キースイッチ用部材
【課題】簡単な作業で、装飾部を樹脂層に対して強固に固定すること。
【解決手段】複数の操作領域であるキートップ部18を有する金属製の操作シート12と、操作シート12の裏側に配置される樹脂層20と、を有するキースイッチ用部材10であって、キートップ部18の周囲または内部に、操作シート12を貫通する貫通孔17を有し、樹脂層20を、当該貫通孔に挿入された部分24にて、キートップ部18と固定する。
【解決手段】複数の操作領域であるキートップ部18を有する金属製の操作シート12と、操作シート12の裏側に配置される樹脂層20と、を有するキースイッチ用部材10であって、キートップ部18の周囲または内部に、操作シート12を貫通する貫通孔17を有し、樹脂層20を、当該貫通孔に挿入された部分24にて、キートップ部18と固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、電卓、パーソナルコンピュータ、リモートコントローラ等のキートップを有する電子機器に使用されるキースイッチ用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の電子機器の薄型化に伴い、これら電子機器に用いられるキースイッチの薄型化も要求されている。これらの要求に応えるため、キースイッチを構成するキースイッチ用部材では、薄型のシートや薄肉状の部材を重ねて配置させるような構成が採用されている。
【0003】
特許文献1に開示されているキースイッチ用部材100は、図13に示すように、文字表示部101を有するメタルキー102と、基材となるキーパッド103と、から主に構成されている。キーパッド103の裏面の所定の位置には、下方に向かって突出する押圧子104が設けられている。また、該キーパッド103の表面において押圧子104と対応する位置には、メタルキー102が接着剤を介在させて配置されている。
【0004】
【特許文献1】PCT/WO2005/088945(Fig.3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているキースイッチ用部材100では、メタルキー102がキーパッド103の表面に接着剤を介在させて配置されている。このため、接着剤の内部に気泡が入ったり、接着剤が接着面の全面に均一に行きわたらなかったりすると、接着ムラが生じ、メタルキー102とキーパッド103とが接着不良を起こすという問題がある。また、接着ムラを無くそうとすると、メタルキー102とキーパッド103との接着面に特殊な加工を施すことが必要となり、作業工程が増加してしまう。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な作業で、操作シートを樹脂層に対して強固に固定することができるキースイッチ用部材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の操作領域であるキートップ部を有する金属製の操作シートと、操作シートの裏側に配置される樹脂層と、を有するキースイッチ用部材であって、キートップ部の周囲または内部に、操作シートを貫通する貫通孔を有し、樹脂層は、当該貫通孔に挿入された部分にて、キートップ部と固定されるものである。
【0008】
このように構成した場合には、貫通孔に樹脂層の一部を挿入することによって、樹脂層をキートップ部と固定することが可能となる。このように、樹脂層の一部を貫通孔に挿入するという簡単な作業で樹脂層をキートップ部に対して固定できるため、プライマーの塗布あるいは貼り合わせ等の工程を必要とすることがなくなり、作業工程を削減することが可能となる。
【0009】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、操作シートの外周に、操作シートの裏側から延出する樹脂層の端部を被せて固定しているものである。このように構成した場合には、操作シートの外周部も樹脂層に対して固定されるため、操作シートを樹脂層に対してより強固に固定することが可能となる。
【0010】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、貫通孔の内周面には、操作シートの表面側の方が裏面側よりも開口面積が広くなるような段部若しくはテーパ部が形成されているものである。このように構成した場合には、樹脂層において貫通孔に挿入された部分が段部若しくはテーパ部に嵌まり込む。そのため、樹脂層を段部若しくはテーパ部において固定することが可能となる。その結果、樹脂層が操作シートの表面から突出するのを抑制することができる。
【0011】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、キートップ部の表面には、凹凸または貫通孔を用いて形成される数字、記号、模様または絵等の文字部を有するものである。このように構成した場合には、各キートップ部の機能を認識することが可能となる。
【0012】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、操作シートにおける樹脂層との接触面に凹凸を形成したものである。このように構成した場合には、操作シートと樹脂層との接触面積の増加、および上記接触面に形成された凹凸形状の効果により、操作シートと樹脂層との密着性が向上する。したがって、操作シートが樹脂層から外れにくくなると共に、操作シートが樹脂層に対して位置ずれするのを防止できる。
【0013】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、樹脂層は、熱可塑性エラストマーからなるものである。このように構成した場合には、樹脂層にほこりや着色不純物が付着するのを防止できる。そのため、樹脂層の表面が汚れることや変色することを防止できる。また、架橋を行う必要がなくなるため、硬化時間が短縮される。その結果、成形時間を短縮することが可能となる。
【0014】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、樹脂層は、透光性を有するものである。このように構成した場合には、キースイッチ用部材をその表面側から臨んだ場合、キースイッチ用部材の裏面側から発光する内部光源の光を視認し易くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、簡単な作業で、装飾部を樹脂層に対して強固に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係るキースイッチ用部材10について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るキースイッチ用部材10を、操作シート12とその裏側に配置される下層部14とに分解した状態を示す分解斜視図である。また、図2は、第1の実施の形態に係るキースイッチ用部材10の斜視図である。
【0018】
図1に示すように、キースイッチ用部材10は、その最も表面側に配置される操作シート12と、その裏側に配置される下層部14と、から主に構成されている。操作シート12と下層部14の外形は略同一形状を有している。
【0019】
操作シート12は、外形が略長方形の形状を有し、下層部14の表面を覆う薄肉状のシートである。操作シート12は、数字の「0」から「9」、アスタリスク(*)およびシャープ(#)の形状を有する合計12個の操作孔(貫通孔の一形態)16aと、操作孔16aの上方に設けられる上下左右方向を指す矢印の形状を有する操作孔(貫通孔の一形態)16bと、操作孔16bの内側に円周を4分割するように設けられる操作孔(貫通孔の一形態)16cと、操作孔16bの左右にそれぞれ設けられる操作孔(貫通孔の一形態)16dと、を有する。各操作孔16a,16b,16c,16dは、操作シート12を貫通するように形成されている。以下、操作孔16a,16b,16c,16dを総称する際には、単に、「操作孔16」という。
【0020】
また、操作シート12には、隣接する操作孔16aの区分けをするような波線状の区分溝(貫通孔の一形態)17が設けられている。区分溝17は、操作シート12を貫通するように形成されている。区分溝17によって、各操作孔16aが区分けされることにより、操作シート12には、合計12個の操作領域となるキートップ部18が形成されている。また、操作シート12は、上下左右の操作を行うための略円形状を有する円形キートップ部19を有しており、操作孔16b,16cは、該円形キートップ部19内に設けられている。これらキートップ部18および円形キートップ部19は、操作者が押圧して信号を入力するための領域である。さらに、操作シート12の裏面には、ブラスト加工等により微細な凹凸形状が形成されている。
【0021】
操作シート12の素材は、金属であれば特に限定されるものではなく、例えば、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム、銅、亜鉛、チタン、あるいはこれらから成る各種合金等から成る。また、操作シート12の厚みは、0.1mm以上0.5mm以下の範囲とするのが好ましい。
【0022】
図1に示すように、下層部14は、操作シート12と外形が略同一の略長方形の形状を有する。また、下層部14の最も表面側の層となる樹脂層20の表面32には、数字の「0」から「9」、アスタリスク(*)およびシャープ(#)の形状を有する合計12個の装飾部22aと、上下左右の操作を明示するための装飾部22bと、装飾部22bの内側に円周を4分割するように設けられる装飾部22cと装飾部22bの左右にそれぞれ設けられた装飾部22dが設けられている。以下、装飾部22a,22b,22c,22dを総称する際には、単に、「装飾部22」という。
【0023】
樹脂層20の表面32には、隣接する装飾部22aを区分けするような波線状の区分部24が設けられている。装飾部22および区分部24は、共に樹脂層20の表面32から操作シート側に向かって突出するように形成されている。また、装飾部22a,22b,22c,22dおよび区分部24は、操作孔16a,16b,16c,16dおよび区分溝17とそれぞれ対応する位置で、かつそれぞれに対応する形状にて樹脂層20の表面32に設けられている。そのため、図2に示すように、操作シート12を下層部14の表側に配置した場合、装飾部22a,22b,22c,22dおよび区分部24は、それぞれ操作孔16a,16b,16c,16dおよび区分溝17に嵌まり込む。なお、操作シート12と樹脂層20は、操作シート12を所定の型にインサートし、熱可塑性樹脂を射出成形することによって一体化される。
【0024】
図3は、図2におけるA−A線で切断した断面を示す図である。
【0025】
図3に示すように、下層部14は、樹脂層20と、その裏側に配置される薄膜層26と、薄膜層26の裏側に配置される押圧層28と、から構成されている。
【0026】
樹脂層20は、略長方形の形状をした透光性を有するシートである。樹脂層20の素材としては、例えば、スチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系、ウレタン系、エステル系、アミド系等、若しくは、これらの2種以上から成るアロイ、共重合体等の変性物からなる熱可塑性エラストマーが挙げられる。その内、耐熱性、耐候性および耐屈折性等の耐久性に優れているエステル系の熱可塑性エラストマーを採用するのが好ましい。しかし、樹脂層20の材料は、これらの材料に特に限定されるものではない。また、樹脂層20の硬さは、タイプDデュロメータに準拠した測定方法においてショアD40程度が好ましい。
【0027】
樹脂層20は、薄肉状のシート部20aと、装飾部22と、区分部24と、保持部20bと、から構成されている。図3に示すように、装飾部22および区分部24は、シート部20aの所定の位置から表側に向かって突出するように設けられている。装飾部22の断面形状は、各操作キーによって異なる。区分部24は、表側に突出する表側突出部24aと、該表側突出部24aの頂部から左右両側に向かって突出する側方突出部24b,24bとから構成されており、その断面は、図3に示すように、アルファベットのT字状の形態を有している。また、樹脂層20の外周からは、操作シート12の外周を保持するための断面略L字状の保持部20bが延出している。保持部20bは、シート部20aの外周から表側に向かって立ち上がる立設部20cと、その先端から内方に向かって延出する内方延出部20dとを有する。
【0028】
樹脂層20の裏側には、装飾部22および区分部24と相対する位置に着色領域27を有する薄膜層26が配置されている。そのため、操作者が、キースイッチ用部材10を表側から臨んだ場合、装飾部22および区分部24を介して着色領域27の色彩を視認することが可能となる。薄膜層26は、樹脂層20の裏面に印刷法を用いて形成されているが、これに限定されることなく、蒸着等の他の方法によって形成するようにしても良い。また、樹脂層20の裏面ではなく、押圧層28の表面または裏面に形成するようにしても良い。
【0029】
上述したように、薄膜層26の裏側には、押圧層28が配置されている。薄膜層26と押圧層28とは、薄膜層26の裏面26aと押圧層28の表面28aとの間に接着剤を介在させることにより固定されている。押圧層28は、樹脂層20の外形と略同一形状であり、かつ略長方形の形状を有する押圧シート29と、押圧子30とから構成されている。押圧子30は、押圧シート29の裏面29aにおいて、装飾部22と相対する位置に設けられている。また、押圧子30は、裏面29aから裏側に向かって突出するように設けられている。押圧層28および押圧子30の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリコーンゴムに代表される熱硬化性エラストマーやウレタン系あるいはスチレン系等の熱可塑性エラストマーやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリルもしくはウレタン等の熱可塑性樹脂や光透過率の良い材料が挙げられる。押圧子30は、予め別部材として形成し、押圧シート29に接着剤によって一体化するようにしても良い。また、押圧シート29に光硬化性樹脂を一体成形することによって押圧子30を形成するようにしても良い。
【0030】
図3に示すように、下層部14の表面32上に操作シート12を配置した状態では、区分溝17の内部に区分部24が挿入され、側方突出部24b,24bが該区分溝17から操作シート12の表側に突出している。このため、下層部14は、操作シート12にしっかり固定され、容易に分離できない。また、保持部20bは、操作シート12の外周にあって、裏側から該操作シート12の外周を覆うように延出している。このため、操作シート12の外周は、保持部20bによってしっかりと保持されている。
【0031】
また、操作シート12が下層部14の表側に配置された状態では、キートップ部18における操作孔16には、装飾部22が挿入されている。さらに、操作シート12が表面に露出している露出面35には、透光性を有する樹脂シート36が配置されている。また、樹脂シート36の一部には、不図示の印刷層または着色層が設けられている。なお、これらの印刷層および着色層を金属からなる金属薄膜層としても良い。露出面35上に該樹脂シート36を配置することにより、操作シート12の表面が傷つきにくくなる。樹脂シート36の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチエレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリアミド(PA)およびそれらの2種以上から成るアロイ、共重合体などの変性物等を挙げることができる。樹脂シート36の厚みは、0.03mm以上0.2mm以下の範囲とするのが好ましい。装飾部22の上端面34は、樹脂シート36の表面36aと同一平面を構成している。
【0032】
以上のように構成されたキースイッチ用部材10では、断面がアルファベットのT字状を有する区分部24を区分溝17に嵌め込む形態が採用されている。そのため、区分部24を区分溝17に挿入し、側方突出部24bを操作シート12の表面に突出させることにより、操作シート12を下層部14に対して強固に固定することが可能となる。また、区分溝17に区分部24を挿入するという簡単な作業で操作シート12を下層部14に対して強固に固定できる。そのため、プライマーの塗布あるいは貼り合わせ等の工程を必要とすることがなくなり、作業工程を削減することが可能となる。
【0033】
また、キースイッチ用部材10では、樹脂層20の外周には、断面が略L字状の保持部20bが設けられている。そのため、操作シート12の外周に保持部20bを被せることにより、操作シート12を下層部14に対してより強固に固定することが可能となる。また、上記作業は、操作シート12の外周に保持部20bを被せるという単純な作業であるため、作業効率の向上を図ることができると共に、操作シート12と下層部14との固定強度をより向上させることができる。
【0034】
また、キースイッチ用部材10では、樹脂層20は、熱可塑性エラストマーからなっている。このため、樹脂層20にほこりや着色不純物が付着するのを防止できる。したがって、樹脂層20の表面が汚れることや変色することを防止できる。また、成形時間も短縮することが可能となる。
【0035】
また、キースイッチ用部材10では、キートップ部18の表面には、装飾部22の上端面34が露出している。そのため、操作者は、各キートップ部18の有する機能を容易に識別することが可能となる。
【0036】
また、キースイッチ用部材10では、押圧子30が、装飾部22の配列に対応するように設けられている。そのため、各キートップ部18,19を押圧すると、押圧子30は裏側へ向かって移動する。したがって、キースイッチ用部材10を基板上に配置した場合、各キートップ部18,19を押圧することで、各装飾部に対応して設けられた基板側の接点に信号を入力することが可能となる。また、押圧子30は、押圧層28と一体的に形成されているため、部品点数を削減できる。
【0037】
また、キースイッチ用部材10では、樹脂層20の裏側において、装飾部22および区分部24と相対する位置に着色領域27を有する薄膜層26が設けられている。そのため、操作者がキースイッチ用部材10をその表面側から臨んだ場合、着色領域27の色彩等を視認することができる。
【0038】
また、キースイッチ用部材10では、操作シート12の露出面35上には透光性を有する樹脂シート36が配置されている。そのため、キースイッチ用部材10の表面が傷つくのを防止できる。また、樹脂シート36の一部には、印刷層または着色層が設けられている。そのため、キースイッチ用部材10のデザイン性を向上させることができる。
【0039】
また、キースイッチ用部材10では、操作シート12の裏面には、ブラスト加工により微細な凹凸が形成されている。そのため、操作シート12の裏面を清浄できると同時に粗面化することができ、アンカー効果を発生させることが可能となる。したがって、操作シート12が樹脂層20から外れにくくなると共に、操作シート12が樹脂層20に対して位置ずれするのを防止できる。
【0040】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るキースイッチ用部材40について、図面を参照しながら説明する。なお、第2の実施の形態に係るキースイッチ用部材40において、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。なお、第2の実施の形態では、操作シート42および樹脂層46の構成が異なるため、その相違部分について、特に説明する。
【0041】
図4は、第2の実施の形態に係るキースイッチ用部材40を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【0042】
キースイッチ用部材40は、操作シート42と、下層部44と、から主に構成されている。下層部44は、樹脂層46と、薄膜層26と、押圧層28と、から主に構成されている。
【0043】
操作シート42は、外形が略長方形の形状を有する薄肉状のシートである。また、操作シート42には、隣接する操作孔(貫通孔の一形態)16aを区分けするような波線状の区分溝(貫通孔の一形態)48が設けられている。区分溝48によって、各操作孔16aが区分けされることにより、操作シート42には、合計12個のキートップ部50が形成されている。図4に示すように、区分溝48は、操作シート42を貫通しており、該区分溝48の表側の開口部周面には、断面において略L字状に切り欠かれた段部52,52が形成されている。また、操作シート42の裏面には、ブラスト加工により微細な凹凸形状が形成されている。
【0044】
樹脂層46は、薄肉状のシート部46aと、装飾部54と、区分部56と、保持部58と、から構成されている。図4に示すように、装飾部54および区分部56は、シート部46aの所定の位置から表側に向かって突出するように設けられている。装飾部54の断面形状は、各操作キーによって異なる。区分部56は、表側に突出する表側突出部56aと、該表側突出部56aの頂部から左右両側に向かって突出する側方突出部56b,56bとから構成されており、その断面は、図4に示すように、アルファットのT字状の形態を有している。本実施の形態では、装飾部54および区分部56は、同じ高さとなるように形成されている。また、樹脂層46の外周には、操作シート42を保持するための断面略L字状の保持部58が設けられている。
【0045】
図4に示すように、下層部44の表側に操作シート42を配置した状態では、区分溝48の内部に区分部56が挿入され、2つの側方突出部56b,56bが段部52,52に嵌まり込んでいる。一方、保持部58は、操作シート42の外周にあって、裏側から該操作シート42の外周を覆うように延出している。このように、操作シート42は、区分部56および保持部58によって、樹脂層46に対して固定されている。また、樹脂シート36の表面36a、装飾部54の上端面54aおよび区分部56の上端面56cは、略同一平面を構成している。ただし、上端面54a、上端面56cのいずれか一方を、表面36aより突出あるいはへこませても良い。なお、操作シート42と樹脂層46は、操作シート42を所定の型にインサートし、熱可塑性樹脂を射出成形することによって一体化される。
【0046】
以上のように構成されたキースイッチ用部材40では、断面がアルファベットのT字形状を有する区分部56を区分溝48に挿入し、側方突出部56bを段部52に嵌め込む形態が採用されている。そのため、区分部56を区分溝48に挿入するという簡単な作業で、操作シート42を下層部44に対して強固に固定することが可能となる。また、このような簡単な作業で操作シート42を下層部44に対して強固に固定できるため、プライマーの塗布あるいは貼り合わせ等の工程を必要とすることがなくなり、作業工程を削減することが可能となる。また、樹脂シート36の表面36aと区分部56の上端面56cは略同一平面を構成しているため、操作シート42の表面をより平滑にすることができる。
【0047】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係るキースイッチ用部材60について、図面を参照しながら説明する。なお、第3の実施の形態に係るキースイッチ用部材60において、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。
【0048】
図5は、第3の実施の形態に係るキースイッチ用部材60を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【0049】
キースイッチ用部材60は、操作シート12と、樹脂層62と、から主に構成されている。本実施の形態では、押圧子64は、樹脂層62の裏面62aにおいて、装飾部22と相対する位置に設けられている。また、押圧子64は、裏面62aから裏側に突出するように設けられている。該押圧子64は、樹脂層62と一体的に成形されている。成形方法として、例えば、射出成形を採用することができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0050】
以上のように構成されたキースイッチ用部材60では、押圧子64が樹脂層62と一体的に成形されているため、部品点数を削減できると共に、一切の接着工程をする必要がなくなる。このため、作業工程を削減することが可能となる。また、押圧子64と樹脂層62との間に他の層を設けていないため、キースイッチ用部材60のさらなる薄型化を図ることが可能となる。
【0051】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係るキースイッチ用部材65について、図面を参照しながら説明する。なお、第4の実施の形態に係るキースイッチ用部材65において、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。なお、第4の実施の形態では、操作シート66および樹脂層68の構成が異なるため、その相違部分について、特に説明する。
【0052】
図6は、第4の実施の形態に係るキースイッチ用部材65を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【0053】
キースイッチ用部材65は、操作シート66と、下層部67と、から主に構成されている。下層部67は、樹脂層68と、薄膜層26と、押圧層28と、から主に構成されている。
【0054】
操作シート66は、外形が略長方形の形状を有する薄肉状のシートである。また、操作シート66には、隣接する操作孔(貫通孔の一形態)16aを区分けするような波線状の区分溝(貫通孔の一形態)69が設けられている。区分溝69によって、各操作孔16aが区分けされることにより、操作シート66には、合計12個のキートップ部70が形成されている。図6に示すように、区分溝69は、操作シート66を貫通しており、該区分溝69の内周面には、表側に向かうにつれて開口面積が広くなるようなテーパ部71が形成されている。また、操作シート66の裏面には、ブラスト加工により微細な凹凸形状が形成されている。
【0055】
樹脂層68は、薄肉状のシート部68aと、装飾部72と、区分部73と、保持部74と、から構成されている。図6に示すように、装飾部72および区分部73は、シート部68aの所定の位置から表側に突出するように設けられている。装飾部72の断面形状は、各操作キーによって異なる。区分部73の断面形状は、表側に向かうにつれて左右両側の幅がテーパ状に広くなるような形態を有している。本実施の形態では、装飾部72および区分部73は、同じ高さとなるように形成されている。また、樹脂層68の外周には、操作シート66を保持するための断面略L字状の保持部74が設けられている。
【0056】
図6に示すように、下層部67の表側に操作シート66を配置した状態では、区分溝69の内部に区分部73が挿入され、区分部73は区分溝69のテーパ部71によってしっかり固定されている。一方、保持部74は、操作シート66の外周にあって、裏側から該操作シート66の外周を覆うように延出している。このように、操作シート66は、区分部73および保持部74によって、樹脂層68に対して固定されている。また、樹脂シート36の表面36a、装飾部72の上端面72aおよび区分部73の上端面73aは、略同一平面を構成している。ただし、上端面72a、上端面73aのいずれか一方を、表面36aより突出あるいはへこませても良い。なお、操作シート66と樹脂層68は、操作シート66を所定の型にインサートし、熱可塑性樹脂を射出成形することによって一体化される。
【0057】
以上のように構成されたキースイッチ用部材65では、断面が表側に向かうにつれてテーパ状に広くなるような形態を有する区分部73を区分溝69に挿入し、区分部73をテーパ部71によって固定している。そのため、区分部73を区分溝69に挿入するという簡単な作業で、操作シート66を下層部67に対して強固に固定することが可能となる。また、このような簡単な作業で操作シート66を下層部67に対して強固に固定できるため、プライマーの塗布あるいは貼り合わせ等の工程を必要とすることがなくなり、作業工程を削減することが可能となる。また、樹脂シート36の表面36aと区分部73の上端面73aは略同一平面を構成しているため、操作シート66の表面をより平滑にすることができる。
【0058】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態に係るキースイッチ用部材80について、図面を参照しながら説明する。なお、第5の実施の形態に係るキースイッチ用部材80において、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。
【0059】
図7は、第5の実施の形態に係るキースイッチ用部材80を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【0060】
キースイッチ用部材80は、操作シート12と、下層部82と、から主に構成されている。下層部82は、樹脂層20と、薄膜層26と、ELシート84と、押圧層28と、から主に構成されている。
【0061】
本実施の形態では、薄膜層26と押圧層28との間に光源となるELシート84が配置されている。ELシート84は、外形が略長方形の形状を有するシート状の光源素材である。なお、本実施の形態では、薄膜層26を設けないようにしても良い。この場合、ELシート84は、樹脂層20と押圧層28との間に配置されることになる。また、本実施の形態では、光源となるELシート84は、押圧層28よりも上方に配置されているため、押圧層28を透光性を有さないような構成としても良い。
【0062】
以上のように構成されたキースイッチ用部材80では、薄膜層26と押圧層28との間にELシート84が配置されているため、キースイッチ用部材80において前面側に光が透過する部分である操作孔16および区分溝17(場合によっては、保持部20bの立設部20c)を、均一の輝度で、かつムラ無く照光させることができる。
【0063】
(第6の実施の形態)
次に、本発明の第6の実施の形態に係るキースイッチ用部材90について、図面を参照しながら説明する。なお、第6の実施の形態に係るキースイッチ用部材90において、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。
【0064】
図8は、第6の実施の形態に係るキースイッチ用部材90を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【0065】
キースイッチ用部材90は、操作シート12と、下層部14と、基板部92と、から主に構成されている。下層部14は、樹脂層20と、薄膜層26と、押圧層28と、から主に構成されている。
【0066】
基板部92は、押圧層28の下方に設けられており、ELシート94と、基板95とから主に構成されている。ELシート94は基板95の上方に配置されている。ELシート94は、外形が略長方形の形状を有するシート状の光源素材である。ELシート94において、押圧子30と対向する領域には、ドーム状をしたドーム部96が設けられている。ドーム部96は、図8において、上方に向かって逆椀状に突出している。各ドーム部96の内側には、鉄やステンレス等の金属から成る可動接点97が設けられている。可動接点97は薄膜の形態を有する。基板95における可動接点97と対向する位置には、固定接点98が設けられている。なお、光源としてELシート94の替わりにLEDを配置するようにしても良い。
【0067】
以上のように構成されたキースイッチ用部材90では、押圧層28の下方にELシート94が配置されている。このため、該ELシート94によってキースイッチ用部材90の前面側を照光できる。また、光源としてELシート94を採用しているため、キースイッチ用部材90において前面側に光が透過する部分である操作孔16および区分溝17(場合によっては、保持部20bの立設部20c)を、均一の輝度で、かつムラ無く照光させることができる。
【0068】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0069】
上述の各実施の形態では、区分部24,56,73の平面形状を波形の形状としたが、この形状に限定されるものではなく、線状、点状等の他の形状としても良い。このような構成とした場合、区分部24,56,73の形状と対応するように区分溝17,48,69を設ける必要がある。
【0070】
また、上述の第1および第3実施の形態では、側方突出部24bおよび操作シート12の厚みは、それぞれに均一な厚さであるが、これに限定されることなく、例えば、図9(A)に示すように、側方突出部24bの付け根からその外側に向かう所定の箇所まで、下方に向かってテーパ状に突出した係合突出部24cを設けると共に、該係合突出部24cと係合するように樹脂層20,62の表面32,63に係合溝12aを設ける構成としても良い。また、係合突出部24cの形状を、図9(B)、図10(A),(B)のそれぞれに示すような、形状としても良い。また、図11に示すように、係合突出部24cを側方突出部24bの付け根からその外周面にかけてテーパ状に厚みが大きくなるようにしても良い。係合溝12aの形状は、それぞれの形態に応じた形状に設けられる。このような構成とすることで、操作シート12を樹脂層20,62に対してより強固に固定することができる。また、第2の実施の形態における側方突出部56bおよび段部52の構成に同様の形態を採用しても良い。
【0071】
また、上述の各実施の形態では、操作シート12,42,66の外周には、段部が設けられていないが、図12に示すように、操作シート12,42,66の外周に段部75を設け、該段部75に保持部20b,58,74を嵌め合わせるようにしても良い。
【0072】
また、上述の各実施の形態では、操作シート12,42,66に設けられた操作孔16に装飾部22,54,72を挿入する形態を採用しているが、これに限定されることなく、例えば、操作シート12,42,66に数字や記号等の形状を有する凹部を設け、該凹部に数字や文字の形状を有する部材を嵌め込む形態としても良い。
【0073】
また、上述の各実施の形態では、装飾部22,54,72の上端面34,54a,72aと樹脂シート36の表面36aは同一平面を構成しているが、これに限定されることはなく、装飾部22,54,72を表面36aより表側に突出するような形態としても良い。また、装飾部22,54,72の上端面34,54a,72aが表面36aより裏側に位置するような形態としても良い。
【0074】
また、上述の第2および第4の実施の形態では、区分部56,73の上端面56c,73aと樹脂シート36の表面36aは同一平面を構成しているが、これに限定されることはなく、段部52の深さまたは区分部73の高さを変えることにより、区分部56,73を表面36aより表側に突出するような形態としても良い。また、区分部56,73の上端面56c,73aが表面36aより裏側に位置するような形態としても良い。
【0075】
また、上述の各実施の形態では、保持部20b,58,74は、樹脂層20,46,62,68の外周部に全周に渡って設けられているが、全周に渡って設けることなく、分割して外周部の複数の位置に設けるようにしても良い。また、保持部20b,58,74を設けないようにしても良い。
【0076】
また、薄膜層26は、区分部24,56,73および装飾部22,54,72と相対する位置に設けられているが、区分部24,56,73および装飾部22,54,72のどちらか一方のみと相対する位置に形成するようにしても良いし、薄膜層26を設けないようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のキースイッチ用部材は、装飾部を有する各種電子機器に使用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るキースイッチ用部材を、操作シートとその下方に配置される下層部とに分解した状態を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るキースイッチ用部材の斜視図である。
【図3】図2におけるA−A線で切断した断面を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るキースイッチ用部材を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るキースイッチ用部材を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係るキースイッチ用部材を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係るキースイッチ用部材を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係るキースイッチ用部材を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【図9】本発明の変形例を示す図である。
【図10】本発明の変形例を示す図である。
【図11】本発明の変形例を示す図である。
【図12】本発明の変形例を示す図である。
【図13】従来のキースイッチ用部材の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
10,40,60,65,80,90…キースイッチ用部材
12,42,66…操作シート
16a…操作孔(文字部、貫通孔に対応)
17,48,69…区分溝(貫通孔)
18,50,70…キートップ部
20,46,62,68…樹脂層
24,56,73…区分部(貫通孔に挿入された部分に対応)
26…薄膜層
52,75…段部
71…テーパ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、電卓、パーソナルコンピュータ、リモートコントローラ等のキートップを有する電子機器に使用されるキースイッチ用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の電子機器の薄型化に伴い、これら電子機器に用いられるキースイッチの薄型化も要求されている。これらの要求に応えるため、キースイッチを構成するキースイッチ用部材では、薄型のシートや薄肉状の部材を重ねて配置させるような構成が採用されている。
【0003】
特許文献1に開示されているキースイッチ用部材100は、図13に示すように、文字表示部101を有するメタルキー102と、基材となるキーパッド103と、から主に構成されている。キーパッド103の裏面の所定の位置には、下方に向かって突出する押圧子104が設けられている。また、該キーパッド103の表面において押圧子104と対応する位置には、メタルキー102が接着剤を介在させて配置されている。
【0004】
【特許文献1】PCT/WO2005/088945(Fig.3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているキースイッチ用部材100では、メタルキー102がキーパッド103の表面に接着剤を介在させて配置されている。このため、接着剤の内部に気泡が入ったり、接着剤が接着面の全面に均一に行きわたらなかったりすると、接着ムラが生じ、メタルキー102とキーパッド103とが接着不良を起こすという問題がある。また、接着ムラを無くそうとすると、メタルキー102とキーパッド103との接着面に特殊な加工を施すことが必要となり、作業工程が増加してしまう。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な作業で、操作シートを樹脂層に対して強固に固定することができるキースイッチ用部材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の操作領域であるキートップ部を有する金属製の操作シートと、操作シートの裏側に配置される樹脂層と、を有するキースイッチ用部材であって、キートップ部の周囲または内部に、操作シートを貫通する貫通孔を有し、樹脂層は、当該貫通孔に挿入された部分にて、キートップ部と固定されるものである。
【0008】
このように構成した場合には、貫通孔に樹脂層の一部を挿入することによって、樹脂層をキートップ部と固定することが可能となる。このように、樹脂層の一部を貫通孔に挿入するという簡単な作業で樹脂層をキートップ部に対して固定できるため、プライマーの塗布あるいは貼り合わせ等の工程を必要とすることがなくなり、作業工程を削減することが可能となる。
【0009】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、操作シートの外周に、操作シートの裏側から延出する樹脂層の端部を被せて固定しているものである。このように構成した場合には、操作シートの外周部も樹脂層に対して固定されるため、操作シートを樹脂層に対してより強固に固定することが可能となる。
【0010】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、貫通孔の内周面には、操作シートの表面側の方が裏面側よりも開口面積が広くなるような段部若しくはテーパ部が形成されているものである。このように構成した場合には、樹脂層において貫通孔に挿入された部分が段部若しくはテーパ部に嵌まり込む。そのため、樹脂層を段部若しくはテーパ部において固定することが可能となる。その結果、樹脂層が操作シートの表面から突出するのを抑制することができる。
【0011】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、キートップ部の表面には、凹凸または貫通孔を用いて形成される数字、記号、模様または絵等の文字部を有するものである。このように構成した場合には、各キートップ部の機能を認識することが可能となる。
【0012】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、操作シートにおける樹脂層との接触面に凹凸を形成したものである。このように構成した場合には、操作シートと樹脂層との接触面積の増加、および上記接触面に形成された凹凸形状の効果により、操作シートと樹脂層との密着性が向上する。したがって、操作シートが樹脂層から外れにくくなると共に、操作シートが樹脂層に対して位置ずれするのを防止できる。
【0013】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、樹脂層は、熱可塑性エラストマーからなるものである。このように構成した場合には、樹脂層にほこりや着色不純物が付着するのを防止できる。そのため、樹脂層の表面が汚れることや変色することを防止できる。また、架橋を行う必要がなくなるため、硬化時間が短縮される。その結果、成形時間を短縮することが可能となる。
【0014】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、樹脂層は、透光性を有するものである。このように構成した場合には、キースイッチ用部材をその表面側から臨んだ場合、キースイッチ用部材の裏面側から発光する内部光源の光を視認し易くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、簡単な作業で、装飾部を樹脂層に対して強固に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係るキースイッチ用部材10について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るキースイッチ用部材10を、操作シート12とその裏側に配置される下層部14とに分解した状態を示す分解斜視図である。また、図2は、第1の実施の形態に係るキースイッチ用部材10の斜視図である。
【0018】
図1に示すように、キースイッチ用部材10は、その最も表面側に配置される操作シート12と、その裏側に配置される下層部14と、から主に構成されている。操作シート12と下層部14の外形は略同一形状を有している。
【0019】
操作シート12は、外形が略長方形の形状を有し、下層部14の表面を覆う薄肉状のシートである。操作シート12は、数字の「0」から「9」、アスタリスク(*)およびシャープ(#)の形状を有する合計12個の操作孔(貫通孔の一形態)16aと、操作孔16aの上方に設けられる上下左右方向を指す矢印の形状を有する操作孔(貫通孔の一形態)16bと、操作孔16bの内側に円周を4分割するように設けられる操作孔(貫通孔の一形態)16cと、操作孔16bの左右にそれぞれ設けられる操作孔(貫通孔の一形態)16dと、を有する。各操作孔16a,16b,16c,16dは、操作シート12を貫通するように形成されている。以下、操作孔16a,16b,16c,16dを総称する際には、単に、「操作孔16」という。
【0020】
また、操作シート12には、隣接する操作孔16aの区分けをするような波線状の区分溝(貫通孔の一形態)17が設けられている。区分溝17は、操作シート12を貫通するように形成されている。区分溝17によって、各操作孔16aが区分けされることにより、操作シート12には、合計12個の操作領域となるキートップ部18が形成されている。また、操作シート12は、上下左右の操作を行うための略円形状を有する円形キートップ部19を有しており、操作孔16b,16cは、該円形キートップ部19内に設けられている。これらキートップ部18および円形キートップ部19は、操作者が押圧して信号を入力するための領域である。さらに、操作シート12の裏面には、ブラスト加工等により微細な凹凸形状が形成されている。
【0021】
操作シート12の素材は、金属であれば特に限定されるものではなく、例えば、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム、銅、亜鉛、チタン、あるいはこれらから成る各種合金等から成る。また、操作シート12の厚みは、0.1mm以上0.5mm以下の範囲とするのが好ましい。
【0022】
図1に示すように、下層部14は、操作シート12と外形が略同一の略長方形の形状を有する。また、下層部14の最も表面側の層となる樹脂層20の表面32には、数字の「0」から「9」、アスタリスク(*)およびシャープ(#)の形状を有する合計12個の装飾部22aと、上下左右の操作を明示するための装飾部22bと、装飾部22bの内側に円周を4分割するように設けられる装飾部22cと装飾部22bの左右にそれぞれ設けられた装飾部22dが設けられている。以下、装飾部22a,22b,22c,22dを総称する際には、単に、「装飾部22」という。
【0023】
樹脂層20の表面32には、隣接する装飾部22aを区分けするような波線状の区分部24が設けられている。装飾部22および区分部24は、共に樹脂層20の表面32から操作シート側に向かって突出するように形成されている。また、装飾部22a,22b,22c,22dおよび区分部24は、操作孔16a,16b,16c,16dおよび区分溝17とそれぞれ対応する位置で、かつそれぞれに対応する形状にて樹脂層20の表面32に設けられている。そのため、図2に示すように、操作シート12を下層部14の表側に配置した場合、装飾部22a,22b,22c,22dおよび区分部24は、それぞれ操作孔16a,16b,16c,16dおよび区分溝17に嵌まり込む。なお、操作シート12と樹脂層20は、操作シート12を所定の型にインサートし、熱可塑性樹脂を射出成形することによって一体化される。
【0024】
図3は、図2におけるA−A線で切断した断面を示す図である。
【0025】
図3に示すように、下層部14は、樹脂層20と、その裏側に配置される薄膜層26と、薄膜層26の裏側に配置される押圧層28と、から構成されている。
【0026】
樹脂層20は、略長方形の形状をした透光性を有するシートである。樹脂層20の素材としては、例えば、スチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系、ウレタン系、エステル系、アミド系等、若しくは、これらの2種以上から成るアロイ、共重合体等の変性物からなる熱可塑性エラストマーが挙げられる。その内、耐熱性、耐候性および耐屈折性等の耐久性に優れているエステル系の熱可塑性エラストマーを採用するのが好ましい。しかし、樹脂層20の材料は、これらの材料に特に限定されるものではない。また、樹脂層20の硬さは、タイプDデュロメータに準拠した測定方法においてショアD40程度が好ましい。
【0027】
樹脂層20は、薄肉状のシート部20aと、装飾部22と、区分部24と、保持部20bと、から構成されている。図3に示すように、装飾部22および区分部24は、シート部20aの所定の位置から表側に向かって突出するように設けられている。装飾部22の断面形状は、各操作キーによって異なる。区分部24は、表側に突出する表側突出部24aと、該表側突出部24aの頂部から左右両側に向かって突出する側方突出部24b,24bとから構成されており、その断面は、図3に示すように、アルファベットのT字状の形態を有している。また、樹脂層20の外周からは、操作シート12の外周を保持するための断面略L字状の保持部20bが延出している。保持部20bは、シート部20aの外周から表側に向かって立ち上がる立設部20cと、その先端から内方に向かって延出する内方延出部20dとを有する。
【0028】
樹脂層20の裏側には、装飾部22および区分部24と相対する位置に着色領域27を有する薄膜層26が配置されている。そのため、操作者が、キースイッチ用部材10を表側から臨んだ場合、装飾部22および区分部24を介して着色領域27の色彩を視認することが可能となる。薄膜層26は、樹脂層20の裏面に印刷法を用いて形成されているが、これに限定されることなく、蒸着等の他の方法によって形成するようにしても良い。また、樹脂層20の裏面ではなく、押圧層28の表面または裏面に形成するようにしても良い。
【0029】
上述したように、薄膜層26の裏側には、押圧層28が配置されている。薄膜層26と押圧層28とは、薄膜層26の裏面26aと押圧層28の表面28aとの間に接着剤を介在させることにより固定されている。押圧層28は、樹脂層20の外形と略同一形状であり、かつ略長方形の形状を有する押圧シート29と、押圧子30とから構成されている。押圧子30は、押圧シート29の裏面29aにおいて、装飾部22と相対する位置に設けられている。また、押圧子30は、裏面29aから裏側に向かって突出するように設けられている。押圧層28および押圧子30の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリコーンゴムに代表される熱硬化性エラストマーやウレタン系あるいはスチレン系等の熱可塑性エラストマーやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリルもしくはウレタン等の熱可塑性樹脂や光透過率の良い材料が挙げられる。押圧子30は、予め別部材として形成し、押圧シート29に接着剤によって一体化するようにしても良い。また、押圧シート29に光硬化性樹脂を一体成形することによって押圧子30を形成するようにしても良い。
【0030】
図3に示すように、下層部14の表面32上に操作シート12を配置した状態では、区分溝17の内部に区分部24が挿入され、側方突出部24b,24bが該区分溝17から操作シート12の表側に突出している。このため、下層部14は、操作シート12にしっかり固定され、容易に分離できない。また、保持部20bは、操作シート12の外周にあって、裏側から該操作シート12の外周を覆うように延出している。このため、操作シート12の外周は、保持部20bによってしっかりと保持されている。
【0031】
また、操作シート12が下層部14の表側に配置された状態では、キートップ部18における操作孔16には、装飾部22が挿入されている。さらに、操作シート12が表面に露出している露出面35には、透光性を有する樹脂シート36が配置されている。また、樹脂シート36の一部には、不図示の印刷層または着色層が設けられている。なお、これらの印刷層および着色層を金属からなる金属薄膜層としても良い。露出面35上に該樹脂シート36を配置することにより、操作シート12の表面が傷つきにくくなる。樹脂シート36の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチエレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリアミド(PA)およびそれらの2種以上から成るアロイ、共重合体などの変性物等を挙げることができる。樹脂シート36の厚みは、0.03mm以上0.2mm以下の範囲とするのが好ましい。装飾部22の上端面34は、樹脂シート36の表面36aと同一平面を構成している。
【0032】
以上のように構成されたキースイッチ用部材10では、断面がアルファベットのT字状を有する区分部24を区分溝17に嵌め込む形態が採用されている。そのため、区分部24を区分溝17に挿入し、側方突出部24bを操作シート12の表面に突出させることにより、操作シート12を下層部14に対して強固に固定することが可能となる。また、区分溝17に区分部24を挿入するという簡単な作業で操作シート12を下層部14に対して強固に固定できる。そのため、プライマーの塗布あるいは貼り合わせ等の工程を必要とすることがなくなり、作業工程を削減することが可能となる。
【0033】
また、キースイッチ用部材10では、樹脂層20の外周には、断面が略L字状の保持部20bが設けられている。そのため、操作シート12の外周に保持部20bを被せることにより、操作シート12を下層部14に対してより強固に固定することが可能となる。また、上記作業は、操作シート12の外周に保持部20bを被せるという単純な作業であるため、作業効率の向上を図ることができると共に、操作シート12と下層部14との固定強度をより向上させることができる。
【0034】
また、キースイッチ用部材10では、樹脂層20は、熱可塑性エラストマーからなっている。このため、樹脂層20にほこりや着色不純物が付着するのを防止できる。したがって、樹脂層20の表面が汚れることや変色することを防止できる。また、成形時間も短縮することが可能となる。
【0035】
また、キースイッチ用部材10では、キートップ部18の表面には、装飾部22の上端面34が露出している。そのため、操作者は、各キートップ部18の有する機能を容易に識別することが可能となる。
【0036】
また、キースイッチ用部材10では、押圧子30が、装飾部22の配列に対応するように設けられている。そのため、各キートップ部18,19を押圧すると、押圧子30は裏側へ向かって移動する。したがって、キースイッチ用部材10を基板上に配置した場合、各キートップ部18,19を押圧することで、各装飾部に対応して設けられた基板側の接点に信号を入力することが可能となる。また、押圧子30は、押圧層28と一体的に形成されているため、部品点数を削減できる。
【0037】
また、キースイッチ用部材10では、樹脂層20の裏側において、装飾部22および区分部24と相対する位置に着色領域27を有する薄膜層26が設けられている。そのため、操作者がキースイッチ用部材10をその表面側から臨んだ場合、着色領域27の色彩等を視認することができる。
【0038】
また、キースイッチ用部材10では、操作シート12の露出面35上には透光性を有する樹脂シート36が配置されている。そのため、キースイッチ用部材10の表面が傷つくのを防止できる。また、樹脂シート36の一部には、印刷層または着色層が設けられている。そのため、キースイッチ用部材10のデザイン性を向上させることができる。
【0039】
また、キースイッチ用部材10では、操作シート12の裏面には、ブラスト加工により微細な凹凸が形成されている。そのため、操作シート12の裏面を清浄できると同時に粗面化することができ、アンカー効果を発生させることが可能となる。したがって、操作シート12が樹脂層20から外れにくくなると共に、操作シート12が樹脂層20に対して位置ずれするのを防止できる。
【0040】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るキースイッチ用部材40について、図面を参照しながら説明する。なお、第2の実施の形態に係るキースイッチ用部材40において、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。なお、第2の実施の形態では、操作シート42および樹脂層46の構成が異なるため、その相違部分について、特に説明する。
【0041】
図4は、第2の実施の形態に係るキースイッチ用部材40を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【0042】
キースイッチ用部材40は、操作シート42と、下層部44と、から主に構成されている。下層部44は、樹脂層46と、薄膜層26と、押圧層28と、から主に構成されている。
【0043】
操作シート42は、外形が略長方形の形状を有する薄肉状のシートである。また、操作シート42には、隣接する操作孔(貫通孔の一形態)16aを区分けするような波線状の区分溝(貫通孔の一形態)48が設けられている。区分溝48によって、各操作孔16aが区分けされることにより、操作シート42には、合計12個のキートップ部50が形成されている。図4に示すように、区分溝48は、操作シート42を貫通しており、該区分溝48の表側の開口部周面には、断面において略L字状に切り欠かれた段部52,52が形成されている。また、操作シート42の裏面には、ブラスト加工により微細な凹凸形状が形成されている。
【0044】
樹脂層46は、薄肉状のシート部46aと、装飾部54と、区分部56と、保持部58と、から構成されている。図4に示すように、装飾部54および区分部56は、シート部46aの所定の位置から表側に向かって突出するように設けられている。装飾部54の断面形状は、各操作キーによって異なる。区分部56は、表側に突出する表側突出部56aと、該表側突出部56aの頂部から左右両側に向かって突出する側方突出部56b,56bとから構成されており、その断面は、図4に示すように、アルファットのT字状の形態を有している。本実施の形態では、装飾部54および区分部56は、同じ高さとなるように形成されている。また、樹脂層46の外周には、操作シート42を保持するための断面略L字状の保持部58が設けられている。
【0045】
図4に示すように、下層部44の表側に操作シート42を配置した状態では、区分溝48の内部に区分部56が挿入され、2つの側方突出部56b,56bが段部52,52に嵌まり込んでいる。一方、保持部58は、操作シート42の外周にあって、裏側から該操作シート42の外周を覆うように延出している。このように、操作シート42は、区分部56および保持部58によって、樹脂層46に対して固定されている。また、樹脂シート36の表面36a、装飾部54の上端面54aおよび区分部56の上端面56cは、略同一平面を構成している。ただし、上端面54a、上端面56cのいずれか一方を、表面36aより突出あるいはへこませても良い。なお、操作シート42と樹脂層46は、操作シート42を所定の型にインサートし、熱可塑性樹脂を射出成形することによって一体化される。
【0046】
以上のように構成されたキースイッチ用部材40では、断面がアルファベットのT字形状を有する区分部56を区分溝48に挿入し、側方突出部56bを段部52に嵌め込む形態が採用されている。そのため、区分部56を区分溝48に挿入するという簡単な作業で、操作シート42を下層部44に対して強固に固定することが可能となる。また、このような簡単な作業で操作シート42を下層部44に対して強固に固定できるため、プライマーの塗布あるいは貼り合わせ等の工程を必要とすることがなくなり、作業工程を削減することが可能となる。また、樹脂シート36の表面36aと区分部56の上端面56cは略同一平面を構成しているため、操作シート42の表面をより平滑にすることができる。
【0047】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係るキースイッチ用部材60について、図面を参照しながら説明する。なお、第3の実施の形態に係るキースイッチ用部材60において、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。
【0048】
図5は、第3の実施の形態に係るキースイッチ用部材60を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【0049】
キースイッチ用部材60は、操作シート12と、樹脂層62と、から主に構成されている。本実施の形態では、押圧子64は、樹脂層62の裏面62aにおいて、装飾部22と相対する位置に設けられている。また、押圧子64は、裏面62aから裏側に突出するように設けられている。該押圧子64は、樹脂層62と一体的に成形されている。成形方法として、例えば、射出成形を採用することができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0050】
以上のように構成されたキースイッチ用部材60では、押圧子64が樹脂層62と一体的に成形されているため、部品点数を削減できると共に、一切の接着工程をする必要がなくなる。このため、作業工程を削減することが可能となる。また、押圧子64と樹脂層62との間に他の層を設けていないため、キースイッチ用部材60のさらなる薄型化を図ることが可能となる。
【0051】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係るキースイッチ用部材65について、図面を参照しながら説明する。なお、第4の実施の形態に係るキースイッチ用部材65において、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。なお、第4の実施の形態では、操作シート66および樹脂層68の構成が異なるため、その相違部分について、特に説明する。
【0052】
図6は、第4の実施の形態に係るキースイッチ用部材65を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【0053】
キースイッチ用部材65は、操作シート66と、下層部67と、から主に構成されている。下層部67は、樹脂層68と、薄膜層26と、押圧層28と、から主に構成されている。
【0054】
操作シート66は、外形が略長方形の形状を有する薄肉状のシートである。また、操作シート66には、隣接する操作孔(貫通孔の一形態)16aを区分けするような波線状の区分溝(貫通孔の一形態)69が設けられている。区分溝69によって、各操作孔16aが区分けされることにより、操作シート66には、合計12個のキートップ部70が形成されている。図6に示すように、区分溝69は、操作シート66を貫通しており、該区分溝69の内周面には、表側に向かうにつれて開口面積が広くなるようなテーパ部71が形成されている。また、操作シート66の裏面には、ブラスト加工により微細な凹凸形状が形成されている。
【0055】
樹脂層68は、薄肉状のシート部68aと、装飾部72と、区分部73と、保持部74と、から構成されている。図6に示すように、装飾部72および区分部73は、シート部68aの所定の位置から表側に突出するように設けられている。装飾部72の断面形状は、各操作キーによって異なる。区分部73の断面形状は、表側に向かうにつれて左右両側の幅がテーパ状に広くなるような形態を有している。本実施の形態では、装飾部72および区分部73は、同じ高さとなるように形成されている。また、樹脂層68の外周には、操作シート66を保持するための断面略L字状の保持部74が設けられている。
【0056】
図6に示すように、下層部67の表側に操作シート66を配置した状態では、区分溝69の内部に区分部73が挿入され、区分部73は区分溝69のテーパ部71によってしっかり固定されている。一方、保持部74は、操作シート66の外周にあって、裏側から該操作シート66の外周を覆うように延出している。このように、操作シート66は、区分部73および保持部74によって、樹脂層68に対して固定されている。また、樹脂シート36の表面36a、装飾部72の上端面72aおよび区分部73の上端面73aは、略同一平面を構成している。ただし、上端面72a、上端面73aのいずれか一方を、表面36aより突出あるいはへこませても良い。なお、操作シート66と樹脂層68は、操作シート66を所定の型にインサートし、熱可塑性樹脂を射出成形することによって一体化される。
【0057】
以上のように構成されたキースイッチ用部材65では、断面が表側に向かうにつれてテーパ状に広くなるような形態を有する区分部73を区分溝69に挿入し、区分部73をテーパ部71によって固定している。そのため、区分部73を区分溝69に挿入するという簡単な作業で、操作シート66を下層部67に対して強固に固定することが可能となる。また、このような簡単な作業で操作シート66を下層部67に対して強固に固定できるため、プライマーの塗布あるいは貼り合わせ等の工程を必要とすることがなくなり、作業工程を削減することが可能となる。また、樹脂シート36の表面36aと区分部73の上端面73aは略同一平面を構成しているため、操作シート66の表面をより平滑にすることができる。
【0058】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態に係るキースイッチ用部材80について、図面を参照しながら説明する。なお、第5の実施の形態に係るキースイッチ用部材80において、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。
【0059】
図7は、第5の実施の形態に係るキースイッチ用部材80を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【0060】
キースイッチ用部材80は、操作シート12と、下層部82と、から主に構成されている。下層部82は、樹脂層20と、薄膜層26と、ELシート84と、押圧層28と、から主に構成されている。
【0061】
本実施の形態では、薄膜層26と押圧層28との間に光源となるELシート84が配置されている。ELシート84は、外形が略長方形の形状を有するシート状の光源素材である。なお、本実施の形態では、薄膜層26を設けないようにしても良い。この場合、ELシート84は、樹脂層20と押圧層28との間に配置されることになる。また、本実施の形態では、光源となるELシート84は、押圧層28よりも上方に配置されているため、押圧層28を透光性を有さないような構成としても良い。
【0062】
以上のように構成されたキースイッチ用部材80では、薄膜層26と押圧層28との間にELシート84が配置されているため、キースイッチ用部材80において前面側に光が透過する部分である操作孔16および区分溝17(場合によっては、保持部20bの立設部20c)を、均一の輝度で、かつムラ無く照光させることができる。
【0063】
(第6の実施の形態)
次に、本発明の第6の実施の形態に係るキースイッチ用部材90について、図面を参照しながら説明する。なお、第6の実施の形態に係るキースイッチ用部材90において、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を付すと共にその説明を省略または簡略化する。
【0064】
図8は、第6の実施の形態に係るキースイッチ用部材90を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【0065】
キースイッチ用部材90は、操作シート12と、下層部14と、基板部92と、から主に構成されている。下層部14は、樹脂層20と、薄膜層26と、押圧層28と、から主に構成されている。
【0066】
基板部92は、押圧層28の下方に設けられており、ELシート94と、基板95とから主に構成されている。ELシート94は基板95の上方に配置されている。ELシート94は、外形が略長方形の形状を有するシート状の光源素材である。ELシート94において、押圧子30と対向する領域には、ドーム状をしたドーム部96が設けられている。ドーム部96は、図8において、上方に向かって逆椀状に突出している。各ドーム部96の内側には、鉄やステンレス等の金属から成る可動接点97が設けられている。可動接点97は薄膜の形態を有する。基板95における可動接点97と対向する位置には、固定接点98が設けられている。なお、光源としてELシート94の替わりにLEDを配置するようにしても良い。
【0067】
以上のように構成されたキースイッチ用部材90では、押圧層28の下方にELシート94が配置されている。このため、該ELシート94によってキースイッチ用部材90の前面側を照光できる。また、光源としてELシート94を採用しているため、キースイッチ用部材90において前面側に光が透過する部分である操作孔16および区分溝17(場合によっては、保持部20bの立設部20c)を、均一の輝度で、かつムラ無く照光させることができる。
【0068】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0069】
上述の各実施の形態では、区分部24,56,73の平面形状を波形の形状としたが、この形状に限定されるものではなく、線状、点状等の他の形状としても良い。このような構成とした場合、区分部24,56,73の形状と対応するように区分溝17,48,69を設ける必要がある。
【0070】
また、上述の第1および第3実施の形態では、側方突出部24bおよび操作シート12の厚みは、それぞれに均一な厚さであるが、これに限定されることなく、例えば、図9(A)に示すように、側方突出部24bの付け根からその外側に向かう所定の箇所まで、下方に向かってテーパ状に突出した係合突出部24cを設けると共に、該係合突出部24cと係合するように樹脂層20,62の表面32,63に係合溝12aを設ける構成としても良い。また、係合突出部24cの形状を、図9(B)、図10(A),(B)のそれぞれに示すような、形状としても良い。また、図11に示すように、係合突出部24cを側方突出部24bの付け根からその外周面にかけてテーパ状に厚みが大きくなるようにしても良い。係合溝12aの形状は、それぞれの形態に応じた形状に設けられる。このような構成とすることで、操作シート12を樹脂層20,62に対してより強固に固定することができる。また、第2の実施の形態における側方突出部56bおよび段部52の構成に同様の形態を採用しても良い。
【0071】
また、上述の各実施の形態では、操作シート12,42,66の外周には、段部が設けられていないが、図12に示すように、操作シート12,42,66の外周に段部75を設け、該段部75に保持部20b,58,74を嵌め合わせるようにしても良い。
【0072】
また、上述の各実施の形態では、操作シート12,42,66に設けられた操作孔16に装飾部22,54,72を挿入する形態を採用しているが、これに限定されることなく、例えば、操作シート12,42,66に数字や記号等の形状を有する凹部を設け、該凹部に数字や文字の形状を有する部材を嵌め込む形態としても良い。
【0073】
また、上述の各実施の形態では、装飾部22,54,72の上端面34,54a,72aと樹脂シート36の表面36aは同一平面を構成しているが、これに限定されることはなく、装飾部22,54,72を表面36aより表側に突出するような形態としても良い。また、装飾部22,54,72の上端面34,54a,72aが表面36aより裏側に位置するような形態としても良い。
【0074】
また、上述の第2および第4の実施の形態では、区分部56,73の上端面56c,73aと樹脂シート36の表面36aは同一平面を構成しているが、これに限定されることはなく、段部52の深さまたは区分部73の高さを変えることにより、区分部56,73を表面36aより表側に突出するような形態としても良い。また、区分部56,73の上端面56c,73aが表面36aより裏側に位置するような形態としても良い。
【0075】
また、上述の各実施の形態では、保持部20b,58,74は、樹脂層20,46,62,68の外周部に全周に渡って設けられているが、全周に渡って設けることなく、分割して外周部の複数の位置に設けるようにしても良い。また、保持部20b,58,74を設けないようにしても良い。
【0076】
また、薄膜層26は、区分部24,56,73および装飾部22,54,72と相対する位置に設けられているが、区分部24,56,73および装飾部22,54,72のどちらか一方のみと相対する位置に形成するようにしても良いし、薄膜層26を設けないようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のキースイッチ用部材は、装飾部を有する各種電子機器に使用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るキースイッチ用部材を、操作シートとその下方に配置される下層部とに分解した状態を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るキースイッチ用部材の斜視図である。
【図3】図2におけるA−A線で切断した断面を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るキースイッチ用部材を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るキースイッチ用部材を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係るキースイッチ用部材を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係るキースイッチ用部材を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係るキースイッチ用部材を、図2におけるA−A線と同様の線で切断した断面を示す図である。
【図9】本発明の変形例を示す図である。
【図10】本発明の変形例を示す図である。
【図11】本発明の変形例を示す図である。
【図12】本発明の変形例を示す図である。
【図13】従来のキースイッチ用部材の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
10,40,60,65,80,90…キースイッチ用部材
12,42,66…操作シート
16a…操作孔(文字部、貫通孔に対応)
17,48,69…区分溝(貫通孔)
18,50,70…キートップ部
20,46,62,68…樹脂層
24,56,73…区分部(貫通孔に挿入された部分に対応)
26…薄膜層
52,75…段部
71…テーパ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の操作領域であるキートップ部を有する金属製の操作シートと、上記操作シートの裏側に配置される樹脂層と、を有するキースイッチ用部材であって、
上記キートップ部の周囲または内部に、上記操作シートを貫通する貫通孔を有し、上記樹脂層は、当該貫通孔に挿入された部分にて、上記キートップ部と固定されることを特徴とするキースイッチ用部材。
【請求項2】
さらに、前記操作シートの外周に、前記操作シートの裏側から延出する前記樹脂層の端部を被せて固定していることを特徴とする請求項1記載のキースイッチ用部材。
【請求項3】
前記貫通孔の内周面には、前記操作シートの表面側の方が裏面側よりも開口面積が広くなるような段部若しくはテーパ部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のキースイッチ用部材。
【請求項4】
前記キートップ部の表面には、凹凸または貫通孔を用いて形成される数字、記号、模様または絵等の文字部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のキースイッチ用部材。
【請求項5】
前記操作シートにおける前記樹脂層との接触面には凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のキースイッチ用部材。
【請求項6】
前記樹脂層は、熱可塑性エラストマーからなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のキースイッチ用部材。
【請求項7】
前記樹脂層は、透光性を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のキースイッチ用部材。
【請求項1】
複数の操作領域であるキートップ部を有する金属製の操作シートと、上記操作シートの裏側に配置される樹脂層と、を有するキースイッチ用部材であって、
上記キートップ部の周囲または内部に、上記操作シートを貫通する貫通孔を有し、上記樹脂層は、当該貫通孔に挿入された部分にて、上記キートップ部と固定されることを特徴とするキースイッチ用部材。
【請求項2】
さらに、前記操作シートの外周に、前記操作シートの裏側から延出する前記樹脂層の端部を被せて固定していることを特徴とする請求項1記載のキースイッチ用部材。
【請求項3】
前記貫通孔の内周面には、前記操作シートの表面側の方が裏面側よりも開口面積が広くなるような段部若しくはテーパ部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のキースイッチ用部材。
【請求項4】
前記キートップ部の表面には、凹凸または貫通孔を用いて形成される数字、記号、模様または絵等の文字部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のキースイッチ用部材。
【請求項5】
前記操作シートにおける前記樹脂層との接触面には凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のキースイッチ用部材。
【請求項6】
前記樹脂層は、熱可塑性エラストマーからなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のキースイッチ用部材。
【請求項7】
前記樹脂層は、透光性を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のキースイッチ用部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−34107(P2008−34107A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202667(P2006−202667)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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