説明

キャビネット装置

【課題】 上ケースの隙間からの粉塵等の進入を防ぐとともに、異物の挿入によるケースが変形された場合にICカードの挿入を不可能とする等対策を行ったキャビネット装置を実現する。
【解決手段】 ICカードの抜き差しを行うための挿入口15が形成された下ケース16とコの字状の金属加工製の上ケース10を、下ケース16の底面板17と上ケース10の上面板11を対向配置させた状態で両側面板12,13と底面板17の一部をネジ20で固定することによりキャビネット100を形成する。上ケース10の前面板18に対向した位置にはL字形状の補強部材27を固着する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えばICカードのデータ処理を行うICカード処理装置に用いて好適なキャビネット装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のICカードの例えば暗証の確認や電子マネー確認等のデータ処理を行うICカード処理装置用のキャビネット装置は、コの字形状に形成された上ケースのエッジ部分に正面パネル部を重ね合わせる構造となっていた。この構造は、上ケースのコの字形状の内側部分に嵌まり込むようにその一部の幅寸法が若干小さく形成された箱型形状を有した下ケースにネジ等で固定し、正面部分に当たる部分の下ケース上端は、上ケースのエッジ部分が重なり合う構造となっている。
【0003】また、他の構造としては、正面がコの字形状にパネルを形成するとともに、コの字形状に形成するとともに、コの字形状に形成された上ケースのエッジ部分に曲げ加工を加え、上ケースの曲げ加工部分が正面パネルのコの字部分の内側に、入り込むような構造となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来のキャビネット装置の場合、この構造は上下ケースを固定する部分において、上ケースのコの字内側の幅寸法は下ケースのその部分より小さく形成されなくてはならず、その部分でネジ等で固定することにより、コの字形状が若干撓んでしまい上ケースと正面パネル間に若干の隙間が発生する可能性がある。上記隙間が発生することにより、その部分から粉塵等が入り込むことがあった。また、上記隙間が発生しない場合でも、上記箇所から異物を挿入され、こじ開けられるという問題があった。さらに、上ケースをこじ開けられた場合でも、通常通り動作可能な構造となっていた。
【0005】この発明の目的は、上ケースの隙間からの粉塵等の進入を防ぐとともに、異物の挿入によるケースが変形された場合にICカードの挿入を不可能とする等対策を行ったキャビネット装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、この発明のキャビネット装置では、ICカードの抜き差しを行うための挿入口が形成された前面板に底面板および背面板が一体形成されたコの字状の金属加工製の下ケースと、上面板と両側面板とが一体形成されたコの字状の金属加工製の上ケースと、前記底面板と前記上面板を対向配置させた状態で前記両側面板と前記前面板および前記背面板を固定する手段と、前記前面板に対向させた状態で、前記上ケースに固着したL字形状の補強部材とからなることを特徴とする。
【0007】上記した手段によれば、上ケースと下ケースの正面側の隙間も塞ぐことで粉塵等の進入も防ぐことが可能となるばかりか、異物の挿入も防止可能となる。また、補強部材は、L型の曲げ構造で構成されているため、比較的薄板の板金材料であっても飛躍的に強度を向上させることが可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1〜図5を用いて、この発明の第1の実施の形態について説明する。図1は斜視図、図2は図1の側断面図、図3はICカードの概観図、図4は図1の主要部の斜視図、図5は図1を背面から見た斜視図である。
【0009】図1において、10は金属製の上ケースであり、上面板11の両端を板金加工によりほぼ垂直に折り曲げてコの字状に形成し、折り曲げた部分を左右の側面板12,13とする。側面板12,13にはそれぞれ、図4に示す固定用のネジ穴41を形成する。14は前面パネルであり、この前面パネル14には表示器L1,L2の取り付けや挿入口15等を形成する。前面パネル14は、図2に示すように下ケース16の底面板17と両端をほぼ垂直に折り曲げてコの字状に形成し、折り曲げた部分の一方を前面板18、他方を背面板19とする。側面板12,13にそれぞれ形成されたネジ穴41にネジ20をねじ込んで、図示しない下ケース16と上ケース100を一体化してキャビネット100を構成する。
【0010】キャビネット100内では制御基板21の一端をスタッド221で支持する。制御基板21はデータ通信用および電源入力用ケーブル23が背面板19に取着されたブッシング24を介して図示しない外部のパーソナルコンピュータに接続する。26はカードホルダ25に図3のICカードCを導くためのガイドである。ガイド26と底面板17間の222は、制御基板21の他端を支持するためのスタッドである。
【0011】上ケース10の上面板11、側面板12,13には、図4、図5に示すように背面板19に当接する箇所に重ね面42をそれぞれ設ける。これにより、重ね面42により上ケース10と下ケース16の隙間は塞ぐことが可能となり粉塵等の進入も防ぐことができ、異物の挿入も困難となる。さらに、重ね面42はL型の曲げ構造で構成されているため、強度も向上するため仮に異物を挿入し破壊を試みても困難な構造とすることができる。
【0012】ところで、前面パネル14側は、使用者が常に機器の正面として扱われるため、デザイン的に重ね面42を設ける可能性は低い。そこで、正面に当たる部分の上ケース10の前面板18よりの側面板12から側面板13にかけてL字状の補強部材27を固着する。補強部材27は、上ケース10が板金構造であれば、L型アングル形状の板金で製作し、上ケース10に溶接等による結合方式により容易に構成することが可能である。
【0013】このような構成とすることにより、デザイン的にも考慮した外観で、上ケース10と下ケース16の正面側の隙間もふさぐことが可能となり粉塵等の進入も防ぐことができるとともに異物の挿入も困難となる。さらに、補強部材27はL型の曲げ構造で構成されているため、比較的薄板の板金材料であっても飛躍的に強度を向上させることが可能となる。また、仮に異物を挿入し破壊を試みても困難な構造とすることが可能となる。
【0014】ここで、挿入口15よりICカードCを挿入する。ICカードCはガイド26に導かれ、カードホルダ25内へと導かれる。ICカードC表面には端子C1を有しており、カードホルダ25内挿入されたICカードCの端子C1はカードホルダ25内の接触子に接触するよう構成されている。この接触により、ICカードCと制御基板21に構成されたICカード処理部との通信が行われる外部のパーソナルコンピュータ間においてデータの送受信を行うことができる。
【0015】この実施の形態によれば、上ケースと下ケースの正面側の隙間も塞ぐことで粉塵等の進入も防ぐことが可能となるばかりか、異物の挿入も防止可能となる。また、補強部材は、L型の曲げ構造で構成されているため、比較的薄板の板金材料であっても飛躍的に強度を向上させることが可能となる。
【0016】次に、図6、図7を用いてこの発明の第2の実施の形態について説明する。この実施の形態は、上面板11に固着された補強部材27を、前面板18に沿って底面板17まで延設して補強部材271とした構成部分が第1の実施の形態と異なる部分であり、第1の実施の形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明する。
【0017】すなわち、補強部材271には、ICカードCの挿入口15、ガイド26を超え、底面板17付近までの大きさのものとする。ここで、ICカードCのカードホルダ25への挿入を妨げぬよう補強板271のICカードCの進入経路に該当する部分にはICカードCの進入口61を設ける。
【0018】この場合、仮に上ケース10を変形させるほどの外力を加えられた場合、補強部材271も同様に変形し、この変形に伴い補強部材271に設けられた進入口61も変形してしまう。従って、ICカードCを挿入しようした場合、ICカードCの進入経路が塞がれてしまいICカードCが挿入を不可能とすることができる。
【0019】この実施の形態では、デザイン的にも考慮した外観で、上ケース10と下ケース16の正面側の隙間も塞ぐことができ、粉塵等の進入を防止し異物の挿入も困難となる。補強部材271はL型の曲げ構造で構成されているため、比較的薄板の板金材料であっても飛躍的に強度を向上させることができる。仮に異物を挿入し破壊を試みても困難な構造とすることが可能となる。さらに、何らかの不正が行われた可能性のあるICカード処理装置を簡単な構造で使用不可とすることができる。
【0020】図8、図9はこの発明の第3の実施の形態について説明するためのものである。この実施の形態は、第2の実施の形態の補強部材271に、さらに制御基板21の下方に回り込む形状の突出部81が形成された補強部材272を用いるとともに、補強部材272には挿入口61に代えてICカードCのカードホルダ25への挿入を妨げぬよう切欠き82を形成した部分の構成が異なる。
【0021】この実施の形態の場合、仮に上ケース10を変形させるほどの外力を加えられた場合、突出部81は補強部材272に一体的に構成しているため突出部81も変形してしまう。そのため、制御基板21を傷つけることとなり、その機能を停止することが可能となる。仮にICカード処理装置の内部を解析されることで情報の漏洩を防ぐことが必要な場合は上記容易な手法により実現することが可能となる。
【0022】図10,11を用いてこの発明の第4の実施の形態について説明する。この実施の形態は、図6の補強部材271に図8の補強部材273の突出部81を組み合わせて補強部材273とした構成部分が異なりこれまでの実施の形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明する。
【0023】すなわち、補強部材273は、仮に上ケース10を変形させるほどの外力を加えられた場合、突出部81も同様に変形してしまい、補強部材273に形成された進入口61も変形してしまう。従って、ICカードCを挿入しようとしても、ICカードCの進入経路が塞がれてしまい、不正な行為によるICカードCが挿入不可能とすることが可能となる。
【0024】また、進入口61の変形に伴い、突出部81も変形してしまうため、制御基板12を傷つけることとなり、その機能を停止することが可能となる。仮にICカード処理装置を解析されることで情報の漏洩を防ぐことが必要な場合に有効なキャビネット装置を実現することができる。
【0025】この実施の形態では、上記した実施の実施の形態と同様に、上ケース10と下ケース16の正面側の隙間も塞ぐことが可能となり粉塵等の進入も防ぐことが可能となり、また異物の挿入も困難となる。さらに、突起14はL型の曲げ構造で構成されているため、比較的薄板の板金材料であっても飛躍的に強度を向上させることが可能となる。
【0026】上記した各実施の形態では、側面板12,13側からで上ケース10を下ケース16にネジ20により結合している。図12に示すこの発明の応用例では、鉤121付きの棚122の上面板123の内部より、底面板17にネジ124で止め、さらに床面に設けられたボルト125で下面板126を固定する。
【0027】これにより、ICカード処理装置そのものの持ち出しや簡易工具による分解を不可とすることが可能となる。また、ICカード処理装置の内部を解析を試みるために破壊するしかなく効果を奏する。
【0028】この発明は上記した実施の形態に限定にされるものではない。例えば、キャビネット100の側面側からで上ケース10を下ケース16にネジ等により結合しているが、これを下ケース16の底面板17側から上ケース10の側面板13,14を結合してもよい。また、制御基板21を破壊するよう構成しているが、この考えは、解析されたくないメモリー等の電気部品であっても応用することが可能である。
【0029】なお、第2〜第4の実施の形態では、第1の実施の形態の図4、図5の重ね面42については説明していないが、第2〜第4の実施の形態においても同様の手段が講じられる。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、この発明のキャビネット装置によれば、上ケースと下ケースの正面側の隙間も塞ぐことで粉塵等の進入も防ぐことが可能となるばかりか、異物の挿入も防止可能となる。また、補強部材は、L型の曲げ構造で構成されているため、比較的薄板の板金材料であっても飛躍的に強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の第1の実施の形態について説明するための斜視図。
【図2】 図1の側断面図。
【図3】 ICカードについて説明するための概観図。
【図4】 図1の要部について説明するための斜視図。
【図5】 図1の背面から見た状態について説明するための斜視図。
【図6】 この発明の第2の実施の形態について説明するための側断面図。
【図7】 図6の正面側から見た主要部の断面図。
【図8】 この発明の第3の実施の形態について説明するための側断面図。
【図9】 図8の正面側から見た主要部の断面図。
【図10】 この発明の第4の実施の形態について説明するための側断面図。
【図11】 図10の正面側から見た主要部の断面図。
【図12】 この応用例について説明するための断面図。
【符号の説明】
100…キャビネット
10…上ケース
11…上面板
12,13…側面板
14…前面パネル
15…挿入口
16…下ケース
17…底面板
18…前面板
19…背面板
25…ICカードホルダ
26…ガイド
27,271〜273…補強部材
42…重ね面
61…進入口
81…突出部
82…切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ICカードの抜き差しを行うための挿入口が形成された前面板に底面板および背面板が一体形成されたコの字状の金属加工製の下ケースと、上面板と両側面板とが一体形成されたコの字状の金属加工製の上ケースと、前記底面板と前記上面板を対向配置させた状態で前記両側面板と前記前面板および前記背面板を固定する手段と、前記前面板に対向させた状態で、前記上ケースに固着したL字形状の補強部材とからなることを特徴とするキャビネット装置。
【請求項2】 前記補強部材は、前記前面板に沿って対向配置させて前記底面板付近までの形状とするとともに、前記挿入口が当たる部分から開放端まで切欠きを形成したことを特徴とする請求項1記載のキャビネット装置。
【請求項3】 前記補強部材は、前記ICカードの進入経路以上の長さを有するとともに、前記ICカードの進入経路付近と対向する位置には侵入口を形成し、前記進入経路を越えた位置まで配置したことを特徴とする請求項1に記載のキャビネット装置。
【請求項4】 前記補強部材の一部は、前記ICカードを保持するカードホルダの底面まで延出したことを特徴とする請求項1に記載のキャビネット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2003−209372(P2003−209372A)
【公開日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−6848(P2002−6848)
【出願日】平成14年1月16日(2002.1.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】