説明

キャリア挙動の測定方法および測定装置

【課題】 簡易な測定によってアモルファス有機半導体等の物質のキャリア挙動を測定する。
【解決手段】 本発明のある態様においては、試験片1の被測定物質1Sのうち電界が印加されているある領域に励起光パルスを照射する光励起工程と、TBC用プローブ光を試験片1の領域に対し照射する工程と、変形HTOF強度を測定する工程と、TBC強度を測定する工程とを含む被測定物質1Sのキャリア挙動の測定方法が提供される。励起光パルスは、互いに可干渉な2光束の所定の短時間照射の光パルスであり、TBC用プローブ光は、励起光パルスと同一波長の互いに可干渉な2光束の光である。励起光パルスとTBC用プローブ光は、ともに光路の組14および16により照射される。変形HTOF強度は、回折強度測定用プローブ光の回折強度の時間変化として測定され、TBC強度はTBC用プローブ光の時間変化として測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャリア挙動の測定方法および測定装置に関する。さらに詳細には、本発明は、例えば有機半導体などの物質の電荷キャリアのダイナミクスを光学的手法により測定するキャリア挙動の測定方法および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子や有機FET(電界効果トランジスタ)素子、有機太陽電池などに用いられる主材料として有機半導体が活発な研究や開発の対象となっている。有機半導体を高性能化するためには、電荷キャリアの発生、移動、蓄積などのキャリア挙動を効率よく制御することが必要であり、その目的に適う材料物性値の評価技術が求められている。有機半導体においてとりわけ近年注目されているのが、アモルファス有機半導体である。これは、アモルファス有機半導体を各種のデバイスの一部として利用する際に印刷技術を適用できる可能性が高く、上記デバイスの生産効率を飛躍的に高めることが期待されているためである。それにもかかわらず、アモルファス有機半導体ではキャリア挙動の測定や評価が十分になされていないのが実情である。その理由の一つは、電荷キャリアが大きな分散特性を示すためである。つまり、アモルファス有機半導体では、例えば電荷キャリアの飛程(drift length)がその平均値のまわりに集中せず、広く分散する分散性が顕著となる。このように、上記各種のデバイスを高性能化する可能性を秘めたアモルファス有機半導体をも対象としうるキャリア挙動の測定技術が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】A. Leopold et al., “Investigationson the effective drift length in organic photorefractive materials,” J. Lumin. No. 86, p371 (2000)
【非特許文献2】O. Ostroverkhova et al., “Organic photorefractives: mechanisms,materials, and applications,” Chem. Rev. No. 104, p3267 (2004)
【非特許文献3】J. Thomas et al., “Non-linear optical polymers for photorefractiveapplications,” J. Mater. Chem. No. 19, p7476 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャリア挙動を決定するための指標として測定される測定値には、上述したキャリアの飛程の平均値、つまり、電荷キャリアの平均飛程(effective drift length)w以外にも、平均寿命τおよび移動度μを挙げることができる。ここで、これらの三つの値は相互に関連している。具体的には、キャリア平均飛程wが平均寿命τと移動度μとの積に比例する。この関係から、キャリア平均飛程、平均寿命、および移動度の全ての指標の値を測定によって決定しようとすると、これらの指標のうち少なくとも二つを独立に測定しなければならない。そこで、これらの指標の測定値を得る従来の一般的な手法においては、互いに測定原理の異なる2種以上の測定法が組合わされて用いられている。
【0005】
しかしながら、従来の一般的な手法においては、2種以上の測定法を要するため測定工程が多くなるという課題がある。また、1種類の材料を被測定物質とする場合であっても、2種以上の測定法それぞれのために別々の試験片の素子を準備する必要もある。さらに、そのような2種以上の測定法は、互いに異なる測定原理を基礎としているため、測定精度についての考慮も測定法別に行なう必要がある。このように、従来の一般的な手法によって被測定物質のキャリア挙動を測定することは手間のかかる作業である。
【0006】
この点を説明するため、キャリア挙動を測定するために従来採用されている2種以上の測定法を組合せる二つの組合せについて概説する。第1の組合せは、過渡光電流測定(time of flight法、TOF法)と過渡光回折測定(holographic time of flight法、HTOF法)とを組み合わせる手法である。また、第2の組合せは、定常光電流測定法、光放電測定法(ゼログラフィー法)および過渡光電流測定(TOF法)を組み合わせる手法である。第1の組合せおよび第2の組合せのいずれにおいても、被測定物質の試験片は、測定法にあわせて別個に作製することが必要である。また、これらいずれも、互いに別々の測定原理による測定法を組み合わせたものであるため、測定精度の考慮を全く別々に行なう必要がある。
【0007】
後述する本発明の思想の理解を容易にするため、特に、第1の組合せに用いる従来のHTOF測定の原理を図1を参照して説明する。図1は、被測定物質中での電荷キャリアの挙動が測定されるHTOF測定の原理を説明する説明図である。特に、図1(a)は、パルスレーザー光によって被測定物質中に電荷キャリアが生成された直後の様子を示しており、図1(b)は、その電荷キャリアの生成からある時間経過した後の同じ位置において、被測定物質に外部から電界の作用によって電荷キャリアがドリフトしている状態を示している。
【0008】
従来のHTOF法では、まず、(1)2光束のパルスレーザー光の作る光干渉縞によって被測定物質が瞬間的に光励起される(図1(a))。図1(a)は、2光束のレーザー光による励起光パルスが被測定物質中に入射している様子を示している。ここで、励起光パルスは、図の紙面に含まれる面内で互いにθの角をなして伝播する波数kおよびkによって示されている。また、これら2光束のレーザーの強め合う干渉によって作られる強度の極大位置となる3次元的な面の位置を、紙面による断面として図1(a)にハッチングにより示している。これらのパルスレーザー光が照射された被測定物質の領域には、電子eやホール(正孔)hである電荷キャリアが、各位置における光干渉縞の光強度に応じた空間分布によってレーザー光のパルスの期間だけ励起される。なお、図1(a)に示した状況は模式的なものに過ぎない。電荷キャリアの位置や光干渉縞の極大の位置として図示した位置以外においても、各位置の光干渉縞の強度に応じた確率で電荷キャリアが励起される。
【0009】
すると、(2)光励起のために生じた電荷キャリアには、DC電界として印加されている外部電界Eが作用する。ここで、光励起により発生した電荷キャリアはトラップされるまでは消滅しない。そのため、電荷キャリアは光励起が終了した後も電界Eに応じた移動を継続する(図1(b))。この移動のために、正負の電荷キャリアの分布も、それぞれの移動のしやすさ(移動度)と符号に従ってドリフトする。この電荷キャリアのドリフトによって、空間電界分布(space−charge distribution)が形成される。なお、通常の有機半導体の被測定物質では、大抵の場合多数キャリアがホールhであるため、ここではホールhがドリフトする場合を例に説明するものの、電子eが多数キャリアである場合にも同様の説明が成り立つ。これら電荷分離によって生じた被測定物質中の内部電界強度は、(1)の光励起における光干渉縞による光強度の周期と同じ空間周期で振動する。その結果、被測定物質中では、各位置の電界強度に応じ、体積ホログラムすなわち屈折率の周期的空間変化による回折格子が誘起される。以下、この回折格子を「屈折率回折格子」と呼び、屈折率回折格子により回折される光強度を単に「回折強度」と呼ぶ。なお、図1(b)には、その回折格子の屈折率の極大または極小の位置の紙面による断面のみを図示している。ここでの図示した位置が屈折率の極大となるか極小となるかは材料の性質に依存している。
【0010】
そして、(3)屈折率回折格子の回折強度が各時点において測定される。ここで、電荷キャリアの寿命が長くキャリアの平均飛程wが長い場合、上記電界強度の周期的空間変化の振幅が、時間的にも周期的な変動を示す。具体的には、電荷キャリアのドリフトによって、一方の電荷キャリア(ホールh)の空間周期的な密度の分布が他方の電荷キャリア(電子e)の空間周期的な密度の分布と位相が180°だけシフトした配置となった時点で、上記電界強度の周期的空間変化の振幅が極大となる。この極大が得られる最初の時刻は、電子eが移動せずホールhが移動するとした場合、ホールhが、光干渉縞の実効周期長Λeffの半分の量(Λeff/2、以下「実効半周期長」という)だけ移動した時刻である。その後、電界強度の周期的空間変化は、二種類の電荷キャリアの密度の分布が位相が180°(つまり540°、900°・・・)のずれとなるときに極大、位相が0°(つまり360°、720°・・・)となるときに極小となる。なお、図1(b)に示したように、一般に電界Eの方向と屈折率回折格子の波数ベクトル(回折格子ベクトル)Kの方向とは一致しないような配置により測定が行なわれる場合が多い。このため、電荷キャリアのドリフトと関連するのは、電界Eの方向における光干渉縞の実効周期長Λeffつまり、電荷キャリアが「見る」屈折率回折格子の周期となる。
【0011】
留意すべきは、従来のHTOF法において回折強度の時間変化が測定されるのが、光干渉縞の実効半周期長Λeff/2がキャリアの平均飛程wよりも十分に小さくなる場合に限られることである。そして、従来のHTOF法においては、その回折強度に最初にピークが現れる時刻tを用いて、次式
μ=Λeff/(2tE) 式(1)
によってキャリアの移動度μが算出される(非特許文献1の式(3)および(4)参照)。
【0012】
しかしながら、この測定が可能となるためには、上述したように、光干渉縞の実効半周期長Λeff/2がキャリアの平均飛程wよりも小さくなくてはならない。つまり、アモルファス有機半導体などキャリアの平均飛程wが小さい材料を被測定物質とする場合には、光干渉縞の実効半周期長Λeff/2をその小さな平均飛程wよりもさらに小さくしなくてはならない。そのような条件を満足するためには、実効周期長Λeffを小さくするため試験片に入射する2光束のパルスレーザー光の間の交差角θ(図1(a))が大きく設定される。ところが、交差角θを大きく開いて入射させた2光束のパルスレーザー光を被測定物質中において干渉させることは容易ではない。というのも、全反射によりパルスレーザー光の試験片内への入射角が小さく制限されるからである。このため、有機半導体などの小さな平均飛程wの材料を被測定物質としようとしても、実験的に実現困難な小さな実効周期長Λeffが必要となる場合が少なくない(非特許文献1)。つまり、従来のHTOF法で測定できる被測定物質は、平均飛程wが大きな材料に限定され、従来のHTOF法は有機半導体の測定に適した手法とはいえない。
【0013】
さらには、式(1)には平均飛程wが含まれていない。このため、従来のHTOF法のみでは平均飛程wに関する情報を得ることができない。その結果、第1の組み合わせとして上述したように、従来のHTOF法とは別の測定手法であるTOF法を実施することによって平均飛程wを算出することが必要となっている。
【0014】
なお、HTOF法以外のTOF法、定常光電流測定、光放電測定(ゼログラフィー法)は、主として電気的な手法によってキャリア挙動に関する測定値を得るものである。そのため、上記第1の組合せおよび第2の組合せのいずれにおいても1種類の被測定物質のキャリア挙動の2つ以上の測定値を得るために、複数の試験片を準備して別々の測定を行なう必要がある。
【0015】
本発明は上述した課題の少なくともいずれかを解決するためになされたものである。本発明においては、より簡易な測定工程を採用するにもかかわらず、より少ない例えば一片の試験片を用いることによって測定が可能となり、複数のキャリア挙動の測定値に対しても測定精度の違いを別々に考慮する必要がなくなるような電荷キャリアの挙動の測定手法が提供される。これにより、本発明は、例えばアモルファス有機半導体を利用する任意のデバイスの高度化に貢献する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願の発明者らは、有機半導体の電荷キャリアの挙動を測定するため手法として、光学的手法の一つであるHTOF法を変形した手法と、さらに別の光学的手法である二光波結合測定(Two Beam Coupling測定、以下、「TBC測定」という)とを組み合わせる、すべてが光学的手法となる測定方法およびそのための装置を提案する。我々は、本出願において、従来のHTOF法を変形し本発明において採用する手法を変形HTOF測定と呼ぶ。
【0017】
すなわち、本発明のある態様においては、試験片の被測定物質のうち電界が印加されているある領域に、互いに可干渉な2光束の励起光パルスをある光路の組により所定の短時間照射する光励起工程と、前記光励起工程に続けて、前記励起光パルスの前記光路の組と同一の光路の組を保ちながら、前記励起光パルスと同一波長の互いに可干渉な2光束のTBC用プローブ光を前記試験片の被測定物質の前記領域に対し照射する工程と、回折強度測定用プローブ光を前記試験片の被測定物質の前記領域に照射することにより、前記2光束の前記励起光パルスと前記電界の作用によって前記被測定物質の屈折率の周期的空間変化として前記領域に誘起された屈折率回折格子の回折強度の時間変化である変形HTOF強度を測定する工程と、前記試験片の被測定物質の前記領域を伝播した前記TBC用プローブ光の少なくともいずれかが示す強度の時間変化であるTBC強度を測定する工程とを含む被測定物質のキャリア挙動の測定方法が提供される。
【0018】
本態様においては、例えば被測定物質の試験片に対して励起光パルスを2光束に分けて照射する。その励起光パルスは、例えば連続発振レーザーの強度を高速に変調して生成されるレーザー光であり、キャリア励起を行なうことが可能な強度の短時間のパルスとされる。これらの励起光パルスの2光束は、互いに干渉する状態を保って被測定物質の試験片に照射される。励起光パルスの2光束の照射領域は、電界が印加されている被測定物質の領域である。電界が印加されている状態において被測定物質の照射領域に励起光パルスの2光束が照射されると、照射領域には屈折率回折格子が誘起される。その屈折率回折格子に対して回折強度測定用プローブ光が照射され、その屈折率回折格子の回折強度が測定される。この回折強度は時間的に変化する強度の値であり、変形HTOF強度と呼ばれる。
【0019】
本態様においては、さらに、TBC測定が実施される。このTBC測定のためには、被測定物質の試験片にはTBC用プローブ光が照射される。このTBC用プローブ光は、変形HTOF測定における励起光パルスと同一の光路の組により被測定物質の試験片に照射される。そして、その同一の試験片を対象にして変形HTOF測定とTBC強度とが実施される。このため、TBC用プローブ光のうちの少なくとも一方の強度変化を測定すると、TBC強度変化が測定される。
【0020】
なお、励起光パルスは、キャリア励起を行なうことが可能な強度の短時間のパルスを、互いに可干渉な状態を保ちながら被測定物質の試験片に照射することが可能な任意の2光束の光である。上述したような連続発振レーザーの強度を高速に変調して生成されるレーザー光は、励起光パルスの典型例に過ぎない。
【0021】
このような測定を行なうことによって、変形HTOF強度とTBC強度とから、例えば有機半導体のキャリア挙動のための平均飛程wと移動度μの平均値とが決定される。
【0022】
本発明においては、測定装置も提供される。すなわち本発明のある態様においては、所定の短時間の励起光パルスと、該励起光パルスに続き該励起光パルスと同一波長のTBC用プローブ光とを生成する変調光生成装置と、試験片の被測定物質に電界を印加するための電圧源と、互いに可干渉になるように分離した2光束の前記励起光パルスと、互いに可干渉になるように分離した2光束の前記TBC用プローブ光とを、同一の光路の組を保って、前記試験片の被測定物質のうちの前記電界が印加されているある領域に照射するための照射光学系と、回折強度測定用プローブ光を生成する回折強度測定用光源と、前記2光束の前記励起光パルスと前記電界の作用によって前記被測定物質の屈折率の周期的空間変化として前記領域に形成された屈折率回折格子からの前記回折強度測定用プローブ光の回折光を受光し、該回折光の強度の時間変化である変形HTOF強度を出力する変形HTOF強度検出器と、前記試験片の被測定物質の前記領域を伝播した前記TBC用プローブ光の少なくともいずれかを受光し、受光した光の強度の時間変化であるTBC強度を出力するTBC用プローブ光強度検出器とを備える被測定物質のキャリア挙動の測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明のいくつかの態様によれば、従来のHTOF法を変形した変形HTOF測定とTBC測定とを組み合わせる測定方法および装置が提案される。これにより、同一試験片を用いた同一光学配置による測定によって、キャリア挙動に関する信頼性の高い測定値を決定することが可能となる。これにより、例えば有機半導体のキャリア挙動の測定手順の簡素化と信頼性の高い値の測定が両立される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】被測定物質中での電荷キャリアの挙動が測定されるHTOF法の原理を説明する説明図である。特に、図1(a)は、パルスレーザー光によって電荷キャリアが生成された直後の様子を示しており、図1(b)は、電界の作用によって電荷キャリアがドリフトしている状態を示している。
【図2】本発明のある実施形態において採用される原理的な光学配置を示す例示の配置図である。
【図3】本発明のある実施形態における測定手順と解析スキームを説明する説明図である。図3(a)は、測定手順を示すチャートであり、図3(b)は、解析のための測定値および式の関連を示す説明図である。
【図4】本発明のある実施形態における電界、励起光パルスおよびTBC用プローブ光、ならびに回折強度測定用プローブ光それぞれの照射強度と、各検出器の出力との関連を時系列に従って示すタイミングチャートである。特に図4(a)は、被測定物質に印加される電界、図4(b)は、試験片に照射される励起光パルスおよびTBC用プローブ光の照射強度、図4(c)は、試験片に照射される回折強度測定用プローブ光の照射強度、図4(d)は、回折強度測定用プローブ光による回折光の検出強度、そして、図4(e)は、TBC用プローブ光の検出強度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の説明に際し特に言及がない限り、全図にわたり共通する部分または要素には共通する参照符号が付されている。また、図中、各実施形態の要素のそれぞれは、必ずしも互いの縮尺比を保って示されてはいない。
【0026】
[測定原理の概要]
本発明の実施形態における測定手法が第1の組合せとして上述した従来のものと異なる点は、
(ア)従来とは異なる条件のHTOF測定手法すなわち変形HTOF測定を採用する点、そして、
(イ)その変形HTOF測定と組合わされる測定手法が変形HTOF測定に類似した原理を有しているTBC測定が採用される点
である。本実施形態の測定手法においては、変形HTOF測定とTBC測定との間において、同一の試験片を採用する測定が行なわれるとともに、変形HTOF測定とTBC測定において採用される光学的な配置の互いの間に一定の関係が保たれている。さらに、変形HTOF測定とTBC測定とは、いずれも屈折率回折格子における光波結合という点で互いに密接に関連した光学的な測定である。さらに変形HTOF測定とTBC測定のための光の照射はごく短い時間のうちに連続して行なわれ、被測定物質が示す変化が両測定において同時に測定されるため、変形HTOF測定とTBC測定は実質的に同時に行われる測定ともいえる。
【0027】
変形HTOF測定は、上述した従来のHTOF測定において、光干渉縞の実効半周期長Λeff/2が平均飛程wよりも大きくなりうる条件を適用するものである。この意味で、変形HTOF測定は、従来のHTOF測定に比して、被測定物質の平均飛程wの値に対する制約が少なく、いわば汎用性の高い手法といえる。
【0028】
[光学配置・試験片の配置]
図2は、本実施形態において採用される測定装置100の原理的な光学配置を示す例示の配置図である。変形HTOF測定とTBC測定の両方のための測定値が本光学配置により取得される。試験片1は、例えば透明な一対のガラス基板に挟まれることによって薄層状となった被測定物質1Sを含んでいる。一対のガラス基板の互いに対向する内面側には、例えばITO(スズドープインジウム酸化物)などの透明電極が形成されている。その透明電極を介して、ガラス基板に対して垂直な向きの電界が薄層状の被測定物質1Sに印加されるように外部電圧源1Eに接続されている。この電界の向きは、図1(b)と同様である。典型的な電界Eは、測定中に向きや大きさの変わらない一定のDC電界とされている。
【0029】
図2に示すように、試験片1には、レーザー光源10からの光が二つの光路を通して照射される。レーザー光源10からの光は、高速強度変調器12を経由した後、図示しないビームスプリッターによって2光束に分離される。各光束は、さらに図示しない反射鏡を介して交差角が調整された光路14と16それぞれを伝播して試験片1に照射される。ここに示したレーザー光源10からの2光束の光は、ある短時間だけの励起光パルスとして機能する強度に調整されて試験片1に照射され、その直後にTBC用プローブ光として機能する強度に調整されて試験片1に照射される。この強度やバルス期間の調整のために、高速強度変調器12が利用される。
【0030】
試験片1にはレーザー光源30からの光がさらに照射される。このレーザー光源30からの光は入射光路32を通じて試験片1に照射される。この入射光路32は、光路14および16を通じた励起光パルスによって被測定物質中に形成された屈折率回折格子と結合してブラッグ回折を生じるような入射光路である。なお、典型的なレーザー光源30からの光強度は変調されない。レーザー光源30からの入射光路32を通じた光は、回折強度測定用プローブ光として機能する。また、レーザー光源30は回折強度測定用光源として機能する。
【0031】
図2に示すように、試験片1によるレーザー光源30からの回折光は検出器36によって検出される。この検出器36の配置は出射光路34の延長上である。この出射光路34は、入射光路32を通じて照射される回折強度測定用プローブ光が、試験片1に形成される屈折率回折格子によってブラッグ回折した回折光の光路である。検出器36は、適切な感度や時間応答性を保つ例えば適当なフォトダイオードであり、各時点における出射光路34からの光の強度を電気信号により出力する。つまり、検出器36は、回折強度測定用プローブ光が回折した回折光を受光する。この回折光は、2光束の励起光パルスと電界Eの作用によって被測定物質1Sの屈折率の周期的空間変化として形成された屈折率回折格子により生成される。このため、検出器36は、回折光の強度の時間変化である変形HTOF強度を出力する変形HTOF強度検出器として機能する。
【0032】
また、試験片1を通った後の光路14および16にも、それぞれ、検出器42および44が配置される。検出器42および44も、例えば適当なフォトダイオードであり、それぞれ、各時点における光路14および16からの光の強度を電気信号により出力する。検出器42または44は、試験片1の被測定物質1Sの領域を伝播したTBC用プローブ光の少なくともいずれかを受光する。このため、検出器42または44は、受光した光の強度の時間変化であるTBC強度を出力するTBC用プローブ光強度検出器として機能する。
【0033】
検出器36、42、44の出力は、測定装置100に備わっている、測定解析機器、例えばオシロスコープ、データロガー、コンピュータ等(いずれも図示しない)に入力される。
【0034】
[測定手順]
次に、このような光学配置を採用する測定装置100を動作させて行なわれる本実施形態の測定手順について説明する。図3は、本実施形態において採用される測定手順と解析スキームを説明する説明図である。このうち、図3(a)は、測定手順を示すチャートである。図3(b)については後述する。また、必要に応じて図2も参照する。
【0035】
光の照射の順序をみると、図3(a)に示すように、励起光パルスの照射(S102)と、それに続けて、TBC用プローブ光の照射(S104)とが実行される。これらの照射の期間にわたり回折強度測定用プローブ光は照射され続けている。検出器による測定は、検出器36による回折強度の測定と検出器42または44によるTBC用プローブ光の強度測定が実施される(S106およびS108)。これらの測定は、TBC用プローブ光の照射S104と同時に行われる。このように、変形HTOF測定とTBC測定とは実質的に同時に実施される。
【0036】
より具体的には、本実施形態の測定手順において、まず光路14および16により所定の短時間だけ励起光パルスを照射する光励起工程(S102)が行なわれ、それに続けて、その光路14および16によってTBC用プローブ光を照射する工程(S104)が行なわれる。入射光路32および出射光路34を利用した回折強度測定用プローブ光により測定される(S106)のは、試験片1の被測定物質1S中に誘起された屈折率回折格子の回折強度の時間変化、つまり変形HTOF強度である。そして、それと並行して、TBC用プローブ光の少なくともいずれかが示す強度の時間変化としてTBC強度が測定される(S108)。このうち、従来のHTOF法を変形した変形HTOF測定に該当する工程は、光励起工程S102と変形HTOF強度を測定する工程S106とである。これに対して、TBC測定に該当する工程は、光励起工程S102と、その光励起工程によって誘起された屈折率回折格子を、TBC用プローブ光を照射する工程S104と、TBC強度として測定する工程S108とである。これらの各測定に対応する工程については図3(a)に示している。なお、光の照射や各測定に要する時間は秒単位より遙かに短かい。
【0037】
上述した測定を詳細に時間に対応させた手順により説明する。図4は、電界、励起光パルスおよびTBC用プローブ光、ならびに回折強度測定用プローブ光それぞれの照射強度と、各検出器の出力との関連を時系列に従って示すタイミングチャートである。特に図4(a)は、被測定物質に印加される電界、図4(b)は、光路14および16により試験片に照射される光の照射強度、図4(c)は、入射光路32により試験片に照射される回折強度測定用プローブ光の照射強度、図4(d)は、検出器36による回折強度測定用プローブ光による回折光の検出強度、そして、図4(e)は、検出器42および44によるTBC用プローブ光の検出強度を示している。
【0038】
まず、図4(a)の直線102により示されるように、被測定物質に印加される電界は、測定を通じて一定のDC電界とされている。その状態で、図4(b)に示すように、試験片1には光路14および16により、レーザー光源10からの光が2光束に分離して、互いに干渉させながら照射される。光路14および16による光は、互いに同一の強度を保って照射される。その結果、試験片1の電界が印加されている領域には、光路14および16からの光が作る光干渉縞が照射される。この光干渉縞は、光路14および16によりある角度だけ交差した向きとされている互いに可干渉(coherent)である2光束の光が作る光干渉縞である。
【0039】
図4(b)の折れ線104により示されるように、この光路14および16による照射光は、強度を時間的に大きく変化させて照射される。光励起工程においては、この光路14および16による照射光は短時間の強いピーク強度の光パルス104Eとして照射され、励起光パルスとして機能する。試験片1に照射される光パルス104Eにより、試験片1中の被測定物質のうち電界が印加されている領域に光干渉縞が形成される。光励起工程の光パルス104Eによる光干渉縞の照射により、被測定物質中には屈折率の周期的空間変化による回折格子すなわち屈折率回折格子が誘起される。試験片1に光パルス104Eを照射する工程が、図3(a)に関連して上述した励起光パルスを照射する光励起工程S102である。
【0040】
光励起工程に続いて光路14および16により照射される光は、光パルス104Eに比べて弱い強度の比較的長い期間照射される光104TBCであり、TBC用プローブ光として機能する。その光104TBCも、光路14および16による2光束の光が試験片1に照射され、電界が印加されている領域には光干渉縞が形成される。つまり、図3(a)に関連して上述したTBC用プローブ光を照射する工程S104は、光104TBCを、光路14および16による2光束の光として試験片1に照射する工程である。
【0041】
その結果、TBC用プローブ光である光104TBCは、典型的には、励起光パルスとの間で波長、照射方向、偏光方向、照射範囲といった一部の照射条件が変更されない光となる。光励起工程における励起光パルス(光パルス104E)とTBC用プローブ光(光104TBC)との相違点は、光の強度や照射期間といった被測定物質に対するキャリア生成に影響する条件である。端的には、光励起工程において照射される励起光パルスの強度は、屈折率回折格子を誘起することが可能な強度であるのに対し、TBC用プローブ光は励起光パルスに比べて遙かに弱く、屈折率回折格子の誘起は無視できる。このようなTBC用プローブ光を実現するために、典型的な光104TBCは、光励起工程において励起光パルスを生成したレーザー光源10からの、連続発振しているレーザー光の強度を高速強度変調器12によって制御または変調することにより生成される。したがって、本実施形態のレーザー光源10と高速強度変調器12との組合せは、所定の短時間の励起光パルスに続き、該励起光パルスと同一波長のTBC用プローブ光とを生成する変調光生成装置として機能する。また、試験片1までの光路14および16を形成するための光学系は、互いに可干渉な2光束の励起光パルスと、互いに可干渉な2光束のTBC用プローブ光とを、同一の光路の組を保って、試験片の被測定物質のうちの電界Eが印加されているある領域に照射するための照射光学系として機能する。これらの光強度の量的な条件については、「測定可能性の確認」の欄において後述する。なお、光励起工程の変形HTOF測定とTBC測定の相互の関係は、後述する変形HTOF測定およびTBC測定の各測定手法の詳細によって容易に理解される。
【0042】
また、図4(c)に直線106として示すように、入射光路32により試験片に照射される回折強度測定用プローブ光の照射強度は一定の強度に保たれている。
【0043】
このようなタイミングチャートによって示される本実施形態の典型的な測定は次のようにして行なわれる。図4(a)に示すように、まず、測定の際の試験片1には、電圧源1Eによって被測定物質1Sに電界Eが形成されている。次に、図4(b)において光励起工程として示すように、所定の短時間、例えば数マイクロ秒程度、励起光パルスとして光パルス104Eが照射される。そして、光パルス104Eの照射に続けて、TBC用プローブ光として光104TBCが数ミリ秒程度の期間照射される。このような測定シーケンスの期間中、図4(c)に示すように、回折強度測定用プローブ光が照射され続けている。
【0044】
[測定値の変化]
図2に示した光学系によって測定される値や測定のための検出器は、変形HTOF測定とTBC測定との間で異なっている。変形HTOF測定においては、入射光路32および出射光路34の回折光測定用プローブ光の回折強度が検出器36によって測定される。この回折強度は、上述した光励起工程の励起光パルスと電界の作用によって誘起され、その後に電界の作用を受けて時間的に変化する屈折率回折格子による回折強度である。この回折強度を通じて、光励起工程S102の後に被測定物質の電荷キャリアがドリフトする挙動が観察される。したがって、この回折強度は一般には時間変化を示す。この時間変化する検出器36による強度値を、本出願においては、「変形HTOF強度」と呼ぶ。図4(d)の曲線108は、変形HTOF強度、すなわち、検出器36による回折強度測定用プローブ光による回折光の検出強度を示している。また、曲線108のような屈折率回折格子による回折強度を測定する工程が、図3(a)に関連して上述した変形HTOF強度の測定工程S106である。
【0045】
これに対し、TBC測定によって測定される量は、TBC用プローブ光である2光束の光のいずれかが示す強度である。この強度は、図2における検出器42または44によって測定され、やはり時間変化を示す。この強度は、光励起工程において、試験片1中の電界が印加されている領域に形成された屈折率回折格子がもたらす、2光束のTBC用プローブ光の各光束間の結合の程度を反映している。各光束間の結合の程度は、屈折率回折格子による屈折率の周期的変調の振幅と、その周期的変調の空間的位相とに依存しており、両光束間の光エネルギーの授受として観測される。このため、TBC測定により測定される現象も、電界の作用によって時間的に変化する被測定物質の電荷キャリアがドリフトにより伝播している挙動である。この時間変化する強度値は、本出願においては「TBC強度」と呼ばれる。図4(e)の曲線110または112は、TBC強度、すなわち、検出器42または44によるTBC用プローブ光(光104TBC)の光路14または16の検出強度を示している。
【0046】
すなわち、本実施形態の典型的な測定シーケンスにより得られる測定値は次のようなものである。図4(d)に示すように、検出器36の出力は励起光パルスの照射後に屈折率回折格子による回折強度を反映して、時間の経過に伴って増大してゆき、ある時刻tmaxに最大値を示し、その後に減衰してゆく。その一方、図4(e)に示すように、検出器42または44の出力は、励起光パルスが照射された後に、TBC用プローブ光の2光束の間でのエネルギーの授受を示すように変化する。例えば光路14および16からの光を検出する検出器42および44が、それぞれ、増大および減少するとする。この場合、検出器42が検出する強度は、曲線110のように増加するのに対し、検出器44が検出する強度は、曲線112のように減少する。被測定物質が吸収がない等の特別な条件を満たす場合には、TBC用プローブ光が照射されている期間における曲線110と112は、強度I(図4(e))を中心に相補的に変化する。ただし、一般には必ずしもそのような相補性が維持されているわけではない。曲線110または112のような屈折率回折格子が生じさせる2光波間のエネルギー授受を測定する工程が、図3(a)に関連して上述したTBC強度の測定工程S108である。
【0047】
このように、本実施形態において採用される二つの測定、すなわち、被測定物質への電界印加状態での光励起工程とそれに続く回折強度測定用プローブ光による回折強度の測定、すなわち変形HTOF測定と、被測定物質への電界印加状態での光励起工程とそれに続くTBC用プローブ光の強度測定、すなわちTBC測定とは、互いに密接に関連した測定となっている。つまり、両測定において光干渉縞の照射を行なうことから、試験片を変更することなく、ほぼ同時に測定が実行される。次に、このような測定シーケンスにより得られる測定値からキャリア挙動が算出されるより詳細なメカニズムを、変形HTOF測定およびTBC測定のそれぞれについて説明する。
【0048】
[変形HTOF測定の詳細]
図3(a)に関連して上述したように、本実施形態において変形HTOF測定に該当する工程は、光励起工程S102と変形HTOF強度を測定する工程S106である。上述した図4(d)に曲線108として示すように変形HTOF測定において回折強度測定用プローブ光の光強度が時間変化する理由は、光干渉縞と電界とが併存している被測定物質の領域において誘起された屈折率回折格子がその後に電界の作用によって時間変化するためである。これらのうち、屈折率回折格子の形成メカニズムは、図1に基づいて示した従来のHTOF測定と同様である。つまり、変形HTOF測定においても屈折率回折格子をなしているのは屈折率の周期的空間変化である。ただし、平均飛程wが回折格子の実効半周期長Λeff/2(図1(b))よりも大きいという従来のHTOF測定における式(1)の条件とは異なり、変形HTOF測定においては、平均飛程wが実効半周期長Λeff/2よりも小さいという条件が成り立つ場合が測定対象となる。
【0049】
つまり、この平均飛程wが実効半周期長Λeff/2よりも小さいという変形HTOF測定の条件においても、励起光パルスによって生成された電荷キャリアの影響によって生じた空間電界分布は屈折率の周期的空間変化を生じさせる。ただし、変形HTOF測定の条件では、電荷キャリア(例えばホールh)のほとんどは、実効半周期長Λeff/2に届く前にトラップされてしまう。このようなトラップが生じた後、その後、熱拡散等によって、電荷キャリアは消滅してしまい、その後に空間的に振動する空間電界分布は形成されず、屈折率の周期的空間変化も消失する。逆にいえば、たとえ平均飛程wが実効半周期長Λeff/2よりも小さい条件であっても、励起光パルスが照射されてからある時間経過するまでは屈折率回折格子が誘起されている。したがって、屈折率回折格子の明瞭さつまり屈折率の周期的空間変化の程度を反映している回折強度の時間変化をみると、回折強度は、ある時刻tmaxで最大値を示し、その後次第に減少してゆく。しかも、この回折強度が最大値を示す時刻(ピーク時刻)tmaxは、電荷キャリアがトラップされるまでの平均的な時間であるキャリア平均寿命τを反映しており、キャリア平均寿命τそのものと考えることができる。そのため、時刻tmaxを、上述した光路32および34を利用した回折強度測定用プローブ光によって測定すれば、屈折率の周期的空間変化を与えた電荷キャリアのドリフトに関する挙動が測定されるのである。
【0050】
上記時刻tmaxは、分散が大きい場合のキャリアの移動度μの平均値μave(以下、平均移動度μaveと記す)と次式の関係で結びついている。
μave=w/(tmax|E|) 式(2)
ここで、|E|は試験片1の被測定物質1Sに印加されている電界Eの大きさである。また、この式(2)には、式(1)とは異なり、平均飛程wが含まれている。このため、平均移動度μaveを算出するためには、別途、平均飛程wを決定しておく必要がある。
【0051】
なお、変形HTOF測定の測定を行なって得られる回折強度の時間変化のより直接的な原因は、空間的に振動している屈折率の振幅Δnの各時点の値である。つまり、この振幅(以下、「屈折率振幅」という)Δnも、回折強度と同様に時刻tの関数として、Δn(t)と表現される。上述したように、回折強度が時刻tmaxにおいてピークを示すので、屈折率振幅Δn(t)も時刻tmaxにおいてピークとなる。したがって、検出器36によって測定される回折強度のピークを同定すれば、時刻tmaxと、時刻tmaxにおける屈折率振幅Δn(t)すなわち屈折率振幅のピーク値Δn(tmax)との双方が決定される。
【0052】
[TBC測定の詳細]
図3(a)に関連して上述したように、本実施形態においてTBC測定に該当する工程は、光励起工程S102と、その光励起工程によって誘起された屈折率回折格子を、TBC用プローブ光を照射しながら(S104)、TBC強度として測定する工程S108である。本実施形態においては、式(2)に含まれ平均移動度μaveの算出に必要となる平均飛程wを決定するため、このTBC測定が採用される。
【0053】
TBC測定における典型的なTBC用プローブ光は、上述したように、変形HTOF測定のための励起光パルスとの比較において、強度および期間が異なり、それ以外の照射条件は同一とされる2光束の光である。つまり、TBC用プローブ光の2光束も、互いに可干渉であるとともに、励起光パルスと同様の波長を有し、励起光パルスの各光束と同じ光路を保っている。しかも、TBC測定のためのTBC用プローブ光は光励起工程に続けて被測定物質に照射される。このようなTBC用プローブ光は、上述したように、励起光パルスと同様の光源であるレーザー光源10によって形成され、高速強度変調器12によって強度とパルス期間(パルス幅)のみを調整することによって生成することが可能である。なお、TBC用プローブ光によりごく弱い光干渉縞が形成されるものの、その光干渉縞は被測定物質においてキャリアを励起する測定に必須のものではない。TBC用プローブ光により検知される現象は、光励起工程により形成されて依然として被測定物質中に残存している屈折率回折格子による回折作用により、各光束の間において生じるエネルギーの授受である。
【0054】
光励起工程において、励起光パルス(光パルス104E)と電界の作用によって被測定物質に誘起された屈折率回折格子は、TBC用プローブ光である光104TBCの照射時点においても、電界の作用を受けた電荷キャリアが残留している間は同様に屈折率回折格子として作用する。ここで、TBC用プローブ光は、励起パルス光と強度やパルス期間以外の条件が同一であるため、屈折率回折格子の格子ベクトルK(図1(b))の配置は、ブラッグ回折を成立させるようなものとなっている。したがって、TBC用プローブ光の2光束それぞれの透過光強度、または、図4(e)の強度の時間変化として回折強度を測定することにより、被測定物質中に形成され時間的に変化してゆく屈折率回折格子の振る舞いが測定される。
【0055】
特に、検出器42または44の示す各時刻tにおける回折によって変化した光の強度ΔI(t)を、回折が生じない場合の同一の検出器42または44の示す強度Iに対する比すなわちΔI(t)/I(以下、「強度変化比」と呼ぶ)として表現すると、変形HTOF測定の回折強度のピークが得られた時刻tmaxにおいて、
sin(4w/Λ)=
λ/(4πΔnL)ln((1+ΔI/I)/(1−ΔI/I)) 式(3)
との関係が成立する。ただし、λは、レーザー光波長であり、Lは光路110と112の被測定物質内での長さ(光路長)の平均値である。この式(3)に、変形HTOF測定から得られたtmaxおよびΔn(tmax)を代入すれば、その被測定物質の4w/Λの値が算出される。そして、Λは形成された光干渉縞の周期長であり実験条件から決定されるため、平均飛程wを算出することが可能となる。
【0056】
すなわち、形成された光干渉縞の周期長Λつまり実効周期長Λeffは光路14と16の被測定物質中での交差角(θ)によって調整される。具体的には、
Λeff=λ/(2nsin(θ/2)cosα) 式(4)
となる。ただし、αは、電界EとグレーティングベクトルKとが被測定物質中においてなす角である。また、nは被測定物質の屈折率である。
【0057】
なお、式(3)の右辺ΔI/Iは、強度変化比ΔI(t)/Iの時刻tmaxにおける値であり、また、光干渉縞の周期長Λは、Λ=Λeffcosαの関係を満たす。αは図1(b)に示すように電界Eと被測定物質中のグレーティングベクトルKとが被測定物質中においてなす角である。さらに、曲線110および112に示されるように、ΔI(t)が最大となる時点tは、時刻tmaxとは一般には一致しない。また、光路14と16との間での光のエネルギーの授受において、増強される光の光路がいずれであるかは、屈折率回折格子と2光束のTBC用プローブ光が作る光干渉縞の位相との関係により決定される。屈折率回折格子の位相には、ドリフトする電荷キャリアの空間分布が反映される。このため、電界の向きを反転させることによって、光路14と16との間における光のエネルギーの授受の関係を反転させることが可能である。
【0058】
このようにして算出された平均飛程wを再び式(2)に代入すれば、平均移動度μaveを算出することが可能となる。
【0059】
[解析スキーム]
ここまでに述べた解析スキームをまとめると、図3(b)のようにまとめられる。図3(b)は、解析のための測定値および式の関連を示す説明図である。まず、変形HTOF測定によって得られた測定値、すなわち変形HTOF強度に対する処理(S122)を行なう。より詳細には、Δn(tmax)とtmaxとを決定する(S124およびS126)。また、TBC強度の測定値(図4(e)に基づいて、TBC測定により得られたTBC強度に対する処理(S132)を行なう。具体的には、時刻tmaxの値を取り出すことによってΔI(tmax)/Iを決定する(S134)。さらに、変形HTOF強度に対する処理S122において得られたΔn(tmax)と、TBC強度に対する処理S132において得られたΔI(tmax)/Iから、式(3)により平均飛程wを決定する(S142)。最後に、平均飛程wとtmaxとから、式(2)により平均移動度μaveを決定する(S152)。
【0060】
以上のような変形HTOF測定とTBC測定を組み合わせた測定手順と解析スキームを採用することにより、被測定物質の電荷キャリア挙動を特徴付ける平均飛程wと平均移動度μaveを、同一片の試験片を利用して取得することが可能となる。
【0061】
[測定可能性の確認]
次に、詳述した測定手順や測定データの解析スキームにおいて、実際の被測定物質を対象にした測定が実施可能である点について、具体的な数値を考慮し確認した結果を説明する。
【0062】
本実施形態の測定法を実施するために考慮される典型的な要素は、以下の三点である。
(1)パルス励起時と二光波結合モニター時とに作られる光干渉縞の空間的な一致、
(2)励起光パルスのエネルギーと時間幅の調整、そして、
(3)TBC用プローブ光自体による回折格子の形成を無視しうること。
以下、これらの各要素について詳述する。
【0063】
[(1)パルス励起時と二光波結合モニター時とに作られる光干渉縞の空間的な一致]
光励起工程のパルス励起時と、TBC用プローブ光を照射する二光波結合モニター時とにおいて作られるそれぞれの光干渉縞は、空間的に一致していることが望ましい。この点については、励起光パルスにより作られる光干渉縞と、TBC用プローブ光により作られる光干渉縞との互いの空間的位置を、光学的に完全に一致させることにより実現される。そのための最も信頼できる方法は、上述したように、レーザー光源10として連続発振するレーザー光源を採用し、そのレーザー光源からの光を、高速強度変調器12のような強度変調器のみを利用して励起光パルスとTBC用プローブ光との両者を生成することである。このようにして励起光パルスとTBC用プローブ光を生成すれば、励起光パルスとTBC用プローブ光との間で光ビームの空間的性質が変化しないため、2光束に分けた励起光パルスが作る光干渉縞と、2光束に分けたTBC用プローブ光が作る光干渉縞との互いの空間的位置が一致する。
【0064】
この考えの下、図2に示した光学系を構築するために必要となる各光学素子に要求される条件について具体的に説明する。レーザー光源10からの光路14と16の光の強度(単位面積・単位時間あたりのエネルギー量)は、注意深く分岐することによって、試験片1の内部においてどちらも同じ強さとすることが可能である。したがって、干渉によって作られる光の強度は、正弦波状の定在波、つまり、強め合う干渉となる光量の強い位置と弱め合う干渉となるほとんどゼロの光量の位置とを交互に並べた多層の平面状の空間分布とすることが可能となる。その結果生じた光の強弱に応じて被測定物質において生成されるキャリアの密度も、空間的な周期を持つ分布となる。なお、被測定物質において屈折率回折格子を形成する効率の観点から、レーザー光源10からの光の偏光はP偏光が採用される。
【0065】
また、変形HTOF測定における実効半周期長Λeff/2を平均飛程wよりも大きくするため、Λeffを大きく、つまり光路14と16の交差角θを小さく調整すればよい。なお、角度αは、被測定物質中において十分に大きなキャリアを励起するためには小さくされる必要がある。ただし、一般的には図2の透過配置によっては、実験配置上の制約から角度αは60度程度までしか小さくできない。
【0066】
なお、高速強度変調器12に必要な条件については(2)、(3)によって与えられるため後述する。また、薄層状の被測定物質に電界を生じさせるための電圧は、被測定物質の厚み100μm程度に対して5000V〜10000V程度のDC電圧が印加される。この電圧は、被測定物質に50〜100V/μm程度の電界を発生させる電圧から適宜選択される。
【0067】
連続して照射し続けるレーザー光源30からの回折強度測定用プローブ光は、励起光パルスやTBC用プローブ光とは一般に異なる波長を有している。レーザー光源30として、被測定材料でキャリアを生成しない波長のレーザーを用いることにより、被測定物質の励起を抑止しつつ、屈折率回折格子による回折強度を測定することが可能となる。
【0068】
なお、上述したレーザー光源10および30の波長は上述したそれぞれのもの以外にも、被測定物質の性質を考慮して選択される。被測定物質が有機物である場合には、典型的には、被測定物質のLUMO(最低空分子軌道)とHOMO(最高占有分子軌道)とのエネルギー差を考慮して、そのエネルギー差に相当する波長よりもレーザー光源10の波長は短くレーザー光源30は長くなるように選択される。
【0069】
[(2)励起光パルスのエネルギーと時間幅の調整]
励起光パルスのエネルギーと時間幅の調整については、パルス時間幅(励起時間)がキャリア平均寿命よりも十分に短いことが望ましい。被測定物質がアモルファスの有機半導体材料の場合には、キャリア平均寿命は1msec程度である場合が多い(非特許文献1および非特許文献3)。このため、図4(b)の光パルス104Eの期間は、10μsec程度またはそれ以下とすることが望ましい。また、光パルス104Eの必要なパルス強度については、1パルスあたり1mJ/cm程度以上のエネルギー密度が得られれば、十分な光キャリアを生成することが可能である(非特許文献3)。
【0070】
これらの条件は、連続発振レーザーであるレーザー光源10の出力の望ましい範囲を与える。つまり光の強度は、試験片1内の被測定物質1Sの領域において100W/cm以上であると好ましい。その場合にビームを直径0.4mm程度に集光することを想定すれば、この条件を達成するレーザー光源10としては、120mW以上のパワー出力にて連続発振するレーザーを採用することができる。また、レーザーの空間的性質については、安定に光干渉縞を作り出す必要性から、十分に長いコヒーレンス長を有するものが好ましい。
【0071】
[(3)TBC用プローブ光自体による回折格子の形成を無視しうること]
TBC用プローブ光自体による屈折率回折格子の形成が無視できることについては、TBC測定のためのTBC用プローブ光のレーザー光強度を被測定物質の励起を無視できるほどに強度を極力小さく設定することによって実現される。検出器42または44によって透過光強度変化を測定することが可能な強度範囲において、強度を小さくし、測定時間範囲内で、TBC用プローブ光による回折格子の形成速度を実質的に遅くすることは十分に可能である。例えば、TBC用プローブ光を、励起光パルスの強度の5000分の1以下の強度とすれば、測定に支障は生じず、屈折率回折格子の形成が無視できる。
【0072】
なお、連続発振のレーザーを採用しても、TBC用プローブ光を、励起光パルスの強度の5000分の1以下の強度とする測定には特段の支障は無い。例えば高速強度変調器12によって高速の強度の変更が可能なようにされていれば、変形HTOF測定とTBC測定の両測定を実行することも十分に可能である。例えば(2)および(3)を満たし変形HTOF測定とTBC測定との同時測定を実現することが可能なレーザー光源10としては、例えば波長670nmの半導体レーザーや532nmの連続発振DPSSレーザーを利用することが可能である。そして、高速強度変調器12を通して図4(b)に示したように単パルス的に被測定物質を励起するための光パルス104Eを照射し、その励起光パルスの照射直後に強度を絞ってTBC用プローブ光である光104TBCを照射する。
【0073】
最後に、連続発振するレーザー光源10と高速強度変調器12を採用する場合において、上述した(1)〜(3)のような望ましい条件を実現するための高速強度変調器12の動作について説明する。高速強度変調器12は、上述(1)より、10μsecよりも十分に速い応答速度を有することが望ましい。また、(3)より、高速強度変調器12は5000倍以上の強度変化を実現することが望ましい。そして、(2)より、その強度変化の際のビームの性質に対して高速強度変調器12が悪影響を及ぼさないことが望ましい。これらの性質は、高速強度変調器12として例えば電気光学結晶を用いた市販の電気光学変調器を採用することにより容易に達成することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。上述の各実施形態および実施例は、発明を説明するために記載されたものであり、本出願の発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきものである。また、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、例えば有機半導体におけるキャリア挙動を測定することが容易になり、これにより、高性能化された有機半導体を採用する任意の電子デバイスの普及に貢献する。
【符号の説明】
【0076】
100 測定装置
1 試験片
1S 測定物質
1E 外部電圧源
10、30 レーザー光源
12 強度変調器
14、16 光路
32 入射光路
34 出射光路
36、42、44 検出器
102 直線
104 折れ線
104E 光パルス
104TBC 光
106 直線
108、110、112 曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片の被測定物質のうち電界が印加されているある領域に、互いに可干渉な2光束の励起光パルスをある光路の組により所定の短時間照射する光励起工程と、
前記光励起工程に続けて、前記励起光パルスの前記光路の組と同一の光路の組を保ちながら、前記励起光パルスと同一波長の互いに可干渉な2光束のTBC用プローブ光を前記試験片の被測定物質の前記領域に対し照射する工程と、
回折強度測定用プローブ光を前記試験片の被測定物質の前記領域に照射することにより、前記2光束の前記励起光パルスと前記電界の作用によって前記被測定物質の屈折率の周期的空間変化として前記領域に誘起された屈折率回折格子の回折強度の時間変化である変形HTOF強度を測定する工程と、
前記試験片の被測定物質の前記領域を伝播した前記TBC用プローブ光の少なくともいずれかが示す強度の時間変化であるTBC強度を測定する工程と
を含む
被測定物質のキャリア挙動の測定方法。
【請求項2】
前記変形HTOF強度のピークが得られるピーク時刻における前記TBC強度の値から、前記被測定物質の電荷キャリアの平均飛程の値を算出する工程と、
該平均飛程の値と前記電界の強さと前記ピーク時刻とから、前記被測定物質の電荷キャリアの平均移動度を算出する工程と
をさらに含む
請求項1に記載のキャリア挙動の測定方法。
【請求項3】
前記電荷キャリアの平均飛程の値を算出する前記工程が、
前記変形HTOF強度の前記ピーク時刻における前記変形HTOF強度の値に対応する前記被測定物質の屈折率振幅のピーク値を利用するものである
請求項2に記載のキャリア挙動の測定方法。
【請求項4】
前記TBC用プローブ光の2光束それぞれの前記試験片の前記領域における強度が、前記励起光パルスの2光束それぞれの前記試験片の前記領域における強度より小さい
請求項1に記載のキャリア挙動の測定方法。
【請求項5】
前記光路の組は、前記電界の方向における前記屈折率回折格子の屈折率変調の空間周期の半分が前記被測定物質の平均飛程よりも長くなるように設定されている
請求項1に記載のキャリア挙動の測定方法。
【請求項6】
前記TBC用プローブ光の2光束が、前記励起光パルスの2光束と同一の単一の光源から形成されている
請求項1に記載のキャリア挙動の測定方法。
【請求項7】
前記被測定物質が有機半導体である
請求項1に記載のキャリア挙動の測定方法。
【請求項8】
所定の短時間の励起光パルスと、該励起光パルスに続き該励起光パルスと同一波長のTBC用プローブ光とを生成する変調光生成装置と、
試験片の被測定物質に電界を印加するための電圧源と、
互いに可干渉な2光束の前記励起光パルスと、互いに可干渉な2光束の前記TBC用プローブ光とを、同一の光路の組を保って、前記試験片の被測定物質のうちの前記電界が印加されているある領域に照射するための照射光学系と、
回折強度測定用プローブ光を生成する回折強度測定用光源と、
前記2光束の前記励起光パルスと前記電界の作用によって前記被測定物質の屈折率の周期的空間変化として前記領域に形成された屈折率回折格子からの前記回折強度測定用プローブ光の回折光を受光し、該回折光の強度の時間変化である変形HTOF強度を出力する変形HTOF強度検出器と、
前記試験片の被測定物質の前記領域を伝播した前記TBC用プローブ光の少なくともいずれかを受光し、受光した光の強度の時間変化であるTBC強度を出力するTBC用プローブ光強度検出器と
を備える
被測定物質のキャリア挙動の測定装置。
【請求項9】
前記変形HTOF強度と前記TBC用プローブ光強度とを受信する演算装置
をさらに備え、
該演算装置が、前記変形HTOF強度のピークが得られるピーク時刻における前記TBC強度の値から、前記被測定物質の電荷キャリアの平均飛程の値を算出し、該平均飛程の値と前記電界の強さと前記ピーク時刻とから、前記被測定物質の電荷キャリアの平均移動度を算出するものである
請求項8に記載のキャリア挙動の測定装置。
【請求項10】
前記演算装置が、前記変形HTOF強度の前記ピーク時刻における前記変形HTOF強度の値に対応する前記被測定物質の屈折率振幅のピーク値を利用して前記電荷キャリアの平均飛程の値を算出するものである
請求項9に記載のキャリア挙動の測定装置。
【請求項11】
前記照射光学系によって前記試験片の被測定物質の前記領域に照射される前記TBC用プローブ光の2光束それぞれの強度が、前記2光束の励起光パルスの2光束それぞれの強度より小さい
請求項8に記載のキャリア挙動の測定装置。
【請求項12】
前記光路の組は、前記電界の方向における前記屈折率回折格子の屈折率変調の空間周期の半分が前記被測定物質の平均飛程よりも長くなるように設定されている
請求項8に記載のキャリア挙動の測定装置。
【請求項13】
前記変調光生成装置が、連続発振しているレーザー光源と高速光変調器とを有している
請求項8に記載のキャリア挙動の測定装置。
【請求項14】
前記被測定物質が有機半導体である
請求項8に記載のキャリア挙動の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−255672(P2012−255672A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127831(P2011−127831)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、委託研究(戦略的イノベーション創出推進事業、「高速応答性有機フォトリフラクティブポリマーの創製と先進情報通信技術の開発」)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】