説明

キャビン

【課題】運転席の下方配置したエアコン本体と運転席の前方側に配置した上下方向に延びる送風ダクトの下端とを接続する中継ダクトを備えたキャビンにおいて、該キャビンの下方側の点検を容易に行えるようにする。
【解決手段】運転席34の前側の床面を構成するフロントフロア36の左右方向中央側に点検口40を開設すると共に該点検口40を塞ぐ点検口閉鎖プレート39を設け、この点検口閉鎖プレート39の下方に中継ダクト69を配置し、点検口閉鎖プレート39をキャビン8室内側から着脱自在とすると共に中継ダクト69を前記点検口40を介してキャビン8室内側に取外し可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の車両に搭載されるキャビンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタの車体に搭載されるキャビンの室内に設けた運転席の下方にエアコン本体を設けたものが、特許文献1にて開示されている。
この特許文献1に記載のキャビンにあっては、運転席の前方側に上下方向に延びる送風ダクトを設け、エアコン本体の空調空気の吹出し口と送風ダクトの下端側接続口とを中継ダクトで接続し、エアコン本体から吹き出された空調空気を中継ダクト、送風ダクトを介して、運転席の前方側に設けた室内吹出口に送り、該室内吹出口から空調空気をキャビンの室内へと供給するようにしている。
【0003】
前記中継ダクトは、運転席の前側の床面を構成するフロントフロアの上側を通して且つフロントフロアの左右方向中央側を通して、エアコン本体から送風ダクトへと配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−199214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のキャビンにあっては、中継ダクトがフロントフロアの上側で且つフロントフロアの左右方向中央側にあり、フロントフロアには、キャビンの下方側のトラクタの車体を点検するための点検口が形成されていないものであった。
それ故、従来のトラクタにあっては、車体を点検するのに、キャビンを吊り上げて車体の点検をしており、点検作業が大変であった。
【0006】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、キャビンの下方側の点検が容易に行えるキャビンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、キャビンの室内に配置された運転席の下方にエアコン本体を収容するエアコン本体収容室を設けると共に該運転席の前方側に上下方向に延びる送風ダクトを設け、前記エアコン本体の空調空気の吹出し口と前記送風ダクトの下端側とを接続する中継ダクトを設けたキャビンにおいて、
運転席の前側の床面を構成するフロントフロアの左右方向中央側に点検口を開設すると共に該点検口を塞ぐ点検口閉鎖プレートを設け、この点検口閉鎖プレートの下方に前記中継ダクトを配置し、
前記点検口閉鎖プレートをキャビン室内側から着脱自在とすると共に前記中継ダクトを前記点検口を介してキャビン室内側に取外し可能としたことを特徴とする。
【0008】
また、前記エアコン本体の空調空気の吹出し口を前方に向けて開口状として該エアコン本体の前面側に設け、前記送風ダクトの下端側接続口を下方に向けて開口状とし、
前記エアコン本体の吹出し口に中継ダクトの後端側接続口を前方側から接続可能とすると共に、中継ダクトの後端側接続口をエアコン本体の吹出し口に接続したままで中継ダクトの前端側接続口を送風ダクトの下端側接続口に下方から接続可能とするのがよい。
【0009】
また、前記エアコン本体収容室の前面下部に中継ダクトの後端側接続口をエアコン本体収容室内に挿入するためのダクト挿入口を設け、エアコン本体収容室の前面上部にエアコン本体収容室の前面の一部を構成する前カバープレートを着脱自在に設けるのがよい。
また、前記前カバープレートを取り外すことで開放される開口部が前記ダクト挿入口と連続状とされているのがよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、点検口閉鎖プレートを取り外して点検口を開放し、その後、点検口を介して中継ダクトを取り外すことにより、キャビンの下方側の点検が行え、また、これら点検口閉鎖プレート及び中継ダクトの取外しはキャビン室内側から行えるので、キャビンの下方側の点検が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】要部の側面図である。
【図2】キャビン付トラクタの側面図である。
【図3】キャビンフレーム等を左前側から見た斜視図である。
【図4】キャビンフレーム等を左後側から見た斜視図である。
【図5】要部の斜視図である。
【図6】要部の斜視図である。
【図7】要部の斜視図である。
【図8】要部の斜視図である。
【図9】中継ダクトの接続状態を示す側面断面図である。
【図10】エアコン本体の斜視図である。
【図11】送風ダクトの斜視図である。
【図12】中継ダクトの斜視図である。
【図13】エアコン本体収容室の前部の側面断面図である。
【図14】要部の図である。
【図15】エアコン本体収容室の背面斜視図である。
【図16】ダクト挿入口周囲の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図2において、1はキャビン付きトラクタ(車両)であり、このトラクタ1の車体2は、エンジン3の後方にフライホイールハウジング4、クラッチハウジング及びミッションケース等からなる伝動ケース5を順次連結してなる。
この車体2は左右一対の前後輪6,7によって走行可能に支持され、該車体2の後部側にキャビン8が搭載されている。
【0013】
このトラクタ1には、キャビン8の室内の空気調節を行うエアコン(エアーコンディショナー)が装備されている。該エアコンは、冷房装置と暖房装置とを備えている。
冷房装置は、例えば、冷媒を圧縮するコンプレッサーと、このコンプレッサーで圧縮された冷媒を放熱させながら凝縮・液化させるコンデンサー(放熱器)と、このコンデンサーで液化された冷媒を減圧して気化しやすい状態とする膨張弁と、冷媒を気化させて周囲から熱を奪って周囲を低温状態とするエバポレータ(蒸発器)とを備えている。
【0014】
暖房装置は、例えば、エンジン3の熱で熱せられた温媒をヒータに送ると共にっ該ヒータからエンジン3側に戻すように温媒を循環させるようにした構造のものが採用される。
前記エアコンにあっては、エバポレータとヒータと送風機(ブロワ)とを図10に示すケーシング9内に収容することでエアコン本体10が構成され、該エアコン本体10はキャビン8の室内に配置されており、コンプレッサー、コンデンサー、膨張弁等は、例えば、ボンネット11内に配置される。
【0015】
エアコン本体10は、図10に示すように、ケーシング9の前面側の右側に、空調空気が送出される矩形状の吹出し口12が設けられている。この吹出し口12は前方に向けて開口状とされている。
エアコン本体10のケーシング9の上面側の左側後部には、空気取入口13,14が前後一対設けられ、前側の空気取入口13はケーシング9内に外気(キャビン8の室外の空気)を導入する外気取入口とされ、後側の空気取入口14はケーシング9内に内気(キャビン8の室内の空気)を導入する内気取入口とされている。
【0016】
外気取入口13には、キャビン8のルーフに設けられた外気導入口からダクトを介して外気が取り入れられ、内気取入口14には、該内気取入口14の上方側に設けられた、フィルタ付きの内気導入ダクトを介して内気が取り入れられる。
なお、前記エアコン本体10は、少なくともエバポレータと送風機とを備えていればよい。
【0017】
キャビン8は骨格となるキャビンフレーム16を有する。このキャビンフレーム16は、図2,図3,図4に示すように、前部に配置された左右一対のフロントピラー17と、後部に配置された左右一対のリヤピラー18と有する。左右リヤピラー18の上端高さは左右フロントピラー17の上端高さと同高さとされ、左右リヤピラー18の下端高さは左右フロントピラー17の上下方向中間部に対応する位置とされている。
【0018】
左右のフロントピラー17の上端同志はフロントアッパビーム19によって連結され、左右のリヤピラー18の上端同志はリヤアッパビーム20によって連結され、左右方向で同じ側にあるフロントピラー17とリヤピラー18の上端同志はサイドアッパビーム21によって連結されている。
左右フロントピラー17の下端同志はフロントロワービーム22によって連結され、左右リヤピラー18の下端同志はリヤロワービーム23によって連結されている。
【0019】
左右フロントピラー17間の下部には、キャビン8の室内とボンネット11の内部とを仕切るフロントフレーム24がフロントロワービーム22の左右方向中央部に立設されている。
キャビン8の左右の側面後下部には、リヤピラー18の下端から前下方に向けてキャビン8の底部にまで延びるサイドフレーム25が設けられている。左右各サイドフレーム25は、前上方に向けて凸となる湾曲状に形成されている。このサイドフレーム25の後端側はリヤピラー18の下端に連結され、該サイドフレーム25の下端側はサイドロワービームを介してリヤピラー18の下端側に連結されている。
【0020】
前記構成のキャビンフレーム16の上面側にはルーフ26が設けられ、左右フロントピラー17間にはフロントガラス27が設けられ、左右リヤピラー18間にはリヤガラス28が設けられ、左右方向で同じ側にあるフロントピラー17とリヤピラー18との間にはドアが設けられる。
また、キャビンフレーム16の左右両側の後下部には、後輪7のタイヤハウスを形成する後輪フェンダ30が設けられている。この後輪フェンダ30は、後輪7の左右方向内方(キャビン8の左右方向中央に向かう方向)側を覆うように前記サイドフレーム25の左右方向内方側に配置された縦壁31と、この縦壁31とサイドフレーム25との間に配置されていて後輪7の外周側を覆うように該サイドフレーム25に沿って設けられた周壁32とを有する。
【0021】
キャビンフレーム16のリヤロワービーム23の下側でかつ左右の後輪フェンダ30の間は背面プレート33によって塞がれている。
キャビン8の室内後部には運転席34が設けられ、この運転席34は、左右の後輪フェンダ30の縦壁31の下部間に設けられたプレートからなるリヤフロア35上に設けられている。
【0022】
図1に示すように、前記リヤフロア35は、運転席34の前方側の床面(キャビン8の底部前側)を構成するフロントフロア36(ステップ)より一段高い位置に設けられている。
また、運転席34の下方側にリヤフロア35によって仕切られたエアコン本体収容室37が設けられ、このエアコン本体収容室37に前記エアコン本体10が収容されている。
【0023】
このフロントフロア36は、図3〜図8,図14に示すように、エアコン本体収容室37とフロントロワービーム22との間で、左右一方のフロントピラー17とサイドフレーム25との下端部間から左右他方のフロントピラー17とサイドフレーム25との下端部間に至るように設けられている。
フロントフロア36は、キャビンフレーム16に固定された左右の固定フロアプレート38と、左右方向中央側に配置されていて固定フロアプレート38に対して着脱自在な点検口閉鎖プレート39とから主構成されている。
【0024】
左右の固定フロアプレート38は左右方向に間隔が隔てられており、この左右の固定フロアプレート38間がキャビン8の下方側(車体2)を点検する点検口40とされており、前記点検口閉鎖プレート39はこの点検口40を塞ぐように左右の固定フロアプレート38に上方側から着脱自在に取り付けられている。
左右の各固定フロアプレート38は、左右方向外方側の外側ステップ部41と、左右方向内方側の載置部42と、これら外側ステップ部41と載置部42との間の溝部43とを有している。
【0025】
載置部42は外側ステップ部41よりも高さが高く、溝部43は前後方向に亘って形成されている。
右側の固定フロアプレート38の載置部42の前部には、左右方向内方側に向けて延出された延出壁44が設けられている。左側の固定フロアプレート38の載置部42の前部には、左右方向内方側に向けて延出状とされた取付プレート45が溶接固定され、該取付プレート45は下壁45aと下壁45aの前端から上方に延出された前壁45bとからL字形に形成されている。
【0026】
この取付プレート45の下壁45aは延出壁44の後部側と突き合わせ状とされて延出壁44に溶接固定されている。
これら延出壁44と取付プレート45の後方側が点検口40とされている。
点検口閉鎖プレート39は平面視矩形状に形成され、左右の端部側が左右の固定フロアプレート38の載置部42上に載置されて該載置部42に上方側(キャビン8の室内側)からボルト止めされている。また、点検口閉鎖プレート39の前端側は前記延出壁44と取付プレート45の下壁45a上に載置されていて延出壁44に上方側(キャビン8の室内側)ボルト止めされている。
【0027】
リヤフロア35の下方には、底部プレート46が設けられている。この底部プレート46は、フロントフロア36よりも下方側に配置され、該底部プレート46の後端側には上方に向けて延出する立上り壁47が設けられ、この立上り壁47の上端側には該上端から後方に延出する延出片48が設けられ、この延出片48の後端が前記背面プレート33の下端に溶接固定されている。
【0028】
前記エアコン本体収容室37は、図1,図5〜図8,図13〜図16に示すように、上面が前記リヤフロア35によって主構成され、底面が前記底部プレート46によって主構成され、左右両側面が前記後輪フェンダ30の縦壁31の下部によって主構成され、前面が前固定パネル49と着脱自在な前カバープレート50とによって主構成され、背面が前記背面プレート33の下部によって主構成されている。
【0029】
リヤフロア35の前端側には、該前端から下方に延びる係合壁35aが左右方向全幅にわたって設けられている。また、リヤフロア35の左側後部には、エアコン本体10の外気取入口13を挿通するコ字形の切欠部52と、内気取入口14を挿通する矩形の挿通孔53とが形成されている。
リヤフロア35の後端側は、前記背面プレート33に固着された支持部材54に載置されていて該支持部材54に上方側からボルト止めされている。
【0030】
前固定パネル49は、フロントフロア36の後端側に位置すると共に後輪フェンダ30の縦壁31間にわたって設けられており、フロントフロア36の左右固定フロアプレート38及び左右の後輪フェンダ30の縦壁31に溶接固定されている。
この前固定パネル49の下端側には、後方に向けて折曲された折曲片55が設けられ、該折曲片55は前記底部プレート46の前端側に溶接固定されていて、該前固定パネル49は、底部プレート46の前端側に立設されている。
【0031】
前固定パネル49は、左右両側の端部側壁部56と、左右方向中央側の中央側壁部57とを有し、左右の端部側壁部56の上端は中央側壁部57の上端より高い位置に位置する。
これによって、前固定パネル49の左右の端部側壁部56の上部間に開口部59が形成されている。
【0032】
前記中央側壁部57の左右方向中央から右側寄りにはダクト挿入口58が形成されている。このダクト挿入口58は前記端部側壁部56の上部間の開口部59と連続状に形成されている。
中央側壁部57と左右の各端部側壁部56との間には前記開口部59に連続状に形成された溝部61が設けられ、該溝部61は、フロントフロア36の固定フロアプレート38の溝部43に対応する位置に位置している。
【0033】
これら溝部43,61を介して、エアコン本体に接続されるホースや配線が配設可能とされている。
左右各端部側壁部56の上端側には、該上端から後方に延出された取付壁60が形成され、左右の取付壁60に前記リヤフロア35の前端側の左右両側が載置されてボルト止めされている。また、リヤフロア35の係合壁35aの左右両側は端部側壁部56の前方側に間隔を有して位置している。
【0034】
前記点検口閉鎖プレート39は、前固定パネル49の中央側壁部57の上端より低い位置に配置されていて、該中央側壁部57の上端側が点検口閉鎖プレート39より上方に突出している。
前カバープレート50は、前記端部側壁部56の上部間の開口部59を塞ぐように配置されている。
【0035】
この前カバープレート50の左右の両端側は、前固定パネル49の左右の端部側壁部56の前面に重ね合わされ、上端側はリヤフロア35の係合壁35aの後面に重ね合わされ、下端側は前固定パネル49の中央側壁部57の上端側の前面に重ね合わされている。
前カバープレート50の上端側は、図5に示すように、a位置及びb位置で、リヤフロア35の係合壁35aと前カバープレート50と前固定パネル49の左右の端部側壁部56とを貫通するボルトによって固定され、また、c位置でリヤフロア35の係合壁35aと前カバープレート50とを貫通するボルトによって固定されている。これによって、前カバープレート50を薄板で形成しても運転席34を支持する支持台の一部としての剛性を保つことができる。
【0036】
また、前カバープレート50は、下端側が、前固定パネル49の左右の端部側壁部56及び中央側壁部57にボルト固定される。
この前カバープレート50は、リヤフロア35の係合壁35aとオーバーラップする分、下方移動できるように、点検口閉鎖プレート39との間に隙間dを有している。
したがって、前カバープレート50を固定しているボルトを外し、その後、該前カバープレート50をリヤフロア35の係合壁35aとオーバーラップする分、下方移動することにより、該前カバープレート50を前方側に取り外すことができる。
【0037】
そして、前カバープレート50を取り外すことによって、前記開口部59を介してエアコン本体10の簡易な点検をすることができる。
また、運転席34を取り外すと共にリヤフロア35を取り外すことにより、エアコン本体10へのアプローチが容易にでき、また、リヤフロア35及び前カバープレート50を取り外すことにより、エアコン本体10の交換・修理を行う際において、該エアコン本体10の取付け・取外しを容易に行うことができる。
【0038】
なお、図13に示すように、フロントフロア36の上面に敷かれるフロアマット74の後端側を、エアコン本体収容室37の前面を覆うように、上方に延設することにより、前カバープレート50の下方側に形成される隙間を塞いでいる。
前記リヤフロア35にあっては、前端側を折曲して係合壁35aを設けることにより、前カバープレート50を取り外しても、運転席34を支持するための支持部材としての強度確保が図られている。また、この係合壁35aを設けたことにより、単純に、前カバープレート50を前方側から前固定パネル49及び係合壁35aに接触させて、これらに該前カバープレート50をボルト固定しようとすると、前固定パネル49と係合壁35aとの前後方向に関する段差分、前カバープレート50を段付状に成形しなければならないが、本実施形態では、前カバープレート50の上端側の左右両側を、前固定パネル49の端部側壁部56と係合壁35aとの間に差し込んでいるので、前カバープレート50を段付状に成形しなくてもよく、また、前カバープレート50をリヤフロア35の係合壁35aとオーバーラップする分、下方移動できるようにしているので、該前カバープレート50を前方側から容易に着脱することもできる。
【0039】
図16に示すように、前固定パネル49には、ダクト挿入口58に沿って上方開放状のコ字形に形成されたダクト受け62が溶接固定されている。
このダクト受け62には、左側の後輪フェンダ30の縦壁31の上端から左方に延出された載置片63が一体形成されており、この載置片63に前記点検口閉鎖プレート39が載置されてボルト止めされる。
【0040】
キャビン8の室内の前部(運転席34の前方)にはステアリングハンドル64が設けられると共に複数の室内吹出口65を備えたフロントカバー66が設けられている。これらステアリングハンドル64とフロントカバー66とはフロントフレーム24に支持され、フロントカバー66はフロントフレーム24の上部に配置されている。
前記フロントカバー66内は空洞とされ、各室内吹出口65には、風向きを変更することのできる風向変更グリルが装着される。
【0041】
また、フロントフレーム24の後面側には、上下方向に延びていて上端側がフロントカバー66の内部に連通する送風ダクト67が支持されている。
この送風ダクト67の下端側は、左側の固定フロアプレート38の載置部42の前部に固定の取付プレート45の前側に位置しており、フロントフロア36の下側に露出状とされている。
【0042】
この送風ダクト67の下端側には、下方に向けて開口状とされた矩形状の下端側接続口68が設けられている。
図1,図8,図9に示すように、エアコン本体10の吹出し口12と送風ダクト67の下端側接続口68とは中継ダクト69によって接続され、この中継ダクト69は、エアコン本体10の吹出し口12からフロントフロア36の左右方向中央側で且つ該フロントフロア36の下側を通って送風ダクト67の下端へと配設されている。
【0043】
したがって、エアコン本体10の吹出し口12から送出された空調空気は、中継ダクト69及び送風ダクト67を経てフロントカバー66内に至り、該フロントカバー66内から室内吹出口65を介してキャビン8の室内に供給される。
中継ダクト69は、図12にも示すように、左右方向に幅広の扁平状で前後方向に長い筒状に形成されている。
【0044】
この中継ダクト69の後端側には、後方に向けて開口状とされた矩形状の後端側接続口70が設けられ、この後端側接続口70は、その上面が、該中継ダクト69の本体部分の上面よりも高くなるように形成されている
また、中継ダクト69の前端側は、上方に向けて屈曲されていて該前端側に上方に向けて開口状とされた矩形状の前端側接続口71が設けられている。
【0045】
この中継ダクト69は点検口閉鎖プレート39の下側に配置されていて、該中継ダクト69の後端側接続口70は、前記ダクト挿入口58からエアコン本体収容室37内に挿入されてエアコン本体10の吹出し口12に前方から外嵌することにより該エアコン本体10の吹出し口12に接続されている。
この中継ダクト69の後部は、エアコン本体10の吹出し口12及びダクト挿入口58の周囲に設けられた前記ダクト受け62によって支持される。
【0046】
また、前記ダクト受け62と中継ダクト69との間にシール材が設けられると共に、点検口閉鎖プレート39と中継ダクト69との間にシール材が設けられ、これによってキャビン8の室外から室内への外気の侵入を防止している。
また、中継ダクト69の前端側接続口71は、送風ダクト67の下端側接続口68に下方側から外嵌することにより該送風ダクト67の下端側接続口68に接続されている。
【0047】
この送風ダクト67の下端側接続口68に対する中継ダクト69の前端側接続口71の接続は、中継ダクト69の後端側接続口70をエアコン本体10の吹出し口12に接続した状態で可能とされている。
なお、エアコン本体10の吹出し口12と中継ダクト69の後端側接続口70との間、及び、送風ダクト67の下端側接続口68と中継ダクト69の前端側接続口71との間には、シール材が設けられる。
【0048】
また、中継ダクト69の前端側接続口71は送風ダクト67の下端側接続口68に下方側から接続されればよく、中継ダクト69の前端側接続口71の上面と送風ダクト67の下端側接続口68の下面とを上下方向でシール材を介して突き合わせることにより接続されるようにしてもよい。
また、中継ダクト69の前部には左右一対の取付片72が一体形成されている。これら取付片72は、中継ダクト69の上部で且つ前端側接続口71より後方側に設けられている。また、各取付片72にはナットがインサートされている。
【0049】
左側の取付片72は、前記取付プレート45の下壁45aの下面に接当していて、該下壁45aを上方側から貫通して左側の取付片72に設けたナットに螺合するボルトによって、上方側(キャビン8の室内側)から着脱自在に取り付けられている。
右側の取付片72は、前記延出壁44の後部側下面に接当していて、該延出壁44を上方側から貫通して右側の取付片72に設けたナットに螺合するボルトによって、上方側(キャビン8の室内側)から着脱自在に取り付けられている。
【0050】
なお、点検口閉鎖プレート39には、中継ダクト69の前部を取り付ける前記ボルトの頭部が挿入する逃げ孔73が形成されている。
前記中継ダクト69は、本実施形態では、発泡体で形成されていて断熱材が不要とされている。
なお、中継ダクト69は発泡体に限定されることはなく、非発泡樹脂成形体によって成形されていてもよく、また、板金等によって形成されていてもよい。
【0051】
前記構成のキャビン8にあっては、点検口閉鎖プレート39を上方側に取り外し、その後、中継ダクト69の取付片72を止めているボルトを外し、次いで、中継ダクト69の前部を下方移動させて該中継ダクト69の前端側接続口71を送風ダクト67の下端側接続口68から抜脱し、その後、中継ダクト69を前方移動させて該中継ダクト69の後端側接続口70をエアコン本体10の吹出し口12から抜脱することにより、中継ダクト69が点検口40を介して上方側に取り外すことができる。
【0052】
これによって、点検口40を介してキャビン8の下方側の点検(トラクタ1の車体2の点検)が行える。
中継ダクト69を取り付ける場合は、前記と逆の動作によって行われる。
従来のように、エアコン本体と送風ダクトとを接続する中継ダクトをフロントフロアの上側に配設すると、中継ダクトの前部側の上下移動及び中継ダクトの前後移動の自由度がないため、中継ダクトの取り外しが困難となるが、本実施形態では、前記中継ダクト69をフロントフロア36の下側に配置することにより、該中継ダクト69の前後移動及び中継ダクト69の前部の上下移動を容易に行うことができ、これによって、エアコン本体10の吹出し口12に対する中継ダクト69の後端側接続口70の接続・抜脱、並びに、送風ダクト67の下端側接続口68に対する中継ダクト69の前端側接続口71の、接続・抜脱を容易に行うことができ、ひいては中継ダクト69の着脱を容易に行うことができる。
【0053】
この中継ダクト69の取付けの際において、エアコン本体収容室37の前面の上部を構成する前カバープレート50を取り外すことにより、エアコン本体10の吹出し口12に対する中継ダクト69の後端側接続口70の接続を目で確認しながら行うことができると共に、前カバープレート50を取り外すことにより開放される開口部59がダクト挿入口58に連続状とされているので、エアコン本体10の吹出し口12に対する中継ダクト69の後端側接続口70の接続が容易に行える。
【0054】
なお、中継ダクトを左右に分岐させて、点検口40の左右両側を中継ダクトが通るように中継ダクトを配設すると、迂回させることによる流路抵抗の増加や、流路を2分割することによるダクト内部の表面積増加による抵抗の増加を招く。これに対して、本実施形態では、中継ダクト69はキャビン8の底部の中央側を通るので、1本の太いダクトで構成でき、流路抵抗を低減できる。
【符号の説明】
【0055】
8 キャビン
10 エアコン本体
12 吹出し口
34 運転席
36 フロントフロア
37 エアコン本体収容室
39 点検口閉鎖プレート
40 点検口
50 前カバープレート
58 ダクト挿入口
59 開口部
67 送風ダクト
68 下端側接続口
69 中継ダクト
70 後端側接続口
71 前端側接続口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビン(8)の室内に配置された運転席(34)の下方にエアコン本体(10)を収容するエアコン本体収容室(37)を設けると共に該運転席(34)の前方側に上下方向に延びる送風ダクト(67)を設け、前記エアコン本体(10)の空調空気の吹出し口(12)と前記送風ダクト(67)の下端側とを接続する中継ダクト(69)を設けたキャビンにおいて、
運転席(34)の前側の床面を構成するフロントフロア(36)の左右方向中央側に点検口(40)を開設すると共に該点検口(40)を塞ぐ点検口閉鎖プレート(39)を設け、この点検口閉鎖プレート(39)の下方に前記中継ダクト(69)を配置し、
前記点検口閉鎖プレート(39)をキャビン(8)室内側から着脱自在とすると共に前記中継ダクト(69)を前記点検口(40)を介してキャビン(8)室内側に取外し可能としたことを特徴とするキャビン。
【請求項2】
前記エアコン本体(10)の空調空気の吹出し口(12)を前方に向けて開口状として該エアコン本体(10)の前面側に設け、前記送風ダクト(67)の下端側接続口(68)を下方に向けて開口状とし、
前記エアコン本体(10)の吹出し口(12)に中継ダクト(69)の後端側接続口(70)を前方側から接続可能とすると共に、中継ダクト(69)の後端側接続口(70)をエアコン本体(10)の吹出し口(12)に接続したままで中継ダクト(69)の前端側接続口(71)を送風ダクト(67)の下端側接続口(68)に下方から接続可能としたことを特徴とする請求項1に記載のキャビン。
【請求項3】
前記エアコン本体収容室(37)の前面下部に、中継ダクト(69)の後端側接続口(70)をエアコン本体収容室(37)内に挿入するためのダクト挿入口(58)を設け、エアコン本体収容室(37)の前面上部にエアコン本体収容室(37)の前面の一部を構成する前カバープレート(50)を着脱自在に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のキャビン。
【請求項4】
前記前カバープレート(50)を取り外すことで開放される開口部(59)が前記ダクト挿入口(58)と連続状とされていることを特徴とする請求項3に記載のキャビン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−207415(P2011−207415A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78828(P2010−78828)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】