説明

キーボード分離型コードレスノートPC

【課題】本体及びディスプレイと分離したキーボードの距離や向きに制約がなく、長時間の操作をしても健康を損ねない分離型のノート型PCを提供する。
【解決手段】キーボードは、本体から分離でき、近接回線で本体と接続されているので、打鍵情報を本体に伝えることができる。本体の内面上にディスプレイは位置しているが、回転軸を軸に回転させて裏返すと、今度は今までこのノートPCの下部の支えであった本体の外面が上に来て、その上にディスプレイを位置させる形になり、本体の内面が逆に下部の支えとなるような反転形態をとり、スペース利用性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノート型PC(ノート型パーソナルコンピュータ)の構造に関するものであり、特にキーボードとディスプレイが分離して、操作性を向上させると共に、本体上のディスプレイを安定させる構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCは、持ち運びができるので、外出先でプレゼンテーションを行なうときなどに利用されてきた。液晶ディスプレイの普及により小型軽量化が進展するに伴い、持ち運びは益々楽になり、その利用に拍車をかけている。また、この利便性と省スペース性故に、個人の利用においても、デスクトップ型のPCよりもノート型PCを好む傾向が強まっている。
【0003】
ノート型PCは、本来、持ち運びを前提としているので、その構造は、キーボードと本体を一体化させ、そこに向かい合わさるようにディスプレイを折りたたみ、ノートサイズに収まるように設計されている。使用するときは折りたたんだディスプレイを上方に開く。キーボードと操作者の位置は決まっているので、当然、利用者とディスプレイの距離と位置も固定である。キーボードとディスプレイが固定されていることが、徐々に長時間ノート型PCを使用する者に対する健康上の問題として浮かび上がってきた。
【0004】
昨今のオフィス環境における健康管理で問題視されているものの1つとしてVDT症候群がある。VDT症候群とは、コンピュータディスプレイなどの表示機器(VDT)を使用した作業を長時間続けることで、目や心身に疲労・ストレスを与える症状のことである。2004年の厚生労働省の調査では、VDT作業が原因で身体的な疲労を感じている労働者は78%に上るというデータがある。また、場所をとらないという理由から、家庭においてもノート型PCが主流になったが、やはり、手首や指関節の腱鞘炎とか、目の障害など多くの症例が出ている。
【0005】
座る姿勢の不自由さがあって長時間の作業には向かないという問題、健康問題、あるいは、プレゼンテーションにおけるキーボード操作と見せる位置の不自由さなどを解決するため、様々な提案がなされてきた。特許文献1は、本体上方にあるキーボードを脱着できるように工夫した。脱着したキーボードと本体は、赤外線通信による情報交信によりキーボード操作が可能になる。この工夫のお陰により、切り離したキーボードとディスプレイとの距離を自由に調整でき、眼精疲労などの障害を除去できる。また使用しない場合には、キーボードを本体に装着し持ち運ぶことができる。特許文献2は、ディスプレイを本体から離脱する方法を提案している。ディスプレイを壁に立てかけるか、ぶら下げることにより、スペースを有効利用し、かつ操作の自由さも提供できる。更に、プレゼンテーションにおける視聴者への見せる位置と距離に関するの問題も解決できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−282611号公報
【特許文献2】実開平5−55214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法は、本体が依然としてキーボードとディスプレイの間に位置し、そのスペースで占められているのでスペースの節約には繋がらないし、見映えも良くない。また、赤外線の直進性のため、キーボードとディスプレイを含む本体とは常に向き合わなくてはならない。センサーの位置を自由にすれば、この点は解消するが、センサーと赤外線の透過する間に障害物となる物体や人を置くことができないという制約が生ずる。また、特許文献2の方法は、ディスプレイの配置方法や安定した固定方法に気を配らねばならないという新たな不自由さに直面する。ディスプレイと本体をケーブルで結ぶ特許文献2の方法も距離を完全に解決したことにはならない。
【0008】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、本体及びディスプレイと分離したキーボードの距離や向きに制約がなく、スペースを有効に活用できるようにディスプレイを安定して配置できる分離型のノート型PCを提供する。これにより、長時間の操作に関する健康問題を解決することを目的とする。なお、この発明により、医療費の削減及び国家財政への負担軽減の効果も期待できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために、本発明におけるキーボード分離型コードレスノートPCを提案する。これは、ディスプレイが本体と回転軸を支点に結ばれて開閉でき、本体に並んで位置するキーボードとこの本体の内面上にディスプレイを覆いかぶせると一体化するノート型PCである。キーボードは、本体から分離でき、近接回線で本体と接続されているので、打鍵情報を本体に伝えることができる。通常は、本体の内面上にディスプレイは位置するが、回転軸を軸に回転させて裏返すと、今度は今までこのノートPCの下部の支えであった本体の外面が上に来て、その上にディスプレイを位置させる形になり、本体の内面が逆に下部の支えとなるような反転形態をとることができる。
【0010】
勿論、キーボードを分離しない使用形態も、本体を裏返さない使用形態も、採用可能である。しかし、キーボードを分離すれば、ディスプレイとの距離や位置、方向も自由になり、操作上の健康問題は解消される。また、裏返すとより狭いスペースに本体とディスプレイが収まり、かつ、重心も安定して、使い心地よい作業環境を実現できる。更に、ディスプレイとキーボードの間には、何も存在しないので、すっきりとしていて、見映えも良い。
【0011】
また、本発明における近接回線は、ブルートゥース(BlueTooth:登録商標)を含む近距離無線通信であることを特徴としている。
【0012】
ブルートゥースを使用すると、採用するクラスにより、到達距離は1m、10m、100mが利用できる。ワイアレスなので、ケーブルによる引っ掛けなどの危険はなく、また、赤外線のような、通信機器間の障害物を考慮する必要も無い。近距離無線通信には、ZigBee(登録商標)や、Wi−Fi(Wi Fi:登録商標)等も含まれている。
【0013】
また、本発明におけるキーボードは、ポインティングデバイスを内蔵しており、キーボードの側面等からポインティングデバイスを引き出して操作を行うことができる。操作情報は、キーボードと本体を結ぶ近接回線を介して、本体に伝わる。
【0014】
ポインティングデバイスは、マウスが代表的なデバイスになるが、キーボードからケーブルで接続してもよい。また、マウスその他のポインティングデバイスも、本体と直接近接回線を介して交信する形態であってもよい。これらのバリエーションも本発明に含まれることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、キーボードとディスプレイの距離、位置、方向を自由に調整できるので、眼精疲労、腱鞘炎、肩こり等の健康問題を解消できる効果を奏する。
【0016】
また、近距離無線通信の採用により、操作者とディスプレイの方向に制約は無く、間の障害物に邪魔されることもない。
【0017】
また、本体の裏返しにより、スペースが節約でき、かつ、ディスプレイが安定して設置できる効果を奏する。
【0018】
更に、プレゼンテーションを行なっても、ディスプレイ前面に視聴者を集めることができるという波及効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態であるノート型PCが一体化した状態の図である。
【図2】本発明の実施形態であるノート型PCがキーボードを分離して使用する状態の図である。
【図3】本発明の実施形態であるノート型PCの本体を裏返して、使用する状態の図である。
【図4】本発明を実施するノート型PCのハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明にかかるノート型PCは、キーボードをディスプレイから分離して、操作における使い易さを向上させると同時に眼精疲労や肩こりなどの健康問題を解消するために発明されたものである。キーボードは近距離無線通信により、ノートPC本体と結ばれており、打鍵等の操作の信号が本体に送られ、制御される。このため、本体及びキーボードにはお互いの信号やデータをやりとりする近距離無線通信モジュールが備わっている。その他は、通常のノート型PCと同様の装置が備わっている。
【0021】
しかし、本発明のノート型PCは、使いやすさや見易さを更に追求するため、かつ、スペースの有効利用とディスプレイの安定性のために、本体を裏返してその上にディスプレイを配置するという画期的な工夫がなされている点で、通常のノート型PCを超えた効果を生み出している。この状態にあるディスプレイの前には、本体の筐体等も無い。操作者はすっきりした状態で作業を進めることができるのである。また、作業が終われば、キーボードも筐体に収まり、一体化したノート型PCとして持ち運ぶことができる。
【0022】
図4は、本発明であるキーボード分離型コードレスノートPCのハードウェア構成図である。図4に従い、仕様を説明する。ノート型PC1の本体2には、キーボード20が含まれていない。その代わり、本体近距離無線モジュール5により、分離したキーボード部8のキーボード近距離無線モジュール6と近距離無線通信で交信し、キーボード20からの打鍵信号を受け取る。キーボード部8には、キーボード20の他、ポインティングデバイス9も含まれており、キーボード制御部11の制御を受け、キーボード近距離無線モジュール6へ操作情報を伝え、キーボード近距離無線モジュール6が本体2に伝える。図4のキーボード部8にはキーボード20とポインティングデバイス9が表されているが、カードリーダや補助ボタン装置等、その他の入出力装置が加わってもよい。
【0023】
また、キーボード近距離無線モジュール6や本体近距離無線モジュール5はブルートゥース、ZigBeeやWi−Fi等の近距離無線通信が採用できる。
【0024】
ノート型PCの本体2は、コンピュータである。CPU12はコンピュータプロセッサであり、I/Oバス13を介して、他の装置と制御信号やデータの授受を行い、例えば、ROM14からプログラムをロードし、RAM15上で実行する。本体近距離無線モジュール5は、図4においては、キーボード部8との交信に使用されているが、他の無線機器との交信のため、別途、用意することができる。ネットワークインターフェイス16は、インターネット等の様々なネットワークとのデータ授受を行なう。外部I/Oインターフェイス17は、シリアルI/Oインターフェイス、USBインターフェイス、GPS受信機などの外部データ授受を行なうインターフェイスの総称である。また、外部記憶部18は、ハードディスク、CD−ROM等の外部メディアを装着できる。ディスプレイ7が、ノート型PC1の表示装置になる。
【実施例1】
【0025】
本発明を実施する事例を図1〜図3を使用して説明する。図1は、ノート型PC1が一体化した状態を表している。ノート型PC1は、ディスプレイ7とキーボード部8を備えている。回転軸19はディスプレイ7を開閉する支点になっている。本体近距離無線モジュール5とキーボード近距離無線モジュール6は通常のノート型PCには無い装置であるが、キーボード部8と本体2を接続する近距離無線通信を行なう。通常のノート型PCと異なる構造が、本体2とキーボード部8の位置である。通常のノート型PCでは、キーボード部8はディスプレイ7近くに、本体2は操作者の手前に位置する。これが逆転している点が大きく通常のノート型PCと異なる。また、本体内面3は図1に見えている本体2部分であり、本体外面4はその裏側で筐体の下部にあたる。
【0026】
図2は、ノート型PCがキーボードを分離して使用する状態の図である。キーボード部8は本体2と分離でき(23)、ポインティングデバイス9がキーボード部8からスライド(22)されて、引き出され、操作が可能になる。本体2は、図1における状態と同じように、本体内面3が上、本体外面4が下で本体2を支えている。
【0027】
図3は、ノート型PCの本体を裏返して、使用する状態の図である。ディスプレイ7の前に本体2は見えず、すっきりした状態で画面を見ることができる。本体2は回転軸19を軸に180度回転し、裏返しになっている。図2の状態では、本体内面3は上に、本体外面4が下になり筐体下部を支えていたが、ここで逆転し、本体外面4が上に、本体内面3は下になり筐体下部を支える。図3では、ディスプレイ7の裏側に本体2は隠れているが、この反転により、ディスプレイ7は重心的に安定する。しかも画面の前には邪魔するものは無い。
【0028】
また、本体近距離無線モジュール5とキーボード近距離無線モジュール6はブルートゥースを使用して通信するので、キーボード20が例えば横に90度ずれても通信は途絶えない。更に、キーボード部8とディスプレイ7の間に人が割り込んでもかまわない。図3では、ポインティングデバイス9が使用されている。ポインティングデバイス9は例えば、マウスである。このように、図3は、本発明の目的とする課題解決を図示している。また、ストッパー10がキーボード部8から出てキーボード部8を安定させ、入力操作をし易くしている。
【0029】
なお、本実施例では、ディスプレイ7は回転軸19を回転するだけであるが、より操作性を高めるため、ディスプレイ7を上げ下げする機構を取り入れてもよい。
【0030】
更に、本体2上のディスプレイ7を前後にスライドする機構や、あるいは、左右に回転する機構を加えてもよい。位置や距離の微調整機構により、操作性や使い易さはより向上する。
【0031】
本発明において、キーボード部8と本体2とは、分離する構造になっているのでその接続部分には、分離機構がある。図示していないが、この分離機構は、同時に接続機構にもなり得る。接続された状態で安全に持ち運びができるように、接続部分は強固に保持されており、切り離しを意図しない操作によっては容易に外せない接続機構を備えていることは当然である。
【符号の説明】
【0032】
1 ノート型PC
2 本体
3 本体内面
4 本体外面
5 本体近距離無線モジュール
6 キーボード近距離無線モジュール
7 ディスプレイ
8 キーボード部
9 ポインティングデバイス
10 ストッパー
11 キーボード制御部
12 CPU
13 I/Oバス
14 ROM
15 RAM
16 ネットワークインターフェイス
17 外部I/Oインターフェイス
18 外部記憶部
19 回転軸
20 キーボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイが本体と回転軸を支点に結ばれて開閉でき、前記本体に並んで位置するキーボードと前記本体の内面上に前記ディスプレイを覆いかぶせて一体化するノート型PCであって、
前記本体から分離した前記キーボードは、近接回線により前記本体と交信し、打鍵情報を前記本体に伝えることができ、
前記本体の内面上に前記ディスプレイが位置する該本体を、前記回転軸を軸に回転させて裏返し、該本体の外面上に前記ディスプレイを位置させ、該本体の内面を下部の支えとする反転形態をとることができることを特徴とするキーボード分離型コードレスノートPC。
【請求項2】
前記近接回線は、ブルートゥース(BlueTooth:登録商標)を含む近距離無線通信であることを特徴とする請求項1に記載のキーボード分離型コードレスノートPC。
【請求項3】
前記キーボードは、ポインティングデバイスを内蔵しており、前記キーボードから前記ポインティングデバイスを引き出して操作を行い、該操作情報が、前記近接回線を介して、前記本体に伝わる請求項1又は2に記載のキーボード分離型コードレスノートPC。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−25658(P2013−25658A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161558(P2011−161558)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(711005776)アスカ・クリエイション株式会社 (4)