説明

キャブおよび作業機械

【課題】側方荷重に対する補強の強さを選択的に設定できるキャブを提供する。
【解決手段】キャブ本体11を補強する際には、フロントヘッダ28に沿って着脱可能な第1補強部材12と、後側面部19から天井部20に亘って着脱可能な第2補強部材13との少なくともいずれか一方を選択的にキャブ本体11に取付けることで、共通のキャブ本体11の側方荷重に対する強度を、各補強部材12,13を順次追加することにより複数の段階に選択的に設定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブ本体に対して着脱可能な補強部材を有するキャブおよびこれを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば油圧ショベルなどの作業機械の機械本体にて、作業装置の側方に搭載されるこの種のキャブは、箱形のキャブ本体を備え、このキャブ本体は、床面部の前部両側から立上がる左右のフロントピラーの下部間にフロントクロス部材が設けられているとともに上部間にフロントヘッダが設けられており、これらフロントピラー、フロントクロス部材およびフロントヘッダにより、前側面部に前窓が開口形成されている。
【0003】
また、各フロントピラーの上端部は、後方へと屈曲されて左右のサイド部を形成し、これらサイド部の後端部が床面部の後部両側から立上がる左右のリアピラーの上端部に連結され、各フロントピラーの後部にルーフパネルが一体に設けられて、フロントヘッダの後部とルーフパネルの前部との間にてキャブ本体の天井部前側に天窓が開口形成されている。
【0004】
さらに、リアピラーの下部間にリアパネルが一体に設けられ、このルーフパネルの上部とルーフパネルの後部との間に後窓が開口形成されている。
【0005】
ところで、油圧ショベルなどは、やむを得ず不整地、傾斜地などで作業をすることがあり、このような場所での作業の際には、何らかのアクシデントにより油圧ショベルが転倒するおそれがある。
【0006】
このような転倒に対して、油圧ショベルなどのキャブを補強したり、キャブの剛性を向上したりして、側方荷重に対する変形を抑制してオペレータを保護するためのキャブ構造にすることが望ましい。
【0007】
しかしながら、油圧ショベルなどのキャブにおいては、オペレータの視界などを考慮すると、各窓の面積を可能な限り大きく取ることが望ましく、一方で、1枚板で形成されているキャブ本体のルーフパネルおよびリアパネルは、天窓および後窓のそれぞれを大きく取ると強度が低下するおそれがある。
【0008】
そこで、キャブ本体のフロントヘッドに沿って補強部材を設け、側方荷重に対するキャブ本体の強度を向上した構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−279721号公報(第4−6頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、油圧ショベルでは、例えば製造性の向上およびコストの削減などを目的として、同一のキャブを大きさが異なる複数の機種間で共用する場合がある。
【0010】
一方で、油圧ショベルは、万一転倒した場合に、小型機と大型機とでキャブに加わる荷重が異なるため、小型機のキャブを補強する場合と大型機のキャブを補強する場合とでは、必要な補強の程度が異なる。すなわち、大型機のキャブであるほど、機械本体および作業装置などの重量が大きくなるので、より強い補強が必要となり、また、小型機のキャブに関しては、大型機のキャブと同様の補強をしても、コストの割に効果の増大が少ない。
【0011】
しかしながら、上述の特許文献1に記載されたキャブでは、キャブ本体の補強の強さを1種類にしか設定できず、上記のようなキャブの共用化に対応することが容易でないという問題点を有している。
【0012】
また、上述の特許文献1に記載されたキャブにおいて、強度が異なる補強部材を機種に応じてそれぞれキャブ本体に取付けることも考えられるが、このような場合では、補強部材の種類が増加し、結果的に製造性の向上およびコストの削減などが容易でなくなるという問題がある。
【0013】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、側方荷重に対する補強の強さを選択的に設定できるキャブおよびこれを備えた作業機械を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の発明は、前側面部に前側窓部を開口し、天井部に上側窓部を開口するとともに、後側面部に後側窓部を開口し、前側窓部と上側窓部との間に横枠部を備えた箱形のキャブ本体と、このキャブ本体に横枠部に沿って着脱可能な第1補強部材と、キャブ本体の後側面部から天井部に亘って着脱可能な第2補強部材とを備え、第1補強部材および第2補強部材の少なくともいずれか一方が、キャブ本体を補強する際に、このキャブ本体に選択的に取付けられるキャブである。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のキャブにおいて、第1補強部材と第2補強部材とは、それぞれボルトによりキャブ本体に取付け可能であるものである。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のキャブにおいて、第1補強部材は、キャブ本体への取付け状態で横枠部の両側部に固定される被固定部と、これら被固定部間を連結し、キャブ本体への取付け状態で横枠部に沿って配設される補強部材本体と、この補強部材本体と被固定部との連結部を補強し、補強部材本体と一体的に横枠部に固定される補強カバーとを備えているものである。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか記載のキャブにおいて、第2補強部材は、キャブ本体に取付けられた状態で後側窓部の周囲を覆う枠状の後側補強部と、この後側補強部の上部に延設され、キャブ本体に取付けられた状態でキャブ本体の天井部の少なくとも上側窓部の後部を覆う板状の上側補強部とを備えているものである。
【0018】
請求項5記載の発明は、機械本体と、この機械本体に搭載される請求項1乃至4のいずれか記載のキャブと、機械本体に作動可能に設けられた作業装置とを具備した作業機械である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、キャブ本体を補強する際には、横枠部に沿って着脱可能な第1補強部材と、後側面部から天井部に亘って着脱可能な第2補強部材との少なくともいずれか一方を選択的に取付けることで、共通のキャブ本体の側方荷重に対する強度を、各補強部材を順次追加することにより複数の段階に選択的に設定できる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、第1補強部材と第2補強部材とを、それぞれボルトによりキャブ本体に取付け可能とすることで、製造コストを抑制しつつ第1補強部材と第2補強部材とをそれぞれ容易に着脱できる。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、被固定部と補強部材本体との連結部を補強カバーにより補強し、この補強カバーを補強部材本体と一体的に横枠部に固定することで、横枠部の近傍の強度を向上でき、側方荷重に対してキャブ本体を確実に補強できる。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、キャブ本体に取付けられた状態で、枠状の後側補強部がキャブ本体の後側面部の後側窓部の周囲を覆うことで、後側面部の後側窓部の周囲の強度を向上できるとともに、後側補強部の上部に延設された板状の上側補強部が、キャブ本体の天井部の少なくとも上側窓部の後部を覆うことにより、キャブ本体の天井部の強度を向上でき、側方荷重に対してキャブ本体を確実に補強できる。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、各補強部材によりキャブ本体を側方荷重に対して確実に補強できることで、信頼性を向上できるとともに、作業可能な領域を拡げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態を図1乃至図6を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図6に作業機械としての油圧ショベル1を示し、この油圧ショベル1は、下部走行体2の上部に旋回部3を介して上部旋回体4が旋回可能に設けられた機械本体5を有し、上部旋回体4の前側上部左側に、オペレータの運転空間を囲むキャブ6が搭載されているとともに、上部旋回体4の前部中央に、作業装置7が作動可能に突設されている。すなわち、キャブ6は、作業装置7の側方に位置している。
【0026】
そして、このキャブ6は、図1に示されるように、箱形のキャブ本体11を備え、このキャブ本体11には、補強の際に、第1補強部材12と第2補強部材13との少なくともいずれか一方が選択的に着脱可能となっている。
【0027】
キャブ本体11は、上部旋回体4(図6)の旋回フレーム上に、図示されないマウント部材を介して搭載される前後に長い略四角形状の床面部15と、この床面部15の左右両側部から上方に立上がる左側面部16および右側面部17と、床面部15の前後両端部から上方に立上がる前側面部18および後側面部19と、これら側面部16,17,18,19の上部に設けられた天井部20とを備えている。
【0028】
そして、このキャブ本体11は、床面部15の四隅にそれぞれ設けられた柱状体としての左フロントピラー22、右フロントピラー23、左リアピラー24および右リアピラー25を備えている。さらに、左フロントピラー22の上端部は、左リアピラー24の上端部へと屈曲されて左サイド部26を形成し、右フロントピラー23の上端部は、右リアピラー25の上端部へと屈曲されて右サイド部27を形成し、両フロントピラー22,23の上端部間は、横枠部としてのフロントヘッダ28により連結され、両リアピラー24,25の上端部間は、リアヘッダ29により連結され、また、両フロントピラー22,23の下端部間は、フロントクロス部材30により連結され、両リアピラー24,25の下端部間は、リアクロス部材31により連結されている。
【0029】
床面部15上には、図示しないが、オペレータが座るシートおよびオペレータが操作するコンソールなどが適宜配設されている。また、この床面部15には、コンソールなどと接続される各種配線および配管などがキャブ本体11の外部下側へと導出される図示されない孔部などが設けられている。
【0030】
左側面部16は、左フロントピラー22と左サイド部26と左リアピラー24とにより区画され、これら左フロントピラー22と左リアピラー24との間に、上端部が左サイド部26に連結された柱状体としてのドア取付用ピラー32が配設され、このドア取付用ピラー32と左フロントピラー22との間に、オペレータがキャブ本体11内に対して乗降する際に開閉されるドア33が設けられているとともに、ドア取付用ピラー32と左リアピラー24との間に、左サイドパネル34が一体に設けられている。そして、左サイドパネル34の上部には、ドア33の後方に隣接する左窓35が開口形成されている。この左窓35は、図示されない透光性部材により閉塞されている。
【0031】
右側面部17には、右フロントピラー23と右サイド部27と右リアピラー25とにより区画され、右フロントピラー23と右リアピラー25との下部間に右サイドパネル36が一体に設けられ、この右サイドパネル36の上部に、右窓37が開口形成されている。この右窓37は、図示されない透光性部材により閉塞されている。
【0032】
前側面部18は、両フロントピラー22,23とフロントヘッダ28とフロントクロス部材30とにより区画されて全体に前側窓部としての前窓41が略全面に開口形成され、この前窓41は、図示されない透光性部材により閉塞されている。
【0033】
後側面部19は、図4に示されるように、両リアピラー24,25とリアヘッダ29とにより区画され、両リアピラー24,25の下部間かつリアクロス部材31の上部に、例えば1枚板で形成されたリアパネル43が一体に設けられ、このリアパネル43の上部に後側窓部としての後窓44が開口形成されている。この後窓44は、四角形状に形成され、図示されない透光性部材により開閉可能となっている。また、この後側面部19の後窓44の下部および上部には、第2補強部材13をキャブ本体11に取付けるためのボス45,46が、それぞれ複数、例えば3つずつ、左右方向に略等間隔に配設されている。
【0034】
ここで、図1に示されるように、フロントクロス部材30および各パネル34,36,43の下端部の内側には、取付部材としての鋼材であるハット部材Hが溶接され、これらハット部材Hが床面部15に図示されないボルトなどを介して固定されることで、各側面部16,17,18,19が床面部15と一体的となっている。
【0035】
天井部20は、両ヘッダ28,29と両サイド部26,27とにより区画され、後側に、例えば1枚板で形成されたルーフパネル47が嵌合され、この後側が略平面状に形成されているとともに、このルーフパネル47の前方に上側窓部としての天窓48が開口形成されている。この天窓48は、四角形状に形成され、図示されない扉体により開閉可能となっている。
【0036】
各フロントピラー22,23は、Aピラーとも呼ばれるものであり、ドア取付用ピラー32は、Bピラーとも呼ばれるものであり、また、各リアピラー24,25は、Cピラーとも呼ばれるものであり、これらピラー22,23,24,25,32は、それぞれ鋼板により形成された異型鋼管である。そして、各リアピラー24,25の上端部には、第2補強部材13をキャブ本体11に取付けるためのボス51,52が突設されている。
【0037】
各サイド部26,27は、略水平状に形成され、各リアピラー24,25側である後側寄りの上部に、第2補強部材13をキャブ本体11に取付けるためのボス53,54がそれぞれ突設されている。これらボス53,54は、それぞれボス51,52の前方に離間されて位置している。
【0038】
フロントヘッダ28は、前窓41と天窓48との間に略直線状に位置している。また、このフロントヘッダ28は、左右に長尺状の異型鋼管であり、両フロントピラー22,23間を連結するフロントヘッダ板56を前側に備え、このフロントヘッダ板56の背面に図示されないヘッダ補強板が溶接されているとともに、天窓48用の図示されないパッキンが取付けられる図示されないパッキン取付板が上側に溶接されている。
【0039】
一方、第1補強部材12は、図5に示されるように、キャブ6に側方荷重Fが加わった際に想像線Cに示されるようなキャブ本体11の変形を防止するもので、鋼鉄などの金属により形成され、図1および図2に示されるように、フロントヘッダ28の両側部である各フロントピラー22,23の上端部の屈曲部に固定された被固定部57,58と、これら被固定部57,58間を左右方向に連結する補強部材本体59と、これら被固定部57,58と補強部材本体59との連結部を覆う補強カバー61,62とを備えている。このため、第1補強部材12は、平面視で略H字状に形成されている。
【0040】
被固定部57は、上端部に水平状に位置する上端面64、この上端面64の下端部に前方へと傾斜状に連続する上側傾斜面65、この上側傾斜面65の下端部に若干後方へと傾斜状に連続する下側傾斜面66、これら両傾斜面65,66の左側部に亘って連続する左側面67、上端面64と上側傾斜面65との右側部に亘って連続する上側右面68、および、下側傾斜面66の右側部に位置する下側右面69を有する箱状に形成されている。
【0041】
上端面64の後端部、上側傾斜面65の下端部近傍および下側傾斜面66の下端部近傍には、それぞれ挿入孔71,72,73が穿設され、これら挿入孔71,72,73には、第1補強部材12をキャブ本体11に取付ける際にボルト75,76,77が挿入され、これらボルト75,76,77が、左フロントピラー22から突設されたボス78,79,80にそれぞれ螺着される。
【0042】
また、被固定部58は、被固定部57と左右対称な形状に形成されている。すなわち、被固定部58は、上端部に水平状に位置する上端面84、この上端面84の下端部に前方へと傾斜状に連続する上側傾斜面85、この上側傾斜面85の下端部に若干後方へと傾斜状に連続する下側傾斜面86、これら両傾斜面85,86の右側部に亘って連続する右側面87、上端面84と上側傾斜面85との左側部に亘って連続する上側左面88、および、下側傾斜面86の左側部に位置する下側左面89を有する箱状に形成され、上端面84の後端部、上側傾斜面85の下端部近傍および下側傾斜面86の下端部近傍には、それぞれ挿入孔91,92,93が穿設され、これら挿入孔91,92,93には、第1補強部材12をキャブ本体11に取付ける際にボルト95,96,97が挿入され、これらボルト95,96,97が、右フロントピラー23から突設されたボス98,99,100にそれぞれ螺着される。
【0043】
補強部材本体59は、左右に長尺状の角パイプであり、左右両端部が、被固定部57の上側右面68と被固定部58の上側左面88とにそれぞれ切欠き形成された図示されない切欠孔にそれぞれ挿入されて被固定部57の左側面67と被固定部58の右側面87とにそれぞれ溶接され、被固定部57,58と一体的に設けられている。このため、この補強部材本体59は、第1補強部材12をキャブ本体11に取付けた状態で、フロントヘッダ28の前部に沿って位置している。
【0044】
補強カバー61は、左右に長尺状の前側面101と、この前側面101の上下両端部から後方へと延設された上側面部102および下側面部103とを有する断面逆コ字状に形成され、補強部材本体59の左側に前側から取付けられている。
【0045】
また、この補強カバー61は、前側面101の後側が補強部材本体59の前側に当接し、各側面部102,103がそれぞれ補強部材本体59の上下両側に当接してこの補強部材本体59と抱き合わされ、各側面部102,103の後端部がそれぞれ補強部材本体59の上面および下面の後端部近傍にて溶接され、補強部材本体59と一体的となっている。
【0046】
さらに、この補強カバー61は、補強部材本体59の左端部から、この補強部材本体59の中央部の左側方に亘って補強部材本体59の前側を覆っている。すなわち、この補強カバー61の左端部は、被固定部57の切欠孔に補強部材本体59の左端部とともに挿入され、被固定部57の左側面67に溶接されている。
【0047】
また、この補強カバー61の右端部近傍には、第1補強部材12をキャブ本体11に取付ける際にボルト111が挿入されるボルト挿入孔112が穿設されている。
【0048】
そして、ボルト111は、ボルト挿入孔112に対応する位置にて補強部材本体59に穿設された図示されない挿通孔に挿通され、これらボルト挿入孔112および挿通孔に対応する位置にてフロントヘッダ板56の前部に溶接されたボス114に螺着され、補強カバー61を補強部材本体59と一体的にフロントヘッダ28に固定可能とする。このボス114は、補強部材本体59の後部に切欠き形成された図示されないボス孔に挿入され、先端部が補強部材本体59の前部の後面に当接している。
【0049】
同様に、補強カバー62は、補強カバー61と左右対称に設けられている。すなわち、補強カバー62は、左右に長尺状の前側面121と、この前側面121の上下両端部から後方へと延設された上側面部122および下側面部123とを有する断面逆コ字状に形成され、補強部材本体59の右側に前側から取付けられ、前側面121の後側が補強部材本体59の前側に当接し、各側面部122,123がそれぞれ補強部材本体59の上下両側に当接してこの補強部材本体59と抱き合わされ、各側面部122,123の後端部がそれぞれ補強部材本体59の上面および下面の後端部近傍にて溶接され、補強部材本体59と一体的となっている。
【0050】
さらに、この補強カバー62は、補強部材本体59の右端部から、この補強部材本体59の中央部の右側方に亘って補強部材本体59の前側を覆っており、左端部が、被固定部58の切欠孔に補強部材本体59の右端部とともに挿入され、被固定部58の右側面87に溶接されている。
【0051】
また、この補強カバー62の右端部近傍には、第1補強部材12をキャブ本体11に取付ける際にボルト131が挿入されるボルト挿入孔132が穿設され、このボルト131は、ボルト挿入孔132に対応する位置にて補強部材本体59に穿設された図示されない挿通孔に挿通され、これらボルト挿入孔132および挿通孔に対応する位置にてフロントヘッダ28のフロントヘッダ板56の前部に溶接されたボス134に螺着され、補強カバー62を補強部材本体59と一体的にフロントヘッダ28に固定可能とする。このボス134は、補強部材本体59の後部に切欠き形成された図示されないボス孔に挿入され、先端部が補強部材本体59の前部の後面に当接している。
【0052】
そして、ボルト76,111,131,96は、正面視で左右方向に略一直線上に配設されている。
【0053】
なお、各補強カバー61,62と補強部材本体59との溶接部は、補強カバー61,62の各側面部102,103,122,123の左右全体に亘って連続して設けてもよく、また、複数箇所に点状に設けてもよい。
【0054】
さらに、第2補強部材13は、図5に示されるように、キャブ6に側方荷重Fが加わった際に想像線Cに示されるようなキャブ本体11の変形を防止するもので、鋼鉄などの金属によりプレス成形され、図1、図3および図4に示されるように、四角形枠状の後側補強部141と、この後側補強部141の上部から前方へと延設された四角形板状の上側補強部142と、この上側補強部142の両側縁部に亘って連続したリブ部143とを備え、キャブ本体11の側面視の後部上側に対応して、側面視で逆L字状に屈曲形成されている。
【0055】
後側補強部141は、下端部に左右方向に設けられた下枠部145と、この下枠部145の両側部から上方に突設された左側枠部146および右側枠部147と、これら側枠部146,147の上端部間を連結する上枠部148とを備え、これら下枠部145、各側枠部146,147および上枠部148により、四角形状の開口部149の周囲が額縁状に囲まれている。そして、この後側補強部141は、第2補強部材13をキャブ本体11に取付けた状態で開口部149が後窓44に連通し、下枠部145、各側枠部146,147および上枠部148が後窓44の周囲を覆うように構成されている。
【0056】
下枠部145には、挿通孔151がボス45に対応して複数、例えば3つ、左右方向に略等間隔に穿設され、これら挿通孔151には、第2補強部材13の取付けの際にボルト152が挿入されてボス45に螺着される。
【0057】
各側枠部146,147は、第2補強部材13をキャブ本体11に取付けた状態でそれぞれ後窓44の左右両側に沿って各リアピラー24,25の後方に配設される。
【0058】
上枠部148には、挿通孔153がボス46に対応して複数、例えば3つ、左右方向に略等間隔に穿設され、これら挿通孔153には、第2補強部材13の取付けの際にボルト154が挿入されてボス46に螺着される。
【0059】
上側補強部142は、上枠部148の上端部から前方へと略水平に延設され、第2補強部材13をキャブ本体11に取付けた状態で天窓48の後方のルーフパネル47の後部の上方を覆うように構成されている。また、この上側補強部142の両側部には、ボス51,52のそれぞれに対応する位置である後端部近傍に、孔部156,157が、ボス53,54のそれぞれに対応する位置である前端部近傍に、孔部158,159が、それぞれ上下方向に穿設され、これら孔部156,157,158,159には、第2補強部材13の取付けの際にそれぞれボルト161が挿入されて各ボス51,52,53,54に螺着される。
【0060】
リブ部143は、第2補強部材13を補強するものであり、後側補強部141の両側部から前側へ、すなわちキャブ本体11側へと略垂直に屈曲されて突出し、第2補強部材13をキャブ本体11に取付けた状態で各リアピラー24,25の両側に沿って配設される。
【0061】
次に、上記一実施の形態の作用効果を説明する。
【0062】
油圧ショベル(図6)にて通常の作業をする際には、各補強部材12,13を取付けずにキャブ本体11のままで作業をする。
【0063】
油圧ショベル1(図6)にて、やむを得ず不整地、傾斜地などで作業をする際には、油圧ショベル1(図6)が小型機の場合、図2に示されるように第1補強部材12をキャブ本体11に取付けたり、第2補強部材13をキャブ本体11に取付けたりする(図示せず)。
【0064】
例えば、第1補強部材12を取付ける際には、被固定部57の挿入孔71,72,73と被固定部58の挿入孔91,92,93とのそれぞれを、左フロントピラー22に突設されたボス78,79,80および右フロントピラー23に突設されたボス98,99,100と位置合わせし、これら挿入孔71,72,73および挿入孔91,92,93のそれぞれにボルト75,76,77およびボルト95,96,97を挿入して螺着することで、補強部材本体59がフロントヘッダ28に沿ってこのフロントヘッダ28の前部に位置するので、この補強部材本体59のボルト挿入孔112,132にそれぞれボルト111,131を挿入してボス114,134に螺着して、第1補強部材12をキャブ本体11に固定する。
【0065】
また、油圧ショベル1(図6)が大型機の場合には、第1補強部材12と第2補強部材13との双方を取付ける。
【0066】
このとき、後側補強部141をキャブ本体11の後側面部19に対向させるとともに、上側補強部142をキャブ本体11の天井部20に対向させ、各挿通孔151,153にボルト152,154(図4)をそれぞれ挿入してボス45,46にそれぞれ螺着するとともに、各孔部156,157,157,159にボルト161,161,161,161をそれぞれ挿入してボス51,52,53,54に螺着することで、第2補強部材13をキャブ本体11に固定して、第1補強部材12が取付けられたキャブ本体11を側方荷重Fに対してさらに補強する。
【0067】
この結果、共通のキャブ本体11の側方荷重Fに対する強度を、各補強部材12,13を順次追加することにより複数の段階に選択的に設定できる。
【0068】
すなわち、ボスなどの各補強部材12,13用の取付部をキャブ本体11に予め最大限に形成しておき、キャブ本体11にあまり大きな補強が必要でない小型機などの場合には、第1補強部材12のみ、あるいは第2補強部材13のみをキャブ本体11に取付け、強い補強が必要な大型機などの場合には、第1補強部材12と第2補強部材13との双方をキャブ本体11に取付けるなど、各補強部材12,13の取付けの組合せなどでキャブ本体11の補強の強さを必要に応じて変化させ、異なる機種間でキャブ6を共用でき、製造性の向上およびコストの削減を図ることができる。
【0069】
また、キャブ本体11のフロントヘッダ28は、前窓41と天窓48との間に位置する構造上、オペレータの視界確保のために前窓41と天窓48とを可能な限り大きく取ることで、キャブ本体11中で側方荷重Fに対して最も弱い部分となるので、側方荷重Fに対して補強部材本体59が梁として作用する第1補強部材12をフロントヘッダ28部分に沿って取付けることで、フロントヘッダ28近傍の強度を向上でき、キャブ6に作用する側方荷重Fをフロントヘッダ28とともに第1補強部材12で受け、側方荷重Fに対してキャブ本体11を確実に補強できる。
【0070】
さらに、第1補強部材12は、フロントヘッダ28の両側部の各フロントピラー22,23の上端部近傍に取付けた被固定部57,58と補強部材本体59との連結部を、補強カバー61,62により覆って補強するとともに、さらに、これら補強カバー61,62を補強部材本体59とともにフロントヘッダ28に固定することで、側方荷重Fに対してキャブ本体11の強度を、より向上できる。
【0071】
そして、補強部材本体59と補強カバー61,62とは、ボルト111,131によりフロントヘッダ28に容易に固定できるとともに、例えば補強部材本体59と補強カバー61,62とをフロントヘッダ28に溶接する場合などと比較して、製造コストを抑制できる。
【0072】
また、キャブ本体11の後側面部19は、リアパネル43が1枚板で形成されているとともに後窓44が開口形成されることにより、この後窓44の周囲、特に各リアピラー24,25の上側の強度を確保することが容易でなく、また、キャブ本体11の天井部20は、ルーフパネル47が1枚板で形成されているとともに天窓48が開口形成されることにより、各サイド部26,27の強度を確保することが容易でないので、第2補強部材13をキャブ本体11の後側面部19から天井部20に亘って取付けることで、天井部20の強度を向上でき、キャブ6に作用する側方荷重Fを第2補強部材13で受け、側方荷重Fに対してキャブ本体11を確実に補強できる。
【0073】
さらに、第2補強部材13は、後側補強部141がキャブ本体11の後側面部19の後窓44の周囲を覆うことで、この後窓44の周囲の強度を向上できるとともに、板状の上側補強部142が、キャブ本体11の天井部20のルーフパネル47の後部を覆うことにより、キャブ本体11の天井部20の強度をより向上できる。
【0074】
そして、各補強部材12,13は、前窓41、後窓44および天窓48を閉塞しないので、オペレータの視界を遮ることがない。
【0075】
また、このようにキャブ本体11を確実に補強できることで、キャブ6の信頼性を向上でき、さらには、このキャブ6を油圧ショベル1に搭載することで、例えば何らかのアクシデントにより油圧ショベル1(図6)が転倒(横転)してキャブ本体11が下側となり、キャブ本体11に側方荷重Fが加わった場合でも、オペレータを確実に保護でき、作業可能な領域を広げることができる。
【0076】
さらに、第1補強部材12において、補強カバー61,62は、連結部材本体59に対して溶接されているため、被固定部57,58と補強部材本体59との連結部をより確実に補強できるとともに、ボルト76,111,131,96を左右方向に一直線上に配設することで、第1補強部材12により側方荷重Fに対する強度を確実に向上できる。
【0077】
そして、第2補強部材13において、後側補強部141の側縁部にリブ部143が連続して設けられているため、枠状となって板状の上側補強部142よりも強度を確保し難い後側補強部141を確実に補強でき、側方荷重Fに対するキャブ本体11の強度をより向上できる。
【0078】
なお、上記一実施の形態において、第1補強部材12は、フロントヘッダ28に沿って配設してフロントヘッダ28の周辺の強度を向上できるものであれば、上記構成に限定されるものではなく、例えばフロントヘッダ28に対して溶接するものなどでもよい。
【0079】
同様に、第2補強部材12は、後側面部19および天井部20に亘って配設してキャブ本体11の強度を向上できるものであれば、上記構成に限定されるものではなく、例えば上側補強部142を天井部20の前端部まで延設したものなどでもよい。
【0080】
また、上記キャブ6は、油圧ショベル1以外の任意の作業機械に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係るキャブの一実施の形態を示す分解斜視図である。
【図2】同上キャブの第1補強部材の取付け状態を示す斜視図である。
【図3】同上キャブの第1補強部材および第2補強部材の取付け状態を示す斜視図である。
【図4】同上キャブの第1補強部材および第2補強部材の取付け状態を背面側から示す斜視図である。
【図5】同上キャブを示す正面図である。
【図6】同上キャブを備えた作業機械を示す側面図である。
【符号の説明】
【0082】
1 作業機械としての油圧ショベル
5 機械本体
6 キャブ
7 作業装置
11 キャブ本体
12 第1補強部材
13 第2補強部材
18 前側面部
19 後側面部
20 天井部
28 横枠部としてのフロントヘッダ
41 前側窓部としての前窓
44 後側窓部としての後窓
48 上側窓部としての天窓
57,58 被固定部
59 補強部材本体
61,62 補強カバー
141 後側補強部
142 上側補強部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側面部に前側窓部を開口し、天井部に上側窓部を開口するとともに、後側面部に後側窓部を開口し、前側窓部と上側窓部との間に横枠部を備えた箱形のキャブ本体と、
このキャブ本体に横枠部に沿って着脱可能な第1補強部材と、
キャブ本体の後側面部から天井部に亘って着脱可能な第2補強部材とを備え、
第1補強部材および第2補強部材の少なくともいずれか一方が、キャブ本体を補強する際に、このキャブ本体に選択的に取付けられる
ことを特徴とするキャブ。
【請求項2】
第1補強部材と第2補強部材とは、それぞれボルトによりキャブ本体に取付け可能である
ことを特徴とする請求項1記載のキャブ。
【請求項3】
第1補強部材は、
キャブ本体への取付け状態で横枠部の両側部に固定される被固定部と、
これら被固定部間を連結し、キャブ本体への取付け状態で横枠部に沿って配設される補強部材本体と、
この補強部材本体と被固定部との連結部を補強し、補強部材本体と一体的に横枠部に固定される補強カバーとを備えている
ことを特徴とする請求項1または2記載のキャブ。
【請求項4】
第2補強部材は、
キャブ本体に取付けられた状態で後側窓部の周囲を覆う枠状の後側補強部と、
この後側補強部の上部に延設され、キャブ本体に取付けられた状態でキャブ本体の天井部の少なくとも上側窓部の後部を覆う板状の上側補強部とを備えている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のキャブ。
【請求項5】
機械本体と、
この機械本体に搭載される請求項1乃至4のいずれか記載のキャブと、
機械本体に作動可能に設けられた作業装置と
を具備したことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−69822(P2007−69822A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261114(P2005−261114)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】