説明

キーパッドおよびそれを備える電子機器

【課題】
非真円形状の多方向キーの裏側に配置される接点間の領域を押圧指示する際に、確実にその両隣の接点をオンすることのできるキーパッドおよびそれを備える電子機器を提供する。
【解決手段】
本発明は、2以上の貫通孔を有するフレーム10と、その貫通孔に1または2以上配置されると共にフレーム10から表方向に突出する弾性材料47から成る台座部と、2以上の台座部の上方に配置され、各台座部側に向けて押圧操作可能な多方向キー20とを備え、台座部の位置における多方向キー20とその裏側にあるフレーム10との第一距離L1に対して、多方向キー20の面内中心から前述の台座部より離れた端部位置における多方向キー20とその裏側にあるフレーム10との間の第二距離L2を大きくしているキーパッドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向キーを配置したキーパッド、および当該キーパッドを備える電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話機器、固定電話機器、カーナビゲーション装置等の電子機器には、多方向に操作可能なキー(「多方向キー」と称する)を備えるものが知られている。多方向キーの中で最も一般的なキーは、中央キーと、その周囲を囲む環状キーとから成るキーであり、例えば、中央キーは選択を確定するために使用し、環状キーは平面視にて上下左右の4方向に操作可能であって各方向に応じて異なるメニューを表示することができる。電子機器の多機能化が進む中、操作容易性の観点からキーの数を過度に多くしないようにするため、多方向キーの操作方向をさらに増やしたものも見られるようになってきた。例えば、上下左右4方向に加え、その中間方向も含む合計8方向に操作可能多方向キーも知られている。
【0003】
しかし、小型化の要請の大きい電子機器、とりわけその代表的な機器である携帯電話機器では、多方向キーのサイズに制約があるため、操作可能な方向ごとに接点を備えることが困難な場合が多い。このため、8方向の操作を可能とする多方向キーであっても、従来と同じ上下左右4方向にのみ接点を設け、隣り合う2個の接点を同時に押したときに、新たな機能を実行できるようにする方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−175401
【特許文献2】特開2007−096649
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、隣り合う2方向の中間方向を指示したときに当該2方向の裏側にある接点を同時に押して別の機能を実行可能な多方向キーには、次のような問題がある。
【0006】
図11は、上下左右4方向にのみ接点を有する8方向指示可能な多方向キーを備える、従来型のキーパッドの一例を示す正面図である。図12は、図11に示す多方向キーの部分を抜き出して示す正面図である。
【0007】
図11に示すキーパッド200は、上方の略中央に、中央キー201とその周囲を囲む環状キー202とから成る平面視にて略正方形の多方向キー203を配置し、その多方向キー203の左右および下方に、裏側に向かって押圧操作可能な合計16個のキー204〜219を配置している。環状キー202は、その面内中央から上下左右および斜め方向にも揺動可能に、キーパッド200に備えられている。中央キー201の裏側には、中央キー201からの押圧を受けると裏側に弾性的に押し込み動作可能な台座部220が配置されている。また、環状キー202の上下左右4方向には、それぞれ、環状キー202の上下左右各端部において押圧を受けると裏側に向けて弾性的に押し込み動作可能な台座部221,222,223,224が配置されている。
【0008】
上下左右の各方向の端部を押圧指示する場合には、当該各方向においてその裏側に配置される台座部221等を確実に押し込むことができる。一方、斜め方向を押圧する場合には、上又は下方向のいずれかの台座部221又は222と、左又は右方向のいずれかの台座部223又は224を同時に押し込む必要がある。ここで、多方向キーが略真円形状であれば、どの方向の端部を押しても、その揺動動作の軸となる中心から各端部までの距離がほぼ等しいので、何ら問題なく、上又は下方向の台座部と、左又は右方向の台座部とを同時に確実に押圧可能である。
【0009】
しかし、非真円形状(図11および図12では、略四角形)の多方向キー203の場合には、斜め方向を押圧したときに、上又は下方向のいずれかの台座部221又は222と、左又は右方向のいずれかの台座部223又は224とを押し込む前に、当該斜め方向において、環状キー202の斜め方向の端部が裏側のフレームに接触してしまい、上又は下方向のいずれかの台座部221又は222と、左又は右方向のいずれかの台座部223又は224とを確実に押し込むことができず、その結果として、2個の接点を同時にオンさせることができないという不具合が生じやすい。これは、図12に例示するように、斜め方向における押圧位置Tから環状キー202の面内中心Pとの距離(距離PT)が、当該面内中心Pと左方向の台座部223の位置Qとの距離(距離PQ)および当該面内中心Pと下方向の台座部222の位置Rとの距離(距離PR)よりも長いことに起因すると考えられる。すなわち、多方向キー203の場合、台座部222と台座部223を同時に押し込む状態のとき、面内中心Pから遠い斜め方向の押圧位置Tは、台座部222,223よりも裏側に移動するので、台座部222,223の裾野と同じ高さにあるフレームに先に接触し、斜め方向の押圧指示の不良になりやすい。
【0010】
台座部221,222,223,224の高さを十分に大きくすれば、斜め方向の押圧指示の際に、環状キー202の斜め方向の押圧位置Tが裏側のフレームに接触する前に接点をオンするようにできるが、キーパッド200の薄型化の要請が厳しい現状では、台座部221,222,223,224を出来るだけ低く抑える必要があり、斜め方向の指示不良を確実に防止することは難しい。
【0011】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであって、非真円形状の多方向キーの裏側に配置される接点間の領域を押圧指示する際に、確実にそれら接点をオンすることのできるキーパッドおよびそれを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を解決するための本発明の一形態は、2以上の貫通孔を有するフレームと、その貫通孔に1または2以上配置されると共にフレームから表方向に突出する弾性材料から成る台座部と、2以上の台座部の上方に配置され、各台座部側に向けて押圧操作可能な多方向キーとを備えるキーパッドであって、台座部の位置における多方向キーとその裏側にあるフレームとの第一距離より、多方向キーの面内中心から台座部より離れた端部位置における多方向キーとその裏側にあるフレームとの間の第二距離を大きくしているキーパッドである。
【0013】
本発明の別の形態は、さらに、多方向キーから、隣り合う台座部に挟まれる領域を押圧操作して、当該隣り合う台座部を押し込むことにより、台座部の数以上の方向に操作可能であって、台座部の位置における多方向キーとその裏側にあるフレームとの間の第一距離より、多方向キーの面内中心から隣り合う台座部に挟まれる領域に向かう方向の端部位置における多方向キーとその裏側にあるフレームとの間の第二距離を大きくしているキーパッドである。
【0014】
本発明の別の形態は、さらに、十字形の4つの先端方向にそれぞれ台座部を備え、当該4つの先端方向の台座部の内、隣り合う台座部に挟まれる領域の少なくとも一つを押圧操作可能なキーパッドである。
【0015】
本発明の別の形態は、さらに、多方向キーに、平面視にて四角枠形状の環状キーを備え、少なくともその各辺の方向の裏側に台座部を備えるキーパッドである。
【0016】
本発明の別の形態は、さらに、フレームにおいて、多方向キーの端部位置の裏側に凹部若しくは貫通孔を備えるキーパッドである。
【0017】
本発明の別の形態は、さらに、フレームをライトガイドとし、台座部を透光性材料で形成しているキーパッドである。
【0018】
本発明の一形態は、上記のいずれか1つのキーパッドを備える電子機器である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、非真円形状の多方向キーの裏側に配置される接点間の領域を押圧指示する際に、確実にそれら接点をオンすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す電子機器に備えられるキーパッドの斜視図である。
【図3】図3は、図2に示すキーパッドの下層を構成するフレームを表面側から見た斜視図である。
【図4】図4は、図3に示すフレームを裏返した状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、図2に示すキーパッドの上方部分を拡大して示す平面図である。
【図6】図6は、図5に示すキーパッドの一点鎖線領域をA−A線にて切断したときの断面図である。
【図7】図7は、図5に示すキーパッドの一点鎖線領域をB−B線にて切断したときの断面斜視図である。
【図8】図8は、図7に示すフレームの凹部を拡大して示す斜視図である。
【図9】図9は、第二の実施の形態に係るキーパッドを構成するフレームの凹部を拡大して示す斜視図である。
【図10】図10は、図7と同様の断面図であって、第三の実施の形態に係るキーパッドを図5に示すB−B線にて切断したときの断面斜視図である。
【図11】図11は、上下左右4方向にのみ接点を有する8方向指示可能な多方向キーを備える、従来型のキーパッドの一例を示す正面図である。
【図12】図12は、図11に示す従来型のキーパッドの多方向キーの部分を抜き出して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係るキーパッドおよびそれを備える電子機器の各実施の形態について説明する。
【0022】
<第一の実施の形態>
【0023】
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器の斜視図である。図2は、図1に示す電子機器に備えられるキーパッドの斜視図である。
【0024】
第一の実施の形態に係る電子機器の一例である携帯電話機器1は、開閉可能な折りたたみ式の構成を有し、開いた面の片側にキーパッド2を備える。図2に示すように、キーパッド2は、平面視にて略長方形の平面を有する薄板形状のフレーム10上に、1つの多方向キー20および複数のキー31〜42を積層配置して成る。フレーム10は、その上方に、外側に突出する爪部11を備える。爪部11は、キーパッド2を携帯電話機器1の所定枠内に固定する際に、該所定枠に係止させるために用いられる。
【0025】
多方向キー20は、フレーム10の上方であってその左右方向略中央の位置に配置される。多方向キー20は、その中央に配置される略四角形の中央キー21と、中央キー21の外側を囲む四角枠形状の環状キー22とから構成される。中央キー21は、その裏方向に向けて押圧操作可能なキーであり、例えば、指示の確定の際に用いられる。環状キー22は、その内側を中央キー21に向けて緩やかに下方傾斜させた形状を有する。環状キー22は、多方向キー20の面内の上、下、左、右の4方向と、それら4方向の中間の4方向とを加えた合計8方向に押圧操作可能である。環状キー22は、上記8方向のいずれかの端部を押圧操作すると、その面内略中心を基点として揺動する揺動タイプのキーである。
【0026】
キー31〜42は、多方向キー20と共に、フレーム10よりわずかに小さな操作領域12を形成するための小ピースである。キー31は、多方向キー20の上方領域において左右に細長い形状を有する。キー32およびキー33は、多方向キー20と所定間隔をあけて、それぞれ、操作領域12の左辺および右辺に配置される略四角形のキーである。キー34は、多方向キー20の下方領域において左右に細長い形状を有する。多方向キー20およびキー31〜34によって占める領域は、フレーム10の表面側に形成される操作領域12の上方約30%の面積を占める。操作領域12におけるキー34の下方部分は、キー35〜46によって構成される。キー36〜46は、いずれも略四角形状のキーであり、図2に示すように、キー34下方部分の領域において、升目を埋める形式で配置されている。
【0027】
多方向キー20およびキー31〜46は、好適には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂から構成され、特に好ましくは、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂から成る。ただし、多方向キー20およびキー31〜46は、紫外線硬化性樹脂あるいは電子線硬化性樹脂、ガラス、セラミックス、金属、木材等の樹脂以外の材料から構成されていても良い。
【0028】
図3は、図2に示すキーパッドの下層を構成するフレームを表面側から見た斜視図である。図4は、図3に示すフレームを裏返した状態を示す斜視図である。
【0029】
フレーム10は、この実施の形態では、ライトガイドとしての機能を持つ構成部材である。このため、フレーム10は、透光性に優れた樹脂の一例であるアクリル樹脂、あるいはガラスから構成するのが好ましい。また、近年では、携帯電話機器1等の電子機器の内部で発生する熱が多くなる傾向にあり、さらには電子機器の薄型・小型化の要請に伴い、フレーム10を耐熱性および機械的強度にともに優れたポリカーボネート樹脂で構成するのが、より望ましい。フレーム10に可撓性を要求する場合には、フレーム10をアクリル樹脂あるいはポリカーボネート樹脂から構成するのが好ましい。
【0030】
フレーム10は、その表裏方向に貫通する複数の貫通孔50〜70を備える。貫通孔50,51,52は、多方向キー20の裏方向に形成される。貫通孔53,54は、キー31の左側および右側の各裏方向にそれぞれ形成される。貫通孔55,56は、それぞれ、キー32およびキー33の裏方向に形成される。貫通孔57,58は、キー34の左側および右側の各裏方向にそれぞれ形成される。貫通孔59〜70は、それぞれ、順に、キー35〜46の各裏方向に形成される。
【0031】
上記の貫通孔50〜70は、フレーム10よりも柔軟性に富むエラストマー47を充填する。エラストマー47としては、シリコーン系エラストマー、ウレタン系エラストマーあるいは天然ゴム等の各種弾性材料を好適に用いることができる。エラストマー47は、貫通孔50〜70の各位置にて島状にフレーム10の表面側に分散している。貫通孔50を充填するエラストマー47の表側の面には、その上から下に向かって順に、表側にそれぞれ突出する台座部72、台座部71、台座部73が形成されている。貫通孔51を充填するエラストマー47の表側の面には、表側に突出する台座部74が形成されている。また、貫通孔52を充填するエラストマー47の表側の面にも、表側に突出する台座部75が形成されている。台座部71は、中央キー21の裏面に当接している。台座部72,73,74,75は、ともに略同じ高さであって、環状キー22の面内上下左右4方向の端部位置の各裏面に当接している。
【0032】
貫通孔53,54を充填するエラストマー47の各表側の面には、表側に突出する台座部76,77がそれぞれ形成されている。台座部76,77は、キー31の裏面に当接している。貫通孔55,56を充填するエラストマー47の各表側の面には、表側に突出する台座部78,79がそれぞれ形成されている。台座部78および台座部79は、それぞれ、キー32,33の各裏面に当接している。貫通孔57,58を充填するエラストマー47の各表側の面には、表側に突出する台座部80,81がそれぞれ形成されている。台座部80,81は、キー34の裏面に当接している。
【0033】
貫通孔59〜70を充填するエラストマー47の各表側の面には、それぞれ、順に、表側に突出する台座部82〜93が形成されている。台座部82〜93は、それぞれ、順に、キー35〜46の各裏面に当接している。なお、台座部76〜93は、略同一の高さで形成されている。
【0034】
貫通孔50〜70は、それらの外縁と略面一状態でエラストマー47を充填する。また、図4に示すように、エラストマー47は、フレーム10の裏面において、貫通孔50〜70を連接するように充填している。貫通孔50〜70の各裏側の外周は、フレーム10の内部方向に窪む凹部を備える。貫通孔50〜70の各凹部は、貫通孔50〜70を連接する連接部も形成する。エラストマー47の台座部71〜93の裏側には、それぞれ、裏方向に突出する各1個の押し子111〜133が形成されている。押し子111〜133は、フレーム10の裏側に配置されるスイッチ基板上のスイッチをオンにするための突出部である。但し、連接部は無くとも良い。
【0035】
エラストマー47とフレーム10とが一体となったベースシートは、例えば、フレーム10の裏面側から、流動性を有する未硬化状態のエラストマー組成物を供給し、貫通孔50〜70に該エラストマー組成物を充填した状態で、フレーム10の表側および裏側の両方から金型で型締めし、その状態で加圧・加熱を行う方法にて、好適に製造可能である。その際、金型の内側に、台座部71〜93を形成するための凹部や、押し子111〜133を形成するための凹部を形成しておくことにより、容易に、台座部71〜93および押し子111〜133を備えるエラストマー47を成形できる。エラストマーとフレ−ムとを一体化させる別の方法としては、台座部および押し子等を予め形成したシート状のエラストマーとフレームとを接着剤あるいは両面テ−プ等の接着媒体を用いることよって一体化させる方法もある。シート状のエラストマーは、例えばミラブル型シリコーンゴムを、台座部や押し子を形成させるために必要な雄型と雌型からなる成形金型を用いて、圧縮成形することで形成可能である。
【0036】
図3に示すように、フレーム10において、環状キー22の外周角部の裏側には、フレーム10の内部方向に窪む凹部100,101,102,103が形成されている。凹部100,101,102,103は、多方向キー20の裏側の略水平なフレーム10から4隅に向かって傾斜するように形成されている。すなわち、凹部100,101,102,103は、環状キー22の4つの角部の裏側が最も低く、当該角部から中央キー21の面内中心に向かうに従って徐々に高くなるように形成されている。凹部100,101,102,103については、さらに詳しく後述する。
【0037】
図5は、図2に示すキーパッドの上方部分を拡大して示す平面図である。図6は、図5に示すキーパッドの一点鎖線領域をA−A線にて切断したときの断面図である。図7は、図5に示すキーパッドの一点鎖線領域をB−B線にて切断したときの断面斜視図である。
【0038】
図6に示すように、多方向キー20およびその近傍領域を平面視にて左右方向に切断した断面は、フレーム10の表面側から上方に突出する台座部74および台座部75上に、環状キー22が配置された断面となっている。環状キー22は、その裏面の内縁および外縁の両方に、環状キー22の上部よりも外側に突出するフランジ部150,151を備える。フランジ部151は、環状キー22の上下左右4方向に形成されており、それらの中間方向(この実施の形態では、斜め方向)の部分を切り欠いて形成されている。斜め方向を裏側に向かって押圧操作した際に、環状キー22とフレーム10との接触をできるだけ避ける必要からである。ただし、図7に示すように、フレーム10に凹部101,102,103,104を形成しているので、フランジ部151を過度に外側に突出させない範囲で形成して、フレーム10との接触を回避するようにすることも可能である。各方向環状キー22の外側にあるキー31は、フランジ部151と重ならないように、その裏面の内側に凹部31aを備える。一方、中央キー21は、台座部71上に配置されている。中央キー21は、その上部外縁に、中央キー21の下部よりも大径のフランジ部140を備える。環状キー22のフランジ部150と、中央キー21のフランジ部140は、中央キー21を押し込んだ際に押し子111が接点(スイッチ)を押し込むのに十分な隙間をあけて、表裏方向に重なる位置に存在する。
【0039】
環状キー22の外側とキー31との隙間の裏側には、遮光フィルム160が配置されている。遮光フィルム160は、フレーム10上に固定、若しくは載置されている。光源(不図示)からの光が環状キー22とキー31との隙間から洩れるのを防止するためである。ただし、遮光フィルム160の設置場所は、上記箇所に限定されず、例えば、中央キー21と環状キー22の隙間の直下にも配置することができる。また、フレーム10をライトガイドとして利用しない場合には、遮光フィルム160を配置しなくても良い。台座部74,75の各位置における環状キー22と、その裏側にあるフレーム10とは、第一距離L1だけ隔てられている。
【0040】
図7に示すように、多方向キー20およびその近傍領域を平面視にて斜め方向に切断した断面は、環状キー22がフレーム10から浮いた状態の断面となっている。これは、環状キー22の斜め方向(すなわち、環状キー22の対角線方向)には、環状キー22を支える台座部を備えていないからである。
【0041】
フレーム10は、環状キー22の4隅の裏側に、フレーム10の内部方向に窪む凹部101,102を備える。図7では、凹部101,102のみが描かれているが、図3に示すように、フレーム10は、環状キー22の4隅の裏側に、それぞれ1つずつの凹部101,102,103,104を有する。図7に示す凹部101,102は、環状キー22の裏面の所定位置よりも外側から、フレーム10の内部に向かって下方傾斜するように形成されている。環状キー22の面内中心から台座部74,75に挟まれる領域に向かう方向の端部位置における環状キー22とその裏側にあるフレーム10との間の第二距離L2は、上記第一距離L1よりも大きい。なお、凹部101,102は、環状キー22の角部において、環状キー22のフランジ部150の裏側から、フレーム10の内部に向かって下方傾斜するように形成されても良い。
【0042】
図8は、図7に示すフレームの凹部を拡大して示す斜視図である。
【0043】
ここでは、凹部101,102,103,104を代表して、凹部101を例に説明する。凹部101は、フレーム10の略水平面の稜線101aの位置から傾斜し、途中で水平になっている。すなわち、凹部101は、傾斜面101bと水平面101cとを連接した形状である。なお、凹部101を傾斜面101bのみで形成し、必ずしも水平面101cを設けなくとも良い。
【0044】
凹部101は、フレーム10を製造する際に同時に形成し、あるいはフレーム10の製造後に切削等の手法で形成しても良い。凹部101をフレーム10の製造と同時に形成する場合には、フレーム10を成形するために用いる金型の一方の内面に、凹部101を転写する形状の凸部を形成しておくことにより、フレーム10に凹部101を容易に形成することができる。
【0045】
<第二の実施の形態>
【0046】
次に、本発明のキーパッドおよびそれを備える電子機器の第二の実施の形態について説明する。第二の実施の形態に係る電子機器は、第一の実施の形態と同様の携帯電話機器1である。また、第二の実施の形態に係るキーパッド2は、第一の実施の形態に係るキーパッド2のフレーム10における環状キー22の直下の位置にある凹部101,102,103,104を除き、第一の実施の形態に係るキーパッド2と同じ構造を備える。よって、この実施の形態では、第一の実施の形態と異なる箇所のみを説明する。
【0047】
図9は、第二の実施の形態に係るキーパッドを構成するフレームの凹部を拡大して示す斜視図である。
【0048】
第二の実施の形態に係るキーパッド2を構成するフレーム10は、環状キー22の角部の裏側に、貫通孔171を有する。図9では、フレーム10において、環状キー22の一つの角部の裏側にある貫通孔171のみを示しているが、フレーム10は、貫通孔171と同様の貫通孔を、残り3つの裏側に備える。貫通孔171は、第一の実施の形態にて説明した凹部101,102,103,104の変形例である。このように、凹部101,102,103,104に代えて、貫通孔171をフレーム10に形成しても、環状キー22の斜め部分を押し込んだ際に、環状キー22とフレーム10との接触を回避できる。
【0049】
<第三の実施の形態>
【0050】
次に、本発明のキーパッドおよびそれを備える電子機器の第三の実施の形態について説明する。第三の実施の形態に係る電子機器は、第一の実施の形態と同様の携帯電話機器1である。また、第三の実施の形態に係るキーパッド2は、第一の実施の形態に係るキーパッド2を構成する環状キー22の裏面およびフレーム10の表面の各形状を除き、第一の実施の形態に係るキーパッド2と同じ構造を備える。よって、この実施の形態では、第一の実施の形態と異なる箇所のみを説明する。
【0051】
図10は、図7と同様の断面図であって、第三の実施の形態に係るキーパッドを図5に示すB−B線にて切断したときの断面斜視図である。
【0052】
環状キー22の斜め方向の角部は、環状キー22の外側から内側に向けて下方傾斜する凹部181,182を備える。また、図6に示すフランジ部151は、環状キー22の角部裏側近傍を避けるように形成されている。図10では、環状キー22の一つの対角線上の両端に位置する2つの角部にある凹部181,182のみを示しているが、環状キー22は、凹部181,182と同様の凹部を、もう一つの対角線上の両端に位置する2つの角部にも備える。凹部181,182は、傾斜面ではなく、環状キー22の裏面から内部に向けて直角に切り欠いた段形状を有していても良い。
【0053】
環状キー22の裏面の4隅に凹部181,182を形成することにより、環状キー22の斜め部分を押し込んだ際に、環状キー22とフレーム10との接触を回避できる。また、環状キー22に凹部181,182を形成すると、フレーム10側に、凹部101,102,103,104を形成しなくても良い。ただし、環状キー22に凹部181,182を形成し、かつフレーム10に凹部101,102,103,104を形成しても良い。
【0054】
<その他の実施の形態>
上記の各実施の形態に係るキーパッド2は、十字形の4つの先端方向に台座部72,73,74,75を備え、当該4つの先端方向の端部にて押圧操作可能とし、さらに隣り合う台座部73,74等に挟まれる領域を押圧操作して台座部73,74等を押し込んで2つのスイッチをオンさせることにより、台座部72等の数よりも多い合計8方向にて押圧操作可能である。これに代えて、キーパッド2の面内8方向(上下左右の4方向および該4方向の内の隣り合う方向の中間に位置する4方向)に1つずつ台座部を備え、8方向の各端部にて裏側の台座部を押し込んでスイッチをオンさせるキーパッド2において、フレーム10に凹部101,102,103,104を形成し、あるいは環状キー22に凹部181,182を形成するようにしても良い。すなわち、台座部72等の数と操作方向の数とを共に8つにすることもできる。この場合、中間方向の端部の裏側にある台座部を押し込んだときにオンになるスイッチと、さらに中間方向の両隣りの方向にある2つの台座部を同時に押し込んだときにオンになるスイッチとにより、出力される機能が異なるようにすると良い。
【0055】
また、キーパッド2は、環状キー22の面内の上下左右4方向に加え、1〜3の中間方向に操作可能であっても良い。台座部72,73,74,75は、図3に示す配置に限定されず、例えば、図3に示す位置からそれぞれ45度だけ回転した位置に配置されても良い。その場合、環状キー22も同方向に45度だけ回転して配置されるのが好ましい。また、多方向キー20は、中央キー21と環状キー22とから構成されず、一枚の四角い薄板形状のキーであっても良い。さらに、多方向キー20は、真円形でなければ、その形状を四角形に限定されるものではなく、楕円形、5角形以上の多角形、3角形であっても良い。その場合、多方向キー20の揺動の中心からの距離が最も長い端部(最長端部)の裏側において、フレーム10に凹部101等若しくは貫通孔171を形成し、あるいは当該多方向キー20の当該最長端部の裏面に凹部181,182を形成すると良い。
【0056】
フレーム10は、金属やセラミック等の非透光性の材料で構成し、ライトガイドとして機能しないものでも良い。また、キーパッド2からの照光が必要ない場合、エラストマー47も透光性を具備していなくても良い。また、本発明の電子機器は、携帯電話機器1以外に、例えば、個人宅や企業に設置される固定電話機器、自動車内に装備されるカーナビゲーション装置等の、多方向キーを備えて、1つのキーで複数の機能を実行させることのできる機器を含む。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、多方向キーを備える電子機器に利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 携帯電話機器(電子機器)
2 キーパッド
10 フレーム(ライトガイドを兼ねる)
20 多方向キー
22 環状キー
47 エラストマー(弾性材料、特に透光性を有する材料から構成)
50〜70 貫通孔
71〜93 台座部
101〜104 凹部
171 貫通孔
181,182 凹部
L1 第一距離
L2 第二距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の貫通孔を有するフレームと、
その貫通孔に1または2以上配置されると共に上記フレームから表方向に突出する弾性材料から成る台座部と、
2以上の上記台座部の上方に配置され、各台座部側に向けて押圧操作可能な多方向キーと、
を備えるキーパッドであって、
上記台座部の位置における上記多方向キーとその裏側にある上記フレームとの第一距離より、上記多方向キーの面内中心から上記台座部より離れた端部位置における上記多方向キーとその裏側にある上記フレームとの間の第二距離を大きくしていることを特徴とするキーパッド。
【請求項2】
前記多方向キーから、隣り合う前記台座部に挟まれる領域を押圧操作して、当該隣り合う前記台座部を押し込むことにより、前記台座部の数以上の方向に操作可能であって、
前記台座部の位置における前記多方向キーとその裏側にある前記フレームとの間の第一距離より、前記多方向キーの面内中心から上記隣り合う前記台座部に挟まれる領域に向かう方向の端部位置における上記多方向キーとその裏側にある上記フレームとの間の第二距離を大きくしていることを特徴とする請求項1に記載のキーパッド。
【請求項3】
十字形の4つの先端方向にそれぞれ前記台座部を備え、
上記4つの先端方向の前記台座部の内、隣り合う前記台座部に挟まれる領域の少なくとも一つを押圧操作可能であることを特徴とする請求項2に記載のキーパッド。
【請求項4】
前記多方向キーは、平面視にて四角枠形状の環状キーを備え、少なくともその各辺の方向の裏側に前記台座部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のキーパッド。
【請求項5】
前記フレームにおいて、前記多方向キーの前記端部位置の裏側に凹部若しくは貫通孔を備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のキーパッド。
【請求項6】
前記フレームをライトガイドとし、前記台座部を透光性材料で形成していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のキーパッド。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のキーパッドを備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−59567(P2012−59567A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202163(P2010−202163)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】