密封監視方法。
【請求項2】
キャニスタを冷却した空気を採取する採取部と、
前記採取部で採取された空気に含まれる特定の物質の量、または空気中の放射線量を測定する測定部とを備える
ことを特徴とするキャニスタの密封監視装置。
【請求項3】
キャニスタを配置する貯蔵室と、
前記貯蔵部に前記キャニスタを冷却する空気を供給する冷却空気供給部とを備えるキャニスタ貯蔵施設であって、
前記キャニスタを冷却した空気を採取する採取部と、
前記採取部で採取された空気に含まれる特定の物質の量、または空気中の放射線量を測定する測定部とを備える
ことを特徴とするキャニスタ貯蔵施設。

【図1】
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【図2】
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