説明

キャビネット及びトイレユニット

【課題】キャビネットの破損を抑制でき、扉の開閉動作をスムーズに行うことができるキャビネット及びトイレユニットを提供すること。
【解決手段】キャビネット10は、アーム部13bとベース部13cとを連結して連結金具13をユニット化し、そのユニット化した連結金具13をキャビネット10の奥壁11eに固定するので、一対のアーム部13bは、ベース部13cに対して回転軸心がズレること無く軸支され、アーム部13bの扉12側先端の回転軌跡もズレずに一定になる。よって、扉12が開閉動作される場合に、アーム部13bとベース部13c及びアーム部13bと固着部13aとの連結部分に無理な力がかからないので、アーム部13bとベース部13c及びアーム部13bと固着部13aとの連結部分が破損することを抑制できるし、扉12の開閉動作もスムーズに行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネット及びトイレユニットに関し、特に、キャビネットの破損を抑制でき、扉の開閉動作をスムーズに行うことができるキャビネット及びトイレユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2007−169876号公報(以下「特許文献1」と称す)には、略箱状に形成されるキャビネット本体の前面側の開口部を扉により覆うキャビネットが開示されている。このキャビネットは、一対のアームの一端が扉の裏面側に固定されると共に、一対のアームの他端がキャビネット本体の横方向両側の側壁に回転可能に固定され、その一対のアームがキャビネット本体に対して回転することにより、キャビネット本体に対して扉が上方に開扉されるように構成されている。
【特許文献1】特開2007−169876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1のキャビネットでは、一対のアームの他端がキャビネット本体の横方向両側の側壁にそれぞれ1ずつ取り付けられるので、キャビネット本体の開口部に対する各アームの取付位置にバラツキが生じ易くなる。キャビネット本体の開口部に対する2本のアームの取付位置がズレると、各アームの回転軸心もズレるので、各アームの扉側先端の回転軌跡にもズレが生じる。その結果、そのアームの先端に固定された扉を上下方向に開閉動作すると、アームと側壁との取付部に無理な力がかかるので、扉の開閉動作を繰り返すことでアームと側壁との取付部が破損し易くなるし、扉の開閉動作もスムーズに行えないという問題点があった。
【0004】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、キャビネットの破損を抑制でき、扉の開閉動作をスムーズに行うことができるキャビネット及びトイレユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために請求項1記載のキャビネットは、略箱状に形成され前面側に開口部を有するキャビネット本体と、そのキャビネット本体の開口部を覆うと共に上下方向にスライド移動可能に構成された扉とを備えており、前記扉の横方向両側に、一方の端部が連結される一対のアーム部材と、その一対のアーム部材の他方の端部を両側に回転可能に軸支すると共に、その一対のアーム部材が軸支される両側間の長さが前記キャビネット本体の横方向の長さより若干短く形成され、前記キャビネット本体に取り付けられるベース部材とを備えている。
【0006】
請求項2記載のキャビネットは、請求項1記載のキャビネットにおいて、前記キャビネット本体には、そのキャビネット本体の天井壁または底壁の前面側に、前記アーム部材の端部が侵入する切り欠きが形成されている。
【0007】
請求項3記載のキャビネットは、請求項1又は2に記載のキャビネットにおいて、前記ベース部材は、前記キャビネット本体の開口部に対向する奥壁の上下方向におけるほぼ中央に取り付けられる。
【0008】
請求項4記載のキャビネットは、請求項3記載のキャビネットにおいて、前記一対のアーム部材は、前記扉に対して前記一方の端部が回転可能に軸支されると共に、前記一方の端部と他方の端部との間で少なくとも1箇所が屈曲した屈曲部を有している。
【0009】
請求項5記載のトイレユニットは、請求項1から4のいずれかに記載のキャビネットと、便器装置とを備えており、前記キャビネットは、前記扉の横方向と前記便器装置の前奥方向とがほぼ並行になるように、前記便器装置の側方に配置されるものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のキャビネットによれば、扉の横方向両側に一対のアーム部材の一方の端部が連結され、その一対のアーム部材の他方の端部はベース部材の両側に回転可能に軸支されるので、そのベース部材に対して、アーム部材の回転軸心および扉側先端の回転軌跡にズレが生じず、アーム部材とベース部材およびアーム部材と扉との連結部分に無理な力がかからない。また、ベース部材は、一対のアーム部材が軸支される両側間の長さがキャビネット本体の横方向の長さより若干短く形成されているので、そのベース部材をキャビネット本体に取り付ける場合、キャビネット本体の横方向両側の側壁によって、ベース部材の取付位置が規制される。よって、特許文献1のように、アーム部材がキャビネット本体の両側の側壁にそれぞれ1ずつ取り付けられる場合に比べて、アーム部材の取付位置は、キャビネット本体の開口部に対してバラツキが生じ難くなるので、アーム部材とベース部材およびアーム部材と扉との連結部分に無理な力がかからない。従って、キャビネット本体に対して扉が上下方向にスライド移動して開閉動作されても、アーム部材とベース部材およびアーム部材と扉との連結部分の破損を抑制できキャビネットの破損を抑制できるし、扉の開閉動作もスムーズに行うことができるという効果がある。
【0011】
また、扉は、キャビネット本体に対して上下方向にスライド移動するため、扉の開放時における左右両側の干渉を考える必要がなく、キャビネットを室内のコーナー部等に配置できるし、他のキャビネット等を左右両側に配置できるので、キャビネットの配置の自由度を向上できるという効果がある。
【0012】
請求項2記載のキャビネットによれば、請求項1記載のキャビネットの奏する効果に加え、キャビネット本体には、そのキャビネット本体の天井壁または底壁の前面側に、アーム部材の端部が侵入する切り欠きが形成されているので、上下方向にスライド移動する扉に追従してアーム部材の端部が上下方向に移動した場合に、そのアーム部材の端部が切り欠きに侵入する。よって、扉がスライド移動する移動範囲を広くできるので、キャビネット本体の開口部の開口が広くなり、収納物の出し入れがし易くなるという効果がある。
【0013】
請求項3記載のキャビネットによれば、請求項1又は2に記載のキャビネットの奏する効果に加え、ベース部材は、キャビネット本体の開口部に対向する奥壁の上下方向におけるほぼ中央に取り付けられるので、ベース部材がキャビネット本体の天井壁や底壁、奥壁の上端または下端に取り付けられる場合に比べて、扉が上下方向にスライド移動する場合のアーム部材の回転する範囲を狭くできるし、アーム部材の長さも短くできる。よって、扉を上下方向にスライド移動する場合に、アーム部材の回転範囲が広く且つアーム部材が長いために扉が左右方向へブレてしまうことを抑制できるので、扉の開閉動作をスムーズに行うことができるという効果がある。
【0014】
請求項4記載のキャビネットによれば、請求項3記載のキャビネットの奏する効果に加え、一対のアーム部材は、扉に対して一方の端部が回転可能に軸支されるので、扉が上下方向にスライド移動する場合に、一対のアーム部材に対して扉が回転し、垂直姿勢を保つことができる。また、アーム部材は、一方の端部と他方の端部との間で少なくとも1箇所が屈曲した屈曲部を有しているので、アーム部材を直線状に形成して扉を上下方向にスライド移動させる構成に比べて、アーム部材の扉側先端の回転軌跡を開口部側に位置させることができ、キャビネット本体の前面側への扉の突出量を少なくできる。よって、扉の開閉動作を行う場合に、扉を垂直姿勢に保ちつつキャビネット本体の前面側への扉の突出量を少なくできるので、キャビネットの前面側に他の装置などを配置しても扉の開閉動作を行うことができる。従って、他の装置との間の距離が狭い場所にもキャビネットを配置できるので、キャビネットの配置の自由度を向上できるという効果がある。
【0015】
請求項5記載のトイレユニットによれば、請求項1から4のいずれかに記載のキャビネットは、扉の横方向と便器装置の前奥方向とがほぼ並行となるように、便器装置の側方に配置される。一般に、便器装置は狭い室内であるトイレ内に配置されるため、扉が開閉動作する領域が取れずに便器装置の側方にキャビネットを配置できない場合があるが、キャビネットは、扉が上下方向にスライド移動すると共にキャビネット本体の前面側への突出量も少なくできるので、便器装置の側方に配置可能となり、キャビネットの配置の自由度を向上したトイレユニットを提供できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態のサイドキャビネット10及び中央キャビネット20が配置されたトイレTの全体を示した斜視図である。なお、図1において、矢印Xは、各キャビネット10,20の左右(横)方向(便器装置Sの前奥方向)を示しており、矢印Yは、各キャビネット10,20の奥行き方向(便器装置Sの左右方向)を示しており、矢印Zは、各キャビネット10,20(便器装置S)の上下方向を示している。
【0017】
図1に示すように、トイレTは、床面Fと、4つの壁面W(2つの壁面Wは図示せず)と、天井面(図示せず)とにより囲まれた空間である。なお、以下の説明では、便器装置Sの奥方の壁面を壁面W1とし、便器装置Sの側方の壁面をW2として説明する。
【0018】
トイレT内には、主に、壁面W2に奥壁が隣接し且つ、壁面W1及び壁面W2により形成されるコーナー部から反壁面W1方向(矢印X方向の右手前側)に沿って収納棚Rが配設され、壁面W1に奥方が隣接して便器装置Sが配設されている。
【0019】
収納棚Rは、前面側の開口部11f(図2参照)が扉12(図2参照)により覆われたサイドキャビネット10と、そのサイドキャビネット10の反壁面W1側(矢印X方向の右手前側)に配置されると共にサイドキャビネット10と同形状に形成される中央キャビネット20と、トイレットペーパーが装着される装着部30と、上部に手洗器を有すると共に内部に配管等が収納された手洗い台40とを有して構成されている。
【0020】
次に、図2及び図3を参照して、サイドキャビネット10の構造と、サイドキャビネット10の開閉動作について説明する。図2は、サイドキャビネット10を分解して示した分解斜視図である。図3は、サイドキャビネット10の側壁11aを仮想的に取り外した状態の左側面図であり、扉12の開扉動作を示した図である。
【0021】
図2に示すように、サイドキャビネット10は、略箱状に形成されるキャビネット本体11と、そのキャビネット本体11の前面側(矢印Y方向の左手前側)の開口部11fを覆う扉12と、その扉12をキャビネット本体11に対して上下方向にスライド移動可能に連結する連結金具13とを有して構成されている。
【0022】
キャビネット本体11は、壁面W1(図1参照)側に位置する側壁11aと、その側壁11aに対向配置される側壁11bと、天井壁11cと、底壁11dと、奥壁11eとにより略箱状に形成されている。キャビネット本体11は、側壁11a,11b、天井壁11c、底壁11d及び奥壁11eによって略箱状に形成され、前面側が開口部11fにより開口されている。
【0023】
また、底壁11dの開口部11f側には、キャビネット本体11の左右方向(矢印X方向)における両側端部に切り欠き11gが形成されている。この切り欠き11gは、後述する連結金具13の固着部13aおよびアーム部13bの扉12側の先端の一部が侵入する領域である。
【0024】
扉12は、前面側(矢印Y方向の左手前側)に取っ手12aがねじ12bにより固定されており、取っ手12aを使用者が摘んで操作することで、扉12をキャビネット本体11に対して上下方向(矢印Z方向)にスライド移動させて開閉動作できる。
【0025】
図2に示すように、取っ手12aは、扉12の左右方向(矢印X方向)のほぼ中央の上端(矢印Z方向の上端)に取り付けられている。よって、取っ手12aを摘み扉12を上下方向にスライド移動させた場合、一対の連結金具12(アーム部13b)に均等な力が作用するので、扉12をスムーズに開閉動作することができる。さらに、便器装置Sに着座した使用者が取っ手12aを摘み操作する場合、取っ手12aが扉12の下端に取り付けられていると、取っ手12aが使用者の腰から足下にかけて移動するので扉12の操作が困難になるが、取っ手12aは扉12の上端に取り付けられ使用者の上半身の範囲を移動するので、扉12の操作が困難にならず、扉12をスムーズに開閉動作することができる。
【0026】
連結金具13は、扉12の左右方向(矢印X方向)両側の端部に対して固着される一対の固着部13aと、その一対の固着部13aに回転可能に軸支される一対のアーム部13bと、その一対のアーム部13bの反固着部13a側の端部を両側(両端)に回転可能に軸支するベース部13cとを有して構成されている。
【0027】
アーム部13bは、上下方向(矢印Z方向)に並んだ2つのアーム13d,13eで構成されている。上側に位置するアーム部13dは、固着部13aとベース部13cとの間に1つの屈曲部13d1を有しており、略へ字状に形成されている。一方、下側に位置するアーム部13eは、固着部13aとベース部13cとの間に2つの屈曲部13e1,13e2を有しており、略階段状に形成されている。また、ベース部13cは、アーム部13bが軸支される両側の長さ(矢印Z方向の長手方向の長さ)が、キャビネット本体11の内部空間の横方向の長さより若干短く形成されている。ベース部13cの長さが若干短くとは、例えば、ベース部13cがキャビネット本体11に取り付けられた状態で、ベース部13cの両端と側壁11a,11bとの間にそれぞれ1cm程度の隙間が形成される長さである。
【0028】
連結金具13は、固着部13a、アーム部13b及びベース部13cとが一体とされてユニット化されてたものである。また、扉12と連結金具13とは、扉12の上下方向(矢印Z方向)において、扉12の上部に連結金具13の固着部13aが固着されることでユニット化されている。なお、扉12と連結金具13との連結は、扉12がベース部13cに対してスムーズに開閉動作できるように、固着部13aの扉12に対する固着位置が調整されている。
【0029】
そして、扉12と連結金具13とが連結されてユニット化されたものを、キャビネット本体11に対して固定して、サイドキャビネット10が製作される。具体的には、連結金具13のベース部13cを、キャビネット本体11の上下方向(矢印Z方向)における奥壁11eのほぼ中央に、ねじ14により固定して行われる。
【0030】
上述した通り、ベース部13cは、アーム部13bが軸支される両側の長さが、キャビネット本体11の内部空間の横方向の長さより若干短く形成されている。よって、ベース部13cがキャビネット本体11の奥壁11eに取り付けられる場合には、ベース部13cの取付位置の上下方向(矢印Z方向)への傾きが、キャビネット本体11の側壁11a,11bにより規制される。従って、ベース部13cは、ほぼ水平に奥壁11eに取り付けられるので、扉12が開閉動作する場合に、アーム部13bと側壁11a,11bとが接触することを抑制でき、アーム部13b及び側壁11a,11bが破損することを抑制できる。
【0031】
なお、本実施形態では、扉12と連結金具13とを連結してユニット化した後に、キャビネット本体11の奥壁11eにベース部13cを固定するように構成したが、連結金具13のベース部13cをキャビネット本体11に固定した後に、その固定された連結金具13の固着部13aと扉12とを固着するように構成しても良い。
【0032】
次に、図3を参照して、扉12のキャビネット本体11に対する開扉動作について説明する。
【0033】
図3(a)は、扉12がキャビネット本体11に対して閉扉された状態である。図3(a)に示すように、扉12が閉扉された状態では、キャビネット本体11の内部空間の上下方向(矢印Z方向)において、上方に連結金具13の固着部13aが位置している。
【0034】
図3(b)は、扉12の取っ手12aが使用者により摘まれて下方にスライド移動される途中の状態である。図3(b)に示すように、扉12は、キャビネット本体11の前面側(矢印Y方向の右側)に揺動している。なお、固着部13aは、アーム部13bを回転可能に軸支するので、扉12は、開閉動作が行われている間もアーム部13bに対して回転し垂直姿勢(矢印Z方向に沿った姿勢)が維持される。
【0035】
図3(b)に示す状態は、連結金具13の固着部13aが、キャビネット本体11の上下方向において、ほぼベース部13cと同じ位置にあり、扉12がキャビネット本体11の前面側に最も突出した状態である。
【0036】
しかし、扉12がキャビネット本体11の前面側に最も突出した状態でも、屈曲部13d1,13e1,13e2を有する2つのアーム13d,13eを組み合わせてアーム部13bが形成されているので、キャビネット本体11の前面側への扉12の突出量が抑えられている。これは、アーム13d,13eが屈曲部13d1,13e1,13e2を有することで、アーム13d,13eの扉12側先端の回転軌跡が、アーム13d,13eが直線状に形成される場合の回転軌跡に比べて、キャビネット本体11の開口部11f側に位置するからである。
【0037】
図3(c)は、扉12が完全に開扉された状態である。図3(c)に示すように、扉12がキャビネット本体11に対して完全に開扉された状態になると、連結金具13の固着部13aの一部とアーム13eの扉12側の先端とが、キャビネット本体11の底壁11dの切り欠き11g内に侵入している。
【0038】
また、図3(c)の状態では、扉12が、キャビネット本体11の奥行き方向(矢印Y方向)において、キャビネット本体11に対して閉扉された状態(図3(a)の状態)と同位置にある。即ち、キャビネット本体11の底壁11dに切り欠き11gを形成し、その切り欠き11gに固着部13aの一部とアーム13eの先端とが侵入する構成にすることで、扉12が開扉された状態で、キャビネット本体11の前面側への扉12の突出も抑えられている。
【0039】
なお、キャビネット本体11の底壁11dに切り欠き11gが形成されていないと、扉12が完全に開扉される前に、アーム部13bと底壁11dとが当接するので、キャビネット本体11の開口部11fの大部分を開放することができない。しかし、本実施形態では、底壁11dにアーム部13bが侵入可能な切り欠き11gを設けているので、扉12を完全に開扉することができ、開口部11fの開口量を多くし、収納物の出し入れをし易くできる。
【0040】
また、ベース部13cは、キャビネット本体11の奥壁11eの上下方向におけるほぼ中央に取り付けられるので、ベース部11cがキャビネット本体11の天井壁11cや底壁11d、奥壁11eの上部又は下部に取り付けられる場合に比べて、扉12が開閉動作する場合にアーム部13bが回転する範囲を狭くできるし、アーム部13bの全長も短くできる。よって、扉12を開閉動作する場合に、アーム部13bの回転範囲が広く且つアーム部13bの全長が長いために、扉12が左右方向(矢印X方向)に揺れながら動作する(ブレる)ことを抑制できるので、扉12の開閉動作をスムーズに行うことができる。
【0041】
なお、中央キャビネット20は、サイドキャビネット10と同形状に形成されているので、サイドキャビネット10が有する構成と同様の構成は、符号の10の位を20の位として読み替えるものとする。
【0042】
次に、図4を参照して、トイレT内に配置されるサイドキャビネット10及び中央キャビネット20の扉12,22が開扉された状態について説明する。図4は、各キャビネット10,20が配置されたトイレTの全体を示した斜視図であり、各キャビネット10,20の扉12,22が開扉された状態を示している。
【0043】
図4に示すように、サイドキャビネット10の扉12及び中央キャビネット20の扉22とが開扉された状態では、扉12,22が下方(矢印Z方向下側)にスライド移動しており、各キャビネット10,20の前面側には突出していない。
【0044】
また、上述した通り、扉12,22がキャビネット本体11,21に対して開扉動作している最中(図3(b)の状態)、及び、扉12,22が完全に開扉された状態(図3(c)の状態)では、キャビネット本体11,21に対して扉12,22が前面側に突出する突出量が少なくなる。よって、便器装置Sと各キャビネット10,20(収納棚R)との間が狭くても、扉12,22の開閉動作が可能になるので、トイレTのような狭い室内における各キャビネット10,20の配置の自由度を向上できる。
【0045】
さらに、扉12,22は、キャビネット本体11,21に対して上下方向にスライド移動するため、扉の開閉動作における左右両側の干渉を考える必要がなく、各キャビネット10,20をトイレT等の狭い室内のコーナー部等に配置できるし、他のキャビネット等を左右両側に配置もできるので、各キャビネット10,20の左右方向における配置の自由度も向上できる。
【0046】
なお、本実施形態では、便器装置Sに使用者(二点鎖線の人)が着座した状態で、上半身(例えば、肩より下方で腰より上方となる程度)に対応する位置に収納棚Rが設けられている。この状態で、例えば、扉12,22を上方に揺動して開扉する構成だと、使用者が腕を肩以上に挙げないと扉12,22を開扉できないので、扉12,22の操作性が低下する。しかし、本実施形態では、扉12,22の開閉動作は、使用者の上半身の範囲内で行われ、使用者が腕を肩以上に挙げる必要がないので、扉12,22の操作性の低下を抑制でき、各キャビネット10,20の使い勝手を向上できる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の各キャビネット10,20は、アーム部13b,23bとベース部13c,23cとを連結して連結金具13,23をユニット化し、そのユニット化した連結金具13,23のベース部13c,23cを各キャビネット10,20の奥壁11e,21eに固定して製作される。よって、一対のアーム部13b,23bは、ベース部13c,23cに対して回転軸心がズレること無く軸支されるので、アーム部13b,23bの扉12,22側先端の回転軌跡もズレずに一定になる。そして、ベース部13c,23cをキャビネット本体11,21の奥壁11e,21eに対して上下方向に傾くことなく固定できるので、アーム部13b,23bの回転軸心および回転軌跡が、キャビネット本体11,21の開口部11f,21fに対してズレることが抑制される。従って、扉12,22が開閉動作される場合に、アーム部13b,23bとベース部13c,23c及びアーム部13b、23bと固着部13a,23aとの連結部分に無理な力がかからないので、アーム部13b,23bとベース部13c,23c及びアーム部13b、23bと固着部13a,23aとの連結部分が破損することを抑制できるし、扉12,22の開閉動作もスムーズに行うことができる。
【0048】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0049】
例えば、上記実施形態では、各キャビネット10,20をトイレT内に配置するものとしたが、各キャビネット10,20を洗面台の上方および下方に配置しても良いし、キッチンの下方および上方に配置するものとしても良い。各キャビネット10,20を洗面台やキッチンに使用したとしても、ユニット化された連結金具13,23がキャビネット本体11,21に取り付けられるので、上記実施形態と同様に、連結金具13,23の破損を抑制できるし、扉12,22の開閉動作をスムーズに行うことができる。
【0050】
また、上記実施形態では、扉12,22をキャビネット本体11,21に対して下方向にスライド移動するように構成したが、上方にスライド移動するように構成しても良いし、扉12,22がキャビネット本体11,21に対して上方向にスライド移動する場合には、キャビネット本体11,21の天井壁11c,21cに切り欠き11g,21gを設けるようにしても良い。この構成の場合でも、上記実施形態と同様に、扉12,22の開閉動作をスムーズに行えるし、キャビネット本体11,21の開口部11f,21fの開口量を広くできる。なお、扉12,22をキャビネット本体11,21に対して上方向にスライド移動するように構成した場合には、便器装置Sに着座した使用者が扉12,22を開扉動作する際に、使用者の腕が肩より上方に上がらない位置に収納棚Rを配置することが好ましい。
【0051】
また、上記実施形態では、ベース部13c,23cをキャビネット本体11,21の奥壁11e,21eに固定するものとしたが、天井壁11c,21cや底壁11d,21dに固定するものとしても良い。つまり、アーム部13b,23bの回転軸心と、キャビネット本体11,21の開口部11f、21fとがほぼ並行になるように固定されれば、その固定位置は特に限定しない。この構成でも、ベース部13c,23cがキャビネット本体11の側壁11a,11b,21a,21bにより奥行き方向への固定位置が規制されるので、アーム部13b,23bの固定位置がキャビネット本体11,21の開口部11f、21fに対してズレることがないので、上記実施形態と同様に、連結金具13,23の破損を抑制できるし、扉12,22の開閉動作をスムーズに行うことができる。
【0052】
また、上記実施形態では、アーム部13b,23bを上下方向に配置される2つのアーム13d,13e,23d,23eで構成するものとしたが、少なくとも1つの屈曲部を有する1のアームで構成するものとしても良い。この構成でも、アーム部13b,23bが屈曲部を有するので、扉12,22側先端の回転軌跡がキャビネット本体11,21の開口部11f、21f側に位置することになり、キャビネット本体11,21の前面側に突出する扉12,22の突出量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態の各キャビネットが配置されたトイレの全体を示した斜視図である。
【図2】サイドキャビネットを分解して示した分解斜視図である。
【図3】サイドキャビネットの側壁を仮想的に取り外した状態の左側面図であり、扉の開扉動作を示した図である。
【図4】各キャビネットが配置されたトイレの全体を示した斜視図であり、各キャビネットの扉が開扉された状態を示している。
【符号の説明】
【0054】
10 サイドキャビネット(キャビネット)
20 中央キャビネット(キャビネット)
11,21 キャビネット本体
11e,21e 奥壁
11g,21g 切り欠き
12,22 扉
13,23 連結金具
13a,23a 固着部(アーム部材の一部)
13b,23b アーム部(アーム部材)
13d,23d アーム(アーム部材の一部)
13d1,23d1 屈曲部
13e,23e アーム(アーム部材の一部)
13e1,23e1 屈曲部
13e2,23e2 屈曲部
13c,23c ベース部(ベース部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略箱状に形成され前面側に開口部を有するキャビネット本体と、そのキャビネット本体の開口部を覆うと共に上下方向にスライド移動可能に構成された扉とを備えたキャビネットにおいて、
前記扉の横方向両側に、一方の端部が連結される一対のアーム部材と、
その一対のアーム部材の他方の端部を両側に回転可能に軸支すると共に、その一対のアーム部材が軸支される両側間の長さが前記キャビネット本体の横方向の長さより若干短く形成され、前記キャビネット本体に取り付けられるベース部材とを備えていることを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記キャビネット本体には、そのキャビネット本体の天井壁または底壁の前面側に、前記アーム部材の端部が侵入する切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項1記載のキャビネット。
【請求項3】
前記ベース部材は、前記キャビネット本体の開口部に対向する奥壁の上下方向におけるほぼ中央に取り付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のキャビネット。
【請求項4】
前記一対のアーム部材は、前記扉に対して前記一方の端部が回転可能に軸支されると共に、前記一方の端部と他方の端部との間に少なくとも1箇所が屈曲した屈曲部を有していることを特徴とする請求項3記載のキャビネット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のキャビネットと、便器装置とを備えたトイレユニットであって、
前記キャビネットは、前記扉の横方向と前記便器装置の前奥方向とがほぼ並行になるように、前記便器装置の側方に配置されるものであることを特徴とするトイレユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−125066(P2010−125066A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302984(P2008−302984)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】