説明

キャブおよび建設機械

【課題】キャブを構成する柱部材の強度を十分に担保することが可能なキャブおよび建設機械を提供する。
【解決手段】キャブ10では、旋回フレーム3上に配置されたキャブ10を構成する複数の柱部材31〜34において、右後柱部材34の同一面に形成された孔部34aと孔部34b,34cとが、右後柱部材34の幅方向にずれた位置にあって、その端部において一部重複するように互いに略平行に配置されている。そして、各孔部34a〜34cに対して、それぞれ板材21a〜21cが挿入された状態で固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、油圧ショベル等の建設機械に搭載されるキャブを構成する柱部材の補強構造を備えたキャブおよび建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設機械に搭載されるキャブの柱部材として、内部が空洞のパイプ材を用いて構成されたキャブ構造が採用されている。
このような建設機械に搭載されたキャブ構造では、柱部材として用いられるパイプにも所定値以上の強度が要求される。しかしながら、強度を向上させるためにパイプの肉厚を上げたのでは、材料費や加工費等が増大してコストアップの要因となる。このため、強度面とコスト面との問題をともに解決可能なパイプの補強構造が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、板金部材を貼り合わせて構成されるピラー(柱部材)の強度を補うために、ピラーの内部に上端から下端まで板材を挿入した構成が開示されている。
また、特許文献2には、外管パイプの内部に内管を挿入して外管の外周長を減少させる縮径工程を行うことにより二重管を形成してパイプを補強する二重管の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2006−240568号公報(平成18年9月14日公開)
【特許文献2】特開2005−111557号公報(平成17年4月28日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構造では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記特許文献1,2に開示されたパイプの補強構造では、パイプの長手方向に渡って一様な補強構造となっている。このため、例えば、旋回フレームに対して近接配置されたキャブを構成する柱部材が、キャブに対して付与された外力によって旋回フレームの一部に接触した場合には、柱部材に対して局所的な外力が付与されるために、その部分で折れ曲がるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、キャブを構成する柱部材の強度を十分に担保することが可能なキャブおよび建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係るキャブは、内部に空間を含む異形断面を有する複数の柱部材によって構成されるキャブであって、第1孔部と、第2孔部と、第1板材と、第2板材と、を有する柱部材を備えている。第1孔部は、長手方向が柱部材の長手方向に沿って形成され、柱部材の左右方向において柱部材を貫通するように形成されている。第2孔部は、第1孔部に対して、幅方向においてずらすとともに、柱部材の長手方向において一部が重複するように形成されている。第1板材は、第1孔部に対して挿入された状態で固定される。第2板材は、第2孔部に対して挿入された状態で固定される。
【0007】
ここでは、油圧ショベル等の建設機械に搭載されるキャブを構成する柱部材に設けられた補強構造について、長手方向において第1孔部と第2孔部とが一部重複するように、幅方向においてずらして形成されている。換言すれば、柱部材の側面視において、第1孔部の端部と第2孔部の端部とが重なるように、幅方向においてずらして形成されている。
ここで、上記第1・第2孔部と第1・第2板材とを組み合わせて構成される補強構造としては、例えば、旋回フレームのメインビームに近接する位置に配置された右後柱部材等のように、特に外部から局所的な負荷が掛かり易い柱部材に対して適用される。
【0008】
これにより、長手方向に配置された複数の補強構造のつなぎ目の部分において局所的に強度が低い部分が形成されることを回避することができる。この結果、簡易な構成によって、柱部材の長手方向における特定部分の強度を向上させて、キャブ全体の剛性を向上させることができる。
【0009】
第2の発明に係るキャブは、第1の発明に係るキャブであって、第2孔部は、柱部材の長手方向に沿って並列に2つ形成されており、第1孔部は、2つの第2孔部の間に形成されている。
ここでは、柱部材に形成される2つの補強構造は、柱部材の長手方向における略中央部付近に並列配置された2つの第2孔部と、その間における長手方向にずらした位置に形成された第1孔部と、を含むように構成されている。
これにより、第1孔部および第2孔部に対して、それぞれ1枚、2枚の板材(第1板材、第2板材)を挿入することができる。この結果、3つの孔部(第1・第2孔部)と3枚の板材(第1・第2板材)とによって、効果的な補強構造を形成することができる。
【0010】
第3の発明に係るキャブは、第1または第2の発明に係るキャブであって、柱部材は、右後方に配置されている。
ここでは、上述した補強構造が適用された柱部材を、キャブの右後方に設けている。
ここで、キャブの右後方には、通常、油圧ショベル等の旋回フレームに含まれるメインビームが配置されている。よって、例えば、油圧ショベルが転倒した際等においてキャブの側面に大きな負荷がかかった場合には、キャブが変形して柱部材の一部がメインビームと接触して局所的に大きな負荷がかかってしまうおそれがある。
【0011】
本発明のキャブでは、このような局所的に大きな負荷がかかりやすい右後方の柱部材に対して、上述した補強構造を採用している。
これにより、油圧ショベル等が転倒した場合でも、キャブを構成する柱部材が折れ曲がってしまうことを回避して、キャブ全体の剛性を向上させることができる。
【0012】
第4の発明に係るキャブは、第1から第3の発明のいずれか1つに係るキャブであって、第1板材および第2板材の少なくとも一方は、柱部材に挿入される方向に交差する方向に突出した凸部を有している。
ここでは、柱部材の側面に形成された第1・第2孔部に挿入される第1・第2板材に、例えば、第1・第2孔部の開口の大きさとほぼ同等の大きさを有する凸部を設けている。
これにより、第1・第2孔部に対して第1・第2板材を挿入していく際には、第1・第2板材の凸部が柱部材の第1・第2孔部に挿入された状態で固定される。この結果、治具等を用いることなく、第1・第2板材の凸部の部分によって、柱部材に対する第1・第2板材の位置決めを行うことができる。なお、ここで行われる位置決めとしては、第1・第2板材の挿入方向、柱部材の長手方向の少なくともいずれか一方であればよい。
【0013】
第5の発明に係るキャブは、第1から第4の発明のいずれか1つに係るキャブであって、第1・第2板材は、柱部材に対して溶接によって固定されている。
ここでは、柱部材における所望の位置に形成された第1・第2孔部に挿入された第1・第2板材を、溶接によって柱部材に固定する。
これにより、柱部材の外周面から第1・第2孔部に挿入された第1・第2板材を、柱部材の外周面側から容易に固定することができる。
【0014】
第6の発明に係る建設機械は、第1から第5の発明のいずれか1つに係るキャブを搭載している。
これにより、剛性が向上したキャブを搭載した建設機械を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るキャブによれば、簡易な構成によって剛性が向上した柱部材によってキャブ全体の剛性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係るキャブ10を搭載した油圧ショベル(建設機械)1について、図1〜図12を用いて説明すれば以下の通りである。
[油圧ショベル1全体の構成]
本実施形態に係る油圧ショベル1は、図1に示すように、下部走行体2と、旋回フレーム3と、作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジン6と、キャブ10と、を備えている。
【0017】
下部走行体2は、進行方向左右両端部分に巻き掛けられた履帯Pを回転させることで、油圧ショベル1を前後進させるとともに、上面側に旋回フレーム3を旋回可能な状態で搭載している。
旋回フレーム3は、下部走行体2上において任意の方向に旋回可能であって、上面に作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジン6と、キャブ10と、を搭載している。旋回フレーム3は、ほぼ中央部分に、作業機4を取り付けるためのメインビーム3aを有している。メインビーム3aは、上方に向かって突出する一対の板状フレームであって、この間に作業機4のアームが装填されて回動可能な状態で固定される。なお、この旋回フレーム3の一部であるメインビーム3aとキャブ10を構成する柱部材34との近接部分X(図2参照)周辺の構成については、後段にて詳述する。
【0018】
作業機4は、ブームと、ブームの先端に取り付けられたアームと、アームの先端に取り付けられたバケットとを含むように構成されており、油圧シリンダによってアームやバケット等を上下に移動させながら、土砂や砂礫等の掘削を行う土木工事の現場において作業を行う。
カウンタウェイト5は、例えば、鋼板を組み立てて形成した箱の中に屑鉄やコンクリート等を入れて固めたものであって、採掘時等において車体のバランスをとるために旋回フレーム3の後部に配置されている。
【0019】
エンジン6は、下部走行体2や作業機4を駆動するための駆動源であって、カウンタウェイト5に隣接する位置に配置されている。
キャブ10は、油圧ショベル1のオペレータが乗降する運転室であって、作業機4の先端部を見通せるように、旋回フレーム3上における作業機4の取り付け部分の側方となる左側前部に配置されている(図2および図3参照)。なお、このキャブ10のキャブ構造については、後段にて詳述する。
【0020】
[キャブ10の構造]
キャブ10は、図2および図3に示すように、旋回フレーム3上における作業機4が取り付けられるメインビーム3aの左側に近接して配置されている。また、キャブ10は、図4に示すように、5本の柱部材31〜35や梁部材36等によって構成されている。
柱部材31〜35は、左前柱部材31と、右前柱部材32と、左後柱部材33と、右後柱部材34と、左中央柱部材35と、を含むように構成されている。
【0021】
左前柱部材31および右前柱部材32は、いわゆるAピラーと呼ばれる柱として使用されており、内部が中空の異形断面を有している。そして、左右前柱部材31,32は、中央部付近において折り曲げられて、キャブ10の前方において床面から立設される柱部分と天井面を構成する梁部分とを含んでいる。なお、上記異形断面とは、円管状のパイプを除く、例えば、断面が略四角形や複雑な形状のものを意味する。
【0022】
左後柱部材33および右後柱部材34は、いわゆるCピラーと呼ばれる柱として利用されており、内部が中空の略四角形の異形断面を有している。そして、左右後柱部材33,34は、ほぼ直線状の柱としてキャブ10の後方において床面から立設されている。また、左右後柱部材33,34は、上端部同士を梁部材36によって互いに接合されている。さらに、左後柱部材33および右後柱部材34は、キャブ10の強度を確保する上で重要な役割を果たしている。特に、右後柱部材34は、作業時や休車時等の通常時には、近接する旋回フレーム3のメインビーム3aと離間しているが、油圧ショベル1が転倒した場合等においてキャブ10の変形や傾き等によって近接する旋回フレーム3のメインビーム3aに対して接触し、この部分を基点に折れ曲がるおそれがある。このため、右後柱部材34は、旋回フレーム3のメインビーム3aと接触するおそれがある部分を中心として、十分な強度を有することが好ましい。
【0023】
本実施形態では、図5および図6等に示すように、右後柱部材34の側面に対して孔部34a,34b,34cをそれぞれ形成し、そこに板材21a,21b,21cを挿入して溶接によって固定した補強構造(柱部材の補強構造)20を採用している。なお、この補強構造20の構成については、後段にて詳述する。
左中央柱部材35は、いわゆるBピラーと呼ばれる柱として利用されており、ほぼ直線状の柱としてキャブ10の左側面におけるほぼ中央部において床面から立設されている。
【0024】
[右後柱部材34の補強構造20]
本実施形態では、図5および図6等に示すように、上述した油圧ショベル1に搭載されたキャブ10を構成する柱部材31〜35のうち、キャブ10の後方に配置されたCピラーに相当する右後柱部材34に対して、補強構造20を採用している。
なお、左後柱部材33については、旋回フレーム3のメインビーム3a等の他の部材と接触するおそれがないことから、図4に示すように、長手方向における中央部付近等に、同様の補強構造20が採用されていればよい。
【0025】
右後柱部材34は、図5および図11に示すように、旋回フレーム3のメインビーム3aに近接する位置に、互いに対向する2つの面を貫通する孔部(第1孔部)34aを有している。また、右後柱部材34は、図6および図7に示すように、長手方向におけるほぼ中央部付近に、幅方向において孔部34aを挟み込むように平行に形成され、互いに対向する面まで貫通する一対の孔部(第2孔部)34b,34cを有している。そして、図8(a)および図8(b)に示す板材(第1板材)21a等が、それぞれの孔部34a等に挿入された後、外周面側から溶接によって固定される。
【0026】
これにより、孔部34aとこれに挿入された板材21aとによって、補強構造20が形成される。同様に、孔部34bとこれに挿入された板材(第2板材)21b、孔部34cとこれに挿入された板材(第2板材)21cとによって、それぞれ補強構造20が形成される。なお、板材21bと板材21cとは、孔部34b,34cに対して互いに反対向きに挿入されているものとする。
【0027】
板材21a等は、挿入される孔部34a等の形状、間隔等に応じて、図8(a)および図8(b)に示すように、挿入側の先端に、複数の凸部21aaを有している。この挿入側の凸部21aaが孔部34aに対して嵌合することで、板材21aの位置決めを容易に行うことができる。なお、孔部34b,34cに対して挿入される他の板材21b,21cについても同様である。
【0028】
また、板材21aは、近接配置された旋回フレーム3のメインビーム3aとの接触面に対して交差する方向に沿って挿入されている。これにより、図12に示すように、油圧ショベル1が転倒した際等にキャブ10が変形したり傾いたりした時等において、右後柱部材34の下部が旋回フレーム3のメインビーム3aに接触した場合でも、板材21aの挿入方向から付与される外力に対して板材21aが突っ張ることで、右後柱部材34の断面強度を向上させることができる。なお、実際の油圧ショベルでは、見栄え上、柱部材を覆うパネルが設けられており、板材21aがパネルを介して柱部材に当接する場合にも、同様の効果が期待できる。さらに、板材21aは、図7に示すように、右後柱部材34の断面形状におけるほぼ中央部付近を通過するように挿入固定されている。これにより、図9に示すように、板材21aの挿入方向に外力が付与された場合でも、右後柱部材34の変形量を低減することができる。
【0029】
さらに、補強構造20に含まれる板材21aおよび孔部34aと、板材21b,21cおよび孔部34b,34cとは、図10に示すように、正面視において、右後柱部材34の長手方向に一部が重複するように配置されている。これにより、右後柱部材34の長手方向中央部付近の補強構造20と、下部の補強構造20とが途切れてしまうことを回避することができる。この結果、局所的に強度が低下する部分が形成されることを回避して、強度的に優れた右後柱部材34を構成することができる。
【0030】
また、右後柱部材34の外周面に形成された孔部34a〜34cは、図6等に示すように、できる限り、長手方向において互いにずれた位置に形成されている。これにより、右後柱部材34の断面を構成する1つの面において、右後柱部材34の幅方向に開口部分が多く形成されることをできる限り回避することができる。この結果、右後柱部材34における1つの面に開口部分が多くなって、変形による組み付け精度が低下してしまうことを防止することができる。よって、溶接や組み付け等を精度よく実施することができる。
【0031】
[右後柱部材34の補強構造20を含むキャブ10の特徴]
(1)
本実施形態のキャブ10では、図2等に示すように、旋回フレーム3上に配置されたキャブ10を構成する複数の柱部材31〜34において、図6および図10に示すように、右後柱部材34の同一面に形成された孔部34aと孔部34b,34cとが、右後柱部材34の幅方向にずれた位置にあって、その端部において一部重複するように互いに略平行に配置されている。そして、各孔部34a〜34cに対して、それぞれ板材21a〜21cが挿入された状態で固定される。
【0032】
これにより、長手方向に複数の板材21a〜21cを挿入して補強構造20を配置した場合でも、板材21a〜21cを挿入した部分同士の間等のように局部的に強度が劣る部分が形成されることを回避することができる。この結果、長手方向において安定して補強された右後柱部材34を構成することができる。
【0033】
(2)
本実施形態のキャブ10では、図6、図7および図10に示すように、孔部34b,34cの間に挟まれるように孔部34aが配置されており、孔部34aと孔部34b,34cとは長手方向において一部が重複するように形成されている。
これにより、3つの孔部34a〜34cに対して、それぞれ板材21a〜21cを挿入し、孔部34aと孔部34b,34cとが長手方向において一部重複するように配置することで、効果的な補強構造を形成することができる。
【0034】
(3)
本実施形態のキャブ10では、図4等に示すように、上述した補強構造が適用された柱部材として、キャブ10の右後柱部材34を用いている。
これにより、一般的に、キャブ10の右後方に近接配置されているメインビーム3a等に対してキャブ10の一部が接触するほどの外力がキャブ10に加えられた場合でも、接触部分における剛性を向上させることができる。よって、キャブ10が折れ曲がって破損する等の問題を回避してキャブ10の剛性を高めることができる。
【0035】
(4)
本実施形態のキャブ10では、図5、図6および図8に示すように、各孔部34a〜34cに対して挿入される板材21a〜21cが、挿入方向に対して突出する凸部21aa等を有している。
これにより、凸部21aaを孔部34a等に嵌合させるように挿入することで、孔部34a〜34cにおける板材21a〜21cの位置合わせを容易に行うことができる。
【0036】
(5)
本実施形態のキャブ10では、図5、図6および図8に示すように、各孔部34a〜34cに対して挿入される板材21a〜21cを溶接によって固定している。
これにより、各孔部34a〜34cに対して挿入された板材21a〜21cを、右後柱部材34の外側から溶接して容易に固定することができる。
【0037】
(6)
本実施形態の油圧ショベル1は、図1に示すように、上述したキャブ10を搭載している。
これにより、剛性が高いキャブ10を搭載した油圧ショベル1を提供することができる。
【0038】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、右後柱部材34に対して、長手方向において3つの板材21a〜21cをそれぞれ挿入した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、幅方向においてずらして長手方向において一部が重複するように形成された2つの孔部に対して、それぞれ板材を挿入した補強構造であってもよい。
【0039】
(B)
上記実施形態では、キャブ10を構成する柱部材31〜34のうち、右後柱部材34に対して、上述した補強構造を採用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、他の柱部材31〜33に対しても同様の補強構造を適用してもよい。
【0040】
(C)
上記実施形態では、各孔部34a〜34cに対して挿入される各板材21a〜21cが、挿入方向に突出する凸部21aaを有している例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、挿入方向に凸部のない、フラットな面の板材を用いて補強構造を構成してもよい。
ただし、孔部に対する板材の位置合わせ等の観点では、上記実施形態のように、凸部を有する板材を用いることがより好ましい。
【0041】
(D)
上記実施形態では、右後柱部材34の長手方向における中央部付近に形成された孔部34b,34cに対して挿入される板材21b,21cの挿入方向を反対向きにした例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
例えば、板材の挿入方向を全て同じにしてもよい。
ただし、キャブに対する外力が付与される方向が一定ではない場合には、様々な向きで 挿入された板材を含む補強構造であることがより好ましい。
【0043】
(E)
上記実施形態では、本発明に係る柱部材の補強構造20を含む柱部材によって構成されるキャブ10を搭載した建設機械として、油圧ショベル1を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ホイルローダ等の他の建設機械に搭載されるキャブを構成する柱部材に対して、本発明の補強構造が適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のキャブは、キャブの軽量化を図りつつ、キャブの剛性をさらに向上させることができるという効果を奏することから、建設機械のキャブを構成する柱部材に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャブを搭載した油圧ショベルの構成を示す側面図。
【図2】図1の油圧ショベルの旋回フレーム上に搭載されたキャブを示す斜視図。
【図3】図2の旋回フレーム上のキャブを示す側面図。
【図4】図2等のキャブの構成を示す斜視図。
【図5】図2の旋回フレームの一部とキャブとの近接位置に形成された補強構造を示す拡大図。
【図6】図4のキャブを構成する柱部材の1つの構成を示す側面図。
【図7】図6のA−A線矢視断面図。
【図8】(a),(b)は、補強構造を構成する板材を示す側面図と正面図。
【図9】図7の板材が柱部材の中央部付近に挿入された際の変形低減状態を説明するための断面図。
【図10】図5の補強構造同士の重複部分を示す拡大図。
【図11】図5の補強構造付近の構成を示す正面図。
【図12】転倒時等にキャブに負荷が掛かって変形した際の図5の補強構造付近の構成を示す詳細断面図。
【符号の説明】
【0046】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 旋回フレーム
3a メインビーム
4 作業機
5 カウンタウェイト
6 エンジン
10 キャブ
20 補強構造
21a 板材(第1板材)
21aa 凸部
21b 板材(第2板材)
21c 板材(第2板材)
31 左前柱部材
32 右前柱部材
33 左後柱部材
34 右後柱部材(柱部材)
34a 孔部(第1孔部)
34b 孔部(第2孔部)
34c 孔部(第2孔部)
35 左中央柱部材
36 梁部材
P 履帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を含む異形断面を有する複数の柱部材によって構成されるキャブであって、
長手方向が前記柱部材の長手方向に沿って形成され、前記柱部材の左右方向において前記柱部材を貫通するように形成された第1孔部と、
前記第1孔部に対して、幅方向においてずらすとともに、前記柱部材の長手方向において一部が重複するように形成された第2孔部と、
前記第1孔部に対して挿入された状態で固定される第1板材と、
前記第2孔部に対して挿入された状態で固定される第2板材と、
を有する柱部材を備えたキャブ。
【請求項2】
前記第2孔部は、前記柱部材の長手方向に沿って並列に2つ形成されており、
前記第1孔部は、前記2つの第2孔部の間に形成されている、
請求項1に記載のキャブ。
【請求項3】
前記柱部材は、右後方に配置されている、
請求項1または2に記載のキャブ。
【請求項4】
前記第1板材および前記第2板材の少なくとも一方は、前記柱部材に挿入される方向に交差する方向に突出した凸部を有している、
請求項1から3のいずれか1項に記載のキャブ。
【請求項5】
前記第1・第2板材は、前記柱部材に対して溶接によって固定されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載のキャブ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のキャブを備えた建設機械。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−83338(P2010−83338A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254811(P2008−254811)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】