説明

キラル液晶ポリマーマーキング

液晶ポリマーマーキングは、基材に第1のキラル液晶前駆体組成物を塗布するステップ、該組成物を加熱して第1のキラル液晶状態にするステップ、前記第1の組成物の少なくとも1つの部位に第2のキラル液晶前駆体組成物を塗布するステップ、該少なくとも1つの部位を加熱して第2のキラル液晶状態にするステップ、ならびに続いて、得られた製品を硬化および/または重合するステップを含む方法により得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、その開示全体を参照により本明細書に明白に組み込む2009年12月8日出願の米国仮出願第61/267,668号の恩典を主張するものである。
【0002】
本発明は、キラルネマチック(コレステリックとも呼ばれる)液晶ポリマーに基づくマーキングに関する。本発明はまた、キラルネマチック液晶層が改質剤を用いて局所的または選択的に(1つまたは複数の部位が)改質されるキラルネマチック液晶フィルムの改質方法に関する。
【背景技術】
【0003】
大量生産品が個別アイテムベースではなくロットベースで扱われる場合、該製品の偽造および市場迂回が容易になる。そのような場合、偽造または迂回された製品はサプライチェーンに容易に導入される。製造業者および小売業者は、そのような偽造または迂回された(並行輸入または密輸された)製品とそれらの元の製品とを販売される個々の単位のレベルで見分けられる立場にありたいと考えている。
【0004】
偽造を防止するためにマーキングが現在広く使用されており、例えば、視角依存色を示す「光学的に可変の」特徴が認証手段として当技術分野において提案されてきた。これらの中には、ホログラム(その開示全体を参照により本明細書に組み込むRudolf L.van Renesse、「Optical Document Security」第2版、1998年、第10章を参照)および光学薄膜セキュリティデバイス(同上、第13章)がある。
【0005】
偽造を防止するための別のタイプのマーキングは、視角依存色を示すコレステリック液晶である。白色の光を照射すると、コレステリック液晶構造は所定の色(所定の波長範囲)の光を反射し、その色は、利用する材料に依存し、一般に観測の角度およびデバイスの温度により変動する。その前駆材料自体は無色であり、観察される色(所定の波長範囲)は、所与の温度で液晶材料がとるコレステリック螺旋構造での物理的な反射作用のみに起因するものである(その開示全体を参照により本明細書に組み込むJ.L.Fergason、Molecular Crystals、第1巻、293〜307頁(1966年)を参照)。特に、液晶材料(コレステリック液晶ポリマー(CLCP))においては、コレステリック螺旋構造が重合を介して所定の状態で「凍結」されており、したがって温度非依存性となっている。
【0006】
キラルネマチック液晶相は、一般に、分子が互いに対してわずかな角度で整列するように働く分子間力を生み出すキラルドーパントを含むネマチックメソゲン分子からなる。その結果、各層のダイレクターがその上下に対してねじれている非常に薄い2−Dネマチック様層の積重ねとして可視化することができる構造が形成される。キラルネマチック液晶相の重要な特徴はピッチpである(図1を参照)。ピッチpは、ダイレクターが螺旋において完全に1回転するのに必要な(垂直)距離として定義されている。
【0007】
キラルネマチック相の螺旋構造の特徴的な性質は、その波長が特定の範囲に入る光を選択的に反射する能力である。この範囲が可視スペクトルの一部と重複する場合、観察者が有色の反射を知覚することとなる。この範囲の中心は、その材料の平均屈折率を乗じたピッチとほぼ等しい。ピッチ長さを変更する連続層間のダイレクター配向の段階的変化が温度に依存し、それにより、反射された光の波長が温度の関数として変化するため、ピッチに対して影響を有するパラメーターの1つは温度である。分子の温度を増大し、したがって、分子に多くの熱エネルギーを付与することによりダイレクターが変化する角度を大きくし、それによりピッチを狭めることができる。同様に、分子の温度を低下することによりキラルネマチック液晶のピッチ長さが増大する。液晶ポリマーおよび液晶相の他の定義は、その開示全体を参照により本明細書に組み込むM.Baron、Pure Appl.Chem.,2001年、第73巻、第5号、845〜895頁で見られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
キラル液晶ポリマーフィルムのセキュリティのレベルを高めるために思い浮かぶ第1のアイディアは、パターン、証印またはバーコードの形態のコードを液晶ポリマーフィルムに重畳することである。しかし、偽造者がコードを改ざんしてコードを手動で液晶ポリマーフィルムに適用するリスクが常にある。
【0009】
この問題を克服するための第2の可能性は、液晶ポリマーフィルム内にコードを直接挿入することである。例えば、その開示全体を参照により本明細書に組み込む米国特許第6,207,240号は、視角依存性の反射色を有し、特定の吸収色を示す吸収タイプの顔料をさらに含むコレステリック液晶ポリマー(CLCP)のエフェクトコーティングについて記載している。シンボルまたはテキストなどのマーキングは、レーザー照射によりCLCPコーティング内に生成される。レーザー光線により照射された部分のCLCP材料が炭化する。結果的に、CLCPがコーティングされた基材の色、またはCLCPに組み込まれた吸収顔料の色が、照射された部分で可視となる。しかし、該方法は、マーキングが可視となるように材料を炭化するために高出力レーザーを必要とする。
【0010】
その開示全体を参照により本明細書に組み込むUS 2006/0257633 A1で別の可能性が記載されており、その方法は、液晶ポリマーだけではなくポリマー全般に適用される。該方法は、ポリマー基材の表面の所定の領域に浸透物質を適用して、浸透物質が適用されたポリマー基材の表面と超臨界流体とを接触させて、ポリマー基材に浸透物質を浸透させるステップからなる。該方法により、選択的に(部分的に)ポリマーの表面の一部を改質することが可能となる。しかし、多数のアイテムの高速でのマーキングが必要とされる工業プロセスに関しては、該方法は複雑であり、実施するには費用がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、液晶ポリマーマーキングを提供する。該マーキングは、以下の順番で、
(i)(固体)基材の少なくとも1つの表面に第1のキラル液晶前駆体組成物を塗布するステップと、
(ii)塗布した第1の組成物を加熱して第1のキラル液晶状態にするステップと、
(iii)塗布した第1の組成物の1つまたは複数の部位(領域)に(少なくとも1種の)第2のキラル液晶前駆体組成物を塗布するステップと、
(iv)該1つまたは複数の部位の少なくとも1つを加熱して第2のキラル液晶状態にするステップと、
(v)塗布した第1および第2の組成物の硬化および重合ステップの少なくとも一方と、
を含む方法により得ることができる。
【0012】
一態様において、第1および第2のキラル液晶前駆体組成物の一方(特に、少なくとも第1の組成物)または両方(好ましくは両方)は、加熱時にキラル液晶前駆体組成物のコレステリック状態を引き起こすことができる(i)1つまたは複数の(例えば2種、3種、4種、5種以上、特に、少なくとも2種の)異なるネマチック化合物Aおよび(ii)1つまたは複数の(例えば、2種、3種、4種、5種以上の)異なるキラルドーパント化合物Bを含み得る。さらに、1種または複数のネマチック化合物Aおよび1種または複数のキラルドーパント化合物Bは、いずれも、少なくとも1つの重合可能な基を含む少なくとも1種の化合物を含み得る。例えば、1種または複数のネマチック化合物Aの全ておよび1種または複数のキラルドーパント化合物Bの全ては、少なくとも1つの重合可能な基を含み得る。少なくとも1つの重合可能な基は、例えば、遊離ラジカル重合に関与することができる基、特に、(好ましくは活性化した)不飽和炭素−炭素結合を含む基、例えば、式H2C=CH−C(O)−の基などを含み得る。
【0013】
本発明のマーキングの別の態様において、第1および第2のキラル液晶前駆体組成物(特に、第1の組成物)の少なくとも一方(好ましくは両方)は、少なくとも1種の式(I):
【0014】
【化1】

のキラルドーパント化合物Bを含むことができ、
式中、
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立してC1〜C6アルキルおよびC1〜C6アルコキシを示し、
1およびA2は、それぞれ独立して式(i)〜(iii):
(i)−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2
(ii)−C(O)−D1−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2
(iii)−C(O)−D2−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2
の基を示し、
1は、式
【0015】
【化2】

の基を示し、
2は、式
【0016】
【化3】

の基を示し、
m、n、o、p、q、r、s、およびtは、それぞれ独立して0、1、または2を示し、
yは0、1、2、3、4、5、または6を示し、
yが0の場合、zは0であり、yが1〜6の場合、zは1である。
【0017】
本発明のマーキングのさらに別の態様において、第1のキラル液晶前駆体組成物および第2のキラル液晶前駆体組成物は同一でもよい。あるいは、第1および第2のキラル液晶前駆体組成物は互いに異なっていてもよい。例えば、第2のキラル液晶前駆体組成物は、第2の組成物が1種または複数のキラルドーパント化合物Bの少なくとも1種を第1の組成物中の同じキラルドーパント化合物の濃度とは異なる濃度で含むという点で少なくとも、および/または、第2の組成物が第1の組成物中に存在する1種または複数のキラルドーパント化合物Bのいずれとも異なる少なくとも1種のキラルドーパント化合物Bを含むという点で少なくとも、第1のキラル液晶前駆体組成物とは異なっていてもよい。
【0018】
本マーキングのさらなる態様において、第2のキラル液晶前駆体組成物は、電磁スペクトルの可視または不可視領域で吸収する少なくとも1種の顔料および/または染料をさらに含むことができ、ならびに/あるいは少なくとも1種の発光顔料および/または染料をさらに含むことができる。
【0019】
本発明のマーキングの別の態様において、該方法の段階(ii)は、塗布した組成物を約55℃〜約150℃の温度、例えば、約55℃〜約100℃、または約60℃〜約100℃まで加熱することを含むことができ、および/または該方法の段階(iv)は、該1つまたは複数の部位の少なくとも1つを約55℃〜約150℃の温度、例えば、約55℃〜約100℃、または約60℃〜約100℃まで加熱することを含むことができる。
【0020】
さらなる態様において、該方法の段階(i)および/または段階(iii)は、連続インクジェット印刷および/またはドロップオンデマンドインクジェット印刷および/またはスプレーコーティングおよび/またはバルブジェット印刷による第1または第2のキラル液晶前駆体組成物の塗布(例えば、付着)を含み得る。
【0021】
別の態様において、該方法の段階(iii)の直後に、該1つまたは複数の部位の表面の上に、好ましくは該表面に対して(実質的に)平行に空気流を通すことができる。
【0022】
さらに別の態様において、本発明のマーキングは、1次元バーコード、スタックド1次元バーコード、2次元バーコード、3次元バーコード、およびデータマトリックスの1種または複数から選択されるコードを表す画像、写真、ロゴ、証印、またはパターンの少なくとも1種の形態とすることができる。
【0023】
本発明は、その様々な態様を含めた上記の本発明のマーキングを含む(例えば、その表面に担持する)基材も提供する。
【0024】
該基材の一態様において、該マーキングは、セキュリティの要素、認証(authenticity)の要素、識別の要素、ならびにトラッキングおよびトレーシングの要素の少なくとも1つとしての機能を果たし得る。
【0025】
別の態様において、該基材は、身分証明書、ラベル、包装、銀行券、機密文書、旅券、印紙、インク転写フィルム、および反射フィルムの少なくとも1種であるか、またはそれらを含むことができる。
【0026】
本発明は、熱を加えるとセキュリティインクのコレステリック状態を引き起こすことができる(i)1種または複数のネマチック化合物Aおよび(ii)1種または複数のキラルドーパント化合物Bを含むセキュリティインクも提供する。
【0027】
一態様において、該セキュリティインクは、少なくとも1種の上記式(I)のキラルドーパント化合物Bを含み得る。
【0028】
本発明は、基材に液晶ポリマーマーキングを設ける方法も提供する。該方法は、以下の順番で、
(i)(固体)基材の少なくとも1つの表面に第1のキラル液晶前駆体組成物を塗布するステップと、
(ii)塗布した第1の組成物を加熱して第1のキラル液晶状態にするステップと、
(iii)塗布した第1の組成物の1つまたは複数の部位(領域)に(少なくとも1種の)第2のキラル液晶前駆体組成物を塗布するステップと、
(iv)該1つまたは複数の部位の少なくとも1つを加熱して第2のキラル液晶状態にするステップと、
(v)塗布した第1および第2の組成物の硬化および重合ステップの少なくとも一方と
を含む。
【0029】
本発明は、(例えば、その少なくとも1つの(外側の)表面に)マーキングを含む基材も提供する。該マーキングは、第1の光学的性質を有する第1のキラル液晶ポリマーの層またはフィルムを含む。該層またはフィルムは、その少なくとも1つの部位(領域)に第1の光学的性質とは異なる少なくとも1種の第2の光学的性質を有する第2の液晶ポリマーを含む。
【0030】
本発明は、本発明の代表的な実施形態の非限定的な例として複数の図面を参照しながら以下の詳細な記述でさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ネマチック、スメチックおよびコレステリック液晶を例示する概略図である。
【図2】第1のキラル液晶ポリマー、第2のキラル液晶ポリマーのスペクトル反射率および合わせた両方のポリマーのスペクトル反射率を例示する図である。
【図3】2つの異なる角度から見た本発明のマーキングの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書において示す細目は一例として示すものであり、本発明の実施形態の例示的な議論のためのものでしかなく、本発明の原理および概念的態様の最も有用で容易に理解される説明であると考えられるものを提供するためのものである。この点において、本発明の基本的理解のために必要な程度より詳細に本発明の構造的詳細を示す努力はしていないが、図面と共に説明を読むことにより本発明の複数の形態を実際に具体化する方法が当業者には明らかとなる。
【0033】
本発明において使用するための基材は特に制限されておらず、様々なタイプのものとすることができる。該基材は、例えば、金属(例えば、様々なアイテム、例えば、飲料または食料品などを保持するための缶などの容器の形態のもの)、光学繊維、織物、コーティング、およびそれらの等価物、プラスチック材料、ガラス(例えば、様々なアイテム、例えば、飲料または食料品などを保持するためのビンなどの容器の形態のもの)、厚紙、包装、紙、およびポリマー材料の1種または複数から(本質的に)なるか、またはそれらを含む。これらの基材材料が、もっぱら、本発明の範囲を限定することなく説明するために示すものであることを指摘しておく。該基材は、制限された多孔度を有することが好ましい(例えば、実質的に無孔でもよい)。
【0034】
該基材は、さらに有益なことに、前駆体組成物が塗布される表面またはバックグラウンドが暗いかまたは黒色である。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、暗いかまたは黒色のバックグラウンドの場合、コレステリック液晶材料により透過される光がバックグラウンドによりほとんど吸収され、そのため、残留するバックグラウンドからの後方散乱によってコレステリック液晶材料自体の反射の肉眼による知覚が妨害されることはないと推測される。対照的に、明るいかまたは白色の表面またはバックグラウンドを有する基材では、コレステリック液晶材料の反射色は、バックグラウンドからの強い後方散乱が原因で、黒色または暗いバックグラウンドと比較して見えにくい。しかし、明るいかまたは白色のバックグラウンドの場合でさえ、円偏光フィルターがそのキラル螺旋構造に従って2つの可能な円偏光成分の一方のみを選択的に反射するため、円偏光フィルターを用いてコレステリック液晶材料を常に識別することができる。
【0035】
好適な基材の非限定的な例としては、黒色のグラビアインクで暗色化された(ワニスでオーバープリントされていない)厚紙、黒色のオフセットインクで暗色化された(ワニスでオーバープリントされていない)厚紙、任意の黒色のインクで暗色化され水ベースのワニスでオーバープリントされた厚紙、任意の黒色のインクで暗色化され溶媒ワニスでオーバープリントされた厚紙、黒色のコーティングで処理された金属が挙げられる。一般に、そのコーティングがキラル液体前駆体組成物および改質剤において使用する溶媒(複数可)に可溶性ではないか、またはわずかに可溶性の任意の(好ましくは無孔で好ましくは黒色の)基材(必ずしも平坦ではなくてもよく、でこぼこしていてもよい)が、本発明の目的に好適な基材である。
【0036】
本発明のマーキングを作製するのに使用し、基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に塗布する(例えば、付着させる)第1のキラル液晶前駆体組成物は、該組成物のコレステリック状態を引き起こすことができる(i)1種または複数のネマチック化合物Aおよび(ii)1種または複数のコレステリック(すなわち、キラルドーパント)化合物B(コレステロールを含む)の混合物を含む。得ることができるコレステリック状態のピッチは、ネマチックおよびコレステリック化合物の相対比に左右される。一般に、本発明において使用するためのキラル液晶前駆体組成物中の1種または複数のネマチック化合物Aの(全)濃度は、1種または複数のコレステリック化合物Bの(全)濃度の約5〜約20倍である。該1種または複数のコレステリック化合物は結晶化する傾向にあり、それにより、特定の光学的性質を有する所望の液晶状態を得ることが不可能になるため、一般に、高濃度のコレステリック化合物を有する前駆体組成物は(多くの場合可能ではあるが)望ましくない。
【0037】
本発明において利用する第1および第2のキラル液晶前駆体組成物における使用に適したネマチック化合物Aは当技術分野において知られており、単独で(すなわち、コレステリック化合物なしで)使用する場合、該化合物は、その複屈折を特徴とする状態で並ぶ。本発明における使用に適したネマチック化合物の非限定的な例は、例えば、WO93/22397、WO95/22586、EP−B−0847432、米国特許第6,589,445号、US2007/0224341A1およびJP2009−300662Aで記載されている。これらの文書の開示全体は参照により本明細書に組み込む。
【0038】
本発明において使用するための好ましいクラスのネマチック化合物は、1分子当たりに、互いに同一であるかまたは異なっている1つまたは複数(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重合可能な基を含む。重合可能な基の例としては、遊離ラジカル重合に関与することができる基、特に、炭素−炭素二重または三重結合を含む基、例えば、アクリレート部分、ビニル部分またはアセチレン部分などが挙げられる。重合可能な基として特に好ましいのはアクリレート部分である。
【0039】
本発明において使用するためのネマチック化合物は、1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ)の場合により置換された芳香族基、好ましくはフェニル基をさらに含み得る。芳香族基の任意選択の置換基の例としては、式(I)のキラルドーパント化合物のフェニル環上の置換基の例として本明細書に記載しているもの、例えば、アルキルおよびアルコキシ基などが挙げられる。
【0040】
ネマチック化合物A中の重合可能な基およびアリール(例えば、フェニル)基を結合するために場合により存在し得る基の例としては、本明細書において式(I)のキラルドーパント化合物B(以下で記載する式(IA)および式(IB)のものを含めた)に関して説明しているものが挙げられる。例えば、該ネマチック化合物Aは、場合により置換されたフェニル基に一般に結合している式(I)(ならびに式(IA)および(IB))中のA1およびA2の意味として上で示した式(i)〜(iii)の1つまたは複数の基を含み得る。本発明における使用に適したネマチック化合物の非限定的な具体例は、以下の各実施例で示す。
【0041】
本発明において使用するための1種または複数のネマチック化合物A(さらに1種または複数のキラルドーパント化合物B)は、重合可能な基を全く含まない化合物を実質的に含まないことが好ましい(すなわち、重合可能な基を全く有していない化合物を、仮に含むとしても、単に不純物として含むことが好ましい)。また、該ネマチック化合物がセルロース誘導体とは異なることが好ましい。
【0042】
本発明において使用するための1種または複数のコレステリック(すなわち、キラルドーパント)化合物Bは、少なくとも1つの重合可能な基を含むことが好ましい。
【0043】
上記の通り、好適な1種または複数のキラルドーパント化合物Bの例としては、式(I):
【0044】
【化4】

(式中、
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立してC1〜C6アルキルおよびC1〜C6アルコキシを示し、
1およびA2は、それぞれ独立して式(i)〜(iii):
(i)−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2
(ii)−C(O)−D1−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2
(iii)−C(O)−D2−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2
の基を示し、
1は、式
【0045】
【化5】

の基を示し、
2は、式
【0046】
【化6】

の基を示し、
m、n、o、p、q、r、s、およびtは、それぞれ独立して0、1、または2を示し、
yは0、1、2、3、4、5、または6を示し、
yが0の場合、zは0であり、yが1〜6の場合、zは1である)
のものが挙げられる。
【0047】
一態様において、1種または複数のキラルドーパント化合物Bは、式(IA):
【0048】
【化7】

(式中、
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立してC1〜C6アルキルおよびC1〜C6アルコキシを示し、
1およびA2は、それぞれ独立して式(i)〜(iii):
(i)−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2
(ii)−C(O)−D1−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2
(iii)−C(O)−D2−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2
の基を示し、
1は、式
【0049】
【化8】

の基を示し、
2は、式
【0050】
【化9】

の基を示し、
m、n、o、p、q、r、s、およびtは、それぞれ独立して0、1、または2を示し、
yは0、1、2、3、4、5、または6を示し、
yが0の場合、zは0であり、yが1〜6の場合、zは1である)
の1種または複数のイソマンニド誘導体を含み得る。
【0051】
式(IA)の化合物(および式(I)の化合物)の一実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立してC1〜C6アルキルを示す。代替実施形態において、式(IA)(および式(I))中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立してC1〜C6アルコキシを示す。
【0052】
式(I)および式(IA)の化合物の別の実施形態において、A1およびA2は、それぞれ独立して式−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2の基を示し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立してC1〜C6アルキルを示し、m、n、o、およびpは、それぞれ独立して0、1、または2を示す。さらに別の実施形態において、式(I)および式(IA)中のA1およびA2は、それぞれ独立して式−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2の基を示し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立してC1〜C6アルコキシを示し、m、n、o、およびpは、それぞれ独立して0、1、または2を示す。
【0053】
式(IA)(および式(I))の化合物の別の実施形態において、A1およびA2は、それぞれ独立して式−C(O)−D1−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2および/または式−C(O)−D2−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2の基を示し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立してC1〜C6アルキルを示す。代替実施形態において、式(IA)(および式(I))中のA1およびA2は、それぞれ独立して式−C(O)−D1−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2の基および/または式−C(O)−D2−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2の基を示し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立してC1〜C6アルコキシを示す。
【0054】
別の態様において、1種または複数のキラルドーパント化合物Bは、式(IB):
【0055】
【化10】

(式中、
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立してC1〜C6アルキルおよびC1〜C6アルコキシを示し、
1およびA2は、それぞれ独立して式(i)〜(iii):
(i)−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2
(ii)−C(O)−D1−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2
(iii)−C(O)−D2−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2
の基を示し、
1は、式
【0056】
【化11】

の基を示し、
2は、式
【0057】
【化12】

の基を示し、
m、n、o、p、q、r、s、およびtは、それぞれ独立して0、1、または2を示し、
yは0、1、2、3、4、5、または6を示し、
yが0の場合、zは0であり、yが1〜6の場合、zは1である)
により表される1種または複数のイソソルビド誘導体を含み得る。
【0058】
式(IB)の化合物の一実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立してC1〜C6アルキルを示す。代替実施形態において、式(IB)中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立してC1〜C6アルコキシを示す。
【0059】
式(IB)の化合物の別の実施形態において、A1およびA2は、それぞれ独立して式−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2の基を示し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立してC1〜C6アルキルを示し、m、n、o、およびpは、それぞれ独立して0、1、または2を示す。さらに別の実施形態において、式(IB)中のA1およびA2は、それぞれ独立して式−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2の基を示し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立してC1〜C6アルコキシを示し、m、n、o、およびpは、それぞれ独立して0、1、または2を示す。
【0060】
式(IB)の化合物の別の実施形態において、A1およびA2は、それぞれ独立して式−C(O)−D1−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2および/または式−C(O)−D2−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2の基を示し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立してC1〜C6アルキルを示す。代替実施形態において、式(IB)中のA1およびA2は、それぞれ独立して式−C(O)−D1−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2の基および/または式−C(O)−D2−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2の基を示し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立してC1〜C6アルコキシを示す。
【0061】
好ましい実施形態において、式(I)、(IA)および(IB)中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のアルキルおよびアルコキシ基は、3、4、6または7個の炭素原子、特に、4または6個の炭素原子を含み得る。
【0062】
3または4個の炭素原子を含むアルキル基の例としては、イソプロピルおよびブチルが挙げられる。6または7個の炭素原子を含むアルキル基の例としては、ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルペンチル、および2,3−ジメチルペンチルが挙げられる。
【0063】
3または4個の炭素原子を含むアルコキシ基の例としては、ブタ(but)−1−オキシ、ブタ(but)−2−オキシ、およびtert−ブトキシが挙げられる。6または7個の炭素原子を含むアルコキシ基の例としては、ヘキサ−1−オキシ、ヘキサ−2−オキシ、ヘキサ−3−オキシ、2−メチルペンタ−1−オキシ、2−メチルペンタ−2−オキシ、2−メチルペンタ−3−オキシ、2−メチルペンタ−4−オキシ、4−メチルペンタ−1−オキシ、3−メチルペンタ−1−オキシ、3−メチルペンタ−2−オキシ、3−メチルペンタ−3−オキシ、2,2−ジメチルペンタ−1−オキシ、2,2−ジメチルペンタ−3−オキシ、2,2−ジメチルペンタ−4−オキシ、4,4−ジメチルペンタ−1−オキシ、2,3−ジメチルペンタ−1−オキシ、2,3−ジメチルペンタ−2−オキシ、2,3−ジメチルペンタ−3−オキシ、2,3−ジメチルペンタ−4−オキシ、および3,4−ジメチルペンタ−1−オキシが挙げられる。
【0064】
本発明において使用するための式(I)のキラルドーパント化合物Bの非限定的な具体例は、以下の実施例で示す。
【0065】
1種または複数のキラルドーパント化合物Bは、通常、該組成物の全重量に対して約0.1重量%〜約30重量%、例えば、約0.1%〜約25%、または約0.1重量%〜約20重量%の全濃度で存在する。最良の結果は、該前駆体組成物の全重量に対して3重量%〜10重量%、例えば、5重量%〜8重量%の濃度により得られる場合が多い。1種または複数のネマチック化合物Aは、該前駆体組成物の全重量に対して約30重量%〜約50重量%の濃度で存在する場合が多い。
【0066】
本発明のマーキングにおいて、第1の前駆体組成物(また好ましくは第2の前駆体組成物)の塗布(例えば、付着)は、印刷技術、特に、連続インクジェット印刷、ドロップオンデマンドインクジェット印刷、およびスプレーコーティングの少なくとも1種から選択される印刷技術により実施することが好ましい。当然のことながら、印刷の当業者により知られている他の印刷技術も使用することができる。好ましい実施形態においてはインクジェット印刷を利用する。検査ラインおよび印刷機でのナンバリング、コーディングおよびマーキング用途に一般に使用される産業用インクジェットプリンターが特に好適である。好ましいインクジェットプリンターとしては、単一ノズル連続インクジェットプリンター(ラスターまたはマルチ偏向型プリンターとも呼ばれる)およびドロップオンデマンドインクジェットプリンター、特にバルブジェットプリンターが挙げられる。適用した前駆体組成物(特に、第1の前駆体組成物)の厚さは、通常、約3〜約20μm、例えば、約5〜約15μmである。
【0067】
特に、該前駆体組成物を上述の印刷技術、例えば、インクジェット印刷により塗布する場合、該組成物は、通常、利用する適用(印刷)技術に適した値までその粘度を調整するための溶媒を含む。インクジェット印刷インク用の一般的粘度値は、25℃で約4〜約30mPa.sの範囲である。好適な溶媒は当業者に知られている。その非限定的な例としては、低粘度でわずかに極性および非プロトン性の有機溶媒、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、酢酸エチル、エチル3−エトキシプロピオネート、トルエンおよびそれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0068】
さらに、特に、該前駆体組成物を連続インクジェット印刷により塗布する場合、本発明において使用するための前駆体組成物は、通常、少なくとも1種の導電剤(例えば、塩)も含む。導電剤は、該組成物において無視できない溶解度を有する。好適な導電剤の非限定的な例としては、塩、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩(例えば、テトラブチルアンモニウムニトレート、テトラブチルアンモニウムペルクロレートおよびテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート)、カリウムチオシアネートなどのアルカリ金属チオシアネートおよびリチウムペルクロレートなどのアルカリ金属ペルクロレートなどが挙げられる。導電剤は、必要とされるまたは望ましい導電率を達成するのに十分な濃度で存在する。当然のことながら、2種以上の異なる導電剤(塩)の混合物を使用することができる。
【0069】
本発明において使用するためのキラル液晶前駆体組成物をUV放射により硬化/重合する場合、該組成物は、該組成物において無視できない溶解度を示す少なくとも1種の光開始剤も含む。多くの好適な光開始剤の非限定的な例としては、α−ヒドロキシケトン、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンならびに1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、および2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノンの1種または複数との混合物(例えば、約1:1)など;フェニルグリオキシレート、例えば、メチルベンゾイルホルメートおよびオキシ−フェニル−酢酸2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステルとオキシ−フェニル−酢酸2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルとの混合物など;ベンジルジメチルケタール、例えば、アルファ,アルファ−ジメトキシ−アルファ−フェニルアセトフェノンなど;α−アミノケトン、例えば、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンおよび2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノンなど;ホスフィンオキシドおよびジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド誘導体;Cibaにより供給されているフェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル);さらにはLambsonにより供給されているSpeedcure ITX(CAS 142770−42−1)、Speedcure DETX(CAS 82799−44−8)、Speedcure CPTX(CAS 5495−84−1−2またはCAS 83846−86−0)などのチオキサントン誘導体が挙げられる。
【0070】
該前駆体組成物を紫外線の照射とは異なる方法、例えば、高エネルギー粒子(例えば、電子ビーム)、X線、ガンマ線等により硬化する場合、当然のことながら、光開始剤の使用は省くことができる。
【0071】
本発明において使用するためのキラル液晶前駆体組成物は、該組成物の特定の所望の性質を達成するのに好適および/または望ましい様々な他の任意選択の成分も含むことができ、一般に、該前駆体組成物の必要とされる性質にほとんど悪影響を及ぼさない任意の成分/物質を含むことができる。そのような任意選択の成分の非限定的な例は、樹脂、シラン化合物、(存在するならば)光開始剤用の増感剤等である。例えば、該組成物は、該組成物において無視できない溶解度を示す1種または複数のシラン化合物を含み得る。好適なシラン化合物の非限定的な例としては、式R123−Si−R4(式中、R1、R2、およびR3は独立して、合計で1〜約6個の炭素原子を有するアルコキシおよびアルコキシアルコキシを表し、R4はビニル、アリル、(C110)アルキル、(メタ)アクリルオキシ(C16)アルキル、およびグリシジルオキシ(C16)アルキルを表す)のものなどの場合により重合可能なシランなど、例えば、Evonikにより供給されているDynasylan(登録商標)ファミリーのビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリメトキシシラン、オクチルトリ−エトキシシラン、および3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0072】
1種または複数のシラン化合物の濃度は、前駆体組成物中に存在するならば、通常、該組成物の全重量に対して約0.5重量%〜約5重量%である。
【0073】
基材に本発明の第1のキラル液晶前駆体組成物を塗布(例えば、付着)した後、該前駆体組成物を、特定の光学的性質を有するキラル液晶状態にする。そのために、第1のキラル液晶前駆体組成物を加熱し、該組成物中に溶媒が含有されているならばそれを蒸発することにより、所望の第1のキラル液晶状態の昇位が生じる。溶媒を蒸発して第1の液晶状態の形成を促進するために使用する温度は、第1のキラル液晶前駆体組成物の成分に左右され、多くの場合、約55℃〜約150℃、例えば、約55℃〜約100℃、好ましくは約60℃〜約100℃の範囲である。好適な熱源の例としては、従来の加熱手段、特に、放射源、例えば、IRランプなどが挙げられる。多くの場合、約1秒〜約30秒間など、例えば、20秒以下、10秒以下、または5秒以下の加熱時間で十分である。
【0074】
「特定の光学的性質」という用語は、特定の波長範囲を反射する特定のピッチを有する液晶状態であると理解されたい。式(I)および関連する式のキラルドーパントを含有する前駆体組成物の利点は、加熱(および溶媒の蒸発)後に安定な液晶状態を迅速に生成する能力である。対照的に、先行技術(例えば、その開示全体を参照により本明細書に組み込むEP1299375、EP1669431、およびEP1339812を参照せよ)の前駆体組成物を用いた場合に加熱および溶媒の蒸発後に得られる液晶状態は、わずかな温度変化により容易に破壊される恐れがある場合が非常に多い。したがって、液晶状態の安定性を維持するために、後者の場合は、少なくとも部分的な硬化または重合プロセスにより液晶状態を凍結または固定することが必要である。前述の通り、液晶状態を凍結または固定すると、マーキング内でのコードまたはマーキングの生成が困難となる。対照的に、本発明のマーキングの作製方法においては、段階(v)の前に前駆体組成物の成分の硬化/重合を実施することはない。換言すると、硬化/重合プロセスは第1および第2のキラル液晶状態が達成された後にのみ実施する。
【0075】
第1のキラル液晶前駆体組成物の適用および第1のキラル液晶状態(例えば、層、パターンまたはフィルムの形態とすることができる)の形成後、第1のキラル液晶状態にある適用した第1の組成物の1つまたは複数の部分に(少なくとも1種の)第2のキラル液晶前駆体組成物を塗布する。第2のキラル液晶前駆体組成物は、第1のキラル液晶前駆体組成物が依然として加熱された状態(例えば、加熱操作の完了直後)である間に塗布してもよく、第1のキラル液晶前駆体組成物が少なくともある程度(例えば、実質的に室温まで)冷却された後に塗布してもよい。所望であれば、第1の前駆体組成物の冷却は、例えば、先に加熱した組成物に周囲空気を送風することなどの当業者に知られている手段により加速することができる。第2のキラル液晶前駆体組成物を冷却された状態の第1の前駆体組成物に塗布することにより、該マーキングの解像度を改善することができる。一方、該マーキングを作製するプロセス全体を可能な限り単純で迅速な様式で実施する場合は、第2のキラル液晶前駆体組成物を加熱操作の完了直後に塗布することが望ましい可能性がある。
【0076】
第1のキラル液晶状態にある第1のキラル液体前駆体組成物の1つまたは複数の部位に塗布されている第2のキラル液晶前駆体組成物は、第1のキラル液晶前駆体組成物と同じでも異なっていてもよい。さらに、第1のキラル液体前駆体組成物に関して上述したもの(例えば、成分、塗布方法等)の全ては、等しく例外なく第2のキラル液体前駆体組成物にも当てはまる。例えば、第1のキラル液晶前駆体組成物の場合と同様に、1種または複数のキラルドーパント化合物Bは、通常、第2のキラル液晶前駆体組成物中に第2の組成物の全重量に対して約0.1重量%〜約30重量%、例えば、約0.1%〜約25%、または約0.1重量%〜約20重量%の全濃度で存在する。また、1種または複数のネマチック化合物Aは、第2のキラル液晶前駆体組成物中に第2の前駆体組成物の全重量に対して約30重量%〜約50重量%の濃度で存在する場合が多い。
【0077】
第2のキラル液晶前駆体組成物が第1のキラル液晶前駆体組成物とは異なる場合、その1つまたは複数の違いは、例えば、これらの組成物中に存在する化合物AおよびBの1種または複数ならびに/あるいはこれらの化合物の1つまたは複数の濃度に関し得る。例えば、これらの組成物の間の1つまたは唯一の違いは、キラルドーパント化合物Bの1種または複数(または全て)が第1の組成物中の対応する濃度(複数可)とは異なる濃度(複数可)で第2の組成物中に存在することであり得る。さらに、第1および第2の組成物の間の1つまたは唯一の違いは、第1の組成物中の1種または複数のキラルドーパント化合物Bが上記式(I)および/または関連する式のものであり、第2の組成物中の1種または複数のキラルドーパント化合物Bの少なくとも1種が式(I)および/または関連する式とは異なることであり得る。例えば、第2の組成物中の1種または複数のキラルドーパント化合物Bの少なくとも1種は、例えば、その開示全体を参照により本明細書に組み込むEP−B−0847432、GB−A−2330139、および米国特許第6,589,445号に記載のイソソルビドまたはイソマンニド誘導体とすることができる。
【0078】
第1の特定の光学的性質を有する第1のキラル液晶状態にある第1のキラル液晶前駆体組成物の1つまたは複数の部位に第2のキラル液晶前駆体組成物を塗布(例えば付着)した後、第2の前駆体組成物を、第2の特定の光学的性質を有する第2のキラル液晶状態にする。そのために、第2のキラル液晶前駆体組成物が塗布されている1つまたは複数の部位の少なくとも一部を加熱し、該組成物中に溶媒が含有されているならばそれを蒸発することにより、所望の第2のキラル液晶状態の昇位が生じる。溶媒を蒸発して第2の液晶状態の形成を促進するために使用する温度は、第2のキラル液晶前駆体組成物の成分に左右され、多くの場合、約55℃〜約150℃、例えば、約55℃〜約100℃、好ましくは約60℃〜約100℃の範囲である。好適な熱源の例としては、従来の加熱手段、特に、放射源、例えば、IRランプなどが挙げられる。
【0079】
本発明のマーキングが、2つのキラルネマチック液晶層の単純な重畳と同一またはそれに匹敵するものではないことが理解されよう。このことにより、既存の先行技術に対する大きな違いおよび大きな利点が生じる。具体的には、基材に第1のキラル液晶前駆体組成物を付着させて第1のキラル液晶状態にした場合、この状態は、ピッチp1を特徴とする。同様に、塗布した第1の組成物の1つまたは複数の部位に第2のキラル液晶前駆体組成物を付着させて第2のキラル液晶状態にした場合、第2の状態は、ピッチp2(p1と同じでも異なっていてもよい)を特徴とする。この点において、本発明の方法の段階(iv)の後に得られ、段階(v)でさらに硬化/重合した製品は、ピッチp1を有する第1のキラル液晶状態およびピッチp2を有する第2のキラル液晶状態の重畳ではないことを指摘しておく。むしろ、第2のキラル液晶状態にされた第2のキラル液晶前駆体組成物を担持する部分は、p1およびp2とは異なるが幾分p1の性質に依存しているピッチp2’を有する。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、第1のキラル液晶状態が第2のキラル液晶状態の形成に対して影響を有することが推測される。第2のキラル液晶前駆体組成物での第1のキラル液晶状態の誘導により、第2のキラル液晶前駆体組成物にのみ基づいて期待されるキラル液晶状態とは異なる第2のキラル液晶状態が加速および促進される。このことにより、2つの異なるキラル液晶状態の2つの異なる層の単なる重畳をマーキングまたはコーディングとして開示している既存の先行技術に対する大きな違いおよび大きな利点が生じる。
【0080】
本発明のマーキングは、マーキングの製造業者にしか知られていない第1のキラル液晶前駆体組成物により制御される。様々な第1のキラル液晶前駆体組成物から多数の特定のマーキングおよびコーディングを生成し、生成されたマーキングまたはコーディングの全てを含有する特定のデータベースに保存することができる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、第2の前駆体組成物が第1のキラル液晶状態の非常に局所的で制御された再構成を開始することが推測される。本発明の方法は時間がかからず、産業上容易に実施することができ、複雑な手段を必要としないことにさらに留意されたい。
【0081】
塗布した第1の前駆体組成物の部位のうち、第2の前駆体組成物が塗布される部位は、通常、塗布した第1の前駆体組成物の全面積の約0.1%〜約99.9%である。該部分は、塗布した第1の前駆体組成物の全面積の少なくとも約1%、例えば、少なくとも約5%または少なくとも約10%および99%以下、例えば、95%以下または90%以下である場合が多い。
【0082】
本発明のマーキングは、(1D、2D、3D)コード、例えば、1次元バーコード、スタックド1次元バーコード、2次元バーコード、3次元バーコードおよび/またはデータマトリックスなどを表す画像、写真、ロゴ、証印、および/またはパターンの形態とすることができる。対応するマーキングの一例は図2で表している。
【0083】
当然のことながら、2種以上の第2の前駆体組成物(例えば、2種、3種以上の異なる第2の前駆体組成物)を使用すること、ならびにそれらを同時および/または連続的に、塗布した第1の前駆体組成物(例えば、適用した第1の前駆体組成物の様々な領域)に塗布することが可能である。例えば、第2の前駆体組成物を塗布すること、およびその後、異なる第2の前駆体組成物を、最初に塗布した第2の前駆体組成物が塗布されている領域(複数可)の少なくとも一部(さらには、場合により、最初に塗布した第2の前駆体組成物が塗布されていない1つまたは複数の部分)に塗布することも可能である。
【0084】
本発明のマーキングのセキュリティを強固なものにするために、第2のキラル液晶前駆体組成物は、電磁スペクトルの可視または不可視領域で吸収する1つまたは複数の顔料および/または染料をさらに含むことができ、ならびに/あるいは1つまたは複数の発光する顔料および/または染料をさらに含むことができる。電磁スペクトルの可視または不可視領域で吸収する好適な顔料および/または染料の非限定的な例としては、フタロシアニン誘導体が挙げられる。好適な発光顔料および/または染料の非限定的な例としては、ランタニド誘導体が挙げられる。顔料(複数可)および/または染料(複数可)の存在により、偽造に対する該マーキングのセキュリティが強化および増強される。当然のことながら、本発明において使用するための第2のキラル液晶前駆体組成物は、上で論じた成分に加えて、第2のキラル液晶前駆体組成物の必要とされる性質にほとんど悪影響を及ぼさない任意の他の成分/物質を含み得る。
【0085】
本発明のマーキングにおいて、第2の前駆体組成物の付着は、印刷技術、特に、連続インクジェット印刷、ドロップオンデマンドインクジェット印刷、バルブジェット印刷およびスプレーコーティングから選択される技術により、第1の液晶状態にある第1のキラル液晶前駆体組成物の1つまたは複数の部分において実施することが好ましい。特に、重合または部分的に重合された液晶に対してレーザーまたは抽出剤を使用する先行技術と比較した利点は、ほぼリアルタイムで生成されるマーキングの形成の速さおよび容易さである。上記印刷技術を使用する別の利点は、キラル液晶状態内で生成されるマーキングの精度および安定性である。この印刷技術を使用する別の利点は、ほぼリアルタイムで生成し変動することができるマーキングのほぼ無限の可能性である。好ましい実施形態においては、第2の前駆体組成物を塗布するためにインクジェット技術を使用する。検査ラインおよび印刷機でのナンバリングおよびコーディングおよびマーキング用途に一般に使用される産業用インクジェットプリンターが特に好適である。好ましいインクジェットプリンターは、単一ノズル連続インクジェットプリンター(ラスターまたはマルチ偏向型プリンターとも呼ばれる)およびドロップオンデマンドインクジェットプリンター、特にバルブジェットプリンターである。
【0086】
塗布したマーキングの解像度を高めるために、塗布した第1の前駆体組成物の1つまたは複数の部分への第2の前駆体組成物の塗布直後に、第1の前駆体組成物の表面の上に、好ましくはその表面に(実質的に)平行に、空気流を通すことが有益である場合が多い。空気流は、任意の手段、例えば、(産業用)空気乾燥器により生成することができる。空気流は、激しいものおよび/または高速のものではないことが好ましい。空気の温度は、通常、周囲温度(例えば、約20℃)であるが、多少低くても高くてもよく、例えば、最大で約60℃、最大で約40℃、または最大で約30℃でもよい。「第2の前駆体組成物の塗布直後」という表現は、第2の前駆体組成物の塗布の完了後の、遅延がない、例えば、約10秒以下、例えば、約5秒以下、約3秒以下、約2秒以下、または約1秒以下の期間内を意味することを意図したものである。
【0087】
本発明のマーキングは、最終的に、第2のキラル液晶状態にある第2の前駆体組成物の塗布により(1つまたは複数の部分で)局所的に改質された第1のキラル液晶状態にある組成物の硬化および/または重合により得られる。固定または硬化は、該前駆体組成物中に存在する重合可能な基の重合を誘発する紫外線の照射により実施することが好ましい。上述の先行技術に反して、本発明のマーキングは産業上容易に実施することができ、信頼性がある。
【0088】
図2は、第2のキラル液晶前駆体組成物が塗布された領域(複数可)の硬化製品のスペクトル反射率が、第1および第2の前駆体組成物が同一である場合でさえ、独立して測定した2種のキラル液晶前駆体組成物の2つのスペクトル反射率の合計ではないことを明白に証明している。
【0089】
本発明のマーキングの別の利点は、本発明の印刷プロセス中に本質的に存在する天然のランダムな変動を、複製することが事実上不可能な固有の識別子(「指紋」)として使用できることである。この点において、第2の前駆体組成物を塗布しない場合でさえ、キラル液晶状態にある硬化および/または重合された第1の前駆体組成物がマーキングとなることが理解されよう。換言すると、第2の前駆体組成物は、「マーキング内部/表面のマーキング」を生成する役割を果たす。
【0090】
本発明のマーキングは、例えば、セキュリティの特徴、認証の特徴、識別の特徴またはトラッキングおよびトレーシングの特徴に組み込むことができる。セキュリティの特徴の一例は、3D効果による顕在的な特徴である。
【0091】
以下の実施例は、本発明を限定することなく例示することを意図したものである。
【実施例】
【0092】
本発明のマーキングは以下の通り調製する。
【0093】
(1)第1のキラル液晶前駆体組成物の調製
キラル液晶前駆体組成物(1)を以下の通り調製した。上述の式(I)のキラルドーパント化合物B、すなわち、(3R,3aR,6R,6aR)−ヘキサヒドロフロ[3,2−b]フラン−3,6−ジイルビス(4−(4−(アクリロイルオキシ)−3−メトキシベンゾイルオキシ)−3−メトキシ−ベンゾエート)(7.5g)、ネマチック化合物A1、すなわち、安息香酸4−[[[4−[(1−オキソ−2−プロペン−1−イル)オキシ]ブトキシ]カルボニル]オキシ]−1,1’−(2−メチル−1,4−フェニレン)エステル(22.0g)、ネマチック化合物A2、すなわち、2−メチル−l,4−フェニレンビス(4−(4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ)−ベンゾエート)(14.0g)、およびアセトン(49.9g)を秤量してネジ蓋付きフラスコに入れ、その後、該フラスコをオーブンで加熱して茶色がかった溶液を得た。次いで、混合物にテトラブチルアンモニウムペルクロレート(0.6g)、リチウムペルクロレート(0.3g)、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(Ciba社のIrgacure 907(登録商標)、1.3g)、2,4−ジエチル−チオキサンテン−9−オン(0.7g)、およびビニルトリエトキシシラン(3.7g)を添加した。次いで、最終混合物を完全に溶解するまで撹拌または振とうするとキラル液晶前駆体組成物(1)が生じた。
【0094】
キラル液晶前駆体組成物(2)を以下の通り調製した。上述の式(I)のキラルドーパント化合物B、すなわち、(3R,3aR,6R,6aR)−6−(4−(4−(アクリロイルオキシ)−3−メトキシベンゾイルオキシ)−3−メトキシベンゾイルオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2−b]フラン−3−イル4−(4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイルオキシ)−3−メトキシベンゾエート(9.0g)、ネマチック化合物A1、すなわち、安息香酸4−[[[4−[(1−オキソ−2−プロペン−1−イル)オキシ]ブトキシ]カルボニル]オキシ]−1,1’−(2−メチル−1,4−フェニレン)エステル(16.0g)、ネマチック化合物A2、すなわち、2−メチル−1,4−フェニレンビス(4−(4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ)−ベンゾエート)(20.0g)、およびメチルエチルケトン(48.0g)を秤量してネジ蓋付きフラスコに入れ、その後、該フラスコをオーブンで加熱して茶色がかった溶液を得た。次いで、混合物にテトラブチルアンモニウムペルクロレート(0.5g)、リチウムペルクロレート(0.6g)、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(Ciba社のIrgacure 907(登録商標)、1.2g)、2−イソプロピル−チオキサンテン−9−オン(0.7g)、およびビニルトリエトキシシラン(4.0g)を添加した。次いで、最終混合物を完全に溶解するまで撹拌または振とうするとキラル液晶前駆体組成物(2)が生じた。
【0095】
(2)基材への第1のキラル液晶前駆体組成物の付着
次いで、キラル液晶前駆体組成物(1)または(2)を使用して、連続インクジェット印刷により暗いバックグラウンドを有する紙基材に平易なパターンを印刷した。
【0096】
(3)第1の前駆体組成物を第1のキラル液晶状態にする
IRランプへの約1〜5秒間(基材による)の曝露により平易なパターンからキラル液晶状態を形成した。
【0097】
(4)付着した第1の組成物の1つまたは複数の部分への第2のキラル液晶前駆体組成物の塗布
次いで、第1のキラル液晶状態の付着した前駆体組成物の上にコードまたは図柄を連続インクジェットプリンターにより印刷した。印刷プロセスの完了後約1秒以内に、印刷表面に対して平行に空気流を流した。インクジェットインクはステップ(1)の前駆体組成物と同一であった(すなわち、キラル液晶前駆体組成物(1)と同一またはキラル液晶前駆体組成物(2)と同一)。
【0098】
(5)第2のキラル前駆体組成物を第1のキラル液晶状態とは異なる光学的性質を有する第2のキラル液晶状態にする。
マーキングを含む得られた製品のIRランプへの(基材次第で)約1〜5秒間の曝露により、コードまたは図柄が印刷された領域の第2のキラル液晶状態を形成した。これにより、第1のものとは異なる新規の異方性状態が局所的に生じた。
【0099】
(6)得られた製品の硬化または重合
次いで、結果として得られた、マーキングが印刷された製品を、10mW/cm2のUV放射を有する低圧水銀ランプを備えたUV乾燥器により硬化した。
【0100】
上記手順により得られるマーキングを有する製品の一例を図3に示している。
【0101】
例えば、以下の他の化合物を、式(I)のキラルドーパント化合物Bの代わりに上記の手順において利用することができる。
(3R,3aR,6R,6aR)−ヘキサヒドロフロ[3,2−b]フラン−3,6−ジイルビス(4−(4(アクリロイルオキシ)ベンゾイルオキシ)−ベンゾエート);
(3R,3aR,6R,6aR)−ヘキサヒドロフロ[3,2−b]フラン−3,6−ジイルビス(4−(4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ)−ベンゾエート);
(3R,3aR,6R,6aR)−ヘキサヒドロフロ[3,2−b]フラン−3,6−ジイルビス(4−(アクリロイルオキシ)−2−メチル−ベンゾエート);
(3R,3aR,6S,6aR)−ヘキサヒドロフロ[3,2−b]フラン−3,6−ジイルビス(4−(4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイルオキシ)−3−メトキシベンゾエート);
(3R,3aR,6R,6aR)−ヘキサヒドロフロ[3,2−b]フラン−3,6−ジイルビス(4−(4−(アクリロイルオキシ)−3−メトキシ−ベンゾイルオキシ)ベンゾエート);
(3R,3aR,6R,6aR)−ヘキサヒドロフロ[3,2−b]フラン−3,6−ジイルビス(4−(4(アクリロイルオキシ)ベンゾイルオキシ)−3−メトキシベンゾエート);
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−ベンゾイル]オキシ}−3−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2,5−ジメチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2,5−ジメチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシ−5−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メトキシベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシベンゾイル]オキシ}ベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メトキシベンゾイル]オキシ}ベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−3−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシベンゾイル]オキシ}−2,5−ジメチルベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メトキシベンゾイル]オキシ}−3−メチルベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシベンゾイル]オキシ}−2−メチルベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メトキシベンゾイル]オキシ}−3−メチルベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシ−5−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メチルベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−5−メトキシ−2−メチルベンゾイル]オキシ}−3−メチルベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−エトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−エトキシベンゾイル]オキシ}ベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−エトキシ−5−メチルベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−エトキシベンゾイル]オキシ}ベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−エトキシ−5−メチルベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−5−エトキシ−2−メチルベンゾイル]オキシ}ベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−エトキシベンゾイル]オキシ}ベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メチルベンゾイル]オキシ}−2−エトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2,5−ジメチルベンゾイル]オキシ}−2−エトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メチルベンゾイル]オキシ}−2−エトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2,5−ジメチルベンゾイル]オキシ}−2−エトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−エトキシベンゾイル]オキシ}−2−エトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシベンゾイル]オキシ}−2−エトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−エトキシベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−エトキシベンゾイル]オキシ}−3−メチルベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−エトキシベンゾイル]オキシ}−3−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メトキシベンゾイル]オキシ}−3−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メトキシベンゾイル]オキシ}−3−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−ベンゾイル]オキシ}−3−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2,5−ジメチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2,5−ジメチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシ−5−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−3−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メトキシベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシベンゾイル]オキシ}ベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メトキシベンゾイル]オキシ}ベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシベンゾイル]オキシ}−2,5−ジメチルベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メトキシベンゾイル]オキシ}−3−メチルベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシベンゾイル]オキシ}−2−メチルベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−メトキシベンゾイル]オキシ}−3−メチルベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシ−5−メチルベンゾイル]オキシ}−2−メチルベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−5−メトキシ−2−メチルベンゾイル]オキシ}−3−メチルベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−エトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−エトキシベンゾイル]オキシ}ベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−エトキシ−5−メチルベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−エトキシベンゾイル]オキシ}ベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−エトキシ−5−メチルベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−5−エトキシ−2−メチルベンゾイル]オキシ}ベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−3−エトキシベンゾイル]オキシ}ベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メチルベンゾイル]オキシ}−2−エトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2,5−ジメチルベンゾイル]オキシ}−2−エトキシベンゾイル)−5−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メチルベンゾイル]オキシ}−2−エトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2,5−ジメチルベンゾイル]オキシ}−2−エトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−エトキシベンゾイル]オキシ}−2−エトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−メトキシベンゾイル]オキシ}−2−エトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−エトキシベンゾイル]オキシ}−2−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−エトキシベンゾイル]オキシ}−3−メチルベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール;および
2,5−ビス−O−(4−{[4−(アクリロイルオキシ)−2−エトキシベンゾイル]オキシ}−3−メトキシベンゾイル)−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール。
【0102】
上記の手順におけるネマチック化合物A1として、例えば以下の他の化合物を利用することができる。
2−メトキシベンゼン−1,4−ジイルビス[4−({[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]カルボニル}オキシ)ベンゾエート];
4−{[4−({[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]カルボニル}オキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−メトキシフェニル4−({[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]カルボニル}オキシ)−2−メチルベンゾエート;
2−メトキシベンゼン−1,4−ジイルビス[4−({[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]カルボニル}オキシ)−2−メチル−ベンゾエート];
2−メチルベンゼン−1,4−ジイルビス[4−({[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]カルボニル}オキシ)−2−メチル−ベンゾエート];
4−{[4−({[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]カルボニル}オキシ)ベンゾイル]オキシ}−2−メチルフェニル4−({[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]カルボニル}オキシ)−3−メトキシベンゾエート;
2−メチルベンゼン−1,4−ジイルビス[4−({[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]カルボニル}オキシ)ベンゾエート];
2−メチルベンゼン−1,4−ジイルビス[4−({[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]カルボニル}オキシ)−3−メトキシ−ベンゾエート];
4−{[4−({[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]カルボニル}オキシ)−3−メトキシベンゾイル]オキシ}−2−メチルフェニル4−({[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]カルボニル}オキシ)−3,5−ジメトキシベンゾエート;
2−メチルベンゼン−1,4−ジイルビス[4−({[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]カルボニル}オキシ)−3,5−ジメトキシ−ベンゾエート];
2−メトキシベンゼン−1,4−ジイルビス[4−({[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]カルボニル}オキシ)−3,5−ジメトキシベンゾエート];および
4−{[4−({[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]カルボニル}オキシ)−3−メトキシベンゾイル]オキシ}−2−メトキシフェニル4−({[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]カルボニル}オキシ)−3,5−ジメトキシベンゾエート。
【0103】
上記の手順におけるネマチック化合物A2として、例えば以下の他の化合物を利用することができる。
4−({4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]ベンゾイル}オキシ)−3−メチルフェニル4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−2−メチルベンゾエート;
4−({4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]ベンゾイル}オキシ)−3−メチルフェニル4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−3−メチルベンゾエート;
2−メチルベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−2−メチルベンゾエート};
4−({4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−2−メチルベンゾイル}オキシ)−3−メチルフェニル4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−2,5−ジメチルベンゾエート;
2−メチルベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−2,5−ジメチルベンゾエート}
2−メチルベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]ベンゾエート};
4−({4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−3,5−ジメチルベンゾイル}オキシ)−3−メチルフェニル4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−2,5−ジメチルベンゾエート;
2−メチルベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−3,5−ジメチルベンゾエート};
2−メトキシベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−3,5−ジメチルベンゾエート};
4−({4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−3−メチルベンゾイル}オキシ)−2−メトキシフェニル4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−3,5−ジメチルベンゾエート;
2−メトキシベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−3−メチルベンゾエート};
4−({4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]ベンゾイル}オキシ)−3−メトキシフェニル4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−3−メチルベンゾエート;
4−({4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]ベンゾイル}オキシ)−3−メトキシフェニル4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−2,5−ジメチルベンゾエート;
2−メトキシベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−2−メトキシベンゾエート};
2−メトキシベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−3,5−ジメトキシベンゾエート};
2−メトキシベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−3−メトキシベンゾエート};
2−エトキシベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]ベンゾエート};
2−エトキシベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−2−メチルベンゾエート};
2−(プロパン−2−イルオキシ)ベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]ベンゾエート};
4−({4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]ベンゾイル}オキシ)−2−(プロパン−2−イルオキシ)フェニル4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−2−メチルベンゾエート;
2−(プロパン−2−イルオキシ)ベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−2−メチルベンゾエート};
2−(プロパン−2−イルオキシ)ベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−2,5−ジメチルベンゾエート};
2−(プロパン−2−イルオキシ)ベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−3,5−ジメチルベンゾエート};および
2−(プロパン−2−イルオキシ)ベンゼン−1,4−ジイルビス{4−[4−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−3,5−ジメトキシベンゾエート}。
【0104】
前述の実施例は単に説明のために示したものであり、本発明を制限するものと解釈すべきではないことに留意されたい。例示的な実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、本明細書において使用してきた用語が、限定的な用語ではなく説明および例示の用語であることが理解されよう。本発明の範囲および精神からその態様が逸脱することなく、現在記載された、また補正された添付の請求項の範囲内での変更が可能である。本明細書において特定の手段、材料および実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明は、本明細書に開示の細目に制限することを意図したものではなく、むしろ、本発明は、添付の請求項の範囲内にあるような全ての機能的に均等な構造、方法および使用にまで及ぶ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)基材に第1のキラル液晶前駆体組成物を塗布するステップと、
(ii)塗布した第1の組成物を加熱して第1のキラル液晶状態にするステップと、
(iii)塗布した第1の組成物の1つまたは複数の部位に第2のキラル液晶前駆体組成物を塗布するステップと、
(iv)前記1つまたは複数の部位の少なくとも1つを加熱して第2のキラル液晶状態にするステップと、
(v)塗布した第1および第2の組成物の硬化ステップおよび重合ステップの少なくとも一方と、
を含む方法により得ることができる液晶ポリマーマーキング。
【請求項2】
前記第1および第2のキラル液晶前駆体組成物の少なくとも一方が、前記キラル液晶前駆体組成物のコレステリック状態を引き起こすことができる(i)1種または複数のネマチック化合物Aおよび(ii)1種または複数のキラルドーパント化合物Bを含む、請求項1に記載のマーキング。
【請求項3】
前記第1および第2のキラル液晶前駆体組成物の少なくとも一方が少なくとも2種の化合物Aを含む、請求項1または2に記載のマーキング。
【請求項4】
1種または複数のネマチック化合物Aならびに1種または複数のキラルドーパント化合物Bが、少なくとも1つの重合可能な基を含む少なくとも1種の化合物を含む、請求項2または3に記載のマーキング。
【請求項5】
前記少なくとも1つの重合可能な基が不飽和炭素−炭素結合を含む、請求項4に記載のマーキング。
【請求項6】
少なくとも1つの重合可能な基が式H2C=CH−C(O)−の基を含む、請求項4または5に記載のマーキング。
【請求項7】
1種または複数のネマチック化合物Aの全ておよび1種または複数のキラルドーパント化合物Bの全てが、少なくとも1つの重合可能な基を含む、請求項2〜6のいずれか一項に記載のマーキング。
【請求項8】
前記第1および第2のキラル液晶前駆体組成物の少なくとも一方が少なくとも1種の式(I):
【化1】

のキラルドーパント化合物Bを含み、
式中、
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立してC1〜C6アルキルおよびC1〜C6アルコキシを示し、
1およびA2は、それぞれ独立して式(i)〜(iii):
(i)−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2
(ii)−C(O)−D1−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2
(iii)−C(O)−D2−O−[(CH2y−O]z−C(O)−CH=CH2
の基を示し、
1は、式
【化2】

の基を示し、
2は、式
【化3】

の基を示し、
m、n、o、p、q、r、s、およびtは、それぞれ独立して0、1、または2を示し、
yは0、1、2、3、4、5、または6を示し、
yが0の場合、zは0であり、yが1〜6の場合、zは1である、
請求項2〜7のいずれか一項に記載のマーキング。
【請求項9】
前記第1のキラル液晶前駆体組成物および前記第2のキラル液晶前駆体組成物が同一である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のマーキング。
【請求項10】
前記第2のキラル液晶前駆体組成物が前記第1のキラル液晶前駆体組成物とは異なる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のマーキング。
【請求項11】
前記第2のキラル液晶前駆体組成物が、1種または複数のキラルドーパント化合物Bの少なくとも1種を第1のキラル液晶前駆体組成物中の同じキラルドーパント化合物の濃度とは異なる濃度で含むという点で少なくとも、前記第1のキラル液晶前駆体組成物とは異なる、請求項2〜10のいずれか一項に記載のマーキング。
【請求項12】
前記第2のキラル液晶前駆体組成物が、第1の組成物中に存在する1種または複数のキラルドーパント化合物Bのいずれとも異なる少なくとも1種のキラルドーパント化合物Bを含むという点で少なくとも、前記第1のキラル液晶前駆体組成物とは異なる、請求項2〜11のいずれか一項に記載のマーキング。
【請求項13】
前記第2のキラル液晶前駆体組成物が、電磁スペクトルの可視または不可視領域で吸収する顔料および染料の少なくとも一方をさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のマーキング。
【請求項14】
前記第2のキラル液晶前駆体組成物が発光顔料および発光染料の少なくとも一方をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のマーキング。
【請求項15】
(ii)が、前記塗布した組成物を約55℃〜約150℃の温度まで加熱することを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のマーキング。
【請求項16】
(iv)が、前記1つまたは複数の部位の少なくとも1つを約55℃〜約150℃の温度まで加熱することを含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載のマーキング。
【請求項17】
(i)が、連続インクジェット印刷、ドロップオンデマンドインクジェット印刷、スプレーコーティング、およびバルブジェット印刷の少なくとも1つにより前記第1のキラル液晶前駆体組成物を塗布することを含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のマーキング。
【請求項18】
(iii)が、連続インクジェット印刷、ドロップオンデマンドインクジェット印刷、スプレーコーティング、およびバルブジェット印刷の少なくとも1つにより前記第2のキラル液晶前駆体組成物を塗布することを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載のマーキング。
【請求項19】
(iii)の直後に前記1つまたは複数の部位の上に空気流を通す、請求項1〜18のいずれか一項に記載のマーキング。
【請求項20】
前記マーキングが、1次元バーコード、スタックド1次元バーコード、2次元バーコード、3次元バーコード、およびデータマトリックスの1種または複数から選択されるコードを表す画像、写真、ロゴ、証印、およびパターンの少なくとも1種の形態である、請求項1〜19のいずれか一項に記載のマーキング。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載のマーキングを含む基材。
【請求項22】
前記マーキングが、セキュリティの要素、認証の要素、識別の要素、ならびにトラッキングおよびトレーシングの要素の少なくとも1種の機能を果たす、請求項21に記載の基材。
【請求項23】
前記基材が、身分証明書、ラベル、包装、銀行券、機密文書、旅券、印紙、インク転写フィルム、および反射フィルムの少なくとも1種であるか、またはそれらを含む、請求項20または21に記載の基材。
【請求項24】
(i)基材に第1のキラル液晶前駆体組成物を塗布するステップと、
(ii)前記塗布した第1の組成物を加熱して第1のキラル液晶状態にするステップと、
(iii)前記塗布した第1の組成物の1つまたは複数の部位に第2のキラル液晶前駆体組成物を塗布するステップと、
(iv)前記1つまたは複数の部位の少なくとも1つを加熱して第2のキラル液晶状態にするステップと、
(v)前記塗布した第1および第2の組成物の硬化ステップおよび重合ステップの少なくとも一方と、
を含む、基材に液晶ポリマーマーキングを設ける方法。
【請求項25】
請求項2〜18のいずれか一項に記載の特徴を有する請求項24に記載の方法。
【請求項26】
マーキングを有する基材であって、前記マーキングが、第1の光学的性質を有する第1のキラル液晶ポリマーの層またはフィルムを含み、前記層またはフィルムが、前記第1の光学的性質とは異なる少なくとも1種の第2の光学的性質を有する第2の液晶ポリマーをその少なくとも1つの部位に含む、基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−512800(P2013−512800A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542407(P2012−542407)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056873
【国際公開番号】WO2011/069689
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(311003204)シクパ ホールディング エスアー (21)
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH−1008 Prilly Switzerland
【Fターム(参考)】