説明

キー装置

【課題】セキュリティレベルを向上することが可能なキー装置を提供すること。
【解決手段】正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されているとき、スライダ70のキー受部76の端面76aは、ケース60の一端面60aに対して面一となっている。従って、この場合、携帯機2をキースロット39に挿入することで送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信が許容される。これに対して、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されていないとき、キー受部76の端面76aは、ケース60の一端面60aから突出される。従って、この場合、携帯機2をキースロット39に挿入しても、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との距離が延びるので、両者間の通信が阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キー本体にメカニカルキーが装着されるキー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、対応する通信端末(電子キー)が利用されたときに作動制御装置により制御対象の作動を許可する電子キーシステムが提案されている。特許文献1には、対応する電子キー(携帯機)の所持者が車外の所定領域に進入してきた場合に、作動制御装置(車両側の送受信装置)により車載ドアのアンロックを自動的に許可する電子キーシステム(車両用遠隔操作装置)が開示されている。また、特許文献2には、対応する電子キー(運転者に所持される携帯機)が車内に持ち込まれた場合に、作動制御装置(車両に配設された送受信装置)により車載エンジンの始動を自動的に許可する電子キーシステム(車両用遠隔操作装置の一例であるスマートイグニッション装置)が開示されている。
【0003】
この種の電子キーシステムでは、対応する電子キーの所持者による車両に対する接近を監視するため、車載ドアがロックされている状態において、作動制御装置から車外の所定領域にリクエスト信号が送信される。そして、リクエスト信号が電子キーにより受信されたとき、電子キー毎に個別に設定されたIDコードを含む信号(IDコード信号)が電子キーから送信される。そして、IDコード信号が作動制御装置により受信されたとき、作動制御装置により、IDコード信号に含まれているIDコードと基準IDコードとが一致しているか否かが判断される。そして、両IDコードが一致したとき、作動制御装置により、対応する電子キーが利用された旨が認識されて車載ドアのアンロックが許可される。そして、このように車載ドアのアンロックが許可されている状態でドアアウトサイドハンドルに触れると車載ドアがアンロックされる。
【0004】
そして、このようにアンロックされた車載ドアを開閉することで乗車が可能になるのであるが、ここに、対応する電子キーの所持者による乗車を監視するため、車載ドアが開閉されたとき、作動制御装置から車内の所定領域にリクエスト信号が送信される。そして、リクエスト信号が電子キーにより受信されたとき、先程と同様のIDコード信号が電子キーから送信される。そして、IDコード信号が作動制御装置により受信されたとき、作動制御装置により、IDコード信号に含まれているIDコードと基準IDコードとが一致しているか否かが判断される。そして、両IDコードが一致したとき、作動制御装置により、対応する電子キーが利用された旨が認識されて車載エンジンの始動が許可される。そして、このように車載エンジンの始動が許可されている状態でエンジンスイッチを操作すると車載エンジンが始動される。
【0005】
このような電子キーシステムに供される電子キーは、作動制御装置から送信されてくるリクエスト信号に応答してIDコード信号を送信するための電源として電池を備えている。このため、電子キーに電池切れが発生しているとき、そのような電子キーを所持して車両に近付いても車載ドアのアンロックが許可されないとともに、また、そのような電子キーを車内に持ち込んでも車載エンジンの始動が許可されない。
【0006】
そこで、この種の電子キーには、ドアシリンダに適合するメカニカルキーが併用されるとともに、上記のような電池切れ時には、メカニカルキーを利用することで車載ドアをアンロックすることができるようになっている。
【0007】
また、このような電子キーには、電池から電力を賄わずに、作動制御装置から送信されてくるトランスポンダ起動用電波から電力を賄うとともに、それによってトランスポンダ毎(電子キー毎)に個別に設定されたトランスポンダコードを含む信号(トランスポンダコード信号)を送信するトランスポンダが備えられている。そして、トランスポンダコード信号が作動制御装置により受信されたとき、作動制御装置により、トランスポンダコード信号に含まれているトランスポンダコードと基準トランスポンダコードとが一致しているか否かが判断される。そして、両トランスポンダコードが一致したとき、作動制御装置により、対応する電子キーが利用された旨が認識されて車載エンジンの始動が許可される。つまり、電池切れ時には、トランスポンダが供されることで車載エンジンを始動することができるようになっている。
【0008】
そして、一般的には、キー本体に電子キーとメカニカルキーとトランスポンダとの三者が収容されてなる単一のキー装置がユーザにより携帯されており、このことから、この種のキー装置は携帯機と称されている。
【特許文献1】特開2002−029385号公報(段落番号0002〜0007)
【特許文献2】特開2001−311333号公報(段落番号0002〜0005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ユーザ本人の意志に反して第三者にキー装置を渡さざるを得ないようなとき、せめてその者にグローブボックスを開けられないようにするために、メカニカルキーを取り外したキー装置を渡すようなことが行われる。しかし、このようにしても、電池切れが生じていない場合には、その者がキー装置を車内に持ち込めば車載エンジンの始動が許可されるとともに、電池切れが生じている場合でも、トランスポンダが供されることで車載エンジンの始動が許可されてしまう。つまり、ユーザ本人のみならず第三者までもが、いわば半永久的に車載エンジンを始動させることができることとなり、セキュリティ性に改善の余地があった。
【0010】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、セキュリティレベルを向上することが可能なキー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、外部通信手段との間での通信が可能な内部通信手段を備えるとともに、キー本体にメカニカルキーが装着されるキー装置において、キー本体に適合するメカニカルキーがキー本体に装着されているとき、外部通信手段と内部通信手段との間での通信を許容する通信許容位置に変位されるとともに、キー本体に適合するメカニカルキーがキー本体に装着されていないとき、外部通信手段と内部通信手段との間での通信を阻止する通信阻止位置に変位される移動部材を備えていることをその要旨としている。
【0012】
同構成によると、キー本体に適合する正規のメカニカルキーがキー本体に装着されているとき、移動部材が通信許容位置に変位されることで、外部通信手段と内部通信手段との間での通信が許容される。一方、正規のメカニカルキーがキー本体に装着されていないとき、移動部材が通信阻止位置に変位されることで、外部通信手段と内部通信手段との間での通信が阻止される。
【0013】
このため、例えば、ユーザ本人の意志に反して第三者にキー装置を渡さざるを得ないようなとき、メカニカルキーを取り外したキー装置を渡すようにすれば、外部通信手段と内部通信手段との間での通信を確立させないようにすることができる。そうすると、このような通信が確立されることを条件として有効に働く機能(例えば、エンジン始動を許可する機能)を無効にすることが可能となる。つまり、この場合、第三者は、ユーザ本人と同じレベルでは車両を扱えなくなってユーザ本人にとって都合がよい。従って、セキュリティレベルを向上することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキー装置において、移動部材が通信許容位置に変位されているとき、外部通信手段と内部通信手段との距離が、外部通信手段と内部通信手段との間での通信を確立可能な第1の距離に設定されるとともに、移動部材が通信阻止位置に変位されているとき、外部通信手段と内部通信手段との距離が、外部通信手段と内部通信手段との間での通信を確立不可能な第2の距離に設定されることをその要旨としている。
【0015】
同構成によると、移動部材が通信許容位置に変位されている場合と、移動部材が通信阻止位置に変位されている場合とで、外部通信手段と内部通信手段との距離が互いに異なるように設定されている。つまり、正規のメカニカルキーが装着されている場合と、そうでない場合とで、互いに異なる位置に移動部材が変位されるとともに、そして、これにより、外部通信手段と内部通信手段との距離に違いが持たされている。従って、外部通信手段と内部通信手段との距離に応じて通信が確立されるか否かが決定されるような通信(例えば、電波を用いた無線通信)について、その通信の可否制御を実現できる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、外部通信手段との間での通信が可能な内部通信手段を備えるとともに、キー本体にメカニカルキーが装着されるキー装置において、キー本体は、キー本体に適合するメカニカルキーがキー本体に装着されているとき、外部通信手段と内部通信手段との間での通信が確立される態様でもって外部キースロットに対する挿入が許容される外形形状をなすとともに、キー本体に適合するメカニカルキーがキー本体に装着されていないとき、外部通信手段と内部通信手段との間での通信が確立されない態様でもって外部キースロットに対する挿入が許容される外形形状をなしていることをその要旨としている。
【0017】
同構成によると、キー本体に適合する正規のメカニカルキーがキー本体に装着されている場合と、そうでない場合とで、キー本体の外形形状が互いに異なるようになっている。そして、前者の場合には、外部通信手段と内部通信手段との間での通信が確立されるが、後者の場合には、外部通信手段と内部通信手段との間での通信が確立されない。
【0018】
このため、例えば、ユーザ本人の意志に反して第三者にキー装置を渡さざるを得ないようなとき、メカニカルキーを取り外したキー装置を渡すようにすれば、外部通信手段と内部通信手段との間での通信を確立させないようにすることができる。そうすると、このような通信が確立されることを条件として有効に働く機能(例えば、エンジン始動を許可する機能)を無効にすることが可能となる。つまり、この場合、第三者は、ユーザ本人と同じレベルでは車両を扱えなくなってユーザ本人にとって都合がよい。従って、セキュリティレベルを向上することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のキー装置において、キー本体は、内部通信手段を備えるケースと、そのケースに対してスライド可能に支持されるスライダとにより形成され、キー本体に適合するメカニカルキーがキー本体に装着されていないとき、スライダにおける外部キースロットに対する挿入側の端面が、ケースにおける外部キースロットに対する挿入側の端面から突出されるとともに、その突出された分だけ外部通信手段と内部通信手段との距離が、キー本体に適合するメカニカルキーがキー本体に装着されているときよりも長くなって、その距離が外部通信手段と内部通信手段との間での通信が可能な距離を超えることで外部通信手段と内部通信手段との間での通信が確立されないことをその要旨としている。
【0020】
同構成によると、正規のメカニカルキーが装着されていないとき、スライダの端面がケースの端面から突出される分だけ内部通信手段が外部通信手段から遠ざかり、そして、これにより、外部通信手段と内部通信手段との間での通信が確立されないようになっている。従って、外部通信手段と内部通信手段との距離に応じて通信が確立されるか否かが決定されるような通信(例えば、電波を用いた無線通信)について、その通信の可否制御を実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
本発明によれば、セキュリティレベルを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を自動車の利用に供されるキー装置に具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態の自動車には、電子キーシステム1が適用されている。電子キーシステム1は、自動車の所有者によって所持される携帯機2と、自動車側に設けられるセキュリティ装置3とを備えるとともに、携帯機2とセキュリティ装置3との間での双方向通信が可能である。
【0023】
携帯機2は、無線通信による受信機能及び無線通信による送信機能を有するとともに、受信アンテナ21、受信回路22、マイコン23、送信回路24、送信アンテナ25、電池26、トランスポンダ27を備えている。受信アンテナ21は、セキュリティ装置3から送信されてくるリクエスト信号を受信するための媒体である。受信回路22は、受信アンテナ21により受信されたリクエスト信号を復調して受信信号を生成するとともに、受信信号をマイコン23に出力する。
【0024】
マイコン23は、不揮発性のメモリ23aを備えている。メモリ23aには、携帯機2毎に個別に設定されたIDコード(携帯機2のIDコード)が記憶されている。マイコン23は、受信回路22から受信信号が入力されたとき、リクエスト信号に応答するために、携帯機2のIDコードを含む信号(IDコード信号)を生成するとともに、IDコード信号を送信回路24に出力する。送信回路24は、マイコン23から入力されたIDコード信号を所定周波数(本実施形態では300MHz)の電波に変調する。送信アンテナ25は、送信回路24により変調されたIDコード信号を送信するための媒体である。
【0025】
電池26は、リクエスト信号に応答してIDコード信号を送信するための電源として機能するボタン型電池(一次電池)により構成されている。
トランスポンダ27には、トランスポンダ27毎、つまり携帯機2毎に個別に設定されたトランスポンダコード(携帯機2のトランスポンダコード)が記憶されている。トランスポンダ27は、セキュリティ装置3から送信されてくるトランスポンダ起動用電波から電力を賄うとともに、それによってトランスポンダコードを含む信号(トランスポンダコード信号)を所定周波数(本実施形態では134KHz)の電波に変調してそれを送信する。
【0026】
セキュリティ装置3は、無線通信による送信機能及び無線通信による受信機能を有するとともに、送信回路31、送信アンテナ32、受信アンテナ33、受信回路34、給電回路35、送受信回路36、送受信アンテナ37、照合制御装置38を備えている。送信回路31は、照合制御装置38から入力されるリクエスト信号を所定周波数(本実施形態では134KHz)の電波に変調する。送信アンテナ32は、送信回路31により変調されたリクエスト信号を送信するための媒体であるとともに、車外送信アンテナ32aと車内送信アンテナ32bとを備えている。
【0027】
ここで、図2に2点鎖線で示すように、車外送信アンテナ32aからのリクエスト信号は、車外においてドアアウトサイドハンドルから約1m離れた地点まで達する領域(車外の所定領域A32)の範囲内に送信される。また、図3に2点鎖線で示すように、車内送信アンテナ32bからのリクエスト信号は、車内の略全域に及んで且つ車外に殆ど及ばない領域(車内の所定領域B32)の範囲内に送信される。
【0028】
その結果、車外の所定領域A32或いは車内の所定領域B32の範囲内において、携帯機2とセキュリティ装置3との間での双方向通信が可能となる。つまり、リクエスト信号は、携帯機2とセキュリティ装置3との間での双方向通信を確立するためのトリガ信号である。これにより、車外の所定領域A32或いは車内の所定領域B32の範囲内にリクエスト信号が送信されている状態で、その範囲内に携帯機2が持ち込まれたとき、携帯機2によりリクエスト信号が受信されて同携帯機2からIDコード信号が送信されることになる。
【0029】
受信アンテナ33は、リクエスト信号に応答して携帯機2から送信されてくるIDコード信号を受信するための媒体である。受信回路34は、受信アンテナ33により受信されたIDコード信号を復調して受信信号を生成するとともに、受信信号を照合制御装置38に出力する。
【0030】
給電回路35は、照合制御装置38から給電指令信号が入力されたとき、トランスポンダ起動用電波を生成するのに必要な電力を送受信回路36に供給する。送受信回路36は、照合制御装置38からトランスポンダ起動用信号が入力されたとき、給電回路35から供給される電力に基づいて所定周波数(本実施形態では134KHz)のトランスポンダ起動用電波を生成する。送受信アンテナ37は、送受信回路36により生成されたトランスポンダ起動用電波を送信するための媒体である。
【0031】
ここで、図3に示すように、送受信アンテナ37は、運転席の前方に設けられたキースロット39に内蔵されたコイルアンテナよりなる。そして、図3に2点鎖線で誇張して示すように、送受信アンテナ37からのトランスポンダ起動用電波は、車内における極めて狭い領域、本実施形態では運転席に座った状態で手が届く領域、具体的には送受信アンテナ37から約20mm離れた地点まで達する領域(車内の所定領域B37)の範囲内に送信される。
【0032】
その結果、車内の所定領域B37の範囲内において、携帯機2とセキュリティ装置3との間での双方向通信が可能となる。従って、車内の所定領域B37の範囲内にトランスポンダ起動用電波が送信されている状態で、その範囲内にトランスポンダ27が存在する態様で携帯機2が利用されたとき、トランスポンダ起動用電波からトランスポンダ27が電力を賄ってトランスポンダ27からトランスポンダコード信号が送信されることになる。
【0033】
また、送受信アンテナ37は、このようにしてトランスポンダ27から送信されてくるトランスポンダコード信号を受信するための媒体である。そして、送受信回路36は、送受信アンテナ37により受信されたトランスポンダコード信号を復調して受信信号を生成するとともに、受信信号を照合制御装置38に出力する。
【0034】
照合制御装置38は、不揮発性のメモリ38aを備えている。メモリ38aには、対応する携帯機2のIDコードと同一のIDコード(基準IDコード)が記憶されるとともに、対応する携帯機2のトランスポンダコードと同一のトランスポンダコード(基準トランスポンダコード)が記憶されている。照合制御装置38は、対応する携帯機2の所持者による自動車に対する接近(車外の所定領域A32に対する進入)を監視するため、車載ドアがロックされている状態において、送信回路31にリクエスト信号を出力する。つまり、この場合、照合制御装置38は、車外通信制御を実行する。その結果、車外送信アンテナ32aからリクエスト信号が送信される。
【0035】
照合制御装置38は、車外通信制御に基づいて、受信回路34から受信信号が入力されたとき、受信信号に含まれているIDコードと基準IDコードとが一致しているか否かを判断する。つまり、この場合、照合制御装置38は、IDコード照合を実行する。そして、照合制御装置38は、IDコード照合により両IDコードが一致したとき、対応する携帯機2が利用された旨を認識するとともに、この場合、ドア制御装置41にドアアンロック許可信号を出力する。その結果、このように車載ドアのアンロックが許可されている状態でドアアウトサイドハンドルに触れると、ドア制御装置41により車載ドアがアンロックされる。
【0036】
また、照合制御装置38は、対応する携帯機2の所持者による乗車(車内の所定領域B32に対する進入)を監視するため、車載ドアが開閉されたとき、送信回路31にリクエスト信号を出力する。つまり、この場合、照合制御装置38は、車内通信制御を実行する。その結果、車内送信アンテナ32bからリクエスト信号が送信される。
【0037】
照合制御装置38は、車内通信制御に基づいて、受信回路34から受信信号が入力されたとき、受信信号に含まれているIDコードと基準IDコードとが一致しているか否かを判断する。つまり、この場合、照合制御装置38は、IDコード照合を実行する。そして、照合制御装置38は、IDコード照合により両IDコードが一致したとき、対応する携帯機2が利用された旨を認識するとともに、この場合、エンジン制御装置42にエンジン始動許可信号を出力する。その結果、このように車載エンジンの始動が許可されている状態でエンジンスイッチを操作すると、エンジン制御装置42により車載エンジンが始動される。
【0038】
さらに、照合制御装置38は、キースロット39に携帯機2が挿入されたとき、給電回路35に給電指令信号を出力するとともに、送受信回路36にトランスポンダ起動用信号を出力する。つまり、この場合、照合制御装置38は、トランスポンダ通信制御を実行する。その結果、送受信アンテナ37からトランスポンダ起動用電波が送信される。
【0039】
照合制御装置38は、トランスポンダ通信制御に基づいて、送受信回路36から受信信号が入力されたとき、受信信号に含まれているトランスポンダコードと基準トランスポンダコードとが一致しているか否かを判断する。つまり、この場合、照合制御装置38は、トランスポンダコード照合を実行する。そして、照合制御装置38は、トランスポンダコード照合により両トランスポンダコードが一致したとき、対応する携帯機2が利用された旨を認識するとともに、この場合、エンジン制御装置42にエンジン始動許可信号を出力する。その結果、このように車載エンジンの始動が許可されている状態でエンジンスイッチを操作すると、エンジン制御装置42により車載エンジンが始動される。
【0040】
このように電子キーシステム1が適用されている自動車を利用する場合、携帯機2に内蔵されている電池26が消耗していない状況下にあっては、携帯機2を所持することで携帯機2が電子キーとして供される結果、車載ドアのアンロックや車載エンジンの始動が許可されるようになっている。また、携帯機2に内蔵されている電池26が消耗している状況下にあっては、携帯機2をキースロット39に挿入することで電子キーの代わりにトランスポンダ27が供される結果、車載エンジンの始動が許可されるようになっている。そして、携帯機2に内蔵されている電池26が消耗している状況下にあって、車載ドアをアンロックできるようにするために、携帯機2には、メカニカルキーが設けられている。
【0041】
以下、メカニカルキーに関連する本実施形態の特徴点について説明する。
図4〜図6に示すように、キー本体50は、合成樹脂よりなるケース60と、そのケース60に対してスライド可能に支持されるスライダ70とにより四角筒状に形成されている。ケース60においてスライダ70に対向する側面には、半球状の嵌合突起61が設けられるとともに、スライダ70においてケース60に対向する側面には、嵌合突起61が嵌合される嵌合凹部71が設けられている。そして、スライダ70は、図4に示すように、嵌合突起61が嵌合凹部71に嵌合されている第1の位置と、図5や図6に示すように、嵌合突起61が嵌合凹部71に嵌合されていない第2の位置との間に亘ってスライド可能となっている。
【0042】
ケース60の内部には、基板収容部62が形成されるとともに、その基板収容部62には、図4〜図6では割愛されているが、受信アンテナ21、受信回路22、マイコン23、送信回路24、送信アンテナ25、電池26が実装されたプリント基板(図示略)が収容されている。つまり、基板収容部62には、携帯機2を電子キーとして利用するために必要な各種電装品が収容されている。また、ケース60の一端部(図4を参照すればケース60の下端部)であって、キー本体50の幅方向(図4の左右方向)中央部には、トランスポンダ27が設けられている。さらに、ケース60には、複数(本実施形態では3つ)のピンタンブラ63〜65と、それらピンタンブラ63〜65をスライダ70側に向かって付勢する3つのスプリング66〜68とが設けられている。
【0043】
スライダ70の内部には、キー収容部72が形成されるとともに、そのキー収容部72には、メカニカルキー80のキープレート81が収容されている。また、スライダ70には、ケース60に設けられるピンタンブラ63〜65と同じ数(この場合、3つ)のピンタンブラ73〜75が設けられている。尚、キープレート81には、ピンタンブラ73〜75の先端部が係合される係合穴83〜85が設けられている。
【0044】
そして、図4に示すように、ピンタンブラ73〜75は、スライダ70が第1の位置に存在しているとき、先端部がキープレート81の係合穴83〜85に係合されるとともに、基端面がケース60の側面に当接されている。尚、このとき、ピンタンブラ63〜65は、スプリング66〜68の付勢力により、その先端面がスライダ70の側面に弾性的に当接されている。また、このとき、スライダ70のキー受部76の端面76aは、ケース60の一端面60aに対して面一となっている。言い換えると、スライダ70が第1の位置に存在しているとき、キー本体50は、メカニカルキー80のキー把持部82と協働して概ね直方体の外形形状をなしている。
【0045】
一方、図5に示すように、ピンタンブラ73〜75は、スライダ70が第2の位置に存在するとともに、キー収容部72にキープレート81が収容されているとき、先端部が係合穴83〜85に係合されるとともに、これにより、基端面がスプリング66〜68の付勢力に抗する態様でピンタンブラ63〜65の先端面に当接されている。尚、このとき、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面は、ケース60とスライダ70との境界面と一致しており、これにより、ケース60に対するスライダ70のスライドが許容されている。
【0046】
他方、図6に示すように、ピンタンブラ73〜75は、スライダ70が第2の位置に存在するとともに、キー収容部72にキープレート81が収容されていないとき、基端面がスプリング66〜68の付勢力によりピンタンブラ63〜65の先端面にて押圧されるとともに、これにより、先端部がキー収容部72に臨む位置まで進出されている。尚、このとき、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面は、ケース60とスライダ70との境界面と一致しておらず、これにより、ケース60に対するスライダ70のスライドが阻止されている。また、このとき、キー受部76の端面76aは、ケース60の一端面60aに対して面一となっていない。言い換えると、スライダ70が第2の位置に存在しているとき、キー本体50は、直方体ではなく、キー受部76の半分以上がケース60の一端面60aから突出された外形形状をなしている。
【0047】
尚、スライダ70には、マグネット77が設けられるとともに、基板収容部62に収容される前記プリント基板には、スライダ70が図4に示すように第1の位置に存在することでマグネット77が近接されたときにスイッチONとなる磁気近接スイッチ69が実装されている。尚、この磁気近接スイッチ69は、前記マイコン23に電気的に接続されている。
【0048】
次に、本実施形態の作用について説明する。
さて、メカニカルキー80がキー本体50から取り外されている状態では、図6に示すように、スライダ70が第2の位置に存在している。そして、このとき、スプリング66〜68の付勢力によりピンタンブラ73〜75の先端部がキー収容部72に臨む位置まで進出されている。そして、図6に示す状態からメカニカルキー80をキー本体50に装着する場合、キープレート81をキー収容部72に挿入する。
【0049】
すると、その挿入に伴ってキープレート81がピンタンブラ73〜75の先端部に干渉することになるが、キープレート81を挿入するときの力がスプリング66〜68の付勢力に勝って、これにより、スプリング66〜68の付勢力に抗してピンタンブラ73〜75がキープレート81の表面形状に応じて退避させられる。尚、キープレート81の挿入に伴ってスライダ70がケース60に対してスライドされようとするが、ピンタンブラ63〜65がケース60の壁部に干渉することでそれが阻止される。
【0050】
そして、キープレート81の挿入が進んで、やがてキープレート81の先端部がキー収容部72の最奥部に達するようになったとき、図5に示すように、係合穴83〜85にピンタンブラ73〜75の先端部が係合されるようになる。そして、このとき、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致させられて、これにより、ケース60に対するスライダ70のスライドが許容される。従って、このようになって以後、キープレート81の挿入と同じ方向にメカニカルキー80を押し込むことで、メカニカルキー80とスライダ70とが一体的にケース60に対してスライドされることになる。
【0051】
ここで、ピンタンブラ63〜65,73〜75と係合穴83〜85との両者は、メカニカルキー毎に個別に設定されたパターンで設けられている。本実施形態では、係合穴83〜85の深さのパターンがメカニカルキー毎に個別に設定されるとともに、係合穴83〜85の深さに応じてピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面の位置が決定されるようになっている。そして、キー本体50に適合する正規のメカニカルキー80が装着される場合に限り、上記のようにピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致するようになっている。要するに、正規のメカニカルキー80が装着されるとき、その装着が許容されるとともに、別のメカニカルキーが装着されるとき、その装着が阻止されるようになっている。
【0052】
尚、図5に示すように、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致しているとき、ピンタンブラ63〜65,73〜75は、キー本体50に対するメカニカルキー80の装着を許容する装着許容位置に存在していると言える。一方、図6に示すように、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致していないとき、ピンタンブラ63〜65,73〜75は、キー本体50に対するメカニカルキーの装着を阻止する装着阻止位置に存在していると言える。つまり、本実施形態においてピンタンブラ63〜65,73〜75は、装着許容位置と装着阻止位置とに亘って変位可能な係合部材に相当する。
【0053】
また、本実施形態において係合穴83〜85は、ピンタンブラ73〜75が係合されることでピンタンブラ63〜65,73〜75を装着阻止位置から装着許容位置まで変位させる被係合部に相当する。そして、本実施形態では、ピンタンブラ63〜65,73〜75と係合穴83〜85とにより、キー本体50に装着されるメカニカルキーがキー本体50に適合するものであるか否かを特定するための指標となる指標手段が構成されている。別の言い方をすると、ピンタンブラ63〜65,73〜75と係合穴83〜85とにより、キー本体50に対するメカニカルキーの照合を機械的に行うための照合機構が構成されている。
【0054】
ここで、話を戻すと、上記のようにしてメカニカルキー80を押し込んでゆくと、やがてスライダ70の先端面が嵌合突起61に干渉することになるが、メカニカルキー80をさらに押し込むと、このような押し込み力により嵌合突起61の周辺部分やスライダ70の先端部分が撓むことでメカニカルキー80の押し込みが許容される。そして、メカニカルキー80をさらに押し込むと、図4に示すように、スライダ70が第1の位置に存在するようになり、このとき、嵌合凹部71に嵌合突起61が嵌合されるとともに、それに伴ってケース60やスライダ70の撓みが解除される。
【0055】
その結果、このようにしてキー本体50に対するメカニカルキー80の装着が完了するのであるが、ここに装着途中においてケース60やスライダ70が撓んでいるときとそうでないときとでは、ケース60とスライダ70との間に生じる摺動抵抗が異なる。従って、このような摺動抵抗の違いが操作者が受ける感触として現れ、結果として、メカニカルキー80の装着が完了されたときには操作者に節度感が付与されることになる。
【0056】
尚、図5にはスライダ70が第2の位置に存在している様子が示されているが、この第2の位置は、スライダ70にあってケース60に対するスライドが開始されてキー本体50に対するメカニカルキーの装着が開始されるスライド開始位置に他ならない。一方、図4にはスライダ70が第1の位置に存在している様子が示されているが、この第1の位置は、スライダ70にあってケース60に対するスライドが終了されてキー本体50に対するメカニカルキーの装着が完了されるスライド終了位置に他ならない。つまり、スライダ70は、図5に示すスライド開始位置(第2の位置)と図4に示すスライド終了位置(第1の位置)とに亘ってスライド可能である。
【0057】
そして、本実施形態では、嵌合突起61と嵌合凹部71とにより、スライダ70がスライド開始位置からスライド終了位置までスライドされたときに節度感を付与する節度付与手段が構成されている。また、図4に示すように、嵌合突起61が嵌合凹部71に嵌合されている状態からスライダ70を装着方向とは反対の方向にスライドさせようとするとき、当然のこととして、それらの嵌合状態の解除に値する操作力が必要である。つまり、このような操作力が付与されない限り、スライダ70が勝手に反対方向にスライドされることはない。言い換えると、本実施形態では、嵌合突起61と嵌合凹部71とにより、スライド終了位置に存在するスライダ70をスライド終了位置で保持する保持手段が構成されていると言える。
【0058】
ちなみに、図4に示すように、スライダ70がスライド終了位置に存在しているとき、ピンタンブラ63〜65は、その先端面がスプリング66〜68の付勢力によりスライダ70の側面に弾性的に当接されている。このため、このような状態からスライダ70を装着方向とは反対の方向にスライドさせようとするとき、かかる当接力に応じた摺動抵抗が発生する。従って、このことによっても、スライダ70が勝手に反対方向にスライドされることが回避される。つまり、本実施形態では、ピンタンブラ63〜65とスプリング66〜68とによっても保持手段が構成されていると言える。
【0059】
また、図4に示すように、キー本体50に対するメカニカルキー80の装着が完了されている状態にあってピンタンブラ73〜75は、その先端部が係合穴83〜85に係合されるとともに、その基端面がケース60の側面に当接されている。従って、これにより、メカニカルキー80がスライダ70から脱落しないようになっている。つまり、本実施形態においてピンタンブラ73〜75は、キー本体50に対する装着が完了されたメカニカルキー80がスライダ70から脱落するのを防ぐ脱落防止手段に相当する。
【0060】
そして、このようにしてメカニカルキー80の装着が完了したとき、それまでスイッチOFFであった磁気近接スイッチ69に対してマグネット77が近接されることとなり、磁気近接スイッチ69がスイッチONとなる。そして、これにより、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されている旨がマイコン23により認識される。
【0061】
そして、車外の所定領域A32にリクエスト信号が送信されている状態で、正規のメカニカルキー80が装着されている携帯機2の所持者が自動車に近付いてきて車外の所定領域A32に進入すると、携帯機2によりリクエスト信号が受信される。すると、リクエスト信号に応答して携帯機2からIDコード信号が送信されるが、本実施形態では、これに際して、正規のメカニカルキー80が装着されている旨を示す正規キー装着状態コードが付加されたIDコード信号がマイコン23により生成されるとともに、そのようなIDコード信号が携帯機2から送信される。
【0062】
そして、このIDコード信号がセキュリティ装置3により受信されたとき、照合制御装置38は、IDコード照合を実行する。そして、照合制御装置38は、受信回路34から入力される受信信号に基準IDコードと一致するIDコードが含まれており、且つそれに正規キー装着状態コードが含まれているとき、正規のメカニカルキー80が装着されている携帯機2が利用された旨を認識する。従って、この場合、車載ドアのアンロックが許可されるとともに、ドアアウトサイドハンドルを操作して車載ドアを開閉することで乗車が可能となる。
【0063】
そして、このようにして車載ドアが開閉されると、車内の所定領域B32にリクエスト信号が送信される。そして、このような状態で、正規のメカニカルキー80が装着されている携帯機2の所持者が車内に乗り込んできて車内の所定領域B32に進入すると、携帯機2によりリクエスト信号が受信される。すると、リクエスト信号に応答して携帯機2からIDコード信号が送信されるが、本実施形態では、これに際して、先程と同様に正規キー装着状態コードが付加されたIDコード信号が携帯機2から送信される。
【0064】
そして、このIDコード信号がセキュリティ装置3により受信されたとき、照合制御装置38は、IDコード照合を実行する。そして、照合制御装置38は、受信回路34から入力される受信信号に基準IDコードと一致するIDコードが含まれており、且つそれに正規キー装着状態コードが含まれているとき、正規のメカニカルキー80が装着されている携帯機2が利用された旨を認識する。従って、この場合、車載エンジンの始動が許可されるとともに、エンジンスイッチを操作することでエンジン始動が可能となる。そして、このように正規のメカニカルキー80が装着されている携帯機2を利用する場合、ユーザは、エンジンが始動されて以後も何ら制約を受けることなく自動車を利用することができるようになっている。
【0065】
次いで、正規のメカニカルキー80とは異なる別のメカニカルキー(キー本体50に適合しないメカニカルキー)がキー本体50に装着される場合の動作について説明する。
この場合、キープレートがキー収容部72に挿入されて、その先端部がキー収容部72の最奥部に達する段階までは、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着される場合と同様に推移する。しかし、この場合、キープレートに係合穴83〜85と同様の係合穴が設けられるにしろ、その係合穴の深さのパターンは正規のメカニカルキー80のそれとは異なるものである。従って、この場合、係合穴にピンタンブラ73〜75の先端部が係合されるにしろ、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致することはない。要するに、この場合、メカニカルキーの装着が阻止されることになる。
【0066】
そうすると、磁気近接スイッチ69に対してマグネット77が近接されないことから、磁気近接スイッチ69はスイッチOFFのままであるとともに、これにより、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されていない旨がマイコン23により認識される。
【0067】
そして、車外の所定領域A32にリクエスト信号が送信されている状態で、正規のメカニカルキー80が装着されていない携帯機2の所持者が自動車に近付いてきて車外の所定領域A32に進入すると、携帯機2によりリクエスト信号が受信される。すると、リクエスト信号に応答して携帯機2からIDコード信号が送信されるが、本実施形態では、これに際して、正規のメカニカルキー80が装着されていない旨を示す正規キー未装着状態コードが付加されたIDコード信号がマイコン23により生成されるとともに、そのようなIDコード信号が携帯機2から送信される。
【0068】
そして、このIDコード信号がセキュリティ装置3により受信されたとき、照合制御装置38は、IDコード照合を実行する。そして、照合制御装置38は、受信回路34から入力される受信信号に基準IDコードと一致するIDコードが含まれており、且つそれに正規キー未装着状態コードが含まれているとき、正規のメカニカルキー80が装着されていない携帯機2が利用された旨を認識する。従って、この場合、車載ドアのアンロックが許可されるとともに、ドアアウトサイドハンドルを操作して車載ドアを開閉することで乗車が可能となる。
【0069】
例えば、他人に携帯機2を預けて駐車を依頼するような場合がこれにあたる。即ち、このような場合、正規のメカニカルキー80を利用することで開閉可能なグローブボックスを他人に開けられないようにするために、正規のメカニカルキー80を取り外した携帯機2を預けることが一般的に行われる。そして、このような場合でも、携帯機2を電子キーとして利用するために必要な各種電装品がケース60に収容されているので、他人は、このような携帯機2を所持することで乗車できるようになっている。
【0070】
そして、このようにして車載ドアが開閉されると、車内の所定領域B32にリクエスト信号が送信される。そして、このような状態で、正規のメカニカルキー80が装着されていない携帯機2の所持者が車内に乗り込んできて車内の所定領域B32に進入すると、携帯機2によりリクエスト信号が受信される。すると、リクエスト信号に応答して携帯機2からIDコード信号が送信されるが、本実施形態では、これに際して、先程と同様に正規キー未装着状態コードが付加されたIDコード信号が携帯機2から送信される。
【0071】
そして、このIDコード信号がセキュリティ装置3により受信されたとき、照合制御装置38は、IDコード照合を実行する。そして、照合制御装置38は、受信回路34から入力される受信信号に基準IDコードと一致するIDコードが含まれており、且つそれに正規キー未装着状態コードが含まれているとき、正規のメカニカルキー80が装着されていない携帯機2が利用された旨を認識する。従って、この場合、車載エンジンの始動が許可されるとともに、エンジンスイッチを操作することでエンジン始動が可能となる。即ち、上記の例で言うと、ユーザ本人から駐車の依頼を受けた他人は、駐車に先立ってエンジンを始動できるようになっている。
【0072】
ただし、このように正規のメカニカルキー80が装着されていない携帯機2を利用する場合、ユーザ(この場合、他人)は、エンジンが始動されて以後、正規のメカニカルキー80が装着されている携帯機2を利用する場合に対して制約を受ける態様で自動車を利用することができるようになっている。尚、本実施形態では、このような場合、エンジンが始動されてから5分間が経過した時点でエンジンが停止するようになっている。
【0073】
尚、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されている場合、磁気近接スイッチ69はスイッチONとなるが、これを言い換えると、磁気近接スイッチ69は、かかる場合、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されている旨を示す正規キー装着状態信号をマイコン23に出力している。一方、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されていない場合、磁気近接スイッチ69はスイッチOFFとなるが、これを言い換えると、磁気近接スイッチ69は、かかる場合、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されていない旨を示す正規キー未装着状態信号をマイコン23に出力している。
【0074】
つまり、本実施形態において磁気近接スイッチ69は、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されている場合と、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されていない場合とで、互いに異なる状態信号を出力する状態識別用スイッチに相当する。
【0075】
また、これに関連して、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されている場合、ユーザは、そのような携帯機2を所持することで、何ら制約を受けることなく自動車を利用できる。これに対して、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されていない場合、ユーザは、そのような携帯機2を所持しているとき、走行可能期間に制約を受ける態様で自動車を利用できる。そして、このような格差は、マイコン23が正規キー装着状態コードを含むIDコード信号を生成するのか、或いは正規キー未装着状態コードを含むIDコード信号を生成するのか、の違いによって生じている。
【0076】
つまり、本実施形態においてマイコン23は、磁気近接スイッチ69から入力される状態信号毎に個別の機能を携帯機2に対して設定する機能設定手段に相当する。そして、本実施形態においてマイコン23は、正規キー未装着状態信号が磁気近接スイッチ69から入力されたとき、正規キー装着状態信号が磁気近接スイッチ69から入力されたときに設定する機能に対して制約された機能を携帯機2に対して設定している。
【0077】
また、磁気近接スイッチ69がスイッチONであるとき、正規キー装着状態コードを含むIDコード信号が送信アンテナ25から送信される。一方、磁気近接スイッチ69がスイッチOFFであるとき、正規キー未装着状態コードを含むIDコード信号が送信アンテナ25から送信される。つまり、本実施形態では、送信回路24と送信アンテナ25とにより、これらのようなIDコード信号を送信する送信手段が構成されている。
【0078】
次いで、携帯機2がキースロット39に挿入される場合の動作について説明する。
携帯機2の電池26が消耗している場合、携帯機2を電子キーとして利用できないことから、エンジン始動に際して、携帯機2がキースロット39に挿入される。ここで、図7に示すように、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されている携帯機2がキースロット39のキー挿入口39aに挿入されるとき、この携帯機2は、概ね直方体の外形形状をなしていることから、ケース60の一端面60a及びスライダ70の端面76aがキー挿入口39aの最奥部に達する態様での挿入が可能である。そして、このような挿入を経て、図示しないキー検出スイッチがONされると、送受信アンテナ37からトランスポンダ起動用電波が送信される。
【0079】
尚、この場合、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との距離D1は、約15mmとなっている。従って、この場合、トランスポンダ起動用電波からトランスポンダ27が電力を賄ってトランスポンダ27からトランスポンダコード信号が送信される。
【0080】
そして、このトランスポンダコード信号が送受信アンテナ37により受信されたとき、照合制御装置38は、トランスポンダコード照合を実行する。そして、照合制御装置38は、送受信回路36から入力される受信信号に基準トランスポンダコードと一致するトランスポンダコードが含まれているとき、対応する携帯機2が利用された旨を認識する。従って、この場合、車載エンジンの始動が許可されるとともに、エンジンスイッチを操作することでエンジン始動が可能となる。
【0081】
これに対して、図8に示すように、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されていない携帯機2がキースロット39のキー挿入口39aに挿入されるとき、この携帯機2は、スライダ70の端面76aのみがキー挿入口39aの最奥部に達する態様での挿入が可能である。そして、このような挿入を経て、図示しないキー検出スイッチがONされるものと仮定したとき、送受信アンテナ37からトランスポンダ起動用電波が送信される。
【0082】
尚、この場合、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との距離D2は、約35mmとなっている。従って、この場合、トランスポンダ起動用電波からトランスポンダ27が十分な電力を賄うことができず、トランスポンダ27からトランスポンダコード信号が送信されない。その結果、この場合、車載エンジンの始動が許可されないことになる。
【0083】
本実施形態において送受信アンテナ37は外部通信手段に相当するとともに、トランスポンダ27は送受信アンテナ37との間での通信が可能な内部通信手段に相当する。そして、スライダ70は、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されているとき、図4や図7に示す第1の位置に変位されるが、この第1の位置は、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信を許容する通信許容位置に相当する。また、スライダ70は、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されていないとき、図6や図8に示す第2の位置に変位されるが、この第2の位置は、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信を阻止する通信阻止位置に相当する。従って、本実施形態においてスライダ70は、このように変位される移動部材に相当する。
【0084】
そして、スライダ70が通信許容位置に変位されているとき、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との距離D1が約15mmに設定されているが、この距離D1は、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信を確立可能な第1の距離に相当する。ここに、キー本体50は、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されているとき、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信が確立される態様でもってキースロット39に対する挿入が許容される外形形状をなしていると言える。
【0085】
また、スライダ70が通信阻止位置に変位されているとき、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との距離D2は約35mmに設定されているが、この距離D2は、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信を確立不可能な第2の距離に相当する。ここに、キー本体50は、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されていないとき、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信が確立されない態様でもってキースロット39に対する挿入が許容される外形形状をなしていると言える。
【0086】
詳述すると、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されていないとき、スライダ70におけるキースロット39に対する挿入側の端面76aが、ケース60におけるキースロット39に対する挿入側の端面(一端面60a)から突出される。そして、その突出された分だけ送受信アンテナ37とトランスポンダ27との距離が、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されているときよりも長くなって、その距離が送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信が可能な距離を超えることで送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信が確立されないのである。
【0087】
以上、詳述したように本実施形態によれば、次のような作用、効果を得ることができる。
(1)正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されているとき、スライダ70が通信許容位置に変位されることで、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信が許容される。一方、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されていないとき、スライダ70が通信阻止位置に変位されることで、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信が阻止される。
【0088】
このため、ユーザ本人の意志に反して第三者に携帯機2を渡さざるを得ないようなとき、メカニカルキー80を取り外した携帯機2を渡すようにすれば、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信を確立させないようにすることができる。そうすると、このような通信が確立されることを条件として有効に働く機能(例えば、エンジン始動を許可する機能)を無効にすることが可能となる。つまり、この場合、第三者は、ユーザ本人と同じレベルでは自動車を扱えなくなってユーザ本人にとって都合がよい。従って、セキュリティレベルを向上することができる。
【0089】
(2)スライダ70が通信許容位置に変位されている場合と、スライダ70が通信阻止位置に変位されている場合とで、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との距離が互いに異なるように設定されている。つまり、正規のメカニカルキー80が装着されている場合と、そうでない場合とで、互いに異なる位置にスライダ70が変位されるとともに、そして、これにより、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との距離に違いが持たされている。従って、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との距離に応じて通信が確立されるか否かが決定されるような通信(例えば、電波を用いた無線通信)について、その通信の可否制御を実現できる。
【0090】
(3)正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されている場合と、そうでない場合とで、キー本体50の外形形状が互いに異なるようになっている。そして、前者の場合には、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信が確立されるが、後者の場合には、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信が確立されない。
【0091】
このため、ユーザ本人の意志に反して第三者に携帯機2を渡さざるを得ないようなとき、メカニカルキー80を取り外した携帯機2を渡すようにすれば、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信を確立させないようにすることができる。そうすると、このような通信が確立されることを条件として有効に働く機能(例えば、エンジン始動を許可する機能)を無効にすることが可能となる。つまり、この場合、第三者は、ユーザ本人と同じレベルでは自動車を扱えなくなってユーザ本人にとって都合がよい。従って、セキュリティレベルを向上することができる。
【0092】
(4)正規のメカニカルキー80が装着されていないとき、スライダ70の端面76aがケース60の一端面60aから突出される分だけトランスポンダ27が送受信アンテナ37から遠ざかり、そして、これにより、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との間での通信が確立されないようになっている。従って、送受信アンテナ37とトランスポンダ27との距離に応じて通信が確立されるか否かが決定されるような通信(例えば、電波を用いた無線通信)について、その通信の可否制御を実現できる。
【0093】
(5)ピンタンブラ63〜65,73〜75及び係合穴83〜85を備えることで、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着される場合と、別のメカニカルキーがキー本体50に装着される場合とを峻別することが可能となる。このため、携帯機2から正規のメカニカルキー80が取り外されて別のメカニカルキーが装着されるようなことが起こっても、そのことに直ちに気付くことができるようになる。従って、セキュリティレベルを向上することができる。
【0094】
(6)正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されるとき、その装着がピンタンブラ63〜65,73〜75及び係合穴83〜85により許容されるとともに、別のメカニカルキーがキー本体50に装着されるとき、その装着がピンタンブラ63〜65,73〜75及び係合穴83〜85により阻止される。つまり、正規のメカニカルキー80だけがキー本体50に装着できる唯一のキーである。従って、メカニカルキーがキー本体50に装着されているか否かを一瞥するだけで、キー本体50に装着されるメカニカルキーがキー本体50に適合するものであるか否かを容易に特定することができる。
【0095】
(7)正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されるとき、そのメカニカルキー80の係合穴83〜85にピンタンブラ73〜75が係合されることで全てのピンタンブラ63〜65,73〜75が装着阻止位置から装着許容位置まで変位される。そして、これにより、キー本体50に対するメカニカルキー(この場合、正規のメカニカルキー80)の装着が許容される。一方、別のメカニカルキーがキー本体50に装着されるとき、装着許容位置まで変位されないピンタンブラ(63〜65,73〜75のいずれか)が存在する。そして、これにより、キー本体50に対するメカニカルキー(この場合、別のメカニカルキー)の装着が阻止される。従って、メカニカルキーがキー本体50に装着されているか否かを一瞥するだけで、キー本体50に装着されるメカニカルキーがキー本体50に適合するものであるか否かを容易に特定することができる。
【0096】
(8)メカニカルキー80をスライダ70に収容するとともに、そのスライダ70をケース60に対してスライド開始位置からスライド終了位置までスライドさせることでキー本体50に対するメカニカルキー80の装着が完了する。ここに、このようにキー本体50にメカニカルキー80を装着する際において、メカニカルキー80を収容できる程度の大きさを有するスライダ70を操作するのであるから、操作がし易い。従って、キー本体50にメカニカルキー80を装着するときの操作性を向上することができる。
【0097】
(9)スライダ70がスライド開始位置からスライド終了位置までスライドされたとき、節度感が付与される。そして、これにより、キー本体50に対するメカニカルキー80の装着が完了された旨が報知される。従って、キー本体50にメカニカルキー80を確実に装着させることができる。
【0098】
(10)嵌合突起61が嵌合凹部71に嵌合されていること及びピンタンブラ63〜65の先端面がスライダ70の側面に弾性的に当接されていることにより、スライダ70はスライド終了位置で保持される。従って、キー本体50に対するメカニカルキー80の装着状態を好適に維持することができる。
【0099】
(11)メカニカルキー80の装着後においてメカニカルキー80の脱落が防止される。従って、キー本体50に対するメカニカルキー80の装着状態を好適に維持することができる。
【0100】
(12)正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されている場合と、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されていない場合とで、互いに異なる機能が携帯機2に設定される。このため、ユーザ本人が自動車を利用する場合のように正規のメカニカルキー80が装着された携帯機2が用いられて自動車が利用される場合と、他人が自動車を利用する場合のようにメカニカルキー80を取り外した携帯機2が用いられて自動車が利用される場合とで、自動車に対して有効に働く機能を異ならせることができる。ここに、ユーザ本人が他人よりも優位となるように機能を設定しているため、他人は、ユーザ本人と同じレベルでは自動車を扱えなくなってユーザ本人にとって都合がよい。従って、セキュリティレベルを向上することができる。
【0101】
(13)正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されていない場合、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されている場合に対して機能が制約される。このため、他人が自動車を利用するような状況下において、正規のメカニカルキー80を取り外した携帯機2を渡すようにすれば、他人は、ユーザ本人と同じレベルでは自動車を扱えなくなってユーザ本人にとって都合がよい。従って、セキュリティレベルを向上することができる。
【0102】
(14)磁気近接スイッチ69がスイッチONであるとき、正規キー装着状態コードを含むIDコード信号が携帯機2から送信される。一方、磁気近接スイッチ69がスイッチOFFであるとき、正規キー未装着状態コードを含むIDコード信号がキー装置から送信される。ここに、これらのようなIDコード信号がセキュリティ装置3で受信されたとき、そのセキュリティ装置3により、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されているのか、或いはそうでないのか、を認識することが可能となる。従って、送信アンテナ25から携帯機2の状態を示すIDコード信号を送信することで、それを受信するセキュリティ装置3により、携帯機2側の状態に応じた適切な制御を実行することができる。
【0103】
尚、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・携帯機2に備えられる内部通信手段は、送信手段、受信手段、送信手段と受信手段とを兼ねる送受信手段、のいずれであってもよい。尚、内部通信手段として送信手段が選択される場合、外部通信手段として受信手段又は送受信手段が選択される。また、内部通信手段として受信手段が選択される場合、外部通信手段として送信手段又は送受信手段が選択される。さらに、内部通信手段として送受信手段が選択される場合、外部通信手段として送信手段又は受信手段又は送受信手段が選択される。要するに、外部通信手段と内部通信手段との間での通信が可能となる組み合わせは全て含まれる。
【0104】
・トランスポンダ27は、携帯機2においてキースロット39に対する挿入側の端部に設けられる構成が好ましい。このようにすれば、送受信アンテナ37から送信されるトランスポンダ起動用電波として強度の弱いものを用いることができる。尚、トランスポンダ起動用電波として強度の強いものを用いることが可能であれば、携帯機2においてキー受部76が突出される側とは反対側(図4において上側)の端部にトランスポンダ27が設けられてもよい。
【0105】
・送受信アンテナ37(コイルアンテナ)の中心軸線上にトランスポンダ27が設けられる構成が好ましい。このようにすれば、通信効率が最も高くなるので、送受信アンテナ37から送信されるトランスポンダ起動用電波からトランスポンダ27が確実に電力を賄うことができる。尚、これが実現されるように、キースロット39に対する送受信アンテナ37の位置、キースロット39に対するキー挿入口39aの位置、ケース60に対するトランスポンダ27の位置が設定されればよい。
【0106】
・携帯機2の外形形状が直方体に限定されないことは勿論である。ただし、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されているとき、携帯機2の外形形状のうち、キースロット39に対する挿入部分の形状と、キー挿入口39aの形状とが、互いに整合されている必要がある。
【0107】
・係合穴83〜85の深さのパターンをメカニカルキー毎に個別に設定する構成に代えて又は加えて、係合穴83〜85の径の大きさのパターンをメカニカルキー毎に個別に設定する構成を採用してもよい。この場合、係合穴83〜85に係合されるピンタンブラ73〜75の径の大きさ(太さ)を係合穴83〜85の径の大きさと等しくなるように設定すればよい。
【0108】
そうすれば、正規のメカニカルキー80が装着されるとき、係合穴83〜85の径の大きさとピンタンブラ73〜75の径の大きさとが一致することで、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致して、その結果、キー本体50に対するそのメカニカルキー80の装着が許容される。一方、別のメカニカルキーが装着されるとき、係合穴の径の大きさとピンタンブラ73〜75の径の大きさとが一致しないので、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致せず、その結果、キー本体50に対するそのメカニカルキーの装着が阻止される。
【0109】
尚、係合穴83〜85の深さのパターンをメカニカルキー毎に個別に設定するとともに、係合穴83〜85の径の大きさのパターンをメカニカルキー毎に個別に設定する構成を採用してもよい。この場合、係合穴やピンタンブラの数が少なくても多くのパターンが生まれる。例えば、係合穴の径の大きさに一致する太さのピンタンブラであっても、それが係合穴に係合されたところで、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致するとは限らない。つまり、これにより装着が阻止されるメカニカルキーは、正規のメカニカルキー80とは異なる別のメカニカルキーということになる。従って、セキュリティレベルを向上するにあたり、このような指標手段(照合機構)の部品点数を少なくしても足りるため、携帯機2の小型軽量化に貢献できる。
【0110】
・キープレート81に対する係合穴83〜85の形成態様は、メカニカルキー毎に個別に設定されるものであればどのようなものであってもよい。例えば、キープレート81に設けられる係合穴の数は、単数或いは複数のいずれであってもよい。
【0111】
そして、単一の係合穴を設けるのであれば、上記のように深さ及び径の大きさの少なくとも一方をメカニカルキー毎に個別に設定してもよいし、それに代えて又は加えて係合穴を設ける位置をメカニカルキー毎に個別に設定してもよい。
【0112】
また、複数の係合穴を設けるのであれば、その数をメカニカルキー毎に個別に設定してもよい。或いは、同じ数の係合穴を設けるのであれば、上記のように深さ及び径の大きさの少なくとも一方をメカニカルキー毎に個別に設定してもよいし、それに代えて又は加えて係合穴を設ける位置をメカニカルキー毎に個別に設定してもよい。
【0113】
要は、正規のメカニカルキー80が装着される場合、その装着が許容されるとともに、別のメカニカルキーが装着される場合、その装着が阻止されるように係合穴とピンタンブラとが協働している構成は全て本発明に含まれる。
【0114】
・ピンタンブラに代えて板タンブラやボールを係合部材として用いても差し支えない。勿論、ピンタンブラ、板タンブラ、ボール等の複数種の係合部材を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
・メカニカルキー80を縦置き状態でスライダ70に収容する構成、メカニカルキー80を横置き状態でスライダ70に収容する構成、メカニカルキー80を斜め置き状態でスライダ70に収容する構成、のいずれを採用してもよい。ただし、これらの置き方毎に係合穴83〜85の形成位置を異ならせることで、ピンタンブラ73〜75が係合穴83〜85に係合されるようにする必要があることは勿論である。
【0116】
・メカニカルキーには、ドア開閉用のドアシリンダ、エンジン始動用のキーシリンダ、グローブボックスのシリンダに適合するようにキー山が存在している。しかも、このキー山は、メカニカルキー毎に個別に設定されるものである。従って、このようなキー山間に存在する溝に対してピンタンブラ73〜75が係合される構成を採用してもよい。つまり、既存のキー山間の溝を被係合部として利用してもよい。そうすれば、既存のメカニカルキーに対して係合穴を設けなくても足りる。
【0117】
・前記実施形態では、ケース60に嵌合突起61を設けるとともに、スライダ70に嵌合凹部71を設けたが、スライダ70に嵌合突起を設けるとともに、ケース60に嵌合凹部を設けるようにしてもよい。
【0118】
或いは、複数の嵌合突起と複数の嵌合凹部とが設けられる構成であってもよい。この場合、全ての嵌合突起がケース60及びスライダ70の一方(例えばケース60)に設けられるとともに、全ての嵌合凹部がケース60及びスライダ70の他方(この場合、スライダ70)に設けられる構成に限定されない。例えば、2つの嵌合突起と2つの嵌合凹部が設けられる構成において、1つの嵌合突起がケース60に設けられるとともに、それが嵌合される嵌合凹部がスライダ70に設けられ、さらに、別の嵌合突起がスライダ70に設けられるとともに、それが嵌合される嵌合凹部が60に設けられる構成を採用してもよい。
【0119】
・保持手段として機能する嵌合突起61及び嵌合凹部71は必ずしも必要ではなく、割愛することも可能である。この理由は、ピンタンブラ63〜65とスプリング66〜68とにより構成されている保持手段によってスライド終了位置に存在するスライダ70をスライド終了位置で保持することができるからである。ただし、前記実施形態のように2種類の保持手段が設けられる構成にあっては、キー本体50に対するメカニカルキー80の装着状態の維持が確実に行われて好適である。
【0120】
・前記実施形態では、スライダ70にマグネット77を設けるとともに、ケース60に磁気近接スイッチ69を設けたが、ケース60にマグネットを設けるとともに、スライダ70に磁気近接スイッチを設けるようにしてもよい。
【0121】
・状態識別用スイッチは、前記実施形態の磁気近接スイッチ69のような非接触型のスイッチに限定されない。即ち、状態識別用スイッチとして接触型のスイッチを採用してもよい。この場合、例えば、ケース60にマイクロスイッチを設ける。そして、スライダ70が図4に示すようにスライド終了位置に存在しているとき、スライダ70がマイクロスイッチの可動接点を押圧することでマイクロスイッチがスイッチONになるとともに、スライダ70が図5に示すようにスライド開始位置に存在しているとき、前記押圧が解除されてマイクロスイッチがスイッチOFFになるようにすればよい。
【0122】
尚、非接触型のスイッチとして磁気近接スイッチ69以外のものを用いたり、接触型のスイッチとしてマイクロスイッチ以外のものを用いたりしても構わない。
・前記実施形態では、正規のメカニカルキー80が装着されていない携帯機2が利用される場合、正規のメカニカルキー80が装着されている携帯機2が利用される場合に対して制約を与えるようにしたが、この制約は走行可能期間についての制約に限定されない。即ち、前者の場合、後者の場合に対して走行可能距離について制約を与えるようにしてもよい。例えば、後者の場合、走行可能距離を制約しないようにするとともに、前者の場合、走行可能距離を1kmとしてもよい。
【0123】
或いは、前者の場合、後者の場合に対してエンジン始動可能回数について制約を与えるようにしてもよい。例えば、後者の場合、エンジン始動可能回数を制約しないようにするとともに、前者の場合、エンジン始動可能回数を1回限りとしてもよい。
【0124】
或いは、前者の場合、後者の場合に対して最高速度について制約を与えるようにしてもよい。例えば、後者の場合、最高速度を制約しないようにするとともに、前者の場合、最高速度を時速10kmとしてもよい。
【0125】
或いは、前者の場合、後者の場合に対して複数のこと(例えば、走行可能期間、走行可能距離、エンジン始動可能回数、最高速度、の少なくとも2つ)について制約を与えるようにしてもよい。
【0126】
尚、極めて稀な例ではあるが、前者の場合の方が後者の場合よりも優位となるようにしてもよい。
・携帯機2のように自動車の利用に供されるキー装置にあっては、利便性の向上を図るために、幾つかの操作スイッチが設けられている。例えば、アンロックスイッチ、ロックスイッチ、トランク開スイッチ、パニックスイッチ等がそれである。
【0127】
ちなみに、アンロックスイッチは、自動車から離れた地点(例えば、自動車から最長で約5m離れた地点)から遠隔操作により車載ドアをアンロックさせたい場合に操作されるものである。一方、ロックスイッチは、自動車から離れた地点から遠隔操作により車載ドアをロックさせたい場合に操作されるものである。他方、トランク開スイッチは、自動車から離れた地点から遠隔操作により車載トランクを開けたい場合に操作されるものである。最後に、パニックスイッチは、自動車から離れた地点から遠隔操作により車載ホーンを鳴動させたい場合に操作されるものである。言い換えると、パニックスイッチは、第三者により自動車が利用されている旨を発見した場合のように第三者に対して警告を発したい場合に操作されるものである。
【0128】
そして、正規のメカニカルキー80が装着されている場合、これらの操作スイッチの操作を有効にするとともに、正規のメカニカルキー80が装着されていない場合、これらの操作スイッチの操作を無効にするようにしてもよい。
【0129】
そして、正規のメカニカルキー80が装着されている場合において、予め定められた順序に従って操作スイッチが操作されたとき、正規キー装着状態コードを含むIDコード信号が携帯機2から送信されるようにしてもよい。また、正規のメカニカルキー80が装着されている場合において、予め定められた別の順序(例えば、先程の順序の逆順)に従って操作スイッチが操作されたとき、正規キー未装着状態コードを含むIDコード信号が携帯機2から送信されるようにしてもよい。
【0130】
ここに、正規のメカニカルキー80が装着されている携帯機2がユーザ本人の意志に反して他人に利用されるような場合、ユーザ本人は、それに先立って後者の順序で操作スイッチを操作する。そうすると、前者の順序で操作スイッチを操作してからでないと自動車の利用に制約を受けてしまうことなど知らない他人は、制約を受ける態様でしか自動車を利用できないことになり、ユーザ本人にとって都合がよい。言い換えると、ユーザ本人しか自動車を意のままに操れないことになり、これにより、セキュリティレベルを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】電子キーシステムが適用されている本実施形態の自動車の構成を示すブロック図。
【図2】車外の所定領域を示す説明図。
【図3】車内における2種類の所定領域を示す説明図。
【図4】キー本体に対するメカニカルキーの装着が完了されている状態を示す携帯機の断面図。
【図5】キー本体に対してメカニカルキーが装着される場合の途中の状態を示す携帯機の断面図。
【図6】キー本体からメカニカルキーが取り外されている状態を示す携帯機の断面図。
【図7】正規のメカニカルキーが装着されている携帯機がキースロットに装着されている状態を示す断面図。
【図8】正規のメカニカルキーが装着されていない携帯機がキースロットに装着されている状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0132】
2…携帯機(キー装置)、27…トランスポンダ(内部通信手段)、37…送受信アンテナ(外部通信手段)、39…キースロット(外部キースロット)、50…キー本体、60…ケース、60a…一端面(ケースの端面)、70…スライダ(移動部材)、76a…スライダの端面、80…メカニカルキー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部通信手段との間での通信が可能な内部通信手段を備えるとともに、キー本体にメカニカルキーが装着されるキー装置において、
キー本体に適合するメカニカルキーがキー本体に装着されているとき、外部通信手段と内部通信手段との間での通信を許容する通信許容位置に変位されるとともに、キー本体に適合するメカニカルキーがキー本体に装着されていないとき、外部通信手段と内部通信手段との間での通信を阻止する通信阻止位置に変位される移動部材を備えていることを特徴とするキー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のキー装置において、
移動部材が通信許容位置に変位されているとき、外部通信手段と内部通信手段との距離が、外部通信手段と内部通信手段との間での通信を確立可能な第1の距離に設定されるとともに、移動部材が通信阻止位置に変位されているとき、外部通信手段と内部通信手段との距離が、外部通信手段と内部通信手段との間での通信を確立不可能な第2の距離に設定されることを特徴とするキー装置。
【請求項3】
外部通信手段との間での通信が可能な内部通信手段を備えるとともに、キー本体にメカニカルキーが装着されるキー装置において、
キー本体は、キー本体に適合するメカニカルキーがキー本体に装着されているとき、外部通信手段と内部通信手段との間での通信が確立される態様でもって外部キースロットに対する挿入が許容される外形形状をなすとともに、キー本体に適合するメカニカルキーがキー本体に装着されていないとき、外部通信手段と内部通信手段との間での通信が確立されない態様でもって外部キースロットに対する挿入が許容される外形形状をなしていることを特徴とするキー装置。
【請求項4】
請求項3に記載のキー装置において、
キー本体は、内部通信手段を備えるケースと、そのケースに対してスライド可能に支持されるスライダとにより形成され、
キー本体に適合するメカニカルキーがキー本体に装着されていないとき、スライダにおける外部キースロットに対する挿入側の端面が、ケースにおける外部キースロットに対する挿入側の端面から突出されるとともに、その突出された分だけ外部通信手段と内部通信手段との距離が、キー本体に適合するメカニカルキーがキー本体に装着されているときよりも長くなって、その距離が外部通信手段と内部通信手段との間での通信が可能な距離を超えることで外部通信手段と内部通信手段との間での通信が確立されないことを特徴とするキー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−277924(P2007−277924A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105526(P2006−105526)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】