説明

キラルポリマーの製造方法及びこれにより得られたキラルポリマー

【課題】 キラルなモノマーやキラル触媒を用いることなく、アキラルモノマーから安定なキラルポリマーを簡便に得る。
【解決手段】 キラル触媒を用いることなく、キラルネマティック液晶相を溶媒として使用し、この液晶相が維持される温度下で、0価のパラジウム触媒を使用して、アキラルモノマーの重縮合を行って、例えば嵩高い置換基を有し且つチオフェン、フェニルなどを構造単位とするキラルポリマーを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラルポリマーの製造方法及びこれにより得られたキラルポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性を有する固体ポリマーを得るためには、光学活性触媒を用いて重合反応時に分子レベルで特定方向からの反応を生じさせ、その結果、キラルなポリマーを合成することが可能である。しかしながら、大抵は溶融又は溶解時にキラリティが失われてしまう。このため、螺旋構造を有する安定な光学活性ポリマーを生成するために、多くの方法が提案されてきた。これを解決するためにビニルポリマーへのトリチルメタクリレートなどの嵩高な置換基の導入などが行われてきた。しかし、この方法を用いたとき、ポリマーの溶解性の低下から、成形加工性が低下してしまう。また、キラルな置換基を持つモノマーを重合することにより、キラルなポリマーを得る方法も行われてきた。この場合、光学活性な触媒を用いる必要はなく、モノマーユニットのもつ光学活性がポリマーに反映される。このため安定なキラリティーをもつポリマーを合成することができる(非特許文献1乃至8)。
これらの方法では、目的とするポリマーを得るために、テトラヒドロフラン、ベンゼン又はエーテルなどの等方性有機溶液中で合成反応を行う。また、安定性の高い光学物性を有する螺旋状ポリアセチレンは、キラルネマティック液晶(LC)の表面上で合成することができることも報告されている(例えば非特許文献9乃至11)。
また、ネマティック液晶に、キラルドーパントとモノマーと支持電解質を添加して、電圧を印加することによって、光学活性共役系高分子を得る方法も提案されている(特許文献1)。
【非特許文献1】Chem. Rev., 1994, Vol.94, pp.349-372
【非特許文献2】Adv. Mater., 1997, Vol.9, pp.493-496
【非特許文献3】J. Mol. Structure 2000, Vol.521, pp.0285-301
【非特許文献4】J. Poly. Sci. Part A: Poly. Chem. Ed., 2001, Vol.39, pp.71-77
【非特許文献5】Synth. Met., 2001, Vol.119, pp.165-166
【非特許文献6】Macromolecules, 2002, Vol.35, pp.6439-6445
【非特許文献7】Macromolecules, 2001, Vol.34, pp.7249-7256
【非特許文献8】Chem. Lett., 1996, pp.955-956
【非特許文献9】Science, 1998, Vol.282, pp.1683-1686
【非特許文献10】Curr Appl. Phys., 2001, Vol.1, pp.88-89
【非特許文献11】Polym. Adv. Tech., 2000, Vol.11, pp.826-829
【特許文献1】特開2003−306531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、キラルポリマーを得るには、いずれの場合もキラルな触媒を用いるか、分子構造中にキラリティーをもつモノマーを使う必要がある。また液晶を反応場として用いるとき、液晶にモノマーを加えて反応を進める必要があるが、一般に非LC(液晶)化合物を添加することによってLC相が失われるとされている。このため、液晶を用いた反応場の構築と、ここでの有機合成は検討されてこなかった。
従って、本発明の目的は、キラルなモノマーやキラル触媒を用いることなく、安定なキラルポリマーを簡便に得ることができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のキラルポリマーの製造方法は、キラル触媒及びキラルモノマーを用いることなく、液晶相が維持される温度でキラルネマティック液晶を溶媒として用いてアキラルモノマーを重合し、キラルポリマーを得ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、所定の条件下でキラルネマティック液晶を溶媒とするので、キラルな液晶反応場において、キラル触媒やキラルモノマーを使用することなく、アキラルモノマーから安定なキラルポリマーを簡便に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のキラルポリマーの製造方法は、キラル触媒及びキラルモノマーを用いることなく、液晶相が維持される温度でキラルネマティック液晶を溶媒として用いてアキラルモノマーを重合するものである。
本発明者らは、反応場として液晶を使用し、この液晶が破壊されない条件下で重合を行うことによって化学反応的にアキラルモノマーからキラルモノマーを簡便に合成することを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明では、キラルネマティック液晶を異方性反応場として用いることによって反応場中にのみキラルが存在(キラル反応場)し、キラル触媒及びキラルモノマーを使用することなく、キラルなポリマーが得られる。ここで得られたポリマーは、不斉中心のない軸性キラルポリマーである。キラルな置換基をもたないポリマー、特に嵩高い置換基を有する本キラルポリマーのキラリティは、重合の間にキラルなネマティック液晶(N*−LC)反応場によって生成された配座不斉から得られると考えられる。
【0007】
図1は、本発明によるN*−LC反応場中の重合モデルを示す。
ポリマーは、Pd(0)触媒を用いたスティール重縮合反応によって、片ねじの螺旋センスを有するN*−LCの螺旋の連続体に成長する。モノマーはN*−LC層間に挿入されてもよいし(モデル1)、又は、反応がいろいろな方向に向けられる上下層のLCベクトルと共に進行する反応溶媒としてN*−LCによってLC層内で同化されてもよい(モデル2)。両モデルとも螺旋層構造内でポリマーの成長が促進される。即ち、この重合系では、キラルな分子がモノマーと化学的に反応しなかったこと、及び、反応溶媒としてのN*−LCが反応場としてのみ機能したことに特徴がある。一般にキラルポリマーの合成にはキラル置換基の導入又はキラル触媒の使用が要求されるが、本方法によれば、これらのいずれを用いることなく、不斉N*−LC反応場でのアキラルモノマーの反応によって安定なキラルなポリマーを得ることができる。
【0008】
反応場として使用されるキラルネマティック液晶は、重合反応に適した温度範囲内でキラルネマティック液晶性を示すものであれば、R型の絶対配置であってもS型であってもよい。
また、ある程度フレキシブルな主鎖に液晶形成基(メソゲン)を導入した側鎖型の液晶であっても、主鎖にメソゲンがある主鎖型の液晶であってもよいが、一環型、二環型又は三環型でキラリティーを持ち、サーモトロピック液晶性を示す直鎖状の化合物であることが好ましい。例えば、2つのベンゼン環をトランス−スチルベンやアゾベンゼンなどの二重結合を含む連結基や、ビフェニル又はシクロヘキサンなどの連結基でつないだものを挙げることができる。また本キラルネマティック液晶を構成する構造単位としては、例えば、ピロール、チオフェン、イソチアナフラン、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、アニリン、フラン、ビチオフェン、ターチオフェン、ベンゼン又はこれらの誘導体を挙げることができる。なお、汎用のポリマーとブレンドすることもできる。
【0009】
更に、メソゲン化合物の末端には、アルキル基又はアルコキシ基などのフレキシブルな置換基が導入されていることが好ましく、脂肪族鎖、剛直鎖又は非対称構造を有する置換基等が導入されていてもよいが、立体的な形状からキラルネマティック液晶反応場を破壊する可能性がある芳香族基よりも、柔軟なアルキル基(好ましくは炭素数20以下のもの)であることが好ましく、エステル結合部位を有する置換基であることが更に好ましい。これらの置換基の長さは液晶の転移温度に影響を及ぼすため、重合時の温度等を考慮して適宜選択することが好ましい。
また、本キラルネマティック液晶の分子量は、後述するモノマーの液晶への溶解性の観点からなるべく低いものが好ましく、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィによる測定で2000〜10万の重量平均分子量とすることができる。
【0010】
このようなキラルネマティック液晶としては、末端アルキル基を含む三環系を有するN*−LC化合物、シクロヘキシルビフェニル、ビフェニルなどのメソゲンコアにキラルな末端置換基を導入したもの等を挙げることができる。
【0011】
このような本キラルネマティック液晶は、例えば、ベンゼン、ビフェニルなどからなるメソゲンコアに、光学活性なアルキル基を末端に導入することによって容易に合成することができる。メソゲンコアにキラル置換基を導入するには、縮合反応が用いられ、とりわけ光延反応がよく使われる。この際、SN1型の反応を用いるとラセミ化が生じて分子キラリティーが失われてしまうため、SN1反応を用いるときは、キラル中心が反応部位より離れたものを用いることが好ましく、反応部位の近くにキラル中心が存在する場合は、SN2型の反応を用いることが好ましい。
【0012】
本方法に用いられるアキラルモノマーは、N*−LCに対してモノマー溶解性及び親和性を有するものであればよいが、N*−LCによってポリマーにキラリティが付与されるためには、ポリマーの立体障害となり得る嵩高い置換基を有するモノマーであることが好ましい。このような嵩高い置換基としては、エステル結合を介したアルキル基(好ましくは炭素数20以下のもの)を挙げることができる。本アキラルモノマーは、液晶への親和性の観点から、液晶と類似した構造を有するものであることが好ましく、直線性をもつ形状であることが更に好ましい。
【0013】
このようなアキラルモノマーとしては、得られたキラルポリマーを構成する構造単位としてヘテロ原子を含む又は含まない置換又は未置換の5員環及び/又は6員環を与えることができる共役系モノマーを挙げることができる。例えば、ポリマーの構造単位として、置換又は未置換のピロール、フラン、イソチアナフラン、フェニル、ビフェニル、チオフェン、ビチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン等を挙げることができ、これら1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。共役系モノマーを用いる場合には、電気伝導性の向上や発光波長の長波長化、量子高率の向上を図るために、有効共役鎖長を長くすることが好ましい。
【0014】
重合に用いられる触媒には、パラジウム触媒及びニッケル触媒を挙げることができ、パラジウム触媒(Pd(0))、ニッケル触媒Ni(0)等が該当する。このうち、スティール反応を円滑に行うためにパラジウム触媒が好ましく、パラジウム二価(Pd(II))触媒を用いる場合、トリフリルフォスフィンなどの助触媒を用いなくてはならないため0価のパラジウム触媒であることが特に好ましい。パラジウム錯体触媒としては、 テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(0)、ビス[1,2−ジ(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)等が好ましく、簡便性の観点からテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が更に好ましい。
【0015】
この触媒は、多く使用すれば重合活性を向上させて高分子量のポリマーを得ることができるが、N*−LC溶媒に多くの異種分子を添加することになる。このため、重合活性と異種分子の添加量とのバランスの観点から、触媒量は、モノマー比で1/100〜1/1000モル当量が好ましい。
【0016】
本発明では、上記アキラルモノマーの重合は、液晶相が維持される温度で行われることが必須である。
ここで液晶相が維持される温度とは、選択されたN*−LCの液晶相が維持される温度範囲をいい、当業者であれば、使用するN*−LCの種類及び構造に基づいてそれぞれ決定でき、モノマーと触媒を加えてN*−LCが生じる温度範囲で重合反応を行い、かつこの温度範囲内で反応を終了させることができる。この液晶相が維持される温度は、通常、60℃〜95℃であり、好ましくは88〜95℃の温度である。60℃よりも低い温度では、スティール反応やスズキカップリング反応などの各種反応を充分に進行させることが難しい場合があり、95℃を超えると液晶相を維持しにくくなるため、好ましくない。液晶相が維持される温度範囲は、一般的に熱分析によって得ることができ、示差走査熱量計(DSC)を用いて決定される。従って、この液晶相が維持される温度範囲内で重縮合反応が行われる。
【0017】
ここで重合反応系において撹拌を行う場合には、液晶相が維持される剪断応力の範囲内であることが必要である。このような剪断応力は、選択されたN*−LCの種類、使用される器具等に応じて変更可能であり、当業者であれば適切な範囲を選択することができる。例えば、直径2cmのシュレンク(Schlenke)管及びテフロン(登録商標)加工された磁気スターラー(1cm)を用いた場合には、80rpmの撹拌条件が選択される。
【0018】
アキラルモノマーの重合は、上述した剪断応力が均一に付与される環境下で実施されることが好ましい。このような環境を維持するために必要は器具、その他の条件については当業者であれば容易に理解することができる。
またアキラルモノマーの重合は、如何なる種類の重合であってもよく、付加重合、重縮合、重付加重合を挙げることができ、そのいずれに該当するかは、用いるモノマーの種類によって決定される。
【0019】
本発明によって得られるポリマーは、不斉中心を持たない軸性キラルポリマーである。このポリマーでは、ポリマー側鎖の嵩高いエステル基の存在によってキラリティが維持され、安定化されている。ポリマーの特性は、各種光学活性によって特定することができ、CDスペクトル、CPF(円偏光二色性発光)及びORD(旋光分散)スペクトルにより確認できる。また本発明によるポリマーの分子量には特に制限がなく、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィによる測定で2000程度の重量平均分子量から、10万程度の重量平均分子量まで幅広いものにすることができる。
【0020】
ここで使用されるN*−LC反応場は重合中の分子モールドとして連続的なキラルなパターンを提供し、ポリマーは3次元のキラルな反応場内で成長して、片ねじの螺旋構造を形成する。このような共役系ポリマーへの光学物性の導入自体が、バイオエンジニアリングへの潜在的な応用範囲を有し、この方法は、生体中の不斉環境において生体分子が合成される生物学的反応に対するモデルを提供することができる。この研究の結果は、反応場化学の効用を更に示唆するものでもある。
【0021】
本発明は、液晶溶媒が繰返し使用可能であるため、安価なアキラルモノマーから高価なキラルポリマーを合成することができるという経済的な効果も有している。また、本発明によって得られたキラルポリマーは、製膜性が優れており、塗布のような簡単な工程によって容易に膜を形成することができる。これにより、更に、簡便に且つ低コストで、本発明によって得られたキラルポリマーを用いた機能化を行うことができる。
【実施例】
【0022】
以下に本発明の実施例について説明するが、これに限定されるものではない。また実施例中の%は、特に断らない限り、重量(質量)基準である。
【0023】
[実施例1]
A.ネマティック液晶の合成
【0024】
【化1】

【0025】
(1) 4’−[(R)−1−メチルヘプチロキシ]ビフェニル−4−カルボニトリル[pre(R)−1]の合成
69mLのTHF中、4−ヒドロキシ−4−シアノビフェニル(10.7g、55mmol)、DEAD(ジエチルアゾジカルボキシレート)(24.1g、55.3mmol;40%トルエン溶液中)の溶液に対して、均等管滴下漏斗を用いて非常にゆっくりと、30mLのTHF中の(S)−(+)−2−オクタノール(6.5g、50.2mmol)及びTPP(トリフェニルホスフィン)(14.4g、55.1mmol)溶液を添加した。得られた反応混合物を、アルゴン雰囲気下で更に24時間撹拌し、薄層クロマトグラフィー(TLC)において反応の完了が示された。オレンジ色の反応混合物をそれから、蒸発させて溶媒を除去した。TLCにおいて反応の完結が示された。固体を水でよく洗い、エーテルで抽出した。次に有機層を蒸発させて溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n−ヘキサン/CH2Cl2=1)を行って、pre(R)−1の無色の液体10.8g(35.1mmol)を得た。収率は70.0%であった。
【0026】
なお、1H NMRスペクトルは、Bruker AV−600 TF−NMRスペクトロメーターを用いてCDCl3中で測定した。ケミカルシフトは、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)差のppmで示した。赤外スペクトルは、JASCO社製FT−IR 550 スペクトロメーターによりKBr法を用いて測定した。光吸収スペクトルは、HITACHI社U−2000スペクトロメーターを用いて石英セルにより室温で測定した。相転移温度は、10℃/分の一定の加熱/冷却率でTAインスツルメントのQ−100示差走査熱量計を用いて測定し、テクスチャ観察は、Linkam TM600PMヒーティング及びクーリングステージ付きのニコン ECLIPS E400 POL偏光顕微鏡を用いて行った。
【0027】
Anal. Calcd for C2125NO4: C,82.04;H,8.20,N, 4.56。 Found: C,82.20; H,8.10, N,4.55. IR(KBr,cm-1): 2930(CH2), 2255(CN), 1603(C=C), 1248(C−O−C), 823(CH)。 1H NMR(150MHz,CDCl3,25(C,TMS,ppm):d=0.88(t,J=7.08Hz,3H;CH3),1.27−1.35(m,6H;CH2×3),1.46(m,2H;CH2CH3),1.60(m,3H;C*HCH3O),1.76(m,2H;CH2CH2*HCH3O),4.41(sextet,J=6.12Hz,1H;C*HCH3O),7.01(d,J=8.76Hz,2H;ph),7.51(d,J=8.72Hz,2H,Ph),7.63(d,J=8.45Hz,2H;Ph),7.68(d,J=8.22Hz,2H,Ph)。 13C NMR(600MHz,CDCl3,25℃,TMS,ppm):d=14.1(CH3),19.7(C*HCH3O),22.6,25.5,29.3,31.8,36.4,74.0(C*HCH3O),110.0,116.2,119.1,127.0,128.3,131.1,132.5,145.3,158.9.
【0028】
(2) 4’−[(S)−1−メチルヘプチロキシ]ビフェニル−4−カルボニトリル(pre(S)−1)の合成
pre(S)−1の合成は、60mLのTHF中、4−ヒドロキシシアノビフェニル(10.7g、55mmol)、DEAD(24.1g、55.3mmol;40%トルエン溶液中)及び、(R)−(−)−2−オクタノール(6.5g、50.2mmol)、TPP(14.4g、55.1mmol)を用いた以外は、pre(R)−1と同様にして行った。収量は、8.9g(28.9mmol)で58%であった。
【0029】
Calcd for C2125NO4: C, 2.04; H,8.20, N,4.56. Found: C,82.19; H,8.15, N,4.55。 IR(KBr,cm-1): 2930(CH2), 2255(CN), 1603(C=C), 1248(C−O−C), 823(CH)。 1H NMR(600MHz,CDCl3,25(C,TMS): d=0.87(t,J=7.08Hz, 3H;CH3), 1.27−1.35(m,6H;CH2×3), 1.46(m,2H;CH2CH3), 1.61(m,3H;C*HCH3O),1.76(m,2H;CH2CH2*HCH3O), 4.41(sextet,J=6.12Hz,1H;C*HCH3O), 7.01(d,J=8.76Hz,2H;Ph), 7.51(d,J=8.72Hz,2H;ph),7.63(d,J=8.45Hz,2H,Ph), 7.68(d,J=8.22Hz,2H,Ph). 13C NMR(150MHz,CDCl3,25(C,TMS):d=14.3(CH3), 19.6(C*HCH3O),22.6,25.4,29.3,31.8,36.4, 74.0(C*HCH3O),109.8,116.2,119.1,127.0,128.2,131.1,132.l,145.3,158.9.
【0030】
(3) 4’−[(R)−1−メチルヘプチロキシ]ビフェニル−4−カルボン酸[(R)−2]の合成
エタノール(120mL)中、pre(R)−1(10.8g、35.1mmol)溶液を、アルゴン雰囲気下で、水(80mL)中の水酸化カリウム(49.4g、0.81mol)の溶液に添加した。1週間後に、反応混合物を蒸発させて溶媒を除去し、濾過して白色粉末を得た。粗製生成物を大量のn−ヘキサンで洗い、真空乾燥して、(R)−2の白色固体を得た(9.2g、28.2mmol)。収率は80%であった。
【0031】
Anal. Calcd for C21263: C,77.27; H,8.03。 Found: C,77.20; H,8.10。 IR(KBr,cm-1): 2924(CH2), 2668,2540, 1680(C=O), 1601(C=C), 1283(C−O−C), 838(CH)。 1H NMR(600MHz,CDCl3,25(C,TMS):d=0.88(t,J=6.96Hz, 3H;CH3), 1.27−1.35(m,6H,CH2×3), 1.47(m,2H;CH2CH3), 1.60(m,3H;C*HCH3O), 1.77(m,2H;CH2CH2*HCH3O), 4.42(sextet,J=6.12Hz, 1H;C*HCH3O), 6.98(d,J=8.76Hz,2H;Ph), 7.57(d,J=8.76Hz,2H;Ph), 7.66(d,J=8,46Hz,2H;Ph), 8.15(d,J=8.40Hz,2H;ph)。 13C NMR(150MHz,CDCl3,25(C,TMS):d=14.1(CH3), 19.7(C*HCH3O), 22.6,25.5,29.3,31.8,36.5,74.O(C*HCH3O), 116.2,126.5,127.1,128.4,130.7,131.9,145.3,158.9,171.1(COOH)。 液晶度: K160(152) Sx166(159) SmC*176(173) N*195(192) I,in(C, K:結晶, Sx:不明スメティック相, SmC*:キラルスメティック C,N*:キラルネマティック, I:等方性, カッコ内は冷却工程]
【0032】
(4) 4’−[(S)−1−メチルヘプチロキシ]ビフェニル−4−カルボン酸[(S)−2]の合成
(S)−2は、pre(S)−1(10.8g、35.1mmol)、水酸化カリウム(49.4g、0.81mol)、エタノール(120mL)、及び水(80mL)を用いた以外は、(3)と同様にして調製した。収量は、8.9g(24.3mmol)であり、収率は70%であった。
Anal. Calcd for C21263: C,77.27; H,8.03。 Found: C,77.25; H,8.08。 IR(KBr,cm-1): 2924(CH2), 2668,2540,1678(C=O), 1601(C=C), 1282(C−O−C), 838(CH)。 1H NMR(CDCl3,600MHz,TMS,ppm):d=0.88(t,J=6.96Hz,3H,CH3), 1.27−1.35(m,6H;CH2×3), 1.46(m,2H;CH2CH3), 1.60(m,3H;C*HCH3O), 1.77(m,2H;CH2CH2*HCH3O), 4.41(sextet,J=6,12Hz,1H;C*HCH3O), 6.98(d,J=8.76Hz,2H;Ph), 7.57(d,J=8.76Hz,2H;Ph), 7.66(d,J=8.46Hz,2H;Ph), 8.15(d,J=8.40Hz,2H;Ph)。 13C NMR(CDCl3,150MHz,TMS,ppm):d=14.1(CH3), 19.7(C*HCH3O), 22.6,25.5,29.3,31.8,36.5,74.0(C*HCH3O), 116.0,126.5,127.2,128.4,130.7,131.9,145.3,158.9,171.2(COOH)。 液晶度: K160(152) Sx166(159) SmC*176(173) N*195(192) I,in(C, K:結晶, Sx:不明スメティック相, SmC*: キラルスメティック C, N*:キラルネマティック, I:等方性, カッコ内は冷却工程].
【0033】
(5) 4−メトキシ−安息香酸4’−[(R)−1−メチルヘプチロキシ]ビフェニル−4−イルエステル[(R)−1]の合成
65mLのCH2Cl2中、(R)−2(9.2g、28.2mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(5.8g、28.2mmol)及び4−メチルアミノピリジン(DMAP)(3.5g、28.2mmol)及びp−エトキシフェノール(3.8g、28.2mmol)の溶液を、24時間室温で撹拌した。溶媒を除去した後、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2)によって生成し、エタノールによる再結晶化によって、白色物9.6g(21.5mmol)を得た。収率は76%であった。
【0034】
Anal. Calcd for C29344: C,78.00, H,7.67。 Found: 78.00, H, 7.66。 IR(KBr,cm-1): 2925(CH2), 1726(C=O), 1507(C=C), 1250(C−O−C), 814(CH)。 1H NMR(CDCl3,600MHz,TMS,ppm):d=0.88(t,J=6.66Hz,3H;CH3), 1.27−1.36(m,6H;CH2×3), 1.42(t,J=6.96Hz,3H;phOCH2CH3), 1.46(m,2H;CH2CH3), 1.59(m,3H;C*HCH3O), 1.77(m,2H;CH2CH2*HCH3O), 4.03(q,J=7.00Hz,2H;ph−OCH2CH3), 4.41(sextet,J=6.06Hz, 1H;C*HCH3O), 6.93(d,J=8.94Hz,2H;Ph), 6.98(d,J=8.64Hz,2H;Ph), 7.12(d,J=8.88Hz,2H;Ph), 7.57(d,J=8.58Hz,2H;Ph), 7.67(d,J=8.28Hz,2H;Ph), 8.22(d,J=8.22Hz,2H;Ph)。 13C NMR(CDCl3, 150MHz,TMS,ppm):d=14.1(CH3), 14.8(ph−OCH2CH3), 19.7(C*HCH3O), 22.6,25.5,29.3,31.8,36.5,63.8(ph−OCH2CH3), 74.0(C*HCH3O), 115.0,116.1,122.4,126.5,127.5,128.4,130.7,131.8,144.3,145.8,156.6,158.6,165.5(Ph−COO−Ph)。 液晶度: K97(72) N*135(133) I,in(C, K:結晶, N*: キラルネマティック, I:等方性, カッコ内は冷却工程], [α]D20=+3.4(THF)。
【0035】
(6) 4−メトキシ−安息香酸4’−[(S)−1−メチルヘプチロキシ]ビフェニル−4−イルエステル[(S)−1]の合成
(S)−2(7.9g、24.3mmol)、p−エトキシフェノール(3.6g、26.7mmol)、DCC(5.5g、26.7mmol)、DMAP(3.3g、26.8mmol)、CH2Cl2(70mL)を用いた以外は、(R)−1と同様にして、(S)−1を合成した。収量は、8.g(19.5mmol)であり、収率は80%であった。
【0036】
Anal. Calcd for C29344: C, 78.00; H, 7.67。 Found: 78.00, H, 7.68. IR (KBr, cm-1): 2925 (CH2), 1726 (C=O), 1507 (C=C), 1250 (C−O−C), 814 (CH)。 1H NMR (CDCl3, 600 MHz ,TMS, ppm): d = 0.88 (t, J = 6.84 Hz, 3H; CH3), 1.27−1.36 (m, 6H, CH2×3), 1.42 (t, J = 6.96 Hz, 3H; phOCH2CH3), 1.46 (m, 2H; CH2CH3), 1.59 (m, 3H, C*HCH3O), 1.77 (m, 2H; CH2CH2*HCH3O), 4.03 (q, J = 6.98 Hz, 2H; Ph−OCH2CH3), 4.41 (sextet, J= 6.06 Hz, 1H; C*HCH3O), 6.93 (d, J = 8.76 Hz, 2H; Ph), 6.98 (d, J = 8.76 Hz, 2H, Ph); 7.13 (d, J = 9.06 Hz, 2H, Ph), 7.58 (d, J = 8.82 Hz, 2H; Ph), 7.67 (d, J = 8.58 Hz, 2H; Ph), 8.22 (d, J = 8.58 Hz, 2H; Ph), 8.22 (d, J = 8.58 Hz, 2H; Ph)。 13C NMR (CDCl3, 150 MHz, TMS, ppm): d = 14.1 (CH3), 14.8 (ph−OCH2CH3), 19.7 (C*HCH3O), 22.6, 25.5, 29.3, 31.8, 36.5, 63.8 (ph−OCH2CH3), 74.0 (C*HCH3O), 115.0, 116.1, 122.4, 126.5, 127.5, 128.4, 130.7, 131.8, 144.4, 145.9, 156.6, 158.6, 165.5 (Ph−COO−Ph)。 液晶度: K97(72) N*135(133) I,in(C, K:結晶, N*: キラルネマティック, I: 等方性, カッコ内は冷却工程]。 [α]D20 = − 3.7 (THF)。
【0037】
B.モノマーの合成
(1) 5,5’−ビス(トリメチルスタニル)−2,2’−ビチオフェン[2]の合成
THF(100mL)中、2,2’−ビチオフェン(6.7g、40mmol)の溶液を、アルゴン下でドライアイス/エタノールを用いて冷却した。67mLのn−BuLi溶液(n−ヘキサン中1.5M、100mmol)を、アルゴン雰囲気下で均圧管月滴下漏斗によって添加した。100mLのトリメチルスズクロリド(THF中1.0M、100mmol)を滴下漏斗で非常にゆっくりと添加した。溶液の色が紫に変わり、最終的には青茶になった。それから、混合物を室温にして更に5時間撹拌し、大量の水を添加することによって反応を停止させた。粗生成物をエーテルで抽出し、分液漏斗を用いて水で洗浄した。有機層をMgSO4により乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、カラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/エチルアセテート=10)によって精製し、メタノールから再結晶化して、4.6gの緑針状物を得た(収率:23%)。
【0038】
Anal. Calcd for C14222Sn2: C, 34.19; H, 4.51。 Found: C, 34.57; H,4.62. IR (KBr, cm-1): 3052, 2980, 2911 (CH2, CH3), 1412 (C=C), 793 (CH)。 1H NMR (CDCl3, 600 MHz, TMS, ppm): d = 0. 34 (s, 18H), 7.07 (d, J = 3.5 Hz, 2H; Th), 7.26 (d, J = 3.3 Hz, 2H; Th)。 13C NMR (CDCl3, 150 MHz, TMS, ppm), d = −8.2, 124.8, 135.8, 137.5, 143.0。
【0039】
(2) 2,5−ジブロモ安息香酸[(R)−(−)−1−メチルオクチル]エステル[(R)−3]の合成
20mLのTHF中、2.5−ジブロモ安息香酸(3.9g、14mmol)及びDEAD(6g、トルエン中40wt%、14mmol)の溶液を、THF(15mL)中、(S)−(+)−2−ノナノール(2g、14mmol)及びTPP(3.6g、14mmol)の撹拌混合液に滴下しながら添加した。得られた反応混合物を更に24時間アルゴン雰囲気下で撹拌し、反応完了をTLCが示した。オレンジ色の反応混合物を蒸発させて溶媒を除去した。固体を水ですっかり洗い、エーテルで抽出した。それから有機層を蒸発させて溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2)で精製することによって、(R)−3の無色の液体3.2gを得た(収率:57.0%)。
【0040】
Anal. Calcd for C1622Br22: C, 47.32; H, 5.46. Found: C, 47.62; H, 5.55。 IR (KBr, cm-1): 2925, 2856 (CH2, CH3), 1732 (C=O), 1457 (C=C), 1281, 1244 (C−O−C), 815, 777 (CH), 448 (CBr)。 1H NMR (CDCl3, 600 MHz, TMS, ppm): d = 0.77 (t, 3H; CH2CH3), 1.1−1.7 (m, 15H), 5.10 (sextet, 1H; CHCH3), 7.35 (m, 1H; Ph), 7.45 (d, 1H; Ph), 7.78 (d, 1H; Ph)。 13 C NMR (CDCl3, 150 MHz, TMS, ppm), d = 14.5 (CH2CH3), 20.3 (C*HCH3O), 23.0, 25.8, 29.6, 29.8, 31.6, 36.2, 73.9(C*HCH3O), 120.5, 121.4, 134.2, 135.0, 135.5, 136.0, 165.0.
【0041】
(3) (S)−(+)−2.5−ジブロモ安息香酸1−メチルオクチルエステル[(S)−3]の合成
20mLのTHF中、2,5−ジブロモ安息香酸(3.9g、14mmol)及びDEAD(6.0g、トルエン中40%、14mmol)及び(R)−(−)−2−ノナノール(2g、14mmol)及びTPP(3.6g、14mmol)を用いた以外は、(R)−3の合成と同様にして、(S)−3を合成した。収量は3.9gであり、収率は70%であった。
【0042】
Anal. Calcd for C1622Br22: C, 47.32; H, 5.46。 Found: C, 47.43; H, 5.55。 IR (KBr, cm-1): 2927, 2856 (CH2, CH3), 1733 (C=O), 1457 (C=C), 1282, 1244 (C−O−C), 816, 777 (CH), 448 (CBr)。 1H NMR (CDCl3, 600 MHz, TMS, ppm): d = 0.81 (t, J = 7.0 Hz, 3H; CH2CH3), 1.1−1.7 (m, 15H, CH2, CH3), 5.10 (sextet, J = 6.7 Hz, 1H; CHCH3), 7.36 (m, 1H, Ph), 7.44 (d, J = 8.5 Hz, 1H, C3; Ph), 7.78 (d, J= 8.5 Hz, 1H; ph)。 13C NMR (CDCl3, 600 MHz, TMS, ppm): d = 14.5 (CH2CH3), 20.3 (C*HCH3O), 23.0, 25.8, 29.6, 29.8, 31.2, 36.2, 73.9 (C*HCH3O), 120.5, 121.3, 134.1, 135.0, 135.5, 136.0, 165.0。
【0043】
(4) 2,5−ジブロモ安息香酸ウンデシルエステル[4]の合成
20mLのTHF中、2.5−ジブロモ安息香酸(10g、36mmol)及びDEAD(15.7g、トルエン中40wt%、36mmol)の溶液を、THF(20mL)中の1−ドデカノール(6.6g、36mmol)及びTPP(9,4g、36mmol)の撹拌混合液に滴下しながら添加した。得られた反応混合物を更に24時間アルゴン雰囲気下で撹拌し、反応完了をTLCが示した。オレンジ色の反応混合物を蒸発させて溶媒を除去した。固形物を水ですっかり洗い、エーテルで抽出した。それから有機層を蒸発させて溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2)で精製することによって、白色の結晶7.4gを得た(収率:47.0%)。
【0044】
Anal. Calcd for C74Br22: C, 30.04; H, 1.44。 Found: C, 30,04; H, 1.42。 IR (cm-1): 2935, 2856 (CH2, CH3), 1701(C=O), 1270 (C−O−C)。 1H NMR (CDCl3, 600 MHz, TMS, ppm): d = 0.79 (t,J=6.8 Hz, 3H; CH3), 1.24−1.27 (m, 14H; CH2), 1,33 (quint, J = 7.2 Hz, 2H; OCH2CH2CH2), 1.67 (quint, J = 6.7 Hz, 2H; OCH2CH2), 4.24 (t, J = 6.7 Hz, 2H; OCH2), 7.32 (d, J = 6.1 Hz, 1H; Ph), 7.41 (d, J = 8.5 Hz, 1H; Ph), 7.80 (s, 1H; Ph)。 13C NMR (CDCl3, 150 MHz, TMS, ppm); d = 14.5 (CH2CH3), 23.1, 26.4, 29.0, 29.6, 29.8, 29.9, 30.0, 30.1, 32.3, 66.6, 120.7, 121.4, 134.5, 135.7, 136.1, 165.3。
【0045】
[実施例2]
重合
本実施例においては、二つのタイプのキラルポリマー、即ち、キラル置換基を有するポリマー(比較例)と、反応溶媒としてN*−LC中で調製されたキラル置換基をもたないポリマー(本発明に係る実施例)を合成した。これらのポリマーに対する合成経路を以下に示す。
【0046】
【化2】

【0047】
(1) キラル置換基を有するポリマーの合成(スキーム1(A):比較例)
キラル置換基を有するポリマーの合成は以下のように行った。
キラルな化合物(R)−3又は(S)−3を、触媒としてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、Pd(PPh34の存在中、アルゴン雰囲気下で、THF中の二置換ビチオフェン誘導体としての化合物[2]と反応させた。24時間の反応後、反応混合物をメタノール、次にアセトンで洗浄して、キラルなポリマーを得た。
詳細には、次の通りに行った。2mLのTHF中で、(R)−3(0.36g、0.8mmol)、Pd(PPh34(9.2g、0.008mmol)を60℃で1時間撹拌した。THF(1mL)中の化合物[4]の溶液(0.4g、0.8mmol)を撹拌している混合物に添加して、24時間反応させた。溶液を大量のメタノールに注ぎ込み、赤い粉末の乾燥ポリマーを得た。
【0048】
(R)−Poly−1.
IR (KBr,cm-1): 2925,2853(CH2,CH3), 1717(C=O), 1248(C−O−C), 795(CH)。 1H NMR(CDCl3,600MHz,TMS,ppm):d=0.77(3H;CH2CH3), 1.0−1.8(m,15H;CH2,CH3), 4.99(1H;C*HCH3), 6.90(1H;Th), 7.05(1H;Th), 7.09(1H,Th), 7.23(1H;Th), 7.41(1H;Ph), 7.56(1H,Ph), 7.83(1H,Ph).
【0049】
(S)−Poly−1
IR(KBr,cm-1): 2925,2854(CH2,CH3), 1717(C=O), 1249(C−O−C), 795(CH)。 1H NMR(CDCl3,600MHz,TMS,ppm):d=0.77(3H;CH2CH3), 1.0−1.8(m,15H;CH2,CH3,), 4.99(1H;C*HCH3), 6.90(1H;Th), 7.05(1H;Th), 7.09(1H;Th), 7.24(1H;Th), 7.41(1H;Ph), 7.58(1H;Ph), 7.83(1H;Ph).
【0050】
(2)キラル置換基をもたないポリマーの合成(スキーム1(B):本発明)
キラル置換基をもたないポリマーの合成は、以下のようにして行った。
共役系芳香族を得るためのC−C結合構築のために、Pd(0)触媒を用いて、スティール重縮合反応によって臭素原子とトリメチルチン基との間で重合を行った。
【0051】
キラルネマティック反応場における重合の詳細は、以下のとおりである(スキーム(B)を参照)。
1グラムの1((R)−1又は(S)−1)を、アルゴン流下でゆっくりと撹拌(80rpm)しながら、小型のシュランケフラスコに入れた。これは、N*−LC相を示すために正確に93℃に維持されていた。N*−LC溶液の虹色を確認した。それから、Pd(PPh34(3mg、0.0026モル)を、N*−LCに非常にゆっくりと添加した。次に、化合物[2](85mg、0.2mmol)をN*−LC溶媒に添加した。30分後に、この混合物に、キラリティをもたない化合物[4](85mg、0.2ミリモル)を添加した。N*−LC溶液は虹色を示し、次第に蛍光を示し始めた。反応混合物を更に、24時間ゆっくり(80rpm)と更に撹拌した。
その後、80rpmで30分攪拌した後、化合物[2](0.1g及び0.2ミリモル)を添加して重縮合を開始した。キラルネマティック液晶度を維持するために80rpmの攪拌を続けた。反応の最中の反応温度はきっかり93℃に保った。キラルネマティック液晶度は、反応中の混合物の選択的な反射によって確認された。N*−LC相の転移温度は、モノマー、触媒、得られたポリマーなどの不純物の導入によって降下する場合もあるが、この混合物が93℃でN*−LC相を保持することが確認された。24時間後、反応フラスコ内のN*−LCの目に見える選択的な反射が、再び確認された。これは、そのN*−LC相を保持する混合物の証拠である。シュランケフラスコのN*−LCの混合物も、N*−LC溶媒中の蛍光ポリマーの生成によって蛍光化した。
【0052】
ポリマーがN*−LC媒体中に視覚的に良好に溶解した後で反応混合物を室温まで冷まさせ、ついで最小量のTHFに一旦溶解してから、多量のアセトン中へ注入し、[3]と低分子量の留分を完全に除去した。この生成物をアセトン、次にメタノールによってさらに洗浄し、THFとCHCl3に可溶であると思われる赤色固体を残した。
分子量は、測定中の溶媒としてTHFを用いて、Shocex A−80Mカラム及びJASCO HPLC 870−UV検出器を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。なお、装置調整には、標準ポリスチレンを用いた。
【0053】
(R)−Poly2.
IR(KBr,cm-1): 2921, 2852 (CH2,CH3), 1714(C=O), 1251(C−O−C), 793(CH). 1H NMR(CDCl3,600MHz,TMS,ppm): d=0.87 (3H;CH2CH3), 1.0−1.8(m,15H;CH2,CH3), 4.22,(1H;C*HCH3), 6.98(1H;Th), 7.13(1H;Th), 7.18(1H;Th), 7.32(1H;Th), 7.52(1H;Ph), 7.70(1H;Ph), 7.94(1H;Ph).
【0054】
(S)−Poly−2.
IR(KBr,cm-1): 2923,2853(CH2), 1717(C=O), 1251(C−O−C), 793(CH), 1H NMR(CDCl3,600MHz,TMS,ppm):d=0.87(3H;CH2CH3), 1.0−1,8(m;15H,CH2,CH3), 4.22(1H;C*HCH3), 6.98(1H;Th), 7.13(1H;Th), 7.18(1H;Th), 7.32(1H;Th), 7.52(1H;Ph), 7.70(1H;Ph), 7.94(1H;Ph).
【0055】
【表1】

【0056】
重合の結果は表1にまとめた。(R)−poly−1又は(S)−poly−1の平均分子量はそれぞれ3200と3500であり、(R)−poly−2又は(S)−poly−2の平均分子量はそれぞれ6100と8300である。
また、加熱及び冷却過程におけるN*−LC溶液の重合前後のDSCを図2に示す。図2に示されるように、N*−LC混合物の転移温度は、わずかに低温側にシフトしたが、N*−LC相は、重合温度の範囲内に維持されていた。
本ポリマーの化学構造は、H1−NMRによって確認した。ポリマーは、ヘッド−ヘッド(HH)又はヘッド−テール(HT)レジオレギュラリティ(位置規則性)を形成した。構造変化の影響がポリマーの光学特性に影響すると推測したが、本発明のポリマーのレジオレグラリティの調整は、本重合方法によってきわめて困難であった。本発明のポリマーは、ランダムHH及びHTレギュラリティを形成することができる。
【0057】
このように、(R)又は(S)の構造の末端アルキル基を含む三環系を有するN*−LC化合物、(R)−1及び(S)−1が、重縮合のためのキラルな溶媒として調製された。このN*−LC化合物は、芳香族化合物の重縮合反応に適するものであり、約90℃でキラルなネマティック相を示す。
【0058】
これらの化合物のN*−LC相は、広範囲の温度に対して安定であり、ジブロモベンゼン及びジブロモチオフェンなどの芳香族化合物を添加した後は、安定したままである。これらの化合物の転移動作は、K97(72)N*135(133)Iso*(Kは結晶、N*はキラルネマティック、Iso*は等方性、カッコ内の数字は冷却転移温度を示す)の条件下で、示差走査熱量測定(DSC)及び偏光顕微鏡によって決定された。一般に、高いせん断力によってN*−LCの螺旋構造が破壊され、これによって、螺旋構造をもたないネマティック相が生じる。しかしながら、キラルなネマティック液晶度は、(=2cmのシュレンク(Schlenke)管をテフロン(登録商標)加工された直径1cmの磁気棒を用いて80rpm攪拌する条件で維持されることが確認された。
【0059】
[実施例3]
ポリマーの特性
図3及び図4には、ポリマーの紫外/可視(UV/Vis)吸収スペクトルと、クロロホルム溶液中での円偏光二色性スペクトル(CD)が示されている。
図3に示されるように(R)−poly−1及び(S)−poly−1は、418nmのλmaxとポリマーの主鎖の共役系二重結合に対応する領域でのCDを示す。(R)−poly−1及び(S)−poly−1は、負のコットン効果によって鏡像CDを表示する。光学活性置換基を有するポリマーは、安定な光学活性を有する。これらの結果は、置換基の静的配座キラリティがポリマーの主鎖に対する動的配座キラリティとして軸性キラリティを引き出すことを示唆する。
これに対して、図4に示されるように本発明によるN*−LC反応場で調製された(R)−poly−2と(S)−poly−2は、800nmまでの長尾を有する紫外/可視吸収スペクトルにおいて436nmのλmaxを有する。クロロホルム溶液中で、380nmと538nmを極値にもつ436nmの吸収帯に関連する分裂型CDを示した。
【0060】
*−LC物質(R)−1及び(S)−1は、UV領域でCDを示した。(R)−poly−2と(S)−poly−2間の期待される鏡像関係は、3のコットン効果が短波長((R)−1、CD(CHCl3):λmax(Δε)=308(+0.51);(S)−
1、CD(CD(CHCl3):λmax(Δε)=308(−0.49))のみで観測さ
れるため、この重合における溶媒として用いられたキラルな化合物によるものではない。N*−LC反応場で合成されたポリマーは、光学活性置換基をもたないポリマーに対してさえも、等方性クロロホルム溶液中で光学活性構造を有する。この結果は、ポリマー主鎖のキラル構造が、恐らく、軸性キラリティによって安定であることを示唆している。重合の際に展開されたこの構造は、溶液への溶解、洗浄後でさえも保護された。これは、ベンゼン環の2位に結合するエステル基の立体障害によるものであり、これがポリマーの立体配座を安定化させる。
【0061】
また図5には(R)−poly−2と(S)−poly−2のPL、CPLスペクトルとgem値が示されている。
(R)−と(S)−poly−1は、クロロホルム溶液中で500nmの円偏光ルミネセンス(CPL)を示し、それぞれ、励起波長380nmで+8.6×10-4と−1.1×10-3のgem値を有する(データ提示なし)。発光の円偏光度は、gem=2(IL−IR)/(IL+IR)によって定義付けられる。ポリマーは約530nmの光ルミネセンスと、(R)−poly−1が540nm中心、(S)−poly−1が547nm中心のCPFと、を表示する。
【0062】
(R)−と(S)−poly−2もまた、クロロホルム溶液中でCPLを示す(励起波長:370nm)。図5に示されるように、ポリマーは逆のCPL符合、即ち、(R)−poly−2が、gem=+2.48×10-4であり、(S)−poly−2が、gem=−3.2×10-4を示し、ここで、DC(直流)とAC(交流)の値は、蛍光とCPLをそれぞれ表す。200rpmの激しい撹拌下での重合によって、CD測定においてまったくコットン効果を示さないポリマーが生成され、過大なせん断力によりN*−LCの螺旋構造損失の原因となり、結果的に、ポリマーがN−LC媒体中で成長した。
【0063】
図6には、室温における(R)−及び(S)−poly−2のクメン溶液中での高温処理を示している。(a)は未処理の(S)−poly−2、(b)は95℃1時間の加熱処理をした(S)−poly−2、(c)は150℃1時間の加熱処理をした(S)−poly−2、(d)は未処理の(R)−poly−2、(e)は95℃1時間の加熱処理をした(R)−poly−2、(f)は150℃1時間の加熱処理をした(R)−poly−2を示している。クメンは沸点が高いため、ポリマーを高温処理することによって分子の溶液内での高速回転が激しくなり、ラセミ化することが期待される。
等方性溶液における高温処理は、高温でのポリマーの隣接単位間での部分的なラセミ化によるCD強度の変化をもたらした。ポリマーのコットン効果は、150℃1時間の加熱処理によって失われた。(R)−及び(S)−poly−2は、クロロホルム溶液におけるものと比較して、非常に強いCDシグナルを示したことは注目に値する。これは、クメン中でのポリマー凝集現象によるものと思われる。溶媒効果は、しばしば溶媒の誘電効果に帰因する。(R)−及び(S)−poly−2は、CDにおけるソルバトクロミズムを示す。
【0064】
このように合成されたポリマーは、これらのキラリティによって図4及び図5に示されるようなCDとCPLを示した。キラルな置換基をもたないポリマー(R)−及び(S)−poly−2のキラリティは、重合の間にキラルなLC反応場によって生成された空間的な不斉配座に帰因すると考えられる。
【0065】
このように、本発明によれば、キラル触媒及びキラルモノマーを使用することなく、キラルポリマーを簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明による重合系のモデル1及び2を示した概念図である。
【図2】本実施例に用いたキラルネマティック液晶のDSCを示したグラフである。
【図3】本実施例における比較例のポリマー(2.0×10-5M)のクロロホルム溶液におけるUV/Vis及びCDスペクトルを示すグラフである。
【図4】本実施例のポリマー(2.0×10-5M)のクロロホルム溶液におけるUV/Vis及びCDスペクトルを示すグラフである。
【図5】本実施例のポリマーのクロロホルム溶液におけるPL,CPLスペクトル及びgem値を示したグラフである。
【図6】クメン溶液中の高温処理による本実施例のポリマーの各温度におけるCDスペクトルを示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キラル触媒及びキラルモノマーを用いることなく、液晶相が維持される温度でキラルネマティック液晶を溶媒として用いてアキラルモノマーを重合し、キラルポリマーを得ることを特徴とするキラルポリマーの製造方法。
【請求項2】
パラジウム触媒又はニッケル触媒を使用することを特徴とする請求項1記載のキラルポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記アキラルモノマーが、嵩高い置換基を有するアキラルモノマーであることを特徴とする請求項1又は2記載のキラルポリマーの製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の製造方法により得られたキラルポリマー。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2006−131758(P2006−131758A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322364(P2004−322364)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】