説明

キャリアテープ及びカバーテープ

【課題】 本発明は、電子部品のベーキング処理に耐えることができるキャリアテープを提供する。
【解決手段】 本発明のキャリアテープは、電子部品を収納可能な収納部が形成されたキャリアテープであって、上記キャリアテープは、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸した後に一軸延伸することによって得られ且つ一軸延伸方向の延伸倍率が2.5〜8倍、結晶化度が20〜50%である基材層を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の保管、輸送又は装着に際して電子部品を汚染から保護し、電子回路基板に実装するために用いられるキャリアテープ及びキャリアテープの収納部を閉止するためのカバーテープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICを始めとして、トランジスター、ダイオード、コンデンサー、圧電素子レジスターなどの表面実装用電子部品は、電子部品を収納するための収納部が形成されたキャリアテープ内に収納された上でカバーテープによって上記収納部が閉止された包装体として供給されている。
【0003】
一方、半導体は、実装時の半田リフロー工程で高温加熱(200〜260℃)されると、使用したモールド樹脂が大気中から吸収した水分を放出して、膨れやクラックを起こしてパッケージクラックへと進行し、或いは、モールド樹脂とリードフレームとの剥離が生じる場合があるため、半導体の製造後に防湿包装によって半導体の吸湿を防止している。
【0004】
パッケージが厚いSOPやQFPなどのチップサイズの小さいものは、開封後に長期間放置しなければ問題ないが、特にTSOP、TQFPなどの超薄膜型半導体では短時間で吸湿が進行し、半田リフロー時にパッケージクラックを起こす確立が高いので、長時間保存後はベーキング処理する必要がある。
【0005】
上記キャリアテープ材料として従来からポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどが用いられているが、上述のベーキング処理を行うと、60℃のベーキング処理温度で形状が変形してしまうといった問題を生じる。
【0006】
そこで、特許文献1には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂の基材層の少なくとも片面に、ポリカーボネート系樹脂に5〜50重量%のカーボンブラックを含有してなる導電性樹脂組成物を積層した導電シートを用いた耐熱性キャリアテープが提案されているものの、耐熱性が充分ではなく上記問題点を解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−326318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電子部品のベーキング処理に耐えることができるキャリアテープ及びカバーテープを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のキャリアテープは、電子部品を収納可能な収納部が形成されたキャリアテープであって、上記キャリアテープは、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸した後に上記引抜延伸方向に一軸延伸することによって得られ且つ引抜延伸の延伸倍率と一軸延伸の延伸倍率の合計が2.5〜8倍、結晶化度が20〜50%である基材層を有していることを特徴とする。
【0010】
キャリアテープの基材層は、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引抜延伸した後に一軸延伸して製造されたものである。引抜延伸に用いられる原反となる熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリグリコール酸、ポリ(L−乳酸)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバリレート)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート/乳酸、ポリブチレンサクシネート/カーボネート、ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリテトラメチレナジペート/テレフタレート、ポリブチレンサクシネート/アジペート/テレフタレートなどが挙げられ、耐熱性の優れたポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0011】
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂の極限粘度は、低すぎると、シート作成時にドローダウンを起こしやすく、高すぎると、引抜延伸の延伸倍率を大きくすることが困難となることがあるので、0.6〜1.0が好ましい。なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂の極限粘度は、JIS K7367−1に準拠して測定されたものをいう。
【0012】
原反となる熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚みは特に限定されないが、0.5〜4mmが好ましい。熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚みが0.5mm未満では、延伸後のシート厚みが薄くなりすぎ、取扱いに際しての強度が十分な大きさとならないことがあり、4mmを超えると延伸が困難となることがあるからである。
【0013】
非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが原反として用いられることが好ましく、その結晶化度は特に限定されるものではないが、示差走査熱量計で測定した結晶化度が10%未満であることが好ましく、5%未満がより好ましい。非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの結晶化度は、密度法により測定されたものをいう。
【0014】
キャリアテープの基材層は、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸して得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一軸延伸して得られる。
【0015】
引抜延伸する際の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの温度は、低温であると、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが白化し、或いは、硬すぎて裂けて引き抜くことができないことがあるので、引抜延伸する前に予め(熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度−20)℃以上に予熱することが好ましい。なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121−1987に準拠して測定されたものをいう。
【0016】
上記引抜延伸する際の一対の引抜ロールの温度は、低温すぎると、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの温度が低下して延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが白化し、高温すぎると、引抜延伸の際の摩擦熱などにより樹脂温度が上昇して分子配向が緩和するので、(熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度−20)℃以上で且つ熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度未満であることが好ましく、(熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度−10)℃以上で且つ熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度未満がより好ましい。
【0017】
又、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引き抜く際に、一対のロールをこれらの対向面が共に引抜方向となるように回転させることで引抜延伸の際の抵抗を低減して延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの波うちの発生を抑えることができ好ましい。
【0018】
本発明においては、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引抜延伸することによって得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを上記引抜延伸と同一方向に一軸延伸して基材層としている。
【0019】
特に、引抜延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートのポリエステル系樹脂は、延伸の阻害要因となる熱による等方的な結晶化及び配向が抑えられた状態で分子鎖は高度に配向しているが結晶化度は低いので、加熱されると配向は容易に緩和されて耐熱性が低下してしまうという欠点を有している。
【0020】
そこで、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを、好ましくは、一対の引抜ロールの温度より高い温度で一軸延伸することにより配向が緩和されることなく結晶化度が上昇し、加熱されても配向が容易に緩和されない耐熱性の優れた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを得ることができる。
【0021】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一軸延伸する方法としてはロール延伸法が好適に用いられる。なお、ロール延伸法とは、一対のロールを所定間隔を存して配設してなるロール対を二組用意し、この二組のロール対を所定間隔を存して配設し、二組のロール対間に延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを配設すると共に、各ロール対のロール間に延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを挟持させ、一方のロール対の回転速度と、他方のロール対の回転速度とを相違させ、且つ、下流側のロール対の回転速度を上流側のロール対の回転速度より速くすることにより、加熱状態の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに引張力を加えて延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを引っ張る方法であり一軸方向のみに強く分子配向させることができる。なお、ロール対間の速度比が延伸倍率となる。
【0022】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一軸延伸する際の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの温度は、低いと、必要な一軸延伸の延伸倍率が得られないことがあり、高いと、引抜延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが溶融して切断されるので、非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂を昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量分析によって測定して得られる示差走査熱量曲線において、熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化ピーク温度の立ち上がり温度以上で且つ融解ピークの立ち上がり温度以下が好ましい。
【0023】
なお、ポリエチレンテレフタレートの結晶化ピークの立ち上がり温度は約120℃であり、融解ピークの立ち上がり温度は約230℃である。従って、延伸ポリエチレンテレフタレートシートを一軸延伸する際は120〜230℃で一軸延伸するのが好ましい。
【0024】
キャリアテープの基材層において、引抜延伸の延伸倍率と、一軸延伸の延伸倍率との合計の延伸倍率は、低いと、キャリアテープの基材層の耐熱性が低下し、高いと、基材層が延伸方向に沿って割れやすくなるので、2.5〜8倍に限定される。
【0025】
キャリアテープの基材層における一軸延伸方向の引抜延伸の延伸倍率は、特に限定されるものではないが、延伸倍率が低いと、基材層の耐熱性が低下することがあり、高いと、基材層が延伸方向に沿って割れやすくなるので、3〜7倍が好ましく、4〜6倍がより好ましい。なお、引抜延伸の延伸倍率は、延伸後のシートの長さを延伸前のシートの長さで除したものをいう。
【0026】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの一軸延伸の延伸倍率は、特に限定されるものではないが、延伸倍率が低いと、基材層の機械的強度が低下することがあり、高いと、基材層が延伸方向に沿って割れやすくなるので、1.01〜1.2倍が好ましく、1.03〜1.1倍がより好ましい。
【0027】
又、基材層を構成している一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの結晶化度は、低いと、キャリアテープの耐熱性が低下し、高いと、キャリアテープが割れやすくなるので、20〜50%に限定され、30〜45%が好ましい。なお、一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの結晶化度は、密度法により測定されたものをいう。
【0028】
更に、基材層を構成している一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは、その耐熱性を向上させるために熱固定されるのが好ましい。
【0029】
一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの熱固定温度は、一軸延伸時の熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの温度(一軸延伸温度)より低いと、熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化が進まず耐熱性が向上しないので、一軸延伸温度以上が好ましいが、原反となる熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂を昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量分析によって測定して得られる示差走査熱量曲線における融解ピークの立ち上がり温度より高くなると、熱可塑性ポリエステル系樹脂が溶解して延伸(配向)が消滅し、基材層を構成している延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの機械的強度が低下するので、一軸延伸温度以上で且つ原反となる熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂を昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量分析によって測定して得られる示差走査熱量曲線における融解ピークの立ち上がり温度以下がより好ましい。
【0030】
又、一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを熱固定する際に、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに負荷がかかっていると延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートが延伸され、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートがフリーの状態では延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに収縮が生じるので、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに負荷はかかっていないが熱により収縮しないように固定した状態で行うことが好ましく、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートに圧力もかかっていないことが好ましい。例えば、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの両端をピンチロールなどで負荷がかからないように保持した状態で、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの熱固定を行なうのが好ましい。なお、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの加熱は、熱風、ヒーター等で行うのが好ましい。
【0031】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを熱固定する時間は、特に限定されず、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートの厚さや熱固定温度により異なるが、10秒〜5分が好ましい。
【0032】
本発明のキャリアテープは、基材層上に導電性樹脂層が積層一体化されていてもよい。この導電性樹脂層は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの熱可塑性樹脂中に、カーボンブラックなどの導電性粉末が含有されてなる。なお、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラックなどが挙げられる。
【0033】
キャリアテープの基材層上に導電性樹脂層を形成する要領としては、特に限定されず、導電性樹脂層を構成する導電性樹脂組成物からなるシートを基材層上に押出ラミネートやドライラミネートする方法、導電性樹脂層を構成する導電性樹脂組成物を基材層上に塗布する方法などが挙げられる。
【0034】
更に、上記導電性樹脂層上に表面コート層を積層一体化させてもよい。この表面コート層は、熱可塑性樹脂中に充填剤が含有されてなる。
【0035】
表面コート層を構成している熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0036】
充填剤としては、無機粒子や合成樹脂粒子などが挙げられる。無機粒子としては、例えば、酸化ケイ素、タルク、マイカ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなどからなる粒子が挙げられる。
【0037】
合成樹脂粒子としては、例えば、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸などのビニル系モノマーの単独又は共重合体などからなる粒子が挙げられる。なお、合成樹脂粒子は架橋されていてもよい。
【0038】
表面コート層にはワックスが含有されていてもよい。ワックスとしては、天然ワックスや炭化水素系ワックスなどが挙げられる。天然ワックスとしては、例えば、ラノリンなどの動物性ワックス、ひまし油水添ワックスなどの植物性ワックス、モンタンロウなどの鉱物性ワックスが挙げられる。炭化水素系ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどが挙げられる。
【0039】
導電性樹脂層上に表面コート層を積層一体化する要領としては、特に限定されず、表面コート層を構成する合成樹脂組成物を導電性樹脂層上に塗布する方法などが挙げられる。
【0040】
本発明のキャリアテープは、所定の延伸倍率及び結晶化度を有する一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シート上に必要に応じて導電性樹脂層や表面コート層を積層一体化した上で汎用の成形方法を用いて成形することによって製造され、電子部品を収納可能な収納部が形成されている。なお、成形方法としては、例えば、真空成形法、圧空成形法、プレス成形法などが挙げられる。
【0041】
又、キャリアテープは、その収納部内に電子部品を収納して用いられるが、収納部内の電子部品の状態を監視するために画像処理を行うことが多い。そのため、キャリアテープの表面に光沢があると、キャリアテープの表面に光を照射した際に生じる反射光によって画像処理にエラーが生じることがある。従って、キャリアテープにおける収納部が形成された表面にエンボス加工を施しておくことが好ましい。
【0042】
上記では、所定の延伸倍率及び結晶化度を有する一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを基材層として有しているキャリアテープを説明したが、上記一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートは、キャリアテープの収納部を閉止するためのカバーテープの基材層として用いることができる。
【0043】
上記一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートをカバーテープの基材層として用いる場合には、基材層上に接着剤層が積層一体化される。このような接着剤としては、特に限定されず、例えば、エチレン系共重合体、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂などからなる接着剤が挙げられる。なお、基材層上への接着剤層の積層一体化は、基材層上に接着剤を汎用の方法を用いて塗布すればよい。
【0044】
そして、カバーテープでキャリアテープの収納部を閉止するには、キャリアテープにおける収納部形成面上にカバーテープを載置した状態で熱を加えて、カバーテープの接着剤層によってカバーテープをキャリアテープの収納部形成面に接着一体化すればよい。
【発明の効果】
【0045】
本発明のキャリアテープ又はカバーテープは、上述のような構成を有しているので、優れた耐熱性を有しており、収納部に収納している電子部品のベーキング処理時においても変形することがないと共に、電子部品の実装時の半田リフロー工程に加わる熱に対しても短時間であれば充分に耐えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
次に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製 商品名「NEH2070」、極限粘度:0.88)を押出機に供給して溶融混練しTダイから押出すことによって厚さ2mmで且つ幅600mmの非晶状態のポリエチレンテレフタレートシートを得た。なお、ポリエチレンテレフタレートシートの結晶化度は2.5%であった。
【0048】
なお、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度は76.7℃、ポリエチレンテレフタレートを昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量分析によって測定して得られた示差走査熱量曲線において、ポリエチレンテレフタレートの結晶化ピークの立ち上がり温度は139.8℃で、融解ピークの立ち上がり温度は234℃であった。
【0049】
一対の直径が500mmの引抜ロールを用意し、この引抜ロールをその対向面間の距離(隙間)が0.7mmとなるように配設した。そして、ポリエチレンテレフタレートシートAに温風を吹き付けて60℃に予熱した後、このポリエチレンテレフタレートシートAを65℃に保持された引抜ロール間に通して6m/分の速度で引き抜いて引抜延伸を行って延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。延伸ポリエチレンテレフタレートシートの延伸倍率は5.5倍であった。なお、引抜ロールは、これら引抜ロールの対向面が共に引抜方向となるように回転速度1.32m/分にて回転していた。
【0050】
次に、190℃に保持された熱風槽内に、一対のロールを0.5mmの間隔を存して上下に配設してなるロール対を二組用意し、この二組のロール対を10mの間隔を存して配設し、二組のロール対間に延伸ポリエチレンテレフタレートシートを配設すると共に、各ロール対のロール間に延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを挟持させ、上流(入口)側のロール対の回転速度を6m/分、下流(出口)側のロール対の回転速度を6.3m/分とし、加熱状態の延伸ポリエチレンテレフタレートシートに引張力を加えて延伸ポリエチレンテレフタレートシートを上記引抜延伸と同一方向に一軸延伸した。なお、一軸延伸された延伸熱可塑性樹脂シートの結晶化度は、37%であった。
【0051】
この一軸延伸された延伸ポリエチレンテレフタレートシートを90℃にて100時間放置した後、延伸ポリエチレンテレフタレートシートの延伸方向の寸法変化率を求めたところ、0.05%であり、延伸ポリエチレンテレフタレートシートの形状は、加熱前と同様で変形は見られなかった。
【0052】
(比較例1)
ポリ塩化ビニル(徳山積水社製 商品名「TS1000R」)を押出機に供給して溶融混練し200℃にてシート状に押出して厚さ0.5mmのポリ塩化ビニルシートを得た。
【0053】
ポリ塩化ビニルシートを90℃にて100時間に亘って放置した後の押出方向の寸法変化率を求めたところ、11%であり、ポリ塩化ビニルシートの形状は、加熱前から大きく変形していた。
【0054】
なお、シートの寸法変化率は下記式によって算出した。
寸法変化率(%)=100×(90℃にて100時間放置後のシートの長さ−90℃にて100時間放置前のシートの長さ)/(90℃にて100時間放置前のシートの長さ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収納可能な収納部が形成されたキャリアテープであって、上記キャリアテープは、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸した後に上記引抜延伸方向に一軸延伸することによって得られ且つ引抜延伸の延伸倍率と一軸延伸の延伸倍率の合計が2.5〜8倍、結晶化度が20〜50%である基材層を有していることを特徴とするキャリアテープ。
【請求項2】
表面にエンボス加工が施されていることを特徴とするキャリアテープ。
【請求項3】
電子部品を収納可能な収納部が形成されたキャリアテープの上記収納部を閉止するためのカバーテープであって、上記カバーテープは、熱可塑性ポリエステル系樹脂シートを一対の引抜ロール間に通して引抜延伸した後に上記引抜延伸方向に一軸延伸することによって得られ且つ引抜延伸の延伸倍率と一軸延伸の延伸倍率の合計が2.5〜8倍、結晶化度が20〜50%である基材層を有していることを特徴とするカバーテープ。

【公開番号】特開2010−274931(P2010−274931A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126360(P2009−126360)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】