説明

キャリブレーションプレート

【課題】撮像したパターン画像の明暗のコントラストを簡易に高め、画像処理における位置寸法測定で高精度な較正を図ることを可能とするキャリブレーションプレートを提供する。
【解決手段】透明樹脂からなる平板状のキャリブレーションプレート1に所定間隔に貫通穴又は底を有した穴で整列させた多数の穴3からなるパターン4を設ける。またそのキャリブレーションプレートの表面に黒色の遮光層5を形成する。そして、前記キャリブレーションプレートの外周側面から光61をその内部に投射し前記多数穴3を照らしてキャリブレーションの穴明け面側に照射された多数穴のパターン4を現出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物をデジタルカメラなどで撮影して、光学的に被測定物の形状を計測する画像の幾何学的歪を較正するために用いられるキヤリブレーションプレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラなどで撮影された画像には、レンズの光学的歪みやカメラと被写体への撮影角度の違いから、幾何学的な歪が発生する。これら被測定物を撮像した画像から被測定物の形状を計測する場合には、発生した画像歪を較正する必要がある。
【0003】
一般に、画像歪の較正の方法としては、表面に点状のマークを配置したキャリブレーションプレートと呼ばれる部材を用いて行い、当該キャリブレーション用プレートを撮影した画像により、夫々対応する点状のマークの画像の位置を比較して修正されている。
【0004】
ところで、画像測定法を使用して、対象物の寸法を計測する場合の精度はこの測定法の原理上、画像撮影時の光学系の精度に依存するため、画像上の座標と実平面の座標を対応させることが必要である。
【0005】
そこで、従来技術において画像処理におけるステレオ法を用いた位置測定用のキャリブレーションに関して、下面を無反射処理した透明基板の上面に不透明の黒色パターンを備えたキャリブレーションプレートや不透明基板上に窪みのパターンを設けその窪みに不透明基板と光反射率が異なるように無反射処理し形成したキャリブレーションが特開平10−104033号公報で開示されている。この発明は、無反射処理した基板や不透明基板に描かれたパターンを基板の上面側又は下面側から照明することにより、基板におけるパターンと反対側への陰の出現の影響を少なくすることができるものである。
【0006】
これによって、この発明はパターンの部分と陰とのコントラストが明確になり、キャリブレーションのための画像処理が容易となり、また、撮影画像のパターンのずれの影響が少なくなるので、キャリブレーションの精度が向上する。
【0007】
【特許文献1】特開平10−104033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のキャリブレーションプレートはそのプレートの上面側の光源によりパターンが照明されるが、光源に近い箇所では照度が高く、遠い箇所では低くなって明るさにムラができる。それをカメラで取り込んだキャリブレーションプレートの撮像画像ではパターン部の明暗のコントラストが不均一となり、パターン部の抽出処理が困難となる。また前記特開平10−104033号において照明位置によるパターンの陰の影響を少なくす方法は光源の位置を調整しなければならず、しかもその調整が面倒であった。そして、この方法ではパターンの影は薄くなるが完全になくすことは困難であり、このため、その陰の部分もパターン画像に取り込まれ画像処理上パターンの各測定点を正確に抽出することが困難であった。また、全体が均一な照度となる照明装置は、大変高価なものであった。さらに、従来のキャリブレーションプレートは取り扱い中に障害物に当たって表面が損傷することがあり、この損傷部分を較正用パターンの一部として誤検出するようなこともあった。
【0009】
本発明は、上記の問題点に着目してなされたものであり、安価で、かつ、画像処理における位置、寸法測定で高精度な較正が可能なキャリブレーションプレートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、被写体の撮影画像の較正や歪補正するためのキャリブレーションプレートにおいて、平板状の透明体に所定間隔に貫通穴又は底を有した穴で整列させた多数穴のパターンを設け、光を前記キャリブレーションプレート本体の外周側面側から内部に入射し前記多数穴を照らして照射させたパターンを穴明け面側に現出させることを要旨とする。
【0011】
請求項1記載の発明によると、平板状の透明体に所定間隔に貫通穴又は底を有した穴で整列させた多数穴のパターンを設けているため、光をキャリブレーションプレート本体外周側面側から入射し、整列させた多数穴を照射することにより、前記穴は穴の径中心に入射光が集中し輝度が増すと共にプレート本体の多数穴のパターンを光らせることができる。よって、本発明のキャリブレーションプレートは、輝度差の少ない多数穴のパターンを穴明け面側に現出させることができ、またキャリブレーションプレート本体と多数穴のパターンとの明暗のコントラストを高めることができる。
【0012】
本発明のキャリブレーションプレート本体の素材は、透明ガラスの他、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フルオレフィン系樹脂、シクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂などの透明樹脂が使用される。また、本発明ではキャリブレーションプレート本体を剛性を有した低比重の透明樹脂で成形すれば軽量で取り扱い易く、また穴の加工もし易い利点がある。
また光の照明はキャリブレーションプレートの外周側面辺りに配置される。本発明では照明として蛍光灯を用いたが、長寿命で消費電力の少ない発光ダイオードを用いてもよい。
【0013】
また、底を有した穴であれば、底面積の増加により光の照射面積が増すとともにキャリブレーションプレート内の入射光が反射してパターン画像の穴の輝度が増すこととなる。これによって、本発明は照射された複数穴のパターンの輝度値を一層高くして現出でき、その撮像したパターン画像の穴の座標軸と輝度に基づき演算してより正確な中心位置を求めることができる。穴の底は穴の片端に壁を形成して設けてもよいが、穴の中間辺りに壁を形成して設けてもよい。さらに本発明の穴の底部を円錐状又は半球状に形成しておけば、キャリブレーションプレート内の入射光が穴の径中心に屈折集合し、より一層輝度が増す利点がある。
【0014】
請求項2記載の発明は、被写体の撮影画像の較正や歪補正するためのキャリブレーションプレートにおいて、平板状の透明体に所定間隔に貫通穴又は底を有した穴で整列させた多数穴のパターンを設けると共に上下両面又はその何れかの片面に遮光層を形成してなり、光を前記キャリブレーションプレート本体の外周側面側から内部に入射し前記穴に照射させ前記多数穴を照射して得たパターンを前記穴明け面側に現出させることを要旨とする。
【0015】
パターンを近くでカメラで撮像する場合、キャリブレーションプレート本体の外周付近の穴はより斜め方向からの撮影となるために、穴の外形像がキャリブレーションプレート本体を透過して写し出されることがあるが、請求項2記載の発明によれば、遮光層により穴の外形像が遮光されるので穴の部分だけが写し出される。
【0016】
また、キャリブレーションプレート本体の表面が透明体のままの場合、その表面に傷がつくと、そこから光が漏れ、較正用パターンとの分離が困難になる場合があるが、請求項2記載の発明によると、キャリブレーションプレート本体の上下両面又はその何れかの片面に遮光層が形成されているため、遮光層側に傷がつき難く、傷による校正用パターンの混乱を防止できる。遮光層は着色顔料を塗布して形成されるが、顔料の色を黒色とすれば光を吸収しコントラストを高めることができるので好ましい。また遮光層はその着色顔料の代わりに光を通さないフィルムを本体に貼り付けてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のキャリブレーションプレートは、上記の通り光を透明体の外周側面側から入射し、貫通する多数穴のパターン又は底部を有する多数穴のパターンを照射させ、キャリブレーションプレート本体の穴明け面側に多数穴のパターンを現出できると共に、簡単な構造であるので安価ででき、またその多数穴のパターンをカメラで撮影することで各穴像間に輝度差の少なく、かつ、コントラストの高い鮮明な画像を得ることができ、穴画像のみの抽出を容易とすることが可能となる。
【0018】
そして、本発明は多数穴で構成されるパターンが側面からの入射光で照明されるので従来キャリブレーションプレートで下面側又は上面側の光源の遠・近により発生していた穴パターンの照度差が小さくなり、コンピュータでの画像処理における穴パターン像のみの抽出を容易とすることができる。また、穴の中心部に光が集中し、輝度が高くなることから穴像のより正確な中心位置を求めることができ、高精度な較正が可能となる。また必要に応じてキャリブレーションプレート本体の上下両面又は何れかの片面に遮光層を設けておけば、キャリブレーションプレート本体を透して穴の外形像が映しだされることなく、また表面が保護され、プレートを取り扱うなかなどでの傷発生による光の乱反射を防止できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図1〜図5に基づいて、本発明に係わるキャリブレーションプレートの実施形態を説明する。図1は第1実施形態におけるキャリブレーションプレートの断面図である。図2は第2実施形態におけるキャリブレーションプレートの断面図である。図3は第2実施例のキャリブレーションプレートの使用状態を示す説明図である。図4は第2実施例の穴の縦断面拡大図である。図5は穴の他の形態を示す説明図である。
そして、1はキャリブレーションプレート、2はキャリブレーションプレート本体、3は穴、4は多数穴のパターン、5は遮光層、6は照明である。
【0020】
本実施形態において、キャリブレーションプレート本体2は図1に示すように剛性で軽量な透明性を有するアクリル樹脂の平板で作られる。この平板に、格子状に穴3を整列させる。パターン4はそれら配列された多数の穴3で構成される。穴3は本実施例では中空の貫通した穴で形成したが、図5に示すように穴の形態は(a)の上下両端の径を異にしたテーパ穴や(b)の穴の中間辺りに底壁を設けた穴でもよく、さらに(c)に示すように片端に底壁を設けた穴でもよい。また底を有した穴は特にその底部形状について限定されないが、市販のドリルで穴あけ加工して円錐形状に形成しておけば、その底の傾斜面で入射光が穴の中心に向かって屈折集合し輝度値が増加するので画像処理において穴の中心をより正確に求め易くなる。
【0021】
キャリブレーションプレート1の第1実施例形態ではキャリブレーションプレートプレート本体2に横9個、縦7個の貫通穴を設け、その貫通穴を径2mmとしたが、具体的には被測定物に合わせて大きさ、穴の数量を決定する。例えば両足のサイズを画像測定する場合、キャリブレーションプレートは足の大きさに応じて縦400mm、横440mm、厚みを5mmとし、それに等間隔25mmで横17個、縦15個の貫通穴3からなる多数穴のパターン4を穴明け加工して完成させてもよい。穴3は2〜5mm径の大きさが好ましい。これは穴の径を2mm未満とすると輝度が小さくなり、カメラ画像では十分な高さの信号値とならない場合がある。また径5mm以上とすると、穴画像解析での中心部の誤差が大きくなるという問題がある。
【0022】
次に、完成したキャリブレーションプレートの使用方法を説明する。キャリブレーションプレート1は、多数穴のパターン面をカメラに向け寸法測定器の測定面(図示なし)に置き、キャリブレーションプレート1の四方の外周側面からキャリブレーションプレート内に照明装置から光を入射してプレート本体内に全反射光を作り出す。この全反射光がプレート中を進む途中に穴があると、その光は穴から外部に漏れる。この漏れた光に基づくパターンをカメラ7で撮影する。
【0023】
そして、本発明の第1実施例のキャリブレーションプレートを用いて撮影した画像は照射された多数穴のパターンの画像データを得ることができるため、明暗のコントラストが高い鮮明な画像データが得られる。これによって、本発明は従来のパターンによる陰が全く発生せず、またパターン画像の穴の座標軸と輝度により穴の中心をコンピュータにより演算して、より正確に中心位置を求めることでき、画像処理における位置測定で高精度の較正を図ることができた。
【0024】
次に、キャリブレーションプレートの第2実施例形態では、図2から図4に示すように前記第1実施例のキャリブレーションプレート本体2に底壁32を設け底31を有する穴3を整列させた複数穴のパターン4を形成する。そして、キャリブレーションプレートの複数穴のパターン4の面に黒色の着色顔料を塗って遮光層5を形成して完成させる。前記遮光層5は多数穴のパターン4の面と同一面の表面側に形成したが、必要に応じてプレートの上下両面もしくは裏面側のみに形成してもよい。
【0025】
次に、前記完成した第2実施例形態のキャリブレーションプレートの使用方法を図3に基づいて説明する。第1実施例と同様にキャリブレーションプレート1のパターン面をデジタルカメラ7に向けて寸法測定器の測定面(図示なし)に置き、キャリブレーションプレート1の四方の外周側面から蛍光灯などの照明6.6…をあてキャリブレーションプレート内に光61を入射し、全反射した光がプレート内部を進行して底を有した穴に照射して穴から反射光が漏れる。これにより、キャリブレーションプレートの表面側に照射した多数穴のパターンを現出させたキャリブレーションプレートが得られ、その多数穴のパターンをデジタルカメラ7で撮影する。
【0026】
そして、本発明の第2実施例のキャリブレーションプレートを用いて撮影される画像は多数穴のパターン以外のプレート部分では、光は全反射して進行し、光は外には出ていかないので、多数穴のパターンとの明暗のコントラストが高い鮮明な画像が得られる。これによって、本発明は従来のプレートにおける照明のムラやパターンによる陰が全く発生せず、またこのパターン画像データに基づいて、穴の中心を算出することにより、より正確に中心位置を求めることできる。これにより、画像処理における位置解析により、高精度の較正を図ることができた。
【0027】
そして、本発明はカメラの撮影角度によりキャリブレーションプレート外周部の穴の外形像がキャリブレーションプレート本体を透過しても遮光層で遮光されるため写し出されることがなく、またキャリブレーションプレート本体を保護して表面の損傷が防止される。しかも、本発明のキャリブレーションプレート本体は上記の通り透明樹脂の平板に穴を設け、側面から光を内部に入射したもので簡単な構造であり安価で作成できる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は前記の通りキャリブレーションプレートを足型測定器において足のサイズ測定に使用したが、これに限定されず被測定物の画像較正に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態におけるキャリブレーションプレートの断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態においてキャリブレーションプレートの断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態におけるキャリブレーションプレートの使用方法を示す説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態における穴の拡大縦断面図である。
【図5】本発明の穴の他の形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 キャリブレーションプレート
2 キャリブレーションプレート本体
3 穴 31 穴の底 32 底壁
4 パターン
5 遮光層
6 照明 61 光
7 デジタルカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の撮影画像の較正や歪補正するためのキャリブレーションプレートにおいて、平板状の透明体に所定間隔に貫通穴又は底を有した穴で整列させた多数穴のパターンを設け、光を前記キャリブレーションプレート本体の外周側面側から内部に入射し前記多数穴を照らして照射させたパターンを穴明け面側に現出させることを特徴とするキャリブレーションプレート。
【請求項2】
被写体の撮影画像の較正や歪補正するためのキャリブレーションプレートにおいて、平板状の透明体に所定間隔に貫通穴又は底を有した穴で整列させた多数穴のパターンを設けると共に上下両面又はその何れかの片面側に遮光層を形成してなり、光を前記キャリブレーションプレート本体の外周側面側から内部に入射し前記多数穴を照らして照射させたパターンを穴明け面側に現出させることを特徴とするキャリブレーションプレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−236533(P2009−236533A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79988(P2008−79988)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000004433)株式会社アサヒコーポレーション (15)
【出願人】(503361813)学校法人 中村産業学園 (26)
【Fターム(参考)】