説明

キャビン付作業車両

【課題】キャビン7を上方に持上げる場合、キャビン7に油圧昇降機構20のリフトアーム115を簡単に連結できるキャビン付作業車両を提供するものである。
【解決手段】エンジン5を搭載した走行機体2と、オペレータ座乗用の操縦座席8及び操縦ハンドル9等を有するキャビン7と、走行機体2に作業部を連結するリンク機構21と、該リンク機構21に連結した作業部を地上に持上げる油圧昇降機構20と、油圧昇降機構20のリフトアーム115とリンク機構21とを着脱可能に連結するリフトロッド116とを備え、キャビン7の前部の下端部にキャビン支持体183を配置し、キャビン7の後部の下方に油圧昇降機構20を配置し、キャビン支持体183回りに前記キャビン7を回動することによって、油圧昇降機構20の上面側を開放するように構成してなるキャビン付作業車両において、キャビン7に下方から当接させる突上げ体192を備え、リフトロッドを取外したリフトアーム115に、突上げ体192を着脱可能に連結するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業に使用されるトラクタまたは土木作業に使用されるホイルローダ等のキャビンが搭載されたキャビン付作業車両に係り、より詳しくは、オペレータ座乗用の操縦座席及び操縦ハンドル及びブレーキペダル等を有するキャビンを移動可能に支持したキャビン付作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近のトラクタまたはホイルローダ等のキャビン付作業車両では、キャビンの下方に配置された油圧昇降機構のメンテナンス作業の能率化のため、例えば、特許文献1又は特許文献2では、キャビンの前部にキャビン支持体を配置し、キャビン支持体回りにキャビンを前方に回動することによって、キャビンの後部の下方に配置した油圧昇降機構の上面側を開放できるようにした構成が開示されている(特許文献1参照)。また、走行機体から離れた位置にスタンドを介してキャビンを支持することも公知である(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭60−50079号公報
【特許文献2】特開平9−109938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、トラクタ等の作業車両においては、ミッションケースの上面側に油圧昇降機構が配置されている。そのため、特許文献1のように、油圧昇降機構を利用することによって、キャビンを上方に簡単に持上げることができる。しかしながら、特許文献1では、油圧昇降機構のリフトアームと作業機昇降用のリンク機構とを着脱可能に連結するためのリフトロッドをキャビンに連結する必要がある。即ち、リンク機構とリフトロッドとの連結構造と、リフトロッドとキャビンとの連結構造とが、キャビン又はリンク機構の構造によって互いに制限されるから、リフトロッドの構造、又はキャビンの構造、又はリンク機構とキャビンとにリフトロッドを付け替える構造を簡単に構成できない。したがって、リンク機構とキャビンとにリフトロッドを付け替える作業も面倒になる等の問題がある。また、特許文献1のように、ミッションケースの後車軸ケースに安全フレームの後端側を連結した状態で、キャビンを上方に持上げる構造、又は特許文献2のように、ミッションケースの後車軸ケースに、てこ棒及び支持ブラケットを設けて、キャビンを上方に持上げる構造では、ミッションケース等を簡単に取外すことができない等の問題もある。
【0004】
本発明の目的は、キャビンを上方に簡単に持上げることができるものでありながら、キャビンを上方に持上げる場合、キャビンに油圧昇降機構のリフトアームを簡単に連結できるキャビン付作業車両を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明のキャビン付作業車両は、エンジンを搭載した走行機体と、オペレータ座乗用の操縦座席及び操縦ハンドル等を有するキャビンと、前記走行機体に作業部を連結するリンク機構と、前記リンク機構に連結した作業部を地上に持上げる油圧昇降機構と、前記油圧昇降機構のリフトアームと前記リンク機構とを着脱可能に連結するリフトロッドとを備え、前記キャビンの前部の下端部にキャビン支持体を配置し、前記キャビンの後部の下方に前記油圧昇降機構を配置し、前記キャビン支持体回りに前記キャビンを回動することによって、前記油圧昇降機構の上面側を開放するように構成してなるキャビン付作業車両において、前記キャビンに下方から当接させる突上げ体を備え、前記リフトロッドを取外した前記リフトアーム115に、前記突上げ体を着脱可能に連結するように構成したものである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキャビン付作業車両において、前記キャビンの底部に配置したキャビン底板の下面から下方に向けて当接体を突出し、下降姿勢の前記リフトアームに連結した前記突上げ体の先端側が前記当接体に接離可能に当接するように構成したものである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のキャビン付作業車両において、前記キャビン支持体から前記走行機体の後車軸ケースの上方に向けて前記キャビンのキャビンフレームを延長し、前記キャビン支持体と前記後車軸ケースとの間の前記キャビンフレームにスタンド固定具を配置し、前記後車軸ケースより前方の前記キャビンフレームに前記スタンド固定具を介してキャビン支持スタンドを着脱可能に連結するように構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、エンジンを搭載した走行機体と、オペレータ座乗用の操縦座席及び操縦ハンドル等を有するキャビンと、前記走行機体に作業部を連結するリンク機構と、前記リンク機構に連結した作業部を地上に持上げる油圧昇降機構と、前記油圧昇降機構のリフトアームと前記リンク機構とを着脱可能に連結するリフトロッドとを備え、前記キャビンの前部の下端部にキャビン支持体を配置し、前記キャビンの後部の下方に前記油圧昇降機構を配置し、前記キャビン支持体回りに前記キャビンを回動することによって、前記油圧昇降機構の上面側を開放するように構成してなるキャビン付作業車両において、前記キャビンに下方から当接させる突上げ体を備え、前記リフトロッドを取外した前記リフトアーム115に、前記突上げ体を着脱可能に連結するように構成したものであるから、前記走行機体に載置した前記キャビンの底部に、前記リフトアームに連結した前記突上げ体を当接させる簡単な操作で、前記キャビンに前記突上げ体を連結できる。即ち、前記リンク機構の構造等によって前記突上げ体の構造が制限されないから、前記キャビンの構造、又は前記突上げ体の構造を簡単に構成できる。したがって、前記キャビンを上方に持上げる場合、前記キャビンに前記突上げ体を介して前記リフトアームを簡単に連結できるものである。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、前記キャビンの底部に配置したキャビン底板の下面から下方に向けて当接体を突出し、下降姿勢の前記リフトアームに連結した前記突上げ体の先端側が前記当接体に接離可能に当接するように構成したものであるから、前記キャビン底板に前記当接体を介して前記突上げ体を当接させる操作で、前記当接体によって補強された前記キャビン底板に前記突上げ体を簡単に連結できる。また、前記キャビンを上方に持上げる場合、前記キャビン支持体を中心とする前記当接体の回動軌跡の接線方向に前記突上げ体を延長できるから、簡単な構造の前記突上げ体によって前記キャビンを支持できるものである。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、前記キャビン支持体から前記走行機体の後車軸ケースの上方に向けて前記キャビンのキャビンフレームを延長し、前記キャビン支持体と前記後車軸ケースとの間の前記キャビンフレームにスタンド固定具を配置し、前記後車軸ケースより前方の前記キャビンフレームに前記スタンド固定具を介してキャビン支持スタンドを着脱可能に連結するように構成したものであるから、地上に前記キャビン支持スタンドを立脚させて、前記走行機体の上方に持上げた前記キャビンを前記キャビン支持スタンドにて支持することによって、前記走行機体の後部の上面側を大きく開放できる。そのため、前記走行機体の後方側に、前記油圧昇降機構又はミッションケース等の前記走行機体の後半部を簡単に取出すことができる。即ち、前記キャビンを前記走行機体から取外すことなく、前記走行機体の後半部のメンテナンス作業又は分解組立作業等を簡単に実行できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図21)に基づいて説明する。図1は農作業用トラクタの側面図、図2はトラクタを斜め後方から見た斜視図、図3は走行機体の側面説明図、図4は走行機体の平面説明図、図5はトラクタ全体における油圧回路図、図6は動力伝達のスケルトン図、図7は無段変速機の油圧回路図、図8はトラクタのキャビン部を示す平面図、図9は図8の拡大平面図である。
【0012】
図1及び図2に示す如く、キャビン付作業車両としてのトラクタ1は、走行機体2を左右一対の前車輪3と同じく左右一対の後車輪4とで支持し、前記走行機体2の前部に搭載したエンジン5にて後車輪4及び前車輪3を駆動することにより、前後進走行するように構成される。この場合、走行機体2の進行方向左側に位置する前後車輪3,4の組と、進行方向右側に位置する前後車輪3,4の組とにより、左右一対の走行部が構成されている。
【0013】
エンジン5はボンネット6にて覆われる。また、前記走行機体2の上面にはキャビン7が設置され、該キャビン7の内部には、オペレータが着座する操縦座席8と、該操縦座席8の前方に位置する操縦コラム234とが搭載されている。操縦コラム234の上部には、操向手段としての操縦ハンドル9(丸ハンドル)が設けられている。操縦座席8に着座したオペレータが操縦ハンドル9を回動操作することにより、その操作量(回動量)に応じて左右前車輪3のかじ取り角(操向角度)が変わるように構成されている。キャビン7の左右外側部には、オペレータが乗降するための左右1対のステップ10が設けられ、該ステップ10より内側で且つキャビン7の底部より下側には、エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11が設けられている。
【0014】
また、前記走行機体2は、前バンパ12及び前車軸ケース13を有するエンジンフレーム14と、エンジンフレーム14の後部にボルト15にて着脱可能に固定する左右の機体フレーム16とにより構成される。機体フレーム16の後部には、前記エンジン5からの出力を適宜変速して後車輪4(前車輪3)に伝達するためのミッションケース17が連結されている。この場合、後車輪4は、前記ミッションケース17に対して、当該ミッションケース17の外側面から外向きに突出するように装着された後車軸ケース18、及びこの後車軸ケース18の外側端に装着されたファイナルギヤケース19を介して取付けられている。
【0015】
前記ミッションケース17の後部における上面には、耕耘機等の作業機(図示せず)を昇降動するための油圧式の作業機用昇降機構20が着脱可能に取付けられている。耕耘機等の作業機は、ミッションケース17の後部にロワーリンク21及びトップリンク22を介して昇降動可能に連結される。即ち、作業機用昇降機構20にリフトアーム115を配置する。リフトアーム115にリフトロッド116を介してロワーリンク21を連結している。さらに、ミッションケース17の後側面に、前記作業機を駆動するPTO軸23が設けられている。
【0016】
次に、図3、図4、図11、図12を参照して、機体フレーム16とミッションケース17とを連結する走行機体2の後部構造を説明する。鉄板製の左右の機体フレーム16の後端部に、上下の連結ボス部139を一体形成している。図11及び図12に示されるように、連結ボス部139は筒形フレームピン140に被嵌されている。フレームピン140の一端側にピン締結部材141を被嵌している(図12参照)。フレームピン140と、ピン締結部材141とは、溶接加工にて固定している。機体フレーム16は、フレームピン140の内孔に貫通する1本の締付けボルト142と、ピン締結部材141の取付け孔に貫通する2本の固定ボルト143とを介して、ミッションケース17の側面に取付けられる。
【0017】
図12に示されるように、ミッションケース17の側面にスペーサ144を介して固定ボルト143を螺着する。ミッションケース17の側面とピン締結部材141との間の固定ボルト143に、円筒形のスペーサ144が被嵌される。ミッションケース17の側面に固定ボルト143を介してピン締結部材141が固着される。したがって、締付けボルト142及び固定ボルト143を抜取り、ミッションケース17の側面からピン締結部材141を離脱させることによって、機体フレーム16がミッションケース17の側面から分離されることになる。
【0018】
図5は本実施形態におけるトラクタ1の油圧回路200を示している。トラクタ1の油圧回路200は、エンジン5の回転力により作動する作業機(昇降機構20)用の油圧ポンプ94と、走行用油圧ポンプ95とを備える。走行用油圧ポンプ95は、パワーステアリング油圧機構202を介して操縦ハンドル9によるパワーステアリング用の油圧シリンダ93に接続する一方、左右一対の後車輪4のためのブレーキ65用のブレーキシリンダ68をそれぞれ作動させる切換弁である左右ブレーキ電磁弁67a,67bに接続している。
【0019】
さらに走行用油圧ポンプ95は、PTOクラッチ100のためのPTOクラッチ油圧電磁弁(比例制御弁)104と、後述する主変速用油圧無段変速機29に対する比例制御弁203とそれによって作動する主変速切換弁204と、走行副変速用油圧シリンダ55を作動させる高速切換ソレノイド667付の高速クラッチ電磁弁666と、走行機体2の前進切換用油圧クラッチ40及び後進切換用油圧クラッチ42を作動させる前進用クラッチ電磁弁46及び後進用クラッチ電磁弁48と、前車輪3及び後車輪4を同時に駆動するための四駆用油圧クラッチ74に対する四駆油圧電磁弁80と、前車輪3を倍速駆動に切換えるための倍速用油圧クラッチ76に対する倍速油圧電磁弁82とに接続している。
【0020】
また、作業機用油圧ポンプ94は、作業機用昇降機構20における単動式の作業機用昇降油圧シリンダ205に作動油を供給するための昇降制御電磁弁201に接続している。即ち、昇降制御電磁弁201を切換え操作して、作業機用昇降油圧シリンダ205を作動することになる。作業機用昇降油圧シリンダ205の制御によってリフトアーム115を回動し、ロワーリンク21に連結した作業機を上昇又は下降させることになる。なお、作業機用油圧ポンプ94からは、油圧無段変速機29にチャージ油を供給している。また、油圧回路200には、リリーフ弁や流量調整弁、チェック弁、オイルクーラ、オイルフィルタ等を備えている。
【0021】
図6は後車輪4及び前車輪3等を駆動するエンジン5からの伝動機構(ミッションケース17)を示している。ミッションケース17の内部は、仕切り壁31にて前後に仕切られている。ミッションケース17の前側及び後側には、前側壁部材32及び後側壁部材33が着脱可能に固定されている。ミッションケース17は略四角箱形に構成され、ミッションケース17の内部には、前室34と後室35とが形成される。前室34と後室35は、これらの内部の作動油(潤滑油)が相互に移動するように連通されている。前側壁部材32には、後述する前車輪駆動ケース69が備えられる。前室34には、後述する走行副変速ギヤ機構30と、PTO変速ギヤ機構96とが配置される。後室35には、後述する走行主変速機構である油圧無段変速機29と、差動ギヤ機構58とが配置される。
【0022】
前記エンジン5の後側面にはエンジン出力軸24が後ろ向きに突出し、エンジン出力軸24にはフライホイール25を直結している。フライホイール25から後ろ向きに突出する主動軸26と、ミッションケース17の前面から前向きに突出する主変速入力軸27とは、両端に自在軸継手を備え且つ伸縮可能な動力伝達軸28を介して連結されている。前記エンジン5の回転動力を主変速入力軸27に伝達し、次いで、油圧無段変速機29と、走行副変速ギヤ機構30にて適宜変速して、差動ギヤ機構58を介して後車輪4にこの駆動力を伝達するように構成している。また、走行副変速ギヤ機構30にて適宜変速したエンジン5の回転を、前車輪駆動ケース69と前車軸ケース13の差動ギヤ機構86とを介して前車輪3に伝達するように構成している。
【0023】
図6、図7に示す如く、後室35の内部に設けられたインライン式油圧無段変速機29は、可変容量形の変速用油圧ポンプ500と、該油圧ポンプ500から吐出される高圧の作動油にて作動する定容量形の変速用油圧モータ501とを備える。主変速入力軸27には円筒形の主変速出力軸36を同心状に被嵌している。主変速入力軸27の後端側は、後側壁部材33に軸受にて回転自在に軸支される。前記仕切り壁31と後側壁部材33との間の主変速入力軸27には、油圧ポンプ500及び油圧モータ501のためのシリンダブロック505が被嵌される。なお、油圧ポンプ500は、主変速入力軸27の入力側と反対側のシリンダブロック505後部に配置される。油圧モータ501は、主変速入力軸27の入力側のシリンダブロック505前部に配置される。
【0024】
油圧無段変速機29から主変速出力を取出すための主変速出力ギヤ37が主変速出力軸36に設けられている。なお、主変速出力軸36の前端と後端とが前室34と後室35とにそれぞれ突出している。主変速出力軸36の中間は、玉軸受にて仕切り壁31に回転自在に軸支される。主変速出力軸36の前端部には、主変速出力ギヤ37が設けられる。主変速入力軸27の入力側(前端側)は、主変速出力軸36前端より前方に突出するように、ころ軸受を介して主変速出力軸36の軸孔に回転自在に軸支されている。
【0025】
図4に示す如く、前記油圧ポンプ500には、主変速入力軸27の軸線に対して傾斜角を変更可能なポンプ斜板509と、該ポンプ斜板509に連結するポンププランジャ506とを備える。ポンププランジャ506を出入自在に配置するための第1プランジャ孔507をシリンダブロック505に形成する。前記シリンダブロック505には、ポンププランジャ506と同数の第1スプール弁536が設けられる。また、第1スプール弁536を作動させるための第1ラジアル軸受538が、主変速入力軸27の軸線に対して一定の傾斜角で傾斜させて配置される。
【0026】
他方、前記油圧モータ501には、主変速入力軸27の軸線に対して傾斜角を一定に保つモータ斜板518と、モータ斜板518に連結するモータプランジャ515と、モータプランジャ515をシリンダブロック505に出入自在に配置する第2プランジャ孔516とが備えられる。前記シリンダブロック505には、モータプランジャ515と同数の第2スプール弁540が設けられる。また、第2スプール弁540を作動させるための第2ラジアル軸受542が、主変速入力軸27の軸線に対して一定の傾斜角で傾斜させて配置される。ポンププランジャ506と、それと同数のモータプランジャ515とは、シリンダブロック505の回転中心の同一円周上に交互に配列される。
【0027】
さらに、主変速入力軸27が挿入されるシリンダブロック505の軸孔には、輪溝形の第1油室530と、輪溝形の第2油室531とがそれぞれ形成される。シリンダブロック505には、この回転中心の同一円周上に略等間隔に配列する第1弁孔532と第2弁孔533とが形成される。第1弁孔532及び第2弁孔533は、第1油室530及び第2油室531とそれぞれ連通している。第1プランジャ孔507は第1油路535を介して第1弁孔532と連通され、第2プランジャ孔516は第2油路534を介して第2弁孔533と連通されている。
【0028】
第1弁孔532に挿入された第1スプール弁536は、シリンダブロック505の回転中心の同一円周上に略等間隔に配列される。第1弁孔532から背圧バネ力の弾圧にて突出した第1スプール弁536の先端が第1ラジアル軸受538の外輪側面に当接される。そして、シリンダブロック505の1回転で第1スプール弁536が1往復し、第1プランジャ孔507が、第1弁孔532と第1油路535とを介して第1油室530又は第2油室531に交互に連通されるように構成する。
【0029】
また、第2弁孔533に挿入された第2スプール弁540は、シリンダブロック505の回転中心の同一円周上に略等間隔に配列される。第2弁孔533から背圧バネ力の弾圧にて突出した第2スプール弁540の先端が第2ラジアル軸受542の外輪側面に当接される。そして、シリンダブロック505の1回転で第2スプール弁540が1往復し、第2プランジャ孔516が、第2弁孔533と第2油路534とを介し、第1油室530又は第2油室531に交互に連通されるように構成している。なお、上記した走行用油圧ポンプ95の作動油を第1油室530に補給する第1チャージ弁544と、走行用油圧ポンプ95の作動油を第2油室531に補給する第2チャージ弁545とが備えられている。
【0030】
さらに、前記ポンプ斜板509は、傾斜角調節支点555を介して後側壁部材33の取付け部に回動可能に配置される。ポンプ斜板509はその傾斜角が主変速入力軸27の軸線に対して調節自在となるように構成されている。主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509の傾斜角を変更する主変速操作用アクチュエータである主変速油圧シリンダ556を備える(図7参照)。主変速油圧シリンダ556にてポンプ斜板509の傾斜角が変更されて、無段変速機29の主変速動作が行われるように構成する。
【0031】
前記したインライン式油圧無段変速機29の主変速動作を以下に説明する。後述する変速比操作手段(変速ペダル)としての前進ペダル232又は後進ペダル233の踏み込み量に比例して作動する比例制御電磁弁203からの作動油で主変速切換弁204が作動して主変速油圧シリンダ556(図7参照)が制御され、主変速入力軸27の軸線に対して、油圧ポンプ500に設けられたポンプ斜板509の傾斜角が変更される。
【0032】
ポンプ斜板509の傾斜角が略零のときは、油圧ポンプ500からの吐出油圧力が略零に維持されて、油圧ポンプ500にて油圧モータ501が駆動されないので、主変速入力軸27に被嵌されたシリンダブロック505と、油圧モータ501に設けられたモータ斜板518とが同一方向に略同一回転数で回転し、主変速入力軸27と略同一回転数で主変速出力軸36が回転され、主変速入力軸27の回転速度が変更されることなく主変速出力ギヤ37に伝えられる。
【0033】
主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509を一方向(正の傾斜角)側に傾斜させたときには、シリンダブロック505と同一回転方向にモータ斜板518が駆動され、油圧モータ501を増速作動させ、主変速入力軸27より高い回転数で主変速出力軸36を回転させる。即ち、主変速入力軸27の回転数に油圧モータ501の回転数が加算されて、主変速出力ギヤ37に伝えられる。そのため、主変速入力軸27の回転数よりも高い回転数の範囲で、ポンプ斜板509の傾斜角(正の傾斜角)に比例して、主変速出力ギヤ37からの主変速出力(走行速度)が変更され、ポンプ斜板509の最大傾斜(正の傾斜角)で最高の走行速度(車速)になる。
【0034】
さらに、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509を他方向(負の傾斜角)側に傾斜させたときには、シリンダブロック505と逆の方向にモータ斜板518が回転され、油圧モータ501を減速(逆転)作動させ、主変速入力軸27より低い回転数で主変速出力軸36が回転され、主変速入力軸27の回転速度が減速されて主変速出力ギヤ37に伝えられる。即ち、主変速入力軸27の回転数に油圧モータ501の回転数が減算されて、主変速出力ギヤ37に伝えられる。そのため、主変速入力軸27の回転数よりも低い回転数の範囲で、ポンプ斜板509の傾斜角(負の傾斜角)に比例して、主変速出力ギヤ37からの変速出力(走行速度)が変更され、ポンプ斜板509の最大傾斜(負の傾斜角)で最低の走行速度(車速=零)になる。なお、実施形態では、ポンプ斜板509の負の傾斜角が略11度のとき、変速比が零(中立=停止状態)となる。また、正の傾斜角が略11度のとき、変速比が最大(最高速度)となるように設定されている。
【0035】
図6に示されるように、前記ミッションケース17の前室34には、走行機体2の前進と後進との切換を行うための前進ギヤ41及び後進ギヤ43と、低速と高速との切換を行うための走行副変速ギヤ機構30とが配置される。前進ギヤ41及び後進ギヤ43を介して前進と後進とを切換える構成について説明する。主変速出力ギヤ37が配置される前室34の内部には、走行カウンタ軸38と逆転軸39とが配設される。前記走行カウンタ軸38には、前進切換用の湿式多板型油圧クラッチ40にて連結される前進ギヤ41と、後進切換用の湿式多板型油圧クラッチ42にて連結される後進ギヤ43とが被嵌される。主変速出力ギヤ37に前進ギヤ41が噛合される。主変速出力ギヤ37には、逆転軸39に設けられた逆転ギヤ44を介して、後進ギヤ43が噛合される。なお、逆転軸39に設けられた回転検出ギヤ117には、主変速出力ギヤ37の回転を検出する電磁ピックアップ型の主変速出力軸回転センサ(図示省略)を対向させて設置する。
【0036】
そして、後述する前進ペダル232の踏込み操作により、前進クラッチ電磁弁46にて前進用クラッチシリンダ47が作動して前進切換用油圧クラッチ40が継続され、主変速出力ギヤ37と走行カウンタ軸38とが前進ギヤ41にて連結される。また、後述する後進ペダル233の踏込み操作により、後進クラッチ電磁弁48にて後進用クラッチシリンダ49が作動して後進切換用油圧クラッチ42が継続され、主変速出力ギヤ37と、走行カウンタ軸38とが、逆転軸39に設けられた逆転ギヤ44及び逆転出力ギヤ45と、後進ギヤ43とを介して連結される(図6参照)。なお、前進ペダル232及び後進ペダル233の両方を踏み込んでいない中立位置のときには、前進用及び後進用の各油圧クラッチ40,42のいずれも切断され、前車輪3及び後車輪4に対して出力される主変速出力ギヤ37からの走行駆動力が略零(主クラッチ切の状態)になるように構成している。
【0037】
次に、走行副変速ギヤ機構30を介して低速と高速とに切換えるための構成について説明する。図3に示されるように、前記ミッションケース17の前室34には、走行副変速ギヤ機構30と副変速軸50とが配置される。走行カウンタ軸38には、副変速用の低速ギヤ51及び高速ギヤ53を設ける一方、副変速軸50には、走行カウンタ軸38の入力側低速ギヤ51に噛み合う出力側低速ギヤ52と、走行カウンタ軸38の入力側高速ギヤ53に噛み合う出力側高速ギヤ54とを設けている。また、副変速軸50には、副変速油圧シリンダ55にて継断可能な低速クラッチ56及び高速クラッチ57を備える。そして、後述する副変速操作手段としての副変速切換スイッチ222の操作、またはエンジン5の回転数検出等により、副変速油圧シリンダ55の制御にて低速クラッチ56または高速クラッチ57が継続され、副変速軸50に低速ギヤ52または高速ギヤ54が連結され、副変速軸50から前車輪3及び後車輪4に対して走行駆動力が出力されるように構成している。
【0038】
前記副変速軸50の後端部は、仕切り壁31を貫通してミッションケース17の後室35内部にまで延びている(図6参照)。後室35の内部には、左右の後車輪4に走行駆動力を伝える差動ギヤ機構58が配置される。差動ギヤ機構58には、副変速軸50後端のピニオン59に噛合するリングギヤ60と、該リングギヤ60に設けられた差動ギヤケース61と、左右方向に延びる差動出力軸62とが備えられる。差動出力軸62がファイナルギヤ63等にて後車軸64に連結され、後車軸64の後車輪4を駆動する(図6参照)。また、左右の差動出力軸62には左右のブレーキ65がそれぞれ設置され、操縦コラム234後面側の一つのブレーキペダル230の基端側をブレーキペダル軸255に回動自在に連結する(図4、図9、図10参照)。ブレーキペダル230と左右ブレーキ65とは、左右一対のブレーキロッド250及びリンク機構251などを介して機械的に連結する。なお、ブレーキペダル230を制動位置に係止する駐車レバー(図示省略)等を備え、左右ブレーキ65を駐車ブレーキとして作動させる。一方、操縦ハンドル9の操舵角検出等により、左右ブレーキ電磁弁67a,67bにてブレーキシリンダ68が作動して、旋回内側のブレーキ65が自動的に制動作動する。
【0039】
次に、前後車輪3,4の二駆と四駆の切換え構成について説明する。図6に示されるように、ミッションケース17の前側壁部材32に設けられた前車輪駆動ケース69には、前車輪入力軸72と前車輪出力軸73とが備えられている。前車輪入力軸72は、動力伝達ギヤ70,71を介して副変速軸50と動力伝達可能に連結される。また、前車輪出力軸73には、四駆用油圧クラッチ74を介して前車輪出力軸73に連結される四駆ギヤ75と、倍速用油圧クラッチ76を介して前車輪出力軸73に連結される倍速ギヤ77とを被嵌する。四駆ギヤ75は前車輪入力軸72の入力側四駆ギヤ78と噛み合い、倍速ギヤ77は前車輪入力軸72の入力側倍速ギヤ79と噛み合っている。そして、二駆と四駆との切換レバー(図示省略)を四駆側に操作することにより、四駆油圧電磁弁80にて四駆クラッチシリンダ81が作動して四駆用油圧クラッチ74が継続され、前車輪入力軸72と前車輪出力軸73とが四駆ギヤ75にて連結され、後車輪4と共に前車輪3が駆動されるように構成する(図3参照)。
【0040】
次に、前車輪3の倍速駆動の切換え構成について説明する。操縦ハンドル9のUターン(圃場の枕地での方向転換)操作の検出により、倍速油圧電磁弁82にて倍速クラッチシリンダ83が作動して倍速用油圧クラッチ76が継続され、前車輪入力軸72と前車輪出力軸73とが倍速ギヤ77にて連結され、四駆ギヤ75にて前車輪3が駆動されるときの速度に比べて約2倍の高速度で前車輪3が駆動されるように構成する(図6参照)。なお、前車輪入力軸72のギヤ78の近傍箇所には、当該ギヤ78の回転を検出するための電磁ピックアップ型の車速センサ(図示省略)を設置する。
【0041】
次に、前車輪3の駆動構造について説明する。図6に示されるように、上述した前車軸ケース13から後ろ向きに突出する前車輪伝達軸84と、前記ミッションケース17の前面から前向きに突出する前車輪出力軸73との間を、前車輪3に動力伝達する前車輪駆動軸85を介して連結する。また、上述した前車軸ケース13の内部には、左右の前車輪3に走行駆動力を伝える差動ギヤ機構86が配置される。差動ギヤ機構86には、前車輪伝達軸84前端のピニオン87に噛合するリングギヤ88と、該リングギヤ88に設けられた差動ギヤケース89と、左右の差動出力軸90とが備えられる。差動出力軸90にはファイナルギヤ91等にて前車軸92が連結され、前車軸92に設けられた前車輪3が駆動されるように構成している。
【0042】
次に、PTO軸23の駆動速度を切換える(正転4段と逆転1段)ための構成について説明する。図6に示されるように、ミッションケース17の前室34には、エンジン5からの動力をPTO軸23に伝達するためのPTO変速ギヤ機構96と、エンジン5からの動力を各油圧ポンプ94,95に伝達するためのポンプ駆動軸97とが設けられている。PTO変速ギヤ機構96には、PTOカウンタ軸98と、PTO変速出力軸99とを備える。PTOカウンタ軸98には油圧式PTOクラッチ100を介してPTO入力ギヤ101が連結される。PTO入力ギヤ101には、前記主変速入力軸27の入力側ギヤ102と、ポンプ駆動軸97の出力側ギヤ103とが噛合され、主変速入力軸27にポンプ駆動軸97が連結される。そして、後述するPTOクラッチスイッチ223の操作又はPTOクラッチレバー(図示省略)の操作により、PTOクラッチ油圧電磁弁104(図5及び図6参照)にてPTOクラッチシリンダ105が作動して油圧式PTOクラッチ100が継続され、主変速入力軸27とPTOカウンタ軸98とがPTO入力ギヤ101にて連結される。
【0043】
また、前記PTO変速出力軸99には、PTO1速ギヤ106、PTO2速ギヤ107、PTO3速ギヤ108、PTO4速ギヤ109、及びPTO逆転ギヤ110が被嵌されている。前記各ギヤ106〜110をPTO変速出力軸99に択一的に連結するための変速シフタ111には、PTO変速レバー224(図8参照)に連結した変速アーム112が係合される。そして、PTO変速レバー224の変速操作により、1速〜4速及び逆転の各PTO変速出力が、PTO変速出力軸99からPTO軸23にPTO伝動ギヤ113,114を介して伝達されるように構成されている(図6参照)。
【0044】
次に、図6及び図7を参照して、走行副変速ギヤ機構30の変速構造について詳述する。図7に示す如く、副変速油圧シリンダ55には、ピストン660の片側のピストンロッド661が内設される第1シリンダ室662と、他方の第2シリンダ室663とが形成される。ピストン660先端のシフトアーム664によって低速クラッチ56又は高速クラッチ57を継続し、副変速軸50を低速又は高速で駆動するように構成する。第1シリンダ室662は、走行用油圧ポンプ95の吐出側に直接連通する。第2シリンダ室663は、高速クラッチ電磁弁666を介して、走行用油圧ポンプ95の吐出側に連通する。高速クラッチ電磁弁666を変速ソレノイド667によって切換え、高速クラッチ57を継続して副変速軸50を高速駆動するように構成する(図5参照)。
【0045】
次に、図8及び図9を参照して、キャビン7の内部の構造を説明する。図8及び図9に示すように、キャビン7内の操縦座席8の前方にステップ床板235を配置する。そのステップ床板235上の操縦コラム234上面側に操縦ハンドル9を配置する。操縦コラム234の右側面側には、エンジン5の回転数を調節するスロットルレバー206と、エンジン5のアクセル機構に前進ペダル232及び後進ペダル233を連結するアクセル連結レバー127と、前進ペダル232及び後進ペダル233を略一定姿勢に維持するペダルロックレバー128とが配置されている。また、操縦コラム234の右側の下方には、ブレーキペダル230と、前進ペダル232及び後進ペダル233とが並列状に配置されている。キャビン7左側のフェンダ126(操縦座席8の左側)には、PTO変速レバー224を配置する。操縦座席8の左側には、差動ギヤ機構58をロックするデフロックペダル225を配置する。キャビン7右側のフェンダ126(操縦座席8の右側)には、昇降機構20を作動操作するための作業機昇降レバー259を配置する。
【0046】
図9に示されるように、操縦座席8の右側の合成樹脂製の右側アームレスト8aの前端側には、合成樹脂成形加工により、ダイヤル設置台121を一体的に形成している。ダイヤル設置台121には、車速設定ダイヤル211と、副変速切換スイッチ222と、PTOクラッチスイッチ223とが配置されている。操縦座席8に座ったオペレータが右手を右側アームレスト8aに載せ、車速設定ダイヤル211又は副変速切換スイッチ222又はPTOクラッチスイッチ223を、オペレータが右手で操作することになる。
【0047】
図7に示されるように、開閉可能な上面蓋123で上面側を閉鎖した右側アームレスト8aの内部には、作業機姿勢コントローラ122を配置する。作業機姿勢コントローラ122には、ロータリ耕耘作業機(図示省略)の左右方向の傾きを調節する傾きダイヤル124と、ロータリ耕耘作業機の耕耘爪(図示省略)の耕耘深さを調節する耕深ダイヤル125等とが配置されている。傾きダイヤル124または耕深ダイヤル125等を、操縦座席8に座ったオペレータが右手で操作することになる。なお、ロータリ耕耘作業機は、ロワーリンク21及びトップリンク22を介して連結される。また、操縦座席8の右側アームレスト8a及び左側アームレスト8bは、それらの後端側の回動支軸120を中心に前端側を持上げ(略水平姿勢から略垂直姿勢に移行)可能に設けられている。
【0048】
図10に示されるように、操縦コラム234に設けたコラムフレーム129には、上述したブレーキペダル軸255を回動可能に軸支する。ブレーキペダル軸255に、ブレーキペダル230の基端側を連結する。また、ブレーキペダル軸255には、前進ペダル232及び後進ペダル233の基端側を回動可能に被嵌する。ブレーキペダル230の踏み板と、前進ペダル232及び後進ペダル233の踏み板とは、ブレーキペダル軸255を中心に、ステップ床板235の上面にて、初期(中立)位置から斜め下方に踏み込み作動可能に装着されている。
【0049】
コラムフレーム129には、前進ペダル232及び後進ペダル233の踏み込み操作量を検出する変速センサとしての変速ポテンショ220を備える。前進ペダル232及び後進ペダル233に、伝達リンク機構275を介して変速ポテンショ220を連結する。前進ペダル232及び後進ペダル233のペダル踏み込み量が、伝達リンク機構275を介して変速ポテンショ220に伝わった場合、変速ポテンショ220の検出値に基づき、比例制御弁203が作動する。比例制御弁203によって主変速切換弁を切換え、主変速油圧シリンダ556を作動する。主変速油圧シリンダ556によってポンプ斜板509の傾斜角度を変更し、主変速出力軸36の回転数を切換えることになる。
【0050】
図3、図4、図10に示されるように、ステップ床板235の前方の左右の機体フレーム16に左右のブレーキ操作軸130をそれぞれ配置する。左右の機体フレーム16の外側面に突出した左右のブレーキ操作軸130の外側端部に左右のブレーキ操作ボス体131を回動可能にそれぞれ被嵌する。ブレーキペダル軸255のペダル軸アーム132と、左右のブレーキ操作ボス体131の前向きアーム133とに、連結軸135,136を介して、左右のブレーキリンク機構251としてのリンクロッド134の両端側をそれぞれ連結する。左右のブレーキ操作ボス体131の下向きアーム137に、連結軸138を介して、左右のブレーキロッド250の前端側をそれぞれ連結する。
【0051】
また、ミッションケース17の左右の外側面には、左右のブレーキ65を作動するための左右のブレーキレバー252を配置する(図12参照)。左右のブレーキレバー252に、融通機構としての長孔253及びピン軸体254を介して、左右のブレーキロッド250の後端側をそれぞれ連結している(図19参照)。即ち、ブレーキペダル230を踏み込むことによって、左右のリンクロッド134を介して左右のブレーキロッド250が略同時に引張られる。したがって、左右のブレーキロッド250を介して左右のブレーキ65が略同時に作動し、左右の後車輪4を制動することになる。なお、ブレーキロッド250が、制動方向(ペダル230操作で前方に移動する方向)に対して、逆の方向(後方に移動する方向)に押された場合、換言すると、略一定位置のブレーキロッド250に対してブレーキレバー252が前方に移動した場合、長孔253内でピン軸体254が移動する。即ち、ブレーキレバー252が前方移動しても、ブレーキロッド250に前方への押し操作力が働かないから、ブレーキレバー252の前方移動によってブレーキロッド250等が変形損傷するのを防止できる。
【0052】
次に、図3、図4、図13乃至図18を参照して、エンジン5及びボンネット6の取付け構造について詳述する。図3、図4、図16に示す如く、ステップ床板235の前方の左右の機体フレーム16にエンジン支持フレーム145の左右両端側をボルト146にて締結する。エンジン5の後面側に左右の後部防振ゴム147を介してエンジン支持フレーム145の上端側を連結する。エンジン5の左右側面の前部に、左右の前部防振ゴム148を介して、エンジンフレーム14の左右両側部を連結する。左右の前部防振ゴム148と、左右の後部防振ゴム147とによって、エンジン5が走行機体1に支持されることになる。
【0053】
一方、図13、図14に示す如く、ボンネット6の前部の下側にフロントグリル6aを一体的に連結する。エンジンフレーム14に支持した左右のエンジンカバー149と、ボンネット6とによって、エンジン5の左右及び前方及び上方を覆うことになる。フロントグリル6aの下端側を係脱可能に係止するためのボンネットロック機構151を備え、フロントグリル6aの下方のエンジンフレーム14にボンネットロック機構151を配置する。ボンネットロック機構151によって、エンジン5の前方及び上方を覆う姿勢で、ボンネット6を支持することになる。なお、エンジン5の前方に配置したバッテリ226及びラジエータ227等のエンジン付設部品は、ボンネット6及びフロントグリル6aによって覆われる(図15、図16参照)。また、図17、図18にも示されるように、ボンネット6の後部の内側にボンネット開閉支点軸150を配置する。ボンネットロック機構151を離脱操作し、且つボンネット6の前部を上方に持上げ操作することによって、ボンネット6の後部のボンネット開閉支点軸150回りに、ボンネット6の前部を上方に移動して、エンジン5の前方及び上方を大きく開放することになる。
【0054】
図14、図17、図18に示す如く、エンジン支持フレーム145の上端側に、門形状のボンネット支持フレーム152の両側部の下端側をボルト153にて締結する。ボンネット支持フレーム152の横パイプ部152aの上面に左右一対の開閉ガイドフレーム154を一体的に起立させる。横パイプ部152aの上面に開閉ガイドフレーム154の下端側を熔接にて固着する。
【0055】
図18に示されるように、開閉ガイドフレーム154の下端側に前後動支点軸155を貫通する。開閉ガイドフレーム154の上端側には、前後動支点軸155を中心とする円周上に、円弧状のガイド孔156を形成する。ガイド孔156に前後動ガイド軸157を移動可能に貫通する。また、開閉ガイドフレーム154の上端側に前方移動規制軸158を貫通する。
【0056】
図14、図18に示されるように、前後動支点軸155に開閉支点フレーム159の下端側を回動可能に被嵌する。開閉支点フレーム159に前後動ガイド軸157を貫通する。開閉支点フレーム159と前後動ガイド軸157とが、前後動支点軸155回りに一体的に移動するように構成している。また、前後動支点軸155回りに開閉支点フレーム159が前方に移動することによって、前方移動規制軸158に開閉支点フレーム159の前面が当接し、開閉支点フレーム159が前方に移動するのを阻止するように構成している。
【0057】
図17、図18に示されるように、前後動ガイド軸157に、ボンネット6の前方移動を阻止するためのロック機構としてのフックレバー160の一端側を回動可能に被嵌する。フックレバー160の他端側には、前方移動規制軸158に係脱可能に嵌着する係合ノッチ160aと、前方移動規制軸158との係合を解除する離脱操作部160bとを形成している。前方移動規制軸158に係合ノッチ160aを係止することによって、開閉支点フレーム159が略直立した姿勢になる。また、離脱操作部160bを握ってフックレバー160を持上げて、前方移動規制軸158から係合ノッチ160aを離脱することによって、開閉支点フレーム159が前方に傾倒した姿勢になる。即ち、開閉支点フレーム159は、図17に示す略直立した姿勢、又は図18に示す前方に傾倒した姿勢で、前後動支点軸155に支持されることになる。
【0058】
また、開閉支点フレーム159が前方に傾倒した姿勢(図18)のときに、前方移動規制軸158上にフックレバー160の下端側が自重力によって移動可能に当接する。即ち、前方に傾倒した姿勢(図18)から略直立した姿勢(図17)に開閉支点フレーム159を戻すことによって、前方移動規制軸158に係合ノッチ160aが係止されることになる。
【0059】
図14、図17、図18に示されるように、ボンネット6の後端側に固着したボンネット側ヒンジ171と、開閉支点フレーム159の上端側にボルト172にて締結したフレーム側ヒンジ173とを、ボンネット開閉支点軸150によって回動可能に連結する。即ち、蝶番形状の各ヒンジ171,173及びボンネット開閉支点軸150を介して、開閉支点フレーム159の上端側にボンネット6の後端側を回動可能に連結する。したがって、ボンネット6がボンネット開閉支点軸150回りに開動した位置又は閉動した位置のいずれに支持されていても、ボンネットロック機構151のロックが解除された状態で、ボンネット開閉支点軸150回りに開閉動(回動)するボンネット6を、前後動支点軸155回りに移動することによって、ボンネット6の後方のキャビン7の前面に対して、ボンネット6の後端を離反させたり、接近させることができる。
【0060】
図14、図17、図18に示されるように、開閉支点フレーム159の前面から前方に向けて突出させるボンネット台161と、ボンネット6の前後幅中間の内面側に固着するボンネットフレーム162と、折り畳み軸163を介して一方向に折り畳み可能に連結する突っ張り用基部リンク164及び先端リンク165とを備える。即ち、基部リンク164及び先端リンク165によって、ボンネット6を開動位置に保持する突っ張り機構174を形成する。ボンネット台161に基部リンク164を基部連結軸166にて回動可能に連結する。ボンネットフレーム162に先端リンク165を先端連結軸167にて回動可能に連結する。即ち、ボンネット6の前部を上方に持上げることによって、突っ張り用基部リンク164及び先端リンク165が展開され、基部リンク164及び先端リンク165の突っ張り作用によって、ボンネット6が開動した位置に支持され、エンジンルーム54の上面側及び前方が開放されることになる。
【0061】
図14、図17、図18に示されるように、前方移動規制軸158に固着したバネ受アーム168と、ボンネット台161に固着したバネ受軸169と、バネ受アーム168及びバネ受軸169に両端側を連結する復動バネとしての引張バネ170とを備える。即ち、開閉支点フレーム159が、図18に示す前方に傾倒した姿勢から図17に示す略直立した姿勢に戻る方向に、開閉支点フレーム159に引張バネ170の圧縮力を作用させて、前方に移動したボンネット6を後方に戻す復動操作力が引張バネ170力によって軽減されるように構成している。なお、前方に移動したボンネット6が後方に戻る荷重に比べて、引張バネ170の圧縮力を小さく形成し、前方に移動したボンネット6が引張バネ170力だけで後方に戻るのを防止している。
【0062】
上記の構成により、エンジンフレーム14にボンネットロック機構151を介してフロントグリル6aの下端側を係止し、図17に実線で示す閉位置にボンネット6を支持することによって、ボンネット6によってエンジン5の上方及び前方が覆われる。その場合、前方移動規制軸158に係合ノッチ160aが係止されて、フックレバー160によって開閉支点フレーム159が略直立した姿勢に支持される。その状態で、作業者が、ボンネットロック機構151のロックを解除操作して、ボンネット6の前部を持上げることによって、ボンネット開閉支点軸150回りにボンネット6を開動させ、エンジン5のメンテナンス作業等を実行できる。また、前後動支点軸155回りに開閉支点フレーム159を回動することによって、ボンネット6を前方又は後方に移動して、ボンネット6の後方のキャビン7の前面に対して、ボンネット6の後端を離反させたり、接近させることができる。
【0063】
次に、図4、図10、図12、図14、図17乃至図21を参照して、キャビン7の取付け構造と、パワーステアリング油圧機構202等の油圧操舵装置について詳述する。図19に示す如く、操縦コラム234に、ハンドルフレーム175を介してハンドルポスト176を配置する。ハンドルポスト176にハンドル軸177を貫通させる。ハンドル軸177の上端部に操縦ハンドル9を組付けている。また、図14に示す如く、左右の機体フレーム16間にパワーステアリングフレーム178を掛け渡す。パワーステアリングフレーム178にパワーステアリング油圧機構202をボルトにて締結する。パワーステアリング油圧機構202の上面から上方にパワーステアリング入力軸179を突出させる。自在継ぎ手180,181を有する操舵軸182を介して、ハンドル軸177の下端側にパワーステアリング入力軸179を連結する。
【0064】
したがって、運転座席15に座ったオペレータが操向ハンドル10を回動操作することにより、その操作量(回動量)に応じてパワーステアリング油圧機構202が作動し、パワーステアリング用油圧シリンダ93が駆動され、左右の前車輪5の舵取り角(操向角度)が変更されることになる。また、左右の機体フレーム16に設けたブレーキ操作軸130の軸芯線上に、自在継ぎ手181の継ぎ軸体181a(パワーステアリング入力軸179と操舵軸182との折れ曲げ可能な連結部)を配置している(図14参照)。なお、パワーステアリング油圧機構202は、パワーステアリング用の油圧式トルクジエネレータ等を有する。操向ハンドル9のの操作量(回動量)に応じてパワーステアリング用の油圧式トルクジエネレータが作動し、左右の前車輪5の舵取り角(操向角度)が変わるように構成されている。
【0065】
図14、図17に示されるように、左右の機体フレーム16に左右のブレーキ操作軸130を貫通させる。左右の機体フレーム16の外側面に左右のブレーキ操作軸130の外側端部を突出させる。その左右のブレーキ操作軸130の外側端部に左右のブレーキ操作ボス体131を回動可能に被嵌する。一方、左右の機体フレーム16の内側面に左右のブレーキ操作軸130の内側端部を突出させる。その左右のブレーキ操作軸130の内側端部にキャビン支持体183を回動可能に被嵌する。
【0066】
図14、図17に示されるように、キャビン7のステップ床板235の前端部にキャビン回動ブラケット184を熔接にて固着する。キャビン支持体183の上面にこの上方からキャビン回動ブラケット184の底面を当接し、キャビン支持体183にキャビン回動ブラケット184をボルト185にて締結する。したがって、ブレーキ操作軸130回りにキャビン7が回動することになる。
【0067】
図19乃至図21に示されるように、キャビン7の底部には、前後方向に延設する左右のキャビンフレーム186を配置する。左右のキャビンフレーム186の前半部にステップ床板235を熔接にて固着する。左右のキャビンフレーム186の後半部には、操縦座席8を載置するキャビン底板187を熔接にて固着する。左右のキャビンフレーム186と、ステップ床板235と、キャビン底板187とが、単一部品としてモノコック構造に一体的に構成されている。左右のキャビンフレーム186の後端部に左右の後部支持フレーム188を熔接にて固着する。キャビンフレーム186と後部支持フレーム188の上端側とにフェンダ126を連結している。
【0068】
また、キャビンフレーム186と後部支持フレーム188の下端側とに後部取付フレーム189を熔接にて固着する。後部取付フレーム189の下面に後部取付台190を熔接にて固着する。後車軸ケース18上面のキャビン取付部18aに上方から後部取付台190を当接し、キャビン取付部18aに後部取付台190をボルト191にて締結する。ブレーキ操作軸130と後車軸ケース18とによってキャビン7の前部と後部が走行機体1に連結され、ミッションケース17及び作業機昇降機構20等の上面側が、キャビン底板187によって覆われることになる。
【0069】
次に、図12、図19乃至図21を参照して、キャビン7の後部を上方に持上げるキャビン7の回動構造について詳述する。図12、図19に示す如く、リフトアーム115に着脱可能に連結する突上げ体192を備える。キャビン底板187の下面に突起状の当接体193を配置する。突上げ体192は、リフトアーム115の先端側に着脱可能に貫通した連結軸194に被嵌する基端筒192aと、キャビン底板187の下面と当接体193とによって形成された後方下向き形状の凹部195に後方下方から当接させる丸棒形状の先端棒192bと、基端筒192aと先端棒192bとに熔接にて一体的に固着する丸棒形状の支持アーム192cとを有する。即ち、基端筒192aに支持アーム192cの一端側を熔接にて一体的に固着し、支持アーム192cの他端側に先端棒192bを略T字型に熔接にて一体的に固着し、突上げ体192を形成することになる。
【0070】
次に、図18乃至図21を参照して、キャビン7の後部を上方に持上げるキャビン7の回動構造について詳述する。キャビン7の後部を上方に持上げる場合、図18に示す如く、先ず、ボンネット6の前部を上方に持上げてボンネット6を開動し、前後移動規制軸158からフックレバー160を外す。そして、前後動支点軸155回りに開閉支点フレーム159を回動し、ボンネット6を前方に移動して、ボンネット6の後方のキャビン7の前面に対して、ボンネット6の後端を離反させる。一方、ボルト191を螺脱して、キャビン取付部18aと後部取付台190との締結を解除する。また、リフトアーム115の連結軸194を抜出して、リフトアーム115から図1に示すリフトロッド116を取外す。その後、基端筒192aに連結軸194を差し込みながらリフトアーム115に連結軸194を貫通させ、リフトアーム115に連結軸194を介して突上げ体192を連結する。なお、キャビン底板187に当接体193を介して突上げ体192を当接させる操作で、当接体193によって補強されたキャビン底板187に突上げ体192が連結される。キャビン7を上方に持上げる場合、キャビン支持体183を中心とする当接体193の回動軌跡の接線方向に突上げ体192の支持アーム192cが延長された状態で、突上げ体192がリフトアーム115に支持される。
【0071】
そして、作業機昇降機構20の作業機用昇降油圧シリンダ205を作動し、リフトアーム115を上昇方向に若干だけ回動させる。連結軸194回りに当接体193を回動操作し、図19に示す如く、当接体193に先端棒192bを当接させる。その状態で、作業機昇降機構20の作業機用昇降油圧シリンダ205を再び作動し、リフトアーム115を上昇方向にさらに回動させる。その結果、図20に示す如く、作業機昇降機構20の上面から離反するように、ブレーキ操作軸130(キャビン支持体183)回りにキャビン7が回動し、キャビン7の後部が上方に持上げられる。そのようにキャビン7の後部が上方に持上げられた状態では、ミッションケース17及び作業機昇降機構20が機体フレーム16に連結された姿勢で、ミッションケース17及び作業機昇降機構20等の上面側のメンテナンス作業又は修理作業等が実行される。
【0072】
また、ブレーキ操作軸130回りにキャビン7が回動してキャビン7の後部が上動することによって、ブレーキ操作軸130回りにブレーキペダル軸255が回動して前方に移動する。即ち、キャビン7の回動によってブレーキペダル軸255が回動して、ブレーキロッド250が後方に押されて移動する。そのブレーキロッド250の後方移動によってピン軸体254が長孔253内を移動する。そのため、キャビン7の回動によってブレーキロッド250が後方に移動しても、ブレーキレバー252は略一定位置に保持されて、ブレーキ65によって後車輪4が制動されない。後車輪4の制動が解除された状態が維持される。例えば手押し操作等によって後車輪4を転動できる。なお、キャビン7が回動する場合、作業機昇降レバー259等がフェンダ126と干渉しないように、作業機昇降レバー259等を貫通させるための長孔(図示省略)を、フェンダ126に形成している。そのため、作業機昇降レバー259等を取外すことなく、キャビン7の後部を上方に移動できる。
【0073】
一方、図20及び図21に示されるように、キャビン7の後部が上方に持上げられた姿勢でキャビン7を支持するキャビン支持スタンド195と、キャビン支持体183と後車軸ケース18との間のキャビンフレーム186に配置するスタンド固定具196とを備える。そして、ミッションケース17及び作業機昇降機構20等を機体フレーム16から分離して、それらのメンテナンス又は修理を実行する場合、上述と同様に、図20に示すように、キャビン7の後部を上方に持上げた状態で、スタンド固定具196にキャビン支持スタンド195の上端側を係止する。その後、作業機昇降機構20の作業機用昇降油圧シリンダ205を制御してリフトアーム115を下降方向に回動させ、当接体193から先端棒192bを離反させる。その状態で、締付ボルト142及び固定ボルト143を螺脱して、ピン締結部材を取外し、機体フレーム16からミッションケース17を分離する。そして、後車輪4を転動させながら、台車(図示省略)等にて下面側が支持されたミッションケース17を後方に移動させ、ミッションケース17及び作業機昇降機構20等のメンテナンス作業又は修理作業を実行する。
【0074】
なお、上述のようにミッションケース17を後方に移動させた場合、主変速入力軸27が動力伝達軸28からそれらの自在継ぎ手部で分離する。また、前車輪出力力軸73が前車輪駆動軸85からそれらの自在継ぎ手部で分離する。一方、ミッションケース17及び作業機昇降機構20等を組付ける場合、上述と逆の手順で作業するもので、ミッションケース17を前方に移動させて機体フレーム16に連結し、作業機昇降機構20の作業機用昇降油圧シリンダ205を制御して、キャビン支持スタンド195を取外し、且つキャビン7の後部を下降して後車軸ケース18に連結し、ミッションケース17及びキャビン7等の組立を完了する。
【0075】
上記の記載及び図17、図19乃至図21から明らかなように、エンジン5を搭載した走行機体2と、オペレータ座乗用の操縦座席8及び操縦ハンドル9等を有するキャビン7と、走行機体2に作業部を連結するリンク機構としてのロワリンク21と、該ロワリンク21に連結した作業部を地上に持上げる油圧昇降機構としての作業機用昇降機構20と、作業機用昇降機構20のリフトアーム115とロワリンク21とを着脱可能に連結するリフトロッド116とを備え、キャビン7の前部の下端部にキャビン支持体183を配置し、キャビン7の後部の下方に作業機用昇降機構20を配置し、キャビン支持体183回りに前記キャビン7を回動することによって、作業機用昇降機構20の上面側を開放するように構成してなるキャビン付作業車両において、キャビン7に下方から当接させる突上げ体192を備え、リフトロッドを取外したリフトアーム115に、突上げ体192を着脱可能に連結するように構成したものであるから、走行機体2に載置した前記キャビン7の底部に、リフトアーム115に連結した突上げ体192を当接させる簡単な操作で、キャビン7に突上げ体192を連結できる。即ち、ロワリンク21の構造等によって突上げ体192の構造が制限されないから、キャビン7の構造、又は突上げ体192の構造を簡単に構成できる。したがって、キャビン7を上方に持上げる場合、キャビン7に突上げ体192を介してリフトアーム115を簡単に連結できる。
【0076】
上記の記載及び図19乃至図21から明らかなように、キャビン7の底部に配置したキャビン底板187の下面から下方に向けて当接体193を突出し、下降姿勢のリフトアーム115に連結した突上げ体192の先端側が当接体193に接離可能に当接するように構成したものであるから、キャビン底板187に当接体193を介して突上げ体192を当接させる操作で、当接体193によって補強されたキャビン底板187に突上げ体192を簡単に連結できる。また、キャビン7を上方に持上げる場合、キャビン支持体183を中心とする当接体193の回動軌跡の接線方向に突上げ体192を延長できるから、簡単な構造の突上げ体192によってキャビン7を支持できる。
【0077】
上記の記載及び図19乃至図21から明らかなように、地上に立脚させるキャビン支持スタンド195を備え、キャビン支持体183から走行機体2の後車軸ケース18の上方に向けてキャビン7のキャビンフレーム186を延長し、キャビン支持体183と後車軸ケース18との間のキャビンフレーム186にスタンド固定具196を配置し、後車軸ケース18より前方のキャビンフレーム186にスタンド固定具196を介してキャビン支持スタンド195を着脱可能に連結するように構成したものであるから、地上にキャビン支持スタンド195を立脚させて、走行機体2の上方に持上げたキャビン7をキャビン支持スタンド195にて支持することによって、走行機体2の後部の上面側を大きく開放できる。そのため、走行機体2の後方側に、作業機用昇降機構20又はミッションケース17等の走行機体2の後半部を簡単に取出すことができる。即ち、キャビン7を走行機体2から取外すことなく、走行機体2の後半部のメンテナンス作業又は分解組立作業等を簡単に実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】農作業用のトラクタの側面図である。
【図2】トラクタの斜め後方斜視図である。
【図3】走行機体の側面説明図である。
【図4】走行機体の平面説明図である。
【図5】トラクタ全体における油圧回路図である。
【図6】動力伝達のスケルトン図である。
【図7】無段変速機の油圧回路図である。
【図8】トラクタのキャビンを示す平面図である。
【図9】ペダル等の運転操作機構の配置を示す平面図である。
【図10】ブレーキペダル等の取付構造を示す側面図である。
【図11】ミッションケースの外観の側面図である。
【図12】ミッションケースの外観の平面図である。
【図13】ボンネット及びキャビンの取付構造を示す側面図である。
【図14】ボンネット及びキャビンの取付構造を示す背面図である。
【図15】ボンネットの取付構造を示す側面図である。
【図16】ボンネットを前方に移動した説明図である。
【図17】図15の拡大側面図である。
【図18】図16の拡大側面図である。
【図19】キャビンの取付構造を示す側面図である。
【図20】キャビンの後部を持上げた説明図である。
【図21】ミッションケースを取外した説明図である。
【符号の説明】
【0079】
2 走行機体
5 エンジン
7 キャビン
8 操縦座席
9 操縦ハンドル
18 後車軸ケース
20 作業機用昇降機構(油圧昇降機構)
21 ロワーリンク(リンク機構)
115 リフトアーム
116 リフトロッド
183 キャビン支持体
186 キャビンフレーム
187 キャビン底板
192 突上げ体
193 当接体
195 キャビン支持スタンド
196 スタンド固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載した走行機体と、オペレータ座乗用の操縦座席及び操縦ハンドル等を有するキャビンと、前記走行機体に作業部を連結するリンク機構と、前記リンク機構に連結した作業部を地上に持上げる油圧昇降機構と、前記油圧昇降機構のリフトアームと前記リンク機構とを着脱可能に連結するリフトロッドとを備え、前記キャビンの前部の下端部にキャビン支持体を配置し、前記キャビンの後部の下方に前記油圧昇降機構を配置し、前記キャビン支持体回りに前記キャビンを回動することによって、前記油圧昇降機構の上面側を開放するように構成してなるキャビン付作業車両において、
前記キャビンに下方から当接させる突上げ体を備え、前記リフトロッドを取外した前記リフトアームに、前記突上げ体を着脱可能に連結するように構成したことを特徴とするキャビン付作業車両。
【請求項2】
前記キャビンの底部に配置したキャビン底板の下面から下方に向けて当接体を突出し、下降姿勢の前記リフトアームに連結した前記突上げ体の先端側が前記当接体に接離可能に当接するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のキャビン付作業車両。
【請求項3】
前記キャビン支持体から前記走行機体の後車軸ケースの上方に向けて前記キャビンのキャビンフレームを延長し、前記キャビン支持体と前記後車軸ケースとの間の前記キャビンフレームにスタンド固定具を配置し、前記後車軸ケースより前方の前記キャビンフレームに前記スタンド固定具を介してキャビン支持スタンドを着脱可能に連結するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のキャビン付作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−105538(P2008−105538A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289748(P2006−289748)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】