説明

キャブのペダル部補強構造

【課題】きわめて簡単な構造で溶接等の工数を不要とし、低コストで重量の増加も最小限にしたブレーキペダル組立品等の支持構造を実施できる、ペダル部補強構造を提供する。
【解決手段】車幅方向に設置されたキャブのフロントクロスメンバに沿ってブレーキペダル組立品とクラッチペダル組立品とが設置されてなるキャブのペダル部補強構造であって、前記ブレーキペダル組立品が前記フロントクロスメンバ3の上面に取り付けられ、ブレーキペダル組立品10とフロントクロスメンバ3の上面との間に、フロントフロアを補強するフロントフロアリンフォース部材8をブレーキペダル組立品の設置範囲まで延長し、該フロントフロアリンフォース部材8をブレーキペダル組立品の補強機能を有する部材となしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブの車幅方向に設置されたフロントクロスメンバに沿ってブレーキペダル組立品とクラッチペダル組立品とが設置してなるペダル部補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図4(a)は、フロント車室のブレーキペダル組立品近傍を示す図1のA−A断面相当図である。図4(b)は、(a)のC部詳細の断面図である。
図4(a)、(b)において、キャブのフロントクロスメンバ3が車幅方向に設置され、該フロントクロスメンバ3に沿って上方にブレーキペダル組立品10が設置され、該フロントクロスメンバ3の裏側に補強部材として補強リンフォース010が設置されている。
【0003】
前記補強リンフォース010は、ブレーキペダル組立品10を組付けるボルト6を、座金9を介してナット7で該ブレーキペダル組立品10と、共締めにて締め付けるとともに、他の要部の複数個所をフロントクロスメンバ3にスポット溶接している。
【0004】
尚、特許文献1(特開2000−108939号公報)には、車両のキャブのペダルブラケットの運転性を向上させた発明が示されている。
また、特許文献2(実公平4−17428号公報)には、キャブオーバ型車両の前部構造において、フロントメンバの延長部分が変形して動的外力を吸収機能が増し、横断面空間による補強作用と相俟って、車体の損傷を回避するようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−108939号公報
【特許文献2】実公平4−17428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4に示されるような、従来のキャブ車両のフロント車室のブレーキペダル組立品の設置構造にあっては、ブレーキペダル組立品10のフロントクロスメンバ3の取付け構造において、フロントクロスメンバ3の裏側に補強部材として補強リンフォース010が設置されている。
かかる補強リンフォース010は、ブレーキペダル組立品10を組付けるボルト6と共締めにて締め付けるとともに、他の要部の複数個所をフロントクロスメンバ3にスポット溶接して装着している。
【0007】
このため、従来のフロント車室のブレーキペダル組立品の設置構造にあっては、補強リンフォース010を別個に設置する必要があり部品点数が多くなるとともに、該補強リンフォース010の設置にスポット溶接が必要となり、溶接工数が増加する。
【0008】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、きわめて簡単な構造で溶接等の工数を不要とし、低コストで重量の増加も最小限にしたブレーキペダル組立品等の支持構造を実施できる、ペダル部補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる目的を達成するもので、車幅方向に設置されたキャブのフロントクロスメンバに沿ってブレーキペダル組立品とクラッチペダル組立品とが設置されてなるキャブのペダル部補強構造であって、前記ブレーキペダル組立品が前記フロントクロスメンバの上面に取り付けられ、前記ブレーキペダル組立品と前記フロントクロスメンバの上面との間に、フロントフロアを補強するフロントフロアリンフォース部材を前記ブレーキペダル組立品の設置範囲まで延長し、該フロントフロアリンフォース部材をブレーキペダル組立品の補強機能を有する部材となしたことを特徴とする。
【0010】
本発明は、好ましくは、前記フロントフロアリンフォース部材を、前記クラッチペダル組立品の設置範囲まで延長し、該フロントフロアリンフォース部材をクラッチペダル組立品の補強機能を有する部材とする。
【0011】
また、本発明は、車幅方向に設置されたキャブのフロントクロスメンバに沿ってブレーキペダル組立品とクラッチペダル組立品とが設置されてなるキャブのペダル部補強構造であって、前記ブレーキペダル組立品とクラッチペダル組立品とが前記フロントクロスメンバの上面に取り付けられ、前記ブレーキペダル組立品およびクラッチペダル組立品と前記フロントクロスメンバの上面との間に、フロントフロアを補強するフロントフロアリンフォース部材を前記ブレーキペダル組立品およびクラッチペダル組立品の両設置範囲まで延長するととともに、さらにピラー部分に亘り延長して設置して、前記フロントフロアリンフォース部材をこれらの補強機能を有する部材となしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車幅方向に設置されたキャブのフロントクロスメンバに沿ってブレーキペダル組立品とクラッチペダル組立品とが設置されてなるキャブのペダル部補強構造であって、ブレーキペダル組立品とフロントクロスメンバの上面との間に、フロントフロアを補強するフロントフロアリンフォース部材を前記ブレーキペダル組立品の設置範囲まで延長し、フロントフロアリンフォース部材をブレーキペダル組立品の補強機能を有する部材となしたので、フロントフロアリンフォース部材を延長して、該延長部をブレーキペダル組立品とともに、フロントクロスメンバにボルトの共締めにすることによって、ブレーキペダル組立品の取付部の十分な補強をすることができる。
【0013】
これにより、従来のような、補強リンフォース010の設置を省略することができて部品点数を低減でき、また前記補強リンフォース010の設置に伴うスポット溶接を省略することができて溶接工数を低減できる。
従って、本発明によれば、フロントフロアリンフォース部材を拡張してフロントクロスメンバにブレーキペダル組立品とボルトの共締めにして固定するという、きわめて簡単な構造で溶接等の工数を不要とした手段によって、低コストで重量の増加も最小限にしたブレーキペダル組立品等の支持構造を実施できる。
【0014】
また本発明によれば、前記フロントフロアリンフォース部材を、前記クラッチペダル組立品の設置範囲まで延長すれば、フロントフロアリンフォース部材を拡張してフロントクロスメンバにクラッチペダル組立品とボルトの共締めにて固定することが可能となり、該フロントフロアリンフォース部材をクラッチペダル組立品の補強機能を有する部材として適用できる。
【0015】
また本発明によれば、車幅方向に設置されたキャブのフロントクロスメンバに沿ってブレーキペダル組立品とクラッチペダル組立品とが設置されてなるキャブのペダル部補強構造であって、ブレーキペダル組立品およびクラッチペダル組立品とフロントクロスメンバの上面との間に、フロントフロアを補強するフロントフロアリンフォース部材を前記ブレーキペダル組立品およびクラッチペダル組立品の両設置範囲まで延長するととともに、さらにピラー部分に亘り延長して設置して、フロントフロアリンフォース部材をこれらの補強機能を有する部材となしたことで、ブレーキペダル組立品及びクラッチペダル組立品からピラー部分に亘る、全長において、フロントフロアリンフォース部材の拡張による補強ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0017】
図1は、本発明の実施例を示し、フロント車室のブレーキペダル組立品近傍を示す外観斜視図である。また、図2(a)は図1のA−A断面の相当図、図2(b)は、(a)のB部詳細の断面図である。図3は図1においてブレーキペダル組立品等の付属部品を省略した外観斜視図である。
図1〜3において、フロントクロスメンバ3が車幅方向のピラー部4に間に設置され、該フロントクロスメンバ3に沿って上方にブレーキペダル組立品10が設置されている。図1において、ブレーキペダルは符号5で、フロントフロアは符号3sでそれぞれ示されている。フロントフロント3sはその下面側にフロントフロア3sを補強するためのフロントフロアリンフォース部材8が積層状態で装着されている。
【0018】
車幅方向に設置された前記フロントクロスメンバ3に沿って、ブレーキペダル組立品10とクラッチペダル組立品(図示省略)とが設置されており、フロントフロアリンフォース部材8を前記ブレーキペダル組立品10の設置範囲まで延長して、図3に示すように、フロントクロスメンバリンフォースブレーキ部1を構成している。
前記フロントクロスメンバリンフォースブレーキ部1は、図2(a)、(b)のように、ブレーキペダル組立品10を組付けるボルト6を、該フロントクロスメンバリンフォースブレーキ部1に明けたボルト孔6aに通して、座金9を介してナット7で該ブレーキペダル組立品10と共締めにて締め付けることにより、ブレーキペダル組立品10をフロントフロアリンフォース部材8とともにフロントクロスメンバ3に固定している。
【0019】
従って、かかる実施例によれば、フロントフロアリンフォース部材をブレーキペダル組立品10の設置範囲まで延長してフロントクロスメンバリンフォースブレーキ部1を構成し、該フロントクロスメンバリンフォースブレーキ部1をブレーキペダル組立品10とともに、フロントフロアリンフォース部材8にボルト6の共締めにして補強したので、フロントフロアリンフォース部材8を拡張してフロントクロスメンバリンフォースブレーキ部1を構成して、ボルト6の共締めにして固定するのみで、ブレーキペダル組立品10の取付部の十分な補強をすることができる。
【0020】
また、図3に示すように、フロントフロアリンフォース部材8をクラッチペダル組立品の設置範囲まで延長してフロントクロスメンバリンフォースクラッチ部1aを構成すれば、フロントフロアリンフォース部材8を拡張してフロントクロスメンバリンフォースクラッチ部1aとして、該フロントクロスメンバリンフォースクラッチ部1aに明けたボルト孔6bに通して、図2と同様に座金9を介してナット7でクラッチペダル組立品と共締めにて締め付けることにより、リンフォース部材8に固定することが可能となり、該フロントクロスメンバリンフォースクラッチ部1をクラッチペダル組立品の補強機能を有する部材として適用できる。
【0021】
さらに、前記フロントフロアリンフォース部材8を、前記ブレーキペダル組立品10の設置範囲であるフロントクロスメンバリンフォースブレーキ部1及びクラッチペダル組立品の設置範囲であるフロントクロスメンバリンフォースクラッチ部1a及び前記両範囲から、フロントクロスメンバリンフォースピラー部1bを介してピラー部分4に亘り延長して設置すれば、フロントフロアリンフォース部材8をブレーキペダル組立品10及びクラッチペダル組立品からピラー部分4に亘る、全長において、フロントフロアリンフォース部材8の拡張による補強ができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、きわめて簡単な構造で溶接等の工数を不要とし、低コストで重量の増加も最小限にしたブレーキペダル組立品等の支持構造を実施できる、ペダル部補強構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例を示し、キャブのフロント車室のブレーキペダル組立品近傍を示す外観斜視図である。
【図2】(a)は本発明の実施例を示す図1のA−A断面図である。(b)は、(a)のB部詳細の断面図である。
【図3】本発明の実施例を示す図1においてブレーキペダル組立品等の付属部品を省略した外観斜視図である。
【図4】(a)は、従来のフロント車室のブレーキペダル組立品近傍を示す図1のA−A断面相当図である。(b)は、(a)のC部詳細の断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 フロントクロスメンバリンフォースブレーキ部
1a フロントクロスメンバリンフォースクラッチ部
1b フロントクロスメンバリンフォースピラー部
3 フロントクロスメンバ
3s フロントフロア
4 ピラー部
5 ブレーキペダル
6 ボルト
6a ボルト孔
6b ボルト孔
7 ナット
8 フロントフロアリンフォース部材
10 ブレーキペダル組立品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に設置されたキャブのフロントクロスメンバに沿ってブレーキペダル組立品とクラッチペダル組立品とが設置されてなるキャブのペダル部補強構造であって、
前記ブレーキペダル組立品が前記フロントクロスメンバの上面に取り付けられ、前記ブレーキペダル組立品と前記フロントクロスメンバの上面との間に、フロントフロアを補強するフロントフロアリンフォース部材を前記ブレーキペダル組立品の設置範囲まで延長し、該フロントフロアリンフォース部材をブレーキペダル組立品の補強機能を有する部材となしたことを特徴とするキャブのペダル部補強構造。
【請求項2】
前記フロントフロアリンフォース部材を、前記クラッチペダル組立品の設置範囲まで延長し、該フロントフロアリンフォース部材をクラッチペダル組立品の補強機能を有する部材となしたことを特徴とする請求項1記載のキャブのペダル部補強構造。
【請求項3】
車幅方向に設置されたキャブのフロントクロスメンバに沿ってブレーキペダル組立品とクラッチペダル組立品とが設置されてなるキャブのペダル部補強構造であって、
前記ブレーキペダル組立品とクラッチペダル組立品とが前記フロントクロスメンバの上面に取り付けられ、前記ブレーキペダル組立品およびクラッチペダル組立品と前記フロントクロスメンバの上面との間に、フロントフロアを補強するフロントフロアリンフォース部材を前記ブレーキペダル組立品およびクラッチペダル組立品の両設置範囲まで延長するととともに、さらにピラー部分に亘り延長して設置して、前記フロントフロアリンフォース部材をこれらの補強機能を有する部材となしたことを特徴とするキャブのペダル部補強構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−143389(P2010−143389A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322533(P2008−322533)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】