説明

キーユニットと前記キーユニットを用いたキーボード装置およびキーユニットの製造方法

【課題】 キーボード装置に配列して固定されるキーユニットを、薄型で高い強度で構成でき、また組み立てやすい構造にする。
【解決手段】 金属板で形成されたユニットベース11に右側板部15と左側板部16が垂直よりも浅い角度に折られている。第1のリンク31と第2のリンク41が連結軸部42a,42bで連結された昇降支持機構30がユニットベース11の上に設置される。このとき、第2のリンク41の基部の第2の支持軸部44a,44bを、ユニットベース11の折曲げ片21,22の摺動凹部24a,24bにY2方向へ向けて挿入する。その後に、右側板部15と左側板部16が垂直に折り曲げられ、第1のリンク31の第1の支持軸部37a,37bが、右側板部15と左側板部16に形成された支持穴に挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キートップを昇降自在に支持する昇降支持機構とユニットベースとをユニット化して、キーボード装置の装置ベース上に並べて設置されるキーユニットと、このキーユニットを用いたキーボード装置、およびキーユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータなどのキーボード装置には、複数のキートップが配列して設けられている。それぞれのキートップは、2つのリンクが回動自在に連結されたリンク機構によって昇降自在に支持されているのが一般的である。
【0003】
従来のキーボード装置は、金属板で形成された大型の装置ベースに、複数のキー実装部が設定されており、それぞれのキー実装部で、装置ベースから支持突起が折り曲げられている。装置ベースの上には、広い面積のメンブレン積層体が設けられている。メンブレン積層体は、複数枚のフィルムが積層されたものであり、それぞれのキー実装部において、対向する2枚のフィルムの間に空隙が形成されて、空隙を介して対向するフィルム面に接点が形成された接点構造部が設けられている。
【0004】
そして、前記リンク機構がメンブレン積層体の上に設置され、2つのリンクの基部が、装置ベースから折り曲げられた支持突起に回動自在に連結されている。
【0005】
従来のキーボード装置は、キートップとリンク機構の配列が、装置ベースに設けられた支持突起の折り曲げ位置によって決められる。そのため、例えば、一箇所のキー実装部において支持突起の折曲げ不良があると、その装置ベースの全体が1つの不良品として認定されてしまう。
【0006】
また、装置ベースの支持突起の折り曲げ位置がキーボード装置の機種ごとに相違するため、装置ベースに多数の支持突起を折り曲げるためのプレス金型を機種ごとに用意することが必要である。しかし、装置ベースに多数の支持突起を折り曲げるための金型は大型で且つ複雑であるため、金型の製造コストが高く、しかも機種ごとに別々の金型を製造する必要があるため、キーボード装置の製造コストが高くなっている。
【0007】
以下の特許文献1には、キーボード装置に装備されるキースイッチ構造を個別にユニット化した発明が開示されている。
【0008】
それぞれのキースイッチ構造は、合成樹脂製のハウジングを有しており、このハウジングに、第1のリンクと第2のリンクが連結された1組のリンク機構が設置されて、このリンク機構に1つのキートップが昇降自在に支持されている。ハウジングには下向きの固定ピンが一体に形成されている。
【0009】
キーボード装置の装置ベースであるベースプレートの上にメンブレン積層体が設置されているとともに、ベースプレートのキー実装部に取付け孔が開孔している。1つのキートップを支持しているキースイッチ構造はメンブレン積層体の上に配列して設置される。それぞれのハウジングに設けられた固定ピンが取付け孔に挿入され、固定ピンの先部を溶融することで、ハウジングがベースプレート上にかしめ固定される。
【0010】
この装置では、ベースプレートに取付け孔を形成するだけであるため、ベースプレートの製造が容易であり、機種の変更にも対応しやすい利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−229764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載されたキースイッチ構造は、リンク機構を支持するハウジングが合成樹脂で形成されているため、ハウジングの強度が比較的弱いものとなり、充分な強度を維持しようとすると、ハウジングを肉厚に構成することが必要である。またキートップに下から照明光を与えるタイプのキーボード装置を構成するためにはハウジングに光を通過させる穴を形成することが必要であるが、合成樹脂製のハウジングに大きな穴を開けるとハウジングの強度がさらに低下しやすくなる。
【0013】
また、キースイッチ構造を組み立てる際には、1組のリンク機構を1つのハウジングに、強制的に嵌合させて組み付けることが必要であるため、個々のキースイッチ構造を組み立てる工程が煩雑であり、複数のキースイッチ構造を組み立てるために多くの工数が必要になる。
【0014】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、キーボード装置の装置ベースに、ユニットベースとリンク機構とをユニット化した状態で実装できるようにし、しかも個々のユニットベースを薄型で強度の高い構造にすることが可能なキーユニットを提供することを目的としている。
【0015】
また、本発明は、複数の前記キーユニットが装置ベース上に実装されたキーボード装置を提供することを目的としている。
【0016】
さらに、本発明は、個々のキーユニットを、強制的な嵌合工程を少なくして簡単な工程で組み立てることができるキーユニットの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のキーユニットは、キーボード装置の装置ベース上に並べられて設置されるユニットベースと、前記ユニットベースの上に設置されてキートップを昇降自在に支持する昇降支持機構とを備えており、
前記ユニットベースは金属板で形成されており、前後に離れている前方ベース部および後方ベース部と、前記前方ベース部と前記後方ベース部の双方の右側部から折り曲げられた右側板部と、前記前方ベースと前記後方ベース部の双方の左側部から折り曲げられた左側板部と、前記前方ベース部から折り曲げられて左右方向に対向する右側折曲げ片および左側折曲げ片とが一体に形成されて、前記右側板部と前記左側板部とで、前記前方ベース部と前記後方ベース部とが連結されており、
前記昇降支持機構が、前記右側板部と前記左側板部および前記右側折曲げ片と前記左側折曲げ片に動作自在に支持されていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明のキーユニットは、ユニットベースに対向する右側板部と左側板部とが折り曲げられて、両側板部の間に昇降支持機構が挟まれて配置されているため、全体を薄型に構成できる。また一対の側板部を立ち上げることで、ユニットベースの全体の強度を高くすることができる。
【0019】
本発明のキーユニットは、前記前方ベース部と前記後方ベース部との間では、前記側板部の平板部のみが左右方向に対向し、一対の前記平板部の間および前記前方ベース部と前記後方ベース部との間に開口部が形成されている。
【0020】
上記キーユニットでは、前方ベース部と後方ベース部との間に大きな開口部が形成されているために、照光用の光が通過しやすくなり、さらには昇降支持機構の一部を開口部内に位置させて薄型化を実現しやすくなる。しかも、前方ベースと後方ベースとの間に垂直な側板部が連続しているため、全体の強度を高くすることが可能である。
【0021】
本発明は、前記昇降支持機構に支持されたキートップが前記ユニットベース方向に下降しているときに、前記昇降支持機構の一部が、前記開口部の内部に入り込むように、前記昇降支持機構の高さ寸法が設定されているものとして構成できる。
この構造では、全体を薄型にでき、且つリンク機構の強度を高くできる。
【0022】
本発明は、前記右側板部と前記左側板部とが対向する空間内で、その両側部が前記右側板部と前記左側板部に接近して配置されている。この構造では、全体の幅寸法を小さくすることができる。
【0023】
本発明は、前記右側折曲げ片と前記左側折曲げ片は、前記前方ベース部において前記右側板部および前記左側板部よりも内側で折り曲げられており、前記右側板部と前記右側折曲げ片ならびに前記左側板部と前記左側折曲げ片とが、左右方向で少なくとも一部が重複する位置に形成されているものが好ましい。
【0024】
また、前記前方ベース部および前記後方ベース部から、前記装置ベースに取り付けるための取付け部が折り曲げられていることが好ましく、さらに、前記右側折曲げ片および前記左側折曲げ片と前記取付け部とが、左右方向で少なくとも一部が重複する位置に形成されていることが好ましい。
【0025】
側板部と折曲げ片および取付け部を上記の位置関係で折り曲げ形成することで、大きな開口部を有し且つ強度の高いユニットベースを得ることができる。
【0026】
本発明のキーユニットは、前記右側板部と前記左側板部に支持穴が形成され、前記右側折曲げ片と前記左側折曲げ片に、前方に向けて開口する摺動凹部が形成され、
前記昇降支持機構が第1のリンクと第2のリンクとを有し、第1のリンクに、両側部の基部からそれぞれ突出する一対の第1の支持軸部と、先部に位置する第1の連結部が設けられ、第2のリンクに、基部に設けられた第2の支持軸部と、先部に位置する第2の連結部が設けられ、前記第1のリンクと前記第2のリンクは、それぞれの支持軸部と連結部との間で、互いに回動自在に連結されており、
前記第2のリンクの前記第2の支持軸部が前記摺動凹部に掛止された状態で、前記第1のリンクの前記第1の支持軸部が、それぞれの前記支持穴に回動自在に挿入されており、
前記第1のリンクの前記第1の連結部と、前記第2のリンクの前記第2の連結部に、前記キートップが連結可能とされているものとして構成できる。
【0027】
本発明のキーボード装置は、装置ベース上に複数のキー実装部が設けられて、それぞれのキー実装部に接点構造部が設けられており、それぞれのキー実装部に前記のいずれかに記載のキーユニットが取り付けられていることを特徴とするものである。
【0028】
また、前記ユニットベースの前記前方ベース部と前記後方ベース部との間から、前記キートップに向けて照明光を与える照光部材が設けられている構成とすることが可能である。
【0029】
次に、本発明のキーユニットの製造方法は、キーボード装置の装置ベース上に並べられて設置されるユニットベースを金属板で形成して、前記ユニットベースに、前後に離れている前方ベース部および後方ベース部と、前記前方ベース部と前記後方ベース部の双方の右側部から折り曲げられた右側板部と、前記前方ベースと前記後方ベース部の双方の左側部から折り曲げられた左側板部と、前記前方ベース部から折り曲げられて左右方向に対向する右側折曲げ片および左側折曲げ片と、前記右側板部と前記左側板部のそれぞれに開口する支持穴とを形成しておき、
キートップを昇降自在に支持する昇降支持機構を、前記前方ベース部と前記後方ベース部の上に設置し、
前記昇降支持機構を前記右側折曲げ片と前記左側折曲げ片に掛止させた後に、前記右側板部および前記左側板部を前記前方ベース部と前記後方ベース部に対してほぼ直角に折り曲げて、前記昇降支持機構の両側部に前記右側板部と前記左側板部を対向させるとともに、前記昇降支持機構を、前記支持穴に動作自在に支持させることを特徴とするものである。
【0030】
例えば、本発明のキーユニットの製造方法は、前記右側折曲げ片と前記左側折曲げ片に、前方に向けて開口する摺動凹部を形成しておき、
両側部の基部からそれぞれ突出する一対の第1の支持軸部と先部に位置する第1の連結部とが設けられた第1のリンクと、基部に設けられた第2の支持軸部と先部に位置する第2の連結部とが設けられた第2のリンクとを有し、前記第1のリンクと前記第2のリンクが、それぞれの前記支持軸部と前記連結部との間で、互いに回動自在に連結された前記昇降支持機構を前記ベース部上に設置し、
前記第2のリンクの前記第2の支持軸部を前記摺動凹部に挿入して前記右側折曲げ片と前記左側折曲げ片に掛止させた後に、前記右側板部と前記左側板部を折り曲げて、前記第1の支持軸部を、それぞれの前記支持穴に回動自在に挿入し、
その後に、前記第1のリンクの前記第1の連結部と、前記第2のリンクの前記第2の連結部に、キートップを連結可能とするものである。
【0031】
本発明のキーユニットの製造方法は、好ましくは、前記右側板部と前記左側板部を、前記前方ベース部および前記後方ベース部に対して、直角よりも浅い角度まで予め折り曲げておき、前記昇降支持機構を前記ベース部の上に設置した後に、前記右側板部と前記左側板部をほぼ直角に折り曲げるものである。
【0032】
本発明のキーユニットの製造方法は、昇降支持機構を構成するリンクの支持軸部をユニットベースに強制的に嵌合させる工程が不要であり、容易に組み立てることができる。また自動化で組み立てることも可能である。
【0033】
さらに、本発明のキーユニットの製造方法は、前記昇降支持機構の両側部に、前記右側板部と前記左側板部を曲げるための内型を配置する凹部が形成されているものとして構成できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のキーユニットは、装置ベースの構造を簡単にして、この装置ベース上に複数のキートップを配置することができる。また、キーユニットのユニットベースを金属板で形成し、側板部が対向する構造とすることで薄型で強度の高いものにできる。また、ユニットベースに大きな開口部を形成でき、この開口部でキートップを照光することができ、またこの開口部の中に昇降支持機構の一部を配置することで、薄型で且つ強度の高い構造にできる。
【0035】
本発明のキーユニットの製造方法は、ユニットベースに昇降支持機構の動作部である支持軸部を強制的に嵌合する工程が不要であるので、個々のキーユニットの組立作業が容易であり、また自動組立も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態のキーユニットが装置ベースに取付けたられたキーボード装置の一部を示す断面図、
【図2】複数のキーユニットが配列したキーボード装置の一例を示す平面図、
【図3】キーユニットのユニットベースを示す斜視図、
【図4】ユニットベースに昇降支持機構(リンク機構)が設置される組立工程を示す分解斜視図、
【図5】ユニットベースの両側板部を折り曲げる工程を示す斜視図、
【図6】図5のキーユニットをVI−VI線で切断した断面図、
【図7】図5のキーユニットをVII−VII線で切断した断面図、
【図8】図5のキーユニットをVIII−VIII線で切断した断面図、
【図9】本発明の第2の実施の形態のキーユニットに設けられるユニットベースを示す斜視図、
【発明を実施するための形態】
【0037】
図2は、パーソナルコンピュータなどに装備されるキーボード装置を示している。
キーボード装置1は、図1に示す装置ベース2を有している。装置ベース2は、金属板で形成されており、図2に示すように、複数のキートップ4が縦方向と横方向に配列できる面積を有している。装置ベース2は、複数のキー実装部5を有しており、それぞれのキー実装部5に1つのキートップ4が配置される。
【0038】
図1に示すように、装置ベース2の上にメンブレン積層体3が設置されている。メンブレン積層体3は下部フィルムと上部フィルムが重ねられて構成されている。下部フィルムと上部フィルムは、装置ベース2とほぼ同じ面積を有している。下部フィルムと上部フィルムとの間に、スペーサフィルムが挟まれている。スペーサフィルムには、それぞれのキー実装部5の中央に位置する穴が形成され、この穴の内部で下部フィルムと上部フィルムのそれぞれの内面に接点が形成されており、接点どうしが空隙部を介して対向する接点構造部が構成されている。
【0039】
図1に示すように、装置ベース2には、1箇所のキー実装部5に4つの隆起部2aが形成されており、メンブレン積層体3にそれぞれの隆起部2aが露出する穴部3aが形成されている。
【0040】
それぞれのキー実装部5に、キーユニット10が取り付けられる。キーユニット10は、ユニットベース11とその上に設置される昇降支持機構(支持リンク機構)30とで構成されている。ユニットベース11と昇降支持機構30とが組み立てられたキーユニット10が、装置ベース2のそれぞれのキー実装部5に取り付けられ、その後に、それぞれのキーユニット10にキートップ4が取り付けられる。または、ユニットベース11に昇降支持機構30とキートップ4とが取り付けられたものがキーユニットとなって、装置ベース2のキー実装部5に取り付けられてもよい。
【0041】
実施の形態のキーユニット10は、1個のユニットベース11に1組の昇降支持機構30と1個のキートップ4が組み込まれている。しかし、本発明では、1個のユニットベース11がX方向またはY方向に縦長であって、その上に2組またはそれ以上の組の昇降支持機構30と2個またはそれ以上のキートップ4が取り付けられていてもよい。あるいは、1個のキートップ4がX方向またはY方向に長く形成されており、その下に2組またはそれ以上の組の昇降支持機構30と2個またはそれ以上のユニットベース11に設けられていてもよい。すなわち、X方向またはY方向に並ぶ複数のユニットベースおよび複数組の昇降支持機構30によって、1個の細長のキートップが支持されてもよい。
【0042】
図3に、ユニットベース11が示されている。ユニットベース11は、図4と図5に示すようにY方向に連続する金属板のフープ材11Aから分離されたものである。後に説明するように、キーユニット10の製造工程では、フープ材11Aの上に昇降支持機構30が載せられ、プレス工程で一部が折り曲げられて昇降支持機構30が回動自在に取り付けられ、その後に、フープ材11Aからユニットベース11が切断されて、個々のキーユニット10が完成する。図3は、フープ材11Aから分離された後のキーユニット10から、昇降支持機構30を取り外したものである。
【0043】
図3に示すように、昇降支持機構30を取り外したユニットベース11は、Y1方向に位置する前方ベース部12とY2方向に位置する後方ベース部13を有している。前方ベース部12と後方ベース部13は同じ平面上に位置している。
【0044】
X1側の右側部では、前方ベース部12と後方ベース部13との間に右側板部15が設けられ、X2側の左側部では、前方ベース部12と後方ベース部13との間に左側板部16が設けられている。
【0045】
右側板部15は、前方ベース部12の右側部12aから上向きにほぼ直角に折り曲げられた幅寸法W1の曲げ板部15aと、後方ベース部13の右側部13aから上向きにほぼ直角に折り曲げられた幅寸法W2の曲げ板部15bと、前記曲げ板部15aと曲げ板部15bの間の幅寸法W3の平板部15cとを有している。
【0046】
右側板部15の下縁には、曲げ板部15aと平板部15cとの間に凹部17aが切り込まれて形成され、曲げ板部15bと平板部15cとの間に凹部17bが切り込まれて形成されている。凹部17a,17bが形成されているため、右側板部15が上向きに折り曲げられるときに平板部15cに歪みが発生しにくくなる。
【0047】
左側板部16も、前方ベース部12の左側部12bから上向きにほぼ直角に折り曲げられた幅寸法W1の曲げ板部16aと、後方ベース部13の左側部13bから上向きにほぼ直角に折り曲げられた幅寸法W2の曲げ板部16bと、前記曲げ板部16aと曲げ板部16bとの間の幅寸法W3の平板部16cとを有している。
【0048】
左側板部16の下縁には、曲げ板部16aと平板部16cとの間に凹部18aが切り込まれて形成され、曲げ板部16bと平板部16cとの間に凹部18bが切り込まれて形成されている。そのため、左側板部16が上向きに折り曲げられるときに平板部16cに歪みが発生しにくくなる。
【0049】
図3に示すように、前方ベース部12には、Y2側の縁部12cから前方(Y1方向)へ向けて窪む凹部12dが形成され、後方ベース部13には、Y1側の縁部13cから後方(Y2方向)へ向けて窪む凹部13dが形成されている。
【0050】
ユニットベース11には、右側板部15の平板部15cと左側板部16の平板部16cと前方ベース部12の凹部12dと後方ベース部13の凹部13dとで囲まれた開口部20が形成されている。この開口部20は、右側(X1側)の終端が、上下方向に向けて垂直で且つ平坦面の平板部15cであり、左側(X2側)の終端が、上下に向けて垂直で且つ平坦面の平板部16cである。そのため、開口部20のX1−X2方向の開口幅は、ユニットベース11のX方向の横幅寸法から平板部15c,16cの板厚寸法の合計を引いただけのきわめて広い寸法になる。
【0051】
また、前方ベース部12に凹部12dが形成され、後方ベース部13に凹部13dが形成されているため、開口部20の前後方向(Y1−Y2方向)の開口幅寸法も十分に広い。
【0052】
ユニットベース11は、前方ベース部12と後方ベース部13とが、垂直に立ち上がる右側板部15と左側板部16とで連結された構造であるため、開口部20の開口面積が前方ベース部12と後方ベース部13の面積の合計よりも十分に広くても、全体の剛性を高く維持でき、歪みや捩れなどの変形が生じにくい。
【0053】
図3に示すように、ユニットベース11は、前方ベース部12の凹部12dの右側(X1側)の縁部12eから上向きに折り曲げられた右側折曲げ片21と、凹部12dの左側(X2側)の縁部12fから上向きに折り曲げられた左側折曲げ片22を有している。右側折曲げ片21は、前方ベース部12からZ方向へ垂直に立ち上がる垂直板部21aと、その上端に連続し、上に向かうにしたがって右方向(X1方向)へ傾斜する傾斜板部21bとを有している。同様に、左側折曲げ片22は、前方ベース部12からZ方向へ垂直に立ち上がる垂直板部22aと、その上端に連続して、上に向かうにしたがって左方向(X2方向)へ傾斜する傾斜板部22bとを有している。
【0054】
後方ベース部13の右側部13aとの境界部において、右側板部15に右側支持穴23aが形成され、後方ベース部13の左側部13bとの境界部において、左側板部16に左側支持穴23bが形成されている。右側支持穴23aの中心と左側支持穴23bの中心は、Y方向に延びる同一線上に位置している。
【0055】
右側折曲げ片21の垂直板部21aには、Y2方向に窪むように形成されて前方(Y1方向)に向けて開放された右側摺動凹部24aが形成され、左側折曲げ片22の垂直板部22aには、Y2方向へ向けて窪んでY1方向に向けて開放された左側摺動凹部24bが形成されている。右側摺動凹部24aと左側摺動凹部24bは、同じ形状で同じ大きさに形成されている。
【0056】
前方ベース部12では、右側部から下向きに前方取付け部(前方取付け片)25aが折り曲げられ、左側部から下向きに前方取付け部(前方取付け片)25bが折り曲げられている。右側の前方取付け部25aは、右側板部15の前方に並ぶ位置で、右側板部15と平行に形成されている。左側の前方取付け部25bは、左側板部16の前方に並ぶ位置で、左側板部16と平行に形成されている。
【0057】
図3に示すように、右側折曲げ片21と右側板部15は、その一部どうしが寸法Waの範囲で左右方向(X方向)に重複している。その結果、右側支持穴23aの後方から、右側摺動凹部24aまで、垂直に立ち上がる右側板部15と右側折曲げ片21のいずれかが存在していることになり、全体の強度が高くなっている。さらに、右側折曲げ片21と右側の前方取付け部25aも寸法Wbの範囲で左右方向(X)方向に重複しており、前方ベース部12の右側部分の強度が高められている。
【0058】
上記の右側板部15と右側折曲げ片21および右側の前方取付け部25aの位置関係は、左側板部16と左側折曲げ片22および左側の前方取付け部25bの位置関係においても全く同じである。
【0059】
ユニットベース11の後部ベース部13のY2側の後縁部から下向きに、右側の後方取付け部(後方取付け片)26aと、左側の後方取付け部(後方取付け片)26bが一体に折り曲げられている。
【0060】
図4に示すように、昇降支持機構30は、第1のリンク31と第2のリンク41とを有している。第1のリンク31と第2のリンク41は合成樹脂材料で形成されている。
【0061】
第1のリンク31は、X1側においてY方向に延びる右フレーム部32と、X2側においてY方向に延びる左フレーム部33と、右フレーム部32と左フレーム部33の後部どうしを連結する後方連結部34と、右フレーム部32と左フレーム部33の前部どうしを連結する前方連結部35とが一体に形成されている。第1のリンク31には、右フレーム部32と左フレーム部33および後方連結部34と前方連結部35で囲まれた広い面積の開口部36が形成されている。
【0062】
図4に示すように、右フレーム部32には、X1側に向く中央側部32aと、それよりも後方に位置する後方側部32bを有している。中央側部32aと後方側部32bは、Y−Z平面と平行な同一平面上に位置している。右フレーム部32には、中央側部32aと後方側部32bとの間に、X2方向に向けて窪む後方凹部32cが形成され、中央側部32aよりも前方に、X2方向に向けて窪む前方凹部32dが形成されている。同様にして、左フレーム部33にはX2方向に向く中央側部33aと後方側部33bが形成されており、中央側部33aと後方側部33bはY−Z平面と平行な同一平面上に位置している。中央側部33aと後方側部33bの間に後方凹部33cが形成され、中央側部33aよりも前方に前方凹部33dが形成されている。
【0063】
図4に示すように、第1のリンク31は、右フレーム部32の基部に位置する後方側部32bからX1方向へ第1の支持軸部37aが突出し、左フレーム部33の後方側部33bからX2方向へ第1の支持軸部37bが突出している。また、第1のリンク31の先部である前方連結部35に、X1方向へ突出する軸状の第1の連結部38aと、X2方向へ突出する軸状の第1の連結部38bとが一体に形成されている。
【0064】
右フレーム部32の内側部分では、上向きの開放された連結凹部39aが一体に形成されており、左フレーム部32の内側部分では、上向きに開放された連結凹部39bが一体に形成されている。
【0065】
図8に示すように、右フレーム部32の下面には下向きに突出する隆起部32eが形成されている。図5と図8に示すように、第1のリンク31が、ユニットベース11の前方ベース部12の上面と後方ベース部13の上面に当接して、右フレーム部32と左フレーム部33が、前方ベース部12の上面と後方ベース部13の上面に平行な姿勢になると、前記隆起部32eがユニットベース11の開口部20に入り込む。図3に示すように、開口部20のうちの平板部15cと縁部12c,13cで囲まれた開口領域20Aの内部に前記隆起部32eが入り込む。
【0066】
図8に示すように、前記隆起部32eを形成することで、右フレーム部32の上下の厚さ寸法Hを大きくでき、強度を高くできる。しかも、隆起部32eが開口領域20Aに入り込むために、右フレーム部32の上面32fを高くしなくても強度を確保できることになり、図5と図8に示すように、昇降支持機構30が畳まれた状態で薄型化が可能である。
【0067】
図4に示すように、左フレーム部33の下面にも同様にして隆起部33eが形成されている。第1のリンク31が前方ベース部12と後方ベース部13の上に当たる折り畳み状態になると、隆起部33eが、図3に示す平板部16cと縁部12c,13cとで囲まれた開口領域20Bに入り込む。これにより、左フレーム部33の厚さ寸法を大きくして強度を高く維持でき、昇降支持機構30が折り畳まれた状態で、左フレーム部33の上面33fが大きく上に突出することがなく、キーユニット10の全体を薄型に構成しやすくなる。
【0068】
また、右フレーム部32の隆起部32eが、右側板部15の平板部15cのすぐ内側で開口領域20Aの内部に入り、左フレーム部33の隆起部33eが、左側板部16の平板部16cのすぐ内側で開口領域20Bの内部に入り込むので、右側板部15および左側板部16に第1のリンク31を接近させて収納することができる。これにより、キーユニット10のX方向の幅寸法に無駄がなくなり、第1のリンク31のX方向の幅寸法を十分に大きくし、しかもキーユニット10の全体の幅寸法を短くできる。
【0069】
図4に示すように、第2のリンク41には、前後方向(Y方向)のほぼ中心部で、右側(X1方向)へ突出する連結軸部42aと、左側(X2方向)へ突出する連結軸部42bとが一体に形成されている。図5に示すように、第2のリンク41の連結軸部42a,42bが、第1のリンク31の連結凹部39a,39bに下向きに挿入されることで、第1のリンク31と第2のリンク41が、連結軸部42a,42bを支点として回動自在に連結される。また、昇降支持機構30が折り畳まれた状態では、図5に示すように、第2のリンク41の全体が第1のリンク31の開口部36の内部に入り込み、第2のリンク41の上面41aが、第1のリンク31の上面から上に突出することがない。
【0070】
第2のリンク41には中央部に円形の開口部43が上下に貫通して形成されており、キーユニット10は、この開口部43の面積の範囲内において上下に貫通された構造になる。
【0071】
第2のリンク41の前端部41bと上面41aとの間には段差部41cが形成され前端部41bの厚さ寸法が薄くなっている。第1のリンク31の前方連結部35には、その上端部からY2方向へ突出するリブ35aが一体に形成されている。図5に示すように、第2のリンク41が第1のリンク31の開口部36の内部に設置されるときに、前記前端部41bがリブ35aの下側に入り込む。また、第2のリンク41に設けられた第2の連結部46a,46bは、第1のリンク31の右フレーム部32と左フレーム部33との間の空間内に入り込む。
【0072】
第2のリンク41の基部である前端部41bには、右側の側部からX1方向へ突出する第2の支持軸部44aが一体に形成され、左側の側部からX2方向へ突出する第2の支持軸部44bが一体に形成されている。また、第2のリンク41の右側部では、第2の支持軸部44aおよび第2の支持軸部44bよりも後方にX方向の幅寸法を減少させる凹部45a,45bが形成されている。
【0073】
図4に示すように、第2のリンク41の先部であるY2側の後端部には、X1方向へ突出する軸状の第2の連結部46aと、X2方向へ突出する軸状の第2の連結部46bとが一体に形成されている。
【0074】
次に、実施の形態のキーユニット10の組立方法を説明する。
図4に示すように、キーユニット10の組立工程では、多数のユニットベース11がY方向に一体に連なったフープ材11Aが使用される。このフープ材11Aは、一定の幅寸法の帯状の金属板をトリミングして、複数に連なったユニットベース11の各部の形状が形成されたものである。
【0075】
図4に示すように、このフープ材11Aは、個々のユニットベース11の右側板部15と左側板部16が、図3に示す完成状態よりもやや浅い角度、すなわち水平面から30〜60度程度立ち上がった状態の斜めの向きに曲げられている。
【0076】
昇降支持機構30は、第2のリンク41の前端部41bを、第1のリンク31の前方連結部35のリブ35aの下側へ入り込ませ、連結軸部42a,42bを連結凹部39a,39bに下向きに挿入して、第2のリンク41が第1のリンク31の開口部36の内部に入り込むように組み立てられる。
【0077】
組み立てられた昇降支持機構30は、ユニットベース11の上に設置される。このとき、図4に示す組立軌跡(i)のように、昇降支持機構30を正常な取付け位置よりもやや前方Y1に位置ずれさせた状態で、組立軌跡(ii)のように、昇降支持機構30をほぼ水平姿勢のまま、前方ベース部12と後方ベース部13に向けて下降させる。
【0078】
昇降支持機構30を下降させると、図5に示すように、ユニットベース11から折り曲げられた右側折曲げ片21が、第1のリンク31の右フレーム部32の内側と第2のリンク41の右側部の凹部45aとの間に入り込む。同時に、左側折曲げ片21が左フレーム部33の内側と左側部の凹部45bとの間に入り込む。
【0079】
図4と図6に示すように、右側折曲げ片21の上部の傾斜板部21bと左側折曲げ片22の上部の傾斜板部22bは、その上端部が互いに離れるように傾斜しているため、図4に示す組立軌跡(ii)において昇降支持機構30を下降させたときに、第2のリンク41の左右の凹部45a,45bが、右側折曲げ片21と左側折曲げ片22との間にスムースに入り込む。そのため、自動機でフープ材11Aの上に昇降支持機構30を順番に設置するときに、設置エラーが生じにくくなる。
【0080】
図7に示すように、ユニットベース11の右側板部15と左側板部16は、その上端部が互いに離れる向きに傾斜しているため、図4に示す組立軌跡(ii)で昇降支持機構30が下降するときに、第1のリンク31の第1の支持軸部37a,37bが右側板部15と左側板部16に当たらない。ただし、右側板部15と左側板部16の傾き角度によっては、第1の支持軸部37a,37bの先端部が、右側板部15と左側板部16の内面にわずかに当たる状態で、昇降支持機構30がユニットベース11の上に設置されてもよい。
【0081】
昇降支持機構30がユニットベース11の前方ベース部12と後方ベース部13の上に設置された後に、図4に示す組立軌跡(iii)に沿って、昇降支持機構30を後方(Y方向)へ向けて移動させる。この工程で、第2のリンク41の基部である前端部41bの右側に設けられた第2の支持軸部44aが、ユニットベース11の右側折曲げ片21に形成された摺動凹部24aの内部に入り込む。同時に、第2のリンク41の前端部41bの左側に設けられた第2の支持軸部44bが、左側折曲げ片22に形成された摺動凹部24bの内部に入り込む。
【0082】
図4に示す組立軌跡(iii)に沿って昇降支持機構30がY2方向へ移動すると、第1のリンク31に設けられた第1の支持軸部37aが右側板部15に形成された支持穴23aに対向し、第1の支持軸部37bが左側板部16に形成された支持穴23bに対向する。
【0083】
この状態で、図5に示すように、第1のリンク31の右側部の後方凹部32cに内型51aを入り込ませ、左側部の後方凹部33cに内型51bを入り込ませる。同時に、第1のリンク31の右側部の前方凹部32dに内型52aを入り込ませ、左側部の前方凹部32dに内型52bを入り込ませる。そして、X2方向へ移動する外型で、右側板部15が折り曲げられ、外型と前記内型51a,52aとで右側板部15が挟まれて、右側板部15がほぼ垂直に折り曲げられる。同様に、X1方向へ移動する外型で、左側板部16が折り曲げられ、外型と前記内型51b,52bとで左側板部16が挟み込まれ、左側板部16がほぼ垂直な向きに曲げられる。
【0084】
図5に示すように、右側板部15が垂直に曲げられると、第1のリンク31の右フレーム部32の中央側部32aと後方側部32bが、右側板15の内側に対面する。そして、第1のリンク31の第1の支持軸部37aが、ユニットベース11の支持穴23aに挿入される。左側板部16が垂直に曲げられると、左フレーム部33の中央側部33aと後方側部33bが、左側板部16の内側に対面する。そして、第1のリンク31の第1の支持軸部37bが、支持穴23bに入り込む。
【0085】
この製造方法では、右側板部15と左側板部16を折り曲げることで、第1の支持軸部37a,37bを、支持穴23a,23bに挿入しているため、支持軸部を支持穴に強制的に嵌合させる作業が不要になる。よって、ユニットベース11への昇降支持機構30の組み付けを自動機を使用して簡単に行うことができる。また、第1のリンク31や右側板部15と左側板部16に、強制嵌合による変形や破壊が生じにくくなり、部品の不良率を低減させることが可能である。
【0086】
右側板部15と左側板部16の折曲げが完了した後に、内型51a,51b,52a,52bおよび外型をユニットベース11から離す。なお、前方取付け部25a,25bと後方取付け部26a,26bは、右側板部15と左側板部16の折り曲げ工程の前または後の工程で折り曲げられる。
【0087】
そして、フープ材11Aから個々のユニットベース11を切り離すことで、ユニットベース11に昇降支持機構30が組み付けられたキーユニット10が完成する。
【0088】
図5に示すように、完成したキーユニット10は、金属板で形成されたユニットベース11の右側板部15と左側板部16との間に、昇降支持機構30が大きな隙間を空けることなく配置されているので、昇降支持機構30のX方向の幅寸法を大きくしても、昇降支持機構30と右側板部15ならびに左側板部16との間に隙間がある場合と比較して、キーユニット10の全体の幅寸法を小さくできる。また、図5に示すように、第1のリンク31と第2のリンク41が水平姿勢となるように折り畳まれた状態で、キーユニット10の高さ寸法が、右側板部15と左側板部16の高さ寸法H0以内となり薄型化を図ることができる。また、X1側の側部とX2側の側部のほとんどの範囲に右側板部15と左側板部16が位置しているので、強度を高くすることが可能である。
【0089】
図1と図2に示すように、それぞれが1個の昇降支持機構30を有するキーユニット10を、装置ベース2の上に配列して固定することで、キーボード装置1が構成される。
【0090】
図1に示すように、それぞれのキー実装部5では、メンブレン積層体3の接点構造部の上に弾性部材60が設定される。弾性部材60は合成ゴム材料で形成されており、キートップ4に当たる上部当接部61と、メンブレン積層体3の上に設置される下部当接部62と、その中間の薄肉の弾性変形部63を有している。下部当接部62と弾性変形部63の内側は空隙部であり、この空隙部内に、上部当接部61から下側へ延びる押圧部64が形成されている。
【0091】
弾性部材60は、装置ベース2にキーユニット10が取り付けられる前に、メンブレン積層体3の上面に接着剤などで固定されている。
【0092】
キーユニット10が装置ベース2に取り付けられるときに、前記弾性部材60が、第2のリンク41の円形の開口部43の内部に入り込む。
【0093】
ユニットベース11の前方ベース部12と後方ベース部13が、装置ベース2の隆起部2aの上に設置される。このときユニットベース11の前方取付け部25a,25bが隆起部2aに形成された取付け穴2b,2b内に挿入され、後方取付け部26a,26bが隆起部2aに形成された取付け穴2c,2cに挿入される。それぞれの取付け部25a,25b,26a,26bが装置ベース2の裏面側に折り曲げられることで、キーユニット10がキー実装部5に取り付けられる。
【0094】
図1に示すように、キートップ4の下面には、Y2側において一対の嵌合突起71がX方向に間隔を空けて一対設けられている。それぞれの嵌合突起71に嵌合支持凹部72が形成されている。キートップ4の下面のY1側には、フック部73がX方向に間隔を空けて一対設けられている。それぞれのフック部73にはY1方向に開放された摺動凹部74が形成されている。
【0095】
装置ベース2にキーユニット10が取り付けられた後に、第1のリンク31の先部の第1の連結部38a,38bをフック部73の摺動凹部74にY2方向へ向けて挿入した後に、第2のリンク41の先部の第2の連結部46a,46bを嵌合支持凹部72の内部に嵌合させることで、キートップ4がキーユニット10に組み付けられる。
【0096】
キーボード装置1の個々のキーユニット10では、キートップ4が押されていないときに、弾性部材60の弾性力でキートップ4が上方へ持ち上げられている。キートップ4が下向きに押されると、第1のリンク31の第1の支持軸部37a,37bが、ユニットベース11の支持穴23a,23bの内部で回動し、第2のリンク41の第2の連結部46a,46bが、キートップ4の嵌合支持凹部72の内部で回動する。また第2のリンク41の第2の支持軸部44a,44bが、ユニットベース11の摺動凹部24a,24b内を摺動し、第1のリンク31の第1の連結部38a,38bがキートップ4の摺動凹部74内を摺動し、これによりキートップ4が下降する。そして弾性部材60の弾性変形部63が押しつぶされ、弾性部材60の押圧部64で、メンブレン積層体3の接点構造部が押されて接点どうしが接触し、キー入力信号を発生させることができる。
【0097】
図1に示すように、キーボード装置1の装置ベース2の下側に照光部材7を配置することができる。この照光部材7は、透光性の樹脂シートで形成されており、キーユニット10が設けられていない部分で、発光ダイオードなどの光源から照光部材7の内部に照明光が与えられている。それぞれのキー実装部5において照光部材7の上面または下面に乱反射のための凹凸部を形成しておくことで、光をキーユニット10に向けて送り出すことができる。
【0098】
図1に示すように、キーユニット10の下で、装置ベース2に照光用の穴部2dを形成し、メンブレン積層体3にも穴部3dを形成しておくことで、照明用の光が、ユニットベース11の開口部20から第2のリンク41の開口部に与えられる。弾性部材60を透光性材料で形成しておくことで、キートップ4に光を与えることができる。そして、図2に示すように、それぞれのキートップ4に形成されている文字や記号の標記を照らし出すことができる。
【0099】
また、第1のリンク31と第2のリンク41を光を透過可能な材料で形成することもできる。さらに、装置ベース2やメンブレン積層体3などの部材も、第1のリンク31ならびに第2のリンク41と同様、光を透過可能な材料で形成することができる。
【0100】
図4に示すように、ユニットベース11の開口部20を広い面積にできるため、多くの光を昇降支持機構30および開口部43に与えることができ、キートップ4の文字や記号を高い輝度で照光できるようになる。
【0101】
図9は本発明の第2の実施の形態のキーユニットに使用されるユニットベース111が示されている。このユニットベース111は、前方ベース部12の前方(Y1側)に向く縁部から、取付け部125a,125bが下向きに折り曲げられている。
【0102】
図3に示したように、前方の取付け部25a,25bが折曲げ片21,22と対向する位置で折り曲げられているものに比べて、図9に示すものは前方ベース部12の両側部の強度が弱くなりやすい。そこで、前方ベース部12の両側部に、Y方向に延びる補強隆起部110a,110bが一体にプレス成形されている。補強隆起部110a,110bは、Y2側の端部が、右側板部15および左側板部16と左右方向(X方向)で重複する位置から、それぞれの折曲げ片21,22よりも前方の領域まで連続して延びている。
【0103】
この補強隆起部110a,110bを形成することで、前方ベース部12の両側部の強度を高めることが可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 キーボード装置
2 装置ベース
3 メンブレン積層体
4 キートップ
5 キー実装部
7 照光部材
10 キーユニット
11 ユニットベース
11A フープ材
12 前方ベース部
13 後方ベース部
15 右側板部
15a,15b 曲げ板部
15c 平板部
16 左側板部
16a,16b 曲げ板部
16c 平板部
20 開口部
20A,20B 開口領域
21 右側折曲げ片
22 左側折曲げ片
23a 右側支持穴
23b 左側支持穴
24a 右側摺動凹部
24b 左側摺動凹部
25a,25b 前方取付け部
26a,26b 後方取付け部
30 昇降支持機構
31 第1のリンク
32 右フレーム部
32a 中央側部
32b 後方側部
32c 後方凹部
32d 前方凹部
32e 隆起部
33 左側フレーム部
33a 中央側部
33b 後方側部
33c 後方凹部
33d 前方凹部
33e 隆起部
36 開口部
37a,37b 第1の支持軸
38a,38b 第1の連結部
39a,39b 連結凹部
41 第2のリンク
42a,42b 連結軸部
43 開口部
44a,44b 第2の支持軸部
46a,46b 第2の連結部
60 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーボード装置の装置ベース上に並べられて設置されるユニットベースと、前記ユニットベースの上に設置されてキートップを昇降自在に支持する昇降支持機構とを備えており、
前記ユニットベースは金属板で形成されており、前後に離れている前方ベース部および後方ベース部と、前記前方ベース部と前記後方ベース部の双方の右側部から折り曲げられた右側板部と、前記前方ベースと前記後方ベース部の双方の左側部から折り曲げられた左側板部と、前記前方ベース部から折り曲げられて左右方向に対向する右側折曲げ片および左側折曲げ片とが一体に形成されて、前記右側板部と前記左側板部とで、前記前方ベース部と前記後方ベース部とが連結されており、
前記昇降支持機構が、前記右側板部と前記左側板部および前記右側折曲げ片と前記左側折曲げ片に動作自在に支持されていることを特徴とするキーユニット。
【請求項2】
前記前方ベース部と前記後方ベース部との間では、前記側板部の平板部のみが左右方向に対向し、一対の前記平板部の間および前記前方ベース部と前記後方ベース部との間に開口部が形成されている請求項1記載のキーユニット。
【請求項3】
前記昇降支持機構に支持されたキートップが前記ユニットベース方向に下降しているときに、前記昇降支持機構の一部が、前記開口部の内部に入り込むように、前記昇降支持機構の高さ寸法が設定されている請求項2記載のキーユニット。
【請求項4】
前記昇降支持機構が前記右側板部と前記左側板部とが対向する空間内で、その両側部が前記右側板部と前記左側板部に接近して配置されている請求項1ないし3記載のキーユニット。
【請求項5】
前記右側折曲げ片と前記左側折曲げ片は、前記前方ベース部において前記右側板部および前記左側板部よりも内側で折り曲げられており、前記右側板部と前記右側折曲げ片ならびに前記左側板部と前記左側折曲げ片とが、左右方向で少なくとも一部が重複する位置に形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載のキーユニット。
【請求項6】
前記前方ベース部および前記後方ベース部から、前記装置ベースに取り付けるための取付け部が折り曲げられている請求項1ないし5のいずれかに記載のキーユニット。
【請求項7】
前記右側折曲げ片および前記左側折曲げ片と前記取付け部とが、左右方向で少なくとも一部が重複する位置に形成されている請求項6記載のキーユニット。
【請求項8】
前記右側板部と前記左側板部に支持穴が形成され、前記右側折曲げ片と前記左側折曲げ片に、前方に向けて開口する摺動凹部が形成され、
前記昇降支持機構が第1のリンクと第2のリンクとを有し、第1のリンクに、両側部の基部からそれぞれ突出する一対の第1の支持軸部と、先部に位置する第1の連結部が設けられ、第2のリンクに、基部に設けられた第2の支持軸部と、先部に位置する第2の連結部が設けられ、前記第1のリンクと前記第2のリンクは、それぞれの支持軸部と連結部との間で、互いに回動自在に連結されており、
前記第2のリンクの前記第2の支持軸部が前記摺動凹部に掛止された状態で、前記第1のリンクの前記第1の支持軸部が、それぞれの前記支持穴に回動自在に挿入されており、
前記第1のリンクの前記第1の連結部と、前記第2のリンクの前記第2の連結部に、前記キートップが連結可能とされている請求項1ないし7のいずれかに記載のキーユニット。
【請求項9】
装置ベース上に複数のキー実装部が設けられて、それぞれのキー実装部に接点構造部が設けられており、それぞれのキー実装部に請求項1ないし8のいずれかに記載のキーユニットが取り付けられていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項10】
前記ユニットベースの前記前方ベース部と前記後方ベース部との間から、前記キートップに向けて照明光を与える照光部材が設けられている請求項9記載のキーボード装置。
【請求項11】
キーボード装置の装置ベース上に並べられて設置されるユニットベースを金属板で形成して、前記ユニットベースに、前後に離れている前方ベース部および後方ベース部と、前記前方ベース部と前記後方ベース部の双方の右側部から折り曲げられた右側板部と、前記前方ベースと前記後方ベース部の双方の左側部から折り曲げられた左側板部と、前記前方ベース部から折り曲げられて左右方向に対向する右側折曲げ片および左側折曲げ片と、前記右側板部と前記左側板部のそれぞれに開口する支持穴とを形成しておき、
キートップを昇降自在に支持する昇降支持機構を、前記前方ベース部と前記後方ベース部の上に設置し、
前記昇降支持機構を前記右側折曲げ片と前記左側折曲げ片に掛止させた後に、前記右側板部および前記左側板部を前記前方ベース部と前記後方ベース部に対してほぼ直角に折り曲げて、前記昇降支持機構の両側部に前記右側板部と前記左側板部を対向させるとともに、前記昇降支持機構を、前記支持穴に動作自在に支持させることを特徴とするキーユニットの製造方法。
【請求項12】
前記右側折曲げ片と前記左側折曲げ片に、前方に向けて開口する摺動凹部を形成しておき、
両側部の基部からそれぞれ突出する一対の第1の支持軸部と先部に位置する第1の連結部とが設けられた第1のリンクと、基部に設けられた第2の支持軸部と先部に位置する第2の連結部とが設けられた第2のリンクとを有し、前記第1のリンクと前記第2のリンクが、それぞれの前記支持軸部と前記連結部との間で、互いに回動自在に連結された前記昇降支持機構を前記ベース部上に設置し、
前記第2のリンクの前記第2の支持軸部を前記摺動凹部に挿入して前記右側折曲げ片と前記左側折曲げ片に掛止させた後に、前記右側板部と前記左側板部を折り曲げて、前記第1の支持軸部を、それぞれの前記支持穴に回動自在に挿入し、
その後に、前記第1のリンクの前記第1の連結部と、前記第2のリンクの前記第2の連結部に、キートップを連結可能とする請求項11記載のキーユニットの製造方法。
【請求項13】
前記右側板部と前記左側板部を、前記前方ベース部および前記後方ベース部に対して、直角よりも浅い角度まで予め折り曲げておき、前記昇降支持機構を前記ベース部の上に設置した後に、前記右側板部と前記左側板部をほぼ直角に折り曲げる請求項11または12記載のキーユニットの製造方法。
【請求項14】
前記昇降支持機構の両側部に、前記右側板部と前記左側板部を曲げるための内型を配置する凹部が形成されている請求項11ないし13記載のキーユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−92985(P2013−92985A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236142(P2011−236142)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】