説明

キャリア、現像装置及びそれを用いた画像形成装置

【課題】画像にゴーストの発生を抑制できるキャリア、ハイブリッド方式の現像装置及びそれを用いた画像形成装置を得る。
【解決手段】トナーを外周面に担持し、感光体1に非接触で近接配置された現像ローラ21と、トナーとキャリアとからなる現像剤を担持し、現像ローラ21にトナーを供給する現像剤担持ローラ23とを備え、感光体1上に形成された静電潜像の電位と、現像ローラ21に印加された交流バイアス電圧との間で形成される電界によりトナーを静電潜像に付着させ、かつ、現像後に現像ローラ21上に残ったトナーを現像剤担持ローラ23上に回収する現像装置。キャリアとして、MO(MO2を含む)・FeO・Fe23(但し、Mは任意の金属元素)で表わされる複数種の磁性粒子を含み、Mの電気陰性度差が1以上であるキャリアを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア、特に、電子写真方式による画像の形成に際して静電潜像を可視像化するための現像剤に含まれるキャリア、現像装置及びそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式による画像形成の分野において、感光体(像担持体)上に形成された静電潜像の現像方式としては、トナーのみを用いる1成分現像方式及びトナーとキャリアとを攪拌/混合した2成分現像方式の長所を併せ持つハイブリッド現像方式が注目されている。このハイブリッド現像方式では、トナーとキャリアを攪拌/混合してトナーに対する荷電を行った後に、現像剤(トナーとキャリアとの混合物)を担持する現像剤担持ローラと感光体にトナーを供給するための現像(トナー担持)ローラとの間に形成された分離電界の作用によりトナーをキャリアから分離してトナーのみを現像ローラ上に保持させ、感光体上の静電潜像に対して1成分現像を行うようにしている(特許文献1、2参照)。
【0003】
ハイブリッド現像は、高速で高画質を要求される軽印刷(100部程度の小冊子の作成)の行うプリンタに適している。ところで、ハイブリッド現像では、トナーとキャリアとからなる現像剤を担持する現像剤担持ローラから現像ローラに対してトナーを十分に供給する必要があることは勿論、現像ローラに残った現像後のトナーを十分に回収しておく必要がある。特に、現像剤担持ローラに印加される電界はトナーを現像ローラに供給するように作用しているため、現像後のトナーの回収不良が生じやすい。このような回収不良が生じると、現像ローラ上でのトナー層の厚みが不均一になり、現像ローラの1回転前の画像が感光体に現れるというゴーストを引き起こす。
【0004】
そこで、本発明者はハイブリッド現像に使用されるキャリアを種々検討し、実験を行った結果、本願発明に至った。なお、ハイブリッド現像に使用されるキャリアは、通常、Feやそれ以外の複数の金属元素(例えば、Mn、Zn)が合金状態とされたものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−37523号公報
【特許文献2】特開2006−276853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、ハイブリッド現像に好適に用いられ、ゴーストを抑制できるキャリア、ハイブリッド方式の現像装置及び当該現像装置を用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態であるキャリアは、
トナーとキャリアとからなる現像剤を現像剤担持体上に担持させ、該現像剤担持体上の現像剤中のトナーをトナー担持体上に供給し、該トナー担持体上に供給されたトナーで像担持体上に形成された静電潜像を現像し、かつ、現像後に前記トナー担持体上に残ったトナーを前記現像剤担持体上に回収する現像方式に用いられるキャリアであって、
MO・FeO・Fe23(但し、Mは任意の金属元素)で表わされる複数種の磁性粒子を含み、該複数種の磁性粒子のうち2種の磁性粒子に含まれるMの電気陰性度差が1以上であること、を特徴とする。
【0008】
なお、本願においてMOは酸化金属を示しており、用いる金属元素の化学的特性に応じて、例えばMO2の構造をとる場合についても含む概念である。
【0009】
本発明の第2の形態である現像装置は、
トナーを外周面に担持し、像担持体に非接触で近接配置されたトナー担持体と、
トナーとキャリアとからなる現像剤を担持し、前記トナー担持体に卜ナーを供給する現像剤担持体と、
を備え、
前記像担持体上に形成された静電潜像の電位と前記トナー担持体に印加された交流バイアス電圧との間で形成される電界によりトナーを静電潜像に付着させ、かつ、現像後に前記トナー担持体上に残ったトナーを前記現像剤担持体上に回収する現像装置において、
前記キャリアとして、MO・FeO・Fe23(但し、Mは任意の金属元素)で表わされる複数種の磁性粒子を含み、該複数種の磁性粒子のうち2種類の磁性粒子に含まれるMの電気陰性度差が1以上であるキャリアを用いること、
を特徴とする。
【0010】
本発明の第3の形態である画像形成装置は、前記第2の形態である現像装置と、前記像担持体とを含んでいる。
【0011】
前記キャリアにおいては、Mの電気陰性度差が1以上である2種の磁性粒子がドメイン構造(島状)となっている。このようなキャリアはキャリアどうしの摩擦あるいは接触により一方の種のドメインがプラスに帯電し、他方の種のドメインがマイナスに帯電するため、トナーを付着させる電荷を有することになり、現像されずにトナー担持体上に残されたトナーは現像剤担持体上に形成されているキャリアのブラシによって効果的に掻き取られる。即ち、現像後のトナー回収能力が向上する。その結果、トナー担持体上のトナー層厚が均一化され、画像にゴーストが発生することが抑制される。
【0012】
ここで、「Mの電気陰性度」は、金属酸化物MOにおけるMイオンの電気陰性度を示している。ここで、電気陰性度はポーリングの定義によるものであって、例えば、電子写真学会誌第31巻第1号(1992)72頁に記載された値を用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゴーストを抑制でき、ハイブリッド現像にて高質の画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施例である現像装置と感光体ドラム及びその周辺機器からなる画像形成装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るキャリア、現像装置及びそれを用いた画像形成装置の実施例について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
一実施例である現像装置2は、図1に示すように、感光体(像担持体)1上に形成された静電潜像をトナーによって可視像化するものである。感光体1は、図1中で矢印aで示す時計回り方向の回転に伴って、帯電用ローラ6にて所定の電位に均一に帯電され、図示しないレーザ走査装置から放射されるレーザビームBにて静電潜像を形成され、現像装置2にて現像され、転写ローラ8から付与される電界にて記録紙Sにトナー画像が転写され、ブレード9にて残留トナーが除去される。また、図示しないイレーサにて残留電化が除去される。なお、この種の作像手段を用いて電子写真法にて画像を形成するプロセスは周知であり、詳細な説明は省略する。
【0017】
なお、帯電手段や転写手段としてはローラ6やローラ8に代えてコロトロン方式あるいはスコロトロン方式の放電器であってもよく、露光装置もレーザ以外の光を用いるものであってもよい。
【0018】
現像装置2は、トナー補給ボトル3と、トナーとキャリアとからなる現像剤を収容する現像剤槽28と、現像剤を外周面に担持してその回転方向に搬送する現像剤担持ローラ23と、現像剤の搬送量を規制するブレード24と、現像剤担持ローラ23の外周面からトナーを分離して自らの外周面に担持してその回転方向(反時計回り方向)に搬送する現像(トナー担持)ローラ21を備えるハイブリッド現像方式のものである。また、現像剤担持ローラ23には高圧電源回路4が接続され、現像ローラ21には高圧電源回路5が接続されている。
【0019】
トナーは、トナー補給ボトル3からトナー補給ローラ27の回転に基づいて現像剤槽28へ所定量ずつ補給される。現像剤槽28の底部には二つの攬絆搬送ローラ25、26が配置されている。補給されたトナーはローラ25、26の回転に基づいてキャリアと攬絆/混合され、所定の電位に帯電(本実施例ではマイナス帯電)されて現像剤担持ローラ23に搬送される。攬絆搬送ローラ25、26による現像剤の攬絆/混合作用は従来の現像装置と同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0020】
現像剤担持ローラ23は、矢印方向bに回転駆動されるスリーブと、該スリーブに内蔵/固定された磁石ローラとで構成されている。磁石ローラは、ローラ23の回転方向に沿って磁極N1、S2、N2、N3、S1を有している。これらの磁極による磁力線に沿って現像剤がブラシ状に形成される。
【0021】
攬伴搬送ローラ26によって現像剤担持ローラ23の近傍に搬送された現像剤は、磁石ローラの磁力によって現像剤担持ローラ23の外周面に保持されて矢印b方向に搬送され、規制ブレード24で層厚(通過量)を規制された後、現像コーラ21との対向領域に搬送される。ローラ23、21の対向領域には、高圧電源回路4から、現像剤中のトナーを電気的に分離して現像ローラ21の外周面に転移させる電界が形成されている。
【0022】
現像ローラ21は、感光体1の外周面に接触することなく近接配置されており、矢印c方向に回転駆動される。現像ローラ21と感光体1とが対向する現像領域Aには、高圧電源回路5によってトナーを感光体1の外周面に移動させる電界が形成されている。
【0023】
前述のように、現像剤担持ローラ23から現像ローラ21の外周面に転移されて所定の層厚で担持されたトナーは、現像ローラ21の回転に基づいて、感光体1と対向する現像領域Aに搬送される。これらのトナーは、感光体1上に形成された静電潜像の電位と現像ローラ21に高圧電源回路5から印加された交流バイアス電圧との間で形成される電界によって感光体1と現像ローラ21の間を往復運動しながら静電潜像を現像する。
【0024】
現像後、現像ローラ21の表面に残ったトナーは、現像領域Aから矢印c方向に搬送され、現像剤担持ローラ23との対向領域にて現像剤中に回収される。即ち、現像剤担持ローラ21の外周面にはキャリアが鎖状に結合した磁気ブラシが形成されており、現像ローラ21上の残留卜ナーはこの磁気ブラシによって摺擦・撹乱され、磁気ブラシ中に取り込まれる。本実施例では、ローラ21、23を互いに近接する領域では互いに逆方向に移動するように回転駆動しているため、磁気ブラシによって残留トナーを摺擦・撹乱して回収する効果が大きい。
【0025】
残留トナーを回収した現像剤は現像剤担持ローラ23の回転に伴って矢印b方向に搬送され、現像剤担持ローラ23から剥離されて現像剤槽28に戻される。
【0026】
現像ローラ21は、金属材からなる導電性ローラ、例えば、アルマイ卜加工を表面に施したアルミニウム製ローラで構成されている。導電性のローラ基体上にポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などのコーティングを施したり、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどのコーティングを施したものであってもよい。
【0027】
ところで、本実施例において、キャリアとして、MO・FeO・Fe23で表わされる複数種の磁牲粒子を含み、そのうちの少なくとも2種のMの電気陰性度差が1以上であるキャリアを用いている。このようなキャリアにおいて、前記の2種のMO・FeO・Fe23がドメイン構造(島状)となっており、キャリアどうしの摩擦あるいは接触により一方の種のドメインがプラスに帯電し、他方の種のドメインがマイナスに帯電するため、いずれか一方のドメインがトナーを付着させる電荷を有することになり、現像されずに現像ローラ21上に残されたトナーは現像剤担持ローラ23上に形成されているキャリアのブラシによって効果的に掻き取られる。即ち、現像後のトナー回収能力が向上し、その結果、現像ローラ21上のトナー層厚が均一化され、画像にゴーストが発生することが抑制される。
【0028】
金属元素Mとして、例えばMg(電気陰性度6),Zn(電気陰性度7.5)、Ni(電気陰性度8)、Fe(電気陰性度13)、Cu(電気陰性度10)、Mn(電気陰性度13)等を通常用いることができる。これらのうち電気陰性度差が1以上となる組み合わせを選択すれば良い。電気陰性度差の上限としては、トナーの帯電極性とは逆の極性に帯電したドメインが、現像剤担持ローラ23へのトナー回収能を低下させる影響を考慮すると、電気陰性度差が10以下であることが好ましいと予想されるが、キャリアに用いる磁性粒子に使用できると現状考えられる上記の金属を用いる場合には、いずれの組み合わせによっても電気陰性度差は10以下となり、ゴーストの発生を十分に抑制することができる。
【0029】
ここで、MO・FeO・Fe23、すなわちフェライトは次の従来の方法で作成できる。所望の量のMOとFe23を水中で粉砕混合し、エチレン酢酸ビニルを投入してさらに混合した後、加熱して30〜60μmの粒径に造粒する。この造粒物をロータリーキルンで800〜1300℃で加熱し母粒子を作成する。この母粒子を冷却後、水素を流して還元し、一部をFeOに変えることにより、MO・FeO・Fe23粒子を得ることができる。
【0030】
磁性粉分散型キャリアは、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂と、上記MO・FeO・Fe23粒子を混合し、混練・粉砕・分級を行うことにより得られる。
【0031】
フェライト型キャリアは、上記MO・FeO・Fe23粒子を複数種混合、造粒し、1200℃で焼結することにより得ることができる。
【0032】
キャリアにおけるドメイン構造は、例えば光学顕微鏡、あるいは電子顕微鏡にて測定したキャリアの表面形態において、製造に用いた上記のMO・FeO・Fe23粒子と同程度の大きさの島状領域が存在する構造として確認することができる。
【0033】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0034】
(実施例1)
ZnO及びFe23がそれぞれ10%及び90%の組成となるように、各酸化物の適量を配合し、水中で粉砕混合した。さらにエチレン酢酸ビニルを混ぜて混合した後、加熱して30〜60μmの粒径に造粒した。この造粒物をロータリーキルンで800〜1300℃で加熱して母粒子を作成し、この母粒子を冷却後、水素を流して還元し、一部をFeOに変え、ZnO・FeO・Fe23(ZnO:FeO・Fe23=10:90)を得た。得られたZnO・FeO・Fe23を粉砕・分級し、平均粒径0.6μmとした。同様に、ZnOに代えてMgOを用いて、平均粒径0.6μmのMgO・FeO・Fe23(MgO:FeO・Fe23=10:90)を得た。
【0035】
ポリエステル樹脂(Mn:7000、Mw:300000)100重量部に対し、上記のZnO・FeO・Fe23とMgO・FeO・Fe23とを、それぞれ、200重量部混合し、混練・粉砕・分級を行い、平均粒径30μmの磁性粉分散型キャリアを得た。この磁性粉分散型キャリアは、ZnO・FeO・Fe23のドメインとMgO・FeO・Fe23のドメインを含むドメイン構造を有していた。ここで、Znイオンの電気陰性度は7.5、Mgイオンの電気陰性度は6.0、電気陰性度差は1.5であり、ZnO・FeO・Fe23のドメインはMgO・FeO・Fe23のドメインに対してマイナスに帯電する。このキャリアに、シリカが1.0%外添された平均粒径6μmの乳化会合法負帯電性卜ナーを15%(キャリアとトナーの全量に対して、以下同じ)になるように混合し、現像剤を得た。
【0036】
実験に使用した現像装置は図1に示したものであり、現像ローラ21はアルミ製である。現像ローラ21に印加する交流バイアス電圧は、周波数が1500Hz、ピーク−ピーク電圧値Vppが2kV、重畳される直流電圧Vdcを500Vとした。現像領域AのギャップDsは0.3mmである。現像剤担持ローラ23には前記バイアス電圧を打ち消す交流電圧を印加した。
【0037】
ゴーストの評価は、全体がID=0.6のハーフトーン画像中の先端2cmのところにID=1.5の太文字がある評価チャートの画像を形成し、太文字の位置から現像ローラ1周分後端側の位置におけるゴーストの有無を目視で確認することにより行った。
【0038】
前記条件で多数枚の評価チャートの画像を形成したところ、ゴーストのない良好な画像が得られた。これは、キャリア中のMgO・FeO・Fe23のドメインが正に荷電するので、負帯電性トナーを取り込むことになり、現像後のトナーを現像ローラ21から現像剤担持ローラ23に効率よく回収できることによると考えられる。
【0039】
(比較例1)
比較例1では、磁性粉分散型キャリアに用いる磁性粉が平均粒径0.6μmのZnO・FeO・Fe23のみである、すなわち電気陰性度差が0である以外、前記実施例1と同じものであり、同じ現像装置、現像条件として画像形成実験を行った。その結果、ゴーストが実用上問題となる程度に発生した。これは、キャリアどうしで十分な帯電が起こらず、トナーと逆極性の新たな荷電点(ドメイン)ができないため、残留トナーを完全に掻き取ることができず、現像ローラ21上ではトナー層の不均一さ(ローラ21の回転方向に厚いところと薄いところ)がそのまま残存し、次の画像形成に影響するために起こると考えられる。
【0040】
(実施例2)
実施例2では、MgO・FeO・Fe23に代えてFeO・Fe23を用いたこと、樹脂としてスチレンアクリル樹脂(Mn:5000、Mw:250000)こと、およびZnO・FeO・Fe23とFeO・Fe23の平均粒径が0.3μmであること以外は、実施例1と同様にして平均粒径30μmの磁性粉分散型キャリアを得た。ここで、Znイオンの電気陰性度は7.5、Feイオンの電気陰性度は13、電気陰性度差は5.5であり、FeO・Fe23ドメインはZnO・FeO・Fe23ドメインに対してマイナスに帯電する。このキャリアに、前記実施例1で使用した負帯電性トナーを15%になるように混合し、現像剤を得た。現像装置及び現像条件は前記実施例1と同様にして画像形成実験を行った。その結果、ゴーストのない良好な画像が得られた。
【0041】
(比較例2)
比較例2では、MgO・FeO・Fe23に代えてNiO・FeO・Fe23(NiO:FeO・Fe23=10:90)を用いたこと以外は実施例1と同様にして平均粒径30μmのキャリアを得た。ここで、Znイオンの電気陰性度は7.5、Niイオンの電気陰性度は8.0、電気陰性度差は0.5である。この磁性粉分散型キャリアに、平均粒径6μmの乳化会合法負帯電性卜ナーを15%になるように混合し、現像剤を得た。現像装置及び現像条件は前記実施例1と同様にして画像形成実験を行った。その結果、ゴーストの発生が見られた。これは、MgイオンとNiイオンの電気陰性度差は0.5であり、キャリア中で正に帯電するドメインが十分ではないことによると考えられる。
【0042】
(実施例3)
実施例3では、前記実施例1と同じ磁性粉分散型キャリアを使用し、トナーに添加されるシリカ量を1.5%とした以外は実施例1と同じ現像剤を得た。トナーの帯電量は実施例1の1.3倍であった。実施例1と同じ現像装置、現像条件での画像形成実験の結果、トナーの帯電量が多少高いにも拘わらず、現像ローラ21上の残留トナーの回収は問題がなく、ゴーストの発生は見られなかった。
【0043】
(実施例4)
実施例4では、前記実施例1と同じ現像剤、現像装置を用い、現像口−ラ21に印加する交流バイアス電圧Vpp、周波数、直流電圧Vdcまたは現像ギャップDsを、以下のように変更して画像形成実験を行った。いずれの場合にもゴーストの発生はなく、キャリアの感光体1への付着も見られなかった。
【0044】
Vpp:500V、周波数:1500Hz、Vdc:200V、Ds:0.3mm
Vpp:2500V、周波数:1500Hz、Vdc:500V、Ds:0.3mm
Vpp:2000V、周波数:3000Hz、Vdc:500V、Ds:0.3mm
Vpp:2000V、周波数:2000Hz、Vdc:500V、Ds:0.4mm
【0045】
(実施例5)
実施例5では、実施例1におけるZnO・FeO・Fe23とMgO・FeO・Fe23に代えて、NiO・FeO・Fe23(NiO:FeO・Fe23=10:90、平均粒径0.3μm)とMnO・FeO・Fe23(MnO:FeO・Fe23=10:90、平均粒径0.3μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして平均粒径30μmの磁性粉分散型キャリアを得た。ここで、Niイオンの電気陰性度は8.0、Mnイオンの電気陰性度は13、電気陰性度差は5であり、MnO・FeO・Fe23ドメインはNiO・FeO・Fe23ドメインに対してマイナスに帯電する。このキャリアに、前記実施例1で使用した負帯電性トナーを15%になるように混合し、現像剤を得た。現像装置及び現像条件は前記実施例1と同様にして画像形成実験を行った。その結果、ゴーストのない良好な画像が得られた。
【0046】
(実施例6)
実施例6では、実施例1におけるZnO・FeO・Fe23とMgO・FeO・Fe23に代えて、NiO・FeO・Fe23(NiO:FeO・Fe23=10:90、平均粒径0.3μm)とMgO・FeO・Fe23(MgO:FeO・Fe23=10:90、平均粒径0.3μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして平均粒径30μmの磁性粉分散型キャリアを得た。ここで、Niイオンの電気陰性度は8.0、Mgイオンの電気陰性度は6.0、電気陰性度差は2であり、NiO・FeO・Fe23ドメインはMgO・FeO・Fe23ドメインに対してマイナスに帯電する。このキャリアに、前記実施例1で使用した負帯電性トナーを15%になるように混合し、現像剤を得た。現像装置及び現像条件は前記実施例1と同様にして画像形成実験を行った。その結果、ゴーストのない良好な画像が得られた。
【0047】
(実施例7)
MgOとFe23がそれぞれ10%及び90%の組成となるように、各酸化物の適量を配合して粒径0.3μmに造粒し、1200℃で熱処理をして作製した粒子に水素を流して一部の酸化鉄を還元して磁性粉A(MgO・FeO・Fe23)を得た。同様に、ZnOとFe23がそれぞれ10%及び90%の組成となるように、各酸化物の適量を配合して粒径0.3μmに造粒し、熱処理を行い、一部を還元して磁性粉B(ZnO・FeO・Fe23)を得た。磁性粉A、Bを同量混合し、30μmに造粒して1200℃で焼結して、MgO・FeO・Fe23(MgO:FeO・Fe23=10:90)とZnO・FeO・Fe23(ZnO:FeO・Fe23=10:90)のドメインを有するフェライトキャリアを得た。ここで、Znイオンの電気陰性度は7.5、Mgイオンの電気陰性度は6.0、電気陰性度差は1.5であり、ZnO・FeO・Fe23のドメインはMgO・FeO・Fe23のドメインに対してマイナスに帯電する。このキャリアにシリカが1.0%外添された平均粒径6μmの乳化会合法負帯電性卜ナーを13%になるように混合し、現像剤を得た。この現像剤を使用し、他は前記実施例1と同じ条件で画像形成実験を行った結果、ゴーストのない良好な画像が得られた。
【0048】
(実施例8)
実施例8では、実施例7におけるMgO・FeO・Fe23に代えてMnO・FeO・Fe23を用いた以外は実施例7と同様の工程によりMnO・FeO・Fe23とZnO・FeO・Fe23のドメインを有するにフェライトキャリアを得た。MnイオンとZnイオンの電気陰性度差は5.5である。このキャリアを使用し、他は前記実施例1と同じ条件で画像形成実験を行った結果、ゴーストのない良好な画像が得られた。
【0049】
(比較例3)
比較例3では、MnO、ZnO、Fe23を一度に混合・造粒して1200℃で熱処理を行い、粒径0.6μmの粒子を得た。その一部を還元した後、30μmの粒子を作製して800℃で熱処理を施してMnO・ZnO・FeO・Fe23を有するフェライトキャリアを得た。このキャリアを使用し、他は前記実施例1と同じ条件で画像形成実験を行った結果、顕著なゴーストが見られた。これは、表面が均一なMn−Znフェライトが形成されているため、キャリアどうしの帯電が見られないことによる。
【0050】
(実施例9)
NiOとFe23がそれぞれ10%及び90%の組成となるように、各酸化物の適量を配合して粒径0.3μmに造粒し、1200℃で熱処理をして作製した粒子に水素を流して一部の酸化鉄を還元して磁性粉C(NiO・FeO・Fe23)を得た。同様に、MnOとFe23がそれぞれ10%及び90%の組成となるように、各酸化物の適量を配合して粒径0.3μmに造粒し、熱処理を行い、一部を還元して磁性粉D(MnO・FeO・Fe23)を得た。磁性粉C、Dを同量混合し、30μmに造粒して1200℃で焼結して、NiO・FeO・Fe23(NiO:FeO・Fe23=10:90)とMnO・FeO・Fe23(MnO:FeO・Fe23=10:90)のドメインを有するフェライトキャリアを得た。ここで、Niイオンの電気陰性度は8、Mnイオンの電気陰性度は13、電気陰性度差は5であり、MnO・FeO・Fe23のドメインはNiO・FeO・Fe23のドメインに対してマイナスに帯電する。このキャリアにシリカが1.0%外添された平均粒径6μmの乳化会合法負帯電性卜ナーを13%になるように混合し、現像剤を得た。この現像剤を使用し、他は前記実施例1と同じ条件で画像形成実験を行った結果、ゴーストのない良好な画像が得られた。
【0051】
(実施例10)
実施例10では、実施例9において実施例1と同様に用いた乳化会合法負帯電性卜ナーに代えて、粉砕法により製造されたトナーを用いた。前記実施例1と同じ条件で画像形成実験を行った結果、ゴーストのない良好な画像が得られた。
【0052】
(実施例11)
実施例11では、NiOとFeO・Fe23の組成比が5:95、MnOとFeO・Fe23の組成比が5:95となるようにキャリアを製造したこと以外は実施例9と同様にしてキャリアを得た。このキャリアを使用し、他は前記実施例9と同じ条件で画像形成実験を行った結果、ゴーストのない良好な画像が得られた。
【0053】
(実施例12)
実施例12では、キャリアの平均粒径を20μmとしたこと、及びこのキャリアに乳化会合法負帯電性卜ナーを16%になるように混合したこと以外は実施例9と同様にしてキャリアを得た。このキャリアを使用し、他は前記実施例1と同じ条件で画像形成実験を行った結果、ゴーストのない良好な画像が得られた。
【0054】
(実施例13)
実施例13では、キャリアの平均粒径を50μmとしたこと、及びこのキャリアに乳化会合法負帯電性卜ナーを9%になるように混合したこと以外は実施例9と同様にしてキャリアを得た。このキャリアを使用し、他は前記実施例1と同じ条件で画像形成実験を行った結果、ゴーストのない良好な画像が得られた。
【0055】
(実施例14)
実施例14では、NiO・FeO・Fe23とMnO・FeO・Fe23をそれぞれ0.1μmに造粒して用いたこと以外は実施例9と同様にしてキャリアを得た。このキャリアを使用し、他は前記実施例1と同じ条件で画像形成実験を行った結果、ゴーストのない良好な画像が得られた。
【0056】
(実施例15)
実施例15では、NiO・FeO・Fe23とMnO・FeO・Fe23をそれぞれ0.01μmに造粒して用いたこと以外は実施例9と同様にしてキャリアを得た。このキャリアを使用し、他は前記実施例1と同じ条件で画像形成実験を行った結果、わずかにゴーストが見られたが、実用上問題のない範囲であった。
【0057】
(実施例16)
実施例16では、NiO・FeO・Fe23とMnO・FeO・Fe23をそれぞれ0.005μmに造粒して用いたこと以外は実施例9と同様にしてキャリアを得た。このキャリアを使用し、他は前記実施例1と同じ条件で画像形成実験を行った結果、ゴーストが見られたが、実用可能な範囲であった。
【0058】
(実施例17)
実施例17では、実施例9におけるMnO・FeO・Fe23に代えてMgO・FeO・Fe23を用いた以外は実施例9と同様にしてMgO・FeO・Fe23とNiO・Fe23とを含む平均粒径30μmのフェライトキャリアを得た。MgイオンとNiイオンの電気陰性度差は2である。このキャリアを使用し、他は前記実施例1と同じ条件で画像形成実験を行った結果、ゴーストのない良好な画像が得られた。
【0059】
(比較例4)
比較例4では、実施例9におけるNiO・FeO・Fe23に代えて、FeO・Fe23を用いたこと以外は実施例9と同様にしてMnO・FeO・Fe23とFeO・Fe23とを含む平均粒径30μmのフェライトキャリアを得た。ここで、Feイオンの電気陰性度は13、Mnイオンの電気陰性度は13であり、電気陰性度差は0である。現像装置及び現像条件を前記実施例1と同様にして画像形成実験を行った結果、ゴーストの発生が見られた。
【0060】
(他の実施例)
なお、本発明に係るキャリア、現像装置及びそれを用いた画像形成装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できる。
【0061】
前記実施例では2種のMO・FeO・Fe23を用いたが、3種以上を含む構成としてもよい。この場合、2種のMO・FeO・Fe23におけるMの電気陰性度差が1以上であればよく、3種め以降のMO・FeO・Fe23におけるMが、必ずしも他の種のMとの電気陰性度差が1以上となるものでなくてもよい。すなわち、1以上の電気陰性度差を有する2種のMの間で電子のやり取りがなされて一方がプラス、他方がマイナスであれば良い。
【0062】
例えば、感光体、現像剤担持ローラ、現像ローラの回転方向は前記実施例に記載した方向に限定するものではない。各種ローラは種々の材料にて製作することができる。現像ローラは感光体の回転方向に沿って複数のものが配置されていてもよく、この場合現像剤担持ローラは一つであってもよく、あるいは、複数であってもよい。また、トナーやキャリアも本発明の範囲内で種々の材料を用いることができる。現像方式も従来知られている正規現像方式あるいは反転現像方式のいずれであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明は、キャリア、現像装置及びそれを用いた画像形成装置に有用であり、特に、ゴーストを抑制できる点で優れている。
【符号の説明】
【0064】
1‥感光体
2…現像装置
5…高圧電源回路
21…現像ローラ
23…現像剤担持ローラ
A…現像領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーとキャリアとからなる現像剤を現像剤担持体上に担持させ、該現像剤担持体上の現像剤中のトナーをトナー担持体上に供給し、該トナー担持体上に供給されたトナーで像担持体上に形成された静電潜像を現像し、かつ、現像後に前記トナー担持体上に残ったトナーを前記現像剤担持体上に回収する現像方式に用いられるキャリアであって、
MO(MO2を含む)・FeO・Fe23(但し、Mは任意の金属元素)で表わされる複数種の磁性粒子を含み、該複数種の磁性粒子のうち2種の磁性粒子に含まれるMの電気陰性度差が1以上であること、
を特徴とするキャリア。
【請求項2】
MOはZnO及びMgOであること、を特徴とする請求項1に記載のキャリア。
【請求項3】
MOはZnO及びFeOであること、を特徴とする請求項1に記載のキャリア。
【請求項4】
MOはZn及びMnOであること、を特徴とする請求項1に記載のキャリア。
【請求項5】
トナーを外周面に担持し、像担持体に非接触で近接配置されたトナー担持体と、
トナーとキャリアとからなる現像剤を担持し、前記トナー担持体に卜ナーを供給する現像剤担持体と、
を備え、
前記像担持体上に形成された静電潜像の電位と前記トナー担持体に印加された交流バイアス電圧との間で形成される電界によりトナーを静電潜像に付着させ、かつ、現像後に前記トナー担持体上に残ったトナ−を前記現像剤担持体上に回収する現像装置において、
前記キャリアとして、MO(MO2を含む)・FeO・Fe23(但し、Mは任意の金属元素)で表わされる複数種の磁性粒子を含み、該複数種の磁性粒子のうち2種類の磁性粒子に含まれるMの電気陰性度差が1以上であるキャリアを用いること、
を特徴とする現像装置。
【請求項6】
前記現像剤担持体と前記トナー担持体とが、互いに近接する領域では互いに逆方向に移動するように回転駆動されること、を特徴とする請求項5に記載の現像装置。
【請求項7】
前記請求項5又は6に記載の現像装置と、
前記像担持体とを備えたこと、
を特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−159697(P2012−159697A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19433(P2011−19433)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】