説明

キーレスエントリー装置

【課題】アクティブキーレスエントリー装置に対して簡易にパッシブ機能を追加できるようにする。
【解決手段】指令信号に基づいてドア1aの施錠・解錠動作を制御する制御部10を備えた車両側装置2と、車両側装置に送信信号を送信する携帯機4とを有し、車両1には携帯機4に施錠・開錠指令を送信させる要求信号を送信する受動動作用装置3を車両側装置2とは独立して設け、受動動作用装置3は、施錠・解錠操作を検出する検出部33、34と、検出部で操作を検出したら携帯機に要求信号を送信させる第2の制御部30と、車両の外側に信号を送信する車外送信アンテナ35とを有し、第2の制御部30は、検出部で操作を検出したら車外送信アンテナ35から要求信号を送信し、要求信号を受信した携帯機4は指令信号を含む送信信号を送信して受信アンテナ12に受信させ、制御部10にドア1aの施錠・解錠動作を制御させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側と携帯機の間で無線通信を行うことで車両のドアを施錠・解錠するキーレスエントリー装置に関し、特に検出部を操作することで車両側と携帯機の間で自動的に通信がなされる機能を簡易に搭載できるキーレスエントリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のドアを施錠・解錠するためのキーレスエントリー装置として、使用者が携帯する携帯機に操作部を設け、操作部が操作されたら携帯機から個々の携帯機に一義的に設定されているIDおよび施錠・解錠の指令内容を含む信号が送信され、車両側に設けられる車両側装置でその信号を受信したらドアの施錠・解錠動作が行われるアクティブキーレスエントリー装置がある。このようなアクティブキーレスエントリー装置では、ドアを施錠・解錠するためにキーを車両の鍵穴に差し込んで回すことは必要ないものの、携帯機を取り出して操作部の操作を行う必要がある。
【0003】
一方、携帯機と車両側装置との間で自動的に通信が行われ、個々の携帯機に一義的に設定されているIDの認証がなされればドアの施錠・解錠を行うパッシブキーレスエントリー装置も知られている。パッシブキーレスエントリー装置では、車両に施錠または解錠操作を検出する検出部を設けておき、携帯機を携帯した使用者が検出部を操作することにより、車両側装置からリクエスト信号が送信され、リクエスト信号を受信した携帯機はIDを含むアンサー信号を送信し、車両側装置でアンサー信号を受信したらIDの認証を行って、認証が成立したら施錠・解錠動作を行うようにしている。このようなパッシブキーレスエントリー装置によれば、携帯機を取り出すことなくドアの施錠・解錠を行うことができる。
【0004】
ここで、アクティブキーレスエントリー装置を有した車両に対して、携帯機と車両側装置との間で自動的に通信が行われる機能を追加してパッシブ機能を持たせることや、アクティブキーレスエントリー装置を標準装備とし、使用者の要求に応じてパッシブ機能を持たせ、パッシブキーレスエントリー装置ともすることができることが望まれている。このために、例えば特許文献1に挙げるように、アクティブキーレスエントリー装置とパッシブキーレスエントリー装置のいずれにも構成できるキーレスエントリー装置が知られている。
【特許文献1】特開2006−144370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に挙げるようなキーレスエントリー装置は、予めアクティブキーレスエントリー装置とパッシブキーレスエントリー装置の両方に構成できるようにされているため、既にアクティブキーレスエントリー装置を有した車両に対して、パッシブ機能を追加することは困難であった。また、予めアクティブキーレスエントリー装置とパッシブキーレスエントリー装置の両方に構成できるようにした場合、アクティブキーレスエントリー装置を選択した場合に、一部使われない構成を有することとなるため、コストが高くなると共に、重量が大きくなるという問題点を有していた。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、アクティブキーレスエントリー装置に対して簡易にパッシブ機能を追加でき、それにより構成されるキーレスエントリー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るキーレスエントリー装置は、車両に設けられ、指令信号を含む送信信号を受信する受信アンテナと、前記指令信号に基づいてドアの施錠・解錠動作を制御する制御部とを備えた車両側装置と、該車両側装置に対して前記送信信号を送信する携帯機とを有するキーレスエントリー装置において、
前記車両には前記携帯機に施錠・開錠指令を送信させる要求信号を送信する受動動作用装置を前記車両側装置とは独立して設け、
前記受動動作用装置は、施錠・解錠操作を検出する検出部と、該検出部で操作を検出したら前記携帯機に前記要求信号を送信するように制御する第2の制御部と、前記車両の外側に前記要求信号を送信する車外送信アンテナとを有し、
前記第2の制御部は、前記検出部で操作を検出したら前記車外送信アンテナから前記要求信号を送信し、該要求信号を受信した前記携帯機は前記指令信号を含む送信信号を送信して前記車両側装置の受信アンテナに受信させ、前記車両側装置の制御部にドアの施錠・解錠動作を制御させることを特徴として構成されている。
【0008】
また、本発明に係るキーレスエントリー装置は、前記受動動作用装置に、前記車両の内側に信号を送信する車内送信アンテナと、前記車両の内側からの信号を受信する車内受信アンテナとを設け、
前記第2の制御部は前記検出部で操作を検出したら前記車内送信アンテナから確認信号を送信し、前記携帯機は前記確認信号を受信した場合には応答信号を送信し、前記第2の制御部は、前記確認信号を送信してから所定時間内に、前記車内受信アンテナで前記応答信号を受信しない場合にのみ、前記要求信号を送信することを特徴として構成されている。
【0009】
さらに、本発明に係るキーレスエントリー装置は、前記検出部は解錠操作検出部と施錠操作検出部とを備え、前記第2の制御部は、前記解錠操作検出部で操作を検出した場合には、前記携帯機に解錠動作の指令信号を含む送信信号を送信させる第1の要求信号を送信し、前記施錠操作検出部で操作を検出した場合には、前記携帯機に施錠動作の指令信号を含む送信信号を送信させる第2の要求信号を送信することを特徴として構成されている。
【0010】
さらにまた、本発明に係るキーレスエントリー装置は、前記第2の制御部は、前記検出部で操作を検出したら前記車両側装置からドアの施錠・解錠状態の情報を取得し、該ドアの施錠・解錠状態の情報に基づいて前記携帯機に施錠動作または解錠動作の指令信号を含む送信信号を送信させる要求信号を送信することを特徴として構成されている。
【0011】
そして、本発明に係るキーレスエントリー装置は、前記第2の制御部は、前記携帯機に対して前回、施錠動作または解錠動作のいずれの指令信号を含む送信信号を送信させる要求信号を送信したかの前回情報を保持し、前記検出部で操作を検出したら、前記携帯機に前記前回情報と逆の動作の指令信号を含む送信信号を送信させる要求信号を送信することを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るキーレスエントリー装置によれば、車両には携帯機に施錠・開錠指令を送信させる要求信号を送信する受動動作用装置を車両側装置とは独立して設け、受動動作用装置は、施錠・解錠操作を検出する検出部と、該検出部で操作を検出したら携帯機に要求信号を送信するように制御する第2の制御部と、車両の外側に信号を送信する車外送信アンテナとを有し、第2の制御部は、検出部で操作を検出したら車外送信アンテナから要求信号を送信し、該要求信号を受信した携帯機は指令信号を含む送信信号を送信して受信アンテナに受信させ、制御部にドアの施錠・解錠動作を制御させることにより、アクティブキーレスエントリー装置を有した車両に対して、受動動作用装置を追加すると共に、携帯機をそれに対応したものとすることで、システムの大幅な変更を伴うことなく、パッシブ機能を簡易に追加することができる。
【0013】
また、本発明に係るキーレスエントリー装置によれば、第2の制御部は検出部で操作を検出したら車内送信アンテナから確認信号を送信し、携帯機は確認信号を受信した場合には応答信号を送信し、第2の制御部は確認信号を送信してから所定時間内に、車内受信アンテナで応答信号を受信しない場合にのみ、要求信号を送信することにより、車内に携帯機が存在するか否かを確認してから施錠・解錠動作することができるので、携帯機の封じ込め、意図しない施錠・解錠を防止することができる。
【0014】
さらに、本発明に係るキーレスエントリー装置によれば、検出部は解錠操作検出部と施錠操作検出部とを備え、第2の制御部は、解錠操作検出部で操作を検出した場合には、携帯機に解錠動作の指令信号を含む送信信号を送信させる第1の要求信号を送信し、施錠操作検出部で操作を検出した場合には、携帯機に施錠動作の指令信号を含む送信信号を送信させる第2の要求信号を送信することにより、検出部の使い分けにより施錠と解錠を区別して制御することができる。
【0015】
さらにまた、本発明に係るキーレスエントリー装置によれば、第2の制御部は、検出部で操作を検出したら車両側装置からドアの施錠・解錠状態の情報を取得し、該ドアの施錠・解錠状態の情報に基づいて携帯機に施錠動作または解錠動作の指令信号を含む送信信号を送信させる要求信号を送信することにより、検出部が一つしかなくても、車両側装置に施錠・解錠動作を行わせることができる。
【0016】
そして、本発明に係るキーレスエントリー装置によれば、第2の制御部は、携帯機に対して前回、施錠動作または解錠動作のいずれの指令信号を含む送信信号を送信させる要求信号を送信したかの前回情報を保持し、検出部で操作を検出したら、携帯機に前回情報と逆の動作の指令信号を含む送信信号を送信させる要求信号を送信することにより、受動動作用装置を車両側装置と接続することなく、車両側装置に施錠・解錠動作を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態におけるキーレスエントリー装置の概要図を示している。本実施形態におけるキーレスエントリー装置は、車両1側に車両側装置2と受動動作用装置3とがそれぞれ独立して設けられ、さらに使用者が携帯する携帯機4を有して構成される。
【0018】
車両側装置2は、携帯機4からの信号を受信してドア1aの施錠・解錠動作を制御するもので、アクティブキーレスエントリー装置における車両側装置と同じ機能及び構成を有している。また、車両側装置2は、携帯機4からの指令信号を含む送信信号を受信する受信アンテナ12と、指令信号に基づいてドア1aの施錠・解錠動作を制御する車両側制御部10とを有している。
【0019】
一方、受動動作用装置3は、携帯機4と信号を送受信することで、携帯機4に施錠または解錠の指令信号を含む送信信号を送信させる機能を有しており、キーレスエントリー装置に携帯機4との間で自動的に通信を行うパッシブ機能を持たせるものである。また、受動動作用装置3は、施錠・解錠操作を検出する検出部を有しており、このうち施錠操作を検出する施錠操作検出部として、ドア1aのドアハンドル1b近傍にリクエストスイッチ33を有し、また解錠操作を検出する解錠操作検出部として、ドア1aのドアハンドル1bに接触された事を検知するタッチセンサ34を有している。使用者は、車外に出て後、携帯機4を携帯した状態でリクエストスイッチ33を操作すると、ドア1aを施錠することができる。またタッチセンサ34は、使用者が車外からドア1aを開ける際に必ず触れるドアハンドル1b内に設けられているので、使用者がドア1aを開ける際に操作され、その動作が検出されてドア1aを解錠することができる。
【0020】
さらに、受動動作用装置3は、車両1の外側に信号を送信する車外送信アンテナ35と、車両1の内側で信号を受信する車内受信アンテナ36と、車両1の内側に信号を送信する車内送信アンテナ37と、検出部によって操作が検出されたら携帯機4と信号を送受信する第2の制御部30とを備えている。
【0021】
図2には、キーレスエントリー装置のブロック図を示している。この図に示すように、車両側装置2には、前述の構成の他に、受信アンテナ12で受信した信号を車両側制御部10に渡す車両側受信部11と、携帯機4のID等の情報を記憶したメモリ13が設けられている。また、車両側制御部10は、ドア1aの施錠及び解錠動作を行うロック駆動部14に接続され、これを制御する。
【0022】
図2に示すように受動動作用装置3には、前述の構成の他に、車内受信アンテナ36で受信した信号を第2の制御部30に渡す受信部31と、車外送信アンテナ35及び車内送信アンテナ37に第2の制御部30で生成された信号を送信させる送信部32とが設けられている。
【0023】
使用者が携帯する携帯機4は、受動動作用装置3から送信された信号を受信する携帯機受信部20と、車両側装置2に対して指令信号を含む送信信号を送信する携帯機送信部21と、受動動作用装置3からの信号を受信した際に各種制御を行う携帯機制御部22と、自機に設定されているID等を記憶したメモリ24とを有している。また、携帯機受信部20と携帯機送信部21には、信号の送受信を行うアンテナ23が接続される。
【0024】
次に、使用者がタッチセンサ34を操作して、ドア1aを解錠するまでの動作について説明する。図3には、この場合のフローチャートを示している。本実施形態のキーレスエントリー装置は、車両1に設けられたタッチセンサ34が操作されることで、受動動作用装置3と携帯機4との間で無線通信がなされ、携帯機4からの信号を車両側装置2が受信してドア1aの解錠がなされる。したがって、まず使用者が車両1のドア1aを開けようとしてタッチセンサ34が操作されることでフローが開始する(S1)。
【0025】
検出部であるタッチセンサ34が操作されると、第2の制御部30は、送信部32に車内送信アンテナ37から確認信号を送信させる(S2)。確認信号は、携帯機4の存在の有無を確認するための信号で、これを携帯機4が受信すると(S2−1)、携帯機4は応答信号を送信し(S2−2)、受動動作用装置3でそれを受信して携帯機4の存在を認識することができる。車内送信アンテナ37から送信された確認信号は、車内でのみ受信することができるので、受動動作用装置3で確認信号に対する応答信号を受信した場合には、携帯機4が車内に存在するものと判断することができる。
【0026】
第2の制御部30は、車内送信アンテナ37から確認信号を送信したら、携帯機4からの応答信号を受信したか否かを検出し(S3)、確認信号の送信から所定時間が経過するまでその動作を繰り返す(S4)。応答信号を受信した場合には、携帯機4が車内に存在するものと判断し、そのままフローを終了する。一方で所定時間が経過しても携帯機4からの応答信号を受信しない場合には、携帯機4が車内に存在しないものと判断し、次のステップに進む。
【0027】
第2の制御部30は、携帯機4が車内に存在しないものと判断したら、送信部32に車外送信アンテナ35から第1の要求信号を送信させる(S5)。ここで第1の要求信号は、携帯機4に対し解錠の指令信号を含む送信信号を送信させるための信号で、これを携帯機4が受信すると(S5−1)、携帯機4は、アクティブキーレスエントリー装置において解錠のスイッチを操作した場合に送信する信号と同じ信号、すなわち解錠の指令信号を含む送信信号を送信する(S5−2)。この送信信号には、携帯機4に固有のIDの情報も含まれる。
【0028】
車両側装置2は、前述したように既存のアクティブキーレスエントリー装置における車両側装置と同じであり、常に携帯機4からの信号受信の待機状態にあり、受信アンテナ12で携帯機4から解除の指令信号を含む送信信号を受信したら(S6)、車両側制御部10はメモリ13を参照して、受信した信号に含まれるIDを照合し(S7)、認証がなされた場合にはロック駆動部14を制御してドア1aの解錠を行う(S8)。受動動作用装置3から第1の要求信号が送信されても、携帯機4が車外側に存在しなかった場合には、車両側装置2が送信信号を受信することがなく、したがってドア1aの解錠も行われない。
【0029】
使用者によりリクエストスイッチ33が操作された場合にも、略同様の動作により携帯機4と受動動作用装置3との間で通信を行い、携帯機4からの施錠の指令信号を含む送信信号を車両側装置2が受信することで、ドア1aの施錠が行われる。この場合には、リクエストスイッチ33が操作され、携帯機4が車内に存在しないことが確認されると、受動動作用装置3の車外送信アンテナ35から第2の要求信号が送信される。この第2の要求信号は、携帯機4に対し施錠の指令信号を含む送信信号を送信させるための信号で、これを携帯機4が受信すると、携帯機4は、アクティブキーレスエントリー装置において施錠のスイッチを操作した場合に送信する信号と同じ信号、すなわち施錠の指令信号を含む送信信号を送信する。この送信信号を受信した車両側装置2は、認証がなされた場合にはロック駆動部14を制御してドア1aの施錠を行う。
【0030】
このように、リクエストスイッチ33やタッチセンサ34によって施錠・解錠操作を検出したら、第2の制御部30で携帯機4と信号を送受信し、携帯機4に施錠または解錠の指令信号を含む送信信号を送信させる受動動作用装置3を有することにより、車両側装置2はアクティブキーレスエントリー装置と同じシステムをそのまま使用することができる。したがって、アクティブキーレスエントリー装置を有した車両1に対して、受動動作用装置3を追加すると共に、携帯機4をそれに対応したものとすることで、システムの大幅な変更を伴うことなく、パッシブ機能を追加することができる。なお、省略したが携帯機4には従来のアクティブキーレスエントリー装置における操作部が設けられており、制御部22は、携帯機4の解錠用の操作部が押された場合或いは第1の要求信号を受信した場合に解除の指令信号を含む送信信号を送信し、携帯機4の施錠用の操作部が押された場合或いは第2の要求信号を受信した場合に施錠の指令信号を含む送信信号を送信する。
また、前記の実施例においては、車内に乗り込に解錠する際にはタッチセンサ34に触れ、降車して施錠する際にはリクエストスイッチ33を操作するようにしているが、これには限定されず、逆にしても良い。また、それぞれの動作に対応したタッチセンサを2つ設ける或いはリクエストスイッチを2つ設けてもよいし、タッチスイッチやドアハンドルに手が位置したことを検知する光学センサ等の他の形式でも良く要は、解錠あるいは施錠のトリガとなるものであればよい。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図4には、第2の実施形態におけるキーレスエントリー装置のブロック図を示している。本実施形態のキーレスエントリー装置の構成は、概ね第1の実施形態のキーレスエントリー装置と同様であるので、異なる点のみ以下説明する。
【0032】
図4に示すように、受動動作用装置3には検出部としてリクエストスイッチ33のみが設けられている。本実施形態では、使用者はドア1aを施錠する際と解錠する際のいずれにおいても、リクエストスイッチ33を操作するものとする。
【0033】
また、受動動作用装置3の第2の制御部30は、車両側装置2に接続されている。ここでの接続は、第2の制御部30が車両側装置2において保持しているドア1aの施錠状態についての情報、すなわちドア1aが施錠された状態であるか、解錠された状態であるかの情報を取得するために設けられる。すなわち、車両側装置2に受動動作用装置3の情報が伝えられることはなく車両側装置2から出力するだけの一方向の情報である。又図示を省略しているが、車両側装置2は単独では設けられずパワーウインドウ制御部等とネットワークで繋がっていて、既存のアクティブキーレスエントリー装置のシステムにおいても車両側装置2は、ある時点において施錠された状態か、それとも解錠された状態かについての情報を外部に伝える機能は有している。よって、第2の制御部30と車両側装置2との接続により、アクティブキーレスエントリー装置用として構成された車両側装置2側のシステムには、第1の実施形態と同様に変更を加える必要はない。
【0034】
次に、このような構成を有した本実施形態のキーレスエントリー装置の動作フローについて説明する。図5には、本実施形態におけるキーレスエントリー装置のフローチャートを示している。ここで、S1からS4までのステップについては、操作されるのがタッチセンサ34ではなくリクエストスイッチ33である点を除き、第1の実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0035】
第2の制御部30は、携帯機4が車内に存在しないものと判断したら、車両側装置2が保持しているドア1aの施錠・解錠状態の情報を取得する(S5)。次に、第2の制御部30は、取得した施錠・解錠状態の情報に基づいて、送信部32に車外送信アンテナ35から要求信号を送信させる(S6)。具体的には、第2の制御部30がS5においてドア1aが施錠状態にあるという情報を取得した場合、送信する要求信号は、携帯機4に対して解錠の指令信号を含む送信信号を送信させるための信号であり、第2の制御部30がS5においてドア1aが解錠状態にあるという情報を取得した場合、送信する要求信号は、携帯機4に対して施錠の指令信号を含む送信信号を送信させるための信号である。
【0036】
携帯機4は、要求信号を受信すると(S6−1)、その信号の内容に応じた指令信号を含む送信信号を送信する(S6−2)。車両側装置2で送信信号を受信すると(S7)、認証を行って(S8)、受信した送信信号に含まれる指令信号に応じて、施錠または解錠の制御を行う(S9)。
【0037】
このように、検出部としてリクエストスイッチ33のみを設けた場合においても、受動動作用装置3が車両側装置2からドア1aの施錠・解錠状態の情報を取得し、その情報に基づいて携帯機4に指令信号を含む送信信号を送信させることにより、アクティブキーレスエントリー装置として構成された車両側装置2のシステムを変更することなく、パッシブ機能を追加することができる。
なお、該第2の実施例においては、リクエストスイッチ33を操作するようにしているが、これには限定されず、タッチセンサを設けても良く、他の形式でも良く要は、解錠あるいは施錠のトリガとなるものであればよい。
【0038】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図6には、本実施形態におけるキーレスエントリー装置のブロック図を示している。本実施形態のキーレスエントリー装置の構成は、第2の実施形態のキーレスエントリー装置と略同じであるが、受動動作用装置3の第2の制御部30と車両側装置2とが接続されていない点のみが異なっている。したがって、受動動作用装置3の第2の制御部30は、車両側装置2からドア1aの施錠・解錠状態の情報を取得することはできない。
【0039】
一方で、本実施形態の第2の制御部30は、携帯機4に対して指令信号を含む送信信号を送信させる要求信号を送信したら、施錠動作または解錠動作のいずれの指令信号を要求するものであったかを前回情報として保持する機能を有している。したがって、第2の制御部30が要求信号を送信する際には、この前回情報を参照し、それと逆の動作の指令信号を要求する要求信号を送信することで、施錠動作と解錠動作を交互に要求することができる。
【0040】
本実施形態のキーレスエントリー装置の動作フローは、図5に示す第2の実施形態の動作フローとほぼ同じであるが、S5の施錠状態情報取得において第2の制御部30は、車両側装置2からドア1aの施錠・解錠状態の情報を取得する代わりに、前述の前回情報を参照し、S6の要求信号送信において第2の制御部30は、携帯機4に前回情報と逆の動作の指令信号を含む送信信号を送信させる要求信号を送信する。
【0041】
本実施形態では、受動動作用装置3からの要求信号は、施錠動作と解錠動作を交互に要求するものであるため、携帯機4が要求信号を受信しなかった場合には、ドア1aが施錠状態にある場合に携帯機4から施錠動作の指令信号が送信、またはドア1aが解錠状態にある場合に携帯機4から解錠動作の指令信号が送信されることがある。この場合には、施錠または解錠動作が実行されないこととなるが、使用者が再度リクエストスイッチ33を操作することで、携帯機4に対してそれと反対の動作が要求されるので、施錠または解錠を行うことができる。
【0042】
このように、第2の制御部30で前回情報を保持し、要求信号を送信する際にはこの前回情報を参照して、それと逆の動作の指令信号を要求する要求信号を送信することにより、受動動作用装置3を車両側装置2に接続することなく、施錠・解錠動作を行わせることができる。
【0043】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態のキーレスエントリー装置では、携帯機4からは1種類の送信信号のみが送信されるものが前提となっている。そして、車両側装置2では携帯機4からの信号を受信する度に、施錠動作と解錠動作を交互に行うように制御する。このような本実施形態のキーレスエントリー装置のブロック図は、図6に示す第3の実施形態のキーレスエントリー装置と同じである。
【0044】
また、本実施形態のキーレスエントリー装置の動作フローは、施錠の際も解錠の際も、図3に示すものと概ね同様である。ここで、リクエストスイッチ33が操作された場合にS5で送信される要求信号は、施錠の場合と解錠の場合とで分ける必要はなく、携帯機4に施錠・解錠動作の指令信号を含む送信信号を送信させるための1種類の信号とすることができる。この要求信号を受信した携帯機4は、送信信号を送信し、これを受信した車両側装置2は、施錠動作と解錠動作を受信の度に交互に行う。このように、携帯機4から1種類の送信信号のみが送信されるものについては、受動動作用装置3について、検出部としてリクエストスイッチ33を一つ設け、それを操作する度に携帯機4から1種類の送信信号が送信されるように構成することで、キーレスエントリー装置にパッシブ機能を追加することができる。なお、この第4の実施例は、1つの操作部の操作によって、交互に施錠と解錠が行われるタイプのアクティブキーレスエントリー装置にパッシブ機能を追加する場合に有効となる。
【0045】
また上述の実施例においては車内アンテナを設け、該送信信号に対する応答信号があった場合、すなわち携帯機を車内で検知した場合、ドアロックの施錠および解錠は行なわないようにしているが、施錠および解錠のいずれか一方或いは両方の場合において、車内での携帯機の検知は必ずしも必要でない。上述の実施例において携帯機を車内で検知した場合施錠を行なわないのは、封じ込め防止の為であり、1つでも携帯機が車内にある場合には施錠しない、という考えに基づくものである。これは、例えば、2人が操作可能な携帯機を持っていて、1つの携帯機を車室内において他の携帯機を身につけて2人とも車外に出てロックした場合、携帯機をもっていない人が一人で車に乗り込む事ができないのを防止するためである。但し、このようにした場合、携帯機を持っていても車に他の携帯機があると施錠できないという不都合もあるので、これを解消する場合には車内の携帯機の存在確認を省略する。
また、上述の実施例において携帯機を車内で検知した場合、開錠を行なわないのは、携帯機を持っていない人の操作によってロックが解除されるのを防止するためである。具体的には、車外アンテナからの送信信号は車内に漏れる事があり、よって、車内の漏れるエリアに携帯機が置かれていた場合、携帯機を持っていない人が、タッチセンサを押すことでドアロックが解錠されてしまう事があるが、このように車内に携帯機がある場合には解錠しないこととすれば、これを防止できる。但し、車外アンテナからの電波が車内に漏れない場合、あるいは車両の構造上、車内にもれる範囲に携帯機を置けない等の場合には、車内の携帯機の存在確認を省略しても良い。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用はこれら実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の実施形態におけるキーレスエントリー装置の概要図である。
【図2】キーレスエントリー装置のブロック図である。
【図3】解錠制御の際のフローチャートである。
【図4】第2の実施形態におけるキーレスエントリー装置のブロック図である。
【図5】施錠・解錠制御の際のフローチャートである。
【図6】第3の実施形態におけるキーレスエントリー装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0047】
1 車両
1a ドア
1b ドアハンドル
2 車両側装置
3 受動動作用装置
4 携帯機
30 第2の制御部
31 受信部
32 送信部
33 リクエストスイッチ
34 タッチセンサ
35 車外送信アンテナ
36 車内受信アンテナ
37 車内送信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられ、指令信号を含む送信信号を受信する受信アンテナと、前記指令信号に基づいてドアの施錠・解錠動作を制御する制御部とを備えた車両側装置と、該車両側装置に対して前記送信信号を送信する携帯機とを有するキーレスエントリー装置において、
前記車両には前記携帯機に施錠・開錠指令を送信させる要求信号を送信する受動動作用装置を前記車両側装置とは独立して設け、
前記受動動作用装置は、施錠・解錠操作を検出する検出部と、該検出部で操作を検出したら前記携帯機に前記要求信号を送信するように制御する第2の制御部と、前記車両の外側に前記要求信号を送信する車外送信アンテナとを有し、
前記第2の制御部は、前記検出部で操作を検出したら前記車外送信アンテナから前記要求信号を送信し、該要求信号を受信した前記携帯機は前記指令信号を含む送信信号を送信して前記車両側装置の受信アンテナに受信させ、前記車両側装置の制御部にドアの施錠・解錠動作を制御させることを特徴とするキーレスエントリー装置。
【請求項2】
前記受動動作用装置に、前記車両の内側に信号を送信する車内送信アンテナと、前記車両の内側からの信号を受信する車内受信アンテナとを設け、
前記第2の制御部は前記検出部で操作を検出したら前記車内送信アンテナから確認信号を送信し、前記携帯機は前記確認信号を受信した場合には応答信号を送信し、前記第2の制御部は、前記確認信号を送信してから所定時間内に、前記車内受信アンテナで前記応答信号を受信しない場合にのみ、前記要求信号を送信することを特徴とする請求項1記載のキーレスエントリー装置。
【請求項3】
前記検出部は解錠操作検出部と施錠操作検出部とを備え、前記第2の制御部は、前記解錠操作検出部で操作を検出した場合には、前記携帯機に解錠動作の指令信号を含む送信信号を送信させる第1の要求信号を送信し、前記施錠操作検出部で操作を検出した場合には、前記携帯機に施錠動作の指令信号を含む送信信号を送信させる第2の要求信号を送信することを特徴とする請求項1または2記載のキーレスエントリー装置。
【請求項4】
前記第2の制御部は、前記検出部で操作を検出したら前記車両側装置からドアの施錠・解錠状態の情報を取得し、該ドアの施錠・解錠状態の情報に基づいて前記携帯機に施錠動作または解錠動作の指令信号を含む送信信号を送信させる要求信号を送信することを特徴とする請求項1または2記載のキーレスエントリー装置。
【請求項5】
前記第2の制御部は、前記携帯機に対して前回、施錠動作または解錠動作のいずれの指令信号を含む送信信号を送信させる要求信号を送信したかの前回情報を保持し、前記検出部で操作を検出したら、前記携帯機に前記前回情報と逆の動作の指令信号を含む送信信号を送信させる要求信号を送信することを特徴とする請求項1または2記載のキーレスエントリー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−196142(P2008−196142A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30103(P2007−30103)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】