キャパシタ層形成材及びそのキャパシタ層形成材製造に用いる複合箔の製造方法並びにそのキャパシタ層形成材を用いて得られる内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板。
【課題】フッ素樹脂基板、液晶ポリマー等の300℃〜400℃の高温加工プロセスを経て製造されるプリント配線板に適用出来る、高温加熱後の強度の劣化のないキャパシタ層形成材を提供する。
【解決手段】 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、第2導電層に銅層の表面に異種金属層として硬質ニッケルメッキ層、コバルトメッキ層、ニッケル−コバルト合金メッキ層、2層のコバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層、2層の鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層、3層のコバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層、3層の鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層等を備える複合箔を採用する。
【解決手段】 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、第2導電層に銅層の表面に異種金属層として硬質ニッケルメッキ層、コバルトメッキ層、ニッケル−コバルト合金メッキ層、2層のコバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層、2層の鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層、3層のコバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層、3層の鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層等を備える複合箔を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願に係る発明は、プリント配線板の内蔵キャパシタ層を形成するために用いるキャパシタ層形成材及びそのキャパシタ層形成材製造に用いる複合箔の製造方法並びにそのキャパシタ層形成材を用いて得られる内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタ回路(素子)を内蔵した多層プリント配線板は、その内層に位置する絶縁層の内の1以上の層を誘電層として用いている。そして、特許文献1に開示されているように、その誘電層の両面に位置する内層回路にキャパシタとしての上部電極及び下部電極が対向配置されキャパシタ回路を形成し内蔵キャパシタとして用いられてきた。このキャパシタ回路を形成するには、両面銅張積層板と類似の第1導電層/誘電層/第2導電層という層構成のキャパシタ層形成材を用いるのが一般的である。そして、内蔵キャパシタ回路の製造は、このキャパシタ層形成材の導電層を予めエッチング加工してキャパシタ回路を形成し内蔵基板に張り合わせたり、内層基板に張り合わせた後にエッチング加工する等の種々の方法が採用されてきた。
【0003】
一方、前記誘電層の形成は、金属箔を用いてその表面へ、特許文献2に開示されているように誘電体フィラーを含有した樹脂組成物を塗工する方法、特許文献3に開示されているように誘電体フィラーを含有したフィルムを張り合わせる方法、特許文献4に開示されているように化学的気相反応法を応用してのゾル−ゲル法等種々の製法が採用されてきた。
【0004】
そして、上記各特許文献に開示されているように、誘電層を挟み込む導電層の材質としては、銅箔等を用いた銅成分を主体としたもので、誘電層との密着性を改善し同時に誘電率等の電気的特性の向上を目的として、特許文献4に見られるように下部電極の表面にニッケル−リン合金層を設ける場合もあった。
【0005】
そして、キャパシタは余剰の電気を蓄電する等して電子・電気機器の省電力化等を可能にしてきたものであるから、可能な限り大きな電気容量を持つことが基本的な品質として求められる。キャパシタの容量(C)は、C=εε0(A/d)の式(ε0は真空の誘電率)から計算される。特に、最近の電子、電気機器の軽薄短小化の流れから、プリント配線板にも同様の要求が行われることになり、一定のプリント配線板面積の中で、キャパシタ電極の面積を広く採ることは殆ど不可能であり、表面積(A)に関しての改善に関しては限界がある事は明らかである。従って、キャパシタ容量を増大させるためには、キャパシタ電極の表面積(A)及び誘電体層の比誘電率(ε)が一定とすれば、誘電体層の厚さ(d)を薄くするか、キャパシタ回路全体として見たときの層構成に工夫を凝らす等の試みがなされてきた。
【0006】
また、近年では、高集積化したICチップ、ギガレベルからテラレベルまでを射程とした高速信号伝達速度が要求されるようになり、プリント配線板からの発生熱も大きくなり、種々の高周波特性に対する要求がなされてきた。その要求に対応するため、特許文献5及び特許文献6に開示されているような、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料としたプリント配線板製造も活発化してきている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−105205号公報
【特許文献2】特開平9−040933号公報
【特許文献3】特開2004−250687号公報
【特許文献4】米国特許第6541137号公報
【特許文献5】特開2003−171480号公報
【特許文献6】特開2003−124580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、キャパシタ層形成材が第1導電層/誘電層/第2導電層という層構成を持っていることを考えれば、誘電層を薄くすると言うことは、キャパシタ層形成材そのものの厚さが薄くなり、強度が維持出来ず、取扱時に折れ等の損傷を受ける確率が高く、ハンドリング時の安全性に欠けるという欠点があった。
【0009】
また、上記特許文献4に開示されているように、ゾル−ゲル法で誘電層を構成する場合には、金属箔の表面に誘電層を形成するためのゾル−ゲル膜を形成し、600℃付近の温度で焼成する必要があり、金属箔が酸化して脆化する現象が起こっていた。更に、下部電極の表面にニッケル−リン合金層を設ける場合に於いては、誘電層とニッケル−リン合金層との密着性に問題があり、誘電層とニッケル−リン合金層との間での剥離現象が起こる場合があり、キャパシタとしての設計電気容量とのズレが大きくなり設計品質を満たさないこととなる。また、プリント配線板としてのデラミネーション発生の起点となり、半田リフロー等の加熱衝撃を受けることで層間剥離が生じたり、使用途中の発生熱による剥離が誘発され製品寿命を短命化させる原因となっていた。
【0010】
一方で、従来のガラス−エポキシ基板に代えて、高温耐熱性、高周波特性等を考慮して、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料として用いて、これらを用いた多層基板の製造が試みられている。そして、これらの基板製造に共通するのは、そのプレス加工温度が極めて高く300℃〜400℃の間にあり、基板材料が硬いという点にある。従って、これらのフッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料として用いた多層プリント配線板の内部に内蔵キャパシタ層を形成することを考えるに、300℃〜400℃の高温プレス加工を経て、硬い基板材料に押されても材質的な変動が無く、周囲の材料の膨張伸縮に耐えるだけの強度を備えたものであることが望ましい。
【0011】
従って、市場では、キャパシタ回路の下部電極として誘電層との密着性に優れ、且つ、抵抗器電極等としての使用が可能で回路の小型化の図れる新たな下部電極形成のための導電層を備えたキャパシタ層形成材が求められてきたのである。そして、同時にフッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料としたプリント配線板での300℃〜400℃の高温加工プロセスを経ても、強度の劣化のないキャパシタ層形成材が求められてきたのである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、以下のキャパシタ層形成材を用いることで、誘電層と下部電極との良好な密着性を得られ、且つ、誘電層が薄くなってもキャパシタ層形成材の強度を維持してハンドリング性が高まることに想到したのである。しかも、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料としたプリント配線板での、300℃〜400℃の高温加工プロセスを経ても強度の劣化のないキャパシタ層形成材であると同時に、後述するキャパシタ層形成材を用いることで、キャパシタ回路としての電気容量も確実に向上するのである。
【0013】
<本件発明に係るキャパシタ層形成材>
図1にキャパシタ層形成材の模式断面を示している。この図1から分かるように、キャパシタ層形成材1は、上部電極形成に用いる第1導電層2と下部電極形成に用いる第2導電層4との間に誘電層3を備えている。そして、本件発明に係るキャパシタ層形成材は、下部電極形成に用いる第2導電層4に種々の複合箔を用いることを特徴とするものである。即ち、この複合箔は、銅層の表面に1層の異種金属層を設けたもの(以下、「第1複合箔」と称する。)、銅層の表面に2層の異種金属層を設けたもの(以下、「第2複合箔」と称する。)、銅層の表面に3層の異種金属層を設けたもの(以下、「第3複合箔」と称する。)の3種類に大別出来る。そこで、キャパシタ層形成材も、第2導電層4の構成に用いる複合箔の種類に応じて、第1キャパシタ層形成材、第2キャパシタ層形成材、第3キャパシタ層形成材のそれぞれに分別して説明する事とする。
【0014】
<第1キャパシタ層形成材>
この第1キャパシタ層形成材は、第1複合箔を用いて得られたものである。ここで、第1キャパシタ層形成材1aの基本的層構成は図1に示したとおりであり、その第2導電層4に種々の複合箔を用い、当該複合箔には次のような3種類の基本的バリエーションが存在する。
【0015】
バリエーション1−i: 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、第2導電層は、銅層の表面に異種金属層として硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【0016】
バリエーション1−ii: 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、第2導電層は、銅層の表面に異種金属層としてコバルトメッキ層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【0017】
バリエーション1−iii: 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面に異種金属層としてニッケル−コバルト合金メッキ層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【0018】
上述したことから明らかなように、第1複合箔5aとは、図2に示すように銅層Cの表面に単一の異種金属層6を備えたものである。但し、図2(a)及び図2(b)に示すように、異種金属層6は、銅層の片面若しくは両面に設けることができる。そして、第1複合箔5aの異種金属を形成した面が誘電層3との接触面となる。異種金属が存在することで誘電層との密着性向上が図れるからである。
【0019】
ここで言う第1複合箔5aは、銅層の表面に異種金属層6として硬質ニッケルメッキ層、コバルトメッキ層、ニッケル−コバルト合金メッキ層(以上及び以下において、説明の都合上、単に「異種金属層」と称する場合がある。)のいずれかが形成されてなるものである。ここで図2(b)にあるように、銅層の両面に、硬質ニッケルメッキ層、コバルトメッキ層、ニッケル−コバルト合金メッキ層のいずれか(以下、「硬質ニッケルメッキ層等」と称する。)を設けたのは、これらが耐熱特性に優れ、400℃×10時間程度の加熱では軟化が起こりにくく、複合箔全体として見たときの引張り強さ(強度)の低下を効果的に抑制し、加熱後の引張り強さを48kgf/mm2以上とすることが容易だからである。このような物性を備える限り、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料としたプリント配線板での、300℃〜400℃の高温加工プロセスを経ても強度の劣化は殆ど無く、結果として、この第1複合箔5aを用いて製造されるキャパシタ層形成材の品質劣化も殆ど無いことになる。また、この硬質ニッケルメッキ層等を銅層の両面に設けたのは、銅層の形成に銅箔を用いることを考えると硬質ニッケルメッキ層等を片面に設けても引張り強さ等の物理的特性及びカール現象を抑制してハンドリング性は向上するが、両面に硬質ニッケルメッキ等の如き耐酸化性に優れた被膜が存在することで、銅層自体の酸化腐食を防止し、更にカール現象の抑制が図れるからである。なお、本件発明に言う硬質ニッケルメッキ層は、結晶粒が平均結晶粒径0.3μm以下のレベルに微細化され、機械的強度の高い物性を備えるものである。
【0020】
そして、銅層の形成に銅箔を用いる場合には、電解銅箔又は圧延銅箔を用いることが可能であり、その公称厚さが1μm〜35μmのものを用いることが好ましいのである。近年、プリント配線板の使用される電子機器等の小型化、軽量化、薄層化の要求に伴い、プリント配線板も薄層化する傾向にある。従って、銅箔表面に硬質ニッケルメッキ層等を備えることを考慮して1μm〜35μmとしたのである。なお、銅箔の公称厚さが7μm未満では、その厚さの銅箔に直接連続的に硬質ニッケルメッキ層等を形成する事が困難となり、製品歩留まりが飛躍的に悪化する。従って、係る場合にはキャリア箔付銅箔を使用して、銅箔層の片面に硬質ニッケルメッキ等を形成し、そのままで基材に張り合わせる等の加工後に、キャリア箔を引き剥がして銅箔層の反対面に硬質ニッケルメッキ層等を形成することが好ましい。一方、銅箔の公称厚さが35μmを超えると硬質ニッケルメッキ層等を備える複合箔としたときの厚さが現在のキャパシタ層形成材に求められる適正厚さを超えるため好ましくないのである。
【0021】
次に、硬質ニッケルメッキ層等の厚みが0.5μm〜3.0μmであることが好ましいのである。上記メッキ層の厚みが0.5μm未満では、誘電層が薄くなったときのハンドリング性を改善するだけの強度が得られず、同時に、硬質ニッケルメッキ層等を抵抗回路等に利用しようとしたときの性能に欠けるのである。一方、上記硬質ニッケルメッキ層等の厚さが3.0μmを超えても、キャパシタ層形成材に加工したときのキャパシタ層形成材のハンドリング性は顕著に向上しないのであり、ニッケルやコバルト等の比較的高価な成分を多量に使用するだけとなるからである。
【0022】
また、銅層として電解銅箔を用いる場合には、粗面と光沢面との表面に設ける硬質ニッケルメッキ層等の厚みを異なるものとすることが好ましい。上述したカール現象の発生を防止するためである。例えば、12μmの公称厚さの電解銅箔の光沢面に2.5μm厚さの硬質ニッケルメッキ層等を設けたとすると、その粗面側には3.5μm厚さの硬質ニッケル層等を設けるのである。このとき光沢面側に設ける硬質ニッケルメッキ層等の厚さをt(μm)とすると、粗面側に設ける硬質ニッケルメッキ層等の厚さをt+0.5(μm)〜t+1.2(μm)とすることが好ましい。粗面側に設ける硬質ニッケルメッキ層等の厚さが、t+0.5(μm)未満の場合にはカール現象を抑制する効果を得ることが出来ず、t+1.2(μm)を超えると、当初の電解銅箔の持つカールと逆転したカール現象が発生する傾向が強まるのである。
【0023】
以上に述べてきた第1複合箔は、400℃×10時間程度の加熱を受けたとしても、十分な抗軟化性能を示し、50kgf/mm2以上の引張り強さを示すものとなる。従って、銅張積層板を製造するときに採用する180℃前後での高温プレス程度では、機械的物性が全く変化しないのである。しかしながら、400℃を超える温度でのプレス条件が求められる場合には、硬質ニッケルメッキ層よりもコバルトメッキ層若しくはニッケル−コバルト合金メッキ層を採用することが好ましい。400℃を超える温度での加熱を受けると、硬質ニッケル層単独であると銅箔層との相互拡散が起こりやすくなり、硬質ニッケル層自体の抗軟化特性を維持できず、キャパシタ形成材としての靱性が低下しハンドリング性に欠けるのである。
【0024】
以上に述べてきた第1複合箔を用いて、キャパシタ層形成材を製造するのである。ここで述べた第1複合箔及びキャパシタ層形成材の製造方法に関しては、実施形態で詳述するものとする。
【0025】
<第2キャパシタ層形成材>
この第2キャパシタ層形成材は、第2複合箔を用いて得られたものである。ここで、第2キャパシタ層形成材の基本的層構成は図3に示したとおりであり、その第2導電層4に種々の複合箔を用い、当該複合箔には次のような2種類の基本的バリエーションが存在する。
【0026】
バリエーション2−i: 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、第2導電層は、銅層の表面にコバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層の順次積層された2層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【0027】
バリエーション2−ii: 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、第2導電層は、銅層の表面に鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層の順次積層された2層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【0028】
上述したことから明らかなように、第2複合箔5bとは、図3に示すように銅層の表面に2層の異種金属層6a,6bを備えたものである。但し、図2に示すように、異種金属層6a,6bは、銅層の片面若しくは両面に設けることができる。そして、第2複合箔5bの異種金属を形成した面が誘電層3との接触面となる。異種金属層が存在することで誘電層との密着性向上が図れるからである。
【0029】
ここで言う第2複合箔5bは、銅層の表面に異種金属層6aとしてコバルトメッキ層若しくは鉄メッキ層を備え、その表面にもう一つの異種金属層6bとして硬質ニッケルメッキ層を備えたものである。ここで図2(b)にあるように、銅箔の両面に、異種金属層6を設けても良いことは、第1複合箔5aの場合と同様である。
【0030】
本件発明に言う第2複合箔5bは、銅箔Cの表面に、異種金属層6a(コバルトメッキ層若しくは鉄メッキ層)と異種金属層6b(硬質ニッケルメッキ層)とが順次形成されてなる複合箔である。図2から明らかなように、このときの銅層の表面には、異種金属層6aが接触することになり、その異種金属層6aの表面に異種金属層6b(硬質ニッケルメッキ層)が存在するのである。このような積層配置を採用したのは、銅層の表面に硬質ニッケルメッキ層が存在し、その上にコバルトメッキ層が順次形成してなる積層配置を採用すると、300℃以上(特に400℃を超えると顕著になる)の温度での長時間加熱により、硬質ニッケルメッキ層と銅箔層との境界が相互拡散により移動するカーケンダール効果が発生し、銅層内への銅−ニッケル合金領域の拡大が生じ、硬質ニッケルメッキ層が本来持つはずの高い引張り強さが維持できなくなるのである。そして、カーケンダール効果が生じた場合には、その拡散境界にはボイドが発生する事が知られており、ボイドの如き微小欠陥が存在すると、引張り強さの測定時の引張り応力の集中箇所となり、箔の破断が容易に起こることとなるのである。
【0031】
ここで、上記カーケンダール効果の発生を捉えた光学顕微鏡観察写真を示すこととする。最初に、銅箔の両面にコバルトメッキ層と硬質ニッケルメッキ層とが順次積層された複合銅箔を用いて、加熱前後の断面状態を観察した。その結果、図5に示した加熱前の光学顕微鏡による断面観察写真と、図6の400℃×10時間加熱後の光学顕微鏡による断面観察写真との間に特別顕著な差異は見られず、ほぼ断面状態に変化はないことが判明した。これに対し、銅箔の両面に硬質ニッケルメッキ層のみを形成した複合銅箔(第1複合銅箔)を用いて、加熱前後の断面状態を観察すると顕著な差異が認められるのである。図7には第1複合銅箔の加熱前の光学顕微鏡による断面観察写真を示し、図8には400℃×10時間加熱後の光学顕微鏡による断面観察写真を示した。この図7と図8とを比較すると、加熱後の断面観察写真では、銅箔の内部(図8中に矢印で示した箇所)にボイド状の形状が観察されている。このボイドは、加熱によって硬質ニッケルメッキ層と銅箔層との境界が相互拡散により移動するカーケンダール効果によって発生したものと考えられる。これらのことから第2複合箔を用いて製造したキャパシタ層形成材を用いる限り、将来的に400℃付近のプレス条件が採用されることになっても、高品質の内蔵キャパシタ層を多層プリント配線板の内部に製造出来ることとなる。
【0032】
そして、第2複合箔を構成する異種金属層6a(コバルトメッキ層若しくは鉄メッキ層)の厚みは0.1μm〜0.5μm、硬質ニッケルメッキ層の厚みは0.3μm〜2.5μmであることが好ましい。このような層構成を採用するのは、高価なコバルトの使用量を可能な限り減らし、コバルト単層のメッキと同等の抗軟化特性を得るためである。従って、異種金属層6aの厚みが0.1μm未満となると硬質ニッケルメッキ層と銅層とのバリア層として寄与し得ず上記カーケンダール効果の発生を未然に防止できず、特に400℃を超える加熱を受けたときに異種金属層6aを採用していない場合との差が生じないのである。一方、異種金属層6aの厚さが、0.5μmを超えると単層でコバルトメッキ層を設けるのと何ら変わらなくなり、異種金属層6aと硬質ニッケルメッキ層とを設ける意義が没却するからである。そして、硬質ニッケルメッキ層の厚みが0.3μm未満の場合には、異種金属層6aを補強して抗軟化特性を向上させる効果に寄与しないのである。一方、硬質ニッケルメッキ層の厚さが2.5μmを超えると、経済性が損なわれ二層構成を採用した意義が没却するのである。
【0033】
以上に述べてきた第2複合箔も400℃×10時間程度の加熱では十分な抗軟化性能を示し、50kgf/mm2以上の引張り強さを示すものとなる。このような物性を備える限り、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料としたプリント配線板での、300℃〜400℃の高温加工プロセスを経ても強度の劣化は殆ど無く、結果として、この第2複合箔5bを用いて製造されるキャパシタ層形成材の品質劣化も殆ど無いことになる。
【0034】
以上に述べてきた第1複合箔を用いて、キャパシタ層形成材を製造するのである。ここで述べた第2複合箔及びキャパシタ層形成材の製造方法に関しては、実施形態で詳述するものとする。
【0035】
<第3キャパシタ層形成材>
この第3キャパシタ層形成材は、第3複合箔を用いて得られたものである。ここで、第3キャパシタ層形成材の基本的層構成は図9に示したとおりであり、その第2導電層4に種々の複合箔を用い、当該複合箔には次のような2種類の基本的バリエーションが存在する。
【0036】
バリエーション3−i: 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、第2導電層は、銅層の表面に第1コバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層/第2コバルトメッキ層の順次積層された3層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【0037】
バリエーション3−ii: 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、第2導電層は、銅層の表面に鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層の順次積層された3層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【0038】
即ち、第3複合箔5cとは、図10に示すように銅層の表面に3層の異種金属層6a,6b,6cを備えたものである。但し、図10に示すように、異種金属層6a,6b,6cは、銅層の片面若しくは両面に設けることができる。そして、第3複合箔5cの異種金属を形成した面が誘電層3との接触面となる。異種金属が存在することで誘電層との密着性向上が図れるからである。
【0039】
ここで言う第3複合箔5cは、銅層の表面に異種金属層6aとして第1コバルトメッキ層を備え、その表面に異種金属層6bとして硬質ニッケルメッキ層を備え、更にその表面に異種金属層6aとして第2コバルトメッキ層を設けたもの。又は、第3複合箔5cは、銅層の表面に異種金属層6aとして鉄メッキ層を備え、その表面に異種金属層6bとして硬質ニッケルメッキ層を備え、更にその表面に異種金属層6aとしてコバルトメッキ層を設けたものである。ここで図10(b)にあるように、銅層の両面に、異種金属層6を設けても良いことは、第1複合箔5aの場合と同様である。
【0040】
本件発明に言う第3複合箔5cは、銅層Cの表面に、異種金属層6a(第1コバルトメッキ層若しくは鉄メッキ層)と異種金属層6b(硬質ニッケルメッキ層)と異種金属層6c((第2)コバルトメッキ層)が順次形成されてなる複合箔である。図10から明らかなように、このときの銅層の表面には、異種金属層6aが接触することになり、その異種金属層6aの表面に異種金属層6bが、更にその表面に異種金属層6cが存在するのである。このような積層配置を採用したのは、上述と同様のカーケンダール効果の発生を防止し、高温負荷後も箔の強度を維持するためである。また、最外層にコバルト層が存在していれば高温耐熱特性により優れるものとなる。
【0041】
そして、第3複合箔を構成する異種金属層6a(第1コバルトメッキ層若しくは鉄メッキ層)の厚みは0.1μm〜0.5μm、異種金属層6bの硬質ニッケルメッキ層の厚みは0.3μm〜2.5μm、異種金属層6cの(第2)コバルトメッキ層の厚みは0.1μm〜0.5μmであることが好ましい。このような層構成を採用する理由に関しては、ほぼ第2複合箔と同様であり、異種金属層6aの厚みが0.1μm未満となると硬質ニッケルメッキ層と銅層とのバリア層としての寄与し得ず上記カーケンダール効果の発生を未然に防止することができず、特に400℃を超える加熱を受けたときに異種金属層6aを採用していない場合との差が生じないのである。一方、異種金属層6aの厚さが、0.5μmを超えると単層でコバルトメッキ層を設けるのと何ら変わらなくなり、他の異種金属層6b,6cを設ける意義が没却するからである。そして、異種金属層6b(硬質ニッケルメッキ層)の厚みが0.3μm未満の場合には、異種金属層6aを補強して抗軟化特性を向上させる効果に寄与しないのである。一方、異種金属層6b(硬質ニッケルメッキ層)の厚さが2.5μmを超えると、経済性が損なわれ三層構成を採用した意義が没却するのである。更に異種金属層6c((第2)コバルトメッキ層)の厚みが0.3μm未満の場合には、耐酸化性改善にも寄与し得ず、異種金属層6bを補強して抗軟化特性を向上させる効果に寄与しないのである。一方、異種金属層6c((第2)コバルトメッキ層)の厚みが2.5μmを超えると、経済性が損なわれ三層構成を採用した意義が没却するのである。
【0042】
以上に述べてきた第3複合箔5cも400℃×10時間程度の加熱では十分な抗軟化性能を示し、50kgf/mm2以上の引張り強さを示すものとなる。このような物性を備える限り、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料としたプリント配線板での、300℃〜400℃の高温加工プロセスを経ても強度の劣化は殆ど無く、結果として、この第3複合箔5cを用いて製造されるキャパシタ層形成材の品質劣化も殆ど無いことになる。
【0043】
以上に述べてきた第3複合箔を用いて、キャパシタ層形成材を製造するのである。ここで述べた第3複合箔及びキャパシタ層形成材の製造方法に関しては、実施形態で詳述するものとする。
【0044】
<本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造に用いる複合箔の製造方法>
上記第1複合銅箔の内、銅層表面に異種金属層としての硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔の製造は、銅箔を、以下の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成することを特徴とする製造方法を採用することが好ましい。
【0045】
[硬質ニッケルメッキ浴組成]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 3〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【0046】
上記第1複合銅箔の内、銅層表面に異種金属層としてのコバルトメッキ層を備える複合箔の製造は、銅箔を、以下の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成することを特徴とする製造方法を採用することが好ましい。更に、前記硫酸コバルト電解メッキ浴に、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含ませることも好ましいのである。
【0047】
[コバルトメッキ浴組成]
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【0048】
上記第1複合銅箔の内、銅層表面に異種金属層としてのニッケル−コバルト合金メッキ層を備える複合箔の製造は、銅箔を、以下の組成のニッケル−コバルト合金電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、ニッケル−コバルト合金メッキ層を形成することを特徴とする製造方法を採用することが好ましい。
【0049】
[ニッケル−コバルト合金電解メッキ浴]
NiSO4・6H2O 100g/l〜200g/l
NiCl2・6H2O 30g/l〜50g/l
CoSO4・7H2O 10g/l〜30g/l
H3BO3 20g/l〜40g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜25A/dm2
攪 拌 あり
【0050】
上記第2複合銅箔の内、銅層表面に異種金属層としてのコバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層の二層を備える複合箔の製造は、銅箔を、下記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法を採用することが好ましい。更に、前記硫酸コバルト電解メッキ浴に、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含ませることも好ましいのである。
【0051】
[A.組成、電解条件]
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【0052】
上記第2複合銅箔の内、銅層表面に異種金属層としての鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層の二層を備える複合箔の製造は、銅箔を、下記A.の組成の硫酸鉄電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、鉄メッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法を採用することが好ましい。更に、前記硫酸鉄電解メッキ浴に、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含ませることも好ましいのである。
【0053】
[A.組成、電解条件]
FeSO4・7H2O 100g/l〜200g/l
H3BO3 20g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜30A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【0054】
上記第3複合銅箔の内、銅層表面に異種金属層としての第1コバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層/第2コバルトメッキ層の三層を備える複合箔の製造は、銅箔を、下記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、第1コバルトメッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い硬質ニッケルメッキ層を形成し、更に下記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、第2コバルトメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法を採用することが好ましい。また、前記硫酸コバルト電解メッキ浴に、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含ませることも好ましいのである。
【0055】
[A.組成、電解条件]
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【0056】
上記第3複合銅箔の内、銅層表面に異種金属層としての鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層の三層を備える複合箔の製造は、銅箔を、下記A.の組成の硫酸鉄電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、鉄メッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い硬質ニッケルメッキ層を形成し、更に下記C.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記C.の電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法を採用することが好ましい。また、前記硫酸コバルト電解メッキ浴に、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含ませることも好ましいのである。
【0057】
[A.組成、電解条件]
FeSO4・7H2O 100g/l〜200g/l
H3BO3 20g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜30A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
[C.組成、電解条件]
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【0058】
<内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板>
本件発明に係るいずれかのキャパシタ層形成材を用いて、種々の方法を用いて内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板を製造することができる。このようにして得られたプリント配線板に内蔵されたキャパシタ回路は、例え300℃〜400℃の範囲の熱間プレス加工を繰り返し受けても、下部電極を構成する第2導電層に高温耐熱特性に優れた上記複合箔を備えているため、下部電極形状に異常は発生せず、周囲の素材の熱による膨張伸縮の挙動に対する抵抗性を持っている。従って、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー基板を使用した多層プリント配線板の内蔵キャパシタ回路形成に好適なものとなる。
【発明の効果】
【0059】
本件発明に係るキャパシタ層形成材は、下部電極を構成する第2導電層に高温耐熱特性に優れた上記複合箔を備えているため、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー基板を使用した多層プリント配線板の製造に用いられる300℃〜400℃の範囲の熱間プレス加工を繰り返し受けても、キャパシタ回路形状を形成して以降も下部電極形状に異常は発生せず、周囲の素材の熱による膨張伸縮の挙動に対する抵抗性を持っている。しかも、当該複合箔の異種金属層の種類、層構成の組み合わせを誘電層の種類に合わせて、適宜選択出来るものとなるため、誘電層と下部電極との密着性を良好に維持することが可能となる。その結果、本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いて得られた内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板も高品質のものとなる。また、本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造に用いる複合箔の製造方法で、異種金属層に一定のメッキ条件を採用することで、耐熱特性に優れた異種金属層を銅箔表面に設けることができる。この複合箔を用い、定法に基づいて、本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造が出来るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、本件発明に係る各複合箔の製造形態に関して述べ、本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造形態に関して述べ、実施例で内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板までの製造に関して言及する。
【0061】
<複合箔の製造形態>
第1複合箔(1): 第1複合箔の内、銅層表面に異種金属層として硬質ニッケルメッキ層を備えるものの製造は、銅箔を用いて、上述の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴を採用することが好ましい。最も高温加熱後の抗軟化特性に優れた硬質ニッケルメッキ層が得られるからである。本件発明で用いた硬質ニッケル電解メッキ浴は、ワット浴に近い組成を採用しているが、一般的なワット浴よりも単純な組成で、且つ、安定的な電解の可能なメッキ液組成を採用している。中でも、特徴的なのは、浴を構成するのにニッケル塩とアンモニウム塩とを併存させた点にある。
【0062】
ここでNiSO4・6H2Oの濃度は、100g/l〜180g/lとすることが望ましい。NiSO4・6H2Oの濃度が100g/l未満となると、メッキ液中のニッケル濃度が希薄になり、工業的生産性を満足しないばかりか、メッキ表面の平滑性に劣るものとなるのである。そして、NiSO4・6H2Oの濃度が180g/lを超えても、硬質ニッケルの析出速度に大きな変化はなく、むしろ廃液処理の負荷が増大するのである。
【0063】
H3BO3は緩衝剤としての役割を果たすものである。H3BO3の濃度は、20g/l〜60g/lの範囲とする事が望ましいのである。このH3BO3濃度は、上述のNiSO4・6H2Oの濃度との関係で決められるものであり、この範囲をはずれると硬質ニッケルメッキ層自体の強度が不足することとなる。
【0064】
液温は20℃〜50℃と広い範囲を採用する事が可能である。通常の酢酸ニッケル浴やスルファミン酸浴の如き液温による引張り強さに与える影響が少ないからである。そして、上述の組成の溶液とするとpHは3〜5を採用することが、最も良好な引張り強さの安定したメッキ被膜を得ることが出来るのである。更に、メッキを行う際の電流密度は、1A/dm2〜50A/dm2の広い範囲を採用する事が可能である。酢酸ニッケル浴の如き電流密度による引張り強さに与える影響が少ないからである。特に、硬質ニッケルメッキ層自体の引張り強さを高くすることを考えると、4A/dm2以下の電流密度、若しくは10A/dm2以上の範囲を採用する事が望ましい。そして、4A/dm2〜10A/dm2の範囲は、硬質ニッケルメッキ層として最も低い引張り強さとなる傾向にあるが、この電流密度範囲での引張り強さに大きな変動はなく一定レベルの値となる傾向にある。従って、製品の品質安定性を確保することを重視する場合には、4A/dm2〜10A/dm2の範囲を採用することが好ましいのである。以上に述べてきた内容は、メッキ液に攪拌を加える攪拌浴であることを前提としている。本件発明に言う攪拌とは、電着する際の被メッキ表面近傍でのイオン欠乏層を無くする程度の攪拌が求められるのであり、例えばメッキ槽内にスターラーを配置して攪拌を行う場合、メッキ液循環により作り出される流動攪拌状態を含む概念として記載している。
【0065】
第1複合箔(2): 第1複合箔の内、銅層表面に異種金属層としてコバルトメッキ層を備えるものの製造は、銅箔の表面にコバルトメッキ層を形成することが出来るものであれば、種々の方法を採用することが出来る。例えば、a)硫酸コバルトを用いコバルト濃度が5〜30g/l、クエン酸三ナトリウム50〜500g/l、液温20〜50℃、pH2〜4、電流密度0.3〜10A/dm2の条件、b)硫酸コバルトを用いコバルト濃度が5〜30g/l、ピロリン酸カリウム50〜500g/l、液温20〜50℃、pH8〜11、電流密度0.3〜10A/dm2の条件、c)硫酸コバルトを用いコバルト濃度が10〜70g/l、ホウ酸20〜60g/l、液温20〜50℃、pH2〜4、電流密度1〜50A/dm2の条件とする等である。
【0066】
しかしながら、本件発明では、上記組成の硫酸コバルト電解メッキ浴を採用することが最も好ましいのである。高温加熱後の抗軟化特性に最も優れたコバルトメッキ層が得られるからである。本件発明では、第1複合箔の製造に用いた硬質ニッケルメッキ層の形成に用いた硫酸ニッケル浴の硫酸ニッケルを硫酸コバルトに置き換え、そこに凝集剤を加えた硫酸コバルト電解メッキ浴を採用している。
【0067】
ここでCoSO4・7H2Oの濃度は、120g/l〜200g/lとすることが望ましい。CoSO4・7H2Oの濃度が120g/l未満となると、メッキ液中のコバルト濃度が希薄になり、工業的生産性を満足しないばかりか、メッキ表面の平滑性に劣るものとなるのである。そして、CoSO4・7H2Oの濃度が200g/lを超えても、コバルトの析出速度に大きな変化はなく、むしろ廃液処理の負荷が増大するのである。
【0068】
ここでも、第1複合箔と同様に、H3BO3は緩衝剤としての役割を果たすものである。H3BO3の濃度は、25g/l〜50g/lの範囲とする事が望ましいのである。このH3BO3濃度は、上述のCoSO4・7H2Oの濃度との関係で決められるものであり、この範囲をはずれるとコバルト層自体の強度が不足することとなる。
【0069】
液温は20℃〜50℃の範囲を採用する事が可能である。コバルトメッキ層の場合、液温が低いほど、引張り強さが高くなる傾向にある。しかしながら、液温が20℃未満となるとコバルトの析出速度が低くなり、工業的な生産性を満足しない。一方、液温が50℃付近で引張り強さが飽和した定常値となる傾向があるのである。そして、上述の組成の溶液とするとpHは2〜5を採用することが、最も良好で安定した引張り強さを持つメッキ被膜を得ることが出来るのである。更に、メッキを行う際の電流密度は、1A/dm2〜50A/dm2 の広い範囲を採用する事が可能である。電流密度による引張り強さに与える影響が少ないからである。特に、コバルトメッキ層自体の引張り強さを高くすることを考えると、2A/dm2以下の電流密度、若しくは8A/dm2 以上 の範囲を採用する事が望ましい。そして、2A/dm2〜8A/dm2の範囲は、最も低い引張り強さとなる傾向にあるが、この電流密度範囲での引張り強さに大きな変動はなく一定レベルの値となる傾向にある。従って、製品の品質安定性を確保することを重視する場合には、2A/dm2〜8A/dm2の範囲を採用することが好ましいのである。以上に述べてきた内容は、メッキ液に攪拌を加える攪拌浴であることを前提としている。
【0070】
以上に述べたコバルトメッキ液には凝集剤を添加して用いることも好ましい。ここで言う凝集剤とは、凝集剤として市販されているものを使用することは可能であるが、特にアクリルアミド系ポリマーを主剤として含むものを用いることが好ましいのである。そして、この凝集剤は、コバルトの析出速度を制御し、メッキ被膜の膜厚均一性を向上させるために用いるのであり、メッキ浴中で0.05g/l〜0.3g/lとなるように添加するのである。凝集剤が0.05g/l未満の場合には、コバルトメッキ被膜の膜厚均一性の向上には寄与し得ず、凝集剤が0.3g/lを超えて増量しても、むしろコバルトメッキ被膜の膜厚均一性が劣化し出すのである。
【0071】
第1複合箔(3): 第1複合箔の内、銅層表面に異種金属層としてニッケル−コバルトメッキ層を備えるものの製造は、銅箔の表面にニッケル−コバルトメッキ層を形成することが出来るものであれば、種々のメッキ条件を採用することが出来る。例えば、硫酸コバルト80〜180g/l、硫酸ニッケル80〜120g/l、ホウ酸20〜40g/l、塩化カリウム10〜15g/l、リン酸2水素ナトリウム0.1〜15g/l、液温30〜50℃、pH3.5〜4.5、電流密度1〜10A/dm2の条件等である。
【0072】
しかしながら、本件発明では、上記の蟻酸ナトリウムを含むニッケル−コバルト合金電解メッキ浴を採用することが、複合箔の良好な抗軟化性能を得るためには好ましいのである。高温加熱後の抗軟化特性に最も優れたニッケル−コバルト合金メッキ層が得られるからである。本件発明で用いたニッケル−コバルト合金電解メッキ浴は、ニッケルメッキを行う際のワット浴組成に硫酸コバルトを添加した如き組成を採用している。従って、極めて単純で、且つ、安定的な電解の可能なメッキ液組成を採用している。
【0073】
ここでは、ニッケル−コバルト合金電解メッキ浴中のNiSO4・6H2O濃度を100g/l〜200g/l、NiCl2・6H2O濃度を30g/l〜50g/l、CoSO4・7H2O濃度を10g/l〜30g/lの範囲とすることが望ましい。この組成バランスの範囲で、高温加熱後の抗軟化特性に最も優れたニッケル−コバルト合金メッキ層が得られるのである。従って、それぞれの成分の範囲をはずれると、高温加熱後の抗軟化特性に優れたニッケル−コバルト合金メッキ層が得られなくなるのである。
【0074】
また、ここでもH3BO3は緩衝剤としての役割を果たすものであり、H3BO3の濃度は、20g/l〜40g/lの範囲とする事が望ましいのである。このH3BO3濃度は、上述のNiSO4・6H2O、NiCl2・6H2O濃度、CoSO4・7H2O濃度の各濃度との関係で決められるものであり、この範囲をはずれるとニッケル−コバルト合金メッキ層自体の強度が不足し、メッキ層の膜厚均一性も損なわれるのである。
【0075】
液温は20℃〜50℃の範囲を採用する事が可能である。ニッケル−コバルト合金メッキ層の場合にも、液温が低いほど、引張り強さが高くなる傾向にある。しかしながら、液温が20℃未満となるとニッケル−コバルト合金の析出速度が低くなり、工業的な生産性を満足しない。一方、液温が50℃付近で引張り強さが飽和した定常値となる傾向がある。そして、上述の組成の溶液とするとpHは2〜5を採用することが、最も良好で安定した引張り強さを持つメッキ被膜を得ることが出来るのである。更に、メッキを行う際の電流密度は、1A/dm2〜25A/dm2の広い範囲を採用する事が可能である。ニッケル−コバルト合金メッキ層のニッケルとコバルトとの含有量にバラツキが少なく、引張り強さのバラツキも最小限となるからである。また、ニッケル−コバルト合金メッキ層自体の引張り強さを高くすることを考えると、10A/dm2以下の電流密度を採用する事が望ましい。以上に述べてきた内容は、メッキ液に攪拌を加える攪拌浴であることを前提としている。
【0076】
そして、本件発明においてニッケル−コバルト合金メッキ層の形成に用いる溶液には、蟻酸ナトリウム(HCOONa)を用いる事も好ましいのである。この蟻酸ナトリウムは、6価のクロムイオンを3価のクロムイオンとして建浴し、クロムメッキ層を非晶質層として析出させ、高い硬度を得る際に用いられることで知られている。従って、本件発明のようにニッケル−コバルト合金メッキ層を形成する際に用いると、メッキ液中に溶存した金属イオンの還元剤として寄与し、ニッケル成分とコバルト成分との析出効率の差を縮め、双方の成分の偏在のない均一に分散した合金メッキ層が得られるのである。蟻酸ナトリウムは、25g/l〜50g/lの濃度範囲で用いることが好ましい。蟻酸ナトリウムの濃度が25g/l未満の場合には、合金メッキ層中でのニッケル成分とコバルト成分との均一な混合状態が得られず、50g/l濃度を超える量を添加しても、それ以上に良好なニッケル−コバルト合金メッキ層は得られないのである。
【0077】
第2複合箔(1): 第2複合箔の内、銅層表面に異種金属層としてのコバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層を備えるものの製造は、銅箔を、上記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、上記A.の電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成した後、上記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、上記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成するのである。
【0078】
このときの硫酸コバルト電解メッキ液に関する内容は、上述の第1複合箔(2)の硫酸コバルト電解メッキ液と同様である。そして、硬質ニッケル電解メッキ液に関する内容は、上述の第1複合箔(1)の硬質ニッケル電解メッキ液と同様である。従って、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0079】
第2複合箔(2): 第2複合箔の内、銅層表面に異種金属層としての鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層を備えるものの製造は、銅箔を、上記A.の組成の硫酸鉄電解メッキ浴に浸漬し、上記A.の電解条件で電解メッキを行い、鉄メッキ層を形成した後、上記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、上記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成するのである。
【0080】
このときの硬質ニッケル電解メッキ液に関する内容は、上述の第1複合箔(1)の硬質ニッケル電解メッキ液と同様である。従って、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。従って、以下では、鉄メッキ液に関してのみ説明する。
【0081】
ここでFeSO4・7H2Oの濃度は、100g/l〜200g/lとすることが望ましい。FeSO4・7H2Oの濃度が100g/l未満となると、メッキ液中の鉄濃度が希薄になり、メッキ表面の平滑性に劣るものとなる。そして、FeSO4・7H2Oの濃度が200g/lを超えても、鉄の析出速度に大きな変化はなく、むしろ廃液処理の負荷が増大するのである。
【0082】
ここでも、第1複合箔と同様に、H3BO3を緩衝剤として用いている。H3BO3の濃度は、20g/l〜50g/lの範囲とする事が望ましいのである。このH3BO3濃度は、上述のFeSO4・7H2Oの濃度との関係で決められるものであり、この範囲をはずれると脆い鉄メッキ層となる傾向にある。
【0083】
液温は20℃〜50℃の範囲を採用する事が可能である。液温が20℃未満となると鉄の析出速度が低くなり、工業的な生産性を満足しない。一方、液温が50℃を超えると溶液寿命が短くなり、管理コストが上昇するのである。そして、上述の組成の溶液とするとpHは2〜5を採用することが、最も良好で安定した引張り強さを持つメッキ被膜を得ることが出来るのである。更に、メッキを行う際の電流密度は、1A/dm2〜30A/dm2 の範囲を採用する事が可能である。電流密度による引張り強さに与える影響が少ないからである。特に、鉄メッキ層自体の靱性及び引張り強さを共に高くすることを考えると、2A/dm2以下の電流密度、若しくは8A/dm2 以上の範囲を採用する事が望ましい。そして、2A/dm2〜8A/dm2の範囲は、最も低い引張り強さとなる傾向にあるが、この電流密度範囲での引張り強さに大きな変動はなく一定レベルの値となる傾向にある。従って、製品の品質安定性を確保することを重視する場合には、2A/dm2〜8A/dm2の範囲を採用することが好ましいのである。以上に述べてきた内容は、メッキ液に攪拌を加える攪拌浴であることを前提としている。
【0084】
以上に述べた鉄メッキ液にも、凝集剤を添加して用いることが好ましい。ここで言う凝集剤とは、凝集剤として市販されているものを使用することは可能であるが、特にアクリルアミド系ポリマーを主剤として含むものを用いることが好ましいのである。そして、この凝集剤は、鉄の析出速度を制御し、メッキ被膜の膜厚均一性を向上させるために用いるのであり、メッキ浴中で0.05g/l〜0.3g/lとなるように添加するのである。凝集剤が0.05g/l未満の場合には、鉄メッキ被膜の膜厚均一性の向上には寄与し得ず、凝集剤が0.3g/lを超えて増量しても、むしろコバルトメッキ被膜又は鉄メッキ被膜の膜厚均一性が劣化し出すのである。
【0085】
第3複合箔(1): 第3複合箔の内、銅層表面に異種金属層としての第1コバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層/第2コバルトメッキ層を備えるものの製造は、銅箔を、上記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、上記A.の電解条件で電解メッキを行い、第1コバルトメッキ層を形成した後、上記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、上記B.の電解条件で電解メッキを行い硬質ニッケルメッキ層を形成し、更に上記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、上記A.の電解条件で電解メッキを行い、第2コバルトメッキ層を形成する
【0086】
このときの硫酸コバルト電解メッキ液に関する内容は、上述の第1複合箔(2)の硫酸コバルト電解メッキ液と同様である。そして、硬質ニッケル電解メッキ液に関する内容は、上述の第1複合箔(1)の硬質ニッケル電解メッキ液と同様である。従って、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0087】
第3複合箔(2): 第3複合箔の内、銅層表面に異種金属層としての鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層を備えるものの製造は、銅箔を、上記A.の組成の硫酸鉄電解メッキ浴に浸漬し、上記A.の電解条件で電解メッキを行い、鉄メッキ層を形成した後、上記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、上記B.の電解条件で電解メッキを行い硬質ニッケルメッキ層を形成し、更に上記C.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、上記C.の電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成する
【0088】
このときの硫酸鉄電解メッキ液に関する内容は、上述の第2複合箔(2)の硫酸鉄電解メッキ液と同様である。そして、硬質ニッケル電解メッキ液に関する内容は、上述の第1複合箔(1)の硬質ニッケル電解メッキ液と同様である。更に、硫酸コバルト電解メッキ液に関する内容は、上述の第1複合箔(2)の硫酸コバルト電解メッキ液と同様である。従って、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0089】
<本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造形態>
上述の複合箔を用いてキャパシタ層形成材を形成する方法としては、上記複合箔の異種金属層を設けた表面に誘電層を形成する。この誘電層の材質に関しては特に限定はない。また、誘電層の形成方法についても、いわゆるゾル−ゲル法、誘電体フィラーとバインダー樹脂とを含む誘電体フィラー含有樹脂溶液を用いて塗工により誘電層を形成する塗工法、誘電体フィラーを含有したフィルムをラミネートする方法等種々の公知の方法を採用することが可能である。そして、誘電層の形成が終了すると、この誘電層の上に上部電極を形成するための第1導電層を設けることになる。誘電層上への第1導電層の形成は、金属箔を用いて張り合わせる方法、メッキ法で導電層を形成する方法、スパッタリング蒸着等の法を用いる方法等種々の方法を採用することが可能である。
【0090】
<本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いて得られる内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造形態>
以上に述べてきた本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いることで、誘電層との密着性に優れた下部電極を形成することが可能となり、当該下部電極は耐熱性に優れた素材であるため、300℃〜400℃の範囲の熱間プレス加工を複数回経ても、酸化劣化も起こらず、物性変化も起こしにくいものである。この本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いての内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板の製造方法に関して、特段の限定はなく、あらゆる方法を採用する事が可能となる。但し、以下の実施例に示すように、キャパシタ回路を形成した部位以外の余分な誘電層を可能な限り除去可能なプリント配線板の製造方法を採用することが好ましいのである。
【実施例1】
【0091】
この実施例では、硬質ニッケルメッキ層を備える第1複合箔を製造し、この第1複合箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を行った。
【0092】
<第1複合箔の製造>
ここでは、電解銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を下記組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、電解銅箔の光沢面に厚さ2μm、粗面に厚さ3μm相当の硬質ニッケルメッキ層を形成し、厚さ17.5μmの第1複合箔を調製した。なお、本件明細書で言う異種金属層の厚さは、平坦面にメッキ法で所定厚さの異種金属層を形成しようとしたときの目付量を基準としたときの厚さであり、現実に製造した複合箔の厚さはゲージ厚さとして示したものである。以下の実施例及び比較例において同様である。
【0093】
(硬質ニッケル電解メッキ浴組成)
NiSO4・6H2O 162g/l
NH4Cl 25g/l
H3BO3 30g/l
(メッキ条件)
浴 温 35℃
pH 4
電流密度 10A/dm2
攪 拌 あり
【0094】
得られた第1複合箔について、常態と、真空中で400℃×10時間加熱後の引張り強さ及び伸び率を評価した。その結果を表1に示す。なお、引張り強さ及び伸び率の測定はIPC−MF−150Fに定めるIPC−TM−650に定めるプリント配線板用銅箔の測定に準拠して行った。以下、同様である。
【0095】
<キャパシタ層形成材の製造>
上述の第1複合箔を、キャパシタ層形成材の下部電極の形成に用いる第2導電層の形成に用いることとし、第1複合箔の外層に存在する硬質ニッケルメッキ層の表面にゾル−ゲル法を用いて誘電層を形成した。
【0096】
ここで用いたゾル−ゲル法は、沸点近傍に加温したメタノール溶液に、安定化剤として全金属量に対して50mol%〜60mol%濃度となるようにエタノールアミンを添加し、チタンイソプロポキシド、ジルコニウムプロポキシドのプロパノール溶液、酢酸鉛、酢酸ランタン、触媒としての硝酸を順次添加し、最終的にメタノールで0.2mol/l濃度に希釈したゾル−ゲル溶液を用いた。そして、このゾル−ゲル溶液をスピンコータを用いて、前記表面処理銅箔の硬質ニッケルメッキ層の表面に塗工し、250℃×5分の大気雰囲気で乾燥、500℃×15分の大気雰囲気での熱分解を行い。更に、この塗工工程を6回繰り返し膜厚調整を行った。そして、最終的に600℃×30分の窒素置換雰囲気での焼成処理を行い誘電層を形成した。このときの誘電層の組成比は、Pb:La:Zr:Ti=1.1:0.05:0.52:0.48であり、複合箔自体に何ら異常は見られ無かった。
【0097】
以上のようにして形成した誘電層の上に、スパッタリング蒸着法により3μm厚さの銅層を第1導電層として形成し、誘電層の両面に第1導電層と第2導電層とを備えるキャパシタ層形成材とした。この段階で、所定の電圧を負荷して、層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象は見られなかった。
【0098】
<プリント配線板の製造>
以下、プリント配線板の製造に関して、図11〜図14を用いて説明するが、これらの図では図3(b)に示したキャパシタ層構成材1b’を用いた場合をモデル的に示している。従って、各実施例に応じてキャパシタ層構成材の層構成は相違していることを明記しておく。以下、プリント配線板の製造に関して説明する。
【0099】
以上のようにして製造した図11(a)に示すキャパシタ層形成材1aの片面の第1導電層2を整面し、その両面にドライフィルムを張り合わせて、エッチングレジスト層21を形成した。そして、その第1導電層の表面のエッチングレジスト層に、上部電極を形成するためのエッチングパターンを露光し、現像した。そして、塩化銅エッチング液でエッチングして、図11(b)に示すように上部電極15を形成した。
【0100】
そして、上部電極15の形成後にエッチングレジストを回路表面に残留させた状態で、回路部以外の領域の露出した誘電層の除去を行った。このときの誘電層の除去方法は、ウエットブラスト処理を用い、中心粒径が14μmの微粒粉体であるアルミナ研磨剤を水に分散させたスラリー状の研磨液(研磨剤濃度14vol%)を、0.20MPaの水圧で長さ90mm、幅2mmのスリットノズルから高速水流として被研磨面に衝突させ、不要な誘電層の研磨除去を行ったのである。このウエットブラスト処理が終了すると、エッチングレジストの剥離を行い、水洗し、乾燥し、図11(c)に示す状態とした。
【0101】
上記誘電層除去の終了したキャパシタ層形成材は、露出した誘電層を除去して、深くなった上部電極間ギャップを埋設する必要がある。そこで、図12(d)に示すように、キャパシタ層形成材の両面に絶縁層及び導電層を設けるため、銅箔10の片面に80μm厚さの半硬化樹脂層7を備えた樹脂層付銅箔8を重ね合わせて、180℃×60分の加熱条件下で熱間プレス成形し、外層に銅箔層10と絶縁層7’と張り合わせられた図12(e)に示す状態とした。そして、図12(e)に示す外層の第2導電層4をエッチング加工し、下部電極9とし、図12(f)に示す状態とした。
【0102】
次に、外層に位置する銅箔層10に外層回路22及びビアホール23を形成するため、定法に基づいて銅メッキ層24を設け、エッチング加工して図13(g)の状態とした。そして、図13(h)に示すように、樹脂層付銅箔8を重ね合わせて、180℃×60分の加熱条件下で熱間プレス成形し、外層に銅箔層10と絶縁層7’とを張り合わせ、図14(i)に示す状態とした。
【0103】
そして、図14(i)に示す外層の銅箔層10に外層回路22及びビアホール23を形成するため、定法に基づいて銅メッキ層24を設け、エッチング加工して図14(j)の状態とし、内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板30を製造した。
【実施例2】
【0104】
この実施例では、コバルト層を備える第1複合箔を製造し、この第1複合箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を行った。
【0105】
<第1複合箔の製造>
ここでは、電解銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を下記組成のコバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、電解銅箔の光沢面に厚さ2μm、粗面に厚さ3μm相当のコバルトメッキ層を形成し、厚さ17.8μmの第1複合箔を調製した。
【0106】
(コバルト電解メッキ浴組成)
CoSO4・7H2O 180g/l
H3BO3 30g/l
凝集剤 0.1g/l
(アクリルアミド系ポリマー、商品名:PN−171、栗田工業社製)
(メッキ条件)
浴 温 35℃
pH 4
電流密度 10A/dm2
攪 拌 あり
【0107】
そして、得られた第2複合箔について、実施例1と同様に常態と、真空中で400℃×10時間加熱後の引張り強さ及び伸び率を評価した。その結果を表1に示す。
【0108】
以下、実施例1と同様にして、キャパシタ層形成材及び内蔵キャパシタ回路を備えたプ
リント配線板を製造した。ここで得られたキャパシタ層形成材に、所定の電圧を負荷して、層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象は見られなかった。また、内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板も何ら問題なく製造出来た。
【実施例3】
【0109】
この実施例では、ニッケル−コバルト合金層を備える第1複合箔を製造し、この第1複合箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を行った。
【0110】
<第1複合箔の製造>
ここでは、電解銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を下記組成のニッケル−コバルト合金電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、電解銅箔の光沢面に厚さ2μm、粗面に厚さ3μm相当のニッケル−コバルト合金メッキ層を形成し、厚さ17.2μmの第1複合箔を調製した。
【0111】
(ニッケル−コバルト電解メッキ浴組成)
NiSO4・6H2O 200g/l
NiCl2・6H2O 36g/l
CoSO4・7H2O 12g/l
H3BO3 30g/l
HCOONa 45g/l
(メッキ条件)
浴 温 45℃
pH 4
電流密度 10A/dm2
攪 拌 あり
【0112】
そして、実施例1と同様に、得られた第3複合箔の常態と、真空中で400℃×10時間加熱後の引張り強さ及び伸び率を評価した。その結果を表1に示す。
【0113】
以下、実施例1と同様にして、キャパシタ層形成材及び内蔵キャパシタ回路を備えたプ
リント配線板を製造した。ここで得られたキャパシタ層形成材に、所定の電圧を負荷して、層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象は見られなかった。また、内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板も何ら問題なく製造出来た。
【実施例4】
【0114】
ここでは、電解銅箔を用いて、コバルトメッキ層と硬質ニッケルメッキ層とが順次形成されてなる第2複合箔を製造し、この第2複合箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を行った。
【0115】
<第2複合箔の製造>
電解銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を実施例2と同様のコバルト電解メッキ浴に浸漬し、実施例2と同様に電解メッキを行い、電解銅箔の光沢面及び粗面にそれぞれ厚さ0.3μm相当のコバルトメッキ層を形成し、次いで実施例1と同様の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、実施例1と同様に電解メッキを行い、コバルトメッキ層の上に、銅箔の光沢面側に厚さ2μm、粗面側に厚さ3μm相当の硬質ニッケルメッキ層を形成し、厚さ16.9μmの複合箔を調製した。
【0116】
そして、実施例1と同様に、得られた第2複合箔の常態と、真空中で400℃×10時間加熱後の引張り強さ及び伸び率を評価した。その結果を表1に示す。
【0117】
以下、実施例1と同様にして、キャパシタ層形成材及び内蔵キャパシタ回路を備えたプ
リント配線板を製造した。ここで得られたキャパシタ層形成材に、所定の電圧を負荷して、層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象は見られなかった。また、内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板も何ら問題なく製造出来た。
【実施例5】
【0118】
ここでは、電解銅箔を用いて、鉄メッキ層と硬質ニッケルメッキ層とが順次形成されてなる第2複合箔を製造し、この第2複合箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を行った。
【0119】
<第2複合箔の製造>
電解銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を、下記組成の硫酸塩鉄電解メッキ浴に浸漬し、下記条件で電解メッキを行い、電解銅箔の光沢面及び粗面にそれぞれ厚さ0.3μm相当の鉄メッキ層を形成し、次いで実施例1と同様の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、実施例1と同様に電解メッキを行い、コバルトメッキ層の上に、銅箔の光沢面側に厚さ2μm、粗面側に厚さ3μm相当の硬質ニッケルメッキ層を形成し、厚さ17.4μmの複合箔を調製した。
【0120】
(硫酸塩鉄電解メッキ浴組成)
FeSO4・7H2O 180g/l
H3BO3 30g/l
(メッキ条件)
浴 温 30℃
pH 4
電流密度 5A/dm2
攪 拌 あり
【0121】
そして、実施例1と同様に、得られた第2複合箔の常態と、真空中で400℃×10時間加熱後の引張り強さ及び伸び率を評価した。その結果を表1に示す。
【0122】
以下、実施例1と同様にして、キャパシタ層形成材及び内蔵キャパシタ回路を備えたプ
リント配線板を製造した。ここで得られたキャパシタ層形成材に、所定の電圧を負荷して、層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象は見られなかった。また、内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板も何ら問題なく製造出来た。
【実施例6】
【0123】
この実施例では、銅箔表面に第1コバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層/第2コバルトメッキ層を備える第3複合箔を製造し、この第3複合箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を行った。
【0124】
<第3複合箔の製造>
銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を用いて、電解銅箔の光沢面及び粗面に、実施例2の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、実施例2の電解条件で電解メッキを行い、0.3μm厚さ相当の第1コバルトメッキ層を両面に形成した。そして、実施例1の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、実施例1の電解条件で電解メッキを行い3μm厚さ相当の硬質ニッケルメッキ層を両面に形成した。更に、実施例2の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、実施例2の電解条件で電解メッキを行い、0.3μm厚さ相当の第2コバルトメッキ層を形成し、19.2μm厚さの第3複合箔を製造した。
【0125】
そして、実施例1と同様に、得られた第3複合箔の常態と、真空中で400℃×10時間加熱後の引張り強さ及び伸び率を評価した。その結果を表1に示す。
【0126】
以下、実施例1と同様にして、キャパシタ層形成材及び内蔵キャパシタ回路を備えたプ
リント配線板を製造した。ここで得られたキャパシタ層形成材に、所定の電圧を負荷して、層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象は見られなかった。また、内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板も何ら問題なく製造出来た。
【実施例7】
【0127】
この実施例では、銅箔表面に鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層を備える第3複合箔を製造し、この第3複合箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を行った。
【0128】
銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を用いて、電解銅箔の光沢面及び粗面に、実施例5の硫酸鉄電解メッキ浴に浸漬し、実施例5の電解条件で電解メッキを行い、0.3μm厚さ相当の鉄メッキ層を両面に形成した。そして、実施例1の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、実施例1の電解条件で電解メッキを行い3μm厚さ相当の硬質ニッケルメッキ層を両面に形成した。更に、実施例2の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、実施例2の電解条件で電解メッキを行い、0.3μm厚さ相当の第2コバルトメッキ層を形成し、19.3μm厚さの第3複合箔を製造した。
【0129】
そして、実施例1と同様に、得られた第3複合箔の常態と、真空中で400℃×10時間加熱後の引張り強さ及び伸び率を評価した。その結果を表1に示す。
【0130】
以下、実施例1と同様にして、キャパシタ層形成材及び内蔵キャパシタ回路を備えたプ
リント配線板を製造した。ここで得られたキャパシタ層形成材に、所定の電圧を負荷して、層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象は見られなかった。また、内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板も何ら問題なく製造出来た。
【比較例】
【0131】
[比較例1]
実施例1の電解銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)に硬質ニッケルメッキ層を形成することなく、この電解銅箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を試みた。
【0132】
しかしながら、キャパシタ層形成材の製造を行おうとして、当該電解銅箔の外層面にゾル−ゲル法を用いて誘電層を形成しようとして、実施例1と同様の手法を採用したところ、500℃×15分の大気雰囲気での熱分解で電解銅箔表面の酸化が目立ってきた。更に、この塗工工程を6回繰り返し膜厚調整を行うと電解銅箔表面の酸化は更に進行し、最終的に600℃×30分の窒素置換雰囲気での焼成処理で酸化による脆化を引き起こし、電解銅箔に容易にクラックが発生する状態となった。従って、以下の工程の全ては実施不可能で、キャパシタ層形成材の製造及びプリント配線板製造は出来なかった。
【0133】
[比較例2]
この比較例では、実施例1の第2導電層を構成した複合箔の硬質ニッケルメッキ層をニッケル−リン合金メッキ層とした点が異なるのみである。従って、重複した説明となる部分の説明は極力省略するものとする。
【0134】
ここでは、電解銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を下記組成のニッケル−リン電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、電解銅箔の光沢面に厚さ2μm、粗面に厚さ3μmのニッケル−リン合金メッキ層(リン含有量は、0.3wt%)を形成し、厚さ17μmの第1複合箔を調製した。
【0135】
ニッケル−リン合金層は、リン酸系溶液を用い、硫酸ニッケル濃度が250g/l、塩化ニッケル濃度40.39g/l、H3BO3濃度19.78g/l、H3PO3濃度3g/l、液温50℃、電流密度20A/dm2の条件で電解し、電解銅箔の両面にニッケル−リン合金層を均一且つ平滑に電析させた。
【0136】
そして、実施例1と同様にゾル−ゲル法で誘電層を形成してのキャパシタ層形成材の製造を経て、誘電層の両面に第1導電層と第2導電層とを備えるキャパシタ層形成材とした。この段階で層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象が発生しており、製品歩留まりが60%であった。
【0137】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0138】
本件発明に係るキャパシタ層形成材は、下部電極を構成する第2導電層に高温耐熱特性に優れた上記複合箔を備えているため、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー基板を使用した多層プリント配線板の製造に好適である。これらの基板を用いたプリント配線板の製造に用いられる300℃〜400℃の範囲の熱間プレス加工を繰り返し受けても、キャパシタ回路形状を形成して以降も下部電極形状に異常は発生せず、周囲の素材の熱による膨張伸縮の挙動に対する抵抗性を持っている。また、このように優れた耐熱特性を有するが故に、当該複合箔の表面にゾル−ゲル法によって、誘電層を形成する際の過酷な熱履歴を受けても、何ら問題がない。
【0139】
しかも、本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層の形成に用いる複合箔の異種金属層の種類、層構成の組み合わせを誘電層の種類に合わせて、適宜選択出来るものとなるため、誘電層と下部電極との密着性を良好に維持することが可能となる。その結果、本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いて得られた内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の品質も良好となる。また、当該異種金属層がニッケル等の高抵抗金属であるため、抵抗器回路の形成に使用することも可能となる。
【0140】
更に、本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造に用いる複合箔の製造方法は、異種金属層に一定のメッキ条件を採用することで、耐熱特性に優れたキャパシタ層形成材用の金属箔を安価に製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本件発明に係るキャパシタ層形成材の模式断面図である。
【図2】本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造に用いる複合箔の模式断面図である。
【図3】本件発明に係るキャパシタ層形成材の模式断面図である。
【図4】本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造に用いる複合箔の模式断面図である。
【図5】銅箔の表面にコバルトメッキ層と硬質ニッケルメッキ層とが順次積層された複合箔の常態の光学顕微鏡写真である。
【図6】銅箔の表面にコバルトメッキ層と硬質ニッケルメッキ層とが順次積層された複合箔の加熱後(400℃×10時間)の光学顕微鏡写真である。
【図7】銅箔の表面に硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔の常態の光学顕微鏡写真である。
【図8】銅箔の表面に硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔の加熱後(400℃×10時間)の光学顕微鏡写真である。
【図9】本件発明に係るキャパシタ層形成材の模式断面図である。
【図10】本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造に用いる複合箔の模式断面図である。
【図11】本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いた内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板の製造フローを表す模式図である。
【図12】本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いた内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板の製造フローを表す模式図である。
【図13】本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いた内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板の製造フローを表す模式図である。
【図14】本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いた内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板の製造フローを表す模式図である。
【符号の説明】
【0142】
1a,1b,1c,1a’,1b’,1c’ キャパシタ層形成材
5a,5b,5c,5a’,5b’,5c’ 複合箔
6a,6b,6c 異種金属層
2 第1導電層
3 誘電層
4 第2導電層
7 半硬化樹脂層
7’ 絶縁層
8 樹脂付銅箔
9 下部電極
10 銅箔層
15 上部電極
21 エッチングレジスト層
22 外層回路
23 ビアホール
24 銅メッキ層
30 プリント配線板
C 銅層
【技術分野】
【0001】
本件出願に係る発明は、プリント配線板の内蔵キャパシタ層を形成するために用いるキャパシタ層形成材及びそのキャパシタ層形成材製造に用いる複合箔の製造方法並びにそのキャパシタ層形成材を用いて得られる内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタ回路(素子)を内蔵した多層プリント配線板は、その内層に位置する絶縁層の内の1以上の層を誘電層として用いている。そして、特許文献1に開示されているように、その誘電層の両面に位置する内層回路にキャパシタとしての上部電極及び下部電極が対向配置されキャパシタ回路を形成し内蔵キャパシタとして用いられてきた。このキャパシタ回路を形成するには、両面銅張積層板と類似の第1導電層/誘電層/第2導電層という層構成のキャパシタ層形成材を用いるのが一般的である。そして、内蔵キャパシタ回路の製造は、このキャパシタ層形成材の導電層を予めエッチング加工してキャパシタ回路を形成し内蔵基板に張り合わせたり、内層基板に張り合わせた後にエッチング加工する等の種々の方法が採用されてきた。
【0003】
一方、前記誘電層の形成は、金属箔を用いてその表面へ、特許文献2に開示されているように誘電体フィラーを含有した樹脂組成物を塗工する方法、特許文献3に開示されているように誘電体フィラーを含有したフィルムを張り合わせる方法、特許文献4に開示されているように化学的気相反応法を応用してのゾル−ゲル法等種々の製法が採用されてきた。
【0004】
そして、上記各特許文献に開示されているように、誘電層を挟み込む導電層の材質としては、銅箔等を用いた銅成分を主体としたもので、誘電層との密着性を改善し同時に誘電率等の電気的特性の向上を目的として、特許文献4に見られるように下部電極の表面にニッケル−リン合金層を設ける場合もあった。
【0005】
そして、キャパシタは余剰の電気を蓄電する等して電子・電気機器の省電力化等を可能にしてきたものであるから、可能な限り大きな電気容量を持つことが基本的な品質として求められる。キャパシタの容量(C)は、C=εε0(A/d)の式(ε0は真空の誘電率)から計算される。特に、最近の電子、電気機器の軽薄短小化の流れから、プリント配線板にも同様の要求が行われることになり、一定のプリント配線板面積の中で、キャパシタ電極の面積を広く採ることは殆ど不可能であり、表面積(A)に関しての改善に関しては限界がある事は明らかである。従って、キャパシタ容量を増大させるためには、キャパシタ電極の表面積(A)及び誘電体層の比誘電率(ε)が一定とすれば、誘電体層の厚さ(d)を薄くするか、キャパシタ回路全体として見たときの層構成に工夫を凝らす等の試みがなされてきた。
【0006】
また、近年では、高集積化したICチップ、ギガレベルからテラレベルまでを射程とした高速信号伝達速度が要求されるようになり、プリント配線板からの発生熱も大きくなり、種々の高周波特性に対する要求がなされてきた。その要求に対応するため、特許文献5及び特許文献6に開示されているような、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料としたプリント配線板製造も活発化してきている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−105205号公報
【特許文献2】特開平9−040933号公報
【特許文献3】特開2004−250687号公報
【特許文献4】米国特許第6541137号公報
【特許文献5】特開2003−171480号公報
【特許文献6】特開2003−124580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、キャパシタ層形成材が第1導電層/誘電層/第2導電層という層構成を持っていることを考えれば、誘電層を薄くすると言うことは、キャパシタ層形成材そのものの厚さが薄くなり、強度が維持出来ず、取扱時に折れ等の損傷を受ける確率が高く、ハンドリング時の安全性に欠けるという欠点があった。
【0009】
また、上記特許文献4に開示されているように、ゾル−ゲル法で誘電層を構成する場合には、金属箔の表面に誘電層を形成するためのゾル−ゲル膜を形成し、600℃付近の温度で焼成する必要があり、金属箔が酸化して脆化する現象が起こっていた。更に、下部電極の表面にニッケル−リン合金層を設ける場合に於いては、誘電層とニッケル−リン合金層との密着性に問題があり、誘電層とニッケル−リン合金層との間での剥離現象が起こる場合があり、キャパシタとしての設計電気容量とのズレが大きくなり設計品質を満たさないこととなる。また、プリント配線板としてのデラミネーション発生の起点となり、半田リフロー等の加熱衝撃を受けることで層間剥離が生じたり、使用途中の発生熱による剥離が誘発され製品寿命を短命化させる原因となっていた。
【0010】
一方で、従来のガラス−エポキシ基板に代えて、高温耐熱性、高周波特性等を考慮して、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料として用いて、これらを用いた多層基板の製造が試みられている。そして、これらの基板製造に共通するのは、そのプレス加工温度が極めて高く300℃〜400℃の間にあり、基板材料が硬いという点にある。従って、これらのフッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料として用いた多層プリント配線板の内部に内蔵キャパシタ層を形成することを考えるに、300℃〜400℃の高温プレス加工を経て、硬い基板材料に押されても材質的な変動が無く、周囲の材料の膨張伸縮に耐えるだけの強度を備えたものであることが望ましい。
【0011】
従って、市場では、キャパシタ回路の下部電極として誘電層との密着性に優れ、且つ、抵抗器電極等としての使用が可能で回路の小型化の図れる新たな下部電極形成のための導電層を備えたキャパシタ層形成材が求められてきたのである。そして、同時にフッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料としたプリント配線板での300℃〜400℃の高温加工プロセスを経ても、強度の劣化のないキャパシタ層形成材が求められてきたのである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、以下のキャパシタ層形成材を用いることで、誘電層と下部電極との良好な密着性を得られ、且つ、誘電層が薄くなってもキャパシタ層形成材の強度を維持してハンドリング性が高まることに想到したのである。しかも、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料としたプリント配線板での、300℃〜400℃の高温加工プロセスを経ても強度の劣化のないキャパシタ層形成材であると同時に、後述するキャパシタ層形成材を用いることで、キャパシタ回路としての電気容量も確実に向上するのである。
【0013】
<本件発明に係るキャパシタ層形成材>
図1にキャパシタ層形成材の模式断面を示している。この図1から分かるように、キャパシタ層形成材1は、上部電極形成に用いる第1導電層2と下部電極形成に用いる第2導電層4との間に誘電層3を備えている。そして、本件発明に係るキャパシタ層形成材は、下部電極形成に用いる第2導電層4に種々の複合箔を用いることを特徴とするものである。即ち、この複合箔は、銅層の表面に1層の異種金属層を設けたもの(以下、「第1複合箔」と称する。)、銅層の表面に2層の異種金属層を設けたもの(以下、「第2複合箔」と称する。)、銅層の表面に3層の異種金属層を設けたもの(以下、「第3複合箔」と称する。)の3種類に大別出来る。そこで、キャパシタ層形成材も、第2導電層4の構成に用いる複合箔の種類に応じて、第1キャパシタ層形成材、第2キャパシタ層形成材、第3キャパシタ層形成材のそれぞれに分別して説明する事とする。
【0014】
<第1キャパシタ層形成材>
この第1キャパシタ層形成材は、第1複合箔を用いて得られたものである。ここで、第1キャパシタ層形成材1aの基本的層構成は図1に示したとおりであり、その第2導電層4に種々の複合箔を用い、当該複合箔には次のような3種類の基本的バリエーションが存在する。
【0015】
バリエーション1−i: 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、第2導電層は、銅層の表面に異種金属層として硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【0016】
バリエーション1−ii: 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、第2導電層は、銅層の表面に異種金属層としてコバルトメッキ層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【0017】
バリエーション1−iii: 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面に異種金属層としてニッケル−コバルト合金メッキ層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【0018】
上述したことから明らかなように、第1複合箔5aとは、図2に示すように銅層Cの表面に単一の異種金属層6を備えたものである。但し、図2(a)及び図2(b)に示すように、異種金属層6は、銅層の片面若しくは両面に設けることができる。そして、第1複合箔5aの異種金属を形成した面が誘電層3との接触面となる。異種金属が存在することで誘電層との密着性向上が図れるからである。
【0019】
ここで言う第1複合箔5aは、銅層の表面に異種金属層6として硬質ニッケルメッキ層、コバルトメッキ層、ニッケル−コバルト合金メッキ層(以上及び以下において、説明の都合上、単に「異種金属層」と称する場合がある。)のいずれかが形成されてなるものである。ここで図2(b)にあるように、銅層の両面に、硬質ニッケルメッキ層、コバルトメッキ層、ニッケル−コバルト合金メッキ層のいずれか(以下、「硬質ニッケルメッキ層等」と称する。)を設けたのは、これらが耐熱特性に優れ、400℃×10時間程度の加熱では軟化が起こりにくく、複合箔全体として見たときの引張り強さ(強度)の低下を効果的に抑制し、加熱後の引張り強さを48kgf/mm2以上とすることが容易だからである。このような物性を備える限り、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料としたプリント配線板での、300℃〜400℃の高温加工プロセスを経ても強度の劣化は殆ど無く、結果として、この第1複合箔5aを用いて製造されるキャパシタ層形成材の品質劣化も殆ど無いことになる。また、この硬質ニッケルメッキ層等を銅層の両面に設けたのは、銅層の形成に銅箔を用いることを考えると硬質ニッケルメッキ層等を片面に設けても引張り強さ等の物理的特性及びカール現象を抑制してハンドリング性は向上するが、両面に硬質ニッケルメッキ等の如き耐酸化性に優れた被膜が存在することで、銅層自体の酸化腐食を防止し、更にカール現象の抑制が図れるからである。なお、本件発明に言う硬質ニッケルメッキ層は、結晶粒が平均結晶粒径0.3μm以下のレベルに微細化され、機械的強度の高い物性を備えるものである。
【0020】
そして、銅層の形成に銅箔を用いる場合には、電解銅箔又は圧延銅箔を用いることが可能であり、その公称厚さが1μm〜35μmのものを用いることが好ましいのである。近年、プリント配線板の使用される電子機器等の小型化、軽量化、薄層化の要求に伴い、プリント配線板も薄層化する傾向にある。従って、銅箔表面に硬質ニッケルメッキ層等を備えることを考慮して1μm〜35μmとしたのである。なお、銅箔の公称厚さが7μm未満では、その厚さの銅箔に直接連続的に硬質ニッケルメッキ層等を形成する事が困難となり、製品歩留まりが飛躍的に悪化する。従って、係る場合にはキャリア箔付銅箔を使用して、銅箔層の片面に硬質ニッケルメッキ等を形成し、そのままで基材に張り合わせる等の加工後に、キャリア箔を引き剥がして銅箔層の反対面に硬質ニッケルメッキ層等を形成することが好ましい。一方、銅箔の公称厚さが35μmを超えると硬質ニッケルメッキ層等を備える複合箔としたときの厚さが現在のキャパシタ層形成材に求められる適正厚さを超えるため好ましくないのである。
【0021】
次に、硬質ニッケルメッキ層等の厚みが0.5μm〜3.0μmであることが好ましいのである。上記メッキ層の厚みが0.5μm未満では、誘電層が薄くなったときのハンドリング性を改善するだけの強度が得られず、同時に、硬質ニッケルメッキ層等を抵抗回路等に利用しようとしたときの性能に欠けるのである。一方、上記硬質ニッケルメッキ層等の厚さが3.0μmを超えても、キャパシタ層形成材に加工したときのキャパシタ層形成材のハンドリング性は顕著に向上しないのであり、ニッケルやコバルト等の比較的高価な成分を多量に使用するだけとなるからである。
【0022】
また、銅層として電解銅箔を用いる場合には、粗面と光沢面との表面に設ける硬質ニッケルメッキ層等の厚みを異なるものとすることが好ましい。上述したカール現象の発生を防止するためである。例えば、12μmの公称厚さの電解銅箔の光沢面に2.5μm厚さの硬質ニッケルメッキ層等を設けたとすると、その粗面側には3.5μm厚さの硬質ニッケル層等を設けるのである。このとき光沢面側に設ける硬質ニッケルメッキ層等の厚さをt(μm)とすると、粗面側に設ける硬質ニッケルメッキ層等の厚さをt+0.5(μm)〜t+1.2(μm)とすることが好ましい。粗面側に設ける硬質ニッケルメッキ層等の厚さが、t+0.5(μm)未満の場合にはカール現象を抑制する効果を得ることが出来ず、t+1.2(μm)を超えると、当初の電解銅箔の持つカールと逆転したカール現象が発生する傾向が強まるのである。
【0023】
以上に述べてきた第1複合箔は、400℃×10時間程度の加熱を受けたとしても、十分な抗軟化性能を示し、50kgf/mm2以上の引張り強さを示すものとなる。従って、銅張積層板を製造するときに採用する180℃前後での高温プレス程度では、機械的物性が全く変化しないのである。しかしながら、400℃を超える温度でのプレス条件が求められる場合には、硬質ニッケルメッキ層よりもコバルトメッキ層若しくはニッケル−コバルト合金メッキ層を採用することが好ましい。400℃を超える温度での加熱を受けると、硬質ニッケル層単独であると銅箔層との相互拡散が起こりやすくなり、硬質ニッケル層自体の抗軟化特性を維持できず、キャパシタ形成材としての靱性が低下しハンドリング性に欠けるのである。
【0024】
以上に述べてきた第1複合箔を用いて、キャパシタ層形成材を製造するのである。ここで述べた第1複合箔及びキャパシタ層形成材の製造方法に関しては、実施形態で詳述するものとする。
【0025】
<第2キャパシタ層形成材>
この第2キャパシタ層形成材は、第2複合箔を用いて得られたものである。ここで、第2キャパシタ層形成材の基本的層構成は図3に示したとおりであり、その第2導電層4に種々の複合箔を用い、当該複合箔には次のような2種類の基本的バリエーションが存在する。
【0026】
バリエーション2−i: 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、第2導電層は、銅層の表面にコバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層の順次積層された2層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【0027】
バリエーション2−ii: 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、第2導電層は、銅層の表面に鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層の順次積層された2層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【0028】
上述したことから明らかなように、第2複合箔5bとは、図3に示すように銅層の表面に2層の異種金属層6a,6bを備えたものである。但し、図2に示すように、異種金属層6a,6bは、銅層の片面若しくは両面に設けることができる。そして、第2複合箔5bの異種金属を形成した面が誘電層3との接触面となる。異種金属層が存在することで誘電層との密着性向上が図れるからである。
【0029】
ここで言う第2複合箔5bは、銅層の表面に異種金属層6aとしてコバルトメッキ層若しくは鉄メッキ層を備え、その表面にもう一つの異種金属層6bとして硬質ニッケルメッキ層を備えたものである。ここで図2(b)にあるように、銅箔の両面に、異種金属層6を設けても良いことは、第1複合箔5aの場合と同様である。
【0030】
本件発明に言う第2複合箔5bは、銅箔Cの表面に、異種金属層6a(コバルトメッキ層若しくは鉄メッキ層)と異種金属層6b(硬質ニッケルメッキ層)とが順次形成されてなる複合箔である。図2から明らかなように、このときの銅層の表面には、異種金属層6aが接触することになり、その異種金属層6aの表面に異種金属層6b(硬質ニッケルメッキ層)が存在するのである。このような積層配置を採用したのは、銅層の表面に硬質ニッケルメッキ層が存在し、その上にコバルトメッキ層が順次形成してなる積層配置を採用すると、300℃以上(特に400℃を超えると顕著になる)の温度での長時間加熱により、硬質ニッケルメッキ層と銅箔層との境界が相互拡散により移動するカーケンダール効果が発生し、銅層内への銅−ニッケル合金領域の拡大が生じ、硬質ニッケルメッキ層が本来持つはずの高い引張り強さが維持できなくなるのである。そして、カーケンダール効果が生じた場合には、その拡散境界にはボイドが発生する事が知られており、ボイドの如き微小欠陥が存在すると、引張り強さの測定時の引張り応力の集中箇所となり、箔の破断が容易に起こることとなるのである。
【0031】
ここで、上記カーケンダール効果の発生を捉えた光学顕微鏡観察写真を示すこととする。最初に、銅箔の両面にコバルトメッキ層と硬質ニッケルメッキ層とが順次積層された複合銅箔を用いて、加熱前後の断面状態を観察した。その結果、図5に示した加熱前の光学顕微鏡による断面観察写真と、図6の400℃×10時間加熱後の光学顕微鏡による断面観察写真との間に特別顕著な差異は見られず、ほぼ断面状態に変化はないことが判明した。これに対し、銅箔の両面に硬質ニッケルメッキ層のみを形成した複合銅箔(第1複合銅箔)を用いて、加熱前後の断面状態を観察すると顕著な差異が認められるのである。図7には第1複合銅箔の加熱前の光学顕微鏡による断面観察写真を示し、図8には400℃×10時間加熱後の光学顕微鏡による断面観察写真を示した。この図7と図8とを比較すると、加熱後の断面観察写真では、銅箔の内部(図8中に矢印で示した箇所)にボイド状の形状が観察されている。このボイドは、加熱によって硬質ニッケルメッキ層と銅箔層との境界が相互拡散により移動するカーケンダール効果によって発生したものと考えられる。これらのことから第2複合箔を用いて製造したキャパシタ層形成材を用いる限り、将来的に400℃付近のプレス条件が採用されることになっても、高品質の内蔵キャパシタ層を多層プリント配線板の内部に製造出来ることとなる。
【0032】
そして、第2複合箔を構成する異種金属層6a(コバルトメッキ層若しくは鉄メッキ層)の厚みは0.1μm〜0.5μm、硬質ニッケルメッキ層の厚みは0.3μm〜2.5μmであることが好ましい。このような層構成を採用するのは、高価なコバルトの使用量を可能な限り減らし、コバルト単層のメッキと同等の抗軟化特性を得るためである。従って、異種金属層6aの厚みが0.1μm未満となると硬質ニッケルメッキ層と銅層とのバリア層として寄与し得ず上記カーケンダール効果の発生を未然に防止できず、特に400℃を超える加熱を受けたときに異種金属層6aを採用していない場合との差が生じないのである。一方、異種金属層6aの厚さが、0.5μmを超えると単層でコバルトメッキ層を設けるのと何ら変わらなくなり、異種金属層6aと硬質ニッケルメッキ層とを設ける意義が没却するからである。そして、硬質ニッケルメッキ層の厚みが0.3μm未満の場合には、異種金属層6aを補強して抗軟化特性を向上させる効果に寄与しないのである。一方、硬質ニッケルメッキ層の厚さが2.5μmを超えると、経済性が損なわれ二層構成を採用した意義が没却するのである。
【0033】
以上に述べてきた第2複合箔も400℃×10時間程度の加熱では十分な抗軟化性能を示し、50kgf/mm2以上の引張り強さを示すものとなる。このような物性を備える限り、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料としたプリント配線板での、300℃〜400℃の高温加工プロセスを経ても強度の劣化は殆ど無く、結果として、この第2複合箔5bを用いて製造されるキャパシタ層形成材の品質劣化も殆ど無いことになる。
【0034】
以上に述べてきた第1複合箔を用いて、キャパシタ層形成材を製造するのである。ここで述べた第2複合箔及びキャパシタ層形成材の製造方法に関しては、実施形態で詳述するものとする。
【0035】
<第3キャパシタ層形成材>
この第3キャパシタ層形成材は、第3複合箔を用いて得られたものである。ここで、第3キャパシタ層形成材の基本的層構成は図9に示したとおりであり、その第2導電層4に種々の複合箔を用い、当該複合箔には次のような2種類の基本的バリエーションが存在する。
【0036】
バリエーション3−i: 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、第2導電層は、銅層の表面に第1コバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層/第2コバルトメッキ層の順次積層された3層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【0037】
バリエーション3−ii: 上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、第2導電層は、銅層の表面に鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層の順次積層された3層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【0038】
即ち、第3複合箔5cとは、図10に示すように銅層の表面に3層の異種金属層6a,6b,6cを備えたものである。但し、図10に示すように、異種金属層6a,6b,6cは、銅層の片面若しくは両面に設けることができる。そして、第3複合箔5cの異種金属を形成した面が誘電層3との接触面となる。異種金属が存在することで誘電層との密着性向上が図れるからである。
【0039】
ここで言う第3複合箔5cは、銅層の表面に異種金属層6aとして第1コバルトメッキ層を備え、その表面に異種金属層6bとして硬質ニッケルメッキ層を備え、更にその表面に異種金属層6aとして第2コバルトメッキ層を設けたもの。又は、第3複合箔5cは、銅層の表面に異種金属層6aとして鉄メッキ層を備え、その表面に異種金属層6bとして硬質ニッケルメッキ層を備え、更にその表面に異種金属層6aとしてコバルトメッキ層を設けたものである。ここで図10(b)にあるように、銅層の両面に、異種金属層6を設けても良いことは、第1複合箔5aの場合と同様である。
【0040】
本件発明に言う第3複合箔5cは、銅層Cの表面に、異種金属層6a(第1コバルトメッキ層若しくは鉄メッキ層)と異種金属層6b(硬質ニッケルメッキ層)と異種金属層6c((第2)コバルトメッキ層)が順次形成されてなる複合箔である。図10から明らかなように、このときの銅層の表面には、異種金属層6aが接触することになり、その異種金属層6aの表面に異種金属層6bが、更にその表面に異種金属層6cが存在するのである。このような積層配置を採用したのは、上述と同様のカーケンダール効果の発生を防止し、高温負荷後も箔の強度を維持するためである。また、最外層にコバルト層が存在していれば高温耐熱特性により優れるものとなる。
【0041】
そして、第3複合箔を構成する異種金属層6a(第1コバルトメッキ層若しくは鉄メッキ層)の厚みは0.1μm〜0.5μm、異種金属層6bの硬質ニッケルメッキ層の厚みは0.3μm〜2.5μm、異種金属層6cの(第2)コバルトメッキ層の厚みは0.1μm〜0.5μmであることが好ましい。このような層構成を採用する理由に関しては、ほぼ第2複合箔と同様であり、異種金属層6aの厚みが0.1μm未満となると硬質ニッケルメッキ層と銅層とのバリア層としての寄与し得ず上記カーケンダール効果の発生を未然に防止することができず、特に400℃を超える加熱を受けたときに異種金属層6aを採用していない場合との差が生じないのである。一方、異種金属層6aの厚さが、0.5μmを超えると単層でコバルトメッキ層を設けるのと何ら変わらなくなり、他の異種金属層6b,6cを設ける意義が没却するからである。そして、異種金属層6b(硬質ニッケルメッキ層)の厚みが0.3μm未満の場合には、異種金属層6aを補強して抗軟化特性を向上させる効果に寄与しないのである。一方、異種金属層6b(硬質ニッケルメッキ層)の厚さが2.5μmを超えると、経済性が損なわれ三層構成を採用した意義が没却するのである。更に異種金属層6c((第2)コバルトメッキ層)の厚みが0.3μm未満の場合には、耐酸化性改善にも寄与し得ず、異種金属層6bを補強して抗軟化特性を向上させる効果に寄与しないのである。一方、異種金属層6c((第2)コバルトメッキ層)の厚みが2.5μmを超えると、経済性が損なわれ三層構成を採用した意義が没却するのである。
【0042】
以上に述べてきた第3複合箔5cも400℃×10時間程度の加熱では十分な抗軟化性能を示し、50kgf/mm2以上の引張り強さを示すものとなる。このような物性を備える限り、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー等を基板材料としたプリント配線板での、300℃〜400℃の高温加工プロセスを経ても強度の劣化は殆ど無く、結果として、この第3複合箔5cを用いて製造されるキャパシタ層形成材の品質劣化も殆ど無いことになる。
【0043】
以上に述べてきた第3複合箔を用いて、キャパシタ層形成材を製造するのである。ここで述べた第3複合箔及びキャパシタ層形成材の製造方法に関しては、実施形態で詳述するものとする。
【0044】
<本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造に用いる複合箔の製造方法>
上記第1複合銅箔の内、銅層表面に異種金属層としての硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔の製造は、銅箔を、以下の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成することを特徴とする製造方法を採用することが好ましい。
【0045】
[硬質ニッケルメッキ浴組成]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 3〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【0046】
上記第1複合銅箔の内、銅層表面に異種金属層としてのコバルトメッキ層を備える複合箔の製造は、銅箔を、以下の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成することを特徴とする製造方法を採用することが好ましい。更に、前記硫酸コバルト電解メッキ浴に、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含ませることも好ましいのである。
【0047】
[コバルトメッキ浴組成]
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【0048】
上記第1複合銅箔の内、銅層表面に異種金属層としてのニッケル−コバルト合金メッキ層を備える複合箔の製造は、銅箔を、以下の組成のニッケル−コバルト合金電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、ニッケル−コバルト合金メッキ層を形成することを特徴とする製造方法を採用することが好ましい。
【0049】
[ニッケル−コバルト合金電解メッキ浴]
NiSO4・6H2O 100g/l〜200g/l
NiCl2・6H2O 30g/l〜50g/l
CoSO4・7H2O 10g/l〜30g/l
H3BO3 20g/l〜40g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜25A/dm2
攪 拌 あり
【0050】
上記第2複合銅箔の内、銅層表面に異種金属層としてのコバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層の二層を備える複合箔の製造は、銅箔を、下記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法を採用することが好ましい。更に、前記硫酸コバルト電解メッキ浴に、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含ませることも好ましいのである。
【0051】
[A.組成、電解条件]
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【0052】
上記第2複合銅箔の内、銅層表面に異種金属層としての鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層の二層を備える複合箔の製造は、銅箔を、下記A.の組成の硫酸鉄電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、鉄メッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法を採用することが好ましい。更に、前記硫酸鉄電解メッキ浴に、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含ませることも好ましいのである。
【0053】
[A.組成、電解条件]
FeSO4・7H2O 100g/l〜200g/l
H3BO3 20g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜30A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【0054】
上記第3複合銅箔の内、銅層表面に異種金属層としての第1コバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層/第2コバルトメッキ層の三層を備える複合箔の製造は、銅箔を、下記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、第1コバルトメッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い硬質ニッケルメッキ層を形成し、更に下記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、第2コバルトメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法を採用することが好ましい。また、前記硫酸コバルト電解メッキ浴に、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含ませることも好ましいのである。
【0055】
[A.組成、電解条件]
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【0056】
上記第3複合銅箔の内、銅層表面に異種金属層としての鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層の三層を備える複合箔の製造は、銅箔を、下記A.の組成の硫酸鉄電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、鉄メッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い硬質ニッケルメッキ層を形成し、更に下記C.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記C.の電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法を採用することが好ましい。また、前記硫酸コバルト電解メッキ浴に、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含ませることも好ましいのである。
【0057】
[A.組成、電解条件]
FeSO4・7H2O 100g/l〜200g/l
H3BO3 20g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜30A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
[C.組成、電解条件]
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【0058】
<内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板>
本件発明に係るいずれかのキャパシタ層形成材を用いて、種々の方法を用いて内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板を製造することができる。このようにして得られたプリント配線板に内蔵されたキャパシタ回路は、例え300℃〜400℃の範囲の熱間プレス加工を繰り返し受けても、下部電極を構成する第2導電層に高温耐熱特性に優れた上記複合箔を備えているため、下部電極形状に異常は発生せず、周囲の素材の熱による膨張伸縮の挙動に対する抵抗性を持っている。従って、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー基板を使用した多層プリント配線板の内蔵キャパシタ回路形成に好適なものとなる。
【発明の効果】
【0059】
本件発明に係るキャパシタ層形成材は、下部電極を構成する第2導電層に高温耐熱特性に優れた上記複合箔を備えているため、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー基板を使用した多層プリント配線板の製造に用いられる300℃〜400℃の範囲の熱間プレス加工を繰り返し受けても、キャパシタ回路形状を形成して以降も下部電極形状に異常は発生せず、周囲の素材の熱による膨張伸縮の挙動に対する抵抗性を持っている。しかも、当該複合箔の異種金属層の種類、層構成の組み合わせを誘電層の種類に合わせて、適宜選択出来るものとなるため、誘電層と下部電極との密着性を良好に維持することが可能となる。その結果、本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いて得られた内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板も高品質のものとなる。また、本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造に用いる複合箔の製造方法で、異種金属層に一定のメッキ条件を採用することで、耐熱特性に優れた異種金属層を銅箔表面に設けることができる。この複合箔を用い、定法に基づいて、本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造が出来るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、本件発明に係る各複合箔の製造形態に関して述べ、本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造形態に関して述べ、実施例で内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板までの製造に関して言及する。
【0061】
<複合箔の製造形態>
第1複合箔(1): 第1複合箔の内、銅層表面に異種金属層として硬質ニッケルメッキ層を備えるものの製造は、銅箔を用いて、上述の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴を採用することが好ましい。最も高温加熱後の抗軟化特性に優れた硬質ニッケルメッキ層が得られるからである。本件発明で用いた硬質ニッケル電解メッキ浴は、ワット浴に近い組成を採用しているが、一般的なワット浴よりも単純な組成で、且つ、安定的な電解の可能なメッキ液組成を採用している。中でも、特徴的なのは、浴を構成するのにニッケル塩とアンモニウム塩とを併存させた点にある。
【0062】
ここでNiSO4・6H2Oの濃度は、100g/l〜180g/lとすることが望ましい。NiSO4・6H2Oの濃度が100g/l未満となると、メッキ液中のニッケル濃度が希薄になり、工業的生産性を満足しないばかりか、メッキ表面の平滑性に劣るものとなるのである。そして、NiSO4・6H2Oの濃度が180g/lを超えても、硬質ニッケルの析出速度に大きな変化はなく、むしろ廃液処理の負荷が増大するのである。
【0063】
H3BO3は緩衝剤としての役割を果たすものである。H3BO3の濃度は、20g/l〜60g/lの範囲とする事が望ましいのである。このH3BO3濃度は、上述のNiSO4・6H2Oの濃度との関係で決められるものであり、この範囲をはずれると硬質ニッケルメッキ層自体の強度が不足することとなる。
【0064】
液温は20℃〜50℃と広い範囲を採用する事が可能である。通常の酢酸ニッケル浴やスルファミン酸浴の如き液温による引張り強さに与える影響が少ないからである。そして、上述の組成の溶液とするとpHは3〜5を採用することが、最も良好な引張り強さの安定したメッキ被膜を得ることが出来るのである。更に、メッキを行う際の電流密度は、1A/dm2〜50A/dm2の広い範囲を採用する事が可能である。酢酸ニッケル浴の如き電流密度による引張り強さに与える影響が少ないからである。特に、硬質ニッケルメッキ層自体の引張り強さを高くすることを考えると、4A/dm2以下の電流密度、若しくは10A/dm2以上の範囲を採用する事が望ましい。そして、4A/dm2〜10A/dm2の範囲は、硬質ニッケルメッキ層として最も低い引張り強さとなる傾向にあるが、この電流密度範囲での引張り強さに大きな変動はなく一定レベルの値となる傾向にある。従って、製品の品質安定性を確保することを重視する場合には、4A/dm2〜10A/dm2の範囲を採用することが好ましいのである。以上に述べてきた内容は、メッキ液に攪拌を加える攪拌浴であることを前提としている。本件発明に言う攪拌とは、電着する際の被メッキ表面近傍でのイオン欠乏層を無くする程度の攪拌が求められるのであり、例えばメッキ槽内にスターラーを配置して攪拌を行う場合、メッキ液循環により作り出される流動攪拌状態を含む概念として記載している。
【0065】
第1複合箔(2): 第1複合箔の内、銅層表面に異種金属層としてコバルトメッキ層を備えるものの製造は、銅箔の表面にコバルトメッキ層を形成することが出来るものであれば、種々の方法を採用することが出来る。例えば、a)硫酸コバルトを用いコバルト濃度が5〜30g/l、クエン酸三ナトリウム50〜500g/l、液温20〜50℃、pH2〜4、電流密度0.3〜10A/dm2の条件、b)硫酸コバルトを用いコバルト濃度が5〜30g/l、ピロリン酸カリウム50〜500g/l、液温20〜50℃、pH8〜11、電流密度0.3〜10A/dm2の条件、c)硫酸コバルトを用いコバルト濃度が10〜70g/l、ホウ酸20〜60g/l、液温20〜50℃、pH2〜4、電流密度1〜50A/dm2の条件とする等である。
【0066】
しかしながら、本件発明では、上記組成の硫酸コバルト電解メッキ浴を採用することが最も好ましいのである。高温加熱後の抗軟化特性に最も優れたコバルトメッキ層が得られるからである。本件発明では、第1複合箔の製造に用いた硬質ニッケルメッキ層の形成に用いた硫酸ニッケル浴の硫酸ニッケルを硫酸コバルトに置き換え、そこに凝集剤を加えた硫酸コバルト電解メッキ浴を採用している。
【0067】
ここでCoSO4・7H2Oの濃度は、120g/l〜200g/lとすることが望ましい。CoSO4・7H2Oの濃度が120g/l未満となると、メッキ液中のコバルト濃度が希薄になり、工業的生産性を満足しないばかりか、メッキ表面の平滑性に劣るものとなるのである。そして、CoSO4・7H2Oの濃度が200g/lを超えても、コバルトの析出速度に大きな変化はなく、むしろ廃液処理の負荷が増大するのである。
【0068】
ここでも、第1複合箔と同様に、H3BO3は緩衝剤としての役割を果たすものである。H3BO3の濃度は、25g/l〜50g/lの範囲とする事が望ましいのである。このH3BO3濃度は、上述のCoSO4・7H2Oの濃度との関係で決められるものであり、この範囲をはずれるとコバルト層自体の強度が不足することとなる。
【0069】
液温は20℃〜50℃の範囲を採用する事が可能である。コバルトメッキ層の場合、液温が低いほど、引張り強さが高くなる傾向にある。しかしながら、液温が20℃未満となるとコバルトの析出速度が低くなり、工業的な生産性を満足しない。一方、液温が50℃付近で引張り強さが飽和した定常値となる傾向があるのである。そして、上述の組成の溶液とするとpHは2〜5を採用することが、最も良好で安定した引張り強さを持つメッキ被膜を得ることが出来るのである。更に、メッキを行う際の電流密度は、1A/dm2〜50A/dm2 の広い範囲を採用する事が可能である。電流密度による引張り強さに与える影響が少ないからである。特に、コバルトメッキ層自体の引張り強さを高くすることを考えると、2A/dm2以下の電流密度、若しくは8A/dm2 以上 の範囲を採用する事が望ましい。そして、2A/dm2〜8A/dm2の範囲は、最も低い引張り強さとなる傾向にあるが、この電流密度範囲での引張り強さに大きな変動はなく一定レベルの値となる傾向にある。従って、製品の品質安定性を確保することを重視する場合には、2A/dm2〜8A/dm2の範囲を採用することが好ましいのである。以上に述べてきた内容は、メッキ液に攪拌を加える攪拌浴であることを前提としている。
【0070】
以上に述べたコバルトメッキ液には凝集剤を添加して用いることも好ましい。ここで言う凝集剤とは、凝集剤として市販されているものを使用することは可能であるが、特にアクリルアミド系ポリマーを主剤として含むものを用いることが好ましいのである。そして、この凝集剤は、コバルトの析出速度を制御し、メッキ被膜の膜厚均一性を向上させるために用いるのであり、メッキ浴中で0.05g/l〜0.3g/lとなるように添加するのである。凝集剤が0.05g/l未満の場合には、コバルトメッキ被膜の膜厚均一性の向上には寄与し得ず、凝集剤が0.3g/lを超えて増量しても、むしろコバルトメッキ被膜の膜厚均一性が劣化し出すのである。
【0071】
第1複合箔(3): 第1複合箔の内、銅層表面に異種金属層としてニッケル−コバルトメッキ層を備えるものの製造は、銅箔の表面にニッケル−コバルトメッキ層を形成することが出来るものであれば、種々のメッキ条件を採用することが出来る。例えば、硫酸コバルト80〜180g/l、硫酸ニッケル80〜120g/l、ホウ酸20〜40g/l、塩化カリウム10〜15g/l、リン酸2水素ナトリウム0.1〜15g/l、液温30〜50℃、pH3.5〜4.5、電流密度1〜10A/dm2の条件等である。
【0072】
しかしながら、本件発明では、上記の蟻酸ナトリウムを含むニッケル−コバルト合金電解メッキ浴を採用することが、複合箔の良好な抗軟化性能を得るためには好ましいのである。高温加熱後の抗軟化特性に最も優れたニッケル−コバルト合金メッキ層が得られるからである。本件発明で用いたニッケル−コバルト合金電解メッキ浴は、ニッケルメッキを行う際のワット浴組成に硫酸コバルトを添加した如き組成を採用している。従って、極めて単純で、且つ、安定的な電解の可能なメッキ液組成を採用している。
【0073】
ここでは、ニッケル−コバルト合金電解メッキ浴中のNiSO4・6H2O濃度を100g/l〜200g/l、NiCl2・6H2O濃度を30g/l〜50g/l、CoSO4・7H2O濃度を10g/l〜30g/lの範囲とすることが望ましい。この組成バランスの範囲で、高温加熱後の抗軟化特性に最も優れたニッケル−コバルト合金メッキ層が得られるのである。従って、それぞれの成分の範囲をはずれると、高温加熱後の抗軟化特性に優れたニッケル−コバルト合金メッキ層が得られなくなるのである。
【0074】
また、ここでもH3BO3は緩衝剤としての役割を果たすものであり、H3BO3の濃度は、20g/l〜40g/lの範囲とする事が望ましいのである。このH3BO3濃度は、上述のNiSO4・6H2O、NiCl2・6H2O濃度、CoSO4・7H2O濃度の各濃度との関係で決められるものであり、この範囲をはずれるとニッケル−コバルト合金メッキ層自体の強度が不足し、メッキ層の膜厚均一性も損なわれるのである。
【0075】
液温は20℃〜50℃の範囲を採用する事が可能である。ニッケル−コバルト合金メッキ層の場合にも、液温が低いほど、引張り強さが高くなる傾向にある。しかしながら、液温が20℃未満となるとニッケル−コバルト合金の析出速度が低くなり、工業的な生産性を満足しない。一方、液温が50℃付近で引張り強さが飽和した定常値となる傾向がある。そして、上述の組成の溶液とするとpHは2〜5を採用することが、最も良好で安定した引張り強さを持つメッキ被膜を得ることが出来るのである。更に、メッキを行う際の電流密度は、1A/dm2〜25A/dm2の広い範囲を採用する事が可能である。ニッケル−コバルト合金メッキ層のニッケルとコバルトとの含有量にバラツキが少なく、引張り強さのバラツキも最小限となるからである。また、ニッケル−コバルト合金メッキ層自体の引張り強さを高くすることを考えると、10A/dm2以下の電流密度を採用する事が望ましい。以上に述べてきた内容は、メッキ液に攪拌を加える攪拌浴であることを前提としている。
【0076】
そして、本件発明においてニッケル−コバルト合金メッキ層の形成に用いる溶液には、蟻酸ナトリウム(HCOONa)を用いる事も好ましいのである。この蟻酸ナトリウムは、6価のクロムイオンを3価のクロムイオンとして建浴し、クロムメッキ層を非晶質層として析出させ、高い硬度を得る際に用いられることで知られている。従って、本件発明のようにニッケル−コバルト合金メッキ層を形成する際に用いると、メッキ液中に溶存した金属イオンの還元剤として寄与し、ニッケル成分とコバルト成分との析出効率の差を縮め、双方の成分の偏在のない均一に分散した合金メッキ層が得られるのである。蟻酸ナトリウムは、25g/l〜50g/lの濃度範囲で用いることが好ましい。蟻酸ナトリウムの濃度が25g/l未満の場合には、合金メッキ層中でのニッケル成分とコバルト成分との均一な混合状態が得られず、50g/l濃度を超える量を添加しても、それ以上に良好なニッケル−コバルト合金メッキ層は得られないのである。
【0077】
第2複合箔(1): 第2複合箔の内、銅層表面に異種金属層としてのコバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層を備えるものの製造は、銅箔を、上記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、上記A.の電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成した後、上記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、上記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成するのである。
【0078】
このときの硫酸コバルト電解メッキ液に関する内容は、上述の第1複合箔(2)の硫酸コバルト電解メッキ液と同様である。そして、硬質ニッケル電解メッキ液に関する内容は、上述の第1複合箔(1)の硬質ニッケル電解メッキ液と同様である。従って、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0079】
第2複合箔(2): 第2複合箔の内、銅層表面に異種金属層としての鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層を備えるものの製造は、銅箔を、上記A.の組成の硫酸鉄電解メッキ浴に浸漬し、上記A.の電解条件で電解メッキを行い、鉄メッキ層を形成した後、上記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、上記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成するのである。
【0080】
このときの硬質ニッケル電解メッキ液に関する内容は、上述の第1複合箔(1)の硬質ニッケル電解メッキ液と同様である。従って、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。従って、以下では、鉄メッキ液に関してのみ説明する。
【0081】
ここでFeSO4・7H2Oの濃度は、100g/l〜200g/lとすることが望ましい。FeSO4・7H2Oの濃度が100g/l未満となると、メッキ液中の鉄濃度が希薄になり、メッキ表面の平滑性に劣るものとなる。そして、FeSO4・7H2Oの濃度が200g/lを超えても、鉄の析出速度に大きな変化はなく、むしろ廃液処理の負荷が増大するのである。
【0082】
ここでも、第1複合箔と同様に、H3BO3を緩衝剤として用いている。H3BO3の濃度は、20g/l〜50g/lの範囲とする事が望ましいのである。このH3BO3濃度は、上述のFeSO4・7H2Oの濃度との関係で決められるものであり、この範囲をはずれると脆い鉄メッキ層となる傾向にある。
【0083】
液温は20℃〜50℃の範囲を採用する事が可能である。液温が20℃未満となると鉄の析出速度が低くなり、工業的な生産性を満足しない。一方、液温が50℃を超えると溶液寿命が短くなり、管理コストが上昇するのである。そして、上述の組成の溶液とするとpHは2〜5を採用することが、最も良好で安定した引張り強さを持つメッキ被膜を得ることが出来るのである。更に、メッキを行う際の電流密度は、1A/dm2〜30A/dm2 の範囲を採用する事が可能である。電流密度による引張り強さに与える影響が少ないからである。特に、鉄メッキ層自体の靱性及び引張り強さを共に高くすることを考えると、2A/dm2以下の電流密度、若しくは8A/dm2 以上の範囲を採用する事が望ましい。そして、2A/dm2〜8A/dm2の範囲は、最も低い引張り強さとなる傾向にあるが、この電流密度範囲での引張り強さに大きな変動はなく一定レベルの値となる傾向にある。従って、製品の品質安定性を確保することを重視する場合には、2A/dm2〜8A/dm2の範囲を採用することが好ましいのである。以上に述べてきた内容は、メッキ液に攪拌を加える攪拌浴であることを前提としている。
【0084】
以上に述べた鉄メッキ液にも、凝集剤を添加して用いることが好ましい。ここで言う凝集剤とは、凝集剤として市販されているものを使用することは可能であるが、特にアクリルアミド系ポリマーを主剤として含むものを用いることが好ましいのである。そして、この凝集剤は、鉄の析出速度を制御し、メッキ被膜の膜厚均一性を向上させるために用いるのであり、メッキ浴中で0.05g/l〜0.3g/lとなるように添加するのである。凝集剤が0.05g/l未満の場合には、鉄メッキ被膜の膜厚均一性の向上には寄与し得ず、凝集剤が0.3g/lを超えて増量しても、むしろコバルトメッキ被膜又は鉄メッキ被膜の膜厚均一性が劣化し出すのである。
【0085】
第3複合箔(1): 第3複合箔の内、銅層表面に異種金属層としての第1コバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層/第2コバルトメッキ層を備えるものの製造は、銅箔を、上記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、上記A.の電解条件で電解メッキを行い、第1コバルトメッキ層を形成した後、上記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、上記B.の電解条件で電解メッキを行い硬質ニッケルメッキ層を形成し、更に上記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、上記A.の電解条件で電解メッキを行い、第2コバルトメッキ層を形成する
【0086】
このときの硫酸コバルト電解メッキ液に関する内容は、上述の第1複合箔(2)の硫酸コバルト電解メッキ液と同様である。そして、硬質ニッケル電解メッキ液に関する内容は、上述の第1複合箔(1)の硬質ニッケル電解メッキ液と同様である。従って、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0087】
第3複合箔(2): 第3複合箔の内、銅層表面に異種金属層としての鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層を備えるものの製造は、銅箔を、上記A.の組成の硫酸鉄電解メッキ浴に浸漬し、上記A.の電解条件で電解メッキを行い、鉄メッキ層を形成した後、上記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、上記B.の電解条件で電解メッキを行い硬質ニッケルメッキ層を形成し、更に上記C.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、上記C.の電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成する
【0088】
このときの硫酸鉄電解メッキ液に関する内容は、上述の第2複合箔(2)の硫酸鉄電解メッキ液と同様である。そして、硬質ニッケル電解メッキ液に関する内容は、上述の第1複合箔(1)の硬質ニッケル電解メッキ液と同様である。更に、硫酸コバルト電解メッキ液に関する内容は、上述の第1複合箔(2)の硫酸コバルト電解メッキ液と同様である。従って、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0089】
<本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造形態>
上述の複合箔を用いてキャパシタ層形成材を形成する方法としては、上記複合箔の異種金属層を設けた表面に誘電層を形成する。この誘電層の材質に関しては特に限定はない。また、誘電層の形成方法についても、いわゆるゾル−ゲル法、誘電体フィラーとバインダー樹脂とを含む誘電体フィラー含有樹脂溶液を用いて塗工により誘電層を形成する塗工法、誘電体フィラーを含有したフィルムをラミネートする方法等種々の公知の方法を採用することが可能である。そして、誘電層の形成が終了すると、この誘電層の上に上部電極を形成するための第1導電層を設けることになる。誘電層上への第1導電層の形成は、金属箔を用いて張り合わせる方法、メッキ法で導電層を形成する方法、スパッタリング蒸着等の法を用いる方法等種々の方法を採用することが可能である。
【0090】
<本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いて得られる内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造形態>
以上に述べてきた本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いることで、誘電層との密着性に優れた下部電極を形成することが可能となり、当該下部電極は耐熱性に優れた素材であるため、300℃〜400℃の範囲の熱間プレス加工を複数回経ても、酸化劣化も起こらず、物性変化も起こしにくいものである。この本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いての内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板の製造方法に関して、特段の限定はなく、あらゆる方法を採用する事が可能となる。但し、以下の実施例に示すように、キャパシタ回路を形成した部位以外の余分な誘電層を可能な限り除去可能なプリント配線板の製造方法を採用することが好ましいのである。
【実施例1】
【0091】
この実施例では、硬質ニッケルメッキ層を備える第1複合箔を製造し、この第1複合箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を行った。
【0092】
<第1複合箔の製造>
ここでは、電解銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を下記組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、電解銅箔の光沢面に厚さ2μm、粗面に厚さ3μm相当の硬質ニッケルメッキ層を形成し、厚さ17.5μmの第1複合箔を調製した。なお、本件明細書で言う異種金属層の厚さは、平坦面にメッキ法で所定厚さの異種金属層を形成しようとしたときの目付量を基準としたときの厚さであり、現実に製造した複合箔の厚さはゲージ厚さとして示したものである。以下の実施例及び比較例において同様である。
【0093】
(硬質ニッケル電解メッキ浴組成)
NiSO4・6H2O 162g/l
NH4Cl 25g/l
H3BO3 30g/l
(メッキ条件)
浴 温 35℃
pH 4
電流密度 10A/dm2
攪 拌 あり
【0094】
得られた第1複合箔について、常態と、真空中で400℃×10時間加熱後の引張り強さ及び伸び率を評価した。その結果を表1に示す。なお、引張り強さ及び伸び率の測定はIPC−MF−150Fに定めるIPC−TM−650に定めるプリント配線板用銅箔の測定に準拠して行った。以下、同様である。
【0095】
<キャパシタ層形成材の製造>
上述の第1複合箔を、キャパシタ層形成材の下部電極の形成に用いる第2導電層の形成に用いることとし、第1複合箔の外層に存在する硬質ニッケルメッキ層の表面にゾル−ゲル法を用いて誘電層を形成した。
【0096】
ここで用いたゾル−ゲル法は、沸点近傍に加温したメタノール溶液に、安定化剤として全金属量に対して50mol%〜60mol%濃度となるようにエタノールアミンを添加し、チタンイソプロポキシド、ジルコニウムプロポキシドのプロパノール溶液、酢酸鉛、酢酸ランタン、触媒としての硝酸を順次添加し、最終的にメタノールで0.2mol/l濃度に希釈したゾル−ゲル溶液を用いた。そして、このゾル−ゲル溶液をスピンコータを用いて、前記表面処理銅箔の硬質ニッケルメッキ層の表面に塗工し、250℃×5分の大気雰囲気で乾燥、500℃×15分の大気雰囲気での熱分解を行い。更に、この塗工工程を6回繰り返し膜厚調整を行った。そして、最終的に600℃×30分の窒素置換雰囲気での焼成処理を行い誘電層を形成した。このときの誘電層の組成比は、Pb:La:Zr:Ti=1.1:0.05:0.52:0.48であり、複合箔自体に何ら異常は見られ無かった。
【0097】
以上のようにして形成した誘電層の上に、スパッタリング蒸着法により3μm厚さの銅層を第1導電層として形成し、誘電層の両面に第1導電層と第2導電層とを備えるキャパシタ層形成材とした。この段階で、所定の電圧を負荷して、層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象は見られなかった。
【0098】
<プリント配線板の製造>
以下、プリント配線板の製造に関して、図11〜図14を用いて説明するが、これらの図では図3(b)に示したキャパシタ層構成材1b’を用いた場合をモデル的に示している。従って、各実施例に応じてキャパシタ層構成材の層構成は相違していることを明記しておく。以下、プリント配線板の製造に関して説明する。
【0099】
以上のようにして製造した図11(a)に示すキャパシタ層形成材1aの片面の第1導電層2を整面し、その両面にドライフィルムを張り合わせて、エッチングレジスト層21を形成した。そして、その第1導電層の表面のエッチングレジスト層に、上部電極を形成するためのエッチングパターンを露光し、現像した。そして、塩化銅エッチング液でエッチングして、図11(b)に示すように上部電極15を形成した。
【0100】
そして、上部電極15の形成後にエッチングレジストを回路表面に残留させた状態で、回路部以外の領域の露出した誘電層の除去を行った。このときの誘電層の除去方法は、ウエットブラスト処理を用い、中心粒径が14μmの微粒粉体であるアルミナ研磨剤を水に分散させたスラリー状の研磨液(研磨剤濃度14vol%)を、0.20MPaの水圧で長さ90mm、幅2mmのスリットノズルから高速水流として被研磨面に衝突させ、不要な誘電層の研磨除去を行ったのである。このウエットブラスト処理が終了すると、エッチングレジストの剥離を行い、水洗し、乾燥し、図11(c)に示す状態とした。
【0101】
上記誘電層除去の終了したキャパシタ層形成材は、露出した誘電層を除去して、深くなった上部電極間ギャップを埋設する必要がある。そこで、図12(d)に示すように、キャパシタ層形成材の両面に絶縁層及び導電層を設けるため、銅箔10の片面に80μm厚さの半硬化樹脂層7を備えた樹脂層付銅箔8を重ね合わせて、180℃×60分の加熱条件下で熱間プレス成形し、外層に銅箔層10と絶縁層7’と張り合わせられた図12(e)に示す状態とした。そして、図12(e)に示す外層の第2導電層4をエッチング加工し、下部電極9とし、図12(f)に示す状態とした。
【0102】
次に、外層に位置する銅箔層10に外層回路22及びビアホール23を形成するため、定法に基づいて銅メッキ層24を設け、エッチング加工して図13(g)の状態とした。そして、図13(h)に示すように、樹脂層付銅箔8を重ね合わせて、180℃×60分の加熱条件下で熱間プレス成形し、外層に銅箔層10と絶縁層7’とを張り合わせ、図14(i)に示す状態とした。
【0103】
そして、図14(i)に示す外層の銅箔層10に外層回路22及びビアホール23を形成するため、定法に基づいて銅メッキ層24を設け、エッチング加工して図14(j)の状態とし、内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板30を製造した。
【実施例2】
【0104】
この実施例では、コバルト層を備える第1複合箔を製造し、この第1複合箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を行った。
【0105】
<第1複合箔の製造>
ここでは、電解銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を下記組成のコバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、電解銅箔の光沢面に厚さ2μm、粗面に厚さ3μm相当のコバルトメッキ層を形成し、厚さ17.8μmの第1複合箔を調製した。
【0106】
(コバルト電解メッキ浴組成)
CoSO4・7H2O 180g/l
H3BO3 30g/l
凝集剤 0.1g/l
(アクリルアミド系ポリマー、商品名:PN−171、栗田工業社製)
(メッキ条件)
浴 温 35℃
pH 4
電流密度 10A/dm2
攪 拌 あり
【0107】
そして、得られた第2複合箔について、実施例1と同様に常態と、真空中で400℃×10時間加熱後の引張り強さ及び伸び率を評価した。その結果を表1に示す。
【0108】
以下、実施例1と同様にして、キャパシタ層形成材及び内蔵キャパシタ回路を備えたプ
リント配線板を製造した。ここで得られたキャパシタ層形成材に、所定の電圧を負荷して、層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象は見られなかった。また、内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板も何ら問題なく製造出来た。
【実施例3】
【0109】
この実施例では、ニッケル−コバルト合金層を備える第1複合箔を製造し、この第1複合箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を行った。
【0110】
<第1複合箔の製造>
ここでは、電解銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を下記組成のニッケル−コバルト合金電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、電解銅箔の光沢面に厚さ2μm、粗面に厚さ3μm相当のニッケル−コバルト合金メッキ層を形成し、厚さ17.2μmの第1複合箔を調製した。
【0111】
(ニッケル−コバルト電解メッキ浴組成)
NiSO4・6H2O 200g/l
NiCl2・6H2O 36g/l
CoSO4・7H2O 12g/l
H3BO3 30g/l
HCOONa 45g/l
(メッキ条件)
浴 温 45℃
pH 4
電流密度 10A/dm2
攪 拌 あり
【0112】
そして、実施例1と同様に、得られた第3複合箔の常態と、真空中で400℃×10時間加熱後の引張り強さ及び伸び率を評価した。その結果を表1に示す。
【0113】
以下、実施例1と同様にして、キャパシタ層形成材及び内蔵キャパシタ回路を備えたプ
リント配線板を製造した。ここで得られたキャパシタ層形成材に、所定の電圧を負荷して、層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象は見られなかった。また、内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板も何ら問題なく製造出来た。
【実施例4】
【0114】
ここでは、電解銅箔を用いて、コバルトメッキ層と硬質ニッケルメッキ層とが順次形成されてなる第2複合箔を製造し、この第2複合箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を行った。
【0115】
<第2複合箔の製造>
電解銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を実施例2と同様のコバルト電解メッキ浴に浸漬し、実施例2と同様に電解メッキを行い、電解銅箔の光沢面及び粗面にそれぞれ厚さ0.3μm相当のコバルトメッキ層を形成し、次いで実施例1と同様の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、実施例1と同様に電解メッキを行い、コバルトメッキ層の上に、銅箔の光沢面側に厚さ2μm、粗面側に厚さ3μm相当の硬質ニッケルメッキ層を形成し、厚さ16.9μmの複合箔を調製した。
【0116】
そして、実施例1と同様に、得られた第2複合箔の常態と、真空中で400℃×10時間加熱後の引張り強さ及び伸び率を評価した。その結果を表1に示す。
【0117】
以下、実施例1と同様にして、キャパシタ層形成材及び内蔵キャパシタ回路を備えたプ
リント配線板を製造した。ここで得られたキャパシタ層形成材に、所定の電圧を負荷して、層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象は見られなかった。また、内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板も何ら問題なく製造出来た。
【実施例5】
【0118】
ここでは、電解銅箔を用いて、鉄メッキ層と硬質ニッケルメッキ層とが順次形成されてなる第2複合箔を製造し、この第2複合箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を行った。
【0119】
<第2複合箔の製造>
電解銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を、下記組成の硫酸塩鉄電解メッキ浴に浸漬し、下記条件で電解メッキを行い、電解銅箔の光沢面及び粗面にそれぞれ厚さ0.3μm相当の鉄メッキ層を形成し、次いで実施例1と同様の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、実施例1と同様に電解メッキを行い、コバルトメッキ層の上に、銅箔の光沢面側に厚さ2μm、粗面側に厚さ3μm相当の硬質ニッケルメッキ層を形成し、厚さ17.4μmの複合箔を調製した。
【0120】
(硫酸塩鉄電解メッキ浴組成)
FeSO4・7H2O 180g/l
H3BO3 30g/l
(メッキ条件)
浴 温 30℃
pH 4
電流密度 5A/dm2
攪 拌 あり
【0121】
そして、実施例1と同様に、得られた第2複合箔の常態と、真空中で400℃×10時間加熱後の引張り強さ及び伸び率を評価した。その結果を表1に示す。
【0122】
以下、実施例1と同様にして、キャパシタ層形成材及び内蔵キャパシタ回路を備えたプ
リント配線板を製造した。ここで得られたキャパシタ層形成材に、所定の電圧を負荷して、層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象は見られなかった。また、内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板も何ら問題なく製造出来た。
【実施例6】
【0123】
この実施例では、銅箔表面に第1コバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層/第2コバルトメッキ層を備える第3複合箔を製造し、この第3複合箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を行った。
【0124】
<第3複合箔の製造>
銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を用いて、電解銅箔の光沢面及び粗面に、実施例2の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、実施例2の電解条件で電解メッキを行い、0.3μm厚さ相当の第1コバルトメッキ層を両面に形成した。そして、実施例1の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、実施例1の電解条件で電解メッキを行い3μm厚さ相当の硬質ニッケルメッキ層を両面に形成した。更に、実施例2の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、実施例2の電解条件で電解メッキを行い、0.3μm厚さ相当の第2コバルトメッキ層を形成し、19.2μm厚さの第3複合箔を製造した。
【0125】
そして、実施例1と同様に、得られた第3複合箔の常態と、真空中で400℃×10時間加熱後の引張り強さ及び伸び率を評価した。その結果を表1に示す。
【0126】
以下、実施例1と同様にして、キャパシタ層形成材及び内蔵キャパシタ回路を備えたプ
リント配線板を製造した。ここで得られたキャパシタ層形成材に、所定の電圧を負荷して、層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象は見られなかった。また、内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板も何ら問題なく製造出来た。
【実施例7】
【0127】
この実施例では、銅箔表面に鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層を備える第3複合箔を製造し、この第3複合箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を行った。
【0128】
銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を用いて、電解銅箔の光沢面及び粗面に、実施例5の硫酸鉄電解メッキ浴に浸漬し、実施例5の電解条件で電解メッキを行い、0.3μm厚さ相当の鉄メッキ層を両面に形成した。そして、実施例1の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、実施例1の電解条件で電解メッキを行い3μm厚さ相当の硬質ニッケルメッキ層を両面に形成した。更に、実施例2の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、実施例2の電解条件で電解メッキを行い、0.3μm厚さ相当の第2コバルトメッキ層を形成し、19.3μm厚さの第3複合箔を製造した。
【0129】
そして、実施例1と同様に、得られた第3複合箔の常態と、真空中で400℃×10時間加熱後の引張り強さ及び伸び率を評価した。その結果を表1に示す。
【0130】
以下、実施例1と同様にして、キャパシタ層形成材及び内蔵キャパシタ回路を備えたプ
リント配線板を製造した。ここで得られたキャパシタ層形成材に、所定の電圧を負荷して、層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象は見られなかった。また、内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板も何ら問題なく製造出来た。
【比較例】
【0131】
[比較例1]
実施例1の電解銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)に硬質ニッケルメッキ層を形成することなく、この電解銅箔を用いて、キャパシタ層形成材の製造を行い、更に内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造を試みた。
【0132】
しかしながら、キャパシタ層形成材の製造を行おうとして、当該電解銅箔の外層面にゾル−ゲル法を用いて誘電層を形成しようとして、実施例1と同様の手法を採用したところ、500℃×15分の大気雰囲気での熱分解で電解銅箔表面の酸化が目立ってきた。更に、この塗工工程を6回繰り返し膜厚調整を行うと電解銅箔表面の酸化は更に進行し、最終的に600℃×30分の窒素置換雰囲気での焼成処理で酸化による脆化を引き起こし、電解銅箔に容易にクラックが発生する状態となった。従って、以下の工程の全ては実施不可能で、キャパシタ層形成材の製造及びプリント配線板製造は出来なかった。
【0133】
[比較例2]
この比較例では、実施例1の第2導電層を構成した複合箔の硬質ニッケルメッキ層をニッケル−リン合金メッキ層とした点が異なるのみである。従って、重複した説明となる部分の説明は極力省略するものとする。
【0134】
ここでは、電解銅箔(厚さ12μm、VLP箔、三井金属鉱業社製)を下記組成のニッケル−リン電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、電解銅箔の光沢面に厚さ2μm、粗面に厚さ3μmのニッケル−リン合金メッキ層(リン含有量は、0.3wt%)を形成し、厚さ17μmの第1複合箔を調製した。
【0135】
ニッケル−リン合金層は、リン酸系溶液を用い、硫酸ニッケル濃度が250g/l、塩化ニッケル濃度40.39g/l、H3BO3濃度19.78g/l、H3PO3濃度3g/l、液温50℃、電流密度20A/dm2の条件で電解し、電解銅箔の両面にニッケル−リン合金層を均一且つ平滑に電析させた。
【0136】
そして、実施例1と同様にゾル−ゲル法で誘電層を形成してのキャパシタ層形成材の製造を経て、誘電層の両面に第1導電層と第2導電層とを備えるキャパシタ層形成材とした。この段階で層間耐電圧測定を行ったが、第1導電層と第2導電層との間でのショート現象が発生しており、製品歩留まりが60%であった。
【0137】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0138】
本件発明に係るキャパシタ層形成材は、下部電極を構成する第2導電層に高温耐熱特性に優れた上記複合箔を備えているため、フッ素樹脂基板、液晶ポリマー基板を使用した多層プリント配線板の製造に好適である。これらの基板を用いたプリント配線板の製造に用いられる300℃〜400℃の範囲の熱間プレス加工を繰り返し受けても、キャパシタ回路形状を形成して以降も下部電極形状に異常は発生せず、周囲の素材の熱による膨張伸縮の挙動に対する抵抗性を持っている。また、このように優れた耐熱特性を有するが故に、当該複合箔の表面にゾル−ゲル法によって、誘電層を形成する際の過酷な熱履歴を受けても、何ら問題がない。
【0139】
しかも、本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層の形成に用いる複合箔の異種金属層の種類、層構成の組み合わせを誘電層の種類に合わせて、適宜選択出来るものとなるため、誘電層と下部電極との密着性を良好に維持することが可能となる。その結果、本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いて得られた内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の品質も良好となる。また、当該異種金属層がニッケル等の高抵抗金属であるため、抵抗器回路の形成に使用することも可能となる。
【0140】
更に、本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造に用いる複合箔の製造方法は、異種金属層に一定のメッキ条件を採用することで、耐熱特性に優れたキャパシタ層形成材用の金属箔を安価に製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本件発明に係るキャパシタ層形成材の模式断面図である。
【図2】本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造に用いる複合箔の模式断面図である。
【図3】本件発明に係るキャパシタ層形成材の模式断面図である。
【図4】本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造に用いる複合箔の模式断面図である。
【図5】銅箔の表面にコバルトメッキ層と硬質ニッケルメッキ層とが順次積層された複合箔の常態の光学顕微鏡写真である。
【図6】銅箔の表面にコバルトメッキ層と硬質ニッケルメッキ層とが順次積層された複合箔の加熱後(400℃×10時間)の光学顕微鏡写真である。
【図7】銅箔の表面に硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔の常態の光学顕微鏡写真である。
【図8】銅箔の表面に硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔の加熱後(400℃×10時間)の光学顕微鏡写真である。
【図9】本件発明に係るキャパシタ層形成材の模式断面図である。
【図10】本件発明に係るキャパシタ層形成材の製造に用いる複合箔の模式断面図である。
【図11】本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いた内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板の製造フローを表す模式図である。
【図12】本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いた内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板の製造フローを表す模式図である。
【図13】本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いた内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板の製造フローを表す模式図である。
【図14】本件発明に係るキャパシタ層形成材を用いた内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板の製造フローを表す模式図である。
【符号の説明】
【0142】
1a,1b,1c,1a’,1b’,1c’ キャパシタ層形成材
5a,5b,5c,5a’,5b’,5c’ 複合箔
6a,6b,6c 異種金属層
2 第1導電層
3 誘電層
4 第2導電層
7 半硬化樹脂層
7’ 絶縁層
8 樹脂付銅箔
9 下部電極
10 銅箔層
15 上部電極
21 エッチングレジスト層
22 外層回路
23 ビアホール
24 銅メッキ層
30 プリント配線板
C 銅層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面に異種金属層である硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【請求項2】
上記硬質ニッケルメッキ層の厚みが0.5μm〜3.0μmである請求項1に記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項3】
上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面に異種金属層であるコバルトメッキ層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【請求項4】
上記コバルトメッキ層の厚みが0.5μm〜3.0μmである請求項3に記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項5】
上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面に異種金属層であるニッケル−コバルト合金メッキ層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【請求項6】
上記ニッケル−コバルト合金メッキ層の厚みが0.5μm〜3.0μmである請求項5に記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項7】
上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面にコバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層が順次積層された2層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【請求項8】
上記コバルトメッキ層の厚みが0.1μm〜0.5μm、上記硬質ニッケルメッキ層の厚みが0.3μm〜2.0μmである請求項7に記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項9】
上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面に鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層の順次積層された2層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【請求項10】
上記鉄メッキ層の厚みが0.1μm〜0.5μm、上記硬質ニッケルメッキ層の厚みが0.3μm〜2.0μmである請求項9に記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項11】
上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面に第1コバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層/第2コバルトメッキ層の順次積層された3層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【請求項12】
上記第1コバルトメッキ層の厚みが0.1μm〜0.5μm、上記硬質ニッケルメッキ層の厚みが0.3μm〜2.0μm、第2コバルトメッキ層の厚みが0.1μm〜0.5μmである請求項11に記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項13】
上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面に鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層の順次積層された3層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【請求項14】
上記鉄メッキ層の厚みが0.1μm〜0.5μm、上記硬質ニッケルメッキ層の厚みが0.3μm〜2.0μm、コバルトメッキ層の厚みが0.1μm〜0.5μmである請求項13に記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項15】
上記銅層は、電解銅箔又は圧延銅箔を用いたものであり、当該銅箔の公称厚さが9μm〜35μmである請求項1〜請求項14のいずれかに記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項16】
本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層に用いる銅層表面に異種金属層として硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔の製造方法であって、
銅箔を、下記組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法。
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 3〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【請求項17】
本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層に用いる銅層表面に異種金属層としてコバルトメッキ層を備える複合箔の製造方法であって、
銅箔を、下記組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法。
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【請求項18】
前記硫酸コバルト電解メッキ浴が、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含むことを特徴とする請求項17に記載の複合箔の製造方法。
【請求項19】
本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層に用いる銅層表面に異種金属層としてニッケル−コバルト合金メッキ層を備える複合箔の製造方法であって、
銅箔を、下記組成のニッケル−コバルト合金電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、ニッケル−コバルト合金メッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法。
NiSO4・6H2O 100g/l〜200g/l
NiCl2・6H2O 30g/l〜50g/l
CoSO4・7H2O 10g/l〜30g/l
H3BO3 20g/l〜40g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜25A/dm2
攪 拌 あり
【請求項20】
本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層に用いる銅層表面に異種金属層としてコバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔の製造方法であって、
銅箔を、下記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法。
[A.組成、電解条件]
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【請求項21】
前記硫酸コバルト電解メッキ浴が、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含むことを特徴とする請求項20に記載の複合箔の製造方法。
【請求項22】
本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層に用いる銅層表面に異種金属層として鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔の製造方法であって、
銅箔を、下記A.の組成の硫酸鉄電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、鉄メッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法。
[A.組成、電解条件]
FeSO4・7H2O 100g/l〜200g/l
H3BO3 20g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜30A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【請求項23】
前記硫酸鉄電解メッキ浴が、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含むことを特徴とする請求項22に記載の複合箔の製造方法。
【請求項24】
本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層に用いる銅層表面に異種金属層として第1コバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層/第2コバルトメッキ層を備える複合箔の製造方法であって、
銅箔を、下記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、第1コバルトメッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成し、更に下記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、第2コバルトメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法。
[A.組成、電解条件]
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【請求項25】
前記硫酸コバルト電解メッキ浴が、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含むことを特徴とする請求項24に記載の複合箔の製造方法。
【請求項26】
本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層に用いる銅層表面に異種金属層として鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層を備える複合箔の製造方法であって、
銅箔を、下記A.の組成の硫酸鉄電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、鉄メッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成し、更に下記C.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記C.の電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法。
[A.組成、電解条件]
FeSO4・7H2O 100g/l〜200g/l
H3BO3 20g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜30A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
[C.組成、電解条件]
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【請求項27】
前記硫酸コバルト電解メッキ浴が、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含むことを特徴とする請求項26に記載の複合箔の製造方法。
【請求項28】
請求項1〜請求項15のいずれかに記載のキャパシタ層形成材を用いて得られる内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板。
【請求項1】
上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面に異種金属層である硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【請求項2】
上記硬質ニッケルメッキ層の厚みが0.5μm〜3.0μmである請求項1に記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項3】
上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面に異種金属層であるコバルトメッキ層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【請求項4】
上記コバルトメッキ層の厚みが0.5μm〜3.0μmである請求項3に記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項5】
上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面に異種金属層であるニッケル−コバルト合金メッキ層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【請求項6】
上記ニッケル−コバルト合金メッキ層の厚みが0.5μm〜3.0μmである請求項5に記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項7】
上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面にコバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層が順次積層された2層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【請求項8】
上記コバルトメッキ層の厚みが0.1μm〜0.5μm、上記硬質ニッケルメッキ層の厚みが0.3μm〜2.0μmである請求項7に記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項9】
上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面に鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層の順次積層された2層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【請求項10】
上記鉄メッキ層の厚みが0.1μm〜0.5μm、上記硬質ニッケルメッキ層の厚みが0.3μm〜2.0μmである請求項9に記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項11】
上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面に第1コバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層/第2コバルトメッキ層の順次積層された3層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【請求項12】
上記第1コバルトメッキ層の厚みが0.1μm〜0.5μm、上記硬質ニッケルメッキ層の厚みが0.3μm〜2.0μm、第2コバルトメッキ層の厚みが0.1μm〜0.5μmである請求項11に記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項13】
上部電極形成に用いる第1導電層と下部電極形成に用いる第2導電層との間に誘電層を備えるプリント配線板のキャパシタ層形成材において、
第2導電層は、銅層の表面に鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層の順次積層された3層の異種金属層を備える複合箔を用いたことを特徴としたキャパシタ層形成材。
【請求項14】
上記鉄メッキ層の厚みが0.1μm〜0.5μm、上記硬質ニッケルメッキ層の厚みが0.3μm〜2.0μm、コバルトメッキ層の厚みが0.1μm〜0.5μmである請求項13に記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項15】
上記銅層は、電解銅箔又は圧延銅箔を用いたものであり、当該銅箔の公称厚さが9μm〜35μmである請求項1〜請求項14のいずれかに記載のキャパシタ層形成用材料。
【請求項16】
本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層に用いる銅層表面に異種金属層として硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔の製造方法であって、
銅箔を、下記組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法。
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 3〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【請求項17】
本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層に用いる銅層表面に異種金属層としてコバルトメッキ層を備える複合箔の製造方法であって、
銅箔を、下記組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法。
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【請求項18】
前記硫酸コバルト電解メッキ浴が、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含むことを特徴とする請求項17に記載の複合箔の製造方法。
【請求項19】
本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層に用いる銅層表面に異種金属層としてニッケル−コバルト合金メッキ層を備える複合箔の製造方法であって、
銅箔を、下記組成のニッケル−コバルト合金電解メッキ浴に浸漬し、下記電解条件で電解メッキを行い、ニッケル−コバルト合金メッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法。
NiSO4・6H2O 100g/l〜200g/l
NiCl2・6H2O 30g/l〜50g/l
CoSO4・7H2O 10g/l〜30g/l
H3BO3 20g/l〜40g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜25A/dm2
攪 拌 あり
【請求項20】
本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層に用いる銅層表面に異種金属層としてコバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔の製造方法であって、
銅箔を、下記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法。
[A.組成、電解条件]
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【請求項21】
前記硫酸コバルト電解メッキ浴が、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含むことを特徴とする請求項20に記載の複合箔の製造方法。
【請求項22】
本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層に用いる銅層表面に異種金属層として鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層を備える複合箔の製造方法であって、
銅箔を、下記A.の組成の硫酸鉄電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、鉄メッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法。
[A.組成、電解条件]
FeSO4・7H2O 100g/l〜200g/l
H3BO3 20g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜30A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【請求項23】
前記硫酸鉄電解メッキ浴が、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含むことを特徴とする請求項22に記載の複合箔の製造方法。
【請求項24】
本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層に用いる銅層表面に異種金属層として第1コバルトメッキ層/硬質ニッケルメッキ層/第2コバルトメッキ層を備える複合箔の製造方法であって、
銅箔を、下記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、第1コバルトメッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成し、更に下記A.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、第2コバルトメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法。
[A.組成、電解条件]
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【請求項25】
前記硫酸コバルト電解メッキ浴が、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含むことを特徴とする請求項24に記載の複合箔の製造方法。
【請求項26】
本件発明に係るキャパシタ層形成材の第2導電層に用いる銅層表面に異種金属層として鉄メッキ層/硬質ニッケルメッキ層/コバルトメッキ層を備える複合箔の製造方法であって、
銅箔を、下記A.の組成の硫酸鉄電解メッキ浴に浸漬し、下記A.の電解条件で電解メッキを行い、鉄メッキ層を形成した後、下記B.の組成の硬質ニッケル電解メッキ浴に浸漬し、下記B.の電解条件で電解メッキを行い、硬質ニッケルメッキ層を形成し、更に下記C.の組成の硫酸コバルト電解メッキ浴に浸漬し、下記C.の電解条件で電解メッキを行い、コバルトメッキ層を形成することを特徴とする複合箔の製造方法。
[A.組成、電解条件]
FeSO4・7H2O 100g/l〜200g/l
H3BO3 20g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜30A/dm2
攪 拌 あり
[B.組成、電解条件]
NiSO4・6H2O 100g/l〜180g/l
NH4Cl濃度 20g/l〜30g/l
H3BO3濃度 20g/l〜60g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 4〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
[C.組成、電解条件]
CoSO4・7H2O 120g/l〜200g/l
H3BO3 25g/l〜50g/l
液 温 20℃〜50℃
pH 2〜5
電流密度 1A/dm2〜50A/dm2
攪 拌 あり
【請求項27】
前記硫酸コバルト電解メッキ浴が、0.05g/l〜0.3g/lの濃度で凝集剤を含むことを特徴とする請求項26に記載の複合箔の製造方法。
【請求項28】
請求項1〜請求項15のいずれかに記載のキャパシタ層形成材を用いて得られる内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2006−128326(P2006−128326A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313137(P2004−313137)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
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