説明

キャビネット

【課題】 キャビネットをキッチン、リビング、玄関等に設置する際に、壁面に堅固に固定可能なキャビネットを提供することを課題とする。
【解決手段】 左右の側板11,11と地板12と天板13とが組み立てられてなる枠体14の後部に、壁面Wとの間に所定の隙間を設けて該枠体14の後方開口を覆う背板15を嵌め込む。そして、背板15の壁面W側の面の左右両側に、上記隙間分の厚みを有する一対の補強部材17,17を、両面接着テープを介して接合する。これにより、ビス18A…18Aを背板15の前方から該背板15と補強部材17,17とを貫通させて壁面Wにねじ込んでウォールキャビネット2を壁面Wに固定するとき、これを堅固に固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチン、リビング、玄関等に設置されるキャビネットに関し、家具の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、キッチン、リビング、玄関等に設置されるキャビネットには、側板、地板、天板、背板等の部材で構成され、一般に厚みの薄い背板を介して壁面に固定されて用いられるものがある。このようなキャビネットとしては、例えば特許文献1〜3に記載のものがある。
【0003】
まず、図17及び図18に示すように、特許文献1に開示されたキャビネット40はノックダウン方式のもので、台輪41を介してフロアFに設置され、左右の側板42,42と地板43と前後一対の天板44,44とで構成された前後に開口する枠体45を有している。その場合、地板43及び天板44,44は、各側板42,42の外方からねじ込まれた複数のビス46A…46Aで両側板42,42に連結されている。
【0004】
そして、両側板42,42の後部に縦溝部(一方のみ示す)42a,42aが、地板43の後部に横溝部43aがそれぞれ設けられており、これらの溝部42a,42a,43aに枠体45の後方開口を覆う厚みの薄い背板47が嵌め込まれている。
【0005】
さらに、背板47の上部の背後には、該背板47と壁面Wとの間の隙間を埋めると共にこのキャビネット40の壁面Wへの固定部を補強する左右に長い補強部材48が配設されており、該補強部材48は、左右の側板42,42の外方からねじ込まれた2つのビス(1つのみ示す)46B,46Bで該側板42,42に連結されている。そして、別なる複数のビス(1つのみ示す)46C…46Cを背板47の前方から該背板47及び補強部材48を貫通させて壁面Wにねじ込むことにより、当該キャビネット40は壁面Wに固定されるようになっている。
【0006】
次に、図19に示すように、特許文献2に開示されたキャビネット50も同じくノックダウン方式のもので、前後に開口する枠体55を有し、前方開口を覆う図示しない扉と後方開口を覆う背板57とが備えられている。背板57は、左右の側板(一方のみ示す)52,52の後部に設けられた縦溝部(一方のみ示す)52a,52aに嵌め込まれている。
【0007】
そして、背板57の壁面W側の面の周囲四辺に横断面が略V字状とされた溝部58aを有する細長い4つの補強部材(2つのみ示す)58…58が配設されており、該補強部材58…58は複数のビス(1つのみ示す)56B…56Bで上記V溝部58a…58aの斜面を利用して斜め方向から側板52,52や図示しない地板及び天板に連結されている。そして、前述したキャビネット40におけると同様に、別なる複数のビス(1つのみ示す)56C…56Cを背板57の前方から該背板57及び補強部材58を貫通させて壁面Wにねじ込むことにより、当該キャビネット50は壁面Wに固定されるようになっている。
【0008】
次に、図20に示すように、特許文献3に開示されたキャビネット60は壁面Wに吊下げて設置されるもので、左右の側板62,62と地板63と天板64とで構成された前後に開口する枠体65を有している。また、両側板62,62の後部に縦溝部(一方のみ示す)62a,62aが、地板63及び天板64の後部に横溝部63a,64aがそれぞれ設けられており、これらの溝部62a,62a,63a,64aに枠体65の後方開口を覆う厚みの薄い背板67が嵌め込まれている。
【0009】
そして、背板67の下部及び上部の背後に左右に長い補強部材68,68がそれぞれ配設されており、該補強部材68,68は、それぞれ下方端部及び上方端部に突設された複数のダボ(2つのみ示す)68b…68bを介して地板63及び天板64に連結されている。そして、複数のビス66C…66Cを背板67の前方から該背板67及び補強部材68,68を貫通させて壁面Wにねじ込むことにより、当該キャビネット60は壁面Wに固定されるようになっている。
【0010】
【特許文献1】特開2003−265241号公報
【特許文献2】特開平8−154748号公報
【特許文献3】特開平10−5062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前述したようなキャビネット40,50,60を壁面Wに固定する際に、枠体45,55,65の内方において、ビス46C,56C,66Cを背板47,57,67の前方から該背板47,57,67と補強部材48,58,68とを貫通させて後方の壁面Wにねじ込もうとする場合、該ビス46C,56C,66Cを極力目立たせないようにするため、背板47,57,67の辺部近傍でビス止めする要望がある。しかしながら、いずれのキャビネット40,50,60においても、背板47,57,67の前方からは補強部材48,58,68を枠体45,55,65に連結するために使用されたビス46B,56Bやダボ68bの配設位置がわからないため、キャビネット40,50,60を壁面Wに固定するためにねじ込むビス46C,56C,66Cに上記ビス46B,56Bやダボ68bが干渉してねじ込み不完全となり、その結果、堅固な固定が阻害されるおそれがある。
【0012】
また、一例として図18に示すように、キャビネット40を壁面Wに固定するためのビス46Cを例えば図示しない電動ドライバを用いてねじ込む場合、該ビス46Cの先端が背板47を貫通して補強部材48にねじ込まれようとするときに、該ビス46Cの回転に伴って厚みの薄い背板47が電動ドライバ側に太い鎖線で示すように引き寄せられる結果、引き続いて該ビス46Cをねじ込んだとしても背板47とその背後の補強部材48との間に隙間が生じた状態でキャビネット40が壁面Wに固定されることになり、この点でも堅固な固定が阻害されるおそれがある。
【0013】
また、特に特許文献2に記載のキャビネット50では、図19に鎖線で示すように、このキャビネット50を壁面Wに固定するためのビス56Cが補強部材58のV溝部58aつまり厚みの薄い箇所を貫通する可能性があり、その場合には固定力が確実に低下するようになる。
【0014】
そこで、本発明は、以上の現状に鑑み、キャビネットをキッチン、リビング、玄関等に設置する際に、壁面に堅固に固定可能なキャビネットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0016】
まず、請求項1に記載の発明は、上下に延びる左右の側板と、該左右の側板の上端部間及び下端部間に架設された天板及び地板と、これらが組み立てられてなる前後に開口する枠体の後部に、取付壁面との間に所定の隙間が生じるように該枠体の後方開口を覆う背板とを有し、該背板を介して壁面にビス止め固定されるキャビネットに関するもので、上記背板の壁面側の面に、上記隙間分の厚みを有する補強部材が配設されており、かつ、該補強部材は、接着部材を介して背板に接合されていることを特徴とする。
【0017】
次に、請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載のキャビネットにおいて、接着部材は、両面接着テープであることを特徴とする。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のキャビネットにおいて、補強部材は、背板の壁面側の面における縦方向もしくは横方向の二辺のほぼ全辺にわたって平行に配設されていることを特徴とする。
【0019】
そして、請求項4に記載の発明は、上記請求項1または請求項2に記載のキャビネットにおいて、補強部材は、背板の壁面側の面における周囲四辺のほぼ全辺にわたって配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
まず、請求項1に記載の発明によれば、補強部材を従来のようにビスやダボを使用して側板ないし枠体に連結するのではなく、補強部材を接着部材を介して背板に接合しているので、例えば施工現場において、ビスを背板の前方から該背板や補強部材を貫通させて壁面にねじ込んでキャビネットを壁面に固定するとき、該ビスのねじ込みを阻害する別なるビスやダボはなく、もって不完全なねじ込みが回避され、堅固に固定可能なキャビネットが実現される。
【0021】
また、背板と補強部材とは接着部材を介して接合されているので、例えば電動ドライバを用いて背板側からビスをねじ込む場合、従来問題であったビスの回転に伴う背板の電動ドライバ側への引き寄せは抑制され、したがって背板と補強部材との間に隙間が生じた状態でキャビネットが壁面に固定されることにはならなく、この点でも堅固な固定が確保される。なお、電動ドライバでビスをねじ込む際に、進出するビスによって補強部材だけが壁面側に押し付けられて、結果的に背板と補強部材との間や枠体と壁面との間に不用意に隙間が生じ、その状態でキャビネットが壁面に固定されるおそれもない。
【0022】
また、使用する補強部材は従来のようにV溝部を有したものでなくてもよいので、キャビネットを壁面に固定するためのビスが補強部材の厚みの薄い箇所を貫通する事態は生じなく、もって固定力が確実に維持される。
【0023】
次に、請求項2に記載の発明によれば、接着部材として両面接着テープを用いるので、補強部材を背板に容易に接合することができると共に接合力が安定して得られる。
【0024】
また、請求項3に記載の発明によれば、補強部材を背板の壁面側の面における縦方向もしくは横方向の二辺のほぼ全辺にわたって平行に配設するので、長さの長い補強部材を使用することになり、その結果、補強部材と背板との間の接合力が増強されると共に補強部材自体の強度が増し、もってキャビネットと共にその壁面への固定部が一層補強される。なお、この場合、「ほぼ全辺」とあるのは、「全辺」を含む。
【0025】
そして、請求項4に記載の発明によれば、補強部材を背板の壁面側の面における周囲四辺のほぼ全辺にわたって配設するので、キャビネットと共にその壁面への固定部が一層補強される。さらに、壁面に固定用のビスをねじ込む際のねじ込み箇所の自由度が増すメリットがある。なお、この場合、「ほぼ全辺」とあるのは、「全辺」を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
すなわち、図1に示すように、本発明に係るキャビネットはノックダウン方式の玄関収納システム1に適用されており、該システム1は、壁面Wに吊下げ支持された2つのウォールキャビネット2,2と、該ウォールキャビネット2,2の下方で台輪3に支持されたベースキャビネット4及びサイドキャビネット5とを有している。なお、台輪3は、その左側端部はフロアFに、一方、右側端部は前後一対の木脚3a,3aを介して土間Gにそれぞれ支持されている。
【0028】
まず、ウォールキャビネット2について説明すると、図2〜図6に示すように、該キャビネット2は、左右の側板11,11と地板12と天板13とを組み立ててなる前後に開口する枠体14を有している。その場合、地板12及び天板13は、その左右端部に突設された複数のダボ12a…12a,13a…13aと、左右の側板11,11に穿設された同数のダボ孔11a…11aとの嵌合を介して、上記側板11,11の下端部間及び上端部間にそれぞれ架設されている。
【0029】
また、両側板11,11の後部に縦溝部11b,11bが、地板12及び天板13の後部に横溝部12b,13bがそれぞれ設けられており、これらの溝部11b,11b,12b,13bに枠体14の後方開口を覆う厚みの薄い背板15が嵌め込まれている。そして、ウォールキャビネット2には、図示しないヒンジを介して枠体14の前方開口を開閉する左右一対の扉16,16が備えられている。
【0030】
また、背板15の背後には、該背板15と壁面Wとの間の隙間Sを埋めると共にこのウォールキャビネット2の壁面Wへの固定部を補強する細長い一対の補強部材17,17が配設されている。その場合、補強部材17,17は、枠体14に嵌め込まれた背板15における両側板11,11に隣接する位置、つまり縦方向の二辺のほぼ全辺にわたって配設されており、かつ、図2及び図6に示すように、補強部材17,17は、該補強部材17,17のほぼ全面に貼付された両面接着テープ17a,17aを介して背板15に接合されている。なお、この両面接着テープ17a,17aには、各種の建築部材の固定用に使用されるものが好ましく適用可能である。
【0031】
そして、4つのビス18A…18Aを背板15の前方から該背板15及び補強部材17,17を貫通させて壁面Wにねじ込むことにより、このウォールキャビネット2は壁面Wに固定されるようになっている。
【0032】
このノックダウン方式のウォールキャビネット2を現場施工する際の組立手順例について説明する。
【0033】
すなわち、図2及び図3に示したように、一方の側板11と地板12とをダボ孔11a…11aとダボ12a…12aとの嵌合を介して連結して、側方から背板15を側板11及び地板12の溝部11b,12bに嵌め込む。そして、背板15の上部を天板13の横溝部13bに嵌め込みながら、該天板13と上記側板11とをダボ13a…13aとダボ孔11a…11aとの嵌合を介して連結したのち、背板15の残る端部を他方の側板11の縦溝部11bに嵌め込みながら、該側板11と上記天板13とをダボ孔11a…11aとダボ13a…13aとの嵌合を介して連結して、背板15が後部に嵌め込まれた枠体14を組み立てる。
【0034】
次いで、背板15の壁面W側の面に、図2〜図4に示した配設位置で、一対の補強部材17,17を両面接着テープ17a,17aを介して接合したのち、4つのビス18A…18Aを枠体14の内方で背板15の前方から該背板15及び補強部材17,17を貫通させて壁面Wにねじ込むことにより、ウォールキャビネット2を壁面Wに固定する。そして、枠体14の前面に扉16,16を取り付ける。なお、上述した組立手順は一例であって、順序は適宜変更される。
【0035】
以上のように構成したことにより、まず、補強部材17,17を従来のようにビスやダボを使用して側板11,11ないし枠体14に連結するのではなく、補強部材17,17を接着部材としての両面接着テープ17a,17aを介して背板15に接合しているので、例えば施工現場において、ビス18A…18Aを背板15の前方から該背板15や補強部材17,17を貫通させて壁面Wにねじ込んでウォールキャビネット2を壁面Wに固定するとき、該ビス18A…18Aのねじ込みを阻害する別なるビスやダボはなく、もって不完全なねじ込みが回避され、堅固に固定可能なウォールキャビネット2が実現される。
【0036】
また、背板15と補強部材17,17とは両面接着テープ17a,17aを介して接合されているので、例えば電動ドライバを用いて背板15側からビス18A…18Aをねじ込む場合、従来問題であったビス18A…18Aの回転に伴う背板15の電動ドライバ側への引き寄せは抑制され、したがって背板15と補強部材17,17との間に隙間が生じた状態でウォールキャビネット2が壁面Wに固定されることにはならなく、この点でも堅固な固定が確保される。なお、電動ドライバでビス18Aをねじ込む際に、進出するビス18Aによって補強部材17だけが壁面W側に押し付けられて、結果的に背板15と補強部材17との間や枠体14と壁面Wとの間に不用意に隙間が生じ、その状態でウォールキャビネット2が壁面Wに固定されるおそれもない。
【0037】
また、使用する補強部材17,17は従来のようにV溝部を有したものでなくてもよいので、ウォールキャビネット2を壁面Wに固定するためのビス18A…18Aが従来のように補強部材の厚みの薄い箇所を貫通する事態は生じなく、もって固定力が確実に維持される。
【0038】
そして、接着部材として両面接着テープ17a,17aを用いるので、補強部材17,17を背板15に容易に接合することができると共に接合力が安定して得られる。その場合、補強部材17,17のほぼ全面に両面接着テープ17a,17aが貼付されているので、該補強部材17,17は背板15に強固に接合されることになる。
【0039】
さらに、補強部材17,17を背板15の壁面W側の面における縦方向の二辺のほぼ全辺にわたって平行に配設するので、長さの長い補強部材17,17を使用することになり、その結果、補強部材17,17と背板15との間の接合力が増強されると共に補強部材17,17自体の強度が増し、もってウォールキャビネット2と共にその壁面Wへの固定部が一層補強される。
【0040】
なお、その他の特徴として、工場において背板と補強部材とを接合して一体化した上で施工現場に搬入する場合、輸送中に補強部材間に位置する背板部分の割れや補強部材から外方に突出する背板の角部の破損等が懸念されるのに対し、本実施の形態では、施工現場において背板15と補強部材17,17とを両面接着テープ17a,17aを用いて接合するので、上記懸念を確実に払拭することができる。
【0041】
次に、背板15における補強部材17,17の配設形態の変形例について説明する。
【0042】
まず、図7に示すように、細長い一対の補強部材17,17を、背板15において両側板11,11に隣接させる、つまり縦方向の二辺のほぼ全辺にわたって配設する代わりに、地板12及び天板13に隣接させる、つまり横方向の二辺のほぼ全辺にわたって配設してもよい。この場合にも、前述した図3に示す配設形態のものにおいて得られたと同様の作用効果が得られる。
【0043】
また、図8に示すように、細長い4つの補強部材17…17を、背板15における周囲四辺のほぼ全辺にわたって配設してもよい。すなわち、補強部材17…17を背板15の壁面W側の面における周囲四辺に配設するので、補強部材17…17の配設領域が増すことになり、ウォールキャビネット2と共にその壁面Wへの固定部が一層補強される。さらに、壁面Wに固定用のビス18A…18Aをねじ込む際のねじ込み箇所の自由度が増すメリットがある。
【0044】
そして、図9に示すように、短い4つの補強部材17…17を、背板15の4つの角部近傍に配設してもよい。この場合には、補強部材17…17の使用量が削減されるので、補強部材17…17の機能を維持しつつ、軽量化と安価化とを図ることができる。
【0045】
また、図10及び図11に示すように、両側板11,11と背板15とを合成樹脂製のL字状とされた4つの連結具19…19で連結してもよい。この連結具19は、L字を形成する一方の部分にダボ19aが突設されていると共に他方の部分にビス孔19bが穿設されており、該ダボ19aと対応する側板11に穿設されたダボ孔11cとの嵌合、及び該ビス孔19bを介して背板15を貫通して該背板15の背後の補強部材17にねじ込まれたビス18Bによって、側板11と背板15とを連結している。なお、図10では、記載の複雑化を避けるため、扉16,16を省略している。
【0046】
ところで、壁面Wに固定されたウォールキャビネット2の両側板11,11と地板12と天板13とを有して後部に背板15が挟み込まれた枠体14に矢印aで示す過大な重みが作用した場合、天板13はビス18A…18Aで壁面Wに堅固に固定された背板15及び補強部材17,17によって下方への移動が規制される。一方、天板13と両側板11,11とのダボ13a…13aを介した嵌合部に過大な重みが負荷されることになるが、連結具19…19が備えられていないときには、ダボ13a…13aが負荷に抗しきれずに傾斜する結果、側板11,11ひいては地板12が矢印b及び鎖線で示すように下方にずれ、背板15の下端部が地板12の横溝部12bから浮き上がろうとするおそれがある。それに対して、背板15と両側板11,11とを連結具19…19で一体に連結することにより、上記嵌合部への負荷を軽減し、もって前述した不具合を防止することができるようになる。
【0047】
また、図12に示すように、地板12と背板15とを2つの上記連結具19,19で連結してもよい。
【0048】
こうすることにより、壁面Wに固定されたウォールキャビネット2の地板12に矢印cで示す過大な重みが作用した場合、連結具19,19が備えられていないときには、ビス18A…18Aによって壁面Wに堅固に固定された背板15及び補強部材17,17に対して、地板12が矢印d及び鎖線で示すように撓むことによって背板15の下端部が地板12の横溝部12bから浮き上がろうとするおそれがあるのを、背板15と地板12とを連結具19,19で一体に連結することによって抑制することができる。
【0049】
なお、背板15と地板12とを2つの連結具19,19で連結することに加えて、背板15と天板13とを2つの連結具19,19で連結してもよい。この場合には、ウォールキャビネット2が一層補強される。
【0050】
次に、ベースキャビネット4について説明すると、図13〜図16に示すように、サイドキャビネット5に隣接する高さの低いベースキャビネット4は台輪3上に支持されており、左右の側板21,21と地板22と天板23とを組み立ててなる前後に開口する枠体24を有している。その場合、地板22は、その左右端部に突設された複数のダボ22a…22aと、左右の側板21,21に穿設された同数のダボ孔21a…21aとの嵌合を介して、上記側板21,21の下端部間に架設されている。なお、図示しないが、天板23も、これと同様の構成によって両側板21,21の上端部間に架設されている。
【0051】
また、両側板21,21の後部に縦溝部21b,21bが、地板22及び天板23の後部に横溝部22b,23bがそれぞれ設けられており、これらの溝部21b,21b,22b,23bに枠体24の後方開口を覆う厚みの薄い背板25が嵌め込まれている。そして、ベースキャビネット4には、図示しないヒンジを介して枠体24の前方開口を開閉する左右一対の扉26,26が備えられている。
【0052】
また、背板25の背後には、該背板25と壁面Wとの間の隙間Sを埋めると共にこのベースキャビネット4の壁面Wへの固定部を補強する細長い一対の補強部材27,27が配設されている。その場合、補強部材27,27は、枠体24に嵌め込まれた背板25における両側板21,21に隣接する位置、つまり縦方向の二辺のほぼ全辺にわたって配設されており、かつ、図16に示すように、補強部材27,27は、該補強部材27,27のほぼ全面に貼付された両面接着テープ27a,27aを介して背板25に接合されている。なお、この両面接着テープ27a,27aには、前述したように、各種の建築部材の固定用に使用されるものが好ましく適用可能である。
【0053】
また、4つのビス28A…28Aを背板25の前方から該背板25及び補強部材27,27を貫通させて壁面Wにねじ込むことにより、このベースキャビネット4は壁面Wに固定されるようになっている。
【0054】
また、4つのビス28C…28Cを地板22の上方から該地板22を貫通させて台輪3にねじ込むことにより、このベースキャビネット4は台輪3に固定されるようになっている。
【0055】
また、ベースキャビネット4は、枠体24上部に取り付けられたカウンタ29を有している。このカウンタ29は、天板23側からねじ込まれた4つのビス28D…28Dで該天板23上に固定されている。
【0056】
また、枠体24内の背板25の前方空間を上下方向に区画する4つの棚板30…30が、左右の側板21,21に取り付けられた受け部材31…31に係止されて設置されている。その場合、上記受け部材31…31を側板21,21に穿設された多数の孔部21d…21dのうちの適宜のものに嵌入させることにより、上記棚板30…30の取付位置は変更可能とされている。
【0057】
このノックダウン方式のベースキャビネット4を現場施工する際の組立手順例について説明する。
【0058】
すなわち、図13〜図15に示したように、一方の側板21と地板22とをダボ孔21a…21aとダボ22a…22aとの嵌合を介して連結して、側方から背板25を側板21及び地板22の溝部21b,22bに嵌め込む。そして、背板25の上部を天板23の溝部23bに嵌め込みながら、該天板23と上記側板21とを図示しないダボとダボ孔21a…21aとの嵌合を介して連結したのち、背板25の残る端部を他方の側板21の縦溝部21bに嵌め込みながら、該側板21と上記天板23とをダボ孔21a…21aとダボとの嵌合を介して連結して、背板25が後部に嵌め込まれた枠体24を組み立てる。
【0059】
次いで、背板25の壁面W側の面に、図16に示した配設位置で、一対の補強部材27,27を該補強部材27,27のほぼ全面に貼付された両面接着テープ27a,27aを介して接合したのち、ビス28C…28Cを地板22の上方から該地板22を貫通させて台輪3にねじ込むことにより、枠体24を台輪3に固定する。
【0060】
そして、ビス28D…28Dを用いて枠体24上にカウンタ29を取り付けたのち、図13〜図15に示したように、4つのビス28A…28Aを枠体24の内方で背板25の前方から該背板25及び補強部材27,27を貫通させて壁面Wにねじ込むことにより、ベースキャビネット4を壁面Wに固定する。さらに、扉26,26や棚板30…30等の取り付けを行なう。
【0061】
以上のように構成したことにより、前述したウォールキャビネット2において得られた作用効果と同様の作用効果がベースキャビネット4においても得られるようになる。ところで、サイドキャビネット5は、寸法や扉の仕様の違いはあるものの、基本的な構成は上記ベースキャビネット4に類似しているため、説明を省略する。
【0062】
なお、本発明は、具体化して説明した上記実施の形態に限定されることはなく、本発明の趣旨に沿うものであればよい。
【0063】
例えば、ベースキャビネット4の扉26,26を省略すると共に内方の収納空間に引き出しを備えてもよい。
【0064】
次に、両面接着テープ17a,27aを使用して補強部材17,27を背板15,25に接合したが、その場合に、両面接着テープ17a,27aを補強部材17,27のほぼ全面に貼付する代わりに部分的に貼付してもよい。なお、この場合、「ほぼ全面」とあるのは、「全面」を含む。また、補強部材17,27と背板15,25との接合に際し、周知の接着剤を塗布する方法を用いてもよい。
【0065】
また、連結具19には合成樹脂性のものを使用したが、材質、形状等を適宜選択してよい。
【0066】
また、ベースキャビネット4やサイドキャビネット5についても、連結具19を使用してよい。その場合には、該キャビネット4,5は一層補強される。
【0067】
そして、図11において、連結具19を背板15及び補強部材17に固定するためのビス18Bの長さを延長して、該ビス18Bでウォールキャビネット2を壁面Wに固定するようにしてもよい。その場合には、部品点数の削減つまり前述した壁面Wに固定するためのビス18A…18Aの省略を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明によれば、キャビネットをキッチン、リビング、玄関等に設置する際に、壁面に堅固に固定可能なキャビネットが提供される。すなわち、本発明は、キッチン、リビング、玄関等に設置されるキャビネットに関し、家具の技術分野に広く好適である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態に係るキャビネットを適用した玄関収納システムの斜視図である。
【図2】ウォールキャビネットの扉を省略した分解斜視図である。
【図3】ウォールキャビネットの背面側から見た斜視図である。
【図4】同じく一部破断正面図である。
【図5】図4のII−II線による拡大断面図である。
【図6】図5のIII−III線による拡大断面図である。
【図7】補強部材の別なる配設形態を示す図3に相当する斜視図である。
【図8】同じく補強部材のさらに別なる配設形態を示す斜視図である。
【図9】同じく補強部材のさらに別なる配設形態を示す斜視図である。
【図10】側板と背板とを連結具で連結したウォールキャビネットの扉を省略した正面図である。
【図11】図10のIV−IV線による拡大断面図である。
【図12】地板と背板とを連結具で連結したウォールキャビネットの扉を省略した正面図である。
【図13】ベースキャビネットの一部破断正面図である。
【図14】図13のVI−VI線による拡大断面図である。
【図15】図13のVII−VII線による拡大断面図である。
【図16】ベースキャビネットの一部破断背面図である。
【図17】従来のキャビネットを壁面に固定する状態を示す一部破断側面図である。
【図18】図17のX方向から見た一部破断拡大矢視図である。
【図19】従来の別なるキャビネットを壁面に固定する状態を示す平断面図である。
【図20】従来のさらに別なるキャビネットを壁面に固定する状態を示す一部破断側面図である。
【符号の説明】
【0070】
2 ウォールキャビネット(キャビネット)
4 ベースキャビネット(キャビネット)
5 サイドキャビネット(キャビネット)
11,21 側板
12,22 地板
13,23 天板
14,24 枠体
15,25 背板
17,27 補強部材
17a,27a 両面接着テープ(接着部材)
S 隙間
W 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる左右の側板と、該左右の側板の上端部間及び下端部間に架設された天板及び地板と、これらが組み立てられてなる前後に開口する枠体の後部に、取付壁面との間に所定の隙間が生じるように該枠体の後方開口を覆う背板とを有し、該背板を介して壁面にビス止め固定されるキャビネットであって、上記背板の壁面側の面に、上記隙間分の厚みを有する補強部材が配設されており、かつ、該補強部材は、接着部材を介して背板に接合されていることを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
接着部材は、両面接着テープであることを特徴とする請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
補強部材は、背板の壁面側の面における縦方向もしくは横方向の二辺のほぼ全辺にわたって平行に配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキャビネット。
【請求項4】
補強部材は、背板の壁面側の面における周囲四辺のほぼ全辺にわたって配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−75485(P2006−75485A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265196(P2004−265196)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】