説明

キャリアテープ用シート

本発明は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなるブロック共重合体(I)と、非ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(II)と、ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(III)とからなる層を少なくとも1層有するキャリアテープ用シートであって、ブロック共重合体(I)中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量が3万〜8万の範囲内であって、該ビニル芳香族炭化水素ブロックの分子量分布曲線の半値幅が1.3〜2.8の範囲であり、該キャリアテープ用シート中のビニル芳香族炭化水素含有量が75〜95重量%、ビニル芳香族炭化水素重合体成分の含有量が65〜85重量%であるキャリアテープ用シートに関する。本発明のキャリアテープ用シートは透明で剛性、耐衝撃性及び加熱収縮性等の物性バランスと熱安定性に優れることから、IC、LSI等の電子部品を電子機器に実装するためのキャリアテープに好適に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアテープに適した剛性、透明性、耐衝撃性及び加熱収縮性等の物性バランスと熱安定性に優れたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、IC、LSI等の電子部品を電子機器に実装するためのキャリアテープは塩化ビニル樹脂、スチレン系樹脂等で構成されたシートで成形され、例えばスチレン系樹脂シートとしては、汎用ポリスチレン樹脂とスチレンーブタジエンブロック共重合体とを混合したシートで形成されている。キャリアテープはその使用形態から透明性、剛性、耐衝撃性、耐折り曲げ性及び成形性等の物性をバランスさせることが要求されており、これまで、これらの特性の向上と良好な物性バランスを得るために種々の検討がなされてきた。
【0003】
例えば下記特許文献1には透明性、剛性、耐衝撃性に優れた透明キャリアテープに好適なスチレン系樹脂組成物を得るため、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素−アクリル酸エステル共重合体及びゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂のスチレン系樹脂組成物が開示されている。
【0004】
下記特許文献2には折り曲げ時に白化或いは割れ等の問題が起こらないエンボスキャリアテープを得るため、ポリスチレン樹脂とスチレン−ジエン系エラストマー共重合体のアロイからなるエンボスキャリアテープが開示されている。
【0005】
下記特許文献3には座屈強度や耐衝撃性、剛性、印刷適性及びヒートシール性に優れるシートで形成された電子部品搬送用成形品を得るため、スチレン−ブタジエン共重合体とポリスチレン系樹脂とを含有する基材層の両面にポリスチレン系樹脂とゴム強化スチレン系樹脂とを含有したシートが開示されている。
【0006】
下記特許文献4には耐折強度や座屈強度、耐衝撃性、剛性に優れ、各層の厚みが均一な複数の樹脂層を一体に積層したスチレン系樹脂シート及びそのシートで形成された電子部品搬送用成形品を得るため、スチレン系熱可塑性エラストマ−及びスチレン系樹脂を含む基材層の両面にスチレン系樹脂及びスチレン−ブタジエンブロック共重合体を含む樹脂組成物の外層で構成されたシートが開示されている。
【0007】
下記特許文献5には透明性、成形性及び剛性に優れたシートを得るため、スチレン系樹脂、又はスチレン−共役ジエンブロック共重合体とスチレン系樹脂の基材層の少なくとも片面に、スチレン−共役ジエンブロック共重合体とスチレン系樹脂の表皮層を有するシートが開示されている。
【0008】
下記特許文献6には成形性及び透明性に優れた樹脂組成物及びシートを得るため、特定のスチレン−共役ジエンブロック共重合体とポリスチレン系樹脂からなる樹脂組成物及びそれからなるシートが開示されている。
【0009】
下記特許文献7には透明性、成形性、衝撃強度に優れた電子部品包装用に好適な樹脂組成物及びそれを用いたシートを得るため、ゴム分を含むスチレン系樹脂とスチレン−共役ジエンブロック共重合体からなる樹脂組成物及びそれからなるシートが開示されている。
【0010】
しかしながら、これらのビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素系重合体の樹脂組成物は、キャリアテープに適した剛性、透明性、耐衝撃性及び加熱収縮性等の物性バランスと熱安定性が十分でなく、これらの文献にはそれらを改良する方法に関して開示されておらず、依然として市場での問題点が指摘されている。
【特許文献1】特開平10−279755号公報
【特許文献2】特開平10−236576号公報
【特許文献3】特開2002−113818号公報
【特許文献4】特開2002−283502号公報
【特許文献5】特開2002−331621号公報
【特許文献6】特開2002−332392号公報
【特許文献7】特開2003−55526号公報
【発明の開示】
【0011】
本発明は、キャリアテープに適した剛性、透明性、耐衝撃性及び加熱収縮性等の物性バランスと熱安定性に優れたシートの提供を目的とする。
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のブロック共重合体を用いた特定の配合物によって上記の目的が達成されることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明の構成は次に記載するとおりである。
[1]ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなるブロック共重合体(I)と、非ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(II)と、ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(III)とからなる層を少なくとも1層有するキャリアテープ用シートであって、
ブロック共重合体(I)中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量が3万〜8万の範囲内であって、該ビニル芳香族炭化水素ブロックの分子量分布曲線の半値幅が1.3〜2.8の範囲であり、
該キャリアテープ用シート中のビニル芳香族炭化水素含有量が75〜95重量%、ビニル芳香族炭化水素重合体成分の含有量が65〜85重量%であるキャリアテープ用シート。
[2]ブロック共重合体(I)中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量が3.2万〜7.5万の範囲内であって、該ビニル芳香族炭化水素ブロックの分子量分布曲線の半値幅が1.5〜2.5の範囲であり、
キャリアテープ用シート中のビニル芳香族炭化水素含有量が77〜92重量%、ビニル芳香族炭化水素重合体成分の含有量が68〜82重量である上記[1]のキャリアテープ用シート。
[3]ブロック共重合体(I)と非ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(II)及びゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(III)の含有量が合計100重量部として、それぞれ30〜90重量部、5〜60重量部、及び1〜30重量部である上記[1]又は[2]のキャリアテープ用シート。
[4]ブロック共重合体(I)のビニル芳香族炭化水素含有量が65〜90重量%、共役ジエン含有量が10〜35重量%である上記[1]〜[3]のいずれかのキャリアテープ用シート。
[5]ブロック共重合体(I)の共役ジエンがブタジエンとイソプレンからなり、ブタジエンとイソプレンの重量比が10/90〜80/20である上記[1]〜[4]のいずれかのキャリアテープ用シート。
[6]非ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(II)が、スチレン単量体単位の含有量が75〜90重量%、アクリル酸n−ブチル単量体単位の含有量が25〜10重量%であるスチレン/アクリル酸n−ブチル共重合体(IV)である上記[1]〜[5]のいずれかのキャリアテープ用シート。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかのシートで形成されたキャリアテープ。
【0013】
本発明のキャリアテープ用シートはキャリアテープに適した剛性、透明性、耐衝撃性及び加熱収縮性等の物性バランスと熱安定性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなるブロック共重合体(I)と、非ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(II)と、ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(III)とからなる層を少なくとも1層有するキャリアテープ用シート(以後、本発明のシートと呼ぶ)は、ビニル芳香族炭化水素含有量が75〜95重量%、好ましくは77〜92重量%、更に好ましくは80〜90重量%である。ビニル芳香族炭化水素含有量が75重量%以上では透明性及び剛性が優れ、95重量%以下では耐衝撃性が向上したシートを得ることができる。
【0015】
本発明のシート中のビニル芳香族炭化水素含有量は、ブロック共重合体(I)のビニル芳香族炭化水素含有量を増量する、又は非ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(II)、或いはゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(III)の配合量を目的に応じてそれぞれ増量する等によって高くする事ができ、減じる場合はこの逆によって制御できる。
【0016】
本発明のシート中のビニル芳香族炭化水素重合体成分の含有量は65〜85重量%、好ましくは68〜82重量%、更に好ましくは70〜80重量%である。ビニル芳香族炭化水素重合体成分の含有量が65重量%以上では剛性に優れ、85重量%以下では耐衝撃性が良好なシートを得ることができる。
【0017】
本発明のシート中のビニル芳香族炭化水素重合体成分の含有量とは、シートを四酸化オスミウムを触媒としてターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.ScI.1,429(1946)に記載の方法)で測定した、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)のシート中の含有量である。シート中のビニル芳香族炭化水素重合体成分の含有量は、ブロック共重合体(I)のビニル芳香族炭化水素ブロックの含有量を増量する、又は非ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(II)、或いはゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(III)の配合量を目的に応じてそれぞれ増量する等によって高くする事ができ、減じる場合はこの逆によって制御できる。なお、ブロック共重合体(I)のビニル芳香族炭化水素ブロックの含有量は、後述する方法によってコントロールすることができる。
【0018】
本発明のシート中のブロック共重合体(I)と非ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(II)及びゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(III)の重量比は合計100重量部として、(I)/(II)/(III)=30〜90/5〜60/1〜30であり、好ましくは35〜85/10〜55/3〜25であり、更に好ましくは40〜80/15〜50/5〜20である。(I)/(II)/(III)=30〜90/5〜60/1〜30の範囲にあっては剛性、透明性、耐衝撃性及び加熱収縮性等に優れる。
【0019】
本発明に使用するブロック共重合体(I)のビニル芳香族炭化水素含有量は65〜90重量%、共役ジエン含有量が10〜35重量%であり、好ましくはビニル芳香族炭化水素含有量が68〜85重量%、共役ジエン含有量が15〜32重量%、更に好ましくはビニル芳香族炭化水素含有量が70〜80重量%、共役ジエン含有量が20〜30重量%である。ビニル芳香族炭化水素含有量が65〜90重量%、共役ジエン含有量が10〜35重量%の範囲にあっては剛性、透明性及び耐衝撃性に優れる。
【0020】
本発明に使用するブロック共重合体(I)のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量は3万〜8万、好ましくは3.2万〜7.5万、更に好ましくは3.5万〜7万である。ピーク分子量が3万〜8万の範囲にあっては、耐衝撃性、剛性及び加熱収縮性に優れる。
【0021】
本発明に使用するブロック共重合体(I)のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量は、ブロック共重合体(I)を四酸化オスミウムを触媒として水素添加前の共重合体をターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法、以下、四酸化オスミウム酸法とも呼ぶ)により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分をゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィ−(GPC)で、分子量を特定するものである。分子量はゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィ−(GPC)用の単分散ポリスチレンをGPC測定して、そのピ−クカウント数と単分散ポリスチレンの数平均分子量との検量線を作成し、常法(例えば「ゲルクロマトグラフィ−<基礎編>」講談社発行)に従って算出する。ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量はビニル芳香族炭化水素の重量、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの重量比及びブロック共重合体の分子量等を変えることによってコントロールすることができる。
【0022】
本発明に使用するブロック共重合体(I)のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの分子量分布曲線の半値幅は1.3〜2.8、好ましくは1.5〜2.5、更に好ましくは1.7〜2.3の範囲である。ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの分子量分布曲線の半値幅が1.3〜2.8範囲にあっては耐衝撃性と加熱収縮性に優れる。ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの分子量分布曲線の半値幅は前述したビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量を求めた分子量分布チャートから求めることができる。具体的には、分子量を対数表示で横軸の1000〜1000000の範囲を15cmとして、縦軸に濃度(重量比)を任意の高さで表示し、ピークトップの高さの50%のピークの横軸の幅を半値幅とする。この場合、ピークトップの高さは横軸に垂直であり、高さの50%のピークの幅は横軸に水平であることが必要である。ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの分子量分布曲線の半値幅はビニル芳香族炭化水素の重量、ブロック共重合体の分子量分布等を変えることによってコントロールすることができるが、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック部分(後述するセグメントA)を製造する際に、開始剤を複数回添加する或いは連続的に添加する方法及び、分子量の異なるブロック共重合体をブレンドする方法が好ましい。
【0023】
本発明に使用するブロック共重合体(I)は、ビニル芳香族炭化水素単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体から構成されるセグメントを少なくとも1つと、共役ジエン単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体から構成されるセグメントを少なくとも1つ有する。該ブロック共重合体等のポリマ−構造は特に制限は無いが、例えば下記の一般式(1)〜(7)で表される線状ブロック共重合体やラジアルブロック共重合体、或いはこれらのポリマ−構造の任意の混合物が使用できる。
【0024】
(1)(A−B)
(2)A−(B−A)
(3)B−(A−B)n+1
(4)[(A−B)m+1−X
(5)[(A−B)−A]m+1−X
(6)[(B−A)m+1−X
(7)[(B−A)−B]m+1−X
(上式において、セグメントAはビニル芳香族炭化水素単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体、セグメントBは共役ジエン単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体である。Xは例えば四塩化ケイ素、四塩化スズ、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ化大豆油等のカップリング剤の残基または多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。n、k及びmは1以上の整数、一般的には1〜5の整数である。また、Xに複数結合しているポリマ−鎖の構造は同一でも、異なっていても良い。)
また、上記一般式で表されるラジアルブロック共重合体において、更にA及び/又はBが少なくとも一つXに結合していても良い。
【0025】
本発明において、セグメントA、セグメントBにおけるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体中のビニル芳香族炭化水素は均一に分布していても、テーパー(漸減)状に分布していてもよい。また該共重合体中には、ビニル芳香族炭化水素が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がセグメント中にそれぞれ複数個共存してもよい。セグメントA中のビニル芳香族炭化水素含有量({セグメントA中のビニル芳香族炭化水素/(セグメントA中のビニル芳香族炭化水素+共役ジエン)}×100)とセグメントB中のビニル芳香族炭化水素含有量({セグメントB中のビニル芳香族炭化水素/(セグメントB中のビニル芳香族炭化水素+共役ジエン)}×100)との関係は、セグメントAにおけるビニル芳香族炭化水素含有量の方が、セグメントBにおけるビニル芳香族炭化水素含有量より大である。セグメントAとセグメントBの好ましいビニル芳香族炭化水素含有量の差は5重量%以上であることが好ましい
本発明で使用するブロック共重合体(I)のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの含有量は製造時におけるビニル芳香族炭化水素の使用量及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンが共重合する過程でのビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの重量、重量比、重合反応性比等を変えることによりコントロールすることができる。
【0026】
後者の具体的な方法としては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの混合物を連続的に重合系に供給して重合する、及び/又は極性化合物あるいはランダム化剤を使用してビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを共重合する等の方法が採用できる。
【0027】
極性化合物やランダム化剤としては、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエ−テル、ジエチレングリコールジブチルエ−テル等のエ−テル類、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類、チオエーテル類、ホスフィン類、ホスホルアミド類、アルキルベンゼンスルホン酸塩、カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。
【0028】
本発明に使用するブロック共重合体(I)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(ポリスチレン換算分子量)が3万〜50万、好ましくは5万〜40万、更に好ましくは7万〜30万の範囲であり、分子量が異なる複数のブロック共重合体の混合物であっても良い。ブロック共重合体の好ましいメルトフローインデックス(JISK−6870により測定。条件はG条件で温度200℃、荷重5Kg)は成形加工性の点から、0.1〜100g/10min、0.5〜50g/10min、更に好ましくは1〜30g/10minであることが推奨される。分子量とメルトフローインデックスは重合に使用する触媒量により任意に調整できる。
【0029】
本発明に使用するブロック共重合体(I)は、炭化水素溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤としてビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンを重合することにより得ることができる。本発明に用いるビニル芳香族炭化水素としてはスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレンなどがあるが、特に一般的なものとしてはスチレンが挙げられる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0030】
共役ジエンとしては、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられるが、特に一般的なものとしては1,3−ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0031】
本発明に使用するブロック共重合体(I)の好ましい共役ジエンはブタジエンとイソプレンからなり、ブタジエンとイソプレンの重量比が10/90〜80/20、好ましくは20/80〜75/25、更に好ましくは30/70〜70/30である。ブタジエンとイソプレンの重量比が10/90〜80/20の範囲にあっては熱安定性に優れる。
【0032】
本発明に使用するブロック共重合体(I)は、例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の開始剤を用いてアニオンリビング重合により得られる。炭化水素溶媒としては、例えばn−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類、また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素等が使用できる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0033】
また重合開始剤としては、一般的に共役ジエン及びビニル芳香族化合物に対しアニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等を用いることができる。
【0034】
アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、好適な有機アルカリ金属化合物としては、炭素数1から20の脂肪族及び芳香族炭化水素リチウム化合物であって、1分子中に1個のリチウムを含む化合物や1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が挙げられる。
【0035】
具体的にはn−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物等が挙げられる。更に、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0036】
本発明において、ブロック共重合体を製造する際の重合温度は一般的に−10℃〜150℃、好ましくは40℃〜120℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は10時間以内であり、特に好適には0.5〜5時間である。また、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガスなどをもって置換するのが望ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマ−及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に制限されるものではない。更に重合系内には触媒及びリビングポリマ−を不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガス等が混入しないように留意する必要がある。
【0037】
本発明に使用するブロック共重合体(I)は必要に応じて水素添加した水添物として使用できる。ブロック共重合体(I)の水添物を得るための水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である下記の水添触媒を用いることができる。(1)NI、Pt、Pd、Ru等の金属をカ−ボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒(2)NI、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチ−グラ−型水添触媒(3)TI、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒、具体的な水添触媒としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物および/または還元性有機金属化合物との混合物があげられる。
【0038】
チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物があげられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等があげられる。
【0039】
水添反応は一般的に0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は0.1〜15MPa、好ましくは0.2〜10MPa、更に好ましくは0.3〜7MPaが推奨される。また、水添反応時間は通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0040】
本発明に使用するブロック共重合体(I)の水添物において、共役ジエンに基づく不飽和二重結合の水素添加率は目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。
熱安定性及び耐候性の良好なブロック共重合体水添物を得る場合、重合体中の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の70%を超える、好ましくは75%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上が水添されていることが推奨される。
【0041】
また、熱安定性の良好なブロック共重合体水添物を得る場合、水素添加率(水添率)は3〜70%、或いは5〜65%、特に好ましくは10〜60%にすることが好ましい。なお、共重合体中のビニル芳香族炭化水素に基づく芳香族二重結合の水添率については特に制限はないが、水添率を50%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下にすることが好ましい。水添率は、核磁気共鳴装置(NMR)により知ることができる。
【0042】
本発明において、ブロック共重合体(I)の水添物を使用する場合、その水添物中のビニル芳香族炭化水素重合体成分の含有量は、水添前のブロック共重合体を前述の酸化分解する方法で把握することができる。
【0043】
本発明に使用するブロック共重合体(I)の共役ジエン部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、前述の極性化合物等の使用により任意に変えることができ、特に制限はない。一般に、ビニル結合量は5〜90%、好ましくは10〜80%、より好ましくは15〜75%の範囲で設定できる。なお、本発明においてビニル結合量とは、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量(但し、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量)である。ビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)により把握することができる。
【0044】
本発明で使用する非ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(II)はビニル芳香族炭化水素を単独で、もしくはこれと共重合可能なモノマーと共に重合して得られるものである。ビニル芳香族炭化水素と共重合可能なモノマーとしては、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸等があげられる。特に好ましい非ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(II)としてはポリスチレン、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、メタクリル酸エステル−スチレン共重合体等であり、これらは単独又は二種以上の混合物として使用できる。
【0045】
本発明に使用するゴム変性ビニル芳香族系炭化水素系重合体(III)はビニル芳香族炭化水素、これと共重合可能なモノマー、及びエラストマーの混合物を重合することによって得られ、重合方法としては懸濁重合、乳化重合、塊状重合、塊状−懸濁重合等が一般的に行われている。
【0046】
ビニル芳香族炭化水素と共重合可能なモノマーとしてはα−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸等があげられる。又、共重合可能なエラストマーとしては天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ハイスチレンゴム等が使用される。
【0047】
これらのエラストマーはビニル芳香族炭化水素及びこれと共重合可能なモノマー100重量部に対して一般に3〜50重量部を該モノマーに溶解して或いはラテックス状で乳化重合、塊状重合、塊状−懸濁重合等に供される。特に好ましいゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体としては、耐衝撃性ゴム変性スチレン重合体(HIPS)があげられる。これらのゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体の重量平均分子量は、一般に50000〜500000の重合体を使用できる。
【0048】
本発明のシートの形態として、共役ジエンがブタジエンとイソプレンからなり、ブタジエンとイソプレンの重量比が10/90〜80/20であるブロック共重合体(I)とスチレン/アクリル酸n−ブチル共重合体(IV)及びゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(III)とからなる層を少なくとも1層有するシートが使用できる。
【0049】
本発明に使用するスチレン/アクリル酸n−ブチル共重合体(IV)の製造方法は、スチレン系樹脂を製造するための公知の方法、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等を用いることができる。スチレン/アクリル酸n−ブチル共重合体(IV)中のスチレン含有量は75〜90重量%、アクリル酸n−ブチル単量体単位の含有量が25〜10重量%、好ましくはスチレン含有量が78〜87重量%、アクリル酸n−ブチル単量体単位の含有量が22〜13重量%である。スチレン含有量が75〜90重量%、アクリル酸n−ブチル単量体単位の含有量が25〜10重量%の範囲にあっては剛性、透明性、耐衝撃性に優れる。
【0050】
本発明の、共役ジエンがブタジエンとイソプレンとからなるブロック共重合体(I)とスチレン/アクリル酸n−ブチル共重合体(IV)とゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(III)とからなるシートの好ましい配合量は合計100重量部として、(I)/(IV)/(III)=30〜90/5〜60/1〜30であり、好ましくは35〜85/10〜55/3〜25であり、更に好ましくは40〜80/15〜50/5〜20である。(I)/(IV)/(III)=30〜90/5〜60/1〜30の範囲にあっては剛性、透明性、耐衝撃性及び加熱収縮性等に優れる。
【0051】
本発明のシートの厚みは特に制限はないが、10μm〜2mm、好ましくは50μm〜1mm、更に好ましくは100〜500μm程度である。シートの製造方法は特に制限はないが、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等の混練機、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機等で調製した樹脂組成物を1軸又は2軸押出機に供給し、加熱溶融混練りしてダイ(フラット状、T状、円筒状等)から押出して成形できる。シートは、1軸延伸又は2軸延伸しても良いが、通常は押出方向に引き取りを作用した未延伸シートである。
【0052】
本発明のシートはブロック共重合体(I)と非ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(II)とゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(III)とからなる層を少なくとも1層有するものであり、例えば複数層を有するシートを得る場合は各構成層に用いる組成物を複数の押出機により成形し、得られたシートを加熱積層して一体化するヒートラミネーション法等で製造しても良く、又、各構成層用の樹脂組成物を、汎用のフィードブロック付きダイやマルチマニホールドダイ等を使用して共押出する方法等で製造しても良い。共押出する方法では薄い表面層を得ることができ、量産性に優れるため好ましい。
【0053】
この様にして得たシートは圧空成形(押出圧空成形、熱板圧空成形、真空圧空成形等)、自由吹込成形、真空成形、折り曲げ加工、マッチモールド成形、熱板成形等の慣用の熱成形などで、簡便に二次成形品のキャリアテープに成形することができる。
【0054】
シートや二次成形品の表面には、表面処理(例えば、コロナ放電やグロ−放電等の放電処理、酸処理、焔処理等)を行ってもよい。シートや二次成形品の表面には、印刷性に優れるため、導電性被膜又は帯電防止層(例えば、導電性インキによる被膜など)を形成してもよい。前記シートは、印刷性及びヒートシール性に優れるため、優れた帯電防止性能を付与でき、かつカバーテープとのヒートシール性が優れる。従って、半導体や電子部品搬送用成形品、特に電子部品を収容するための凹部を有し、カバーテープで密封して電子部品を収納するキャリアテープ等に有用である。
【0055】
本発明のシートには、目的に応じて種々の重合体及び添加剤を添加することができる。好適な重合体としては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体エラストマー又はその水添物等を挙げることができる。ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体エラストマー又はその水添物は、ビニル芳香族炭化水素含有量が60重量%未満、好ましくは10〜50重量%で、ブロック共重合体(I)100重量部に対して0.5〜30重量部、好ましくは1〜20重量部配合することにより、耐衝撃性を改善することができる。
【0056】
ブロック共重合体エラストマーの水添物において、共役ジエンに基づく不飽和二重結合の水素添加率は目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。ブロック共重合体エラストマー中の共役ジエンに基づく不飽和二重結合の70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上が水添されていても良いし、一部のみが水添されていても良い。一部のみを水添する場合には、水添率が10%以上、70%未満、或いは15%以上、65%未満、所望によっては20%以上、60%未満にすることが好ましい。
【0057】
その他の好適な添加剤としては、クマロンーインデン樹脂、テルペン樹脂、オイル等の軟化剤、可塑剤が挙げられる。又各種の安定剤、顔料、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤等も添加できる。
【0058】
尚、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤としては、例えば脂肪酸アマイド、エチレンビスステアロアミド、ソルビタンモノステアレート、脂肪酸アルコールの飽和脂肪酸エステル、ペンタエリストール脂肪酸エステル等、又紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,5−ビス−[5’−t−ブチルベンゾオキサゾリル−(2)]チオフェン等、「プラスチックおよびゴム用添加剤実用便覧」(化学工業社)に記載された化合物が使用できる。これらは、一般的に0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%の範囲で用いられる。
【実施例】
【0059】
以下に本発明の実施例を説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
表1及び表2にブロック共重合体、非ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体、ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体及びスチレン/アクリル酸n−ブチル共重合体を示した。
<ブロック共重合体A−1〜A−6の調製>
ブロック共重合体はシクロヘキサン溶媒中n−ブチルリチウムを触媒とし、テトラメチルエチレンジアミンをランダム化剤として、表1に示したスチレン含有量(重量%)、ブロックスチレン含有量(重量%)及びブロックスチレンのピーク分子量を有するブロック共重合体を製造した。スチレン含有量はスチレンとブタジエン(イソプレンが入る場合はイソプレンも含む)の添加量で、ブロックスチレン含有量はセグメントAとセグメントBのスチレン含有量で、ブロックスチレンのピ−ク分子量はセグメントAとセグメントBのスチレン含有量、量比で調整した。なお、ブロック共重合体の調製において、モノマーはシクロヘキサンで濃度20重量%に希釈したものを使用した。
(1)ブロック共重合体A−1
攪拌機付きオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下でスチレン29重量部を含む75℃のシクロヘキサン溶液に、テトラメチルエチレンジアミンを0.03重量部添加し、n−ブチルリチウム0.056重量部を連続的に6分間添加して重合を開始し、その後20分間かけて重合した。次にスチレン15重量部と1,3−ブタジエン27重量部を含むシクロヘキサン溶液を45分間連続的に添加して75℃で重合した後、スチレン29重量部を含むシクロヘキサン溶液を添加して75℃で20分間重合した。その後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して0.9倍モル添加して重合を停止し、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体組成物100重量部に対して0.6重量部を加えた後、脱溶媒してブロック共重合体を得た。
(2)ブロック共重合体A−6
攪拌機付きオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下でスチレン38重量部を含む50℃のシクロヘキサン溶液に、テトラメチルエチレンジアミンを0.03重量部とn−ブチルリチウム0.055重量部を10秒で添加して重合を開始し、その後20分間かけて重合した。次に重合器内温度を75℃として、スチレン2重量部と1,3−ブタジエン22重量部を含むシクロヘキサン溶液を35分間連続的に添加して75℃で重合した後、スチレン38重量部を含むシクロヘキサン溶液を添加して75℃で25分間重合した。その後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して0.9倍モル添加して重合を停止し、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体組成物100重量部に対して0.6重量部を加えた後、脱溶媒してブロック共重合体を得た。
(3)ブロック共重合体A−2〜Aー5
ブロック共重合体A−2〜A−5はA−1と同様な方法で調製した。尚、ブロックスチレンのピーク分子量が複数ある場合は、スチレン単独重合部の1回目と2回目の重量比率を調整することによってピーク分子量を調整した。
<スチレン/アクリル酸n−ブチル共重合体B−3、B−4の調製>
スチレン/アクリル酸n−ブチル共重合体B−3及びB−4は撹拌器付き10Lオ−トクレ−ブに、スチレンとアクリル酸n−ブチルを表2に示す比率で5kg添加し、同時にエチルベンゼン0.3kgと、MFRを調整するため1,1−ビス(t−ブチルパ−オキシ)シクロヘキサンを所定量仕込み、110〜150℃で2〜10時間重合後、ベント押出機で未反応スチレン、アクリル酸n−ブチルを回収して製造した。得られたBー3のMFRは3.0g/10min、B−4のMFR2.6g/10minであった。
<測定・評価方法>
実施例及び比較例における測定、評価は以下の方法で行った。
(1)スチレン含有量
ブロック共重合体及びシートのスチレン含有量は、ブロック共重合体及びシートを約40mg精秤した後、100mlのクロロホルムに溶解し、溶解した溶液を紫外分光光度計(装置名:UV−2450;島津製作所製)を用いてスチレン部の吸光度を測定する。その後、吸光度とスチレン重量の検量線からブロック共重合体及びシート中のスチレン含有量を求めた。
(2)ブロックスチレン含有量
ブロック共重合体及びシートを、四酸化オスミウムを触媒としてターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.ScI.1,429(1946)に記載の方法)でブロックスチレン含有量を測定した。
(3)ブロックスチレンピーク分子量
上記(2)で得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分をテトラヒドロフラン溶媒に溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、定法により得た。ピーク分子量はGPC用単分散ポリスチレンをGPC測定し、そのピークカウント数と単分散ポリスチレンの数平均分子量との検量線を基に、測定したクロマトチャートからピーク分子量を読み取って求めた。
(4)ブロックスチレン分子量分布曲線の半値幅
上記(3)のピーク分子量を求めた分子量分布チャートの分子量を対数表示で横軸に1000〜1000000の範囲を15cmとしてピークトップの高さの50%のピークの横軸の幅を求めた。(単位はcm)
(5)数平均分子量
ブロック共重合体の分子量は、GPC装置(米国、ウォーターズ製)を用いて測定した。溶媒にはテトラヒドロフランを用い、35℃で測定した。重量平均分子量と数平均分子量が既知の市販の標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を使用し、数平均分子量を求めた。
(6)引張弾性率
JIS K−6732に準拠し、引張速度5mm/minでシートのMD方向について測定した。試験片は幅を12.7mm、標線間を50mmとした。測定温度は23℃で行った。単位はkg/cm2である。
(7)ダート衝撃強度
ASTM D1709−72に準拠して測定した。単位はKg・cmである。落錘は半径1/2インチを用いた。
(8)Haze
シート表面に流動パラフィンを塗布し、ASTM D1003に準拠して測定した。
(9)加熱収縮性
シートをMD×TD(10cm×10cm)に切取り、130℃×30minの条件でギヤオーブン中に静置した後、MD方向の収縮率を測定した。
【0060】
(判定基準)
○:25%以内。
×:25%を超える。
(10)熱安定性
表3に示したシートを40mmシート押出機を用いて押出温度240℃の条件で厚さ0.3mmのシートを6時間連続成形し、運転開始5分後と6時間後のシート面積300cmあたりの0.5mm以上のFE個数をそれぞれカウントし、相互のFE個数の差で評価した。
【0061】
(判定基準)
○:100個以内。
×:100個を超える。
[実施例1〜6、比較例1〜4]
表3に示したブロック共重合体:A−1〜A−6、他の重合体:B−5(旭化成社製スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体タフプレン126)及びB−6(旭化成株式会社製スチレン−ブタジエン系水添ブロック共重合体タフテック1041)、スチレン/アクリル酸n−ブチル共重合体:B−3、B−4、汎用ポリスチレン:B−2(PSジャパン株式会社製 PSJポリスチレン685)、ゴム変性スチレン重合体:B−1(PSジャパン株式会社製 PSJポリスチレン475D)の種類と量の組成物を40mm押出機を用いて200℃で厚さ0.6mm、引取り速度1.4m/minでシート状に成形して実施例及び比較例のシートを得た。このシートの分析値とシート物性を表3に示した。本発明のシートの性能は引張弾性率で表される剛性、ダート衝撃強度で表される耐衝撃性、Hazeで表される透明性、加熱収縮性及び熱安定性に優れていることが分かる。尚、表3に示したシート物性は上記した方法によって行った。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【0066】
本出願は、2003年8月22日出願の日本特許出願(特願2003−298214)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のキャリアテープに適したシートは透明で剛性、耐衝撃性及び加熱収縮性等の物性バランスと熱安定性に優れることから、IC、LSI等の電子部品を電子機器に実装するためのキャリアテープに好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなるブロック共重合体(I)と、非ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(II)と、ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(III)とからなる層を少なくとも1層有するキャリアテープ用シートであって、
ブロック共重合体(I)中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量が3万〜8万の範囲内であって、該ビニル芳香族炭化水素ブロックの分子量分布曲線の半値幅が1.3〜2.8の範囲であり、
該キャリアテープ用シート中のビニル芳香族炭化水素含有量が75〜95重量%、ビニル芳香族炭化水素重合体成分の含有量が65〜85重量%であるキャリアテープ用シート。
【請求項2】
ブロック共重合体(I)中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量が3.2万〜7.5万の範囲内であって、該ビニル芳香族炭化水素ブロックの分子量分布曲線の半値幅が1.5〜2.5の範囲であり、
キャリアテープ用シート中のビニル芳香族炭化水素含有量が77〜92重量%、ビニル芳香族炭化水素重合体成分の含有量が68〜82重量である請求の範囲第1項記載のキャリアテープ用シート。
【請求項3】
ブロック共重合体(I)と非ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(II)及びゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(III)の含有量が、合計を100重量部として、それぞれ30〜90重量部、5〜60重量部、及び1〜30重量部である請求の範囲第1項あるいは第2項記載のキャリアテープ用シート。
【請求項4】
ブロック共重合体(I)のビニル芳香族炭化水素含有量が65〜90重量%、共役ジエン含有量が10〜35重量%である請求の範囲第1項〜第3項のいずれか一項に記載のキャリアテープ用シート。
【請求項5】
ブロック共重合体(I)の共役ジエンがブタジエンとイソプレンからなり、ブタジエンとイソプレンの重量比が10/90〜80/20である請求の範囲第1項〜第4項のいずれか一項に記載のキャリアテープ用シート。
【請求項6】
非ゴム変性ビニル芳香族系炭化水素重合体(II)が、スチレン単量体単位の含有量が75〜90重量%、アクリル酸n−ブチル単量体単位の含有量が25〜10重量%であるスチレン/アクリル酸n−ブチル共重合体(IV)である請求の範囲第1項〜第5項のいずれか一項に記載のキャリアテープ用シート。
【請求項7】
請求の範囲第1項〜第6項のいずれか一項に記載のシートで形成されたキャリアテープ。

【国際公開番号】WO2005/019060
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【発行日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513300(P2005−513300)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011966
【国際出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】