説明

キャンバ角調整機構

【課題】簡単な構造で、運動性能を向上するキャンバ角調整機構を提供する。
【解決手段】車体に懸架される車輪40のキャンバ角を変更するキャンバ角調整機構1で、駆動部材2の発生する駆動力を伝達する伝達部材3と、懸架装置21の第1支持部材22に支持され、伝達部材3の回転運動を直進運動に変換する運動方向変換部材4と、車輪側に連結された連結部材5を運動方向変換部材4に対して回転可能に接続する第1接続部材6と、連結部材5を第1支持部材22に対して回転可能に接続する第2接続部材7と、懸架装置21に支持される第2支持部材23と、車輪40を支持し、第2支持部材23に対して回動可能に支持される回動部材9と、連結部材5を回動部材9に対して回転可能に接続する第3接続部材8と、を備え、第1接続部材6と第2接続部材7を結ぶ線L1と、第2接続部材7と第3接続部材8を結ぶ線L2とが、直交又は略直交する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪のキャンバ角を簡単な構造で変更できるようにしたキャンバ角調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体に対する車輪のキャンバ角を変更するキャンバ角調整機構において、てこクランク機構を用いることで、アクチュエータへの負荷を軽減し、且つ、強度を確保したものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−132377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明では、テコクランク機構を用いているので、作用する力に対してクランク軸とクランクピンを結ぶ線が同じ方向になった場合、セルフロック特性を有し、容易にキャンバ角を調整することができるが、その他の位置にキャンバ角を調整する場合、モータの電力を常に供給することでクランク軸の回転位置をロックしておく必要があり、効率が不十分であった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、簡単な構造で、効率がよく運動性能を向上すると共に、長寿命のキャンバ角調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明は、懸架装置を介して車体に懸架される車輪のキャンバ角を変更するキャンバ角調整機構において、駆動力を発生する駆動部材と、前記駆動部材の発生する駆動力を伝達する伝達部材と、前記懸架装置に支持される第1支持部材と、前記第1支持部材に支持され、前記伝達部材が伝達した回転運動を直進運動に変換する運動方向変換部材と、前記運動方向変換部材と前記車輪側とを連結する連結部材と、前記連結部材を前記運動方向変換部材に対して回転可能に接続する第1接続部材と、前記連結部材を前記第1支持部材に対して回転可能に接続する第2接続部材と、前記懸架装置に支持される第2支持部材と、前記車輪を支持し、前記第2支持部材に対して回動可能に支持される回動部材と、前記連結部材を前記回動部材に対して回転可能に接続する第3接続部材と、を備え、前記第1接続部材と前記第2接続部材を結ぶ線と、前記第2接続部材と前記第3接続部材を結ぶ線とが、直交又は略直交することを特徴とする。
【0007】
また、前記伝達部材及び前記運動方向変換部材は、ねじ山が台形の台形ネジを用いた雄ねじと雌ねじからなる送りネジを含むことを特徴とする。
【0008】
また、前記駆動部材は、バネ上の前記車体に設置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、懸架装置を介して車体に懸架される車輪のキャンバ角を変更するキャンバ角調整機構において、駆動力を発生する駆動部材と、前記駆動部材の発生する駆動力を伝達する伝達部材と、前記懸架装置に支持される第1支持部材と、前記第1支持部材に支持され、前記伝達部材が伝達した回転運動を直進運動に変換する運動方向変換部材と、前記運動方向変換部材と前記車輪側とを連結する連結部材と、前記連結部材を前記運動方向変換部材に対して回転可能に接続する第1接続部材と、前記連結部材を前記第1支持部材に対して回転可能に接続する第2接続部材と、前記懸架装置に支持される第2支持部材と、前記車輪を支持し、前記第2支持部材に対して回動可能に支持される回動部材と、前記連結部材を前記回動部材に対して回転可能に接続する第3接続部材と、を備え、前記第1接続部材と前記第2接続部材を結ぶ線と、前記第2接続部材と前記第3接続部材を結ぶ線とが、直交又は略直交するので、運動方向変換部材4、雄ねじ部材3及び駆動部材2に伝わる外乱が低減され、簡単な構造で、効率がよく運動性能を向上すると共に、長寿命のキャンバ角調整機構を提供する
【0010】
また、請求項2記載の発明によれば、前記伝達部材及び前記運動方向変換部材は、ねじ山が台形の台形ネジを用いた雄ねじと雌ねじからなる送りネジを含むので、セルフロック時のバックラッシュを低減することが可能となる。
【0011】
また、請求項3記載の発明によれば、前記駆動部材は、バネ上の前記車体に設置されるので、バネ下の軽量化が実現でき、乗り心地及び車両の運動性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態のキャンバ角調整機構の断面図である。
【図2】第1実施形態のキャンバ角調整機構の作動状態の断面図である。
【図3】第2実施形態のキャンバ角調整機構の断面図である。
【図4】第2実施形態のキャンバ角調整機構の作動状態の断面図である。
【図5】第3実施形態のキャンバ角調整機構の断面図である。
【図6】第3実施形態のキャンバ角調整機構の作動状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は第1実施形態のキャンバ角調整機構1の断面図である。
【0015】
図1において、1はキャンバ角調整機構、2は駆動部材、3は伝達部材、4は運動方向変換部材、5は連結部材、6は第1接続部材、7は第2接続部材、8は第3接続部材、9は回動部材としてのキャンバプレート、10は回動部材支持部材としてのキャンバプレート支持部材、21は懸架装置としてのトーションビーム、22は第1支持部材、23は第2支持部材、31はハブ、40は車輪、41はホイール、42はタイヤである。
【0016】
第1実施形態のキャンバ角調整機構1は、図示しない車体に揺動可能に取り付けられたトーションビーム21等の懸架装置に支持された第1支持部材22と、キャンバ角調整機構1の駆動力を発生する駆動部材2と、一端を駆動部材2に連結され駆動力を伝達する伝達部材としての雄ねじ部材3と、雄ねじ部材3の他端に連結され回転方向の運動を直進方向に変換する運動方向変換部材4と、運動方向変換部材4に連結された連結部材5と、運動方向変換部材4と連結部材5とを回動可能に接続する第1接続部材6と、第1支持部材22と連結部材5とを回動可能に接続する第2接続部材7と、第1接続部材6と第2接続部材7とを結ぶ線に対して直交すると共に第2接続部材7を通る線上で連結部材5を回動可能に接続する第3接続部材8と、第3接続部材8により連結部材5に回動可能に連結されハブ31を回転可能に支持するキャンバプレート9と、トーションビーム21等の懸架装置に支持された第2支持部材23と、第2支持部材23に取り付けられ、キャンバプレート9を回動可能に支持するキャンバプレート支持部材10と、を備える。
【0017】
駆動部材2は、DCモータ等からなるモータ2a、モータの駆動力を出力する出力軸2b等からなる。
【0018】
雄ねじ部材3は、駆動部材2の出力軸2bに取り付けられ回転する雄ねじ31を有する。
【0019】
運動方向変換部材4は、回転運動を直進運動に変換するものであり、第1実施形態では、第1支持部材22に支持されるケース4aと、雄ねじ部材3の雄ねじ部31と螺合し雄ねじ部31の回転により直進運動する雌ねじ部4b1を有する直進運動部材4bからなる。モータ2aの出力軸2b及び雄ねじ部材3は、ケース4aに対して回転可能であり、直進運動部材4bは、ケース4aに対して摺動し直進可能である。
【0020】
雄ねじ部材3の雄ねじ部31と直進運動部材4bの雌ねじ部4b1とで送りネジを形成する。そして、雄ねじ部材3の雄ねじ部31と直進運動部材4bの雌ねじ部4b1とは、ねじ山が台形の台形ねじを使用する。台形ねじを使用することで、モータ2aの駆動を止め任意のキャンバ角で保持した時に、抵抗が大きくなり、セルフロックのような作用を得ることができる。なお、ボールネジ等により構成してもよい。
【0021】
連結部材5は、第1接続部材6によって運動方向変換部材4に対して回動可能に接続され、第2接続部材7によって第1支持部材22に対して回動可能に接続され、第3接続部材8によってキャンバプレート9に対して回動可能に接続されている。第1実施形態では、第2接続部材7と接続する部分を直角とする直角三角形で形成されている。なお、連結部材5の形状は、第1接続部材6と第2接続部材7を結ぶ線L1と、第2接続部材7と第3接続部材8を結ぶ線L2とが直交又は略直交すればよく、L型等でもよい。
【0022】
このように、第1接続部材6と第2接続部材7を結ぶ線L1と、第2接続部材7と第3接続部材8を結ぶ線L2とが直交又は略直交させると、走行時に車輪40に入力される外乱が第3接続部材8から第2接続部材7に伝わったとしても、直角方向にある第1接続部材6に伝わる外乱は低減され、結果的に運動方向変換部材4、雄ねじ部材3及び駆動部材2に伝わる外乱が低減される。ここで、略直交とは、第3接続部材8に入力された外乱が第1接続部材6を経て運動方向変換部材4に伝わることをよく低減させる角度(約90°±10°)であればよい。
【0023】
それによって、雄ねじ部材3の雄ねじ部31及び直進運動部材4bの雌ねじ部4b1の台形ねじのセルフロック機能が向上するとともに、耐久性や信頼性が向上する。特に、ネジ山の削れ等が低減する。
【0024】
第1接続部材6は、運動方向変換部材4と連結部材5とを回動可能に接続するジョイント等からなる。また、第2接続部材7は、第1支持部材22と連結部材5とを回動可能に接続するジョイント等からなる。
【0025】
第3接続部材8は、第1実施形態では、一端で連結部材5に回動可能に接続される第1ジョイント8aと、他端でキャンバプレート9に回動可能に接続される第2ジョイント8bと、第1ジョイント8aと第2ジョイント8bを連結するレバー8cとからなる。
【0026】
キャンバプレート9は、ハブ31のケース31aを支持し、一端側を第3接続部材8に回動可能に接続され、他端側を第2支持部材23に支持されるキャンバプレート支持部材10に対して回動可能に接続される。キャンバプレート9が回動することにより、ハブ31が回動し、結果的に、車輪40のキャンバ角を調整することが可能となる。
【0027】
なお、キャンバプレート支持部材10は、車両前後方向の一直線上に配置する必要はない。したがって、キャンバ角調整機構1を作動した場合、キャンバ角だけでなく、トウ角も変化するように設定可能である。
【0028】
トーションビーム21は、車体に対して揺動し、振動を吸収するサスペンションである。本実施形態では、第1支持部材22及び第2支持部材23がトーションビーム21に設置されている。
【0029】
ハブ31は、キャンバプレート9に支持されるケース31aと、図示しないドライブシャフトに連結されエンジンやモータ等の駆動力により回転する回転部31bを有する。
【0030】
車輪40は、ハブ31の回転部31bにボルト等により締着され、回転部31bと共に回転するホイール41と、ホイール41の外周に組み付けられるタイヤ42と、を有する。
【0031】
次に、第1実施形態のキャンバ角調整機構1の作動について説明する。
【0032】
図2は、第1実施形態のキャンバ角調整機構の作動状態の断面図である。
【0033】
図2に示すように、本実施形態では、キャンバ角調整機構1の調整前にアライメント調整をして車輪40にはあらかじめキャンバ角が付与されている。なお、キャンバ角調整機構1の調整前のキャンバ角は0°としてもよい。
【0034】
まず、図示しない制御装置等によりキャンバ角を調整するよう指示があると、駆動部材3のモータ2aが駆動する。
【0035】
図2に示すように、モータ2aの駆動力は、出力軸2bから出力され、雄ねじ部材3の雄ねじ部31を矢印Aの方向に回転させる。雄ねじ部31の回転は、運動方向変換部材4により直進運動部材4bの雌ねじ部4b1に伝達され、モータ2aの矢印Aの方向の回転運動は、矢印Bの方向の直進運動に変換される。直進運動部材4bが矢印Bの方向に移動すると、第1接続部材6も矢印Bの方向に移動し、連結部材5を押す。
【0036】
連結部材5は、第2接続部材7に回動可能に接続され、第2接続部材7は、第1支持部材22に支持されている。したがって、第1接続部材6が矢印Bの方向に押されると、連結部材5は、第2接続部材7を中心に矢印Cの方向に回転する。
【0037】
連結部材5が矢印Cの方向に回転すると、第3接続部材8の連結部材接続部8aも同様に矢印C方向に移動する。すると、レバー8cが矢印Dの方向に引っ張られ移動する。
【0038】
レバー8cが矢印Dの方向に引っ張られると、回動部材接続部としてのキャンバプレート接続部8b及びキャンバプレート接続部8bに接続されたキャンバプレート9が移動する。キャンバプレート9は、第2支持部材に支持されたキャンバプレート支持部材10に軸支されているので、キャンバプレート接続部8b及びキャンバプレート9は、キャンバプレート支持部材10を中心に矢印Eの方向に回転する。
【0039】
キャンバプレート9が矢印Eの方向に回転すると、ハブ31及び車輪40も矢印Eの方向に回転し、車輪40にネガティブキャンバが付与される。
【0040】
次に、第2実施形態について説明する。図3は、第2実施形態のキャンバ角調整機構1の断面図である。
【0041】
第2実施形態のキャンバ角調整機構1は、駆動部材2を車体20に設置する。車体20に設置された駆動部材2の駆動力は、第1支持部材22に支持された運動方向変換部材4へ伝達部材3によって伝達される。
【0042】
駆動部材2は、DCモータ等からなるモータ2a、モータの駆動力を出力する出力軸2b等からなる。駆動部材2をトーションビーム21等の懸架装置に対してバネ上にあたるフレーム等の車体20に設置することにより、バネ下の軽量化が実現でき、乗り心地及び車両の運動性能が向上する。
【0043】
伝達部材3は、駆動部材2の出力軸2bに取り付けられ回転する第1接合部3aと、一端を第1接合部3aに連結され回転駆動力を伝達する回転運動伝達部材3bと、回転運動伝達部材3bの他端に連結された第2接合部3cと、第2接合部3cと一体に回転する雄ねじ部材3dとを有する。
【0044】
第1接合部3aは、摺動式等速ジョイントからなり、内側に凹部を有する外枠3a1、外枠3a1と一体に回転すると共に、凹部内を出力軸2bの方向に摺動可能な摺動部材3a2及び回転運動伝達部材3bに連結する第1ジョイント部材3a3を有する。回転運動伝達部材3bは、第1接合部3aの第1ジョイント部材3a3と第2接合部3cの第2ジョイント部材3c1とを連結し、回転駆動力を伝達するもので、第2実施形態では棒状の連結バーからなる。また、第2接合部3cは、固定式等速ジョイントからなり、回転運動伝達部材3bに連結する第2ジョイント部材3c1及び一方を第2ジョイント部材3c1に他方を雄ねじ部材3dに接続された雄ねじ接続部材3c2を有する。雄ねじ部材3dは、雄ねじ部3d1を有する。
【0045】
摺動部材3a2は、外枠3a1の凹部内を出力軸2bの方向に摺動可能なので、車体20とトーションビーム21等の懸架装置との間の出力軸2bの方向の相対的な位置の変動を吸収することが可能となる。また、第1ジョイント部材3a3は、摺動部材3a2と回転運動伝達部材3bとの角度を自由に変化させると共に、摺動部材3a2から回転運動伝達部材3bに回転駆動力を伝達する部分である。第2ジョイント部材3c1は、回転運動伝達部材3bと雄ねじ接続部材3c2との角度を自由に変化させると共に、回転運動伝達部材3bから雄ねじ接続部材3c2に回転駆動力を伝達する部分である。
【0046】
運動方向変換部材4は、回転運動を直進運動に変換するものであり、第2実施形態では、第1支持部材22に支持されるケース4aと、伝達部材3の雄ねじ部3d1と螺合し雄ねじ部3d1の回転により直進運動する雌ねじ部4b1を有する直進運動部材4bからなる。伝達部材3の第2接合部3cは、ケース4aに対して回転可能であり、直進運動部材4bは、ケース4aに対して摺動し直進可能である。
【0047】
伝達部材3の雄ねじ部3d1と直進運動部材4bの雌ねじ部4b1とで送りネジを形成する。そして、伝達部材3の雄ねじ部3d1と直進運動部材4bの雌ねじ部4b1とは、ねじ山が台形の台形ねじを使用する。台形ねじを使用することで、モータ2aの駆動を止め任意のキャンバ角で保持した時に、抵抗が大きくなり、セルフロックのような作用を得ることができる。
【0048】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0049】
次に、第2実施形態のキャンバ角調整機構1の作動について説明する。
【0050】
図4は、第2実施形態のキャンバ角調整機構の作動状態の断面図である。
【0051】
図3に示すように、本実施形態では、キャンバ角調整機構1の調整前にアライメント調整をして車輪40にはあらかじめキャンバ角が付与されている。なお、キャンバ角調整機構1の調整前のキャンバ角は0°としてもよい。
【0052】
まず、図示しない制御装置等によりキャンバ角を調整するよう指示があると、駆動部材3のモータ2aが駆動する。
【0053】
図2に示すように、モータ2aの駆動力は、出力軸2bから出力され、伝達部材3を矢印Aの方向に回転させる。伝達部材3では、まず第1接合部3aの外枠3a1が回転し、摺動部材3a2及び第1ジョイント部材3a3が順に回転する。続いて、回転運動伝達部材3bが回転する。さらに、第2ジョイント部材3c1及び雄ねじ接続部材3c2が回転する。次に、雄ねじ部材3dが回転し、雄ねじ部3d1を矢印Aの方向に回転させる。雄ねじ部3d1の回転は、運動方向変換部材4により直進運動部材4bの雌ねじ部4b1に伝達され、モータ2aの矢印Aの方向の回転運動は、矢印Bの方向の直進運動に変換される。直進運動部材4bが矢印Bの方向に移動すると、第1接続部材6も矢印Bの方向に移動し、連結部材5を押す。
【0054】
連結部材5は、第2接続部材7に回動可能に接続され、第2接続部材7は、第1支持部材22に支持されている。したがって、第1接続部材6が矢印Bの方向に押されると、連結部材5は、第2接続部材7を中心に矢印Cの方向に回転する。
【0055】
連結部材5が矢印Cの方向に回転すると、第3接続部材8の連結部材接続部8aも同様に矢印C方向に移動する。すると、レバー8cが矢印Dの方向に引っ張られ移動する。
【0056】
レバー8cが矢印Dの方向に引っ張られると、回動部材接続部としてのキャンバプレート接続部8b及びキャンバプレート接続部8bに接続されたキャンバプレート9が移動する。キャンバプレート9は、第2支持部材23に支持されたキャンバプレート支持部材10に軸支されているので、キャンバプレート接続部8b及びキャンバプレート9は、キャンバプレート支持部材10を中心に矢印Eの方向に回転する。
【0057】
キャンバプレート9が矢印Eの方向に回転すると、ハブ31及び車輪40も矢印Eの方向に回転し、車輪40にネガティブキャンバが付与される。
【0058】
次に、第3実施形態について説明する。図5は、第3実施形態のキャンバ角調整機構1の断面図である。
【0059】
第3実施形態のキャンバ角調整機構1は、伝達部材3の回転運動伝達部材3bに、第2実施形態で使用した連結バーに代えてフレキシブルなものを使用する。
【0060】
駆動部材2は、DCモータ等からなるモータ2a、モータの駆動力を出力する出力軸2b等からなる。駆動部材2をトーションビーム21等の懸架装置に対してバネ上にあたるフレーム等の車体20に設置することにより、バネ下の軽量化が実現でき、乗り心地及び車両の運動性能が向上する。
【0061】
伝達部材3は、駆動部材2の出力軸2bに取り付けられ一体に回転する第1接合部3aと、一端を第1接合部3aに連結されたフレキシブルシャフトからなる回転運動伝達部材3bと、回転運動伝達部材3bの他端に連結された第2接合部3cと、第2接合部3cと一体に回転する雄ねじ部材3dとを有する。また、雄ねじ部材3dは、雄ねじ部3d1を有する。
【0062】
運動方向変換部材4は、回転運動を直進運動に変換するものであり、第2実施形態では、第1支持部材22に支持されるケース4aと、伝達部材3の雄ねじ部3d1と螺合し雄ねじ部3d1の回転により直進運動する雌ねじ部4b1を有する直進運動部材4bからなる。伝達部材3の第2接合部3cは、ケース4aに対して回転可能であり、直進運動部材4bは、ケース4aに対して摺動し直進可能である。
【0063】
伝達部材3の雄ねじ部3d1と直進運動部材4bの雌ねじ部4b1とで送りネジを形成する。そして、伝達部材3の雄ねじ部3d1と直進運動部材4bの雌ねじ部4b1とは、ねじ山が台形の台形ねじを使用する。台形ねじを使用することで、モータ2aの駆動を止め任意のキャンバ角で保持した時に、抵抗が大きくなり、セルフロックのような作用を得ることができる。
【0064】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0065】
次に、第3実施形態のキャンバ角調整機構1の作動について説明する。
【0066】
図6は、第3実施形態のキャンバ角調整機構の作動状態の断面図である。
【0067】
図5に示すように、本実施形態では、キャンバ角調整機構1の調整前にアライメント調整をして車輪40にはあらかじめキャンバ角が付与されている。なお、キャンバ角調整機構1の調整前のキャンバ角は0°としてもよい。
【0068】
まず、図示しない制御装置等によりキャンバ角を調整するよう指示があると、駆動部材3のモータ2aが駆動する。
【0069】
図6に示すように、モータ2aの駆動力は、出力軸2bから出力され、伝達部材3を矢印Aの方向に回転させる。伝達部材3では、まず第1接合部3aが回転し、回転運動伝達部材3bが回転する。さらに、第2接合部3cが回転する。次に、雄ねじ部材3dが回転し、雄ねじ部3d1を矢印Aの方向に回転させる。雄ねじ部d31の回転は、運動方向変換部材4により直進運動部材4bの雌ねじ部4b1に伝達され、モータ2aの矢印Aの方向の回転運動は、矢印Bの方向の直進運動に変換される。直進運動部材4bが矢印Bの方向に移動すると、第1接続部材6も矢印Bの方向に移動し、連結部材5を押す。
【0070】
連結部材5は、第2接続部材7に回動可能に接続され、第2接続部材7は、第1支持部材22に支持されている。したがって、第1接続部材6が矢印Bの方向に押されると、連結部材5は、第2接続部材7を中心に矢印Cの方向に回転する。
【0071】
連結部材5が矢印Cの方向に回転すると、第3接続部材8の連結部材接続部8aも同様に矢印C方向に移動する。すると、レバー8cが矢印Dの方向に引っ張られ移動する。
【0072】
レバー8cが矢印Dの方向に引っ張られると、回動部材接続部としてのキャンバプレート接続部8b及びキャンバプレート接続部8bに接続されたキャンバプレート9が移動する。キャンバプレート9は、第2支持部材に支持されたキャンバプレート支持部材10に軸支されているので、キャンバプレート接続部8b及びキャンバプレート9は、キャンバプレート支持部材10を中心に矢印Eの方向に回転する。
【0073】
キャンバプレート9が矢印Eの方向に回転すると、ハブ31及び車輪40も矢印Eの方向に回転し、車輪40にネガティブキャンバが付与される。
【0074】
このように、本実施形態によれば、トーションビーム21を介して車体20に懸架される車輪40のキャンバ角を変更するキャンバ角調整機構1において、駆動力を発生する駆動部材2と、駆動部材2の発生する駆動力を伝達する伝達部材3と、トーションビーム21に支持される第1支持部材22と、第1支持部材22に支持され、伝達部材3が伝達した回転運動を直進運動に変換する運動方向変換部材4と、運動方向変換部材4と車輪側とを連結する連結部材5と、連結部材5を運動方向変換部材4に対して回転可能に接続する第1接続部材6と、連結部材5を第1支持部材6に対して回転可能に接続する第2接続部材7と、トーションビーム21に支持される第2支持部材7と、車輪40を支持し、第2支持部材7に対して回動可能に支持される回動部材9と、連結部材5を回動部材9に対して回転可能に接続する第3接続部材8と、を備え、第1接続部材6と第2接続部材7を結ぶ線L1と、第2接続部材7と第3接続部材8を結ぶ線L2とが、直交又は略直交するので、運動方向変換部材4、雄ねじ部材3及び駆動部材2に伝わる外乱が低減され、簡単な構造で、効率がよく運動性能を向上すると共に、長寿命のキャンバ角調整機構1を提供することが可能となる。
【0075】
また、伝達部材3及び運動方向変換部材4は、ねじ山が台形の台形ネジを用いた雄ねじと雌ねじからなる送りネジを含むので、セルフロック時のバックラッシュを低減することが可能となる。
【0076】
また、駆動部材2は、バネ上の車体40に設置されるので、バネ下の軽量化が実現でき、乗り心地及び車両の運動性能が向上する。
【符号の説明】
【0077】
1…キャンバ角調整機構、2…駆動部材、3…伝達部材、4…運動方向変換部材、5…連結部材、6…第1接続部材、7…第2接続部材、8…第3接続部材、9…キャンバプレート(回動部材)、10…キャンバプレート支持部(回動部材支持部)、21…トーションビーム(懸架装置)、22…第1支持部材、23…第2支持部材、31……ハブ、40…車輪、41…ホイール、42…タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸架装置を介して車体に懸架される車輪のキャンバ角を変更するキャンバ角調整機構において、
駆動力を発生する駆動部材と、
前記駆動部材の発生する駆動力を伝達する伝達部材と、
前記懸架装置に支持される第1支持部材と、
前記第1支持部材に支持され、前記伝達部材が伝達した回転運動を直進運動に変換する運動方向変換部材と、
前記運動方向変換部材と前記車輪側とを連結する連結部材と、
前記連結部材を前記運動方向変換部材に対して回転可能に接続する第1接続部材と、
前記連結部材を前記第1支持部材に対して回転可能に接続する第2接続部材と、
前記懸架装置に支持される第2支持部材と、
前記車輪を支持し、前記第2支持部材に対して回動可能に支持される回動部材と、
前記連結部材を前記回動部材に対して回転可能に接続する第3接続部材と、
を備え、
前記第1接続部材と前記第2接続部材を結ぶ線と、前記第2接続部材と前記第3接続部材を結ぶ線とが、直交又は略直交する
ことを特徴とするキャンバ角調整機構。
【請求項2】
前記伝達部材及び前記運動方向変換部材は、ねじ山が台形の台形ネジを用いた雄ねじと雌ねじからなる送りネジを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のキャンバ角調整機構。
【請求項3】
前記駆動部材は、バネ上の前記車体に設置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキャンバ角調整機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−207332(P2011−207332A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76705(P2010−76705)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】