説明

キルシマリンをベースにした化粧品組成物

本発明は、脂肪分解を活性化するために使用する組成物を製造するための、R=HまたはR=グルコースである式(I)の活性分子の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にセルライトの美容的処置のために設計された、キルシマリンまたはキルシマリンの誘導体をベースにした化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪組織は、細胞空間のほとんどをトリグリセリドが占める脂肪細胞と呼ばれる細胞から成り立っている。生物に含有されるトリグリセリドの量は、脂肪細胞の大きさと数の両方によって決まる。言い換えると、脂肪細胞肥大(大きさの増大)および過形成(数の増加)は、脂肪量の増加を示す重要なパラメーターである。in vivoにおいては、脂肪細胞の肥大および過形成は、密接に関係した機構である。脂肪細胞の数が増加する前に、脂肪細胞の大きさが臨界値まで増大し、それが新しい脂肪細胞の漸増の引き金となることが立証された。大きさのパラメーターのみを制御することで、皮膚的にセルライトを処置するには十分である。実際に、皮下脂肪細胞は、結合組織によって限定された脂肪室に位置する。脂肪細胞の大きさが増大すると、脂肪室が広がり、周囲の結合組織に圧力がかかる。この圧力が、セルライト特有の皮膚表面のオレンジの皮のようなしわの原因となる。このことに注目して、セルライト現象を処置するための1解決方法は、脂肪細胞の大きさを減少させることであろうと考えられる。そのためには、代謝分解、すなわち、脂肪細胞に含有されるトリグリセリドを分解すること、「脂肪分解」として知られる現象が必要である。
【0003】
脂肪細胞の脂肪分解の調節は、図1に概略を示したように特に複雑な現象である。
【0004】
生物に存在する主要な脂肪分解因子は、カテコールアミン型の神経伝達物質、それぞれ、アドレナリンおよびノルアドレナリン、すなわち交感神経の神経伝達物質である。これらのカテコールアミンは、数種類の受容体、主に脂肪細胞膜表面上の細胞外液に存在するβ-アドレナリン受容体およびα-アドレナリン受容体に作用する。
【0005】
アデニル酸シクラーゼ(adenylate cyclase)は、脂肪分解の調節に重要な役割を果たす。活性化されると、アデニル酸シクラーゼはアデノシン三リン酸(ATP)を環状アデノシン一リン酸(AMPc)へと分解し、これが次に不活性型蛋白質キナーゼAを活性型リン酸化蛋白質Aに変換し、トリグリセリドをジグリセリド、次にはモノグリセリドに加水分解する。言い換えると、細胞内AMPc濃度が高くなればなるほど、脂肪分解はより活性化される。したがって、このことは、脂肪分解を刺激するためには細胞内AMPc濃度を増加させることが必要であることを意味する。この濃度は、いくつかの方法で調節される。
【0006】
第一に、AMPcはインシュリン(抗脂肪分解因子)によって活性化されたホスホジエステラーゼによって5'-AMPに絶えず分解され、次にアデノシンに分解される。同時に、アデノシンは細胞から細胞外液に移動し、そこでA1型アデノシン膜受容体(それ自身はアデニル酸シクラーゼに結合するがG蛋白質を阻害する)に結合する。言い換えると、アデノシンはアデニル酸シクラーゼ活性に阻害効果を有し、したがって脂肪分解に阻害効果を有する。したがって、このことは、脂肪分解は絶えず阻害されており、脂肪分解が刺激因子によって刺激されると、絶えず阻害を受けている系が実際に刺激を受けることを意味する。
【0007】
したがって、本出願人の考えは、脂肪分解を直接刺激することではなく、脂肪細胞の表面上に存在するA1アデノシン受容体を遮断することによって脂肪分解に対する絶え間ない阻害を取り除くことである。
【0008】
カフェインおよびテオフィリンは、A1アデノシン受容体拮抗剤として作用することが報告された分子で、カフェインの脂肪分解活性は公知である。
【0009】
しかし、本出願人が直面した問題は、A1受容体拮抗特性を示す分子全てが化粧品適用に使用するために十分な脂肪分解活性を有するとは限らないことである。このことは、A1受容体拮抗剤として同定されたフラボノイド群に属する分子、ゲニステインは、ごくわずかな脂肪分解活性しか有さないことを示したNogowskiの報告、「Genistein-Induced Changes in Lipid Metabolism of Overiectomized Rats」、Annuals of Nutrition and Metabolism、42(1〜2):360〜366頁、およびJacobson、「Interactions of Flavones and Other Phytochemicals with Adenosine Receptors」、Adv. Exp. Med. Biol.、505: 163〜171頁に示されている。
【非特許文献1】Nogowski、「Genistein-Induced Changes in Lipid Metabolism of Overiectomized Rats」、Annuals of Nutrition and Metabolism、42(1-2):360〜366頁
【非特許文献2】Jacobson、「Interactions of Flavones and Other Phytochemicals with Adenosine Receptors」、Adv. Exp. Med. Biol.、505: 163〜171頁
【非特許文献3】「Adenosine-1 Active Ligands: Cirsimarin、a Flavone Glycoside from Microtea debilis」、John A. Hasrat、Luc Pieters、Madga Claeys、Arnold Vlietinck、J. Nat. Prod.1997、60、638〜641頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、公知の分子と、たとえばカフェインと比較して改善された脂肪分解効果を有するA1受容体拮抗分子を見いだすことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人は、研究において、以下の式、
【0012】
【化1】

【0013】
[式中、R=グルコース、またはR=Hである]
を有する分子が、非常に少ない用量で、脂肪分解に作用する絶え間ない阻害を取り除くことができることを見いだした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
基Rがグルコースの場合、本発明で使用される分子はキルシマリン(cirsimarin)に該当する。
【0015】
キルシマリンは、フラボン種に属するフラボノイドである。分子式がC23H24O11である解糖されたフラボンで、CAS番号13020-19-04に該当する。これはまた、以下の名称によっても知られている。
5-ヒドロキシ-6,7-ジメトキシフラボン4'-0-グルコシド、
5-ヒドロキシアピゲニン6,7-ジメチルエーテル4'グルコシド、
スクテラレイン6,7-ジメチルエーテル4'-O-グルコシド、
キルシタカオシド、
キルシマリチン4'-O-グルコシド。
【0016】
キルシマリンは、天然では非常に少数の植物にしか見いだされない。特にTeucrium arduini(唇形科)、Clerodendrum mandarinorum(クマツヅラ科)、Scoparia dulcis (ゴマノハグサ科)、Cirsium maritimum(菊科)およびCirsium pendulumに見いだすことができる。キルシマリンが見いだされるより一般的な植物は、Microtea debilisと呼ばれる匍匐植物で、ヤマゴボウ科に属し、南アメリカ産の一年生草である。この草は、伝統的医学では、乾燥植物粉末形態を経口的に投与して蛋白尿を治療するために使用されることが知られている。
【0017】
この課題に関しては、文献「Adenosine-1 Active Ligands: Cirsimarin、a Flavone Glycoside from Microtea debilis」、John A. Hasrat、Luc Pieters、Madga Claeys、Arnold Vlietinck、J. Nat. Prod.1997、60、638〜641頁は、キルシマリンのA1受容体拮抗特性を指摘しており、蛋白尿に対するこの分子の効果は、キルシマリンと腎臓細胞表面上に存在するA1受容体との相互作用によるものであると説明している。この文献では、脂肪分解を活性化するために設計された組成物でこの分子を使用する可能性については全く示唆していない。
【0018】
本出願人は、この特性と、キルシマリンがおそらく備えている、脂肪細胞の表面上に存在するA1受容体遮断に該当する作用機構を示唆した。
【0019】
基Rが水素化された原子の場合、本発明で使用した分子はキルシマリチン(cirsimaritin)に該当する。この分子はまた、以下の名称によっても知られている。
スクテラレイン4,7-ジメチルエーテル、
5,4'-ジヒドロキシ6,7-ジメトキシフラボン、
キルシスタカオゲニン、
スクロフレイン、
5-ヒドロキシアピゲニン6,7-ジメチルエーテル。
【0020】
キルシマリチンは、Salvia tomentosa(唇形科)、Salvia officinalis、Lippia citriodora(クマツヅラ科)、並びにSideretis sventenii(唇形科)の野生型、Ocimum gratissimum、gratissimum変種(唇形科)などの多くの農作物に見いだされたが、このリストは限定されない。
【0021】
言い換えると、第一の態様では、本発明は、脂肪分解を活性化するように設計された組成物を製造するための、以下の式の分子の使用に関する。
【0022】
【化2】

【0023】
[式中、R=グルコースまたはR=Hである。]
既に述べたように、脂肪分解の活性化は、脂肪分解を直接刺激することによってではなく、脂肪細胞の表面上に存在するA1受容体を遮断することによって脂肪分解に作用する絶え間ない阻害を取り除くことによって引き起こす。
【0024】
この使用は、治療的であっても、非治療的であってもよい。
【0025】
本発明の場合は、該使用は主に、セルライトの処置において、キルシマリンまたはキルシマリチンを限局的に局所適用する非治療的なものである。
【0026】
したがって、本発明は、セルライトの局所処置用に設計された化粧品組成物における前記分子の使用に関する。
【0027】
本出願人はまた、前記分子が細胞外マトリックス成分の合成を刺激することを見いだした。より正確には、構造蛋白質(コラーゲン、エラスチン)の合成、接着分子(コラーゲン、ラミニン、ニドゲン、インテグリン、カドヘリンなど)の合成、並びに多糖類(グリコサミノグリカンおよびプロテオグリカン)の合成を増加させる。したがって、本発明はまた、細胞外マトリックス成分の合成を刺激するために設計された組成物の製造における前記分子の使用に関する。
【0028】
本発明にはまた、活性成分として、前記に示した式に該当するキルシマリンまたはキルシマリチンを含有する化粧品組成物が含まれる。
【0029】
有効となるような、該化粧品組成物におけるキルシマリンまたはキルシマリチンの濃度は、0.0005重量%と10重量%の間、有利には0.05重量%と5重量%との間である。
【0030】
特別な実施形態では、キルシマリンは好ましくはMicrotea debilisの乾燥または液体植物抽出物の形態で見いだされる。該抽出物を乾燥形態で使用する場合、これは該組成物中において0.005重量%と20重量%の間、有利には0.1重量%と10重量%との間にする。該抽出物を液体形態で使用する場合、これは該組成物中において0.1重量%と20重量%の間、有利には0.5重量%と10重量%との間にする。
【0031】
実際には、抽出は、乾燥して、次に磨砕した植物全体を局所用化粧品適用に使用することができる極性溶媒、したがって、水性、アルコール性またはグリコール溶媒中で実施する。一般的に、該極性溶媒は、水、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどのグリコールの、単独または混合物から選択するが、エタノールが好ましい溶媒の1種である。
【0032】
本出願人はさらに、脂肪分解におけるキルシマリンまたはキルシマリチンとたとえばカフェインなどのキサンチン塩基との相乗効果の存在を示した。
【0033】
有利な実施形態では、したがって、本発明による化粧品組成物はまた、キサンチン塩基、特にカフェインを含有する。
【0034】
実際には、カフェインは該組成物の0.1重量%と10重量%との間である。
【0035】
さらに、該組成物は一般的に、たとえば、ジェル、ミルク、クリーム、乳清、マイクロエマルジョンなどの形態で調合する。
【0036】
本発明による該組成物は、皮膚または髪に局所適用するために通常使用される生薬形態全て、特に、水性溶液、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョンまたは多相エマルジョン、シリコンエマルジョン、マイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンまたは水性ジェルの形態で存在させることができる。
【0037】
この組成物は、多少流体であってもよく、特に、白色または有色クリーム、ポマード、ミルク、ローション、乳清またはジェルの外観であってよい。
【0038】
本発明による組成物は、通常化粧品および皮膚科分野で使用される補助剤、たとえば、脂肪、乳化剤および共乳化剤、親水性または親油性ゲル化剤、活性親水性または親油性成分、保存剤、抗酸化剤、溶媒、香料、充填剤、親水性または親油性フィルター、着色剤、中和剤、浸透促進剤およびポリマーを含有することができる。
【0039】
様々な補助剤の量は、問題とする分野で従来使用されている量で、たとえば、組成物全重量の0.01重量%から30重量%である。これらの補助剤は、その性質に応じて、油相または水相に含めることができる。
【0040】
本発明で使用することができる脂肪には、鉱油、動物由来の油(ラノリン)、合成油(ミリスチン酸イソプロピル、オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル)、シリコン油(シクロメチコーン、ジメチコーン)およびフッ素化油が含まれる。以下の、脂肪アルコール、脂肪酸、蝋およびガム、特にシリコンゴムおよびエラストマーを脂肪として使用することができる。
【0041】
本発明で使用することができる乳化剤および共乳化剤には、たとえば、ポリグリセロールおよび脂肪酸エステル、スクロースおよび脂肪酸エステル、ソルビタンおよび脂肪酸エステル、脂肪酸およびオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪アルコールおよびPEGエステル、グリセロールおよび脂肪酸エステル、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルホスフェート、アルキルポリグルコシドおよびジメチコーンコポリオールが含まれる。
【0042】
本発明で使用することができる親水性ゲル化剤には特に、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、アクリレート/アルキルアクリルレートコポリマーなどのアクリル系コポリマー、ポリアクリルアミド、多糖類、たとえば、キサンタンガム、グアーガム、セルロースゴムおよびその誘導体などの天然ゴム、粘土および2-アクリルアミド-2-メチルプロパン酸のコポリマーが含まれる。
【0043】
本発明で使用することができる親油性ゲル化剤には、ベントンなどの修飾粘土、脂肪酸の金属塩、疎水性シリカおよびエチルセルロールが含まれる。
【0044】
該化粧品組成物はまた、活性成分を含有することができる。これらの活性成分には、特に、脱色素剤、皮膚軟化薬、湿潤剤、抗脂漏剤、抗座瘡剤、角質溶解剤および/または角質除去剤(scaling agent)、抗しわ剤およびファーミング剤(firming agent)、排膿剤(draining agent)、抗刺激剤、無痛化薬、キサンタン塩基(カフェイン)などのスリミング剤、ビタミンおよびそれらの混合物および艶消し剤を含めることができる。
【0045】
それらの間で、またはMicrotea debilis抽出物との間で不適合がある場合、前記に示した活性成分および/またはMicrotea debilis抽出物は、組成物中で互いを隔離するために、小球体、特にイオン性または非イオン性賦形剤および/またはナノ粒子(ナノカプセルおよび/またはナノ球体)にカプセル化することができる。
【0046】
本発明で使用することができる保存剤には、安息香酸、その塩およびエステル、ソルビン酸およびその塩、パラベン、その塩およびエステル、トリクロサン、イミダゾリジニルウレア、フェノキシエタノール、DMDMヒダントイン、ジアゾリジニルウレアおよびクロルフェネシンが含まれる。
【0047】
本発明で使用することができる抗酸化剤には、EDTAおよびその塩などのキレート剤が含まれる。
【0048】
本発明で使用することができる溶媒には、水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコールおよびソルビトールが含まれる。
【0049】
本発明で使用することができる充填剤には、タルク、カオリン、雲母、セレサイト(serecite)、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびナイロンなどの有機粉末が含まれる。
【0050】
本発明で使用することができるフィルターには、従来使用されているUVAおよびUVBフィルター、たとえば、ベンゾフェノン-3、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクトクリレン、メトキシ桂皮酸オクチル、4-メチルベンジリデンカンファー、サリチル酸オクチル、テレフタリリデンジカンファースルホン酸およびドロメトリゾールトリシロキサンが含まれる。その他に、マイクロ型およびナノ型のTlO2およびZnOなどの物理的フィルターを挙げることができる。
【0051】
本発明で使用することができる着色剤には、従来から化粧品組成物または外皮用組成物に使用されている親油性着色剤、親水性着色剤、顔料および真珠母およびそれらの混合物が含まれる。
【0052】
本発明で使用することができる中和剤には、ソーダ(soda)、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノールおよび水酸化カリウムが含まれる。
【0053】
本発明で使用することができる浸透促進剤には、アルコールおよびグリコール(エタノール、プロピレングリコール)、エトキシジグリコール、脂肪アルコールおよび脂肪酸(オレイン酸)、脂肪酸エステルおよびジメチルイソソルビドが含まれる。
【0054】
本発明で使用することができる組成物は、ケア製品(たとえば、スリミング製品、清浄製品)として、および/または皮膚メーキャップ製品として、日焼け止め製品またはヘアケア製品として、たとえば、シャンプーまたはコンディショナーとして使用することができる。
【0055】
本発明はまた、局所適用における化粧品組成物の有効量を局所的に適用することによる化粧用セルライト処理方法に関する。
【0056】
本発明およびその提供する利点は、添付した図によって裏付けされた以下の実施形態で示されよう。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
Microtea deblilis抽出物の生成
植物全体を乾燥した物は、南アメリカから入手した。この植物を磨砕して、粉末を得た。
【0058】
磨砕した植物の抽出は、96.2%エタノールおよびH2O(80/20)体積/体積の混合物中で実施し、室温において、遮光して磁石で6時間撹拌する。
【0059】
次に、該抽出物をナイロンフィルター、次にセルロース膜(0.22ミクロンまで)で濾過する。
【0060】
(実施例2)
キルシマリンの脂肪分解活性
単離した脂肪細胞に対するこのin vitro試験によって、Microtea debilisから抽出されたキルシマリンの脂肪分解活性を示す。
【0061】
2.1/器具および方法
使用した試薬のほとんどは、Sigma-Aldrichから入手した。
【0062】
a.陽性参照物および評価する製品
ノルアドレナリン(別称、ノルエピネフリン NE):この分子は、モル質量319.3gであり、アルブミン4%のクレブス-リンガー緩衝液に最終濃度1μMになるように溶かして評価する。
カフェイン:この分子は、モル質量194.2gであり、アルブミン4%のクレブス-リンガー緩衝液に最終濃度0.5mMになるように溶かして評価する。
テオフィリン:この分子は、モル質量180.2であり、アルブミン4%のクレブス-リンガー緩衝液に最終濃度0.5mMになるように溶かして評価する。
キルシマリン:この分子はモル質量476.44であり、0.5mMおよび0.1mMで試験する。この分子をまず、NaOH 0.2M/DMSO(95/5、v/v)の溶媒混合物に溶解する。
【0063】
b.反応液
該反応は、脱脂アルブミン4%(重量/体積)を含有するクレブス-リンガー炭酸水素緩衝液、pH=7.4で起こさせる。該脱脂アルブミンは、脂肪分解中、放出される脂肪酸を固定する。脂肪酸は脂肪分解を逆阻害するので、この予防措置は重要である。該緩衝液を37℃まで加熱する。
【0064】
c.脂肪細胞の調製および反応の開始
精巣上体脂肪組織をラットから採取する。それを、アルブミン4%を含む、pH7.4のクレブス-リンガー炭酸水素緩衝液中に入れ、それにコラゲナーゼ188単位/mlを添加して脂肪組織の基礎をなすコラーゲンネットワークを消化する。
【0065】
消化は、振盪しながら37℃で約1時間行う。脂肪細胞懸濁物を、アルブミン4%を含有するクレブス-リンガー緩衝液で連続的に洗浄してコラゲナーゼを極度に希釈し反応を停止する。
【0066】
Mallasezスライド上で、得られた脂肪細胞懸濁物の計数を8回実施する。これら8回の計数の平均値を利用して、反応試験管に脂肪細胞溶液をmL当たり約150000細胞の濃度で分配する。
【0067】
使用する反応試験管は、2mLエッペンドルフ(登録商標)チューブである。1mL当たり150000細胞の濃度を得るために必要な脂肪細胞溶液の量(μL)をAとし、試験する分子の母液の量(μL)をBとするならば、まず、エッペンドルフ(登録商標)チューブにアルブミン4%を含むクレブス-リンガー緩衝液(1000-A-B)μLを入れ、次に、試験する分子の母液BμLを入れる。次に、表面に脂肪細胞溶液の必要量Aを注意深く添加することによって該チューブを1mLまで満たす。
【0068】
試験は全て、3回実施する。反応を起こさせるために、該チューブを37℃の二重鍋に入れ、水平に軽く振盪する。該反応は、該チューブを氷中に挿し込むことによって1時間後に停止させる。
【0069】
クレブス-リンガー緩衝液中における脂肪細胞の基礎脂肪分解並びにキルシマリン溶液溶媒を含有するクレブス-リンガー緩衝液中における脂肪細胞の基礎脂肪分解を測定するために、対照チューブを作製する。2mLエッペンドルフ(登録商標)チューブ8本を脂肪細胞溶液AμLおよびクレブス-リンガー緩衝液(1000-A)μLで用意する。チューブ4本は脂肪細胞溶液AμL、キルシマリン溶液溶媒BμLおよびクレブス-リンガー緩衝液(1000-A-B)μLで用意する。
【0070】
クレブス-リンガー緩衝液および脂肪細胞溶液を含有するチューブ8本のうち4本を直接氷上に置く(試験管00)。残りの4本のチューブ(試験管0対照)並びにクレブス-リンガー緩衝液、脂肪細胞溶液およびキルシマリン溶液溶媒を含有する4本のチューブ(試験管0溶媒)を2重鍋に入れ、反応試験管と同様に処理する。
【0071】
脂質分解活性は、遊離する脂肪酸の量によって測定し、このために、Wako(登録商標)Chemical GmbHが販売するNEFA C(非エステル化脂肪酸/比色用)比色計量キットを使用する。
【0072】
2.2/結果
試験管0に存在する脂肪酸の量から試験管00に存在する量を差し引いたものは、緩衝液中の脂肪細胞の基礎脂肪分解に該当する。試験管0溶媒に存在する脂肪酸の量から試験管00に存在する量を差し引いたものは、キルシマリン溶液溶媒を含有する緩衝液中の脂肪細胞の基礎脂肪分解に該当する。反応試験管に放出された脂肪酸の量から試験管00に存在する量を差し引いたものは、試験する分子によって誘導された脂肪分解に該当する。
【0073】
2.3/考察
この図が示すように、キルシマリンは試験条件下でin vitroにおいて脂肪分解活性を有することが立証された。
【0074】
Microtea debilis抽出物の希釈溶媒は、基礎脂肪分解に影響を及ぼさなかった。
【0075】
(実施例3)
化粧品組成物
スリミング調合物の例
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
【表5】

【0081】
【表6】

【0082】
【表7】

【0083】
【表8】

【0084】
【表9】

【0085】
(実施例4)
キルシマリンおよびカフェインの相乗作用
この実施例では、単離したヒト脂肪細胞に対する脂肪分解活性を、実施例2で示したのと同様の条件下でキルシマリン/カフェインの組み合わせとカフェイン単独とで比較する。結果を図3に示す。
【0086】
この図が示すように、脂肪酸放出は、所与の量(0.11mM)のキルシマリン/カフェインの組み合わせの場合の方が同量(0.11mM)のカフェインの場合よりもはるかに多い。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】脂肪細胞における脂肪分解の調節を示した図である。
【図2】対照分子(カフェイン、テオフィリン、ノルアドレナリン)と比較したキルシマリンの脂肪分解活性を示した図である。
【図3】カフェイン単独と比較したキルシマリン/カフェインの組み合わせの脂肪分解活性を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪分解を活性化するように設計された組成物を製造するための、以下の式、
【化1】

[式中、R=Hまたはグルコースである]
を有する活性分子の使用。
【請求項2】
前記基Rがグルコース分子である場合、前記分子はキルシマリンに該当することを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記基Rが水素原子の場合、前記分子はキルシマリチンに該当することを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
セルライトの局所的処置用に設計された化粧品組成物における請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
細胞外マトリックス成分の合成を刺激するように設計された組成物を製造するための請求項1に記載の使用。
【請求項6】
活性成分として、以下の式、
【化2】

[式中、R=HまたはR=グルコースである]
を有する分子を含有することを特徴とする化粧品組成物。
【請求項7】
前記基Rがグルコースである場合、キルシマリンであることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記基Rが水素である場合、キルシマリチンであることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
活性成分の濃度が0.0005重量%と10重量%との間であることを特徴とする請求項6に記載の化粧品組成物。
【請求項10】
前記活性成分は植物抽出物の形態であることを特徴とする請求項6に記載の化粧品組成物。
【請求項11】
前記植物抽出物はMicrotea debilisの抽出物であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記抽出物が乾燥形態である場合、前記抽出物が前記組成物の0.005重量%から20重量%を占めることを特徴する請求項10に記載の化粧品組成物。
【請求項13】
前記抽出物が液体形態の場合、前記抽出物が前記組成物の0.1重量%から20重量%を占めることを特徴する請求項10に記載の化粧品組成物。
【請求項14】
前記抽出物は植物全体の抽出物であることを特徴とする請求項10に記載の化粧品組成物。
【請求項15】
さらに、キサンチン塩基も含有することを特徴とする請求項6に記載の化粧品組成物。
【請求項16】
前記キサンチン塩基はカフェインであることを特徴とする請求項15に記載の化粧品組成物。
【請求項17】
前記カフェインが前記組成物の0.1重量%から10重量%を占めることを特徴する請求項16に記載の化粧品組成物。
【請求項18】
さらに化粧品として許容される賦形剤を含有することを特徴とする請求項6に記載の化粧品組成物。
【請求項19】
局所適用において、請求項6から18のいずれかに記載の化粧品組成物の有効量を局所的に適用することによるセルライト処置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−514082(P2006−514082A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−567801(P2004−567801)
【出願日】平成15年12月30日(2003.12.30)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003938
【国際公開番号】WO2004/069217
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505260338)
【Fターム(参考)】