説明

キャパシタ用セパレータ

【課題】内部抵抗が低く、自己放電特性および耐熱性に優れるキャパシタ用セパレータを提供する。
【解決手段】耐熱性フィブリル繊維および平均繊維径1μm以上20μm以下の耐熱性繊維と、熱融着成分と非熱融着成分からなる複合繊維を含む湿式不織布からなることを特徴とするキャパシタ用セパレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部抵抗が低く、自己放電特性および耐熱性に優れるキャパシタ用セパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャパシタ用セパレータに要求される重要な特性としては、電極同士の物理的接触による短絡を防止し、自己放電特性に優れること(以下、「セパレート性」という)、高い電解液保持率を保有し電解液中のイオン透過性を妨げないことなどが挙げられ、また近年、ャパシタの製造工程においては、電極活性を上げることを目的に、電極とキャパシタ用セパレーターを一緒に巻き付けた状態で、200℃以上の高温で数時間〜1日程度乾燥処理を行うことが一般的であるため、キャパシタ用セパレータにはその乾燥処理で劣化しないだけの耐熱性も必要とされている。
【0003】
従来、これらキャパシタ用セパレータとしては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主体成分とする多孔質膜(例えば、特許文献1参照)、溶剤紡糸セルロースを主体成分とする電解紙(例えば、特許文献2参照)などが使用されているが、ポリエチレンやポリプロピレンを主体成分とする多孔質膜は密度が高いため、電解液の保持率が低く内部抵抗が高くなる傾向にあり、また融点および軟化点が200℃以下のため、200℃以上の高温乾燥では変形し、セパレート性を損なうおそれがあった。溶剤紡糸セルロースを主体とする電解紙についても、200℃以上の高温乾燥では局部的に炭化や分解が起こるため微細孔がつぶれ、イオン透過性を阻害し、内部抵抗が高くなる傾向にあった。
【特許文献1】特開平6−325747号公報
【特許文献2】特開2000−3834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術に見られる上記問題点を解決するものである。即ち、本発明の目的は内部抵抗が低く、セパレート性および耐熱性に優れるキャパシタ用セパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、この課題を解決するために鋭意研究を行った結果、内部抵抗が低く、セパレート性および耐熱性に優れるキャパシタ用セパレータが実現できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0006】
即ち本発明は、耐熱性フィブリル繊維および平均繊維径1μm以上20μm以下の耐熱性繊維(以下、「耐熱性繊維」という)と、熱融着成分と非熱融着成分からなる複合繊維(以下、「熱融着複合繊維」という)を含有することを特徴とするキャパシタ用セパレータである。
【0007】
本発明のキャパシタ用セパレータに含まれる熱融着複合繊維は、芯鞘型複合繊維であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内部抵抗が低く、セパレート性および耐熱性に優れたキャパシタ用セパレータが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のキャパシタ用セパレータ(以下、「セパレータ」という)について詳細に説明する。
【0010】
本発明におけるキャパシタとは、対向する2つの電極間に誘導体または電気二重層を挟んだ形で構成されてなる蓄電機能を有するものである。誘導体を用いるものとしては、アルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサが挙げられ、電気二重層を用いるものとしては、電気二重層キャパシタが挙げられる。電気二重層キャパシタの電極としては、一対の電気二重層容量型電極、一方が電気二重層容量型電極でもう一方が酸化還元型電極の組み合わせの何れでも良い。
【0011】
キャパシタの電解液は、水溶液系、有機溶媒系、導電性高分子の何れでも良い。有機溶媒系電解液としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、プロピオニトリル、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、3−メチル−γ−バレロラクトン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメチルスルホラン、スルホラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルソルブなどの有機溶媒にイオン解離性の塩を溶解させたもの、イオン性液体(固体溶融塩)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、これらの誘導体などが挙げられる。
【0012】
本発明における耐熱性繊維とは、軟化点、融点、熱分解温度の何れも250℃以上700℃以下の繊維を指す。そのような材料としては、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、全芳香族ポリアゾメジン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール(PBZT)、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられ、これら単独でも良いし、2種類以上の組み合わせでも良い。PBZTはトランス型、シス型の何れでも良い。ここで、「軟化点、融点、熱分解温度の何れも250℃以上700℃以下」の範疇には、軟化点や融点が明瞭ではないが、熱分解温度が250℃以上700℃以下であるものも含まれる。全芳香族ポリアミドやPBOなどは、その例である。これらの中でも、より耐熱性を向上させるには、融点または熱分解温度が300℃以上のものが特に好ましい。また、全芳香族ポリエステルは吸湿率が著しく低いため、非水電解液や非水電解質を用いるキャパシタには特に好ましい。
【0013】
本発明における耐熱性フィブリル繊維とは、該耐熱性繊維をフィブリル化したものを指す。主に繊維軸と平行な方向に非常に細かく分割された部分を有する繊維状で、少なくとも一部が繊維径1μm以下になっている繊維を指し、米国特許第5833807号明細書や米国特許第5026456号明細書に明記されているようなフィブリッドとは異なる。本発明におけるフィブリルは、長さと巾(繊維径)のアスペクト比が20:1〜100000:1の範囲に分布し、カナダ標準形濾水度が0ml〜500mlの範囲にある。さらに、平均繊維長が0.2mm〜2mmの範囲にあるものが好ましい。該耐熱繊維の中でも、液晶性のため均一にフィブリル化されやすい全芳香族ポリアミドが特に好ましく、パラ系全芳香族ポリアミドと全芳香族ポリエステル繊維が更に好ましい。
【0014】
フィブリル化繊維は、高圧ホモジナイザー、高速ホモジナイザー、回転刃式ホモジナイザー、超音波破砕器、リファイナー、ビーター、ミル、摩粉装置などを用いて製造される。
【0015】
ここでの高圧ホモジナイザーとは、対象物に少なくとも10kg/cm2以上、好ましくは200kg〜1000kg/cm2、さらに好ましくは400〜1000kg/cm2の圧力を加えてオリフィスを通過させ、急速に減圧、減速させることにより生じる剪断力をもって対象物をフィブリル化することができる装置である。高分子の場合この剪断力によって、主として繊維軸と平行な方向に引き裂き、ほぐすような力として与えられ次第にフィブリル化する。具体的には高分子の繊維やペレットを長さ5mm以下、好ましくは3mm以下に切断したもの、あるいは予めパルプ状にしたものを原料とし、これを水に分散させて懸濁液とする。懸濁液の濃度は質量百分率で最大25%、好ましくは1〜10%であり、更に好ましくは1〜2%である。この懸濁液を高圧ホモジナイザーに導入し、少なくとも10kg/cm2、好ましくは200kg〜1000kg/cm2、さらに好ましくは400〜1000kg/cm2の圧力を加え、この操作を数回〜数十回繰り返す。場合によっては界面活性剤等の薬品を添加し処理しても良い。
【0016】
本発明のセパレータは、上記したような微細な耐熱性フィブリル繊維よって緻密で細孔の小さな構造を採るため、漏れ電流を生じることなく優れたセパレート性を示し、また、請求項1に示す平均繊維径の耐熱性繊維を含むことにより、極端に緻密な構造とならず、十分な電解液を保持するだけの空隙を形成するため、優れたイオン透過性を示す。
【0017】
本発明のセパレータの緻密な細孔は、耐熱性フィブリル繊維を含んで形成されるため、200℃以上の高温で乾燥した場合でも局部的につぶれることはなく、優れたイオン透過性が保たれる。また、本発明のセパレータは、熱寸法安定性に優れる耐熱性繊維を含んでなるため、200℃以上の高温で乾燥した場合でも熱収縮が小さく、十分な電解液を保持するだけの空隙が保たれるため、高温乾燥によって優れたイオン透過性が阻害されることはない。
【0018】
本発明のセパレータにおいて、耐熱性フィブリル繊維の含有量は10質量%以上70質量%以下とすることが好ましく、20質量%以上50質量%以下とするのが更に好ましい。耐熱性フィブリル繊維の含有量を10質量%未満とするとセパレータ性が不十分になりやすく、70質量%より多くすると極端に緻密な構造となり、イオン透過性を阻害するおそれがある。
【0019】
本発明に用いる耐熱性繊維は、平均繊維径が1μm以上20μm以下が好ましく、5μm以上15μm以下がより好ましい。平均繊維径が1μm未満の場合はセパレータの構造が極端に緻密となり、電解液保持率が低下し、内部抵抗が高くなりやすく、20μmより太い場合はセパレータの細孔が大きくなりすぎて、セパレート性が不十分となりやすい。
【0020】
本発明のセパレータにおいて、耐熱性繊維の含有量は10質量%以上70質量%以下とすることが好ましく、20質量%以上50質量%以下とするのが更に好ましい。耐熱繊維の含有量を10質量%未満とすると極端に緻密な構造となり、イオン透過性を阻害する恐れがあり、70質量%より多くするとセパレート性が不十分となるおそれがある。
【0021】
本発明に用いる耐熱性繊維の長さとしては、特に限定されるものではないが、耐熱性繊維の平均繊維長が1mm以上の場合、繊維同士の絡みにより機械的強度が向上するため好しく、セパレータの均一性を向上させるには平均繊維長30mm以下が好ましい。更には、平均繊維長3mm以上10mm以下が好ましい。
【0022】
本発明のセパレータにおいて十分な機械的強度を得るためには、熱を加えることにより軟化または溶融する樹脂成分(以下、「熱融着成分」という)を配する繊維が重要となる。熱融着成分を含有しない場合には、機械的強度が弱くなりやすく巻回性に支障を来すことがあるが、熱融着成分を配する繊維を含有してなる場合には、キャパシタの組み立てに支障を来さない。
【0023】
本発明のセパレータでは、熱融着成分と非熱融着成分からなる複合繊維を用い、その一部を熱により、軟化もしくは溶融させて繊維同士を接着させることが好ましい。1種類の樹脂からなる繊維を用い、軟化もしくは溶融させた場合には、繊維形状が崩れセパレータが不均一となり、局部的に細孔を塞いでしまうのに対し、複合繊維を用いた場合には、繊維形状を保ちながら繊維同士を接着させることが可能となるため、セパレータの均一性を損なわずに、十分な強度を得ることができる。
【0024】
複合繊維は種々の形態が可能であり、例えば芯鞘型(同心型、偏心型)複合繊維、並列型複合繊維などが挙げられ、いずれも本発明のセパレータに使用可能であるが、特にセパレータの均一性を損なわず、繊維間の接着力が強くなるものとしては芯鞘型が好ましい。複合繊維の表面は、少なくとも一部において、長さ方向に連続して鞘成分が芯成分を被覆するように配置されていることが好ましく、セパレータの均一性を損なわず、繊維間の接着力がつよくなるものとしては、芯鞘断面積比において、芯成分/鞘成分の比が約3/7〜7/3の範囲が好ましい。
【0025】
本発明の用いる芯鞘型複合繊維の鞘部を構成する樹脂成分は、芯部の樹脂成分よりも低い軟化点または融点を有し、且つ芯部を構成する樹脂とともに溶融紡糸することによって形成しうるものであればよく、その種類は特に限定されるものではない。芯鞘型複合繊維の材質としては、ポリエチレンテレフタレート−共重合ポリエステル系複合繊維、ポリプロピレン−共重合ポリプロピレン系複合繊維、ポリプロピレン−ポリエチレン系複合繊維、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレン系複合繊維などが挙げられるが、本発明のセパレータの耐熱性を向上させるためには、例えば芯部が250℃以上の融点および熱分解温度を有する複合繊維を用いるのが好ましい。
【0026】
本発明の用いる複合繊維は、特に限定されるものではないが、平均繊維径20μm以下とするのが均一性に優れたセパレータを得るのに好ましい。また、セパレータの機械的強度を向上させるためには10質量%以上含有することが好ましく、耐熱性を向上させるためには含有量を40質量%以下とするのが好ましい。
【0027】
本発明の用いる複合繊維の平均繊維長は、特に限定させれるものではないが、セパレータの均一性を向上させるためには、30mm以下とするのが好ましい。
【0028】
本発明のセパレータは、抄紙性を向上させるためなど、必要に応じて耐熱性繊維以外の有機繊維を含有して良い。その様な繊維としては、天然繊維、溶剤紡糸セルロース、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエーテルスルホン(PES)、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの樹脂からなる単繊維や複合繊維が挙げられる。これらの繊維は、明確な繊維径や繊維長を持つ。但し、上述したように、1種類の樹脂成分からなる繊維を軟化もしくは溶融させた場合には、繊維形状が崩れ、セパレータが不均一となるため、該有機繊維は熱融着しないことが好ましい。また、より耐熱性を向上させるには、有機繊維の含有量を40質量%以下とするのが好ましく、融点および熱分解温度が250℃以上のものを用いるのが好ましい。
【0029】
該有機繊維の平均繊維径は、1μm以上20μm以下であることが好ましく、3μm以上15μm以下がより好ましい。有機繊維の平均繊維径が1μm未満の場合、セパレータが極端に緻密な構造となり、内部抵抗が高くなりやすく、平均繊維径が20μmより太い場合、セパレータの細孔が大きくなりすぎて、セパレート性が不十分となりやすい。セパレータに含まれる有機繊維の平均繊維径を、上記の好ましい範囲内で2種類以上にすると、セパレータの地合いを均一にするのにより好ましい。
【0030】
本発明に用いる有機繊維の長さとしては、特に限定されるものではないが、有機繊維の平均繊維長が1mm以上の場合、繊維同士の絡みにより機械的強度が向上するため好しく、セパレータの均一性を向上させるには平均繊維長30mm以下が好ましい。更には、平均繊維長3mm以上10mm以下が好ましい。
【0031】
本発明のセパレータは、耐熱性フィブリル繊維以外にも、必要に応じて、フィブリル繊維を含有しても良い。その様な繊維としては、例えば、リンターをはじめとする各種パルプ、リント、溶剤紡糸セルロース、軟化点、融点、熱分解温度の何れもが250℃未満の合成繊維をフィブリル化したものや、バクテリアセルロースが挙げられる。但し、耐熱性を損なわないためには、含有量を40質量%以下とするのが好ましい。
【0032】
本発明におけるバクテリアセルロースとは、微生物が産生するバクテリアセルロースのことを指す。このバクテリアセルロースは、セルロースおよびセルロースを主鎖とするヘテロ多糖を含むものおよびβ−1,3、β−1,2等のグルカンを含むものである。ヘテロ多糖の場合のセルロース以外の構成成分はマンノース、フラクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸等の六炭糖、五炭糖および有機酸等である。これらの多糖は単一物質で構成される場合もあるが、2種以上の多糖が水素結合などで結合して構成されている場合もあり、何れも利用できる。
【0033】
本発明のセパレータは、厚み調整、強度向上、不純物除去、耐熱寸法安定性付与などの目的に応じて、カレンダー処理、熱処理、熱圧処理などが施される。
【0034】
本発明のセパレータは、1層でも良いし、多層で形成されたものでも良い。具体的には、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機、傾斜型抄紙機、これらの中から同種あるいは異種の抄紙機を2つ以上組み合わせたコンビネーションマシーンなどを用いて湿式抄紙し、1層あるいは多層に抄き合わせて製造される。多層の場合には、相対的に層毎に粗密の差を持たせても良い。本発明においては、抄紙機の抄紙ワイヤーには80メッシュ以上の目の細かいワイヤーを用いる。湿式抄紙の際に用いる水はイオン交換水または蒸留水が好ましく、分散助剤やその他の添加薬品、剥離剤などは、非イオン性のものが好ましいが、キャパシタ特性に影響を及ぼさない程度であれば、イオン性のものを適量用いても良い。
【0035】
本発明のセパレータは、それ1枚だけで使用しても良いが、2枚以上積層して用いても良い。
【0036】
本発明のセパレータの坪量は、特に制限はないが、5〜50g/m2が好ましく、8〜40g/m2がより好ましい。
【0037】
本発明のセパレータの厚みは、特に制限はないが、9μm〜300μmが好ましく、50μm〜150μmがより好ましい。厚みが9μmより薄いとキャパシタ用セパレータの引張強度や突刺強度などの機械的強度が不十分になりやすく、セパレート性も不十分となりやすい。一方、300μmより厚くなると、キャパシタに収納できる電極面積が減少するため、キャパシタの容量が不十分になりやすい。
【0038】
実施例
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限定されるものではない。
【0039】
<耐熱性フィブリル繊維1の作製>
パラ系全芳香族ポリアミド繊維(繊度2.5dtex、繊維長3mm)を初期濃度5質量%になるようにイオン交換水に分散させ、ダブルディスクリファイナーを用いて、15回繰り返し叩解処理した後、更に高圧ホモジナイザーを用い500kg/cm2の条件で30回繰り返し処理し、平均繊維径0.3μm、平均繊維長0.45mmのフィブリル化パラ系全芳香族ポリアミドを作製した。以下、これを耐熱性フィブリル繊維1またはFB1と表記する。
【0040】
<耐熱性フィブリル繊維2の作製>
全芳香族ポリエステルのペレット(長さ2mm、巾1mm)を初期濃度5質量%になるようにイオン交換水中に分散させ、ダブルディスクリファイナーを用いて、15回繰り返し叩解処理した後、高圧ホモジナイザーを用い500kg/cm2の条件で30回繰り返し処理して平均繊維径0.2μm、平均繊維長0.32mmのフィブリル化全芳香族ポリエステルを作製した。以下、これを耐熱性フィブリル繊維2またはFB2と表記する。
【0041】
<フィブリル化セルロース1の作製>
リンターを5質量%濃度になるようにイオン交換水中に分散させ、高圧ホモジナイザーを用いて500kg/cm2の圧力で20回繰り返し処理して、平均繊維長0.33mmのフィブリル化セルロース1を作製した。以下、これをフィブリル化セルロースまたはFBC1と表記する。
【0042】
湿式不織布を製造するための原料スラリーを、表1に示した原料と配合比の通り、パルパーを用い分散した。必要に応じては、非イオン性の分散助剤を用いた。表1中の「PA1」は、平均繊維径10μm、平均繊維長5mmの全芳香族ポリアミド繊維、「PA2」は、平均繊維径1μm、平均繊維長3mmの全芳香族ポリアミド繊維、「PA3」は、平均繊維径0.8μm、平均繊維長3mmの全芳香族ポリアミド繊維、「PES1」は、平均繊維径22μm、平均繊維長8mmの全芳香族ポリエステル繊維、「PES2」は、平均繊維径18μm、平均繊維長6mmの全芳香族ポリエステル繊維、「PET1」は、平均繊維径10μm、平均繊維長5mmのポリエチレンテレフタレート繊維、「PET2」は、平均繊維径3μm、平均繊維長3mmのポリエチレンテレフタレート繊維、「PET3」は、平均繊維径10μm、平均繊維長5mmの芯鞘型複合繊維(芯部:ポリエチレンテレフタレート(融点253℃)、鞘部:ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートの共重合体(融点130℃))、「PP1」は、平均繊維径5μm、平均繊維長6mmのポリプロピレン繊維を意味する。
【0043】
【表1】

【0044】
<キャパシタ用セパレータの作製>
【実施例1】
【0045】
スラリー1を円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、130℃で乾燥して湿式不織布を作製した。次いで、この湿式不織布を230℃の熱ロール(直径1.2m)で熱処理(無加圧、20m/min)し、坪量28g/m2、厚み100μmのキャパシタ用セパレータ1とした。
【実施例2】
【0046】
スラリー2を長網抄紙機を用いて湿式抄紙し、130℃で乾燥して、坪量23g/m2、厚み90μmの湿式不織布を作製し、キャパシタ用セパレータ2とした。
【実施例3】
【0047】
スラリー3を傾斜型抄紙機を用いて湿式抄紙し、130℃で乾燥して、坪量33g/m2、厚み130μmの湿式不織布を作製し、キャパシタ用セパレータ3とした。
【実施例4】
【0048】
スラリー4を円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、130℃で乾燥して湿式不織布を作製した。次いで、この湿式不織布を実施例1と同様にして熱処理し、坪量30g/m2、厚み107μmのキャパシタ用セパレータ4とした。
【実施例5】
【0049】
スラリー5を円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、130℃で乾燥して、坪量30g/m2、厚み125μmの湿式不織布を作製し、キャパシタ用セパレータ5とした。
【実施例6】
【0050】
スラリー2を長網抄紙機で坪量8g/m2に、スラリー3を円網抄紙機で坪量17g/m2として抄合わせた後、130℃で乾燥して湿式不織布を作製した。次いで、この湿式不織布を実施例1と同様にして熱処理し、坪量25g/m2、厚み110μmのキャパシタ用セパレータ6とした。
【0051】
(比較例1)
スラリー6を円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、130℃で乾燥して湿式不織布を作製した。次いで、この湿式不織布を実施例1と同様にして熱処理し、坪量28g/m2、厚み105μmのキャパシタ用セパレータ7とした。
【0052】
(比較例2)
スラリー7を円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、130℃で乾燥して湿式不織布を作製した。次いで、この湿式不織布を実施例1と同様にして熱処理し、坪量30g/m2、厚み120μmのキャパシタ用セパレータ8とした。
【0053】
(比較例3)
スラリー8を円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、130℃で乾燥して、坪量30g/m2、厚み110μmの湿式不織布を作製し、キャパシタ用セパレータ9とした。
【0054】
(比較例4)
スラリー9を円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、130℃で乾燥して湿式不織布を作製した。次いで、この湿式不織布を280℃の熱ロール(直径1.2m)で熱処理(無加圧、5m/min)し、坪量25g/m2、厚み90μmのキャパシタ用セパレータ10とした。
【0055】
(比較例5)
スラリー10を傾斜型抄紙機を用いて湿式抄紙し、130℃で乾燥して、坪量33g/m2、厚み130μmの湿式不織布を作製し、キャパシタ用セパレータ11とした。
【0056】
(比較例6)
スラリー11を傾斜型抄紙機を用いて湿式抄紙し、130℃で乾燥して、坪量30g/m2、厚み120μmの湿式不織布を作製し、キャパシタ用セパレータ12とした。
【0057】
<電気二重層キャパシタの作製>
電極活物質として平均粒径6μmの活性炭85質量%、導電材としてカーボンブラック7質量%、結着材としてポリテトラフルオロエチレン8質量%を混練して厚み0.2mmのシート状電極を作製した。これを厚み50μmのアルミニウム箔の両面に導電性接着剤を用いて接着させ、圧延して電極を作製した。この電極を正極および負極として用いた。キャパシタ用セパレータ1〜12を正極および負極の間に介して積層し、巻回機を用いて渦巻き型に巻回して渦巻き型素子を作製した。正極側および負極側の最外層には何れもセパレータを配した。この渦巻き型素子をアルミニウム製ケースに収納した。ケースに取り付けられた正極端子および負極端子に正極リードおよび負極リードを溶接した後、電解液注液口を残してケースを封口した。この素子を収納したケースごと230℃に15時間加熱し乾燥処理した。これを室温まで真空放冷した後、ケース内に電解液を注入し、注液口を密栓して電気二重層キャパシタを作製し、これを電気二重層キャパシタ1〜12とした。電解液には、プロピレンカーボネートに1.5mol/lになるように(C253(CH3)NBF4を溶解させたものを用いた。
【0058】
キャパシタ用セパレータ1〜12について、下記の試験方法により測定し、その結果を下記表2に示した。
【0059】
<耐熱性>
キャパシタ用セパレータ1〜12を、巾10mm、長さ5mmに切り取り、パーキンエルマー製熱機械測定器(TMA)を用いて20mmN(ミリニュートン)の荷重をかけつつ、昇温速度10℃/secで加熱したとき、セパレータが切断もしくは著しく収縮し始めたときの温度を測定し、切断もしくは著しく収縮し始めた温度が230℃未満のものを「×」、230℃以上250℃未満のものを「△」、250℃以上280℃未満のものを「○」、280℃以上のものを「◎」と表記し、耐熱性とした。
【0060】
<熱収縮>
キャパシタ用セパレータ1〜12を、縦150mm、横100mmのサイズに切り取り、アルミニウム板に載せ、縦方向に直角な2辺をクリップにて固定し、230℃に設定した恒温乾燥機中に15時間静置した。加熱後の横方向の寸法を計測し、加熱前の寸法に対する寸法変化率を熱収縮率(%)とした。
【0061】
<電解液保持率>
上記の熱収縮の測定に使用したキャパシタ用セパレータ1〜12の質量を測定し、次いで、そのセパレータを上記の電気二重層キャパシタの作製に用いたものと同じ電解液に1分間浸液した後に、15分間垂直に吊したセパレータの質量を再度測定する。電解液浸液後のセパレータ質量と浸液前のセパレータ質量の差を、浸液前のセパレータ質量で除し、その百分率(%)を電解液保持率とした。
【0062】
電気二重層キャパシタ1〜12について、下記の試験方法により測定し、その結果を下記表3に示した。
【0063】
<自己放電率>
電気二重層キャパシタ1〜12に、100mA/cm2の定電流にて2.5Vまで定電流充電を行い、2.5V到達後定電圧充電に切り替えて24時間定電圧充電を継続する。充電終了後、放電せずに24時間放置し、24時間放置後の電圧減衰率を自己放電率(%)とした。自己放電率が小さいほど自己放電しにくいことを意味し、自己放電特性に優れる。
【0064】
<内部抵抗>
電気二重層キャパシタ1〜12に、100mA/cm2の定電流にて2.5Vまで充電を行い、2.5V到達後定電圧充電に切り替えて2時間定電圧充電を継続する。充電終了後100mA/cm2の定電流にて放電を行い、放電開始直後に発生する電圧降下を求め、これを放電電流で除した値をDC抵抗とした。DC抵抗が低いことは、キャパシタの内部抵抗が低いことを意味する。
【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
評価:
表2に示すとおり、耐熱性フィブリル繊維および平均繊維径1μm以上20μm以下の耐熱性繊維と、熱融着成分と非熱融着成分を含む湿式不織布からなるキャパシタ用セパレータ1〜6は、優れた電解液保持率と耐熱性を示し、これらキャパシタ用セパレータ1〜6を具備してなる電気二重層キャパシタ1〜6は、表3のとおり、低い内部抵抗を示しながら、優れた自己放電特性を示した。
【0068】
一方、耐熱性フィブリル繊維を含まないキャパシタ用セパレータ7は、セパレータの細孔が大きくなりすぎてセパレート性が不十分となったため、キャパシタ用セパレータ7を具備してなる電気二重層キャパシタ7は、自己放電率が劣る結果となった。
【0069】
また、平均繊維径が1μm以上20μm以下の耐熱性繊維を含まないキャパシタ用セパレータ8および9は、表2に示すとおり、耐熱性に乏しく熱収縮が大きいため、熱処理後の電解液保持率が低下した。キャパシタ用セパレータ8および9を具備してなる電気二重層キャパシタ8および9は、電気二重層キャパシタの作製における、230℃、15時間の乾燥によってセパレータが大きく熱収縮し、十分な電解液保持率が得られず、表3の通り、高い内部抵抗を示す結果となった。
【0070】
1種類の樹脂成分からなる熱融着繊維を用い、熱処理により熱融着させたキャパシタ用セパレータ10は、熱融着繊維の形状が崩れ局部的に細孔がつぶれてしまい、十分な電解液保持率が得られなかったため、キャパシタ用セパレータ10を具備してなる電気二重層キャパシタ10は、表3のとおり、高い内部抵抗を示した。
【0071】
含まれる耐熱性繊維の平均繊維径が1μ未満のキャパシタ用セパレータ11は、セパレータの構造が極端に緻密となり、十分な電解液保持率が得られなかったため、キャパシタ用セパレータ11を具備してなる電気二重層キャパシタ11は、表3の通り、高い内部抵抗を示した。また、平均繊維径が20μmより太い耐熱性繊維を含むキャパシタ用セパレータ12は、セパレータの細孔が大きくなりすぎてセパレート性が不十分となったため、キャパシタ用セパレータ12を具備してなる電気二重層キャパシタ12は、自己放電特性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上、説明した如く、本発明によれば、内部抵抗が低く、自己放電特性および耐熱性に優れるキャパシタ用セパレータが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性フィブリル繊維および平均繊維径1μm以上20μm以下の耐熱性繊維と、熱融着成分と非熱融着成分からなる複合繊維を含む、湿式不織布からなることを特徴とするキャパシタ用セパレータ。
【請求項2】
熱融着成分と非熱融着成分からなる複合繊維が、芯鞘型複合繊維であることを特徴とする請求項1のキャパシタ用セパレータ。

【公開番号】特開2006−135243(P2006−135243A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325136(P2004−325136)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】