説明

キャブの前端下部構造

【課題】車両の重量化を抑制しつつ、キャブと車体フレームとのキャブ側の結合部分の剛性を十分に確保する。
【解決手段】ダッシュパネル19とフロアパネル21とを有するキャブ3の前端下部を、車体フレーム4に設けられたキャブマウント5に結合して支持するキャブ3の前端下部構造1であって、フロアパネル21の前端部のうちキャブマウント5の上方部分に曲折形成されて下方に凹むフロア凹部31と、ダッシュパネル19の下端縁のうちフロア凹部31の前方部分から下方へ延びる縦板部43aと、縦板部43aの下端から後方へ曲折して延びてフロア凹部31と上下で重なる横板部43bとを有するダッシュパネル延長部43とを備える。フロア凹部31とダッシュパネル延長部43の横板部43bとは、連通するフロア凹部ボルト挿通孔31fと横板部ボルト挿通孔43dとを挿通するボルト14によってキャブマウント5に結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダッシュパネルとフロアパネルとを有するキャブの前端下部を、車体フレームに設けられたキャブマウントに結合して支持するキャブの前端下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2002−96767号公報には、キャブオーバー型車両のキャブチルト装置が記載されている。このキャブチルト装置では、キャブのフロアの下側に、車両前後方向に延在してキャブの強度部材を構成する左右一対のメーンシルが固着され、メーンシルの前端部下方にはキャブ側ブラケットが固着されている。また、キャブ側ブラケットは、車体フレームのサイドレールの前端部分に固着されたキャブマウントブラケットにボルトによって固着され、キャブは、キャブ側ブラケット及びキャブマウントブラケットによって車両に対して回転可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−96767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特開2002−96767号公報のキャブチルト装置を備える車両では、メーンシルのキャブ側ブラケットが車体フレームのキャブマウントブラケットと固着することによって、キャブと車体フレームとが結合し、キャブが車体フレームに支持されている。このため、車体フレームからキャブへの入力は、キャブマウントブラケット及びキャブ側ブラケットを介してメーンシルにのみ入力する。したがって、キャブと車体フレームとのキャブ側の結合部分であるメーンシルの剛性を確保するために、メーンシルの板厚を比較的厚く設定しなければならず、板厚の増加に伴い車両の重量が増加する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、車両の重量化を抑制しつつ、キャブと車体フレームとのキャブ側の結合部分の剛性を十分に確保することができるキャブの前端下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明は、ダッシュパネルとフロアパネルとを有するキャブの前端下部を、車体フレームに設けられたキャブマウントに結合して支持するキャブの前端下部構造であって、フロア凹部と、ダッシュパネル延長部と、を備える。
【0007】
フロア凹部は、フロアパネルの前端部のうち前記キャブマウントの上方部分に曲折形成されて下方に凹む。ダッシュパネル延長部は、ダッシュパネルの下端縁のうちフロア凹部の前方部分から下方へ延びる縦板部と、縦板部の下端から後方へ曲折して延びてフロア凹部と上下で重なる横板部とを有する。
【0008】
フロア凹部とダッシュパネル延長部の横板部とは、両者を貫通するボルト挿通孔を有し、ボルト挿通孔を挿通するボルトによってキャブマウントに結合される。
【0009】
上記構成によれば、フロア凹部とダッシュパネル延長部の横板部とが、上下で重なり、両者を貫通するボルト挿通孔をボルトが挿通することによって、キャブマウントに結合される。このため、車体フレームからの入力は、キャブマウント、フロア凹部及びダッシュパネル延長部の横板部を介して、フロアパネルとダッシュパネルとに分散して入力する。すなわち、車体フレームからの入力を、フロアパネルとダッシュパネルとによって分担して支持することができ、キャブと車体フレームとのキャブ側の結合部分に十分な剛性を確保することができる。したがって、キャブと車体フレームとの結合部分におけるキャブ側の部材の板厚を増加する必要がなく、板厚の増加に伴う車両の重量化を抑制することができる。
【0010】
また、ダッシュパネル延長部の縦板部は、フロア凹部の前端に接合されてフロア凹部の前方を閉止してもよい。
【0011】
上記構成によれば、ダッシュパネル延長部の縦板部とフロア凹部の前端との接合部分の剛性を高めることができる。また、フロア凹部の前方を閉止するための部材を設ける必要がないので、部品点数及び組立工数を削減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の重量化を抑制しつつ、キャブと車体フレームとのキャブ側の結合部分の剛性を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両の要部斜視図である。
【図2】図1の要部分解斜視図である。
【図3】図1の要部分解斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図である。
【図7】図1のVII−VII線断面図である。
【図8】図1の車両の変形例のVII−VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図中矢印FRは車両前方を、矢印UPは上方を、矢印INは車幅方向内側をそれぞれ示している。また、以下の説明において、前後とは車両の前後を意味し、左右とは車両前方を向いた状態での左右を意味する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態にかかるキャブの前端下部構造1は、ダッシュパネル19とフロアパネル21とを有するキャブ3の前端下部を、車体フレーム4に設けられたキャブマウント5に結合して支持するキャブ3の前端下部に設けられる。
【0016】
車両2は、キャブ3の下方にエンジンルーム44が位置するキャブオーバー型のトラックである。キャブ3は、車体フレーム4の前端部に取付けられているキャブマウント5によって、前方へ傾斜可能に支持される。
【0017】
車体フレーム4は、前後方向に沿って並行に延びる左右のメインビーム6と、複数のクロスメンバ7とキャブマウント5とを有する。左右のメインビーム6は、直交する複数のクロスメンバ7によって相互に連結される。車体フレーム4の前端部付近及び後端部付近には、走行車軸(図示省略)が設けられる。走行車軸の車幅方向両端には、走行車輪8が回転自在に支持される。
【0018】
図1及び図2に示すように、キャブマウント5は、車幅方向に所定距離を隔てて車体フレーム4から立設する一対のキャブマウントブラケット9と、略円筒状のマウントチューブ10と、マウントチューブ10の外周面に固定される車体フレーム側締結部11と、マウントチューブ10内を挿通するトーションバー(図示省略)と、アンカーアーム(図示省略)と、を有する。キャブマウントブラケット9は、上方内部に弾性部材からなる略円筒状のマウントラバー(図示省略)を有する。マウントチューブ10は、マウントラバーを介して、キャブマウントブラケット9に回動可能に軸支される。トーションバーの一端部は、マウントチューブ10に固定され、他端部は、マウントチューブ10から延出し、アンカーアームに固定される。アンカーアームは、キャブマウントブラケット9に固定される。
【0019】
車体フレーム側締結部11は、車両2の前端側から下方へ傾斜して延びる前板部12と前板部12の後端部から略水平に曲折して、後方へ延びる後板部13とを有する。前板部12には、上下方向に貫通する前板部ボルト挿通孔12cが所定の間隔を隔てて3箇所に設けられている。また、前板部12の車幅方向の両端部には、両端部から下方に曲折して延びる一対の前側壁部12aが形成されている。前側壁部12aの略中央には、マウントチューブ10が挿通する挿通孔12b(図7参照)が形成されている。マウントチューブ10が挿通孔12bに挿通することによって、車体フレーム側締結部11は、マウントチューブ10の外周面に相対回転不能に固定される。また、後板部13には、後板部ボルト挿通孔13bが所定の間隔を隔てて2箇所に設けられている。また、後板部13の車幅方向の両端部には、両端部から下方に曲折して延びる一対の後側壁部13aが形成されている。
【0020】
図1のようにキャブがチルトダウンしているとき、キャブマウント5のマウントチューブ10内を挿通するトーションバーはねじれた状態となって、ねじり反力を発生する。キャブマウント5は、このねじれ反力によって、車体フレーム側締結部11の後板部13を上方に付勢し、キャブをチルトアップする際の作業者の操作力を補助する。
【0021】
キャブ3は、略箱状体であり、内部に車室15を区画する。キャブ3は、ルーフパネル16と、サイドパネル17と、フロントフレーム部18と、ダッシュパネル19と、バックパネル20と、フロアパネル21と、を有する。これらのパネルは、例えば、鋼板などの高強度材料からなり、プレス成形によって成形される。また、これらのパネルは、スポット溶接などによって接合される。
【0022】
ルーフパネル9は、車室15の上部を区画する。サイドパネル17は、ルーフパネル16の車幅方向両端部に接合し、車室15の車幅方向両端部を区画する。フロントフレーム部18は、車室15の前方でサイドパネル17に接合する。ダッシュパネル19は、フロントフレーム部18とサイドパネル17とに接合し、車幅方向に沿って起立して車室15の前端を区画する。バックパネル20は、ルーフパネル16とサイドパネル17とに接合し、車室15の後部を区画する。フロアパネル21は、サイドパネル17、ダッシュパネル19及びバックパネル20に接合し、車室15の底部を区画する。
【0023】
ルーフパネル16は、略矩形状の平板である。ルーフパネル16の車幅方向両端部は、サイドパネル17の上端部と接合し、後端部は、バックパネル20の上端部と接合する。
【0024】
サイドパネル17は、図1及び図2に示すように、中央に略矩形状に形成されるドア開口22を有し、また、フロントピラー部23と、ロッカー部24と、フェンダー部25と、ルーフサイドレール部26と、リアピラー部27と、を有する。
【0025】
フロントピラー部23は、上端から前方へ傾斜して延びる傾斜部23aと傾斜部23aの下端から鉛直方向へ曲折して延びる鉛直部23bとを有し、ドア開口22の前縁を構成する。また、フロントピラー部23の車幅方向外側面には、上下2箇所にドアヒンジ取付面部23cが設けられる。ドアヒンジ取付面部23cは、ドア(図示省略)をドアヒンジ(図示省略)を介して回転自在に支持する。また、ドアヒンジ取付面部23cは、ドアヒンジを固定するためのボルトが螺合するボルト挿通孔(図示省略)を有する。ロッカー部24は、フロントピラー部23の下端(鉛直部23bの下端)から後方へ曲折して延び、ドア開口22の下縁の一部を構成する。フェンダー部25は、ロッカー部24の後端からアーチ状に延びている。フェンダー部25の下端側は、前車輪を上方から覆うホィールハウスを構成する。また、フェンダー部25の上端側は、ドア開口22の下縁の一部を構成する。ルーフサイドレール部26は、フロントピラー部23の上端(傾斜部23aの上端)から車両後方へ曲折して延び、ドア開口22の上縁を区画する。リアピラー部27は、フェンダー部25の後端とルーフサイドレール部26の後端とを連結してドア開口22の後縁を区画する。
【0026】
バックパネル20は、略矩形板状体である。バックパネル20は、略中央部に後部窓ガラスが嵌合されるバックパネル開口部28を有する。また、バックパネル20は、下端部の左右2箇所から下方に延出するバックパネル延長部29を一体的に有する。
【0027】
フロアパネル21は、図2〜図6に示すように、略矩形板状体であり、センターフロアパネル部30と、一対のフロア凹部31と、一対のサイドフロアパネル部32とを有する。これらは、プレス加工などによって、一体的に形成される。フロアパネル21の上面は車室15の床面15aを形成する。なお、図4〜図6では、後述するサイドフロアパネル部の突出部36の図示を省略している。
【0028】
センターフロアパネル部30は、車室15の車幅方向中央に形成され、車室15の前端から後端、すなわちフロアパネル21の前端から後端まで延びる。また、センターフロアパネル部30は、フロアパネル21の前端から後方へ略水平に延びるセンターフロアパネル前方部30aと、センターフロアパネル前方部30aの後端から上方へ傾斜して延びるセンターフロアパネル傾斜部30bと、センターフロアパネル傾斜部30bの後端からセンターフロアパネル前方部30aに対して略平行に曲折してフロアパネル21の後端まで延びるセンターフロアパネル後方部30cと、を有する。車両2のセンターフロアパネル部30の下側には、エンジン(図示省略)を収容するエンジンルーム44が形成されている。
【0029】
フロア凹部31は、車体フレーム4のキャブマウント5の上方で、センターフロアパネル部30を挟んで、一対に形成される。フロア凹部31は、立下り部33と、平面部34と、立上り部35と、を一体的に有し、断面U字状で、下方に凹むように形成される。立下り部33は、センターフロアパネル部30の車幅方向の端部から曲折して車幅方向外側へ斜め下方に傾斜して延びる。平面部34は、立下り部33の下端から車幅方向外側へ曲折して、車幅方向に略水平に延びる。立上り部35は、平面部34の車幅方向外側の端部から曲折して車幅方向外側へ斜め上方に傾斜して延びる。また、フロア凹部31は、車室15の前端から後端まで、すなわちフロアパネル21の前端から後端まで延びる。
【0030】
フロア凹部31は、フロアパネル21の前端から後方へ延びるフロア凹部前方部31aと、フロア凹部前方部31aの後端から上方へ傾斜して延びるフロア凹部傾斜部31bと、フロア凹部傾斜部31bの後端からフロア凹部前方部31aに対して略平行に曲折してフロアパネル21の後端まで延びるフロア凹部後方部31cと、を有する。フロア凹部前方部31aは、フロアパネル21の前端から下方へ傾斜して延びるフロア凹部前方傾斜部31d(図7参照)と、フロア凹部前方傾斜部31dの後端から水平方向に曲折して、車両後方へ延びるフロア凹部前方水平部31e(図7参照)を有する。フロア凹部傾斜部31bにおける立下り部33は、センターフロアパネル部30のセンターフロアパネル後方部30cの車幅方向の端部から斜め下方へ傾斜して延びる第1立下り部33aと第1立下り部33aの下端部から斜め下方へ傾斜して延びる第2立下り部33bとを有する(図5参照)。第1立下り部33aは、第2立下り部33bよりも比較的緩やかに傾斜する。
【0031】
フロア凹部前方部31aのフロア凹部前方傾斜部31dにおける平面部34には、所定の間隔を隔てて上下方向に貫通するフロア凹部ボルト挿通孔31fが3箇所設けられている。また、フロア凹部前方水平部31eにおける平面部34には、所定の間隔を隔てて上下方向に貫通するフロア凹部ボルト挿通孔31fが2箇所設けられている。
【0032】
サイドフロアパネル部32は、センターフロアパネル部30と一対のフロア凹部31とを挟んで、車室15の底部の車幅方向両端に一対に形成される。サイドフロアパネル部32は、フロア凹部31の立上り部35の上端から車幅方向外側へ曲折して延びる。サイドフロアパネル部32は、フロアパネル21の前端から後方へ略水平に延びるサイドフロアパネル前方部32aと、サイドフロアパネル前方部32aの後端から上方へ傾斜して延びるサイドフロアパネル傾斜部32bとサイドフロアパネル傾斜部32bの後端から曲折してサイドフロアパネル前方部32aに対して略平行にフロアパネル21の後端まで延びるサイドフロアパネル後方部32cとを有する。また、サイドフロアパネル部32は、サイドフロアパネル前方部32aとサイドフロアパネル傾斜部32bとに亘って延びる畝条の突出部36が所定の間隔を隔てて3本設けられている。また、サイドフロアパネル前方部32aの車幅方向外側の前方に、車幅方向外側に突出するフロアパネル凸部37が形成されている。フロアパネル凸部37は、略四角錐台形状で、車幅方向外側に略矩形状のフロアパネル凸部頂面部37aを有する。また、フロアパネル凸部37は、フロアパネル凸部起立面部37bを有する。フロアパネル凸部起立面部37bは、フロアパネル凸部頂面部37aの各辺から車幅方向内側に傾斜しながらフロアパネル凸部37の基端部まで延出する。
【0033】
図3に示すように、センターフロアパネル傾斜部30bの下端部は、フロア凹部傾斜部31b及びサイドフロアパネル傾斜部29bの下端部よりも前方に配置される。また、センターフロアパネル傾斜部30bの上端部は、フロア凹部傾斜部31b及びサイドフロアパネル傾斜部29bの上端部よりも前方で、且つフロア凹部傾斜部31b及びサイドフロアパネル傾斜部29bの下端部と車両前後方向の略同一位置に配置される。
【0034】
図4に示すように、センターフロアパネル前方部30aとサイドフロアパネル前方部32aとは、等しい高さとなるように形成される。また、図6に示すように、センターフロアパネル後方部30cとサイドフロアパネル後方部32cとは、等しい高さとなるように形成される。
【0035】
ダッシュパネル19は、図1及び図2に示すように、略矩形板状体であり、ダッシュパネル本体38と、ダッシュパネル折曲部39と、凸部形成面部40(図2参照)と、ダッシュパネル凸部41と、長孔42と、ダッシュパネル延長部43と、を有する。これらは、プレス加工などによって、一体的に形成される。
【0036】
ダッシュパネル本体38は、車幅方向に沿って延びる。ダッシュパネル折曲部39は、ダッシュパネル本体38の両端部から後方へ傾斜して延びる。長孔42は、ダッシュパネル本体38の上側の左右2箇所に設けられる。長孔42はダッシュパネル19がフロントフレーム部18に接合されると、フロントフレーム部18によって閉止される。
【0037】
凸部形成面部40は、ダッシュパネル折曲部40の端部における上下2箇所に設けられる。凸部形成面部40は、ダッシュパネル折曲部40の端部から後方へ折曲して延びる。下方に位置する凸部形成面部40は、上方に位置する凸部形成面部40に比べて、上下方向の長さが短い。
【0038】
ダッシュパネル凸部41は、凸部形成面部40から車幅方向外に向かって突出する。ダッシュパネル凸部41は、車幅方向外側に略矩形状のダッシュパネル凸部頂面部41aを有する。また、ダッシュパネル凸部41は、ダッシュパネル凸部起立面部41bを有する。ダッシュパネル凸部起立面部41bは、ダッシュパネル凸部頂面部41aの前方に位置する辺、上方に位置する辺及び下方に位置する辺から、車幅方向内側に傾斜しながら凸部形成面部40まで延びる。下方に位置するダッシュパネル凸部41は、上方に位置するダッシュパネル凸部41に比べて、大きさが小さい。
【0039】
ダッシュパネル延長部43は、ダッシュパネル本体38の下端縁のうちフロア凹部31の前方部分から下方へ延びる。ダッシュパネル延長部43は、ダッシュパネル本体38の下端縁のフロア凹部31の前方部分から、前方へ傾斜しながら下方へ延びる縦板部43aと、縦板部43aの下端から後方へ曲折し、且つ、下方に傾斜して延びる横板部43b(図7参照)と、を一体的に有する。また、縦板部43aは、縦板部43aの車幅方向の両端部から後方へ曲折して延びる延長部側壁部43cを一体的に有する。延長部側壁部43cの下端部は、横板部43bの車幅方向両端部に連続する。横板部43bの略中央には、上下方向に貫通する横板部ボルト挿通孔43d(図7参照)が一つ設けられている。
【0040】
次に、キャブマウント5、フロアパネル21及びダッシュパネル19の接合態様について説明する。
【0041】
図1及び図7に示すように、フロアパネル21とダッシュパネル19とは、フロアパネル21の前端縁とダッシュパネル19の下端縁とがスポット溶接などによって溶接され、また、ダッシュパネル延長部43の縦板部43aの延長部側壁部43cが、フロア凹部31の前端の内周面にスポット溶接などによって溶接されることによって接合される。ダッシュパネル延長部43が、フロア凹部31の前端に接合されると、ダッシュパネル延長部43の縦板部43aは、フロア凹部31の前方を閉止する。
【0042】
また、図7に示すように、横板部43bの下面が、フロア凹部前方傾斜部31dの前端側の平面部34の上面と当接する。フロア凹部前方傾斜部31dの平面部34の下面が、キャブマウント5の車体フレーム側締結部11の前板部12の上面と当接する。また、フロア凹部前方水平部31eの平面部34の下面の前方が、車体フレーム側締結部11の後板部13の上面と当接する。
【0043】
また、横板部43bに設けられた横板部ボルト挿通孔43dと、フロア凹部前方傾斜部31dにおいて最も前方に設けられたフロア凹部ボルト挿通孔31fと、が連通し、また、これらのボルト挿通孔と、車体フレーム側締結部11の前板部12において最も前方に設けられた前板部ボルト挿通孔12cとが連通する。連通したこれらのボルト挿通孔を、ボルト14が挿通し、ナット14aに螺合すると、フロア凹部31と、ダッシュパネル延長部43の横板部43bと、キャブマウント5の車体フレーム側締結部11の前板部12とが、結合される。なお、図7において図示は省略するが、フロア凹部前方傾斜部31dに設けられた他のフロア凹部ボルト挿通孔31fと車体フレーム側締結部11の前板部12に設けられた他の前板部ボルト挿通孔12cとが連通し、また、フロア凹部前方水平部31eに設けられたフロア凹部ボルト挿通孔31と車体フレーム側締結部11の後板部13に設けられた後板部ボルト挿通孔13bとが連通し、これらボルト挿通孔に挿通するボルト14(図においては中心線のみを示している)がナットに螺合すると、フロア凹部31と、車体フレーム側締結部11の前板部12と後板部13とが結合される。
【0044】
また、フロアパネル21とダッシュパネル19とが接合されると、下方に設けられたダッシュパネル凸部頂面部41a(図2参照)と、フロアパネル凸部頂面部37a(図2参照)と、は、略面一に連続する。なお、上方に設けられたダッシュパネル凸部頂面部41aは、サイドパネル17の上方のドアヒンジ取付部23c(図3参照)の車幅方向内側面に当接し、下方に設けられたダッシュパネル凸部頂面部41aと略面一に連続するフロアパネル凸部頂面部37aとは、サイドパネル17の下方のドアヒンジ取付部23cの車幅方向内側面に当接する。
【0045】
本実施形態によれば、フロア凹部31と、ダッシュパネル延長部43の横板部43bと、キャブマウント5の車体フレーム側締結部11の前板部12とが、結合されていることから、車体フレーム4からの入力は、キャブマウント5の車体フレーム側締結部11の前板部12、フロア凹部31及びダッシュパネル延長部43の横板部43bを介して、フロアパネル21とダッシュパネル19とに分散して入力する。すなわち、車体フレームからの入力を、フロアパネル21とダッシュパネル19とによって分担して支持することができ、キャブ3と車体フレーム4とのキャブ3側の結合部分に十分な剛性を確保することができる。したがって、キャブ3と車体フレーム4との結合部分におけるキャブ3側の部材の板厚を増加する必要がなく、板厚の増加に伴う車両の重量化を抑制することができる。
【0046】
また、ダッシュパネル延長部43が、フロア凹部31の前端に接合されると、ダッシュパネル延長部43の縦板部43aは、フロア凹部31の前方を閉止するので、ダッシュパネル延長部43の縦板部43aとフロア凹部31の前端との接合部分の剛性を高めることができる。このため、フロア凹部31の前方を閉止するための部材を設ける必要がないので、部品点数及び組立工数を削減することができる。
【0047】
また、フロアパネル21のフロア凹部31が曲折形成されていることから、フロアパネル21への入力によって、フロアパネル21の形状が変形しにくく、フロア凹部31によってフロアパネル21の剛性が確保される。このため、メインシルなどの補強部材をフロアパネル21の下面に固着する必要がなく、部品点数及び組立工数が削減される。したがって、車両重量を低減させることができ、且つ、組立作業性を向上させることができる。
【0048】
また、フロア凹部31の内面を、例えば、車載用の消火器やジャッキハンドルなどの車載用品の収容部などに利用することができ、車室15の床面15aのスペースを有効に活用することができる。
【0049】
また、上方に設けられたダッシュパネル凸部頂面部41aは、サイドパネル17の上方のドアヒンジ取付部23cの車幅方向内側面に当接し、下方に設けられたダッシュパネル凸部頂面部41aと略面一に連続するフロアパネル凸部頂面部37aとは、サイドパネル17の下方のドアヒンジ取付部23cの車幅方向内側面に当接するので、サイドパネル17のドアヒンジ取付面部23cを補強することができる。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。
【0051】
図8に示すように、フロアパネル21のフロア凹部前方傾斜部31dの前後方向の略中央部に段部45を設け、段部45から前方へ延びるフロア凹部前方傾斜部31dの前方と、キャブマウント5の車体フレーム側締結部11の前板部12の前方とで、ダッシュパネル延長部43の横板部43bを収容する横板部収容空間46を区画してもよい。この場合、横板部43bの上面は、フロア凹部前方傾斜部31dの前方の下面に当接し、また、横板部43bの下面は、前板部12の前方の上面と当接する。このように当接したフロア凹部前方傾斜部31dの前方と、横板部43bと、前板部12の前方とは、それぞれが有するフロア凹部ボルト挿通孔31fと、横板部ボルト挿通孔43dと、前板部ボルト挿通孔12cと、が連通し、連通したボルト挿通孔にボルト14が挿通しナット14aに螺合すると、結合される。
【0052】
すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ダッシュパネルとフロアパネルとを有するキャブの前端下部を、車体フレームに設けられたキャブマウントに結合して支持するキャブの前端下部構造に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:前端下部構造
2:車両
3:キャブ
4:車体フレーム
5:キャブマウント
10:マウントチューブ
11:車体フレーム側締結
12:前板部
12c:前板部ボルト挿通孔
13:後板部
14:ボルト
19:ダッシュパネル
21:フロアパネル
31:フロア凹部
31a:フロア凹部前方部
31d:フロア凹部前方傾斜部
31e:フロア凹部前方水平部
31f:フロア凹部ボルト挿通孔
34:平面部
43:ダッシュパネル延長部
43a:縦板部
43b:横板部
43d:横板部ボルト挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュパネルとフロアパネルとを有するキャブの前端下部を、車体フレームに設けられたキャブマウントに結合して支持するキャブの前端下部構造であって、
前記フロアパネルの前端部のうち前記キャブマウントの上方部分に曲折形成されて下方に凹むフロア凹部と、
前記ダッシュパネルの下端縁のうち前記フロア凹部の前方部分から下方へ延びる縦板部と、該縦板部の下端から後方へ曲折して延びて前記フロア凹部と上下で重なる横板部とを有するダッシュパネル延長部と、を備え、
前記フロア凹部と前記ダッシュパネル延長部の横板部とは、両者を貫通するボルト挿通孔を有し、該ボルト挿通孔を挿通するボルトによって前記キャブマウントに結合される
ことを特徴とするキャブの前端下部構造。
【請求項2】
請求項1に記載のキャブの前端下部構造であって、
前記ダッシュパネル延長部の縦板部は、前記フロア凹部の前端に接合されて該フロア凹部の前方を閉止する
ことを特徴とするキャブの前端下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−206590(P2012−206590A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73317(P2011−73317)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】