キューブコーナー素子を有する層状体および再帰反射シート
【課題】本発明は、キューブコーナー素子を有する層状体、層状体のアセンブリーを有するツール、およびその複製物(特に再帰反射シートを含む)を提供する。
【解決手段】本発明の再帰反射シートは、溝により画定されている面を有するキューブコーナー素子の列を有し、その面が共通峰高さで交差し、その列内の隣接している溝が名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、かつ隣接している側方溝の夾角が少なくとも2°異なっている。
【解決手段】本発明の再帰反射シートは、溝により画定されている面を有するキューブコーナー素子の列を有し、その面が共通峰高さで交差し、その列内の隣接している溝が名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、かつ隣接している側方溝の夾角が少なくとも2°異なっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キューブコーナー素子を有する層状体、層状体のアセンブリーを有するツール、およびその複製物(とくに再帰反射シート)に関する。
【背景技術】
【0002】
再帰反射材料は、材料に入射した光を再方向付けして元の光源の方向に戻す能力により特性付けられる。この特性のおかげで、さまざまな交通安全用途および人的安全用途で再帰反射シートが広く使用されるようになった。再帰反射シートは、乗物や衣類のための再帰反射テープだけでなく、道路標識、防柵、ライセンスプレート、路面標示、標示テープなどのさまざまな物品で一般に利用される。
【0003】
2つの公知のタイプの再帰反射シートは、微細スフェア型シートおよびキューブコーナー型シートである。「ビーズ型」シートと呼ばれることもある微細スフェア型シートでは、典型的には、入射光を再帰反射するために、バインダー層中に少なくとも部分的に埋め込まれかつ正反射材料または拡散反射材料(たとえば、顔料粒子、金属フレーク、または蒸気コートなど)に関連付けられた多数の微細スフェアが利用される。ビーズ型レトロリフレクターの対称形状に基づいて、微細スフェア型シートは、方位に関係なく、すなわち、シートの表面に垂直な軸を中心に回転したときに、同一の全光反射を呈する。したがって、そのような微細スフェア型シートは、シートを表面に配置するときの方位に対して比較的低い感受性を有する。しかしながら、一般的には、そのようなシートは、キューブコーナー型シートよりも低い再帰反射効率を有する。
【0004】
キューブコーナー型再帰反射シートは、典型的には、実質的に平面状のフロント表面と、複数の幾何学的構造体を有するリヤー構造化表面(その一部分または全部は、キューブコーナー素子として構成された3つの反射面を有する)と、を有する薄肉透明層を有する。
【0005】
キューブコーナー型再帰反射シートは、最初に、構造化表面を有するマスター成形型を作製することにより一般に製造される。そのような構造化表面は、完成シートがキューブコーナー角錐もしくはキューブコーナーキャビティー(またはその両方)を有するかに応じて、完成シートにおける所望のキューブコーナー素子形状またはそのネガティブ(反転)コピーのいずれかに対応する。次に、エンボス加工、押出、またはキャスト・キュアリングのような方法によりキューブコーナー型再帰反射シートを形成するためのツールを作製すべく、従来のニッケル電鋳のような任意の好適な技術を用いて成形型を複製する。米国特許第5,156,863号明細書(プリコーン(Pricone)ら)には、キューブコーナー型再帰反射シートの製造に使用されるツールを形成するためのプロセスの例示的全体図が提供されている。マスター成形型を作製するための公知の方法としては、ピンバンドリング法、直接機械加工法、および層状体を利用する方法が挙げられる。
【0006】
ピンバンドリング法では、複数のピン(それぞれ一端にキューブコーナー素子のような幾何学的形状を有する)を集成一体化してマスター成形型を形成する。米国特許第1,591,572号明細書(スティムソン(Stimson))および同第3,926,402号明細書(ヒーナン(Heenan))には、具体例が提供されている。ピンバンドリングでは、各ピンが個別に機械加工されるので、単一の成形型で多種多様なキューブコーナー形状を形成する能力が提供される。しかしながら、そのような方法は、小さいキューブコーナー素子(たとえば、約1ミリメートル未満のキューブ高さを有するもの)を作製するには非現実的である。なぜなら、精密機械加工を行ってからバンドル状態に配置することにより成形型を形成するには、多数のピンおよびそのサイズ減少が必要になるからである。
【0007】
直接機械加工法では、平面状基材(たとえば金属プレート)の表面に一連の溝を形成することにより切頭キューブコーナー素子を有するマスター成形型を形成する。周知の一方法では、3組の平行溝を60度の夾角で互いに交差させてキューブコーナー素子(それぞれ等辺底面三角形を有する)のアレイを形成する(米国特許第3,712,706号明細書(スタム(Stamm))を参照されたい)。他の方法では、2組の溝を60度超の角度で互いに交差させかつ第3の組の溝を他の2つの組のそれぞれと60度未満の角度で交差させることによりキャンテッドキューブコーナー素子対応対のアレイを形成する(米国特許第4,588,258号明細書(フープマン(Hoopman))を参照されたい)。直接機械加工では、典型的には、カッティングツールの連続運動により形成される同一の溝に沿って多数の個別の面が形成される。したがって、そのような個別の面は、成形型製造手順全体にわたりそれらのアライメントを保持する。このため、直接機械加工法は、非常に小さいキューブコーナー素子を精密機械加工する能力を提供する。しかしながら、直接機械加工法の欠点として、製造しうるキューブコーナージオメトリータイプの設計柔軟性が低減されるので、結果として、全光反射が影響を受ける。
【0008】
層状体を利用する方法では、1つの長手縁上に形成された幾何学的形状を有する層状体と呼ばれる複数の薄いシート(すなわちプレート)を集成してマスター成形型を形成する。層状体を利用する方法は、より少数の部品を別々に機械加工するので、ピンバンドリング法よりも一般に労力がかからない。たとえば、1つの層状体は、典型的には約400〜1000個の個別のキューブコーナー素子を有しうるのに対して、各ピンは、単一のキューブコーナー素子を有するにすぎない。しかしながら、ピンバンドリングにより達成しうる設計柔軟性と比較して、層状体を利用する方法は設計柔軟性が低い。層状体を利用する方法の具体例は、欧州特許出願公開第0844056A1号明細書(三村ら);米国特許第6,015,214号明細書(ヒーナン(Heenan)ら);米国特許第5,981,032号明細書(スミス(Smith));および米国特許第6,257,860号明細書(ラトレル(Luttrell))に見いだすことができる。
【0009】
切頭キューブコーナーアレイの隣接しているキューブコーナー素子の底面縁は、典型的には共面上にある。「完全キューブ」または「好適形状(PG)キューブコーナー素子」として記述される他のキューブコーナー素子構造体は、典型的には、共面上にない少なくとも2つの非二面縁を有する。そのような構造体は、典型的には、切頭キューブコーナー素子と比較してより高い全光反射を呈する。特定のPGキューブコーナー素子は、国際公開第00/60385号パンフレットに記載されているように、一連の基材の直接機械加工により作製しうる。しかしながら、この多段階製造プロセスを用いて幾何学的確度を保持するのは困難である。また、得られるPGキューブコーナー素子および/または素子の構成に関して設計上の制約が顕在化する可能性もある。これとは対照的に、ピンバンドリング法および層状体を利用する方法では、さまざまな形状および構成のPGキューブコーナー素子の形成が可能である。しかしながら、ピンバンドリング法とは異なり、層状体を利用する方法は、比較的小さいPGキューブコーナー素子を形成する能力をも有利に提供する。
【0010】
キューブコーナーの対称軸は、3つのキューブ面すべてに対して等角度をなして構造体を三等分するベクトルである。前述のスタム(Stamm)の切頭キューブでは、対称軸は等辺底面三角形に垂直であり、キューブはキャントやティルトを有していないとみなされる。「前方キャンティング」または「正のキャンティング」という用語は、1つの底面三角形夾角だけを60°よりも増大させるようにキャンティングされた切頭キューブコーナー素子を記述すべく、キューブコーナー技術分野で使用されてきた。逆に、「後方キャンティング」または「負のキャンティング」という用語は、底面三角形の夾角の2つを60°よりも増大させるようにキャンティングされたキューブコーナー素子を記述すべく、キューブコーナー技術分野で使用されてきた。米国特許第5,565,151号明細書(ニルセン(Nilsen))および米国特許第4,588,258号明細書(フープマン(Hoopman))を参照されたい。PGキューブコーナー素子のキャンティングについては、米国特許第6,015,214号明細書(ヒーナン(Heenan)ら)に記載されている。
【0011】
キューブコーナー素子を後方または前方にキャンティングすると、照射角特性が向上する。完全キューブコーナー素子は、所与のキャント量で切頭キューブコーナー素子よりも高い全光反射を有するが、完全キューブは、より大きい照射角において全光反射をより急速に減少させる。完全キューブコーナー素子の1つの利点は、より大きい照射角において実質的な性能低下を伴うことなく、小さい照射角においてより高い全光反射を呈することである。
【0012】
方位に対する全光反射(TLR)の均一性を改善するための一般的な方法は、たとえば、米国特許第4,243,618号明細書(ヴァン・アーナム(Van Arnam))、米国特許第4,202,600号明細書、および米国特許第5,936,770号明細書(ネステガード(Nestegard)ら)に記載されているように、最終製造時に複数の小さいツール領域を2つ以上の方位でタイリング(すなわち配置)する方法である。タイリングは、目視上好ましくないこともある。さらに、タイリングは、シートの製造に利用されるツールを作製する際の製造工程数を増大させる。
【0013】
TLRに関係する以外に、再帰反射シートの性能はまた、シートの観測角特性または発散プロファイルに関連する。これは、光源(すなわち、典型的には乗物のヘッドライト)に対する再帰反射光の広がりに関係する。キューブコーナーからの再帰反射光の広がりは、回折、偏光、非直交性などの効果により支配される。この目的のために、米国特許第5,138,488号明細書(シュチェック(Szczech))の第5欄の表1に記載されているような角度誤差を導入することが一般的である。
【0014】
同様に、欧州特許出願公開第0844056A1号明細書(三村)の実施例1には、フライカッティング法が記載されている。この方法では、ダイヤモンドカッティングツールを用いて生成されるV字形溝の下端角を順序正しくわずかに変化させて、70.6μm、70.7μm、および70.9μmの深さを有する3つのタイプの対称V字形溝が141.4μmの反復ピッチでシートの主面に垂直な方向に逐次反復してカッティングされた。それにより、89.9°、90.0°、および91.0°の3つの異なる頂角を反復パターンで有する一連の逐次的屋根形突起がシートの一方の縁上に形成された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
当技術分野では、さまざまな再帰反射設計およびそれらの測定または計算された再帰反射性能が報告されているが、業界としては、新しいキューブコーナー光学設計を有する再帰反射シート、ならびにとくに、改善された性能および/または改善された製造効率に寄与する特徴を有する再帰反射シートの製造方法が有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一実施形態では、本発明は、溝によって形成された面を有するキューブコーナー素子を有する層状体を開示する。ここで、隣接している溝は、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である。隣接している溝は、少なくとも2°異なる夾角を有する。一態様において、溝の夾角は反復パターンで配置される。他の態様において、素子の面は共通峰高さで交差する。さらに他の態様において、溝は、相互に名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である二等分平面を有する。
【0017】
他の実施形態では、本発明は、好適形状キューブコーナー素子を有する層状体を開示する。ここで、キューブコーナー素子の少なくとも一部分は、45°〜135°のアライメント角、225°〜315°のアライメント角、およびそれらの組合せから選択されるアライメント角でキャンティングされる。好ましくは、第1のキューブコーナー素子は、60°〜120°のアライメント角でキャンティングされ、第2の隣接しているキューブは、240°〜300°のアライメント角でキャンティングされる。さらに、第1のキューブのアライメント角と0°または180°との差は、好ましくは、第2のキューブのアライメント角と0°または180°との差と実質的に同一量である。
【0018】
これらの実施形態のいずれにおいても、キューブコーナー素子は、好ましくは、側方溝の交互対によって形成された面を有する。側方溝の各対の夾角は、好ましくは、実質的に合計180°である。さらに、第1の溝の夾角は、好ましくは、少なくとも約5°(たとえば約10°〜約20°)だけ90°よりも大きく、第2の隣接している溝の夾角は、ほぼ同一量だけ90°よりも小さい。
【0019】
他の実施形態では、本発明は、一連の側方溝によって形成された面を有するキューブコーナー素子を有する微細構造化表面を有する層状体を開示する。ここで、組内の少なくとも2つの溝は、名目上平行超〜約1°の範囲内の量だけ非平行である。素子は、好ましくは、1分〜60分の角度の二面角誤差を有する。二面角誤差は、好ましくは、反復パターンで配置される。溝は、符号およびまたは大きさが異なるスキュー角および/またはインクリネーション角を有する。
【0020】
すべての開示された実施形態において、隣接している溝は、好ましくは側方溝である。さらに、素子は、好ましくはそれぞれ、主要溝面を画定している面を共通平面内に有する。これに加えて、素子は、好適形状キューブコーナー素子である。
【0021】
他の実施形態では、本発明は、記載された層状体のいずれか1つまたは組合せを複数有するマスターツールを開示する。層状体は、好ましくは、隣接している層状体のキューブコーナー素子が反対向きになるようにして、集成される。素子は、好ましくは、台形、長方形、平行四辺形、五角形、および六角形から選択される形状を平面図で有する。
【0022】
他の実施形態では、本発明は、マルチジェネレーショナルツールおよび再帰反射シートを含めてマスターツールのレプリカを開示する。再帰反射シートは、層状体から誘導されうるかまたは層状体に関連して説明したのと同一の光学的特徴を有しうる。再帰反射シートは、キューブコーナー素子、キューブコーナーキャビティー、またはそれらの組合せを有しうる。
【0023】
したがって、他の実施形態では、本発明は、溝により画定されている面を有する好適形状キューブコーナー素子の列を有する再帰反射シートを開示する。ここで、隣接している側方溝は、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、かつ少なくとも2°異なる夾角を有する。他の実施形態では、再帰反射シートは、キューブコーナー素子の列を有する。ここで、第1のキューブコーナー素子は、45°〜135°のアライメント角でキャンティングされ、第2の隣接しているキューブは、225°〜315°のアライメント角でキャンティングされる。さらに他の実施形態では、再帰反射シートは、一連の側方溝により画定されている面を有する好適形状キューブコーナー素子の列を有する。ここで、組内の少なくとも2つの溝は、名目上平行超〜約1°の範囲内の量だけ非平行である。これらの実施形態のいずれにおいても、シートは、好ましくは、1つまたは複数の層状体に関連して説明した特徴をさらに有する。
【0024】
他の態様において、本発明は、好適形状キューブコーナー素子の隣接している列の対を有する再帰反射シートを開示する。ここで、列内の隣接している素子は、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である少なくとも1つの二面縁を有し、かつ列の対は、少なくとも2つのタイプの対応対を有する。
【0025】
好ましい実施形態では、開示された再帰反射シートは、改善された特性を有する。一実施形態では、再帰反射シートは、少なくとも1の均一性指数を呈する。そのような均一性は、2つ以上の方位でタイリングすることなく取得可能である。均一性指数は、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも5である。他の好ましい実施形態では、再帰反射シートは、ASTM D4596−1aに準拠して−4°の照射角および0.5°の観測角で少なくとも375カンデラ/ルクス/m2の0°および90°の方位における平均輝度を呈する好適形状キューブコーナー素子のアレイを有する。好ましくは、シートは、他の観測角においても改善された輝度を呈する。
【0026】
本発明はさらに、本明細書に記載の特徴の任意の組合せを開示する。
【0027】
図面、とくに層状体(単数または複数)の図面は、例示的なものなので、必ずしも実際のサイズを表しているわけではない。たとえば、図面(単数または複数)は、拡大層状体または層状体の拡大部分でありうる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】キューブコーナー素子を形成する前の例示的な単一層状体の斜視図である。
【図2】第1の一連の溝を形成した後の例示的な単一層状体の端面図である。
【図3】第1の一連の溝を形成した後の例示的な単一層状体の側面図である。
【図4】第1の一連の溝および第2の一連の溝を形成した後の例示的な単一層状体の上面図である。
【図5】第1の一連の溝および主要溝面を形成した後の例示的な単一層状体の上面図である。
【図6】第1の一連の溝と第3の主要溝とを有する4つの層状体の例示的な集成体の上面平面図であり、キューブコーナーは側方キャンティングされている。
【図7】層状体上の1対の隣接した側方キャンテッドキューブの対称軸を示す側面図である。
【図8】4つの層状体の斜視図であり、キューブコーナーは側方キャンティングされている。
【図9】4つの層状体の斜視図であり、キューブコーナーは側方キャンティングされており、かつ層状体は反対向きに集成されている。
【図10a】後方キャンテッドキューブコーナー素子の図である。
【図10b】側方キャンテッドキューブコーナー素子の図である。
【図10c】前方キャンテッドキューブコーナー素子の図である。
【図11】層状体の集成体の上面平面図を示しており、キューブコーナーは層状体の縁に垂直な平面内で前方キャンティングされている。
【図12】層状体の集成体の上面平面図を示しており、キューブコーナーは層状体の縁に垂直な平面内で後方キャンティングされている。
【図13】9.74°前方キャンティングされているポリカーボネートで構成されたキューブコーナー素子の対応対で予測された光反射等高線を表す等強度プロットを示している。
【図14】7.74°後方キャンティングされているポリカーボネートで構成されたキューブコーナー素子の対応対で予測された光反射等高線を表す等強度プロットを示している。
【図15】4.41°側方キャンティングされているポリカーボネートキューブを有する2つの対向する層状体で予測された光反射等高線を表す等強度プロットを示している。
【図16】5.23°側方キャンティングされているポリカーボネートキューブを有する2つの対向する層状体で予測された光反射等高線を表す等強度プロットを示している。
【図17】6.03°側方キャンティングされているポリカーボネートキューブを有する2つの対向する層状体で予測された光反射等高線を表す等強度プロットを示している。
【図18】7.33°側方キャンティングされているポリカーボネートキューブを有する2つの対向する層状体で予測された光反射等高線を表す等強度プロットを示している。
【図19】9.74°側方キャンティングされているポリカーボネートキューブを有する層状体の集成体で予測された光反射等高線を表す等強度プロットを示している。
【図20】アライメント角vs均一性指数のプロットである。
【図21】スキュー角ド側方溝を有する層状体の上面平面図を示している。
【図22】代表的なキューブコーナー素子の各二面角を示している。
【図23】正のインクリネーション角および負のインクリネーション角を示す層状体のキューブコーナー素子の側面図を示している。
【図24】2〜10分の角度の範囲内である主要溝角度誤差で7.47度後方キャンティングされたキューブに対するスポット図を示している。
【図25】0〜−20分の角度の範囲内である側方溝角度誤差で7.47度後方キャンティングされたキューブに対するスポット図を示している。
【図26】主要溝角度誤差と側方溝角度誤差とを組み合わせて7.47度後方キャンティングされたキューブに対するスポット図を示している。
【図27】7.47度後方キャンティングされたキューブに対するスポット図を示しており、側方溝は、7分の角度の一定スキュー角、+1.5分の角度の側方溝角度誤差、および4つの溝ごとに反復パターンで変化させたインクリネーション角を有する。
【図28】スキュー角が+7分の角度ではなく−7分の角度であること以外は図29と同一の形状のキューブに対するスポット図を示している。
【図29】図27と図28との組合せに対するスポット図を示している。
【図30】キューブが7.47度前方キャンティングされていること以外は図29と同一の角度誤差、スキュー角、およびインクリネーション角を有する。
【図31】種々のスキュー角およびインクリネーション角で6.02度側方キャンティングされたキューブに対するスポット図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、キューブコーナー素子を有する1つまたは複数の層状体、層状体の集成体を有するツール、およびレプリカに関する。本発明はさらに、再帰反射シートに関する。
【0030】
再帰反射シートは、好ましくは、層状体を利用する方法で作製されたマスター成形型から作製される。したがって、層状体(単数または複数)および再帰反射シートのキューブコーナー素子は、少なくとも一部分、好ましくは実質的にすべてが、切頭型でない完全キューブである。一態様において、平面図中の完全キューブ素子の底面は、三角形でない。他の態様において、完全キューブ素子の非二面縁は、特徴として、すべてが同一平面内にあるわけではない(すなわち、共面上にあるわけではない)。そのようなキューブコーナー素子は、好ましくは、「好適形状(PG)キューブコーナー素子」である。
【0031】
PGキューブコーナー素子は、基準平面に沿って延在するキューブコーナー素子の構造化表面に関連付けて定義しうる。本出願の目的では、PGキューブコーナー素子とは、(1)基準平面に対して非平行であり;かつ(2)隣接しているキューブコーナー素子の隣接している非二面縁に実質的に平行である;少なくとも1つの非二面縁を有するキューブコーナー素子を意味する。3つの反射面が長方形(正方形を有する)、台形、または五角形を有するキューブコーナー素子は、PGキューブコーナー素子の例である。PGキューブコーナー素子の定義に関連する「基準平面」とは、一群の隣接しているキューブコーナー素子または他の幾何学的構造体の近傍の平面(この平面に沿ってキューブコーナー素子または幾何学的構造体が配設される)を近似した平面または他の表面を意味する。単一層状体の場合、一群の隣接しているキューブコーナー素子は、単一の列または列の対よりなる。集成層状体の場合、一群の隣接しているキューブコーナー素子は、単一層状体および隣接している接触層状体のキューブコーナー素子を有する。シートの場合、一群の隣接しているキューブコーナー素子は、一般的には、人間の眼で識別可能な面積(たとえば、好ましくは少なくとも1mm2)、好ましくはシートの全寸法を覆う。
【0032】
「照射角」とは、基準軸(すなわち、再帰反射サンプルへの法線ベクトル)と入射光軸との間の角度を意味する。
【0033】
「方位」とは、基準軸を中心としてデータムマークの初期のゼロ度の方位からサンプルを回転しうる角度を意味する。
【0034】
層状体(単数または複数)とは、少なくとも2つの層状体を意味する。「層状体」とは、厚さの少なくとも約10倍(好ましくは、厚さの少なくとも100、200、300、400、500倍)の長さおよび高さを有する薄肉プレートを意味する。本発明は、なんら特定の寸法の層状体(単数または複数)に限定されるものではない。再帰反射シートの製造に使用することが意図される層状体の場合、最適の寸法は、最終設計の光学的要件(たとえば、キューブコーナーの構造)により拘束されうる。一般的には、層状体は、0.25インチ(6.35mm)未満、好ましくは0.125インチ(3.175mm)未満の厚さを有する。層状体の厚さは、好ましくは約0.020インチ(0.508mm)未満、より好ましくは約0.010インチ(0.254mm)未満である。典型的には、層状体の厚さは、少なくとも約0.001インチ(0.0254mm)、より好ましくは少なくとも約0.003インチ(0.0762mm)である。層状体の長さは、約1インチ(25.4mm)〜約20インチ(50.8cm)の範囲内であり、典型的には6インチ(15.24cm)未満である。層状体の高さは、典型的には約0.5インチ(12.7mm)〜約3インチ(7.62cm)の範囲内であり、より典型的には約2インチ(5.08cm)未満である。
【0035】
図1〜8に関して、層状体10は、第1の主面12および対向する第2の主面14を有する。層状体10はさらに、第1の主面12と第2の主面14と間に延在する作用表面16および対向下端表面18を有する。層状体10はさらに、第1の端表面20および対向する第2の端表面22を有する。好ましい実施形態では、層状体10は直方性多面体であり、対向表面は実質的に平行である。しかしながら、層状体10の対向表面は平行である必要がないことは理解されよう。
【0036】
層状体10は、その構造体上にデカルト座標系を重ねることにより三次元空間内で特性付けることができる。第1の基準平面24は、主面12と14との間の中央に配置される。xz平面と呼ばれる第1の基準平面24は、その法線ベクトルとしてy軸を有する。xy平面と呼ばれる第2の基準平面26は、層状体10の作用表面16と実質的に共面上に延在し、その法線ベクトルとしてz軸を有する。yz平面と呼ばれる第3の基準平面28は、第1の端表面20と第2の端表面22との間の中央に配置され、その法線ベクトルとしてx軸を有する。明確にするために、本発明に係る種々の幾何学的属性については、本明細書に明示されるデカルト基準平面を基準にして記述する。しかしながら、他の座標系を用いてまたは層状体の構造体を基準にしてそのような幾何学的属性を記述しうることは理解されよう。
【0037】
本発明に係る層状体(単数または複数)は、好ましくは、第1の一連の溝、オプションの第2の一連の溝、および好ましくは第3の主要溝によって形成された面(たとえば主要溝面)を有する(つまり含む)キューブコーナー素子を有する。
【0038】
図2〜9は、層状体10の作用表面16内に複数のキューブコーナー素子を有する構造化表面を示している。一般的には、少なくとも2つ、好ましくは複数の溝30a、30b、30cなど(一括して30として参照される)を含む第1の一連の溝は、層状体10の作用表面16内に形成される。溝30は、層状体10の第1の主面12および作用表面16と交差する軸に沿ってそれぞれの溝角頂33およびそれぞれの第1の基準縁36が延在するように形成される。層状体10の作用表面16は不変(すなわち非構造化)状態に保持された部分を含んでいてもよいが、作用表面16は非構造化表面部分を実質的に含まないことが好ましい。
【0039】
特定の溝の方向は、溝角頂にアライメントされたベクトルにより画定される。溝方向ベクトルは、そのx、y、およびz方向成分により規定しうる。ここで、x軸は基準平面28に垂直であり、y軸は基準平面24に垂直である。たとえば、溝30bの溝方向は、溝角頂33bにアライメントされたベクトルにより画定される。溝が平行でなくても(すなわち、異なるz方向成分であっても)、上面平面図中では溝角頂が互いに平行にみえる可能性があることに留意することが重要である。
【0040】
本明細書中で使用する場合、「一連の溝」という用語は、一連の溝中の隣接している溝に対して名目上平行〜1°以内の角度で非平行の範囲内である層状体10の作用表面16内に形成された溝を意味する。本明細書中で使用する場合、「隣接している溝」とは、名目上平行または1°以内の角度で非平行である最近接溝を意味する。その代わりにまたはそれに加えて、一連の溝の溝は、後述されるように特定の基準平面に対して名目上平行〜1°以内の角度で非平行の範囲内でありうる。したがって、個別の溝および/または一連の溝の溝に関連する各特徴(たとえば、垂直、角度など)は、上述した潜在的偏差度を有することは理解されよう。名目上平行溝とは、意図的変化が溝形成機の精度の範囲内で導入されない溝である。一連の溝の溝は、さらに詳細に後述されるように、夾角誤差および/またはスキュー角および/またはインクリネーション角のような複数の非直交性(MNO)を導入する目的で小さい意図的変化をも有しうる。
【0041】
図3〜9について説明する。第1の一連の溝は、溝角頂33b、33c、33dなど(一括して33として参照される)で交差する第1の溝表面32a、32b、32cなど(一括して32として参照される)と第2の溝表面34b、34c、34dなど(一括して34として参照される)とを画定している溝30a、30b、30cなど(参照番号30により一括して参照される)を含む。層状体の縁において、溝形成操作により単一溝表面32aを形成しうる。
【0042】
図4に示される他の実施形態では、層状体10は、場合により、同様に層状体10の作用表面16内に形成された少なくとも2つ、好ましくは複数の隣接している溝(一括して38として参照される)を含む第2の一連の溝をさらに有しうる。この実施形態では、第1および第2の一連の溝は、近似的に第1の基準平面24に沿って交差して、複数の交互に現れる峰とv字形の谷とを有する構造化表面を形成する。他の選択肢として、峰およびv字形の谷が互いに角度をなすようにすることができる。溝38は、図示されるように、溝角頂41b、41cなど(一括して41として参照される)で交差する第3の溝表面40a、40bなど(一括して40として参照される)と第4の溝表面42b、42cなど(一括して42として参照される)とを画定している。層状体の縁において、溝形成操作により単一溝表面40aを形成しうる。
【0043】
また、これらの第1および第2の一連の溝はいずれも、本明細書中で「側方溝」として参照されることもある。本明細書中で使用する場合、側方溝とは、溝(単数または複数)が、それらのそれぞれの方向ベクトルについて、一連の側方溝の隣接している側方溝に対して名目上平行〜1°以内の角度で非平行の範囲内である一連の溝を意味する。その代わりにまたはそれに加えて、側方溝とは、基準平面28に対して名目上平行〜基準平面28に対して1°以内の角度で非平行の範囲内である溝を意味する。側方溝は、典型的には、平面図中において基準平面24に垂直〜上述した偏差度である。側方溝が名目上平行であるかまたは1°以内の角度で非平行であるかに依存して、複製される集成マスター中の個別素子は、顕微鏡を用いてまたは干渉計で側方溝の二面角もしくは平行度を測定することにより調べた場合、平面図中において典型的には台形、長方形、平行四辺形、および五角形、さらには六角形の形状を有する。好適な干渉計については後述する。
【0044】
素子の第3の面は欧州特許出願公開第0844056A1号明細書(三村ら)に記載されているように作用表面12または14を有しうるが、層状体は、好ましくは、実質的に層状体の全長に延在する主要溝面50を有する。第3の面が層状体の作用表面(すなわち12もしくは14)であるかまたは主要溝面であるかに関係なく、列内の各素子の第3の面は、好ましくは、共通平面を共有する。図5〜6および8〜9について説明する。主要溝面50は、面32、34、40、および42に名目上垂直〜1°以内非垂直の範囲内である。主要溝面50の形成の結果として、層状体上に3つの垂直またはほぼ垂直な光学面を有する複数のキューブコーナー素子を有する構造化表面が得られる。単一層状体は、単一主要溝面、両サイドの1対の溝面、および/または1対の主要溝面を同時に提供する作用表面16と基準平面24との交線に沿った主要溝を有しうる(たとえば図4)。主要溝は、好ましくは、基準平面26に1°以内で平行である。
【0045】
反対向きになっている1対の単一層状体、好ましくは反対向きになっている複数の層状体は、典型的には、それらのそれぞれの主要溝面が主要溝を形成するようにマスターツールとして集成される。たとえば、図6および8〜9に示されるように、4つの層状体(すなわち、層状体100、200、300、および400)は、好ましくは、層状体対が1つおきに反対向きに位置決めされるように集成される(すなわち、層状体100のキューブコーナー素子は、層状体200のキューブコーナー素子に対して反対向きあり、層状体300のキューブコーナー素子は、層状体400のキューブコーナー素子に対して反対向きある)。さらに、反対向きになっている層状体対は、それらのそれぞれの主要溝面50が主要溝52を形成するように位置決めされる。好ましくは、対向する層状体は、垂直壁の形成を最小限に抑えるような構成で位置決めされる(たとえば、34bは42bにアライメントされる)。
【0046】
一連の溝の形成後、作用表面16は微細構造化される。本明細書中で使用する場合、「微細構造化」とは、0.25インチ(6.35mm)未満、好ましくは0.125インチ(3.175mm)未満、より好ましくは0.04インチ(1mm)未満の横方向寸法(たとえば、キューブコーナー構造体の溝角頂間の距離)を有する構造体を有するシートの少なくとも1つの主面を指す。キューブコーナー素子の横方向寸法は、好ましくは0.020インチ(0.508mm)未満、より好ましくは、0.007インチ(0.1778mm)未満である。したがって、それぞれの溝角頂33および41は、好ましくは、非平行溝から生じる小さい変動を除けば溝全体にわたり上述した距離だけ分離される。微細構造体は、約0.001インチ(0.0254mm)〜0.010インチ(0.254mm)の範囲内の平均高さを有するが、0.004インチ(0.1016mm)未満の高さが最も典型的である。さらに、キューブコーナー微細構造体の横方向寸法は、典型的には、少なくとも0.0005インチ(0.0127mm)である。キューブコーナー微細構造体は、キューブコーナーキャビティーを有しうるかまたは好ましくは峰を有するキューブコーナー素子を有しうる。
【0047】
一実施形態では、図3〜9に示されるように、本発明は、隣接している溝が異なる夾角を有する一連の側方溝を有する1つの層状体および複数の層状体に関する。「夾角」とは、溝角頂で交差するV字形溝の2つの面間に形成される角度を意味する。夾角は、典型的には、ダイヤモンドカッティングツールの形状およびカット方向に対するその位置の関数である。したがって、典型的には、それぞれ異なる夾角に対して異なるダイヤモンドツールが利用される。他の選択肢として、さらに時間はかかるが、同一の溝内に複数のカットを作製することにより異なる夾角を形成することが可能である。第1の溝(たとえば側方溝)の夾角は、隣接している溝(たとえば第2の側方溝)と少なくとも2°(たとえば、3°、4°、5°、6°、7°、8°、9°)、好ましくは少なくとも10°(たとえば、11°、12°、13°、14°)、より好ましくは少なくとも15°(たとえば、16°、17°、18°、19°、20°)異なる。したがって、夾角の差は、非直交性の目的で導入される意図的角度誤差から生じる夾角の差よりも実質的に大きい。さらに、夾角の差は、典型的には70°未満(たとえば、65°、60°、50°)、好ましくは55°未満、より好ましくは50°未満、さらにより好ましくは40°未満である。
【0048】
一態様において、異なる夾角(たとえば、隣接している側方溝の夾角)は、必要とされる異なるダイヤモンドカッティングツールの数を最小限に抑えるべく反復パターンで配置される。そのような実施形態では、隣接している側方溝角度の合計は約180°である。好ましい実施形態では、層状体は、90°未満の夾角を有する第2のサブセットの側方溝と交互に90°超の夾角を有する第1のサブセットの側方溝を有する。その際、第1の溝の夾角は、典型的には少なくとも約5°の量だけ、好ましくは約10°〜約20°の範囲内の量だけ90°よりも大きく;一方、隣接している溝の夾角は、ほぼ同一量だけ90°よりも小さい。
【0049】
層状体はさらに、名目上90°の夾角で3つ以上のサブセットおよび/または側方溝を有しうるが、層状体は、好ましくは、名目上90°の夾角を有する側方溝を実質的に含まない。好ましい実施形態では、層状体は、側方溝の交互対(たとえば、75.226°と104.774°)を有するので、側方溝の全体を形成するために2つの異なるダイヤモンドの使用が必要になるにすぎない。したがって、図6〜9に関して、1つおきの側方溝(すなわち、30a、30c、30eなど)は、75.226°の夾角を有して、104.774°の夾角を有する残りの側方溝(すなわち、30b、30dなど)と交互に現れる。さらに詳細に後述されるように、このようにして異なる夾角を利用すると、均一性指数が改善される。
【0050】
他の態様において、他の選択肢としてまたは反復パターンで配置される異なる夾角(たとえば、隣接している側方溝の夾角)と組み合わせて、得られるキューブコーナー素子は、共通峰高さで交差する面を有する。これは、キューブの峰(たとえば36)が同一平面内〜3〜4ミクロン以内にあることを意味する。共通峰高さは、負荷を一様に分配することにより、ツールまたはシートを取り扱う際の耐久性の改善に寄与すると推測される。
【0051】
他の選択肢としてまたはそれと組み合わせて、層状体は、側方キャンテッドキューブコーナー素子を有する。前方または後方にだけキャンティングされるキューブコーナー素子では、対称軸は、基準平面28に平行なキャント平面内でキャンティングまたはティルティングされる。キューブコーナー素子のキャント平面は、基準平面26に垂直であるとともにキューブの対称軸を含有する平面である。したがって、キャント平面を画定している法線ベクトルは、前方または後方にだけキャンティングされるキューブコーナー素子では実質的にゼロのy成分を有する。側方にだけキャンティングされるキューブコーナー素子の場合、キューブの対称軸は、基準平面24に実質的に平行な平面内でキャンティングされるので、キャント平面を画定している法線ベクトルは、実質的にゼロのx成分を有する。
【0052】
キャントの方向を特性付けるために、xy平面内への対称軸の投影を他の選択肢として使用することが可能である。対称軸は、3つのキューブコーナー面を三等分してこれらの3つの面のそれぞれと等角度をなすベクトルとして定義される。図10a〜10cは、それぞれ、後方にだけキャンティングされた、側方にだけキャンティングされた、および前方にだけキャンティングされた3つの異なるキューブコーナー形状を平面図で示している。これらの図では、キューブの峰はページ面から飛び出しており、xy平面内への対称軸の投影(キューブの峰からページ面に及ぶ)は、矢印により示されている。アライメント角は、平面図中のキューブの面にほぼ直角な二面縁11(たとえば二面角2−3)からこの図中で反時計回りに測定される。側方キャンティングの不在下で後方キャンティングする場合、アライメント角は0度であり、一方、側方キャンティングの不在下で前方キャンティングする場合、アライメント角は180度である。前方キャンティングも後方キャンティングも不在の状態で側方キャンティングされたキューブでは、アライメント角は90°(図10bに示されるとおり)または270°のいずれかである。アライメント角は、対称軸の投影が右方向を指す場合(図10b)には90°であり、対称軸の投影が左方向を指す場合には270°である。
【0053】
他の選択肢として、キャント平面法線ベクトルがx成分およびy成分の両方を有するように(すなわち、x成分およびy成分がそれぞれゼロに等しくならないように)、キューブをキャンティングすることが可能である。0°〜45°または0°〜315°のアライメント角では、後方キャント成分が優位であり、45°または315°のアライメント角では、後方キャント成分および側方キャント成分は等しい。さらに、135°〜225°のアライメント角では、前方キャント成分が優位であり、135°および225°では、前方キャント成分および側方キャント成分は等しい。したがって、優位な側方キャント成分を有するキャント平面は、45°〜135°または225°〜315°のアライメント角を有する。したがって、キャント平面法線ベクトルのy成分の絶対値がキャント平面法線ベクトルのx成分の絶対値よりも大きい場合、キューブコーナー素子は優位に側方キャンティングする。
【0054】
キャント平面が基準平面24に平行である異なる夾角のキューブを有する側方溝の交互対から側方キャンテッドキューブが形成される実施形態では、所与の層状体内の隣接しているキューブ(たとえば、α−βまたはα’−β’)は、同一平面内または平行平面内でキャンティングされる。しかしながら、一般的には、キャント平面法線ベクトルにx成分が存在する場合、特定の層状体内の隣接しているキューブは同一平面内でキャンティングされない。もっと正確に言えば、キューブコーナー対応対が同一平面内または平行平面内でキャンティングされる(すなわち、α−α’またはβ−β’)。好ましくは、任意の所与の層状体のキューブコーナー素子は、2つの異なるアライメント角(たとえば、異なる夾角を有する隣接している側方溝に由来するアライメント角)だけを有する。図10b中の側方キャンティング例のアライメント角は90°であり、図6中のβ−β’キューブに対応する。同様に、図6中のα−α’側方キャンテッドキューブのアライメント角は270°である(図示せず)。
【0055】
図11は、キューブが前方キャンティングされた層状体を示しており、一方、図12は、キューブが後方キャンティングされた層状体を示している。このようにキャンティングされるキューブ設計の結果として、単一タイプの対応対向キューブ対が得られる。面64aおよび62bを有する図11のキューブ54aは、面64bおよび62cを有するキューブ54bと同一であり、これは、面64cおよび62dを有するキューブ54cと同一であり、以下同様である。したがって、同一の列内のキューブはすべて同一であり、列は基準平面24に平行である。キューブ54aは、面66eおよび68dを有するキューブ56aとの対応対向対である。さらに、キューブ54bは、キューブ56bとの対応対向対である。同様に、キューブ54cは、56cキューブとの対応対向対である。同様に、図12のキューブ57は、キューブ58との対応対向対である。対応対は、構造化表面の平面に垂直な軸を中心に第1のキューブを180°回転させることにより第2のキューブに重ね合わせることのできるキューブを生じる場合に得られる。対応対は、必ずしも一群のキューブコーナー素子内で直接隣接している必要もなければ接触している必要もない。対応対は、典型的には、反対向きで照射角の正または負の変化に対して対称な再帰反射性能を提供する。
【0056】
これとは対照的に、側方キャンティングでは、同一の列内に(つまり、同一の一連の側方溝により形成されて)2つの異なるキューブ方位を有するキューブ設計になる。第1および第2の組の側方溝の両方を有する単一層状体または1対の隣接している層状体を反対向きに集成した場合、図6、8〜9に示されるように、層状体は、4種の明確に異なるキューブおよび2つの異なる対応対を有する。4つの明確に異なるキューブは、面32bおよび34cを有するキューブアルファ(α)、面32cおよび34dを有するベータ(β)、面40cおよび42dを有するアルファプライム(α’)、ならびに面40bおよび42cを有するベータプライム(β’)として識別される。キューブ(α,α’)は、キューブ面が平行になるように180°回転したときに同一の形状を有する対応対であり、キューブ(β,β’)も同様である。さらに、隣接している層状体(たとえば、100、200)上のキューブは、反対向きに構成される。キューブの対称軸は側方に傾いているが、側方溝の二等分平面(すなわち、溝を2つの等しい部分に分割する平面)は、好ましくは、隣接している側方溝の二等分平面に対して名目上平行(すなわち、互いに平行)〜1°以内の角度で非平行の範囲内である。さらに、各二等分平面は、基準平面28に対して名目上平行〜基準平面28に1°内非平行の範囲内である。
【0057】
図13〜14は、1.59の屈折率を有する材料から形成された再帰反射キューブコーナー素子対応対で種々の照射角および方位角において予測された全光反射を示す等輝度等高線グラフである。図13では、対応対は、9.74°前方キャンティングされている(たとえば、図11のキューブコーナー素子54、56)。図14では、対応対は、7.47°後方キャンティングされている(たとえば、図12のキューブコーナー素子57、58)。図15〜19は、1.59の屈折率を有する材料から形成された再帰反射キューブコーナー素子を有する層状体で種々の照射角および方位角において予測された全光反射を示す等輝度等高線グラフであり、キューブコーナー素子は、それぞれ、90°および270°のアライメント角に対して4.41°、5.23°、6.03°、7.33°、および9.74°側方キャンティングされている。図17では、6.03°側方キャンティングされたキューブコーナー素子を作製するために、側方溝の交互対(すなわち、75.226°と104.774°)が利用されている。側方キャンテッドアレイは、2つのタイプの対応対(すなわち、図6に示されるようなβ−β’およびα−α’)を有する。これらの対応対は、それぞれ、90°および270°のアライメント角を有する。図15〜19のいずれにおいても、等輝度等高線グラフは、図6、11、および12に示されるのと同一の(すなわち、垂直な)方位を有する層状体で得られたものである。
【0058】
キューブコーナー対応対アレイで予測される全光反射は、アクティブ面積パーセントおよび光線強度に関する知識から計算しうる。全光反射は、アクティブ面積パーセントと光線強度との積として定義される。直接機械加工されたキューブコーナーアレイの全光反射については、スタム(Stamm)の米国特許第3,712,706号明細書に記載されている。
【0059】
初期単位光線強度に対して、損失は、シートのフロント表面を介する2パス透過および3つのキューブ表面のそれぞれにおける反射損失から生じる。ほぼ法線入射および約1.59のシート屈折率では、フロント表面透過損失は、およそ0.10である(およそ0.90の透過率)。反射コーティングが施されているキューブの反射損失は、たとえば、コーティングのタイプおよびキューブ表面法線に対する入射角に依存する。アルミニウム反射コーティングが施されたキューブ表面の典型的な反射係数は、キューブ表面のそれぞれにおいて、およそ0.85〜0.9である。全内反射に依拠するキューブの反射損失は、本質的にゼロである(本質的に100%の反射)。しかしながら、キューブ表面法線に対する光線の入射角が臨界角未満である場合、全内反射が損なわれる可能性があり、そして有意量の光がキューブ表面を通過することもある。臨界角は、キューブ材料の屈折率およびキューブの背面の材料(典型的には空気)の屈折率の関数である。ヘクト(Hecht)著,“光学(Optics)”,第2版,アディソン・ウェズリー(Addison Wesley)刊,1987年のような標準的光学書籍には、フロント表面透過損失および全内反射についての解説がある。単一または個別のキューブコーナー素子の有効面積は、屈折された入射光線に垂直な平面上への3つのキューブコーナー表面の投影と、同一平面上への第3の反射の像表面の投影と、のトポロジカル交差により決定可能であり、かつそれに等しい。有効アパーチャーを決定する一手順については、たとえば、エックハルト(Eckhardt)著,応用光学(Applied Optics),第10巻,第7号,1971年7月,pg.1559−1566で論じられている。シュトロイベル(Straubel)の米国特許第835,648号明細書でも、有効面積またはアパーチャーの概念について論じられている。次に、単一キューブコーナー素子のアクティブ面積パーセントは、有効面積をキューブコーナー表面の全投影面積で割った値として定義される。アクティブ面積パーセントは、光学技術分野の当業者に公知の光学モデリング法を用いて計算可能であるか、または従来のレイトレーシング法を用いて数値的に決定可能である。キューブコーナー対応対アレイのアクティブ面積パーセントは、対応対の2つの個別キューブコーナー素子のアクティブ面積パーセントを平均することにより計算可能である。別の言い方をすれば、アクティブアパーチャーパーセントは、光を再帰反射するキューブコーナーアレイの面積をアレイの全面積で割った値に等しい。アクティブ面積パーセントは、たとえば、キューブ形状、屈折率、入射角、およびシート方位による影響を受ける。
【0060】
図13について説明する。ベクトルV1は、基準平面26に垂直でありかつ図11のキューブコーナー素子54、56の対称軸を有する平面を示す。たとえば、V1は、主要溝面50の交差により形成される主要溝角頂51に実質的に垂直な平面内に位置する。同心状の等輝度曲線は、照射角と方位角の種々の組合せにおけるキューブコーナー素子54、56のアレイの予測された全光反射を示す。プロットの中心からの半径方向の移動は、照射角の増加を表し、一方、円周方向の移動は、光源に対するキューブコーナー素子の方位の変化を表す。最も内側の等輝度曲線は、キューブコーナー素子54、56の対応対が70%の全光反射を呈する照射角の組の境界を画定する。逐次中心から離れた等輝度曲線は、逐次低下するパーセントを有する照射角および方位角の境界を画定する。
【0061】
前方または後方キャンテッドキューブの単一対応対は、典型的には、実質的に互いに垂直である広い照射角特性の2つの平面(すなわち、V1およびV2)を有する。前方キャンティングでは、照射角特性の主平面は、図13に示されるように水平および鉛直になる。より大きい照射角における反射光量は、方位によって著しく変化し、最良照射角特性の平面間でとくに低い。同様に、後方キャンティングでは、照射角特性の主平面(すなわち、V3およびV4)は、図14に示されるように層状体の縁に対しておよそ45°の方位を向くようになる。同様に、より大きい照射角における反射光量は、方位によって著しく変化し、最良照射角特性の平面間でとくに低い。キャント度に依存して、広い照射角特性を有する2超または2未満の平面を得ることが可能である。
【0062】
図15〜19は、側方キャンテッドキューブを有する1対の対向層状体で予測された全光反射(TLR)等強度等高線を示している。光反射は、図13および14の前方および後方キャンテッドキューブの等強度プロットと比較して、円形に近づくプロット形状により示唆されるように、より均一である。図15〜19は、図13および14に明示されている低い光反射の位置において実質的により高い光反射を示す。したがって、より大きい照射角(少なくとも45°までの照射)におけるTLRの良好な保持が予測される。標識は、一般に、0°、45°および90°の方位で位置決めされるので、この改善された方位性能は、標識表示製品にとって望ましいものである。本発明以前では、方位に対する全光反射の均一性を改善するための一般的な方法は、たとえば、米国特許第5,936,770号明細書に記載されているように、複数の小さいツール領域を2つ以上の方位でタイリング(すなわち配置)する方法であった。側方キャンテッドキューブコーナーアレイを用いれば、タイリングを必要とすることなく、全光反射の均一性を改善することができるので、2つ以上の方位でタイリングすることは実質的に不要になる。
【0063】
種々の光学設計の全光反射(TLR)の均一性を比較するために、いずれも固定照射角において、0°、45°、および90°の方位における平均TLRを、0°、45°、および90°の方位におけるTLRの範囲(すなわち、これらの角度における最大TLRと最小TLRとの差)で割ることが可能である。照射角は、好ましくは少なくとも30°以上、より好ましくは40°以上である。好ましい設計では、平均TLRとTLR範囲との最大比を呈する。図13および14の前方および後方キャンテッドキューブのそれぞれで、さらには図15〜19の種々のティルト度を有する側方キャンテッドキューブで、40°の照射角に対して、この比(すなわち「均一性指数(UI)」)を計算した。表1に関して、側方溝の間隔は、層状体の厚さに等しい(すなわちアスペクト比=1)。計算された均一性指数を以下の表1にまとめる。
【0064】
【表1】
【0065】
均一性指数(UI)=(0°、45°、90°の平均TLR)/(0°、45°、および90°における範囲)
【0066】
均一性指数が1よりも大きい場合、改善された方位均一性が得られる。好ましくは、均一性指数は、3超(たとえば4)、より好ましくは5超(たとえば、6、7、8)である。均一性指数は、キューブ形状(たとえば、キャントの量およびタイプ、キューブのタイプ、平面図中のキューブの形状、アパーチャー内のキューブ峰の位置、キューブ寸法)、照射角、および屈折率のような変動因子の関数として変化するであろう。
【0067】
図20は、さまざまなキャント量ならびにキャント平面法線ベクトルのさまざまなx成分およびy成分を有するキャンテッドキューブコーナーアレイでプロットされた均一性指数vsアライメント角を示している。アレイは、図6に示されるβ−β’およびα−α’と同様に、2つのタイプの対応対を有するが、これらのキューブおよび/または対は、互いに隣接していなくてもよい。各対応対のキューブは、実質的に同一のアライメント角を有する。2つのタイプの対応対のアライメント角は、同一量だけ0°または180°と異なる。たとえば、第1のキューブまたは第1の対応対が100°のアライメント角(80°だけ180°と異なる)である場合、第2の(たとえば、隣接している)キューブまたは第2の対応対は、260°のアライメント角(同様に80°だけ180°と異なる)を有する。
【0068】
図20からわかるように、優位な側方キャンティング成分を有するキューブ形状(すなわち、90°および270°のアライメント角を中心とする範囲)では、均一性指数だけでなくポリカーボネート(1.59の屈折率を有する)の平均TLRもまた最大化される。0°から180°までのアライメント角が図20のX軸上すなわち水平軸上に左から右に示されていることに留意されたい。180°から360°(度)まで増加するアライメント角は、右から左にプロットされている。
【0069】
好ましくは、アライメント角は、50°超(たとえば、51°、52°、53°、54°)、より好ましくは55°超(たとえば、56°、57°、58°、59°)、さらにより好ましくは60°超である。さらに、アライメント角は、好ましくは130°未満(たとえば、129°、128°、127°、126°)、より好ましくは125°未満(たとえば、124°、123°、122°、121°)、さらにより好ましくは120°未満である。同様に、アライメント角は、好ましくは230°超(たとえば、231°、232°、233°、234°)、より好ましくは235°超(たとえば、236°、237°、238°、239°)、さらにより好ましくは240°超である。さらに、アライメント角は、好ましくは310°未満(たとえば、309°、308°、307°、306°)、より好ましくは305°未満(たとえば、304°、303°、302°、301°)、さらにより好ましくは300°未満である。
【0070】
キューブの平面に垂直なベクトルに対するキューブ対称軸のティルト量は、少なくとも2°、好ましくは3°超である。さらに、ティルト量は、好ましくは9°未満である。したがって、最も好ましいティルト量は、3.6°、3.7°、3.8°、3.9°、4.0°、4.1°、4.2°、4.3°、4.4°、および4.5°から選択される終点を、7.5°、7.6°、7.7°、7.8°、7.9°、8.0°、8.1°、8.2°、8.3°、および8.4°から選択される終点と組み合わせてなる任意の間隔を含めて、約3.5°〜約8.5°の範囲内である。これらの異なる側方キャント量を生成すべく利用しうるキューブ形状を表2にまとめる。アライメント角は、各キャント量に対して90°または270°でありうる。
【0071】
【表2】
【0072】
異なる夾角を単独でまたは先に記載した側方キャンティングとの併用で用いることにより一連の照射角にわたり方位角の変化に対して改善されたTLR輝度均一性が提供されるが、シートの観測角特性または発散プロファイルを改善することもまた、好ましい。このためには、光源(典型的には乗物のヘッドライト)に対する再帰反射光の広がりを改善することが必要である。先に記載したように、キューブコーナーからの再帰反射光は、回折(キューブサイズにより制御される)、偏光(鏡面リフレクターでコーティングされていないキューブでは重要である)、および非直交性(90°からのキューブコーナー二面角の偏差が1°未満の量である)のような効果に基づいて広がる。反射光の広がりが回折により支配される場合、比較的薄い層状体がキューブの作製に必要とされるので、層状体を用いて作製される(たとえばPG)キューブでは、非直交性に基づく光の広がりは、とくに重要である。そのような薄肉層状体は、製造時の取扱いがとくに困難である。
【0073】
他の選択肢としてまたは先に記載した特徴に加えて、他の実施形態では、本発明は、側方溝(側方溝は「スキュー角」および/または「インクリネーション角」を有する)を含んでなる、個別層状体と、集成層状体を有するマスターツールと、再帰反射レプリカなどのそのレプリカと、に関する。スキュー角および/またはインクリネーション角は、さまざまな制御された二面角誤差または複数の非直交性(MNO)を有するキューブを提供するので、完成品の発散プロファイルを改善する。本明細書中で使用する場合、「スキュー角」とは、基準平面28に対する平行からの偏差を意味する。
【0074】
図21は、スキュー角を有する溝を有する1列のキューブコーナー素子を有する単一層状体の誇張された例を平面図で示している。側方溝80aおよび80bは正のスキュー角で、80cおよび80eはスキュー角なしで、そして溝80dは負のスキュー角でカットされている。側方溝80の経路は、明確にするために図21では拡張されている。側方溝80a、80c、および80eが同一の夾角(たとえば、75°、第1の溝サブセット)を有するとすれば、同一のカッティングツールまたはダイヤモンドを用いてこれらの溝をすべて形成することができる。さらに、交互溝(すなわち、80bおよび80d)が同一の夾角(たとえば、105°、第2の溝サブセット)を有するのであれば、第2のダイヤモンドを用いて80bおよび80dをカットすることができる。主要溝半角が、第1または第2のサブセットの側方溝半角に十分に近い場合、これらのダイヤモンドのうちの一方を用いて主要溝面50をカットすることも可能である。場合により、適正な主要溝半角を達成するために、主要溝面をカットする際にカッティングツールのうちの一方を回転させてもよい。主要溝面は、好ましくは層状体のサイドにアライメントされる。したがって、わずか2つのダイヤモンドだけを用いて、MNOが組み込まれるように、全層状体をカットすることができる。各一連の溝内で、一連の二面角を生成すべく、機械加工時にスキュー角を容易に変化させることができる。キューブコーナーは、一般に、3つのキューブ面の交線に帰属される3つの二面角を有する。90°からのこれらの角度の偏差は、一般に二面角誤差と呼ばれ、二面角1−2、二面角1−3、および二面角2−3により示されうる。1つの命名規約では、図22に示されるように、キューブ二面角1−3は、溝表面82と主要溝面50との交差により形成され、キューブ二面角1−2は、溝表面84と主要溝面50との交差により形成され、そしてキューブ二面角2−3は、溝表面84と溝表面82との交差により形成される。他の選択肢として、第3の面が主要溝面ではなく作用表面12または14である場合、同一の命名規約を利用しうる。所与の溝に対して、正のスキュー角(80a、80b)では、二面角1−3が減少し、二面角1−2が増加し、一方、負のスキュー角では、二面角1−3が増加し、二面角1−2が減少する。
【0075】
たとえば、図21については、4つの異なるキューブが形成される。第1のキューブ86aは溝表面(すなわち面)82aおよび84bを、第2のキューブ86bは溝表面82bおよび84cを、第3のキューブ86cは溝表面82cおよび84dを、そして第4のキューブ86dは溝表面82dおよび84eを有する。溝表面82a、82b、および84dと、溝面50との交差は90°未満であるが、溝表面84bおよび82dと、溝面50との交差は、90°超である。溝80cおよび80eはスキュー角を有していないので、溝表面82c、84c、および84eと、溝面50との交差は、90°である。以上の考察では、図21中のすべての側方溝についてインクリネーション角(後で定義されるとおり)は同一でありかつゼロに等しいものとする。(たとえばPG)キューブコーナー素子は、機械加工時にスキュー角を有する溝を使用した結果として、平面図中で台形または平行四辺形である。
【0076】
他の選択肢としてまたは先に記載した特徴に加えて、側方溝は、正のまたは負のインクリネーション角を有しうる。「インクリネーション角」とは、名目上直交傾き(すなわち、主要溝表面に垂直なベクトルの傾き)からの特定の側方溝の基準平面28内の傾きの偏差を意味する。側方溝の方向は、前記溝の角頂にアライメントされたベクトルにより画定される。直交傾きは、ゼロに等しいスキュー角で溝の角頂90が溝面50の法線ベクトル(溝面50に垂直)に平行であるときの傾きとして定義される。1つの利用可能な命名規約によれば、正のインクリネーション角92では、所与の側方溝について、二面角1−3および二面角1−2が両方ともを減少し、一方、負のインクリネーション角94では、二面角1−3および二面角1−2が両方とも増大する。
【0077】
機械加工時にスキュー角および/またはインクリネーション角を組み合わせると、所与の層状体上のキューブコーナー素子の二面角誤差を変化させるうえで有意な柔軟性が提供される。そのような柔軟性は、キャントに依存しない。したがって、スキュー角および/またはインクリネーション角は、側方キャンテッドキューブだけでなく、アンキャンテッドキューブ、前方キャンテッドキューブ、後方キャンテッドキューブとも併用可能である。側方溝をカットするために使用されるツール(たとえばダイヤモンド)を変更することなく個別層状体の機械加工時にスキュー角および/またはインクリネーション角を導入することができるので、スキュー角および/またはインクリネーション角を使用すれば顕著な利点が得られる。ツール変更後に正確に角度を設定するには典型的には数時間を要する可能性があるので、これにより機械加工時間を著しく削減することができる。さらに、スキュー角および/またはインクリネーション角を用いて、二面角1−2および二面角1−3を反対に変化させることが可能である。「反対に変化させる」とは、本明細書中で使用する場合、層状体上の所与のキューブコーナー内に大きさおよび/または符号の異なる二面角1−2および1−3誤差(90°との差)を意図的に提供することとして定義される。大きさの差は、典型的には少なくとも1/4分、より好ましくは少なくとも1/2分、最も好ましくは少なくとも1分の角度である。したがって、溝は、名目上平行超の量だけ非平行である。さらに、スキュー角および/またはインクリネーション角は、大きさが約1°(すなわち60分の角度)以下になるようにする。さらに、(たとえばサイド)溝は、単一層状体に沿ってスキュー角および/またはインクリネーション角を有する多種多様な成分を有しうる。
【0078】
二面角誤差は、主要溝または側方溝の半角を機械加工時に変化させることにより変更することも可能である。側方溝の半角は、溝面と、溝角頂を含有する基準平面26に垂直な平面と、により形成される鋭角として定義される。主要溝または主要溝面の半角は、溝面と基準平面24とにより形成される鋭角として定義される。主要溝の半角の変化は、x軸を中心とする回転による溝面50の傾きの変化を生じる。側方溝の半角の変化は、溝の夾角(82cと84cなどの対向溝面により形成される角度)の変化によりまたはその角頂を中心とする溝の回転により達成可能である。たとえば、主要溝面50の角度を変化させれば、所与の層状体に沿った二面角1−2および二面角1−3の誤差はすべて増加または減少するであろう。これは、二面角1−2および二面角1−3の誤差が所与の層状体に沿った各溝ごとに異なって変化しうるインクリネーション角の変化とは対照的である。同様に、側方溝の半角を変化させて、二面角2−3の対応する変化を引き起こすことも可能である。主要溝面に直交またはほぼ直交(約1°以内)する側方溝では、二面角1−2および二面角1−3は側方溝半角の変化の影響をほとんど受けないことに留意されたい。その結果、機械加工時に主要溝または側方溝の半角を変化させても、所与のキューブコーナー内で二面角1−2および二面角1−3を反対に変化させることはできないであろう。機械加工時の主要溝または側方溝の半角の変化は、最小のツール変更回数でキューブコーナー二面角誤差に対してできるかぎり広い制御を提供すべく、スキュー角および/またはインクリネーション角と組み合わせて使用することが可能である。半角誤差、スキュー角、またはインクリネーション角のいずれか1つの大きさは約1°までの範囲内でありうるが、任意の所与のキューブに対して累積的に得られる二面角誤差は約1°以下である。
【0079】
製造の簡素化を目的として、スキュー角および/またはインクリネーション角は、好ましくは、二面角誤差がパターンで配置されるように導入される。好ましくは、パターンは、所与のキューブコーナー内で反対に変化している二面角誤差1−2および1−3を有する。
【0080】
スポット図は、キューブコーナーアレイに由来する非直交性から生じる再帰反射光の広がりを示す幾何光学に基づく1つの有用な方法である。キューブコーナーは、3つのキューブ面から光線を反射させる6つの可能なシーケンスに関連付けられる6つまでの異なる反射スポットに入射光線を分割することが知られている。3つのキューブ二面角誤差が規定されれば、光源ビームを中心とする円周方向の位置だけでなく光源ビームからの反射スポットの半径方向の広がりをも計算することが可能である(たとえば、エックハルト(Eckhardt)著、“キューブコーナー反射の単純モデル(Simple Model of Cube Corner Reflection)”、応用光学(Applied Optics)、第10巻,第7号,1971年7月を参照されたい)。米国連邦試験方法規格370(1977年3月1日)に詳述されているように、反射スポットの半径方向の広がりは観測角に関連付けられ、一方、反射スポットの円周方向の位置は提示角に関連付けられる。非直交キューブコーナーは、その3つの面の表面法線ベクトルにより画定することができる。反射スポット位置は、3つのキューブ面のそれぞれに当たってそこから反射されるときの光線を逐次追跡することにより決定される。キューブ材料の屈折率が1超である場合、フロント表面キューブの中および外への屈折も考慮に入れなければならない。多数の著者が、フロント表面反射および屈折に関連付けられる式を報告している(たとえば、ヘクト(Hecht)およびゼイジャック(Zajac)著、“光学(Optics)”、第2版,アディソン・ウェズリー(Addison Wesley)刊、1987年)。スポット図は幾何光学に基づくので、回折を無視することに留意されたい。したがって、スポット図ではキューブのサイズおよび形状は考慮されない。
【0081】
5つの逐次的溝の主要溝半角誤差が+2、+4、+6、+8、および+10分の角度である7.47度後方キャンティングされた5つの異なるキューブ(たとえば図12)の反射スポット図を図24に示す。この例では、側方溝の半角誤差はゼロ(二面角2−3=0)であり、スキュー角およびインクリネーション角についても同様である。側方溝夾角はすべて90°である。図24中の鉛直軸および水平軸は、それぞれ、基準平面28および24に対応する。主要溝面の傾きの変化は主に鉛直軸および水平軸に沿って位置する反射スポットを生じることに留意されたい。
【0082】
図24の作成に使用したのと同一の誤差で、主要溝半角誤差の関数としての二面角誤差を表3に示す。二面角1−2および二面角1−3は、同一の大きさおよび符号を有するので、反対に変化しないことに留意されたい。
【0083】
【表3】
【0084】
−20、−15、−10、−5、および0分の角度の二面角2−3誤差を有する同一タイプの後方キャンテッドキューブの反射スポット図を図25に示す。この例では、主要溝の半角誤差はゼロ(二面角1−3=二面角1−2=0)であり、スキュー角およびインクリネーション角についても同様である。先に述べたように、側方溝の半角変化を用いて、二面角2−3誤差を生成することが可能である。二面角2−3誤差により、主に水平軸に沿って位置する反射スポットが得られる。
【0085】
図26は、図24〜25に対して記載したのと同一タイプの後方キャンテッドキューブで主要溝半角誤差を側方溝の半角変化と組み合わせることにより得られた反射スポット図を示している。この例では、主要溝半角誤差は10分の角度であり、一方、二面角2−3誤差は、層状体上の4つの異なる隣接しているキューブに対して、それぞれ、0、2、4、および6分の角度である。+3分の角度の一定夾角誤差を用いて、表4に示されるような対向半角誤差を有するこれらの側方溝を作製することが可能である。反射スポットは、この場合にも、主に鉛直軸および水平軸に沿って位置し、二面角2−3に対する値がゼロでないことに基づいて水平平面内にいくらかの広がりを有する。全体的に、反射スポット図は局所化されて不均一である。
【0086】
図26の作成に使用した誤差で、主要溝半角誤差の関数としての二面角誤差を表4に示す。二面角1−2および二面角1−3は、同一の大きさおよび符号を有するので、反対に変化しない(すなわち、実質的に反対に変化していることはない)ことに留意されたい。所与のキューブコーナーが2つの隣接している側方溝および好ましくは主要溝表面により形成されることに留意されたい。図22中の上側側方溝は二面角1−3を形成し、一方、下側側方溝は二面角1−2を形成する。上側および下側側方溝の交差は二面角2−3を形成する。側方溝夾角は、隣接しているキューブを形成する溝の上側および下側半角誤差の合計である(たとえば、表4に関して、全夾角は+3分の角度であり、第1のキューブの上側半角に隣接しているキューブの下側半角を加えることにより得られる)。
【0087】
【表4】
【0088】
以上の例(すなわち、図24〜26)は、さまざまな半角誤差を有する後方キャンテッドキューブに対するものであった。同様にして、前方キャンテッドキューブが定性的に類似の反射スポット図(すなわち、とくに水平軸および鉛直軸に沿って局所化されたスポットを有する実質的に不均一な反射スポット図)を有することを示すことができる。前方キャンテッドキューブの二面角1−2および二面角1−3もまた、同一の大きさおよび符号を有するので、実質的に反対に変化しない。キューブコーナー型再帰反射シートの使用を考慮すると、局在化された不均一なスポット図(たとえば、図24〜26)は一般的には望ましくないことは明らかである。シートは、背景色としてもさらにはいくつかの場合には切抜き文字としても、多種多様な方位で標識上に配置することが可能である。さらに、標識は、典型的には、道路の右側、左側、または上に位置決めすることが可能である。人目を引くために再帰反射シートで標示された乗物の場合、目視者に対する乗物の位置は絶えず変化している。乗物の左右両方のヘッドライトにより再帰反射標的が照明され、運転者の位置は、これらのヘッドライトとはかなり異なる(さまざまな観測角および提示角)。運転者がヘッドライトの真上にくるオートバイのような乗物が一般に使用される。最後に、目視形状を画定している関連角度はすべて、運転者/観測者と再帰反射シートまたは標的との距離と共に変化する。これらの因子をすべて考慮すれば、反射スポットの比較的均一な広がりが再帰反射シートにきわめて望ましいことは明らかである。反対に変化している二面角1−2および二面角1−3を含めて広範囲の二面角誤差を容易に導入できる柔軟性のおかげで、スキュー角および/またはインクリネーション角を利用して比較的均一なスポット反射図を提供することが可能である。
【0089】
図27は、図24〜26で使用したのと同一の後方キャンテッドキューブを有する単一層状体でインクリネーション角だけ変化させて得られる反射スポット図を示している。側方溝の半角誤差は、各サイドで+1.5分の角度であり(二面角2−3および側方溝の角度誤差は+3分の角度である)、主要溝誤差は、ゼロである。スキュー角は、この例では+7分の角度で一定である。インクリネーション角は、4つの溝ごとに反復パターンで変化している(すなわち、2つの溝で+5分の角度、次に、2つの溝で−1分の角度)。スポットパターンは、図24〜26と比較して半径方向(観測方向)にも円周方向(表示方向)にもかなり均一に分布している。
【0090】
さまざまなインクリネーション角を有するこの例の二面角誤差を表5に示す。インクリネーション角(分の角度)の機械加工の順序は、反復パターンで、−1、+5、+5、−1である。たとえば、キューブno.1に関して、第1の側方溝は、−1のインクリネーション角を有し、第2の側方溝は、+5のインクリネーション角を有する。二面角1−2および二面角1−3は、異なる大きさ(二面角誤差の絶対値は等しくない)および符号で反対に変化していることに留意されたい。
【0091】
【表5】
【0092】
図28は、スキュー角がすべての側方溝に対して+7分の角度の代わりに−7分の角度である以外は図27のときと同一の形状から得られる反射スポット図を示している。スポット図は、この場合にも、図24〜26と比較して均一に分布し、さらに図27に示されるスポット図と相補的である。さまざまなインクリネーション角を有するこの例の二面角誤差を表6に示す。この場合にも、二面角1−2および二面角1−3が反対に変化し、大きさおよび/または符号の両方が異なることに留意されたい。スキュー角の符号の変化により、表5と比較して、二面角1−2および1−3の大きさおよび符号が切り換った。
【0093】
【表6】
【0094】
2つの以上の例の正のスキュー角および負のスキュー角を組み合わせることが可能であり、これにより図29のスポット図が得られる。この組合せは、+7分の角度のスキュー角を持たせて層状体の半分を機械加工し、−7分の角度のスキュー角を持たせて残りの半分を機械加工することにより、達成しうる。他の選択肢として、正のスキュー角および負のスキュー角を各層状体内で組み合わせれば、所与の層状体内でスキュー角とインクリネーション角の両方を同時に変化させることが可能になる。後者の場合、正のスキュー角領域と負のスキュー角領域との境界に位置決めされたキューブから少数の他の反射スポットが得られるであろう。スポット図は、図27および28のスポット図の組合せから得られるので、図24〜26と比較してとくに均一に分布する。表5および6に示される二面角誤差の組合せは、このスポット図に関連付けられ、二面角1−2および二面角1−3は、対立して大きさおよび符号が変化している。
【0095】
図30は、7.47°前方キャンティングされたキューブであること以外は図29のときと同一の半角誤差、スキュー角、およびインクリネーション角を示す。スポット図は、同様に均一に分布するが、図29の後方キャンテッドスポット図とわずかに異なる。このスポット図に関連付けられる二面角誤差を表7にまとめる。この場合にも、二面角1−2および二面角1−3は、反対に変化し、二面角1−2および二面角1−3の大きさおよび/または符号が異なる少なくとも1つのキューブが含まれる。
【0096】
【表7】
【0097】
均一に分布したスポット図を提供すべく、同一のスキュー角およびインクリネーション角の組合せを側方キャンテッドキューブコーナーと組み合わせて有利に利用することも可能である。側方キャンテッドキューブは、先に論述したように、同一の列内に2つの異なるキューブ方位を有する。好ましくは、種々の照射角と方位角との組合せで均一な性能を得るために、所与の列内の両方のタイプのキューブ(たとえば、アルファ(α)およびベータ(β))に等しくスキュー角および/またはインクリネーション角の組合せを適用するように注意すべきである。スキュー角およびインクリネーション角を利用する6.03°側方キャンティングされたキューブの反射スポット図(図6、アライメント角90°または270°)を図31に示す。+7および−7分の角度のスキュー角と−1および5分の角度のインクリネーション角との同一の組合せを、アルファ(α)およびベータ(β)キューブの両方に等しく適用した。側方溝の半角誤差は、各サイドで+1.5分の角度であり(二面角2−3および側方溝の角度誤差は+3分の角度である)、主要溝誤差は、ゼロである。スポット図は、観測角および提示角に関して非常に均一に分布する。このスポット図に関連付けられる二面角誤差を表8にまとめる。この場合にも、二面角1−2および二面角1−3は、反対に変化し、二面角1−2および二面角1−3の大きさおよび/または符号が異なる少なくとも1つのキューブが含まれる。
【0098】
【表8】
【0099】
表5〜8の例示的なキューブコーナー素子の特徴は、3つの二面角誤差(二面角誤差は互いに異なる)を有する少なくとも1つ、典型的には複数のPGキューブコーナー素子が列内に形成されることである。他の特徴は、二面角誤差(したがって、スキュー角および/またはインクリネーション角)が層状体または隣接しているキューブコーナー素子の列全体にわたり反復パターンで配置されることである。さらに、隣接している層状体または列は、好ましくは、z軸を中心に180°回転させて層状体の対または列の対を形成すること以外は、光学的に同等である。
【0100】
層状体を機械加工し、層状体を複数有するマスターツールを形成する方法は、米国特許第6,257,860号明細書(ルトレル(Lutrell)ら)に記載されているように公知である。側方溝がスキュー角および/またはインクリネーション角を実質的に含まない実施形態では、側方溝は、米国特許第6,257,860号明細書(ルトレル(Lutrell)ら)および米国特許第6,159,407号明細書(クリンケ(Krinke)ら)に記載されているように複数のスタックド層状体として形成可能である。
【0101】
したがって、1つまたは複数の層状体を提供し、層状体の作用表面16上にV字形溝を形成することにより、層状体を機械加工する方法が本明細書にさらに記載されている。ここで、先に記載した特徴のいずれか1つまたは組合せを有する溝が形成される。
【0102】
一般的には、層状体(単数または複数)は、縁上に直接機械加工された溝を形成するのに好適な任意の基材を有しうる。好適な基材は、バリ生成を伴うことなくクリーンに機械加工され、低い延性および低い粒状性を呈し、そして溝形成後に寸法確度を保持する。さまざまな機械加工可能なプラスチックまたは金属を利用しうる。好適なプラスチックは、熱可塑性材料または熱硬化性材料、たとえば、アクリルまたは他の材料を含む。機械加工可能な金属としては、アルミニウム、黄銅、銅、無電解ニッケル、およびそれらの合金が挙げられる。好ましい金属としては、非鉄金属が挙げられる。好適な層状体材料は、たとえば、圧延、キャスティング、化学堆積、電気堆積、または鍛造により、シートの形態に形成可能である。好ましい機械加工材料は、典型的には、溝の形成時のカッティングツールの摩耗を最小限に抑えるように選択される。
【0103】
使用に好適なダイヤモンドツールは、ケイ・アンド・ワイ・ダイヤモンド(K&Y Diamond)(ニューヨーク州ムーアーズ(Mooers,NY))またはチャードン・ツール(Chardon Tool)(オハイオ州チャードン(Chardon,OH))から購入することのできるダイヤモンドツールのように高品質である。とくに、好適なダイヤモンドツールは、先端から10ミル以内がスクラッチフリーである。これは、2000倍の白色光顕微鏡を用いて評価できる。典型的には、ダイヤモンドの先端は、約0.00003インチ(0.000762mm)〜約0.00005インチ(0.001270mm)の範囲内のサイズのフラット部分を有する。さらに、好適なダイヤモンドツールの表面仕上げは、好ましくは約3nm未満の粗さ平均および約10nm未満の峰から谷までの粗さを有する。表面仕上げは、機械加工可能な基材にテストカットを形成して、ビーコ(Veeco)の1部門であるワイコ(Wyko)(アリゾナ州トゥーソン(Tucson,AZ)から購入できるような顕微干渉計によりテストカットを評価することにより、評価可能である。
【0104】
V字形溝は、各溝を高精度で形成することのできるダイヤモンドツール機械を用いて形成される。コネチカット州ブリッジポートのムーア・スペシャル・ツール・カンパニー(Moore Special Tool Company,Bridgeport,CT);ニューハンプシャー州キーンのプレシテック(Precitech,Keene,NH);およびペンシルバニア州ピッツバーグのエアロテック・インコーポレーテッド(Aerotech Inc.,Pittsburg,PA)は、そのような目的に好適な機械を製造している。そのような機械は、典型的にはレーザー干渉計位置決めデバイスを含む。好適な精密ロータリーテーブルは、エイエイ・ゲイジ(AA Gage)(ミシガン州スターリング・ハイツ(Sterling Heights,MI))から商業的に入手可能であり;一方、好適な顕微干渉計は、ザイゴ・コーポレーション(Zygo Corporation)(コネチカット州ミドルフィールド(Middlefield,CT))およびビーコ(Veeco)の1部門であるワイコ(Wyko)(アリゾナ州トゥーソン(Tucson,AZ))から商業的に入手可能である。溝間隔および溝深さの精度(すなわち、ポイントツーポイント位置決め)は、好ましくは少なくとも±500nm程度の精度、より好ましくは少なくとも±250nm程度の精度、最も好ましくは少なくとも±100nm程度の精度である。溝角の精度は、カットの長さ(たとえば、層状体の厚さ)にわたり、少なくとも±2分の角度(±0.033度)程度の精度、より好ましくは少なくとも±1分の角度(±0.017度)程度の精度、さらにより好ましくは少なくとも±1/2分の角度(±0.0083度)程度の精度、最も好ましくは少なくとも±1/4分の角度(±0.0042度)程度の精度である。さらに、解像度(すなわち、電流軸位置を検出する溝形成機の能力)は、典型的には精度の少なくとも約10%である。したがって、±100nmの精度では、解像度は少なくとも±10nmである。短い距離(たとえば、約10隣接している平行溝)では、精度は解像度にほぼ等しい。そのような高確度の複数の溝を継続時間にわたり終始一貫して形成するために、プロセス温度は、±0.01℃以内、好ましくは±0.1℃以内に保持される。
【0105】
スキュー角および/またはインクリネーション角に基づく単一キューブコーナー素子の形状変化は、単一素子に対しては小さいが(たとえば、主に二面角の変化に限られる)、層状体のスタックにスキュー角を有する溝および/またはインクリネーション角を有する溝を形成する際には問題を伴いうることは明らかである。側方溝は1°程度まで平行からずれるので、かなり多様なキューブ形状がスタックを横切って生成される可能性がある。これらの変化は、タックサイズの増加と共に増加する。それほど多様なキューブ形状を生成することなく同時に(すなわちスタックで)機械加工することのできる最大層状体数の計算値は、わずか2つ程度の層状体である(たとえば、0.002インチ(0.0508mm)の側方溝間隔を有する1°のスキュー角の厚さ0.020インチ(0.508mm)の層状体の場合)。
【0106】
スキュー角ドおよび/またはインクラインド側方溝を有する層状体のスタックを機械加工するときの問題が原因で、そのような実施形態の実施時には、好ましくは、個別層状体中に溝形成機で側方溝を形成する。個別層状体の縁部に溝を形成し、マスターツールの形態に層状体を集成し、そして集成層状体の微細構造化表面を複製する好ましい方法は、2003年3月6日に出願された「微細構造化層状体の作製方法および装置」という名称の米国特許出願第10/383039号明細書に記載されている。米国特許出願第10/383039号は、本出願が優先権を請求する仮特許出願第60/452464号と同時に出願された。
【0107】
再帰反射シートを形成するのに好適なサイズのマスターツールを形成するために、マスターツールの表面を電気メッキしてネガティブコピーを形成し、続いてネガティブコピーを電気メッキしてポジティブコピーを形成し、ポジティブコピーを電気メッキして第2世代のネガティブコピーを形成するなどの処理を繰り返すことにより、複数のツール(タイルとも呼ばれる)を形成すれる。ポジティブコピーはマスターツールと同一のキューブコーナー素子構造体を有するが、ネガティブコピーはキューブキャビティーレプリカである。したがって、ネガティブコピーツールは、ポジティブコピー(すなわちキューブコーナー素子)シートを作製するために利用され、一方、ポジティブコピーツールは、ネガティブコピー(すなわちキューブコーナーキャビティー)シートを作製するために利用される。さらに、再帰反射シートは、キューブコーナー素子構造体とキューブコーナーキャビティー微細構造体との組合せを有しうる。米国特許第4,478,769号明細書および同第5,156,863号明細書(Pricone)ならびに米国特許第6,159,407号明細書(Krinke)に記載されているような電鋳法は、公知である。次に、そのようなツールをタイリングして一体化させることにより、所望のサイズのマスターツールを集成することができる。本発明では、ツールは、典型的には同一の方位でタイリングされる。
【0108】
本明細書中で使用する場合、「シート」とは、キューブコーナー微細構造体が形成されている薄肉の高分子(たとえば合成)材料部片を意味する。シートは任意の幅および長さであってよく、そのような寸法は、シートを作製する装置により制限されるにすぎない(たとえば、ツールの幅、スロットダイオリフィスの幅などにより制限される)。再帰反射シートの厚さは、典型的には約0.004インチ(0.1016mm)〜約0.10インチ(2.54mm)の範囲内である。好ましくは、再帰反射シートの厚さは、約0.020インチ(0.508mm)未満、より好ましくは約0.014インチ未満(0.3556mm)である。再帰反射シートは、シールフィルムまたはオーバーレイのような表面層をさらに有しうる。再帰反射シートの場合、幅は、典型的には少なくとも30インチ(122cm)、好ましくは少なくとも48インチ(76cm)である。都合よく取り扱えるロール品としてシートが提供されるように、シートは、典型的には、約50ヤード(45.5m)〜100ヤード(91m)までその長さが連続している。しかしながら、他の選択肢として、シートは、ロール品としてではなく個別シートとして製造可能である。そのような実施形態では、シートは、好ましくは完成物品と寸法が一致する。たとえば、再帰反射シートは、標準的な米国の標識の寸法(たとえば、30インチ×30インチ(76cm×76cm))を有しうるので、シートの作製に利用される微細構造化ツールは、ほぼ同一の寸法を有しうる。ライセンスプレートまたは反射ボタンのようなより小さい物品では、それに応じてより小さい寸法を有するシートを利用しうる。
【0109】
再帰反射シートは、好ましくは、一体型材料として製造される。すなわち、キューブコーナー素子は、成形型の寸法全体にわたり連続層として相互連結され、個別素子およびそれらの間の連結部は、同一の材料を含む。微細プリズム状表面の反対側のシート表面は、典型的には平滑かつ平坦であり、「ランド層」とも呼ばれる。ランド層の厚さ(すなわち、複製された微細構造体から得られる部分を除いた厚さ)は、0.001〜0.100インチ、好ましくは0.003〜0.010インチである。そのようなシートの製造は、典型的には、ツール上に流動性樹脂組成物をキャスティングしてから組成物を硬化させてシートを形成することにより達成される。ツール上に流動性樹脂をキャスティングする好ましい方法は、2003年3月6日に出願された「再帰反射シートの作製方法およびスロットダイ装置」という名称の米国特許出願第10/382375号明細書に記載されている。米国特許出願第10/382375号は、本発明が優先権を請求する仮特許出願特許出願第60/452464号と同時に出願された。
【0110】
しかしながら、場合により、米国特許第4,601,861号明細書(プリコーン(Pricone))に記載されているように、ツールをエンボスツールとして利用して再帰反射物品を形成することができる。他の選択肢として、PCT出願、国際公開第95/11464号パンフレットおよび米国特許第3,684,348号明細書に教示されているようにプレフォームドフィルムにキューブコーナー素子をキャストすることにより、またはプレフォームドフィルムをプレフォームドキューブコーナー素子にラミネートすることにより、再帰反射シートを層状製品として製造することができる。その際、個別キューブコーナー素子は、プレフォームドフィルムにより相互連結される。さらに、素子およびフィルムは、典型的には、異なる材料で構成される。
【0111】
2003年3月6日に出願された「再帰反射シートおよび物品の作製方法」という名称の米国特許出願第60/452605号明細書に詳述されているように、再帰反射シートの製造時、ツールのチャネルを前進するツールの方向におおよそアライメントすることが好ましい。米国特許出願第60/452605号は、本発明が優先権を請求する仮特許出願特許出願第60/452464号と同時に出願された。したがって、任意のさらなる製造工程を行う前、シートの主要溝は、シートのロールの縁に実質的に平行であろう。本発明者らは、このダウンウェブ法でチャネルの方位を決定すればクロスウェブ方向に主要溝の方位を決定する場合よりも迅速な複製が可能であることを見いだした。主要溝と他のキューブ構造体とが組み合わされて改善された樹脂流動のチャネルが形成されるものと推測される。
【0112】
本発明の再帰反射シートに好適な樹脂組成物は、好ましくは、寸法安定性、耐久性、耐候性があり、しかも所望の形状に容易に成形可能な透明材料である。好適な材料の例としては、ローム・アンド・ハース・カンパニー(Rohm and Haas Company)により製造されているプレキシガラス(Plexiglas)ブランド樹脂のように約1.5の屈折率を有するアクリル;約1.59の屈折率を有するポリカーボネート;熱硬化性アクリレートおよびエポキシアクリレートのような反応性材料;イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー・インコーポレーテッド(E.I.Dupont de Nemours and Co.,Inc.)によりサーリン(SURLYN)のブランド名で販売されているようなポリエチレン系イオノマー;(ポリ)エチレン−co−アクリル酸;ポリエステル;ポリウレタン;およびセルロースアセテートブチレートが挙げられる。ポリカーボネートは、より広範な照射角にわたり改善された再帰反射性能に一般に寄与する靭性および比較的高い屈折率を有するのでとくに好適である。これらの材料は、染料、着色剤、顔料、UV安定化剤、または他の添加剤をも含有しうる。
【0113】
金属コーティングのような正反射コーティングをキューブコーナー素子の背面に配置することができる。金属コーティングは、アルミニウム、銀、またはニッケルのような金属を気相堆積または化学堆積させるなどの公知の方法により適用することができる。金属コーティングの固着性を促進すべく、キューブコーナー素子の背面にプライマー層を適用することが可能である。金属コーティングに加えてまたはその代わりに、キューブコーナー素子の背面にシールフィルムを適用することができる。たとえば、米国特許第4,025,159号明細書および同第5,117,304号明細書を参照されたい。シールフィルムは、境界における全内反射を可能にしかつ汚れおよび/または湿分のような汚染物質の進入を阻止する空気境界をキューブの背面に保持する。さらに、耐久性(たとえば、屋外耐久性)の改善または画像受容表面の提供を目的として、シートの目視表面上で個別のオーバーレイフィルムを利用してよい。そのような屋外耐久性が得られれば、長期間(たとえば、1年、3年)の屋外暴露の後、ASTM D49560−1aに明記されているような十分な輝度規格が保持される。さらに、CAP Y白色度は、屋外暴露の前後で好ましくは30超である。
【0114】
キューブコーナー型再帰反射シートを基材に固定できるようにするために、キューブコーナー素子またはシールフィルムの後ろに接着剤層を配設することもできる。好適な基材としては、木材、アルミニウムシート、亜鉛メッキ鋼、高分子材料、たとえば、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルフルオリド、ポリカーボネート、ポリビニルクロリド、ポリウレタン、ならびにこれらのおよび他の材料から作製される多種多様なラミネートが挙げられる。
【0115】
図6に関して、層状体は、好ましくは、鉛直方向にアライメントされる。そのようにして、複製時、素子の列を各層状体から誘導する。しかしながら、他の選択肢として、上述した光学的特徴を水平アラインド層状体から誘導してもよい。列内の各素子の面を約3〜4ミクロン以内で共有する共通平面は、水平アラインド層状体では、わずかに(たとえば1°未満)変化しうる。たとえば走査電子顕微鏡法で観測可能なような鉛直方向または水平方向のわずかなミスアラインメントの存在に基づいてキューブの列が層状体から誘導されたことは明らかである。
【0116】
再帰反射シートの作製方法に関係なく、しかもマスターツールが層状体法または他の方法から誘導されたかに関係なく、本発明に係るシートは、先に記載したように顕微鏡または干渉計を用いてシートを調べることにより検出することのできる特定のユニークな光学的特徴を有する。さらに、再帰反射シートは、層状体(単数または複数)に対して先に記載した特徴のいずれか1つまたは組合せを含む。
【0117】
一態様において、再帰反射シートは、列内の第1および第2の共存素子間の夾角が列内の第2および第3の共存素子間の夾角と異なるキューブコーナー素子の列またはキューブコーナー素子のアレイを有する。シートに関して、列は、列内の各素子の面が共通平面(たとえば、主要溝面、作用表面12または14)を共有する素子により画定される。隣接しているキューブ間の夾角差の大きさならびに列内またはアレイ内の他の好ましい特性(たとえば、反復パターン配置、共通峰高さ、互いに名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である二等分平面)は、層状体に対して先に記載したのと同じである。
【0118】
他の選択肢としてまたはそれと組み合わせて、再帰反射シートは、列内またはアレイ内の素子の少なくとも一部分が優位に側方キャンティングされかつ素子が平面図中で素子の列に実質的に垂直な二面縁に対して45°〜135°のアライメント角および/または225°〜315°のアライメント角を有する、キューブコーナー素子(たとえばPGキューブコーナー素子)の列またはアレイを有する。好ましい実施形態では、再帰反射シートは、これらの各アライメント角を有してキューブコーナー素子の列またはキューブコーナー素子を有するアレイを有する。そのようなアレイは、優位に前方キャンティングされたキューブコーナー素子も優位に後方キャンティングされたキューブコーナー素子も実質的に含まない。優位に側方キャンティングされたキューブコーナー素子を有する再帰反射シートは、層状体に関して先に記載した特性のいずれかをさらに有しうる。
【0119】
他の選択肢としてまたはそれと組み合わせて、再帰反射シートは、スキュー角を有する溝および/またはインクリネーション角を有する溝を有する。したがって、列またはアレイにおいて、(たとえばサイド)一連の溝の少なくとも2つの隣接している溝、好ましくはすべての溝は、名目上平行超〜約1°の範囲内の量だけ非平行であり、この特徴を有する層状体に関して記載された種々の属性をさらに含んでいてもよい。
【0120】
他の態様において、単独で、または異なる夾角および/もしくは側方キャンティングと組み合わせて、再帰反射シートは、一連の側方溝の溝が名目上互いに平行にあるが基準平面28に対して名目上平行〜非平行の範囲内である素子の列またはアレイを有しうる。
【0121】
再帰反射シートは、その高い再帰反射輝度の点からみて、交通標識、路面標示、乗物標示、および人的安全物品のようなさまざまな用途に有用である。再帰反射係数(RA)は、米国連邦試験方法規格370に準拠して、−4°の照射角、0°の方位角、種々の観測角で測定可能である。得られるシートは、タイプIXシートに対するASTM D4956−1a「交通規制用再帰反射シートの標準規格」に明記されている輝度規格を満たす。さらに、−4°の照射角、0°および90°の方位角の平均、0°の提示角、および種々の観測角に対して、指定の輝度最小値を有意に超える。輝度は、0.2°の観測角において、好ましくは少なくとも625カンデラ毎ルクス毎平方メートル(CPL)、より好ましくは少なくとも650CPL、さらにより好ましくは少なくとも675CPL、最も好ましくは少なくとも700CPLである。他の選択肢として、好ましくはそれに加えて、0.33°の観測角における輝度は、好ましくは少なくとも575CPL、より好ましくは少なくとも600CPL、さらにより好ましくは少なくとも625CPL、最も好ましくは少なくとも650CPLである。これに加えてまたは他の選択肢として、0.5°の観測角における輝度は、好ましくは少なくとも375CPL、より好ましくは少なくとも400CPL、さらにより好ましくは少なくとも425CPL、最も好ましくは少なくとも450CPLである。さらに、1.0°の観測角における輝度は、好ましくは少なくとも80CPL、より好ましくは少なくとも100CPL、最も好ましくは少なくとも120CPLである。同様に、1.5°の観測角における輝度は、好ましくは少なくとも20CPL、より好ましくは少なくとも25CPLである。再帰反射シートは、直前で述べた輝度判定基準の任意の組合せを有しうる。
【0122】
観測角0.5の近傍の領域(すなわち、0.4〜0.6)における改善された輝度は、およそ200〜400フィートの距離にある乗用車から交通標識(たとえば、右側路肩に取り付けられた交通標識)を目視するうえで、および約450〜950フィートの距離にある大型トラックの運転者から交通標識(たとえば、右側路肩に取り付けられた交通標識)を目視するうえで、とくに重要である。
【0123】
本発明の目的および利点について以下の実施例によりさらに説明するが、実施例に記載の特定の材料およびその量ならびに他の条件および細目は、本発明を過度に限定するように解釈すべきものでない。
【実施例】
【0124】
実施例1Aおよび1B
先に引用した2003年3月6日出願の米国特許出願第10/383039号明細書に記載されているように、個別層状体中に溝を形成し、個別層状体を集成し、そして微細構造化表面を複製した。米国特許出願第10/383039号は、本出願が優先権を請求する仮特許出願特許出願第60/452464号と同時に出願された。機械加工された層状体はすべて、図6および7に示された形状を有し、側方溝の半角誤差、スキュー角、およびインクリネーション角の変化に基づくわずかな変化を有していた。層状体厚さは0.0075インチ(0.1905mm)であり、側方溝間隔は、直前に記載のわずかな変化を除いて0.005625インチ(0.1428mm)であった。8つのキューブの反復パターンを各層状体上に逐次的に形成した。以下に記載の表10〜14に示されるように、側方溝の半角誤差、スキュー角、およびインクリネーション角を変化させることにより、このキューブ反復パターンを形成した。表中の各列は、個別側方溝の機械加工時に使用したパラメーターを規定している。図22に規定されているキューブコーナー二面角誤差は、各キューブを形成する主要溝表面と交差する2つの隣接している側方溝により形成される。したがって、二面角誤差を画定している列は、それらの隣接している側方溝を明確にすべく、表中で位置をずらして配置されている。
【0125】
以下の表10〜14のそれぞれに報告されている二面角誤差が得られるように、側方溝の角度誤差および/またはスキュー角および/またはインクリネーション角の異なった8つの層状体を形成した。ただし、表13では、側方溝の一部分のスキュー角を改変した。
【0126】
層状体1および層状体2
第1の層状体および第2の層状体の側方溝パラメーター(第2の層状体は、第1の層状体に対する対向層状体である)を、それぞれ、表10および11に報告する。主要溝半角誤差は、すべての主要溝で−8分の角度であった。側方溝名目上夾角(直交キューブを生成するのに必要な角度)は、75.226°および104.774°であった。すべての側方溝で夾角誤差は−9.2分の角度であったので、実際の側方溝夾角は75.073°および104.621°であった。側方溝の夾角誤差は一定にしたが、半角誤差は変化させた。表10の第3欄に示されるように、第1の層状体タイプの半角誤差は、−14.8分の角度〜5.6分の角度の範囲内にあった。半角誤差は、各側方溝の2つの半角に対応する2つのグループ(合計すると−9.2分の角度)で示されている。二面角2−3誤差は、隣接している側方溝の半角誤差の組合せから生じ、第4欄にまとめられている。第1の層状体では、二面角2−3誤差を−1.6分の角度から−16.8分の角度まで変化させた。
【0127】
スキュー角およびインクリネーション角は、それぞれ、表10の第5欄および第6欄に示されている。第1の層状体では、スキュー角は、−8.0分〜15.0分の角度の範囲内であった。インクリネーション角は、−6.1分の角度から10.8分の角度まで変化させた。側方溝のスキュー角およびインクリネーション角から得られる1−2および1−3二面角誤差を最後の2つの欄に示す。二面角誤差1−2および1−3を反対に変化させ、層状体中の少なくとも1つのキューブが、異なる大きさおよび/または符号を有する二面角誤差1−2および1−3を含むようにした。
【0128】
第2の層状体の側方溝は、表11にまとめられており、表10の層状体と密接な関係がある。名目上側方溝角度および側方溝夾角誤差を明示する第1欄および第2欄は同等である。側方溝パラメーター(半角誤差、スキュー角、およびインクリネーション角)ならびに二面角誤差に対する他のすべての欄は、表10に対して反転されている。これは、対向層状体がz軸を中心に180°回転されること以外はその対応物と光学的に同等であるという事実を反映している。
【0129】
層状体4、層状体6、および層状体8
簡潔にするために、第4、第6、および第8の層状体(それぞれ、第3、第5、および第7の層状体に対向する)の側方溝パラメーターは、反復して記載しない。なぜなら、側方溝パラメーターは、いま説明したように上述した反転関係を有するからである。
【0130】
層状体3
第3の層状体の側方溝パラメーターを表12に示す。主要溝半角誤差は、−8分の角度であった。基本的形状(寸法および名目上側方溝夾角)は、第1の層状体タイプと同じであった。この場合にも、すべての側方溝で実際の夾角誤差は、−9.2分の角度であった。第2の層状体タイプ側方溝の半角誤差は、−14.8分の角度〜5.6分の角度の範囲内であった。二面角2−3誤差は、−1.6分の角度から−16.8分の角度まで変化させた。この層状体タイプでは、スキュー角は、−14.0分の角度〜21.3分の角度の範囲内であり、一方、インクリネーション角は、−12.7分の角度から16.8分の角度まで変化させた。1−2および1−3二面角誤差(最後の2つの欄に示される)は、反対に変化させた。
【0131】
層状体5
第5の層状体の溝パラメーターを表13に示す。主要溝半角誤差は、−4分の角度であった。基本的形状(寸法および名目上側方溝夾角)は、前述の層状体として同じであった。すべての側方溝で夾角誤差は−1.6分の角度であったので、実際の側方溝夾角は75.199°および104.747°であった。第3の層状体タイプの半角誤差は、−5.2分の角度〜3.6分の角度の範囲内であった。二面角2−3誤差は、−7.2分の角度から4.0分の角度まで変化させた。スキュー角は、−7.0分の角度〜9.5分の角度の範囲内であり、一方、インクリネーション角は、−8.2分の角度から1.4分の角度まで変化させた。1−2および1−3二面角誤差(最後の2つの欄に示される)は、反対に変化させた。
【0132】
層状体7
第7の層状体の側方溝パラメーターを表14に示す。主要溝半角誤差は、−4.0分の角度であった。基本的形状(寸法および名目上側方溝夾角)は、第1の層状体タイプと同じであった。この場合にも、すべての側方溝で実際の夾角誤差は、−1.6分の角度であった。半角誤差は、−5.2分の角度〜3.6分の角度の範囲内であった。二面角2−3誤差は、−7.2分の角度から4.0分の角度まで変化させた。この層状体タイプでは、スキュー角は、−5.3分の角度〜5.3分の角度の範囲内であり、一方、インクリネーション角は、−2.1分の角度から4.6分の角度まで変化させた。1−2および1−3二面角誤差(最後の2つの欄に示される)は、反対に変化させた。
【0133】
集成体が垂直壁(たとえば、横方向寸法が0.0001超の壁)を実質的に含まないような精度で対向層状体の素子の非二面縁を互いに接触させるように、合計208個の層状体を集成した。集成体全体にわたり層状体順位1〜8を逐次反復させるように層状体を集成し、次に、電鋳により集成体の構造化表面を複製してキューブキャビティーツールを形成した。集成および電鋳のプロセスについては、先に引用した2003年3月6日出願の米国特許出願第10/383039号明細書にさらに説明されている。米国特許出願第10/383039号は、本出願が優先権を請求する仮特許出願特許出願第60/452464号と同時に出願された。
【0134】
実施例1Aでは、圧縮成形プレスでツールを使用し、約375°F(191℃)〜385°F(196℃)の温度、約1600psiの圧力、および20秒間の滞留時間でプレスを行った。次に、成形されたポリカーボネートを5分間にわたり約200°F(100℃)に冷却した。
【0135】
実施例2Aでは、先に引用した2003年3月6日出願の米国特許出願第10/382375号明細書に記載されているように、溶融されたポリカーボネートをツール表面上にキャストした。米国特許出願第10/382375号は、本出願が優先権を請求する仮特許出願特許出願第60/452464号と同時に出願された。
【0136】
実施例1Aおよび1Bのいずれについても、連続シーリング法でアモルファスコポリエステル含有表面を微細構造化ポリカーボネートフィルム表面に接触させることにより、0.7ミルのポリエステルと0.85ミルのアモルファスコポリエステルとを含む二層シールフィルムをキューブコーナー素子の背面に適用した。テフロン(登録商標)スリーブを有するゴムニップロールおよび加熱鋼ロールに構成体を連続的に通した。ゴムニップロールの表面は約165°Fであり、加熱鋼ロールの表面は約405°Fであった。ニップ圧は約70ポンド/毎線インチであり、速度は20フィート毎分であった。シーリング後の輝度保持は、約70%であった。
【0137】
得られたシートは、タイプIXシートに対するASTM D4956−1a「交通規制用再帰反射シートの標準規格」に明記されている輝度規格を満たす。さらに、以下のように、−4°の照射角、0°および90°の方位角の平均、0°の提示角、および種々の観測角に対して、指定の輝度最小値を有意に超える。
【0138】
【表9】
【0139】
表9は、本発明に係る再帰反射シートが比較再帰反射シート2および比較再帰反射シート3と比べて指示観測角のそれぞれにおいてより高い輝度を有することを示している。観測角0.5の近傍の領域における改善された輝度は、およそ200〜400フィートの距離にある乗用車から交通標識(たとえば、右側路肩に取り付けられた交通標識)を目視するうえで、および約450〜950フィートの距離にある大型トラックの運転者から交通標識(たとえば、右側路肩に取り付けられた交通標識)を目視するうえで、とくに重要である。
【0140】
実施例1Aのシートは2.0°以内の観測角における全光反射に対して測定された均一性指数が2.04であることが判明した。
【0141】
本発明の種々の修正形態および変更形態は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に自明なものとなろう。
【0142】
【表10】
【0143】
【表11】
【0144】
【表12】
【0145】
【表13】
【0146】
【表14】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キューブコーナー素子を有する層状体、層状体のアセンブリーを有するツール、およびその複製物(とくに再帰反射シート)に関する。
【背景技術】
【0002】
再帰反射材料は、材料に入射した光を再方向付けして元の光源の方向に戻す能力により特性付けられる。この特性のおかげで、さまざまな交通安全用途および人的安全用途で再帰反射シートが広く使用されるようになった。再帰反射シートは、乗物や衣類のための再帰反射テープだけでなく、道路標識、防柵、ライセンスプレート、路面標示、標示テープなどのさまざまな物品で一般に利用される。
【0003】
2つの公知のタイプの再帰反射シートは、微細スフェア型シートおよびキューブコーナー型シートである。「ビーズ型」シートと呼ばれることもある微細スフェア型シートでは、典型的には、入射光を再帰反射するために、バインダー層中に少なくとも部分的に埋め込まれかつ正反射材料または拡散反射材料(たとえば、顔料粒子、金属フレーク、または蒸気コートなど)に関連付けられた多数の微細スフェアが利用される。ビーズ型レトロリフレクターの対称形状に基づいて、微細スフェア型シートは、方位に関係なく、すなわち、シートの表面に垂直な軸を中心に回転したときに、同一の全光反射を呈する。したがって、そのような微細スフェア型シートは、シートを表面に配置するときの方位に対して比較的低い感受性を有する。しかしながら、一般的には、そのようなシートは、キューブコーナー型シートよりも低い再帰反射効率を有する。
【0004】
キューブコーナー型再帰反射シートは、典型的には、実質的に平面状のフロント表面と、複数の幾何学的構造体を有するリヤー構造化表面(その一部分または全部は、キューブコーナー素子として構成された3つの反射面を有する)と、を有する薄肉透明層を有する。
【0005】
キューブコーナー型再帰反射シートは、最初に、構造化表面を有するマスター成形型を作製することにより一般に製造される。そのような構造化表面は、完成シートがキューブコーナー角錐もしくはキューブコーナーキャビティー(またはその両方)を有するかに応じて、完成シートにおける所望のキューブコーナー素子形状またはそのネガティブ(反転)コピーのいずれかに対応する。次に、エンボス加工、押出、またはキャスト・キュアリングのような方法によりキューブコーナー型再帰反射シートを形成するためのツールを作製すべく、従来のニッケル電鋳のような任意の好適な技術を用いて成形型を複製する。米国特許第5,156,863号明細書(プリコーン(Pricone)ら)には、キューブコーナー型再帰反射シートの製造に使用されるツールを形成するためのプロセスの例示的全体図が提供されている。マスター成形型を作製するための公知の方法としては、ピンバンドリング法、直接機械加工法、および層状体を利用する方法が挙げられる。
【0006】
ピンバンドリング法では、複数のピン(それぞれ一端にキューブコーナー素子のような幾何学的形状を有する)を集成一体化してマスター成形型を形成する。米国特許第1,591,572号明細書(スティムソン(Stimson))および同第3,926,402号明細書(ヒーナン(Heenan))には、具体例が提供されている。ピンバンドリングでは、各ピンが個別に機械加工されるので、単一の成形型で多種多様なキューブコーナー形状を形成する能力が提供される。しかしながら、そのような方法は、小さいキューブコーナー素子(たとえば、約1ミリメートル未満のキューブ高さを有するもの)を作製するには非現実的である。なぜなら、精密機械加工を行ってからバンドル状態に配置することにより成形型を形成するには、多数のピンおよびそのサイズ減少が必要になるからである。
【0007】
直接機械加工法では、平面状基材(たとえば金属プレート)の表面に一連の溝を形成することにより切頭キューブコーナー素子を有するマスター成形型を形成する。周知の一方法では、3組の平行溝を60度の夾角で互いに交差させてキューブコーナー素子(それぞれ等辺底面三角形を有する)のアレイを形成する(米国特許第3,712,706号明細書(スタム(Stamm))を参照されたい)。他の方法では、2組の溝を60度超の角度で互いに交差させかつ第3の組の溝を他の2つの組のそれぞれと60度未満の角度で交差させることによりキャンテッドキューブコーナー素子対応対のアレイを形成する(米国特許第4,588,258号明細書(フープマン(Hoopman))を参照されたい)。直接機械加工では、典型的には、カッティングツールの連続運動により形成される同一の溝に沿って多数の個別の面が形成される。したがって、そのような個別の面は、成形型製造手順全体にわたりそれらのアライメントを保持する。このため、直接機械加工法は、非常に小さいキューブコーナー素子を精密機械加工する能力を提供する。しかしながら、直接機械加工法の欠点として、製造しうるキューブコーナージオメトリータイプの設計柔軟性が低減されるので、結果として、全光反射が影響を受ける。
【0008】
層状体を利用する方法では、1つの長手縁上に形成された幾何学的形状を有する層状体と呼ばれる複数の薄いシート(すなわちプレート)を集成してマスター成形型を形成する。層状体を利用する方法は、より少数の部品を別々に機械加工するので、ピンバンドリング法よりも一般に労力がかからない。たとえば、1つの層状体は、典型的には約400〜1000個の個別のキューブコーナー素子を有しうるのに対して、各ピンは、単一のキューブコーナー素子を有するにすぎない。しかしながら、ピンバンドリングにより達成しうる設計柔軟性と比較して、層状体を利用する方法は設計柔軟性が低い。層状体を利用する方法の具体例は、欧州特許出願公開第0844056A1号明細書(三村ら);米国特許第6,015,214号明細書(ヒーナン(Heenan)ら);米国特許第5,981,032号明細書(スミス(Smith));および米国特許第6,257,860号明細書(ラトレル(Luttrell))に見いだすことができる。
【0009】
切頭キューブコーナーアレイの隣接しているキューブコーナー素子の底面縁は、典型的には共面上にある。「完全キューブ」または「好適形状(PG)キューブコーナー素子」として記述される他のキューブコーナー素子構造体は、典型的には、共面上にない少なくとも2つの非二面縁を有する。そのような構造体は、典型的には、切頭キューブコーナー素子と比較してより高い全光反射を呈する。特定のPGキューブコーナー素子は、国際公開第00/60385号パンフレットに記載されているように、一連の基材の直接機械加工により作製しうる。しかしながら、この多段階製造プロセスを用いて幾何学的確度を保持するのは困難である。また、得られるPGキューブコーナー素子および/または素子の構成に関して設計上の制約が顕在化する可能性もある。これとは対照的に、ピンバンドリング法および層状体を利用する方法では、さまざまな形状および構成のPGキューブコーナー素子の形成が可能である。しかしながら、ピンバンドリング法とは異なり、層状体を利用する方法は、比較的小さいPGキューブコーナー素子を形成する能力をも有利に提供する。
【0010】
キューブコーナーの対称軸は、3つのキューブ面すべてに対して等角度をなして構造体を三等分するベクトルである。前述のスタム(Stamm)の切頭キューブでは、対称軸は等辺底面三角形に垂直であり、キューブはキャントやティルトを有していないとみなされる。「前方キャンティング」または「正のキャンティング」という用語は、1つの底面三角形夾角だけを60°よりも増大させるようにキャンティングされた切頭キューブコーナー素子を記述すべく、キューブコーナー技術分野で使用されてきた。逆に、「後方キャンティング」または「負のキャンティング」という用語は、底面三角形の夾角の2つを60°よりも増大させるようにキャンティングされたキューブコーナー素子を記述すべく、キューブコーナー技術分野で使用されてきた。米国特許第5,565,151号明細書(ニルセン(Nilsen))および米国特許第4,588,258号明細書(フープマン(Hoopman))を参照されたい。PGキューブコーナー素子のキャンティングについては、米国特許第6,015,214号明細書(ヒーナン(Heenan)ら)に記載されている。
【0011】
キューブコーナー素子を後方または前方にキャンティングすると、照射角特性が向上する。完全キューブコーナー素子は、所与のキャント量で切頭キューブコーナー素子よりも高い全光反射を有するが、完全キューブは、より大きい照射角において全光反射をより急速に減少させる。完全キューブコーナー素子の1つの利点は、より大きい照射角において実質的な性能低下を伴うことなく、小さい照射角においてより高い全光反射を呈することである。
【0012】
方位に対する全光反射(TLR)の均一性を改善するための一般的な方法は、たとえば、米国特許第4,243,618号明細書(ヴァン・アーナム(Van Arnam))、米国特許第4,202,600号明細書、および米国特許第5,936,770号明細書(ネステガード(Nestegard)ら)に記載されているように、最終製造時に複数の小さいツール領域を2つ以上の方位でタイリング(すなわち配置)する方法である。タイリングは、目視上好ましくないこともある。さらに、タイリングは、シートの製造に利用されるツールを作製する際の製造工程数を増大させる。
【0013】
TLRに関係する以外に、再帰反射シートの性能はまた、シートの観測角特性または発散プロファイルに関連する。これは、光源(すなわち、典型的には乗物のヘッドライト)に対する再帰反射光の広がりに関係する。キューブコーナーからの再帰反射光の広がりは、回折、偏光、非直交性などの効果により支配される。この目的のために、米国特許第5,138,488号明細書(シュチェック(Szczech))の第5欄の表1に記載されているような角度誤差を導入することが一般的である。
【0014】
同様に、欧州特許出願公開第0844056A1号明細書(三村)の実施例1には、フライカッティング法が記載されている。この方法では、ダイヤモンドカッティングツールを用いて生成されるV字形溝の下端角を順序正しくわずかに変化させて、70.6μm、70.7μm、および70.9μmの深さを有する3つのタイプの対称V字形溝が141.4μmの反復ピッチでシートの主面に垂直な方向に逐次反復してカッティングされた。それにより、89.9°、90.0°、および91.0°の3つの異なる頂角を反復パターンで有する一連の逐次的屋根形突起がシートの一方の縁上に形成された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
当技術分野では、さまざまな再帰反射設計およびそれらの測定または計算された再帰反射性能が報告されているが、業界としては、新しいキューブコーナー光学設計を有する再帰反射シート、ならびにとくに、改善された性能および/または改善された製造効率に寄与する特徴を有する再帰反射シートの製造方法が有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一実施形態では、本発明は、溝によって形成された面を有するキューブコーナー素子を有する層状体を開示する。ここで、隣接している溝は、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である。隣接している溝は、少なくとも2°異なる夾角を有する。一態様において、溝の夾角は反復パターンで配置される。他の態様において、素子の面は共通峰高さで交差する。さらに他の態様において、溝は、相互に名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である二等分平面を有する。
【0017】
他の実施形態では、本発明は、好適形状キューブコーナー素子を有する層状体を開示する。ここで、キューブコーナー素子の少なくとも一部分は、45°〜135°のアライメント角、225°〜315°のアライメント角、およびそれらの組合せから選択されるアライメント角でキャンティングされる。好ましくは、第1のキューブコーナー素子は、60°〜120°のアライメント角でキャンティングされ、第2の隣接しているキューブは、240°〜300°のアライメント角でキャンティングされる。さらに、第1のキューブのアライメント角と0°または180°との差は、好ましくは、第2のキューブのアライメント角と0°または180°との差と実質的に同一量である。
【0018】
これらの実施形態のいずれにおいても、キューブコーナー素子は、好ましくは、側方溝の交互対によって形成された面を有する。側方溝の各対の夾角は、好ましくは、実質的に合計180°である。さらに、第1の溝の夾角は、好ましくは、少なくとも約5°(たとえば約10°〜約20°)だけ90°よりも大きく、第2の隣接している溝の夾角は、ほぼ同一量だけ90°よりも小さい。
【0019】
他の実施形態では、本発明は、一連の側方溝によって形成された面を有するキューブコーナー素子を有する微細構造化表面を有する層状体を開示する。ここで、組内の少なくとも2つの溝は、名目上平行超〜約1°の範囲内の量だけ非平行である。素子は、好ましくは、1分〜60分の角度の二面角誤差を有する。二面角誤差は、好ましくは、反復パターンで配置される。溝は、符号およびまたは大きさが異なるスキュー角および/またはインクリネーション角を有する。
【0020】
すべての開示された実施形態において、隣接している溝は、好ましくは側方溝である。さらに、素子は、好ましくはそれぞれ、主要溝面を画定している面を共通平面内に有する。これに加えて、素子は、好適形状キューブコーナー素子である。
【0021】
他の実施形態では、本発明は、記載された層状体のいずれか1つまたは組合せを複数有するマスターツールを開示する。層状体は、好ましくは、隣接している層状体のキューブコーナー素子が反対向きになるようにして、集成される。素子は、好ましくは、台形、長方形、平行四辺形、五角形、および六角形から選択される形状を平面図で有する。
【0022】
他の実施形態では、本発明は、マルチジェネレーショナルツールおよび再帰反射シートを含めてマスターツールのレプリカを開示する。再帰反射シートは、層状体から誘導されうるかまたは層状体に関連して説明したのと同一の光学的特徴を有しうる。再帰反射シートは、キューブコーナー素子、キューブコーナーキャビティー、またはそれらの組合せを有しうる。
【0023】
したがって、他の実施形態では、本発明は、溝により画定されている面を有する好適形状キューブコーナー素子の列を有する再帰反射シートを開示する。ここで、隣接している側方溝は、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、かつ少なくとも2°異なる夾角を有する。他の実施形態では、再帰反射シートは、キューブコーナー素子の列を有する。ここで、第1のキューブコーナー素子は、45°〜135°のアライメント角でキャンティングされ、第2の隣接しているキューブは、225°〜315°のアライメント角でキャンティングされる。さらに他の実施形態では、再帰反射シートは、一連の側方溝により画定されている面を有する好適形状キューブコーナー素子の列を有する。ここで、組内の少なくとも2つの溝は、名目上平行超〜約1°の範囲内の量だけ非平行である。これらの実施形態のいずれにおいても、シートは、好ましくは、1つまたは複数の層状体に関連して説明した特徴をさらに有する。
【0024】
他の態様において、本発明は、好適形状キューブコーナー素子の隣接している列の対を有する再帰反射シートを開示する。ここで、列内の隣接している素子は、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である少なくとも1つの二面縁を有し、かつ列の対は、少なくとも2つのタイプの対応対を有する。
【0025】
好ましい実施形態では、開示された再帰反射シートは、改善された特性を有する。一実施形態では、再帰反射シートは、少なくとも1の均一性指数を呈する。そのような均一性は、2つ以上の方位でタイリングすることなく取得可能である。均一性指数は、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも5である。他の好ましい実施形態では、再帰反射シートは、ASTM D4596−1aに準拠して−4°の照射角および0.5°の観測角で少なくとも375カンデラ/ルクス/m2の0°および90°の方位における平均輝度を呈する好適形状キューブコーナー素子のアレイを有する。好ましくは、シートは、他の観測角においても改善された輝度を呈する。
【0026】
本発明はさらに、本明細書に記載の特徴の任意の組合せを開示する。
【0027】
図面、とくに層状体(単数または複数)の図面は、例示的なものなので、必ずしも実際のサイズを表しているわけではない。たとえば、図面(単数または複数)は、拡大層状体または層状体の拡大部分でありうる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】キューブコーナー素子を形成する前の例示的な単一層状体の斜視図である。
【図2】第1の一連の溝を形成した後の例示的な単一層状体の端面図である。
【図3】第1の一連の溝を形成した後の例示的な単一層状体の側面図である。
【図4】第1の一連の溝および第2の一連の溝を形成した後の例示的な単一層状体の上面図である。
【図5】第1の一連の溝および主要溝面を形成した後の例示的な単一層状体の上面図である。
【図6】第1の一連の溝と第3の主要溝とを有する4つの層状体の例示的な集成体の上面平面図であり、キューブコーナーは側方キャンティングされている。
【図7】層状体上の1対の隣接した側方キャンテッドキューブの対称軸を示す側面図である。
【図8】4つの層状体の斜視図であり、キューブコーナーは側方キャンティングされている。
【図9】4つの層状体の斜視図であり、キューブコーナーは側方キャンティングされており、かつ層状体は反対向きに集成されている。
【図10a】後方キャンテッドキューブコーナー素子の図である。
【図10b】側方キャンテッドキューブコーナー素子の図である。
【図10c】前方キャンテッドキューブコーナー素子の図である。
【図11】層状体の集成体の上面平面図を示しており、キューブコーナーは層状体の縁に垂直な平面内で前方キャンティングされている。
【図12】層状体の集成体の上面平面図を示しており、キューブコーナーは層状体の縁に垂直な平面内で後方キャンティングされている。
【図13】9.74°前方キャンティングされているポリカーボネートで構成されたキューブコーナー素子の対応対で予測された光反射等高線を表す等強度プロットを示している。
【図14】7.74°後方キャンティングされているポリカーボネートで構成されたキューブコーナー素子の対応対で予測された光反射等高線を表す等強度プロットを示している。
【図15】4.41°側方キャンティングされているポリカーボネートキューブを有する2つの対向する層状体で予測された光反射等高線を表す等強度プロットを示している。
【図16】5.23°側方キャンティングされているポリカーボネートキューブを有する2つの対向する層状体で予測された光反射等高線を表す等強度プロットを示している。
【図17】6.03°側方キャンティングされているポリカーボネートキューブを有する2つの対向する層状体で予測された光反射等高線を表す等強度プロットを示している。
【図18】7.33°側方キャンティングされているポリカーボネートキューブを有する2つの対向する層状体で予測された光反射等高線を表す等強度プロットを示している。
【図19】9.74°側方キャンティングされているポリカーボネートキューブを有する層状体の集成体で予測された光反射等高線を表す等強度プロットを示している。
【図20】アライメント角vs均一性指数のプロットである。
【図21】スキュー角ド側方溝を有する層状体の上面平面図を示している。
【図22】代表的なキューブコーナー素子の各二面角を示している。
【図23】正のインクリネーション角および負のインクリネーション角を示す層状体のキューブコーナー素子の側面図を示している。
【図24】2〜10分の角度の範囲内である主要溝角度誤差で7.47度後方キャンティングされたキューブに対するスポット図を示している。
【図25】0〜−20分の角度の範囲内である側方溝角度誤差で7.47度後方キャンティングされたキューブに対するスポット図を示している。
【図26】主要溝角度誤差と側方溝角度誤差とを組み合わせて7.47度後方キャンティングされたキューブに対するスポット図を示している。
【図27】7.47度後方キャンティングされたキューブに対するスポット図を示しており、側方溝は、7分の角度の一定スキュー角、+1.5分の角度の側方溝角度誤差、および4つの溝ごとに反復パターンで変化させたインクリネーション角を有する。
【図28】スキュー角が+7分の角度ではなく−7分の角度であること以外は図29と同一の形状のキューブに対するスポット図を示している。
【図29】図27と図28との組合せに対するスポット図を示している。
【図30】キューブが7.47度前方キャンティングされていること以外は図29と同一の角度誤差、スキュー角、およびインクリネーション角を有する。
【図31】種々のスキュー角およびインクリネーション角で6.02度側方キャンティングされたキューブに対するスポット図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、キューブコーナー素子を有する1つまたは複数の層状体、層状体の集成体を有するツール、およびレプリカに関する。本発明はさらに、再帰反射シートに関する。
【0030】
再帰反射シートは、好ましくは、層状体を利用する方法で作製されたマスター成形型から作製される。したがって、層状体(単数または複数)および再帰反射シートのキューブコーナー素子は、少なくとも一部分、好ましくは実質的にすべてが、切頭型でない完全キューブである。一態様において、平面図中の完全キューブ素子の底面は、三角形でない。他の態様において、完全キューブ素子の非二面縁は、特徴として、すべてが同一平面内にあるわけではない(すなわち、共面上にあるわけではない)。そのようなキューブコーナー素子は、好ましくは、「好適形状(PG)キューブコーナー素子」である。
【0031】
PGキューブコーナー素子は、基準平面に沿って延在するキューブコーナー素子の構造化表面に関連付けて定義しうる。本出願の目的では、PGキューブコーナー素子とは、(1)基準平面に対して非平行であり;かつ(2)隣接しているキューブコーナー素子の隣接している非二面縁に実質的に平行である;少なくとも1つの非二面縁を有するキューブコーナー素子を意味する。3つの反射面が長方形(正方形を有する)、台形、または五角形を有するキューブコーナー素子は、PGキューブコーナー素子の例である。PGキューブコーナー素子の定義に関連する「基準平面」とは、一群の隣接しているキューブコーナー素子または他の幾何学的構造体の近傍の平面(この平面に沿ってキューブコーナー素子または幾何学的構造体が配設される)を近似した平面または他の表面を意味する。単一層状体の場合、一群の隣接しているキューブコーナー素子は、単一の列または列の対よりなる。集成層状体の場合、一群の隣接しているキューブコーナー素子は、単一層状体および隣接している接触層状体のキューブコーナー素子を有する。シートの場合、一群の隣接しているキューブコーナー素子は、一般的には、人間の眼で識別可能な面積(たとえば、好ましくは少なくとも1mm2)、好ましくはシートの全寸法を覆う。
【0032】
「照射角」とは、基準軸(すなわち、再帰反射サンプルへの法線ベクトル)と入射光軸との間の角度を意味する。
【0033】
「方位」とは、基準軸を中心としてデータムマークの初期のゼロ度の方位からサンプルを回転しうる角度を意味する。
【0034】
層状体(単数または複数)とは、少なくとも2つの層状体を意味する。「層状体」とは、厚さの少なくとも約10倍(好ましくは、厚さの少なくとも100、200、300、400、500倍)の長さおよび高さを有する薄肉プレートを意味する。本発明は、なんら特定の寸法の層状体(単数または複数)に限定されるものではない。再帰反射シートの製造に使用することが意図される層状体の場合、最適の寸法は、最終設計の光学的要件(たとえば、キューブコーナーの構造)により拘束されうる。一般的には、層状体は、0.25インチ(6.35mm)未満、好ましくは0.125インチ(3.175mm)未満の厚さを有する。層状体の厚さは、好ましくは約0.020インチ(0.508mm)未満、より好ましくは約0.010インチ(0.254mm)未満である。典型的には、層状体の厚さは、少なくとも約0.001インチ(0.0254mm)、より好ましくは少なくとも約0.003インチ(0.0762mm)である。層状体の長さは、約1インチ(25.4mm)〜約20インチ(50.8cm)の範囲内であり、典型的には6インチ(15.24cm)未満である。層状体の高さは、典型的には約0.5インチ(12.7mm)〜約3インチ(7.62cm)の範囲内であり、より典型的には約2インチ(5.08cm)未満である。
【0035】
図1〜8に関して、層状体10は、第1の主面12および対向する第2の主面14を有する。層状体10はさらに、第1の主面12と第2の主面14と間に延在する作用表面16および対向下端表面18を有する。層状体10はさらに、第1の端表面20および対向する第2の端表面22を有する。好ましい実施形態では、層状体10は直方性多面体であり、対向表面は実質的に平行である。しかしながら、層状体10の対向表面は平行である必要がないことは理解されよう。
【0036】
層状体10は、その構造体上にデカルト座標系を重ねることにより三次元空間内で特性付けることができる。第1の基準平面24は、主面12と14との間の中央に配置される。xz平面と呼ばれる第1の基準平面24は、その法線ベクトルとしてy軸を有する。xy平面と呼ばれる第2の基準平面26は、層状体10の作用表面16と実質的に共面上に延在し、その法線ベクトルとしてz軸を有する。yz平面と呼ばれる第3の基準平面28は、第1の端表面20と第2の端表面22との間の中央に配置され、その法線ベクトルとしてx軸を有する。明確にするために、本発明に係る種々の幾何学的属性については、本明細書に明示されるデカルト基準平面を基準にして記述する。しかしながら、他の座標系を用いてまたは層状体の構造体を基準にしてそのような幾何学的属性を記述しうることは理解されよう。
【0037】
本発明に係る層状体(単数または複数)は、好ましくは、第1の一連の溝、オプションの第2の一連の溝、および好ましくは第3の主要溝によって形成された面(たとえば主要溝面)を有する(つまり含む)キューブコーナー素子を有する。
【0038】
図2〜9は、層状体10の作用表面16内に複数のキューブコーナー素子を有する構造化表面を示している。一般的には、少なくとも2つ、好ましくは複数の溝30a、30b、30cなど(一括して30として参照される)を含む第1の一連の溝は、層状体10の作用表面16内に形成される。溝30は、層状体10の第1の主面12および作用表面16と交差する軸に沿ってそれぞれの溝角頂33およびそれぞれの第1の基準縁36が延在するように形成される。層状体10の作用表面16は不変(すなわち非構造化)状態に保持された部分を含んでいてもよいが、作用表面16は非構造化表面部分を実質的に含まないことが好ましい。
【0039】
特定の溝の方向は、溝角頂にアライメントされたベクトルにより画定される。溝方向ベクトルは、そのx、y、およびz方向成分により規定しうる。ここで、x軸は基準平面28に垂直であり、y軸は基準平面24に垂直である。たとえば、溝30bの溝方向は、溝角頂33bにアライメントされたベクトルにより画定される。溝が平行でなくても(すなわち、異なるz方向成分であっても)、上面平面図中では溝角頂が互いに平行にみえる可能性があることに留意することが重要である。
【0040】
本明細書中で使用する場合、「一連の溝」という用語は、一連の溝中の隣接している溝に対して名目上平行〜1°以内の角度で非平行の範囲内である層状体10の作用表面16内に形成された溝を意味する。本明細書中で使用する場合、「隣接している溝」とは、名目上平行または1°以内の角度で非平行である最近接溝を意味する。その代わりにまたはそれに加えて、一連の溝の溝は、後述されるように特定の基準平面に対して名目上平行〜1°以内の角度で非平行の範囲内でありうる。したがって、個別の溝および/または一連の溝の溝に関連する各特徴(たとえば、垂直、角度など)は、上述した潜在的偏差度を有することは理解されよう。名目上平行溝とは、意図的変化が溝形成機の精度の範囲内で導入されない溝である。一連の溝の溝は、さらに詳細に後述されるように、夾角誤差および/またはスキュー角および/またはインクリネーション角のような複数の非直交性(MNO)を導入する目的で小さい意図的変化をも有しうる。
【0041】
図3〜9について説明する。第1の一連の溝は、溝角頂33b、33c、33dなど(一括して33として参照される)で交差する第1の溝表面32a、32b、32cなど(一括して32として参照される)と第2の溝表面34b、34c、34dなど(一括して34として参照される)とを画定している溝30a、30b、30cなど(参照番号30により一括して参照される)を含む。層状体の縁において、溝形成操作により単一溝表面32aを形成しうる。
【0042】
図4に示される他の実施形態では、層状体10は、場合により、同様に層状体10の作用表面16内に形成された少なくとも2つ、好ましくは複数の隣接している溝(一括して38として参照される)を含む第2の一連の溝をさらに有しうる。この実施形態では、第1および第2の一連の溝は、近似的に第1の基準平面24に沿って交差して、複数の交互に現れる峰とv字形の谷とを有する構造化表面を形成する。他の選択肢として、峰およびv字形の谷が互いに角度をなすようにすることができる。溝38は、図示されるように、溝角頂41b、41cなど(一括して41として参照される)で交差する第3の溝表面40a、40bなど(一括して40として参照される)と第4の溝表面42b、42cなど(一括して42として参照される)とを画定している。層状体の縁において、溝形成操作により単一溝表面40aを形成しうる。
【0043】
また、これらの第1および第2の一連の溝はいずれも、本明細書中で「側方溝」として参照されることもある。本明細書中で使用する場合、側方溝とは、溝(単数または複数)が、それらのそれぞれの方向ベクトルについて、一連の側方溝の隣接している側方溝に対して名目上平行〜1°以内の角度で非平行の範囲内である一連の溝を意味する。その代わりにまたはそれに加えて、側方溝とは、基準平面28に対して名目上平行〜基準平面28に対して1°以内の角度で非平行の範囲内である溝を意味する。側方溝は、典型的には、平面図中において基準平面24に垂直〜上述した偏差度である。側方溝が名目上平行であるかまたは1°以内の角度で非平行であるかに依存して、複製される集成マスター中の個別素子は、顕微鏡を用いてまたは干渉計で側方溝の二面角もしくは平行度を測定することにより調べた場合、平面図中において典型的には台形、長方形、平行四辺形、および五角形、さらには六角形の形状を有する。好適な干渉計については後述する。
【0044】
素子の第3の面は欧州特許出願公開第0844056A1号明細書(三村ら)に記載されているように作用表面12または14を有しうるが、層状体は、好ましくは、実質的に層状体の全長に延在する主要溝面50を有する。第3の面が層状体の作用表面(すなわち12もしくは14)であるかまたは主要溝面であるかに関係なく、列内の各素子の第3の面は、好ましくは、共通平面を共有する。図5〜6および8〜9について説明する。主要溝面50は、面32、34、40、および42に名目上垂直〜1°以内非垂直の範囲内である。主要溝面50の形成の結果として、層状体上に3つの垂直またはほぼ垂直な光学面を有する複数のキューブコーナー素子を有する構造化表面が得られる。単一層状体は、単一主要溝面、両サイドの1対の溝面、および/または1対の主要溝面を同時に提供する作用表面16と基準平面24との交線に沿った主要溝を有しうる(たとえば図4)。主要溝は、好ましくは、基準平面26に1°以内で平行である。
【0045】
反対向きになっている1対の単一層状体、好ましくは反対向きになっている複数の層状体は、典型的には、それらのそれぞれの主要溝面が主要溝を形成するようにマスターツールとして集成される。たとえば、図6および8〜9に示されるように、4つの層状体(すなわち、層状体100、200、300、および400)は、好ましくは、層状体対が1つおきに反対向きに位置決めされるように集成される(すなわち、層状体100のキューブコーナー素子は、層状体200のキューブコーナー素子に対して反対向きあり、層状体300のキューブコーナー素子は、層状体400のキューブコーナー素子に対して反対向きある)。さらに、反対向きになっている層状体対は、それらのそれぞれの主要溝面50が主要溝52を形成するように位置決めされる。好ましくは、対向する層状体は、垂直壁の形成を最小限に抑えるような構成で位置決めされる(たとえば、34bは42bにアライメントされる)。
【0046】
一連の溝の形成後、作用表面16は微細構造化される。本明細書中で使用する場合、「微細構造化」とは、0.25インチ(6.35mm)未満、好ましくは0.125インチ(3.175mm)未満、より好ましくは0.04インチ(1mm)未満の横方向寸法(たとえば、キューブコーナー構造体の溝角頂間の距離)を有する構造体を有するシートの少なくとも1つの主面を指す。キューブコーナー素子の横方向寸法は、好ましくは0.020インチ(0.508mm)未満、より好ましくは、0.007インチ(0.1778mm)未満である。したがって、それぞれの溝角頂33および41は、好ましくは、非平行溝から生じる小さい変動を除けば溝全体にわたり上述した距離だけ分離される。微細構造体は、約0.001インチ(0.0254mm)〜0.010インチ(0.254mm)の範囲内の平均高さを有するが、0.004インチ(0.1016mm)未満の高さが最も典型的である。さらに、キューブコーナー微細構造体の横方向寸法は、典型的には、少なくとも0.0005インチ(0.0127mm)である。キューブコーナー微細構造体は、キューブコーナーキャビティーを有しうるかまたは好ましくは峰を有するキューブコーナー素子を有しうる。
【0047】
一実施形態では、図3〜9に示されるように、本発明は、隣接している溝が異なる夾角を有する一連の側方溝を有する1つの層状体および複数の層状体に関する。「夾角」とは、溝角頂で交差するV字形溝の2つの面間に形成される角度を意味する。夾角は、典型的には、ダイヤモンドカッティングツールの形状およびカット方向に対するその位置の関数である。したがって、典型的には、それぞれ異なる夾角に対して異なるダイヤモンドツールが利用される。他の選択肢として、さらに時間はかかるが、同一の溝内に複数のカットを作製することにより異なる夾角を形成することが可能である。第1の溝(たとえば側方溝)の夾角は、隣接している溝(たとえば第2の側方溝)と少なくとも2°(たとえば、3°、4°、5°、6°、7°、8°、9°)、好ましくは少なくとも10°(たとえば、11°、12°、13°、14°)、より好ましくは少なくとも15°(たとえば、16°、17°、18°、19°、20°)異なる。したがって、夾角の差は、非直交性の目的で導入される意図的角度誤差から生じる夾角の差よりも実質的に大きい。さらに、夾角の差は、典型的には70°未満(たとえば、65°、60°、50°)、好ましくは55°未満、より好ましくは50°未満、さらにより好ましくは40°未満である。
【0048】
一態様において、異なる夾角(たとえば、隣接している側方溝の夾角)は、必要とされる異なるダイヤモンドカッティングツールの数を最小限に抑えるべく反復パターンで配置される。そのような実施形態では、隣接している側方溝角度の合計は約180°である。好ましい実施形態では、層状体は、90°未満の夾角を有する第2のサブセットの側方溝と交互に90°超の夾角を有する第1のサブセットの側方溝を有する。その際、第1の溝の夾角は、典型的には少なくとも約5°の量だけ、好ましくは約10°〜約20°の範囲内の量だけ90°よりも大きく;一方、隣接している溝の夾角は、ほぼ同一量だけ90°よりも小さい。
【0049】
層状体はさらに、名目上90°の夾角で3つ以上のサブセットおよび/または側方溝を有しうるが、層状体は、好ましくは、名目上90°の夾角を有する側方溝を実質的に含まない。好ましい実施形態では、層状体は、側方溝の交互対(たとえば、75.226°と104.774°)を有するので、側方溝の全体を形成するために2つの異なるダイヤモンドの使用が必要になるにすぎない。したがって、図6〜9に関して、1つおきの側方溝(すなわち、30a、30c、30eなど)は、75.226°の夾角を有して、104.774°の夾角を有する残りの側方溝(すなわち、30b、30dなど)と交互に現れる。さらに詳細に後述されるように、このようにして異なる夾角を利用すると、均一性指数が改善される。
【0050】
他の態様において、他の選択肢としてまたは反復パターンで配置される異なる夾角(たとえば、隣接している側方溝の夾角)と組み合わせて、得られるキューブコーナー素子は、共通峰高さで交差する面を有する。これは、キューブの峰(たとえば36)が同一平面内〜3〜4ミクロン以内にあることを意味する。共通峰高さは、負荷を一様に分配することにより、ツールまたはシートを取り扱う際の耐久性の改善に寄与すると推測される。
【0051】
他の選択肢としてまたはそれと組み合わせて、層状体は、側方キャンテッドキューブコーナー素子を有する。前方または後方にだけキャンティングされるキューブコーナー素子では、対称軸は、基準平面28に平行なキャント平面内でキャンティングまたはティルティングされる。キューブコーナー素子のキャント平面は、基準平面26に垂直であるとともにキューブの対称軸を含有する平面である。したがって、キャント平面を画定している法線ベクトルは、前方または後方にだけキャンティングされるキューブコーナー素子では実質的にゼロのy成分を有する。側方にだけキャンティングされるキューブコーナー素子の場合、キューブの対称軸は、基準平面24に実質的に平行な平面内でキャンティングされるので、キャント平面を画定している法線ベクトルは、実質的にゼロのx成分を有する。
【0052】
キャントの方向を特性付けるために、xy平面内への対称軸の投影を他の選択肢として使用することが可能である。対称軸は、3つのキューブコーナー面を三等分してこれらの3つの面のそれぞれと等角度をなすベクトルとして定義される。図10a〜10cは、それぞれ、後方にだけキャンティングされた、側方にだけキャンティングされた、および前方にだけキャンティングされた3つの異なるキューブコーナー形状を平面図で示している。これらの図では、キューブの峰はページ面から飛び出しており、xy平面内への対称軸の投影(キューブの峰からページ面に及ぶ)は、矢印により示されている。アライメント角は、平面図中のキューブの面にほぼ直角な二面縁11(たとえば二面角2−3)からこの図中で反時計回りに測定される。側方キャンティングの不在下で後方キャンティングする場合、アライメント角は0度であり、一方、側方キャンティングの不在下で前方キャンティングする場合、アライメント角は180度である。前方キャンティングも後方キャンティングも不在の状態で側方キャンティングされたキューブでは、アライメント角は90°(図10bに示されるとおり)または270°のいずれかである。アライメント角は、対称軸の投影が右方向を指す場合(図10b)には90°であり、対称軸の投影が左方向を指す場合には270°である。
【0053】
他の選択肢として、キャント平面法線ベクトルがx成分およびy成分の両方を有するように(すなわち、x成分およびy成分がそれぞれゼロに等しくならないように)、キューブをキャンティングすることが可能である。0°〜45°または0°〜315°のアライメント角では、後方キャント成分が優位であり、45°または315°のアライメント角では、後方キャント成分および側方キャント成分は等しい。さらに、135°〜225°のアライメント角では、前方キャント成分が優位であり、135°および225°では、前方キャント成分および側方キャント成分は等しい。したがって、優位な側方キャント成分を有するキャント平面は、45°〜135°または225°〜315°のアライメント角を有する。したがって、キャント平面法線ベクトルのy成分の絶対値がキャント平面法線ベクトルのx成分の絶対値よりも大きい場合、キューブコーナー素子は優位に側方キャンティングする。
【0054】
キャント平面が基準平面24に平行である異なる夾角のキューブを有する側方溝の交互対から側方キャンテッドキューブが形成される実施形態では、所与の層状体内の隣接しているキューブ(たとえば、α−βまたはα’−β’)は、同一平面内または平行平面内でキャンティングされる。しかしながら、一般的には、キャント平面法線ベクトルにx成分が存在する場合、特定の層状体内の隣接しているキューブは同一平面内でキャンティングされない。もっと正確に言えば、キューブコーナー対応対が同一平面内または平行平面内でキャンティングされる(すなわち、α−α’またはβ−β’)。好ましくは、任意の所与の層状体のキューブコーナー素子は、2つの異なるアライメント角(たとえば、異なる夾角を有する隣接している側方溝に由来するアライメント角)だけを有する。図10b中の側方キャンティング例のアライメント角は90°であり、図6中のβ−β’キューブに対応する。同様に、図6中のα−α’側方キャンテッドキューブのアライメント角は270°である(図示せず)。
【0055】
図11は、キューブが前方キャンティングされた層状体を示しており、一方、図12は、キューブが後方キャンティングされた層状体を示している。このようにキャンティングされるキューブ設計の結果として、単一タイプの対応対向キューブ対が得られる。面64aおよび62bを有する図11のキューブ54aは、面64bおよび62cを有するキューブ54bと同一であり、これは、面64cおよび62dを有するキューブ54cと同一であり、以下同様である。したがって、同一の列内のキューブはすべて同一であり、列は基準平面24に平行である。キューブ54aは、面66eおよび68dを有するキューブ56aとの対応対向対である。さらに、キューブ54bは、キューブ56bとの対応対向対である。同様に、キューブ54cは、56cキューブとの対応対向対である。同様に、図12のキューブ57は、キューブ58との対応対向対である。対応対は、構造化表面の平面に垂直な軸を中心に第1のキューブを180°回転させることにより第2のキューブに重ね合わせることのできるキューブを生じる場合に得られる。対応対は、必ずしも一群のキューブコーナー素子内で直接隣接している必要もなければ接触している必要もない。対応対は、典型的には、反対向きで照射角の正または負の変化に対して対称な再帰反射性能を提供する。
【0056】
これとは対照的に、側方キャンティングでは、同一の列内に(つまり、同一の一連の側方溝により形成されて)2つの異なるキューブ方位を有するキューブ設計になる。第1および第2の組の側方溝の両方を有する単一層状体または1対の隣接している層状体を反対向きに集成した場合、図6、8〜9に示されるように、層状体は、4種の明確に異なるキューブおよび2つの異なる対応対を有する。4つの明確に異なるキューブは、面32bおよび34cを有するキューブアルファ(α)、面32cおよび34dを有するベータ(β)、面40cおよび42dを有するアルファプライム(α’)、ならびに面40bおよび42cを有するベータプライム(β’)として識別される。キューブ(α,α’)は、キューブ面が平行になるように180°回転したときに同一の形状を有する対応対であり、キューブ(β,β’)も同様である。さらに、隣接している層状体(たとえば、100、200)上のキューブは、反対向きに構成される。キューブの対称軸は側方に傾いているが、側方溝の二等分平面(すなわち、溝を2つの等しい部分に分割する平面)は、好ましくは、隣接している側方溝の二等分平面に対して名目上平行(すなわち、互いに平行)〜1°以内の角度で非平行の範囲内である。さらに、各二等分平面は、基準平面28に対して名目上平行〜基準平面28に1°内非平行の範囲内である。
【0057】
図13〜14は、1.59の屈折率を有する材料から形成された再帰反射キューブコーナー素子対応対で種々の照射角および方位角において予測された全光反射を示す等輝度等高線グラフである。図13では、対応対は、9.74°前方キャンティングされている(たとえば、図11のキューブコーナー素子54、56)。図14では、対応対は、7.47°後方キャンティングされている(たとえば、図12のキューブコーナー素子57、58)。図15〜19は、1.59の屈折率を有する材料から形成された再帰反射キューブコーナー素子を有する層状体で種々の照射角および方位角において予測された全光反射を示す等輝度等高線グラフであり、キューブコーナー素子は、それぞれ、90°および270°のアライメント角に対して4.41°、5.23°、6.03°、7.33°、および9.74°側方キャンティングされている。図17では、6.03°側方キャンティングされたキューブコーナー素子を作製するために、側方溝の交互対(すなわち、75.226°と104.774°)が利用されている。側方キャンテッドアレイは、2つのタイプの対応対(すなわち、図6に示されるようなβ−β’およびα−α’)を有する。これらの対応対は、それぞれ、90°および270°のアライメント角を有する。図15〜19のいずれにおいても、等輝度等高線グラフは、図6、11、および12に示されるのと同一の(すなわち、垂直な)方位を有する層状体で得られたものである。
【0058】
キューブコーナー対応対アレイで予測される全光反射は、アクティブ面積パーセントおよび光線強度に関する知識から計算しうる。全光反射は、アクティブ面積パーセントと光線強度との積として定義される。直接機械加工されたキューブコーナーアレイの全光反射については、スタム(Stamm)の米国特許第3,712,706号明細書に記載されている。
【0059】
初期単位光線強度に対して、損失は、シートのフロント表面を介する2パス透過および3つのキューブ表面のそれぞれにおける反射損失から生じる。ほぼ法線入射および約1.59のシート屈折率では、フロント表面透過損失は、およそ0.10である(およそ0.90の透過率)。反射コーティングが施されているキューブの反射損失は、たとえば、コーティングのタイプおよびキューブ表面法線に対する入射角に依存する。アルミニウム反射コーティングが施されたキューブ表面の典型的な反射係数は、キューブ表面のそれぞれにおいて、およそ0.85〜0.9である。全内反射に依拠するキューブの反射損失は、本質的にゼロである(本質的に100%の反射)。しかしながら、キューブ表面法線に対する光線の入射角が臨界角未満である場合、全内反射が損なわれる可能性があり、そして有意量の光がキューブ表面を通過することもある。臨界角は、キューブ材料の屈折率およびキューブの背面の材料(典型的には空気)の屈折率の関数である。ヘクト(Hecht)著,“光学(Optics)”,第2版,アディソン・ウェズリー(Addison Wesley)刊,1987年のような標準的光学書籍には、フロント表面透過損失および全内反射についての解説がある。単一または個別のキューブコーナー素子の有効面積は、屈折された入射光線に垂直な平面上への3つのキューブコーナー表面の投影と、同一平面上への第3の反射の像表面の投影と、のトポロジカル交差により決定可能であり、かつそれに等しい。有効アパーチャーを決定する一手順については、たとえば、エックハルト(Eckhardt)著,応用光学(Applied Optics),第10巻,第7号,1971年7月,pg.1559−1566で論じられている。シュトロイベル(Straubel)の米国特許第835,648号明細書でも、有効面積またはアパーチャーの概念について論じられている。次に、単一キューブコーナー素子のアクティブ面積パーセントは、有効面積をキューブコーナー表面の全投影面積で割った値として定義される。アクティブ面積パーセントは、光学技術分野の当業者に公知の光学モデリング法を用いて計算可能であるか、または従来のレイトレーシング法を用いて数値的に決定可能である。キューブコーナー対応対アレイのアクティブ面積パーセントは、対応対の2つの個別キューブコーナー素子のアクティブ面積パーセントを平均することにより計算可能である。別の言い方をすれば、アクティブアパーチャーパーセントは、光を再帰反射するキューブコーナーアレイの面積をアレイの全面積で割った値に等しい。アクティブ面積パーセントは、たとえば、キューブ形状、屈折率、入射角、およびシート方位による影響を受ける。
【0060】
図13について説明する。ベクトルV1は、基準平面26に垂直でありかつ図11のキューブコーナー素子54、56の対称軸を有する平面を示す。たとえば、V1は、主要溝面50の交差により形成される主要溝角頂51に実質的に垂直な平面内に位置する。同心状の等輝度曲線は、照射角と方位角の種々の組合せにおけるキューブコーナー素子54、56のアレイの予測された全光反射を示す。プロットの中心からの半径方向の移動は、照射角の増加を表し、一方、円周方向の移動は、光源に対するキューブコーナー素子の方位の変化を表す。最も内側の等輝度曲線は、キューブコーナー素子54、56の対応対が70%の全光反射を呈する照射角の組の境界を画定する。逐次中心から離れた等輝度曲線は、逐次低下するパーセントを有する照射角および方位角の境界を画定する。
【0061】
前方または後方キャンテッドキューブの単一対応対は、典型的には、実質的に互いに垂直である広い照射角特性の2つの平面(すなわち、V1およびV2)を有する。前方キャンティングでは、照射角特性の主平面は、図13に示されるように水平および鉛直になる。より大きい照射角における反射光量は、方位によって著しく変化し、最良照射角特性の平面間でとくに低い。同様に、後方キャンティングでは、照射角特性の主平面(すなわち、V3およびV4)は、図14に示されるように層状体の縁に対しておよそ45°の方位を向くようになる。同様に、より大きい照射角における反射光量は、方位によって著しく変化し、最良照射角特性の平面間でとくに低い。キャント度に依存して、広い照射角特性を有する2超または2未満の平面を得ることが可能である。
【0062】
図15〜19は、側方キャンテッドキューブを有する1対の対向層状体で予測された全光反射(TLR)等強度等高線を示している。光反射は、図13および14の前方および後方キャンテッドキューブの等強度プロットと比較して、円形に近づくプロット形状により示唆されるように、より均一である。図15〜19は、図13および14に明示されている低い光反射の位置において実質的により高い光反射を示す。したがって、より大きい照射角(少なくとも45°までの照射)におけるTLRの良好な保持が予測される。標識は、一般に、0°、45°および90°の方位で位置決めされるので、この改善された方位性能は、標識表示製品にとって望ましいものである。本発明以前では、方位に対する全光反射の均一性を改善するための一般的な方法は、たとえば、米国特許第5,936,770号明細書に記載されているように、複数の小さいツール領域を2つ以上の方位でタイリング(すなわち配置)する方法であった。側方キャンテッドキューブコーナーアレイを用いれば、タイリングを必要とすることなく、全光反射の均一性を改善することができるので、2つ以上の方位でタイリングすることは実質的に不要になる。
【0063】
種々の光学設計の全光反射(TLR)の均一性を比較するために、いずれも固定照射角において、0°、45°、および90°の方位における平均TLRを、0°、45°、および90°の方位におけるTLRの範囲(すなわち、これらの角度における最大TLRと最小TLRとの差)で割ることが可能である。照射角は、好ましくは少なくとも30°以上、より好ましくは40°以上である。好ましい設計では、平均TLRとTLR範囲との最大比を呈する。図13および14の前方および後方キャンテッドキューブのそれぞれで、さらには図15〜19の種々のティルト度を有する側方キャンテッドキューブで、40°の照射角に対して、この比(すなわち「均一性指数(UI)」)を計算した。表1に関して、側方溝の間隔は、層状体の厚さに等しい(すなわちアスペクト比=1)。計算された均一性指数を以下の表1にまとめる。
【0064】
【表1】
【0065】
均一性指数(UI)=(0°、45°、90°の平均TLR)/(0°、45°、および90°における範囲)
【0066】
均一性指数が1よりも大きい場合、改善された方位均一性が得られる。好ましくは、均一性指数は、3超(たとえば4)、より好ましくは5超(たとえば、6、7、8)である。均一性指数は、キューブ形状(たとえば、キャントの量およびタイプ、キューブのタイプ、平面図中のキューブの形状、アパーチャー内のキューブ峰の位置、キューブ寸法)、照射角、および屈折率のような変動因子の関数として変化するであろう。
【0067】
図20は、さまざまなキャント量ならびにキャント平面法線ベクトルのさまざまなx成分およびy成分を有するキャンテッドキューブコーナーアレイでプロットされた均一性指数vsアライメント角を示している。アレイは、図6に示されるβ−β’およびα−α’と同様に、2つのタイプの対応対を有するが、これらのキューブおよび/または対は、互いに隣接していなくてもよい。各対応対のキューブは、実質的に同一のアライメント角を有する。2つのタイプの対応対のアライメント角は、同一量だけ0°または180°と異なる。たとえば、第1のキューブまたは第1の対応対が100°のアライメント角(80°だけ180°と異なる)である場合、第2の(たとえば、隣接している)キューブまたは第2の対応対は、260°のアライメント角(同様に80°だけ180°と異なる)を有する。
【0068】
図20からわかるように、優位な側方キャンティング成分を有するキューブ形状(すなわち、90°および270°のアライメント角を中心とする範囲)では、均一性指数だけでなくポリカーボネート(1.59の屈折率を有する)の平均TLRもまた最大化される。0°から180°までのアライメント角が図20のX軸上すなわち水平軸上に左から右に示されていることに留意されたい。180°から360°(度)まで増加するアライメント角は、右から左にプロットされている。
【0069】
好ましくは、アライメント角は、50°超(たとえば、51°、52°、53°、54°)、より好ましくは55°超(たとえば、56°、57°、58°、59°)、さらにより好ましくは60°超である。さらに、アライメント角は、好ましくは130°未満(たとえば、129°、128°、127°、126°)、より好ましくは125°未満(たとえば、124°、123°、122°、121°)、さらにより好ましくは120°未満である。同様に、アライメント角は、好ましくは230°超(たとえば、231°、232°、233°、234°)、より好ましくは235°超(たとえば、236°、237°、238°、239°)、さらにより好ましくは240°超である。さらに、アライメント角は、好ましくは310°未満(たとえば、309°、308°、307°、306°)、より好ましくは305°未満(たとえば、304°、303°、302°、301°)、さらにより好ましくは300°未満である。
【0070】
キューブの平面に垂直なベクトルに対するキューブ対称軸のティルト量は、少なくとも2°、好ましくは3°超である。さらに、ティルト量は、好ましくは9°未満である。したがって、最も好ましいティルト量は、3.6°、3.7°、3.8°、3.9°、4.0°、4.1°、4.2°、4.3°、4.4°、および4.5°から選択される終点を、7.5°、7.6°、7.7°、7.8°、7.9°、8.0°、8.1°、8.2°、8.3°、および8.4°から選択される終点と組み合わせてなる任意の間隔を含めて、約3.5°〜約8.5°の範囲内である。これらの異なる側方キャント量を生成すべく利用しうるキューブ形状を表2にまとめる。アライメント角は、各キャント量に対して90°または270°でありうる。
【0071】
【表2】
【0072】
異なる夾角を単独でまたは先に記載した側方キャンティングとの併用で用いることにより一連の照射角にわたり方位角の変化に対して改善されたTLR輝度均一性が提供されるが、シートの観測角特性または発散プロファイルを改善することもまた、好ましい。このためには、光源(典型的には乗物のヘッドライト)に対する再帰反射光の広がりを改善することが必要である。先に記載したように、キューブコーナーからの再帰反射光は、回折(キューブサイズにより制御される)、偏光(鏡面リフレクターでコーティングされていないキューブでは重要である)、および非直交性(90°からのキューブコーナー二面角の偏差が1°未満の量である)のような効果に基づいて広がる。反射光の広がりが回折により支配される場合、比較的薄い層状体がキューブの作製に必要とされるので、層状体を用いて作製される(たとえばPG)キューブでは、非直交性に基づく光の広がりは、とくに重要である。そのような薄肉層状体は、製造時の取扱いがとくに困難である。
【0073】
他の選択肢としてまたは先に記載した特徴に加えて、他の実施形態では、本発明は、側方溝(側方溝は「スキュー角」および/または「インクリネーション角」を有する)を含んでなる、個別層状体と、集成層状体を有するマスターツールと、再帰反射レプリカなどのそのレプリカと、に関する。スキュー角および/またはインクリネーション角は、さまざまな制御された二面角誤差または複数の非直交性(MNO)を有するキューブを提供するので、完成品の発散プロファイルを改善する。本明細書中で使用する場合、「スキュー角」とは、基準平面28に対する平行からの偏差を意味する。
【0074】
図21は、スキュー角を有する溝を有する1列のキューブコーナー素子を有する単一層状体の誇張された例を平面図で示している。側方溝80aおよび80bは正のスキュー角で、80cおよび80eはスキュー角なしで、そして溝80dは負のスキュー角でカットされている。側方溝80の経路は、明確にするために図21では拡張されている。側方溝80a、80c、および80eが同一の夾角(たとえば、75°、第1の溝サブセット)を有するとすれば、同一のカッティングツールまたはダイヤモンドを用いてこれらの溝をすべて形成することができる。さらに、交互溝(すなわち、80bおよび80d)が同一の夾角(たとえば、105°、第2の溝サブセット)を有するのであれば、第2のダイヤモンドを用いて80bおよび80dをカットすることができる。主要溝半角が、第1または第2のサブセットの側方溝半角に十分に近い場合、これらのダイヤモンドのうちの一方を用いて主要溝面50をカットすることも可能である。場合により、適正な主要溝半角を達成するために、主要溝面をカットする際にカッティングツールのうちの一方を回転させてもよい。主要溝面は、好ましくは層状体のサイドにアライメントされる。したがって、わずか2つのダイヤモンドだけを用いて、MNOが組み込まれるように、全層状体をカットすることができる。各一連の溝内で、一連の二面角を生成すべく、機械加工時にスキュー角を容易に変化させることができる。キューブコーナーは、一般に、3つのキューブ面の交線に帰属される3つの二面角を有する。90°からのこれらの角度の偏差は、一般に二面角誤差と呼ばれ、二面角1−2、二面角1−3、および二面角2−3により示されうる。1つの命名規約では、図22に示されるように、キューブ二面角1−3は、溝表面82と主要溝面50との交差により形成され、キューブ二面角1−2は、溝表面84と主要溝面50との交差により形成され、そしてキューブ二面角2−3は、溝表面84と溝表面82との交差により形成される。他の選択肢として、第3の面が主要溝面ではなく作用表面12または14である場合、同一の命名規約を利用しうる。所与の溝に対して、正のスキュー角(80a、80b)では、二面角1−3が減少し、二面角1−2が増加し、一方、負のスキュー角では、二面角1−3が増加し、二面角1−2が減少する。
【0075】
たとえば、図21については、4つの異なるキューブが形成される。第1のキューブ86aは溝表面(すなわち面)82aおよび84bを、第2のキューブ86bは溝表面82bおよび84cを、第3のキューブ86cは溝表面82cおよび84dを、そして第4のキューブ86dは溝表面82dおよび84eを有する。溝表面82a、82b、および84dと、溝面50との交差は90°未満であるが、溝表面84bおよび82dと、溝面50との交差は、90°超である。溝80cおよび80eはスキュー角を有していないので、溝表面82c、84c、および84eと、溝面50との交差は、90°である。以上の考察では、図21中のすべての側方溝についてインクリネーション角(後で定義されるとおり)は同一でありかつゼロに等しいものとする。(たとえばPG)キューブコーナー素子は、機械加工時にスキュー角を有する溝を使用した結果として、平面図中で台形または平行四辺形である。
【0076】
他の選択肢としてまたは先に記載した特徴に加えて、側方溝は、正のまたは負のインクリネーション角を有しうる。「インクリネーション角」とは、名目上直交傾き(すなわち、主要溝表面に垂直なベクトルの傾き)からの特定の側方溝の基準平面28内の傾きの偏差を意味する。側方溝の方向は、前記溝の角頂にアライメントされたベクトルにより画定される。直交傾きは、ゼロに等しいスキュー角で溝の角頂90が溝面50の法線ベクトル(溝面50に垂直)に平行であるときの傾きとして定義される。1つの利用可能な命名規約によれば、正のインクリネーション角92では、所与の側方溝について、二面角1−3および二面角1−2が両方ともを減少し、一方、負のインクリネーション角94では、二面角1−3および二面角1−2が両方とも増大する。
【0077】
機械加工時にスキュー角および/またはインクリネーション角を組み合わせると、所与の層状体上のキューブコーナー素子の二面角誤差を変化させるうえで有意な柔軟性が提供される。そのような柔軟性は、キャントに依存しない。したがって、スキュー角および/またはインクリネーション角は、側方キャンテッドキューブだけでなく、アンキャンテッドキューブ、前方キャンテッドキューブ、後方キャンテッドキューブとも併用可能である。側方溝をカットするために使用されるツール(たとえばダイヤモンド)を変更することなく個別層状体の機械加工時にスキュー角および/またはインクリネーション角を導入することができるので、スキュー角および/またはインクリネーション角を使用すれば顕著な利点が得られる。ツール変更後に正確に角度を設定するには典型的には数時間を要する可能性があるので、これにより機械加工時間を著しく削減することができる。さらに、スキュー角および/またはインクリネーション角を用いて、二面角1−2および二面角1−3を反対に変化させることが可能である。「反対に変化させる」とは、本明細書中で使用する場合、層状体上の所与のキューブコーナー内に大きさおよび/または符号の異なる二面角1−2および1−3誤差(90°との差)を意図的に提供することとして定義される。大きさの差は、典型的には少なくとも1/4分、より好ましくは少なくとも1/2分、最も好ましくは少なくとも1分の角度である。したがって、溝は、名目上平行超の量だけ非平行である。さらに、スキュー角および/またはインクリネーション角は、大きさが約1°(すなわち60分の角度)以下になるようにする。さらに、(たとえばサイド)溝は、単一層状体に沿ってスキュー角および/またはインクリネーション角を有する多種多様な成分を有しうる。
【0078】
二面角誤差は、主要溝または側方溝の半角を機械加工時に変化させることにより変更することも可能である。側方溝の半角は、溝面と、溝角頂を含有する基準平面26に垂直な平面と、により形成される鋭角として定義される。主要溝または主要溝面の半角は、溝面と基準平面24とにより形成される鋭角として定義される。主要溝の半角の変化は、x軸を中心とする回転による溝面50の傾きの変化を生じる。側方溝の半角の変化は、溝の夾角(82cと84cなどの対向溝面により形成される角度)の変化によりまたはその角頂を中心とする溝の回転により達成可能である。たとえば、主要溝面50の角度を変化させれば、所与の層状体に沿った二面角1−2および二面角1−3の誤差はすべて増加または減少するであろう。これは、二面角1−2および二面角1−3の誤差が所与の層状体に沿った各溝ごとに異なって変化しうるインクリネーション角の変化とは対照的である。同様に、側方溝の半角を変化させて、二面角2−3の対応する変化を引き起こすことも可能である。主要溝面に直交またはほぼ直交(約1°以内)する側方溝では、二面角1−2および二面角1−3は側方溝半角の変化の影響をほとんど受けないことに留意されたい。その結果、機械加工時に主要溝または側方溝の半角を変化させても、所与のキューブコーナー内で二面角1−2および二面角1−3を反対に変化させることはできないであろう。機械加工時の主要溝または側方溝の半角の変化は、最小のツール変更回数でキューブコーナー二面角誤差に対してできるかぎり広い制御を提供すべく、スキュー角および/またはインクリネーション角と組み合わせて使用することが可能である。半角誤差、スキュー角、またはインクリネーション角のいずれか1つの大きさは約1°までの範囲内でありうるが、任意の所与のキューブに対して累積的に得られる二面角誤差は約1°以下である。
【0079】
製造の簡素化を目的として、スキュー角および/またはインクリネーション角は、好ましくは、二面角誤差がパターンで配置されるように導入される。好ましくは、パターンは、所与のキューブコーナー内で反対に変化している二面角誤差1−2および1−3を有する。
【0080】
スポット図は、キューブコーナーアレイに由来する非直交性から生じる再帰反射光の広がりを示す幾何光学に基づく1つの有用な方法である。キューブコーナーは、3つのキューブ面から光線を反射させる6つの可能なシーケンスに関連付けられる6つまでの異なる反射スポットに入射光線を分割することが知られている。3つのキューブ二面角誤差が規定されれば、光源ビームを中心とする円周方向の位置だけでなく光源ビームからの反射スポットの半径方向の広がりをも計算することが可能である(たとえば、エックハルト(Eckhardt)著、“キューブコーナー反射の単純モデル(Simple Model of Cube Corner Reflection)”、応用光学(Applied Optics)、第10巻,第7号,1971年7月を参照されたい)。米国連邦試験方法規格370(1977年3月1日)に詳述されているように、反射スポットの半径方向の広がりは観測角に関連付けられ、一方、反射スポットの円周方向の位置は提示角に関連付けられる。非直交キューブコーナーは、その3つの面の表面法線ベクトルにより画定することができる。反射スポット位置は、3つのキューブ面のそれぞれに当たってそこから反射されるときの光線を逐次追跡することにより決定される。キューブ材料の屈折率が1超である場合、フロント表面キューブの中および外への屈折も考慮に入れなければならない。多数の著者が、フロント表面反射および屈折に関連付けられる式を報告している(たとえば、ヘクト(Hecht)およびゼイジャック(Zajac)著、“光学(Optics)”、第2版,アディソン・ウェズリー(Addison Wesley)刊、1987年)。スポット図は幾何光学に基づくので、回折を無視することに留意されたい。したがって、スポット図ではキューブのサイズおよび形状は考慮されない。
【0081】
5つの逐次的溝の主要溝半角誤差が+2、+4、+6、+8、および+10分の角度である7.47度後方キャンティングされた5つの異なるキューブ(たとえば図12)の反射スポット図を図24に示す。この例では、側方溝の半角誤差はゼロ(二面角2−3=0)であり、スキュー角およびインクリネーション角についても同様である。側方溝夾角はすべて90°である。図24中の鉛直軸および水平軸は、それぞれ、基準平面28および24に対応する。主要溝面の傾きの変化は主に鉛直軸および水平軸に沿って位置する反射スポットを生じることに留意されたい。
【0082】
図24の作成に使用したのと同一の誤差で、主要溝半角誤差の関数としての二面角誤差を表3に示す。二面角1−2および二面角1−3は、同一の大きさおよび符号を有するので、反対に変化しないことに留意されたい。
【0083】
【表3】
【0084】
−20、−15、−10、−5、および0分の角度の二面角2−3誤差を有する同一タイプの後方キャンテッドキューブの反射スポット図を図25に示す。この例では、主要溝の半角誤差はゼロ(二面角1−3=二面角1−2=0)であり、スキュー角およびインクリネーション角についても同様である。先に述べたように、側方溝の半角変化を用いて、二面角2−3誤差を生成することが可能である。二面角2−3誤差により、主に水平軸に沿って位置する反射スポットが得られる。
【0085】
図26は、図24〜25に対して記載したのと同一タイプの後方キャンテッドキューブで主要溝半角誤差を側方溝の半角変化と組み合わせることにより得られた反射スポット図を示している。この例では、主要溝半角誤差は10分の角度であり、一方、二面角2−3誤差は、層状体上の4つの異なる隣接しているキューブに対して、それぞれ、0、2、4、および6分の角度である。+3分の角度の一定夾角誤差を用いて、表4に示されるような対向半角誤差を有するこれらの側方溝を作製することが可能である。反射スポットは、この場合にも、主に鉛直軸および水平軸に沿って位置し、二面角2−3に対する値がゼロでないことに基づいて水平平面内にいくらかの広がりを有する。全体的に、反射スポット図は局所化されて不均一である。
【0086】
図26の作成に使用した誤差で、主要溝半角誤差の関数としての二面角誤差を表4に示す。二面角1−2および二面角1−3は、同一の大きさおよび符号を有するので、反対に変化しない(すなわち、実質的に反対に変化していることはない)ことに留意されたい。所与のキューブコーナーが2つの隣接している側方溝および好ましくは主要溝表面により形成されることに留意されたい。図22中の上側側方溝は二面角1−3を形成し、一方、下側側方溝は二面角1−2を形成する。上側および下側側方溝の交差は二面角2−3を形成する。側方溝夾角は、隣接しているキューブを形成する溝の上側および下側半角誤差の合計である(たとえば、表4に関して、全夾角は+3分の角度であり、第1のキューブの上側半角に隣接しているキューブの下側半角を加えることにより得られる)。
【0087】
【表4】
【0088】
以上の例(すなわち、図24〜26)は、さまざまな半角誤差を有する後方キャンテッドキューブに対するものであった。同様にして、前方キャンテッドキューブが定性的に類似の反射スポット図(すなわち、とくに水平軸および鉛直軸に沿って局所化されたスポットを有する実質的に不均一な反射スポット図)を有することを示すことができる。前方キャンテッドキューブの二面角1−2および二面角1−3もまた、同一の大きさおよび符号を有するので、実質的に反対に変化しない。キューブコーナー型再帰反射シートの使用を考慮すると、局在化された不均一なスポット図(たとえば、図24〜26)は一般的には望ましくないことは明らかである。シートは、背景色としてもさらにはいくつかの場合には切抜き文字としても、多種多様な方位で標識上に配置することが可能である。さらに、標識は、典型的には、道路の右側、左側、または上に位置決めすることが可能である。人目を引くために再帰反射シートで標示された乗物の場合、目視者に対する乗物の位置は絶えず変化している。乗物の左右両方のヘッドライトにより再帰反射標的が照明され、運転者の位置は、これらのヘッドライトとはかなり異なる(さまざまな観測角および提示角)。運転者がヘッドライトの真上にくるオートバイのような乗物が一般に使用される。最後に、目視形状を画定している関連角度はすべて、運転者/観測者と再帰反射シートまたは標的との距離と共に変化する。これらの因子をすべて考慮すれば、反射スポットの比較的均一な広がりが再帰反射シートにきわめて望ましいことは明らかである。反対に変化している二面角1−2および二面角1−3を含めて広範囲の二面角誤差を容易に導入できる柔軟性のおかげで、スキュー角および/またはインクリネーション角を利用して比較的均一なスポット反射図を提供することが可能である。
【0089】
図27は、図24〜26で使用したのと同一の後方キャンテッドキューブを有する単一層状体でインクリネーション角だけ変化させて得られる反射スポット図を示している。側方溝の半角誤差は、各サイドで+1.5分の角度であり(二面角2−3および側方溝の角度誤差は+3分の角度である)、主要溝誤差は、ゼロである。スキュー角は、この例では+7分の角度で一定である。インクリネーション角は、4つの溝ごとに反復パターンで変化している(すなわち、2つの溝で+5分の角度、次に、2つの溝で−1分の角度)。スポットパターンは、図24〜26と比較して半径方向(観測方向)にも円周方向(表示方向)にもかなり均一に分布している。
【0090】
さまざまなインクリネーション角を有するこの例の二面角誤差を表5に示す。インクリネーション角(分の角度)の機械加工の順序は、反復パターンで、−1、+5、+5、−1である。たとえば、キューブno.1に関して、第1の側方溝は、−1のインクリネーション角を有し、第2の側方溝は、+5のインクリネーション角を有する。二面角1−2および二面角1−3は、異なる大きさ(二面角誤差の絶対値は等しくない)および符号で反対に変化していることに留意されたい。
【0091】
【表5】
【0092】
図28は、スキュー角がすべての側方溝に対して+7分の角度の代わりに−7分の角度である以外は図27のときと同一の形状から得られる反射スポット図を示している。スポット図は、この場合にも、図24〜26と比較して均一に分布し、さらに図27に示されるスポット図と相補的である。さまざまなインクリネーション角を有するこの例の二面角誤差を表6に示す。この場合にも、二面角1−2および二面角1−3が反対に変化し、大きさおよび/または符号の両方が異なることに留意されたい。スキュー角の符号の変化により、表5と比較して、二面角1−2および1−3の大きさおよび符号が切り換った。
【0093】
【表6】
【0094】
2つの以上の例の正のスキュー角および負のスキュー角を組み合わせることが可能であり、これにより図29のスポット図が得られる。この組合せは、+7分の角度のスキュー角を持たせて層状体の半分を機械加工し、−7分の角度のスキュー角を持たせて残りの半分を機械加工することにより、達成しうる。他の選択肢として、正のスキュー角および負のスキュー角を各層状体内で組み合わせれば、所与の層状体内でスキュー角とインクリネーション角の両方を同時に変化させることが可能になる。後者の場合、正のスキュー角領域と負のスキュー角領域との境界に位置決めされたキューブから少数の他の反射スポットが得られるであろう。スポット図は、図27および28のスポット図の組合せから得られるので、図24〜26と比較してとくに均一に分布する。表5および6に示される二面角誤差の組合せは、このスポット図に関連付けられ、二面角1−2および二面角1−3は、対立して大きさおよび符号が変化している。
【0095】
図30は、7.47°前方キャンティングされたキューブであること以外は図29のときと同一の半角誤差、スキュー角、およびインクリネーション角を示す。スポット図は、同様に均一に分布するが、図29の後方キャンテッドスポット図とわずかに異なる。このスポット図に関連付けられる二面角誤差を表7にまとめる。この場合にも、二面角1−2および二面角1−3は、反対に変化し、二面角1−2および二面角1−3の大きさおよび/または符号が異なる少なくとも1つのキューブが含まれる。
【0096】
【表7】
【0097】
均一に分布したスポット図を提供すべく、同一のスキュー角およびインクリネーション角の組合せを側方キャンテッドキューブコーナーと組み合わせて有利に利用することも可能である。側方キャンテッドキューブは、先に論述したように、同一の列内に2つの異なるキューブ方位を有する。好ましくは、種々の照射角と方位角との組合せで均一な性能を得るために、所与の列内の両方のタイプのキューブ(たとえば、アルファ(α)およびベータ(β))に等しくスキュー角および/またはインクリネーション角の組合せを適用するように注意すべきである。スキュー角およびインクリネーション角を利用する6.03°側方キャンティングされたキューブの反射スポット図(図6、アライメント角90°または270°)を図31に示す。+7および−7分の角度のスキュー角と−1および5分の角度のインクリネーション角との同一の組合せを、アルファ(α)およびベータ(β)キューブの両方に等しく適用した。側方溝の半角誤差は、各サイドで+1.5分の角度であり(二面角2−3および側方溝の角度誤差は+3分の角度である)、主要溝誤差は、ゼロである。スポット図は、観測角および提示角に関して非常に均一に分布する。このスポット図に関連付けられる二面角誤差を表8にまとめる。この場合にも、二面角1−2および二面角1−3は、反対に変化し、二面角1−2および二面角1−3の大きさおよび/または符号が異なる少なくとも1つのキューブが含まれる。
【0098】
【表8】
【0099】
表5〜8の例示的なキューブコーナー素子の特徴は、3つの二面角誤差(二面角誤差は互いに異なる)を有する少なくとも1つ、典型的には複数のPGキューブコーナー素子が列内に形成されることである。他の特徴は、二面角誤差(したがって、スキュー角および/またはインクリネーション角)が層状体または隣接しているキューブコーナー素子の列全体にわたり反復パターンで配置されることである。さらに、隣接している層状体または列は、好ましくは、z軸を中心に180°回転させて層状体の対または列の対を形成すること以外は、光学的に同等である。
【0100】
層状体を機械加工し、層状体を複数有するマスターツールを形成する方法は、米国特許第6,257,860号明細書(ルトレル(Lutrell)ら)に記載されているように公知である。側方溝がスキュー角および/またはインクリネーション角を実質的に含まない実施形態では、側方溝は、米国特許第6,257,860号明細書(ルトレル(Lutrell)ら)および米国特許第6,159,407号明細書(クリンケ(Krinke)ら)に記載されているように複数のスタックド層状体として形成可能である。
【0101】
したがって、1つまたは複数の層状体を提供し、層状体の作用表面16上にV字形溝を形成することにより、層状体を機械加工する方法が本明細書にさらに記載されている。ここで、先に記載した特徴のいずれか1つまたは組合せを有する溝が形成される。
【0102】
一般的には、層状体(単数または複数)は、縁上に直接機械加工された溝を形成するのに好適な任意の基材を有しうる。好適な基材は、バリ生成を伴うことなくクリーンに機械加工され、低い延性および低い粒状性を呈し、そして溝形成後に寸法確度を保持する。さまざまな機械加工可能なプラスチックまたは金属を利用しうる。好適なプラスチックは、熱可塑性材料または熱硬化性材料、たとえば、アクリルまたは他の材料を含む。機械加工可能な金属としては、アルミニウム、黄銅、銅、無電解ニッケル、およびそれらの合金が挙げられる。好ましい金属としては、非鉄金属が挙げられる。好適な層状体材料は、たとえば、圧延、キャスティング、化学堆積、電気堆積、または鍛造により、シートの形態に形成可能である。好ましい機械加工材料は、典型的には、溝の形成時のカッティングツールの摩耗を最小限に抑えるように選択される。
【0103】
使用に好適なダイヤモンドツールは、ケイ・アンド・ワイ・ダイヤモンド(K&Y Diamond)(ニューヨーク州ムーアーズ(Mooers,NY))またはチャードン・ツール(Chardon Tool)(オハイオ州チャードン(Chardon,OH))から購入することのできるダイヤモンドツールのように高品質である。とくに、好適なダイヤモンドツールは、先端から10ミル以内がスクラッチフリーである。これは、2000倍の白色光顕微鏡を用いて評価できる。典型的には、ダイヤモンドの先端は、約0.00003インチ(0.000762mm)〜約0.00005インチ(0.001270mm)の範囲内のサイズのフラット部分を有する。さらに、好適なダイヤモンドツールの表面仕上げは、好ましくは約3nm未満の粗さ平均および約10nm未満の峰から谷までの粗さを有する。表面仕上げは、機械加工可能な基材にテストカットを形成して、ビーコ(Veeco)の1部門であるワイコ(Wyko)(アリゾナ州トゥーソン(Tucson,AZ)から購入できるような顕微干渉計によりテストカットを評価することにより、評価可能である。
【0104】
V字形溝は、各溝を高精度で形成することのできるダイヤモンドツール機械を用いて形成される。コネチカット州ブリッジポートのムーア・スペシャル・ツール・カンパニー(Moore Special Tool Company,Bridgeport,CT);ニューハンプシャー州キーンのプレシテック(Precitech,Keene,NH);およびペンシルバニア州ピッツバーグのエアロテック・インコーポレーテッド(Aerotech Inc.,Pittsburg,PA)は、そのような目的に好適な機械を製造している。そのような機械は、典型的にはレーザー干渉計位置決めデバイスを含む。好適な精密ロータリーテーブルは、エイエイ・ゲイジ(AA Gage)(ミシガン州スターリング・ハイツ(Sterling Heights,MI))から商業的に入手可能であり;一方、好適な顕微干渉計は、ザイゴ・コーポレーション(Zygo Corporation)(コネチカット州ミドルフィールド(Middlefield,CT))およびビーコ(Veeco)の1部門であるワイコ(Wyko)(アリゾナ州トゥーソン(Tucson,AZ))から商業的に入手可能である。溝間隔および溝深さの精度(すなわち、ポイントツーポイント位置決め)は、好ましくは少なくとも±500nm程度の精度、より好ましくは少なくとも±250nm程度の精度、最も好ましくは少なくとも±100nm程度の精度である。溝角の精度は、カットの長さ(たとえば、層状体の厚さ)にわたり、少なくとも±2分の角度(±0.033度)程度の精度、より好ましくは少なくとも±1分の角度(±0.017度)程度の精度、さらにより好ましくは少なくとも±1/2分の角度(±0.0083度)程度の精度、最も好ましくは少なくとも±1/4分の角度(±0.0042度)程度の精度である。さらに、解像度(すなわち、電流軸位置を検出する溝形成機の能力)は、典型的には精度の少なくとも約10%である。したがって、±100nmの精度では、解像度は少なくとも±10nmである。短い距離(たとえば、約10隣接している平行溝)では、精度は解像度にほぼ等しい。そのような高確度の複数の溝を継続時間にわたり終始一貫して形成するために、プロセス温度は、±0.01℃以内、好ましくは±0.1℃以内に保持される。
【0105】
スキュー角および/またはインクリネーション角に基づく単一キューブコーナー素子の形状変化は、単一素子に対しては小さいが(たとえば、主に二面角の変化に限られる)、層状体のスタックにスキュー角を有する溝および/またはインクリネーション角を有する溝を形成する際には問題を伴いうることは明らかである。側方溝は1°程度まで平行からずれるので、かなり多様なキューブ形状がスタックを横切って生成される可能性がある。これらの変化は、タックサイズの増加と共に増加する。それほど多様なキューブ形状を生成することなく同時に(すなわちスタックで)機械加工することのできる最大層状体数の計算値は、わずか2つ程度の層状体である(たとえば、0.002インチ(0.0508mm)の側方溝間隔を有する1°のスキュー角の厚さ0.020インチ(0.508mm)の層状体の場合)。
【0106】
スキュー角ドおよび/またはインクラインド側方溝を有する層状体のスタックを機械加工するときの問題が原因で、そのような実施形態の実施時には、好ましくは、個別層状体中に溝形成機で側方溝を形成する。個別層状体の縁部に溝を形成し、マスターツールの形態に層状体を集成し、そして集成層状体の微細構造化表面を複製する好ましい方法は、2003年3月6日に出願された「微細構造化層状体の作製方法および装置」という名称の米国特許出願第10/383039号明細書に記載されている。米国特許出願第10/383039号は、本出願が優先権を請求する仮特許出願第60/452464号と同時に出願された。
【0107】
再帰反射シートを形成するのに好適なサイズのマスターツールを形成するために、マスターツールの表面を電気メッキしてネガティブコピーを形成し、続いてネガティブコピーを電気メッキしてポジティブコピーを形成し、ポジティブコピーを電気メッキして第2世代のネガティブコピーを形成するなどの処理を繰り返すことにより、複数のツール(タイルとも呼ばれる)を形成すれる。ポジティブコピーはマスターツールと同一のキューブコーナー素子構造体を有するが、ネガティブコピーはキューブキャビティーレプリカである。したがって、ネガティブコピーツールは、ポジティブコピー(すなわちキューブコーナー素子)シートを作製するために利用され、一方、ポジティブコピーツールは、ネガティブコピー(すなわちキューブコーナーキャビティー)シートを作製するために利用される。さらに、再帰反射シートは、キューブコーナー素子構造体とキューブコーナーキャビティー微細構造体との組合せを有しうる。米国特許第4,478,769号明細書および同第5,156,863号明細書(Pricone)ならびに米国特許第6,159,407号明細書(Krinke)に記載されているような電鋳法は、公知である。次に、そのようなツールをタイリングして一体化させることにより、所望のサイズのマスターツールを集成することができる。本発明では、ツールは、典型的には同一の方位でタイリングされる。
【0108】
本明細書中で使用する場合、「シート」とは、キューブコーナー微細構造体が形成されている薄肉の高分子(たとえば合成)材料部片を意味する。シートは任意の幅および長さであってよく、そのような寸法は、シートを作製する装置により制限されるにすぎない(たとえば、ツールの幅、スロットダイオリフィスの幅などにより制限される)。再帰反射シートの厚さは、典型的には約0.004インチ(0.1016mm)〜約0.10インチ(2.54mm)の範囲内である。好ましくは、再帰反射シートの厚さは、約0.020インチ(0.508mm)未満、より好ましくは約0.014インチ未満(0.3556mm)である。再帰反射シートは、シールフィルムまたはオーバーレイのような表面層をさらに有しうる。再帰反射シートの場合、幅は、典型的には少なくとも30インチ(122cm)、好ましくは少なくとも48インチ(76cm)である。都合よく取り扱えるロール品としてシートが提供されるように、シートは、典型的には、約50ヤード(45.5m)〜100ヤード(91m)までその長さが連続している。しかしながら、他の選択肢として、シートは、ロール品としてではなく個別シートとして製造可能である。そのような実施形態では、シートは、好ましくは完成物品と寸法が一致する。たとえば、再帰反射シートは、標準的な米国の標識の寸法(たとえば、30インチ×30インチ(76cm×76cm))を有しうるので、シートの作製に利用される微細構造化ツールは、ほぼ同一の寸法を有しうる。ライセンスプレートまたは反射ボタンのようなより小さい物品では、それに応じてより小さい寸法を有するシートを利用しうる。
【0109】
再帰反射シートは、好ましくは、一体型材料として製造される。すなわち、キューブコーナー素子は、成形型の寸法全体にわたり連続層として相互連結され、個別素子およびそれらの間の連結部は、同一の材料を含む。微細プリズム状表面の反対側のシート表面は、典型的には平滑かつ平坦であり、「ランド層」とも呼ばれる。ランド層の厚さ(すなわち、複製された微細構造体から得られる部分を除いた厚さ)は、0.001〜0.100インチ、好ましくは0.003〜0.010インチである。そのようなシートの製造は、典型的には、ツール上に流動性樹脂組成物をキャスティングしてから組成物を硬化させてシートを形成することにより達成される。ツール上に流動性樹脂をキャスティングする好ましい方法は、2003年3月6日に出願された「再帰反射シートの作製方法およびスロットダイ装置」という名称の米国特許出願第10/382375号明細書に記載されている。米国特許出願第10/382375号は、本発明が優先権を請求する仮特許出願特許出願第60/452464号と同時に出願された。
【0110】
しかしながら、場合により、米国特許第4,601,861号明細書(プリコーン(Pricone))に記載されているように、ツールをエンボスツールとして利用して再帰反射物品を形成することができる。他の選択肢として、PCT出願、国際公開第95/11464号パンフレットおよび米国特許第3,684,348号明細書に教示されているようにプレフォームドフィルムにキューブコーナー素子をキャストすることにより、またはプレフォームドフィルムをプレフォームドキューブコーナー素子にラミネートすることにより、再帰反射シートを層状製品として製造することができる。その際、個別キューブコーナー素子は、プレフォームドフィルムにより相互連結される。さらに、素子およびフィルムは、典型的には、異なる材料で構成される。
【0111】
2003年3月6日に出願された「再帰反射シートおよび物品の作製方法」という名称の米国特許出願第60/452605号明細書に詳述されているように、再帰反射シートの製造時、ツールのチャネルを前進するツールの方向におおよそアライメントすることが好ましい。米国特許出願第60/452605号は、本発明が優先権を請求する仮特許出願特許出願第60/452464号と同時に出願された。したがって、任意のさらなる製造工程を行う前、シートの主要溝は、シートのロールの縁に実質的に平行であろう。本発明者らは、このダウンウェブ法でチャネルの方位を決定すればクロスウェブ方向に主要溝の方位を決定する場合よりも迅速な複製が可能であることを見いだした。主要溝と他のキューブ構造体とが組み合わされて改善された樹脂流動のチャネルが形成されるものと推測される。
【0112】
本発明の再帰反射シートに好適な樹脂組成物は、好ましくは、寸法安定性、耐久性、耐候性があり、しかも所望の形状に容易に成形可能な透明材料である。好適な材料の例としては、ローム・アンド・ハース・カンパニー(Rohm and Haas Company)により製造されているプレキシガラス(Plexiglas)ブランド樹脂のように約1.5の屈折率を有するアクリル;約1.59の屈折率を有するポリカーボネート;熱硬化性アクリレートおよびエポキシアクリレートのような反応性材料;イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー・インコーポレーテッド(E.I.Dupont de Nemours and Co.,Inc.)によりサーリン(SURLYN)のブランド名で販売されているようなポリエチレン系イオノマー;(ポリ)エチレン−co−アクリル酸;ポリエステル;ポリウレタン;およびセルロースアセテートブチレートが挙げられる。ポリカーボネートは、より広範な照射角にわたり改善された再帰反射性能に一般に寄与する靭性および比較的高い屈折率を有するのでとくに好適である。これらの材料は、染料、着色剤、顔料、UV安定化剤、または他の添加剤をも含有しうる。
【0113】
金属コーティングのような正反射コーティングをキューブコーナー素子の背面に配置することができる。金属コーティングは、アルミニウム、銀、またはニッケルのような金属を気相堆積または化学堆積させるなどの公知の方法により適用することができる。金属コーティングの固着性を促進すべく、キューブコーナー素子の背面にプライマー層を適用することが可能である。金属コーティングに加えてまたはその代わりに、キューブコーナー素子の背面にシールフィルムを適用することができる。たとえば、米国特許第4,025,159号明細書および同第5,117,304号明細書を参照されたい。シールフィルムは、境界における全内反射を可能にしかつ汚れおよび/または湿分のような汚染物質の進入を阻止する空気境界をキューブの背面に保持する。さらに、耐久性(たとえば、屋外耐久性)の改善または画像受容表面の提供を目的として、シートの目視表面上で個別のオーバーレイフィルムを利用してよい。そのような屋外耐久性が得られれば、長期間(たとえば、1年、3年)の屋外暴露の後、ASTM D49560−1aに明記されているような十分な輝度規格が保持される。さらに、CAP Y白色度は、屋外暴露の前後で好ましくは30超である。
【0114】
キューブコーナー型再帰反射シートを基材に固定できるようにするために、キューブコーナー素子またはシールフィルムの後ろに接着剤層を配設することもできる。好適な基材としては、木材、アルミニウムシート、亜鉛メッキ鋼、高分子材料、たとえば、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルフルオリド、ポリカーボネート、ポリビニルクロリド、ポリウレタン、ならびにこれらのおよび他の材料から作製される多種多様なラミネートが挙げられる。
【0115】
図6に関して、層状体は、好ましくは、鉛直方向にアライメントされる。そのようにして、複製時、素子の列を各層状体から誘導する。しかしながら、他の選択肢として、上述した光学的特徴を水平アラインド層状体から誘導してもよい。列内の各素子の面を約3〜4ミクロン以内で共有する共通平面は、水平アラインド層状体では、わずかに(たとえば1°未満)変化しうる。たとえば走査電子顕微鏡法で観測可能なような鉛直方向または水平方向のわずかなミスアラインメントの存在に基づいてキューブの列が層状体から誘導されたことは明らかである。
【0116】
再帰反射シートの作製方法に関係なく、しかもマスターツールが層状体法または他の方法から誘導されたかに関係なく、本発明に係るシートは、先に記載したように顕微鏡または干渉計を用いてシートを調べることにより検出することのできる特定のユニークな光学的特徴を有する。さらに、再帰反射シートは、層状体(単数または複数)に対して先に記載した特徴のいずれか1つまたは組合せを含む。
【0117】
一態様において、再帰反射シートは、列内の第1および第2の共存素子間の夾角が列内の第2および第3の共存素子間の夾角と異なるキューブコーナー素子の列またはキューブコーナー素子のアレイを有する。シートに関して、列は、列内の各素子の面が共通平面(たとえば、主要溝面、作用表面12または14)を共有する素子により画定される。隣接しているキューブ間の夾角差の大きさならびに列内またはアレイ内の他の好ましい特性(たとえば、反復パターン配置、共通峰高さ、互いに名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である二等分平面)は、層状体に対して先に記載したのと同じである。
【0118】
他の選択肢としてまたはそれと組み合わせて、再帰反射シートは、列内またはアレイ内の素子の少なくとも一部分が優位に側方キャンティングされかつ素子が平面図中で素子の列に実質的に垂直な二面縁に対して45°〜135°のアライメント角および/または225°〜315°のアライメント角を有する、キューブコーナー素子(たとえばPGキューブコーナー素子)の列またはアレイを有する。好ましい実施形態では、再帰反射シートは、これらの各アライメント角を有してキューブコーナー素子の列またはキューブコーナー素子を有するアレイを有する。そのようなアレイは、優位に前方キャンティングされたキューブコーナー素子も優位に後方キャンティングされたキューブコーナー素子も実質的に含まない。優位に側方キャンティングされたキューブコーナー素子を有する再帰反射シートは、層状体に関して先に記載した特性のいずれかをさらに有しうる。
【0119】
他の選択肢としてまたはそれと組み合わせて、再帰反射シートは、スキュー角を有する溝および/またはインクリネーション角を有する溝を有する。したがって、列またはアレイにおいて、(たとえばサイド)一連の溝の少なくとも2つの隣接している溝、好ましくはすべての溝は、名目上平行超〜約1°の範囲内の量だけ非平行であり、この特徴を有する層状体に関して記載された種々の属性をさらに含んでいてもよい。
【0120】
他の態様において、単独で、または異なる夾角および/もしくは側方キャンティングと組み合わせて、再帰反射シートは、一連の側方溝の溝が名目上互いに平行にあるが基準平面28に対して名目上平行〜非平行の範囲内である素子の列またはアレイを有しうる。
【0121】
再帰反射シートは、その高い再帰反射輝度の点からみて、交通標識、路面標示、乗物標示、および人的安全物品のようなさまざまな用途に有用である。再帰反射係数(RA)は、米国連邦試験方法規格370に準拠して、−4°の照射角、0°の方位角、種々の観測角で測定可能である。得られるシートは、タイプIXシートに対するASTM D4956−1a「交通規制用再帰反射シートの標準規格」に明記されている輝度規格を満たす。さらに、−4°の照射角、0°および90°の方位角の平均、0°の提示角、および種々の観測角に対して、指定の輝度最小値を有意に超える。輝度は、0.2°の観測角において、好ましくは少なくとも625カンデラ毎ルクス毎平方メートル(CPL)、より好ましくは少なくとも650CPL、さらにより好ましくは少なくとも675CPL、最も好ましくは少なくとも700CPLである。他の選択肢として、好ましくはそれに加えて、0.33°の観測角における輝度は、好ましくは少なくとも575CPL、より好ましくは少なくとも600CPL、さらにより好ましくは少なくとも625CPL、最も好ましくは少なくとも650CPLである。これに加えてまたは他の選択肢として、0.5°の観測角における輝度は、好ましくは少なくとも375CPL、より好ましくは少なくとも400CPL、さらにより好ましくは少なくとも425CPL、最も好ましくは少なくとも450CPLである。さらに、1.0°の観測角における輝度は、好ましくは少なくとも80CPL、より好ましくは少なくとも100CPL、最も好ましくは少なくとも120CPLである。同様に、1.5°の観測角における輝度は、好ましくは少なくとも20CPL、より好ましくは少なくとも25CPLである。再帰反射シートは、直前で述べた輝度判定基準の任意の組合せを有しうる。
【0122】
観測角0.5の近傍の領域(すなわち、0.4〜0.6)における改善された輝度は、およそ200〜400フィートの距離にある乗用車から交通標識(たとえば、右側路肩に取り付けられた交通標識)を目視するうえで、および約450〜950フィートの距離にある大型トラックの運転者から交通標識(たとえば、右側路肩に取り付けられた交通標識)を目視するうえで、とくに重要である。
【0123】
本発明の目的および利点について以下の実施例によりさらに説明するが、実施例に記載の特定の材料およびその量ならびに他の条件および細目は、本発明を過度に限定するように解釈すべきものでない。
【実施例】
【0124】
実施例1Aおよび1B
先に引用した2003年3月6日出願の米国特許出願第10/383039号明細書に記載されているように、個別層状体中に溝を形成し、個別層状体を集成し、そして微細構造化表面を複製した。米国特許出願第10/383039号は、本出願が優先権を請求する仮特許出願特許出願第60/452464号と同時に出願された。機械加工された層状体はすべて、図6および7に示された形状を有し、側方溝の半角誤差、スキュー角、およびインクリネーション角の変化に基づくわずかな変化を有していた。層状体厚さは0.0075インチ(0.1905mm)であり、側方溝間隔は、直前に記載のわずかな変化を除いて0.005625インチ(0.1428mm)であった。8つのキューブの反復パターンを各層状体上に逐次的に形成した。以下に記載の表10〜14に示されるように、側方溝の半角誤差、スキュー角、およびインクリネーション角を変化させることにより、このキューブ反復パターンを形成した。表中の各列は、個別側方溝の機械加工時に使用したパラメーターを規定している。図22に規定されているキューブコーナー二面角誤差は、各キューブを形成する主要溝表面と交差する2つの隣接している側方溝により形成される。したがって、二面角誤差を画定している列は、それらの隣接している側方溝を明確にすべく、表中で位置をずらして配置されている。
【0125】
以下の表10〜14のそれぞれに報告されている二面角誤差が得られるように、側方溝の角度誤差および/またはスキュー角および/またはインクリネーション角の異なった8つの層状体を形成した。ただし、表13では、側方溝の一部分のスキュー角を改変した。
【0126】
層状体1および層状体2
第1の層状体および第2の層状体の側方溝パラメーター(第2の層状体は、第1の層状体に対する対向層状体である)を、それぞれ、表10および11に報告する。主要溝半角誤差は、すべての主要溝で−8分の角度であった。側方溝名目上夾角(直交キューブを生成するのに必要な角度)は、75.226°および104.774°であった。すべての側方溝で夾角誤差は−9.2分の角度であったので、実際の側方溝夾角は75.073°および104.621°であった。側方溝の夾角誤差は一定にしたが、半角誤差は変化させた。表10の第3欄に示されるように、第1の層状体タイプの半角誤差は、−14.8分の角度〜5.6分の角度の範囲内にあった。半角誤差は、各側方溝の2つの半角に対応する2つのグループ(合計すると−9.2分の角度)で示されている。二面角2−3誤差は、隣接している側方溝の半角誤差の組合せから生じ、第4欄にまとめられている。第1の層状体では、二面角2−3誤差を−1.6分の角度から−16.8分の角度まで変化させた。
【0127】
スキュー角およびインクリネーション角は、それぞれ、表10の第5欄および第6欄に示されている。第1の層状体では、スキュー角は、−8.0分〜15.0分の角度の範囲内であった。インクリネーション角は、−6.1分の角度から10.8分の角度まで変化させた。側方溝のスキュー角およびインクリネーション角から得られる1−2および1−3二面角誤差を最後の2つの欄に示す。二面角誤差1−2および1−3を反対に変化させ、層状体中の少なくとも1つのキューブが、異なる大きさおよび/または符号を有する二面角誤差1−2および1−3を含むようにした。
【0128】
第2の層状体の側方溝は、表11にまとめられており、表10の層状体と密接な関係がある。名目上側方溝角度および側方溝夾角誤差を明示する第1欄および第2欄は同等である。側方溝パラメーター(半角誤差、スキュー角、およびインクリネーション角)ならびに二面角誤差に対する他のすべての欄は、表10に対して反転されている。これは、対向層状体がz軸を中心に180°回転されること以外はその対応物と光学的に同等であるという事実を反映している。
【0129】
層状体4、層状体6、および層状体8
簡潔にするために、第4、第6、および第8の層状体(それぞれ、第3、第5、および第7の層状体に対向する)の側方溝パラメーターは、反復して記載しない。なぜなら、側方溝パラメーターは、いま説明したように上述した反転関係を有するからである。
【0130】
層状体3
第3の層状体の側方溝パラメーターを表12に示す。主要溝半角誤差は、−8分の角度であった。基本的形状(寸法および名目上側方溝夾角)は、第1の層状体タイプと同じであった。この場合にも、すべての側方溝で実際の夾角誤差は、−9.2分の角度であった。第2の層状体タイプ側方溝の半角誤差は、−14.8分の角度〜5.6分の角度の範囲内であった。二面角2−3誤差は、−1.6分の角度から−16.8分の角度まで変化させた。この層状体タイプでは、スキュー角は、−14.0分の角度〜21.3分の角度の範囲内であり、一方、インクリネーション角は、−12.7分の角度から16.8分の角度まで変化させた。1−2および1−3二面角誤差(最後の2つの欄に示される)は、反対に変化させた。
【0131】
層状体5
第5の層状体の溝パラメーターを表13に示す。主要溝半角誤差は、−4分の角度であった。基本的形状(寸法および名目上側方溝夾角)は、前述の層状体として同じであった。すべての側方溝で夾角誤差は−1.6分の角度であったので、実際の側方溝夾角は75.199°および104.747°であった。第3の層状体タイプの半角誤差は、−5.2分の角度〜3.6分の角度の範囲内であった。二面角2−3誤差は、−7.2分の角度から4.0分の角度まで変化させた。スキュー角は、−7.0分の角度〜9.5分の角度の範囲内であり、一方、インクリネーション角は、−8.2分の角度から1.4分の角度まで変化させた。1−2および1−3二面角誤差(最後の2つの欄に示される)は、反対に変化させた。
【0132】
層状体7
第7の層状体の側方溝パラメーターを表14に示す。主要溝半角誤差は、−4.0分の角度であった。基本的形状(寸法および名目上側方溝夾角)は、第1の層状体タイプと同じであった。この場合にも、すべての側方溝で実際の夾角誤差は、−1.6分の角度であった。半角誤差は、−5.2分の角度〜3.6分の角度の範囲内であった。二面角2−3誤差は、−7.2分の角度から4.0分の角度まで変化させた。この層状体タイプでは、スキュー角は、−5.3分の角度〜5.3分の角度の範囲内であり、一方、インクリネーション角は、−2.1分の角度から4.6分の角度まで変化させた。1−2および1−3二面角誤差(最後の2つの欄に示される)は、反対に変化させた。
【0133】
集成体が垂直壁(たとえば、横方向寸法が0.0001超の壁)を実質的に含まないような精度で対向層状体の素子の非二面縁を互いに接触させるように、合計208個の層状体を集成した。集成体全体にわたり層状体順位1〜8を逐次反復させるように層状体を集成し、次に、電鋳により集成体の構造化表面を複製してキューブキャビティーツールを形成した。集成および電鋳のプロセスについては、先に引用した2003年3月6日出願の米国特許出願第10/383039号明細書にさらに説明されている。米国特許出願第10/383039号は、本出願が優先権を請求する仮特許出願特許出願第60/452464号と同時に出願された。
【0134】
実施例1Aでは、圧縮成形プレスでツールを使用し、約375°F(191℃)〜385°F(196℃)の温度、約1600psiの圧力、および20秒間の滞留時間でプレスを行った。次に、成形されたポリカーボネートを5分間にわたり約200°F(100℃)に冷却した。
【0135】
実施例2Aでは、先に引用した2003年3月6日出願の米国特許出願第10/382375号明細書に記載されているように、溶融されたポリカーボネートをツール表面上にキャストした。米国特許出願第10/382375号は、本出願が優先権を請求する仮特許出願特許出願第60/452464号と同時に出願された。
【0136】
実施例1Aおよび1Bのいずれについても、連続シーリング法でアモルファスコポリエステル含有表面を微細構造化ポリカーボネートフィルム表面に接触させることにより、0.7ミルのポリエステルと0.85ミルのアモルファスコポリエステルとを含む二層シールフィルムをキューブコーナー素子の背面に適用した。テフロン(登録商標)スリーブを有するゴムニップロールおよび加熱鋼ロールに構成体を連続的に通した。ゴムニップロールの表面は約165°Fであり、加熱鋼ロールの表面は約405°Fであった。ニップ圧は約70ポンド/毎線インチであり、速度は20フィート毎分であった。シーリング後の輝度保持は、約70%であった。
【0137】
得られたシートは、タイプIXシートに対するASTM D4956−1a「交通規制用再帰反射シートの標準規格」に明記されている輝度規格を満たす。さらに、以下のように、−4°の照射角、0°および90°の方位角の平均、0°の提示角、および種々の観測角に対して、指定の輝度最小値を有意に超える。
【0138】
【表9】
【0139】
表9は、本発明に係る再帰反射シートが比較再帰反射シート2および比較再帰反射シート3と比べて指示観測角のそれぞれにおいてより高い輝度を有することを示している。観測角0.5の近傍の領域における改善された輝度は、およそ200〜400フィートの距離にある乗用車から交通標識(たとえば、右側路肩に取り付けられた交通標識)を目視するうえで、および約450〜950フィートの距離にある大型トラックの運転者から交通標識(たとえば、右側路肩に取り付けられた交通標識)を目視するうえで、とくに重要である。
【0140】
実施例1Aのシートは2.0°以内の観測角における全光反射に対して測定された均一性指数が2.04であることが判明した。
【0141】
本発明の種々の修正形態および変更形態は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に自明なものとなろう。
【0142】
【表10】
【0143】
【表11】
【0144】
【表12】
【0145】
【表13】
【0146】
【表14】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の側方溝によって形成された面を有するキューブコーナー素子を有する層状体であって、該一連の溝のうちの少なくとも2つの溝が、名目上平行超〜約1°の範囲内の量だけ非平行である、層状体。
【請求項2】
前記素子が好適形状キューブコーナー素子である、請求項1に記載の層状体。
【請求項3】
前記側方溝が基準平面28に対して非平行である、請求項1に記載の層状体。
【請求項4】
前記素子の少なくとも一部分が、1分〜60分の角度の二面角誤差を有する、請求項1に記載の層状体。
【請求項5】
前記二面角誤差が反復パターンで配置されている、請求項4に記載の層状体。
【請求項6】
前記溝がスキュー角を有する、請求項1に記載の層状体。
【請求項7】
第1の溝が正のスキュー角を有し、かつ第2の溝が負のスキュー角を有する、請求項6に記載の層状体。
【請求項8】
第1の溝のスキュー角の大きさが、第2の溝のスキュー角の大きさと異なっている、請求項6に記載の層状体。
【請求項9】
前記溝がインクリネーション角を有する、請求項1に記載の層状体。
【請求項10】
第1の溝が正のインクリネーション角を有し、かつ第2の溝が負のインクリネーション角を有する、請求項9に記載の層状体。
【請求項11】
第1の溝のインクリネーション角の大きさが、第2の溝のインクリネーション角の大きさと異なっている、請求項9に記載の層状体。
【請求項12】
前記側方溝がスキュー角およびインクリネーション角を有する、請求項1に記載の層状体。
【請求項13】
前記素子がそれぞれ第1の面を有し、かつ該第1の面が主要溝面を画定している、請求項1に記載の層状体。
【請求項14】
請求項1に記載の層状体を複数有する、マスターツール。
【請求項15】
隣接している層状体のキューブコーナー素子が反対向きになるようにして、前記層状体が集成されている、請求項14に記載のマスターツール。
【請求項16】
請求項14に記載のマスターツールのポジティブレプリカおよびネガティブレプリカ。
【請求項17】
複製物が、キューブコーナー素子のアレイを有する再帰反射シートである、請求項16に記載のレプリカ。
【請求項18】
複製物が、キューブコーナーキャビティーのアレイを有する再帰反射シートである、請求項16に記載のレプリカ。
【請求項19】
一連の側方溝によって形成された面を有するキューブコーナー素子の列を有する層状体であって、該溝が、名目上互いに平行であり、かつ基準平面28に対して1°以内の角度で非平行である、層状体。
【請求項20】
前記キューブコーナー素子が、好適形状キューブコーナー素子である、請求項19に記載の層状体。
【請求項21】
好適形状キューブコーナー素子を有する物品であって、少なくとも1つのキューブが1−2二面角誤差および1−3二面角誤差を有し;かつ該二面角誤差が反対に変化している、物品。
【請求項22】
前記キューブが、1分〜60分の角度の二面角誤差を有する、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
前記素子が、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である二面縁を有する列をなしている、請求項21に記載の物品。
【請求項24】
前記二面角誤差が反復パターンで変化している、請求項21に記載の物品。
【請求項25】
3つの二面角誤差を有する少なくとも1つの好適形状キューブコーナー素子を有する物品であって、該二面角誤差が互いに異なっている、物品。
【請求項26】
前記二面角誤差が1分〜60分の角度である、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
複数の前記素子を列をなして有し、前記素子の少なくとも1つの二面縁が、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である、請求項25に記載の物品。
【請求項28】
前記素子の二面角誤差が反復パターンで変化している、請求項27に記載の物品。
【請求項29】
前記物品が層状体を有する、請求項27に記載の物品。
【請求項30】
前記素子がそれぞれ第1の面を有し、かつ該第1の面が主要溝面を画定している、請求項27に記載の物品。
【請求項31】
前記物品がツールを含む、請求項27に記載の物品。
【請求項32】
前記物品が再帰反射シートを含む、請求項27に記載の物品。
【請求項33】
前記再帰反射シートがキューブコーナー素子を有する、請求項32に記載の物品。
【請求項34】
前記再帰反射シートがキューブコーナーキャビティーを有する、請求項32に記載の物品。
【請求項35】
一連の側方溝により画定されている面を有する好適形状キューブコーナー素子の列を有する再帰反射シートであって、該一連の溝のうちの少なくとも2つの溝が、名目上平行超〜約1°の範囲内の量だけ非平行である、再帰反射シート。
【請求項36】
前記素子が約0.020インチ未満の横方向寸法を有する、請求項35に記載の再帰反射シート。
【請求項37】
前記素子が約0.010インチ未満の横方向寸法を有する、請求項35に記載の再帰反射シート。
【請求項38】
一連の側方溝により画定されている面を有する好適形状キューブコーナー素子の列を有する再帰反射シートであって、該溝が、名目上互いに平行であり、かつ基準平面28に対して名目上平行〜1°以内の角度で非平行の範囲内である、上記再帰反射シート。
【請求項39】
前記素子が約0.020インチ未満の横方向寸法を有する、請求項38に記載の再帰反射シート。
【請求項40】
前記素子が約0.010インチ未満の横方向寸法を有する、請求項38に記載の再帰反射シート。
【請求項41】
ASTM D4596−1aに準拠して−4°の照射角および0.5°の観測角で、少なくとも375カンデラ/ルクス/m2の0°および90°の方位における平均輝度を呈する、好適形状キューブコーナー素子のアレイを有する再帰反射シート。
【請求項42】
前記平均輝度が少なくとも400カンデラ/ルクス/m2である、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項43】
前記平均輝度が少なくとも450カンデラ/ルクス/m2である、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項44】
0°および90°における平均輝度が、−4°の照射角および0.2°の観測角で、少なくとも625カンデラ/ルクス/m2である、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項45】
0°および90°における平均輝度が、−4°の照射角および0.33°の観測角で、少なくとも575カンデラ/ルクス/m2である、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項46】
0°および90°における平均輝度が、−4°の照射角および1.0°の観測角で、少なくとも80カンデラ/ルクス/m2である、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項47】
0°および90°における平均輝度が、−4°の照射角および1.5°の観測角で少なくとも20カンデラ/ルクス/m2である、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項48】
前記シートがシールフィルムをさらに有する、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項49】
前記シートが正反射コーティングをさらに有する、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項50】
溝によって形成された面を有するキューブコーナー素子を有する層状体であって、隣接している溝が、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、少なくとも2°異なる夾角を有し、かつ該溝の夾角が反復パターンで配置されている、層状体。
【請求項51】
前記隣接している溝が側方溝である、請求項50に記載の層状体。
【請求項52】
前記キューブコーナー素子が、側方溝の交互対によって形成された面を有する、請求項50に記載の層状体。
【請求項53】
前記キューブコーナー素子が、側方溝の交互対によって形成された面と主要溝面とよりなる、請求項50に記載の層状体。
【請求項54】
前記側方溝の各対の夾角が、実質的に合計180°である、請求項52に記載の層状体。
【請求項55】
第1の溝の夾角が少なくとも約5°の量だけ90°よりも大きく、かつ第2の隣接している溝の夾角が、ほぼ同一量だけ90°よりも小さい、請求項50に記載の層状体。
【請求項56】
前記第1の溝の夾角が約10°〜約20°の範囲内の量だけ90°よりも大きく、かつ前記第2の隣接している溝の夾角がほぼ同一量だけ90°よりも小さい、請求項55に記載の層状体。
【請求項57】
前記キューブコーナー素子が45°〜135°のアライメント角、225°〜315°のアライメント角、およびそれらの組合せを有するようにして、前記素子の少なくとも一部分がキャンティングされている、請求項50に記載の層状体。
【請求項58】
前記素子がそれぞれ、主要溝面を画定している面を共通平面内に有する、請求項50に記載の層状体。
【請求項59】
前記素子が好適形状キューブコーナー素子である、請求項50に記載の層状体。
【請求項60】
溝によって形成された面を有するキューブコーナー素子を有する層状体であって、該面が共通峰高さで交差し、隣接している溝が名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、かつ該隣接している溝の夾角が少なくとも2°異なる、層状体。
【請求項61】
前記隣接している溝が側方溝である、請求項60に記載の層状体。
【請求項62】
溝によって形成された面を有するキューブコーナー素子を有する層状体であって、隣接している溝が名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、少なくとも2°異なる夾角を有し、かつ相互に名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である二等分平面を有する、層状体。
【請求項63】
前記隣接している溝が側方溝である、請求項62に記載の層状体。
【請求項64】
好適形状キューブコーナー素子を有する層状体であって、該キューブコーナー素子の少なくとも一部分が、45°〜135°のアライメント角、225°〜315°のアライメント角、およびそれらの組合せから選択されるアライメント角でキャンティングされている、層状体。
【請求項65】
請求項50に記載の層状体を複数有する、マスターツール。
【請求項66】
前記素子が、台形、長方形、平行四辺形、五角形、および六角形から選択される形状を平面図で有する、請求項65に記載のマスターツール。
【請求項67】
隣接している層状体のキューブコーナー素子が反対向きになるようにして、前記層状体が集成されている、請求項65に記載のマスターツール。
【請求項68】
請求項65に記載のマスターツールの複製物。
【請求項69】
請求項60に記載の層状体を複数有する、マスターツール。
【請求項70】
隣接している層状体のキューブコーナー素子が反対向きになるようにして、前記層状体が集成されている、請求項69に記載のマスターツール。
【請求項71】
請求項62に記載の層状体を複数有する、マスターツール。
【請求項72】
隣接している層状体のキューブコーナー素子が反対向きになるようにして、前記層状体が集成されている、請求項71に記載のマスターツール。
【請求項73】
請求項71に記載のマスターツールの複製物。
【請求項74】
請求項64に記載の層状体を複数有する、マスターツール。
【請求項75】
隣接している層状体のキューブコーナー素子が反対向きになるようにして、前記層状体が集成されている、請求項74に記載のマスターツール。
【請求項76】
請求項74に記載のマスターツールの複製物。
【請求項77】
溝により画定されている面を有する好適形状キューブコーナー微細構造体の列を有する再帰反射シートであって、該列内の隣接している溝が、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、少なくとも2°異なる夾角を有し、かつ該側方溝の夾角が反復パターンで配置されている、再帰反射シート。
【請求項78】
前記キューブコーナー微細構造体がキューブコーナー素子を有する、請求項77に記載の再帰反射シート。
【請求項79】
前記素子がそれぞれ第1の面を有し、かつ該第1の面が主要溝面を画定している、請求項77に記載の再帰反射シート。
【請求項80】
複数の列を有し、各列が、隣接している列に対して反対向きになっている、請求項77に記載の再帰反射シート。
【請求項81】
溝により画定されている面を有するキューブコーナー素子の列を有する再帰反射シートであって、該面が共通峰高さで交差し、該列内の隣接している溝が名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、かつ隣接している側方溝の夾角が少なくとも2°異なっている、再帰反射シート。
【請求項82】
前記素子がそれぞれ第1の面を有し、かつ該第1の面が主要溝面を画定している、請求項81に記載の再帰反射シート。
【請求項83】
複数の列を有し、各列が、隣接している列に対して反対向きになっている、請求項81に記載の再帰反射シート。
【請求項84】
溝により画定されている面を有するキューブコーナー素子の列を有する再帰反射シートであって、該列内の隣接している溝が、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、少なくとも2°異なる夾角を有し、かつ相互に名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である二等分平面を有する、再帰反射シート。
【請求項85】
前記素子がそれぞれ第1の面を有し、かつ該第1の面が主要溝面を画定している、請求項84に記載の再帰反射シート。
【請求項86】
複数の列を有し、各列が、隣接している列に対して反対向きになっている、請求項84に記載の再帰反射シート。
【請求項87】
好適形状キューブコーナー微細構造体の列を有する再帰反射シートであって、第1のキューブコーナー素子が、45°〜135°のアライメント角でキャンティングされており、かつ第2の隣接しているキューブが225°〜315°のアライメント角でキャンティングされている、再帰反射シート。
【請求項88】
前記キューブコーナー微細構造体が、キューブコーナー素子を有する、請求項87に記載の再帰反射シート。
【請求項89】
前記第1のキューブコーナー素子が、60°〜120°のアライメント角でキャンティングされており、かつ第2の隣接しているキューブが240°〜300°のアライメント角でキャンティングされている、請求項87に記載の再帰反射シート。
【請求項90】
前記第1のキューブのアライメント角と0°との差が、前記第2のキューブのアライメント角と0°との差と実質的に同一量である、請求項87に記載の再帰反射シート。
【請求項91】
前記第1のキューブのアライメント角と180°との差が、前記第2のキューブのアライメント角と180°との差と実質的に同一量である、請求項87に記載の再帰反射シート。
【請求項92】
前記素子がそれぞれ第1の面を有し、かつ該第1の面が主要溝面を画定している、請求項87に記載の再帰反射シート。
【請求項93】
少なくとも30°の照射角で少なくとも1の均一性指数を呈する好適形状キューブコーナー素子のアレイを有する、再帰反射シート。
【請求項94】
前記均一性指数が40°の照射角に対するものである、請求項93に記載の再帰反射シート。
【請求項95】
前記アレイが、2つ以上の方位のタイリングを実質的に含まない、請求項93に記載の再帰反射シート。
【請求項96】
前記均一性指数が少なくとも3である、請求項93に記載の再帰反射シート。
【請求項97】
前記均一性指数が少なくとも5である、請求項93に記載の再帰反射シート。
【請求項98】
前記キューブが、45°〜135°のアライメント角、225°〜315°のアライメント角、およびそれらの組合せから選択されるアライメント角でキャンティングされている、請求項93に記載の再帰反射シート。
【請求項99】
前記キューブが、60°〜120°のアライメント角、240°〜300°のアライメント角、およびそれらの組合せから選択されるアライメント角でキャンティングされている、請求項93に記載の再帰反射シート。
【請求項100】
好適形状キューブコーナー素子の隣接している列の対を有する再帰反射シートであって、列内の隣接している素子が、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である少なくとも1つの二面縁を有し、かつ列の対が少なくとも2つのタイプの対応対を有する、再帰反射シート。
【請求項101】
ASTM D4596−1aに準拠して0°および90°の方位ならびに−4°の照射角において、0.2°の観測角で少なくとも625カンデラ/ルクス/m2、0.5°の観測角で少なくとも375カンデラ/ルクス/m2、1.0°の観測角で少なくとも80カンデラ/ルクス/m2の平均輝度を呈し、該シートが屋外使用に対して耐久性である、キューブコーナー素子のアレイを有する再帰反射シート。
【請求項102】
目視表面と背面とを有するキューブコーナー素子のアレイを有する再帰反射シートであって、該シートが、ASTM D4596−1aに準拠して0°および90°の方位ならびに−4°の照射角において、0.2°の観測角で少なくとも625カンデラ/ルクス/m2、0.5°の観測角で少なくとも375カンデラ/ルクス/m2、1.0°の観測角で少なくとも80カンデラ/ルクス/m2の平均輝度を呈し、かつ該背面が正反射コーティングを有する、再帰反射シート。
【請求項103】
前記目視表面がオーバーレイフィルムを有する、請求項102に記載のシート。
【請求項104】
目視表面と背面とを有するキューブコーナー素子のアレイを有する再帰反射シートであって、該シートが、ASTM D4596−1aに準拠して0°および90°の方位ならびに−4°の照射角において、0.2°の観測角で少なくとも625カンデラ/ルクス/m2、0.5°の観測角で少なくとも375カンデラ/ルクス/m2、1.0°の観測角で少なくとも80カンデラ/ルクス/m2の平均輝度を呈し、かつ該背面が、該キューブの背面に空気境界を保持するシールフィルムを有する、再帰反射シート。
【請求項105】
前記目視表面がオーバーレイフィルムを有する、請求項104に記載のシート。
【請求項1】
一連の側方溝によって形成された面を有するキューブコーナー素子を有する層状体であって、該一連の溝のうちの少なくとも2つの溝が、名目上平行超〜約1°の範囲内の量だけ非平行である、層状体。
【請求項2】
前記素子が好適形状キューブコーナー素子である、請求項1に記載の層状体。
【請求項3】
前記側方溝が基準平面28に対して非平行である、請求項1に記載の層状体。
【請求項4】
前記素子の少なくとも一部分が、1分〜60分の角度の二面角誤差を有する、請求項1に記載の層状体。
【請求項5】
前記二面角誤差が反復パターンで配置されている、請求項4に記載の層状体。
【請求項6】
前記溝がスキュー角を有する、請求項1に記載の層状体。
【請求項7】
第1の溝が正のスキュー角を有し、かつ第2の溝が負のスキュー角を有する、請求項6に記載の層状体。
【請求項8】
第1の溝のスキュー角の大きさが、第2の溝のスキュー角の大きさと異なっている、請求項6に記載の層状体。
【請求項9】
前記溝がインクリネーション角を有する、請求項1に記載の層状体。
【請求項10】
第1の溝が正のインクリネーション角を有し、かつ第2の溝が負のインクリネーション角を有する、請求項9に記載の層状体。
【請求項11】
第1の溝のインクリネーション角の大きさが、第2の溝のインクリネーション角の大きさと異なっている、請求項9に記載の層状体。
【請求項12】
前記側方溝がスキュー角およびインクリネーション角を有する、請求項1に記載の層状体。
【請求項13】
前記素子がそれぞれ第1の面を有し、かつ該第1の面が主要溝面を画定している、請求項1に記載の層状体。
【請求項14】
請求項1に記載の層状体を複数有する、マスターツール。
【請求項15】
隣接している層状体のキューブコーナー素子が反対向きになるようにして、前記層状体が集成されている、請求項14に記載のマスターツール。
【請求項16】
請求項14に記載のマスターツールのポジティブレプリカおよびネガティブレプリカ。
【請求項17】
複製物が、キューブコーナー素子のアレイを有する再帰反射シートである、請求項16に記載のレプリカ。
【請求項18】
複製物が、キューブコーナーキャビティーのアレイを有する再帰反射シートである、請求項16に記載のレプリカ。
【請求項19】
一連の側方溝によって形成された面を有するキューブコーナー素子の列を有する層状体であって、該溝が、名目上互いに平行であり、かつ基準平面28に対して1°以内の角度で非平行である、層状体。
【請求項20】
前記キューブコーナー素子が、好適形状キューブコーナー素子である、請求項19に記載の層状体。
【請求項21】
好適形状キューブコーナー素子を有する物品であって、少なくとも1つのキューブが1−2二面角誤差および1−3二面角誤差を有し;かつ該二面角誤差が反対に変化している、物品。
【請求項22】
前記キューブが、1分〜60分の角度の二面角誤差を有する、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
前記素子が、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である二面縁を有する列をなしている、請求項21に記載の物品。
【請求項24】
前記二面角誤差が反復パターンで変化している、請求項21に記載の物品。
【請求項25】
3つの二面角誤差を有する少なくとも1つの好適形状キューブコーナー素子を有する物品であって、該二面角誤差が互いに異なっている、物品。
【請求項26】
前記二面角誤差が1分〜60分の角度である、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
複数の前記素子を列をなして有し、前記素子の少なくとも1つの二面縁が、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である、請求項25に記載の物品。
【請求項28】
前記素子の二面角誤差が反復パターンで変化している、請求項27に記載の物品。
【請求項29】
前記物品が層状体を有する、請求項27に記載の物品。
【請求項30】
前記素子がそれぞれ第1の面を有し、かつ該第1の面が主要溝面を画定している、請求項27に記載の物品。
【請求項31】
前記物品がツールを含む、請求項27に記載の物品。
【請求項32】
前記物品が再帰反射シートを含む、請求項27に記載の物品。
【請求項33】
前記再帰反射シートがキューブコーナー素子を有する、請求項32に記載の物品。
【請求項34】
前記再帰反射シートがキューブコーナーキャビティーを有する、請求項32に記載の物品。
【請求項35】
一連の側方溝により画定されている面を有する好適形状キューブコーナー素子の列を有する再帰反射シートであって、該一連の溝のうちの少なくとも2つの溝が、名目上平行超〜約1°の範囲内の量だけ非平行である、再帰反射シート。
【請求項36】
前記素子が約0.020インチ未満の横方向寸法を有する、請求項35に記載の再帰反射シート。
【請求項37】
前記素子が約0.010インチ未満の横方向寸法を有する、請求項35に記載の再帰反射シート。
【請求項38】
一連の側方溝により画定されている面を有する好適形状キューブコーナー素子の列を有する再帰反射シートであって、該溝が、名目上互いに平行であり、かつ基準平面28に対して名目上平行〜1°以内の角度で非平行の範囲内である、上記再帰反射シート。
【請求項39】
前記素子が約0.020インチ未満の横方向寸法を有する、請求項38に記載の再帰反射シート。
【請求項40】
前記素子が約0.010インチ未満の横方向寸法を有する、請求項38に記載の再帰反射シート。
【請求項41】
ASTM D4596−1aに準拠して−4°の照射角および0.5°の観測角で、少なくとも375カンデラ/ルクス/m2の0°および90°の方位における平均輝度を呈する、好適形状キューブコーナー素子のアレイを有する再帰反射シート。
【請求項42】
前記平均輝度が少なくとも400カンデラ/ルクス/m2である、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項43】
前記平均輝度が少なくとも450カンデラ/ルクス/m2である、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項44】
0°および90°における平均輝度が、−4°の照射角および0.2°の観測角で、少なくとも625カンデラ/ルクス/m2である、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項45】
0°および90°における平均輝度が、−4°の照射角および0.33°の観測角で、少なくとも575カンデラ/ルクス/m2である、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項46】
0°および90°における平均輝度が、−4°の照射角および1.0°の観測角で、少なくとも80カンデラ/ルクス/m2である、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項47】
0°および90°における平均輝度が、−4°の照射角および1.5°の観測角で少なくとも20カンデラ/ルクス/m2である、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項48】
前記シートがシールフィルムをさらに有する、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項49】
前記シートが正反射コーティングをさらに有する、請求項41に記載の再帰反射シート。
【請求項50】
溝によって形成された面を有するキューブコーナー素子を有する層状体であって、隣接している溝が、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、少なくとも2°異なる夾角を有し、かつ該溝の夾角が反復パターンで配置されている、層状体。
【請求項51】
前記隣接している溝が側方溝である、請求項50に記載の層状体。
【請求項52】
前記キューブコーナー素子が、側方溝の交互対によって形成された面を有する、請求項50に記載の層状体。
【請求項53】
前記キューブコーナー素子が、側方溝の交互対によって形成された面と主要溝面とよりなる、請求項50に記載の層状体。
【請求項54】
前記側方溝の各対の夾角が、実質的に合計180°である、請求項52に記載の層状体。
【請求項55】
第1の溝の夾角が少なくとも約5°の量だけ90°よりも大きく、かつ第2の隣接している溝の夾角が、ほぼ同一量だけ90°よりも小さい、請求項50に記載の層状体。
【請求項56】
前記第1の溝の夾角が約10°〜約20°の範囲内の量だけ90°よりも大きく、かつ前記第2の隣接している溝の夾角がほぼ同一量だけ90°よりも小さい、請求項55に記載の層状体。
【請求項57】
前記キューブコーナー素子が45°〜135°のアライメント角、225°〜315°のアライメント角、およびそれらの組合せを有するようにして、前記素子の少なくとも一部分がキャンティングされている、請求項50に記載の層状体。
【請求項58】
前記素子がそれぞれ、主要溝面を画定している面を共通平面内に有する、請求項50に記載の層状体。
【請求項59】
前記素子が好適形状キューブコーナー素子である、請求項50に記載の層状体。
【請求項60】
溝によって形成された面を有するキューブコーナー素子を有する層状体であって、該面が共通峰高さで交差し、隣接している溝が名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、かつ該隣接している溝の夾角が少なくとも2°異なる、層状体。
【請求項61】
前記隣接している溝が側方溝である、請求項60に記載の層状体。
【請求項62】
溝によって形成された面を有するキューブコーナー素子を有する層状体であって、隣接している溝が名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、少なくとも2°異なる夾角を有し、かつ相互に名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である二等分平面を有する、層状体。
【請求項63】
前記隣接している溝が側方溝である、請求項62に記載の層状体。
【請求項64】
好適形状キューブコーナー素子を有する層状体であって、該キューブコーナー素子の少なくとも一部分が、45°〜135°のアライメント角、225°〜315°のアライメント角、およびそれらの組合せから選択されるアライメント角でキャンティングされている、層状体。
【請求項65】
請求項50に記載の層状体を複数有する、マスターツール。
【請求項66】
前記素子が、台形、長方形、平行四辺形、五角形、および六角形から選択される形状を平面図で有する、請求項65に記載のマスターツール。
【請求項67】
隣接している層状体のキューブコーナー素子が反対向きになるようにして、前記層状体が集成されている、請求項65に記載のマスターツール。
【請求項68】
請求項65に記載のマスターツールの複製物。
【請求項69】
請求項60に記載の層状体を複数有する、マスターツール。
【請求項70】
隣接している層状体のキューブコーナー素子が反対向きになるようにして、前記層状体が集成されている、請求項69に記載のマスターツール。
【請求項71】
請求項62に記載の層状体を複数有する、マスターツール。
【請求項72】
隣接している層状体のキューブコーナー素子が反対向きになるようにして、前記層状体が集成されている、請求項71に記載のマスターツール。
【請求項73】
請求項71に記載のマスターツールの複製物。
【請求項74】
請求項64に記載の層状体を複数有する、マスターツール。
【請求項75】
隣接している層状体のキューブコーナー素子が反対向きになるようにして、前記層状体が集成されている、請求項74に記載のマスターツール。
【請求項76】
請求項74に記載のマスターツールの複製物。
【請求項77】
溝により画定されている面を有する好適形状キューブコーナー微細構造体の列を有する再帰反射シートであって、該列内の隣接している溝が、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、少なくとも2°異なる夾角を有し、かつ該側方溝の夾角が反復パターンで配置されている、再帰反射シート。
【請求項78】
前記キューブコーナー微細構造体がキューブコーナー素子を有する、請求項77に記載の再帰反射シート。
【請求項79】
前記素子がそれぞれ第1の面を有し、かつ該第1の面が主要溝面を画定している、請求項77に記載の再帰反射シート。
【請求項80】
複数の列を有し、各列が、隣接している列に対して反対向きになっている、請求項77に記載の再帰反射シート。
【請求項81】
溝により画定されている面を有するキューブコーナー素子の列を有する再帰反射シートであって、該面が共通峰高さで交差し、該列内の隣接している溝が名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、かつ隣接している側方溝の夾角が少なくとも2°異なっている、再帰反射シート。
【請求項82】
前記素子がそれぞれ第1の面を有し、かつ該第1の面が主要溝面を画定している、請求項81に記載の再帰反射シート。
【請求項83】
複数の列を有し、各列が、隣接している列に対して反対向きになっている、請求項81に記載の再帰反射シート。
【請求項84】
溝により画定されている面を有するキューブコーナー素子の列を有する再帰反射シートであって、該列内の隣接している溝が、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内であり、少なくとも2°異なる夾角を有し、かつ相互に名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である二等分平面を有する、再帰反射シート。
【請求項85】
前記素子がそれぞれ第1の面を有し、かつ該第1の面が主要溝面を画定している、請求項84に記載の再帰反射シート。
【請求項86】
複数の列を有し、各列が、隣接している列に対して反対向きになっている、請求項84に記載の再帰反射シート。
【請求項87】
好適形状キューブコーナー微細構造体の列を有する再帰反射シートであって、第1のキューブコーナー素子が、45°〜135°のアライメント角でキャンティングされており、かつ第2の隣接しているキューブが225°〜315°のアライメント角でキャンティングされている、再帰反射シート。
【請求項88】
前記キューブコーナー微細構造体が、キューブコーナー素子を有する、請求項87に記載の再帰反射シート。
【請求項89】
前記第1のキューブコーナー素子が、60°〜120°のアライメント角でキャンティングされており、かつ第2の隣接しているキューブが240°〜300°のアライメント角でキャンティングされている、請求項87に記載の再帰反射シート。
【請求項90】
前記第1のキューブのアライメント角と0°との差が、前記第2のキューブのアライメント角と0°との差と実質的に同一量である、請求項87に記載の再帰反射シート。
【請求項91】
前記第1のキューブのアライメント角と180°との差が、前記第2のキューブのアライメント角と180°との差と実質的に同一量である、請求項87に記載の再帰反射シート。
【請求項92】
前記素子がそれぞれ第1の面を有し、かつ該第1の面が主要溝面を画定している、請求項87に記載の再帰反射シート。
【請求項93】
少なくとも30°の照射角で少なくとも1の均一性指数を呈する好適形状キューブコーナー素子のアレイを有する、再帰反射シート。
【請求項94】
前記均一性指数が40°の照射角に対するものである、請求項93に記載の再帰反射シート。
【請求項95】
前記アレイが、2つ以上の方位のタイリングを実質的に含まない、請求項93に記載の再帰反射シート。
【請求項96】
前記均一性指数が少なくとも3である、請求項93に記載の再帰反射シート。
【請求項97】
前記均一性指数が少なくとも5である、請求項93に記載の再帰反射シート。
【請求項98】
前記キューブが、45°〜135°のアライメント角、225°〜315°のアライメント角、およびそれらの組合せから選択されるアライメント角でキャンティングされている、請求項93に記載の再帰反射シート。
【請求項99】
前記キューブが、60°〜120°のアライメント角、240°〜300°のアライメント角、およびそれらの組合せから選択されるアライメント角でキャンティングされている、請求項93に記載の再帰反射シート。
【請求項100】
好適形状キューブコーナー素子の隣接している列の対を有する再帰反射シートであって、列内の隣接している素子が、名目上平行〜1°未満非平行の範囲内である少なくとも1つの二面縁を有し、かつ列の対が少なくとも2つのタイプの対応対を有する、再帰反射シート。
【請求項101】
ASTM D4596−1aに準拠して0°および90°の方位ならびに−4°の照射角において、0.2°の観測角で少なくとも625カンデラ/ルクス/m2、0.5°の観測角で少なくとも375カンデラ/ルクス/m2、1.0°の観測角で少なくとも80カンデラ/ルクス/m2の平均輝度を呈し、該シートが屋外使用に対して耐久性である、キューブコーナー素子のアレイを有する再帰反射シート。
【請求項102】
目視表面と背面とを有するキューブコーナー素子のアレイを有する再帰反射シートであって、該シートが、ASTM D4596−1aに準拠して0°および90°の方位ならびに−4°の照射角において、0.2°の観測角で少なくとも625カンデラ/ルクス/m2、0.5°の観測角で少なくとも375カンデラ/ルクス/m2、1.0°の観測角で少なくとも80カンデラ/ルクス/m2の平均輝度を呈し、かつ該背面が正反射コーティングを有する、再帰反射シート。
【請求項103】
前記目視表面がオーバーレイフィルムを有する、請求項102に記載のシート。
【請求項104】
目視表面と背面とを有するキューブコーナー素子のアレイを有する再帰反射シートであって、該シートが、ASTM D4596−1aに準拠して0°および90°の方位ならびに−4°の照射角において、0.2°の観測角で少なくとも625カンデラ/ルクス/m2、0.5°の観測角で少なくとも375カンデラ/ルクス/m2、1.0°の観測角で少なくとも80カンデラ/ルクス/m2の平均輝度を呈し、かつ該背面が、該キューブの背面に空気境界を保持するシールフィルムを有する、再帰反射シート。
【請求項105】
前記目視表面がオーバーレイフィルムを有する、請求項104に記載のシート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2012−83785(P2012−83785A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−4314(P2012−4314)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【分割の表示】特願2006−508834(P2006−508834)の分割
【原出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−4314(P2012−4314)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【分割の表示】特願2006−508834(P2006−508834)の分割
【原出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]