説明

キャリヤテープ製造装置

【課題】電子部品用紙製キャリヤテープの製造効率を高めると共に紙製キャリヤテープ製造中の紙粉による電子部品収納時及び実装作業工程でのトラブルをなくし、製造中のパンチ孔のばらつきを少なくすることができる紙製キャリヤテープの製造装置及び紙製キャリヤテープ製造法を提供する。
【解決手段】これまでの単連のパンチ孔金型を5連以上の金型とし、該金型にはパンチングの際に発生する紙粉を空気流により製品に悪影響を与えることなく排除回収する装置を装着する。紙製キャリヤテープ基材の送り装置として紙製キャリヤテープ基材をパンチングの後工程で引っ張るのではなくパンチング工程の前工程で紙製キャリヤテープ基材を掴んで、パンチング工程に送り出し、その後、紙製キャリヤテープ基材を離す、この動作を繰り返し行なう工程を設置した前記紙製キャリヤテープ製造装置。丸角ダイのブロック面を3以上20までの面数を紙製基材の送り方向に重ならないように複数交互に設置した金型を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を収納して搬送するキャリヤテープの製造装置、およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に使用されているチップ部品(以後部品と呼ぶ)は、長さと幅が2×1.25mm、1.6×0.8mm、1.0×0.5mmと順次小型化されてきた。このような小型の部品は、人手によって電子機器に装着することが困難であるため、自動実装装置が開発された。しかし、上記のような小型の部品を自動実装装置によって正確で、しかも短時間に取り付けられるようにするためには、自動実装装置だけではなく、キャリヤテ―プの精度およびケバがないなどの品質も問題になる。キャリヤテープとして、厚紙製基材に貫通穴を成形し、この貫通孔内に電子部品を収納した状態で基材の両面に蓋材を取付けたものが知られている。また他のキャリヤテープとしてプラスチック製基材に同様の貫通孔を成型し電子部品を収納するものが知られている。貫通孔を成型する工程をパンチング工程と呼ぶ。従来はパンチング工程にはテープ送り用の丸ダイと電子部品収納用の角ダイをそれぞれ一列ずつ装備する金型上に紙基材を移送させ丸パンチおよび角パンチにて打ち抜く製造方法が一般的であった。単連紙製キャリヤテープ製造装置と呼ぶ。
【0003】
上述のように厚紙製基材から一列の貫通孔を成型し、紙製キャリヤテープを作製したものでは製造装置あたりのキャリヤテープ生産が限定され、大量生産できず製造コスト削減が不十分であった。そのため単連ではなく多連のパンチ金型による製造装置が考案されている。
【0004】
しかしながらこれまで考案されてきた多連の紙製キャリヤテープ製造装置では厚紙基材のパンチ金型工程への移送速度がばらつき寸法精度などの製品品質が均一化せずばらつく、発生する紙粉による製品不良やケバの処理が煩雑で難しく、大きく生産性を改善することはできなかった。ことにキャリヤテープ側面から貫通部の中心までの距離(E寸と呼ぶ)がばらつき、自動電子部品収納・実装上問題となる。
【0005】
これらの改善策として、精度向上のために樹脂製キャリヤテープの場合には製造装置入り口の延伸ロールとインラインのスリッティングロールとが熱固定ロールと関連づけすることにより精度を向上させる(特許文献1)。また紙製キャリヤテープ製造装置の場合には厚紙基材を受ける受台と上下のストリッパーとストリッパー上の上下方向移動自在のパンチプレートとそれらに連結するストリッパーを弾性的に押圧する押さえロッドとを備えることで精度を向上させる(特許文献2)。パンチ成型時のケバを除去するためバーナーによるケバ焼き処理が知られているが電子部品の自動収納・実装装置でバーナー焼きでのこげカスが残り電子部品に悪影響を与えることがある。そのため厚紙基材を樹脂ラミネートし、パンチ後樹脂を溶融することで紙粉やケバを出さない(特許文献1)。樹脂性キャリヤテープ製造に関してはエンボス加工や導電性付与など種々改善が加えられてきた(非特許文献1、2)。しかしながら厚紙基材に多連のパンチを成型し、かつE寸のばらつきを最小化し、紙粉による製品不良を解消し、ケバなどの電子部品収納・実装工程を阻害するものを除去し効果的に連続的にスリッターする製造装置および製造法はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−182763号公報
【特許文献2】特開2000−327026号公報
【特許文献3】特開H9−221192号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】住友ベークライト 「製品情報」
【非特許文献2】信越ポリマー 「製品情報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
5連以上の多連紙製キャリヤテープ製造装置では紙製基材の移送精度の悪さにより製品である紙製キャリヤテープの寸法精度が単連に比べ劣化する。多連パンチ金型ではダイ数が多くなり金型強度が低下する。さらに紙製のキャリヤテープは、原料がパルプであるため、電子部品の収納用孔を開けるパンチング時に、生成する紙粉が多くなり、ケバが発生する。紙粉は製品不良の原因となり、ケバは後工程であるテーピング工程の、電子部品を収納用孔に収納する際に、電子部品がケバに邪魔されて収納しにくく、甚だしくは、浮き上がって脱落したり、また、実装工程の、自動挿入機を用いて電子部品を収納用孔から取り出す際に、取り出しミスをしたりする不具合が発生する。これらの不具合は、特に電子部品が小型のものほど発生し易い。また、ャリヤテープを作成する工程の、収納用孔をパンチングして形成する際に、紙粉が発生して飛散するため、作業環境が悪くなる。解決しようとする問題点は、5連以上のパンチ金型を使用し、紙粉による製品不良やケバによる電子部品実装への悪影響をなくし、きわめて安価に精度よく大量の紙製キャリヤテープを製造する製造法及び製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、単連のパンチ成型では一般的であった紙製キャリヤテープ基材をパンチングの後工程で引っ張る移送方式から、図8に示すようにパンチング工程の前工程で紙製キャリヤテープ基材を掴んで、パンチング工程に送り出し、その後、紙製キャリヤテープ基材を離す、この動作を繰り返し行なう工程を設置することによりスリット製品の精度、パンチ孔寸法及びE寸の精度を高めることを発見した。本発明の金型は図3であり、図4および図5に示すように多連のダイと多連のパンチを交互に配置することにより紙製キャリヤテープの寸法精度を高めるのみならず金型の製品寿命を長くすることを発見した。さらに本発明では金型内部にエアー配管を装備し空気流により紙粉が容易に除去できることを見出した。パンチング後にケバ取り部を装着することで製品品質のみならず、後工程の電子部品収納工程、実装工程でのトラブルを解消した。また磨耗を減少する金型のパンチ材質を見出した。紙粉やケバの発生を抑制するパンチとダイとのクリアランスの最適な長さを見出した。さらに本発明ではパンチング工程とスリッター工程を一体化し、製造装置をコンパクト化し生産を安定的にすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により紙製キャリヤテープの製造において5連以上の多連での紙製パンチキャリヤテープの製造を可能にし、紙製キャリヤテープをきわめて高品質に精度良く大量にかつ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1はライン図であって本発明の紙製キャリヤテープが紙製基材の1厚紙ロールから3移送フィーダにより5金型に送られパンチングとスリット加工後6ケバ焼き装置を経て紙製キャリヤテープを製造する。
【図2】図2は高速自動プレスであって3移送フィーダ4高速自動プレス装置を表す。
【図3】図3は金型。多連であり本図では20連のパンチブロックと及びダイブロックが複数交互に並ぶ。
【図4】ダイプレート平面図。本図では20連のダイブロックが交互に並ぶ。
【図5】ストリッパープレート平面図。本図では20連のパンチブロックが交互に並ぶ。
【図6】図6は紙製基材をパンチする図であり、ダイを有する金型上の紙製基材にパンチが圧入し、貫通孔ができる様子を示す。
【図7】図7は製品をスリットする図。
【図8】図8は高速カムグリッパフィーダであり、紙製基材の送り工程である。移動クランプで紙製基材をつかんで、パンチ工程の金型上に送り、パンチング後移動クランプは紙製基材を放して元に戻り、同操作を繰り返す様子を示す。
【図9】図9は金型材質である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例では、限定した厚紙材料、装置、金型を使用したが本発明の実施形態では記載した内容に限定するものではないことは自明である。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明装置の一実施例である紙製キャリヤテープのライン図であって、紙製基材である巾164mm、厚み0.75mmの王子特殊紙株式会社製HJキャリアテープ用紙が1厚紙ロールから3高速カムグリッパフィーダによりパンチング工程である4高速自動プレスに送られる。
【0014】
紙製基材は図2の高速自動プレスによるパンチング工程で金型上に瞬間停止し、20連パンチにより貫通孔を成型する。丸パンチは精度を向上するため、個別に焼結し研磨加工し束ねてパンチ成型する。金型において5−4ストリッパープレートはパンチをダイ側に偏りなく導く。ダイとパンチのクリアランスをB5〜6μとり、偏りなくパンチをダイにガイドするために5−4ストリッパープレートと5a(あるいは5b)パンチのクリアランスをA2〜2.5μと設定する。Aクリアランスが小さいと5−4ストリッパープレートと5aあるいは5bパンチがぶつかり、擦れによるパンチ磨耗が発生する。
【0015】
5金型には5−13エアー配管を装備した。5−13エアー配管には(株)日立製作所社製HISCREW OSP-37V6ARインバーター搭載型空気圧縮機にて乾燥圧縮空気を製造し毎分4.2mの空気量を流し、5金型に滞留する紙粉を排除した。
【0016】
貫通孔成型後5bサイドカットパンチにより紙製基材の両端を切断し紙製基材の巾を160mmにする。
【0017】
5cスリットカットパンチにより20列各8mmの紙製基材キャリヤテープに切断する。
【0018】
20列にスリットされた紙製基材は6ケバ焼き工程に送られる。ケバ焼きは正極と負極の間にスリットした紙製キャリヤテープを送り、一定の電界強度にて放電する。ケバなきことを製品検査にて確認した。
【0019】
前記で製造した紙製キャリヤテープのスリット巾は8mm、誤差は+0.02〜+0.05mmであった。ケバは画像測定機で30倍拡大し限度見本と照合しケバなきことを確認した。E寸寸法を含むテープ寸法は画像測定機で30倍拡大し、自動計測した。すべて規格値内であった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
電子部品を収納、搬送する紙製キャリヤテープの製造を大量、安価にかつ精度よく生産することができる。さらに紙製テープ材料の生産に広く応用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 厚紙ロール
2 厚紙製紙キャリヤテープ基材
3 高速カムグリッパフィーダ 日本電産キョーリ(株) GX-120
4 高速自動プレス 日本電産キョーリ(株)
5 金型
6 ケバ焼き装置
3-1 移動クランプ
3-2 固定クランプ
3-3 クランプ開放つまみ
3-4 送り長さ設定ハンドル
3-5 パイロットリリースカム
4-1 クランクシャフト
4-2 コンロッド
4-3 クラッチブレーキ
4-4 フライホイール
4-5 プランジャ
4-6 スライド
4-7 プレスガイドポスト
4-8 ボルスタ
4-9 防振装置
5a-1 丸ダイ
5a-2 角ダイ
5b サイドカットパンチ
5b-1 サイドカットダイ
5c スリットカットパンチ
5c-1 スリットカットダイ
5d パンチ
5d-1 丸パンチ
5d-2 角パンチ
5-1 上ダイセット
5-2 金型ガイドポスト
5-3 パンチプレート
5-4 ストリッパープレート
5-5 サブガイドピン
5-6 ハイトバー
5-7 ダイプレート
5-8 下ダイセット
5-9 トンネルガイド
5-10 ストリッパーブロック
5-11 入り口ガイド
5-12 サブガイドブッシュ
5-13 エアー配管
5-14 スリットカットガイド(角パイロット)
5-15 サブガイドピン
5-16 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収納・搬送する紙製キャリヤテープの製造において、電子部品を収納し得る厚さの紙製基材にパンチングする貫通孔と紙製キャリヤテープを送るための送り孔をパンチングするパンチの列が5連から60連でありスリッター工程を併せ持つことを特徴とする金型を備える紙製キャリヤテープ製造装置および紙製キャリヤテープ製造法。
【請求項2】
紙製キャリヤテープ基材をパンチングの後工程で引っ張るのではなくパンチング工程の前工程で紙製キャリヤテープ基材を掴んで、パンチング工程に送り出し、その後、紙製キャリヤテープ基材を離す、この動作を繰り返し行なう工程を設置した前記紙製キャリヤテープ製造装置。
【請求項3】
前記紙製キャリヤテープ製造装置のパンチング工程で丸角ダイのブロック面を3以上20までの面数を紙製基材の送り方向に重ならないように複数交互に設置した金型を用いる紙製キャリヤテープ製造装置。
【請求項4】
前記金型の強度を向上するために梁を装着し、紙粉除去の為、エアー配管を金型上下に設置した紙製キャリヤテープ製造用金型。
【請求項5】
前記金型のパンチの材質が超微粒子超硬合金である前記紙製キャリヤテープ製造用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−96477(P2012−96477A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247044(P2010−247044)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(710006600)株式会社奥田 (5)
【Fターム(参考)】