説明

キラルアミドおよびキラルアミンの調製

【課題】金属試薬を用いることなく容易に入手可能なオキシムを対応するエナミドに高収率で変換する方法を提供する。
【解決手段】下式1等で示されるケトンから容易に入手可能な下式2等で示されるオキシムを原料として、トリアルキルホスフィン等の還元剤の存在下、無水酢酸等のアシル供与体で還元的アシル化する下式3等で示されるエナミドの製造方法。該エナミド3はキラルホスフィン配位子で錯体形成したロジウム触媒を用いた水素化、引き続く脱アシル化により下式5で示される光学活性なアミンへと変換できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年3月31日に出願された米国仮特許出願第60/787837号(当該出願は、あらゆる目的のためにその全体について参照により本明細書に取り入れる)に対して米国特許法第119条(e)項の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、当該プロセスによって調製される、エナンチオマーまたはジアステレマーが豊富な(enantiomerically- or diasteromerically-enriched)キラルアミドおよびキラルアミンの大規模調製に好適なプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
エナンチオマーが豊富なキラル第一級アミンは、ラセミ酸のための分割剤、不斉合成のためのキラル助剤、および不斉触媒作用に用いられる遷移金属触媒のための配位子として、一般に用いられる。加えて、セルトラリンなどの多くの医薬は、キラルアミン部分を含有する。そのような化合物を調製するための有効な方法は、医薬産業にとって大変興味深い。プロキラルまたはキラル出発材料から、適宜、エナンチオマー過剰またはジアステレオマー過剰でエナンチオマーまたはジアステレオマーをそれぞれ調製することを可能にするプロセスが、特に貴重である。
【0004】
エナンチオマーが豊富なアミンの調製のための方法が利用可能である。例えば、イミンまたはその誘導体への有機金属試薬の添加が、Watanabeら、Tetrahedron Asymm.(1995)6:1531、Denmarkら、J.Am.Chem.Soc.(1987)109:2224、Takahashiら、Chem.Pharm.Bull.(1982)30:3160によって報告されており、キラルオキサゾリジンへの有機金属試薬の添加が、Mokhallalatietら、Tetrahedron Lett.(1994)35:4267によって開示されている。これらの方法のうちのいくつかは広く使用されているが、アミンの大規模生産に適用できるものはほとんどない。
【0005】
他の手法は、混合物からの単独のエナンチオマーまたはジアステレオマーの光学分割を伴う。分割は、立体選択的生体内変換を介して、あるいはジアステレオマー塩を形成してこれを結晶化によって分離することにより、行うことができる。選択的再結晶に依拠する分割方法の有用性および適用性は、適切なキラル助剤の利用可能性の欠如によって、しばしば限定される。加えて、ラセミ混合物に対する分割プロセスにより、いずれの立体異性体についても50%の最大収率しか得られない。したがって、ラセミ混合物の分割は、非効率的なプロセスと一般的に見なされる。
【0006】
前駆体のオキシムを対応するエナミドに変換し、続いて不斉水素化および脱保護を介してアミンに変換することよる、エナンチオマーが豊富なアミンの調製が記載されている(Johnsonらへの、WO99/18065)。しかし、このプロセスは、広範な基質に一般的に適用することはできない。その上、容認されているプロセスのうちの多くは、変換を行うのに大過剰の金属試薬を必要とする。その結果、著しい量の固体金属廃棄物が発生し、これは大規模生産プロセスにとって望ましくない特質である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、金属試薬に依拠しない、オキシムを対応するエナミドに変換するためのコスト効率が高くて拡張可能な方法が必要である。金属試薬を用いることなく容易に入手可能なオキシムを対応するエナミドに手軽に高収率で変換することは、キラルアミドおよびキラルアミンの大規模合成に向けた貴重な工程となるであろう。本発明は、この必要性および他の必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、オキシムを対応するエナミドに変換するための効率的で好都合な方法を提供する。本発明の方法により、金属試薬を用いることなく、所望の変換が達成される。この方法は、エナミド、アミド、アミン、およびその誘導体の大規模合成に適している。
【0009】
それゆえに、第1の態様では、本発明は、オキシムをエナミドに変換するための方法を提供する。この方法は、オキシムをエナミドに変換するのに適切な条件下で、オキシムをホスフィンおよびアシル供与体と接触させる工程を含む。この方法は、エナミドを高収率で生成し、広範なオキシム構造にわたって一般的に適用できる。エナミドは、対応するアミンに容易に変換される。本明細書でより詳細に説明される例示的な経路では、エナミドを対応するアミドに還元し、続いてこれを脱アセチル化することによってアミンを提供する。
【0010】
この方法は、生物活性種、例えば、1,2,3,4−テトラヒドロ−N−アルキル−1−ナフタレンアミンサブ構造(substructure)または1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンアミンサブ構造を有するものなどの大規模合成に特に有用である。このサブ構造を有する生物活性化合物の例には、セルトラリンおよびセルトラリン類似体、およびセルトラリンのトランス異性体、ノルセルトラリン(norsertraline)およびその類似体が含まれる。(1S,4S)−シス4−(3,4−ジクロロフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−N−メチル−1−ナフタレンアミンであるセルトラリンは、米国食品医薬品局によってうつ病の治療用に認可されており、商標名ZOLOFT(登録商標)(Pfizer Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク、米国)で入手できる。ヒト対象において、セルトラリンは、デスメチルセルトラリンまたはノルセルトラリンとしても知られる(1S,4S)−シス4−(3,4−ジクロロフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンアミンに代謝されることが示された。
【0011】
エナミドは、1,2,3,4−テトラヒドロ−N−アルキル−1−ナフタレンアミンまたは1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンアミンサブ構造を含む化合物に対する好都合な前駆体を提供する。よって、第2の態様では、本発明は、式
【化1】

を有するオキシムを、式
【化2】

を有するエナミドに変換する方法を提供する。
【0012】
上記式において、記号Rは、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールを表す。記号Rは、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、または置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルを表す。当該方法は、前記オキシムを前記エナミドに変換するのに適切な条件下で、前記オキシムをホスフィンおよびアシル供与体と接触させる工程を含む。
【0013】
第3の態様では、本発明は、
【化3】

を含む混合物を提供する。上記式において、Qは陰イオンである。指数eおよびfは、独立して選択される0から1の数値である。指数xおよびyは、(R)または(S)を独立して表す。例示的な実施例では、xが(R)である場合、yは(R)であり、xが(S)である場合、yは(S)である。別の例示的な実施例では、xが(S)である場合、yは(R)である。
【0014】
本発明は、オキシムをエナミドに変換するための一般的で効率的な方法を提供する。さらに、本発明は、セルトラリンおよびセルトラリン類似体、およびセルトラリンのトランス異性体、ノルセルトラリンおよびその類似体の立体選択的合成方法を提供する。本発明の追加の目的、利点、および実施形態を、以下に続く詳細な説明において示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
略語
本明細書で用いる「COD」は、1,5−シクロオクタジエンを意味する。
【0016】
定義
置換基が、慣用的な化学式によって左から右に記されて特定される場合、それらは、構造を右から左に記すことで生ずる化学的に同一な置換基を等しく包含する。例えば、−CHO−は、好ましくは−OCH−も列挙することが意図される。
【0017】
用語「アルキル」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、別段の明言のない限り、直鎖もしくは分岐鎖、または環状炭化水素ラジカル、またはその組合せを意味し、これは、完全に飽和していても一価または多価不飽和であってもよく、指定された数の炭素原子を有する(すなわち、C〜C10は、1から10個の炭素を意味する)一価、二価、および多価のラジカルを含むことができる。飽和炭化水素ラジカルの例には、限定するものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルの同族体および異性体などの基が含まれる。不飽和アルキル基は、1個以上の二重結合または三重結合を有するアルキル基である。不飽和アルキル基の例には、限定するものではないが、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニル、ならびにより高級な同族体および異性体が含まれる。用語「アルキル」は、別段の記述のない限り、以下により詳細に定義される「ヘテロアルキル」などのアルキルの誘導体も含むことが好ましい。炭化水素基に限定されるアルキル基は、「ホモアルキル(homoalkyl)」と称される。本明細書で用いる用語「アルキル」は、アルキル、アルケニル、およびアルキニル部分を指し、その各々は、一価、二価、または多価の種とすることができる。アルキル基は、例えば、以下に「アルキル基置換基」と称する1個以上の基で置換されていることが好ましい。
【0018】
用語「アルキレン」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、限定するものではないが−CHCHCHCH−によって例示されるようなアルカンに由来する二価のラジカルを意味し、「ヘテロアルキレン」として以下に説明される基をさらに含む。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は、1から24個の炭素原子を有し、10個以下の炭素原子を有する基が本発明において好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、8個以下の炭素原子を一般的に有するより短い鎖のアルキルまたはアルキレン基である。
【0019】
用語「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)は、その慣用的な意味で用いられ、それぞれ酸素原子、アミノ基、または硫黄原子を介して分子の残部に結合したこれらアルキル基を指す。
【0020】
用語「ヘテロアルキル」は、それ自体で、または別の用語と組み合わせて、別段の明言のない限り、示された数の炭素原子ならびにB、O、N、Si、およびSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子からなる、安定な直鎖もしくは分岐鎖、または環状アルキルラジカルを意味し、ヘテロ原子は任意選択により酸化されていてもよく、窒素原子は任意選択により四級化されていてもよい。ヘテロ原子は、ヘテロアルキル基の任意の内部の位置または鎖の終端、例えば、位置を介してアルキル基が分子の残部に結合する当該位置に配置することができる。「ヘテロアルキル」基の例には、限定するものではないが、−CH−CH−O−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−CH−N(CH)−CH、−CH−S−CH−CH、−CH−CH、−S(O)−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH=CH−O−CH、−Si(CH、−CH−CH=N−OCH、および−CH=CH−N(CH)−CHが含まれる。例えば、−CH−NH−OCHおよび−CH−O−Si(CHなど、2個以上のへテロ原子が連続してもよい。同様に、用語「ヘテロアルキレン」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、限定するものではないが、−CH−CH−S−CH−CH−および−CH−S−CH−CH−NH−CH−によって例示されるような、置換または非置換の二価ヘテロアルキルラジカルを指す。ヘテロアルキレン基について、ヘテロ原子は、鎖の終端のいずれかまたは両方を占有することもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。なおさらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基について、連結基の配向は、連結基の式が記されている方向によって示されるものではない。例えば、式−C(O)R’−は、−C(O)R’−、好ましくは−R’C(O)−を表す。
【0021】
用語「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」は、それ自体、または他の用語と組み合わせて、別段の明言のない限り、それぞれ「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状型を表す。加えて、ヘテロシクロアルキルについて、ヘテロ原子は、ヘテロ環が分子の残部に結合する位置を占有することができる。シクロアルキルの例には、限定するものではないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが含まれる。ヘテロシクロアルキルの例には、限定するものではないが、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが含まれる。
【0022】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、それ自体、または別の置換基の一部として、別段の明言のない限り、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。加えて、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、用語「ハロ(C〜C)アルキル」は、限定するものではないが、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピルなどを含むことを意味する。
【0023】
用語「アリール」は、別段の明言のない限り、単環または一緒に縮合されているかもしくは共有結合で連結されている多環とすることのできる(好ましくは1から3個の環であり、そのうちの1個以上は、任意選択によりシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルであってもよい)、多価不飽和芳香族置換基を意味する。用語「ヘテロアリール」は、N、O、およびSから選択される1から4個のヘテロ原子を含有するアリール基(または環)を指し、窒素原子または硫黄原子は、酸化されていてもよく、窒素原子は、四級化されていてもよい。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残部に結合することができる。アリールおよびヘテロアリールの非限定的な例には、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンゾイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル、および6−キノリルが含まれる。上記のアリールおよびヘテロアリール環系のそれぞれについての置換基は、以下に記載される「アリール基置換基」の群から選択される。
【0024】
簡潔さのため、用語「アリール」は、他の用語(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)と組み合わせて用いられる場合、先に定義したような、ホモアリール(homoaryl)環およびヘテロアリール環の両方を含むことが好ましい。それゆえに、用語「アリールアルキル」は、炭素原子(例えば、メチレン基)が例えば酸素原子と置き換えられているアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)を含むアルキル基にアリール基が結合しているラジカル(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)を含んでもよい。
【0025】
アルキルおよびヘテロアルキルラジカル(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルとしばしば称する基を含む)の置換基は、「アルキル基置換基」と総称的に称され、それらは、限定するものではないが、ゼロから(2m’+1)(ここで、m’は、そのようなラジカル中の炭素原子の全数である)の範囲の数で、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R’’、−NRSOR’、−CNおよび−NOから選択される、1個以上の様々な基とすることができる。R’、R’’、R’’’、およびR’’’’は、それぞれ、好ましくは独立して、水素、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、例えば、1〜3個のハロゲンで置換されたアリール、置換もしくは非置換のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を指す。例えば、本発明の化合物が2個以上のR基を含む場合、それぞれのR基は独立して選択され、各R’、R’’、R’’’およびR’’’’はこれらの基が2個以上存在する場合において同様である。R’およびR’’が同じ窒素原子に結合される場合、それらは窒素原子と一緒になって5、6、または7員環を形成することができる。例えば、−NR’R’’は、限定するものではないが、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含むことを意味する。置換基についての上記検討から、当業者は、用語「アルキル」は、水素以外の基に結合した炭素原子を有する基、例えば、ハロアルキル(例えば、−CFおよび−CH)およびアシル(例えば、−C(O)CH、−C(O)CF、−C(O)CHOCHなど)を含むことを理解するであろう。
【0026】
アルキルラジカルについて記載した置換基と同様に、アリールおよびヘテロアリール基の置換基は、「アリール基置換基」と総称的に称する。この置換基は、例えば、ゼロから芳香環系上の空の原子価(open valence)の総数までの範囲の数で、ハロゲン、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R’’、−NRSOR’、−CNおよび−NO、−R’、−N、−CH(Ph)、フルオロ(C〜C)アルコキシ、およびフルオロ(C−C)アルキルから選択され、ここで、R’、R’’、R’’’およびR’’’’は、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のヘテロアリールから好ましくは独立して選択される。例えば、本発明の化合物が2個以上のR基を含む場合、それぞれのR基は独立して選択され、各R’、R’’、R’’’およびR’’’’はこれらの基が2個以上存在する場合において同様である。
【0027】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の2個の置換基は、式−T−C(O)−(CRR’)−U−(式中、TおよびUは、独立して、−NR−、−O−、−CRR’−または単結合であり、qは、0から3の整数である)の置換基で、任意選択により置き換えられてもよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の2個の置換基は、式−A−(CH−B−(式中、AおよびBは、独立して、−CRR’−、−O−、−NR−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NR’−または単結合であり、rは、1から4の整数である)の置換基で任意選択により置き換えられてもよい。そのように形成された新しい環の単結合の1つは、二重結合で任意選択により置き換えられてもよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の2個の置換基は、式−(CRR’)−X−(CR’’R’’’)−(式中、sおよびdは、独立して、0から3の整数であり、Xは、−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、または−S(O)NR’−である)の置換基で、任意選択により置き換えられてもよい。置換基R、R’、R’’およびR’’’は、水素または置換もしくは非置換の(C〜C)アルキルから好ましくは独立して選択される。
【0028】
本明細書で用いる用語「ヘテロ原子」は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)およびケイ素(Si)を含む。
【0029】
記号「R」は、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および置換または非置換のヘテロシクリル基から選択される置換基を表す一般的な略語である。
【0030】
用語「塩」は、本明細書に記載される化合物に見出される特定の置換基に応じて、比較的無毒性の酸または塩基を用いて調製される化合物の塩を含む。本発明の化合物が比較的酸性の官能性を含有する場合、中性形態のそのような化合物をそのままで(neat)或いは好適な不活性溶媒中のいずれかで十分な量の所望の塩基と接触させることによって、塩基付加塩を得ることができる。塩基付加塩の例には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、もしくはマグネシウムの塩、または同様の塩が含まれる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能性を含有する場合、中性形態のそのような化合物をそのまま或いは好適な不活性溶媒中のいずれかで十分な量の所望の酸と接触させることによって、酸付加塩を得ることができる。酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic acid)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogenphosphoric acid)、二水素リン酸(dihydrogenphosphoric acid)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric acid)、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などの無機酸に由来するもの、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの比較的無毒性の有機酸に由来する塩が含まれる。例えばアルギン酸などのアミノ酸塩、グルクロン酸またはガラクツロン(などのような有機酸の塩も含まれる(例えば、Bergeら、Journal of Pharmaceutical Science、66:1〜19(1977)を参照されたい)。本発明のある特定の化合物は、該化合物を塩基付加塩または酸付加塩のいずれにも変換することを可能にする塩基性および酸性の官能性の両方を含有する。塩の水和物も含まれる。
【0031】
本発明の方法によって調製される化合物が薬理学的作用剤(pharmacological agent)である場合、塩は薬学的に許容できる塩であることが好ましい。薬学的に許容できる塩の例は上で示しており、当該技術分野で一般的に知られている。例えば、Wermuth、C.、PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES、SELECTION AND USE−A HANDBOOK、Verlag Helvetica Chimica Acta(2002)を参照されたい。
【0032】
中性形態の化合物は、慣用的な様式で塩を塩基または酸と接触させて親化合物を単離することによって再生することが好ましい。親形態の化合物は、極性溶媒での溶解性などのある特定の物理的特性の点で様々な塩形態と異なるが、その他の点では、塩は、本発明の目的において親形態の化合物と同等である。
【0033】
塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態である化合物を提供する。本明細書に記載される化合物のプロドラッグは、生理的条件下で容易に化学変化して本発明の化合物を提供する化合物である。加えて、プロドラッグは、ex vivo環境で化学的または生化学的方法によって本発明の化合物に変換することができる。例えば、プロドラッグは、好適な酵素または化学試薬を含む経皮パッチリザーバー中に置かれた場合に、本発明の化合物にゆっくり変換することができる。
【0034】
別段の指摘のない限り、本明細書で用いる用語「プロドラッグ」は、生物学的条件下(in vitroまたはin vivo)で加水分解、酸化、または他の方法で反応して化合物を提供することのできる化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例には、限定するものではないが、生加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カルバメート、生加水分解性カーボネート、生加水分解性ウレイド、および生加水分解性ホスフェート類似体などの生加水分解性(biohydrolyzable)部分を含む化合物が含まれる。プロドラッグの他の例には、NO、NO、−ONO、または−ONO部分を含む化合物が含まれる。用語「プロドラッグ」は、本明細書では、プロドラッグが当該プロドラッグの親化合物を包含しないように意味する。本発明の化合物を説明するのに用いる場合、用語「プロドラッグ」は、本発明の他の化合物を除外するように解釈することもできる。
【0035】
別段の指摘のない限り、本明細書で用いる用語「生加水分解性カルバメート」、「生加水分解性カーボネート」、「生加水分解性ウレイド」、および「生加水分解性ホスフェート」は、1)化合物の生物活性を妨害しないが、取り込み、作用の持続時間、または作用の開始などの有利な特性をin vivoでその化合物に与えることができるか、または2)生物学的に不活性であるが、生物学的に活性な化合物にin vivoで変換される化合物のカルバメート、カーボネート、ウレイド、およびホスフェートをそれぞれ意味する。生加水分解性カルバメートの例には、限定するものではないが、低級アルキルアミン、置換エチレンジアミン、アミノ酸、ヒドロキシアルキルアミン、複素環式および複素芳香族アミン、ならびにポリエーテルアミンが含まれる。
【0036】
別段の指摘のない限り、本明細書で用いる用語「生加水分解性エステル」は、1)化合物の生物活性を妨害しないが、取り込み、作用の持続時間、もしくは作用の開始などの有利な特性をin vivoでその化合物に与えることができるか、または2)生物学的に不活性であるが、生物学的に活性な化合物にin vivoで変換される化合物のエステルを意味する。生加水分解性エステルの例には、限定するものではないが、低級アルキルエステル、アルコキシアシルオキシエステル、アルキルアシルアミノアルキルエステル、およびコリンエステルが含まれる。
【0037】
別段の指摘のない限り、本明細書で用いる用語「生加水分解性アミド」は、1)化合物の生物活性を妨害しないが、取り込み、もしくは作用の持続時間、作用の開始などの有利な特性をin vivoでその化合物に与えることができるか、または2)生物学的に不活性であるが、生物学的に活性な化合物にin vivoで変換される化合物のアミドを意味する。生加水分解性アミドの例には、限定するものではないが、低級アルキルアミド、α−アミノ酸アミド、アルコキシアシルアミド、およびアルキルアミノアルキルカルボニルアミドが含まれる。
【0038】
本発明のある特定の化合物は、非溶媒和形態、ならびに水和形態を含む溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等なものであり、本発明の範囲内に含まれる。本発明のある特定の化合物は、複数の結晶形態または非結晶形態で存在することができる。一般に、すべての物理的形態は、本発明によって企図された使用に対して同等なものであり、本発明の範囲内であることが意図される。
【0039】
本発明のある特定の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を保有する。ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体、および個々の異性体は、本発明の範囲内に含まれる。
【0040】
別段の指摘のない限り、本明細書で用いる、化合物が「実質的にない」組成物とは、当該組成物が、約20重量%未満、より好ましくは約10重量%未満、さらにより好ましくは約5重量%未満、最も好ましくは約3重量%未満の化合物を含有することを意味する。
【0041】
本明細書で用いる用語「シス立体異性体が実質的にない」とは、化合物の混合物が、光学対掌体よりも有意に(significantly)大きな比率のトランス立体異性体で構成されていることを意味する。本発明の好ましい実施形態では、用語「シス立体異性体が実質的にない」は、化合物が、少なくとも約90重量%のトランス立体異性体および約10重量%以下のシス立体異性体で構成されていることを意味する。本発明のより好ましい実施形態では、用語「シス立体異性体が実質的にない」は、化合物が、少なくとも約95重量%のトランス立体異性体および約5重量%以下のシス立体異性体で構成されていることを意味する。さらにより好ましい実施形態では、用語「シス立体異性体が実質的にない」は、化合物が、少なくとも約99重量%のトランス立体異性体および約1重量%以下のシス立体異性体で構成されていることを意味する。
【0042】
本発明で用いられる、ラセミ化合物、アンビスケールミック(ambiscalemic)化合物およびスケールミック(scalemic)化合物、またはエナンチオマーとして純粋な(enantiometrically pure)化合物の図式表現は、Maehr、J.Chem.Ed.、62:114〜120(1985)から採用した。実線または破線の楔形は、キラル要素の絶対配置を表示するのに用いる。波線は、これが表す結合が作り出すことができるであろういずれの立体化学的な意味合いを否認することを示している。太字の実線および破線は、示される相対配置を表すがいずれの絶対立体化学も含意しない幾何学的記述である。楔形の輪郭および点線または破線は、エナンチオマーとして純粋な化合物の不確定的な絶対配置を表す。
【0043】
用語「エナンチオマー過剰」および「ジアステレオマー過剰」は、本明細書で互換的に用いられる。1個の立体中心を有する化合物は、「エナンチオマー過剰」で存在していると称する。少なくとも2個の立体中心を有する化合物は、「ジアステレオマー過剰」で存在していると称する。
【0044】
本発明の化合物は、そのような化合物を構成する1つ以上の原子で非天然的な比率の原子同位体を含有することもできる。例えば、化合物は、トリチウム(H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)などの放射性同位体で放射性標識することができる。本発明の化合物のすべての同位体変種は、放射性であってもなくても、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0045】
導入
本発明は、オキシムを対応するエナミドに変換するための非金属仲介方法を提供する。エナミドは、高収率および高純度で形成され、それらはエナンチオマーが豊富なアミドを与えるプロセスである均一な不斉水素化の好適な基質となる。アミドを脱保護することによって、エナンチオマーが豊富なアミンを供給することができる。アミンのいずれのエナンチオマーも、この方法によって得ることができる。したがって、ケトンおよびアルデヒドは、エナンチオマーが豊富なキラルアミンに変換することができる。このプロセスは大規模生産に受け入れられる。
【0046】
方法
A.オキシムからエナミド
第1の態様では、本発明は、オキシムをエナミドに変換するための方法を提供する。この方法は、オキシムをエナミドに変換するのに適切な条件下で、オキシムをホスフィンおよびアシル供与体と接触させる工程を含む。例示的な条件は、本明細書に示されている。
【0047】
一実施形態では、本発明の方法に用いられるオキシムは、式
【化4】

を有する。記号R、R、およびRは、H、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリールおよび置換または非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるラジカルを表す。R、R、およびRのうちの少なくとも2つは、任意選択により連結して、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリールおよび置換または非置換のヘテロアリールから選択される環系を形成する。
【0048】
別の例示的な実施形態では、オキシムは、式
【化5】

を有する。記号Arは、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールを表す。Rは、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、または置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルである。指数aは、1から4の整数である。
【0049】
この態様による例示的な実施形態では、Rは、置換または非置換のアリール(例えば、フェニル)である。さらなる例示的な実施形態では、Rは、少なくとも1個のハロゲン原子で置換されたフェニルである。
【0050】
さらに別の例示的な実施形態では、Rは、式
【化6】

(式中、記号XおよびXは、独立して選択されるハロゲン部分を表す)を有する。好ましい実施形態では、XおよびXは、それぞれクロロである。
【0051】
別の例示的な実施形態では、オキシムは、式
【化7】

(式中、Rは、置換または非置換のアリールおよび置換または非置換のヘテロアリールから選択される)を有する。
【0052】
さらなる例示的な実施形態では、オキシムは、式
【化8】

を有する。
【0053】
オキシムの調製は、当技術分野で既知であり、広範な方法が知られており、当業者によって容易に行われる。典型的には、オキシムは、様々な条件のうちの1つの下で、ケトンまたはアルデヒドをヒドロキシルアミン(またはアルキルオキシアミン)と反応させることにより調製される。例えば、SandlerおよびKaro、「ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS」、3巻、372〜381頁、Academic Press、New York、1972を参照されたい。
【0054】
例示的な実施形態では、光学的に純粋なテトラロンは、スキーム1によって、対応するオキシムに変換される。
【化9】

【0055】
スキーム1において、光学的に純粋なテトラロン1をヒドロキシルアミン塩酸塩およびメタノール中の酢酸ナトリウムで処理することによって、オキシム2を与える。化合物2は単離するか、または好適な溶媒中の溶液として次工程に進めることができる。別の方法では、ケトンは、トルエンなどの芳香族炭化水素溶媒中で対応するオキシムに変換される。
【0056】
本発明のプロセスによれば、オキシムはエナミドに変換される。例示的な実施形態では、エナミドは、式
【化10】

(式中、R〜Rは、上述の通りであり、Rは、H、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および置換または非置換のヘテロシクロアルキルである)を有する。
【0057】
別の例示的な実施形態では、エナミドは、式
【化11】

(式中、Rは、置換または非置換のアリールおよび置換または非置換のヘテロアリールから選択される)を有する。Rは、H、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および置換または非置換のヘテロシクロアルキルから選択される。
【0058】
例示的なエナミドは、式
【化12】

を有する。
【0059】
この態様による例示的な実施形態では、ケトン、オキシム、およびエナミドのC−4は、(S)配置である。
【0060】
好ましい実施形態では、エナミドは、式
【化13】

を有する。
【0061】
C−4は、(R)および(S)から選択される配置を有し、好ましい実施形態では、C−4は(S)配置である。別の実施形態では、この方法により、(S)−および(R)−エナンチオマーの両方を含むエナミド混合物が提供される。
【0062】
アシル供与体
本質的に任意の構造のアシル供与体が本発明において用いられる。例示的アシル供与体は、式
Z−C(O)−R
(式中、Zは脱離基である)を有する。Rは、H、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および置換または非置換のヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーである。
【0063】
例示的な実施形態では、アシル供与体は酸無水物であり、ここで、Zは、式
−C(O)−O−
(式中、Rは、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および置換または非置換のヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーである)を有する。
【0064】
別の例示的な実施形態では、RおよびRは、独立して選択される置換または非置換のC〜C部分である。
【0065】
別の実施形態では、アシル供与体は、無水物、好ましくは無水酢酸(AcO)である。
【0066】
別の例示的な実施形態では、アシル供与体は、酸塩化物(Z=Cl)および活性化エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)から選択されるメンバーである。
【0067】
アシル供与体は任意の有用な量で存在することができ、この量の選択は当業者の能力の範囲内である。例示的な実施形態では、アシル供与体は、オキシム基質に対して、約1から約3当量、好ましくは約1から約2当量、より好ましくは約1から約1.5当量の量で用いられる。
【0068】
ホスフィン
ホスフィンなどの任意の構造のリン試薬は、本発明を行うのに用いられる。例えば、一般に、ホスフィンは、式
P(Q)
(式中、各Qは、H、置換または非置換のアルキル、および置換または非置換のアリールから独立して選択される)を有する。
【0069】
例示的な実施形態では、各Qは、置換または非置換のC〜Cアルキルおよび置換または非置換のフェニルから独立して選択されるメンバーである。現在好ましいリン試薬として、限定するものではないが、ジフェニルホスフィン(PhPH)、トリフェニルホスフィン(PhP)、トリ−n−ブチルホスフィン(n−BuP)、トリエチルホスフィン(EtP)、トリ−n−プロピルホスフィン(n−PrP)、1,2−ビスジフェニルホスフィノエタン(PhPCHCHPPh)、ジエチルホスフィット(EtOP(O)H)、トリフェニルホスフィット((PhO)P)、P−クロロジフェニルホスフィン(PhPCl)、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(MePhPBr)、およびベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(BnPhPCl)が含まれる。
【0070】
ホスフィンなどのリン試薬は、実質的に任意の有用な量で反応混合物中に取り込ませることができる。本発明の例示的反応では、カルボニル含有基質に対して、約0.5当量から約5当量、好ましくは約1当量から約3当量、より好ましくは約1.1当量から約2当量のリン試薬が利用される。
【0071】
溶媒
例示的な実施形態では、オキシムは、有機溶媒の存在下でリン試薬(例えば、ホスフィン)およびアシル供与体と接触する。当該溶媒は、プロトン性溶媒であっても、非プロトン性溶媒であってもよい。好ましい実施形態では、当該溶媒は非プロトン性溶媒である。さらなる好ましい実施形態では、非プロトン性溶媒は芳香族溶媒(例えば、トルエン、キシレン、およびその組合せ)である。
【0072】
オキシムが化合物3である例示的な実施形態では、溶媒はトルエンであることが好ましい。
【0073】
B.エナミドからアミドへ
別の態様では、本発明は、エナミドをアミドに変換するための方法を提供する。当該方法は、エナミドの炭素−炭素二重結合を水素化するのに適切な条件下で、エナミドを水素化触媒および水素または水素移動試薬と接触させ、それによってエナミドをアミドに変換する工程を含む。
【0074】
本発明の方法は、任意の単独の構造分類内における任意の特定の構成要素または構成員によって特徴づけられるエナミドに対して行われることに限定されない。本明細書に開示された方法は、広範なエナミド構造にわたって広く適用できる。エナミドをアミドに変換するための例示的な試薬および反応条件を以下に示す。
【0075】
触媒
エナミドの炭素−炭素二重結合は、二級アルコールなどの水素供与体、特にイソプロパノールが用いられる水素移動、および分子の水素が用いられる水素化などのプロセスによって還元される。水素移動および水素化プロセスの両方は、還元剤、すなわち、それぞれアルコールまたは分子水素を活性化するために触媒または触媒系を必要とする。
【0076】
本発明の選択された実施形態では、エナミド基質はキラルまたはプロキラルであり、還元、水素移動、または水素化は立体選択的な様式で行われる。この実施形態では、触媒はキラル触媒であることが一般的に好ましい。キラル触媒は遷移金属触媒であることも好ましい。
【0077】
触媒的不斉水素化反応において使用可能なキラル遷移金属錯体触媒について、多数の報告が公開されてきた。これらの中で、配位子として光学的に活性なホスフィンを含有する、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、ニッケルなどの遷移金属錯体は、不斉合成反応のための触媒として優れた性能を呈することが報告されてきており、それらのいくつかは産業用途において既に用いられている。例えば、ASYMMETRIC CATALYSIS IN ORGANIC SYNTHESIS、R.Noyori編、Wiley & Sons(1994)、およびG.Francioら、Angewandte Chemie.Int.Ed.、39:1428〜1430(2000)を参照されたい。
【0078】
好ましい実施形態では、触媒中の金属は、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、またはイリジウム(Ir)である。
【0079】
例示的な実施形態では、本発明に用いられる水素化触媒は、単座および二座の配位子を含むキラルホスフィン配位子との遷移金属キラル錯体である。例えば、好ましい二座配位子には、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラノ)エタン(MeBPE)、P,P−1,2−フェニレンビス{(2,5−エンド−ジメチル)−7−ホスファビシクロ[2.2.1]ヘプタン}(MePennPhos)、5,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NorPhos)および3,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)N−ベンジルピロリジン(catASium(登録商標)Dとして市販されている)が含まれる。
【化14】

【0080】
テトラロンから得られるアミドを作製するための好ましい実施形態では、キラル触媒は、(R,S,R,S)−MePennPhos(COD)RhBF、(R,R)−MeBPE(COD)RhBF、(R,R)−NorPhos(COD)RhBF(Brunnerら、Angewandte Chemie 91(8):655〜6(1979))、または(R,R)−catASium(登録商標)D(COD)RhBF(Nagelら、Chemische Berichte 119(11):3326〜43(1986))である。
【0081】
触媒は、任意の有用な量で反応混合物中に存在する。適切な触媒構造およびこの触媒の有効量を決定することは、十分に当業者の能力の範囲内である。例示的な実施形態では、触媒は、約0.005mol%から約1mol%の量で存在する。一般的に、触媒は、約0.01mol%から約0.5mol%、さらにより好ましくは約0.02mol%から約0.2mol%の量で存在することが好ましい。
【0082】
例示的な実施形態では、エナミドは、約0.02から約0.3mol%、好ましくは約0.03から約0.2mol%、さらにより好ましくは約0.03から約0.1mol%のRh−MeBPE触媒の存在下で、対応するアミドに水素化される。
【0083】
別の例示的な実施形態では、エナミドは、約0.1から約1.0mol%、好ましくは約0.1から約0.5mol%、およびさらにより好ましくは約0.3mol%のRh−PennPhos触媒の存在下で水素化されることによって、アミドを生じる。
【0084】
別の例示的な実施形態では、エナミドは、約0.005から約1.0mol%、好ましくは約0.01から約0.5mol%、さらにより好ましくは約0.02から約0.1mol%の(R,R)−NorPhos(COD)RhBF触媒の存在下で水素化されることによって、アミドを生じる。
【0085】
本発明で用いられる現今の好ましい触媒により、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の収率の高収率でエナミドからアミドが提供される。一般的に好ましい触媒は、合成が少なくとも300グラム、好ましくは少なくとも500グラム、より好ましくは少なくとも750g、さらにさらにより好ましくは少なくとも1000gの大規模である場合に、高収率のアミドを提供するものである。好ましい触媒により、反応が上述の大きな規模で行われる場合に同じく上述の高収率でアミドが提供される。これらの望ましい特性を有する例示的な触媒は、(R,R)−NorPhos(COD)RhBFである。
【0086】
水素圧
エナミドのC−C二重結合の対応するC−C単結合への変換が水素化によってもたらされる場合、反応容器中の水素の圧力を調整することによって、反応収率および立体選択性を最適化することができる。本発明の方法は任意の有用な水素圧で行われ、当業者は所望の結果を最適化するための水素圧の調整方法を理解するであろう。
【0087】
例示的な実施形態では、エナミドは、約2から約10バール、好ましくは約4から約8バール、より好ましくは約5から約6バールの水素圧で水素化されることによって、アミドを与える。
【0088】
溶媒
本発明の方法は、任意の一溶媒または任意の分類、例えば、プロトン性、非プロトン性、芳香族、もしくは脂肪族の溶媒を用いて行うことに限定されない。特定の反応に対する適切な溶媒の選択は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0089】
例示的な実施形態では、エナミドは、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒、またはその混合物である溶媒の存在下でアミドに変換される。好ましい実施形態では、溶媒は、アルコール、より好ましくはC〜C−アルコールであるプロトン性溶媒である。他の好ましい実施形態では、アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、または2,2,2−トリフルオロエタノール(CFCHOH)である。現在好ましい実施形態では、アルコールはイソプロパノールである。
【0090】
別の例示的な実施形態では、非プロトン性溶媒は、芳香族溶媒、非芳香族溶媒、またはその混合物である。本発明において用いられる例示的な芳香族溶媒には、トルエン、ベンゼン、およびキシレン、好ましくはトルエンおよびキシレンなどのより毒性の低い芳香族溶媒が含まれる。本発明の方法において用いられる例示的な非芳香族溶媒には、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(CHCl)、酢酸エチル(EtOAc)、およびアセトニトリル(CHCN)が含まれる。
【0091】
溶媒および基質は、本質的に任意の有用な比で存在する。例示的な実施形態では、溶媒および基質は、約0.05Mから約0.5M、好ましくは約0.1Mから約0.3M、より好ましくは約0.12Mから約0.34Mの基質溶液を提供する量で存在する。
【0092】
アミド
本発明の方法によって形成されるアミドは多様な構造を有し、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、およびヘテロアリールのサブ構造を含むことができる。例示的な実施形態では、アミドは、式
【化15】

(式中、R〜RおよびRは、上述した通りである)を有する。
【0093】
以前に検討したように、本発明の方法は、1,2,3,4−テトラヒドロ−N−アルキル−1−ナフタレンアミンサブ構造または1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンアミンサブ構造を構造内に含むアミドを調製するのに有用である。それゆえに、例示的な実施形態では、アミドは、式
【化16】

(式中、RおよびRは、上述した通りである)を有する。
【0094】
例示的なアミドは、式
【化17】

を有する、トランスアミドである。
【0095】
さらなる例示的なアミドは、式
【化18】

を有する。
【0096】
好ましい実施形態では、アミドは、式
【化19】

を有する。上記アミドの式のそれぞれにおいて、C−1およびC−4は(R)および(S)から独立して選択される配置を有し、好ましい実施形態では、C−1は(R)配置であり、C−4は(S)配置である。
【0097】
エナンチオマー過剰またはジアステレオマー過剰
好ましい実施形態では、本方法によって生成される、所望のエナンチオマーのエナンチオマー過剰(ee)または所望のジアステレオマーのジアステレオマー過剰(de)は、約60%のee/deから約99%のee/de、好ましくは約70%のee/deから約99%のee/de、より好ましくは約80%のee/deから約99%のee/de、さらにより好ましくは約90%のee/deから約99%のee/deである。
【0098】
別の好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.4%、より好ましくは少なくとも約99.8%のエナンチオマー過剰またはジアステレオマー過剰を有するアミドを提供する。
【0099】
キラル二座配位子、例えば、1,2−ビス(ホスホラノ)エタン(BPE)配位子、P,P−1,2−フェニレンビス(7−ホスファビシクロ[2.2.1]ヘプタン)(PennPhos)配位子、5,6−ビス(ホスフィノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NorPhos)配位子、または3,4−ビス(ホスフィノ)ピロリジン(catASium(登録商標)Dとして市販されている)配位子に由来するものなどに基づくロジウム触媒系を用いる場合、対応するエナミドに由来するトランスアミドのジアステレオマー純度は驚くほど高い。
【0100】
好ましい実施形態では、アミドに1,2,3,4−テトラヒドロ−N−アルキル−1−ナフタレンアミン・サブユニットまたは1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンアミン・サブユニットが含まれる場合、当該方法により、実質的にシス異性体のない(1R,4S)−トランスアミドが提供される。
【0101】
例示的な一実施形態では、エナミドは、イソプロパノール中において、約0.03から約0.05mol%のRh−Me−BPE触媒を用い、約4から約6バールの水素圧で水素化されて、約80から約99%のde、好ましくは少なくとも95%のde、より好ましくは少なくとも99%のdeでトランスN−アセチルアミドを生じる。
【0102】
別の例示的実施形態では、エナミドは、イソプロパノール中において、約0.2から約0.5mol%のRh−PennPhos触媒を用い、約4から約5バールの水素圧で水素化されて、約80から約99%のde、好ましくは少なくとも95%のde、より好ましくは少なくとも99%のdeで、トランスN−アセチルアミドを生じる。
【0103】
さらに別の例示的な実施形態では、エナミドは、イソプロパノール中において、約0.01から約0.05mol%の(R,R)NorPhos(COD)RhBF触媒を用い、約5から約8バールの水素圧で水素化されることによって、約80〜99%のde、好ましくは少なくとも95%のde、より好ましくは少なくとも99%のdeで、トランスN−アセチルアミドを生じる。
【0104】
好ましい実施形態では、約0.1Mから約0.3Mのエナミドの濃度で水素化を行う。
【0105】
さらなる例示的な実施形態では、立体異性体が豊富なアミドは、選択的結晶化により、純化される(purified)か、さらに豊富なものとなる(enriched)。別の例示的な実施形態では、アミドは、約90から約99%のee/deのエナンチオマー純度またはジアステレオマー純度に純化されるか、豊富なものとなる。別の例示的な実施形態では、アミドは、約95から約99%のee/deのエナンチオマー純度またはジアステレオマー純度に純化されるか、豊富なものとなる。
【0106】
水素化または水素移動の生成物は、当技術分野で知られている方法、例えば、キラルクロマトグラフィー、選択的結晶化などによって、エナンチオマーあるいはジアステレオマーが豊富なものとすることができる。豊富なものすることにより、少なくとも約95%が単独の立体異性体である生成物が与えられることが一般的に好ましい。より好ましくは少なくとも約97%、さらにより好ましくは少なくとも約99%が、単独の立体異性体である。
【0107】
現今の好ましい実施形態では、豊富なトランスアミドは、選択的結晶化によって、純化され、または豊富なものとされ、約99%のdeの所望のトランス異性体を与える。
【0108】
C.アミドからアミンへ
別の態様では、本発明は、対応するエナミドから形成されたアミドをアミンに変換する方法を提供する。例示的な実施形態では、当該方法は、アミドを脱アシル化するのに適切な条件下でアミドを脱アシル化試薬と接触させ、それによってアミンを形成する工程を含む。
【0109】
例示的な実施形態では、アミンは、式
【化20】

またはその塩を有する。ラジカルは、上記に示したものと同一である。
【0110】
アミンは任意の所望の構造とすることができるが、キラルアミンであることが好ましい。アミンがキラルである場合、本方法によって生成される所望のエナンチオマーのエナンチオマー過剰(ee)または所望のジアステレオマーのジアステレオマー過剰(de)は、約60%のee/deから約99%のee/de、好ましくは約70%のee/deから約99%のee/de、より好ましくは約80%のee/deから約99%のee/de、さらにより好ましくは約90%のee/deから約99%のee/deである。
【0111】
別の好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.4%、より好ましくは少なくとも約99.8%のエナンチオマー過剰またはジアステレオマー過剰を有するアミンを提供する。光学対掌体が本質的にないアミンは、本発明の方法を介して入手可能である。
【0112】
例示的な実施形態では、アミンは、1,2,3,4−テトラヒドロ−N−アルキル−1−ナフタレンアミンサブ構造または1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンアミンサブ構造を含み、式
【化21】

またはその塩を有する。
【0113】
好ましい実施形態では、アミンは、式、
【化22】

を有するトランスアミン、またはその塩である。
【0114】
例示的なアミンは、式
【化23】

(式中、Qは、陰イオンである)を有する。指数eは、0から1の数値である。指数は分数値をとることができ、これはアミン塩がヘミ塩(hemi-salt)であることを示している。
【0115】
好ましい実施形態では、アミンは、式
【化24】

(式中、Qおよびeは、上述した通りである)を有する。
【0116】
C−1およびC−4は、(R)および(S)から独立して選択される配置を有する。好ましくはC−1は(R)配置であり、C−4は(S)配置である。
【0117】
別の好ましい実施形態では、アミンはトランス配置であり、実質的にシス異性体がない。
【0118】
アミドは、任意の好適なプロセスによって脱アシル化される。アミドを対応するアミンに脱アシル化する多くの方法は、当技術分野で既知である。例示的な実施形態では、脱アシル化試薬は酵素である。このプロセスで用いられる例示的な酵素には、EC3.5.1(例えば、アミダーゼ、アミノアシラーゼ)およびEC3.4.19の分類のものが含まれる。
【0119】
別の実施形態では、脱アシル化試薬は酸または塩基である。酸または塩基は、無機または有機のいずれでもよい。酸の混合物または塩基の混合物も、同様に有用である。脱アシル化試薬が酸である場合、酸加水分解によってアミンの形態である生成物が生成されるように、酸が選択されることが一般的に好ましい。例示的な実施例では、酸は塩酸(HCl)である。
【0120】
本発明で用いられる他の脱アシル化条件は、限定するものではないが、アルコール溶媒中のメタンスルホン酸/HBr、亜リン酸トリフェニル/ハロゲン(例えば、臭素、塩素)錯体、およびジ−t−ブチルジカーボネート/水酸化リチウムの一連が含まれる。
【0121】
好ましい実施形態では、アミドは、活性化剤、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ホスゲン、および好ましくは塩化オキサリル/ピリジンでの処理によって脱アシル化される。反応は、アルコール、好ましくはグリコール、例えば、プロピレングリコールでクエンチする。
【0122】
アミドが1,2,3,4−テトラヒドロ−N−アルキル−1−ナフタレンアミンまたは1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンアミンサブ構造を含む場合、任意のジヒドロナフタレン副生成物の形成も最小限になるように脱アシル化条件が選択されることが好ましい。
【0123】
アミンは、単離するまたは豊富にすることができる。アミンを単離するまたは豊富にする現今の好ましい方法は、少なくとも一工程の選択的結晶化を含む。
【0124】
アミンが任意選択によりN−アルキル化またはN−アシル化されて、対応するN−アルキルまたはN−アシル誘導体が調製される。
【0125】
例示的な実施形態では、本発明は、トランス4−(3,4−ジクロロフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンアミン5およびその塩形態の大規模な調製に適した方法を提供する。例示的な実施形態では、このプロセスは、光学的に純粋な(4S)−テトラロン1から開始して、オキシム2を介し、エナミド3などのエナミドを合成し、エナミド3に触媒不斉水素化を享受させてアミド4を得て、これをN−脱アシル化するとトランス4−(3,4−ジクロロフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンアミン5またはその塩を与えることを伴う(スキーム2)。
【化25】

【0126】
好ましい実施形態では、スキーム2の経路によって調製される化合物は、(1R,4S)−トランス4−(3,4−ジクロロフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンアミンである。実質的にシス異性体のない化合物を調製することが、さらにより好ましい。
【0127】
式5による化合物は、デスメチルセルトラリンの立体異性体を含む。5のN−メチル類似体は、セルトラリンの立体異性体である。
【0128】
セルトラリンの主要な臨床用途は、うつ病の治療である。加えて、米国特許第4981870号には、精神病、乾癬、関節リウマチおよび炎症の治療用にセルトラリンおよび関連する化合物の使用が開示され、特許請求されている。
【0129】
(1R,4S)−トランス4−(3,4−ジクロロフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンアミンおよび(1S,4R)−トランス4−(3,4−ジクロロフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンアミンは、モノアミン活性によって調節されるCNS関連障害の治療に有用である(Jerussiら、米国特許出願第2004/0092605号;引用文献)。このようなCNS関連障害には、気分障害(例えば、うつ病)、不安障害(例えば、OCD)、行動障害(例えば、ADDおよびADHD)、摂食障害、物質乱用障害、および性機能障害が含まれる。潜在的には、これらの分子は、現在における治療標準と比較して、副作用の減少をもたらす。この化合物は、片頭痛の予防にも有用である。
【0130】
IV.組成物
別の態様では、本発明は、
【化26】

(式中、Rは、置換または非置換のアリールおよび置換または非置換のヘテロアリールから選択されるメンバーである)を含む混合物を提供する。Qは陰イオンである。指数eおよびfは、0から1の数値を独立して表す。それゆえに、上記の構造はヘミ塩を含む。
【0131】
指数xおよびyは、(S)および(R)から独立して選択される。一実施形態では、xが(S)である場合、yは(S)であり、xが(R)である場合、yは(R)である。別の実施形態では、xが(S)である場合、yは(R)である。
【0132】
例示的な実施形態では、Rは、置換または非置換のアリールである。好ましいアリール部分は、置換または非置換のフェニル部分である。
【0133】
別の例示的な実施形態では、混合物は、以下の式
【化27】

(式中、e、f、xおよびyは、上述した通りである)を有する化合物を含む。
【0134】
上記に示した混合物は、医薬製剤に用いられる。生物活性化合物の立体異性体は、異なる特性を有することができることが一般的に容認されている。例えば、β−アドレナリン受容体遮断薬であるプロプラノロールのS−エナンチオマーは、R−エナンチオマーよりも100倍効力があることが知られている。しかし、効力は、医薬の分野において唯一の関心ではない。ある特定の異性体は、単に不活性であるということよりも、実際に有害となり得るゆえに、光学純度は重要である。ジアステレオマーの混合物は、有効に合わさって、それぞれの純粋なジアステレオマーの特性を調節する。それゆえに、選択された実施形態では、本発明は、ジアステレオマー化合物AおよびBの混合物を提供する。
【0135】
本発明によれば、任意のAおよびBの純粋な異性体であってもよいし混合物であってもよい治療有効量のAまたはBを治療が必要な人に投与することもできる。
【0136】
本発明の方法によって調製される化合物で治療可能な障害として、限定するものではないが、うつ病、大うつ病性障害、双極性障害、慢性疲労障害、季節性情動障害、広場恐怖症、全般性不安障害、恐怖症性不安、強迫性障害(OCD)、パニック障害、急性ストレス障害、社会恐怖症、線維筋痛症、神経因性疼痛、心的外傷後ストレス症障害、月経前症候群、閉経、閉経期および男性更年期が含まれる。
【0137】
それらの有益な治療効果に加えて、本発明の方法によって調製される化合物は、従来の気分障害治療に関連する1つ以上の副作用を回避または低減する追加の利益を提供することができる。そのような副作用には、例えば、不眠症、乳房痛、体重増加、錐体外路症状、血清プロラクチン濃度の上昇、および性的機能不全(性欲減退、射精機能不全、および無オルガスム症を含む)が含まれる。
【0138】
本発明の方法によって調製される化合物(およびその混合物)は、DSM−IV−TR(商標)に提供されているような当技術分野において容認された意味に従う注意欠陥障害(ADD)および注意欠陥/多動性障害(ADHD)などの破壊的行動障害(disruptive behavior disorders)を治療するのにも有効である。これらの障害は、人の行動に影響を及ぼして学習および社会的状況において不適切な行為もたらすこととして定義される。幼児期の間に最も一般に起こるが、破壊的行動障害は成人期にも起こり得る。
【0139】
用語「治療」は、前述の障害に関連して用いる場合、これらの障害に関連する症状および/または影響からの回復、防止、または緩和を意味し、病状に至る可能性または重篤度を実質的に減少させるための式AもしくはBの化合物、それらの混合物、またはいずれかの薬学的に許容できる塩の予防的投与を含む。
【0140】
本発明の方法によって調製される純粋な化合物および混合物は、摂食障害の治療にも有効である。摂食障害は、人の食欲もしくは食習慣の障害、または不適切な体型像の障害として定義される。摂食障害には、限定するものではないが、神経性食欲不振症、神経性過食症、肥満症、および悪液質が含まれる。
【0141】
うつ病性障害、例えば、気分変調性障害または大うつ病性障害;双極性障害、例えば、双極性I障害、双極性II障害、および循環病;うつ病および/または躁病の特徴を伴う全身病状による気分障害;ならびに物質誘発性気分障害などの気分障害は、本発明の化合物および混合物を用いて治療することができる。
【0142】
急性ストレス障害、パニック障害の病歴を伴わない広場恐怖症、全身病状による不安障害、全般性不安障害、強迫性障害、広場恐怖症を伴うパニック障害、広場恐怖症を伴わないパニック障害、心的外傷後ストレス障害、特定恐怖症、社会恐怖症、および物質誘発性不安障害などの不安障害は、本発明の化合物および混合物を用いて治療可能である。
【0143】
本発明の方法によって調製される化合物および混合物は、脳機能障害の治療にも有効である。本明細書で用いる脳機能障害との用語は、知的欠損を伴う脳機能障害を含み、老年痴呆、アルツハイマー型痴呆、記憶喪失、記憶消失/健忘症候群、てんかん、意識障害、昏睡、注意力低下、言語障害、パーキンソン病、および自閉症によって例示することができる。
【0144】
当該化合物および混合物は、緊張型、解体型、妄想型、残遺型、または分化型(differentiated)の精神分裂病、分裂病様障害、分裂感情障害、妄想性障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、妄想および/または幻覚を伴う全身病状による精神病性障害などの精神分裂病および他の精神病性障害を治療するためにも用いられる。
【0145】
式AおよびBの化合物は、男性および女性の両方における性的機能不全の治療にも有効である。この種類の障害には、例えば、勃起不全および陰核障害に関連するオルガスム障害が含まれる。
【0146】
本発明の方法によって調製される化合物および混合物は、例えば、コカイン、ヘロイン、ニコチン、アルコール、抗不安薬および睡眠薬、大麻(マリファナ)、アンフェタミン、幻覚薬、フェニルシクリジン、揮発性溶媒、および揮発性亜硝酸化合物に対する中毒を含む、物質乱用の治療にも有用である。ニコチン中毒には、すべての既知形態のニコチン中毒、例えば、シガレット、シガー、および/またはパイプ喫煙に起因するニコチン中毒、ならびにタバコをかむことに起因する中毒などが含まれる。この点において、ノルエピネフリンおよびドーパミンの取り込み阻害剤としての活性により、本発明の化合物は、ニコチン刺激に対する欲求を低減するように機能することができる。ブプロピオン(ZYBAN(登録商標)、GlaxoSmithKline、ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク、米国)は、ノルエピネフリンおよびドーパミン受容体の両方において活性を有する化合物であり、禁煙治療の助剤として米国において現在入手できる。しかし、ブプロピオンの治療活性を上回る利点として、本発明の化合物は、追加のセロトニン作動性成分を提供する。
【0147】
本発明の方法によって調製される純粋な化合物および混合物は、片頭痛の予防においても有効である。
【0148】
本発明の方法によって調製される化合物および混合物は、例えば、線維筋痛症、慢性疼痛、および神経因性疼痛を含む疼痛障害の治療にも有用である。用語「線維筋痛症」は、すべて、筋肉、腱、および靭帯を含む軟部組織でのうずく疼痛および硬直を特徴とする、いくつかの障害を表す。全身性線維筋痛症、原発性線維筋痛症候群、続発性線維筋痛症候群、限局性線維筋痛症、および筋筋膜疼痛症候群を含む、線維筋痛症障害に対する様々な代替の用語が過去に用いられてきた。以前に、これらの障害は、結合組織炎または線維筋炎症候群と総称して呼ばれた。神経因性疼痛障害は、神経、脊髄、または脳における異常によって引き起こされると考えられ、限定するものではないが、灼熱感ならびに刺痛感、接触および寒冷に対する過敏症、幻肢痛、帯状疱疹後神経痛、ならびに慢性疼痛症候群(例えば、反射性交感神経性ジストロフィーおよび灼熱痛を含む)を含む。
【0149】
式A、Bの化合物またはその混合物の予防または治療用量の規模は、治療される状態の性質および重症度、ならびに投与経路で変動することになる。用量、およびおそらく投与頻度は、個々の患者の年齢、体重、および応答によっても変動する。一般に、本発明の化合物の日用量の合計の範囲は、単一用量または分割用量で、1日当たり約1mgから1日当たり約500mg、好ましくは1日当たり約1mgから1日当たり約200mgになるであろう。1日当たり1mg未満の本発明の化合物の投与量も、本発明の範囲内である。
【0150】
任意の好適な投与経路を使用することができる。例えば、経口、直腸、鼻腔内、および非経口(皮下、筋肉内、および静脈内を含む)の経路を使用することができる。剤形には、錠剤、トローチ、分散剤、懸濁剤、溶剤、カプセル剤、およびパッチ剤が含まれ得る。
【0151】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容できる担体および任意選択により他の治療成分とともに、式AまたはBの単独の化合物もしくは該化合物の混合物またはAまたはBの薬学的に許容できる塩を活性成分として含む。
【0152】
薬学的に許容できる担体は、投与に望まれる経路、例えば経口または非経口(静脈内を含む)に応じて、多種多様な形態をとることができる。経口剤形のための組成物の調製では、懸濁剤、エリキシル剤、および溶剤を含む経口液体製剤の場合には、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、および着色剤などの任意の通常の医薬媒体を使用することができる。デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、および崩壊剤などの担体は、粉末、カプセル、およびカプレットなどの経口固体製剤の場合に用いることができ、固体経口用製剤は液体製剤よりも好ましい。好ましい固体経口製剤は、投与が容易であるゆえに錠剤またはカプセルである。必要に応じて、錠剤は、標準の水性または非水性技術によってコーティングしてもよい。経口または非経口の徐放剤形も用いることができる。
【0153】
例示的な製剤は当業者に既知であり、それらを調製するための一般的方法は任意の標準的な薬学部の教科書、例えば、Remington、THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY、21版、Lippincottにおいて見出される。
【0154】
それゆえに、本明細書に示すように、本発明は以下の態様および実施形態によって例示される。
【0155】
オキシムをエナミドに変換するための方法。この方法は、(a)オキシムをエナミドに変換するのに適切な条件下で、オキシムをホスフィンおよびアシル供与体と接触させる工程を含む。
【0156】
オキシムが、式
【化28】

を有する(式中、R、R、およびRは、H、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および置換または非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーである。R、R、およびRのうちの少なくとも2つは、任意選択により連結して、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のヘテロアリールから選択される環系を形成する。)、前述の段落による方法。
【0157】
オキシムが、式
【化29】

を有する(式中、Arは、置換または非置換のアリールおよび置換または非置換のヘテロアリールから選択されるメンバーである。Rは、H、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリールおよび置換または非置換のヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーであり、指数aは、1から4の整数から選択される。)、前述の段落のいずれかの方法。
【0158】
が置換または非置換のアリールである、前述の段落のいずれかの方法。
【0159】
が置換または非置換のフェニルである、前述の段落のいずれかの方法。
【0160】
が少なくとも1個のハロゲンで置換されたフェニルである、前述の段落のいずれかの方法。
【0161】
が、式
【化30】

を有する(式中、XおよびXは、独立して選択されるハロ部分である。)、前述の段落のいずれかの方法。
【0162】
およびXがそれぞれクロロである、前述の段落のいずれかの方法。
【0163】
Arが置換または非置換のフェニルである、前述の段落のいずれかの方法。
【0164】
オキシムが、式
【化31】

を有する、前述の段落のいずれかの方法。
【0165】
アシル供与体が式:Z−C(O)−Rを有する(式中、Zは離脱基である。Rは、H、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および置換または非置換のヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーである。)、前述の段落のいずれかの方法。
【0166】
Zが、式
−C(O)−O−
を有する(式中、Rは、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および置換または非置換のヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーである。)、前述の段落のいずれかによる方法。
【0167】
およびRの両方が、独立して選択される置換または非置換のC〜C部分である、前述の段落のいずれかによる方法。
【0168】
ホスフィンが、式
P(Q)
を有する(式中、各Qは、H、置換または非置換のアルキルおよび置換または非置換のアリールから独立して選択されるメンバーである。)、前述の段落のいずれかによる方法。
【0169】
各Qが、置換または非置換のC〜Cアルキルから独立して選択されるメンバーである、前述の段落のいずれかによる方法。
【0170】
接触させる工程が非プロトン性溶媒を含む溶液中である、前述の段落のいずれかによる方法。
【0171】
非プロトン性溶媒が芳香族溶媒である、前述の段落のいずれかによる方法。
【0172】
非プロトン性芳香族溶媒がトルエン、キシレン、およびその組合せから選択される、前述の段落のいずれかによる方法。
【0173】
エナミドが、式
【化32】

を有する、前述の段落のいずれかによる方法。
【0174】
C−4がR、S、およびその混合物から選択される配置を有する、前述の段落のいずれかによる方法。
【0175】
C−4がS配置である、前述の段落のいずれかによる方法。
【0176】
(b)エナミドの炭素−炭素二重結合を水素化するのに適切な条件下で、工程(a)において形成されたエナミドを、水素化触媒および水素または水素移動試薬と接触させ、それによってエナミドをアミドに変換する工程をさらに含む、前述の段落のいずれかによる方法。
【0177】
触媒がキラル触媒である、前述の段落のいずれかによる方法。
【0178】
キラル触媒がキラルホスフィン配位子との遷移金属錯体である、前述の段落のいずれかによる方法。
【0179】
アミドがラセミアミドまたはキラルアミドである、前述の段落のいずれかによる方法。
【0180】
アミドが、式
【化33】

を有する、前述の段落のいずれかによる方法。
【0181】
C−1およびC−4が、RおよびSから独立して選択される配置を有する、前述の段落のいずれかによる方法。
【0182】
C−1がR配置であり、C−4がS配置である、前述の段落のいずれかによる方法。
【0183】
(c)アミドの−HNC(O)Rを脱アシル化するのに適切な条件下で、アミドを脱アシル化試薬と接触させ、それによってアミンを形成する工程をさらに含む、前述の段落のいずれかによる方法。
【0184】
(d)前記アミンを単離する工程を含む、前述の段落のいずれかによる方法。
【0185】
単離する工程が選択的結晶化を含む、前述の段落のいずれかによる方法。
【0186】
アミンが、式
【化34】

を有する(式中、Qは陰イオンであり、eは0から1である。)、前述の段落のいずれかによる方法。
【0187】
C−1およびC−4が、RおよびSから独立して選択される配置を有する、前述の請求項のいずれかによる方法。
【0188】
C−1がR配置であり、C−4がS配置である、前述の請求項のいずれかによる方法。
【0189】

【化35】

を有するオキシムを、式
【化36】

を有するエナミドに変換する方法(式中、Rは、置換または非置換のアリールおよび置換または非置換のヘテロアリールから選択される。Rは、H、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリールおよび置換または非置換のヘテロシクロアルキルから選択される。)。この方法は、(a)オキシムをエナミドに変換するのに適切な条件下で、オキシムをホスフィンおよびアシル供与体と接触させる工程を含む。
【0190】
C−4がS配置である、前述の段落による方法。
【0191】
ホスフィンがトリアルキルホスフィンである、前述の段落による方法。
【0192】
オキシム、アシル供与体、およびホスフィンが芳香族溶媒中に溶解される、前述の段落による方法。
【0193】
アシル供与体がアルキル無水物である、前述の段落による方法。
【0194】
(b)エナミドのC(O)に共役した炭素−炭素二重結合を水素化するのに適切な条件下で、工程(a)において形成されたエナミドをキラル水素化触媒および水素と接触させ、それによってエナミドを、式
【化37】

(式中、C−1は、RおよびSから選択される配置を有する。)を有するアミドに変換する工程を含む、前述の段落による方法。
【0195】
キラル触媒がキラルホスフィン配位子に錯体形成したロジウムを含む、前述の段落による方法。
【0196】
(c)アミドの−HNC(O)Rを脱アシル化するのに適切な条件下で、アミドを脱アシル化試薬と接触させ、それによって、式
【化38】

(式中、Qは陰イオンである。指数eは、0または1である。)を有するアミンを形成する工程をさらに含む、前述の段落による方法。
【0197】
脱アシル化試薬が酵素である、前述の段落による方法。
【0198】
脱アシル化試薬が酸である、前述の段落による方法。
【0199】
【化39】

を含む混合物(式中、Rは、置換または非置換のアリールおよび置換または非置換のヘテロアリールから選択されるメンバーである。Qは陰イオンである。指数eおよびfは、独立して選択される0から1の数値であり、xおよびyは、xがRである場合、yはRであり、xがSである場合、yはSであるように、RおよびSから選択される。)。
【0200】
Aが、Bに対して少なくとも90%のジアステレオマー過剰で混合物中に存在する、前述の段落による方法。
【0201】
Aが、Bに対して少なくとも98%のジアステレオマー過剰で混合物中に存在する、前述の段落による方法。
【0202】
xおよびyがRである、前述の段落による方法。
【0203】
xおよびyがSである、前述の段落による方法。
【0204】
が置換または非置換のフェニルである、前述の段落による方法。
【0205】
前述の段落による混合物を含む医薬製剤。
【0206】
以下の実施例は、本発明の選択された実施形態を例証するために提供され、その範囲を限定すると解釈すべきではない。
【実施例1】
【0207】
N−((S)−4−(3,4−ジクロロフェニル)−3,4−ジヒドロナフタレン−1−イル)アセトアミド(3)の合成
1.1. オキシム2の合成
メタノール(168mL)中の(S)−テトラロン1(56.0g、0.192mol)、ヒドロキシルアミン塩酸塩(14.7g、0.212mol)、および酢酸ナトリウム(17.4g、0.212mol)の混合物から形成された懸濁液を、N雰囲気下で1から5時間加熱還流した。反応の進行は、HPLCによってモニターした。反応が完了した後、反応混合物を真空で濃縮した。残渣を、トルエン(400mL)および水200mLで希釈した。有機層を分離し、追加の水200mLで洗浄した。この有機層を濃縮し、乾燥させることによって、粗製の固体オキシム2(58.9g、100%)、融点117〜120℃を生じた。
【0208】
H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)9.17(br,1H,OH)、7.98(m,1H)、7.36(d,1H,J=8.0Hz)、7.29(m,2H)、7.20(d,1H,J=2.4Hz)、6.91(m,2H)、4.11(dd,1H,J=7.2Hz,4.4Hz)、2.82(m,2H)、2.21(m,1H)、2.08(m,1H)。13C NMR(100MHz,CDCl)δ 154.94、144.41、140.40、132.83、130.92、130.82、130.68、130.64、129.98、129.38、128.12、127.64、124.48、44.52、29.51、21.27。
【0209】
1.2. エナミド3の合成
トルエン(500mL)中の粗オキシム2(59g、0.193mol)の溶液を、Nで30分間パージした。EtP(25g、0.212mol)を入れた。10分間攪拌した後、無水酢酸(21.6g、20mL、0.212mol)を加えた。反応混合物を、8から13時間還流した。反応の進行は、HPLCによってモニターした。反応混合物を室温に冷却した。メタノール(1.0mL)中の6NのNaOH(水溶液)(86mL、0.516mol)および1.0Mの(n−Bu)NOHを加えた。加水分解は、約2から4時間で完了した。有機層を分離し、EtOAc(300mL)および2−BuOH(30mL)で希釈した。希釈した有機溶液を1%のHOAc(水溶液)溶液(300mL)およびDI水(3×300mL)で洗浄し、真空で約350mLのスラリーに濃縮した。このスラリーをヘプタン(100mL)および2−BuOH(4mL)で希釈し、加熱還流することによって透明な溶液を形成した。濁った溶液が形成するまで、ヘプタン(50から200mL)を徐々に加えた。懸濁液を室温まで徐々に冷却した。生成物をろ別し、30%のトルエンおよび70%のヘプタン(3×100mL)の溶液で洗浄し、真空オーブン中で乾燥させることによって、56.9gの白色固体(エナミド3、89%の収率)、融点167〜168℃を生じた。
【0210】
(S)−テトラロン1(50.0g、0.172mol)をヒドロキシルアミン塩酸塩(13.1g、0.189mol)および酢酸ナトリウム(15.5g、0.189mol)を含むメタノール(150mL)中でスラリーにした。得られた懸濁液を不活性雰囲気下で2から6時間加熱還流し、進行をHPLCによってモニターした。完了したら、混合物を25℃に冷却し、トルエン(300mL)で希釈し、1.7NのNaOH(100mL)でクエンチした。混合物を、減圧下、真空で濃縮し、水層を除去し、有機層をDI水(100mL)でさらに洗浄した。さらなるトルエン(300mL)を容器に入れ、共沸蒸留によって水を除去した。周囲温度になったら、n−BuP(47.1mL、0.183mol)を反応器に入れ、その後、無水酢酸(32.5mL、0.344mol)を入れた。反応物を加熱還流し、HPLCによってモニターした。20〜24時間後、反応物を周囲温度に冷却し、6NのNaOH(120mL)でクエンチした。この混合物を、2から6時間反応させた後、水層を除去した。有機相をDI水(100mL)で洗浄した。真空で混合物を濃縮し、室温に冷却し、イソプロパノール(50mL)で希釈した後、ヘプタンを加えることによって結晶化を補助した。ヘプタン(50mL)を最初に入れた後、追加の650mLを入れた。スラリーの熟成(aginig)後にろ過し、洗浄し(4×100mLのヘプタン)、乾燥させることによって、淡黄色固体(エナミド3、44.1g、77%)を得た。
【0211】
H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)7.35(d,1H,J=8.4Hz)、7.26(m,3H)、7.17(m,1H)、7.05(dd,1H,J=8.0,1.6Hz)、7.00(br,1H)、6.87(m,0.82H,82% NH 回転異性体)、6.80(br,0.18H,18% NH 回転異性体)、6.31(t,0.82H,J=4.8Hz,82% H 回転異性体)、5.91(br,0.18H,18% H 回転異性体)、4.12(br,0.18H,18% H 回転異性体)、4.03(t,0.82H,J=8.0Hz,82% H 回転異性体)、2.72(m,1H)、2.61(ddd,1H,J=16.8,8.0,4.8Hz)、2.17(s,2.46H,82% CH 回転異性体)、1.95(s,0.54H,18% CH 回転異性体)。100MHz 13C NMR(CDCl)δ 169.3、143.8、137.7、132.3、131.8、131.4、130.5、130.3、130.2、128.8、128.1、127.8、127.2、123.8、122.5、121.2、117.5、42.6、30.3、24.1。
【実施例2】
【0212】
N−((1R,4S)−4−(3,4−ジクロロフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル)アセトアミド(4)の合成
エナミド3(24g、72mmol)を脱気したイソプロパノール(200mL)中でスラリーにした。得られたスラリーを適切な反応器に移した。触媒溶液を加える前に、反応器の内容物を窒素でパージした。イソプロパノール(IPA)中の(R,R)−MeBPE(COD)RhBF触媒(20.1mg、0.036mmol、0.05mol%)の(100mL)の溶液を、反応器に加えた。内容物を0℃に冷却し、窒素で3回パージした。次いで、反応器を水素でパージし、ゲージ圧90psiに加圧した。反応物を、0℃で7.5時間、攪拌しながら熟成し、変換を水素の取り込みによってモニターした。次いで、内容物を室温に加温し、水素を抜いた。窒素でパージした後、内容物を排出した。反応混合物を50℃に加熱し、Celiteのパッドを通してろ過した。透明な橙色溶液を約50%の容積(150mL)まで濃縮し、トルエン(5.9g、5wt%)で希釈した。懸濁液を65℃に加熱し、水(14.7mL)を液滴で加えることによって、濁った溶液を形成した。スラリーを−10℃に徐々に冷却し、30分間熟成した。固体をろ過し、冷IPA(2×45mL)で洗浄した。ケーキを真空下、45℃で一晩乾燥させることによって、20.0g(83%の収率)のトランスアセトアミド4(99%超のde)を得た。
【0213】
H NMR(CDCl)400MHz δ 7.34(dd,2H,J=7.9,2.4Hz)、7.23(t,1H,J=7.5Hz)、7.15(m,2H)、6.85(dd,1H,J=8.2,2.0Hz)、6.82(d,1H,J=7.7Hz)、5.72(d,1H,J=8.4Hz)、5.31(dd,1H,J=13.2,8.1Hz)、4.10(dd,1H,J=7.0,5.9Hz)、2.17(m,2H)、2.06(s,3H)、1.87(m,1H)。1.72(m,1H);13C NMR(CDCl)100MHz δ 169.7、146.9、138.8、137.7、132.6、130.8、130.6、130.5、130.3、128.4、128.3、127.9、127.4、47.9、44.9、30.5、28.4、23.8。
【実施例3】
【0214】
(1R,4S)−4−(3,4−ジクロロフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−アミン塩酸塩(5)の合成
トランス−アセトアミド4(9.0g、26.9mmol)、n−プロパノール(45mL)および5Mの塩酸(45mL)の溶液を、約48時間(90〜93℃)還流した。この時間の間、反応温度が92℃を超えるまで留出物を定期的に採取することによって、反応温度を90℃以上に維持した。追加のn−プロパノールを定期的に加えることによって、溶液を、その当初の容積に維持した。加水分解が完了した後、溶液を0℃に徐々に冷却するとスラリーとなり、これを0℃で1時間熟成した。反応混合物をろ過し、ケーキを1:1のメタノール/水(20mL)で洗浄し、その後、t−ブチルメチルエーテル(20mL)で洗浄した。湿ったケーキを、真空下、45から50℃で乾燥させることによって、7.0gの当該アミン塩酸塩5(80%の収率)を得た。
【0215】
H NMR(DMSO−d)δ 1.81〜1.93(m,2H)、2.12〜2.21(m,1H)、2.28〜2.36(m,1H)、4.28(t,1H,J=6.8)、4.59(br.s,1H)、6.84(d,1H,J=7.6)、7.05(dd,1H,J=8.4,1.6)、7.25(t,1H,J=7.6)、7.32(t,1H,J=7.6)、7.37(d,1H,J=1.6)、7.56(d,1H,J=8.4)、7.76(d,1H,J=7.2)、8.80(br.s,3H);13C NMR(DMSO−d)147.4、138.9、133.6、131.0、130.5、130.4、130.1、129.0、128.9、128.4、128.2、126.8、47.9、43.1、27.8、25.2。
【実施例4】
【0216】
オキシムのin situ形成/アシル化
オキシム2をin situでアシル化して中間体2Aを得て、これに還元的アシル化を施すことによって、アシル化されたエナミド3およびジアシル化された類似体3Aの混合物を提供する。反応は、トルエンまたはo−キシレン中で還流して行った。次いで、3および3Aの混合物を相間移動触媒とともに(例えば、テトラブチルアンモニウムヒドロゲンスルフェート/ヒドロキシド)また該相間移動触媒なしで、水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムなどの塩基の水溶液で処理することによって、中間体3Aを所望のエナミド3に変換した。オキシム2をエナミド3に変換するための例示的な反応条件をスキーム3aおよび3bに示す。
【化40】

【実施例5】
【0217】
触媒として(R,S,R,S)−MePennPhos(COD)RhBFを用いた、エナミド3の触媒不斉水素化
スキーム4に示すように、キラル触媒、H、および溶媒の存在下で、エナミド3に均一触媒不斉水素化を施した。この実施例において、触媒は、キラルホスフィン配位子である(1R,2S,4R,5S)−P,P−1,2−フェニレンビス{(2,5−エンド−ジメチル)−7−ホスファビシクロ[2.2.1]ヘプタン}(R,S,R,S−MePennPhos)との遷移金属ロジウム錯体から得た。水素化は、約0.12Mから約0.24Mの化合物3の基質濃度で行った。
【化41】

【実施例6】
【0218】
触媒として(R,R)−MeBPERh(COD)BFを用いた、エナミド3の触媒不斉水素化
スキーム5に示すように、キラル触媒、H、および溶媒の存在下で、エナミド3に均一触媒不斉水素化を施した。この実施例において、触媒は、キラルホスフィン配位子である(R,R)−1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラノ)エタン(R,R−MeBPE)との遷移金属ロジウム錯体から得た。水素化は、基質3に対して、約0.12Mから約0.24Mの濃度範囲で行った。
【化42】

【実施例7】
【0219】
(R,R)−Norphos(COD)RH−BFによって触媒された不斉水素化
イソプロパノール(595.0g)中の(S)−エンアセトアミドであるN−((S)−4−(3,4−ジクロロフェニル)−3,4−ジヒドロナフタレン−1−イル)アセトアミド(60.4g、0.18mol)のスラリーを、真空/窒素サイクルを用いて酸素でパージした。均一の触媒前駆体(「触媒」と称する)である、(R,R)−Norphos(COD)RH−BF4を、メタノール溶液(34.6mg、0.025mol%、0.53mL)として加えた。系を水素で数回パージした後、所望の反応圧力(約7バール)で、容器を水素で満たした。混合物を25℃で攪拌し、反応進行を水素の取り込みによってモニターした。反応が完了したと判断したら(水素の取り込みおよびHPLC)、圧力を解放し、系を窒素で繰り返しパージした。淡黄色スラリーをイソプロパノール(194.7g)で希釈し、加熱して溶解させ(65℃)、ポリッシュろ過した。混合物を加熱還流することによって、すべての固体を溶解させた。溶液を60〜65℃に徐々に冷却し、このときに生成物が結晶化した。抗溶媒である水(262g)を約60〜65℃で加え、次いで混合物を、2時間にわたって0℃に冷却し、熟成のためにその温度で保持した。薄い色の固体をろ過した後、冷イソプロパノールで洗浄した(2×61g)。オフホワイト固体を、減圧下、50〜55℃で乾燥させることにより、(1R,4S)−アセトアミドが99%のdeで提供された(56.6g、93%の収率)。
【実施例8】
【0220】
オキシムおよびエナミドの形成
キラルな(4S)−テトラロン(100.0g、0.34mol)を、103℃で約2時間、トルエン(1.37L)中のヒドロキシルアミン塩酸塩(28.7g、0.41mol)および酢酸ナトリウム(33.8g、0.41mol)と反応させた。共沸蒸留によって反応混合物から水を除去した。反応を、25℃で、2Nの水酸化ナトリウム(167.0g)を用いてクエンチした。水相を分離し、有機相を水(400.0g)で1回洗浄した。トルエン(700.0g)を加え、オキシムを含有する得られた有機溶液を、減圧下で所望の反応物濃度まで、共沸蒸留によって乾燥させた。トリエチルホスフィン(89.0g、0.38mol、トルエン中50wt%)を加え、その後、無水酢酸(38.5g、0.38mol)を加えることによって、オキシムアセテート中間体を得た。残りのオキシムアセテートがHPLCでの判定で生成物の2%未満になるまで、反応混合物を還流して(112〜113℃)反応させた。反応混合物を20〜25℃に冷却し、微量のエニミド副生成物を、相間移動試薬である水酸化テトラブチルアンモニウム(5.0g)とともに6Nの水酸化ナトリウム(210g)を用いて、加水分解(エンアセトアミドに)した。二相の混合物を相分離させ、水相を廃棄した。有機相を0.5%の酢酸水溶液(67℃、600.0g)で洗浄した。水相を除去し、有機相を水(67℃、600.0g)で1回洗浄することによって無機塩を除去した。この有機相を濃縮し、温かい溶液をポリッシュろ過することによって、さらに無機塩を除去した。ヘプタン(150g)および2−ブタノール(7.0g)を加え、スラリーを100℃に加熱することによって、溶解を行った。この溶液を約85℃に冷却することによって、結晶化を開始した。追加のヘプタン(190g)を85℃でスラリーに加え、次いでこの混合物を0℃に冷却した。スラリーを0℃で15分間熟成し、次いでろ過し、ヘプタンおよびトルエンの混合物(125g)からなる溶液で3回洗浄した。生成物を35〜45℃で真空乾燥した。17.8g(89%の収率)の白色結晶固体である(S)−エンアセトアミドを回収した。
【0221】
この実施例による方法をいくつかの基材に適用し、その結果を表1に示す。
【表1】


【実施例9】
【0222】
アミドの脱保護
乾燥THF(212.7g、239.3mL)中の(1R,4S)−アセトアミドの溶液を、乾燥ピリジン(8.7g、8.9mL、110mmol)で処理した。得られた透明無色溶液を約0℃に冷却した。発熱ならびにCOおよびCOの泡立ちに注意しながら、塩化オキサリル(12.9g、8.9mL、101.6mmol)を攪拌した溶液に液滴で加えた。活性化試薬の添加によって、スラリーが形成した。このスラリーを短期間(約15分)冷状態で攪拌した後、変換の評価のために試料採取した。反応が完了したら、乾燥プロピレングリコールを反応物に加え、その結果、微量に発熱した。反応物を25℃に加温し、その時間の間に、スラリーの色およびコンシステンシーが変化した。第2の試料のHPLC分析により完了が示された後、1−プロパノール(96.9g、120.5mL)を加えた。6NのHCl(128.0g、120.0mL)を加えた。混合物を加熱することによって溶解させ、得られた混合物をポリッシュろ過した。THFを常圧蒸留によって除去した。この混合物を濃縮した後、これを3℃に徐々に冷却した。得られた薄い色のスラリーをろ過することによって、オフホワイトのケーキを得た。このケーキを脱イオン水中の17wt%のn−PrOH(72.6g、全部で75mL)で最初洗浄し、次いで、冷mtBE(55.5g、75mL)で洗浄した。オフホワイトの湿ったケーキを、真空下、45〜50℃で乾燥させた。生成物を、優れた純度(HPLCによって、99%超の純度)のオフホワイトから白色の固体(24.8g、84.1%の収率)として回収した。
【0223】
本願に引用されたすべての刊行物および特許文献は、それぞれ個々の刊行物または特許文献がそのように個々に示されたのと同じ程度に、あらゆる目的のためにその全体について参照により本明細書に取り入れる。本書類における様々な参考文献の引用によっては、出願人らは、いずれの特定の参考文献も出願人らの発明に対する「従来技術」であると認めるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシムをエナミドに変換するための方法であって、
(a)前記オキシムを前記エナミドに変換するのに適切な条件下で、前記オキシムをホスフィンおよびアシル供与体と接触させる工程を含む方法。
【請求項2】
前記オキシムが、式
【化1】

(式中、
、R、およびRは、H、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および置換または非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーであり、
、R、およびRのうちの少なくとも2つは、任意選択により連結して、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のヘテロアリールから選択される環系を形成する)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オキシムが、式
【化2】

(式中、
Arは、置換または非置換のアリールおよび置換または非置換のヘテロアリールから選択されるメンバーであり、
は、H、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および置換または非置換のヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーであり、
aは、1から4の整数から選択される)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
が置換または非置換のアリールである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
が置換または非置換のフェニルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
が少なくとも1個のハロゲンで置換されたフェニルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
が、式
【化3】

(式中、
およびXは、独立して選択されるハロ部分である)を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
およびXがそれぞれクロロである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
Arが置換または非置換のフェニルである、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記オキシムが、式
【化4】

を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アシル供与体が、式
Z−C(O)−R
(式中、
Zは、脱離基であり、
は、H、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および置換または非置換のヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーである)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
Zが、式
−C(O)−O−
(式中、
は、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および置換または非置換のヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーである)を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
およびRの両方が、独立して選択される置換または非置換のC〜C部分である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ホスフィンが、式
P(Q)
(式中、
各Qは、H、置換または非置換のアルキル、および置換または非置換のアリールから独立して選択されるメンバーである)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
各Qが、置換または非置換のC〜Cアルキルから独立して選択されるメンバーである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記接触させる工程が非プロトン性溶媒を含む溶液中である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記非プロトン性溶媒が芳香族溶媒である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記非プロトン性芳香族溶媒が、トルエン、キシレン、およびその組合せから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エナミドが、式
【化5】

を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
C−4がR、S、およびその混合から選択される配置を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
C−4がS配置である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(b)前記エナミドの炭素−炭素二重結合を水素化するのに適切な条件下で、工程(a)において形成された前記エナミドを、水素化触媒および水素または水素移動試薬と接触させ、それによって前記エナミドをアミドに変換する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記触媒がキラル触媒である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記キラル触媒がキラルホスフィン配位子との遷移金属錯体である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アミドがラセミアミドまたはキラルアミドである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記アミドが、式
【化6】

を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
C−1およびC−4が、RおよびSから独立して選択される配置を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
C−1がR配置であり、C−4がS配置である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
(c)前記アミドの−HNC(O)Rを脱アシル化するのに適切な条件下で、前記アミドを脱アシル化試薬と接触させ、それによってアミンを形成する工程をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
(d)前記アミンを単離する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記単離する工程が選択的結晶化を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記アミンが、式
【化7】

(式中、
は陰イオンであり、
eは0から1である)を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
C−1およびC−4がRおよびSから独立して選択される配置を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
C−1がR配置であり、
C−4がS配置である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】

【化8】

を有するオキシムを、式
【化9】

(式中、
は、置換または非置換のアリールおよび置換または非置換のヘテロアリールから選択され、
は、H、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および置換または非置換のヘテロシクロアルキルから選択される)を有するエナミドに変換する方法であって、
(a)前記オキシムを前記エナミドに変換するのに適切な条件下で、前記オキシムをホスフィンおよびアシル供与体と接触させる工程を含む方法。
【請求項36】
C−4がS配置である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ホスフィンがトリアルキルホスフィンである、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記オキシム、前記アシル供与体、および前記ホスフィンが芳香族溶媒中に溶解される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記アシル供与体がアルキル無水物である、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
(b)前記エナミドのC(O)に共役した炭素−炭素二重結合を水素化するのに適切な条件下で、工程(a)において形成された前記エナミドをキラル水素化触媒および水素と接触させ、それによって前記エナミドを、式
【化10】

(式中、
C−1は、RおよびSから選択される配置を有する)を有するアミドに変換する工程をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記キラル触媒が、キラルホスフィン配位子に錯体形成したロジウムを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
(c)前記アミドの−HNC(O)Rを脱アシル化するのに適切な条件下で、前記アミドを脱アシル化試薬と接触させ、それによって、式
【化11】

(式中、
は、陰イオンであり、
eは、0または1である)を有するアミンを形成する工程をさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記脱アシル化試薬が酵素である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記脱アシル化試薬が酸である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
【化12】

(式中、
は、置換または非置換のアリールおよび置換または非置換のヘテロアリールから選択されるメンバーであり、
は、陰イオンであり、
eおよびfは、独立して選択される0から1の数値であり、
xおよびyは、xがRである場合、yはRであり、xがSである場合、yはSであるように、RおよびSから選択される)を含む混合物。
【請求項46】
Aが、Bに対して少なくとも90%のジアステレオマー過剰で前記混合物中に存在する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
Aが、Bに対して少なくとも98%のジアステレオマー過剰で前記混合物中に存在する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
xおよびyがRである、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
xおよびyがSである、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
xがSであり、yがRである、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
請求項45に記載の混合物および薬学的に許容できる担体を含む医薬製剤。


【公開番号】特開2013−79249(P2013−79249A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−263808(P2012−263808)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2009−503314(P2009−503314)の分割
【原出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(500114922)サノビオン ファーマシューティカルズ インク (14)
【氏名又は名称原語表記】Sunovion Pharmaceuticals Inc.
【Fターム(参考)】