説明

キースイッチ

【課題】比較的短いストロークでも、より明確なクリック感でキートップが傾くことなく押込み操作することができ、しかも、操作力伝達機構の配置を考慮することで、キートップをムラなく照光できるようにした、キースイッチを提供する。
【解決手段】キートップ2と、キートップ2と対向し、メンブレンスイッチ9を配設したベース3と、キートップ2による操作力を伝達する一対のリンク部材5a、5bと、キートップ2の操作力を一対のリンク部材5a、5bを介して伝達してベース3上のメンブレンスイッチ9を操作する弾性作動部材6とを備える。
ベース3上のメンブレンスイッチ9、一対のリンク部材5a、5bおよび弾性作動部材6は、キートップ2と対向するベース3の面側の第1空間S1と反対側の第2空間S2に配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キースイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、入力装置でキー入力にクリック感を持たせるために、復元部として、コイルスプリングなどのバネ部材、接点部の操作機能を兼ね備えたドーム型形状の弾性作動部材を用いたものが知られている。
復元部としてドーム型形状の弾性作動部材を備えたキースイッチとしては、例えば特許文献1に示すように、ベースと、ベース上に配置されるキートップと、各々が互いに連動するとともにベース及びキートップの双方に作用的に係合して、キートップをベース上で昇降方向へ案内支持する第1、第2リンク部材と、キートップの昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチング機構とを具備する構成のものが知られている。キートップの裏面側とベース間には、ドーム型形状の弾性作動部材が介在され、この弾性作動部材の反発下にキートップを押圧して、電気接点を開閉させる構成である。
【0003】
弾性作動部材の形状は、ドーム型形状を有しており、キートップを押下げることで弾性作動部材の反発力によって増大し弾性作動部材は徐々に変形していくが、ある押下力に達したときに弾性作動部材が耐え切れず、急激に畳み込まれるように変形するため、その際の押下力の急激な変化がクリック感となって捉えられるのである。このような押下力の変化は、ピーク荷重を有する放物線として示される。
【0004】
そして近年では、ノート型のパーソナルコンピュータのキーボードに搭載されるキースイッチのように、低背化の傾向があることから、より操作ストロークを短くする中で、安定した操作感をもたらすために、明確なクリック感を生じせしめるドーム型形状の弾性作動部材が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−332072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、弾性作動部材は、実際上、弾性作動部材そのもののばらつきや、弾性作動部材の耐久性から、長期に亘る使用に耐えうる安定したクリック感を維持することは困難であった。
よって、キースイッチにおいて、比較的短いストロークでも、より明確なクリック感でキートップが傾くことなく押込み操作できるようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、キートップと、キートップに対向するベースと、ベースに設けられるスイッチ部と、キートップによる操作力をスイッチ部に伝達してスイッチ部を操作する操作力伝達機構とを備えたキースイッチにおいて、スイッチ部及び操作力伝達機構は、ベースのキートップと対向する面側の第1空間とは反対側の第2空間に配設されていることを特徴とするキースイッチを提供する。
【0008】
上記構成において、操作力伝達機構は、キートップに連動する一対のリンク部材と、一対のリンク部材から押圧力を受ける弾性作動部材とを具備し、これらリンク部材は、ベースにそれぞれ回動自在に取り付けられる中間の支点部と、キートップによる操作力を受けるようにそれぞれキートップに連結される一端の力点部と、互いに連動可能に係合する他端の作用点部とを有し、力点部で受けた操作力を作用点部で押圧力として弾性作動部材を押圧する構成とすることができる。
【0009】
キートップは、第1空間に配置される操作部と操作部からベースを貫いて第2空間に延在する縁部とを有し、ベースは、第2空間に突設される一対の支柱部を有し、一対のリンク部材の支点部が一対の支柱部にそれぞれ回動自在に軸止めされ、一対のリンク部材の力点部がキートップの縁部に摺動案内可能に連結され、弾性作動部材は、スイッチ部と一対のリンク部材の作用点部との間に配置され、押圧力により弾性変形してスイッチ部を操作すると共に一対のリンク部材を介してキートップに復元力を与えるように構成とすることができる。
【0010】
一対のリンク部材の作用点部に、弾性作動部材を押圧する押圧部材が設置される構成とすることができる。
【0011】
キートップとベースとの間の空間には、キートップを照光する照光部を配設することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、比較的短いストロークでも、より明確なクリック感でキートップが傾くことなく押込み操作することができ、しかも、弾性作動部材の配置を考慮することで、キートップをムラなく照光できるようにした、キースイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】キースイッチの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示すキースイッチに用いられる弾性作動部材の断面図である。
【図3】図1に示すキースイッチの配置構成を示す、模式的な平面図である。
【図4】図1に示すキースイッチの動作及び作用を示した、模式的な断面図である。
【図5】図1に示すキースイッチに用いられる弾性作動部材単体の特性(押下力−移動量)およびキースイッチの操作特性(押下力−移動量)の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、添付図に基づいて詳細に説明する。
図1〜図3に本発明の一実施形態に係るキースイッチ1の機構構成を、模式的に示す。
キースイッチ1は、キートップ2と、キートップ2に対向するベース3と、ベース3に設けられるスイッチ部(後述)と、キートップ2による操作力をスイッチ部に伝達してスイッチ部を操作する操作力伝達機構4とを備える。そして、このキースイッチ1では、スイッチ部及び操作力伝達機構4は、ベース3のキートップ2と対向する面側の第1空間S1とは反対側の第2空間S2に配設されている。
【0015】
キートップ2は、キャップ形状のもので、上面が平らな押込み操作部2tと縁部2sとを有する。
また、ベース3は、スイッチ装置の筐体(図示省略)に固定され、図中、ベース3の下面側には、一対の支柱部3a、3bが垂下形成されている。
以上のようなベース3に対し、ベース3の上方にキートップ2の押込み操作部2tを位置させるようにキートップ2が配置される。この場合キートップ2は、縁部2sがベース3に形成された一対の支柱部3a、3bの形成位置外側でベース3に形成された貫通穴3gを貫いて上下動可能に挿通される。縁部2sの下部には、後述する操作力伝達機構4を構成するリンク部材の力点部を摺動案内可能に支持するリンク摺動受部2sLを設けている。
【0016】
そして、ベース3の下面側の第2空間S2に配設される操作力伝達機構4は、キートップ2に連動する一対のリンク部材5a、5bと、一対のリンク部材5a、5bから押圧力を受ける弾性作動部材6とを具備する。
リンク部材5a、5bは、ベース3に形成された一対の支柱部3a、3b先端部に、それぞれ回動自在に取り付けられる中間の支点部O1、O2を有する。
また、リンク部材5a、5bは、キートップ2による操作力を受けるようにそれぞれキートップ2に連結される一端の力点部E1、E2を有する。すなわちこれらリンク部材5a、5bの力点部E1、E2はキートップ2の縁部2sの下部に設けられたリンク摺動受部2sLに摺動案内可能に支持されている。
さらに、リンク部材5a、5bは、他端側に、互いに係合状態で中間の支点部O1、O2を軸として連動可能に係合する作用点部P1、P2を有する。すなわちこれら作用点部P1、P2は、リンク部材5a、5bの他端側において互いに連動可能に噛合う係合先端部5at、5btに位置している。作用点部P1、P2には、弾性作動部材6を押圧する押圧部材7が設置される。
この場合、押圧部材7は、リンク部材5a、5bの係合先端部5at、5btにそれぞれ設けられた切溝8a、8bに軸部7a、7bを介して上下動可能状態に装着されている。そして係合先端部5at側の切溝8aにおいては、支点部O1との最短距離に押圧部材7を支持する軸部7aがもたらされる軸部7aの中心を作用点部P1としている。一方、係合先端部5bt側の切溝8bにおいても、支点部O2との最短距離に押圧部材7を支持する軸部7bがもたらされる軸部7bの中心を作用点部P2としている。
かかる作用点部P1、P2間で支持される押圧部材7は、力点部E1、E2で受けた操作力を、前記押圧力として弾性作動部材6を押圧する構成としている(図3参照)。
【0017】
また、ベース3の下面側、すなわち一対の支柱部3a、3bが垂下形成されたベース3の下面側には、スイッチ部9が形成されている(図2参照)。スイッチ部9としては、例えば電気的接点を有するシート状スイッチ、すなわち、2枚のフィルム状回路基板に担持されて対向配置される一対の導通接点からなるメンブレンスイッチ9によって構成することができる。
【0018】
そして、弾性作動部材6は、以上のようなメンブレンスイッチ9が配設されたベース3の下面と押圧部材7との間に介在される。弾性作動部材6は、メンブレンスイッチ9を開閉すると共に押圧部材7から一対のリンク部材5a、5bを介してキートップ2に復元力を与える。
弾性作動部材6は、例えばシリコーンゴム製のドーム型形状に成形された中空部材であり、ヘッド部6hを一対のリンク部材5a、5bの作用点部P1、P2に設けた押圧部材7に当接している。
また、弾性作動部材6は、ヘッド部6hから外周面6sが拡開するように形成されており、この外周面6sは薄肉部で形成され、内面には内部空間が画成されている。そして、ヘッド部6hに対応する内部空間側には、メンブレンスイッチ9を押圧する作動突部6pが形成されている。
【0019】
本発明の一実施形態に係るキースイッチ1の機構構成は、概略以上の通りであり、次に、各構成要素の位置関係並びに細部構造についてさらに説明する。
リンク部材5a、5bの係合先端部5at、5btは、ここでは、リンク部材5a側に形成された一つの噛合い歯5atが、リンク部材5b側に形成された一対の噛合い歯5bt1、5bt2と噛合う構成となっている。すなわち、リンク部材5aとリンク部材5bとは、リンク部材5a側の一つの噛合い歯5atと、リンク部材5b側の一対の噛合い歯5bt1、5bt2とが噛合い状態で、弾性作動部材6の復元力に抗して、リンク部材5a、5bの力点部E1、E2と支点部O1、O2と作用点部P1、P2とが図3に示すように略一直線状となる状態から、弾性作動部材6の復元力によってリンク部材5a、5bがそれぞれ支点部O1、O2を中心として変位して双方の先端側の押圧部材7がベース3側から離間移動する構成である(図1参照)。
【0020】
ここで、図4を参照しながら、キートップ2の押込み操作部2tを押込んだときの各構成要素の位置関係を説明する。
図4は、キートップ2の押込み操作部2tを初期位置(図1)から距離xだけ押込んだときの機構要素の動作状態を示している。
キートップ2の押込み操作部2tをx押込んだときに、キートップ2の縁部2sの下部のリンク摺動受部2sLを介してリンク部材5a、5bの力点部E1、E2に伝達され、リンク部材5a、5bは、双方の噛合い歯5atと噛合い歯5bt1、5bt2とが噛み合い状態で、支柱部3a、3b先端部に取り付けられた支点部O1、O2を中心に変位して、双方の先端側同士を連結する押圧部材7が鉛直上方に上昇し、yだけ移動する。このときの弾性作動部材6の押圧移動量をyとする。
この場合、リンク部材5a、5bにおいて、支柱部3a、3b先端部における軸止め箇所である支点部O1、O2からリンク部材5a、5bの力点部E1、E2までの距離をmとし、支点部O1、O2から支柱部3a、3b先端部の作用点部P1、P2までの距離をnとすると(m<n)、
x/m≒y/nの関係がある。
そしてその際、キートップ2の押込み操作部2tに対する押下力pを操作力とした場合、押圧力qが押圧部材7を介して弾性作動部材6を押圧するわけであるが、
p/m≒q/nの関係が成り立つ。
すなわち、m<nであるから、x≒(m/n)yで、移動量xは、弾性作動部材6への押圧移動量yを得るためにyのm/n(<1)倍で済むことになる。
また、q≒(n/m)pで、押下力pのn/m(>1)倍の押圧力qで弾性作動部材6を押圧することができることになる。
【0021】
このように、キートップ2の押込み操作部2tを押圧することで、キートップ2の移動量xが、n/m(>1)倍の押圧移動量yとなって弾性作動部材6を押圧する。その間、リンク部材5a、5bは、双方の噛合い歯5atと噛合い歯5bt1、5bt2とが噛み合いつつ、押圧部材7に押圧力が伝達され、弾性作動部材6を押圧して、メンブレンスイッチ9を押込み、接点が閉成される。
その際、リンク部材5a、5bは、力点部E1、E2がキートップ2の縁部2sの下部のリンク摺動受部2sLにおいて、水平方向に外側に案内摺動する一方、双方の係合先端部5at、5btを連結する押圧部材7が、係合先端部5at、5btそれぞれ設けられた切溝8a、8bを移動して、リンク部材5a、5bの力点部E1、E2と支点部O1、O2と作用点部P1、P2とが略一直線状となり、キートップ2は、押込み操作部2tが傾くことなく押込み操作することができる。
ここで、例えば、弾性作動部材6単体の押下力−移動量特性を図5の破線で示すように図示すると、上述のキースイッチ1によれば、押下力且つ移動量はn/m(>1)となって図5の実線で示す押下力−移動量特性として図示することができる。
すなわち、弾性作動部材6の特性である押下力のピーク特性が、より短縮された移動量で急峻なピーク特性として強調されたものとなることがわかる。このことは、この実施形態にかかるキースイッチ1によれば、操作者はより短縮された移動量で(より短縮されたストロークで)明確なクリック感を持って操作することができることがわかる。
【0022】
また、この実施形態にかかるキースイッチ1では、従来のように、キートップの押込み操作面と押込み方向のベースの対向面側にメンブレンスイッチを配置して復元部としての弾性作動部材を配置するのではなく、ベース3の対向面と反対側の面(裏面)側に、メンブレンスイッチ9および弾性作動部材6他、一対のリンク5a、5b等の操作力伝達機構4を配置する構成としたので、キートップ2の押込み操作部2tとベース3間には、第1空間S1がもたらされ、この第1空間S1を利用して、例えばLED等の任意の照光部10や、操作案内用の光表示手段を設けることができ、キートップ2に対するムラのない照光が可能となるなど、これまで見られない機能をキースイッチ1にもたらすことができ、例えばノートパソコンなどのキーボードとして使用した場合、格別な付加価値をノートパソコンにもたらすことができる。
【符号の説明】
【0023】
1 キースイッチ
2 キートップ
2t 押込み操作面
2s 縁部
2sL リンク摺動受部
3 ベース
3a、3b 支柱部
3g 貫通溝
4 操作力伝達機構
5a、5b リンク部材
5at 噛合い歯
5bt1、5bt2 噛合い歯
6 弾性作動部材
6h ヘッド部
6s 外周面
6p 作動突部
7 押圧部材
7a、7b 軸部
8a、8b 切溝
9 メンブレンスイッチ
10 照光部
E1、E2 力点部
O1、O2 支点部
P1、P2 作用点部
S1 第1空間
S2 第2空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キートップと、該キートップに対向するベースと、該ベースに設けられるスイッチ部と、前記キートップによる操作力を前記スイッチ部に伝達して前記スイッチ部を操作する操作力伝達機構とを備えたキースイッチにおいて、
前記スイッチ部及び前記操作力伝達機構は、前記ベースの前記キートップと対向する面側の第1空間とは反対側の第2空間に配設されていることを特徴とするキースイッチ。
【請求項2】
前記操作力伝達機構は、前記キートップに連動する一対のリンク部材と、該一対のリンク部材から押圧力を受ける弾性作動部材とを具備し、これらリンク部材は、前記ベースにそれぞれ回動自在に取り付けられる中間の支点部と、前記キートップによる前記操作力を受けるようにそれぞれ前記キートップに連結される一端の力点部と、互いに連動可能に係合する他端の作用点部とを有し、前記力点部で受けた前記操作力を前記作用点部で前記押圧力として前記弾性作動部材を押圧する、請求項1に記載のキースイッチ。
【請求項3】
前記キートップは、前記第1空間に配置される操作部と該操作部から前記ベースを貫いて前記第2空間に延在する縁部とを有し、
前記ベースは、前記第2空間に突設される一対の支柱部を有し、
前記一対のリンク部材の前記支点部が前記一対の支柱部にそれぞれ回動自在に軸止めされ、
前記一対のリンク部材の前記力点部が前記キートップの前記縁部に摺動案内可能に連結され、
前記弾性作動部材は、前記スイッチ部と前記一対のリンク部材の前記作用点部との間に配置され、前記押圧力により弾性変形して前記スイッチ部を操作すると共に前記一対のリンク部材を介して前記キートップに復元力を与える、請求項2に記載のキースイッチ。
【請求項4】
前記一対のリンク部材の前記作用点部に、前記弾性作動部材を押圧する押圧部材が設置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキースイッチ。
【請求項5】
前記キートップと前記ベースとの間の空間に、前記キートップを照光する照光部が配設される請求項1〜4のいずれか1項に記載のキースイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−84423(P2013−84423A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223124(P2011−223124)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】