説明

キャニスタ

【課題】ケーシングの壁面と吸着材との境界にできる空隙の容積を減らして蒸発燃料の拡散・移動を抑制し、もって大気ポートからの蒸発燃料のリークを抑制したキャニスタの構造を提供する。
【解決手段】第2ケーシング3への粒状の吸着材(活性炭)15の充填をもって吸着材層20が形成されたキャニスタである。第2ケーシング3の内周面3aと吸着材層20(吸着材15)との境界部に、メッシュ状のライニング材26を介装してある。ライニング材26の存在により、第2ケーシング3の内周面と吸着材15との接触によってできる空隙G1の大きさが小さくなり、吸着材15,15同士の間にできる空隙G2大きさに近付くことで、蒸発燃料の無用な拡散・移動を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の燃料タンクから蒸発した燃料を吸着して、その燃料をエンジン稼働時に燃焼させる蒸発燃料処理装置のキャニスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガソリンを燃料とする自動車では、燃料タンク内の蒸発燃料が大気に放出されることを抑制するために蒸発燃料処理装置が付帯している。この蒸発燃料処理装置は、停車時等に燃料タンクから発生する蒸発燃料をキャニスタ(カーボンキャニスタ)内の吸着材(活性炭)に吸着(チャージまたは担持)させ、エンジン稼働時にキャニスタを通して吸気を行うことにより、大気ポートから導入した大気によってキャニスタ内をパージし、吸着した蒸発燃料を脱離させてエンジン内で燃焼させる仕組みとなっている。このパージによる蒸発燃料の脱離によって活性炭の性能が復活して蒸発燃料を良好に且つ繰り返し吸着することが可能となる。
【0003】
その一方、近年では、大気への蒸発燃料拡散防止のための厳しい規制に対応するべく、特許文献1に記載のように、活性炭を充填したキャニスタを2室構造とし、特に大気ポートの近傍に漏れ防止用吸着材層を設けることで所期の目的を達成するようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−030998号公報
【特許文献2】特開2007−205294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、2室タイプであるか否かにかかわらず、キャニスタのケーシング内において活性炭に吸着された蒸発燃料の濃度は大気導入部(大気ポート)に向かって漸次低くなるような濃度勾配をもつ傾向にあるが、吸着平衡により、時間の経過とともに蒸発燃料が大気導入部の方向へ向かって拡散移動するいわゆるマイグレーション現象が生じ、大気への漏れ出し(リーク)が発生しやすくなる。
【0006】
この傾向は活性炭層のなかの通路として機能する空隙の大きさと密接な関係があり、多数の活性炭の粒同士の間にできる空隙の大きさは相対的に小さく、活性炭とケーシングの平滑な壁面との接触によって両者の境界にできる空隙の大きさの方が相対的に大きくなることから、そのケーシングの壁面と活性炭との境界にできる空隙を蒸発燃料が通過しやすくなり、それによって先に述べたマイグレーション現象の進行の早まりとともに、大気に対する蒸発燃料のリーク抑制性能が低下してしまうこととなる。そして、上記のマイグレーション現象の進行を抑制しつつキャニスタ本来の処理性能を維持しようとすると、キャニスタ全体が大型化することとなって好ましくない。
【0007】
また、あくまでキャニスタの製造容易性を目的としたキャニスタの製造方法として特許文献2に記載のものが提案されている。この特許文献2に記載のものでは、粒状の樹脂材と同じく粒状の活性炭とを混ぜ合わせたものを成形型に入れ、その活性炭層の外周部の樹脂材のみを加熱・溶融させた上で冷却させることにより外殻部として活性炭層に形状保持性を具備させ、さらにその活性炭層をインサートとしてキャニスタケースをインサート成形することでキャニスタとするものである。
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の製造方法では、活性炭層とケースとの境界部分にできる空隙が溶融した樹脂材で完全に埋められてしまい、空隙率が低下してキャニスタ本来の所期の目的を達成できない可能性がある。
【0009】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、キャニスタそのものの大型化を招くことなしに本来の処理能力の向上を図るべく、ケーシングの壁面と吸着材との境界にできる空隙の容積を減らして先に述べたマイグレーション現象の発生の遅延化を図り、もって大気に対する蒸発燃料のリーク抑制性能の向上を図ったキャニスタの構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、ケーシングの一端に蒸発燃料が導入される蒸発燃料導入部および蒸発燃料が排出される蒸発燃料排出部がそれぞれ設けられているとともに、上記ケーシングの他端に大気が導入される大気導入部が設けられていて、さらにそのケーシング内に蒸発燃料を吸着するための粒状の吸着材が充填されてなるキャニスタであって、上記大気導入部に近いケーシング内周面に、そのケーシング内周面と吸着材との接触によってできる空隙の一部を占有して当該空隙の容積を縮小化する空隙補填手段を設けてあることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、先に述べた2室タイプのキャニスタであることを明確化したものであって、ケーシングの内部が隔壁により主室と副室とに隔離形成されていて、これらの主室および副室には蒸発燃料を吸着するための粒状の吸着材が充填されているとともに、主室には蒸発燃料の導入側となる蒸発燃料導入部としてのチャージポートと大気導入によって脱離した燃料の導出側となる蒸発燃料排出部としてのパージポートが、副室には大気導入部としての大気ポートがそれぞれに設けられていて、さらに主室と副室とがそれぞれの底部側で連通路をもって連通していることにより、この連通路を通して主室と副室との間で行われる蒸発燃料および大気の流動が略U字状のものとなるように形成されていて、上記副室側のケーシング内周面に空隙補填手段を設けてあることを特徴とする。
【0012】
上記粒状の吸着材としては、ここでは広く使用されている活性炭を想定している。また、上記空隙補填手段は、その目的からして、請求項3に記載のように、吸着材個々の独立性および浮動自由度を阻害しないものとする。
【0013】
さらに、上記空隙補填手段としては、ケーシングの平滑な内周面(壁面)と活性炭との境界にできる空隙を縮小化するべくその空隙の一部を占有して埋めるような機能があれば良く、望ましくは、ケーシング内周面と吸着材との接触によってできる空隙の大きさが吸着材同士の接触によってできる空隙の大きさと少なくとも同等またはそれよりも小さくできるものとし、例えば凹凸等をもってケーシングの内周面に直接形成することも可能である。ただし、多くの場合にケーシングそのものが樹脂材料にて形成されることから、成形性等を考慮すると、請求項4に記載のように、ケーシング内周面と吸着材との間に別の部材としての空隙補填手段を介装してあることが望ましい。
【0014】
この空隙補填手段は、請求項5に記載のように、例えばメッシュ状のライニング材とし、さらには、同ライニング材は熱交換性能の観点から極力比熱が小さいもの、例えば銅、ステンレス、アルミニウム等の金属製のものであることが望ましい。上記メッシュ状には、格子状のもののほか一般にパンチングメタルと称される多穴状のもの等も当然に含むものである。また、上記空隙補填手段として、所定厚みの不織布あるいはフェルト等からなるものを用いることも可能である。
【0015】
したがって、少なくと請求項1に記載の発明では、仮にケーシングの内周面が平滑面であったとしても、空隙補填手段の存在により、ケーシングの平滑な内周面と活性炭との境界にできる空隙を縮小化するべくその空隙の一部が空隙補填手段の占有によって埋められることになるので、そのケーシング内周面と吸着材との接触によってできる空隙の大きさが相対的に小さなものとなり、吸着材同士の接触によってできる空隙の大きさに近付くことになる。それにより、従来と比べケーシングの壁面と活性炭との境界にできる空隙を蒸発燃料が通過しにくいものとなって、先に述べたマイグレーション現象の進行の遅延効果が期待できるようになる。その結果として、大気導入部である大気ポートからの大気に対する蒸発燃料のリークを大幅に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡単な構造のもとで大気に対する蒸発燃料のリークを大幅に抑制することができるので、キャニスタそのものの大型化を招くことなくキャニスタ本来の処理能力が向上するほか、蒸発燃料の大気放散量の削減と車両搭載性を両立できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るキャニスタの第1の実施の形態を示す縦断面図。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図。
【図3】ライニング材の要部拡大図。
【図4】図2のB部拡大図。
【図5】図4のライニング材が存在しない場合の同等部位の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜3は本発明に係るキャニスタのより具体的な実施の形態を示す図であり、特に図1はその縦断面図を、図2は図1のA−A線に沿う断面図をそれぞれに示している。また、図3は空隙補填手段たるライニング材の詳細を、図4は図2のB部の拡大図をそれぞれ示している。
【0019】
図1,2に示すキャニスタ1は、それぞれに例えばポリアミド樹脂等の樹脂材料にて略角筒状に形成された大小二つのケーシング、すなわち第1ケーシング2および第2ケーシング3を並べて隔壁状のリブ4を介して相互に一体化したものである。これら二つのケーシング2,3はそれぞれのケーシング2,3の底壁部として機能するカバープレート5を共有していて、このカバープレート5が事後的に溶着等の手段により接合・一体化されることで第1,第2ケーシング2,3が密閉される。これにより、第1,第2ケーシング2,3の内部空間は相互に隔離されている。なお、カバープレート5には、車両への取り付けの際に使用されるブラケット6a,6bが一体に形成されている。
【0020】
そして、後述するように、蒸発燃料および脱離(パージ)空気の通流方向において両者が直列関係となるようにそれらの第1ケーシング2と第2ケーシング3とが底部側の狭隘な連通路7を介して相互に連通していて、第1,第2ケーシング2,3はそれぞれの断面積に相当する所定の流路を形成している。なお、図1から明らかなように、第1,第2ケーシング2,3は同図の上端側に向かってその断面積が漸次小さくなる緩やかなテーパ状のものとして形成されている。
【0021】
第1ケーシング2の一端には、それぞれに所定容積のチャンバ部として機能する一対の小径膨出部8a,8bが並列に形成されていて、一方の膨出部8aには図示外の燃料タンクからの蒸発燃料を導入するための蒸発燃料導入部としてチャージポート9が開口形成されているとともに、他方の膨出部8bには後述する大気導入によって吸着材層16,20から脱離した燃料をエンジンの吸気系側に戻すための蒸発燃料排出部としてパージポート10が開口形成されている。他方、第2ケーシング3の一端にも所定容積のチャンバ部として機能する小径膨出部11が形成されていて、この小径膨出部11には大気を導入するための大気導入部として大気ポート12が開口形成されている。
【0022】
第1ケーシング2には、小径膨出部8a,8bごとに独立した不織布あるいはウレタン等の所定厚みの通気性部材からなるシート状のスクリーン13a,13bのほか底部側のスクリーン14を介して、活性炭からなる粒状の吸着材15がフルに且つ満遍なく充填されていて、これをもって両端面にスクリーン13a,13b,14が介在した吸着材層16を形成している。
【0023】
他方、第2ケーシング3では、同じく不織布あるいはウレタン等の所定厚みの通気性部材からなるシート状のスクリーン17,18を介して、活性炭からなる粒状の吸着材15がフルに且つ満遍なく充填されていて、これをもって両端面にスクリーン17,18が介在した吸着材層20を形成している。以上により、容積の大きな吸着材層16を有する第1ケーシング2が主室として機能し、相対的に容積の小さな吸着材層20を有する第2ケーシング3が副室として機能することになる。
【0024】
第1ケーシング2側では、通気性を有しながらも剛性のある例えば樹脂製の多孔板状のグリッド21を下側のスクリーン14と重ねて配置してあり、そのスクリーン14がグリッド21にてバックアップされているとともに、グリッド21とそれに対向するカバープレート5側の内側底壁面との間には圧縮コイルスプリングの一つである円錐コイルスプリング22を介装してある。これによって吸着材層16を形成している吸着材15全体を適度な弾性力で弾性付勢して当該吸着材15全体を圧締保持している。
【0025】
このような構造は、第2ケーシング3側についても全く同様であって、通気性を有しながらも剛性のある樹脂製の多孔板状のグリッドを符号23で、グリッド23とそれに対向するカバープレート5側の内側底壁面との間に介装された円錐コイルスプリングを符号24でそれぞれ示している。また、各小径膨出部8a,8bおよび11側では、当該小径膨出部8a,8b,11内に一体に形成された複数のリブ25が上記グリッド21,23と同等の機能を有している。
【0026】
このように、第1ケーシング2側および第2ケーシング3側共に吸着材層16,20の両側にスクリーン13a,13b,14やグリッド21等とがあることによって、チャージポート9やパージポート10側さらには大気ポート12側、あるいは連通路7側への吸着材15の漏れ出しが未然に防止されている。同時に、吸着材層16,20を形成している吸着材15に円錐コイルスプリング22または24の弾性力が加わることで第1,第2ケーシング2,3内での吸着材15の無用な移動あるいはいわゆる踊り現象が阻止されている。
【0027】
そして、図1のキャニスタ1は、吸着材層16として機能する第1ケーシング2の内部空間と同じく吸着材層20として機能する第2ケーシング3の内部空間とを、それぞれのケーシング長が長手方向でオーバーラップするように並べて配置し、双方のケーシング2,3の他端部同士を連通路7にて連通させたものと理解することができる。
【0028】
その結果として、後述するように、上記連通路7を通して第1ケーシング2側と第2ケーシング3側の吸着材層16,20同士の間で行われる蒸発燃料および大気の流動が略U字状のものとなるように形成してある。
【0029】
ただし、第1ケーシング2内の吸着材層16と第2ケーシング3内の吸着材層20とが直列の関係にさえなれば、双方のケーシング2,3の他端同士を突き合わせるようにして、その双方のケーシング2,3を同一軸線上に配置するようにしても良い。
【0030】
上記のように第1ケーシング2側の吸着材層16と第2ケーシング3側の吸着材層20とが直列関係となるように両者が連通路7にて連通されていて、蒸発燃料および大気の流動のための略U字状の流路が形成されていることから、第1,第2ケーシング2,3のうち大気導入部としての大気ポート12に近いケーシングの内周面、より具体的には第2ケーシング3の内周面3aには、図3,4に示すように、その第2のケーシング3の内周面3aと吸着材15との接触によってできる空隙の一部を占有して埋めるべく、当該空隙の容積が大きさが相対的に小さくなるような空隙補填手段としてメッシュ状のライニング材26を介装してある。
【0031】
上記空隙補填手段たるメッシュ状のライニング材26の機能としては、吸着材15の一粒一粒の独立性および浮動自由度を阻害しないように、その独立性および浮動自由度を確保しつつも、第2のケーシング3の平滑な内周面(壁面)3aと粒状の吸着材15との境界にできる空隙G1を縮小化するべくその空隙G1の一部を素線径で占有して埋めるような機能があれば良く、本実施の形態では、例えば図3,4に示すように、素線26aが断面円形の12メッシュ程度の金属製のライニング材26を介装してある。
【0032】
上記第2のケーシング3の内周面3aと吸着材15との接触によってできる空隙G1の大きさ、すなわちライニング材26の存在によってその容積が縮小化されることになる空隙G1の大きさは、吸着材15,15同士の接触によってできる空隙G2の大きさと少なくとも同等、望ましくは吸着材15,15同士の接触によってできる空隙G2の大きさよりも小さくなることがより望ましい。上記ライニング材26の材質としては、樹脂等でも良いが、熱交換性能の観点からは極力比熱が小さいもの、特に銅、ステンレス、アルミニウム等が望ましく、素線径が断面円形以外のもののほか、ワイヤ状の素線同士を編んだものや、一般にパンチングメタルと称される多穴状のものを用いることも可能である。
【0033】
さらに、上記のような空隙補填手段に要求される機能を満たし得れば、例えば第2のケーシング3の内周面3aに空隙補填手段として独立した多数の凹凸を規則性をもって直接形成したり、あるいはメッシュ状あるいは格子状の凹凸を直接形成したりすることもまた可能である。ただし、成形の容易性等を考慮すれば、第2のケーシング3の内周面3aに密着し得る大きさのメッシュ状のライニング材26を角筒状のものとして形成しておき、このライニング材26を第2のケーシング3内に粒状の吸着材15を充填するのに先立ってその第2のケーシング3内に装填するものとする。または、角筒状に形成したメッシュ状のライニング材26を、第1,第2のケーシング2,3の成形を目的とした成形型内にインサートとして予めセットしておき、このライニング材26をインサートとして第1,第2のケーシング2,3をインサート成形するものとする。
【0034】
したがって、このように構成されたキャニスタ1によれば、車両の停車時においては図示外の燃料タンクから発生する蒸発燃料がチャージポート9から第1ケーシング2内に導入されて、第1ケーシング2側の吸着材層16を形成している吸着材15のほか、第2ケーシング3側の吸着材層20を形成している吸着材15に吸着(チャージ)される。
【0035】
より具体的には、第1ケーシング2側の吸着材層16で吸着しきれなかった蒸発燃料はその吸着材層16の下方のグリッド21を通過し、さらに連通路7を通過した上で第2ケーシング3側のグリッド23および吸着材層20を通過し、実質的に連通路7にてU字状に流れの向きを変えることで第2ケーシング3側の吸着材層20に流入して、その吸着材層20を形成している吸着材15に吸着される。
【0036】
その一方、エンジン稼働時にはパージポート10から当該キャニスタ1を通して吸気を行うことにより大気ポート12から空気(大気)が導入され、その導入された空気は第2ケーシング3および第1ケーシング2内を通過してパージポート10からエンジン側に吸入される。この導入空気の流れにより第2ケーシング3側の吸着材層20を形成している吸着材15のほか、第1ケーシング2側の吸着材層16を形成している吸着材15がいわゆるパージされ、吸着材15に吸着されている蒸発燃料が脱離して導入空気とともにエンジン側に吸気されて燃焼処理される。そして、このパージによる蒸発燃料の脱離によって吸着材の性能が復活して再生されることになる。なお、これらの蒸発燃料の吸着および脱離のメカニズムは従来のものと基本的に同様である。
【0037】
ここで、第1,第2ケーシング2,3内の吸着材層16,20の一部では、蒸発燃料の吸着と脱離が繰り返し行われることで、多かれ少なかれパージしきれなかった蒸発燃料が残存する一方、それぞれの吸着材層16,20に吸着された蒸発燃料の濃度は大気導入部である大気ポート12側に向かって漸次低くなるような濃度勾配をもつ傾向にある。そして、吸着平衡により、時間の経過とともに第1,第2ケーシング2,3内の蒸発燃料がその第1,第2ケーシング2,3内を特に大気導入部である大気ポート12側に向かって拡散・移動するいわゆるマイグレーション現象が発生し、大気ポート12から大気中に蒸発燃料が放散または放出されてしまう可能性があることは先に述べたとおりである。
【0038】
このような内部に残存した蒸発燃料の拡散・移動は、それぞれの吸着材層16,20を形成している粒状の吸着材15,15同士の間にできる空隙G2が大きいほど顕著となり、例えば図5に示すように、第1,第2ケーシング2,3の内周面が平滑面であれば、その内周面と粒状の吸着材15との間には、吸着材15,15同士の接触よってできる空隙G2よりも一段と大きな空隙G1の発生が不可避である。
【0039】
その対策として本実施の形態では、先にも述べたように、第2ケーシング3の内周面3aに、図3,4に示すように、その第2のケーシング3の内周面3aと吸着材15との接触によってできる空隙G1の一部を占有しつつ埋めて、その空隙G1の大きさが可及的に小さくなって、望ましくは吸着材15,15同士の接触によってできる空隙G2の大きさと少なくとも同等、より望ましくは空隙G2よりも小さくなるような空隙補填手段としてメッシュ状のライニング材26を介装してある。
【0040】
そのため、従来と比べて第2ケーシング3の内周面3aと吸着材層20(吸着材15)との境界にできる空隙G1を蒸発燃料が通過しにくいものとなり、第2ケーシング3内に残存した蒸発燃料の拡散・移動を抑制または防止して、先に述べたマイグレーション現象の進行の遅延効果が期待できるようになる。その結果として、大気導入部である大気ポート12からの大気に対する蒸発燃料のリークを大幅に抑制できるようになる。
【0041】
さらに、上記のように大気ポート12からの大気に対する蒸発燃料のリークを抑制しつつキャニスタ1本来の処理能力を維持できることで、キャニスタ1全体の大型化も招かないで済むことになる。
【0042】
ここで、上記空隙補填手段としての金属製で且つメッシュ状のライニング材26に代えて、適度な弾力性と通気性とを有する所定厚みの不織布あるいはフェルト等からなるライニング材を用いることも可能である。すなわち、図2において、金属製で且つメッシュ状のライニング材26に代えて、第2ケーシング3の内周面3aと吸着材層20との間に所定厚みの不織布あるいはフェルト等からなるライニング材を介装したものと理解することができる。
【0043】
そして、空隙補填手段としては、先に述べたように、ケーシング3の平滑な内周面3aと吸着材層20との境界にできる空隙を縮小化するべくその空隙の一部を占有して埋めるような機能があれば良く、望ましくは、ケーシング3の内周面3aと吸着材層20との接触によってできる空隙の大きさが吸着材15,15同士の接触によってできる空隙の大きさと少なくとも同等またはそれよりも小さくできるものであれば良いから、上記のような所定厚みの不織布あるいはフェルト等からなるライニング材を用いた場合にも所期の目的を達成することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…キャニスタ
2…第1ケーシング(主室)
3…第2ケーシング(副室)
3a…第2ケーシングの内周面
5…カバープレート
7…連通路
9…チャージポート(蒸発燃料導入部)
10…パージポート(蒸発燃料排出部)
12…大気ポート(大気導入部)
15…吸着材(活性炭)
16…吸着材層
20…吸着材層
26…ライニング材(空隙補填手段)
G1…空隙
G2…空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの一端に蒸発燃料が導入される蒸発燃料導入部および蒸発燃料が排出される蒸発燃料排出部がそれぞれ設けられているとともに、上記ケーシングの他端に大気が導入される大気導入部が設けられていて、さらにそのケーシング内に蒸発燃料を吸着するための粒状の吸着材が充填されてなるキャニスタであって、
上記大気導入部に近いケーシング内周面に、そのケーシング内周面と吸着材との接触によってできる空隙の一部を占有して当該空隙の容積を縮小化する空隙補填手段を設けてあることを特徴とするキャニスタ。
【請求項2】
ケーシングの内部が隔壁により主室と副室とに隔離形成されていて、
これらの主室および副室には蒸発燃料を吸着するための粒状の吸着材が充填されているとともに、
主室には蒸発燃料の導入側となる蒸発燃料導入部としてのチャージポートと大気導入によって脱離した燃料の導出側となる蒸発燃料排出部としてのパージポートが、副室には大気導入部としての大気ポートがそれぞれに設けられていて、
さらに主室と副室とがそれぞれの底部側で連通路をもって連通していることにより、この連通路を通して主室と副室との間で行われる蒸発燃料および大気の流動が略U字状のものとなるように形成されていて、
上記副室側のケーシング内周面に空隙補填手段を設けてあることを特徴とする請求項1に記載のキャニスタ。
【請求項3】
上記空隙補填手段は吸着材個々の独立性および浮動状態を阻害しないものであることを特徴とする請求項1または2に記載のキャニスタ。
【請求項4】
上記ケーシング内周面と吸着材との間に空隙補填手段を介装してあることを特徴とする請求項3に記載のキャニスタ。
【請求項5】
上記空隙補填手段はメッシュ状のライニング材であることを特徴とする請求項4に記載のキャニスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−2112(P2012−2112A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136738(P2010−136738)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000151209)株式会社マーレ フィルターシステムズ (159)
【Fターム(参考)】