説明

キースイッチ用部材およびこれを用いたキースイッチ

【課題】単純な構造でキートップの視認性を向上させることができる。
【解決手段】基板上に1つまたは複数の固定接点24を有するスイッチ基板14と、スイッチ基板14の上面側に所定の間隔を隔てて対向配置される透光性を有するキーシート18と、キーシート18の下面18cにおいて固定接点24と相対する位置に設けられた押し子26と、スイッチ基板14とキーシート18の間に配置された照明手段34と、キーシート18の上面18aにおいて、押し子26と相対する位置に配置されたキートップ20と、を有するキースイッチ10であって、キートップ20の下方におけるキーシート18の下面18cに、照明手段34からの光を集めるための集光領域30を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、電卓、パーソナルコンピュータ、リモートコントローラ等のキートップを有する電子機器に使用されるキースイッチ用部材およびこれを用いたキースイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の電子機器において、小型化、軽量化および操作性の向上が求められている。それに伴い、外観のデザイン性の向上も要求されるようになってきている。特に、電子機器に使用されるキースイッチに関しては、暗い場所においてもキースイッチの操作が可能となるような視認性も要求される。
【0003】
従来からのキースイッチに用いられるキーシートとしては、例えば、特許文献1に開示されているものが存在する。図11に示すように、特許文献1に開示されているキーシート100は、透光性樹脂フィルム101の上方に透光性の樹脂からなる複数のキートップ102を配置したキーシートユニット100Aと、透光性樹脂フィルム103に、キートップ102と対応するように透光性の樹脂からなる複数の押し子104を配置したキーシートユニット100Bと、から構成されている。キーシートユニット100Aにおけるキートップ102の反対側の面105とキーシートユニット100Bにおける押し子104の反対側の面106とが、透光性の接着剤を用いて貼り合わされている。さらに、キーシートユニット100Bを構成する透光性樹脂フィルム103における押し子104の反対側の面106には、押し子104の部分を避けるように反射材が印刷されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−285754号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キーシート100を、その下方に、LEDに代表される点発光の光源108を有するキースイッチに用いる場合、光源108からの光は、LED周辺以外では反対側の面105にて全反射する。したがって、光をキースイッチ内で反射させることにより、キーシート100全体の照明輝度を増幅させることはできる。しかし、キートップ102を効果的に明るくすることができないといった問題がある。
【0006】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、キートップの視認性を向上させることが可能なキースイッチ用部材およびこれを用いたキースイッチを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、基板上に1つまたは複数の固定接点を有するスイッチ基板と、スイッチ基板の上面側に所定の間隔を隔てて対向配置される透光性を有するキーシートと、キーシートの下面において固定接点と相対する位置に設けられた押し子と、スイッチ基板とキーシートとの間に配置された照明手段と、キーシートの上面において、押し子と相対する位置に配置されたキートップと、を有するキースイッチであって、キートップの下方におけるキーシートの下面部分に、照明手段からの光を集めるための集光領域を形成しているものである。
【0008】
このように構成した場合には、集光領域に光が集まるため、より多くの光をキートップに導くことができる。したがって、キートップをより明るくすることができ、その結果、キートップの視認性が向上すると共に、操作者は、キートップの操作を容易に行うことが可能となる。
【0009】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、集光領域の外周部には、スイッチ基板側に突出する突出部が設けられているものである。
【0010】
このように構成した場合には、該突出部の内部に入射した光を外に拡散しにくくし、より多くの光を集光できる。その結果、キートップの視認性がさらに向上する。
【0011】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、突出部は、その表面または内部に、照明手段からの光を乱反射させる加工が施されている。このように構成した場合には、突出部の表面または内部における集光によりキートップをより明るくすることができる。
【0012】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、押し子の先端には、照明手段からの光をキーシートに向けて反射させる面を有する反射部材が固定されているものである。
【0013】
このように構成した場合には、照明手段から照射された光が反射部材の表面で反射し、集光領域に入射する。したがって、さらに多くの光が集光領域に入射することになり、キートップの視認性を一層向上させることが可能となる。また、押し子の先端が反射部材に固定されているため、押し子と反射部材との位置を正確に位置決めできると共に、押し子が反射部材との接点から位置ずれするのを防止できる。したがって、キートップを押圧する際のストロークを一定に保つことが可能となる。
【0014】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、キーシートの上面または下面において、少なくともキートップが配置される領域以外の領域には遮光性を有する薄膜が形成されているものである。このように構成した場合には、光がキーシートにおいて薄膜が形成された部分を透過しにくくなる。このため、キートップの部分のみがより明るく照明される。したがって、キートップの視認性がより向上する。また、光を遮光するための遮光手段が、薄膜によって形成されているため、キースイッチ全体の薄型化を図ることができると共に、部品点数を削減できる。
【0015】
また、本発明は、上方にキートップを配置するためのキー領域を有し、実質的に平板状の透光性を有するキーシートと、キーシートの下面において、キー領域と相対する領域内に配置される押し子と、を有するキースイッチ用部材であって、キートップの下方におけるキーシートの下面部分に、光を集めるための集光領域を形成しているものである。
【0016】
このように構成した場合には、集光領域に光が集まるため、より多くの光をキートップに導くことができる。したがって、キートップをより明るくすることができ、その結果、キートップの視認性が向上すると共に、操作者は、キートップの操作を容易に行うことが可能となる。
【0017】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、集光領域の外周部には、スイッチ基板側に突出する突出部が設けられているものである。
【0018】
このように構成した場合には、該突出部の内部に入射した光を外に拡散しにくくし、より多くの光を集光できる。その結果、キートップの視認性がさらに向上する。
【0019】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、突出部は、その表面または内部に、光を乱反射させる加工が施されているものである。このように構成した場合には、突出部の表面または内部における集光によりキートップをより明るくすることができる。
【0020】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、押し子の先端には、キーシートに向けて光を反射させる面を有する反射部材が固定されているものである。
【0021】
このように構成した場合には、光が反射部材の表面で反射し、集光領域に入射する。したがって、さらに多くの光が集光領域に入射することになり、キートップの視認性を一層向上させることが可能となる。また、押し子の先端が反射部材に固定されているため、押し子と反射部材との位置を正確に位置決めできると共に、押し子が反射部材との接点から位置ずれするのを防止できる。したがって、キートップを押圧する際のストロークを一定に保つことが可能となる。
【0022】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、キーシートの上面または下面において、少なくともキートップが配置される領域以外の領域には遮光性を有する薄膜が形成されているものである。このように構成した場合には、光がキーシートにおいて薄膜が形成された部分を透過しにくくなる。このため、キートップの部分のみがより明るく照明される。したがって、キートップの視認性がより向上する。また、光を遮光するための遮光手段が、薄膜によって形成されているため、キースイッチ用部材全体の薄型化を図ることができると共に、部品点数を削減できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、単純な構造でキートップの視認性を向上させることが可能なキースイッチ用部材およびこれを用いたキースイッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係るキースイッチ10について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、携帯電話に使用されるキースイッチ10と携帯電話の前面パネル16との位置関係を示す分解斜視図である。図2は、キースイッチ10の斜視図である。
【0026】
図1に示すように、キースイッチ10は、キースイッチ用部材12と、スイッチ基板14と、キートップ20と、から主に構成されている。また、キースイッチ10の上方には、携帯電話の筐体の一部を構成する前面パネル16が配置される。
【0027】
キースイッチ用部材12は、略長方形の平板状のキーシート18を有している。また、キースイッチ用部材12の上方には、操作者が携帯電話の各種操作を行うための複数のキートップ20が配置されている。該キートップ20のそれぞれには、種々の文字、記号および数字が表されている。スイッチ基板14は、略長方形の平板状の部材であり、その上面には、配線パターンがプリントされたプリント基板部22が設けられている。また、プリント基板部22上には、複数の固定接点24が設けられている。前面パネル16は、キートップ20と相対するように設けられたキー孔16aおよび携帯電話のディスプレイを臨むために設けられた窓16bを有している。
【0028】
図1および図2に示すように、スイッチ基板14におけるプリント基板部22の上方にキースイッチ用部材12が配置され、さらに、キースイッチ用部材12の上方に前面パネル16が配置される。この際、各キートップ20が、前面パネル16に設けられたキー孔16aの内部にそれぞれ挿入される。各キートップ20は、前面パネル16の表面から露出する。また、キースイッチ用部材12をスイッチ基板14の上方に配置した状態では、図2に示すように、キースイッチ用部材12とスイッチ基板14との間には、所定の間隔Hがある。
【0029】
図3は、図2におけるA−A線で切断した断面の一部を示す部分断面図である。図4は、図3中のキースイッチ用部材12の構成を示す断面図である。
【0030】
まず、キースイッチ用部材12について説明する。キースイッチ用部材12は、図3に示すように、キースイッチ10の一部を構成する部材である。また、キースイッチ用部材12は、図4に示すように、キーシート18と、押し子26と、から主に構成されている。
【0031】
キーシート18は、上述したように略長方形の形状を有する透光性の樹脂フィルムから成っている。キーシート18の素材としては透光性を有する限り、特に限定されるものではない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリブチレンナフタレート(PBN)樹脂、ポリエチレンエラストマー樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、スチレン系ポリマー、フッ素樹脂およびポリイミド等が使用できる。また、キーシート18の厚みは、0.025mm以上0.2mm以下の範囲とするのが好ましい。
【0032】
キーシート18の上面18aには、図3に示すように、キートップ20を配置するためのキー領域18bが設けられている。また、キーシート18の下面18cにおいて、キー領域18bと相対する部位には、後述する照明手段の一形態であるLED34からの光を集める集光領域30が形成されている。集光領域30には、凹凸形状または波形形状が形成されている。該凹凸形状や波形形状は、キーシート18の下面18cにシボ加工を施すことにより形成されている。しかし、これに限定されることなく、ヘアライン処理、溝形成処理またはつや消し加工等を施すことによって、集光領域30を形成しても良い。本実施の形態では、シボ加工は、集光領域30全体に均一な粗さとなるように施されているが、これに限定されることなく、集光領域30内において、異なる粗さを有するエリアを設けるようにしても良い。なお、集光領域30の表面粗さは、Ra値で0.2μm以上10.0μm以下の範囲であれば差しつかえないが、さらに好ましい範囲は、Ra値で1.5μm以上3.0μm以下の範囲である。また、シボ加工は、金型成形によって行われるが、特に限定されることはなく、サンドブラスト等の他の方法によって行うようにしても良い。集光領域30にシボ加工を行うことによって、後述するLED34からの光を集光領域30で乱反射させてキートップ20内に導くことができる。
【0033】
また、キーシート18の下面18cにおいて、キー領域18aの略中央部と相対する部位には、押し子26が設けられている。押し子26は、キーシート18の集光領域30内から下方に突出するように設けられている。すなわち、押し子26は、キートップ20の配列に対応するように設けられている。押し子26の材料としては、例えば、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートまたはアクリルモノマー等の紫外線硬化型の樹脂(以下、UV樹脂という。)あるいはシリコーンゴムに代表される熱硬化性エラストマーやウレタン系あるいはスチレン系等の熱可塑性エラストマー等が挙げられるが、光透過率の良い材料を用いるのが好ましい。しかし、これらの材料に特に限定されるものではない。
【0034】
押し子26は、以下の方法によって、キーシート18に固定される。
【0035】
押し子26の形状を有する溝部が彫られた石英ガラスを用意し、該溝部にUV樹脂を注入する。さらに、キーシート18を石英ガラスの上方に配置し、石英ガラスの下方から紫外線を照射する。すると、紫外線の照射により、UV樹脂が硬化すると共に、キーシート18に固定される。以上のようにして、押し子26は、キーシート18に固定される。
【0036】
キーシート18の上面18aにおいてキー領域18b以外の領域には、遮光性を有する薄膜32が形成されている。薄膜32は、印刷法を用いて形成されているが、これに限定されることなく、蒸着等の他の方法によって形成するようにしても良い。薄膜32を形成することによって、後述するLED34からの光は、キーシート18においてキー領域18b以外の領域から入射せず、キー領域18bからのみ入射することとなる。
【0037】
次に、キースイッチ10について説明する。キースイッチ10は、上述したように、キースイッチ用部材12と、スイッチ基板14と、キートップ20と、メタルドーム28と、LED34と、から構成されている。
【0038】
図3に示すように、キーシート18におけるキー領域18bには、接着剤36を介在させてキートップ20が配置される。キートップ20は、操作者が押圧して信号を入力するための操作領域である。上述したように、キートップ20のそれぞれには、種々の文字、記号および数字が表されている。また、キートップ20は、キーシート18の上面18aにおいて押し子26と相対する位置に配置されている。このため、キートップ20を押圧すると、押し子26は下方に移動する。
【0039】
キートップ20を形成する素材は、特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性樹脂としてポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン(PB)、アイオノマー、エチレン/酢酸ビニル樹脂(E/VAC)、エチレン/ビニルアルコール樹脂(E/VAL)、ポリメチルペンテン(PMP)、環状オレフィン共重合体(COC)、塩素化ポリエチレン(PE−C)等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、塩素化ポリ塩化ビニル(PVC−C)等の塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン(PS)、スチレン/アクリロニトリル樹脂(SAN)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、スチレン/N−フェニルマレイミド樹脂、スチレン/無水マレイン酸樹脂等のスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド46(PA46)、ポリアミドMXD6(PA MXD6)、変性ポリアミド6T、モノマーキャスティングポリアミド等のポリアミド(PA)類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)等の熱可塑性ポリエステル類、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)等のポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロポレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(E/TFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂類、液晶ポリエステル(LCP)等の液晶ポリマー、ポリアクリレート(PAR)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)等の熱可塑性イミド系樹脂、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールケトン(PAEK)、脂肪族ポリケトン(APK)等のケトン系樹脂、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のスルホン系樹脂、ポリベンズイミダゾール(PBI);ポリパラバン酸(PPA)レーヨン、セロファン、セルロースエステル、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、セルロースエーテル、エチルセルロース等の多糖類、ガラス繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP)類を挙げることができる。
【0040】
また、キートップ20を構成するその他の素材としては、例えば、熱硬化性樹脂を採用することもできる。具体的には、フェノール樹脂(PF)、ユリア樹脂(UF)、メラミン樹脂(MF)、不飽和ポリエステル(UP)、アルキド樹脂、シリコーン樹脂(SI)、エポキシ樹脂(EP)、ウレタン樹脂(PUR)、ポリビニルエステル、ポリフタル酸ジアリル(PDAP)、ポリイミド(PI)、ビスマレイミド・トリアジン樹脂(BTレジン)、フラン樹脂(FF)、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、マレイン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD)、熱硬化性強化プラスチック(FRP)等を挙げることができる。さらに、キートップ20を構成するその他の素材として、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートまたはアクリルモノマー等の紫外線硬化型の樹脂を採用しても良い。
【0041】
また、接着剤36としては、紫外線硬化型の接着剤を採用するのが好ましいが、特に限定されるものではない。紫外線硬化型接着剤としては、例えば、エポキシ基やビニル基を有するカチオン重合性化合物及び紫外線照射によりカチオンを発生するカチオン重合開始剤を含むカチオン重合型の接着剤と、ラジカル重合性不飽和基を有するラジカル重合性化合物及び紫外線照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤を含むラジカル重合型の接着剤が挙げられる。また、接着剤36として、例えば、エポキシ系樹脂を用いたカチオン重合型光硬化接着剤やアクリル系樹脂を用いたラジカル重合型光硬化接着剤等の光硬化型接着剤を採用しても良い。
【0042】
図3に示すように、押し子26の先端には、スイッチ基板14側に開口する湾曲状のメタルドーム(反射部材の一例)28が取り付けられている。押し子26の先端は、メタルドーム28の天頂部28aに接着剤によって固定されている。接着剤としては、例えば、合成ゴム系接着剤、クロロプレン系合成ゴム接着剤、ニトリルゴム系合成ゴム接着剤、SBR系合成ゴム接着剤またはSBR系テラックス型合成ゴム接着剤等のゴム系の接着剤を採用するのが好ましいが、これらに限定されるものではなく、シリコーン系接着剤等の他の種類の接着剤を採用しても良い。
【0043】
メタルドーム28は、天頂部28aを下方に向かって押し下げ、その押し下げる力を解除すると元の状態に戻る、いわゆる復元性を有する。また、メタルドーム28は、一般的に板厚40μm以上70μm以下の範囲の金属製の薄板を、ドーム形状にプレス成形した部材である。メタルドーム28の材料としては、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム、銅、亜鉛、チタン等の合金類が採用されるが、特にステンレス系の金属を用いるのが好ましい。
【0044】
上述したように、キースイッチ用部材12は、キートップ20とメタルドーム28が取り付けられた状態で、スイッチ基板14のプリント基板部22上に配置される。すると、図3に示すように、スイッチ基板14の上方に所定の間隔Hを隔ててキーシート18が対向配置される。この状態では、メタルドーム28の開口端がプリント基板部22と接した状態となっている。また、キースイッチ用部材12は、押し子26がスイッチ基板14上に設けられた固定接点24と相対する位置となるよう配置される。したがって、キートップ20を押圧すると、押し子26を介して、メタルドーム28に圧力が加えられる。そして、押し子26の下方への移動に伴い、メタルドーム28が弾性変形し、メタルドーム28の天頂部28aと相対する部分が固定接点24に接触する。これにより、携帯電話の制御部へ信号が送信される。また、キートップ20の押圧を解放すると、メタルドーム28の復元力により、押し子26が元の位置まで復帰する。それに伴い、メタルドーム28も固定接点24から離れる。
【0045】
また、スイッチ基板14上には、LED34が配置されている。LED34以外の照明手段として、例えば、酸化亜鉛を用いた蛍光発光素子、同じく酸化亜鉛を利用する高精細な酸化亜鉛ナノピット発光アレイ等を用いても良い。
【0046】
LED34から照射された光は、LED周辺を除きキーシート18とスイッチ基板14との間の空間を反射しながら進行していく。そして、光の一部は、直接、集光領域30に入射し、該集光領域30に形成された凹凸形状または波状形状によって乱反射した後、キーシート18を透過し、キートップ20内に入射する。また、光の一部は、メタルドーム28の表面で反射した後、集光領域30に入射する。そして、該集光領域30に形成された凹凸形状または波状形状によって乱反射した後、キーシート18を透過し、キートップ20内に入射する。なお、キーシート18においてキー領域18b以外の領域には、遮光性を有する薄膜32が形成されているため、光は、キーシート18における当該部分を透過しにくくなっている。
【0047】
以上のように構成されたキースイッチ10では、凹凸形状または波形形状の集光領域30が形成されている。そのため、集光領域30に入射した光は、集光領域30に施された凹凸形状または波形形状において乱反射する。このように、集光領域30で光が乱反射するため、より多くの光をキートップ20内に導くことが可能となる。また、集光領域30の表面粗さは、Ra値で1.5μm以上3.0μm以下の範囲が好ましい。かかるRaの範囲を採用すると、一層多くの光を集光領域30で乱反射させることができる。その結果、キートップ20の視認性が向上し、操作者は、キートップ20の操作を容易に行うことが可能となる。
【0048】
また、キースイッチ10では、キーシート18の上面18aにおけるキー領域18b以外の領域に遮光性を有する薄膜32が形成されている。したがって、集光領域30以外の部分に入射した光は薄膜32により反射し、吸収される。このため、キートップ20にのみ光が入射する。その結果、キートップ20の視認性がより向上し、操作者は、キートップ20の操作を容易に行うことが可能となる。また、薄膜32を遮光手段とすることで、キースイッチ10全体の薄型化を図ることができると共に、部品点数を削減できる。
【0049】
また、キースイッチ10では、押し子26の下端にメタルドーム28が固定されている。そのため、LED34から照射された光がメタルドーム28の表面で反射して、集光領域30に入射する。したがって、より多くの光が集光領域30に入射することとなり、キートップ20の視認性が、さらに向上する。また、押し子26の下端がメタルドーム28の天頂部28aに固定されているため、押し子26がメタルドーム28との接点から位置ずれするのを防止できる。したがって、キートップ20を押圧する際のストロークを一定に保つことが可能となる。
【0050】
また、キーシート18には、複数のキートップ20が配置されており、該キーシート18は、スイッチ基板14と所定の間隔Hを隔てて配置されている。そのため、間隔Hを調節することによって、全てのキートップ20のLED34に対する距離を変えることができる。したがって、キートップ20に入射する光の量を容易に調節することが可能となる。
【0051】
次に、集光領域30の表面粗さを、キートップ20の位置によって変える例について説明する。
【0052】
図5は、LED34との距離に応じてキートップ20a〜20lに入射する光の量を調節する方法を説明するための図である。
【0053】
図5に示すように、4つのLED34をキーシート18の四隅の下面に配置し、キーシート18上に12個のキートップ20a〜20lを設けると共に、該キートップ20a〜20lと相対するようにキーシート18の下面に集光領域30a〜30lを形成する。この場合、LED34とキートップ20a〜20lとの距離に応じて、集光領域30a〜30lの表面粗さをそれぞれ変えると、各キートップ20a〜20l内における光量のバラツキを軽減することが可能である。例えば、各LED34から最も近い位置に形成されている集光領域30a,30c,30j,30lの表面粗さを小さくし、各LED34から最も遠い位置に形成されている集光領域30e,30hの表面粗さを最も大きくする。また、LED34からの距離が、集光領域30a,30c,30j,30lよりも遠く、集光領域30e,30hよりも近い位置に形成されている集光領域30b,30d,30f,30g,30i,30kの表面粗さについては、集光領域30e,30hの表面粗さより大きく、集光領域30a,30c,30j,30lの表面粗さより小さい粗さに設定する。このように、LED34からの距離に応じて、各キートップ20a〜20lの下方に形成される各集光領域30a〜30lの表面粗さを変えることにより、各キートップ20a〜20l間でより均一な照光を実現できる。
【0054】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るキースイッチ40について、図面を参照しながら説明する。なお、第2の実施の形態に係るキースイッチ40において、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。なお、第2の実施の形態では、集光領域46の構成が異なるため、その相違部分について説明する。
【0055】
図6は、第2の実施の形態に係るキースイッチ40を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面の一部を示す部分断面図である。図7は、図6中のキースイッチ用部材42の構成を示す断面図である。
【0056】
キースイッチ40は、図6に示すように、キースイッチ用部材42と、スイッチ基板14と、キートップ20と、メタルドーム28と、LED34と、から構成されている。キースイッチ用部材42は、図6に示すように、キースイッチ40の一部を構成している。また、キースイッチ用部材42は、図7に示すように、キーシート18と、押し子26と、から主に構成されている。
【0057】
キーシート18は、略長方形の形状を有する透光性の樹脂フィルムから成っている。キーシート18の上面18aには、図7に示すように、キートップ20を配置するためのキー領域18bが設けられている。また、キーシート18の下面18cにおいて、キー領域18bと相対する部位には集光領域46が設けられている。集光領域46は、キートップ20の外形と同様な形状をしており、下面18cにおいて押し子26を中心とした一定の範囲を占めている。集光領域46の外周部からは全周に亘って下方に向かって突出する突出部46aが設けられている。突出部46aの断面形状は、略四角形の形状を有している。突出部46aの縦方向の厚みは、0.1mm以上1.0mm以下の範囲とするのが好ましい。
【0058】
集光領域46の突出部46aおよび内周部46bの双方には、凹凸形状または波形形状が形成可能である。該凹凸形状や波形形状は、シボ加工を施すことにより形成可能である。本実施の形態では、シボ加工は集光領域46全体に均一な粗さとなるように施されているが、これに限定されることなく、集光領域46内において異なる粗さを有するエリアを設けるようにしても良い。なお、集光領域46の表面粗さは、Ra値で1.5μm以上3.0μm以下の範囲とするのが好ましい。
【0059】
以上のように構成されたキースイッチ40では、突出部46aが設けられている。このため、該突出部46aにおいて、さらに多くの光を集光できると共に、集光された光を該突出部46aに形成された凹凸形状または波形形状において乱反射させることができる。また、内周部46bに入射した光は、突出部46aの形成により外部に漏れにくく、該内周部46bに形成された凹凸形状または波形形状において乱反射し、キートップ20内に入射する。したがって、キートップ20に、より多くの光を導くことが可能となり、キートップ20の視認性がさらに向上する。また、この実施の形態においても、図5に基づく説明と同様、LED34との距離に応じて各集光領域46の表面粗さを変えることによって、キートップ20に導かれる光の量を調節することができ、その結果、複数のキートップ20の明るさを均一にすることができる。
【0060】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係るキースイッチ50について、図面を参照しながら説明する。なお、第3の実施の形態に係るキースイッチ50において、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。なお、第3の実施の形態では、キースイッチ用部材52の構成が異なるため、その相違部分について説明する。
【0061】
図8は、第3の実施の形態に係るキースイッチ50を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面の一部を示す部分断面図である。図9は、図8中のキースイッチ用部材52の構成を示す断面図である。
【0062】
キースイッチ50は、図8に示すように、キースイッチ用部材52と、スイッチ基板14と、キートップ20と、LED34と、から構成されている。また、キースイッチ用部材52は、図9に示すように、キーシート18と、押し子26と、メタルドーム28と、から主に構成されている。本実施の形態では、メタルドーム28が予め押し子26の先端に取り付けられている点が、第1の実施の形態と異なる。具体的には、押し子26の先端がメタルドーム28の天頂部28aに接着剤によって固定されている。接着剤としては、合成ゴム系接着剤、クロロプレン系合成ゴム接着剤、ニトリルゴム系合成ゴム接着剤、SBR系合成ゴム接着剤またはSBR系テラックス型合成ゴム接着剤等のゴム系の接着剤を採用するのが好ましいが、これらに限定されるものではなく、シリコーン系接着剤等の他の種類の接着剤を採用しても良い。
い。
【0063】
押し子26の下端にメタルドーム28が配置されているため、LED34から照射された光がメタルドーム28の表面で反射して、集光領域30に入射する。したがって、より多くの光が集光領域30に入射することとなり、キートップ20の視認性が、さらに向上する。特に、押し子26の下端に予めメタルドーム28が固定されているため、押し子26とメタルドーム28との位置を正確に位置決めできると共に、押し子26がメタルドーム28との接点から位置ずれするのを防止できる。したがって、キートップ20を押圧する際のストロークを一定に保つことが可能となる。また、この実施の形態においても、図5に基づく説明と同様、LED34との距離に応じて各集光領域30の表面粗さを変えることによって、キートップ20に導かれる光の量を調節することができ、その結果、複数のキートップ20の明るさを均一にすることができる。
【0064】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0065】
上述の各実施の形態では、キーシート18においてキー領域18b以外の領域に薄膜32が設けられているが、キー領域18bの外部からキー領域18bの内部に渡って薄膜32を設けるようにしても良い。また、薄膜32をキー領域18bの外部の領域と離してキー領域18bの内部に設けるようにしても良い。さらに、薄膜32を設けないようにしても良い。
【0066】
また、上述の第2の実施の形態では、突出部46aの断面形状は、略四角形とされているが、これに限定されることなく、半円形等、他の曲面を有する形状としても良い。また、突出部46aは、集光領域46に置ける外周部近傍に全周に亘って設けられているが、外周に沿って分割して設けるようにしても良い。
【0067】
上述の第2の実施の形態と第3の実施の形態を組み合わせたキースイッチ用部材60としても良い。具体的には、キースイッチ用部材60は、図10に示すように、集光領域46に突出部46aが設けられる共に、メタルドーム28が押し子26の先端に固定された形態を有する。
【0068】
また、上述の各実施の形態では、集光領域30,46は、キー領域18bと相対する領域に形成されているが、これに限定されることなく、該領域よりも大きな面積となるように形成しても良いし、小さな面積となるように形成しても良い。また、該領域と異なる領域に集光領域30,46を形成するようにしても良い。
【0069】
また、上述の各実施の形態では、押し子26の先端には、メタルドーム28が固定されているが、これに限定されることなく、メタルドーム28以外に、その表側に光を反射させる面を有する反射部材を配置するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のキースイッチ用部材およびキースイッチは、キートップを有する電子機器に使用されるにキースイッチにおいて利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るキースイッチを携帯電話に使用した場合のキースイッチと携帯電話の前面パネルとの位置関係を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るキースイッチの斜視図である。
【図3】図2におけるA−A線で切断した断面の一部を示す部分断面図である。
【図4】図3中のキースイッチ用部材の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るキースイッチにおいて、LEDとの距離に応じてキートップに入射する光の量を調節する方法を説明するための図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るキースイッチを、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面の一部を示す部分断面図である。
【図7】図6中のキースイッチ用部材の構成を示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るキースイッチを、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面の一部を示す部分断面図である。
【図9】図7中のキースイッチ用部材の構成を示す断面図である。
【図10】本発明のキースイッチ用部材の変形例を示す図である。
【図11】従来のキースイッチ用部材の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
10…キースイッチ
12…キースイッチ用部材
14…スイッチ基板
18…キーシート
18a…上面
18c…下面
20…キートップ
24…固定接点
26…押し子
28…メタルドーム(反射部材)
30…集光領域
34…LED(照明手段)
40…キースイッチ
42…キースイッチ用部材
46…集光領域
50…キースイッチ
52…キースイッチ用部材
60…キースイッチ用部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に1つまたは複数の固定接点を有するスイッチ基板と、
上記スイッチ基板の上面側に所定の間隔を隔てて対向配置される透光性を有するキーシートと、
上記キーシートの下面において上記固定接点と相対する位置に設けられた押し子と、
上記スイッチ基板と上記キーシートとの間に配置された照明手段と、
上記キーシートの上面において、上記押し子と相対する位置に配置されたキートップと、
を有するキースイッチであって、
上記キートップの下方における上記キーシートの下面部分に、上記照明手段からの光を集めるための集光領域を形成していることを特徴とするキースイッチ。
【請求項2】
前記集光領域の外周部には、前記スイッチ基板側に突出する突出部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のキースイッチ。
【請求項3】
前記突出部は、その表面または内部に、前記照明手段からの光を乱反射させる加工が施されていることを特徴とする請求項1または2記載のキースイッチ。
【請求項4】
前記押し子の先端には、前記照明手段からの光を前記キーシートに向けて反射させる面を有する反射部材が固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のキースイッチ。
【請求項5】
前記キーシートの上面または下面において、少なくとも前記キートップが配置される領域以外の領域には遮光性を有する薄膜が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のキースイッチ。
【請求項6】
上方にキートップを配置するためのキー領域を有し、実質的に平板状の透光性を有するキーシートと、
上記キーシートの下面において、上記キー領域と相対する領域内に配置される押し子と、
を有するキースイッチ用部材であって、
上記キートップの下方における上記キーシートの下面部分に、光を集めるための集光領域を形成していることを特徴とするキースイッチ用部材。
【請求項7】
前記集光領域の外周部には、前記スイッチ基板側に突出する突出部が設けられていることを特徴とする請求項6記載のキースイッチ用部材。
【請求項8】
前記突出部は、その表面または内部に、光を乱反射させる加工が施されていることを特徴とする請求項6または7記載のキースイッチ用部材。
【請求項9】
前記押し子の先端には、前記キーシートに向けて光を反射させる面を有する反射部材が固定されていることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項記載のキースイッチ用部材。
【請求項10】
前記キーシートの上面または下面において、少なくとも前記キートップが配置される領域以外の領域には遮光性を有する薄膜が形成されていることを特徴とする請求項6から9のいずれか1項記載のキースイッチ用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−234532(P2007−234532A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57951(P2006−57951)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】