説明

キラルスピロビストリアゾール化合物、その製造方法及びその用途

【課題】新規なキラルスピロビストリアゾール化合物を提供すること。
【解決手段】 式(1):


(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示す。m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。*は、ラセミ体であることを示す。)で表されるキラルスピロビストリアゾール化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラルスピロビストリアゾール化合物、その製造方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
不斉合成法は数多くの研究がなされ、収率及び光学収率に優れ、さらには環境低負荷型の反応プロセスも見出されている(例えば、非特許文献1)。その中でも、光学活性なスピロ有機化合物は、例えば、金属配位子に応用した場合、多種多様な不斉有機反応に有効な金属触媒となることが明らかとなった(例えば、非特許文献2)。また、光学活性スピロ化合物が、光学分割試薬、NMR用キラルシフト試薬等として使用できることが報告されている(特許文献1及び2)。
【0003】
しかし、現在利用できるスピロ有機化合物は限られているため、機能性材料開発の要となるキラルスピロ有機化合物を有利に製造できる方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−281215号公報
【特許文献2】特開2005−283370号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】R. Noyori, “Asymmetric Catalysis in Organic Synthesis”, John Wiley & Sons, New York, 1994.
【非特許文献2】Hiroaki Sasai et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. Vol. 82, No. 3, 285-302 (2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、新規なキラルスピロビストリアゾール化合物を提供することである。本発明はまた、この新規なキラルスピロビストリアゾール化合物を安価な原料から簡便で収率よく製造することができる方法、及びその用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、安価で入手容易なマロン酸ジエステルから新規なキラルスピロビストリアゾール化合物を大量に製造する方法を見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記のキラルスピロビストリアゾール化合物等を提供する。
【0009】
項1. 式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示す。
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。
*は、ラセミ体であることを示す。)
で表されるキラルスピロビストリアゾール化合物。
【0012】
項2. 式(2):
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はベンジル基を示す。)
で表されるマロン酸ジエステルを、式(3a)及び式(3b):
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、Xはハロゲン原子を示す。
m及びnは、互いに独立して、1又は2を示す。)
で表されるハロゲノアルキンでアルキル化することにより、式(4):
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、R、m及びnは、上記と同様である。)
で表される第1中間体を得る第1工程、
該第1中間体のエステル部分を還元することにより、式(5):
【0019】
【化5】

【0020】
(式中、m及びnは、上記と同様である。)
で表される第2中間体を得る第2工程、
該第2中間体のヒドロキシ基を保護した後、
及びR
(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示す。
は、ハロゲン原子を示す。)
で表されるアルキル化剤でアルキル化し、さらにトリフラート化試薬でヒドロキシ基をトリフラートに変換することにより、式(6):
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、R、R、m及びnは、上記と同様である。)
で表される第3中間体を得る第3工程、
該第3中間体のトリフラートをアジド化剤でアジドに変換することにより、式(7):
【0023】
【化7】

【0024】
(式中、R、R、m、n及びxは、上記と同様である。)
で表される第4中間体を得る第4工程、及び
該第4中間体を分子内環化させる第5工程、
を含む、上記項1に記載のキラルスピロビストリアゾール化合物の製造方法。
【0025】
項3. 式(1−1):
【0026】
【化8】

【0027】
(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示し、R及びRは、互いに独立して、炭素数1〜16のアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基を示す。
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。
は、ハロゲン原子、又は
N[SO(CFy-1CF
(式中、yは、1〜5の整数を表す。)
で表されるビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドを示す。
*は、ラセミ体であることを示す。)
で表されるキラルスピロビストリアゾリウム塩。
【0028】
項4. 式(1):
【0029】
【化9】

【0030】
(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示す。
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。
*は、ラセミ体であることを示す。)
で表されるキラルスピロビストリアゾール化合物を、
及びR
(式中、R及びRは、互いに独立して、炭素数1〜16のアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基を示す。
は、ハロゲン原子を示す。)
で表されるハロゲン化アルキルと反応させる工程を含み、
式(1−1)において、Xが、
N[SO(CFy-1CF
(式中、yは、1〜5の整数を表す。)
で表されるビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドである場合には、さらに、Xアニオンを、
N[SO(CFy-1CF
(式中、Mはアルカリ金属を表す。yは、1〜5の整数を表す。)
で表されるアルカリ金属ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドでカウンターアニオン交換する、
上記項3に記載のキラルスピロビストリアゾリウム塩の製造方法。
【0031】
項5. 式(1−2):
【0032】
【化10】

【0033】
(式中、R及びRは、互いに独立して、置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基である。
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。
*は、ラセミ体であることを示す。)
で表されるキラルスピロビスN−ヘテロ環状カルベン。
【0034】
項6. 式(1−1):
【0035】
【化11】

【0036】
(式中、R及びRは、水素原子を示し、R及びRは、互いに独立して、置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基を示す。
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。
はハロゲン原子を示す。
*は、ラセミ体であることを示す。)
で表されるキラルスピロビストリアゾリウム塩を塩基で処理してカルベンを発生させる、上記項5に記載のキラルスピロビスN−ヘテロ環状カルベンの製造方法。
【0037】
項7. 上記項3に記載のキラルスピロビストリアゾリウム塩を含む、イオン性液体。
【0038】
項8. 式(1−1)において、R及びRが水素原子であり、R及びRが、互いに独立して、置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基であり、Xがハロゲン原子である、上記項3に記載のキラルスピロビストリアゾリウム塩を含む、光学分割剤。
【0039】
項9. 上記項5に記載のキラルスピロビスN−ヘテロ環状カルベンを含む、不斉有機触媒。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、安価な原料から簡便な方法で新規なキラルスピロビストリアゾール化合物を製造することができる。このキラルスピロビストリアゾール化合物は、化学修飾が容易であることから、様々な機能性素材に応用可能なキラルスピロ骨格プラットホームとして機能する。キラルスピロビストリアゾール化合物の塩等は、光学分割剤、不斉有機触媒、又はイオン性液体として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)は(±)−スピロビストリアゾリウム塩(1-1e)の1H-NMRスペクトルであり、(b)はR体の2-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)フェニル酢酸カリウム塩を加えたときの(±)−スピロビストリアゾリウム塩(1-1e)の1H-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0043】
本発明は、式(1):
【0044】
【化12】

【0045】
(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示す。
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。
*は、ラセミ体であることを示す。)
で表されるキラルスピロビストリアゾール化合物である。このキラルスピロビストリアゾール化合物(1)は新規化合物である。
【0046】
式(1)において、R及びRで示される炭素数1〜16のアルキル基としては、炭素数1〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜6の直鎖アルキル基である。具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等が挙げられる。
【0047】
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。m、n及びxは、同一であっても異なっていてもよく、m、n及びxが、すべて1である場合が好ましい。
【0048】
本発明の化合物はラセミ体であるが、通常の光学分割手段を用いて光学分割することにより光学的に純粋な化合物(光学活性体)を得ることができる。よって、ラセミ体だけでなく、各々の光学活性体も、本発明のキラルスピロビストリアゾール化合物(1)の範囲に含まれる。
【0049】
上記キラルスピロビストリアゾール化合物は、マロン酸ジエステル(2)とハロゲノアルキン(3a)及び(3b)から、下記に示す5つの工程により製造することができる。以下、製造方法について詳細を説明する。
【0050】
第1工程は、式(2):
【0051】
【化13】

【0052】
(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はベンジル基を示す。)
で表されるマロン酸ジエステルを、式(3a)及び式(3b):
【0053】
【化14】

【0054】
(式中、Xはハロゲン原子を示す。
m及びnは、互いに独立して、1又は2を示す。)
で表されるハロゲノアルキンでアルキル化することにより、式(4):
【0055】
【化15】

【0056】
(式中、R、m及びnは、上記と同様である。)
で表される第1中間体を得る反応である。
【0057】
式(2)において、Rで示される炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等が挙げられる。
【0058】
原料のマロン酸ジエステル(2)として、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル又はマロン酸ジベンジルを用いることが好ましい。
【0059】
式(3a)及び式(3b)において、Xで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0060】
m及びnは、互いに独立して、1又は2を示す。m及びnは、同一であっても異なっていてもよく、m及びnが、ともに1である場合が好ましい。
【0061】
原料のハロゲノアルキン(3a)及び(3b)として、3−ブロモ−1−プロピンを用いることが好ましい。
【0062】
ハロゲノアルキン(3a)及び(3b)は、それぞれ、マロン酸ジエステル(2)に対して、通常1〜2倍モル程度、好ましくは1〜1.5倍モル程度添加される。
【0063】
アルキル化反応は、反応に悪影響を及ぼさない慣用の溶媒、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒等又はそれらの混合物中で行われる。これらの溶媒の中でも、DMSO、DMF又はTHFが好ましい。
【0064】
アルキル化反応は、塩基存在下で行われる。使用する塩基として、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等が挙げられる。これらの中で、アルカリ金属の水素化物が好ましく、水素化ナトリウムが特に好ましい。塩基は、マロン酸ジエステル(2)に対して、通常1〜3倍モル程度、好ましくは1.5〜2.5倍モル程度使用される。
【0065】
反応温度は、通常、0〜50℃程度で行われ、好ましくは15〜40℃程度である。室温下で行うことも可能である。
【0066】
反応時間は、通常0.5〜5時間程度、好ましくは1〜3時間程度である。
【0067】
第2工程は、第1工程で得られた第1中間体のエステル部分を還元することにより、式(5):
【0068】
【化16】

【0069】
(式中、m及びnは、上記と同様である。)
で表される第2中間体を得る反応である。
【0070】
還元剤として、エステル以外の部分が反応しないものであれば、制限なく用いることができる。例えば、水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、ボラン−ジメチルスルフィド錯体等を用いることができる。これらの中で、水素化リチウムアルミニウムが好ましい。還元剤は、第1中間体に対して、通常1〜2倍モル程度、好ましくは1〜1.5倍モル程度使用される。
【0071】
反応温度は、通常、0〜50℃程度で行われ、好ましくは15〜40℃程度である。室温下で行うことも可能である。
【0072】
反応時間は、通常0.5〜5時間程度、好ましくは1〜3時間程度である。
【0073】
第3工程は、第2工程で得られた第2中間体のヒドロキシ基を保護した後、
及びR
(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示す。
は、ハロゲン原子を示す。)
で表されるアルキル化剤でアルキル化し、さらにトリフラート化試薬でヒドロキシ基をトリフラートに変換することにより、式(6):
【0074】
【化17】

【0075】
(式中、R、R、m及びnは、上記と同様である。)
で表される第3中間体を得る反応である。この第3工程で得られた第3中間体(6)は新規化合物である。
【0076】
まず、第2中間体のヒドロキシ基を、保護基で保護する。
【0077】
保護基としては、ヒドロキシ基の保護基として慣用される保護基を制限なく用いることができる。例えばtert−ブチルジメチルシリル(TBS)基、トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基等を挙げることができる。保護基の導入は、常法により行えばよい。
【0078】
次に、アルキル化剤を用いてアルキル化する。
【0079】
アルキル化剤のR及びRで示される炭素数1〜16のアルキル基としては、炭素数1〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜6の直鎖アルキル基である。具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等が挙げられる。
【0080】
で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0081】
アルキル化反応は、第2中間体をn−ブチルリチウム等の塩基で処理した後、アルキル化剤を添加することにより行われる。塩基は、第2中間体に対して、通常2〜6倍モル程度、好ましくは3〜5倍モル程度使用される。アルキル化剤(R及びR)は、それぞれ、第2中間体に対して、通常1〜3倍モル程度、好ましくは1〜2倍モル程度使用される。
【0082】
反応温度は、通常、−100〜−20℃程度で行われ、好ましくは−60〜−30℃程度である。
【0083】
反応時間は、通常1〜6時間程度、好ましくは2〜5時間程度である。
【0084】
ここで、保護基を脱保護する。例えば、TBS基を導入した場合には、フッ化テトラn−ブチルアンモニウム(TBAF)又は三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体(BF・OEt)を添加して脱保護すればよい。
【0085】
次に、トリフラート化試薬でヒドロキシ基をトリフラートに変換する。
【0086】
トリフラート化は、触媒量のN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)の存在下、反応に悪影響を及ぼさない慣用の溶媒、例えば、ピリジン、ジクロロメタン等又はそれらの混合物中で行われる。
【0087】
トリフラート化試薬として、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(TfO)を用いることができる。トリフラート化試薬は、アルキル化された生成物に対して、通常1.5〜4倍モル程度、好ましくは2〜3倍モル程度使用される。
【0088】
反応温度は、通常、0〜50℃程度で行われ、好ましくは15〜40℃程度である。室温下で行うことも可能である。
【0089】
反応時間は、通常1分間〜2時間程度、好ましくは5〜30分間程度である。
【0090】
なお、アルキル化剤のR及びRが、ともに水素原子である場合には、第2中間体をトリフラート化するだけで第3中間体を得ることができる。
【0091】
第4工程は、第3工程で得られた第3中間体のトリフラートをアジド化剤でアジドに変換することにより、式(7):
【0092】
【化18】

【0093】
(式中、R、R、m、n及びxは、上記と同様である。)
で表される第4中間体を得る反応である。この第4工程で得られた第4中間体(7)は新規化合物である。
【0094】
アジド化剤としては、
(CHx-1
(式中、Mは、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を示す。xは1又は2を示す。)で表される有機アジド化合物のアルカリ金属塩を用いることができる。アジド化剤として、アジ化ナトリウムが好ましい。アジド化剤は、第3中間体に対して、通常3〜10倍モル程度、好ましくは4〜6倍モル程度使用される。
【0095】
アジド化反応は、反応に悪影響を及ぼさない慣用の溶媒、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒;アセトン、2−ブタノン等のケトン類等又はそれらの混合物中で行われる。これらの溶媒の中でも、DMFが好ましい。
【0096】
反応温度は、通常、60〜100℃程度で行われ、好ましくは70〜90℃程度である。
【0097】
反応時間は、通常0.5〜3時間程度、好ましくは1〜2時間程度である。
【0098】
第5工程は、第4工程で得られた第4中間体を分子内環化させて、キラルスピロビストリアゾール化合物(1)を得る反応である。
【0099】
分子内環化反応は、ダブルヒュスゲン(Huisgen)反応と呼ばれる環化付加反応であって、トルエン、キシレン等の溶媒中で、第4中間体を加熱環流させることにより進行する。
【0100】
反応時間は、通常6〜48時間程度、好ましくは10〜30時間程度である。
【0101】
あるいは、市販されているマイクロウェーブ反応装置を用いて分子内環化反応を行ってもよい。この場合の反応温度は、通常120〜200℃程度、好ましくは150〜170℃であり、反応時間は、通常1〜12時間程度、好ましくは2〜10時間程度である。
【0102】
このように、キラルスピロビストリアゾール化合物(1)を、安価なマロン酸ジエステル(2)から、5工程で効率よく製造することができる。このキラルスピロビストリアゾール化合物(1)は、化学修飾が容易であることから、様々な機能性素材に応用可能なキラルスピロ骨格プラットホームとして機能する。
【0103】
キラルスピロビストリアゾール化合物(1)は、式(1−1):
【0104】
【化19】

【0105】
(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示し、R及びRは、互いに独立して、炭素数1〜16のアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基を示す。
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。
は、ハロゲン原子、又は
N[SO(CFy-1CF
(式中、yは、1〜5の整数を表す。)
で表されるビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドを示す。
*は、ラセミ体であることを示す。)
で表されるキラルスピロビストリアゾリウム塩に変換される。
【0106】
式(1−1)において、R及びRで示される炭素数1〜16のアルキル基としては、炭素数1〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜6の直鎖アルキル基である。具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等が挙げられる。
【0107】
及びRで示される炭素数1〜16のアルキル基は、R及びRで示される炭素数1〜16のアルキル基と同様である。置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基において、アリール基としてフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基が置換されている場合には、メトキシ等の置換基で置換されているのが好ましい。この場合の置換基の数は、1又は2個が好ましい。置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基として、ベンジル基が好ましい。
【0108】
で示されるハロゲン原子として、臭素原子又はヨウ素原子が好ましい。ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドにおけるyは、1〜3の整数が好ましい。ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドとして、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましい。
【0109】
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。m、n及びxは、同一であっても異なっていてもよく、m、n及びxが、すべて1である場合が好ましい。
【0110】
このようなキラルスピロビストリアゾリウム塩(1−1)は、広範囲の温度領域で液状であることから、イオン性液体として利用することができる。このキラルスピロビストリアゾリウム塩を含むイオン性液体は、難燃性且つ不揮発性であり、種々の有機化合物又は無機化合物を溶解することができ、さらに反応生成物との分離が容易であることから、新しい反応媒体として利用できる可能性がある。
【0111】
キラルスピロビストリアゾリウム塩(1−1)をイオン性液体として使用する場合、式(1−1)中、R及びRが、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜16のアルキル基であり、R及びRが、互いに独立して、炭素数1〜16のアルキル基又はベンジル基であることが好ましい。Xが、ヨウ素原子、又は
N[SOCF
で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであることが好ましい。
【0112】
式(1−1)において、R及びRが水素原子であり、R及びRが、互いに独立して、置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基であり、Xがハロゲン原子である光学活性スピロビストリアゾリウム塩は、NMRシフト試薬として機能することから、光学分割剤として利用することができる。さらに、このキラルスピロビストリアゾール化合物は、光学異性体分離カラム等に応用することも可能である。
【0113】
キラルスピロビストリアゾリウム塩(1−1)を光学分割剤として使用する場合、式(1−1)中、R及びRで示される置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基は、ともにベンジル基が好ましい。Xで示されるハロゲン原子として、臭素原子又はヨウ素原子が好ましい。
【0114】
キラルスピロビストリアゾリウム塩(1−1)は、式(1):
【0115】
【化20】

【0116】
(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示す。
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。
*は、ラセミ体であることを示す。)
で表されるキラルスピロビストリアゾール化合物を、
及びR
(式中、R及びRは、互いに独立して、炭素数1〜16のアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基を示す。
は、ハロゲン原子を示す。)
で表されるハロゲン化アルキルと反応させることにより製造することができる。
【0117】
アルキル化反応は、反応に悪影響を及ぼさない慣用の溶媒、例えば、ジエチルエーテル、THF(テトラヒドロフラン)等のエーテル類;DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒;アセトン、2−ブタノン等のケトン類等又はそれらの混合物中において、キラルスピロビストリアゾール化合物(1)にハロゲン化アルキルを添加し、加熱環流することにより行われる。これらの溶媒の中でも、アセトニトリルが好ましい。
【0118】
ハロゲン化アルキル(R及びR)は、それぞれ、キラルスピロビストリアゾール化合物(1)に対して、通常2〜10倍モル程度、好ましくは3〜6倍モル程度使用される。
【0119】
あるいは、市販されているマイクロウェーブ反応装置を用い、通常100〜150℃程度、好ましくは110〜140℃で反応を行ってもよい。
【0120】
上記式(1−1)において、Xが、
N[SO(CFy-1CF
(式中、yは、1〜5の整数を表す。)
で表されるビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドである場合には、さらに、Xアニオンを、
N[SO(CFy-1CF
(式中、Mはアルカリ金属を表す。yは、1〜5の整数を表す。)
で表されるアルカリ金属ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドでカウンターアニオン交換する。
【0121】
カウンターアニオン交換反応は、反応に悪影響を及ぼさない慣用の溶媒、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒;水等又はそれらの混合物中において、上記アルキル化により得られた生成物を、
N[SO(CFy-1CF
(式中、Mはアルカリ金属を表す。yは、1〜5の整数を表す。)
で表されるアルカリ金属ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドと反応させることにより行われる。上記溶媒の中でも、メタノールが好ましい。
【0122】
で示されるアルカリ金属として、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。これらの中で、リチウムが好ましい。ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドにおけるyは、1〜3の整数が好ましい。アルカリ金属ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドとして、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましい。
【0123】
アルカリ金属ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドは、上記アルキル化により得られた生成物に対して、通常2〜3倍モル程度、好ましくは2.2〜2.5倍モル程度使用される。
【0124】
キラルスピロビストリアゾール化合物(1)は、式(1−2):
【0125】
【化21】

【0126】
(式中、R及びRは、互いに独立して、置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基である。
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。
*は、ラセミ体であることを示す。)
で表されるキラルスピロビスN−ヘテロ環状カルベンに変換することもできる。
【0127】
式(1−2)において、R及びRで示される、置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基は、式(1−1)の場合と同様である。
【0128】
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。m、n及びxは、同一であっても異なっていてもよく、m、n及びxが、すべて1である場合が好ましい。
【0129】
キラルスピロビスN−ヘテロ環状カルベン(1−2)は、光学活性体を用いることで不斉金属配位子として機能するだけでなく、不斉有機触媒として利用することもできる。
【0130】
キラルスピロビスN−ヘテロ環状カルベン(1−2)を不斉金属配位子又は不斉有機触媒として使用する場合、式(1−2)中、R及びRで示される置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基は、ともにベンジル基が好ましい。
【0131】
キラルスピロビスN−ヘテロ環状カルベン(1−2)は、式(1−1):
【0132】
【化22】

【0133】
(式中、R及びRは、水素原子を示し、R及びRは、互いに独立して、置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基を示す。
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。
はハロゲン原子を示す。
*は、ラセミ体であることを示す。)
で表されるキラルスピロビストリアゾリウム塩を塩基で処理してカルベンを発生させることにより、製造することができる。
【0134】
塩基として、求核性の低い強塩基を使用する。例えば、カリウムtert−ブトキシド(KOt−Bu)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド(LiTMP)等を用いることができる。これらの中で、カリウムtert−ブトキシドが好ましい。塩基は、上記のキラルスピロビストリアゾリウム塩(1−1)に対して、通常1.5〜3倍モル程度、好ましくは1.5〜2.5倍モル程度使用される。
【0135】
反応は、反応に悪影響を及ぼさない慣用の溶媒、例えば、ジエチルエーテル、(テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類等又はそれらの混合物中で行われる。これらの溶媒の中でも、THFが好ましい。
【0136】
反応温度は、通常、20〜60℃程度で行われ、好ましくは30〜50℃程度である。
【0137】
反応時間は、通常10分間〜3時間程度、好ましくは0.5〜1時間程度である。
【0138】
キラルスピロビストリアゾール化合物(1)、及びキラルスピロビストリアゾリウム塩(1−1)及びキラルスピロビスN−ヘテロ環状カルベン(1−2)は、スピロ中心が不斉中心となり、2つの光学異性体が存在する。ラセミ体である場合には、光学異性体分離カラムを使用した高速液体クロマトグラフィー等の光学分割手段を用いて光学分割することにより、光学的に純粋な鏡像異性体を得ることができる。そして、各々の光学的に純粋な鏡像異性体及びラセミ体のいずれについても、本発明の範囲に含む。
【実施例】
【0139】
以下、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
実施例1(キラルスピロビストリアゾール化合物(1)の製造)
(1)第1中間体の合成(第1工程)
【0140】
【化23】

【0141】
オーブンで乾燥したフラスコを窒素置換し、NaH (60% in mineral oil, 1.5 g, 38 mmol, 2.5当量) 、続いてDMSO 30 mLを加えた。0℃に冷却後、マロン酸ジメチル (2.0 g, 15.1 mmol, 1当量)を加え、室温にした後、30分間攪拌した。0℃に冷却後、3−ブロモプロピン(4.5 g, 38 mmol, 2.5当量) を加え、室温にした後、90分間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止後、ジエチルエーテルで3回抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。その後、溶媒を留去し得られた混合物を酢酸エチル及びヘキサンで再結晶することで、第1中間体(4a) (3.4 g, 16.3 mmol) を定量的に得た。第1中間体(4a)のNMRデータは文献(Teply et al., Tetrahedron Lett. 2009, 50, 4526.)に記載されている値と一致した。
(2)第2中間体の合成(第2工程)
【0142】
【化24】

【0143】
オーブンで乾燥したフラスコを窒素置換し、水素化リチウムアルミニウム(2.7 g, 0.072 mol, 1.5当量) 、続いてTHF 100 mLを加えた。0℃に冷却後、第1中間体(4a) (10 g, 0.048 mol, 1当量) のTHF (50 mL) 溶液を加え、室温に戻した後、75分間攪拌した。水を加えて反応を停止後、セライト濾過し、残渣を酢酸エチルにて洗浄抽出した。得られた濾液を濃縮後、酢酸エチルでシリカゲルのショートカラムを行うと、第2中間体(5a)(5.9g,0.039 mol) が収率81%で得られた。第2中間体(5a)のNMRデータは、文献(Schrock et al., J. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 2827.)に記載されている値と一致した。
白色固体; 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz):δ(ppm) = 3.75 (s, 4H), 2.38 (d, 4H, J = 2.8 Hz), 2.05 (t, 2H, J= 2.8 Hz); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 80.2, 71.2, 66.5, 42.0, 21.7.
(3)第3中間体の合成(第3工程)
(i)ヒドロキシ基の保護
【0144】
【化25】

【0145】
オーブンで乾燥したフラスコを窒素置換し、第2中間体(5a)(2.0 g, 0.013 mol, 1当量) 、続いてDMF 100 mLを加えた。0℃に冷却後、イミダゾール (7.2 g, 0.10 mol, 8当量)、及びTBSCl (7.9 g, 0.052 mol, 4当量) を加え、室温にした後、5時間攪拌した。水を加えて反応を停止後、酢酸エチル及びヘキサンを用いて3回抽出操作を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、ヒドロキシ基保護体(5a’)(5.2 g, 0.013 mol) を定量的に得た。ヒドロキシ基保護体(5a’)のNMRデータは、文献(Widenhoefer et al., Org. Lett., 2001, 3, 385)に記載されている値と一致した。
黄色油状物; 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 3.53 (s, 4H), 2.28 (d, 4H, J = 2.8 Hz), 1.95 (t, 1H, J= 2.8 Hz), 0.89 (s, 18H), 0.046 (s, 12H); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 81.1, 70.1, 63.1, 43.3, 25.9, 20.9, -3.6, -5.6.
(ii)アルキル化
【0146】
【化26】

【0147】
オーブンで乾燥したフラスコを窒素置換し、ヒドロキシ基保護体(5a’)(700 mg, 1.80 mmol, 1当量) 、続いてTHF 40 mLを加えた。-78℃に冷却後、n-BuLi (1.65 M in Hexane, 4.4 mL, 7.2 mmol, 4当量)を加え、-50℃で1時間攪拌した。MeI (1.02 g, 7.2 mmol, 4当量)を加え、1時間攪拌後、室温まで昇温し、さらに1時間攪拌した。水を加えて反応を停止し、反応液を濃縮後、ジクロロメタンで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、アルキル化体(5b)のTBS保護体 (769 mg, 1.88 mmol) を定量的に得た。続いてアルキル化体(5b)のTBS保護体 (769 mg, 1.88 mmol) をフラスコにいれ、THF 20 mLを加えた。フッ化テトラn−ブチルアンモニウム(TBAF) (1M in THF, 7.52 mL, 7.52 mmol, 4当量) を加え、室温で150分間攪拌した。その後、反応混合物を濃縮して、ジクロロメタンと1N HCl水溶液を加え、水層をジクロロメタンで3回抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (酢酸エチル : ヘキサン = 1 : 1) で精製することで、アルキル化体(5b)(171 mg, 0.95 mmol)を収率50%で得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 3.68 (s, 4H), 2.24 (q, 4H, J = 2.7Hz), 1.86 (brs, 1H), 1.77 (t, 6H, J = 2.7Hz); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 78.4, 75.0, 67.1, 42.3, 22.3, 3.5.
【0148】
オーブンで乾燥したフラスコを窒素置換し、ヒドロキシ基保護体(5a’)(570 mg, 1.50 mmol, 1当量) 、続いて、THF 15 mLを加えた。-78℃に冷却後、n-BuLi (1.62 M in Hexane, 2.7 mL, 4.5 mmol, 3当量) を加えた。-30℃に昇温後、HMPA (1.1 g, 6.1 mmol, 4当量) を加え、30分間攪拌後、EtI (702 mg, 4.5 mmol, 3当量)を加え、引き続き-30℃で一晩攪拌した。水と1N HCl水溶液を加えて反応を停止し、ジエチルエーテルで水層を抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。抽出溶媒を留去し、アルキル化体(5c)のTBS保護体の混合物を得た。得られた混合物をフラスコにいれ、続いてジクロロメタン 10mLを加えた。BF3・OEt2を3 mL加え、室温にて120分間攪拌した。1N HCl水溶液を加え、反応を停止し、酢酸エチルを加え、有機層を飽和NaHCO3水溶液で洗浄した。飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。抽出溶媒を留去し、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 3 : 1) で精製することで、アルキル化体(3c)(88.1 mg, 0.42 mmol) を収率28%で得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 3.65 (s, 4H), 2.97 (s, 2H), 2.22 (d, 4H, J = 2.3 Hz), 2.12 (tq, 4H, J = 2.3, 7.3 Hz), 1.08 (t, 6H, J = 7.3 Hz); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 84.4, 75.1, 66.6, 42.1, 22.1, 14.1, 12.3.
【0149】
アルキル化体(5c)と同様に合成し、アルキル化体(5d)( 53 mg, 0.20 mmol) を収率13%で得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 3.67 (s, 4H), 2.68 (s, 2H), 2.25 (t, 4H, J = 2.7 Hz), 2.13 (tq, 4H, J = 2.7, 7.3 Hz), 1.31-1.50 (m, 8H), 0.88 (t, 6H, J = 7.3Hz); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 83.1, 75.8, 66.9, 42.3, 31.0, 22.0, 21.9, 18.4, 13.5.
【0150】
アルキル化体(5c)と同様に合成し、アルキル化体(5e)(2.3 g, 7.1 mmol) を収率31%で得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 3.64 (s, 4H), 3.17 (s, 2H), 2.22 (t, 4H, J = 2.29 Hz), 2.10 (tt, 4H, J = 7.37, 2.29 Hz), 1.50-1.19 (m, 16H), 0.85 (t, 6H, J = 6.87 Hz); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 83.0, 75.7, 66.6, 42.2, 31.2, 28.9, 28.5, 22.5, 22.1, 18.7, 13.9.
(iii)トリフラート化
【0151】
【化27】

【0152】
オーブンで乾燥したフラスコを窒素置換し、第2中間体(5a)(50 mg, 0.33 mmol, 1当量)、続いてピリジン5 mLを加えた。触媒量のDMAPを加えて、0℃に冷却後、Tf2O (0.21 g, 0.76 mmol, 2.3当量)を加え、室温に昇温後、5分間攪拌した。1N HCl水溶液で反応を停止し、水層をジクロロメタンで抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を留去し、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 5 : 1)で精製することで、第3中間体(6a) (114 mg, 0.27 mmol) を収率83%で得た。
赤色固体; 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 4.56 (s, 4H), 2.52 (d, 4H, J = 2.7 Hz), 2.21 (t, 2H, J= 2.7 Hz); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 123.3, 120.1, 116.9, 113.8, 75.9, 74.8, 73.7, 41.4, 21.3.
【0153】
オーブンで乾燥したフラスコを窒素置換し、アルキル化体(5b)(171 mg, 0.95 mmol, 1当量)、続いてピリジン10 mLを加えた。触媒量のDMAPを加え、0℃に冷却後、Tf2O (0.62 mL, 3.8 mmol, 4当量) を加えた。室温に昇温後、5分間攪拌した。1N HCl水溶液で反応を停止した後、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、有機溶媒を留去し、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 5 : 1)で精製することで、第3中間体(6b) (214 mg, 0.48 mmol) を収率51%で得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 4.50 (s, 4H), 2.38 (q, 4H, J = 2.7Hz), 1.79 (t, 6H, J= 2.7 Hz); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 123.3, 120.2, 117.0, 113.8, 81.0, 75.6, 70.9, 41.8, 21.7, 3.4.
アルキル化体(5c)及び(5d)から、第3中間体(6b)と同様に合成し、第3中間体(6c)及び(6d)を得た。得られた第3中間体(6c)及び(6d)は、生成することなく次の反応に用いた。
【0154】
アルキル化体(5e)から、第3中間体(6b)と同様に合成し、第3中間体(6e)(216 mg, 0.37 mmol) を定量的に得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 4.52 (s, 4H), 2.42 (t, 2H, J = 2.27 Hz), 2.16 (tt, 4H, J= 7.33, 2.29 Hz), 1.56-1.22 (m, 16H), 0.88 (t, 6H, J = 6.87 Hz); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 118.6 (q, J = 320.1 Hz), 85.7, 75.7, 71.7, 41.8, 31.3, 28.6, 28.5, 22.5, 21.7, 18.5, 13.9.
(4)第4中間体の合成(第4工程)
【0155】
【化28】

【0156】
オーブンで乾燥したフラスコを窒素置換し、第3中間体(6a) (5.4 g, 0.013 mol, 1当量)とNaN3 (4.2 g, 0.065 mol, 5当量)、続いてDMF 60mLを加えた。80℃に昇温後、60分間攪拌した。水で反応を停止後、水層をジエチルエーテルで抽出し、有機層を1N HCl水溶液で洗浄した。抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 9 : 1)で精製することで、第4中間体(7a) (2.01 g, 9.95 mmol)を収率76%で得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 3.45 (s, 4H), 2.34 (d, 4H, J = 2.8 Hz), 2.09 (t, 2H, J= 2.8 Hz); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 78.9, 72.0, 54.1, 41.7, 23.0.
【0157】
オーブンで乾燥したフラスコを窒素置換し、第3中間体(6b) (194 mg, 0.43 mmol, 1当量)とNaN3 (312 mg, 4.8 mmol, 10当量)、続いてDMF 5 mLを加えた。80℃に昇温後、60分間攪拌した。水で反応を停止後、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を1N HCl水溶液で洗浄した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後に、溶媒を留去し、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 9 : 1)で精製することで、第4中間体(7b) (75.9 g, 0.33 mmol)を収率77%で得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 3.37 (s, 4H), 2.21 (q, 4H, J = 2.7Hz), 1.78(t, 6H, J = 2.7Hz); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 79.1, 73.7, 54.5, 42.1, 23.4, 3.53.
第3中間体(6c)から、第4中間体(7b)と同様に合成し、第4中間体(7c)を得た。得られた第4中間体(7c)は、生成することなく次の反応に用いた。
【0158】
第3中間体(6d)から、第4中間体(7a)と同様に合成し、第4中間体(7d)を得た。得られた第4中間体(7d)は、生成することなく次の反応に用いた。
【0159】
第3中間体(6e)から、第4中間体(7b)と同様に合成し、第4中間体(7e)(100 mg, 0.27 mmol) を収率73%で得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 3.44 (s, 4H), 2.26 (t, 2H, J = 2.27 Hz), 2.16 (tt, 4H, J= 7.33, 2.29 Hz), 1.53-1.22 (m, 16H), 0.89 (t, 6H, J = 6.87 Hz); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 84.0, 74.5, 54.6, 42.2, 31.3, 28.9, 28.6, 23.4, 22.6, 18.7, 14.0.
(5)キラルスピロビストリアゾール化合物の合成(第5工程)
【0160】
【化29】

【0161】
オーブンで乾燥したフラスコを窒素置換し、第4中間体(7a) (1.5 g, 7.4 mmol, 1当量) 及びトルエン300mLを加え、24時間加熱還流した。反応溶媒を留去し、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン : アセトニトリル = 4 : 1)で精製することで、キラルスピロビストリアゾール化合物(1a) (1.00 g, 4.9 mmol) を収率67%で得た。
白色固体; 1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz): δ(ppm) = 7.52 (s, 2H), 4.60 (d, 2H, J = 11.4 Hz), 4.51 (d, 2H, J = 11.4 Hz), 3.22 (d, 2H, J = 15.6 Hz), 3.12 (d, 2H, J = 15.6 Hz); 13C-NMR(DMSO-d6, 100MHz): δ(ppm) = 140.3, 127.0, 60.3, 56.2, 33.4.
【0162】
第4中間体(7b) (10.5 mg, 0.045 mmol)のトルエン溶液(5 mL)をBiotage社製microwave反応装置にて、150℃で5時間反応を行った。反応溶媒を留去した後、得られた残渣を再結晶 (ジクロロメタン : 酢酸エチル) により精製し、キラルスピロビストリアゾール化合物(1b)(5.6 mg, 0.024 mmol)を収率53%で得た。
白色固体; 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 4.47 (d, 2H, J = 11.9 Hz), 4.42 (d, 2H, J = 11.9 Hz), 3.12 (d, 2H, J = 15.6 Hz), 3.05 (d, 2H, J = 15.6 Hz), 2.28 (s, 6H); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 136.9, 135.9, 61.0, 57.1, 33.9, 10.6.
【0163】
第4中間体(7c)の混合物 (108mg) のトルエン溶液(5 mL)をBiotage社製microwave反応装置にて、170℃で2.5時間反応を行った。反応溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン : メタノール = 9 : 1) にて精製することで、キラルスピロビストリアゾール化合物(1c) (81.0 mg, 0.31 mmol) をアルキル化体(3c)から三段階、収率75%で得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 4.47 (d, 2H, J = 11.9Hz), 4.42 (d, 2H, J = 11.9Hz), 3.16 (d, 2H, J = 15.6Hz), 3.09(d, 2H, J = 15.6Hz), 2.74(q, 4H, J = 7.3Hz), 1.27(t, 6H, J = 7.3Hz); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 142.4, 135.3, 60.6, 56.6, 34.1, 18.6, 12.9.
【0164】
第4中間体(7d)の混合物 (90.1 mg) のトルエン溶液(5 mL)をBiotage社製microwave反応装置にて、170℃で2.5時間反応を行った。反応溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン : メタノール = 9 : 1)にて精製し、キラルスピロビストリアゾール化合物(1d) (35.2 mg, 0.11 mmol) をアルキル化体(3d)から三段階、収率56%で得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 4.45 (d, 2H, J = 11.9 Hz), 4.39 (d, 2H, J = 11.9 Hz), 3.12 (d, 2H, J = 15.6 Hz), 3.04 (d, 2H, J = 15.6 Hz), 2.64 (t, 4H, J = 7.3 Hz), 1.59 (quin, 4H, J = 7.3 Hz), 0.89 (t, 6H, J = 7.3 Hz); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 141.5, 135.5, 60.7, 56.7, 34.3, 30.9, 25.1, 22.2, 13.7.
【0165】
第4中間体(7e) (30 mg, 0.081 mmol) のトルエン溶液(5 mL)をBiotage社製microwave反応装置にて、150℃で10時間反応を行った。反応溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン : メタノール = 9 : 1)にて精製し、キラルスピロビストリアゾール化合物(1e) (34 mg, 0.091 mmol)を定量的に得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz): δ(ppm) = 4.59 (d, 2H, J = 11.9 Hz), 4.51 (d, 2H, J = 11.9 Hz), 3.24 (d, 2H, J = 15.6 Hz), 3.15 (d, 2H, J = 15.6Hz), 2.67 (t, 4H, J = 7.8 Hz), 1.72-1.59 (m, 4H),1.42-1.25 (m, 12H), 0.95 (t, 6H, J = 6.86 Hz); 13C-NMR(CD3OD, 100MHz): δ(ppm) = 142.2, 138.4, 61.9, 57.8, 34.8, 32.7, 29.97, 29.95, 26.1, 23.7, 14.4.
実施例2(キラルスピロビストリアゾリウム塩(1−1)の製造)
【0166】
【化30】

【0167】
キラルスピロビストリアゾール化合物(1a)(30 mg, 0.15 mmol) のアセトニトリル溶液 (5 mL) をオーブンで乾燥したフラスコに入れ、窒素置換し、そこにハロゲン化アルキル(R及びR)として MeI (10当量) を加え、加熱還流した。反応終了後、溶媒を留去し得られた残渣をヘキサン及びジエチルエーテルで洗浄することで、キラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1a) (85.4 mg, 0.17 mmol)を定量的に得た。
黄色固体; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz): δ(ppm) = 8.57 (s, 2H), 5.17 (d, 2H, J = 13.3 Hz), 5.09 (d, 2H, J= 13.3 Hz), 4.41 (s, 3H), 3.80 (d, 2H, J= 16.9 Hz), 3.71 (d, 2H, J = 16.9 Hz); 13C-NMR(CD3OD, 100MHz): δ(ppm) = 146.5, 128.0, 61.3, 58.6, 41.4, 36.7.
【0168】
ハロゲン化アルキル(R及びR)としてEtIを用いた以外はキラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1a)の合成と同様にして、キラルスピロビストリアゾール化合物(1a)(30 mg, 0.15 mmol)からキラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1b)(61 mg, 0.12 mmol)を収率80%で得た。
黄色固体; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz): δ(ppm) = 8.66 (s, 2H), 5.22 (d, 2H, J = 13.3 Hz), 5.13 (d, 2H, J= 13.3 Hz), 4.75 (q, 4H, J = 7.3 Hz), 3.85 (d, 2H, J = 16.9 Hz), 3.75 (d, 2H, J = 16.9 Hz), 1.71 (t, 6H, J = 7.3 Hz); 13C-NMR(CD3OD, 100MHz): δ(ppm) = 146.3, 126.7, 61.5, 58.5, 51.3, 36.9, 15.0.
【0169】
ハロゲン化アルキル(R及びR)としてnBuIを用いた以外はキラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1a)の合成と同様にして、キラルスピロビストリアゾール化合物(1a)(20 mg, 0.098 mmol) からキラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1c)(68 mg, 0.12 mmol)を定量的に得た。
黄色固体; 1H-NMR (DMF-d7, 400MHz): δ(ppm) = 9.02 (s, 2H), 5.45 (d, 2H, J = 13.7 Hz), 5.33 (d, 2H, J = 13.7 Hz), 4.81 (t, 4H, J = 6.9 Hz), 3.99 (d, 2H, J = 17.9 Hz), 3.87 (d, 2H, J = 17.9 Hz), 1.96 (m, 4H), 1.52-1.39 (m, 4H), 1.01 (t, 6H, J = 7.8 Hz); 13C-NMR(DMF-d7, 100MHz): δ(ppm) = 162.9, 146.3, 125.5, 122.3, 119.1, 115.9, 60.9, 58.0, 54.4, 36.2, 32.1, 19.6, 13.5.
【0170】
キラルスピロビストリアゾール化合物(1a)(50 mg, 0.24 mmol) のアセトニトリル溶液 (5 mL)に、nHexI (245 mg, 1.2 mmol, 5当量) を加え Biotage社製microwave反応装置にて140℃で4時間反応を行った。反応溶媒を留去した後、残渣をヘキサン及び酢酸エチルで洗浄することで、キラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1d)(176 mg, 0.28 mmol)を定量的に得た。
黄色固体; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz): δ(ppm) = 5.26 (d, 2H, J = 12.4 Hz), 5.16 (d, 2H, J = 12.4 Hz), 4.71 (q, 4H, J = 7.3 Hz), 3.88 (d, 2H, J = 16.9 Hz), 3.77 (d, 2H, J = 16.9 Hz), 2.08 (quin, 4H, J = 7.3 Hz), 1.31-1.54 (m, 12H), 0.94 (t, 6H, J = 7.3 Hz); 13C-NMR(CD3OD, 100MHz): δ(ppm) = 146.2, 127.0, 126.8, 126.5, 61.7, 58.4, 55.8, 37.1, 32.2, 30.5, 26.9, 23.4, 14.4.
【0171】
キラルスピロビストリアゾール化合物(1a)(30 mg, 0.15 mmol) のアセトニトリル溶液 (5 mL)に、BnBr (253 mg, 1.5 mmol, 10当量) を加え、Biotage社製microwave反応装置にて110℃で10時間反応を行った。溶媒を留去した後、残渣をヘキサン及び酢酸エチルで洗浄することで、キラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1e)(67 mg, 0.11 mmol)を収率71%で得た。
褐色油状物; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz): δ(ppm) = 8.65 (s, 2H), 7.59-7.57 (m, 4H), 7.47-7.44 (m, 6H), 5.91 (s, 4H), 5.16 (d, 2H, J = 12.8 Hz), 5.07 (d, 2H, J = 12.8 Hz), 3.76 (d, 2H, J = 17.4 Hz), 3.66 (d, 2H, J = 17.4 Hz); 13C-NMR(CD3OD, 100MHz): δ(ppm) = 146.7, 133.7, 130.8, 130.4, 130.4, 126.8, 61.4, 58.9, 58.4, 36.7.
【0172】
キラルスピロビストリアゾリウム塩(1b)(13.7mg, 0.059mmol)のアセトニトリル溶液 (3 mL)に、EtI (46 mg, 0.30 mmol, 5当量)のを加え、Biotage社製microwave反応装置にて130℃で3時間反応を行った。溶媒を留去した後、残渣をヘキサン及び酢酸エチルで洗浄することで、キラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1f)(31 mg, 0.057 mmol) を収率97%で得た。
褐色油状物; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz): δ(ppm) = 5.10 (d, 2H, J = 12.8 Hz), 5.04 (d, 2H, J = 12.8 Hz), 4.62 (q, 4H, J = 7.8 Hz), 3.72 (d, 2H, J = 16.0 Hz), 3.66 (d, 2H, J = 16.0 Hz), 2.57 (s, 6H), 1.65 (t, 6H, J = 7.8 Hz); 13C-NMR(CD3OD, 100MHz): δ(ppm) = 144.0, 136.4, 61.3, 58.6, 48.4, 36.3, 14.3, 9.3.
【0173】
キラルスピロビストリアゾール化合物(1c)(14 mg, 0.054 mmol) のアセトニトリル溶液 (3 mL)に、EtI (42 mg, 0.27 mmol, 5当量)を加え、Biotage社製microwave反応装置にて140℃で4時間反応を行った。溶媒を留去した後、残渣をジクロロメタン及び酢酸エチルで洗浄することで、キラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1g)(25.1 mg, 0.044 mmol)を収率82%で得た。
黄色油状物, 1H-NMR (CD3OD, 400MHz): δ(ppm) = 5.08 (d, 2H, J = 13.3 Hz), 5.04 (d, 2H, J = 13.3 Hz), 4.60 (q, 4H, J = 7.3 Hz), 3.81 (d, 2H, J = 17.4 Hz), 3.76 (d, 2H, J = 17.4 Hz), 2.97 (q, 4H, J = 7.3 Hz), 1.65 (t, 6H, J = 7.3 Hz), 1.42 (t, 6H, J = 7.3 Hz); 13C-NMR(CD3OD, 100MHz): δ(ppm) = 143.5, 141.0, 61.0, 58.6, 48.4, 37.2, 18.2, 14.4, 11.2.
【0174】
キラルスピロビストリアゾール化合物(1d)(14 mg, 0.054 mmol) のアセトニトリル溶液 (3 mL)に、EtI (42 mg, 0.27 mmol, 5当量) を加え、Biotage社製microwave反応装置にて140℃で4時間反応を行った。溶媒を留去した後、残渣をジクロロメタンと酢酸エチルで洗浄することで、キラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1h)(25.1 mg, 0.044 mmol) を収率82%で得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz): δ(ppm) = 5.08 (d, 2H, J = 13.3 Hz), 5.04 (d, 2H, J = 13.3 Hz), 4.61 (q, 4H, J = 7.3 Hz), 3.78 (d, 2H, J = 16.9 Hz), 3.73 (d, 2H, J = 16.9 Hz), 2.94 (t, 4H, J = 7.3 Hz), 1.79 (quin, 4H, J = 7.3 Hz), 1.65 (t, 6H, J = 7.3 Hz), 1.50 (sext, 4H, J = 7.3 Hz), 1.02 (t, 6H, J = 7.3 Hz); 13C-NMR(CD3OD, 100MHz): δ(ppm) = 143.5, 140.1, 61.0, 58.5, 48.3, 37.2, 29.6, 24.2, 23.5, 14.5, 14.0.
【0175】
キラルスピロビストリアゾール化合物(1e)(6.3 mg, 0.017 mmol) のアセトニトリル溶液 (3 mL) にnBuI (16 mg, 0.085 mmol, 5当量)を加え、Biotage社製microwave反応装置にて140℃で5時間反応を行った。溶媒を留去した後、残渣をヘキサン及び酢酸エチルで洗浄することで、キラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1i)(11.5 mg, 0.016 mmol) を収率94%で得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz): δ(ppm) = 4.59 (d, 2H, J = 11.9 Hz), 4.51 (d, 2H, J = 11.9 Hz), 3.24 (d, 2H, J = 15.6 Hz), 3.15 (d, 2H, J = 15.6 Hz), 2.67 (t, 4H, J = 7.8 Hz), 1.72-1.59 (m, 4H), 1.42-1.25 (m, 12H), 0.95 (t, 6H, J = 6.9 Hz); 13C-NMR(CD3OD, 100MHz): δ(ppm) = 142.2, 138.4, 61.9, 57.8, 34.8, 32.7, 29.97, 29.95, 26.1, 23.7, 14.4.
【0176】
【化31】

【0177】
フラスコのキラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1a)(15 mg, 0.031 mmol) 水溶液(3 mL)に、LiN(CF3SO2)2 (20.5 mg, 0.015 mmol, 2.3当量) を加え、21時間攪拌した。沈殿物を水で洗浄し、乾燥することで、キラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1j)(25.1 mg, 0.031 mmol) を定量的に得た。
白色固体; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz): δ(ppm) = 8.50 (s, 2H), 5.10 (d, 2H, J = 13.3 Hz), 5.02 (d, 2H, J= 13.3 Hz), 4.38 (s, 3H), 3.74 (d, 2H, J= 16.9 Hz), 3.66 (d, 2H, J = 16.9 Hz); 13C-NMR(CD3OD, 100MHz): δ(ppm) = 146.4, 127.8, 126.0, 122.7, 119.6, 115.8, 61.1, 58.5, 41.3, 36.5.
【0178】
フラスコのキラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1b)(15 mg, 0.029 mmol) 水溶液(3 mL)に、LiN(CF3SO2)2 (19.2 mg, 0.067 mmol, 2.3当量)を加え、21時間攪拌した。沈殿物を水で洗浄し、乾燥することで、キラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1k)(20.0 mg, 0.024 mmol)を収率84%で得た。
無色油状物; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz): δ(ppm) = 8.55 (s, 2H), 5.06 (d, 2H, J = 13.3 Hz), 4.98 (d, 2H, J= 13.3 Hz), 4.70 (q, 4H, J = 7.3 Hz), 3.71 (d, 2H, J = 16.9 Hz), 3.62 (d, 2H, J = 16.9 Hz), 1.67 (t, 6H, J = 7.3 Hz); 13C-NMR(CD3OD, 100MHz): δ(ppm) = 146.2, 126.3, 124.3, 122.2, 120.1, 118.0, 61.0, 58.5, 51.2, 36.3, 14.7.
【0179】
フラスコのキラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1c)(10.0 mg, 0.017 mmol)のメタノール溶液(5 mL)に、LiN(CF3SO2)2 (12.0 mg, 0.043 mmol, 2.5当量)を加え、12時間攪拌した。反応液に水を加えた後、ジクロロメタンで抽出し、有機溶媒を留去することで、キラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1l) (20.4 mg, 0.023 mmol) を定量的に得た。
黄色固体; 1H-NMR (DMF-d7, 400MHz): δ(ppm) = 8.93 (s, 2H), 5.38 (d, 2H, J = 12.8 Hz), 5.26 (d, 2H, J = 12.8 Hz), 4.79 (q, 4H, J = 7.3 Hz), 3.95 (d, 2H, J = 16.9 Hz), 3.82 (d, 2H, J = 16.9 Hz), 1.97 (quin, 4H, J = 7.3 Hz), 1.37 (sext, 4H), 0.92 (t, 6H, J = 7.3 Hz); 13C-NMR(DMF-d7, 100MHz): δ(ppm) = 162.9, 146.3, 125.5, 122.3, 119.1, 115.9, 60.9, 58.0, 54.4, 36.2, 32.1, 19.6, 13.5.
【0180】
フラスコのキラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1e)(26.2 mg, 0.041 mmol) 水溶液(3 mL)に、LiN(CF3SO2)2(26.5 mg, 0.092 mmol, 2.3当量) を加え、室温で24時間攪拌した。沈殿物を水で洗浄し、乾燥することで、キラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1m)(39.0 mg, 0.041 mmol) を定量的に得た。
褐色油状物; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz): δ(ppm) = 8.53 (s, 2H), 7.53-7.50 (m, 4H), 7.47-7.43 (m, 6H), 5.84 (s, 4H), 5.04 (d, 2H, J = 13.3 Hz), 4.96 (d, 2H, J = 13.3 Hz), 3.66 (d, 2H, J = 17.4 Hz), 3.58 (d, 2H, J = 17.4 Hz); 13C-NMR(CD3OD, 100MHz): δ(ppm) = 146.7, 133.5, 130.8, 130.4, 130.3, 126.6, 125.9, 122.7, 119.5, 116.4, 61.2, 59.0, 58.3, 36.4.
【0181】
フラスコのキラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1e)(29.8 mg, 0.046 mmol) 水溶液(3 mL)に、LiN[CF3(CF2)2SO2]2(52.3 mg, 0.107 mmol, 2.3当量)を加え、室温で24時間攪拌した。沈殿物を水で洗浄し、乾燥することで、キラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1n)(49.1 mg, 0.037 mmol) を収率79%で得た。
褐色固体; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz): δ(ppm) = 8.54 (s, 2H), 7.53-7.50 (m, 4H), 7.45-7.44 (m, 6H), 5.84 (s, 4H), 5.05 (d, 2H, J = 13.3 Hz), 4.96 (d, 2H, J = 13.3 Hz), 3.67 (d, 2H, J = 16.9 Hz), 3.57 (d, 2H, J = 16.9 Hz); 19F-NMR(CD3OD, 376MHz): δ(ppm) = -82.3, -114.8, -125.5.
【0182】
フラスコのキラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1h)(8.0 mg, 0.012 mmol) のメタノール溶液 (1 mL) に、LiN(CF3SO2)2(7.5 mg, 0.026 mmol, 2.2当量) を加え、24時間攪拌した。反応混合物に水を加えた後、酢酸エチルで抽出し、溶媒を留去することで、キラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1o)(8.2 mg, 0.0088 mmol) を収率73%で得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CD3CN, 400MHz): δ(ppm) = 4.81 (d, 2H, J = 13.3 Hz), 4.75 (d, 2H, J = 13.3 Hz), 4.47 (q, 4H, J = 7.3 Hz), 3.51 (d, 2H, J = 16.0 Hz), 3.43 (d, 2H, J = 16.0 Hz), 2.80 (t, 4H, J = 7.8 Hz), 1.65 (quin, 4H, J = 7.3 Hz), 1.53 (t, 6H, J = 7.8 Hz), 1.40 (sext, 4H, J = 7.8 Hz), 0.93 (t, 6H, J = 7.3 Hz); 13C-NMR(CD3CN, 100MHz): δ(ppm) = 142.8, 139.6, 125.6, 122.4, 119.2, 116.1, 60.2, 58.1, 48.1, 36.1, 29.1, 23.4, 22.8, 14.6, 13.7; 19F-NMR(CD3CN, 376MHz): δ(ppm) = -80.1.
【0183】
フラスコのキラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1i)(7.3 mg, 0.0098 mmol) のメタノール溶液 (1 mL) に、LiN(CF3SO2)2(6.2 mg, 0.026 mmol, 2.2当量)を加え、20時間攪拌した。溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン : 酢酸エチル = 1 : 1 )で精製することで、キラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1p)(10.5 mg, 0.010 mmol)を定量的に得た。
黄色油状物; 1H-NMR (CDCl3, 400MHz): δ(ppm) = 5.00 (d, 2H, J = 13.7 Hz), 4.91 (d, 2H, J = 13.7 Hz), 4.37 (t, 4H, J = 7.8 Hz), 2.76 (m, 4H), 1.96 (m, 4H), 1.69 (m, 4H), 1.50-1.24 (m, 16H), 1.00 (t, 6H, J = 7.3 Hz), 0.88 (t, 6H, J = 6.9 Hz); 13C-NMR(CDCl3, 100MHz): δ(ppm) = 141.8, 138.9, 121.1, 117.9, 59.6, 56.9, 51.6, 36.3, 30.9, 30.6, 28.8, 26.1, 23.4, 22.3, 19.5, 13.8, 13.2; 19F-NMR(CDCl3, 376MHz): δ(ppm) = -78.9.
以下に、キラルスピロビストリアゾリウム塩(1-1a)〜(1-1p)の融点又はガラス転移温度を示す。
【0184】
【表1】

【0185】
実施例3(スピロビストリアゾール化合物の光学分割)
【0186】
【化32】

【0187】
スピロビストリアゾール化合物(1e)を、以下の条件で光学分割した。
DAICEL CHIRALPAK IC column (20 mm x 250 mm), 測定波長235 nm, 溶出液:塩化メチレン/イソプロパノール = 4/1, 流速5.0 mL/min,
First peak in HPLC: カラム保持時間24 min; [α]D17 = -10.7 (c1.43, CHCl3).
Second peak in HPLC: カラム保持時間44 min; [α]D17 = +10.9 (c1.38, CHCl3).
(-)-スピロビストリアゾール化合物(1e)(530 mg, 1.4 mmol) のアセトニトリル溶液(30 mL)に、nBuI (1.3 g, 7.0 mmol, 5当量)を加え、38時間加熱還流した。反応液を濃縮した後、残渣をヘキサン及び酢酸エチルで洗浄することで、(-)-スピロビストリアゾリウム塩(1-1i)(975 mg, 1.32 mmol )を収率94%で得た。
[α]D22= -0.3 (c1.78, CHCl3)
フラスコの(-)-スピロビストリアゾリウム塩(1-1i)(620 mg, 0.84 mmol)のメタノール溶液(30 mL)に、LiN(CF3SO2)2(530 mg, 1.85 mmol, 2.2当量)を加え、室温で24時間攪拌した。溶媒を留去し、水で洗浄した後、(-)- スピロビストリアゾリウム塩(1-1p)(1.04 g, 0.9 mmol)を定量的に得た。
[α]D16= -8.16 (c0.49, CHCl3)
【0188】
実施例4(スピロビストリアゾリウム塩の不斉分子認識試験)
(±)−スピロビストリアゾリウム塩(1-1e)(8.4 mg, 0.013 mmol)を18-クラウン-6(10.3 mg, 0.039 mmol)存在下、20% DMSO-d6-CDCl3中、1H-NMR測定を行った。その際、5.20 ppm及び5.05 ppmにスピロ骨格N-メチレン鎖の水素HaとHbのピークが確認された(図1(a))。これにR体の2-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)フェニル酢酸カリウム塩(10.7 mg, 0.039 mmol)を加えると、それぞれのピークがHa: 5.20 ppm → 5.13 ppm, 5.14 ppm、Hb: 5.05 ppm → 4.96 ppm, 4.98 ppmに高磁場シフトした(図1(b))。これは、スピロビストリアゾリウムカチオンが光学活性アニオンを分子認識し、ジアステレオマー塩が形成したことを示している。この結果から、スピロビストリアゾリウム塩は、NMRシフト試薬および光学分割剤として機能することが示唆される。
実施例5(スピロビストリアゾリウム塩(1−1)の有機分子触媒としての利用)
【0189】
【化33】

【0190】
光学活性スピロビストリアゾリウム塩(1-1e)(3.0mg, 0.0047mmol)のTHF (0.6mL) 溶液中に、室温下、KOtBu (1.0mg, 0.0094mmol) を加えた。その後、ベンズアルデヒド(10mg, 0.094mmol) を加え、40℃で30分間攪拌した。反応液を直接PTLC (ヘキサン/酢酸エチル= 4/1) で分離することでベンゾインを50%収率(TLC収率、NMR収率)で得た。また、生成物のRf値[0.3 (ヘキサン/酢酸エチル = 4 /1)]は市販のベンゾインと完全に一致した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示す。
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。
*は、ラセミ体であることを示す。)
で表されるキラルスピロビストリアゾール化合物。
【請求項2】
式(2):
【化2】

(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はベンジル基を示す。)
で表されるマロン酸ジエステルを、式(3a)及び式(3b):
【化3】

(式中、Xはハロゲン原子を示す。
m及びnは、互いに独立して、1又は2を示す。)
で表されるハロゲノアルキンでアルキル化することにより、式(4):
【化4】

(式中、R、m及びnは、上記と同様である。)
で表される第1中間体を得る第1工程、
該第1中間体のエステル部分を還元することにより、式(5):
【化5】

(式中、m及びnは、上記と同様である。)
で表される第2中間体を得る第2工程、
該第2中間体のヒドロキシ基を保護した後、
及びR
(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示す。
は、ハロゲン原子を示す。)
で表されるアルキル化剤でアルキル化し、さらにトリフラート化試薬でヒドロキシ基をトリフラートに変換することにより、式(6):
【化6】

(式中、R、R、m及びnは、上記と同様である。)
で表される第3中間体を得る第3工程、
該第3中間体のトリフラートをアジド化剤でアジドに変換することにより、式(7):
【化7】

(式中、R、R、m、n及びxは、上記と同様である。)
で表される第4中間体を得る第4工程、及び
該第4中間体を分子内環化させる第5工程、
を含む、請求項1に記載のキラルスピロビストリアゾール化合物の製造方法。
【請求項3】
式(1−1):
【化8】

(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示し、R及びRは、互いに独立して、炭素数1〜16のアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基を示す。
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。
は、ハロゲン原子、又は
N[SO(CFy-1CF
(式中、yは、1〜5の整数を表す。)
で表されるビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドを示す。
*は、ラセミ体であることを示す。)
で表されるキラルスピロビストリアゾリウム塩。
【請求項4】
式(1):
【化9】

(式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示す。
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。
*は、ラセミ体であることを示す。)
で表されるキラルスピロビストリアゾール化合物を、
及びR
(式中、R及びRは、互いに独立して、炭素数1〜16のアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基を示す。
は、ハロゲン原子を示す。)
で表されるハロゲン化アルキルと反応させる工程を含み、
式(1−1)において、Xが、
N[SO(CFy-1CF
(式中、yは、1〜5の整数を表す。)
で表されるビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドである場合には、さらに、Xアニオンを、
N[SO(CFy-1CF
(式中、Mはアルカリ金属を表す。yは、1〜5の整数を表す。)
で表されるアルカリ金属ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドでカウンターアニオン交換する、
請求項3に記載のキラルスピロビストリアゾリウム塩の製造方法。
【請求項5】
式(1−2):
【化10】

(式中、R及びRは、互いに独立して、置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基である。
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。
*は、ラセミ体であることを示す。)
で表されるキラルスピロビスN−ヘテロ環状カルベン。
【請求項6】
式(1−1):
【化11】

(式中、R及びRは、水素原子を示し、R及びRは、互いに独立して、置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基を示す。
m、n及びxは、互いに独立して、1又は2を示す。
はハロゲン原子を示す。
*は、ラセミ体であることを示す。)
で表されるキラルスピロビストリアゾリウム塩を塩基で処理してカルベンを発生させる、請求項5に記載のキラルスピロビスN−ヘテロ環状カルベンの製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載のキラルスピロビストリアゾリウム塩を含む、イオン性液体。
【請求項8】
式(1−1)において、R及びRが水素原子であり、R及びRが、互いに独立して、置換されていてもよいアリール基で置換されたメチル基であり、Xがハロゲン原子である、請求項3に記載のキラルスピロビストリアゾリウム塩を含む、光学分割剤。
【請求項9】
請求項5に記載のキラルスピロビスN−ヘテロ環状カルベンを含む、不斉有機触媒。

【図1】
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【公開番号】特開2012−188387(P2012−188387A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53422(P2011−53422)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】