説明

キュプレドキシンに由来する輸送因子及びそれを使用する方法

本発明は、カーゴ化合物を癌細胞に送達するための方法および材料を開示する。カーゴ化合物の送達は、キュプレドキシンに由来するタンパク質伝達ドメインを使用することによって達成される。更に本発明は、癌を治療する及び癌を診断するための方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2004年10月7日に出願された米国仮出願第60/616,782号、2005年5月13日に出願された米国仮出願第60/680,500号、および2005年7月19日に出願された米国仮出願第60/700,297号の優先権を主張する出願である。これらの出願の内容の全体は、参照によって本明細書中に完全に援用される。
【0002】
[政府の利益に関する陳述]
本出願の主題は、米国メリーランド州ベセスダの国立衛生研究所(NIH)からの研究助成金(助成金番号ES04050-18)によって助成された。米国政府は、本発明に特定の権利を有している。
【0003】
[背 景]
タンパク質の哺乳類細胞への進入は、タンパク質の小さいセグメントによって支配されていることがあり、これは一般的に「タンパク質伝達ドメイン(protein transduction domain)」またはPTDと称される。このセグメントを外来(foreign)のタンパク質に付着させたシグナルとして使用することによって、係るタンパク質の哺乳類細胞への輸送を促進することができる。例えば、両親媒性のペプチドは、ヒト繊維芽細胞HS68またはマウスリンパ球性白血病L1210細胞における潜在的な抗腫瘍薬としての、DNA切断性の金属ポルフィリンの摂取を促進させるために使用される〔Chaloin, L. et al. Bioconjugate Chem. 12:691-700, (2001)〕。細胞貫通性ペプチドと称されるペプチド〔例えば、ペネトラチン(penetratin)、トランスポータン(transportan)、Tat(アミノ酸47-57または48-60)およびモデル的な両親媒性のペプチドMAP〕は、薬理学的に重要な物質(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、タンパク質およびペプチド)を輸送するための送達ビヒクルとして使用されている〔Hallbrink, M. et al. Biochim. Biophys. Acta 1515:101-109 (2001); Lindgren, M., et al. Trends Pharmacol. Sci. 21:99-103 (2000)〕。
【0004】
係るペプチド、特に、ショウジョウバエ転写制御因子 アンテナペディアのDNA-結合ホメオドメイン、または21残基のペプチド担体Pep-1は、培養において多くのタイプの細胞(例えば、ヒトHS68またはマウスNIH-3T3線維芽細胞)によって、37゜Cまたは4゜Cの何れかでインターナライズされる。温度シフトの効果の欠乏によって、キラルなレセプタータンパク質を必要とする古典的なエンドサイトーシスとは異なる貫通機構の存在が示唆されている〔Morris, M.C. et al. Nature Biotechnol. 19:1173-1176 (2001)〕。最も広く使用されている、薬理学的に活性な化合物を哺乳類細胞に輸送するためのペプチドの1つは、ヒト免疫不全症ウイルス1型(HIV-1)トランス活性化因子タンパク質Tatの11アミノ酸のアルギニンリッチなタンパク質伝達ドメイン(PTD)である〔Schwarze, S.R. et al. Science 285:1569-1572 (1999), Schwarze, S.R. et al. Trends Cell Biol. 10:290-295 (2000)〕。120kDaのβ-ガラクトシダーゼ/Tat融合タンパク質の腹腔内注射によって、前記融合タンパク質のマウス中の実際上全ての組織への経細胞的(transcellular)な伝達が生じ、これには血液脳関門の通過も含まれる。HIV-1 Tatのこの短いペプチドドメインは、大きな分子または粒子(これには、磁性ナノ粒子, ファージベクター, リポソームおよびプラスミドDNAが含まれる)の細胞インターナリゼーションを媒介することが示されている。上記で議論した他の細胞貫通ペプチドとは異なり、完全長Tat又はその11アミノ酸伝達ドメインによるカーゴタンパク質(cargo proteins)のインターナリゼーションは、4゜C で有意に損なわれ〔Liu, Y. et al. Nat. Med. 6:1380-1387 (2000), Suzuki, T. et al. J. Biol. Chem. 277:2437-2443 (2002)〕、また、レセプター(例えば、細胞膜ヘパラン硫酸プロテオグリカンのヘパラン硫酸鎖)との相互作用に必要とされる。
【0005】
現在同定された大抵のPTDsは、ウイルスおよび哺乳類の供給源に由来するものである。PTDsの他の供給源が、様々な実験手順の設計のために並びに動物およびヒトの治療および予防の処置のために所望されるであろう。PTDsの供給源の1つの代替は、細菌細胞である。細菌のタンパク質(例えば、コレラ毒素)は、哺乳類細胞のサイトゾルに進入することが知られているが〔Sofer, A. and Futerman, A.H. J. Biol. Chem. 270:12117-12122 (1995)〕、係るタンパク質の細胞毒性のため、細菌タンパク質又はそれに由来するPTDsを、薬理学的に重要なカーゴを輸送するために使用することは制限されている。
【0006】
[発明の概要]
本発明の一側面は、全長未満の野生型のキュプレドキシンまたはH.8外膜タンパク質と少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するペプチドであり、これによって連結したカーゴ分子が哺乳類癌細胞へと進入することが促進される。幾つかの態様において、前記ペプチドは、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を、全長未満のアズリン, プラストシアニン, ラスティシアニン, シュードアズリン, アウラシアニンまたはアズリン様タンパク質に対して、又は配列番号1, 配列番号2, 配列番号3, 配列番号4, 配列番号29, 配列番号30, 配列番号31, 配列番号32, 配列番号33, 配列番号34, 配列番号36および配列番号43に対して有する。幾つかの態様において、前記ペプチドは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa), Phormidium laminosum, Thiobacillus ferrooxidans, Achromobacter cycloclastes, Pseudomonas syringa, 髄膜炎菌(Neisseria meningitidis), 腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus), 気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica), 百日咳菌(Bordetella pertussis), Chloroflexus aurantiacusおよび淋菌(Neisseria gonorrhoeae)から由来するものである。他の態様において、前記ペプチドは、長さが少なくとも10残基であり且つ50残基以下である。幾つかの態様において、前記ペプチドは、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を、配列番号5, 配列番号6, 配列番号7, 配列番号9, 配列番号37, 配列番号38, 配列番号39, 配列番号40, 配列番号41, 配列番号42, 配列番号43, 配列番号44, 配列番号46, 配列番号47または配列番号47に対して有する配列を含む。他の態様において、前記ペプチドは、配列番号5, 配列番号6, 配列番号7, 配列番号9, 配列番号37, 配列番号38, 配列番号39, 配列番号40, 配列番号41, 配列番号42, 配列番号43, 配列番号44, 配列番号46, 配列番号47または配列番号47を含む、又は、からなる。幾つかの態様において、前記ペプチドは、アミノ酸配列DGXXXXXDXXYXKXXDおよびDGXXXXDXXYXKXXDを含む(該配列において、Dはアスパラギン酸であり、Gはグリシンであり、Yはチロシンであり、Kはリジンであり、Xは任意のアミノ酸である)。最後に、幾つかの態様において、前記ペプチドは、緑膿菌アズリンの50〜77アミノ酸領域に対して有意な構造的な相同性を有する。
【0007】
本発明の別の側面は、カーゴ化合物およびアミノ酸配列を含んでいる複合体である(ここで、前記アミノ酸配列は少なくとも約90%の配列同一性をキュプレドキシン又はその断片に対して有する、又は前記アミノ酸配列又はその断片は前記カーゴ化合物と連結される、そして前記アミノ酸配列は前記カーゴ化合物の哺乳類癌細胞への進入を促進する)。幾つかの態様において、本複合体のアミノ酸配列は、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を、全長未満の野生型のキュプレドキシンまたはH.8外膜タンパク質に対して有する。他の態様において、前記カーゴ化合物は、タンパク質, リポタンパク質, ポリペプチド, ペプチド, ポリサッカライド, 核酸, 色素, 微小粒子, ナノ粒子, 毒素および薬物である。特定の態様において、前記カーゴは、タンパク質またはポリペプチドである。これにアミノ酸配列が連結されて、融合タンパク質が形成される。特定の態様において、前記カーゴ化合物は、毒素(toxin)であり、より具体的には緑膿菌の外毒素Aである。他の態様において、前記カーゴは、検出可能な物質であり、より具体的には蛍光定量法、顕微鏡観察、X線CT、MRIまたは超音波によって検出可能なものである。最後に、本発明は、薬剤的に適切な担体中の複合体をも包含する。
【0008】
本発明の別の側面は、カーゴ化合物を細胞に送達するための方法に関する。一態様において、この方法は、1細胞(a cell)または複数細胞(cells)を上記の複合体と接触させることを備える。他の態様において、前記細胞または複数細胞は、癌に罹患している患者から由来し、前記患者に再導入される。他の態様において、前記細胞は、癌細胞であり、より具体的には骨肉腫細胞, 肺の癌腫細胞, 結腸の癌腫細胞, リンパ腫細胞, 白血病細胞, 軟部組織の肉腫細胞, 乳房の癌腫細胞, 肝臓の癌腫細胞, 膀胱の癌腫細胞または前立腺の癌腫細胞である。他の態様において、前記複合体は、患者に治療上効果的な量で投与される。他の態様において、前記複合体は、静脈内に、局所的に、皮下に、筋肉内に、または腫瘍へと投与される。他の態様において、前記複合体は、別の癌治療と共に共投与(co-administered)される。
【0009】
本発明の別の側面は、癌を診断する方法である。幾つかの態様において、検出可能な物質であるカーゴとの複合体が、癌を有する患者に投与され、前記カーゴの位置が検出される。特定の態様において、前記カーゴ化合物は、X線造影剤であり、X線CTで検出される;前記カーゴ化合物は、磁気共鳴映像法造影剤であり、MRIで検出される;前記カーゴは、超音波造影剤であり、超音波で検出可能である。他の態様において、1細胞または複数細胞は、検出可能な物質との複合体に接触させられて、前記カーゴの位置が検出される。
【0010】
本発明の別の側面は、上記の複合体の何れかを含有するキットである。幾つかの態様において、前記キットは、薬学的に許容されるアジュバントまたは賦形剤をさらに含む。他の態様において、前記キットは、試薬(reagent)を投与するためのビヒクルをさらに含む。
【0011】
[配列の簡単な説明]
配列番号1は、緑膿菌のwt-アズリンのアミノ酸配列である。
【0012】
配列番号2は、Phormidium laminosumのプラストシアニンのアミノ酸配列である。
【0013】
配列番号3は、Thiobacillus ferrooxidansのラスティシアニンのアミノ酸配列である。
【0014】
配列番号4は、Achromobacter cycloclastesのシュードアズリンのアミノ酸配列である。
【0015】
配列番号5は、緑膿菌のwt-アズリンの36〜128アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0016】
配列番号6は、緑膿菌のwt-アズリンの36〜89アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0017】
配列番号7は、緑膿菌のwt-アズリンの36〜77アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0018】
配列番号8は、緑膿菌のwt-アズリンの36〜50アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0019】
配列番号9は、緑膿菌のwt-アズリンの50〜77アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0020】
配列番号10は、緑膿菌のwt-アズリンの50〜66アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0021】
配列番号11は、緑膿菌のwt-アズリンのazu 67〜77アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0022】
配列番号12は、pGST-azu 36-128に対するフォワードプライマーのアミノ酸配列である。
【0023】
配列番号13は、pGST-azu 36-128に対するリバースプライマーのアミノ酸配列である。
【0024】
配列番号14は、pGST-azu 36-50に対するフォワードプライマーのアミノ酸配列である。
【0025】
配列番号15は、pGST-azu 36-50に対するリバースプライマーのアミノ酸配列である。
【0026】
配列番号16は、pGST-azu 36-77に対するフォワードプライマーのアミノ酸配列である。
【0027】
配列番号17は、pGST-azu 36-77に対するリバースプライマーのアミノ酸配列である。
【0028】
配列番号18は、pGST-azu 36-89に対するフォワードプライマーのアミノ酸配列である。
【0029】
配列番号19は、pGST-azu 36-89に対するリバースプライマーのアミノ酸配列である。
【0030】
配列番号20は、pGST-azu 50-77に対するフォワードプライマーのアミノ酸配列である。
【0031】
配列番号21は、pGST-azu 67-77に対するフォワードプライマーのアミノ酸配列である。
【0032】
配列番号22は、pGST-azu 50-77およびpGST-azu 67-77に対するリバースプライマーのアミノ酸配列である。
【0033】
配列番号23は、pGST-azu 50-66に対するフォワードプライマーのアミノ酸配列である。
【0034】
配列番号24は、pGST-azu 50-66に対するリバースプライマーのアミノ酸配列である。
【0035】
配列番号25は、緑色蛍光タンパク質遺伝子に対するフォワードプライマーのアミノ酸配列である。
【0036】
配列番号26は、緑色蛍光タンパク質遺伝子に対するリバースプライマーのアミノ酸配列である。
【0037】
配列番号27は、gst-gfp-azu 50-77に対するフォワードプライマーのアミノ酸配列である。
【0038】
配列番号28は、gst-gfp-azu 50-77に対するリバースプライマーのアミノ酸配列である。
【0039】
配列番号29は、Pseudomonas syringaeのアズリンのアミノ酸配列である。
【0040】
配列番号30は、Neisseria meningitidesのアズリン/H.8外膜タンパク質のアミノ酸配列である。
【0041】
配列番号31は、腸炎ビブリオ菌のアズリンのアミノ酸配列である。
【0042】
配列番号32は、気管支敗血症菌のアズリンのアミノ酸配列である。
【0043】
配列番号33は、Chloroflexus aurantiacusのアウラシアニンAのアミノ酸配列である。
【0044】
配列番号34は、Chloroflexus aurantiacusのアウラシアニンBのアミノ酸配列である。
【0045】
配列番号35は、キュプレドキシン進入ドメイン中の保存された残基を記載している人工的なアミノ酸配列である(該配列において、Dはアスパラギン酸であり、Gはグリシンであり、Yはチロシンであり、Kはリジンであり、Xは任意のアミノ酸である)。
【0046】
配列番号36は、淋菌のLazタンパク質のアミノ酸配列である。
【0047】
配列番号37は、緑膿菌のwt-アズリンの50〜67アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0048】
配列番号38は、Chloroflexus aurantiacusのアウラシアニンBの57〜89アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0049】
配列番号39は、百日咳菌のアズリンの50〜77アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0050】
配列番号40は、髄膜炎菌のLazタンパク質の106〜132アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0051】
配列番号41は、緑膿菌のアズリンの53〜70アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0052】
配列番号42は、緑膿菌のアズリンの53〜64アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0053】
配列番号43は、百日咳菌のアズリンのアミノ酸配列である。
【0054】
配列番号44は、緑膿菌のアズリンの51〜77アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0055】
配列番号45は、Pseudomonas syringaeのアズリンの51〜77アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0056】
配列番号46は、腸炎ビブリオ菌のアズリンの52〜78アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0057】
配列番号47は、気管支敗血症菌のアズリンの51〜77アミノ酸断片のアミノ酸配列である。
【0058】
配列番号48は、キュプレドキシン進入ドメイン中の保存された残基を記載している人工的なアミノ酸配列である(該配列において、Dはアスパラギン酸であり、Gはグリシンであり、Yはチロシンであり、Kはリジンであり、Xは任意のアミノ酸である)。
【0059】
[態様の詳細な説明]
本発明は、カーゴ化合物を細胞に送達するための方法および材料に関する。本発明によるカーゴ化合物の送達は、適切な輸送ポリペプチドの使用によって達成される。本発明の一態様において、前記カーゴ化合物は、前記輸送ポリペプチドに連結される。適切な輸送ペプチドは、キュプレドキシン、または「キュプレドキシン進入ドメイン」を含んでいるキュプレドキシンの断片を含む。「キュプレドキシン進入ドメイン(cupredoxin entry domain)」の用語は、キュプレドキシンが哺乳類癌細胞へと進入するために必要とされるアミノ配列を含むキュプレドキシンの断片を意味する。本発明によって送達されるカーゴ化合物には、タンパク質, リポタンパク質, ポリペプチド, ペプチド, ポリサッカライド, 核酸(アンチセンス核酸を含む), 色素, 蛍光および放射性のタグ, 微小粒子またはナノ粒子, 毒素, 無機および有機の分子, 小分子, および薬物が含まれるが、これらに限定されない。幾つかの態様において、前記薬物および毒素は、腫瘍細胞を殺傷する。
【0060】
本発明の一態様において、キュプレドキシンは、アズリン(例えば、緑膿菌のwt-アズリン)である。「Wt-アズリン」は、緑膿菌の野生型アズリンを意味する。同様に、「wt-アズリン進入ドメイン(wt-azurin entry domain)」の用語は、wt-アズリンが細胞へと進入するために必要とされるアミノ配列を含むwt-アズリンの断片を意味する。本発明の他の態様において、キュプレドキシンは、とりわけプラストシアニン, ラスティシアニン, またはシュードアズリンである。特定の態様において、アズリンは、とりわけ緑膿菌, Pseudomonas syringa, Neisseria meningitides, 淋菌, 腸炎ビブリオ菌または気管支敗血症菌からのものである。
【0061】
一態様において、カーゴ化合物は、細胞(例えば、癌細胞)を殺傷する又は該細胞における細胞周期進行を遅延させるために送達される。係る癌細胞は、とりわけ骨肉腫細胞, 肺の癌腫細胞, 結腸の癌腫細胞, リンパ腫細胞, 白血病細胞, 軟部組織の肉腫細胞または乳房, 肝臓, 膀胱もしくは前立腺の癌腫細胞などであってもよい。例えば、カーゴ化合物は、とりわけ細胞周期を制御しているタンパク質、例えば、p53;サイクリン依存性キナーゼインヒビター、例えば、p16, p21 もしくはp27;自殺タンパク質、例えば、チミジンキナーゼもしくはニトロ還元酵素;サイトカインもしくは他の免疫調節性のタンパク質、例えば、インターロイキン1, インターロイキン2もしくは顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF);または毒素、例えば、緑膿菌の外毒素Aであってもよい。他の態様において、上記クラスの化合物の1つの生物学的に活性な断片が送達される。別の態様において、カーゴ化合物は、標的組織の画像を発生させるために送達される。例えば、標的組織は癌であってもよく、カーゴ化合物はX線コンピュータ断層撮影法 (CT), 磁気共鳴映像法(MRI)および超音波で検出するための画像を発生するために一般的に使用されるものでよい。これらの態様において、カーゴ化合物は、ガンマ線もしくは陽電子放出放射性同位元素(positron emitting radioisotope), 磁気共鳴映像法の造影剤, X線の造影剤, または超音波の造影剤である。
【0062】
キュプレドキシン
「キュプレドキシン(Cupredoxins)」は、電子伝達特性を有している小さい青色の銅含有タンパク質(10-20kDa)であり、細菌の酸化還元鎖または光合成などに関与する。銅イオンは、タンパク質マトリックスに単独で結合する。銅の周囲の2つのヒスチジンおよび1つのシステイナート(cysteinate)のリガンドに対する、特殊な歪んだ三方晶系の平面配置によって、金属部位の非常に特有な電気的特性を生じ、そして強度の青色を生じる。いくつかのキュプレドキシンは、中等度から高度の分解能で結晶学的に特徴づけられている。キュプレドキシンには、アズリン, プラストシアニン, ラスティシアニン, シュードアズリン, アウラシアニンおよびアズリン様タンパク質が含まれる。本明細書中に使用される「キュプレドキシン」の用語は、銅原子なしのタンパク質形態、同様に銅含有タンパク質を含む。
【0063】
アズリン
アズリンは、128アミノ酸残基の銅含有タンパク質であり、植物および特定の細菌における電子伝達に関与するキュプレドキシンファミリーに属する。アズリンには、緑膿菌(配列番号1)(「wt-アズリン」), A. xylosoxidans, およびA. denitrificans〔Murphy, L. M. et al., J. Mol. Biol. 315:859-71 (2002)〕からのものが含まれる。アズリン間の配列相同性が60〜90%の間で変動するにもかかわらず、これらの分子間の構造上の相同性は高い。全てのアズリンは、ギリシャキーモチーフ(Greek key motif)を有する特徴的なβ-サンドイッチを有し、単一の銅原子はタンパク質の同じ領域に常に配置される。加えて、アズリンは、銅部位を取り囲む基本的に中性で疎水性のパッチを所有する(Murphy等)。
【0064】
プラストシアニン
プラストシアニンは、真核生物の植物およびラン藻類において見出されるキュプレドキシンである。彼等は分子あたり1分子の銅を含有し、彼等の酸化型において青色である。彼等は、彼等が電子伝達体として機能する葉緑体中で生じる。ポプラのプラストシアニンの構造が1978に決定されてから、藻類(セネデスムス, アオノリ, コナミドリムシ)および植物(フランスマメ)のプラストシアニンの構造が結晶学又はNMR法によって決定されている(ポプラの構造は1.33Åの解像度で示されている)。配列番号2は、シアノバクテリア(Phormidium laminosum)のプラストシアニンのアミノ酸配列を表す。
【0065】
藻類および維管束植物の間の配列多様性(例えば、コナミドリムシおよびポプラのタンパク質間で62%の配列同一性)が存在するにもかかわらず、3次構造は保存されている(例えば、コナミドリムシおよびポプラのタンパク質間でCαポジションにおいて、0.76Å rmsの偏差)。構造上の特性には、8鎖の逆平行β-バレルの一端での歪んだ四面体の銅結合部位(distorted tetrahedral copper binding site)、明白な陰性のパッチ、および平坦な疎水性表面が含まれる。前記銅部位は、電子伝達機能に至適化されている。また、陰性の及び疎水性のパッチは、生理的な反応パートナーの認識に関与することが提案されている。化学修飾、クロス-リンキング、および部位特異的突然変異誘発実験によって、チトクロムfとの結合相互作用における陰性及び疎水性のパッチの重要性が確認され、プラストシアニンにおける2つの機能上の意味ある電子伝達経路のモデルが確認された。1つの推定上の電子伝達経路は、相対的に短く(約4Å)、疎水性パッチ中の溶媒に暴露された銅リガンド His-87が関与する;他方で、他のものは、より長く(約12〜15Å)、陰性パッチにおいてほぼ保存されている残基Tyr-83が関与する。
【0066】
ラスティシアニン
ラスティシアニンは、硫黄菌属(thiobacillus)から得られた青色銅含有単一鎖ポリペプチドである。Thiobacillus ferrooxidansの極度に安定で高度に酸化されているキュプレドキシンラスティシアニンの酸化型(配列番号3)のX線結晶構造は、多波長異常分散法(multiwavelength anomalous diffraction)で1.9Åの解像度で決定された。ラスティシアニンは、6および7鎖のβシートから構成されるコアβ-サンドイッチフォールド(a core beta-sandwich fold)から構成される。他のキュプレドキシンのように、銅イオンは、特殊な歪んだ四面体に配置された4つの保存された残基(His 85, Cys138, His143, Met148)のクラスターによって配位される(Walter, R.L. et al., J. Mol. Biol. 263:730-51 (1996))。
【0067】
アウラシアニン
アウラシアニンA, アウラシアニンB1、およびアウラシアニンB-2と称される3つの小さい青色銅タンパク質は、好熱性の緑色グライディング光合成細菌(Chloroflexus aurantiacus)から分離された。2つのB型は、互いにほとんど同一の特性を有しているが、A型とは別である。ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、14(A), 18(B-2), および22(B-1)kDaの見かけ上の単量体分子量が示される。
【0068】
アウラシアニンAのアミノ酸配列が決定され、アウラシアニンAが139残基のポリペプチドであることが示された〔Van Dreissche et al, Protein Science 8:947-957 (1999)〕。His58, Cys123, His128, およびMet132は、それらが既知の小銅タンパク質(small copper proteins)プラストシアニンおよびアズリンとして進化上で保存された金属リガンドである場合、予想される様式で配置(spaced)される。また、二次構造予測によって、アウラシアニンが、緑膿菌からのアズリンおよびポプラ葉からのプラストシアニンのものと類似する全β-バレル構造を有することが指摘される。しかしながら、アウラシアニンは、両方の小銅タンパク質配列クラスの特性を有していると思われる。アズリンの共通配列との全体の類似度(overall similarity)は、プラストシアニンの共通配列とのものと大まかに同じである(すなわち、30.5%)。アウラシアニンのN末端配列領域1〜18には、グリシンおよびヒドロキシアミノ酸が著しく豊富に存在する(Id.)。Chloroflexus aurantiacusからのアウラシアニンの鎖Aに関して、例示的なアミノ酸配列 配列番号33を参照されたい(NCBIタンパク質データバンクアクセッションNo.AAM12874)。
【0069】
アウラシアニンB分子は、標準的なキュプレドキシンフォールドを有する。Chloroflexus aurantiacusからのアウラシアニンBの結晶構造が、試験された〔Bond et al., J. Mol. Biol. 306:47-67 (2001).〕。付加的なN末端鎖を例外として、前記分子は、細菌性のキュプレドキシン(アズリン)のものと非常に類似している。他のキュプレドキシンでのように、Cuリガンドの1つは前記ポリペプチドの鎖4に存在し、他の3つは鎖7および8の間の大きいループに沿って存在する。Cu部位の配置は、後者の3つのリガンド間のアミノ酸スペーシングを参照して議論される。アウラシアニンBの結晶学的に特徴づけされたCu-結合ドメインは、おそらく幾つかの他の膜関連電子伝達タンパク質における既知の係留(tethers)と有意な配列同一性を呈するN末端尾部によって細胞質膜の周辺腔側へ係留される。B型のアミノ酸配列は、McManus等に記載される〔J Biol Chem. 267:6531-6540 (1992).〕。Chloroflexus aurantiacusからのアウラシアニンの鎖Aに関して、例示的なアミノ酸配列 配列番号34を参照されたい(NCBIタンパク質データバンクアクセッションNo.1QHQA)。
【0070】
シュードアズリン
シュードアズリンは、青色銅含有単一鎖ポリペプチドのファミリーである。Achromobacter cycloclastesから得られたシュードアズリンのアミノ酸配列は、配列番号4に示される。シュードアズリンのX線構造分析によって、次の事項が示される;その事項とは、これらのタンパク質間の配列相同性が低いにもかかわらず、シュードアズリンはアズリンと類似する構造を有することである。2つの主な差は、シュードアズリンおよびアズリンの全体構造の間に存在する。アズリンと比較して、シュードアズリン中には2つのα-ヘリックスからなるカルボキシル末端の伸展が存在する。中間のペプチド領域(mid-peptide region)中に、アズリンは、短いα-ヘリックスを含んでいるフラップを形成する伸展したループを含有する(シュードアズリンでは短くなっている)。銅原子部位での唯一の大きな差異は、MET側鎖のコンホメーションおよびMet-S銅結合長(シュードアズリンではアズリンよりも有意に短い)である。
【0071】
キュプレドキシンの細胞毒性活性
キュプレドキシンは、彼等の電子伝達(レドックス)特性に関して広範に試験されてきたが、最近まで細胞毒性効果を示すことは知られていなかった。本発明は、発明者によって見出された次の驚くべき発見に基づくものである;その発見とは、キュプレドキシンおよび鉄(ヘム)含有レドックスタンパク質チトクロムc551が、J774マウスマクロファージ腫瘍細胞およびヒト癌細胞においてアポトーシスを誘導するか又は細胞周期進行を阻害することである。キュプレドキシンのレドックス活性は、彼等の細胞毒性活性に関して決定的なものではない。例えば、銅原子を有さないキュプレドキシンは、銅原子を含んでいるものと比べて、非常に低いレドックス活性をしばしば示すが、それでも有意な細胞毒性活性を示す。癌細胞中での彼等の活性と比較して、キュプレドキシンは、腫瘍を有するキュプレドキシン処理マウスの正常な組織において、インビボで僅かに低レベルのアポトーシスを誘発する。
【0072】
キュプレドキシンの細胞毒性活性は、2002年1月15日に出願された同時係属の米国特許出願第10/047,710と2003年11月24日に出願された同時係属の米国特許出願第10/720,603とに記載されている。これらの出願は、本明細書中に参照によって援用される。
【0073】
本発明者は、癌細胞におけるキュプレドキシンの選択的な効果が、キュプレドキシンがこれらの細胞に進入する能力に関連することを今回示す。例5において、本発明者は、キュプレドキシンがJ774細胞に進入することを示している。これらの細胞は、マクロファージ様の特性を有するマウス細網肉腫の腹水形態である。例18および19において、本発明者は、アズリン様タンパク質(NeisseriaからのH.8外膜、Lazとしても知られている)が脳の腫瘍細胞へと特異的に進入できることを示す。比較して、キュプレドキシンが、正常細胞へ進入する率は極端に減少したことが示される。
【0074】
一態様において、本発明は、キュプレドキシン又はキュプレドキシンの断片を含有し、細胞へと送達される「カーゴ化合物(cargo compound)」へと連結されている「複合体(complex)」に関する。カーゴ化合物は、共有結合性又は非共有結合性に連結されて、複合体を形成してもよい。係る複合体を調製する方法は、当業者に周知である。例えば、カーゴ化合物がタンパク質またはポリペプチドである場合、複合体を融合タンパク質として形成することができる。或いは、カーゴ化合物は、キュプレドキシンまたはキュプレドキシン断片へと、直接的に又はリンカー分子を介して(例えば、ジスルフィドまたはエステル結合を介して)共有結合させてもよい。
【0075】
キュプレドキシン進入ドメイン
本発明は、連結されたカーゴを哺乳類癌細胞(非癌性細胞ではなく)へと輸送すること許容するタンパク質導入ドメインを提供する。キュプレドキシンタンパク質が、連結されたカーゴを哺乳類癌細胞へと進入させることを促進するタンパク質導入ドメイン(キュプレドキシン進入ドメイン)を具備することが発見された。幾つかの態様において、全体のキュプレドキシンタンパク質を使用することによって、連結したカーゴを癌細胞へと選択的に輸送することを促進できる。他の態様において、キュプレドキシンの部分を使用して、連結したカーゴを癌細胞へと輸送できる。幾つかの態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、完全長の野生型タンパク質未満のキュプレドキシンの領域からなる。幾つかの態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、キュプレドキシンの約10残基、約15残基、または約20残基以上からなる。幾つかの態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、キュプレドキシンの約50残基、約40残基、または約30残基以下からなる。幾つかの態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、少なくとも約90%アミノ酸配列同一性、少なくとも約95%アミノ酸配列同一性、または少なくとも約99%アミノ酸配列同一性を、キュプレドキシンに対し有する。
【0076】
本明細書中に使用される、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」の用語は、アミノ酸残基のポリマーを意味させるために互換的に使用される。「ポリペプチド」、「ペプチド」、または「タンパク質」を、細胞内で合成させ、他のタンパク質および細胞成分から単離しえる。或いは、「ポリペプチド」、「ペプチド」、または「タンパク質」を、当業者に周知の方法にしたがって人工的に合成し、他のタンパク質から遊離させてもよい。前記用語は、1以上のアミノ酸残基が対応する天然のアミノ酸の人工的な化学的アナログであるアミノ酸ポリマーに適用される。前記用語は、天然のアミノ酸ポリマーにも適用される。「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」の用語は、糖鎖形成、脂質付着(lipid attachment)、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化、およびADP-リボシル化を含む修飾をも包括的に含むが、これらに限定されない。ポリペプチドは、必ずしも全体的に直線状であるとはかぎらない。一例を挙げると、ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分枝してもよく、環状であってもよく(分枝の有無)、これは一般的には天然のプロセシングを含む翻訳後修飾イベントおよび天然では生じないヒトの操作によって生じるイベントの結果である。環状の、分枝状の、および分枝環状(branched circular)のポリペプチドは、非翻訳的な天然のプロセスによって及び完全に合成的な方法によって合成しえる。
【0077】
例には、本発明の使用に適切な緑膿菌wt-アズリンの断片を同定する方法が記載される。係る方法を使用して、他のキュプレドキシンの断片を同定することができる。例1および2は、NおよびC末端の両方で短縮されたwt-アズリンの一連のグルタチオンS-トランスフェラーゼ(「GST」)融合体の構築物を記載する。これらの例は、融合タンパク質産物の精製も記載している。
【0078】
例9は、係る融合体のJ774細胞への37゜Cでのインターナリゼーションを示している。wt-アズリンがインターナライズする間に、GSTは細胞の周囲に残存し、インターナライズしていなかった。azu36-128(配列番号5)およびazu36-89(配列番号6)は、azu36-77(配列番号7)のようにインターナライズした。更なる短縮型(truncations)では次の事項が示される;つまり、azu50-77(配列番号9)はインターナライズするが、azu36-50(配列番号8)のインターナリゼーションは非常に非効率的であることである。更なるazu50-77(配列番号9)からazu50-66(配列番号10)およびazu67-77(配列番号11)への短縮型では非常に僅かなインターナリゼーションが実証されており、このことは次の事項を指摘している;つまり、効率的なインターナリゼーションが、およそポジション66〜67での配列で干渉されないことを要求することである。実用上の観点から、効率的な輸送のためにアミノ酸50〜77の使用をデータは支持している。
【0079】
幾つかの態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、wt-アズリン進入ドメインである。本発明の一態様において、wt-アズリン進入ドメインは、少なくともアミノ酸50〜77のwt-アズリン(配列番号9)を含んでいる。本発明の別の態様において、wt-アズリン進入ドメインは、少なくともアミノ酸36〜77のwt-アズリン(配列番号7)を含んでいる。本発明の別の態様において、wt-アズリン進入ドメインは、少なくともアミノ酸36〜89のwt-アズリン(配列番号6)を含んでいる。本発明の別の態様において、wt-アズリン進入ドメインは、少なくともアミノ酸36〜128のwt-アズリン(配列番号5)を含んでいる。本発明のなお別の態様において、wt-アズリン進入ドメインは、少なくともアミノ酸50〜67のwt-アズリン(配列番号37)を含んでいる。本発明の別の態様において、wt-アズリン進入ドメインは、少なくともアミノ酸53〜70のwt-アズリン(配列番号41)を含んでいる。本発明のなお別の態様において、wt-アズリン進入ドメインは、少なくともアミノ酸53〜64のwt-アズリン(配列番号42)を含んでいる。
【0080】
本発明の別の態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、緑膿菌アズリン以外のキュプレドキシンからの進入ドメインである。異なる態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、ラン藻 Phormidium laminosum(配列番号2)からのプラストシアニン, Thiobacillus ferrooxidans(配列番号3)からのラスティシアニン;Achromobacter cycloclastesからのシュードアズリン(配列番号4), Pseudomonas syringae(配列番号29)からのアズリン, 髄膜炎菌からのアズリン(配列番号30), Neisseria gonnorhoeaeからのアズリン(配列番号36), 腸炎ビブリオ菌からのアズリン(配列番号31), 気管支敗血症菌からのアズリン(配列番号32), 百日咳菌からのアズリン(配列番号43)、またはChloroflexus aurantiacusからのアウラシアニン(配列番号33および34)の断片であってもよい。
【0081】
本発明の別の態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、Chloroflexus aurantiacusのアウラシアニンBの少なくともアミノ酸57〜89を含む(配列番号38)。本発明の別の態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、百日咳菌の少なくともアミノ酸50〜77(配列番号39)を含む。本発明の別の態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、髄膜炎菌の少なくともアミノ酸106〜132(配列番号40)を含む。本発明の別の態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、Pseudomonas syringaeのアズリンの少なくともアミノ酸51〜77(配列番号45)を含む。本発明の別の態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、髄膜炎菌Lazの少なくともアミノ酸89〜115(配列番号40)を含む。本発明の別の態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、腸炎ビブリオ菌のアズリンの少なくともアミノ酸52〜78(配列番号46)を含む。本発明の別の態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、気管支敗血症菌のアズリンの少なくともアミノ酸51〜77(配列番号47)を含む。
【0082】
キュプレドキシン進入ドメインの修飾
本発明の別の態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、化学的に修飾されて又は遺伝的に変更されて、カーゴ化合物を細胞へと輸送する能力を保持しているバリアントを産生する。例えば、例14は、ポジション54、61および70に導入されたプロリン残基を有しているwt-アズリンが、UISO-Mel-2細胞に進入する能力を保持していることを示している。
【0083】
別の態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、保存されたアミノ酸配列DGXXXXXDXXYXKXXD(配列番号35)またはDGXXXXDXXYXKXXD(配列番号48)を具備する(式中のDはアスパラギン酸であり, Gはグリシンであり, Yはチロシンであり, Kはリジンであり, およびXは任意のアミノ酸である)。例17を参照されたい。
【0084】
キュプレドキシン進入ドメインのバリアントは、標準的な技術によって合成されえる。誘導体は、本来の化合物から、直接的に又は修飾もしくは部分的な置換によって形成されたアミノ酸配列である。アナログは、本来の化合物と類似するが同一ではない構造を有し、特定の成分もしくは側鎖に関してそれと異なる構造を有しているアミノ酸配列である。アナログは、合成してもよい又は異なる進化上の起源からのものであってもよい。
【0085】
バリアントは、完全長又は完全長以外であってもよい(誘導体またはアナログが、修飾されたアミノ酸を含有している場合)。キュプレドキシン進入ドメインのバリアントには、次のものが含まれるが、これらに限定されない;そのものとは、アライメントを相同性アルゴリズムで実施して、整列された配列と比較した場合に、同一サイズのアミノ酸配列に対して少なくとも約65%, 70%, 75%, 85%, 90%, 95%, 98%, または99%同一性までキュプレドキシン進入ドメインと実質的に相同性である領域を具備している分子である。
【0086】
キュプレドキシン進入ドメインと候補配列との間の「パーセント(%)アミノ酸配列同一性(percent (%) amino acid sequence identity)」の用語は、2つの配列が整列された場合に、候補配列中のアミノ酸残基と同一であるキュプレドキシン進入ドメイン中のアミノ酸残基のパーセンテージとして規定される。%アミノ酸同一性を決定するために、配列が必要に応じて整列される。ギャップは、最大%配列同一性を達成するために導入される;保存された置換は、配列同一性の一部として考慮されない。パーセント同一性を決定するためのアミノ酸配列アライメント処理は、当業者に周知である。しばしば、公共で利用可能なコンピュータソフトウェア〔例えば、BLAST, BLAST2, ALIGN2またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア〕を使用して、ペプチド配列が整列される。
【0087】
アミノ酸配列が整列される場合に、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bと(所与のアミノ酸配列Bで、又は、所与のアミノ酸配列Bに対して)の%アミノ酸配列同一性〔これは、所与のアミノ酸配列Bと(所与のアミノ酸配列Bで、又は、所与のアミノ酸配列Bに対して)特定の%アミノ酸配列同一性を有する又は具備する所与のアミノ酸配列Aとして、代替的に表現してもよい〕は、以下のように計算することができる:
%アミノ酸配列同一性=X/Y . 100
式中で
Xは、配列アラインメントプログラムの又はアルゴリズムのAおよびBのアライメントによって、同一性マッチ(identical matches)であると評価されたアミノ酸残基の数である。
【0088】
並びに
Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。
【0089】
アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AとBとの%アミノ酸同一性はBとAとの%アミノ酸同一性と等しくない。
【0090】
変化をキュプレドキシン進入ドメインに導入することが可能であり、これによって前記キュプレドキシン進入ドメインのアミノ酸配列に変更が生じ、これによってカーゴ化合物を細胞へと輸送する前記キュプレドキシン進入ドメインの能力が無効(nullify)にされる。「非必須(non-essential)」なアミノ酸残基は、次のような残基である;つまり、前記キュプレドキシン進入ドメインの配列から、カーゴ化合物を細胞へと輸送する能力が無効にされることなく変化させることができる残基である。他方で、「必須(essential)」なアミノ酸残基は、係る活性に必要とされるものである。
【0091】
「保存的(conservative)」な置換を施すことができるアミノ酸は、当該技術分野において周知である。有用な保存的な置換は、表1の「好適な置換」に示される。1つのクラスのアミノ酸が同じクラスの別のアミノ酸で置換される保存的な置換は、該置換がキュプレドキシン進入ドメインの活性を無効にしないかぎり、本発明の範囲内である。キュプレドキシン進入ドメイン活性の変化を生じる係る交換は、係る活性が認められるかぎり本発明の一部であることが意図される。
【表1】

(1)ポリペプチドバックボーンの構造(例えば、βシートまたはαヘリックス コンホメーション)、(2)荷電、(3)疎水性、又は(4)標的部位の側鎖のバルクに影響する「非保存的(Non-conservative)」な置換は、キュプレドキシン進入ドメイン機能を修飾することができる。残基は、表2に記載の共通の側鎖特性に基づいてグループに分けられる。非保存的な置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスへと交換することを伴う。
【0092】
1つのクラスのアミノ酸が異なるクラスの別のアミノ酸で置換される非保存的な置換は、該置換がキュプレドキシン進入ドメインの活性を無効にしないかぎり、本発明の範囲内である。キュプレドキシンドメイン活性の変化を生じる係る交換は、係る活性が認められるかぎり本発明の一部であることが意図される。
【表2】

別の態様において、キュプレドキシン進入ドメインのバリアントは、緑膿菌のアズリン残基50〜77と有意な構造上の類似性を有する。キュプレドキシンおよび他のタンパク質の間の有意な構造上の相同性を決定する試験の例には、Toth等〔Developmental Cell 1:82-92 (2001)〕が含まれる。具体的には、キュプレドキシン進入ドメインおよび緑膿菌アズリン残基50〜77のバリアント間の有意な構造上の相同性は、VASTアルゴリズム〔Gibrat et al., Curr Opin Struct Biol 6:377-385 (1996); Madej et al., Proteins 23:356-3690 (1995)〕を用いて決定される。特定の態様において、キュプレドキシン進入ドメインのバリアントおよび緑膿菌アズリン残基50〜77の構造比較からのVAST p値は、約10-3未満、約10-5未満、または約10-7未満である。他の態様において、キュプレドキシン進入ドメインおよび緑膿菌アズリン残基50〜77のバリアント間の有意な構造上の相同性は、DALIアルゴリズム〔Holm & Sander, J. Mol. Biol. 233:123-138 (1993)〕を用いて決定することができる。特定の態様において、ペアワイズ構造比較に関するDALI Zスコアは、少なくとも約3.5, 少なくとも約7.0, または少なくとも約10.0である。
【0093】
キュプレドキシン進入ドメインへの修飾は、当該技術分野において既知の方法〔例えば、オリゴヌクレオチド媒介性(部位特異的な)突然変異誘発, アラニンスキャンニング, およびPCR突然変異誘発〕を用いて作出することができる。部位特異的突然変異誘発(Carter, Biochem J. 237:1-7 (1986); Zoller and Smith, Methods Enzymol. 154:329-50 (1987)), カセット突然変異誘発(cassette mutagenesis), 制限選択突然変異誘発(Wells et al., Gene 34:315-23 (1985))または他の既知の技術を、クローン化したDNAに使用して、キュプレドキシン進入ドメインのバリアント核酸を産生することができる。加えて、キュプレドキシン進入ドメインと構造上の類似度を有する進入ドメインをコード化しているヌクレオチドを、当該技術分野において周知の方法で合成しえる。さらに、野生型またはバリアントのキュプレドキシン進入ドメインであるタンパク質分子を、当該技術分野において周知の方法で合成しえる。
【0094】
キュプレドキシン進入ドメインおよびカーゴ化合物に連結させたキュプレドキシン進入ドメインの複合体をコード化している核酸
別の側面において、本発明は、カーゴ化合物に連結させたキュプレドキシン進入ドメインを含んでいる融合タンパク質をコード化している核酸分子を提供する(ここで、前記カーゴ化合物は、タンパク質またはペプチドである)。本発明による核酸分子は、当該技術分野において既知の技術の組合せによって調製することができる。一例をあげると、キュプレドキシン進入ドメインに関する核酸配列およびカーゴ化合物は、化学的な合成またはクローニングによって個々に調製することができる。核酸配列を、次にリガーゼで連結して、所望の核酸分子が得られる。
【0095】
キュプレドキシン進入ドメインを用いるカーゴ化合物を送達する方法
[0100] 多くのアルギニンリッチペプチドは、哺乳類細胞膜を通じてトランスロケート(translocate)することが知られており、タンパク質カーゴ化合物を係る細胞の内側に運搬する〔Suzuki, T., et al. J. Biol. Chem. 277:2437-43 (2002)〕。例えば、HIV Tatタンパク質の短いアルギニンリッチな11アミノ酸(アミノ酸47〜57)セグメントによって、カーゴタンパク質を哺乳類細胞へと輸送することが許容される〔Schwarze, SR., et al. Trends Cell Biol. 10:290-95 (2000)〕。アルファーヘリックス含量を増加し、アルギニン残基の配置を至適化する合成の進入ドメインは、タンパク質導入ドメインとして高い可能性を有していることが示されている〔Ho, A., et al. Cancer Res. 61:474-77 (2001)〕。比較すると、wt-アズリンは、単一のアルギニン残基を有する。従って、次の事項が信じられている(しかし、本発明に関しては頼りにならない);その事項とは、その進入のモードがTatタンパク質のものと異なっていることである。
【0096】
本発明は、カーゴ化合物が細胞へと進入することを促進するキュプレドキシン断片の使用を包含する。係る断片は、細胞への進入に必要とされる断片を同定する任意の方法によって決定しえる。1つの係る方法において、キュプレドキシン断片はマーカー物質と連結され、キュプレドキシン断片が細胞に進入するかどうかを決定するための試験が実施される。係る方法を使用して、既に議論したキュプレドキシンの適切な断片を同定しえる。
【0097】
本発明の様々な態様において、カーゴ化合物はキュプレドキシンに付着させられる;これはアズリンおよびアズリン様タンパク質のなかでも、緑膿菌からのアズリン(配列番号1)(「wt-アズリン」);ラン藻(Phormidium laminosum)からのプラストシアニン(配列番号2);Thiobacillus ferrooxidans(配列番号3)からのラスティシアニン;またはAchromobacter cycloclastesからのシュードアズリン(配列番号4), Pseudomonas syringa(配列番号29), 髄膜炎菌(配列番号30), 腸炎ビブリオ菌(配列番号31), 気管支敗血症菌(配列番号32)からのアズリン, Chloroflexus aurantiacus(配列番号33および34)または淋菌(配列番号36)からのアウラシアニンAおよびBなどである。他の態様において、前記カーゴは、キュプレドキシン進入ドメインと連結される。
【0098】
本発明の様々な態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、カーゴ化合物を細胞へと、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで送達する。例えば、送達は、キュプレドキシン進入ドメインおよびカーゴ化合物の複合体を細胞培養物〔例えば、パプ塗抹標本(pap smear)〕に添加することによってインビトロで達成しえる。或いは、送達は、前記複合体を患者から除去したサンプル(例えば、血液、組織、または骨髄)に添加すること、処理したサンプルを前記患者に戻すことによってエクスビボで達成しえる。送達は、前記複合体を患者へと直接的に投与することによっても達成しえる。本発明の方法は、治療上の、予防的な、診断上の、または研究上の目的で使用してもよい。本発明により達成されるカーゴ化合物には、タンパク質, リポタンパク質, ポリペプチド, ペプチド, ポリサッカライド, 核酸(アンチセンス核酸を含む), 色素, 微粒子またはナノ粒子, 毒素, 有機物および無機の分子, 小分子, および薬物が含まれるが、これらに限定されない。
【0099】
一態様において、検出可能な物質、例えば、蛍光物質(例えば、緑色蛍光タンパク質);発光物質;酵素(例えば、β-ガラクトシダーゼ);または放射線標識した又はビオチン化したタンパク質が送達されて、検出可能な表現型を細胞に与える。同様に、検出可能な物質(例えば、蛍光物質)で標識された微粒子またはナノ粒子を、送達することができる。適切なナノ粒子の一例は、2002年5月7日に発行された米国特許第6,383,500号(本明細書中に参照によって援用される)に記載されている。多くのこのような検出可能な物質は、当業者に知られている。
【0100】
幾つかの態様において、カーゴ化合物は、X線コンピュータ断層撮影法, 磁気共鳴映像法, 超音波画像処理または放射性核種シンチグラフィー(radionuclide scintigraphy)に適切な検出可能な物質である。これらの態様において、カーゴ化合物は、患者に診断目的で投与される。造影剤(contrast agent)は、X線CT、MRI、および超音波で得られた画像を増強するために、カーゴ化合物として投与される。腫瘍組織を標的とする放射性核種カーゴ化合物の、キュプレドキシン進入ドメインを介した投与を、放射性核種シンチグラフィーのために使用することができる。幾つかの態様において、キュプレドキシン進入ドメインは、カーゴ化合物が存在する又は非存在の放射性核種を含有してもよい。他の態様において、カーゴ化合物は、ガンマ線もしくはポジトロンを放射している放射性同位元素、磁気共鳴映像法の造影剤、X線造影剤、または超音波造影剤(ultrasound contrast agent)である。
【0101】
カーゴ化合物としての使用に適切な超音波造影剤には、生体適合性ガスのマイクロバブル、液体担体、および界面活性剤ミクロスフェア(surfactant microsphere)が含まれ、更に任意で標的成分およびマイクロバブルの間の連結成分(Ln)を含むが、これらに限定されない。本発明において、「液体担体(liquid carrier)」の用語は水溶液(aqueous solution)を意味し、「界面活性剤(surfactant)」の用語は溶液の界面の張力を減少させる任意の両親媒性物質を意味する。界面活性剤ミクロスフェアを形成させるための適切な界面活性剤のリストは、EP0727225A2(本明細書中に参照によって援用される)に開示される。界面活性剤ミクロスフェアの用語には、ナノスフェア(nanospheres)、リポソーム、ベシクルなどが含まれる。生体適合性ガスは、空気またはC3-C5パーフルオロアルカンなどのフルオロカーボンであってもよい(これはエコー発生性に差異を与えて、超音波画像にコントラストを与える)。前記ガスは、キュプレドキシン進入ドメインを付着(任意で、結合基を介して)させたミクロスフェア中に封入(encapsulated)または含有される。付着は、共有結合性、イオン性、またはファンデルワールス力によるものであってもよい。係る造影剤の具体例には、複数の腫瘍血管新生レセプター結合ペプチド、ポリペプチド、またはペプチドミメティックス(peptidomimetics)を伴う、脂質封入パーフルオロカーボン(lipid encapsulated perfluorocarbons)が含まれる。
【0102】
カーゴ化合物としての使用に適切なX線造影剤には、1以上のX線吸収剤または原子番号20以上の「重」原子が含まれ、更に任意でキュプレドキシン進入ドメインおよびX線吸収原子の間の連結成分(Ln)を含むが、これらに限定されない。X線造影剤に頻繁に使用される重原子は、ヨウ素である。最近、金属キレート剤(例えば、米国特許第5,417,959号)および複数の金属イオンから構成されるポリキレート剤(例えば、米国特許第5,679,810号)が開示された。最近、多核性クラスター複合体(multinuclear cluster complexes)が、X線造影剤として開示された(例えば、米国特許第5,804,161, PCT WO91/14460, およびPCT WO92/17215)。
【0103】
カーゴ化合物としての使用に適切なMRI造影剤には、1以上の常磁性の金属イオンが含まれ、更にキュプレドキシン進入ドメインおよび常磁性の金属の間の任意の連結成分(Ln)が含まれるが、これらに限定されない。常磁性の金属イオンは、金属複合体または金属酸化物粒子(metal oxide particles)の形態で存在する。米国特許第5,412,148および5,760,191は、MRI造影剤に使用する常磁性の金属イオンのためのキレーターの例を記載している。米国特許第5,801,228号, 米国特許第5,567,411号, および米国特許第5,281,704号は、MRI造影剤に使用する2以上の常磁性の金属イオンを錯化(complexing)するために有用なポリキレーター(polychelants)の例を記載している。米国特許第5,520,904は、MRI造影剤に使用する常磁性の金属イオンから構成される微粒子組成物(particulate compositions)を記載している。
【0104】
別の態様において、カーゴ化合物は、細胞を殺傷する又は細胞(例えば、癌細胞)における細胞周期進行を遅延させるために送達される。係る癌細胞は、例えば、骨肉腫細胞、肺の癌腫細胞、結腸の癌腫細胞、リンパ腫細胞、白血病細胞、軟部組織の肉腫細胞または乳房、肝臓、膀胱、または前立腺の癌腫細胞であってもよい。例えば、カーゴ化合物は、細胞周期制御タンパク質、例えば、p53;サイクリン依存性キナーゼインヒビター、例えば、p16、p21、またはp27;自殺タンパク質、例えば、チミジンキナーゼ、またはニトロ還元酵素;サイトカインまたは他の免疫調節性のタンパク質、例えば、インターロイキン1、インターロイキン2、または顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF);または毒素、例えば、緑膿菌外毒素Aであってもよい。他の態様において、上記クラスの化合物の1つの生物学的に活性な断片が送達される。
【0105】
なお別の態様において、カーゴ化合物は、上記クラスの化合物のうちの1つをコード化している核酸である。なお別の態様において、カーゴ化合物は、癌を治療するために使用される薬物である。係る薬物には、5-フルオロウラシル;インターフェロンα;メトトレキセート;タモキシフェン;およびビンクリスティン(Vincrinstine)などが含まれる。上記の例は、説明の目的でのみ記載される;多くの他の係る化合物が、当業者に知られている。
【0106】
癌を治療するために適切なカーゴ化合物には、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、エチレンイミン、およびトリアゼン(triazenes); 抗代謝剤、例えば、葉酸アンタゴニスト、プリンアナログ、およびピリミジンアナログ;抗生物質、例えば、アントラサイクリン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ダクチノマイシン、およびプリカマイシン;酵素、例えば、L−アスパラギナーゼ;ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;5.α.-レダクターゼ阻害剤;17.β.-水酸化ステロイドデヒドロゲナーゼ3型の阻害剤;ホルモン剤、例えば、糖質コルチコイド、エストロゲン/抗エストロゲン、アンドロゲン/抗アンドロゲン、プロゲスチン、および黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト、酢酸オクトレオチド(octreotide acetate);微小管破壊剤、例えば、エクテイナスチジン(ecteinascidins)又はそのアナログおよび誘導体;微小管安定化剤、例えば、タキサン、例えば、パクリタキセル(タキソール TM)、ドセタキセル(タキソテール TM)、及びそのアナログ、およびエポチロン(epothilones)、例えば、エポチロンA-F及びそのアナログ;植物由来産物、例えば、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、タキサン;およびトポイソメラーゼ阻害剤;プレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;および種々の剤、例えば、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ミトタン、ヘキサメチルメラミン、プラチナ配位複合体(platinum coordination complexes)、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;および抗癌および細胞毒性剤として使用される他の剤、例えば、生物学的応答調節剤(biological response modifiers)、成長因子;免疫調整剤(immune modulators)およびモノクローナル抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
これらのクラスの抗癌および細胞毒性剤の代表的な例には、塩酸メクロレタミン, シクロホスファミド, クロランブシル, メルファラン, イホスファミド, ブスルファン, カルムスチン, ロムスチン, セムスチン, ストレプトゾシン, チオテパ, ダカルバジン, メトトレキセート, チオグアニン, メルカプトプリン, フルダラビン(fludarabine), ペンタスタチン(pentastatin), クラドリビン(cladribin), シタラビン, フルオロウラシル, 塩酸ドキソルビシン, ダウノルビシン, イダルビシン, 硫酸ブレオマイシン, マイトマイシンC, アクチノマイシンD, サフラシン(safracins), サフラマイシン(saframycins), キノカルシン(quinocarcins), ディスコデルモライド(discodermolides), ビンクリスチン, ビンブラスチン, 酒石酸ビノレルビン(vinorelbine tartrate), エトポシド, リン酸エトポシド, テニポシド, パクリタキセル, タモキシフェン, エストラムスチン, リン酸エストラムスチンナトリウム, フルタミド, ブセレリン, ロイプロリド, プテリジン, ダイネース(diyneses), レバミゾール, アフラコン(aflacon), インターフェロン, インターロイキン, アルデスロイキン, フィルグラスチム, サルグラモスチム, リツキシマブ, BCG, トレチノイン, 塩酸イリノテカン, ベタメゾン(betamethosone), 塩酸ゲムシタビン, アルトレタミン, およびトポテカ(topoteca)並びにその任意のアナログまたは誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
これらのクラスの好適なメンバーには、パクリタキセル, シスプラチン, カルボプラチン, ドキソルビシン, カルミノマイシン, ダウノルビシン, アミノプテリン, メトトレキセート, メトプテリン, マイトマイシン C, エクテナサイジン743, またはポフィロマイシン(pofiromycin), 5-フルオロウラシル, 6-メルカプトプリン, ゲムシタビン, シトシンアラビノシド, ポドフィロトキシンまたはポドフィロトキシン誘導体、例えば、エトポシド, リン酸エトポシドまたはテニポシド, メルファラン, ビンブラスチン, ビンクリスチン, リューロシジン(leurosidine), ビンデシンおよびリューロシン(leurosine)が含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
カーゴ化合物として有用な抗癌及び他の細胞毒性剤には、以下のものが含まれる:次の文献に記載のエポチロン(epothilone)誘導体、独国特許第4138042.8; WO97/19086, WO98/22461, WO98/25929, WO98/38192, WO99/01124, WO99/02224, WO99/02514, WO99/03848, WO99/07692, WO99/27890, WO99/28324, WO99/43653, WO99/54330, WO99/54318, WO99/54319, WO99/65913, WO99/67252, WO99/67253およびWO00/00485; WO99/24416(米国特許第6,040,321号をも参照されたい)に記載のサイクリン依存性キナーゼインヒビター;およびWO97/30992およびWO98/54966に記載のプレニル-タンパク質トランスフェラーゼインヒビター;および米国特許第6,011,029号に包括的かつ具体的に記載されている薬剤〔米国特許を任意のARモジュレーター, ERモジュレーターなどのNHRモジュレーター(本発明のものを含むが、これらに限定されない)を、LHRHモジュレーターと又は外科的な性腺摘除と共に、特に癌治療において実施することができる化合物〕などである。
【0110】
本発明の化合物と共にカーゴ化合物として用いた場合、上記の他の治療剤を使用してもよい;この際の量はPhysicians' Desk Reference(PDR)で指摘された量または当業者によって決定された量などである。
【0111】
キュプレドキシン進入ドメインを含んでいる薬学的組成物
カーゴ化合物と連結されたキュプレドキシン進入ドメインの複合体を含有している薬学的組成物は、従来の混合、溶解、顆粒化、ドラジェー作出(dragee-making)、乳化、封入(encapsulating)、エントラッピング(entrapping)、または凍結乾燥処理などの任意の従来の様式にしたがって製造することができる。前記複合体は、当該技術分野において周知の薬学的に認容される担体と容易に組み合わせることができる。係る担体によって、錠剤, ピル, ドラジェー, カプセル剤, 液体, ゲル, シロップ, スラリー, 懸濁液などとして製剤化する調製が可能となる。適切な賦形剤には、充填剤およびセルロース調製物なども含まれてもよい。他の賦形剤には、香味剤(flavoring agents)、発色剤、粘着防止剤(detackifiers)、増粘剤(thickeners)、および他の認容される添加物、アジュバント、または結合剤などが含まれてもよい。
【0112】
係る組成物を、細胞タイプの検出もしくは画像処理に又は細胞死に関連するコンディションの治療に又はその予防などに使用することができる。前記組成物を、細胞死に対する耐性に関連するコンディションを予防または治療するために十分な量で投与することができる。本明細書中に使用される「細胞死に対する耐性に関連するコンディション(a condition related to resistance to cell death)」の用語は、妥当な熟達した医者または臨床家によって決定された同類型の健常細胞と比較した場合、少なくとも細胞寿命が延長する傾向によって特徴付けられる疾患(disease), 状態(state), または不調(ailment)を意味する。典型的には、宿主の生物体は、哺乳類、例えば、ヒトまたは動物である。
【0113】
キュプレドキシン進入ドメインを含有している組成物の投与
キュプレドキシン進入ドメインを含有している組成物は、口、頬、吸入、舌下、直腸、膣、尿道、鼻、局所、経皮(percutaneous)、即ち、経皮(transdermal)または非経口〔静脈内、筋肉内、皮下および冠内(intracoronary)への投与を含む〕などの任意の適切な経路によって投与することができる。前記組成物及びその薬学的製剤は、その意図する目的を達成するために効果的な任意の量で投与することができる。細胞死への耐性に関連するコンディションを治療するために投与される場合、前記組成物は治療上効果的な量で投与される。「治療上効果的な量(therapeutically effective amount)」は、治療される対象に存在している症状(symptoms)の発症を予防する又は軽減(alleviate)するために効果的な量である。治療上効果的な量の決定は、当業者の能力の範囲内である。
【0114】
様々な態様において、前記組成物は、担体および賦形剤(緩衝剤, 炭水化物, マンニトール, タンパク質, ポリペプチドまたはアミノ酸、例えば、 グリシン, 抗酸化剤, 静菌剤, キレート剤, 懸濁剤, 増粘剤および/または保存剤を含むが、これらに限定されない), 水, 油, 生理食塩水, 水性のデキストロースおよびグリセロール溶液, 生理的なコンディションに近づけるために必要とされる他の薬学的に許容される補助的な物質(例えば、緩衝作用剤、張性調整剤、湿潤剤など)を含む。当業者に既知の適切な任意の担体を本発明の組成物を投与するために使用できるが、担体のタイプは投与のモード(mode)に依存して変化するだろうことが認識されている。化合物を、周知の技術を用いてリポソーム内に被包(encapsulated)させてもよい。生分解性ミクロスフェアを、本発明の組成物のための担体として用いてもよい。適切な生分解性ミクロスフェアは、米国特許第4,897,268, 5,075,109, 5,928,647, 5,811,128, 5,820,883, 5,853,763, 5,814,344および5,942,252号などに示される。本明細書中に使用される「化合物(Compounds)」には、本発明のペプチド、アミノ酸配列、カーゴ化合物、および複合体が含まれる。
【0115】
本発明の組成物の血流中の半減期を、当業者に周知の幾つかの方法によって延長させる又は至適化することができ、これには環状化ペプチド(Monk et al., BioDrugs 19(4):261-78, (2005); DeFreest et al., J. Pept. Res. 63(5):409-19 (2004)), D,L-ペプチド(ジアステレオマー), (Futaki et al., J. Biol. Chem. Feb 23;276(8):5836-40 (2001); Papo et al., Cancer Res. 64(16):5779-86 (2004); Miller et al, Biochem. Pharmacol. 36(1):169-76, (1987));例外的(unusual)なアミノ酸を含有しているペプチド(Lee et al., J. Pept. Res. 63(2):69-84 (2004)), およびN-およびC末端の修飾(Labrie et al., Clin. Invest. Med. 13(5):275-8, (1990))が含まれるが、これらに限定されない。特に注目されるものは、D-置換またはL-アミノ酸置換を介した、d-異性化(置換)およびペプチド安定性の修飾である。
【0116】
本発明の組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌してもよい又は濾過滅菌してもよい。生じる水溶液は、使用のためにパックされるか、又は無菌条件下で濾過して凍結乾燥され、凍結乾燥された調製物は投与の前に滅菌水溶液と混合されてもよい。
【0117】
本発明の組成物は、注射(例えば、皮内, 皮下, 筋肉内, 腹腔内など)による、吸入による、局所的投与による、坐剤による、経皮性パッチによる又は口による様式を含む様々な様式で投与しえる。
【0118】
投与が注射によるものの場合、組成物は水溶液中に製剤化され、好ましくは生理学的に適合する緩衝液(例えば、ハンクス液、リンゲル溶液、または生理食塩緩衝液(physiological saline buffer)中に製剤化しえる。前記溶液は、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの製剤化の薬剤を含有してもよい。或いは、前記組成物は、使用前に、滅菌したパイロジェンが存在しない水などの適切なビヒクルで構成するための粉末形態であってもよい。
【0119】
投与が吸入によるものである場合、前記組成物は、適切な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、二酸化炭素または他の適切なガス)を使用することによって、加圧パックからのエアロゾルスプレーまたはネブライザーの形態で送達しえる。加圧されたエアロゾルの場合、投与量単位(dosage unit)は、一定量を送達するためのバルブを提供することによって決定されてもよい。吸入器(inhaler)または注入器(insufflator)に使用するためのゼラチンなどのカプセルまたはカートリッジを、タンパク質の粉末混合物および適切な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)を含有するよう製剤化しえる。
【0120】
投与が局所的投与によるものである場合、前記組成物を、当該技術分野において周知の溶液剤、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁剤などとして製剤化してもよい。幾つかの態様において、投与は経皮パッチ(transdermal patch)の手段による。投与が坐剤(例えば、直腸または膣)である場合、組成物は、従来の坐剤基剤を含有している組成物に製剤化してもよい。
【0121】
投与が経口である場合、前記組成物は、当該技術において公知の薬学的に許容された担体と組み合わせて容易に製剤化することができる。固形担体(例えば、マンニトール, ラクトース, マグネシウムステアラート, など)を用いてもよい;係る担体によって、ケモタキシン(chemotaxin)を、治療される対象による経口摂取のための、錠剤、丸剤、ドラジェー剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして製剤化することが可能となる。経口の固形製剤(例えば、粉剤、カプセル、および錠剤)に関して、適切な賦形剤には、充填剤(例えば、糖、セルロース調製物、顆粒化剤、および結合剤)が含まれる。
【0122】
当該技術において周知の他の便利な担体には、多価担体、例えば、細菌性のカプセル性のポリサッカライド、デキストラン、または遺伝的に操作されたベクターも含まれる。加えて、前記組成物を含む徐放性製剤によって、長時間にわたる組成物の放出が許容される;持続性放出製剤無しでは、組成物は、対象の系から排出される、および/または治療効果を惹起する又は増強する前にプロテアーゼおよび単純な加水分解などによって分解される。
【0123】
正確な製剤化、投与の経路、及び投与量は、患者のコンディションに応じて主治医によって決定される。投与量およびインターバルを個々に調整して、治療効果を維持するために十分である複合体の血漿レベルを提供することができる。一般に、所望の組成物は、意図する投与経路および標準的な薬務(pharmaceutical practice)に関して選択される薬学的な担体との混合物として投与される。
【0124】
適切な投与量は、使用するキュプレドキシン進入ドメインを含有している化合物、宿主、投与のモード、および治療される又は診断されるコンディションの性質および重症度などに応じて変化するだろう。しかしながら、本発明の方法の一態様において、ヒトにおいて満足な治療結果は、約0.001〜約20mg/kg体重のキュプレドキシン進入ドメインを含有している化合物の1日投与量で得られることが指摘される。一態様において、ヒトの治療に関して指示される1日投与量は、約0.7mg〜約1400mgのキュプレドキシン進入ドメインを含んでいる化合物の範囲であってもよく、一日用量(daily doses)、週用量(weekly doses)、月用量(monthly doses)、および/または連続的な用量などで便利に投与される。一日用量は、1〜12回/日の別々の投与量であってもよい。或いは、用量は、隔日、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、3日毎、週毎、及び31日まで同様に日を増加させて投与することができる。投薬は、錠剤、パッチ、i.v.投与などを含む任意の適用可能な用量形態を用いる連続的、断続的、または単一用量の投薬であってもよい。より具体的には、前記組成物は、治療上効果的な量で投与される。特定の態様において、治療上効果的な量は、約0.01〜20mg/kg体重である。特定の態様において、用量レベルは、約10mg/kg/日, 約15mg/kg/日, 約20mg/kg/日, 約25mg/kg/日, 約30mg/kg/日, 約35mg/kg/日, 約40mg/kg/日, 約45mg/kg/日または約50mg/kg/日である。
【0125】
キュプレドキシン進入ドメインを含有している化合物を患者へと導入する方法は、幾つかの態様において、癌を治療することが知られている他の薬物との共投与である。係る方法は、当該技術分野において公知である。特定の態様において、キュプレドキシン進入ドメインを含有している化合物は、癌を治療するための他の薬物を含有している又は該薬物と共に投薬されるカクテル又は共投薬(co-dosing)の一部である。係る薬物は、本明細書中にリストされているものであり、具体的には5-フルオロウラシル;インターフェロンα;メトトレキセート;タモキシフェン;およびビンクリスチンである。上記の例は説明の目的でのみ記載され、多くの他の係る化合物は当業者に知られている。
【0126】
癌を治療するために適切な他の薬物には、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、エチレンイミン、およびトリアゼン(triazenes); 抗代謝剤、例えば、葉酸アンタゴニスト、プリンアナログ、およびピリミジンアナログ;抗生物質、例えば、アントラサイクリン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ダクチノマイシン、およびプリカマイシン;酵素、例えば、L−アスパラギナーゼ;ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;5.α.-レダクターゼ阻害剤;17.β.-水酸化ステロイドデヒドロゲナーゼ3型の阻害剤;ホルモン剤、例えば、糖質コルチコイド、エストロゲン/抗エストロゲン、アンドロゲン/抗アンドロゲン、プロゲスチン、および黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト、酢酸オクトレオチド(octreotide acetate);微小管破壊剤、例えば、エクテイナスチジン(ecteinascidins)又はそのアナログおよび誘導体;微小管安定化剤、例えば、タキサン、例えば、パクリタキセル(タキソール TM)、ドセタキセル(タキソテール TM)、及びそのアナログ、およびエポチロン(epothilones)、例えば、エポチロンA-F及びそのアナログ;植物由来産物、例えば、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、タキサン;およびトポイソメラーゼ阻害剤;プレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;および種々の剤、例えば、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ミトタン、ヘキサメチルメラミン、プラチナ配位複合体(platinum coordination complexes)、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;および抗癌および細胞毒性剤として使用される他の剤、例えば、生物学的応答調節剤(biological response modifiers)、成長因子;免疫調整剤(immune modulators)およびモノクローナル抗体が含まれるが、これらに限定されない。本発明の化合物は、放射線療法および手術と共に使用されてもよい。
【0127】
これらのクラスの抗癌および細胞毒性剤の代表的な例には、塩酸メクロレタミン, シクロホスファミド, クロランブシル, メルファラン, イホスファミド, ブスルファン, カルムスチン, ロムスチン, セムスチン, ストレプトゾシン, チオテパ, ダカルバジン, メトトレキセート, チオグアニン, メルカプトプリン, フルダラビン(fludarabine), ペンタスタチン(pentastatin), クラドリビン(cladribin), シタラビン, フルオロウラシル, 塩酸ドキソルビシン, ダウノルビシン, イダルビシン, 硫酸ブレオマイシン, マイトマイシンC, アクチノマイシンD, サフラシン(safracins), サフラマイシン(saframycins), キノカルシン(quinocarcins), ディスコデルモライド(discodermolides), ビンクリスチン, ビンブラスチン, 酒石酸ビノレルビン(vinorelbine tartrate), エトポシド, リン酸エトポシド, テニポシド, パクリタキセル, タモキシフェン, エストラムスチン, リン酸エストラムスチンナトリウム, フルタミド, ブセレリン, ロイプロリド, プテリジン, ダイネース(diyneses), レバミゾール, アフラコン(aflacon), インターフェロン, インターロイキン, アルデスロイキン, フィルグラスチム, サルグラモスチム, リツキシマブ, BCG, トレチノイン, 塩酸イリノテカン, ベタメゾン(betamethosone), 塩酸ゲムシタビン, アルトレタミン, およびトポテカ(topoteca)並びにその任意のアナログまたは誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0128】
これらのクラスの好適なメンバーには、パクリタキセル, シスプラチン, カルボプラチン, ドキソルビシン, カルミノマイシン, ダウノルビシン, アミノプテリン, メトトレキセート, メトプテリン, マイトマイシン C, エクテナサイジン743, またはポフィロマイシン(pofiromycin), 5-フルオロウラシル, 6-メルカプトプリン, ゲムシタビン, シトシンアラビノシド, ポドフィロトキシンまたはポドフィロトキシン誘導体、例えば、エトポシド, リン酸エトポシドまたはテニポシド, メルファラン, ビンブラスチン, ビンクリスチン, リューロシジン(leurosidine), ビンデシンおよびリューロシン(leurosine)が含まれるが、これらに限定されない。
【0129】
本発明の組成物と共投与するために有用な抗癌及び他の細胞毒性剤には、以下のものが含まれる:次の文献に記載のエポチロン(epothilone)誘導体、独国特許第4138042.8; WO97/19086, WO98/22461, WO98/25929, WO98/38192, WO99/01124, WO99/02224, WO99/02514, WO99/03848, WO99/07692, WO99/27890, WO99/28324, WO99/43653, WO99/54330, WO99/54318, WO99/54319, WO99/65913, WO99/67252, WO99/67253およびWO00/00485; WO99/24416(米国特許第6,040,321号をも参照されたい)に記載のサイクリン依存性キナーゼインヒビター;およびWO97/30992およびWO98/54966に記載のプレニル-タンパク質トランスフェラーゼインヒビター;および米国特許第6,011,029号に包括的かつ具体的に記載されている薬剤〔米国特許を任意のARモジュレーター, ERモジュレーターなどのNHRモジュレーター(本発明のものを含むが、これらに限定されない)を、LHRHモジュレーターと又は外科的な技術と共に、特に癌治療において実施することができる化合物〕などである。
【0130】
本発明に基づいて使用される薬学的組成物は、前記組成物又はその混合物の分泌を阻害する又は刺激するための組成物(活性因子)を、治療上使用することができる調製物へとプロセシングすることを促進する賦形剤および補助剤を具備している1以上の生理学的に認容される担体を用いる従来の様式で製剤化することができる。
【0131】
キュプレドキシン進入ドメインまたは何れかの進入ドメインおよびカーゴ化合物を組合せた融合タンパク質をコード化している核酸分子を、ベクターへと挿入し、遺伝子治療ベクターとして使用することができる。遺伝子治療ベクターを、例えば、静脈注射、局所投与〔Nabel等 米国特許第5,328,470号 1994.USA〕によって又はステレオタクティック注射(stereotactic injection)〔Chen et al., Proc Natl Acad Sci USA, vol. 91, pp 3054-57 (1994)〕によって対象へと送達することができる。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物(pharmaceutical preparation)は、認容される希釈剤を具備してもよい又は遺伝子送達ビヒクルが包埋された遅延放出性マトリックスを具備してもよい。或いは、完全な遺伝子送達ベクターを組換え細胞(例えば、レトロウイルスベクター)から無傷(intact)の状態で産生することができる場合、薬学的調製物は遺伝子送達システムを産生する1以上の細胞を具備してもよい。
【0132】
一側面において、前記複合体がインサイチューで産生されるようなDNAとして前記組成物が送達される。一態様において、Ulmer等〔Science 259:1745-49(1993)〕などに記載され、Cohen〔Science 259 1691-92(1993)〕で議論されたように、前記DNAは「裸(naked)」である。裸のDNAの取り込みは、細胞に効率的に輸送される担体(例えば、生分解性ビーズ)に前記DNAをコーティングすることによって増加しえる。係る方法において、前記DNAは、当業者に既知の任意の様々な送達システムに存在させてもよく、これには核酸発現系、細菌性の及びウイルス性の発現系が含まれる。DNAを係る発現系に導入するための技術は、当業者に公知である(例えば、WO90/11092、WO93/24640、WO93/17706、および米国特許第5,736,524号を参照されたい)。
【0133】
遺伝物質を生物体から生物体へとシャトルさせるために使用されるベクターは、2つの一般的なクラスに分けることができる:クローニングベクターは、適切な宿主細胞中での増幅に非必須の領域(この中に外来DNAを挿入することができる)を有している複製するプラスミドまたはファージである;外来DNAは、ベクターの構成要素であるかのように複製し、増殖する。発現ベクター(例えば、プラスミド、酵母、または動物ウイルスゲノム)を使用して、外来DNA(例えば、前記組成物のDNA)を転写する及び翻訳するために、外来性の遺伝物質を宿主の細胞または組織へと導入する。発現ベクターにおいて、導入されたDNAは、宿主細胞にシグナルを与えて挿入されたDNAを転写させるプロモーターなどの因子に動作可能に連結されている。幾つかのプロモーターは、特別に有用である(例えば、特定の因子に応答して、遺伝子転写をコントロールする誘導性プロモーター)。組成物ポリヌクレオチドを誘導性プロモーターへと動作可能に連結することによって、wt-アズリン進入ドメイン組成物ポリペプチドまたは断片の発現をコントロールすることができる。伝統的な誘導性プロモーターの例には、α-インターフェロン、熱ショック、重金属イオン、およびステロイド、例えば、糖質コルチコイド〔Kaufman, Methods Enzymol. 185:487-511 (1990)〕およびテトラサイクリンに反応性のものが含まれる。他の望ましい誘導性プロモーターには、構築物が導入されている細胞に内在性(endogenous)ではないものが含まれる。しかしながら、誘導剤が外因的(exogenously)に供給される場合、それらのプロモーターはそれらの細胞中で反応性である。一般的には、有用な発現ベクターは、プラスミドである。しかしながら、発現ベクターの他の形態、例えば、ウイルス性のベクター(例えば、複製欠陥性レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ関連ウイルス)も企図される。
【0134】
ベクターの選択は、使用される生物体(organism)または細胞およびベクターの望まれる運命(fate)によって決定される。一般的には、ベクターは、シグナル配列、複製の起点、マーカー遺伝子、エンハンサー因子、プロモーター、および転写終結配列を具備する。
【0135】
キュプレドキシン進入ドメイン カーゴ化合物複合体を具備しているキット
別の側面において、本発明は、1以上の以下のパッケージまたは容器を具備しているキットを提供する:(1)カーゴ化合物と連結させたキュプレドキシン進入ドメインの複合体を含んでいる試薬;(2)薬学的に許容されるアジュバントまたは賦形剤を含有している試薬;(3)シリンジなどの、投与のためのビヒクル;(4)投与に関する説明書。構成要素(1)〜(4)の2以上が同じ容器中にある態様も、企図される。
【0136】
キットが供給される場合、前記組成物の異なる構成要素を別々の容器にパッケージし、使用前に直ちに混合してもよい。構成要素のこのようなパッケージングによって、活性成分の機能を失うことなく、長期間の保存が別々に許容される。
【0137】
キットに含まれる試薬を、異なる要素の寿命が長くなり、容器の材料によって吸収させられる又は変化させられることがない任意の種類の容器に供給することができる。例えば、封止されたガラスアンプルは、凍結乾燥されたポリペプチドまたはポリヌクレオチドを、又は中性で非反応性のガス(例えば、窒素)でパッケージされている緩衝剤を含有してもよい。アンプルは、任意の適切な材料からなるものでよく、例えば、ガラス、有機物ポリマー、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレンなど、セラミック、金属、または類似する試薬を保持するために典型的に用いられる他の材料である。適切な容器の他の例には、アンプルなどの類似する物質から製造されえる単純なボトルおよびアルミニウムまたは合金などのホイル裏打ちされた内装を備えるエンベロープが含まれる。他の容器には、検査チュウブ、バイアル、フラスコ、ボトル、シリンジなどが含まれる。容器は、無菌のアクセスポートを有してもよく、例えば、皮下注射針で突き刺すことが可能なストッパーを有しているボトルである。他の容器は、除去する際に構成要素が混合されることを許容する容易に除去可能な膜によって分離された2つの区画を有してもよい。除去可能な膜は、ガラス、プラスチック、ゴムなどであってもよい。
【0138】
キットには、説明用物品(instructional materials)が供給されていてもよい。説明書は、紙または他の物質に印刷されてもよく及び/又はフロッピー(登録商標)ディスク, CD-ROM, DVD-ROM, Zipディスク, ビデオテープ, 録音テープ, フラッシュメモリー装置などの電子的に読み込み可能な媒体として提供されてもよい。詳細な説明書は、キットに物理的に付属していなくてもよい;代わりに、使用者がキットの製造者またはディストリビューターによって特定されたインターネットウェブサイトに接続してもよい又は電子メールとして供給されてもよい。
【0139】
本発明の更に完全なる理解は、以下の特定の例を参照することによって得ることができる。例は、説明の目的でのみ記載され、本発明の範囲を限定するものではない。形態における変化および均等物での置換は、状況(circumstances)が手段(expedient)を示唆(suggest)する又は与える(render)ものとして企図される。特定の用語が本明細書中に用いられるが、係る用語は、説明の意味が企図され、限定することを目的としていない。本明細書中に記載した本発明の修飾およびバリエーションは、本発明の精神および範囲から逸脱せずになされる。従って、係る限定は、単に付属の態様によって指摘されるものとしてなされるべきである。
【0140】
[例]
例1 - プラスミドの構築
融合体グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)-短縮型wt-アズリン(azu)誘導体を発現しているプラスミッドを、プルーフリーディングDNAポリメラーゼを用いるポリメラーゼ連鎖反応によって構築した。図6は、様々な短縮型のwt-アズリン構築物の模式図を示す。pGST-azu 36-128に関して、増幅されたPCR断片を、市販のGST発現ベクターpGEXSX(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ 08855)のBamHlおよびEcoRl部位に導入した。前記断片を、鋳型としてpUC19-azuおよびプライマー, 5’-CGGGATCC CCG GCA ACC TGC CGA AGA ACG TCA TGG GC-3’(配列番号12)および5’-CGGAATTC GCA TCA CTT CAG GGT CAG GG-3’(配列番号13)で増幅した(配列中の付加的に導入したBamHlおよびEcoRl部位を、それぞれ下線で示した)。azu遺伝子のカルボキシル末端短縮を、QuickChange部位特異的変異誘発キット(Stratagene, La Jolla, CA 92037)を用いて停止コドンを導入することによって累積的に行なった。
【0141】
pGST-azu 36-50, pGST-azu 36-77およびpGST-azu 36-89に関して、停止コドンを、それぞれSer51, Ser78, およびGly90に導入した。pGST-azu 36-128を保持しているプラスミドを、鋳型DNAとして使用した。部位特異的変異誘発に関する3つのセットのオリゴヌクレオチドを、以下に示す。pGST-azu 36-50に関して: 5’-GGC CAC AAC TGG GTA CTG TGA ACC GCC GCC GAC ATG CAG-3’(配列番号14),および5’-CTG CAT GTC GGC GGC GGT TCA CAG TAC CCA GTT GTG GCC-3’(配列番号15)。pGST-azu 36-77に関して: 5’-CCT GAA GCC CGA CGA CTG ACG TGT CAT CGC CCA CAC C-3’(配列番号16)および5’-GGT GTG GGC GAT GAC ACG TCA GTC GTC GGG CTT CAG G-3’(配列番号17)。pGST-azu 36-89に関して: 5’-CCA AGC TGA TCG GCT CGT GAG AGAAGG ACT CGG TGA CC-3’(配列番号18),および5’-GGT CAC CGA GTC CTT CTC TCA CGA GCC GAT CAG CTT GG-3(配列番号19)。プラスミドpGST-azu 50-77およびpGST-azu 67-77を、pGST-azu 36-77を鋳型DNAとして用いるPCRによって産生した。
【0142】
増幅したPCR断片(azu 50-77およびazu 67-77)を、フォワードプライマー5’-CGGGATCC TGA GCA CCG CCG CCG ACA TGC AGG G-3’(配列番号20)および5’-CGGGATCC CCG GCC TGG ACA AGG ATT ACC TGA AGC CCG-3(配列番号21)を用いて取得した(配列中の付加的に導入したBamHI部位は、下線で示される)。リバースプライマー5’-CGGAATTC GCA TCA CTT CAG GGT CAG GG-3’(配列番号22)を、双方のケースで使用した。
【0143】
gst-azu 50-77を保持しているプラスミドを、オリゴヌクレオチド 5’-GAC GGC ATG GCT TCC TGA CTG GAC AAG GAT TAC C -3’(配列番号23),および5’-GGT AAT CCT TGT CCA GTC AGG AAG CCA TGC CGTC- 3’(配列番号24)を用いて、Gly67に停止コドンを導入することによってpGST-azu 50-66を産生するために使用した。緑色蛍光タンパク質をコード化している緑色蛍光タンパク質遺伝子(gfp)も、PCRで増幅した。使用したフォワードおよびリバースプライマーは、各オリゴヌクレオチドの5’端にBamHlおよびEcoRI部位を含んでいる5’-CGGGATCC CCA TGG TGA GCA AGGGCG-3’(配列番号25)および5’-CGGAATTC CTT GTA CAG CTC GTC CAT GCC G-3’(配列番号26)であった。結果として生じるPCR断片を、pGST-GFPを作出するためにpGEXSXベクターへと連結した。gst-gfp-azu 50-77を保持しているプラスミドDNAを調製するために、azu 50-77遺伝子を、鋳型としてpGST-azu 50-77とプライマー5’-CCGCTCGAG CCT GAG CAC CGC CGC CATGCA GGG-3’(配列番号27)および5’-TTTTCCTTTTGCGGCCGC TCA GTC GTC GGG CTT CAG GTA ATC C-3’(配列番号28)とでPCRで増幅した(配列中の導入したXhoIおよびNotI部位を、それぞれ下線で示す)。精製したazu 50-77断片を、XholおよびNotlにユニークな制限酵素部位でpGST-GFPに導入した。
【0144】
例2 - タンパク質の精製
Wt-アズリンおよびM44KM64E突然変異体アズリンを、文献〔Yamada, T. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 101, pp. 4770-75 (2004), および同時係属の米国特許出願第10/720,603(この出願の内容は、参照によって援用される)〕に記載のとおり、調製し、精製した。要約すると、wt-アズリン遺伝子を、文献〔Kukimoto et al., FEBS Lett, vol. 394, pp 87-90 (1996)〕に記載の方法にしたがってPCRで増幅した。PCRを、緑膿菌株PAO1からのゲノムDNAを鋳型DNAとして用いて行なった。
【0145】
545bpの増幅したDNA断片(HindlllおよびPstlで消化した)を、pUC19の対応している部位に挿入し、アズリン遺伝子をlacプロモーターの下流に配置して、発現プラスミドpUC19-azuAを得た。大腸菌JM109を、アズリン遺伝子を発現させるための宿主株として使用した。組換え型の大腸菌株を、50μg ml-1アンピシリン, 0.1mM IPTG;および0.5mM CuSO4を含有している2YT培地中で、16h、37°Cで培養して、アズリンを産生させた。
【0146】
M44KM64E突然変異体アズリンの調製に関して、アズリン遺伝子の部位特異的突然変異誘発を、QuickChange部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて行なった。突然変異を、DNAシークエンシングで確認した。
【0147】
プラスミドDNA(Acidithiobadilus ferrooxidansのキュプレドキシンラスティシアニンをコード化しているrus遺伝子を保持しているpET9a)を、ササキカズヒコ博士(Central Research Institute of Electric Power Industry, Chiba, Japan)から取得した。
【0148】
ラスティシアニンを、ササキの方法〔Sasaki, K., et al. Biosci. Biotechnol. Biochem., vol. 67, pp. 1039-47 (2003)〕を若干修正した方法を用いて、rus遺伝子を保持している大腸菌BL21(DE3)から単離した。簡単に説明すると、酢酸緩衝剤(pH4.0)およびCM-セファロース(Sigma Chemicals, St. Louis, MO 63178)を、β-アラニン緩衝剤(pH4.0)およびTSK-ゲルCM-650カラム(Tosoh Bioscience, LLC, Montgomeryville, PA 18936)の代わりに使用した。2つの他の精製されたキュプレドキシン(Phormidium laminosumからのプラストシアニンおよびAchromobacter cycloclastesからのシュードアズリン)は、それぞれDr. Beatrix G.(Schlarb-Ridley, University of Cambridge, UK)およびDr.Christopher Dennison(University of Newcastle Upon Tyne, UK)から取得した。
【0149】
全ての組換え型のGST-融合誘導体を、以下のとおり精製した:大腸菌BL21を宿主株として使用した。Lブロス中で0.4mMのIPTGで誘導後の初期の対数増殖期に、GST-融合タンパク質を、細胞抽出物からグルタチオンセファロース4Bアフィニティークロマトグラフィーおよびセファデックス75ゲル-濾過カラムとPBS(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ 08855)を用いて精製した。精製タンパク質(wtアズリンおよびGST-誘導体または他のキュプレドキシン)を、ALEXA FLUOR(登録商標)(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR 97402)で標識し、製造者の説明書にしたがって単離した。非結合性の遊離している蛍光化学薬品を、ゲル濾過カラムで除去した。
【0150】
例3 - 細胞培養
J774およびUISO-Mel-2細胞(Frederick Cancer Research and Development Center, Frederick, Maryland U.S.A.から利用可能)を、文献〔Yamada, T. et al. Infect. Immun. vol. 70, pp. 7054-62 (2002); Goto, M., et al. Mol. Microbiol. vol. 47, pp. 549-59 (2003);およびYamada, T., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA vol. 99, pp. 14098-103 (2002)、これらの文献の内容は、参照によって援用される〕に記載のとおり培養した。ヒトの正常な線維芽細胞〔University of Illinois at Chicago (UIC), Chicagoの外科部の保存培養コレクション〕を、2mM L-グルタミン, 0.1mM MEM必須アミノ酸を含有しているEagleの塩と10%の熱不活化ウシ胎児血清、100ユニット/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンとを添加されたMEM中で培養した。MCF-7およびMOF-10F細胞を、文献〔Punj et al. Oncogene 23:2367-78 (2004)〕に記載のとおり培養した。
【0151】
例4 - J774, UISO-Mel-2および線維芽細胞の共培養および共焦点顕微鏡観察
J774, UISO-Mel-2, および線維芽細胞を、個々のカバーガラス上で培養した。一晩インキュベーションした後、前記細胞を新鮮な培地で洗浄した。全ての3つの細胞株を、200μg/mlのwt-アズリン結合型ALEXA FLUOR(登録商標)568を含有している培養皿に配置した。前記細胞を、0.5または3.5h、37゜Cで5%C02の存在下でインキュベートした。
【0152】
顕微鏡サンプルの調製に関して、細胞を、一晩37゜Cでカバーガラス上で培養した。培養した細胞を、タンパク質処理前に、37゜Cまたは4゜Cに2h配置した。予め温めた37゜Cの新鮮な培地または氷冷の4゜Cの新鮮な培地を、赤色蛍光〔ALEXA FLUOR(登録商標)568で標識した〕キュプレドキシン又はGST-融合誘導体と混合し、細胞とインキュベートした。前記細胞を、PBSで洗浄し、メタノールで-20゜C、5min固定した。PBSで2回洗浄し、核を染色するために1.5μg/mlの4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を含有しているマウンティングメディア(VECTASHILD, Vector, Burlingame, CA)を添加した後、画像を共焦点顕微鏡で取得した。
【0153】
例5 - キュプレドキシンのJ774細胞への進入
Wt-アズリン、その変異体バリアント、M44KM64E、プラストシアニン、シュードアズリン、およびラスティシアニンを、J774細胞と例4でのとおりインキュベートし、細胞を共焦点顕微鏡で検査した。これらの実験において、キュプレドキシンを、赤色の蛍光を発するALEXA FLUOR(登録商標)568と結合し、J774細胞と200μg/mlの濃度で1hr、37゜Cでインキュベートした。そして、別の実験において、野生型のアズリンおよびラスティシアニンを、J774細胞と約6〜7μMの濃度で1hr、37゜Cでインキュベートした。核を、DAPIで青色に染色した。タンパク質なしのコントロールを、維持した。全例において、キュプレドキシンが、J774細胞のサイトゾルに進入することが認められた。類似する実験において、アウラシアニンAおよびBは、MCF7癌細胞に優先的に進入し、非癌性のコントロール細胞には進入しない。
【0154】
例6 - Wt-アズリンおよびラスティシアニンの様々な細胞タイプへの進入
Wt-アズリンは、MCF-7細胞と対比して、MCF-10F細胞に対し減弱した細胞毒性活性を呈する〔Punj et al. Oncogene 23:2367-2378 (2004)〕。J774, 腹膜マクロファージ, 肥満細胞, ヒト乳癌MCF-7およびヒト正常上皮のMCF-10F細胞〔University of Illinois at Chicago (UIC), Chicagoの外科部門〕を、例5のとおり処理し、検査し、そして、試験して、wt-アズリンが係る細胞に進入するかどうかを決定した。
【0155】
Wt-アズリンは、45mmのインキュベーションの間にJ774細胞にインターナライズした。対照的に、それは腹腔マクロファージまたは肥満細胞に非常に非効率的にインターナライズした。6hrのインキュベーション後であっても、係る細胞は、僅か限定的な進入しか示さなかった。同様に、wt-アズリンは乳癌MCF-7細胞に効率的に進入するが、正常な哺乳類MCF-10F細胞には非常に減少した進入率を示した。
【0156】
ALEXA FLUOR(登録商標)結合型アズリンは、UISOMel-2およびMCF-7癌細胞に効率的に進入したが、正常な哺乳類MCF10A1細胞には進入しなかった。しかしながら、ALEXA FLUOR(登録商標)結合型ラスティシアニンは、UISO-Mel-2およびMCF-7癌細胞のサイトゾルに進入するのみならず、正常なMCF10A1細胞にも進入した。ラスティシアニンがサイトゾルにおいて均質に分布する癌細胞とは異なり、MCF10A1細胞では多くのラスティシアニンは核を取囲む核膜腔(perinuclear space)に隔離された。
【0157】
例7 - Wtアズリン媒介性の細胞毒性および成長阻害
様々な細胞中でのwt-アズリンの進入の特異性を更に評価するために、我々は、Alexa fluor-結合型wt-アズリンの、J774、UISO-Mel-2および正常な線維芽細胞への37゜Cで30minおよび3.5hrでのインキュベーションの間での進入を決定した。Wt-アズリンが、J774およびUISO-Mel-2に30mmで急速に進入することが認められた;非常に少量のwt-アズリンが、この期間に線維芽細胞のサイトゾルで認められた。3.5hrのインキュベーション後に、僅かに少量のwt-アズリンが線維芽細胞において認められた。
【0158】
3(4,5ジメチルチアゾール-2-イル-2,5テトラゾリウム臭化物)(MTT)アッセイを、wt-アズリンの細胞毒性の測定に関して、文献〔Yamada, T., et al. Infect. Immun. 70:7054-62 (2002), Goto, M., et al. Mol. Microbiol 47:549-59 (2003),および2003年11月24日に出願された同時係属の米国特許第10/720,603、これらの文献の内容は参照によって援用される〕に記載のとおり行なった。図1(b)は、顕著なwt-アズリン媒介性の細胞毒性が、24hrインキュベーションの間でJ774およびUISO-Mel-2細胞でのみ観察されたことを示している。
【0159】
M44KM64E突然変異体アズリンは、非常に僅かなアポトーシス誘導活性をJ774細胞において示し、1mg/mlの濃度でG1からS期への細胞周期進行を有意に阻害(約95%)した。細胞周期進行を、フローサイトメトリーで文献〔Hiraoka, Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 101:6427-32 (2004) およびYamada, T. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:4770-75 (2004)、これらの文献の内容は参照によって援用される〕に記載のとおり分析した。図1(a)は、線維芽細胞が500μg/mlまたは1mg/mlのM44KM64E突然変異体アズリンで処理される場合に、細胞周期進行の阻害の程度は約20%であったことを示している。
【0160】
例8 - Wt-アズリンの線維芽細胞およびMCF-10F細胞へのマイクロインジェクション
Wt-アズリンを、文献〔Punj, V., et al., Oncogene 23:2367-78 (2004)〕に記載の方法を用いて、線維芽細胞およびMCF-10F細胞へとマイクロインジェクションした。細胞を、核DNAの凝縮および断片化へと誘導するアポトーシス誘導に関して検査した。有意な核DNA(DAPIで青色に標識された)の凝縮および断片化が、wt-アズリンでマイクロインジェクションした単一細胞で5hrインキュベーション後に観察されたが、アズリンで30min間インキュベーションされたものでは認められなかった。
【0161】
例9 - Wt-アズリン融合誘導体の37゜Cでのインターナリゼーション
NおよびC末端の双方で切断されたwt-アズリンの一連のGST融合体を、例1に記載のとおり調製し、精製した〔図2(a)および2(b)〕。ALEXA FLUOR(登録商標)568結合型wt-アズリン、GSTおよびGST-azu融合誘導体を用いて、J774細胞における37゜Cで1hrのインキュベーションでのインターナリゼーションを例5に記載の方法で検査した。核を、DAPIで青色に染色した。
【0162】
wt-アズリンがインターナライズした間に、GSTは細胞の周囲に残存し、インターナライズしていなかった。GST-azu 36-128およびGST-azu 36-89は、GST-azu 36-77のようにインターナライズした。しかしながら、更に短縮によって、次の事項が実証された;その事項とは、GST-azu 50-77はインターナライズするが、GST-azu 36-50は高度に非効率的であり、表面に凝集塊(clumps)を形成しているようにみえたことである。
【0163】
例10 - アズリン融合誘導体の4゜Cでのインターナリゼーション
wt-アズリンおよびGST-azu融合誘導体のインターナリゼーションが、4゜CでインキュベーションされたJ774細胞で検査された。4゜Cで、J774細胞の内側での1hrのインキュベーションの間のインターナリゼーションは、重度に損傷された。類似する損傷は、GST-azu 36-128およびGST-azu 36-89においても認められた。短いGST-azu 36-77, GST-azu 50-77, GST-azu 50-66およびGST-azu 67-77は、4゜Cでインターナリゼーションの重篤な損傷を実証した。
【0164】
例11 - GST-GFP-azu 50-77融合タンパク質の、J774およびメラノーマUISO-MeI-2細胞中でのエネルギー依存的なインターナリゼーション
GSTをGFPと融合して、GST-GFP融合誘導体を作出した。さらに、azu 50-77を、GST-GFP(Mr 53kDa)融合タンパク質と融合した(図3(a))。精製したGST、GST-GFP、およびGST-GFP-azu 50-77融合誘導体の移動度を、SDS-PAGEで検査した〔図3(b)〕。検出を、クーマシーブルー染色および抗-アズリン抗体を用いたウエスタンブロッティングで行なった〔図3(c)〕。
【0165】
様々な濃度のGST-GFPで処理されたJ774細胞のフローサイトメトリーでの決定によって、このタンパク質がJ774細胞に結合することが示された。GST-GFP-azu 50-77融合タンパク質の濃度を増加させて処理したJ774細胞のフローサイトメトリーでの分離によって、GST-GFP単独よりも有意に減少した蛍光が実証された(図4)。哺乳類細胞におけるGFPのインターナリゼーションが、蛍光の損失に至ることが知られていることが注意される。この蛍光の減少は、J774細胞が200μg/mlのGST-GFP-azu 50-77融合タンパク質で処理され、37゜Cで増加時間でインキュベートした際にも明瞭である。
【0166】
GST-GFPおよびGST-GFP-azu 50-77の結合およびインターナリゼーションプロフィールにおいて何らかの差異が存在するかどうかを決定するために、J774およびUISO-Mel-2細胞の両方を、GST-GFPおよびGST-GFP-azu 50-77と37゜Cおよび4゜Cでインキュベートした。共焦点顕微鏡を用いて、緑色蛍光の位置を測定した。J774細胞において、GST-GFP融合タンパク質は、表面に結合し、37゜Cおよび4゜Cの両方でインターナライズしなかった。対照的に、GST-GFP-azu 50-77は、37゜Cでインターナライズすることが認められたが、4゜Cでは認められなかった。UISO-Mel-2細胞において、GST-GFP融合タンパク質は、37゜Cおよび4゜Cの両方で表面に保持された。対照的に、J774細胞と類似して、GST-GFP-azu 50-77融合タンパク質は、37゜Cでインターナライズすることが認められたが、4゜Cでは認められなかった。
【0167】
例12 - 細胞膜浸透およびエンドサイトーシス機構による、Wt-アズリンの哺乳類細胞への進入
wt-アズリン進入がレセプター媒介性エンドサイトーシスに単独で依存する場合、それをプロトノホアカルボニルシアン化 m-クロロフニルヒドラゾン(CCCP;protonophore carbonyl cyanide m-chlorophrnylhydrazone)、エネルギー産生のミトコンドリアの脱共役因子(uncoupler)、または前記レセプターをブロックする、非標識のアズリンもしくは他のキュプレドキシンとのプレインキュベーションによってブロックすることができる。J774およびUISO-MeI-2細胞をキュプレドキシンと10倍過剰濃度で2hr、4゜Cでインキュベートし、細胞を徹底的に洗浄してキュプレドキシンを除去し、ALEXA FLUOR(登録商標)568-結合アズリンと1hr、37゜Cでインキュベートした。キュプレドキシンで処理されなかった細胞におけるものと、同量のインターナライズしたアズリンが存在した。細胞の微小繊維ネットワークを破壊するレセプター媒介性エンドサイトーシスの既知の阻害剤であるサイトカラシンD(Sigma-Aldrich, St. Louis, Mo 63195から市販されている)およびゴルジ装置を破壊し、古典的なベシクル媒介性の分泌を阻害することが知られているブレフェルジン(Sigma-Aldrich, St. Louis, Mo 63195から市販されている)の効果も、試験された。CCCPを20pM濃度で処理することによって、0.25〜0.5pMのサイトカラシンDでなされたように、UISO-MeI-2細胞におけるアズリンの摂取が有意に減少された。他方で、ブレフェルジンA(Brefeldin A)は、有意な効果を有していなかった。
【0168】
例13 - GST-PEDIII-azu 50-77融合誘導体の、UISO-Mel-2細胞への進入
緑膿菌の外毒素AドメインIII(PEDIII)のGST-融合体を、文献〔Hwang, J. et al., Cell 48:129-36 (1987); Reiter, Y. and Pastan, I., Trends Biotechnol. 16:513-20 (1998)〕に記載のとおり、構築した。このGST-PEDIII融合誘導体は、外毒素Aのアミノ酸381〜613を含有していた。PEDIIIは、ADP-リボシルトランスフェラーゼ活性を保持していることが知られており、真核細胞における細胞タンパク質合成を真核生物の伸長因子2を阻害することによって阻害する。
【0169】
GST-GFP-azu 50-77に関して記載されたとおりPCRを用いて、azu 50-77配列をGST-PEDIII融合タンパク質のカルボキシル末端に導入した(図5(a))。これら2つの融合タンパク質 (GSTPEDIIIおよびGST-PEDIII-azu 50-77)を、グルタチオンセファロース4Bカラムクロマトグラフィーで、52および54kDaのタンパク質として精製した(図5(b))。UISO-Mel-2および正常な線維芽細胞(FBT)細胞を、次に24h、37゜Cで様々な濃度のこれらのタンパク質とインキュベートし、細胞死の程度を例7に記載のとおりMTTアッセイで測定した。
【0170】
GST-PEDIIIは僅かに低い細胞毒性を実証しているが、GST-PEDIII-azu 50-77融合タンパク質は高い細胞毒性を有している。というのも、UISO-Mel-2細胞に効率的な進入するからである(図5(c))。対照的に、融合タンパク質は、線維芽細胞に対する低いレベルの細胞毒性を実証した。
【0171】
例14 - wt-アズリンにおけるα-ヘリックスの不安定化は、そのUISO-Mel-2細胞へのインターナリゼーションに実質的な影響を有さない
α-ヘリックスがアズリン進入において役割を担っているかどうかを検査するために、3つのヘリックス不安定化プロリン残基をwt-アズリンのポジション54、61、および70に導入し(図6)、完全長A54PT61PK70P変異体アズリンのUISO-Mel-2細胞への進入を検査した。また、これらのポジションにおける単一及び二重の変異を、構築し、進入に関して試験した。A54PT61PK70P突然変異体アズリンを、QuickChange部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて、アズリン遺伝子に部位特異的突然変異誘発を行うことによって調製した。
【0172】
前記突然変異体を、200μg/mlでUISO-Mel-2細胞と1hr、37°Cでインキュベートし、その後に蛍光を共焦点顕微鏡で測定した。全例において、ALEXA FLUOR(登録商標)568-結合型変異体アズリンは、UISO-Mel-2細胞に進入した。同様に、GST-GFP-azu 50-77 融合タンパク質(同様に、その3重のA54PT61PK70P azu変異体バリアント)がUISO-Mel-2細胞への進入に関して検査された場合に、有意な差異は観察されなかった。
【0173】
例15 - GST-PEDIII-ラスティシアニン融合誘導体のUISO-Mel-2細胞への進入
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の外毒素AドメインIII(PEDIII)のGST-融合体を、例13のように構築した。PCRをGST-GFP-azu 50-77に関して記載のように用いて、完全長のラスティシアニン配列を、GST-PEDIII融合タンパク質のカルボキシル末端に導入した。前記融合タンパク質を、グルタチオンセファロース4Bカラムクロマトグラフィーで精製した。UISO-Mel-2およびFBT細胞を24h、37゜Cで様々な濃度の前記融合タンパク質とインキュベーションし、細胞死の程度を例7に記載のとおりMTTアッセイで測定した。
【0174】
GST-PEDIII-ラスティシアニン融合タンパク質は、UISO-Mel-2細胞に対して高い細胞毒性を呈した(図7)。対照的に、融合タンパク質は、FBT細胞に対して僅かに低いレベルの細胞毒性を示した。
【0175】
例16 - アズリンとGST-Azu 55-77とのJ774細胞への進入に関する競合。
【0176】
競合実験を、非標識アズリンと37゜Cで、7μMのALEXA FLUOR(登録商標)結合型GST-azu 50-77の存在下で行なった。J774細胞を、ALEXA FLUOR(登録商標)結合型アズリンの非存在下で、Alexa fluor(登録商標)結合型GST-azu 50-77(7μM)およびAlexa fluor結合型GST-azu 50-77(7μM)と、7、14および56μMの非標識アズリンの存在下で、GST-azu 50-77の進入を決定する前に1h、37゜Cでインキュベーションした。結果は次の事項を明瞭に実証していた;その事項とは、標識した7μMのGST-azu 50-77単独と比較して、非標識のアズリン(7、14、および56μM)の量を増加させて存在させることによって、標識された7μMのGST-azu 50-77と段々と競合することである。対照的に、類似する濃度(6、12、および48μM)の非標識ラスティシアニンを標識GST-azu 50-77の存在下で使用した場合に、GST-azu 50-77の進入に対して非常に低い効果が認められた。
【0177】
例17 - アズリンタンパク質伝達ドメイン(PTD)と他のキュプレドキシンとの配列および構造の比較
azu 50-77領域におけるアズリンおよびラスティシアニンの間の配列同一性は20%未満であり、この事項は幾つかの他のキュプレドキシンに関しても当てはまる〔De Rienzo et al., Protein Science 9:1439-1454, 2000; Murphy et al., J. Mol. Biol. 315:859-871, 2002〕。VASTアルゴリズム(Gibrat et al., Curr. Opin. Struct. Biol. 6:377-385, 1996)を用いた構造分析を、アズリンおよび幾つかのメンバーのキュプレドキシンファミリーの間で行なったところ、有意な同一性がazu 50-77領域およびキュプレドキシン アウラシアニンB〔緑色の好熱性の光合成細菌 C.aurantiacusのキュプレドキシン(Bond et al., J. Mol. Biol. 306:47-67, 2001)〕のazu 50-77間に認められた。他のメンバーのキュプレドキシンファミリー(アズリンの他の領域との構造上の類似性が実証されている)は、アズリンPTD(アミノ酸50-77)と有意な同一性を欠いている〔図8(a)〕。実際には、構造がタンパク質データバンクに提出されている他のタンパク質と比較された際に、azu PTDと他のタンパク質との間に非常に低い構造上の類似性が認められた。
【0178】
緑膿菌PTD領域における残基と病原体からの他の細菌性アズリンの既知の配列との、CLUSTAL Xアラインメントプログラムを用いたアミノ酸配列のマルチプルアライメント(Higgins and Sharp, id. 1988)。植物病原性のP.syringaeのアズリンがP.aeruginosaアズリンPTDと高い同一性を示したが、髄膜炎菌からのアズリン様タンパク質〔Gotschlich and Seiff, FEMS Microbiol. Lett. 43:253-255 (1987); Kawula et al., Mol. Microbiol. 1:179-185 (1987); Cannon, Clin. Microbiol. Rev. 2:S1-S4 (1989)〕も、Vibrio parahaemolyticusおよび気管支敗血症菌からのアズリンの様に、P.aeruginosaアズリンのPTDドメインと有意な同一性を示した〔図8(b)〕。モチーフ配列 D-G-X-X-X-X-X-D-X-X-Y-X-K-X-X-D(配列番号35)が、全てのこれらのアズリン中で保存されていることが見つけられた。
【0179】
例18 - N.meningitidis Laz(H8-アズリン)は、脳腫瘍の細胞株LH229の細胞死を誘導する
髄膜炎菌(Nm;Neisseria meningitidis)は、血流に播種されることによって、血液脳関門を横切り(おそらく、脳の上皮細胞を通じて経細胞的な経路を介して)、髄膜に進入し、脳脊髄膜炎を生じる。緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および髄膜炎菌の双方からのアズリンは、類似する構造を有し、高いアミノ酸配列の相同性(>50%)を有している。加えて、髄膜炎菌のアズリンは長いポリペプチドLaz(配列番号30)の一部であり、これは自身のN末端にH.8と称される表面ペプチドを保持し、これは髄膜炎菌の外膜に存在する〔Cannon, J.G., Clin. Microbiol. Rev. vol. 2, pp. 51-54 (1989)〕。表面に暴露されたH8抗原エピトープは、脂質化(lipidation)のためのシグナルをも保持する。完全な髄膜炎菌のH8外膜タンパク質は、髄膜炎菌細胞の外側表面に残存する。
【0180】
淋菌Lazタンパク質は、髄膜炎菌Lazタンパク質と非常に類似している。淋菌laz遺伝子を、大腸菌にクローン化した。次に、大腸菌中の前記laz遺伝子を過剰発現させて、Laz遺伝子タンパク質を産生させた(図13)。精製された緑膿菌アズリンおよび精製された淋菌Lazタンパク質が脳腫瘍細胞株LH229に細胞死を誘導する能力を、MTTアッセイで測定した〔Yamada, T., et al., Cell Cycle vol. 3, pp. 1182-1187 (2004)〕。
【0181】
緑膿菌アズリン(大腸菌で発現された場合)はペリプラズムに存在するが、Lazタンパク質(大腸菌で発現された場合)は大腸菌の外膜に認められた。加えて、アズリンが非常に低い細胞毒性を脳腫瘍に24時間内で有していたが、Lazは高い細胞毒性を示した(これによって、脳腫瘍細胞の90%の細胞死が24時間で許容される)(表3)。アズリンは、48時間で細胞毒性の増加を示した(表4)。本実験によって、緑膿菌アズリンおよび淋菌H8-アズリン(Laz, 配列番号36)が、インビトロおよびインビボで脳腫瘍を診断する及び/又は治療するために有用であることが指摘された。
【0182】
Lazが脳腫瘍の成長をインビボで減少させる場合、全ての又は一部の前記タンパク質は、カーゴ分子(蛍光または放射性のタグまたは腫瘍殺傷薬物/毒素が含まれる)を診断または治療目的のために脳(および、脳腫瘍へと)へと輸送するための、本発明の「キュプレドキシン進入ドメイン」として使用される。
【表3】

【表4】

例19 - 淋菌Lazタンパク質の脳腫瘍細胞への細胞毒性
幾つかのプラスミドを、緑膿菌アズリン、淋菌Laz(配列番号36)、および融合タンパク質を含むタンパク質構築物をコードするように構築し、そのタンパク質を脳腫瘍細胞株でのMTTアッセイで試験した。試験されたタンパク質構築物には、淋菌LazH.8領域単独、緑膿菌アズリン単独、淋菌アズリン単独、および図10に示される構築物が含まれる。前記タンパク質構築物をコード化しているプラスミドは、大腸菌に又は別の適切な発現系に形質転換され、タンパク質構築物が発現され、生じたタンパク質が精製される。脳腫瘍細胞株には、NL229およびCCF-STTG1が含まれる。
【0183】
本実験の結果は、H.8領域および/またはLaz遺伝子のアズリンが、前記タンパク質構築物を脳腫瘍細胞に細胞毒性となることを許容させるために必要とされることを指摘している。本実験は、H.8領域に融合された場合に、他のアズリンは脳腫瘍細胞に更に細胞毒性であろうことをも決定する。本実験の結果は、次の事項を指摘している;その事項とは、H.8領域を、キュプレドキシンを脳癌細胞(brain cancer cell)に細胞毒性となるように適合させることが可能であることであり、これは付着させたアズリンを脳癌細胞へと輸送させることによってなされる。従って、H.8を、カーゴ分子を脳癌細胞へと輸送させるための、輸送ドメインとして使用することができる。有用なカーゴには、当該技術分野において既知の及び本明細書中に記載の癌治療および診断剤が含まれる。
【0184】
例20 - 癌に罹患している患者の治療
キュプレドキシン進入ドメイン ― 外毒素AドメインIII融合体(試験薬)の第I/II相臨床試験を、癌を罹患している患者で行う。具体的には、キュプレドキシン進入ドメインは緑膿菌からの50〜67アミノ酸領域であり、カーゴは緑膿菌からの外毒素AドメインIIIであり、これらによって融合タンパク質「PEDIII-azu 50〜67」が作出される。本融合タンパク質は、例13で説明したとおり構築される。
【0185】
胸部、結腸、およびメラノーマの癌が組織学的に確証された49成体患者であって、現行の利用可能なFDAが認可した化学療法薬および措置(regimen)で適切に処置された後に、臨床的な及び放射線での進行および再発を示している患者が、試験薬が投与されるオープンラベル前向き試験(open-label prospective study)に登録される。試験への登録に適格であるためには、全ての患者は、化学療法措置の承認された過程を完了した後に、計測可能な腫瘍の体積の増加を示すことが必要である。持続性の転移性の沈着物(deposits)および/またはサイズ又は体積の連続的な増加の証拠が、組織学的に樹立されていなければならない。この組織学的な証拠は、微細な針吸引(FNA;fine needle aspiration)バイオプシーによって得ることができる。
【0186】
治療プログラムは、イリノイ大学(シカゴ)およびFDAの施設内倫理委員会の承認に基づいて、全ての患者からインフォームドコンセントを得た後に開始される。患者は、提案された治療の効果への適切な評価に干渉する可能性のある、他の悪性疾患(malignancy)、以前の悪性疾患の既往歴、血液悪液質(blood dyscrasias)、インシュリン依存性糖尿病、または他の重篤な心臓疾患などの介入疾患(intercurrent illness)がない。肝機能試験を含む、基礎的な血液試験(全血球計算値[CBC]および血清化学試験)を、治療の開始前に行う。全ての適格な患者は、試験期間中に、如何なる癌の化学療法をも同時(concurrently)に投与されてはならない。
【0187】
試験薬は、試験薬の薬学的に許容される処方を、日単位で12週間静脈注射することによって投与される。被験者は、毒性が限定されている任意の用量に関して観察される。10mg/kg/日で開始される7用量レベルが存在し、50mg/kg/日の最大用量まで5mg/kg/日で増量される。各用量レベルの有効性は、進行した測定可能な癌(乳房、結腸、およびメラノーマ)を伴う7患者で記録される。
【0188】
応答は、測定可能な腫瘍を2次元(aおよびb)で測定することによって推測される。1)標的とする転移性腫瘍の全体的な消失は、完全なる応答性と考えられる(CR);2)75%の減少は、良好な、部分的な応答性と考えられる(PR);および3)良好な応答性(PR)は、50%までの処理後の減少である。4)サイズにおける25%の減少は、安定的な疾患と考えられる(SD)、および5)<25%は、応答なしと考えられる(NR)。疾患の進行を示している患者は、彼等の治療を停止されるが、付加的に12週を追跡される。
【0189】
全体的な消失(及び、標的の転移性腫瘍のサイズの任意の減少)は、アズリン治療が癌を治療するために効果的であることを指摘する。アズリン治療が効果的であることの他の徴候は、新たな転移性腫瘍の消失の減少速度および腫瘍に関連する血管新生の減少である。
【0190】
本発明の記載された例およびシステムの様々な修飾およびバリエーションが、当業者には明らかであり、本発明の範囲および精神からは逸脱しない。本発明は特定の態様と関連して記載されるが、請求される発明が係る特定の態様に過度(unduly)に限定されるべきではない。実際、関連する技術分野における当業者に明らかな、本発明を実施するための記載された態様の様々な修飾は、特許請求の範囲に記載される請求項の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】図1(a)および(b)は、アズリンの進入が細胞毒性に関連することを示すグラフである。(a)MTTアッセイを、J774、UISOMel-2および線維芽細胞に対する、wt-アズリン誘導性の細胞毒性の決定のために実施した。(b)M44KM64E変異体アズリンで処理されたヒト正常線維芽細胞における細胞周期進行の分析。線維芽細胞を、0(コントロール)、0.5または1.0mg/mlの変異体アズリンと24hrインキュベートした。処理の終了時に、細胞内のDNA量を、フローサイトメトリーで決定した。
【図2】図2(a)および(b)は、様々な短縮型アズリン構築物及びその精製プロフィールの概略を示す図である。azu遺伝子の様々な断片を、gst遺伝子の3’端にインフレームで融合した。(b)GST-azu融合タンパク質を、細胞成長および溶解の後に精製し、SDS-PAGEに適用し、そしてクーマシーブルー染色で視覚化した。
【図3】(a)GST-GFP-azu 50-77融合タンパク質の構築を示す図である。gfp遺伝子を、gst遺伝子の3’端に導入した(GST-GFP)。次に、azu 50-77断片をgfp遺伝子の3’端でインフレームに結合して、GST-GFP-azu 50-77融合タンパク質を産生した。GST-GFP-azu 50-77を、細胞溶解産物から、単一の融合タンパク質として精製した。精製タンパク質を、SDS-PAGEで泳動し、クーマシーブルー染色(9(b))で及び抗アズリン抗体を用いたウエスタンブロッティング(9(c))で検出した。
【図4】GST-緑色蛍光タンパク質(GFP)およびGST-GFP-アズリン融合タンパク質のインターナリゼーションに関する動態試験を示している図である。緑色蛍光を、様々な濃度のGST-GFP(10(a))またはGST-GFP-azu 50-77(10(b))を37°C、1hrで処理したJ774細胞でアッセイした。1万個の細胞を、フローサイトメトリーで分析した。(c)GST-GFP-azu 50-77のインターナリゼーションの時間依存性。J774細胞を200μg/mlのGST-GFP-azu 50-77で指摘された時間37°Cでインキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。
【図5】GST-GFP融合に関して前に記載したとおり、外毒素AドメインIII(アミノ酸405-613)を、同様にドメインlbの一部(アミノ酸381-404)を、GST(GST-PEDIII)に融合したことを示す図である。azu 50-77断片を、PCRを用いて、GST-PEDIII(GST-PEDIII-azu 50-77)のC末端に結合させた。(b)融合タンパク質を、グルタチオンセファロース4Bカラムゲル濾過カラムクロマトグラフィーで精製し、サイズを決定するためにSDS-PAGEで電気泳動した。(c)UISO-Mel-2癌細胞における及び正常な線維芽細胞(FBT)細胞におけるGST-PEDIII-azu 50-77融合タンパク質の作用を、PEDIII-媒介性の細胞毒性で決定されるものとして示す図である。指摘した様々な濃度のGST-PEDIIIおよびGST-PEDIII-azu 50-77で、UISO-Mel-2およびFBT細胞を24hインキュベートし、その後、細胞生存度をMTTアッセイで決定した。
【図6】図6は、wt-アズリンおよびwt-アズリン50-77タンパク質伝達ドメインにおける、α-ヘリックスの局在化を示している図である。アズリン50-77ドメインにおける3つのアミノ酸の、プロリン残基での置換が指摘されている。
【図7】図7は、UISO-Mel-2癌細胞およびFBT細胞に対する、GST-PEDIII-ラスティシアニン融合タンパク質の、PEDIII-媒介性の細胞毒性を示す図である。指摘した様々な濃度のGST-PEDIIIおよびGST-PEDIII-azu 50-77で、UISO-Mel-2およびFBT細胞を24hインキュベートし、その後、細胞生存度をMTTアッセイで決定した。
【図8】図8は、VASTアルゴリズムで計算される、アズリンと他のキュプレドキシンとの構造的なアライメントを示す図である。アウラシアニンBおよびラスティシアニンのN末端の伸展部分(アズリンでは欠失している)は、図では省かれている。灰色のバーはアズリンの領域を示し、これは各々の近接するものからの残基と重ねあわされる。ブランクスペースは、整列されていない領域である。アズリンのタンパク質伝達ドメイン(PTD)(ラスティシアニンとのアライメントが存在しない、アズリンのアミノ酸50-77)は、垂直方向の点線で強調される。キュプレドキシンの名前の後の括弧内の番号は、タンパク質データベースのアクセッション番号である。(b)幾つかの既知の細菌性のアズリン中の真中の部分を含んでいる残基のマルチプルアミノ酸配列アラインメント。細菌の属および種名は、次のとおり略称される:Psae, 緑膿菌(配列番号44);Pssy, Pseudomonas syringae(配列番号45);Neme, 髄膜炎菌(配列番号40);Vipa, 腸炎ビブリオ菌(配列番号46);Bobr, 気管支敗血症菌(配列番号47)。介在しているアミノ酸ナンバーは、括弧で示される。CLUSTAL Xソフトウェア〔Higgins and Sharp, Gene 101:6427-6432 (1988)〕を使用して、このマルチプル配列アラインメントを作った。
【図9】図9は、髄膜炎菌のLazタンパク質および緑膿菌のアズリンタンパク質を示す図である。バーの左に対する用語は、タンパク質の名称を指摘している。バーの上の用語は、バーの直下のタンパク質領域の名称を指摘している。バーの下の数は、前記タンパク質領域の連結部のアミノ酸ナンバーを指摘している。
【図10】図10は、幾つかのアズリン融合タンパク質の構築物を示す図である。バーの左の用語は、指摘したプラスミドおよびタンパク質産物の構築物の名称を指摘している。バーの上の用語は、バーの直下に示されたタンパク質の領域を指摘している。「N.Sp」は、淋菌のシグナルペプチドを指摘している;「H.8」は、淋菌のH.8領域を指摘している;「N.Azu」は、淋菌のアズリンを指摘している;「P.Sp」は、緑膿菌のシグナルペプチドを指摘している;および「P.Azu」は、緑膿菌のシグナルペプチドを指摘している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全長未満の野生型のキュプレドキシンまたはH.8外膜タンパク質と少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなるペプチドであって、連結した分子が哺乳類癌細胞へと進入することを促進するペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドであって、前記キュプレドキシンが、アズリン, プラストシアニン, ラスティシアニン, シュードアズリン, アウラシアニンおよびアズリン様タンパク質からなる群から選択されるペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドが緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa), Phormidium laminosum, Thiobacillus ferrooxidans, Achromobacter cycloclastes, Pseudomonas syringa, 髄膜炎菌(Neisseria meningitidis), 腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus), 気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica), 百日咳菌(Bordetella pertussis), Chloroflexus aurantiacusおよび淋菌(Neisseria gonorrhoeae)からなる群から選択される生物体に由来する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記キュプレドキシンが配列番号1, 配列番号2, 配列番号3, 配列番号4, 配列番号29, 配列番号30, 配列番号31, 配列番号32, 配列番号33, 配列番号34, 配列番号36および配列番号43からなる群から選択される、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
請求項1に記載のペプチドであって、長さが少なくとも約10残基であり且つ約50残基以下であるペプチド。
【請求項6】
請求項1に記載のペプチドであって、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を、配列番号5, 配列番号6, 配列番号7, 配列番号9, 配列番号37, 配列番号38, 配列番号39, 配列番号40, 配列番号41, 配列番号42, 配列番号43, 配列番号44, 配列番号46, 配列番号47および配列番号47からなる群から選択される配列に対して有する配列を含むペプチド。
【請求項7】
請求項6に記載のペプチドであって、配列番号5, 配列番号6, 配列番号7, 配列番号9, 配列番号37, 配列番号38, 配列番号39, 配列番号40, 配列番号41, 配列番号42, 配列番号43, 配列番号44, 配列番号46, 配列番号47および配列番号47からなる群から選択される配列を含むペプチド。
【請求項8】
請求項6に記載のペプチドであって、配列番号5, 配列番号6, 配列番号7, 配列番号9, 配列番号37, 配列番号38, 配列番号39, 配列番号40, 配列番号41, 配列番号42, 配列番号43, 配列番号44, 配列番号46, 配列番号47および配列番号47からなる群から選択される配列からなるペプチド。
【請求項9】
以下の式で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであって:
DGXXXXXDXXYXKXXDおよびDGXXXXDXXYXKXXD;
式中のDはアスパラギン酸であり, Gはグリシンであり, Yはチロシンであり, Kはリジンであり, およびXは任意のアミノ酸である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項10】
緑膿菌アズリンの50〜77アミノ酸領域に対して有意な構造的な相同性を有し、連結した分子が哺乳類癌細胞へと進入することを促進するペプチド。
【請求項11】
カーゴ化合物およびペプチドを含んでいる複合体であって、前記ペプチドは少なくとも約90%の配列同一性をキュプレドキシン又はその断片に対して有し、前記ペプチド又はその断片は前記カーゴ化合物に連結し、前記ペプチドは前記カーゴ化合物の哺乳類癌細胞への進入を促進する複合体。
【請求項12】
前記ペプチドが請求項1に記載のペプチドである、請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
前記カーゴ化合物がタンパク質, リポタンパク質, ポリペプチド, ペプチド, ポリサッカライド, 核酸, 色素, 微小粒子, ナノ粒子, 毒素および薬物からなる群から選択される、請求項11に記載の複合体。
【請求項14】
前記カーゴ化合物がタンパク質およびポリペプチドからなる群から選択され、前記ペプチドが前記カーゴ化合物に連結されて融合タンパク質を形成する、請求項13に記載の複合体。
【請求項15】
前記カーゴ化合物が毒素である、請求項11に記載の複合体。
【請求項16】
前記毒素が緑膿菌外毒素A又はその断片である、請求項15に記載の複合体。
【請求項17】
前記カーゴ化合物が検出可能な物質である、請求項11に記載の複合体。
【請求項18】
前記検出可能な物質が蛍光定量法、顕微鏡観察、X線CT、MRIおよび超音波からなる群から選択される方法で検出可能である、請求項17に記載の複合体。
【請求項19】
請求項11に記載の複合体と薬剤的に適切な担体とを含んでいる薬学的組成物。
【請求項20】
1細胞(a cell)または複数細胞(cells)を請求項11に記載の複合体と接触させることを備える方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記細胞または複数細胞は癌に罹患している患者から由来し、さらに前記細胞または複数細胞を前記患者に再導入することを備える方法。
【請求項22】
前記細胞が癌細胞である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記細胞が骨肉腫細胞, 肺の癌腫細胞, 結腸の癌腫細胞, リンパ腫細胞, 白血病細胞, 軟部組織の肉腫細胞, 乳房の癌腫細胞, 肝臓の癌腫細胞, 膀胱の癌腫細胞, メラノーマ細胞, 脳腫瘍細胞および前立腺の癌腫細胞からなる群から選択される癌細胞である方法。
【請求項24】
癌を伴う患者を治療する方法であって、請求項11に記載の複合体が前記患者に治療上効果的な量で投与される方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、前記複合体が静脈内、局所、皮下、筋肉内、および腫瘍内からなる群から選択される経路で投与される方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法であって、前記複合体は、別の癌治療と共に共投与される方法。
【請求項27】
患者の癌を画像処理するための方法であって、請求項17に記載の複合体が前記患者に投与され、前記カーゴ化合物の位置が検出される方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記カーゴ化合物はX線造影剤であり、前記カーゴ化合物の位置がX線CTで検出される方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法であって、前記カーゴ化合物は磁気共鳴映像法の造影剤であり、前記カーゴ化合物の位置がMRIで検出される方法。
【請求項30】
請求項27に記載の方法であって、前記カーゴ化合物は超音波造影剤であり、前記カーゴ化合物の位置が超音波画像処理で検出される方法。
【請求項31】
癌を診断するための方法であって、細胞を請求項17に記載の複合体と接触し、前記カーゴ分子の位置が検出される方法。
【請求項32】
請求項11に記載の複合体を含んでいる試薬を具備するキット。
【請求項33】
請求項32に記載のキットであって、薬学的に許容されるアジュバントまたは賦形剤を含んでいる試薬をさらに具備するキット。
【請求項34】
請求項32に記載のキットであって、前記試薬を投与するためのビヒクルをさらに具備するキット。
【請求項35】
請求項1に記載のペプチドであって、前記ペプチドの構造が修飾されて、血流中の前記ペプチドの半減期を延長させる又は至適化するペプチド。
【請求項36】
請求項1もしくは10に記載のペプチドまたは請求項14に記載の複合体をコード化する核酸分子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−515428(P2008−515428A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535767(P2007−535767)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/035758
【国際公開番号】WO2006/088508
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(507115850)
【出願人】(507115861)
【出願人】(507116503)
【出願人】(507116787)
【Fターム(参考)】